このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
進撃のウォーキングデッド season3 ep3 逃避行
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- 1 : 2015/03/10(火) 12:05:41 :
- 前回の続きです。
http://www.ssnote.net/archives/31808
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- 2 : 2015/03/10(火) 23:53:27 :
- 期待です!
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- 3 : 2015/03/11(水) 00:08:21 :
- 期待ありがとうございます!
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- 4 : 2015/03/11(水) 00:20:34 :
- 静かな夜道をアメリカンバイクが走り抜ける。
辺りはすっかり暗くなり、バイクのライトのみが道を照らしていた。
クリスタ「飲酒運転だよ。」
ライナー「まだ法が適応されるならな。だが人がいてこその法律だ、裁く人間がいないんじゃ、そんなものはクソの役にも立たない。」
クリスタ「…だったら私がその役をやるわ。」
ライナー「ハッハッハッ!冗談きついぜ!」
意地になって一緒に飛び出したものの、どうすればいいかわからなかった。
クリスタ「大体バーなんてどこにも…」
ライナー「あるさ。偵察の時に見つけた。」
クリスタ「ハァ…。ねぇ、本気?」
ライナー「本気も本気、大本気だ!」
フォー!!と初めてバイクに乗ったティーンエイジャーのように、騒ぎ立てる。
クリスタ「何かイージーライダーみたいね!二人だけの逃避行ってのもいいかも!」
ライナー「いい子ちゃんには無理だぜ、せいぜい優等生を…」
クリスタ「やめた!もう、全部やめた!!」
クリスタ「フォー!!」
彼女もライナーに続いた。もう何が何だかわからなかった。
でも二人共それで良かった、いつまでもこの一本道が続いてくれればいいと思った。
ライナー「na-na-na-heyhey…」
クリスタ「goodbye♪」
欲望のままに、全てを出し切るように
二人の男女が夜空に吼えた。
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- 5 : 2015/03/11(水) 01:13:31 :
- やっと追い付いた!
期待です!
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- 6 : 2015/03/11(水) 17:11:51 :
- かきくさん
星ありがとうございます!
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- 7 : 2015/03/12(木) 21:06:54 :
- ーーーーーーーーーーー
エレン「とりあえずタイア跡を辿ろう。」
暗い中の捜索に反対する者もいたが、ミカサとベルトルトの説得もあり、説き伏せた。
ハンネス「こっちは任せろ。」
ユミルとコニーも目で合図する。
ナナバの事はまだ気掛かりだったが、少なくとも害を及ぼす人間ではないだろう。
そうして3人で車に乗り込み、役を10分。
エレン「もっと早くに殴り合っておくべきだったのかもな。いや、あいつは俺をずっと殴りたかったんだろう。」
ミカサ「ライナーは相当我慢をしていたのね。」
エレン「だからこそわかる、今はあいつの気持ちが。」
握りしめた両手に力がこもる。
ベルトルト「…少し昔話をしようか。」
エレン「どうした、急に。」
ベルトルト「いや、ふとそうしたくなってね。聞いてくれよ。」
後部座席の二人は黙って頷いた。
ベルトルト「ライナーが退役軍人なのは知ってるね?その後、彼は酒に逃げる生活を送っていた。みかねた僕とアニは、彼の元を訪れた。
ーーーーーーーーーーーーー
バンっ!
