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Rubber×Rubber 第一話「運命の赤い輪ゴム」

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  1. 1 : : 2015/02/19(木) 22:08:52
    完全創作です
    よろしくお願いします
  2. 2 : : 2015/02/19(木) 22:23:19
    この世界には2種類の人間がいる。

    それは力を持つ人間と持たない人間だ。

    力を持つ人間は能力保持者(ホルダー)と呼ばれ、彼らはそれぞれ科学では証明できない超能力を一つずつ持ち、その能力は千差万別である。

    そして、20XX年・・・

    全世界のホルダー人口は8000万人に上っていた。

    100人に一人が超能力を持ち、彼らは依然として特別な存在ではあったものの、その希少さは薄れていた。

    そんな時代に、古木武は生まれた。

    彼もまたホルダーであった。
  3. 3 : : 2015/02/19(木) 23:15:06
    彼は古木家の長男として生まれた。ごく一般的な家でごく一般的な子供として健やかに育っていた。

    6歳の時、小学校入学前に行われるホルダー検診で、彼はホルダーであると診断された。その結果を彼は両親と共に喜んだ。そして、彼らは詳しい診察結果を聞くために医師の元へ訪ねた。

    「あなたの能力は"ゴム"です」

    担当医の第一声はこれだった。

    炎とか氷とかもっとカッコいい力を創造していた武は少し拍子抜けした。

    しかし、ゴムと言えば某海賊漫画の主人公の能力だ。これはこれでいいかもしれない。鍛えたらギア2とか出来るかもしれない。

    こんなことを想像し、彼は再びご機嫌になる。しかし、担当医が次に放った言葉が武を落胆させた。

    「厳密に言えば"輪ゴム"ですね」

    え、輪ゴム?

    「もっと言えば輪ゴムを創り出す能力ですね。便利な能力じゃないですか」

    輪ゴムってハガキを纏めたりするあの輪ゴム?

    「ちょっと出してみてください。念じればすぐに出来ますよ」

    そう言われ、武は素直に念じてみる。すると、指先から音もなく赤い標準サイズの輪ゴムが現れた。

    「赤い輪ゴムですか。これは珍しい」

    確かにオレンジの輪ゴムが主流だけれども赤いのだって良く見るような・・・てか、これが俺の能力?

    想定外の結果に武は落胆を隠せなかった。両親は輪ゴムって便利だなぁとか、変に強すぎる能力より良かったじゃないと励ましてくれたが、武ほどではないにしろ残念そうな顔をしていた。

    それから、一応力を持つ特別な人間である武は平凡な日々を過ごした。

    そして、高校三年生の春。

    彼の人生は赤い輪ゴムが導く運命の出会いによって変えられる事となるが、その事をまだ彼は知らない・・・
  4. 4 : : 2015/02/20(金) 20:33:59
    「ふあぁ」

    昼下がりの教室で、武は一つ大きな欠伸をした。彼は退屈していた。

    ホルダーであるにもかかわらず平凡な日々を過ごしているからではない。寧ろ、下手に派手な能力を持ち面倒事に巻き込まれなくて良かったと思っている。そもそも、彼は退屈なことを不満に思っているわけではなかった。

    だが、退屈なのも事実だった。



    「でっかい欠伸だったなあ。いくら鈴木の授業がつまんないからって少しは自重しとけよ。平常点に響く」

    授業が終わった後、和田親太朗が武に話し掛けてきた。彼は武にとって無二の親友である。

    「考査取ってるから良いんだよ。AO狙ってるわけでもねぇしな」

    「はいはいそうですか。じゃ、俺は部活あるからもう行くわ。また明日な。ゴム男くん」

    「その名で呼ぶな」

    親太朗は武の文句を意にも介さず手を振りながら廊下を走り去っていく。いつものことだ。それに、このあだ名は2人の友情の証のようなものである。

    実は、武はホルダーであることをクラスメイトに明かしていない。理由は一つ、自慢出来る能力じゃないから。

    もちろん、担任教師を始めとする教師陣は彼がホルダーであることを把握しているが、生徒でそれを知っているのは親太朗だけであった。

    ちなみに、他のクラスメイトはゴム男というあだ名は彼の苗字と名前の漢字から()()男だと認識している。そして、親太朗以外からこのあだ名で呼ばれることもなかった。

    「さて、俺は早く帰るとするか。タイムセールスに間に合わなくなる」

    主婦のようなセリフを残して彼は教室を出た。
  5. 5 : : 2015/02/20(金) 23:01:24
    武は一人帰り道を歩いていた。元々友達が少ない彼には家が同じ方向にある友達が一人もおらず、下校はいつも一人だった。

