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『魔族の国の、国王になっていただけませんか?』〜第1話〜
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- 1 : 2014/10/29(水) 20:09:19 :
- 初の未分類作品!
コメントは終わるまでは規制させて頂きます…(´ω`;)
では
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- 2 : 2014/10/29(水) 20:10:14 :
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榊 凛太朗《さかき りんたろう》
男性
一人暮らし
独身
彼女ナシ
一人っ子
幼い頃に父親を亡くす
母親は既に他界
「この人がいいかな…」
「うん。まぁあとは本人次第…」
黒髪の青年はそう言って
ほんの少し口角を上げながら
夜の闇へと消えていった。
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- 3 : 2014/10/29(水) 20:12:23 :
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「疲れた…早く帰って風呂入って寝たい…」
そう小さく愚痴をこぼしながら
世間では美形と呼ばれる容姿を持つ、やや茶髪の青年
榊 凛太朗は一人暮らしをしている
我が家への帰宅途中だった。
いつも通る帰り道
その中に一つ、ほとんど人が通るところを見たことが無いほどの
人通りの少ない細い道があった。
昔から運動はそれなりに得意だったため、
もし面倒な誰かにカラまれても逃げられる自信はあったが
いつも自然と足がはやまる。
だが今日は珍しく
反対側から同い年くらいの男の人が1人歩いてきた
しかし何か様子が変だ
顔は俯きぎみで、片手で軽く目を覆っている
前を見ていないのに、きちんと真っ直ぐ歩けている
なぜそれでこの狭い道をぶつからずに歩ける?
向かいから来てる自分は認識しているのか?
そう考えているうちに距離は縮まり
青年がいきなり顔を上げ、目の前で立ち止まった
「こんばんは。はじめまして」
「『榊 凛太朗様』♪」
「………はっ!?」
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- 4 : 2014/10/29(水) 20:12:57 :
彼は困惑していた
それは
見知らぬ青年に
自分の名前を呼ばれたからというわけではなかった
某縦読み漫画とオープニングが若干カブっているような気がした
という訳でもない。
話しかけられた相手の『目』に違和感がある
黒い眼球に透き通るような赤い瞳
白い小さな街灯の光を反射して
キラキラと妖しく輝いている
おそらく人間でこんな目のヤツはいない
ならコイツは何者だ?
ならさっき近づいてくるときに目を隠していたのは
オレが警戒しないようにするためか…?
凛太朗は頭をフル回転させていた
「おどろくのも無理ありませんよね」
と、ニコニコしながら青年は言った
「実は私、人間じゃないんです♪」
と、表情を崩さないまま続けた
「……たぶんそうだろうね…」
「あれ?結構ビックリするようなことだと思ったのですが…」
そう言いながら
青年はわかりやすくガッカリしていた
だが今はそんなことはどうでもいい
「その『目』は……何だ…?」
「人間じゃないなら…君は一体何者?」
ほんの一瞬、
青年の笑顔がなくなった
「目ですか?普通の目ですよ?
ビームでも出るかと思いましたか?」
青年はまた笑顔になっていた
「いや…普通の目はそんな色してないよ」
「そうですかねぇ?」
「……もうそれはいい。今は…」
「君が何者かを言ってくれないか?」
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- 5 : 2014/10/29(水) 20:13:43 :
しばらくの間
静寂が続いた
「なかなかの知りたがりですね〜♪」
「普通なら驚いてまともに話せもしないものかと」
「さぁね」
「……それは追い追い説明します…。今は私の本来の要件を言ってもよろしいでしょうか?」
「………わかった」
「…では率直に言わせて頂きます」
『魔族の国の、国王になっていただけませんか?』
「……は?」
「えぇぇ!?」
「いいリアクションですねぇ♪」
この青年はまたニコニコ…というよりニヤニヤしていた
まるで自分の反応を楽しんでいるようだ
「いや…それはちょっとわからないコトが多すぎるんだけど!?」
「大丈夫です。私が全力でサポートしますので♪」
「いや…そうじゃなくて……」
「″今の人類″の未来が掛かっているんです」
「やって頂けませんか?」
突然
今までとは表情と声色が変わった
さっきまでヘラヘラしていたのに
急に低いトーンになった
嘘をついているとは思えない
それに…
「…人類の未来?」
「はい、それに関しても追い追い説明させて頂きます。」
「もしやりたくないのならばやらなくても構わないです。しかし…」
「あなたの未来…いえ、人類そのものがあるか、私は保証できません」
「………」
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- 6 : 2014/10/29(水) 20:14:31 :
正直、頭が着いていっていない
魔族の国の国王?
