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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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モブリット『二人の夏物語』―87祭り!!―

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  1. 1 : : 2014/07/30(水) 19:17:45
    モブリット『二人の夏物語』―87祭り―

    モブリット・バーナーにちなんで8月7日まで、87祭りを開催しています。
    http://www.ssnote.net/groups/553/archives/2
    詳しくは上記まで!!ご参加お待ちしています♪

    少し切ない…でも最後には?なラブストーリーです

    モブハン、リヴァハン、モブニファ

    よろしければ是非ご覧ください♪
  2. 2 : : 2014/07/30(水) 19:18:51
    今年の異常気象は、南側領土であるトロスト区にも変化をもたらした

    元々温暖な気候であったが、今年は異常に暑かった

    雨が少なかったせいだろうか

    その代わりに、北側の領土では豪雪という異常気象…

    とにかく南側領土では、いつも以上に暑い夏をなるべく過ごしやすくするべく、涼しい場所に人々は集まっていた

  3. 3 : : 2014/07/30(水) 19:20:00
    調査兵団の変人率いる第四分隊も、さすがにこの暑さでは仕事もはかどらず、日々溶けそうになる身体を何とか氷のうで冷やしながら乗り切っていた

    変人率いる…とさらっと言ってしまったが、その変人は、俺たちの敬愛すべき上司だ

    変人であり、奇人でもある

    それ以外に形容しようがない

    俺の…直属の上司

    第四分隊長ハンジ・ゾエ

    調査兵団の幹部であり、珠玉の頭脳を持つ女性

    クールだが、熱い所もある、部下思いの人

    知的美人と言う表現がしっくりくるかもしれない…眼鏡の下のヘイゼルの瞳は、いつも俺たちの一歩も二歩も先を見据えていた
  4. 4 : : 2014/07/30(水) 19:20:24
    黙っていれば、いい女に違いない

    ただし、一旦自分の興味のある分野に目がいけば…

    荒れ狂い、燃料を気にせず暴走する機関車の如く、猪突する性質がある

    その性質が禍してか、彼女に言い寄る男は殆どいなかった

    だから、俺は高を括っていた…いつも側にいるのは自分だ

    彼女の良さに気が付いているのは自分だけだ

    その気になれば何時でも手に入れられる

    だが、その余裕を見事に打ち破った人がいた

    人類最強と呼ばれている、リヴァイ兵士長その人だった
  5. 7 : : 2014/07/30(水) 20:24:27
    その事に気が付いたのは、忘れもしない、少し肌寒い夜の事だった

    夜にふと目が覚めて、そういえば分隊長に薄い布団しか渡していなかった事に思い至った

    風邪を引かせてはいけない、分隊長の体調管理は全て俺に任されていたからだ

    寝顔が見たいわけでも、夜這いを掛けようと思ったわけでもなく、ただ純粋に布団を渡しておかないと…と思った

    決して下心があったわけでは…

    …さて、そんな感じで俺は布団を持って分隊長の部屋に向かった

    分隊長の部屋に続く廊下に足を踏み入れた時…

    見てしまったのだ

    リヴァイ兵士長と、ハンジ分隊長が、キスをしている所を…

    二人はそのまま、分隊長の部屋に絡まりあうように入っていった

    その時の衝撃たるや、大声を出さなかっただけ偉いと思う

    「そ、そうだったのか…あの二人…」

    予想外過ぎて、腰を抜かしかけた

    こめかみを指で押さえたり、頭を振ってみたりする…

    覚めない…夢じゃない

    長く続いた俺の片想いは、何も始まらないうちに幕を閉じた
  6. 8 : : 2014/07/30(水) 20:36:50
    その夜は全く眠れなかった

    実はかなり本気で好きだったからだ

    いつも分隊長の事を第一に考えてきた

    副官としてしか見てくれてはいない、その事に何となくは気が付いていても、君がいなきゃ無理だ…君がいてくれたから…などと言われる度に、何かを期待した

    期待しても仕方がなかったと思う

    結局の所、始めから俺には可能性は無かったのかもしれない

    何せ分隊長と兵士長は、俺よりずっと付き合いが長いのだから

    それにしても…

    もっと早く想いを口にしていれば、分隊長は俺に振り向いてくれただろうか

    いや、今この状態でもし、俺が気持ちをぶつけたら、分隊長はどうするだろう

    いや、だめだ

    分隊長を困らせるだけだ

    首を振り、無理矢理眠りについた

  7. 9 : : 2014/07/30(水) 20:49:46
    ―とまあ、こんな出来事があってからも、俺の仕事自体はなんら変わることもなく、相変わらず分隊長の側で忠犬の如く奉公していた