    学校から家までかかる時間は約20分間、一人の退屈さを彼はお気に入りの歌手の曲を聴くことで紛らわす。

    そして、彼には他にも暇つぶしの方法がある。その内の一つは、多種多様な輪ゴムを創ってみることだ。

    始めこそ市販の良くある輪ゴムしか創れなかったが、今では様々な大きさ、幅、材質、反発力の輪ゴムを創り出せる。長きに渡る暇つぶしの賜物だ。別に、それがなんだと言う話だが。

    もし世の中から輪ゴムの材料が消えるようなことがあれば俺は英雄だろうな・・・いや、そこまでして輪ゴムを使おうとは思わないか。

    こんなことを妄想するのも彼の暇つぶしの一つだ。

    「平凡な生活も良いけど、たまには何か起きて欲しいよな」

    彼がそう呟きながら十字路を曲がった。

    それが全ての始まりだった。

    「何だあれは・・・女の子が倒れてる!?」

    道の真ん中で、一人の少女が意識を失い倒れていた。武は急いで少女の元へ駆け込む。

    「おい!大丈夫か!」

    武は少女の身体を揺らしながら必死で呼びかける。

    「Are there・・・」

    「え?」

    「Are there three chasers here?」

    これが二人の出会いだった。
  6. 6 : : 2015/02/21(土) 00:08:09
    運命の出会いかな(///▽///)
    期待です♪
  7. 7 : : 2015/02/21(土) 09:05:32
    英語…だと…!?
    期待です!
  8. 8 : : 2015/02/21(土) 14:08:25
    >>6
    期待ありがとうございます(^-^)

    >>7
    期待ありがとうございます!
    英語は申し訳程度です。
  9. 9 : : 2015/02/21(土) 14:55:27
    英語!?

    当然母国語が日本語である武は突然上げかけられた英語での疑問文に困惑する。しかし、彼は現役学生。ちゃんと聞けばそれなりに英語で答えることが出来る。

    「えっと、こういう時は・・・パ、パードゥン?」

    「おっと、ここは日本だったな。いつもの調子で英語で話してしまった」

    日本語ペラペラかい。

    内心突っ込むと同時に、落ち着きを取り戻した武は改めて少女を見る。

    髪は茶色がかかったショートヘア。服装は地味な感じで少し汚れが付いている。歳は中学生くらいだろうか。

    容姿は・・・けっこうかわいい。

    「追手は居ないようだな」

    「追手?」

    「すまん。こちらの話だ」

    彼女は何を言っているだろうか。それに、彼女の話す日本語も流暢だが話し方がやや独特だ。時代劇か何かを見て覚えたのだろうか。

    「てかお前、何でこんなところで倒れてたんだよ」

    武は一番気になっていたことを質問する。

    「ここ最近何も食べていなくてな。情けない話だが、空腹で目眩に襲われてしまった」

    この日本で空腹により行き倒れそうになる人が居たとは・・・

    流石にかわいそうに思えた彼は常備している補食を鞄から取り出した。

    「これやるよ。それと本当に困ってんなら市役所に行くんだぞ」

    「かたじけない。だが私は役所の世話になるわけにはいかないので、その忠告は聞くわけにはいかない」

    この期に及んでプライドが高い女だと、彼はうんざりした。

    「そんな安いプライド、捨てちまったほうが身のためだぞ」

    「プライドどうこうの問題ではないのだ。しかし、食糧を分けてくれたことには感謝する。では、さらばだ」

    「お、おい」

    少女は武の元から去って行った。

    「何だったんだ、あの女」

    不思議なこともあるものだなあと振り返る。

    それからすぐに彼は再び帰路に着いた。
  10. 10 : : 2015/02/21(土) 17:17:06
    「ただいま」

    夕方の4時半頃に自宅に辿り着いた武は自身の帰宅を知らせる。しかし、返事は帰って来ない。それも当然。

    彼が帰宅を知らせたの相手は、両親の仏壇であるからだ。

    父親が死んだのは、ホルダー検診の半年後の事だった。死因は事故死。通勤途中の交通事故だ。それから母親は女手一つで武を育てたが、無理が祟ったのか武が小学校を卒業する直前に病気で他界した。

