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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

進撃のウォーキングデッド season3 ep4 罪と罰

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  1. 1 : : 2015/03/21(土) 19:51:54
    前回の続きです。
    http://www.ssnote.net/archives/32509
  2. 2 : : 2015/03/25(水) 19:26:58

    「アニ、私と友達になってくれて、ありがとう…」

    「ふざけるな!あれは僕の車だ!」

    「エレン。ライナーを、みんなを頼む。」


    「もうお前とは一緒にいられない!俺は、俺自身のやり方で…」






    エレン(やめろ。頼むからやめてくれ…)

    エレン(もう、許してくれ…もうこれ以上は…)



    ミカサ「エレン!」

    エレン「!」

    目を開けると心配そうに見つめる妻の姿が。

    エレン「…またか。」

    ミカサ「最近寝汗が酷くなっている。今日はいくら呼びかけても起きなかった。」

    エレン「すまないな、いつも。」

    ミカサ「…また例の夢?」

    エレン「ああ…これは俺への罰なのかもな。忘れてはいけない事を戒めるための。」

    ミカサ「そんな、あなた一人のせいではない。言ったでしょ、私も一緒に背負うって。」

    この三ヶ月間、2人の関係は至って良好だった。
    夜を共に過ごす時間も増えた。

    エレン「ありがとうな。もちろん彼らの事を忘れた事は一日もない。フランツ、ミーナ、アルミン、アニ、ベルトルト…そしてジャン。」

    エレン「どんな罰でも受け入れる。俺がそうすることで、みんなも立ち直っていけるはずだ。」

    ミカサ「そうね。…あ、今日は午前中ハンネスに呼ばれている。忘れずにね。」

    そう言うとミカサも自分の持ち場に戻った。
    今日の彼女の当番は、備品のチェックだ。




    サシャ「エレン、いい朝ですね。」

    エレン「おはようサシャ。ハンネスを見なかったか?」

    サシャ「彼なら庭ですよ。今日も野菜を育てています、収穫が楽しみですね。」

    彼女は楽しげにその場でヒラヒラ回って見せた。

    エレン「サシャはいつも楽しそうだな、特に食の事となると。」

    サシャ「ええ、食べることで生きている事を実感できます。特にみんなで取る食事は最高です。しばらくエルドと二人だったので…」

    エレン「そういえば、配膳の時はみんなに均等に行き渡るようにしているな。」

    自分一人が腹を膨らませるのを良しとせず、皆が必ず口をつけるのを確認してから、自らも食事を済ませている。

    サシャ「はい、みんなの食べている顔を見るのが大好きです!」

    エレン「よしよし、お前はいい子だな。」

    彼女の頭をクシャクシャと撫でる。

    サシャ「えへへ。エレンはエルドと歳も近いし、なんだかお兄ちゃんみたいですね。」

    エレン(兄…か。)