    そして暑い夏…

    分隊長室で書類を処理しながら、今日も忠犬として奉公任務に就いていた

    「ああ~、モブリット、あっつい…何にもやる気にならないよ…」

    分隊長は暑いからか、兵服のジャケットなど無いものの様に、棚にしまいこみ、薄いシャツ一枚で書類と向き合っていた

    シャツは白い、下着は黒い

    思いきり、下着が透けて見える

    汗でシャツが肌に張り付いて、もはや誘っているとしかいえない状況

    俺じゃなければ襲われてると思う

    幸か不幸か、俺は分隊長のセクシーな姿を毎度見せられている中で、異様にしっかりした理性の壁を構築する術を磨いた

    例え今分隊長が裸になっても、反応しない自信がある

    …かもしれない

  8. 14 : : 2014/07/30(水) 23:18:12
    「ああ、こんなに暑い日は、のんびり避暑地で過ごしたいよ…川辺のペンションとかさあ…」

    分隊長はついに、書類の束に突っ伏して、夢物語を語り始めた

    「分隊長、ペンションも宜しいですが、その前にまずは目の前の仕事を片付けてしまいましょう」

    内心肩を竦めながらも、無下には出来ない忠犬の辛さよ

    この人は人の物…だと分かってはいても、忠犬ぶりは変わらない

    そう簡単に、人の気持ちは変えられないのだ

    しかも、面と向かって振られたわけでもない

    …かと言って、今さら告白する気にはなれない

    今はとにかく、副官としての仕事をしっかりこなす…それだけを考えるべきだと思っていた



  9. 17 : : 2014/07/31(木) 12:35:44
    「ねえモブリット、見てよ…氷のうがもう、水になっちゃったよ…」

    分隊長は、頭の上に乗せていた氷のうを摘まんで俺に見せた

    確かに溶けている

    水滴のせいで、分隊長の髪の毛は濡れていた

    「本当に暑いですね…窓も扉も開けているのに、風が通らないですし…」

    俺は溶けた氷のうを受け取り、代わりにまだ氷が残っている自分の氷のうを、分隊長の頬に押し付けた

    「っ冷たっ…!」

    「新しい氷のう作ってきますから…しばらくそれで我慢していて下さい」

    俺はそう言い残して、分隊長室を後にした

    廊下の窓も全て開いていた
    それでも風が全く通らない

    熱気だけが兵舎全体を覆い尽くしている様な、暑さだ

    氷のうは、幾らあっても足りないだろう

    氷の備蓄もやばいかもしれない

    そんな事をつらつらと考えながら歩いていると、パタパタと背後から足音がした

    振り返る事なく、道を譲るべく左に寄る

    その時、腰の辺りに衝撃を感じた

    何事かと視線を泳がせると、手をひらひらさせながらこちらを見ている人物がいた

    「副長!!元気ですかっ!?しけた面してますね!?」

    「…なんだ、君か…ニファ。挨拶くらい普通に出来ないものだろうか…」

    ニファは、同じ第四分隊の班長だ
    俺の…部下にあたる

    黒髪のおかっぱ頭がトレードマークで、大きな目をした可愛らしい女性兵士だ

    今日は勤務中だから兵服だが、私服はいつもスカートで、おしゃれだ

    見た目とは裏腹な戦闘能力で、この調査兵団でも指折りの実力者だった

    「普通に挨拶しようと思ったんですけど、副長後ろから見てたら、ふらふら元気なさそうだったので、気合いを入れてあげようかと!!」

    ニファはそう言って、また俺の腰をバシンと叩いた

    「…痛いって。君といい、分隊長といい、俺を何だと思ってるんだよ…全く」
    俺は腰を擦りながら、顔を歪めた

    するとニファが、上目使いで俺の顔を覗いてきた

    睫毛が長いな…ふと、そう思った

    「副長は、私の大切な人です…」

    ニファは唐突にそう口にした

    俺はしばし固まったが、やがて大きなため息をついた

    「…はいはい、またそれか。もう聞きあきた」

    そう言って、肩を竦めた

    「副長、本当ですよ!?」
    ニファは頬を膨らませた

    「あー、わかったわかった」
    いくら俺でも、そうそう同じ手には乗らない

    あれを始めに言われた時に、本気にしてしまって、ニファに笑われた記憶があるからな
  10. 18 : : 2014/07/31(木) 15:15:24
    「副長も、氷のう作りに来たんですか?」

    「ああ、この暑さだからな…分隊長もさすがに参っているよ」

    ニファと二人で暑くて茹だりそうな廊下を歩く

    「あー、川辺の避暑地の別荘とか、誰か持っていませんかねぇ…涼みにいきたーい!!泳ぎたーい!!」

    ニファは分隊長と似た様な話をした

    「まあ、気持ちは分からなくもないけどなあ…」

    「憲兵団は、慰安旅行あるらしいですよ~。調査兵団にはなんで無いんですかね!?」
    ニファは膨れっ面を俺に見せた

    そんな顔をされても、俺にはどうする事も出来ない

    「調査兵団は、予算がね…まあ、別荘は無理でも、涼みに行くくらいは出来るだろう?馬で駆ければすぐだ」

    俺が何気なく放った一言が、まさかあんなに大きな事になるとは…

    夢にも思っていなかった
  11. 19 : : 2014/07/31(木) 15:26:14
    その日の夜、俺はエルヴィン団長に呼ばれた

    分隊長ではなく、俺が名指しで呼ばれたのは、ハンジさんの副官を拝命した時以来だ

    重大な事でも告げられるに違いない

    俺はそう確信して、どきどきしながら団長室の扉をノックした

    心臓がやばい…落ち着け俺

    ハンジ分隊長の副官解任とか、いきなり空席の第3分隊長拝命とか…

    数々の予想をたてながら、部屋に入った


    「やあモブリット。いつもご苦労だな…いろいろと」

    エルヴィン団長は、いろいろとの部分を殊更強調して言った

    「…いろいろと大変ですが、やりがいを感じています」
    俺は頭を下げた

    「よく働いてくれていると思っているよ。ハンジの世話は、君にしか出来ない。これからも頼む」

    …リヴァイ兵長にさせればいいなんて、言えるはずもなく、俺はもう一度、深く頭を下げた

    「ところでエルヴィン団長、ご用は何でしょうか」
    俺はどきどきしながら、団長の指示を待った

    「ああ、君の所のおかっぱちゃんから聞いたんだがな」

    おかっぱちゃん…そう、ニファはたまに兵士達からそう呼ばれていた

    しかし団長までそう呼ぶとは…

    俺は目を丸くした

    「おかっぱちゃん、ニファですね。何でしょうか」

    「君は、いい避暑地を知っているらしいな。この暑さだ、仕事にならない…そこで、だ、調査兵団でも慰安旅行を企画しようと考えた」

    エルヴィン団長は真摯な眼差しを俺に向けて、そう言った

    「はあ、いいと思います。確かに暑くて仕事が捗りません。こういう時にはいっそ休んだ方が、精神衛生上よさそうです」

    俺のその言葉にエルヴィン団長は力強く頷いた


  12. 20 : : 2014/07/31(木) 15:37:44
    「さて、そこで辞令だ…」

    エルヴィン団長に、一枚の紙を手渡された

    「は、はあ」
    俺はその紙を受け取り、目を通す

    そして―

    「な、な、何ですかこの辞令は!!」

    「よろしく頼むぞ、モブリット」

    団長はきっと、お尻に黒い長い尻尾がついた悪魔に違いない…俺はそう思った


    『第四分隊副長モブリット・バーナーを、福利厚生部長に任ずる。早急に慰安旅行を企画せよ。予算は…』

    こんな文言が書かれた紙を握りしめ、ふらふらしながら廊下を歩く

    「ど、どうするんだよこれ…というか、予算少なすぎだろ…無理だよ、無理…」

    俺は立ち止まり、頭を抱えた



  13. 21 : : 2014/07/31(木) 15:47:27
    その時、からっと明るい声が掛かる
    「モブリットぉ、どうしたのぉ?」

    顔をあげると、分隊長が心配そうな面持ちで俺を見ていた

    「分隊長、まだお休みになられていなかったんですか…」

    「うん、今からちょっとね!!」
    頬を染める分隊長…なるほど、今から逢い引きなんだな

    「そうですか、では失礼します」

    何となく虫の居所が悪くて、仏頂面のまま申し訳程度に頭を下げて、立ち去ろうとした

    「ちょ、ちょっと待ってよ!?モブリット何だか顔色が良くないよ?それに元気もないし…何かあったの?」

    分隊長は、俺の腕を取って顔を覗きこんだ

    顔が近い…

    本当に心配してくれている表情だ

    それを向けられて、以前の俺なら喜んだだろう…だが今の俺は…

    「…何でも、ありませんから。大丈夫です。失礼します」

    分隊長の腕を振りほどいて、その場を後にした

  14. 22 : : 2014/07/31(木) 16:15:43
    部屋に帰るなり、ベッドに突っ伏す

    …ああ、やってしまった

    分隊長に、完全に八つ当たりをしてしまった

    確かに、分隊長が多分…兵長と逢い引きをするであろう事実と、自分に降りかかった、福利厚生部長という役割…

    この二つが折り重なって、俺の心に余裕が無くなった

    分隊長は、俺が余裕が無いことを瞬時に理解したのだと思う

    だから、心配してくれた

    それなのに俺ときたら…

    恩を仇で返してしまった

    顔を上げ、握りしめた紙に視線を落とす

    …集団でも、カップルでも楽しめる様な場所を探そう

    普段デートらしい事など、多分したことがない二人のために、俺が出来ることをしよう

    分隊長のために…

    一度決めたら早速動くのが俺のポリシー

    早速旅行計画を練るべく、飛び起きて、内地の地図を広げて頭をフル回転させはじめた



  15. 23 : : 2014/07/31(木) 17:52:53
    計画立案に没頭していると、部屋の扉をノックする音が耳に届いた

    時間は午前2時

    こんな時間に誰だろう…そう思いながら扉を開けると、分隊長が立っていた

    顔を真っ赤にして…

    「分隊長…?」

    「…モブリットぉ…怒ってる…?」
    酒の匂いをぷんぷんさせた息を、俺に吹き付けながら、言葉を発する分隊長

    「え…?」
    俺の返事を待つことなく、部屋に足を踏み入れる分隊長…

    足取りがふらふらと覚束ない

    ガクッと膝から崩折れそうになる身体を、慌てて抱き止める

    「だ、大丈夫ですか?飲みすぎですよ、分隊長」

    「だいじょ~ぶだいじょ~ぶ…」
    分隊長はそう言いながら、俺の首に腕を回した

    そして、俺の顔に自分の顔を近付ける

    その距離…睫毛の1本1本が確認できる距離

    近い近すぎる…

    「…分隊長?」
    正直、分隊長の行動はたまに常軌を逸するのは日常茶飯事だ

    だがこの状況は…?

