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神霊百物語-参の噺
- ファンタジー × アクション
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- 1 : 2014/11/19(水) 07:35:46 :
- 朝、目覚めたら目の前に巨大なゴk…Gが。
精神衛生上の問題以前に取って食われそうな気がしたので、取り敢えず木片でカウンターを決めた。
木片で空いた腹部の穴から体液らしい緑の液体が滴っていた事に関しては忘れる事にする。ソンナジジツハゴザイマセン。
てな具合に現実逃避をしていた俺だが、流石に事態の深刻さにも気付いている。
あんなのが1匹じゃなかったら大問題だ。しかも婆ちゃんが言ってた。「ゴキブリは1匹見たら30匹居ると思ってたら大抵50匹は居る」って。…婆ちゃん、それ真ん中省略出来たんじゃ…まあいいや。
なんにせよ、あんなのがまだ50も居るとか考えたくもない。洒落にならない。
とはいえ、1人で殺虫剤を撒いて回っても効果はないだろう。だから取り敢えず、この事実を広めようと思った。
上手く行けばカー様が何か手を打ってくれるかもしれないし。
と言うわけでドアを開けました。
太陽の光が照り付ける、希望の朝です。
…まあ
キャー!!ウワアアア!!!
ブウ…ウウウン…
ブゥゥゥゥゥ…ブブブブブゥゥゥゥゥゥ…
その光が、黒光りする外殻に反射されたものでなかったら、だが。
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- 2 : 2014/11/19(水) 07:41:05 :
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神霊百物語-参の噺-
『憑守神 』
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- 3 : 2014/11/20(木) 12:47:21 :
- ドアを開けた蓮の目に映ったのは、酷い光景だった。
先ほどの虫が、何十もの群れで街を荒らしている。
住民達も神だ、無抵抗ではない。虫の死骸はまばらに転がっている。
だが、そもそも虫という種の強みは単体の戦闘力ではなく、その繁殖力から来る数である。
これまで平和な街だったことも重なり、状況は虫の圧倒的な優勢。
住民は街の奥へ逃げざるを得なかった(虫が家漁りを優先してそれを追わなかったのは幸いだった)。
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- 4 : 2014/11/22(土) 07:16:31 :
- 蓮「…なんだよこれ…っ!?」
困惑する蓮とは打って変わり、非常に冷静に行動する虫。
蓮を確認するや否や、飛びかかる。
耳障りな羽音に、二重の不快音が重ねられる。
蓮「うおっっ!!?」
とっさの判断で横に転がり、難を逃れた蓮。
が…
ゴッ……!!
鈍い音が、不協和音の下に響いた。
回避方向にも、虫が居たのだ。その体当たりは見事に蓮の顔面を捉えた。
蓮「っ…!!!…!!」
腹の底から声が漏れる。…真っ赤な血と共に。
蓮「…!!」
思考がままならない蓮に対し、虫は冷静、機械的に行動する。
静かに蓮へと近付く虫。
蓮「……そりゃ、動けねえ生き餌は狙うわな…」
反射的に連の口から出たのは、情けなくも当然な諦めの言葉だった。
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- 5 : 2014/11/23(日) 14:51:02 :
- ギチギチ…
骨が軋むような音を立てながら、その口を開く虫。
異臭を放つ液体が漏れ出てくる。
蓮「…くっそ……」
蓮は藁にもすがる思いで、出来ることをした。
…右手に力を込めた。
爪が掌に食い込み、微かな痛みを感じた。
それだけだった。
…必死で叫ぼうとした。
力を込めた腹部に不快感を感じ、血を吐いた。
それだけだった。
…自分に憑いている筈の神に語りかけた。
たった1、2秒が永遠にも感じられた。
それだけだった。
唐突に放り込まれた非現実は、帰するところ現実であった。
ご都合主義なんて存在するはずもない。
ピンチはチャンスではないし、窮地はどこまで行っても窮地なのだ。
…死ぬ時は、何のドラマも感動もなく、一筋の光明もなく、ただただあっさりと死ぬのだ。
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- 6 : 2014/11/23(日) 14:52:39 :
