雪が降る頃になったら
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- 1 : 2014/12/29(月) 07:57:59 :
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空が低い、冬になるといつもそう感じる。
雲も薄いし、太陽が出ている筈なのに、暗いのは何故だろう?
冬は嫌いだ。
心模様が鼠色になっていくから。
冬は嫌いだ。
独りになるから…。
両親はとうに他界しました。
友人とは絶好しました。
恋人とは破局しました。
冬は全て上手くいきません。
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- 2 : 2014/12/29(月) 08:02:43 :
とある雪の日であった。
何もかもが嫌になった私は大学をサボッた。
行く宛てもなく、私は電車に乗り、揺られていた。
私は一体、何がしたいのだろうか?
電車に揺られているうち、車内には人が誰もいなくなった。
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- 3 : 2014/12/29(月) 08:06:05 :
- 「終点まで、まだまだあるのに…」
私はそう呟く。
各駅停車な為、二分から三分すると電車はガタンと音を立てて停まる。
私はすることもなく、ただ反対側の窓の外を眺めていた。
外は雪も雨も降らず、それでいて雲一つない。
「冬の癖に…」
私は恨めしげに呟いた。
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- 4 : 2014/12/29(月) 08:10:31 :
- カツカツと足音が聞こえた。
私は足音のした方向を見ると、そこには肌の白い男性が車内へと入ってきた。
その男性は私の座っている席の反対、真正面の席に座った。
男性の顔をよく見ると、私と同い年ぐらいだということがわかった。
爽やか風なイケメンと称すべきだろうか?
きっとこの人は年上から好かれるタイプなのだろうと、私は勝手に解釈した。
清潔感のある男性は手ぶらで、表情には何の感情も読み取れないものがあった。
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- 5 : 2014/12/29(月) 08:12:10 :
- 期待
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- 6 : 2014/12/29(月) 08:16:37 :
- 「あなたはどこへ行くんですか?」
不意に真正面に座る男性から声をかけられ、驚く。
男性は爽やかな微笑みを私に向けた。
きっと私と正反対なキャピキャピしている子はときめくのだろうか。
私は何か企んでいるのだろうかと疑い深く見てしまう。
「終点まで」
私がそう言うと、男性は驚いたような顔をして、
「僕もです」
と予想外に答えた。
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- 7 : 2014/12/29(月) 08:20:48 :
- 「お話しません?終点まではかなり時間がありますし」
男性は微笑んでくる。
まるで犬のようだ。
私もその誘いを断れるほど冷酷でもない。
「ええ、まあいいですけど…」
そう言うと、男性は嬉しそうにして、私の隣に座った。
「良かった、この空間でしかも男女で何の声も何の音もしないのは嫌だったんですよ」
男性はそう言って笑った。
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- 8 : 2014/12/29(月) 08:25:24 :
- 「はあ。まあ、そうですね」
適当に答える。
面倒であるわけだから、適当に受け答えするしかなかった。
「僕の名前、甘利裕人っていうんです。あなたの名前は?」
「神木里桜ですけど…」
「里桜ですか、いい名前ですね」
どこにでもある名前だけどね。
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