    その後武は叔父の家に引き取られ、中学校の3年間を過ごした。卒業後、生まれ育った家に戻りたいという思いと叔父の家族への負担を少しでも減らせればという思いで、取り壊されることなく残っていた生家で一人暮らしをすることにした。

    それから2年と1か月、彼はずっと一人で暮らしてきた。

    「タイムセールスまでは・・・後15分しかねぇや」

    時計を見て時刻を確認した武は自転車に乗る。

    今日の夕飯は何にしよう。

    そんな事を考えながら彼は最寄りの店である「和田商店」へと向かう。
  11. 11 : : 2015/02/21(土) 22:24:25
    武が店に着いた頃にはタイムセールスが始まっていた。

    「さっさと買い物済ませねぇと・・・」

    武は大急ぎでお目当ての品を買い物かごへと入れていく。そして、レジへと辿り着いた。

    「お、今日も頑張ってるなあ」

    レジを担当していたのは店長の和田幸太郎であった。何を隠そう、彼は親太朗の父である。

    「本当なら無償で商品をあげたいぐらいだけど、こっちも商売だからな」

    「新聞を取ってないのに安売りを知らせる広告をくれるだけでも十分ありがたいですよ」

    それだけではなく、親太朗の父は時折武を親太朗と共に遊びに連れて行ってくれることもある。武は親太朗の父に言葉では言い尽くせないほどの感謝の心を持っていた。

    「ありがとうございました!今後とも御贔屓に!」

    買い物を終えた頃には、辺りは夕焼けに染まっていた。武は下校時と同じように、音楽を聴きながら一人道を歩く。

    そして、十字路を曲がる。

    「あれ、あいつは・・・」

    道の真ん中には、先程行き倒れかけていた少女が立っていた。
  12. 12 : : 2015/02/22(日) 19:09:30
    「おいお前、市役所には行ったのか?」

    武はそう言って彼女に話し掛ける。すると、少女は驚いたような顔をした後、人差し指を立て、口に近付けた。

    喋るなということか。しかし、俺が話し掛けると何かまずいことでもあるのだろうか。

    疑問に思っているうちに、彼女は次なるジェスチャーをする。

    これは・・・あっち行け?何だよ、助けてやったのに酷い奴だな。

    武は内心ショックを受ける。だが、彼女に嫌われたところで特に損があるわけではないので大人しく引き下がろうとした。その時・・・

    「その男、お前の仲間か?」

    男の声がした。声がした方を見ると、黒いスーツを身に纏い、サングラスをかけたいかにも怪しげな三人の男が立っていた。

    「違う!この男はさっき偶然会っただけだ!」

    鋭い剣幕で少女は武との関係を否定する。

    「そうか。それならばお前を信じよう。お前が俺達と一緒に来てくれさえすればな」

    リーダー格と思われる男が発した言葉に、彼女は苦渋の表情を浮かべる。

    「もし、また逃げ出そうというのなら・・・その男を殺す」

    「え、俺!?」

    目の前に起こっている出来事を把握できず、訳が分からなくなっている武に突然殺害予告が突き付けられる。しかし、彼には一つだけ理解していることがあった。それは、彼女がこの男達から逃げてきたということである。

