このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
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エレン「新撰組?」 サイドストーリー: 孤高の天才剣士 episode of ミカサ
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- 1 : 2015/01/26(月) 04:35:59 :
- エレン「新撰組? 」のサイドストーリーです。
一発目は、ミカサと一番隊隊長 沖田総司のお話しになります。
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- 2 : 2015/01/27(火) 22:48:05 :
初めて刀を手にした時から、他を寄せ付けなかった。
神童と呼ばれ、手に入れたのは「強さ」
しかし神童は孤独だった。
やがて神童は、狼になった。
人を斬るのが楽しくて仕方がない。
そして狼は気付いた。
大切な人が、自らの剣で死んでゆくー
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- 3 : 2015/01/27(火) 22:57:30 :
沖田「はあー。」
巡回から戻れば立会い、非番であればお命頂戴する。
このやりとりに心底疲れていた。
あぁ、あの子の足音がする。きっと今日も…
ガラッ
ミカサ「男女隊長。今日こそ地面に這いつくばってもらおう。」
ほら…やってきた。
沖田「あのね、確かに稽古をつけるとはいったけど…私は一番隊の隊長でもあるんだよ。当然隊務もあるの。」
墨汁を必死こいて擦ってるその姿にも、ミカサは動じなかった。
ミカサ「そう…ならば終わるまでしばし待たれよ。」
沖田「またおかしな言葉使って…また島田さん辺りに仕込まれたの?」
ミカサ「いいえ、原田さん。あの人は物知り。」
沖田(いやー、その認識もおかしいよ…)
沖田「とにかく今日は相手できそうにないよ。他の人に頼んでみたら?」
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- 4 : 2015/01/27(火) 23:26:32 :
- ミカサは庭に出ると辺りを見回した。
隊長格でないと、稽古にならない。
原田「わっはっは!!新撰組の横綱の座は、そう簡単に渡せるか!」
コニー「こうなったら奥の手よ!秘技、蟷螂拳!」
原田「何ィ?!小癪な!!」
ミカサ「…」
土方「待て。今のは無しだ。やはりこっちにしておく。」
ジャン「何回やり直せば気がすむんだよ…」
土方「うるせぇ、小姓に負けてたまるかよ。おら、お前の番だ。」
パチ
土方「うぉ、待った!そこにだけは置くな!」
ミカサ「…」
土方も原田も取り合ってもらえそうにない。
他隊の隊長とは繋がりも少ないので、沖田のようにはいかない。
ふと縁側で寝そべる斎藤が目に入った。雲をじっと見つめている。
斎藤「…」
ミカサ「斎藤さん、刀の指導をお願いしたい。」
斎藤「…」
ミカサ「?」
返事がないのを不審に思い、近づいた。
ガッ
斎藤「…お前か。」
ミカサ「何をしていたんですか?」
斎藤「昼寝だ。」
ミカサ「え?」
斎藤「路上で寝泊まりしていた時の癖だ。目は開いていても、睡眠している。」
ミカサ「はぁ…」
この男はミカサにとって取っつきにくかった。似ているとは言ったものの、行動も思考も読めない。
黙って隣に座ろうものならば、無言で半日が過ぎてしまうだろう。
斎藤「この間も言ったが、俺の剣は人に教えられるものではない。」
ミカサ「では、何?」
斎藤「薄汚い、血にまみれた剣だ。生きる為ならどんなこともする。」
斎藤「剣とはその者の生き様を表す。つまりは、俺はろくでなしという事だ。」
薄い笑みを浮かべて平然と言い放った。
ミカサ「沖田さんの剣は確かに綺麗。でも人間性は間逆。意地汚くて、ひねくれ曲がっている。」
斎藤「お前と立ち会っている時の沖田さんは、とても活き活きしていたがな。」
ミカサ「そんな事は…」
斎藤「お前も気付いているのだろう。もはや、沖田さんを負かすのが目的ではないことを。」
ミカサ「…」
斎藤「…喋りがすぎた。フーバーとの約束がある。」
そう言うと斎藤は境内の方へ歩いていった。
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- 5 : 2015/01/31(土) 15:50:18 :
- 結局その日は一人で素振りをすることになった。
刀とは奥が深いものだ。呼吸・踏み込み、これらが馴染み深い気がしてならない。
ふと思った。
自分は何の為に強くなりたいのだろう?エレンを守るため?
違う。そもそも力を手にしたきっかけは…
ズキン。
そう、自分は意思とは関係なく力を手にしたのだ。
ミカサ(ああ、またこれか。)
しかし何かの為に強くなれるのなら、あの人にも「何か」あるのだろうか?