    サシャ「ではこれからユミルと洗濯の仕事があるので、また。」

    両手を広げ、風のように去って行った。





    ハンネス「…」

    黙々と鍬を振るうその姿は、一見すると農夫そのものだ。
    彼は実に生き生きとしていた。食物の栽培が、彼の生き甲斐になりつつあったからだ。


    エレン「順調か?」

    ハンネス「玉ねぎもじゃが芋も育ちが良い。この土壌は本当に条件がいいな、刑務所だってのがもったいないくらいだ。」

    エレン「それは何よりだ、よし俺も一仕事…」

    手伝おうと腕まくりをしたところで止められた。

    ハンネス「そのままでいい、聞いてくれ。」


    ハンネス「この三ヶ月で皆に笑顔が戻った。ライナーも笑うようになり、クリスタはまだちっとあれだが…そう、ユミルとコニーの事も喜ばしいニュースだな。」

    2人の事をハンネスは心から祝福した。今ではコニーは、息子同然だという。

    ハンネス「これも全てお前のおかげだ、感謝しているよ。しかしな、肝心のお前が参っちまってるんじゃないのか?」

    エレン「いや、俺は…」

    ハンネス「隠さんでいい。俺にはお見通しだぞ、毎晩魘されているのもな。」

    エレン「…アンタには本当に敵わないよ。」

    ハンネス「いいか、全てを自分一人で処理する必要はないんだ。どんな形でもいい、周りに打ち明けてくれ。」

    エレン「俺自身まだわからないんだ。そんな風に救われていいのかどうか。」

    ハンネス「救われるべきでない人間などいない。自分がどうありたいかが大事だ、後は自ずとついてくる。」


    ハンネス「少なくとも、俺は真っ先にそれを受け止める立場でありたいと思ってるぞ。…おっと、それは嬢ちゃんの役目か。」

    そう言うと、彼は快活な笑顔を見せた。おおよそ50代には見えない。

    エレン「…ありがとう。」

    ハンネスは何も言わず、再び鍬を降り始めた。
  3. 3 : : 2015/03/25(水) 19:50:19
    ーーーーーーーーーーーーーー

    刀を研ぐ。
    その刀身にこびり付いた見えない血も、一緒に落ちてくれればいいのに。

    ナナバ「…」

    自分の隠し事のせいで命を落とした人間がいる。そのツケは、必ず払わなければならない。

    ナナバ(その報いがどんな形で来るかわからない。しかし、どんなものでも受け入れよう。そしてできれば彼らを巻き込まずに、この手で…)


    ナナバ「?!」

    急に自身の手が真っ赤に染まった。
    振り払おうと必死に拭う。

    ガタンッ!

    ナナバ「…!」

    刀が床に落ちた音で正気に戻った。


    コニー「おい、大丈夫か?」

    独房でイチャついていたのだろう、コニーとユミルが慌てて顔を出した。

    ナナバ「すまないね、お邪魔したかな?」

    ユミル「いいや、構わねぇよ。ただ私がここにいた事は黙っててくれ、サシャに15分だけ仕事任せてんだ。」

    ナナバ「はいはい。」

    二人はまた独房に戻っていった。



    ナナバ(どんなに償っても、消えない罪はある。ただそれから逃げずに受け止めることで、見えてくるものもある。…そうだよね?)

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    エルド「俺の出身はミルウォーキーだ。だがNBAなら俄然、マジックを応援している。」

    ライナー「そいつは聞き捨てならんな、バックスはどうした?俺は地元一筋だぞ。」

    広場では屈強な体格を誇る二人が、スポーツ談義に花を咲かせていた。

    ライナー「なぁ、エレンもそう思うだろう?」

    通りかかったエレンに助け舟を出す。

    エレン「残念だったなライナー。ホークスはないぜ、だって開幕12連敗だろ?やっぱりレイカーズこそ至高だ。」

    エルド「ほう、コービー信者って訳か。クリスタはどうだ?」

    クリスタ「…そうね、ホークスは弱いけどホームチームは見捨てられないわ。」

    ライナー「そら見たかお前ら。これこそ地元愛ってもんだ!」

    してやったりと大笑いを始める。

    エルド「なんなら白黒つけるか?丁度コートもある。」

    バスケットボールを人差し指で弄りながら、コートに顎を向ける。

    ライナー「言ったなエルド。俺のダンクを喰らっても、同じことが言えるかな?」

    二人はお互いを罵りながらも、仲良くコートに消えていった。



    クリスタ「安心したわ、ライナーもすっかり元気になった。彼とは体育会系同士、気が合うみたい。」

    エレン「そうだな、だが俺はお前の方が気がかりだ。」

    クリスタ「冗談はよして。私はいつでも元気よ。」

    エレン「…ハンネスに言われたんだ。救われるべきではない人間なんていないって。なぁ、要は自分がどうありたいかじゃないのか?」

    クリスタ「私はわからない。少なくとも、自分の行いをまだ許せていない。」

    バチン!