アニ「やっぱりここだったね。昼間っから酒かい?」
馴染みのバーで、彼は黙々と飲み続けていた。すでにカウンターにはウィスキーの空き瓶が数本。
ライナー「…」
返答はせず、当たり前のようにラッパ飲みを続ける。
アニ「何とか言ったらどうなのさ、このアル中!」
ベルトルト「ま、待てアニ!落ち着け!」
ライナー「俺が酔っているように見えるか?」
やっと返ってきた返答は、あまりにも拍子抜けする内容だった。
ベルトルト「当たり前じゃないか、バーボンをそんなに開けたら…」
ライナー「…」
無言で二人の前に立った。
ライナー「酔えないんだよ、どんなに飲んでも。今日だってずっと素面のままだ。」
アニ「冗談はいい加減に…っ!」
彼女の渾身の蹴りを軽く防ぐ。
バーに仲間と赴くと、アニに転がされるのが日常の光景となっていた。
しかし、彼はそれを防いでみせた。
ライナー「本当なんだ、ちっとも気持ちよくねぇ。俺が飲んでいたのは実は水なのか?」
アニ「あ…」
ライナー「逃げたくても、それさえ許されん。なぁ、俺が一体何したってんだ?」
ライナー「空っぽだ。俺の正義は空っぽになっちまったんだよ…」
妹にすがるようにうなだれる彼は、小さく見えた。
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ベルトルト「前にも話したが、ライナーは弱い人間だ。その後精神状態が安定するまで、1年以上かかった。」
ミカサ「それは知らなかった。彼は頼れる兄貴的存在に思えたから。」
ベルトルト「それでも君たちと知り合って、あいつは変わった。特にクリスタによる影響は大きい。守るべきものを見つけたことで、正義の”中身”を取り戻したんだ。でも僕はそんなあいつが…」
ベルトルト「大嫌いだ。」
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- 8 : 2015/03/13(金) 14:21:20 :
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ライナー「やあ、お嬢さん。ご注文は?」
バーカウンターに潜り込み、振りもできないくせにシェイカーを鳴らしてみせる。
クリスタ「そうね…XYZを。」
ライナー「生憎だったな。ここにはそんな洒落たもんはない。」
何それ、と含み笑いをするクリスタにグラスを差し出した。
ライナー「当店のスペシャルでございます。」
クリスタ「ラム?」
ライナー「ああ、レモンハートデメララ。これが一番好きなんだな。」
クリスタ「ふーん、ラム好きなんて意外。てっきりバーボン派かと。」
ライナー「…昔ちょっとな。ラムはいい、まろやかな甘みの中にもズッシリとした重さがある。」
目を細め、グラスを傾ける。
クリスタ「スピリッツの中ではメリハリがあるよね。辛口のジンもいいけど、一番ロマンがある。」
ライナー「お、違いが分かるのか?俺の記憶によると、ATLLでは控えめじゃなかったか?」
クリスタ「…私、酒に逃げていた時期があったの。丁度夫の暴力が始まった辺りね。町中のバーの酒を、片っ端から飲んでやったわ。」
レモンハート独特の、琥珀色のラベルをボーッと眺める。
ライナー「それは初耳だ。お前はそういったことはやらないかと。」
クリスタ「びっくりした?でもそれが本来の私。そう、いつも思ってた。いい子にならなきゃって。」
クリスタ「でもあなたと出会って変わることができた。」
酒を注ごうとするライナーの手を取る。
しばらくその状態が続いたが、やがてクリスタが離した。
ライナー「それを言うなら俺も同じだ。以前の俺は空っぽだったんだ、中身が伴わないエゴの正義感の塊だった。」
ライナー「だがお前を見て思った。こいつは俺と同じだ、だから弱いところもひっくるめて守りたい。そうして俺の正義は”中身”を得た。」
クリスタ「…やっと酒が回ってきたんじゃない?刑務所ではさっぱりだったのに。」
ライナー「いつから気付いてた?」
クリスタ「最初っからよ。酔ったふりだって、私にはわかった。」