人類の未来?
そもそもなんで自分なんだ?
全部意味がわからない
それは自分じゃないといけないのか?
魔族の国って言ったな…
おそらく物騒で落ち着かない所…
そもそも人間なんかが行っても…
わざわざ
そんな命の危険がありそうな所に行かなくても…
もしかして、ここで断ったら他の誰かがやるのか…?
自分が断れば…
他の誰かが命掛けなきゃいけないのか?
いや、そもそも確定じゃ…
ないよな?
「なぁ…それって……やっぱり命掛かるようなことなの…?」
「ハイ♪」
「…いや『ハイ♪』じゃないでしょ!!?」
「そんな軽い気持ちで命掛けろって!?」
「あははは…」
「笑って流さないでよ…」
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- 7 : 2014/10/29(水) 20:15:13 :
「でも他の国よりは比較的安全ですよ?」
「内戦もないし他国との戦争もないです」
「……へぇ…」
「ですが一応国王なので暗殺とか…」
「う…」
「まぁ城に忍び込むなど不可能だとは思いますけどね♪」
「へ…へぇ……」
やっぱりやめよう
自分には何のメリットもない
どう考えても危険だ
まずこんな人の言うことを信じること自体間違っている…
今までのように…
今までの…
「話は変わりますが…」
「お父様を…生まれて間も無い頃に亡くしているのですね?」
「え!?あ、あぁ…」
さすがにいきなりで驚いた
それより…
「お母様も、お父様が遺した借金に追われ、過労で死んでしまった…と。」
自分の中で何かが弾けそうになっているのを感じた
それを必死に抑える
抑えなきゃいけない
「……なんで知ってる…」
「あなたがやってくださらないと…たくさんの人間が死にます。」
「榊様…あなたでないといけないのです」
「オレじゃないと…いけない?」
「ハイ」
「…なんでだよ?」
「あなたにしか出来ないからです」
「…答えになってないよ……」
「申し訳ありません…しかし…」
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- 8 : 2014/10/29(水) 20:15:48 :
「いいよ。やってやるよ」
「え!?」
「何で聞いた側が驚いてるんだよ…」
「いえ…さすがにまだ説明不足で……まさかもう決断するとは思いませんでした…」
「ごたごた言ってるの聞いてたってオレにはどうせ難しいことはわかんない」
「君の言うことを信じるよ」
これでいい
これでいいんだ
もし騙されていたとしても
苦しむのは自分だけだろう…
本当に人類の危機なら…
やらなきゃダメだ
もう自分でもうんざりしていたところだ
『自分が生きている』ことに
どうせ『一人』だった
魔族だろうとなんだろうと…
…もういいや
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- 9 : 2014/10/30(木) 19:53:25 :
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…
……
「ん?」
目が覚めた
だが目を開けたつもりでも
ほとんど真っ暗で何も見えない
今は何かに寝ている?
とてもふかふかしていて…
ベッドか何か…?
「あ、目さめましたか?」
突然、近くから若い女の人の声が聞こえてくる
「あ、あぁ……でもなぜか何も見えない…」
「あぁ…副作用が出ましたか…」
「副作用?」
「″こちら″への転移と、魔力の付与をしたので…」
「そこまで酷くはならないと思いますが…1週間ほどは安静に……」
「へぇ…」
″こちら″
…か
もう来てるのか
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- 10 : 2014/10/30(木) 19:54:03 :
少し前後の記憶が飛んでるな…
「では、失礼します。」
「何かあったらお呼びくださいね?」
「わかった。」
しばらくして、
ドアの閉まる音がした
部屋の中は静まりかえっている
徐々に目はぼんやりと見えるようになってきた
ぼんやりとしてよくは見えないが、
高い天井、天窓、広めのベッド、横の小さなテーブル、水差し、マネキン…
ん?マネキン?
なんで?