…グッ
…グチッ…
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- 7 : 2014/11/23(日) 15:07:24 :
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砂漠に、一輪の花が咲いていた。
右の葉が、サソリに食い千切られた。
根が、尖った岩に押し潰された。
茎が、不用心な旅人によって踏み潰された。
花が、これもサソリに食い千切られた。
左の葉が、ポトッと地に落ちた。左の葉は運良く、形を保っていた。
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- 8 : 2014/11/23(日) 15:20:14 :
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- 9 : 2014/11/23(日) 19:27:07 :
同時刻、街の中心部
「انهيار (虚脱)」
男が右手をかざす。
すると空を飛んでいた虫たちが次々と羽を止め、力無く落下していく。
「ああ、厄介な事になってるね…」
男---街の主神カーは、自らが落下させた虫に一切目を向ける事なくそう呟いた。
カー「取るに足らない羽虫相手にこのザマ、数という奴は恐ろしいね…」
カー(軍が進むのに時間が掛かりすぎてるのが1番の問題だね…この分じゃあ街の末端まで行き着くのに30分は経ちそうだ…)
カー「…会議のために役人が中心部に集まったタイミングに、自然には発生し得ない数の虫が、街の機能が鈍る早朝に、綺麗に全方位から襲撃…あり得ないんだよね」
彼はこの事態に、明らかな『首謀者』の存在を感じ取っていた。
とはいえ、そのアテは全くと言って良いほどない。
カー「…まあなんにせよ、虫の駆除が先だね。このままじゃマジリが食い尽くされちゃうよ」
結局、彼は目の前の事態を一刻も早く収束させる事を優先した。
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- 10 : 2014/11/23(日) 20:25:06 :
さらに同時刻
1人の女性が、街を駆けていた。
「何処も彼処も…!!!」
街の防衛軍の一員だったフラン。
彼女はこの事態をいち早く察知し、虫の駆除に当たっていた。
フラン「はっ!!」ヒュンッ
フランの振るう剣が、虫の甲殻を華麗に切り裂いて行く。
縦に、横に、斜めに。
虫たちは次々と斃れていく。
フラン「減る気配が無いわね…」ハァ…ハァ…
だが、視界から消えることはない。
むしろ、時間とともに増えていくようにすら思えた。
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- 11 : 2014/11/23(日) 22:58:30 :
- フラン「…どうしよ、これは不味いわね」
減っていくこちらの体力に対し、虫は次から次へと補充されていく。
フランはため息を吐いた。
と、その時。
ブゥゥゥ……ドサドサッ
フランの近くを飛んでいた虫が、一斉に落下し始めた。
フラン「!」
突然、フランを呼ぶ声が響く。
「無事か、フラン!」
「すまない、ここまで来るのに予想以上に時間を取られた」
フラン「エリック、それにネプラまで!」
それは、半神であるエリック・パラメディックと、純粋な神であるネプラのものだった。2人ともフランと同じ、マジリの軍に所属している。
エリックは長身でガタイも良い屈強な男だ。しかしその外見とは裏腹に意外とメンタルが弱いのが玉に瑕である。
軍に入ったのは最近だが、それでもフランより先輩である。
ネプラはこれまた長身だが、ガタイはあまり良くない。不健康とも言える痩せ型である。
かなり昔から軍に居るらしく、フランに色々と教えてくれた。
彼らは自らの仕事をこなしつつ、位置的に孤立しているフランのヘルプに来たのである。
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- 12 : 2014/11/23(日) 23:49:56 :
- エリック「フラン、カー様の指示は耳に入れたか?」
フラン「いや、聞いてないわ。起きたらすぐにこれだもん」
ネプラ「端的に纏めると『近くにいる虫からドンドン駆除していけ』との事だ。…まあ聞いても大して意味は無いな」
フラン「なるほどね、ありがと!2人はこの後どの辺りに向かうの?」