ライナー「…軍を辞めた時に同じ状態になった。もう克服したはずだったのにって。でもそいつは俺の杞憂だったようだな。」
グラスを傾け、中身を飲み干す。
ライナー「色々溜まってたんだろうな。だが今はこの味がわかる、ロマンの味だな。」
棚からオールドクロウのボトルを取り、別のグラスに注いだ。
ライナー「今ならこいつもやれるかな。…なぁ、なんでついてきた?」
クリスタ「最初は義務感から。でも、もうどうでもよくなった。」
クリスタ「ねぇライナー。このままどこかに二人で、全てを忘れて、思いの向くままに…」
ライナー「ああ、それもいいかもな。アメリカ大陸横断ツアーなんてどうだ?このままメキシコまで南下して…」
クリスタ「いいわね!島国を経由して、ブラジルとかチリにも行こう!それで…」
次々出るアイデアに、思わず胸が膨らむ。
ライナー「その後は、どこかでジェット機をこしらえよう。ヨーロッパで世界遺産にご挨拶だ!」
クリスタ「うん、うん!いいね、きっと楽しいよ!そうできたら、いいね…」
急に声のトーンが落ちると、目元を拭った。
ライナー「…クリスタ?」
クリスタ「…きない、できないんだよ…」
クリスタ「行きたいよ。でもそんな事無理だって、あなたもわかってるでしょ?」
ポロポロとグラスに涙が零れおちる。
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- 9 : 2015/03/14(土) 23:25:16 :
- グループ内に番宣を作りました。
これはレンタル派の人にしかわからないかもですが、パッケージの裏にかいてあるエピソード紹介的なやつですww
是非ご覧下さい。
http://www.ssnote.net/groups/1051
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- 10 : 2015/03/17(火) 19:29:58 :
- クリスタ「どこへ行ったってウォーカーがいる。どこへ行ったって世界は終わりなんだよ?!」
ライナー「そんな事はない!どこかに安息の地が…」
首を横に振り、真っ直ぐライナーを見据える。
クリスタ「現実を見よう。イージーライダーごっこは、二人っきりの逃避行は終わり。」
ライナー「違う、これは現実なんかじゃない!俺は…」
クリスタ「ライナー!!」
ライナー「…!」
彼はグラスになみなみオールドクロウを注ぐと、一気に飲み干した。
しばらく右手で顔を覆い、そのままでいたがやがてゆっくりと目を開けた。
ライナー「…きついな、これは。」
ブロロロロ…
ライナー「!クリスタ、こっちに!」
車のエンジン音に気付き、すぐさまボウガンを構え、クリスタをカウンターの中に隠した。
ゲルガー「ヒュウ♪凄え数だな!」
ライナー「動くな!」
ゲルガー「人数を見て言えや、お前が動くな。」
ライナー「!」
ゾロゾロと10人以上がバーの入り口に陣取った。
ガバナー「すまないね。危害を加える気はない。質問をしたいだけだ。」
ライナー「質問?」
ガバナー「日本刀を背負った、ショートカットの女を見なかったか?」
ライナー「?」
ライナー(何だ、ナナバの事か?だとしても何故彼女を追っている?)
ライナー「いや、知らないな。生憎一人が好きでね。」
眼帯の男はクスリと笑い、カウンターの方まで歩いてきた。
ライナー(?!クリスタ、もっと奥に…)
ガバナー「例えばの話だ。ライオンは狩の際大きい獲物を仕留めれば、小動物の1匹くらいは見逃すだろう。」
ライナー「…」
ガバナー「本当のことを言いたまえ、救いたいものがあるならばな。」
ショットガンをクリスタのいる角度に向けた。
クリスタ(…)プルプル
ライナー「…いいだろう、その女の居場所を知っている。」
ガバナー「それはありがたい。こっちに来て地図を書いてくれないか?」
ライナーはクリスタの方を一瞬見やると、無言でカウンターを出た。
ガバッ
いきなりのことだった。ゲルガーが彼を押さえつけると、ガバナーが絞め落とした。
ライナー「ぐぅ!がっ…」
ガバナー「車に運べ。」
クリスタ(…!)