いや…
「…誰かいるのか?」
「はい♪私がいます♪」
さっき″人間の世界″で会った青年だ
「うおっ!!?」
まさかいるとは思っていなかった
「いたのか…」
「ずっといましたよ♪」
「全然気付かなかった…」
「……目が見えないのですか…?」
「うん…なんか今はぼんやりしてる」
「まぁ、目は今日中に治るとは思いますが…」
「それは助かるよ…」
「身体の疲労は大変なことになっているなので安静にしていてくださいね♪」
「大変なことって…」
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- 11 : 2014/10/30(木) 19:55:00 :
「あ、そうでした。自己紹介等がまだでしたね!」
「国王の護衛・補佐をさせていただきます。
元神…要は堕神です。よろしくです」
「…堕神?」
「魔界に寝返った神、と認識して頂ければ♪」
「寝返ったって…何かあったのか?」
「……」
あ…
今のはまずかったかな…
「ごめんごめん!やっぱいいや…
で、なんだっけ……護衛と補佐、よろしくな!!」
「……はい♪お気遣いありがとうございます♪」
「てか元神って…思ってたより全然すごいな…」
「〜♪」
「そんな元神が、あなたをこちらの世界へ転移させる時に、少しオマケをしておきましたので♪」
「オマケ?」
「身体能力増強魔法と、魔力の付与です。」
「シンタイノウゾウ…なんて?」
「身体能力増強魔法です。あなたの瞬発力と動体視力、跳躍力を多少強化しました」
「オレは記憶の無いうちに人体改造されてたのか…」
「そんなたいしたことではないですよ♪永続魔法なので上昇率もそんなにですし…」
「スピード系の強化にしましたが…
ガチムチのパワー系の方がよかったですか?」
一瞬、ガチムチの自分を想像した
うん。ナイ。
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- 12 : 2014/10/30(木) 19:55:46 :
「あ、スピード系にしてくれてアリガトウゴザイマス…」
「いえいえ♪」
「…その身体能力増強魔法ってのはわかった。じゃあ魔力の付与ってのは?」
「これは名前の通り、あなたの身体に魔力を付与しました。」
「へぇ…」
「人間に付与するときは、その人の潜在的な種族によって使える魔法が変わります」
「へぇ…オレは何なんだ?」
「あなたは…まだ副作用が収まるまで使用はできないとは思いますが…」
「『雷撃』です」
「雷撃……雷か…」
「ハイ。自分の身体から強力な雷を発することができます」
「なんか…信用してないとかじゃないけど……信じられないな」
「ですよねぇ…」
「雷撃かぁ…魔法って人それぞれで決まっちゃうんだな」
「ですね」
「まぁ…あなたを選んだのもソレがあるんですけどね…」
急にボソリと呟くように言ったので
聞き取れなかった
「ん?何か言ったか?」
「いえ、なんでもありませんよ♪」
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- 13 : 2014/10/31(金) 23:23:54 :
- そう言い、堕ちた神はニコッと笑う
「ならいいんだけど…」
「では、私があなたの休んでる間の仕事をやっておきますので…」
「ゆっくり休んでいてくださいね♪」
「…ありがとう……」
「いえいえ、国王の補佐が私の仕事ですので」
「では…」
そう言い、彼は部屋から出て行った
また、静寂が訪れる
「なんか…色々と目まぐるしいな…」
そうだ
こんな目眩がするほどの変化は″あの時″以来か…
あ、もしかして目眩は副作用のせいか?
まぁ今はどうでもいいか
なんかもう
目を閉じれば寝れそうだ
疲れた…
そうして、彼は深い眠りについた
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- 14 : 2014/10/31(金) 23:25:34 :
カツ…
カツ…
カツ…
不規則に鳴る、
床と靴の出す音が聞こえた
誰かがいるようだ
どのくらい寝ていたんだ?