エリック「ここから段々と町の外側へ向かおうかと思ってる。今も避難し遅れた者が居るかもしれん」
ネプラ「今のところ死者が出ていないのが唯一の救いだからな。その一線だけは何としても守らねば」
フラン「ここから外側…そういえば、蓮君の家もその辺りだったわね…」
フランが不安気に呟く。
ネプラ「蓮というと、最近街に入った奴か。…ふむ、少しマズイな。この街に慣れていないということは、逃走経路も不明瞭ということだ」
エリック「蓮の奴はまだ憑神もわからないらしいからな、襲われると確かにヤバそうだ。…よし、少し急ぐぞ」タンッ
ネプラ「ああ」タンッ
フラン「うん…」タンッ
こうして3人は、少し急ぎつつ移動することにした。
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- 13 : 2014/11/24(月) 01:42:18 :
- 10分ほどすると、蓮の家が見えてきた。
そこは、酷い有様だった。
フラン「外側の被害が酷いのは当然といえば当然だけど…ここまで酷いなんて…」
エリック「どれもこれも原型を留めてねえな…」
ネプラ「建物は壊れ、空気は淀み、そこかしこに虫の死骸…さながら地獄絵図だな、これは」
エリック「人の死体は…見たとこ無さそうだな。…あいつらの腹に収まってなけりゃ、だが…」
ネプラ「そう縁起の悪いことを言うな。本当にそうだったらどうす……」
言いかけたネプラの口が止まる。
エリック「?どうしたネプラ」
ネプラ「…おかしい」
フラン「おかしい?」
ネプラ「…何故建物が壊されている」
フラン「?それってどういう…」
ネプラ「そもそも、死亡者が見られない原因の一つは虫たちが食料を優先して漁るからだったはずだ」
エリック「あ、ああ。だから避難がし易…」
ネプラ「…お前は食料庫から食料を取り出す時、わざわざ壁を壊すか?エリック」
エリック「何を…あっ!」
ネプラ「気付いたか。そう、この状況はおかしいんだ」
ネプラ「虫たちが住居を破壊するはずがない。そのメリットと動機がないんだ」
フラン「…それって…!」
ネプラ「恐らく…
ネプラ「ここの破壊には人為的なものが関わっている」
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- 14 : 2014/11/24(月) 01:57:56 :
- フラン「人為的な…工作…」
エリック「…そいつが今回の事件を引き起こした、と?」
ネプラ「そこまでは断言できん。だが調べる価値はある」
エリック「どうする、カー様に報告するか?」
ネプラ「ああ、それがいい。任せられるか?」
エリック「おう、当然だ!任せとけ!!!」ダッッ!!!
そう言うや否や、エリックは走り出して行った。一刻も早く伝えるべきだと判断したのだろう。
ネプラ「…私達はもう少しここを調べよう。何か手掛かりがあるかもしれない」
フラン「じゃあ私は家の中を調べてくるわ。」
そう言って、壊れた民家に歩を向けるフラン。
ネプラ「ああ、頼んだ」
ネプラはその姿に目を向ける事なく、そう返した。
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- 15 : 2014/11/24(月) 10:51:27 :
ネプラ「…」
無言で、1匹の虫の元へと近付く。
ネプラ「やはりか…あいつらに気付かれなかったのは幸いだったな」
そう言い、虫の近くに落ちていた『何か』を拾い上げる。
ネプラ「…悪いな、私の計画に発した歪 は消さねばならんのだ」
『何か』を握る手に力を込めるネプラ。
すると、『何か』はみるみると霧散していく。まるで蒸発するかのように。
ネプラ「跡形も無く消えてくれ…」
ネプラ「…江口 蓮よ」
最後の一片が、空に昇った。
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- 16 : 2014/11/24(月) 11:08:58 :
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フラン「こっちの家は何も無かったし誰もいなかったわ…そっちは…どうだった?」
やはり不安気に問うフラン。
ネプラ「虫の体内もセーフだ。…肉片でも入ってたら驚きで死んでる所だったんだがな」
フラン「…」
ネプラ「ん?どうした」
フラン「…ネプラってそんな冗談言うのね」
ネプラ「何を今更、私は元々ユーモアに溢れているさ」
ネプラ「それより作業に戻ろう。…冗談を真顔で受け止められるのは辛いんだぞ」
フラン「あっ…なんかごめん…」