    こんな事は初めてだった

    「モブリット…君はさ、好きな女じゃなくても抱ける口?男はそう、なんだよね…?」

    酒を含んだ熱い息を吐きながら、俺に問いかける分隊長

    酔いのためか、いつもよりずっと艶やかに見える、その表情に、思わず目を奪われる

    とにかく、落ち着けと自分に言い聞かせ、鉄壁の理性の壁を構築しつつ、分隊長の問いに答える

    「俺は…嫌です。自分が好きな相手でないと、その気になりません」

    俺は首を振った

    すると、分隊長が艶やかな笑みを浮かべて、俺の耳元でささやく

    「…じゃあ…試そっか…?」

    そう言うなり、俺の身体を後ろに押し倒す

    おあつらえむきに、後ろには丁度ベッドがあった

    「分隊長…?!」
    俺は完全に身体をベッドに押さえつけられる

    分隊長は、俺の上に馬乗りになった

    …これは、一体、どんな状況なんだ!?

    頭が混乱して、事態に着いていけていなかった
  16. 24 : : 2014/07/31(木) 18:19:45
    「分隊長?!落ち着いてくださ…」

    俺の焦った言葉を遮る様に、口が塞がれる…分隊長の唇によって

    分隊長の指は、俺のシャツのボタンを外す

    「ちょっと、ちょっと!!分隊長?!」
    ようやく解放された口を開き、声を出す

    「私相手でも、勃つかなあ…」
    分隊長は、悪びれる様子もなく、俺の下半身に手を伸ばす

    「な、な、何を…やってんですかあんたは!!」

    分隊長の手が俺の物に触れた時、ようやく状況を頭が把握した

    分隊長は、きょとんとした

    「何って…セッ…」

    「分かってますよ!いや違います!!何で俺にそんな事を!兵長に頼めばいいじゃないですか!?」

    俺は分隊長に馬乗りされたまま、必死で声を出した

    分隊長は顔を歪ませた

    「リヴァイは…好きじゃなくても抱けるんだってさぁ…」

    要するに、今日の逢い引きで喧嘩でもしたんだろう

    しかし俺を巻き込むなと言いたい…

    「兵長は潔癖ですから、好きじゃない女は抱きませんよ」

    俺ははぁとため息をついた

    「そんなことないよ、だって好きじゃないって言われたしね。もういいんだよ、それより君は…あれ、少し固くなってるね?」

    分隊長は、俺の下半身に手で触れて、そう言った

    「セ、セクハラですよ…分隊長…」

    「てことは、やっぱり君だって、好きじゃなくても抱ける口なんじゃないか…やっぱり男ってだらしないなあ…」


    分隊長のその言葉に、俺の中の何かが崩れ落ちた
  17. 25 : : 2014/07/31(木) 18:44:38
    勢いよく上半身を起こして、分隊長の身体を跳ね除ける

    その勢いのまま、逆に分隊長の身体をベッドに押さえつけた

    「あんたねえ…人の気も知らないで…よくそんな事を…」

    ずっと片想いだった人の身体を組み敷いているのに、出てくる言葉は色気の欠片もない

    正直泣きそうだった

    ようやく俺の様子がおかしいのに気が付いたのだろう

    分隊長の顔が、興奮状態から普通に戻った

    「モブリット…?」

    「俺は…あんた相手にならいくらでも勃ちますよ…言っている意味はお分かりですか?」
    俺は、理性の壁を再構築した

    「モブリット…ごめん…」

    分隊長は項垂れた

    「…いいんですよ。兵長と喧嘩したんですね…あんたも兵長も素直じゃないですからねえ…ゆっくり向き合ってみてはいかがですか?」

    俺は…なんてお節介なんだ…

    お預けくらってその上、恋敵にアドバイス…

    結局俺にはそんな感じの、中途半端な役回りが回ってくるのかもしれないな

  18. 26 : : 2014/07/31(木) 19:43:16
    「モブリット…本当にごめんね…」
    今にも泣き出しそうな顔になる分隊長

    まてまて、泣きたいのは俺の方じゃないか…

    完全に振られたんだ…ああ、分かってはいたんだけど、これで完全に終わった

    思いきり泣きたい気分ではあるが、死んでも泣かない…俺にだってプライドがある

    「いいんですよ。俺はずっとあんたが好きでした。兵長と恋人同士だと分かっていても、諦めきれずに…でも今吹っ切れましたよ」

    俺は分隊長の頭をそっと撫でて、立ち上がった

    そして、外されたシャツのボタンをはめながら、机に向かう

    旅行計画の続きだ

    椅子に座り、地図やら資料やらに目を通していると、分隊長が側に寄ってきた

    「何やってるの?」

    「福利厚生部長なんで、いろいろと仕事があるんですよ」

    俺はエルヴィン団長から受け取った辞令を、分隊長に手渡した

    「…慰安旅行…かあ…楽しそう!!」

    「…楽しみにしていて下さい。いい企画を思い付いたので」

    俺は分隊長に微笑みかけた

    分隊長は、俺の頭をがしがしと撫でて言葉を発する

    「期待しているよ、モブリット・バーナー福利厚生部長」

    分隊長も、俺に微笑みかけた
  19. 29 : : 2014/07/31(木) 21:56:35
    分隊長が部屋を出ていった後、俺ははぁとため息をついた

    「遅かれ早かれ、こうなる事は分かっていたんだけどなあ…」

    数年間に渡る片想い…しかも俺の場合、その相手と過ごす時間が長かった

    分隊長の前では強がってはいたものの、一人になってみるといろいろ思い出して辛くなってきた

    かと言って、涙は出ない

    長らく感情を押さえつけていた反動なのだろうか

    悲しいという感情が欠落したのか、頭が忘れようとしたのか定かではないが…

    「俺は、幸せとかそう言うのには縁が無さそうだな…」

    そう呟いてみて、自己嫌悪に陥った

    こういう時は寝て忘れるに限る

    ベッドに突っ伏し、布団に潜り込んで、目を閉じた

    明日になればいつも通り、分隊長の副官としての責務を全うすると、心に誓って…

  20. 30 : : 2014/07/31(木) 22:33:11
    翌朝

    身支度を整え、いつも通り分隊長の部屋にモーニングコールをしにいく

    扉をノックし、しばし待っていると、分隊長が部屋から出てきた

    「分隊長、おはようございます」

    「…モブリット、おはよ」
    分隊長は俺の顔を伺うように、じっと見つめた後でそう言った

    「今日は身支度をご自分でされたんですね、分隊長」

    そう、大抵いつも俺が呼びに行った時には寝ていたからだ

    「…うん、今日はね、頑張ったんだ」

    分隊長は胸を張った

    「…何時まで続きますかねぇ…」
    俺がそう言って肩を竦めると、分隊長は口を尖らせた

    「…ずっと頑張るよ…多分、二日くらいは…」
    分隊長はぼそっと呟くように言った

    「短っ!!せめて一週間頑張れませんかね!?」
    俺は眉を潜めた

    「無理だよ無理!!今日一日頑張っただけでも誉めてくれよ!?」
    分隊長は俺に詰め寄った

    「あんた、立派な三十路なんですから、それくらい頑張らなくてもやりましょうよ!?」
    頑張らなきゃ出来ない事ではないはずだ!