    つまり、この男達は彼女を無理矢理連れて行こうとしているのだ。武と言う人質を使って・・・

    「さぁ、早く決めてもらおうか」

    リーダー格の男が選択を急かす言葉を突き付ける。その言葉に彼女は、遂に逃亡を諦めることを選択し、その意思を告げようとする。

    「おいおいあんたら、女の子に対して高圧的過ぎやしないか?」

    先に口を開いたのは武だった。彼の言葉に、リーダー格の男は部外者は黙っていろと怒鳴った。

    人質の俺が部外者な訳ないでしょ。

    という本日二度目の突っ込みの言葉は心の中に留め、代わりに少女へ呟いた。

    「逃げるぞ、嬢ちゃん」

    彼の突然の言葉に彼女は大きく目を見開く。しかし、それ以上に3人の男達が過敏な反応を示した。

    「逃げる!?てめぇ状況分かってんのか!」

    先程の数倍の声量で怒声を上げると共に、リーダー格の男の右手が砲塔のような形状に変わった。

    こいつ、ホルダーだったのか!でももう、後には引けねぇ・・・

    武は覚悟を決め、買い物袋からある物を取り出した。
  13. 13 : : 2015/02/22(日) 20:42:48
    輪ゴム?いや違うか
  14. 14 : : 2015/02/22(日) 22:34:30
    >>13
    輪ゴムはとっておき(笑)ですよ。
  15. 15 : : 2015/02/22(日) 22:49:56
    「これでも食らえ!」

    武がそれをリーダー格の男へ投げ付けた。

    パリィンという音共に黒い液体が男の顔面へとぶちまけられる。彼が投げたのは、先程購入したばかりの醤油の瓶だった。

    「ぼさっとしてないで逃げるぞ!」

    武は少女の手を引き路地へと逃げ込んだ。



    「はぁ・・・はぁ・・・何とか巻いたな。サイコガン野郎め、地元住民の土地勘をなめんなよ」

    「何故だ!」

    「え?」

    「何故こんな無茶をした!」

    少女は大声で武を怒鳴った。彼はその声量を注意した後、答えた。

    「何となくだよ」

    「何となく・・・だと・・・」

    「それより、いい加減状況を教えてくれないか?服装と言いホルダーがいることと言い、あの集団、普通じゃないだろ」

    武の質問に、少女は一度目を伏せる。

    あまり話したくないことなのだろうか。それとも、こんな状況になってもまだ俺の事を巻き込ませまいとしているのだろうか。

    武は話したくなければ話さなくて良いと、少女に告げるが、彼女はここまで巻き込んでしまった以上話さなければと言い、顔を上げ質問に答えた。

    「奴等はノアという犯罪組織、俗に言うマフィアだ。そして私はその組織で殺し屋をしていた」
  16. 16 : : 2015/02/23(月) 20:55:55
    マ、マフィア!?殺し屋!?

    少女の告白に驚きを隠せない武。そんな彼をよそに彼女は説明を続ける。

    「生まれた時から十数年間殺し屋家業を続けてきたが、とうとう嫌になってな。こっそり組織を抜けてきたらこんなことになってしまった」

    「お、おう・・・」

    もしこの話を彼女と初めて会った段階で聞いていたら絶対に信じなかっただろう。だが、あの怪しい黒服三人衆と対面し、危うく殺されかけた武はその話を信じるしかなかった。

    その上で、彼は一つの質問をする。

    「てことは、お前もホルダーなのか?」

    わざわざ追手にホルダーを向かわせたのだ。彼女もそれなりの能力を持つホルダーに違いない。

    そう思って彼はこのことを尋ねた。そして案の定、彼女は自分がホルダーであると答えた。

    その答えを聞き、彼は何とか黒服三人衆を返り討ちに出来ないものかとさらに質問する。

    「残念ながら、今はその能力を使うことはできない。私の能力を使うには特殊な武器が必要になるのだ。しかし、その武器はノアに取り上げられてしまっている」

    「そうか・・・」

    やはり皆が漫画のように便利な能力を持っているわけではないようだ。

    そう悟った武は少女に仲間意識のようなものを覚える。そのことが原因で、彼は不覚にも彼女の次の言葉を否定することとなった。

    「しかし、ホルダーでもないのに巻き込んでしまってすまないな」

    「良いって。俺も一応ホルダーだし」

    あ・・・

    武は少女の顔を見る。彼女は驚嘆していた。

    どうしよう。このままだと絶対何の能力なのか聞かれることになる。自分の能力が"輪ゴムを創り出すこと"だなんて言いたくなかったから、ほとんどの奴に今まで秘密にしてきたのに・・・

    「どんな能力なのだ?」

    やっぱりだ。

    一瞬答えに戸惑うも、すぐに諦めて彼は真実を話すことにした。

    「俺は何もないところから"輪ゴムを創り出すこと"が出来るんだ。しょうもない能力だろ?」

    再び少女の顔を見てみる。

    きっとがっかりしているに違いない。若しくは無反応だろうか。

    しかし、彼女の反応は武の予想を大きく裏切った。

    「それは・・・本当か!?」
  17. 17 : : 2015/02/23(月) 22:01:28
    少女は武が自身はホルダーであると告げた時よりも明らかに大きな反応を示した。

    「あ、ああ。そうだけど・・・」

    意外過ぎる反応に困惑しながらも武は答える。

    「これなら、奴等の事を撃退できるかもしれん」

    どういう事?