必死に口を抑え、縮こまることしかできなかった。
しばらく視線を感じたが、やがてエンジン音と共にそれも消えた。
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- 11 : 2015/03/17(火) 19:52:24 :
- ベルトルト「あれは…間違いない、あそこだ!」
シャドウが止まっているのを見つけ、すぐさまバーに駆け込む。
ベルトルト「ライナー!」
しか店内はもぬけの殻であった。
エレン「いないのかライナー、クリスタ!」
ガタッ
ベルトルト「!」
エレンの制止も聞かず、カウンターの中に滑り込む。
クリスタ「…」
ベルトルト「君一人か?」
クリスタ「全部、私のせいなの。全部…」
当のクリスタは頭を抱えうずくまるばかりで、こちらの声さえ届いていない様子だった。
ベルトルト「黙ってちゃわからないだろ!ライナーはどこだ!」
業を煮やしたベルトルトはクリスタの胸倉を掴みあげた。
ミカサ「落ち着いて!…クリスタ、ゆっくりでいいから話して。ライナーは?」
泣きじゃくる子供をあやすように接すると、彼女は徐々に口を開いた。
クリスタ「連れて行かれた。私は隠れるように言われて、相手の姿は見ていない…」
エレン「何て事だ、どうする?」
ベルトルト「…一旦戻ろう。相手を探すにしても、今のままじゃどうもできない。」
ベルトルト(自己犠牲。それが君の正義なのか?)
ーーーーーーーーー
ユミル「…親父、ゲートの準備を!」
ハンネス「おう、わかった!」
ユミル(車一台だと…ライナー達はどうしたんだ?)
コニー「エレン、ライナーはどうしたんだ?」
エレン「皆を広場に集めてくれ、すぐにだ。」
コニー「あ、あぁ。」
誰もがことの仔細を聞きたそうな顔をしている。
それもそのはず、戻ったのは膝を抱えるクリスタ一人なのだから。
ベルトルト「単刀直入に言う。ライナーは何者かに連れ去られた。」
ハンネス「何だって?」
エレン「何でも集団に囲まれたらしい。それで自分を身代わりにしたんだ。」
クリスタ「…」
コニー「そんな、これじゃあ八方塞がりじゃんか。何か手掛かりはないのかよ?」
ミカサ「クリスタは顔を見ていない。」
コニーはクソッ、と悪態をつき空き缶を蹴り上げた。
ボーッと宙に視線を泳がせたいたクリスタだったが、ナナバを捉えると目を丸くした。
クリスタ「そういえば…少し会話が聞こえた。ショートカットの日本刀を持った女、って。」
ベルトルト「ショートカット、日本刀…」
全員の視線がナナバに集中する。
エレン「お前が、どこかの集落にいたって言ったな。何か知ってるんじゃないのか?」
ナナバ「…」
ベルトルト「話すんだ、これはお願いじゃない。命令だ。」
ブローニングをナナバに向ける。
ナナバ「…わかった。白状するよ、隠し事をしていた。」
溜息をつくと、彼女は語り出した。
ナナバ「ここからそう遠くない。街を要塞化した集落がある。理想郷っていうふざけた名前さ、100人程度がそこで生活している。」
ユミル「マジかよ?嘘だろ…」
ナナバ「そこにはヒトラーに負けずとも劣らない独裁者がいてね。彼が統治している、ガバナーってこれまたふざけた名を自称してね。」
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- 12 : 2015/03/17(火) 20:16:32 :
- コニー「そこにいたってわけか。でも何で追われてる?ソリが合わなくてって言ってたよな?」
ナナバ「ある日全ての秘密を知ったんだ、彼と街の狂気に触れてね。むざむざ殺される訳にもいかない、この刀でガバナーの目を突き刺し、逃げ出した。」