    「じゃあ誉めてくれよ!?」

    「おととい来やがれですよ!!」
    俺はふん、と鼻を鳴らした

    「上司におとといきやがれって…酷い副官だよ…」

    「ハンジさんと副長って、ほんとに仲良しですよね!?」

    俺たちの会話に割って入ってきたのは…

    「やあニファ、おはよう!!」

    おかっぱ頭のニファだった

  21. 31 : : 2014/08/01(金) 00:24:45
    「ニファ、おはよう。昨日は団長に慰安旅行を進言したのかい?」

    俺の言葉に、ニファは笑顔で頷いた

    「はい!!どうしても行ってみたくって!!…福利厚生部長になったそうで…ふふ」

    「ああ、君のお陰でね。おかっぱちゃん」

    「何の話なんだい?」
    分隊長の言葉に、ニファと俺は二人で経緯を説明したのだった


    「なるほどねえ、モブリットの一言がきっかけだったのかあ…でも楽しみだよほんとに!!」
    分隊長は目をきらきらさせた

    「ちなみに、私は福利厚生副部長なんで!!モブリット部長、一緒に慰安旅行を成功させましょう!!」

    ニファはそう言うと、俺の手をぎゅっと握りしめた

    「あ、ああ、よろしく頼むよ、ニファ」

    その手を握り返すと、ニファはにっこり笑った

    愛らしい笑顔だと思った
  22. 32 : : 2014/08/01(金) 10:29:32
    日中は福利厚生部長としてではなく、第4分隊副長としての仕事をこなした

    主にハンジ分隊長のお守り…なのだが、結構…いやかなり忙しい

    それでも、壁外遠征と遠征の丁度合間の今の時期は、主に駐屯兵の仕事の手伝いが多く、一番時間的に余裕があった

    徹夜を必要とする様な任務も研究も無く、日が暮れると同時に、副長から部長へと肩書きを変えて活動する事が出来た

    昨夜あらかた旅行計画を立てたため、今日はその計画を細部にまで煮詰める作業に取り掛かる

    明日には日程を決めていろいろ手配して…

    机に向かって、紙に旅行予定をペンで書き記していく

    そして、何処か心を躍らせている自分に気がつく…

    俺はこういう計画を立てるのが、昔から好きだった

    訓練兵団に入るまでは、友人同士の泊り会なんかもよく企画したなあ、なんて懐かしく思った
  23. 34 : : 2014/08/01(金) 10:45:27
    その時、コンコンと扉がノックされた

    「開いています、どうぞ」

    分隊長だろうと思い、敬語でそう言うと、カチャッと扉が開き、人が入ってきた

    「副長…じゃなかった、部長、コーヒーお入れしてきました!」

    その声に椅子に座ったまま振り返ると、コーヒーカップを二つ、乗せたトレイを片手に、笑顔のニファがいた

    「お、ニファだったのか。ありがとう、よく気が利くね」

    「それは、私の大切な副長…じゃなかった、部長のためですから!!」

    ニファはそう言いながら、コーヒーカップを机に置いた

    「あー、俺のためにわざわざどうも」
    俺は毎度のニファの言葉に、肩を竦めた

    ニファは口を尖らせる

    「ちっとも気持ちがこもってないお礼ですね…!」

    「こめてるこめてる…それは置いといて…早速手伝ってくれないか、ニファ」

    俺はニファに必要材料を書き出したリストを押し付けた

    「わあ、もうこんなにまとまってる!!」
    ニファはリストを見て目を丸くした

    「だいたいいくら掛かるか、計算してくれないかな、ニファ」

    「了解です!!部長!予算内に収まるといいですね」

    ニファはそう言うと、書類に向き合い始めた


  24. 36 : : 2014/08/01(金) 12:58:51
    「副長、何とか予算内に収まりそうで、良かったですね!!」

    ニファの計算によると、費用はぎりぎり予算内に収まっていた

    「そうだな、後は、皆が楽しんでくれるといいんだけどね」

    俺の言葉に、ニファは笑顔を見せた

    「きっと楽しんでくれますよ!!今までに無い趣向ですしね。明日は買い出しに行かなきゃですね!!私、明日非番なんで、買い出ししておきますね、副長…いや、部長!」

    「…俺も、非番だなあそういえば…」
    パラリとスケジュール帳を捲って言った

    「部長は非番でも、分隊長は非番じゃないですよ?どうせ付きっきりなんでしょ、副長は!」

    ニファは肩を竦めた

    「うーん、今は差し当たって急ぎの仕事も無いしなあ…分隊長も、これからはなるべく自立するって言ってたし…」

    「な、何かあったんですか!?分隊長が自立とか!!副長無しでは人間らしい生活を送れない分隊長なのに!!はっわかった!!モブリットさん、欲望の赴くまま、分隊長の身体を貪り尽くしたんでしょ!?それで嫌われたに違いない!!」