ネプラ「これも冗談だと言うのに…」
ネプラはフランに背を向け、歩き出した
フラン「…」
フランはネプラの態度が引っかかったが、結局深く考えることはせずに家の探索に戻った。
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- 17 : 2014/11/24(月) 13:24:02 :
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その後…
2時間程して、この事件はあっけなく収束した。
虫の大半は死に、残るものも統率を失ってバラバラに逃げていった。
この事件によりマジリの各種機能は大幅に被害を受けたものの、人的被害が確認されなかった事は幸いとされた。
…そう、人的被害は確認されなかったとされた。
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- 18 : 2014/11/24(月) 13:50:03 :
- しかし実際は違った。
実は1人だけ、行方不明となっている者がいた。
他ならぬ蓮である。
この事に、彼と仲の良かったフランやエリックは大きなショックを受けた。
特にフランは似たような時期(正確には一月ほど離れているが)の似たような境遇であったということもあり、深く傷付いていた。
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- 19 : 2014/11/24(月) 13:51:22 :
フラン「…」
カー「…言いたいことは分かるよ、うん」
カー「でもね、無用な混乱は避けたいんだよね…死者が出たのと出てないのじゃ、全然違うんだよね…」
フラン「…」
カー「…彼の死に関しては、私の判断も悪かったね。この街どころかこの世界自体に慣れていない彼を、あんな外側に住ませたのが間違いだったね…」
フラン「…」
カー「…一月前、君がここに来た時」
カー「僕に言った言葉…覚えてるかい?」
フラン「…」
カー「…ああ」
カー「返事、出来ないんだったね…」
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- 20 : 2014/11/24(月) 16:07:17 :
それから、2ヶ月が経った
建物の復興もあらかた終わり、マジリは再び街として機能し始めていた。
エリック「いやぁ、凄いもんだなぁ」
ネプラ「街総出でやった甲斐があるというものだ」
2人は監視台からマジリ全体を眺めつつ、話していた。
エリック「にしても、大変だったよなぁあの時は。」
ネプラ「私的には後処理が何よりも大変だったな。もう、虫を見るだけで目眩がするよ。それに…」
エリック「ああ、フランの奴はずっと塞ぎ込んでたからなぁ。よっぽど蓮の事が気に入ってたのか…」
ネプラ「彼女は運が悪かったよ。普通なら2日程度で情も湧かんだろうが…な」
エリック「ああ、まあな…あいつらは特殊だ」
エリックは蓮とフランの出会いについて思い出した。
エリック「…生きてりゃなあ…」
ネプラ「…この辺でやめておこう。昼間っからしんみりするのは好かんよ」
エリック「ああ、そうだな…すまん」
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- 21 : 2014/11/24(月) 16:39:26 :
- ネプラ「そういえば、今日の配置はどうなっていたかな?」
エリック「えーっとな、確か---に~~~で…」
ネプラ「ああ、私の思っている通りで間違いなさそうだな」
少し声のトーンを変え、ネプラが呟く。
エリック「ん?」
ネプラ「いやな、私もそろそろ歳だ。人に憑こうかと思ってな」
彼の言葉はどんどんと冷たく、尖っていくように感じられる。
エリック「お、おい?話が繋がってな…」
ネプラ「どれ、まずは『変装用の皮』を頂こうか」
完全に冷え切った声でそう呟くと、右手をエリックへ伸ばす。
エリック「な、何を…っ!!?」
ネプラ「声を出すんじゃない…すぐ終わる」
まるで死者のように痩せ細った指の先が ヒタッ、とエリックの身体に触れた。
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- 22 : 2014/11/24(月) 16:40:51 :
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- 23 : 2014/11/24(月) 16:58:45 :
- 「はぁ…」