ベルトルト「そのガバナーがどんな奴でも関係ない。理想郷に案内できるのか、できないのか?」
ナナバ「案内はできるけど、どうするつもり?」
ベルトルト「どうするかって?そんなの決まってるだろ。」
ベルトルト「ライナーを救い出す、それだけだ。」
ーーーーーーーーー
ここからの行動はあっという間だった。
ベルトルトの指示のもと、救出班が結成され看守室から銃器をかき集めた。
この間、わずか一時間。
ベルトルト「弾丸は必要以上に持たないように。人殺しをする訳じゃない。」
クリスタ「…」
ベルトルト「…何か?君は留守組のはずだ。」
クリスタ「意地でもついていくわ。車に乗せてもらえないのなら徒歩で、銃をもらえないのなら素手で。」
ベルトルト「聞いてくれ、僕は君を恨んでいるわけじゃない。ただ君が危険な目に合うのを、ライナーは承知しないはずだ。彼のしたことを無駄に…」
クリスタ「何度言わせるの…」
ベルトルト「は?」
クリスタ「何度言わせるの?!連れてけってんだよ、この野郎!!」
ーーーーーーーーーー
留守組のミカサとコニーがゲートを開ける。
コニー「いいのか、こんな急な作戦で…」
ミカサ「人数はいらない。ベルトルトがそう言うのだから、彼を信じよう。」
コニー「でもよ、もしもの事があったら…」
ミカサ「もう彼は止められない、誰がなんと言おうが止まらない。仮にユミルがライナーの立場だったら、コニーは躊躇するの?」
監視塔のユミルを見やる。
コニー「しねぇな、多分。」
ミカサ「そう、人間なんてそんなんもの。正しいか、間違ってるかなんて大して関係ない。重要なのは、自分がどうしたいか。そして…」
ミカサ「ベルトルトの正義とは、そういうことなのだろう。」
車に乗り込んでいるのはエレン、ナナバ、ハンネス。そしてクリスタ。
彼女はエレンらの説得にも頑として動かなかった。
今は真剣に銃の手入れをしている。
ベルトルト「いい感じの暗さだ、夜襲には御誂え向きだ。いいかい、僕が陽動をやる。合図があるまで待機してくれ。」
エレン「その間に、俺らがライナーを探したほうがいいんじゃないのか?監禁場所の目安はついてるんだろ?」
ナナバ「ああ、それはほぼ間違いない。」
ベルトルト「ダメだ、ここは僕に従ってくれ。ポイントで指示を待て。」
彼の目には助けたい、その他に怒りのような感情が見えた。
エレン「お前大丈夫か?その、ライナーに劣情でもあるのか?」
ベルトルト「劣情?そんなものあるものか。ただ僕はずっと彼に対して我慢をしてきた、知り合って25年間ずっとね。今度こそ、それをいってやろうと思うよ。」
ハンネス「まぁ今は上手くいくことだけを考えよう。人は殺さない、揉めない、ライナーは救う。無茶難題に思えるが…」
クリスタ「それでもやる、無茶だろうがなんだろうが。そうでしょ?」
ベルトルト「…その通りだクリスタ。」
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- 13 : 2015/03/17(火) 21:48:01 :
- ーーーーーーーーーーー
ガバナー「急げ、非戦闘員を避難させろ!」
ジャン「行くぞ、今しかチャンスはない!裏口から…」
アニ「ああ!」
ゲルガー「くっ!待てテメーら!!」
ガバナー「放っておけ、それより敵の数は?!」
ゲルガー「そ、それが…」
ダダダダダ!!
ガバナー「くっ!」
装甲車をいつの間に奪取したのか、ガトリングを辺りに撒き散らす。
ベルトルト「…」
そのまま装甲車で門の穴を塞ぐと、次の行動に出た。
ガシャ!
ゲルガー「みんな隠れろ、催涙弾だ!!」
自らはマスクを着用すると、2つのソフトボール状の物体を山なりに投げた。
「ゴホ、ゴホッ…くそ!」
逃げ遅れた住民がモロに煙を浴びる。
ベルトルト「…」
「がっ!