    ニファは人差し指で俺を指差しながら、捲し立てた

    俺はぶんぶん首を振る
    「な、何だよそれ!!俺は分隊長をどうこうなんて、しない…いや…」

    「あれっ!?副長口ごもりましたね!?ってことはやっぱり図星なんでしょ!?」

    ニファはそう言いながら、詰め寄ってきた

    「本当に何も無いよ…俺はただ、ふられただけなんだから」
    俺のその言葉に、ニファは一瞬表情を固くした

    「…強引に我が物にしようとして、断られた挙げ句に振られた…?」

    「違う、そうじゃない!!何処のドラマ何だよそれ…俺がそんな事をするように…」

    「はい、見えません。副長いろいろあったんですね」
    ニファは突然真面目な表情をして、静かに言葉を発した

  25. 37 : : 2014/08/01(金) 18:22:03
    「いろいろあったと言えばあったし、まあ前から分かっていたと言えば分かっていたし…」

    俺は鼻の頭をぽりぼりと掻きながら、呟くように言った

    バツが悪い時に出る癖だ

    ニファは、憂いを帯びたような眼差しを俺に向ける

    「ハンジさんの事、やっぱり本気だったんですね…ずっと。その…兵長といい仲だと知った後も…」

    「あー、もうそれは言わないでくれよ、ニファ…。もう忘れると決めたからね」
    俺は、ニファに笑顔を見せた

    ニファはそれを見て、泣き笑いの様な表情になった

    「…副長…なんて顔してるんですか…」
    そう言うと立ち上がり、俺の頭を両腕で抱き抱えた

    ニファの突然の行動に、思わず息を飲む

    予想以上に柔らかな何かが顔に押し付けられて、息がつまった

  26. 38 : : 2014/08/01(金) 21:48:04
    手持ち無沙汰になっている手で、ニファの背中をトントンと叩く

    すると、胸に押し付けられていた顔が解放された

    「副長、元気でましたか!?」
    ニファは悪びれる様子も無く、にやりと笑みを浮かべて、俺の顔を覗いた

    「げ、元気になったよ…」
    俺の頭はまたしても、事態についていけずにいた

    かろうじて言葉を発すると、ニファが視線を泳がせながら、言葉を発する

    「へえ!!どこが元気になったんですか!?副長!?」

    「…どこがって…って言うかね!!いきなり何をするんだよ…全く」

    俺はため息混じりに呟いた

    「副長が、今にも死にそうな顔をしていたから、心配でつい…抱き締めちゃいました!!」
    ニファはそう言って、にっこり笑った

    「そんなに酷い顔をしていたかい?俺は」

    「はい、捨てられた犬の様な表情でしたよ。忠犬だけに…ふふっ」
    ニファは俺の頭を撫でながら笑った

    「忠犬、ねえ…。しかし本当にびっくりしたよ」
    俺はふぅと息を吐いた

    「嬉しかったでしょう!?どうでしたか!?」
    ニファは俺の顔を覗き込みながら、詰め寄ってきた

    「ああ、嬉しかった嬉しかった」

    「あーっ!!また気持ちがこもってない、なげやりな態度だ!!傷付いちゃう!!副長のばか!!」

    「はいはい…ばかで結構」

    こんなやり取りになっていても、俺を元気付けてくれようとするニファの心遣いは、嬉しかった


  27. 39 : : 2014/08/02(土) 10:34:54
    「じゃあ、明日は朝から買い出しにご一緒しますね、副長…じゃなかった、部長!」

    ニファはそう言うと、ビシッと敬礼をした

    「副長でいいよ…ニファ。ああ、明日宜しく頼むよ」

    「はいっ!!副長と二人きりは危険な香りがしますけど、気を付けつつご一緒します!!」

    ニファの言葉に、俺は肩を竦めた

    「…それはこっちの台詞だろ?」

    「私は健全を絵に書いたようなですね!!」
    ニファが口を尖らせた

    「あーはいはい。精々気を付けてくれよ?」
    ニファの肩をぽんと叩いてそう言った

    「また投げやりですねっ副長!」

    「ははは」

    「でも…楽しみにしていますね、副長」
    ニファはそう言いながら、ふんわりと微笑んだ

    「ああ、そうだね。俺も楽しみにしているよ」

    その言葉に、ニファが何故か顔を真っ赤にする

    「で、では副長、お、おやすみなさい!!」
    そう言うなり、部屋から飛び出して行った

    その後ろ姿を見送って、ふぅと息をつく

    「…嵐の様だったな。でもお陰で…」

    失恋に落ち込んでいた心が、少し浮上した気がした

    「さて、寝るか」
    灯りを消してベッドに横になると、程なく睡魔が襲ってきた

    明日は久々に非番を満喫しようと心に決めて…眠りについた
  28. 40 : : 2014/08/02(土) 21:09:00
    翌朝、朝食後に分隊長にことわりを入れて、福利厚生部長としての役割に従事すべく、街に出た

    隣を歩くのは、私服に身を包んだニファ

    長めのフレアスカートに、デコルテラインが大きく開いた、フリルのついたシャツ

    良く似合っていると思う…女性らしい格好だ

    「君はおしゃれだね、ニファ」
    兵士でありながらも、女性である事を忘れない彼女の生き方は好感が持てる

    「非番の時くらいは、スカートはきたいです。似合ってますか!?副長」

    ニファはそう言うと、くるりとその場で回る

    スカートが風を含んで、ふわりと舞い上がった

    「似合ってるよ、ニファ」

    俺がそう言うと、ニファはにっこりと笑う

    「ありがとうございます、副長!!」

    そう言うと、軽やかな足取りで先を歩いて行った
  29. 41 : : 2014/08/03(日) 01:13:06
    「結構沢山の荷物になりそうですねえ…」

    ニファと二人で商店を回り、リストとにらめっこをしながら、準備物を買い揃えた

    「そうだね、調査兵団全員分だからね…配達してもらえるから楽だけどな」

    日中歩き回ってさすがに疲れた…
    俺はふぅと息をついた

    「副長疲れてますねぇ…休憩してから帰りましょうか?」

    ニファが俺の顔を覗きながら、心配そうに言った

    普段分隊長といる時は、体調を心配するのは俺の役目で、心配される方ではなかった

    だから、こうして心配されるのに慣れていなくて、背中がむず痒かった

    「そうだな、確かに少し疲れた…ニファ、お腹が空かないか?何か食べて帰ろうか」

    俺の言葉に、ニファは目を輝かせる

    「副長!!嬉しい!!何か食べに行きましょう!!」

    嬉しそうに顔を綻ばせるニファを見ていると、何だか自分も嬉しい気分になった
  30. 43 : : 2014/08/03(日) 19:56:57
    「副長、結構お酒強いんですね。そんなに飲んでる所、初めて見たかもしれない」

    トロスト区の商店街の一角にある、居酒屋兼料理屋で、久々に酒に興じながら、ニファと何気ない会話をしていた

    「そうかな?俺は結構飲むよ。分隊長がいれば、あまり飲めないけどね…何せあの人は酒に弱いくせに、飲みたがる…止めるのに、自分が飲んでいたら説得力がないだろ?」

    俺の言葉に、ニファは複雑な表情を見せた

    「副長は、分隊長のために身を投げ出してましたもんね…」

    「まあ、それが俺に与えられた、任務でもあったからね。分隊長の暴走を止めたり、世話をしたり…副官ってそんなものなんだよ、ニファ」

    俺は困ったように肩を竦めた

    「じゃあ、私はモブリット部長の副官ですから、お世話しなきゃですよね!!任せて下さい!!」
    ニファは唐突に俺の手を握りしめて、言い放った

    「俺の、世話…?いやいや大丈夫だよ」
    俺はぶんぶん首を振った

    「いいじゃないですか。いつもは分隊長の世話を頑張ってるモブリットさんですもん。たまにはお世話をされるのもいいと思いますよ、ね?」
    ニファはにっこり笑顔で、俺の顔を覗き込んだ

    「…世話って、何をするんだい?ニファ」
    俺は、恐る恐る尋ねた

    「副長がいつも分隊長にやってる事ですよ」

    「…いや、いや!!それはまずい!!俺は自分の事は自分でするから!!」

    「副長、分隊長にいつも何をしてあげてるんですか…?詳しく教えて下さい!!」
    ニファが、何故か頬を膨らませて、俺に詰め寄った

    「何って…着替えを用意したり、風呂に入れたり…食がすすまない時には無理矢理口に入れてやったり…」

    「…まるっきり介護じゃないですか、それ!!副長はいくらなんでもやってあげすぎですよ!?分隊長を自立させてあげて下さい!!」

    俺はニファに過保護を叱られてしまったのだった
  31. 45 : : 2014/08/03(日) 22:57:51
    「副長は…いい人過ぎるんですよぅ…」
    ニファが突然テーブルに突っ伏して、そう言った