目はもう見える…
「……起きました…?」
自分に声がかかる
消えそうなほど小さく、細いが
とても澄んでいて綺麗な声だった
「あぁ…少しは楽になった…」
「…」
なぜか黙ってしまった
「…水……貰えるかな…?」
そう言うと彼女は
黙ったままグラスに水を入れた
それを自分も黙って飲む
程よく冷えていて、
心地よく喉を通る
「…ありがとう」
「…」
「…」
会話が続かない。
なかなかの容姿を持っていたからか
女性から話しかけられることはあったが
自分から話しかけることはほとんどなかった
そのためか完全に沈黙だ
彼女が歩くたび、
ヒールの乾いた音が響く
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- 15 : 2014/10/31(金) 23:26:06 :
「…そうだ……剣…」
意外にも
彼女の方から話しかけて来た
「…剣を作らなきゃいけない…の…ですが……」
相変わらず注意しないと聞き取れないような声だが…
「剣?」
「はい…どんなのがいいか……考えておいてください…」
「種類とか…長さとか…形とか…」
「なるほど…」
「決まったらいつでも…鍛冶屋に作らせますので……」
「わかった、ありがとう」
「いえ……」
「…では失礼します……」
そう言って彼女は
部屋から出て行った
「剣……かぁ…」
いよいよそれらしくなってきたな…
剣…といっても全然知らない…
とりあえず雷撃の魔法がどんなものなのかを確認してからじゃないと…
その組み合わせも大事だよな…
あの全然神っぽくない堕神に聞くか…
「今の女の人…すごい綺麗な人だったな…」
そう思ったことをポツリと呟く
どのくらい寝てたのか聞くの忘れたな……
天窓から覗く外は昼間だ
目が治ってるってことは、
一日以上経ってるか…
でもまだやっぱり…
「眠いや…」
そうして再び眠りについた
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- 16 : 2014/10/31(金) 23:26:39 :
起きたときには
誰もいなかった
身体もまぁまぁ動く
「部屋の外…見て回ろうかな…」
そうして彼は
小さなテーブルの上の、
綺麗に畳まれておいてあった上着を羽織って部屋の外に出た
ギィィィ…
大きな木の扉を開くと、
そこには
一直線の明るく、広い廊下
そしてその奥には
中庭のようなものがあり
噴水の水がキラキラとはねていた
魔界とやらでも空は青い
一緒だ
「…″陛下″、ご案内いたしましょうか?」
ドアのそばにいた女の人に声をかけられた
聞いたことのある声だ
最初に部屋に来たメイドか…
「頼む。」
″陛下″…か……
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- 17 : 2014/10/31(金) 23:27:05 :
城内のいろいろな場所を案内されていた
覚えるのにはしばらく時間がかかりそうだ…
そう考えていると、
今案内をしてくれているメイドのことが気になった
身長は自分より少し小さいくらい…
薄く青がかった肌に、小さな黒い羽、そして細い長い尻尾
こめかみの辺りからは、曲がった角のようなものが生えている
あの堕神は
目以外はほぼ人間のような容姿だったため、
魔族らしい魔族を見るのは初めてだ
そういえば前に来た、
すごく声の小さい女の人もほとんど人みたいな見た目だったな…
「…キミは……何なんだ?」
「何…と申されますと?」
「種族…みたいな……?」
「サキュバスです…?」
「サキュバス?」
「はい。男性のサキュバスはインキュバスと言われております」
「へぇ…ここにはいるのか?インキュバス。」
「城につとめている者にはいません…」
「へぇ…」
ここにいる人たちのことも把握しておかないとな…
「他には…どんな種族の奴らがいるんだ?」
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- 18 : 2014/10/31(金) 23:28:05 :
サキュバスのメイドは、
夕食の準備をしなくてはならないようで
もう行ってしまった
種族は多すぎて、大部分は既に忘れた
フラフラと城内を歩き
沢山のメイドの魔族とすれ違っているうち、
さっきとは別の中庭にたどり着いた
芝生に小さな花がいくつか咲いている
…ここなら丁度良いかな
「雷撃ってのがどんな感じか…確かめといた方がいいよな」
とは思ったものの、どうやったらいいのか全くわからない
とりあえず、庭の真ん中に立ち、
一応手を地面に向け、意識を集中させて…
「雷……出ろっ!」
そのとき
凄まじい閃光と轟音が、城から起こった
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「…で、雷撃が出た……と?」
「はい…スイマセン……」
彼は堕神に、ことの経緯を説明していた
閃光と轟音が起こった理由と
中庭が丸焦げになった理由を
「やってみたくなるのはわかりますが…」
