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Rubber×Rubber 第三話「無情なる銀色の鋼」
- 未分類
- 1742
- 43
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- 1 : 2015/03/13(金) 23:30:34 :
- 強敵が登場の第三話です。
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- 2 : 2015/03/14(土) 00:05:06 :
- 一コメ期待
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- 3 : 2015/03/14(土) 00:05:54 :
- 強敵と書いて
強敵 と呼ぶ仲間ができるのか!?←勝手な解釈
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- 4 : 2015/03/14(土) 16:15:51 :
- >>2
期待ありがとうございます
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- 5 : 2015/03/14(土) 16:44:01 :
- 武がエマと出会い、一緒に生活するようになってから一か月が経った。
六時に起床した武はカーテンを開いて外の様子を眺める。
「・・・雨か」
季節は梅雨真っ只中である。
「はぁ、最近雨続きでだりぃな」
登校を完了した武は、生徒玄関にてぼやいた。
「雨ごときでへこたれるな。もし奴等が襲ってきたらどうする?」
武はエマにぼやきを咎められる。確かに、いつマフィアに襲われるかわからない状況であることを考えれば、雨でだるい等と言っていられない。しかし、彼にはそのことに対する危機意識は皆無だった。何故なら、エマとロージが強過ぎるからである。
つい先日も四人の普通のマフィアと一人のホルダーが襲ってきたが、エマが一人で瞬殺してしまった。彼女一人でもこれなのにロージまでもが同行していた場合は、どっちが襲撃者なのか分からないような有り様となる。
「分かってるって」
エマの忠告に武は投げやりな言葉で返答した。彼女はそれを聞き困ったような顔をした。
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- 6 : 2015/03/14(土) 22:12:50 :
- 「恵麻ちゃん、もし良ければうちの部に入って!」
エマたちが教室に入った直後、待ってましたとばかりに女子バレー部に所属している女子が声を掛けて来た。
「誘ってくれるのは嬉しいんだけど、他の人にも言ってきたように私は部活に入る気は無いから。ごめんね」
「そっか・・・もし興味が出てきたら、いつでも言ってね」
ここ最近、エマの元には運動部からの勧誘が絶えない。その原因は、先週行われた運動会だ。彼女は目立つような活躍はしないようにすると言っておきながら、ありとあらゆる種目でトップに立ち、一躍大スターとなってしまったのだ。
それからというものバスケ部、テニス部、卓球部と次々に勧誘の声がエマに掛けられた。その度に彼女は丁重に断るが、その丁重さが仇となってか何度も勧誘に来る部活もある。
しかし、彼女は尽きることのない勧誘の声に対して嫌な顔一つしなかった。寧ろ、楽しんでいるようにも見える。
恐らく彼女は、この平穏な学校生活を心底愛しているのだろう。
結局、今日の学校生活も平穏無事なものに終わった。放課後特に用事のない二人は、すぐに生徒玄関へと向かった。
「今は小雨みたいだな」
「強くなる前にさっさと帰るとしよう」
二人は傘箱からそれぞれ自分の傘を取り出し、校舎を出てからそれらを広げる。そして、普段通り学校の校門を通過しようとするその時だった。
「エマ師匠!」
突然横からロージの声が聞こえた。
ロージは週に一、二回の頻度で下校に同行する。と言うのも、ロージはこの町に来てからも殺し屋稼業をバリバリ行っているため忙しいらしく、そのぐらいしか暇な時が無いらしいのだ。
とにかく、これで今日の下校は100%安泰だ。
そう思いつつ、武は声がしたほうを向く。そして・・・絶句した。そこに、重傷を負ったロージの姿を見たからである。
「ロージ!」
エマがロージの元へと駆け寄る。彼は常人ならとっくに倒れていてもおかしくない程の大怪我をしていた。殺し屋である彼にとっても放っておけば危ない。
「武、救急車を!」
「分かった!」
武は急いで携帯電話を取り出し119番通報する。その間に、エマはロージに何があったのかを尋ねる。
「師匠・・・急いで・・・この町から・・・逃げ・・・」
全て言い切る前にロージは力尽き、意識を失った。
「ロージ!」
この時すでに、二人の日常を崩壊させようとする存在が刻一刻と迫っていた。
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- 7 : 2015/03/15(日) 12:29:13 :
- ロージイイイィィィィィ!!!???