    クリスタ「痛っ!」

    クリスタのおでこにデコピンをかました。

    エレン「許せないことなんてないだろ?そう思いたいじゃないか、俺もまだわかってないがな。」

    クリスタ「…ふふ。」

    エレン「なんだよ?」

    クリスタ「ここにきた時にね、ライナーに同じ事言ったの。まさかエレンにそれを言われるとは、思ってもみなかったよ。」

    エレン「俺も思っても見なかったよ、こんなに穏やかに談笑できる時が来るなんて。…もっと早くに気付いてりゃ…」

    クリスタ「その先は言わない。やめましょう。」

    エレン「ああ…そうだな。」
  4. 4 : : 2015/03/31(火) 20:54:03
    ーーーーーーーーーーーーー

    ハンネス「ん…?あれは…」

    忘れもしない、金髪の独眼。
    何を思ったか、単身こちらに向かってくる。

    ハンネス「それ以上近寄るな!何の用だ?」

    ガバナー「君達と話し合いがしたいんだ。そう警戒しないでくれ、武器は持っていないよ。」

    両手を挙げ、クルリとその場で回ってみせる。

    ハンネス「正気か?周りにはウォーカーがうじゃうじゃ…」

    言いかけて気付いた。フェンスの周りに一体もいない、気配すらなかった。

    ガバナー「心配には及ばないよ、周辺2kmにバイターはいない。つまり、ここには君達と私だけという事だ。」

    ハンネス「…そこを動くな、今リーダーを呼んでくる。」

    エレンを呼ぼうと振り向いたが、既にその必要はないと言わんばかりの表情の彼がいた。

    エレン「何のつもりだ?」

    ガバナー「やぁ、君が代表か。少し話をしようじゃないか。」

    エレン「話すことなんてない、お前らはベルトルトを殺した。」

    ガバナー「やれやれ、手厳しいね。その事についてはお悔やみを言うよ。」

    エレン「…死にたいのか?」

    ガバナー「よく考えてみたまえ、君が三ヶ月かかって手に入れたものは何だ?」

    皆の笑顔が脳裏に浮かぶ。

    ガバナー「私はそれらを一瞬で壊せる”用意”がある。」

    エレン「それは脅しか?」

    ガバナー「どのようにとってもらっても構わない。ただ私としては、できる限り平和に終わらせたいんだ。」

    ガバナー「どうだ、話くらい聞いてもらえないか?」

    エレン「…」

    握られた拳がゆっくり開いていく。

    ガバナー(さぁどうする?どちらに転んでも同じこと、早いか遅いかだ。)

    エレン「…いいだろう。但し、中に入るのはお前一人だ。」

    ガバナー(そう来たか…)

    ガバナー「それはフェアではないな。せめて護衛の一人でくらい…」

    エレンは右手を上げた。

    エレン「お前はお願いする立場だろ?ならこのくらいの条件は飲めよ。全面戦争するってんならそれもいい、こっちはとっくに準備ができている。」

    チラッと監視棟を見やる。すると、既にライフルがこちらに向けられていた。


    クリスタ「…」

    エレン「彼女は凄腕だ、俺がこの手を下せばすぐにお前の頭が飛ぶ。」

    ガバナー「それは諦めた方がいい。こちらはまだ戦力すらみせていない。」

    エレン「俺が諦めるのを、お前が諦めろ。うちの連中にお前を許している奴は一人もいない。」

    ライナー「そういうこった、ヒトラーさんよ。」

    一番の遺恨を持つ彼が、フェンス越しにガバナーを睨みつける。

    ガバナー「…わかった、私の負けだ。条件を飲もう。」

    ポケットからトランシーバーを取り出すと、どこかに呼びかけた。

    ガバナー「そのまま現状待機。以後は指示を待て。」

    ライナー「ゲートを開ける。両手を頭の後ろで組み、ゆっくりと歩け。」

    入ってきたガバナーの体を探る。
    武器がない事を確認すると、エレンに相槌をうった。
  5. 5 : : 2015/03/31(火) 21:11:07
    連れて行った先は看守室。縦長のテーブルを囲むように、ユミル・コニー・ナナバ・ライナーが陣取った。
    エレンの真向かいにガバナーも腰を下ろす。

    エレン「手短に行こう、話の内容は?」

    エルヴィン「そうだね、要求はシンプルだ。…その女をこちらに渡せ。」

    一変して表情を変えると、ナナバを睨みつけた。

    エルヴィン「やあナナバ、元気かい?」

    ナナバ「…」

    彼女は何も言わず、ガバナーを睨みつけた。

    エレン「仮にだ、ナナバを引き渡した後はどうなる?」

    ガバナー「君達には二度と関わらない。全てを見なかったことにしよう。」

    エレン「そうか…」



    ジャキ!