「うまくコントロールできない内は自らに負担がかかったりしますので…」
「ごめん…」
「いえ…あなたの身に何かあっては…」
「…」
そうだ
まだ実感は無いけど
自分はもう
この国を背負っているんだ
「うまく扱えるようになるまで、使うことを禁じます…いいですか?」
「ハイ…言われなくても…」
でもまさか出るとは思わなかったんだよ……
あぁ…頭痛い…
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- 19 : 2014/10/31(金) 23:28:33 :
「そういえば、明日は隣国から女王が参ります」
「隣国から?女王?」
「はい、国王就任を祝いに。だそうです」
「へぇ…どんな人なんだ?」
「…若いです」
「若い?」
「はい。」
「…?」
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翌日の朝
ドアのノックの音と、メイドの声で目が覚めた
「陛下…そろそろお召し替えを…」
「隣国の女王がそろそろお見えになるそうです。入ってよろしいですか?」
「わかった、入ってくれ」
そう言い
眠い目を擦りながらベッドから起き上がる
あのサキュバスのメイドが部屋に入ってきて、
クローゼットから服を取り出す
「今日は正装でお願いします」
「正装か…堅苦しいのはあんまり好きじゃないんだけどな」
「向こうの女王無礼のないように…」
「いや、わかってるよ」
「コレ…かぶらなきゃダメなのか?」
「申し訳ありません…正装なので…」
王冠か…なんかそれらしくなり過ぎてイヤだけど…
「わかった…かぶるよ」
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- 20 : 2014/10/31(金) 23:29:25 :
正装に着替え、
隣国の女王が来るまで場内を一人で散歩していた
「なんだ……ここ…」
丸焦げにしてしまった中庭の近くの図書室
だが今までこんな図書室は見たことがない
そもそも本の量が半端ない
見上げないと見えないほどの本棚が立ち、
宙に浮いている球体の本棚もある
物理法則などは完全無視だ
魔法で作ったのか?
よくわからない魔界の本もあるが、
人間界の本もあるみたいだ
「すごいですね…ここ…」
ふいに隣から感嘆の声がかかる
見ると、
10代くらいの見た目の女の子が立っていた
純白の長いドレスを着ていた
背中から小さい羽が生えている
「あれ…もしかして…」
「あ、どうも…隣国の女王です…」
「えっ!!?」
そのとき、硬いブーツの音が廊下から響いて来た
「申し訳ありません!!お迎えに上がれず!!」
そう大声で言いながら、
堕神が大慌てで走ってくる
「いえいえ…すいません勝手に上がってしまって…」
と女王が頭を下げる
ドレスのスカートから、小さな尻尾がのぞく
「あぁっ!!女王様!お頭を上げて下さい!私達が至らなく…!!」
そう言って彼も慌てて頭を下げる
自分も頭を下げる
「いえいえ…!予定より早く着いてしまったので…つい……」
「本当に申し訳ありません…取り敢えず応接間にご案内致します…」
隣国の女王は、
堕神に連れられて応接間へと向かって行った
「若いって言ってたけど……あんな若いのに国をまとめなきゃいけないなんて…」
「大変だな…」
「…きちんと正装しないとな……王冠とか置いて来た…」
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- 21 : 2014/10/31(金) 23:30:11 :
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広い食堂に賑やかな声が響いている
本来は自分と隣国の女王だけだったが、
自分の意向で
彼女の側近や護衛の兵士達も一緒に食べることになった
「本当にいいのですか?こんな大人数でご飯を頂いて…」
「いえいえ、賑やかな方がいいじゃないですか」
「本当に…変な方だ」
そう堕神がこぼす
「変とは失礼だな…」
「良い意味で、ですよ?」
そう多少慌てた様子で付け加える
「変に良い意味とかあるのか」
「ありますよ!…きっと」
「きっと!?」
「ふふっ…」
女王が二人のやりとりを見て小さく笑った
「あ、失礼しました…お見苦しい所を……」
堕神がそれに気付き、小さく頭を下げる
「あ…すいません……」
「いえいえ、賑やかで良いじゃないですか」
そう上品に笑いながら言った
こんな、人間だったら中学生か高校生くらいの若さなのに…
すごく丁寧で品があって…
本当にすごいな…
「…どうかしましたか?」
「いや、お若いのに国をまとめられて…すごいなぁと思いまして…」
「そのせいで、それなりの苦労もありますよ…」
と、苦笑いをしながら言った
「…まぁ……王ならオレも若いのかな…」
「なぁ…」
そういえば、堕神にまだ聞いたことなかったな…
「お前は何歳なんだ?」
「私ですか?55000歳からはもう数えてないです♪」
「…」
文字通り絶句した
はぁ!?