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- 8 : 2015/03/15(日) 22:27:42 :
- 10分後、サイレンの音と共に一台の救急車が学校に近付いてきた。救急車が校門前に停車するとすぐに救急隊員の人達が担架を用いてロージを救急車の中へと運んだ。
その後、二人は同乗を求められる。武はそれを了承しようとするが、エマがそれを強く拒んだ。そのため、武も仕方なく同乗を拒否する。当然、救急隊員にとっては理由も無しに断られるのは困るのですぐには引き下がってくれなかったが、連絡先を教えることで何とか妥協してもらえた。
そして、全ての救急隊員が乗り込むと同時に救急車が発進した。
「・・・どうして同乗を断ったんだよ。あいつの師匠だったら、付き添ってやるべきだったんじゃないのか?」
「話は後だ。着いて来い」
エマは武の質問を無視して歩き出した。
「なっ、待てよ・・・て、どこに行くんだよ!?」
エマの進路は下校ルートとは逆方向であった。彼女は武の呼びかけに全く応じようとしないので、やむをえず武は彼女に着いて行く。彼女の歩くペースは通常よりも明らかに速かった。彼は小走り気味になりながらも距離を離されないように努める。
学校を発ってから5分、彼女は足を止めた。彼女が足を止めた場所は、廃工場の敷地内だった。
不気味なところだな・・・
当然二人以外の人影は全くなく、辺りは静けさに包まれていた。
「おいエマ、いい加減に答えろよ」
「もちろん答える。だがその前に、ここからは小声で話せ」
エマの表情は、いつになく鬼気迫るものになっていた。
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- 9 : 2015/03/16(月) 08:13:25 :
- ロージは後で捕まったりしないでしょうか…?一応殺し屋なので捕まったりしたら……((ガクガク
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- 10 : 2015/03/16(月) 19:35:37 :
- >>9
後の事は全て秘密ということで・・・
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- 11 : 2015/03/16(月) 20:14:31 :
- 「ロージと救急車に同乗することを拒否した理由。それは、あの時すでに私達がいつ襲われるか分からない状況にあったからだ」
「襲われる?ロージをやった奴にか」
「ああ、恐らく私達は尾行されているぞ」
尾行という言葉を聞き武は周囲に警戒心を向ける。しかし、人の気配は全くない。
「無駄だ。私でさえ気配を感じ取れていないのだからな」
「そいつはノアの一員で間違えないんだろうが、気配を感じ取れていないならどうして尾行されてるって分かるんだよ」
「ロージが襲われたにもかかわらず、生きて私達の前に現れたからだ」
エマの答えを、武は全く理解できないでいた。
そのことのどこが尾行の根拠になるのか。しかし、エマの方もこれだけで理解できるとは思っていなかったようで、詳しく説明するために話を続けた。
「まず、ロージを襲ったのがノアで、その襲撃者の一番の目的が今までの奴らと同じ私の拉致であると仮定した場合、ロージを襲った理由は何だ?」
「それは、エマの場所をロージから力ずくで聞き出すためだ」
「その通りだ。だが、ロージはどんな目に遭おうとも仲間を売るようなことはしない義理堅い男だ。簡単に私の居場所を吐くようなことはしなかった。そのため、襲撃者はロージへの拷問を諦めることにしたのだ」
「だから、ロージは解放され自分を倒せるほどの強い敵が迫っている事を俺達に伝えに来たんだろ?それのどこに尾行の根拠があるんだよ」
「だったら質問するが、襲撃者は何故ロージを生きて解放した?」
その質問に、武はハッとなった。
俺は愚かな事に、相手を誘拐犯か何かと同じく考えていた。俺達の相手は殺意を持っただけの一般人とは違う。数多の人間を殺してきたマフィアなのだ。とすれば、生かすことに利益が無いのに殺すことを躊躇する理由が無い。それにもかかわらずロージが生還したということは・・・
「ロージを解放することで何か得られる物があった。そして得られる物とはエマの居場所。つまり、襲撃者はロージが俺達に危機を知らせに来ることを読んでいたんだ」
「そういうことだ。ロージにとっていち早く危機を知らせるという判断は間違っているとは言えないから、彼を責めることはできない。しかし、結果こうして尾行され・・・!?」
突然、エマが周囲への警戒を強め始めた。
「急にどうしたんだよ?」
「尾行している者の気配を感じた」
「気が緩んだのか?」
「いやその逆、もう隠れる必要は無いと判断した。つまり・・・来るぞ!武、私のそばから絶対に離れるな!」
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- 12 : 2015/03/16(月) 23:58:42 :
- エマが武に警告を発してから十数秒後、今まで尾行者の気配を感知できないでいた武の耳にも足音が聞こえてきた。その音はどんどん近付いてくる。間もなく・・・尾行者がついに姿を現した。
性別は男で髪は短髪、見た目から察せられる年齢は20代後半。体格は良い方で見た目からしても強そうである。
エマはその姿に見覚えがあった。
「お前は、アイデン・ステイル」
「よお。久しぶりだな、エマ・スレムエネ」
二人は互いに名前を呼び合うと共に睨み合いを始めた。
「エマ、知り合いか?」
毎度のごとく事情を知らない武はエマに二人の関係を尋ねる。
「元同僚だ」
と言うことは、アイデンという男も殺し屋ということか。
「しかし妙だ。何故ノアはたかが私一人を取り戻すためにわざわざアイデン程の男を派遣する。奴にはもっと大きな任務が任されているはずだ」
「それって、こいつはノアの殺し屋の中でもトップクラスの男ってことか?」
「その通りだ」
アイデンの強さを聞き、武は固唾を呑む。一方のアイデンは、自信に満ちた笑みを浮かべながらエマの疑問に答えた。
「それだけ我々にとってお前の存在価値が大きいってことだ。一度裏切ったことを水に流してでもお前を歓迎したがる程にな」
エマの能力はそこまで貴重なものなのだろうか?