    ナナバ「なっ…」

    エレンとナナバ以外の三人がガバナーに銃を向けた。

    ガバナー「これはどういう事かな?」

    ライナー「交渉は決裂だよ、クソ野郎。」

    エレン「そんなできた話に乗ると思うか?お前の魂胆はわかっている。」

    ガバナー「一時の情に判断を任せるのはよくないな、もう一度良く考えて…」

    ライナー「ヨタ話は終わりだってんだ!」

    構えたボウガンをさらに頭に近づける。仮に彼が弓を射っても、誰も止めやしない、そんな表情をコニーもユミルもしていた。


    ガバナー(チェックメイトだ、これで…)

    ガバナー「仕方ないね、では。」


    バタンッ!

    エルド「おい、どういう事だ?!手荒な真似はやめるんだ!」

    エレン「口を出さないでくれ、こればかりは引けない。」

    エルド「とにかくみんな銃を下せ!」

    ライナー「黙ってろエルド!」

    怒声が部屋中に飛び交う。

    ガバナー「…」

    その混乱に乗じるように、ガバナーは懐から…



    「やめて!!」

    ガバナー「…?」

    ユミル「サシャ、お前は入って来るなって言ったろ!」

    サシャ「やめて下さい、人間同士争うなんて馬鹿げてますよ!」


    ガバナー(…何だ、体が動かない。それよりもこの娘は…)


    ガバナー「君は…」

    サシャ「え?」

    ガバナー「君は、誰だ?」

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    事態は思わぬ方向に進んだ。
    ガバナーは何を思ったか、無言で帰って行った。ゲートを抜ける際も、心ここに在らずといった様子であった。

    コニー「あいつ、サシャを見てから様子が変だったな。」

    エルド「なんにせよ良かった。俺は人殺しなんて反対だ。」

    ライナー「あいつを知らないから、そんな生易しい事が言えるんだ。奴に生きる資格などない。」




    サシャ「あの人…」

    エレン「何だ、知っているのか?」

    サシャ「いえ、でも…なんだか悲しそうな目をしていましたね。」
  6. 6 : : 2015/03/31(火) 21:29:18
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    〜刑務所付近の森林部〜

    ゲルガー「何だよ、話が違うぞ。一体どうしたってんだよ。」

    ガバナー「…」

    ゲルガー「おいガバナー。」

    ガバナー「少し、一人にしてくれないか?」

    様子のおかしさに皆が首をかしげる。




    ガバナー(私は彼女を知っているのか?…いや、初見のはずだ。サシャという名前に聞き覚えはない。)

    ガバナー(だがこのモヤモヤしたものは何だ?そこにいるのは、誰なんだ?)

    ガバナー「…ッ。」






    ハンジ「ちぇっ、秘密兵器は使わずじまいかぁ。この日のために、寝る間も惜しんで調整を重ねたのに。」

    ゲルガー「お前が寝ている所なんて見たことねぇよ。…しかし、ご丁寧に付近のバイター片付けて、こんなもんまで持ち込んで…一体ガバナーは何がしたかったのかねぇ。」

    トラックに積まれたコンテナをトントンと叩いた。

    ハンジ「やめてくれよ、”彼”は気性が荒いんだ。今日だって落ち着かせるのに、何人食わせたと…」

    ゲルガー「…狂ってやがるな。」

    ハンジ「ははん、私のことかな?」

    ゲルガー「世界が、だよ。時々わからなくなるよ、俺は何がしてぇんだって。」

    ハンジ「壊すって言ったろ。それが約束だ。」




    ゲルガー「ああ、エルヴィンとお前とのな。」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    刑務所では先程の件に対する話し合いが進められていた。
    当然のことながら、穏健派のエルドと意見がかち合う。