「ぐあっ!」
視界を奪われ、背後からの急襲にあっという間にのされていく。
ベルトルト(よし、そろそろ合図を…)
ベルトルト「?!」
視界が晴れると、驚きの光景を目にした。
拘束され、膝をつくライナー。尋問の跡か、顔は腫れあがっていた。
そして頭には銃が突きつけられている。
ガバナー「動くな。これは脅しじゃないよ、わかるね?」
ベルトルト「くっ…!」
スキがない、そして彼が知りうる限り非常にまずいパターンだった。
この手の男に、揺さぶりは通用しない。ナナバの話を聞き、ある程度の対策は立てたがここまでの男とは思わなかった。
ガバナー「武器を全て捨て、腹ばいになれ。両手は頭の上に。」
ベルトルトは従うままに伏せた。
ガバナー「拘束し、二人まとめて広場へ。”公開裁判”を行う。」
ハンネス「おいおい…まずいんじゃねえか?!早々に突入した方が…」
エレン「まだだ、あいつは合図を待てといった。本当にヤバいなら、とっくにサインを出してるはずだ。」
ナナバ「まさか人質を自ら突き出すとはね、完全に誤算だった。」
建物の屋上から双眼鏡で様子を伺う。
クリスタ(ライナー…)
ライナー「…」
ベルトルト「…」
二人は研究棟前の広場に連行された。
互いに背中合わせに座らされ、住民たちが周りを囲う。
ガバナー「諸君、彼らはこの理想郷を壊さんとした侵略者たちだ。さて、どんな罰がふさわしいか?」
「門に穴を開けやがった…メインストリートまで侵入を許したらしいぞ。」
「生かしておけばまたいずれ…」
「殺すべきじゃないか?そうだ、処刑だ!」
処刑!処刑!処刑!処刑!
ガバナー「民衆はそう言っているが?」
優越の表情で二人に問いかける。
ライナー「やるならやれ、覚悟はできている。」
ガバナー「潔くて良いね。安心したまえ、私は慈悲深くてね。”殺し”はしないよ。」
近くの倉庫を解き放つ。
ガァァァ!ギャアッ!
鎖につながれた数体のウォーカー。まるで犬の手綱でも握るように、2人の近くまでけしかける。
ライナー「…なんで来た。」
ベルトルト「君を殴りにね、ただそれだけだ。」
ライナー「いいか、俺が隙を作る。その間に…」
ベルトルト「ふざけるな!一丁前にヒーロー気取りかよ?!反吐が出るんだよ、君のしみったれた正義感には!!」
所構わず仲間割れをはじめる二人にガバナーが言う。
ガバナー「転移ギリギリまで追い詰めて、洗いざらい吐かしてやる。その後は時間経過を楽しみたまえ。」
ライナー「…だってよ、どうする?」
ベルトルト「僕はずっと君が気に食わなかった。自分ばかりを犠牲にして…」
ライナー「なら俺も言わせてもらう。自分ばかり汚れ役に徹しやがって…」
ライナー「でもそんなお前が…」
ベルトルト「ああ、そんなお前が大好きだ。」
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- 14 : 2015/03/17(火) 22:26:02 :
- 言い終えると、2人の縄が突如切れて落ちた。
ガラスの破片が手から滑り落ちる。
ベルトルト「行こうか、兄弟!」
呆気にとられる住民から銃を奪うと、ベルトルトは合図を出した。
エレン「ようやくだな!撃て!」
エレンらが屋上から援護射撃を行う。
ゲルガー「く、くそ!まだ仲間がいたのか、逃がすな!」
ライナー「おい。」
ゲルガー「あ?…ぐおっ!!」
膝蹴りを入れると、そのまま大外刈りで叩きつけた。
ライナー「返しやがれ、これは俺のものだ。」
ボウガンをゲルガーから取り返すと、二人は次々に包囲網を突破していく。
ライナー「ベルトルト、もう少しだ!車まで行けば…」
タンッ!