武はアイデンの発言に疑問を抱く。真意をエマに尋ねようとするが、彼女もまたアイデンの言葉の真意を理解できていないようだった。
「どういうことか気になっている顔だな。だが安心しろ、お前が大人しく戻ってくればすぐにでも」
「断る!」
エマはアイデンが話し終える前にきっぱりと答えた。それと同時に彼女はアイデンを撃退すべく動き出す。
彼女は俊敏な動きで一気に距離を詰め、アイデンの懐へと潜り込む。そして、制服の袖に仕込んでいたナイフを手に取り彼の身体を右脇腹から左肩口に渡って切り付けた。
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- 13 : 2015/03/17(火) 20:39:23 :
- 最初に違和感を感じたのはエマだった。切り付けた際の手応えがヒトの皮膚を切り裂く時のものとは余りにかけ離れていたのだ。
直後、武も異常に気付いた。彼が感じた異常とは音だった。エマのナイフがアイデンの身体に接触した時、金属と金属がぶつかった時のような高い音が鳴り響いたのだ。
武はアイデンの姿を凝視する。彼の衣服には確かに切り裂かれた跡があるのだが、血は全く出ていない。また、この異常が自身の手によって引き起こされたことを示すかのように不敵な笑みを浮かべていた。
エマはアイデンが受けたダメージが0であることを認識すると、反撃を避けるためにすぐさま距離を取った。
「既に準備は万端だったという訳か」
エマがアイデンに言う。彼女は今の違和感の原因を知っていた。
「当然だ。何て言ったって、相手はお前なんだからな」
「ちょっと待てよ、アイデンが何をしたのか俺にも教えてくれよ」
またしても話に着いていけていない武が二人の会話に割って入る。
「今のは、奴のホルダーとしての能力で」
エマが武の要望に応え、質問に答えようとするがアイデンがそれを制した。
「口で言うより、見せるほうが早いだろう」
アイデンはこう言うと、着ていた服を脱ぎ捨て上半身を露にした。それを見て、武は驚愕した。
「な、何だあの身体・・・胴体が銀色に光ってやがる!」
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- 14 : 2015/03/18(水) 23:34:23 :
- アイデンの身体の輝きは、金属光沢のそれに近いものだった。それを見た武は、アイデンの能力が金属に関係するものではないかという仮説を立てる。すると、すぐさまアイデンが能力を自ら明かした。
「俺の能力は一語で表せば"鋼殻"、鋼鉄の殻で身体を覆うことが出来るというものだ」
仮説通りの答えではあるものの、アイデンの答えに武は悲観せざるを得なかった。鋼の鎧に身を包んでいる男を倒すなんて出来るわけがないと思ったからだ。しかし、全ての希望を捨てていたわけでもなかった。
守られているは胴体だけ、頭や下半身を攻撃すれば勝機はある。不利になったのは変わりないが、エマの力なら・・・
「高校生。お前、鋼殻で覆われていない所を攻撃すればとか思ってたろ?甘いんだよ!」
アイデンが全身に力を込め始める。すると、胴体を覆う鋼殻がみるみるうちに広がって行く。やがてそれは、全身を余すところなく覆い隠した。
「はっはっはっはっ!これが俺の真の姿だ!」
全身鋼の身体を目の当たりにし、武は今度こそ絶望しかける。だが、エマはまだ諦めてはいなかった。
「武、今創り出せる一番の硬度の輪ゴムを創れ」
「勝機があるのか!?」
「それで勝てるかどうかはわからん。だが、私達にできる事はこれしかない」
勝てるかどうか分からないというエマの言葉に武は少なからずショックを受けるが、確かに彼女の言う通りだと腹を括り、輪ゴムを創り出すために全神経を右手の人差し指に集中させる。直後、人差し指の先から赤い輪ゴムが現れた。
エマはその輪ゴムを受け取ると同時に、右手の指へ掛けた。
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- 15 : 2015/03/19(木) 20:47:31 :
- 「
弾種 ・貫通弾 、出力 30%」
エマは輪ゴム鉄砲の出力を武の創った輪ゴムが耐えられる最大のものに設定する。さらに、弾種も力を一点に絞る貫通弾とし、正真正銘の最高威力の輪ゴムを放とうとしていた。
輪ゴムをキリキリと鳴らしながらエマは人差し指をアイデンへと向ける。一方のアイデンにはその攻撃を避けようという意思が全く見られなかった。