5万越え!?
やっぱ元神だから!?
「あははは、人間の寿命は短いですからねぇ♪顔に出てますよ?」
「魔族は種族ごとにある程度の年齢に達したら、見た目などの成長が止まってしまうのですよ♪」
堕神が説明してくれたが、いまいちピンとこない
こいつ、そんなに歳くってたのかよ……
そう思いながら、
紅いワインが注がれたグラスに口を着ける
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- 22 : 2014/10/31(金) 23:30:40 :
賑やかな食堂から
酔い覚ましのために外のバルコニーへ出る
「おぇ…飲み過ぎた……」
まだ酒はそんなにはたくさん飲めないにも関わらず、
かなり飲んでしまった
胸の辺りで不快なものがグルグルと回る
「ちょっと…休憩だ……」
バルコニーの手すりにもたれかかり、目を閉じる
ここに来て起こったことはまだ少ないが、
今までの日常とはかけ離れた数日間
不思議と嫌ではなかった
まぁ……向こうで上手くいってなかった…ってのもあるのかな…
あぁ…このまま溶けるように寝れそうだ……
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- 23 : 2014/10/31(金) 23:31:32 :
「陛下…?」
席から抜けて来たのか、
隣国の女王が声をかけて来た
「あ、ハイ?」
「お水持ってきました…酔い覚ましにと……」
「あ、申し訳ないです…」
水はよく冷えていて
目覚ましにはちょうどよかった
「ありがとうございます…」
「いえいえ…!」
冷たい風が吹く
そういや
あのサキュバスのメイドも
この国のある辺りには四季があるって行ってたな…
秋…かな?
「良い…国ですね…みなさん明るくて……素晴らしい国王様もいて…」
「自分はまだ国王になったばかりですから…元から素晴らしい国だったんですよ」
そう笑いながら流す
第一自分はまだこの国のことを知らな過ぎる
隣の国の事も
「そんなことないですよ……陛下は素晴らしいお方です…少し話しただけでわかりますよ」
「そんなことないですって…オレは…」
気恥ずかしいのを笑って誤魔化す
「少し…自分の話をしてもいいですか?」
「いいですよ?自分が応えられるようなことなら何でも…」
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- 24 : 2014/10/31(金) 23:32:02 :
「…私は……13歳のときに母上が突然亡くなり、女王の座に着かなくてはなりませんでした…」
「…13歳……」
「私の国は…兵士はいますが、強力な魔族はいません……」
「皆、魔力も強くありません…」
「それなのに耕地は少なく…土地も豊かではありません…。
凶暴なオークやトロールの群生地も近く……もう…私1人では……」
「……どうしたらいいのか…わからなくて…」
彼女の声が震えている
細くて小さな手で顔を覆っていた
それだけ苦しんで来たんだろう
こんな若くして、
色々なモノを背負ってるんだ
行く行くは自分も背負うモノを
でも自分は何ができる…
自分なんかただの人間だ…
何もできないじゃないか
何でオレは…
結局変わってないじゃないか
ここで迷ったままだったら
…前と変わらない
そうだ
前までの自分は
もう捨てよう
「心配しないでください。自分ができる限りの手助けをします。」
「…え?」
驚いたように顔を上げた
顔を上げた彼女の瞳には
自分の姿が歪んで映っていた
「もし飢饉に逢ったら…できる限りの食糧を送る、凶暴な魔物が攻めて来たらオレが護る。全部…任せろ」
「…へ…いか……」
彼女は
何かが弾けたように泣き出た
──────────────
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- 25 : 2014/10/31(金) 23:32:23 :
次の日の早朝、
隣国の女王と側近を乗せた馬車は
隣国へ向けて出発した
まだ
あんなことが起こるとは
誰も知らずに
〜第一話 end〜
- このスレッドは書き込みが制限されています。
- スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。
- 著者情報
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