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〜翌朝〜
近藤「総司の強さについて?」
ミカサ「局長にも是非協力頂きたい。」
近藤「そう言われてもなぁ…9つの頃から、大人相手でも難なくこなしていたが。」
ふむふむとミカサはメモに書き取る。
ミカサ「9歳からとは…なかなかやる。しかし私も…ボソボソ…」
近藤「?一体何だ?」
井上「うーむ。弛まぬ努力の結果じゃないのか?」
原田「そんなもん飯に決まってんだろ!あー腹減った!」
永倉「難しい事を気にするな。強さ、すなわち心だ。」
ミカサ「…」
一向にまとまらなかった。試衛館時代からの仲という三人に聞いてこれなのだから、他に聞いても無駄だろう。
ここで一旦方向を変える事にした。
ミカサ「アルミン。団長や兵長の強さとは?」
頭の切れる幼なじみは、自室で読書にふけっていた。
アルミン「いきなりどうしたんだい?」
ミカサ「強さには何か源があると考えた。そしてそれは人それぞれ。」
アルミン「うーん、言っている事が飛躍しすぎてよくわからないけど…エルヴィン団長の場合は、人間性を捨てている事じゃないかな?」
非情に徹する事。団長とはまだ一年の付き合いだが、それはわかる気がした。
ミカサ「では兵長は?」
アルミン「え?」
ミカサ「あのチビ。」
アルミン「…はは。リヴァイ兵長はわからないなぁ。ミカサの方が知ってるんじゃないの?」
そう言われて幼なじみに鋭い視線を向けた。
誰があんなチビの…
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- 6 : 2015/01/31(土) 16:03:44 :
- 沖田「随分嗅ぎ回っているようだね。」
部屋を出た所で沖田に出くわした。
ミカサ「あなたの知った所ではない。」
沖田「いや、知った所だからね。そんな他人事みたいに。」
ミカサ「認めたくはないけど、あなたは強い。その根源を探していた。」
それを聞いて沖田は目を見開いた。
沖田「強い?僕が?…そうか、君には私がそう見えるんだね。」
どこか裏を含んだような言い方だった。
沖田「いいよ、教えてあげよう。」
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胴着に着替え木刀を握る。
沖田「私はね、早くに武家に奉公に出されたんだ。親の顔なんて当然覚えちゃいない。」
ミカサ「…」
沖田「そこで近藤さんに出会い、刀にも出会った。近藤さんは私に存在意義と居場所をくれた。」
バシッ!
沖田の胴払いを受け止める。
ミカサ「そう、局長はあなたにとって家族なのね。」
沖田「ああ。私はあの人の剣になると決めた。」
ガッ!
木刀と木刀が交差する。
沖田「新撰組が大きくなるにつれて、浪人を斬る機会も増えた。嬉しかったよ、私は役に立っているって。尊皇志士を斬れば斬るほど、近藤さんの為になるって。」
沖田「だけど…ある時気付いた。」
ミカサ「…」
沖田「!!」
ガシッ!
ミカサ「一本。一瞬鋒が鈍った、あなたらしくもない。」
沖田「くっ…」
ミカサ「心配しなくてもいい。これは無効試合、勝ったとも思ってない。」
何か言いたげな沖田を残し、道場を後にした。
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- 7 : 2015/02/05(木) 21:51:22 :
- いてもたってもいられなかった。
恐かった。
沖田に自分を重ねそうになったのが、恐かったのだ。
一本を取った感触など、もはや残っていなかった。
自分に何かを語りかけようとしたあの目、あの無機質な目に吸い込まれそうになり、思わず木刀を振り上げた。
ライナー「ミカサ?」
廊下の角で声を掛けられた。思わず顔を隠す。
ライナー「どうしたんだ、真っ青だぞお前。」
ミカサ「何でもない。」
ライナー「何でもない奴がそんな顔をするか。バレバレだぞ。」
ミカサ「…」
ライナー「おっ、来るか?今日はそう簡単にひっくり返されんぞ。」
身構えたライナーだったが、返ってきたのは思わぬ返答だった。
ミカサ「到底受け入れられないものは、どうしたらいい?」
ライナー「はっ?」
ミカサ「どうしたらいい?」
ライナー「お、おう。そうだな…無理に受け入れる必要はないんじゃないか?」
予想外の展開に狼狽えたが、すぐに機転を利かせ答えた。
ミカサ「無理に?」
ライナー「そうだ。受け入れるだけが全てとは限らんだろ。俺は思うんだが、受け入れる事と理解することは別なんじゃないか?」
ミカサ「理解すること…」
ライナー「受け入れる、向き合う、理解する、全て似たような言葉だが本質は違う。」
ライナー「ところで何の話だ?何なら詳しく聞いてやっても…」
ドン!