「突き破られるわけがないってか」
武がこう呟くと、アイデンがそれを否定する。
「別にそうは思っていない。エマの技術を考慮すれば、一対一の戦いにおいてエマの輪ゴム鉄砲を躱せる事はまずない。だから、その輪ゴムに俺の鋼殻を突き破る力があるのなら、お前たちの勝ちだ。だが、突き破れないのなら・・・俺の勝ちだ」
「分かり易くて何よりだ。行くぞ!」
エマは大声で攻撃を宣言する。
「輪ゴム鉄砲 !」
今まで放ってきたものを遥かに上回るスピードの輪ゴムがエマの右人差し指から放たれた。その輪ゴムは一直線にアイデンの胸部へと向かう。そして・・・
輪ゴムが大きな音と共に、アイデンの鋼の身体に衝突した。
果たして、エマの輪ゴム鉄砲は通用したのだろうか。
武は恐る恐るアイデンの胸部を凝視する。二人の力を合わせた渾身の一撃は・・・
彼の鋼殻に傷を与える事は出来なかった。
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- 16 : 2015/03/20(金) 21:25:04 :
- 「はっはっはっはっ!これで決まりだ!」
エマの攻撃を無傷で凌いだアイデンは、勝利を確信し高笑いをした。対する二人は絶望の色を隠し切れなかった。
これでもう、新たな輪ゴムを創り出す事は出来ない。もし、奇跡が起きてもう一度最高の輪ゴムを創れたとしても、アイデンを倒す事は出来ない。
しかし、エマは絶望の中でも抗う意志を捨ててはいなかった。
「まだ戦う気かよ。もしくは逃げる気か?まあどちらにしろ、これでもまだ大人しくしないって言うのなら・・・実力行使に移るまでだ!」
遂にアイデンが攻撃に移った。彼は鋼の身体に似合わぬ俊敏さで一気にエマの眼前へと迫る。
「おらっ!」
エマを間合いに捉えると同時にアイデンは蹴りを放つ。その鋭い蹴撃は彼女の身体を掠めるも、ダメージを与える事には失敗する。
その攻撃の隙を狙い、彼女は左フックを顔面へと叩き込む。しかし、ダメージを受けたのは彼女の拳のみであった。そのダメージによって彼女が一瞬怯んだ間にアイデンは彼女の身体を蹴り飛ばした。
その威力は身体を宙に浮かせる程であったが、彼女は痛みを堪えて空中で体勢を立て直してから着地する。そして、追撃に備え構えを取った。
だが、アイデンは彼女の近くにはいなかった。この時彼は・・・
武の眼前へと迫っていた。
「ぐふっ!」
武の腹部へと鋼の拳が叩き込まれる。
数本のあばら骨が折れる音を聞きながら、彼は意識を失った。
-
- 17 : 2015/03/21(土) 21:05:39 :
- 「武!」
エマは大声で武の名前を叫ぶ。しかし、反応は無い。
「何故だ!?お前達の狙いは私だけだろう!」
「何故?そんなもん分かってるはずだ。良質な輪ゴムが無ければ能力を使えないお前に、力の源である輪ゴムを提供している男が邪魔者じゃ無ければ何だって言うんだ?」
エマの問いかけにアイデンは冷たく答えた。さらに、彼女に追い打ちをかけるかの如く、彼はこう続けた。
「あ~あ、可哀想だなぁ。こいつはお前なんかと関わったばかりに今日ここで命を落とすんだぜ」
アイデンの言葉を受け、エマの心は自責の念に駆られる。自分がパートナーになってほしいと頼んでしまったばかりに、武はこんな目に遭ってしまった。このままでは、彼の両親への誓いすら守ることができないと、無力な自分を強く責めた。
「上からは出来る限りこの男を抹殺するように言われている。だから、トドメはしっかり刺させてもらうぜ」
「・・・やめろぉ!!!」
アイデンが思い切り武の頭部へと鋼の拳を振り下ろす。その拳はさながら鉄のハンマーであり、頭に命中すれば食らった人間は一たまりもない。
しかし、彼の拳は標的に触れることなく地面へ衝突した。
「この一瞬で助け出すか。何て速さだよ」
エマはアイデンの拳が武の頭部を捉える直前に、彼の身体を抱え、拳の軌道上から避難させていた。こうして、間一髪彼の命を救ったエマは逃亡を決断し、彼を抱えたままアイデンに背を向け走り出した。
アイデンは、そんな二人を追わなかった。
任務はいつでも達成できる。この戦いでそう確信したからである。
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- 18 : 2015/03/22(日) 21:35:25 :
- 意識を取り戻した武の瞳には、白い天井が映っていた。
ここは・・・病院?