多数の虫がマジリを襲ったあの日から、フランは家に篭りがちになっていた。
エリックやネプラなど、仲の良い者達の励ましのおかげで大分マシにはなったのだが、今でも休日は家でボーッとしている事が多い。
フラン「ずっとこのままじゃ駄目よね…いつまでも皆に心配掛けちゃう」
自分でも戻ろうとはしているのだが…やはり、思うだけではどうともならないものである。
フラン「…そういえば本借りっぱなしだっけ…返しに行かなきゃ……」
コンコン
突然、ドアがノックされる音が響いた。
フラン「?誰だろ」
ガチャッ
ドアを開けるフラン。
ドアの向こうに居たのは…
エリック「突然すまないな、少し話があって」
彼女の友人、エリックだった。
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- 24 : 2014/11/24(月) 17:23:50 :
- フラン「話…?どうしたの?」
エリック「あまり大きな声じゃ話せない。すまないが中に入れてくれないか」
フラン「分かったわ。どうぞ、入って」
部屋に入った途端、エリックが切り出した。
エリック「一応聞くが、周りに人は居ないか?」
フラン「え、ええ。部屋の中だもの。…そこまでするほどの話なの?」
エリック「ああ。…1度しか言わないからよく聞いてくれ」
フランを正面から見つめるエリック。
エリック「初めて…初めてお前を見たときからだ」
フラン「…えっ……」
エリック「俺は…お前が…」
エリック?『私にとって良い容れ物になると踏んでいたよ』
エリックに似た『何か』の拳が、フランの鳩尾に減り込んだ。
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- 25 : 2014/11/24(月) 19:15:04 :
- フラン「…えっ…」
何が起きたか分からない。
いや、理解出来ない。
自分は今、友人の話を聞いていた筈だ。
それがなんで
こうして地に膝をついているのか
何一つ理解出来ないままに、フランは地に伏した。
エリック?「意識は残ったか…まあいい」
フラン「…!!!」
エリックに似た『何か』の輪郭が、背景に溶けていく。
そして、これも彼女の友人であるネプラの形を取り始めた。
フラン「!!?」
また、理解出来ない事が一つ増えた。
ネプラ「さて…悠長にもしてられない。さっさと始めよう」
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- 26 : 2014/11/24(月) 20:09:03 :
- ネプラの腕が、動けないフランへと伸ばされる。
ネプラ「さっきの『皮』とは違って、今度はちゃんとした容れ物だからな…まずは中身を抜かんとな」
フラン「…!?」
中身を抜くとは、どういうことだろうか。
分からない。何も。
あるのはただ、疑問と恐怖だけ。
近付いてくる細腕。
フラン「…!!!」
さらに近付いてくる、その指先。
フラン「…ゃ……!!!」
彼女にとってはまさに、冷気を孕んだ死神の鎌。
フラン「……やめ……!!!!!」
その切っ先が、今まさに彼女に触れ……
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- 27 : 2014/11/24(月) 21:00:30 :
- ドオオオオオオン!!!!!!!!!
……る事はなかった。
爆音と共に、ネプラは何者かに吹き飛ばされた。
ネプラ「っ…!なんだ…!?」
ネプラ「…な…お前は…!!!」
フラン「!?……!!!」
咄嗟に爆音のした方向に視線を向ける2人。
そこに居たのは…
次回 神霊百物語-肆の噺-
『劔』
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- 28 : 2014/11/24(月) 21:01:26 :
- 今回は演出上、次回予告はカットさせて頂きました。
そして、私これからテスト期間に差し掛かりますので更新一旦ストップとなります。申し訳ございません。
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- 29 : 2014/11/25(火) 00:41:56 :
- 待ってます!
テスト頑張ってください!!
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- この作品はシリーズ作品です
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