    顔が真っ赤になっている…多分酔いが回ってきたんだろう

    少ししか飲んでいないはずだが、どうやら酒に弱いらしい

    「ニファ、大丈夫か?ほら、水」
    真っ赤な頬を冷やすように、冷たい水の入ったグラスを頬に当ててやる

    「あっ…冷た…」
    ニファはその感覚に、顔を上げて反応した

    「君は酒に弱いんだな。そういえばあまり飲んだのを見たことがなかったな」

    「…副長、私は全然飲めないんですよ…一杯飲んだだけで…こうなっちゃって…」
    そう言いながら、徐にシャツをまくりあげる

    ニファの形のよいヘソが見えた

    そのヘソの下辺りから、まるで線を引いたかのように、真っ赤に染まっていた

    「なるほど、身体がアルコールを処理出来てないんだな」

    「はい、下半身真っ赤になります…その上眠たくなっちゃうから、滅多に飲みません。危ないでしょう?」

    ニファは照れたような笑みを浮かべた

    「それなら無理して飲むことはないのに…」

    「今日は飲みたかったんです、折角副長と一緒に外食ですしね」

    「…俺と外出は危険な香りなんじゃないのか?」
    ついつい、いたずら心が言葉についてでる

    ニファは顔を真っ赤に染めた
    酒に酔ったから…なのだろうか

    「副長が、危険なわけないじゃないですか…」

    「…そんな事はわからないよ。俺だって男だしね」

    俺の言葉はニファにどう伝わったのかわからないが、ニファはますます顔を真っ赤にした

    「わ、わかってますよ…副長が男だって事は…でも、危険な男ではないはずです…」

    「…そうだな、多分ね」

    「た、多分!!…でも、危険な副長もちょっと見てみたい様な…」

    ニファは片肘をついて、俺の顔をじっと見つめながらそう言った

    「危険な俺か…まあ考えておくよ」

    「ええっ!!考えなくていいですよぅ…そのままの副長が好きですから…」

    ニファはとろんとした表情でそう言った

    「え…?」

    気のせいだったのか、好きだと聞こえた

    「ニファ…?」
    彼女の名前を呼ぶと、返事はなく…

    ただスースーと、寝息が聞こえてきた

    「寝てしまったか」
    俺はそのあどけない寝顔に、つい手を伸ばす

    赤く染まった頬に触れると、彼女はほんの少し、身じろぎをした

    「…可愛いな」
    思わず声に出して呟いてしまったのだった

  32. 46 : : 2014/08/04(月) 14:11:13
    結局、熟睡してしまったニファを背負って、兵舎に戻った

    日頃の行いのおかげだろうか…門兵にもすれ違った兵にも何を咎められる事も、訝しげな表情をされる事も無く、ニファの部屋までたどり着いた

    さすがにここから先は俺がやるわけにはいかない

    隣の部屋の兵士たちを呼んで、ニファを任せておいた

    部屋に戻ると、適度な酒のおかげだろうか

    心地よい眠気が襲ってきた

    素早く着替えてベッドに潜り込む

    そういえば、今日は分隊長と一度しか顔を合わせていない

    そんな日は、分隊長の副官になってから初めてかもしれない

    「過保護か…」

    ニファに指摘された事をもう一度反芻した

    確かに言う通りかもしれない

    分隊長に必要とされたかった、俺が悪かったのだと思う

    必要以上に世話をやいたかもしれない

    「…いろいろ、考えなきゃな」
    そう独りごちて、眠りについた

  33. 48 : : 2014/08/05(火) 00:37:49
    翌日はいつもどおり、分隊長の側で一日任務をこなした

    「はぁ~暑いけど、とりあえず今日の仕事は終わったね。モブリットご苦労様!!」
    仕事終わりに分隊長に、ぽんと肩を叩かれた

    その手はそのまま俺の肩を揉みほぐす

    「…あー、気持ちいいです、そこ」
    いつも俺が分隊長にやっている事だけど、たまにこうしてお返しをしてくれる

    「モブリット、かなり凝ってるねえ…真面目すぎて、片肘を張りすぎてるからじゃ…」

    「違いますよ、デスクワークが最近多いからです…ああ、そこが辛いです…」

    「そういえば、昨日ニファが酔っぱらって、寝ちゃったらしいね」
    その言葉を聞いた瞬間、俺の身体はかちんと固まった

    「は、はあ…ご存じでしたか」

    「ニファが自分で言ってたよ。副長が送ってくれたみたいだってね…ニファがお酒飲むなんて珍しいよね。あの子飲めないはずなのに…」

    分隊長は首をかしげた

    「ニファが飲んだのは一杯のカクテルだったんですが…それだけで真っ赤になってましたね、確かに」

    俺は頷いた

    「モブリットが飲むから、合わせたんじゃないの?あの子は結構気を使う子だしね」

    「…だとしたら、悪いことをしました。気を使わせるなんてね」

    「ニファは、もしかしたら…」
    分隊長はそこまで言って、言葉を止めた

    「…もしかしたら、なんです?」

    「さあね?…ふふ」
    分隊長は謎の微笑みを浮かべた



  34. 55 : : 2014/08/06(水) 00:46:37
    翌日は団長に旅行日程等の詰めの相談をし、更に数日で、いろいろな準備や手配を終えた

    ニファは勿論沢山動いてくれていた
    元々よく機転が効く子だ

    ニファに任せた事は、100%どころか、 120%で返ってくる程だった

    分隊長に言われた些細な事が気にならない訳ではなかったが、あれからのニファの態度は至って普通だったので、気のせいだったと言うことにしておいた

    そして、ついに旅行当日がきた
  35. 57 : : 2014/08/06(水) 00:56:57
    調査兵団の面々を連れて、初の慰安旅行

    移動手段はもちろん馬

    馬車に荷物を積み込み、目的地へひた走る

    茹だる様な暑さは相変わらずだったが、馬に乗って風を切っていると、徐々にその空気が冷気を帯びてくる様に感じ始めた

    トロスト区の町から離れて、進むにつれ、風景が緑一色に変わる…山に登っているのだった

    その山の中腹にある、川のほとり

    目的地へ到着したのは、昼前だった

    兵士たちは早速、辺りの拓けた場所にテントを設営する…そう、モブリットは予算が少ないので、野営で補う事にしたのだ

    いわゆる、キャンプだった

  36. 59 : : 2014/08/06(水) 01:08:38
    「川辺で野営とは、モブリット考えたなあ!!」
    分隊長がテント設営を手伝いながら、嬉しそうに言葉を発した