「目を覚ましたようだな」
左からエマの声がする。首を曲げてそちらを見てみると、エマがベッドの傍に置かれた椅子に座っていた。
「俺はどのくらい寝てたんだ?」
「丸1日だ」
そんなに寝ていたとは。
24時間も眠り続けると言うのは一般人の武にとって当然初めての経験であり、エマの答えに驚きを隠せなかった。それと同時に、恐怖を抱いていた。
それは昨日、自分が生きてきた中で一番死に近付いたという実感から来るものだった。
「危うく死ぬ所だったんだな・・・」
不意に武が呟く。
「ああ。だがもう心配は無いぞ。医師によれば肋骨を2、3本折ってしまったようだが、命に別条は無いということだ」
武の不安を少しでも和らげるためにエマは告げた。しかし、効果はあまり見られない。そして、武はとうとう自分の本心を吐露した。
「エマ、俺・・・もう、生きていける自信がねぇよ」
武が吐き出した本心は諦めだった。さらに、彼は自白を続ける。
「怖いんだ。今にでもあの野郎が現れるんじゃないのか、殺されるんじゃないかって思うと恐ろしくて堪らないんだ」
武の言葉をエマは無言で受け止める。最後に、彼はこう告げた。
「・・・死にたくねぇよ」
死にたくないと生への願望を語る武の顔は、死人のように真っ青になっていた。それを見てエマは、覚悟を決めた。
-
- 19 : 2015/03/23(月) 21:27:03 :
- 「全く、情けない事この上ない顔だな」
エマの口から突然、辛辣な言葉が発せられた。武は、まさかこの状況でこのような言葉が放たれるとは思っていなかったため、激しく動揺した。
「たった一度命の危険に晒された程度でこの有様か。貴様には失望したよ」
次々と発せられる罵詈雑言に、武の心の内から怒りがこみ上げてくる。
「貴様がここまで弱い男だとは思わなかった」
「うるせぇ!!!」
とうとう、武の怒りが沸点に到達した。
「俺はお前らとは違う!あんな危険な目に遭うのはもうこりごりだ!大体な・・・元を辿れば、お前がこの町に逃げて来たのか原因だろうが!」
武はしまったと思わず口を押さえる。しかし、一度放たれた言葉が戻ってくることはない。
「わ、わりぃ」
自分は怒りに任せて言わなくても良いことを言ってしまった。
武は我に返り謝罪の言葉を述べる。だが、次にエマから放たれた言葉が彼を再び激怒させた。
「案ずるな。貴様は何も悪くない。悪いのは、貴様が愚図だと見抜けなかった私だからな」
愚図だと・・・
「もう我慢ならねぇ!確かに、俺はお前の言う通り愚図だ。だから、俺の事なんか捨て置いてさっさとこの町から出て行けよ!その方が、お前にとって都合が良いんだろうからよ!」
「貴様に言われるまでも無く、そのつもりだ」
エマは椅子から立ち上がると、武に背を向け病室の出口へと一直線に向かった。
「さよならだ、古木武」
「じゃあな、エマ・スレムエネ。もう二度と戻ってくんなよ」
こうして、エマは病室から去って行った。
-
- 20 : 2015/03/24(火) 15:47:08 :
- エマが病院を出た時、太陽は既に西に傾いていた。
「・・・行くか」
こう呟くと、エマはどこかへ向かって歩き出した。
エマが病室を去ってから、武はずっと思いつめたような表情を浮かべていた。
本当は、引き留めるべきだったんじゃないだろうか。だが、あれだけ言われて引き留めるというのも男が廃るような気がする。ともかくこれでまた、一人暮らしの再開か・・・
寂寥感に浸っていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。もしかしたらエマが戻ってきたのかもしれないと、武は不本意ながら期待する。だが、彼の期待は意外な形で裏切られた。
「うっす、武さん。お体の調子はどうすか?」
「あっ、ロージ。そっか・・・お前が運ばれた病院もここだったのか」
「はい。まぁ俺の方はすっかり傷も治って、後は医者の許可を待つばかりなんですけどね」
ロージの怪我は、自分なんかとは比べ物にならない程の大怪我だったはずだが、一流の殺し屋は傷の回復スピードまで優れているようだ。
「そう言えば、師匠はどこかへ出掛けたそうですね」
「・・・ああ」
ロージの言い方から察するに、先程の諍いやパートナー関係の解消についてはまだ聞いていないようだ。果たして、俺の口から説明すべきか否か・・・
「でもご安心下さい。エマ師匠に言われた通り、師匠の不在時は俺が武さんを護りますから」
ロージは自信満々に宣言して見せる。しかし、武にはロージの宣言の中のある一節が引っかかっていた。
エマに言われた通り?