    エルド「状況は知らない。しかし今日のようなやり方には反対だ。」

    コニー「俺らはあいつに仲間を殺されたばっかりでな。どうしようもない、因縁があるんだ。」

    エルド「その事に対しては同情するよ。だが、武力による支配はどうだろうか?」

    エレン「武力だって?…俺はただ仲間を守りたいだけなんだ・」

    ハンネス「まぁ落ち着け。その意気はわかるが、俺たちは俺たちだ。奴らのようになってはいけない。」

    一行全体を取り巻くガバナーへの執着に、エルドは少し違和感を覚えていた。

    エルド「…俺たちはあんたらに拾ってもらった身だ。しかし覚えておいてくれ、超えてはいけない一線あると。」



    ユミル「はいはい、そこまでな。午後の当番を振り分けるぞ。」

    ユミル「武器庫先エリアの探索が、ライナー・ミカサ・ナナバ。物資調達がエレンと…コニーだな。」

    コニー「あ?いや、俺は見張りがあるぞ。」

    ユミル「そうだっけか?じゃあ、えっと…」

    クリスタ「私が行くわ。」

    真っ先に手を上げたのはクリスタだった。
    心なしか、どこか思い詰めた顔をしている。

    ユミル「助かるわ、頼むぜクリスタ。」

  7. 7 : : 2015/03/31(火) 22:04:38

    〜探索組〜

    ライナー「チッ、いつ来ても気味の悪い場所だ。それだけにちっとも探索が進まん。」

    ライトで辺りを照らしながらぼやく。
    エルドと揉めたのがカンにさわったのか、機嫌が悪そうだ。

    ミカサ「注意しながら進んで。」

    ライナー「わかってると、ヘマはやらん。」


    ナナバ「…いいかな、どうしてもわからない事がある。」

    ナナバ「どうしてエレンは、私を引き渡さなかったのかな?そうすれば、少なくともその場は事が済んだはずだ。」

    彼女自身覚悟はできていた、ツケを払う時だと。

    ミカサ「事情がどうであれ、仲間を売るような真似はしない。それだけの事。」

    ナナバ「仲間…私が?今回の件も、元を辿れば私が原因だ。私は死神のようなものだよ。」

    ライナー「そうだ、よくわかってるじゃないか。だからこそお前には、あいつの分まで生きる義務がある。そして、その意思を継ぎ続ける限りお前は仲間だ。」

    ナナバ「…」

    ライナー「…と、お人好しのリーダーなら言うだろうな。なぁ奥様?」

    ミカサ「その呼び方やめて、むかつく。」


    彼女も”迷っている”人間の一人だ。
    自分が生き永らえるべきなのか、何度も自問自答した。

    ライナー「おっと到着だ、気を抜くなよ。」

    未探索エリアに入り、臨戦モードにかかる。
    気配に敏感なミカサが、ドアに耳を当て様子を探る。

    ミカサ「…いる。それも複数。」

    ナナバ「いつも通り私が。ミカサはフォローに回って。」

    ミカサ「了解。」

    ライナーがドアノブに手をかけ、目でこちらに合図する。
    ナナバは刀を高く構え、神経を研ぎ澄ました。


    ガチャ

    ゲアァァッ!

    ナナバ「…ハッ!」

    対象視認からウォーカーの首が落ちるまで、わずか1秒足らず。
    すぐさま屍を乗り越えて、部屋に侵入する。


    ナナバ「…」

    アァァァ…
    ハァァァァ…


    ナナバ「まずい、退くんだ!対応できる数じゃない!」

    部屋の奥にいたのは、優に10を超えるウォーカー。
    ナナバは踵を返すと、すぐさまドアを閉め二人と共にドアを押さえつけた。


    ガンッ!

    ライナー「ぐおっ、ちくしょう!ついてねぇな今日は!」

    ミカサ「このままでは保たない!どうにかしないと…」



    ドクン…

    ツケを払う時、罰を受ける時。



    ナナバ「…合図をしたら二人は走って。私が時間を稼ぐ。」

    ライナー「おいおい、こんな時に冗談はよせ。」

    ナナバ「私が素早いのは知ってるだろ?コニーの自称ジョージア州No.1RB説よりかは、よっぽど信憑性があると思うよ。」

    ミカサ「…あなた、死ぬ気じゃないでしょうね?」

    ドクン…

    ナナバ「ああ、信じてくれ。仲間をさ。」

    ライナー「…よし、わかった。」



    ナナバ「じゃあ行くよ。1…2…今だ!」

    2人が走り出すと同時に、体が全体で扉を押さえつける。

    ガンッ、ガンッ!

    ナナバ「ぐぅ…!」

    二人に目をやると、もう既にシャッター付近まで退避していた。

    ナナバ(よし…)

    扉から体を離すと、数歩下がり刀を構えた。



    ナナバ「払ってやるよ、溜まったツケを。」









    ミカサ「はぁ、はぁ…ライナー!」

    ライナー「ああ、わかってるさ。あいつ、とんだハッタリかましやがって。」

    ミカサ「どうする?」

    ライナー「決まってるだろ、行くぞ!」

    ミカサ「ええ!」






    ザンッ!ザシュ!