    少女の上をいく驚きを見せる武。何故自分が輪ゴムを創り出せる為に黒服三人衆を撃退できるのか彼は聞き返そうとする。

    「てめぇら!見つけたぞ!」

    丁度その時、ニ人は彼等に見つかってしまった。

    「くそ、もう一回逃げるぞ!」

    武は少女の手を引き再び逃げ出した。それを見た三人の男達はすぐに彼等を追いかける。

    先程と同じような状況。しかし、醤油瓶による奇襲がない分が響き、徐々に距離が縮まっていく。

    このままじゃ追いつかれる。

    武が諦めかけた時だった。

    「おい貴様、輪ゴムを創れ」

    少女が口にしたのは、余りにも緊張感のない言葉だった。

    「お前、こんな時にふざけてんのか!」

    「ふざけてなどいない。黙って輪ゴムを創り出せ。それも貴様が創り出せる中で一番頑丈なやつをだ」

    少女は真剣な面持ちで答える。その表情に、武は承諾せざるを得なくなった。

    「・・・別に良いけど、何に使う気だ」

    「輪ゴム鉄砲の弾に使う」

    「は!?やっぱりお前、ふざけてんだろ!そんな子供のおもちゃで大の大人を倒せる訳が」

    「倒せるさ。私の能力は"輪ゴム射撃"だからな」
  18. 18 : : 2015/02/24(火) 20:31:35
    おっ!すごいペアだ…!
  19. 19 : : 2015/02/24(火) 21:48:38
    「輪ゴム射撃だと・・・」

    弱そう・・・と言いかけるが人の事は言えないのでその言葉を飲み込む。代わりに武は質問した。

    「それのどこに特殊な武器が必要なんだよ。輪ゴムなんてどこにでも売ってるだろうが」

    「市販の物ではダメなのだ。強度が低すぎて撃つ前にちぎれてしまう」

    「・・・分かったよ。このままじゃ確実に追いつかれるし、お前の力に賭けてみることにする。だけど、最上の強度の輪ゴムだと一個しか創れないぞ?」

    「一発あればあの程度の奴等三人、倒すのは訳無い」

    「その言葉、信じるぞ」

    武は右手の指先に意識を集中させる。すると、赤い標準サイズの輪ゴムが現れる。彼はそれをすぐに少女へ渡した。

    「ほう、赤い輪ゴムか。強度は・・・そこそこと言ったところだな」

    微妙な反応に、武の不安が増す。それを感じたのか、少女は彼へ案ずるなと声を掛ける。

    「3秒後に止まるぞ」

    少女が呟く。武はそれに従い、3秒後、二人は同時に立ち止まり黒服三人衆と向かい合った。それを見た三人衆もまた立ち止まり、リーダー格の男が再び右手を砲塔のような形状に変化させる。そして、彼はそれを二人に向けてから口を開いた。

    「どうやら諦めがついたようだな。俺は優しいから大人しくしているなら一度逃げたことは水に流してやろう。もっとも、その男の首は吹き飛ぶことになるがな」

    絶体絶命の状況に、武は心臓の鼓動が激しくなり、全身から冷や汗が流れ出る。

    そんな中、少女は不敵な笑みを浮かべた。そして、輪ゴムを指に掛けている右手を彼等に向ける。

    「吹き飛ばされるのは貴様等だ」
  20. 20 : : 2015/02/24(火) 22:45:18
    少女が放った勝利宣言、それは第三者から見ると余りに説得力に欠ける宣言だった。それも当然。少女が男に輪ゴム鉄砲を向けているだけなのだ。

    しかし、黒服三人衆はその勝利宣言に明らかに怯んでいた。いや、正確には勝利宣言そのものではなく、彼女に右手の人差し指を向けられている事に恐怖しているのだ。

    「てめぇ!どこで輪ゴムを!?」

    「つい先程運命的な出会いをしたものでな」

    確かにこの出会いは、運命としか言えないなと武は少女の言葉に共感する。

    輪ゴムを創れるだけで、それ以外何もできない男。マフィアを撃退することも出来るが、輪ゴムがなければ無力な少女。この二人が出会ったことを運命と呼ばなければ、他に何を運命と呼べばいいのだろうか。