「それって、いつ頼まれたんだ?」
「5分前ぐらいですかね」
と言うことは、エマはこの依頼を俺との言い争いの後にしたことになる。あんなことを言いつつも、俺の身の安全の確保のために手を打っていたのだ。
その事に気が付くと共に、武の頭に新たな疑問が浮かび上がる。
エマはこの町から出ていくと言っていたが、本当に絶交を決めたのならロージにこんなことを頼むだろうか。しかし、エマの性格からしてあの言葉が冗談であるようにも思えない。
まさか、エマは・・・
-
- 21 : 2015/03/24(火) 21:17:38 :
- 同刻、エマは昨日アイデンと交戦した廃工場に居た。
「・・・来たか」
エマがボソッと呟く。すると、建物の陰からアイデンが姿を現した。
「わざわざ一人でこんな所まで来てくれたってことは、諦めて俺達の元へ戻ってきてくれるってことだな」
「・・・ああ」
「そりゃ良かった」
「武さん、どうかしたんですか?」
急に黙り込み始めた武を心配して、ロージが声を掛ける。
「ロージ、一つ聞いていいか?」
「何でしょう」
「もしエマが輪ゴム鉄砲を使えない状況で、一人でノアの追手から逃げ切ることは可能か?」
最後の確認だった。そもそもエマが独力でノアの追手を振り切れるのなら、彼女の行動はやっぱり表面通りなのかもしれない。だが、もし不可能なら・・・
「そんなの無理に決まってるじゃないっすか!ノアは巨大組織なんですよ!アイデン・ステイルレベルの殺し屋が動き出したとなると、幾らエマ師匠でも一週間逃げ切るのが精一杯です!」
この言葉を聞き、武は全てを察した。
「行かないと」
こう呟くと同時に、武は身体を起こしてゆっくりとベッドから立ち上がった。その瞬間、あばらに激痛が走り、彼は床の上で蹲った。
「何やってるんすか、武さん!」
「行かなきゃいけないんだ、エマの所に・・・あいつは、自分からノアに戻る気なんだ!俺の助命を条件として取り付けて!」
武が苦痛に顔を歪ませながら話した内容は、事情を深くは知らないロージにとっては余りに突然のものだった。しかし、ロージはは必死な武を見て、彼を補助するべきだと判断した。
「分かりました!そういう事なら、俺が武さんを背負います!」
「すまねぇ・・・頼む」
ロージは武を背負うと同時に、まずは病院から出るために走り出した。
-
- 22 : 2015/03/25(水) 17:18:56 :
- 「一つ、条件がある」
アイデンへ同行の意思を伝えたエマは、彼に着いて行く前に釘を刺すように言った。
「武のことを見逃して欲しい」
決意を顔に滲ませながら、エマはアイデンに嘆願した。彼女の瞳はとても強くて哀しげだった。
「良いだろう。お前が戻って来てくれるのなら、輪ゴムを創れるだけのあんなガキにもう用はないからな」
「ありがとう・・・」
アイデンの答えに、エマは安堵の表情を浮かべた。
「もう思い残すことはねぇな?行くぞ」
アイデンが歩き出す。それに従い、エマも同様の足を進める。
もうこれで、武が傷付くことも無い。自分はノアの殺し屋として生きるしか道が無いのだろう、と僅かに残っていた迷いを振り切ろうとした時・・・
彼女の頭の中に、武と過ごした平穏な日々の様子が流れ出した。武との出会い、登校初日の不良グループの制圧、ロージとの再会、人生初の運動会・・・走馬灯にも似た現象に、彼女は思わず足を止める。
「おい、どうかしたか?」
アイデンはそれを察知し、エマに注意を向ける。それを受け、彼女は再び歩き出そうとする。
「エマ!!!」
誰もいないはずの廃工場に、エマを呼ぶ声が響き渡った。
「武・・・」
エマは、ロージに背負われている武の姿を見た。
-
- 23 : 2015/03/25(水) 22:19:48 :
- エマは、自分を連れ戻しに来てくれた二人の姿を見て感情が溢れ出しそうになる。だが、彼女はそれをギリギリの所で塞き止める。
「貴様ら、何しにここへ来た」
エマは答えが分かり切った質問を敢えてした。
「決まってんだろ!お前を連れ戻しに来た!」
「師匠!勝手に居なくなっちゃうなんてダメっすよ!」
二人はエマの予想通りの答えを叫ぶ。二人の、特に武の激痛に苦しみながらもエマを連れ戻そうとする姿からはどれだけ強い決意でここに来ているかが伺えた。それでも・・・いや、だからこそ、彼女は二人を突き放すような言葉を口にした。
「全く、余計なことをしてくれたな」
それは、二人の決意を完全に否定する言葉だった。
「その通りだ。仲間の新たな門出を邪魔するなんて無粋な行動だぜ」
「お前の話はどうでも良いんだよ、アイデン!」
武はアイデンの口出しを制し、その上でエマに呼びかけた。
「エマ、お前がどうして自分の意思でノアに戻ろうとしているのかはもう分ってる。お前は、俺の命を救おうとしたんだろう!?」
「・・・何のことだ?」
「とぼけんじゃねぇぞ!あんだけ学校生活を楽しんでいた奴が、自ら裏社会への復帰を望むわけがねぇだろ!」
「そう思っているのなら、何故ここへ来た?私の心遣いを無駄にすると言うのか!?」
無理をしてでも自分を連れ戻してくれた事への感謝と、二人のために彼らを拒絶しなければという決意のジレンマに、エマの表情はとても辛そうなものになっていた。そんな彼女に、武は妙にあっけらかんとした表情で言い放った。
「心遣い?そんなもん要らねぇよ。だって俺達、家族だろ」
-
- 24 : 2015/03/26(木) 22:01:06 :
