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神霊百物語-始の噺-
- ファンタジー × アクション
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- 1 : 2014/10/17(金) 22:37:45 :
- ---皆さんは『百物語』というものをご存知だろうか?
---簡単に言うと「新月の夜に集まって百話の怪談を話すと本物の怪奇現象が起こる」という、一種の肝試しである。主に江戸時代に流行ったとされている。
---何故、このような遊びが行われていたのか?
---それについては諸説ある。
---「ただ単に怪談を話し合いたかっただけ」だとか、「武家の修行」だとか。
---『ある儀式を真似たものである』、だとか。
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- 2 : 2014/10/17(金) 22:38:13 :
『神霊百物語』
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- 3 : 2014/10/17(金) 22:38:33 :
この作品はフィクションです。
実在のものと酷似している、或いは全く同じ名称等が使われる場合がございますが、この作品は実在のいかなる人物、団体とも関係は御座いません。
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- 4 : 2014/10/17(金) 23:18:41 :
- キーンコーンカーンコーン
ホームルーム10分前を知らせるチャイムが鳴り響く。
「っあー、今日も始まんのかぁぁぁ…」グデー
机に伏せながらボヤくのは、江口 蓮(えぐち れん)。
どこにでも居そうな普通の学生である。少しばかりヤンチャそうに見えるが。
「蓮はいつもそれ言ってるね…」アハハ…
そう言いながら苦笑した少年。
彼の名は有明 直賢(ありあけ なおたか)。
眼鏡を掛けており、蓮とは対照的な雰囲気を醸し出している。The・勉強少年という感じである。
蓮「だって勉強とか全然分からねえんだよ!せめて日本語で授業してくれよ!?」
直智「僕に言われても…ていうか英語以外全部日本語だし」
蓮「θだのΩだのゐだのが日本語であって堪るか!!!俺は絶対に認めねえぞ!!!」
直智「うーん…一応うち進学校だし、蓮も頑張れば出来ると思うんだけどなぁ…」
蓮「なんだその言い方は!!まるで人をサボりみたいに!!」ギュッ
直智「ちょっ!?いひゃい、ほっふぇたつねりゅな!!」
2人は小さい頃からの幼馴染であり、もう10年以上の付き合いになる。
お互いに自信を持って「親友」と呼び合える仲だった(本人達は気恥ずかしくてとてもそんな呼び方は出来ないが)。
直智「ったく、突然頬を…あ、時間だ。じゃあね、蓮」
蓮「俺、生きて授業終えたらモンハンするんだ…!!」
直智「自分でわざわざ死亡フラグ立てないでよ…」
そんな軽口を叩きつつ、直智は自らの席に戻っていった。
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- 5 : 2014/10/17(金) 23:38:06 :
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キーンコーンカーンコーン
「~~~というわけなので⚪︎に△を代入すると…」
蓮「ウッ」
「漢文を読む際に必要なのは…」
蓮「ジャパニーズ…ジャパニーズプリーズ…」
「A pitiful high school student's story is~~~」
蓮「」
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- 6 : 2014/10/18(土) 07:32:00 :
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キーンコーンカーンコーン…
直智「ふー、今日の授業は終わりっと…」
蓮「」
直智「…」
気絶したかのように眠っている蓮を何とも言えない表情で見つめる直智。
直智「ほら、授業終わったよ…」
蓮「んん…?…おう…」
寝ぼけながらも声を返した蓮。
直智「全く蓮は…そのままじゃ本当に留年するよ?」
直智の言葉は半分冗談みたいなものであったが…残りの半分には余すところなく本気が込められていた。
蓮「うっ…分かってるけどさぁ……ああ!!そんな事考えたって仕方ねえ!!!あれだ、一寸先は闇だ!!!」
直智「使い方…」
蓮「よし、部活行くぞナオ!!!速やかに!!!!!」ダダダッ!!!