    ナナバ「ハッ!…くっ、そ…」

    斬っても斬ってもキリがない。
    既に床は真っ赤に染まっていた。

    ナナバ(そろそろか、時間だね…)

    ナナバ(ねぇ、私は許されるのかな?)

    もはや逃げ場がない事を悟ると、ナナバは刀を下ろし目を閉じた。





    ミカサ「このっ!」

    ガッ!

    ナナバ「ミカサ…?あんた、なんでまだ?!」

    ミカサ「馬鹿なこと言ってないで戦いなさい!」

    ナイフをウォーカーの頭から引く抜くと、四方にベレッタを発砲した。

    ライナー「そういう事だ、ご精算にはまだ早ぇよ!これからもっとツケてやるからな、覚悟しておけ!!」

    この状況で軽口を叩きながらも、的確にウォーカーを撃ち抜く。

    ナナバ「…!」



    (お前には、あいつの分まで生きる義務がある。)


    ナナバ(わかったよ、これが私への罪だ。…そうでしょ?)

    ザンッ!

    振り下ろされた刀は、再び輝きを取り戻した。
  8. 8 : : 2015/04/04(土) 09:43:11
    〜物資調達組〜

    刑務所から西に10km行った住宅街。
    乗り捨てられた車が多数あり、どの一軒家も頑丈に補強がしてある事から、比較的最近に見放された集落である事が伺える。

    エレン「近場から順に調べていこう。俺は左、クリスタは右からだ。そんなに距離はないから、何かあったら叫べばいい。」

    クリスタ「…そうね。」

    未だに彼女の具合が気掛かりではあった。
    しかしそこには触れず、目の前の状況に集中することにした。





    ガンガン!
    ドアを数回強く叩く。

    これは音に敏感なウォーカーの習性を利用したものである。

    クリスタ(足音もしない…空家かしら?)

    スナイパーライフルを肩にかけると、ハンドガンを構え慎重に侵入した。

    クリスタ「…」

    まずはキッチンを調べる。
    調達の優先順位は、食料>電池>衣類である。

    クリスタ(ここはハズレね、パンのかけら一つない。)

    特に荒らされた形跡はなかったが、一階からは何も見つからなかった。


    ギシッ…

    上からの奇襲を警戒しながら、ゆっくりと階段を上っていく。
    まだ気を許してはいけない、二階の部屋に隠れていた、なんてことはよくある。


    クリスタ(…中にいる。)

    そのうちうめき声がする部屋にたどり着いた。
    一回深呼吸をすると、一息にドアを開け放ち中に入った。




    クリスタ「……」

    銃を構えた先にいたのは、自力では移動ができないほどやせ細ったウォーカー。
    餓死して転位したのだろう、その場で呻きことしかできない。


    アァ…ガ…ァ

    クリスタ(これは…)

    彼女には一目でわかった。体のあちこちに虐待の跡が見られたのだ。


    (お前相談所に行きやがったな?!誰のお陰で飯が食えると思ってるんだ!!)

    (…ッ!う…)

    暴力に怯える日々、忘れたはずの記憶が鮮明に蘇る。

    クリスタ「辛かったね…今、楽にしてあげるから。」

    タンッ!


    偽善だとわかっている。
    そう、こんな事で心を痛めて自分を許したつもりか?

    (許せないことなんてないだろ?)