- "家族"
この言葉が、エマの心の奥底に響き渡った。
「・・・・ない」
小さな声で、エマは呟いた。その呟きの内容をアイデンが問う。すると、今度は、彼女ははっきりと言った。
「行きたくない。この町を離れたくない」
エマは本音を吐き出した。この言葉を聞き、彼女が同行する意思を失くしたと判断したアイデンは慌てて彼女を拘束しようとする。しかし、エマはそれを巧みに躱し、アイデンの身体を蹴り飛ばした。
そして、二人の傍へと駆け寄る。
「お帰り、エマ」
「ああ、ただいま」
「エマ!てめぇ、その男が死んでも良いってんのかよ!?お前達が俺に傷一つ付けられなかった事を、忘れたわけじゃないだろ?」
アイデンは激昂していた。もう、後には引けない。もしかしたらこの判断は間違いであったのかもしれないと、エマは思い悩む。すると、彼女の肩に、武がそっと手を置いた。
「大丈夫だ。今度こそ、あいつを倒す威力の輪ゴム鉄砲を撃てるだけの強度を持った輪ゴムを創ってやる」
こう宣言し、武は輪ゴムを創り出すために全神経を右手の人差し指に向けた。
根拠はもちろん無かった。昨日創った輪ゴムが自分の創り出せる輪ゴムで一番の強度を持った輪ゴムだ。それを超える輪ゴムを創り出すなんてことは、自分の限界を超えるということだ。
しかし、自信はあった。どこからともなく湧いてきたその自信は、根拠もないくせに、確信と呼んでも良いほどのものだった。
エマを救うためなら、自分達の日常を取り戻すためなら、きっと俺は自分の限界を超える事が出来る。
そして、武の全ての力と思いを込めた赤い輪ゴムが、彼の指先から現れた。
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- 25 : 2015/03/27(金) 17:54:59 :
- 「エマ・・・後は頼む」
武が創り出した輪ゴムをエマへ手渡す。その輪ゴムを受け取った彼女は、穏やかな笑みを浮かべる。そして一言、任せておけと告げてから、右手の指に輪ゴムを掛ける。
「弾種 ・貫通弾 、出力 ・・・50%」
エマの口から放たれた50%という数字に、アイデンは戦慄した。彼は分かっていたのだ。この数字が何を意味するのかを。
「撃たせねぇ!」
アイデンはエマの攻撃を止めるため、鬼のような形相で彼女の元へ迫る。だが、それは当然間に合うわけも無く・・・
「輪ゴム鉄砲 」
エマの人差し指から輪ゴムが放たれた。
高速で放たれたその輪ゴムはアイデンの胸へと一直線に飛行する。そして間もなく、その輪ゴムがアイデンの身体に命中した。
その結果・・・
エマの輪ゴム鉄砲は、アイデンの胸を貫いた。
-
- 26 : 2015/03/28(土) 20:16:50 :
- やった・・・アイデンを倒した。
武が確信したその時。
「まだ、終わりじゃねぇ!」
アイデンが叫んだ。その叫びを耳にし、一同は再び身構える。しかし、彼が叫んだ終わりの否定は"彼の終わり"を否定しているものではなかった。
「俺を倒したところで、また新たな殺し屋が派遣されるだけだ。俺よりももっと強い奴らがな。だから・・・」
アイデンはここで血反吐を吐き、地面へと跪く。意識が今にも消え入りそうな中で、彼は傲慢な態度を崩すことなく言い放った。
「お前らの戦いの終わりに勝利はない。あるのは、敗北の最後だけだ。その時が来るまで・・・せいぜい・・・あがいて・・・見せ・・・ろ・・・」
ここで、アイデンの意識は潰えた。頭を地面へと付け跪いているように見えるその姿は、余りにも惨めなものに見えた。
その後、ロージによって彼の死亡が確認された。
武の頭の中では、アイデンの最後の言葉がぐるぐると渦巻いていた。この先、自分達はどこまであがき続けられるのだろうか。
彼が深刻な表情を浮かべていた時だった。
「武」
エマが突然武の名前を呼ぶ。次の瞬間・・・彼女は、武に抱きついた。
「な、なにするんだよ!?」
顔を赤くしながら、突然の事態に慌てる武。そんな彼にエマはそっと呟いた。
「ありがとう」
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- 27 : 2015/03/28(土) 23:56:29 :
- 唐突に述べられた感謝の言葉に、武は少し困惑する。
エマは、言葉を続けた。
「こんな私を、連れ戻しに来てくれてありがとう。こんな私を・・・家族と呼んでくれて、ありがとう」
「・・・どう、いたしまして」
落ち着きを取り戻した武は、ゆっくりとこう言った後エマの顔を見つめる。その頬には、涙が伝っていた。
「大丈夫か?」
「・・・ああ。みっともない所を見せてしまったな」
エマは、武の背中に回していた手を戻し、彼から一歩分だけ離れる。
「武のお陰で、家族というものが、ここまで心を穏やかにしてくれるものだということに、漸く気付けたよ」
エマは、穏やかながらもどこか切ない顔をしていた。
「お前も、家族を失ってたんだな」
「いや、失った訳ではない。最初から・・・居なかった」
"最初から居ない"、というこの言葉の重要性がどれだけのものなのか、武は曖昧ながらも察していた。
「前に、貴様からいつから殺し屋をやっているかと聞かれて、私は"名前が付いた時から"と答えたな?」
「・・・ああ」
「その言葉の本当の意味を話してやろう。いや・・・話させてくれ」
-
- 28 : 2015/03/29(日) 12:33:28 :