    「野営は、いつもは壁外調査や、任務でやるからな。こうしてバカンスでやるのはまた違った風情で、いいな」

    そう言うのはリヴァイ兵長だ

    手際よくテントを組ながら、分隊長と言葉を交わしていた

    その二人を遠目で見ながら、俺は微笑んだ

    バカンスとは行かなかったが、敬愛する上司である二人にも、楽しんで貰えているのが嬉しかった

    テントを組んでいる間に、女性陣は食事の支度だ

    今日は昼は川辺でカレー、夜はバーベキューだ…少し贅沢をした

    宿を利用しなかったので、食材は贅沢をすることができた

    食事の方は、ニファが取り仕切ってくれているから安心だ

    俺はテントの設営をチェックしながら、他のイベントの準備に取りかかっていた

    福利厚生部長に暇はない

    だけど、なかなかにやりがいがあって、楽しい仕事だ

    皆の笑顔が見られるしね


  37. 60 : : 2014/08/06(水) 01:20:20
    「スン…自然の匂いはいいな、モブリット。何か手伝う事はあるか?」

    俺がせっせと木材や薪を高く積み上げていると、ミケ分隊長が声を掛けてきた

    俺より遥かに上背がある、見上げる程だ

    男の俺から見ても、色気みたいなものを感じる、いい男だ

    …変な意味ではなく

    「ミケ分隊長、ではこの木材を積んでもらえますか?俺ではこれ以上高く積めないので」

    「わかった、やっておくからお前は他の仕事…してきてもいいぞ…おいエルヴィン、お前も手伝え」

    ミケ分隊長が、後ろで談笑していた団長を呼ぶ

    「…おお、ミケにモブリット。またまた何やら変わったものを作っているな…よし、手伝おう」

    「団長すみません、お願いします」
    俺はペコリと頭を下げた

    調査兵団が誇る二人に仕事を押し付けて…

    俺は料理の様子を見に行った



  38. 62 : : 2014/08/06(水) 01:32:20
    滅多にお目にかかれない、贅沢な物が鍋の中でぐつぐつ音をたてていた

    「副長…カレー出来てきましたよ!!いい匂いでしょう?はい、味見」

    鍋を覗いていると、ニファがやってきて、カレーを少し掬って小皿に入れてくれた

    「…いや、俺が味見なんて…」

    「副長が考えて準備したカレーですよ。副長が責任もって、最初に味見して下さい!!」
    ニファはそう言うと、俺に小皿を押し付けた

    「わ、わかったよ。…おっ、旨い」
    一口味見すると、玉ねぎの甘さがたっぷり染み込んで、スパイシーなのにどこか甘くて、旨かった

    「美味しいでしょう!?私が味を確認しながら作りました!!」
    ニファがビシッと敬礼をした

    「本当に旨いな。ニファはいいお嫁さんになれそうだ」

    俺は笑顔でそう言った

    すると、ニファが首を振る

    「お嫁さんに…なれるのかなあ」
    そう言って、一瞬表情を曇らせた

    「ニファ、どうしたんだ?」
    俺が問い掛けると、ニファはまた笑顔に戻る

    「何でも無いですよ~副長。あ、カレーは大丈夫ですから、副長は食事のセッティングをお願いしますね」
    ニファはぽんと俺の肩を叩いて、そう言った
  39. 66 : : 2014/08/06(水) 01:50:58
    カレーはそのまま煮込みつつ、団長が兵団全員を集めた

    「今日は君たちの日頃の疲れを癒すために、モブリットとニファが企画してくれた慰安旅行だ。早速だが、福利厚生部長より開会の言葉を頂こうと思う…モブリット、ニファ、前へ」

    開会の言葉かあ…って俺が言うのか!!
    が~ん、何も考えてなかった…

    なにかを企画したりするのは好きだが、人前で演説とか、自分が一番苦手な事だ…

    「副長…大丈夫ですよ」
    ニファが固まった俺の背中を押す形で、兵士たちの前に立った

    こうなったら仕方がない…
    手短に終わらせよう

    「皆さんに楽しんで頂ける様に、いろいろ考えました。暑さを川遊びで癒して、腹を美味しい物で満たして頂けたらと思います」

    俺がそう言うと、拍手が起きる

    そしてニファが言葉を続ける

    「今日は楽しいキャンプです!!夜にもイベントを企画していますからお楽しみに!!今日は団長からも無礼講の許可を得ています!!皆さんは日頃伝えられない話なんかもして頂けたら嬉しいです!!そう、恋の告白とか!!楽しんで下さいね!!」

    ニファの言葉に、兵士たちが拍手喝采をした

    こうして、調査兵団初の慰安旅行が幕を開けたのだった

  40. 72 : : 2014/08/06(水) 08:45:37
    「カレー旨い!!随分昔に一度食べたらしいが、記憶になくてなあ!!」

    「俺は初めて食べたな…辛い熱い旨い、そして止められない!!」

    カレーのスパイスはとても高価で、一般的にはあまり手に入らない

    今回は奮発して入手した…初めての慰安旅行だからね

    兵士達は、滅多に食べられないカレーに舌鼓を打ちながら、楽しげに語らっていた

    その間にも俺はあちこち動き回る

    食事の給仕はニファたちにまかせて、次のイベントのセッティングだ

    林の中の小路に順路がわかるように標識を設置し、ある場所にタオルや石鹸等を置いておく…何をやっているかは内緒だ

    林の中からキャンプ地に戻ると、ニファが待っていた

    手にはトレーを持って

    「部長、お疲れ様です!!カレー、食べませんか?」

    「ああニファ、ありがとう。頂こうかな…って、君も食べていなかったのか」

    トレーには二人分のカレーと、水が乗っていた

    「はい、給仕に徹していました!!あとは皆に任せてきましたから、大丈夫です。食べませんか、一緒に」

    ニファは少し頬を染めている様に見えた

    俺はトレーの中のカレーに視線をやって、言葉を発する
    「いい匂いだな。お腹がすいた…温かいうちに食べよう、ニファ」

    「はいっ!!頂きます!!」

    林の入口の木陰に腰を下ろして、ニファと二人で、とっておきの料理に舌鼓を打ったのだった
  41. 75 : : 2014/08/06(水) 09:56:35
    「カレーは何回か食べたことがあるけど、今日のが一番旨いな」
    暑い最中に暑い料理、これがなかなか食欲を加速させる

    ニファはにこにこ笑顔で、カレーを食べている

    「例の方は準備は…」

    「ああ、ちゃんとしてきたよ、大丈夫だ。カレーで汗をかいて、川遊びをして…皆楽しんで貰えそうだ」

    俺の言葉に、ニファは苦笑する
    「副長は、楽しむ暇が無さそうですね」

    「いや、そうでもないよ。皆の普段は見ない様な表情が見られて、楽しんでいるしね。後は夜までは特にする事もないし、楽しませてもらうよ」

    「…川遊びは、一緒にしましょうね、副長。ちゃんと水着持ってきましたか?」
    ニファの問いに、俺は記憶を手繰る

    「うーん、多分持ってきた、と思う」

    「副長、人の世話ばかりしてご自分の事忘れたらダメじゃないですか!?持って来てなかったら、裸で泳いで下さいね!!」

    ニファはそう言って、俺の額を指で弾いた…上官に対しての態度が無礼講なのは、ハンジ班では当たり前の日常だ

    「裸で…泳いだら捕まるよ、さすがに」

    「私は副長と、川遊びしたいんですもん!!」

    ニファは頬を膨らませた

    「大丈夫だよ、持って来てると思うから。俺もニファと遊びたいしね」

    何気なく言った、一言だった

    たがニファは俺の言葉を聞いた瞬間、顔を真っ赤にして所在なさげに視線を踊らせる

    「あ、遊びたい…ですか?」

    「ああ、遊びたいね。ニファ、どうした?大丈夫か?」
    様子が突然おかしくなったニファの顔を覗き込んだ

    すると、ニファが後ずさった

    「あ、大丈夫ですっ!!カレー美味しい!!」
    そう言って、カレーをかき込み始めたのだった
  42. 76 : : 2014/08/06(水) 10:29:18
    ニファの様子がたまにおかしくなるのは何故か