    拳をぐっと握りしめた。
    一筋の血が、滴り落ちるまで。

  9. 9 : : 2015/04/07(火) 06:26:11
    期待です

  10. 10 : : 2015/04/07(火) 14:56:52
    エレクリさん

    ありがとうございます!
  11. 11 : : 2015/04/08(水) 00:57:17

    エレン「無事だったかクリスタ。どうだ、収穫はあったか?」

    エレンは一足先に探索を終え、リュック一杯に物資を詰め込んでいた。

    クリスタ「…いえ、何もなかったわ。荒らされた後だった。」

    エレン「まぁいいさ。こっちは大漁だったんだ、気にするな。」

    本当はあの部屋にずっといたのだ。
    何を考えるでもない、虚空を見つめて。

    エレン「さぁ帰ろう、もうここには用はない。」


    クリスタ「…」

    エレン「クリスタ?」

    車まで来て振り向くと、彼女はまだ遠くにいた。



    クリスタ「エレン、私ね。あの時あなたの指示が無くても、ガバナーを撃つところだったの。」

    エレン「おい、何を言って…」

    クリスタ「自分への負い目や、ベルトルトの仇というのもあったのかもしれない。でも結局は、私がただそうしたいだけだった。理由なんてきっとない。」

    彼女の目は真っ直ぐであった。
    いつかの親友と同じように。

    クリスタ「あの時撃っていたら、誰かが死んだかもしれない。…フランツ、ミーナ、ベルトルト。みんな私のせいで死んだ。」

    クリスタ「だから私はもう…」

    エレン「お前一人のせいじゃない、何度も言っただろう。」

    クリスタ「エレンは言ったよね、許されるべきじゃない人間なんていないって。でも私は許してもらっても、きっとまた同じ過ちを繰り返す。」

    エレン「人間とはそういうものじゃないか。だから支え合うんだろ?」

    クリスタ「私は気付いてしまったの、自分の中の激情に。」




    クリスタ「…だから、言いなさいよ。」

    まだ自分を肯定しようとするエレンに、クリスタは感情を露わにした。

    クリスタ「出て行けって言いなさいよ!!その一言だけでいいから!」

    もう彼女は今までの彼女じゃなかった。

    エレン「…仮にに俺がそう言ったら、お前は全て納得がいくのか?それでお前は救われるのか?」

    クリスタ「あなたには関係ないわ、私個人の問題。」


    引き止めたかった。
    それは同情としてではなく、自らの矜持のため。

    そう、守ると決めたあの時から。



    エレン「出て行ってくれ、俺たちはもう一緒にはいられない。」

    クリスタ「…エレン、いままでありがとう。貴方達に出会わなければ、私はきっと今生きてはいないわ。」

    クリスタ「ライナーや、みんなにもよろしく。」


    先程までとはうってかわり、いつもの笑顔でそう言った。

    エレン(やめろよ、そんな見え見えの無理をするなよ。)

    エレン(止めろ、止めるんだ。今ならきっと間に合う。)


    クリスタ「大丈夫、もう私は弱くない。ライナーの教えで生きていける、きっと。」

    エレン「…ッ。」

    エレンは何も言わず、クリスタと抱き合うと車でその場を去っていった。
    そうすることしかできなかった。
  12. 12 : : 2015/04/08(水) 01:08:39
    ーーーーーーーーーーーー

    〜理想郷〜

    机の上の写真立てを手に取る。
    しかし彼の顔は冷静でもなく、忘却でもなく、”虚無”だった。

    ハンジ「いつまでそうしているの?」

    ガバナー「珍しいな、君が研究室から出てくるなんて。」

    ハンジ「二人が懐かしくなったのかい?」

    ガバナー「おかしな事を言うな、ついに頭までやられたか。私は天涯孤独の身だ。」



    ハンジ「…えっ?」

    この男はその手のジョークは言わない。
    忘れたのは記憶ではなく、存在なのだから。どうも様子がおかしい。

    ハンジ「まさか、◯◯と◯◯だよ。あなたの妻と娘じゃないか。」


    ガバナー「…誰だ、それは?」

    ガバナー「所で君は、この写真に写っている彼女達を知っているか?これは間違いなく私だと思うんだが、どうもこの女性たちに覚えがない。」

    本当に知らない、彼の反応はそのものだった。

    ガバナー「まぁいい。それよりもだ、私はまたサシャという少女に会いたい。」

    ハンジ「はぁ?何言ってるんだ、あなたはあそこを壊すって…」


    ガバナー「会いたいんだ、サシャに。」

    ハンジ「…」
  13. 13 : : 2015/04/09(木) 19:13:25
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    コニー「おぉ、これは大量だな。特に電池はありがてぇ。」

    エレンが持ち帰った物資に皆が群がる。


    ライナー「なぁエレン、クリスタはどこだ?今日は接近戦を教える約束をしているんだが…」

    エレン「あ、あぁ。具合が良くないって、先に棟に戻ったぞ。」

    ライナー「そうか、なら今日はお預けだな。」

    エレン「…ライナー、ちょっと来てくれ。」

    皆の注意を引かぬよう、彼の腕を引っ張りそそくさと庭の隅に向かう。




    ライナー「おいおい、どうしたんだ?積極的なのは結構だが、相手を選べよ。」

    彼の軽口には反応せず、黙って向き合った。


    エレン「クリスタは出て行った。」

    ライナー「…あ?具合が悪いんじゃなかったのか?街に忘れ物でもしたのか。」

    まだ現状を把握できていないライナーの笑顔が酷く眩しい。



    エレン「彼女はもういない、自分の意思で俺たちから離れた。」

    ライナー「…お前は何も言わず許可したってのか?」

    エレン「ああ…俺が追い出した。」

    ガシャン!