- ロボットとかじゃないよね…エマさんがロボットだったら俺爆死する
-
- 29 : 2015/03/29(日) 17:28:52 :
- >>28
人間なので大丈夫です(笑)
-
- 30 : 2015/03/29(日) 18:37:55 :
- 前置きの後、エマは独白を始めた。
私は・・・生まれた瞬間に捨てられた。理由は分からない。なにせ、親の事を何も知らないのだからな。拾った者の話では、籠に入れられ、毛布にくるまれた状態でスラムの端っこに捨てられていたそうだ。当然、そのままではすぐに死ぬ運命に遭ったのだが、不幸中の幸いと言うべきか私はある男に拾われた。その男こそが、ノアのボスだった。
奴は、孤児や捨て子を集めて自分の手足となる殺し屋を育成していた。子供の頃から教育すれば、才能の有無に関わらずそれなりの実力は身に付くし、何より命令に対して従順な駒となるからな。
物心が着いてから5、6歳の頃までは、一般教養を教わった。それから、正式なノアの一員になるに当たって呼び名が必要になった。はっきり言って、1号やA等の記号のような名前でも良かったのだろうが、味気ない名前を付けることが嫌だったのか、しっかりとした名前が与えられた。それが、エマ・スレムエネと言う名前だ。
しかし、殺し屋というのは本名が足手纏いとなる職業だ。だから、私の名前はとにかく個性を捨て去ったものをということになった。その結果、全世界でも1、2を争う数の女性が名付けられている"エマ"という名と、"名無し"の意味の"nameless "を発音単位で逆にした"スレムエネ"という姓を与えられた。そして、この時から私の殺し屋として人生が始まった。
それから、10歳前後の時までは組織の狗として幾多の人を殺してきた。だが、約10歳にして転機が訪れた。更なる強さを求めてとある老人に弟子入りしたのだが、彼は私にノアでは教わらなかった命の大切さを教えてくれた。その後、私の中で、殺しを肯定するノアの教えと殺しを否定する師の教えとの間で葛藤が続いた。そして、先日殺し屋を辞めることを決意した私はノアから逃げ出した。数日後、この町を訪れ武に出会い・・・
「そして、今に至るということだ」
エマの口から語られる彼女の哀しい人生に、武の胸が痛み出す。
「武。さっき言ったように、私は殺し屋として多くの人々を殺めてきた。そんな私が殺し屋を辞めて、すぐに表の世界の住人となれる等と言う虫の良い話は無かった。これから先も、何人もの刺客が私達に差し向けられるだろう。そして、その刺客達は貴様にも危害を加えてくるはずだ。アイデンの言う通り、私達の戦いには敗北の最後しかないのかもしれない。それでも・・・貴様は、私の傍で共に戦ってくれるだろうか?」
不安と罪悪感の入り混じった表情を浮かべながら、エマは武に尋ねた。
その答えは決まっている。
「当たり前だ。何度も言うが、俺達は家族だからな」
確かに、俺達の行動は悪あがきなのかもしれない。だけど、俺はエマと一緒に泥沼の中をあがき続けていたい。
あがき続けたその先に、光が差し込むことを信じて・・・
-完-
-
- 31 : 2015/03/29(日) 18:40:21 :
- Rubber×Rubberシリーズ、これにて完結です。
読んでくださった皆様、応援してくださった皆様に感謝申し上げます。
-
- 32 : 2015/03/29(日) 22:04:21 :
- 終わりですかぁ。
もっと見たかったんですけど、お疲れ様。
面白かったです!
-
- 33 : 2015/03/29(日) 22:40:39 :
- >>32
ありがとうございます!
続きを作ることも何度か考えたのですが、良い続編が思いつかなかったのと他に書きたい作品があったので止めにしました。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
-
- 34 : 2015/03/30(月) 12:33:36 :
- え…終わり!!???
そんなぁ……リボーンシリーズみたいに超長編にしましょう!
ってのは置いといてとてもいい作品でした!!
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- 35 : 2015/03/30(月) 18:16:54 :
- >>34
続きを望む声が上がるのはとても嬉しいです。このシリーズを読んでくださってありがとうございました。
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- 41 : 2020/10/03(土) 08:47:46 :
- 高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
http://www.ssnote.net/archives/80410
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【キャロル様教団】
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何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
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