現実と直智の言葉から逃げるように走り出す蓮。
直智「えっ、ちょ!!?」
直智も遅れて走り出した。
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- 7 : 2014/10/18(土) 08:01:03 :
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蓮「セェェェフッ!!!」ガチャッ!
「…遅い」ドスッ
蓮「ぐぅっ!?」
全速力で部室に突っ込んでいく蓮。…に見事な拳を減り込ませたのは、江口 美香(えぐち みか)。
蓮の実の妹である。
美香「どうせまた寝てたんでしょ…兄さん、本当に留年するよ?」
蓮「」ゴフッ
逃走先でも見事な一撃(物理を入れると二撃)を食らった蓮は、大袈裟にその場に崩れ落ちる。
それと同時に、直智が入ってきた。
直智「はぁ…はぁ…あ、やっぱり間に合わなかったんだ」
蓮「ナオ…助k…」
美香「あ、ナオ。今日もお疲れ様」
直智「そちらこそ。今日も随分とキツイのをお見舞いしたみたいだね」アハハ…
美香「授業中ずっとイメトレしてた」ドヤァ
直智「あ、あはは…そ、そうかい…」
蓮のSOSには目もくれず、挨拶がわりに軽く話す2人。
蓮「無視すんなよ!!?」ガバァ!!
直智「ああ、ごめんごめん。」
蓮「全く…」ブツブツ
ブツクサとボヤく蓮を、美香と直智は苦笑いしながら見つめていた。
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- 8 : 2014/10/18(土) 22:48:47 :
- 美香「あ、そういえば…」
蓮「ん?」
美香「この片喰高校(かたばみこうこう)に伝わる七不思議を調べろって言ってたでしょ?そのことなんだけど…」
彼ら3人が属するこの部活、表向きは囲碁・将棋部なのだが…
蓮「おお!?ど、どうだった!!?あった!!?あったか!!!??」
部長である蓮のオカルト好き、やる気が全くない顧問等の条件が重なり、半ばオカルト部と成り果てていた。
美香「いや、逆に何も見つからなかった。どうやらこの高校にはその類の話が無いみたい」
蓮「」
ただし、活動は殆ど出来ていない。いつも計画倒れである。
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- 9 : 2014/10/18(土) 23:38:40 :
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蓮「嘘だろぉ…」
美香「図書館、図書室、インターネット…結構な手段を使ったけど何一つ無かったし…」
蓮「ちくしょおぉ…」
分かりやすく落ち込む蓮。
そこに、横から直智が話しかける。
直智「あー…それの代わりと言っちゃなんなんだけど、昨日面白そうな話見つけたんだ。見てみる?」
それを聞いた途端、蓮の眼が輝いた。
蓮「マジで!?どんな話!!?」
美香(ナイスフォロー、感謝する)
直智(大体予想はついてたからね。僕も七不思議については調べたし)
幼い頃から一緒にいた2人にとって、蓮の扱いは最早朝飯前なのであった。
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- 10 : 2014/10/18(土) 23:57:46 :
- 直智「ええっと…あ、これこれ」
直智は手に持った携帯端末を幾らか操作すると、その画面を蓮の方に向けた。
蓮「えーっと…何々?」
その画面には大きな赤文字でこう書いてあった。
『神霊百物語とその手順』、と。
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- 11 : 2014/10/19(日) 00:20:32 :
- 『神霊百物語とその手順』
「そもそも、神霊百物語とは」
・神霊百物語とは、江戸時代の日本で行われていたと言われる儀式のことである。関わる文献が全てボロボロのため全体的に推測の域を出ておらず、「幻の百物語」と呼ばれる事もある。
「内容と手順」
一般的に知られている遊び 《百物語》 と酷似している。そのため、何らかの因果関係があるのではないかと推測されている。
細かい手順は以下の通りである。
①「一点の曇りなく澄んだ満月」が浮かんでいる夜に行う。
②まず99本の蝋燭を用意し、火を付ける。
③次に、日本神話を 100編 語っていく。この時、複数人で代わりながら語っても良い。
④1編 語り終える度に蝋燭の火を吹き消していく。この時、吹き消すのは必ず神話を語った者でなければならない。
⑤最後の話(100編目)を語り終えたら、月に向かって息を吹きかける。この時は参加者全員で行う。
⑥資料不足のため不明。同じ時代の他の資料から察するに「人々にとって益となる何か大きな出来事」が起こる と考えられている。
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- 12 : 2014/10/20(月) 20:13:23 :
- まだかな....