    そして、彼女はいよいよ輪ゴム鉄砲の発射準備に入る。

    弾種(モード)拡散弾(ワイド)出力(パワー)・20%」

    少女が何かを呟くと共に、彼女の右手の指に掛けられた輪ゴムがキリキリと音を立て始める。

    その姿を見た黒服三人衆は急いで逃げ出そうとする。しかし、もう遅かった。

    輪ゴム鉄砲(ラバー・ショット)!」
  21. 21 : : 2015/02/24(火) 22:46:48
    ちなみに彼女の輪ゴム鉄砲はこのタイプです↓
    http://www.geocities.jp/hasu58/sepia/wagomu/wagomu3.jpg
  22. 22 : : 2015/02/25(水) 17:12:39
    なんだ…この胸のトキメキは…
    かっこよすぎないか…?ヒロインじゃないのか…?
  23. 23 : : 2015/02/25(水) 18:17:46
    >>22
    正真正銘のヒロインですよ(^^)
  24. 24 : : 2015/02/25(水) 18:56:19
    少女の右手の人差し指から輪ゴムが放たれる。輪ゴムは彼女の手を離れると同時に、地面と水平方向に引き伸ばされていく。そして黒服三人衆に追いつく頃には横の長さは路地の幅ほどとなり、三人を同時に弾き飛ばした。

    輪ゴム鉄砲が直撃した三人は地面へと突っ伏す。リーダー格の男以外は既に意識を失っていた。

    「よくも・・・」

    男は起き上がり、砲塔となった右手を少女へと向けようとする。

    「動くな」

    こめかみに銃口を突き付けられ、男は動きを止めた。少女は男が起き上がるよりも前に、他の二人の懐から弾き出された拳銃を拾っていたのだ。

    「命が惜しくばすぐに倒れている二人を連れてこの町から消えろ。さもなくば、次はお前の脳天に風穴を開けるぞ」

    「く・・・す、すいませんでしたぁぁぁ!!!」

    男はすぐさま倒れている二人の身体を背負い、走り去って行った。

    「すげぇ・・・」

    その光景を目の当たりにした武は、感嘆の声を上げた。マフィア三人を撃退した少女の勇姿に、そして何より自分の能力が初めて誰かに本当の意味で役に立ったことに感動していた。