言いかけた瞬間、ライナーは宙に舞い無様な格好をさらした。
ライナー「…それでこそミカサだ。」
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- 8 : 2015/02/08(日) 23:32:50 :
- どんな形でもいい、憎しみは愛の裏返し、ではないけれども。
もう一度沖田と向き合おうと思った。
あの男女は好かない。
ただ、どこかで繋がる所があるのかもしれない。それを知ったときに、自分も強さの根源を得る事ができるのではないか。
ミカサ「…いた。」
どこかに出かけるのだろうか。屯所の門をくぐろうとしていた。
後を追い、話しかけようとしたがすぐに様子がおかしい事に気付いた。
沖田「ゴホッ、ゴホッ…!」
咳やむせと言うよりも、何かに苦しんでいるようだった。
口を押さえ、沖田は屯所を後にした。
追わなければ。本能的に足が動いた。
アルミン「ミカサ?どこ行くの?」
ミカサ「少し野暮用を思い出した。のでちょっと。」
アルミン「ダメだよ、この間副長に言われたじゃないか。サシャ達の事があってから、しばらく禁止するって。」
ミカサ「私はこの国の人たちと近い顔立ちをしている。それに、髪を結えば男に見えなくもない。」
アルミン「だ、だからダメだって!」
ミカサ「問題は目撃者がいる事だ。聡明で賢い幼なじみのアルミンならば、きっとわかってくれる。」
ニィ、と君の悪い笑顔を見せ、屯所を出た。
島田「おっ、アルミン。今誰か出て行かなかったか?」
アルミン「い、いや!猫です、野良猫です!!」
島田「そうか?ならいいんだが。」
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見失わないように、かつバレないように距離を置いて尾行する。
沖田は相変わらず咳き込んでいる。
ミカサ(風邪?その割にはおかしな咳き込み方を…)
しばらく歩くと、沖田は小屋に消えていった。
ミカサ(何だろうか、老人ばかりが中から出てくる。)
中に入る訳にはいかないので、裏から周りそっと聞き耳を立てた。
「…休養が一番だと言っただろう。悪化しとる。」
沖田「大丈夫ですよ、あれから血は吐いてませんので。」
ミカサ(?!)
「次吐血するようなことがあったら、それこそ終いじゃ。いいか、もう一度言う。」
「お前さんは労咳なんじゃ。わかったか?」
沖田「…わかってますよ。自分の事は自分が一番…」
沖田が小屋から出た後も、ミカサはしばらく立ち尽くしていた。
労咳。それが何かはミカサでも知っていた。
ミカサ(そんな…それでもまだ剣を握って…)
自らの命を削りながらも相手もしてくれていた。
どんなに嫌っていても、その事実に心が痛んだ。
「おや、嬢ちゃんは…」
ミカサ「!」
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- 9 : 2015/02/09(月) 00:25:25 :
- 屯所に戻ると縁側に腰掛け、隊士の鍛錬を眺める沖田がいた。
黙ってその横に座り込む。
ミカサ「…」
沖田「何も言わないんだね。かける言葉が見当たらないかい?」
ミカサ「気付いていたの?」
沖田「安心しなよ。土方さんには屯所を抜け出した事は黙っておく。その代わり、皆には言わないで。」
ミカサ「…了解しました。」
沖田「ああ。」
新入り隊士があまりの厳しさにへたり込む。そこに藤堂が怒声をあげ、蹴りを入れた。
ミカサ「気付いていたのなら、何故。」
沖田「なんとなく、君ならいいかなって思ったんだ。認めたくはないけど、私達は似ている。」
ミカサ「そう、ね。認めたくはないけど。」
オレンジの夕日が庭を綺麗に照らす。
沖田「さっきの続きだけどね、私は気付いてしまったんだ。私の剣で、大切な人達がどんどん死んでいく。」
沖田「芹沢さん、お梅さん、河合さん…剣が全てを奪っていく。」
ミカサには何の事かわからなかったが、黙って聞いていた。
沖田「その内きっと、誰もいなくなっていく。いずれ近藤さんさえも…」
ミカサ「…いつもそうだ。結果はわからなかった。」
沖田「え?」
ミカサ「私の上司がいつも口していた。どれだけ最善を尽くしても、結果はわからない。」
ミカサ「だから後悔のない道を選べ、と。」
夕日を見上げ、大嫌いな上官の姿を思い浮かべる。
沖田「優しいね、その人は。」
ミカサ「いいえ、反吐がでるほどのチビ。男女隊長と同じくらい気に入らない。」
それを聞き、沖田は苦笑した。
沖田「…わかってるんだ。過去を振り返っちゃいけないってことくらい。私は守るために強くなったのに…」