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- 13 : 2014/10/21(火) 23:20:40 :
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直智「…とまあ、こんな感じ。どう?」
蓮「んー、怖さはあんまりねえけど所々にリアリティがあるな…百物語との関連ってのも面白そうだ…」
美香「神への信仰を示す儀式が風骸化した…?それとも、信仰の確認…?」
先程までとは違う、真剣な表情に変わった2人。何やらブツブツと呟いている。
直智「うん、2人共興味を持ってくれたみたいで良かったよ。…で、本題なんだけど」
直智「明日…丁度満月の日なんだ。しかも天気予報は雲一つない青空。アメリカの快晴基準でも満たせる程ってさ。だから…」
蓮「やる!!!やるやる絶対やる!!!!!!」
直智が言い終わる前に叫ぶ蓮。
蓮「明日の夜7時、俺ん家集合な!!!細かい道具は用意するから取り敢えず神話覚えてこい!!!じゃあな!!!!!!」ダダダダダッ!!!!
一息に言い切ると、そのまま飛び出してしまった。
美香「…嫌な予感がする」
直智「…ご愁傷様」
グチャグチャに散らかった部屋を想像して、溜息を吐く美香。
これから先、いつも通りの日々が待っていると確信しているような…一抹の不安さえ抱えない溜息であった。
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- 14 : 2014/10/21(火) 23:29:56 :
日が沈んで 、また昇った。
今日は
天気予報の通り 、 雲一つない真っ青な空だった。
それはまるで 、 僕達の心を表してるみたいで…
何とも言えない感情が 、 僕に残った。
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- 15 : 2014/10/22(水) 17:21:04 :
「………」
身体に力が入らない。いや、正確には入れる気になれない。
頭がボーッとしてて、何もかも考えるのが億劫で…ああ、そうだ。丁度真冬の布団の中みたいな。
「………ん…」
とはいえ、動かないわけにはいかない。俺は……ん?そういや俺、何してたんだっけ?
家帰って…?…家帰って……
「…あ、下準備してたんだった」
そうだ、思い出した。俺は昨日、家に帰るやいなや直智が言ってた遊びの準備をしてたんだった。…そんで美香に怒られて、寝て……じゃあ、今は朝か?
「…」グッ
朝なら起きないと。そう思い、手に力を入れる。すると…
ザリッ
「痛っ!?」
手に尖った何かが刺さった感じがした。しかも細かいのが数十。
「っ痛え……え?」
痛みの余り飛び起きた俺は……言葉を失った。
「……は……はは……」
閉じる事のない口から出てくるのは、乾いた笑い声だけ。
「…冗談……だろ……なんで…」
俺の目の前に映ったのは……
「…こんな……砂漠……?」
『ただ一点の曇りもない空』と『地平線まで続く果てしない砂海』だった。
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- 16 : 2014/10/22(水) 17:35:40 :
神霊百物語-始の噺-
終
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- 17 : 2014/10/22(水) 17:41:48 :
砂漠
掴めば儚き夢の如く散る砂
一度沈めば2度と出られぬ、底無しの海
まるで、あなたの様
まるで、私のよう
…まるで、ヒトの様。
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- 18 : 2014/10/22(水) 17:45:54 :
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次回予告
目が覚めると、そこは死の世界。
自分が何をしていたかも分からない。なんでここに居るかも分からない。
分かるのはただ、自分の行き着く先だけ。
…貴方なら 。 …貴女なら。
ど う し ま す か ?
次回
神霊百物語-壱の噺-
『暑き砂漠に熱き神』
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