    胸倉を掴み、エレンをフェンスに押し付ける。

    ライナー「出て行きたいだって?お前は、はいそうですか、と流されるままだったのかよ?!」

    エレン「彼女自身が望んだ事だ、俺にはどうしようもなかった!」

    ライナー「…くそ!」

    彼はエレンから手を離すと、両手で顔を覆いその場を行ったり来たりした。

    ライナー「わかってる、わかってるよ。お前の事だ、必死に引き留めたんだろ?」

    エレン「すまない、俺の力不足だ。」

    ライナー「なぜ、現実と向き合う事から逃げようとするんだ。立ち向かう勇気と度胸だって、クリスタにはあった。」

    エレン「…それは違うぞ。」



    エレン「彼女は全てを分かった上で、別の道を行く決心をしたんだ。それがどれだけ勇気の要る事か、お前ならわかるだろう?」

    ライナーは必死に自らに何かを言い聞かせ、やがて呼吸を整えた。

    ライナー「大丈夫だ、クリスタは一人でもきっと生きていける。戦う術を教えた、ベルトルトだって見守ってくれている。」

    ライナー「そうだろ、エレン。」

    エレン「…」


    ライナー「頼むよ…そうだって言ってくれよ…」

    静かに涙が頬を流れ落ちる。
    それが地面に落ちてから、エレンはようやく言った。


    エレン「クリスタは大丈夫だ。きっと…」












    許せないことなんてないよ、それはきっとライナーが許したくないだけ。


    罪を償う。きっとその先に、またお互いの道が交わることを信じて。



    クリスタ「行ってきます。」

    小さい体に大きな業を背負い、彼女は歩き出した。





    自らを許せた人間、許せなかった人間、逆に自らを罰した人間。
    どんな形であれ、行き着く先は同じだろうか?

    彼らは人間らしくあろうとする。

    この秩序も規律もない世界で。


    season3 ep4 end
  14. 14 : : 2015/04/09(木) 19:34:58

    次回予告

    「で、私達の天使はどこだい?」

    「自分の事くらい、自分で決めたい。」

    「毒に蝕まれていく。知らず知らずの内に、真っ黒に染まる。」



    season3 ep5 孤独な王

  15. 15 : : 2015/04/09(木) 19:39:07
    今回は珍しく一つのエピソードで、一つのテーマに沿って書いてみました。

    個人的に大好きなナナバに、意味を持たせたくて書いたシーンはかなり試行錯誤しました。
    クリスタの選択は正しかったのか、間違っていたのか。それは本人のみ知るところです。



    感想などよろしくお願いします。
  16. 16 : : 2015/04/10(金) 15:19:55
    頑張ってください‼︎
  17. 17 : : 2015/04/11(土) 15:15:38
    面白すぎです!
    これからも頑張ってください!
    期待です!
  18. 18 : : 2015/04/11(土) 16:29:48
    名無しさん

    ありがとうございます!
  19. 19 : : 2015/04/11(土) 16:30:16
    名無しさん

    ありがとうございます!
    そう言ってもらえると嬉しいです!
  20. 20 : : 2015/04/14(火) 21:43:21
    次作です。
    http://www.ssnote.net/archives/33937
  21. 21 : : 2015/04/24(金) 16:21:35
    面白かったです!! 私もナナバ大好きなんですよ!あっ、後エルヴィンも大好きです♪ 次も頑張ってくださいね(私もSS書いているので、ぜひ読んでください。面白いかどうかわかんないですけど…)
  22. 22 : : 2015/04/25(土) 05:31:43
    快さん

    ナナバ好きとは気が合いますね。
    ありがとうございます。大分長編の作品ですが、是非見守ってやってください。

    ユーザー登録はされていないのですね。
    よければ私のグループにいらっしゃって下さい。そこにURLなど貼っていただければ、ぜひ拝見させていただきます。

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kazumax

ジョン@四聖剣とは虚名にあらず

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