ミカサ「私はそれが羨ましい。あなたが話したから私も言おう。…私は幼い頃に、両親を目の前で殺された。」
沖田「…」
頭を押さえ、ミカサは続ける。
ミカサ「その時に助けてくれたのがエレン。だから私は、エレンを守る。私を守ってくれたエレンを守る。」
ミカサ「でも、あなたを見ている内に思った。私の強さには、あなたほど理由がない。半分は強制的に引き出されたものだから…」
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- 10 : 2015/02/09(月) 00:50:09 :
- 沖田「強制的に?」
ミカサ「そう。ここまで話したのだから、隠しても仕方がない。…私は、東洋の血を引く一族の末裔。これは、その証。」
包帯を解き、証を沖田に見せる。
沖田「だからか。初めて君を見た時から違和感がしていたんだ、この子は何か持ってるって。」
ミカサ「だからそんな体で何度も稽古に付き合っの?」
その問いには答えなかった。
沖田「ねぇミカサ。人はどこまで強くなれると思う?」
ミカサ「それは強さの定義と度合いによる。」
沖田「私はね、限りなく高みを目指したい。そしてその高みから見てみたいんだ、本当の強さを。」
ミカサ「人は、一人では強くなれない。」
腕に巻き直した包帯を、ギュッと握る。
沖田「そうだね。今まで私の周りにはそれを叶えてくれる人がいなかった。…だけど、君なら。」
ミカサ「私にあなたの手伝いをしろと?」
沖田「利害は一致しているよ。君は理由が欲しい、私は相方が欲しい。」
沖田はいやらしい笑みを浮かべた。
ミカサ「これだから…あなたは嫌い。しかしその申し出、受けてみせよう。」
藤堂「沖田さーん!手が足りないんです、一緒にお願いします!」
沖田が腰を上げるとミカサが制した。
ミカサ「高みに上がるまでは、死なれては困る。」
ミカサは木刀を握ると立ち上がり、足を進めた。
「おお、ミカサ殿がやる気だぞ!」
「沖田隊長を唸らせたその腕前、我らも学ばねば。」
沖田「…君にはほんと、敵わないなぁ。」
するとミカサは足を止め、振り向いた。
ミカサ「ひとつだけ言っておく。私はあなたが嫌い。」
ミカサ「でもあなたの剣は綺麗だと思う。そしてあなたは…」
ミカサ「孤独ではない。その太刀筋を見極めるまで、私は何回でも挑む。」
沖田「ミカサ…」
ミカサ「…」
歩きながら、手にした包みをじっと見つめる。
「これを、あなたの大切な人が苦しんでいるときに、飲ませてやって下さい。」
渡された薬をふところにしまい、ミカサは木刀を振るった。
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- 11 : 2015/02/09(月) 00:59:43 :
- ガラッ
ミカサ「男女隊長。鍛錬の時間です。」
沖田「ああ、行こうか。」
「せい、せいっ!!」
ミカサ「踏み込みが甘い。声だけでは駄目。」
道場では隊士達の先頭に立つミカサがいた。
指導しながらも、自らの木刀を振るう。
そしてそれを正座し、見つめる男。
沖田「そう言う君は、切っ先が下がってる!」
その声に舌を打ちながらも、アドバイスを意識して姿勢を持ち直す。
沖田(結果がわからなくとも、私は自分の決めた道を行く。)
沖田(少なくとも私は今…)
一人じゃない。
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- 12 : 2015/02/09(月) 01:05:18 :
- これにて終了となります。
短編と言いながら、あまり短編ではなかったかな?
最初思い描いていたのと少し変わってしまいましたが、半目しながらもどこかで沖田と自分を重ねるミカサを描きたかったんです。
まだ第一弾で、これからも続けていきたいので
皆様、意見や感想など是非おねがいします。
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- 13 : 2015/02/11(水) 06:47:20 :
- 次作です。
http://www.ssnote.net/archives/31388
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
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エレン「新撰組?」 シリーズ
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