    それからすぐに、今度は絶体絶命のピンチから解き放たれたことへの安堵の感情が湧き出る。

    「助かったぜ、お嬢さん」

    「それはこちらのセリフだ。それと、お嬢さんだのお前だのと呼ぶのは止めろ。私にはエマという名前がある」

    突然名前を名乗られる。

    もしかして、逃げている間中ずっと呼ばれ方を気にしていたのでは・・・

    そんな事を思い、武は苦笑を浮かべる。

    「・・・助かったぜエマ。それと、俺の名前は武だ」

    「武か、良い名前だ。ところで、急な話で悪いのだが・・・」

    「何だ?」

    心なしかエマが緊張しているように見える。

    少し無言になった後、咳払いを一つしてから彼女は口を開いた。

    「私のパートナーになってくれないだろうか」
  25. 25 : : 2015/02/25(水) 22:42:16
    「パートナー!?」

    それはつまり、これからずっと一緒に頑張って行きましょうってことだから、つまり・・・

    「付き合ってくれってことか!?」

    「何故そうなる!」

    武は真面目に質問したつもりであったが、エマはその問いに顔を真っ赤にして怒った。

    「全く、これだから思春期は・・・」

    それを言うならお前も思春期だろうと内心突っ込む。

    「今回は追い払ったが、またいつノアから追手が送られてくるか分からない。だからいつ奴等と会っても輪ゴムが使えるように、常に武には一緒に居てもらいたいのだ」

    「それって、付き合う以上の関係じゃねぇか」

    「な・・・そ、それはそうだが、これはあくまで身を守る為の手段だ。恋愛目的で交際するのとは訳が違う!」

    エマの顔が今度は恥ずかしさで赤くなる。

    「もちろん嫌なら断ってくれ。私も本当は部外者を巻き込みたくはない・・・」

    それを聞いた武がこの話を断るだろうと思ったのか、エマの表情が突然曇る。

    「なってやるよ、パートナーに」

    「本当か!?」

    エマの表情の曇りが一気に晴れる。

    「では、これからよろしく頼むぞ」

    そう言ってエマは満面の笑みを武へ向けた。

    俺の存在がこんなに喜ばれることがあるなんてな・・・

    感慨に耽りながら、彼もまた笑って言った。

    「こちらこそよろしく」
  26. 26 : : 2015/02/26(木) 18:32:14
    武さーん!何さらっと可愛い女の子手に入れてんのーー!!?俺と場所チェンジだチェンジ!
  27. 27 : : 2015/02/26(木) 19:15:01
    >>26
    輪ゴム出せるようになって出直してください(笑)
  28. 28 : : 2015/02/26(木) 19:41:43
    「ところで一つ気になったんだけど、お前家はどうするんだよ。行き倒れかけるぐらいだし無一文なんだろ?」

    「そんなもの、答えるまでもないだろう」

    どういう事だ?

    武はエマの抽象的な答えに首をかしげる。

    「パートナーになると言ったではないか」

    「え!?まさか・・・」

    武の頭に一つの答えが浮かぶ。その答えは正解だった。

    「武、貴様の家に居候させてもらう」

    「何ぃ!?」

    それってつまり、女子と二人で暮らすってことだろ。確かにこれは思春期の男子としては喜ばしいことこの上ない話だ。だけど・・・倫理上大丈夫なのか?いや、別にいけないことをしようなんて気はサラサラないんだけど・・・

    武の思考回路が加速し、彼の顔が赤く火照っていく。

    「顔が赤いぞ。熱でもあるのか?はっ!貴様、いかがわしいことを考えているのではないだろうな!」

    「そ、そんな訳無いだろ!俺は年下には興味ねぇよ!」

    「信用できるか!全く、これだから思春期は・・・」

    またそのセリフか。

    そう思いながらエマの顔を見ると、彼女の顔も少し火照っている気がした。

    「だが、貴様が唯一無二の存在なのは事実だ。とにかく家へ案内してくれ」

    「分かったよ」

    段々エマの口調が偉そうになっている気がする。俺をパートナーとして認識したからこその変化ではあるだろうが、年下からの上から目線は少し鼻に付く。

    しかし、それを咎めるつもりはない。だって、エマの方が強いから。それに・・・

    「それと、もし変な事をしたら半殺しにするからな」

    「しないって言ってんだろ!」

    俺なんかを、心の底から頼ってくれてるから。
  29. 29 : : 2015/02/26(木) 23:07:38
    二人が武の家に着いた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。