ライナー「…え?」
ベルトルト「があっ…!!」
後方を振り返ると、ベルトルトが腹部を撃ち抜かれ倒れるのが、スローモーションで見えた。
サムエル「くそ、勝手しやがって。」
目を血走らせた男が、トドメを刺さんと、ベルトルトに銃口を向ける。
ライナー「やめろ!!」
ベルトルト「来るな!」
サムエル「うぉっ…!」
相手の虚意を突き、急に起き上がるとサムエルをねじ伏せた。
ベルトルト「お前ら来るんじゃない!頭を撃ち抜くぞ!」
ガバナー「…」
ベルトルト「これは脅しじゃない。わかるね?」
ガバナー「フン、やってくれるじゃないか。」
想定外の出来事にエレンらも駆けつけた。
クリスタ「ベルトルト、あなた…?!」
彼の腹部からはとめどなく血が溢れ出ていた。
誰がどう見ても重症だ。
ベルトルト「エレン。ライナーを、みんなを頼む。」
エレン「頼むってお前…」
ベルトルト「いいから行け!!」
エレン「…ッ!」
エレンとハンネスはライナーを羽交い締めにすると、車まで引き摺った。
ライナー「離せ、離してくれ!まだベルトルトが…」
エレン「すまん、ライナー…!」
ライナー「離しやがれ!!ベルトルトォー!!!!」
ナナバ「すぐ出すよ、いいね?」
装甲車はどかされ、ナナバが車をスタンバイしていた。
ガバナー「…!!」
ナナバ「…」
二人は視線を合わせると、お互いに憎しみの眼差しを露わにした。
ベルトルト「ライナー、君は生きろ…」
ガバナー「味方に見放されたか、あっけないものだな。さあ、どきたまえ。私はあの女を追わねば…」
タンッ!
ガバナー「なっ…」
拘束していたサムエルの頭を撃ち抜くと、彼の体を立て代わりにし、ガバナー達に突っ込んだ。
ベルトルト「うおおおおおおおおお!!!」
タンッ、タン!!
ガバナー「この後に及んで抵抗を…!構わん、サムエルごと撃て!」
ダダダダダ!!
ベルトルト「がっ…があああああ!!」
ゲルガー「くそ、なんて奴だ!早く死ねよ!」
ダンッ!
ベルトルト「う…あ…」
ガバナー達の2m手前でベルトルトはようやく力尽きた。
ゲルガー「化け物かよ…ん?この制服は、アニの奴と一緒じゃ…」
ベルトルト(ア…ニ?そうか、彼女は生きて…)
せめてもの救いだろうか。満足げな顔で、彼は逝った。
ガバナー「研究棟に運べ。それと門の修繕、被害状況の報告を急げ。」
ゲルガー「了解した。だが奴らを追わなくていいのか?」
ガバナー「気が変わった。いずれ追い詰めるさ、あの女も連れの仲間たちにも…これ以上ない地獄を見せてやる。」
眼帯を取ると忌まわしげに傷口をさすった。
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- 15 : 2015/03/17(火) 22:32:31 :
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車内でしばらく暴れていたライナーだったが、急に大人しくなり頭を抱えていた。
エレン「…ベルトルトを見捨てたのは俺だ、好きなだけ殴っても構わない。」
ライナー「肺を撃たれたんだ、どの道長くは保たなかった。」
ライナー「それよりも、だ。勝手に飛び出して悪かった、誰が悪いといえば俺の責任だよ。自業自得だな。」
ライナー「あいつ言ってたろ?俺が嫌いだって。その言葉そっくり返すぜ、俺もあんな奴…」
クリスタ「…ライナー、もういいの。それ以上自分を責めたらあなた壊れちゃう。」
そっとライナーを抱きしめた。
ライナー「はは…このクソみたいな世界で生きてこれたのは、ベルトルトがいてくれたからだ。じゃなきゃこんなロクデナシは…」
クリスタ「ライナー!!もういい、もういいよ…!」
ハンネス「…」
ナナバ「…」
エレン「もう一度言う。すまん、ライナー…」
ライナー「くっ…う…わ、あああああああ!!!』
ダムが決壊したようにクリスタの胸を濡らす。
誰もが耳を塞ぎたくなるような悲痛な叫びだったが、誰もが黙って受け止めた。
エレン(ベルトルト、わかったよ。今わかった、俺のやるべき事が。)
エレン(みんなを守ってみせる、俺が守る。どんな手を使ってでも。)
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- 16 : 2015/03/20(金) 01:36:10 :
- 〜三ヶ月後〜
「んしょ、んしょ…これは大物のにおい。」
「むおっ、ハンネスー!豊作ですよ、これベイクドポテトにしましょう!」
ハンネス「ご苦労様だな、サシャ。その調子で頼むぞ。」
この三ヶ月で一行は力を蓄えた。
食物の栽培を始め新たな仲間も加わり、心身ともに回復していった。
「エレン、ナナバとライナーが戻った。医療品の収穫があったらしい。」
エレン「ああ、ありがとう。何か生活で困っている事はないか、エルド?」
エルド「不満なんてあるものか。ここは素晴らしいよ。」
この2人の兄妹は一月前に街で保護した人間だ。
エルドは元NFLの選手ということもあり、力仕事やウォーカーの駆逐に力を発揮している。
サシャはまだ15歳と若いが、この悪環境にめげることなく、たくましく生きてきた。
クリスタ「…」
スナイパーライフルを携え、黙々と周辺を警戒する。
監視塔に立つ小柄な彼女には、おおよそ不釣り合いな銃をだった。
ユミル「交代の時間だ、休みな。」
クリスタ「あら、もうそんな時間?」
ユミル「しかしよくそんな大きいもん扱えるよな。」
クリスタ「…ベルトルトが遺したものだから。ライナーも、俺には扱えないっていうから、必死に使い方を覚えたの。」
彼女なりの贖罪なのだろう、最近ではかなりの腕前を見せるようになった。
ユミル「あれからずいぶん経ったな…」
クリスタ「…そういえば、コニーの猛烈アタックに答えたんだって?」
ユミル「私もな、色々考えた結果なんだよ。そう茶化すなって。」
クリスタ「幸せになりなさい、世界がどうとか関係ない。2人の愛が続けばそれは偶然じゃなくて、必然になるの。」
参ったな、とぼやき頭を掻くユミル。
そう今まででは考えられない程の穏やかさが、そこにはあった。
失ったものも大きかったが、誰もが踏切をつけ、人間らしさを取り戻していった。
ーーーーーーーーーーー
「間違いない、あそこだ。」
遠くから覗く、怪しげな影。
ゲルガー「ビンゴだ、見つけたぜガバナー。」
ガバナー「では、始めようか。報復か交渉、全ては彼ら次第だ。」
支配者は、不気味に笑った。
season3 ep3 end
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- 17 : 2015/03/20(金) 01:40:22 :
次回予告
「彼らを忘れた事は、ただの一日たりともない。」
「ごめん、やっぱり駄目みたい。」
「それでも明日は、今日よりも悪くなるかもしれないよ?」
season3 ep4 罪と罰
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- 18 : 2015/03/20(金) 01:45:05 :
- 終了です。
今回最速で仕上げました。それだけに、いつもより内容が薄くなってないか心配です…
さて、このエピソードでベルトルトが退場しました。
彼はエレンやライナーに隠れてパッとしないキャラに思えますが、対人戦においてはだれよりも優秀です。
最期については悩みましたが、彼なりの正義を貫かせたつもりです。
また、クリスタとライナーの会話も、力を注いだ場面の一つです。
感想など、是非お願いします。
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- 19 : 2015/03/20(金) 06:42:40 :
- まさかベルトルトが死んでしまうなんて、、、展開に圧巻されて読んでるだけなのに実際に観てる感覚に落ちてとても楽しかったです!!
次回も期待!!!
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- 20 : 2015/03/21(土) 19:53:21 :
- 次作です。
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