    「ここが俺の家だ」

    「ほほう。普通だな」

    エマの言葉に少しムカッと来る。彼女は自分がお願いしている立場だということを分かっているのだろうか。

    「入るぞ」

    武は玄関の鍵を開け、扉を開き、家へと入る。エマもそれに続いて家へと入った。

    「お邪魔します」

    何だかんだ言っても挨拶はしっかりするんだな。

    武はエマを少し見直す。

    「お前の両親に挨拶をしておきたいのだが・・・今は留守でいらっしゃるのか?」

    エマが当たり前の質問をする。だが、武はその問いに沈黙し、僅かに俯き何かを考え込む。しかし、彼女が顔を覗き込んで来たことで我に返り、彼は口を開いた。

    「いないんだ」

    武は一言で返した。これでは当然言葉足らずだ。

    「この年で親元を離れて一人暮らしか。大変だな」

    「違う。もう、この世にいないんだ」

    武の言葉は悲しみに満ちていた。
  30. 30 : : 2015/02/27(金) 20:08:38
    「すまない。無神経なことを言ってしまった」

    自分の発言をエマは謝罪する。武はそれに対し気にするなと声をかけた。

    「その上で、御両親に挨拶したいのだが・・・」

    死人への挨拶。それを行う場所と言ったらあそこしかない。

    エマの頼みの意図を察した武は彼女を仏壇のある部屋へと案内した。彼女は部屋に着くと、仏壇の前の座布団に正座する。

    「私の名は、エマ・スレムエネと申します。今日からこの家で息子さんと共に生活させていただくことになりました。ここで、一つ謝っておかなければいけないことがあります」

    エマが深々と頭を下げた。

    「私の勝手な事情で、貴方達の息子を危険な目に晒すことになってしまいました。本当に申し訳ありません!」

    エマの誠心誠意の謝罪に、武は呆気にとられていた。彼は、彼女がこんなことを言うとは思っていなかったからだ。

    本当は誰も巻き込みたくなかったのだ。それなのに、彼女を辛い選択を選ばざるを得ない状況に追い込んだノアのことが許せない。

    彼の心にノアに対する怒りがこみ上げてくる。それと同時に、疑問が一つの疑問が浮かび上がった。

    エマは・・・こんなにも優しい彼女は、どうして殺し屋等という道を選んだのだろうか。

    丁度その時、エマが顔を上げ、再び仏壇と向かい合った。

    「私に一つ、誓わせてください!息子さんは必ず私が護ります!例え、どんな敵が現れようとも!ですから・・・心配せずに、息子さんを見守ってあげてください」

    エマはそう言うと、軽く一礼した後に立ち上がり、武の方を向いて言った。

    「さっき誓った通りだ。お前のことは私が必ず護る。だから、何も心配しなくて良いぞ」

    「・・・ありがとよ」

    女の子に護ってもらうなんて、男の風上にも置けないな・・・

    そんなことを思いつつ、武は答えた。
  31. 31 : : 2015/02/27(金) 23:04:43
    「さあ、お腹も減ったし夕食にしよう。武は食事はいつも自分で作っているのか?」

    「あっ・・・」

    料理の話題を振られ、武は何かを思い出した。

    「夕飯の材料、全部道に置いてきちまった!」

    「な、何だと!?大事な食糧を忘れるとは何事だ!」

    「仕方ないだろ!あの三人に追われて買い物袋なんて持ってる余裕はなかったんだから!」

    「なるほど。つまり私にも責任の一端はあるわけだ。ならば文句は言えないな。それで、今日の夕食はどうするのだ?」

    武は腕を組んで考え込む。

    「また和田商店に行ってたら、食べるのは9時を過ぎるし・・・コンビニにすっか。そうと決まれば早速買い物に行ってくる」

    「私も行くぞ!」

    「一人で良いって」

    「何時ノアからの追手が来るか分からん以上、もしもの時に備え、常に一緒に居なければ駄目だ。私達はパートナーなのだからな」

    「へいへい」

    二人は一緒にコンビニに行き、カップラーメンを二つ買ってそれを夕食とした。



    こうして、輪ゴムを創り出す男と輪ゴムを撃ち出す少女の共同生活が始まった。

    二人の絆が試されるのは、もう少し後のことである・・・

  32. 32 : : 2015/02/28(土) 21:01:39
    遅れましたが続きはこちらです。
    http://www.ssnote.net/archives/32055
  33. 33 : : 2015/02/28(土) 21:36:30
    面白い!
    最初見たとき主人公が使えないゴミ野郎だと思ったんだけど、エマの能力とかベストマッチだね。
    能力が個性的で、そしてエマのしゃべり方とかが独特で僕的には面白かった。
    続きも期待!
  34. 34 : : 2015/02/28(土) 22:48:50
    >>33
    そのように言っていただけるととても励みになります。第二話もよろしくお願いします!
  35. 35 : : 2015/03/05(木) 20:50:34
    エマ可愛いですねッ
    ドストライクですww
    続き期待ですッッ
  36. 36 : : 2015/03/05(木) 21:54:41
    >>35
    期待とお気に入り、そして何よりエマを可愛いと言ってくださってありがとうございます(*^_^*)
  37. 40 : : 2020/10/03(土) 08:44:17
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
    http://www.ssnote.net/archives/86931

    害悪ユーザーカグラ
    http://www.ssnote.net/archives/78041

    害悪ユーザースルメ わたあめ
    http://www.ssnote.net/archives/78042

    害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
    http://www.ssnote.net/archives/80906

    害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
    http://www.ssnote.net/archives/81672

    害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
    http://www.ssnote.net/archives/81774

    害悪ユーザー筋力
    http://www.ssnote.net/archives/84057

    害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
    http://www.ssnote.net/archives/85091

    害悪ユーザー空山
    http://www.ssnote.net/archives/81038

    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986

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