    何となく分かってきたような気もするが、もしそうだとしたら説明のつかない行動があったりして、結局これと言って答えは出せなかった

    ニファにちらりと目をやると、カレーを美味しい美味しいと、顔を綻ばせながら食べていた

    年齢より幼く見える顔立ちだが、俺より少し年下くらいのはずだ

    いつも笑顔で、冗談が大好きで、いつも笑いの中心にいるような、そんな女性

    花に例えるなら、向日葵と言った所か

    眩しく輝く何かの位置を、把握していつも知らせてくれている様な、そんなところがある

    「…副長、食べないんですか?」
    ニファの言葉で、現実に引き戻される

    「食べるよ。早く食べて汗でも流したいな…さすがに暑い」

    「はい!!川遊びしましょう!」
    ニファはそう言って微笑んだ
  43. 79 : : 2014/08/06(水) 11:03:05
    カレーに舌鼓を打った後は、全員水着になって川遊びに興じた

    俺は皆が遊んでいる間に、カレーの後片付けをニファと共に済ませて、水着に着替えた

    ニファはブルーカラーのビキニ姿だった

    「ニファのファンに大サービスだな」
    俺がそう言うと

    「私にファンなんていませんよー!!」
    と言って、首を振った

    「いやいや、沢山いるよ。君が気が付いていないだけでね。ほら、ここにも約一名いるよ」
    そう言って、俺は自分を指差した

    すると、ニファはみるみる顔を真っ赤にした

    「副長!!からかわないで下さい!!」
    ニファはそう叫ぶと、走り去ってしまった

    「怒らせたかな…?」
    俺は彼女の走り去った後に視線をやりながら、独りごちた

  44. 80 : : 2014/08/06(水) 11:26:56
    川に行くと、すでに兵士達が水遊びに興じていた

    分隊長も、兵長と戯れている様だ

    川辺に座って、皆が楽しんでいる様子を眺めているうちに、睡魔が襲ってきた

    逆らわずに目を閉じた、その時

    「………わわっ!!」
    ザバァァ…

    頭の上から水が降ってきた
    …まるで滝の様に

    「油断大敵!!」
    その声に後ろを振り向くと、空っぽになった桶を片手に、不敵な笑みを浮かべたニファがいた

    「…なんだ君か…びっくりした。びしょ濡れになってしまったよ」
    髪の毛から滴り落ちる水滴を、手で掬いながら言った

    「今から川遊びするんですから平気でしょう?さ、行きましょ!!私のファンなんでしょう?早く遊んで下さい、副長」

    ニファはそう言って、俺の手を引っ張り立たせる

    「ああ、そうしよう」
    笑顔のニファにつられるように、自分も笑顔になった
  45. 81 : : 2014/08/06(水) 11:34:03
    「いよっ!!水も滴るいい男!!」
    ニファは俺の手を引きながら、そんな事を言った

    「君が滴らせたんだけどね。水は…」
    俺はぼそっと呟く様に言って、ニファが持つ桶を取り上げる

    「本当にいい男ですよ、副長は。だって私の大切な人ですか…らっ!?きゃあ!!」

    ザバァァ…
    お返しに滝をニファの頭から降らせてやった

    「水も滴るいい女だな、ニファ」

    「いきなりぶっかけられた~!」

    「お返しだよ」

    頬を膨らませるニファに、普段はあまりやらないような、不敵な笑みを浮かべてそう言ってやった
  46. 82 : : 2014/08/06(水) 13:13:11
    「楽しそうな事してるね!!」

    ニファと二人、滝行ごっこに興じていると、ハンジ分隊長とリヴァイ兵長がやってきた

    「水も滴るいい男ごっこです…よっと!!」
    ニファはそう言いながら、分隊長に水をぶっかけた

    「うわっ!!」

    「油断したらやられますよ、分隊長」
    俺は苦笑ぎみに言った

    「不潔を絵にかいたような奴だからな…水ぶっかけられて丁度いい…うわっ!!」

    兵長にまで、水をぶっかけるニファ

    「兵長油断大敵!!今日は無礼講ですよ!!」
    ニファはにやりと笑った

    「ニファ、兵長にまで…」
    俺は頭を抱えた

    「おおっ!!リヴァイが水も滴るいい男に!!」

    ハンジ分隊長は、目をきらきらと輝かせて、兵長に駆け寄った

    その時、またしてもニファが桶いっぱいの水を二人に降らす

    「うわぁ、またニファにやられた!!」

    「ちっ…全く油断できねえ…」

    「お二人さん、水滴り同士仲良くして下さいね?副長行きましょ!!」

    ニファはまた俺の手を引いて、その場を後にした

  47. 83 : : 2014/08/06(水) 14:12:19
    「さあ、次はミケさんに水をぶっかけに…あと、エルヴィン団長にも!」

    ニファはにやりと笑みを浮かべて言った

    「だ、ダメだよニファ…いくらなんでもあの二人には…」

    「無礼講ですよ、無礼講!!ぶっかけちゃいましょうよ~あはは」

    俺の制止に対して、全く聞く耳を持たない所は、さすがにハンジ分隊長の妹分と言った所か

    「あははって…楽しそうだね、ニファ」
    俺は苦笑した

    「楽しいですよ!?あ、でもそうですね…もし怒られそうになったら、副長に命令されましたぁって泣きつけば大丈夫ですから!!」

    「いやまて、それじゃあ俺が大丈夫じゃなくなるじゃないか…」

    その場面をつい想像して、背筋が凍った

    「副長は大丈夫ですよー…多分」
    ニファはそう言って、舌をペロッと出した

    「多分…って、ニファ、君は…」

    結局、ニファは顔を会わせる人全てに水をぶっかけるという偉業を成し遂げた…

    勿論、団長やミケ分隊長にも…

    俺は後から平謝りという役目を担った

    …これじゃあ分隊長の補佐をしている時と変わらないなあと思いつつ、少しずつ愉快な気分になったのは、きっと気のせいに違いない
  48. 86 : : 2014/08/06(水) 14:40:46
    「あー、楽しかった!!」
    一通り水をぶっかけた後、ニファは川辺に腰を下ろした

    「良かったな、ニファ。俺も、久々に笑った気がするよ。ありがとう」
    ニファの隣に腰を下ろして、彼女に笑いかけた

    すると、ニファは顔を真っ赤にして俯いた

    「ありがとうなんて…私が勝手に遊んだだけで、副長は謝ってるだけだったのに…」

    「まあそうなんだけど、見てたら楽しかったよ。エルヴィン団長の驚いた顔は、一生忘れないよ」
    俺の言葉に、ニファは顔をあげた

    「団長面白かったですね…ふふっ」

    「ああ…本当に」

    ニファのお陰で、ともすれば失恋に沈んでいたであろう心が穏やかに、軽くなった

    彼女への感謝の気持ちは、ありがとうという言葉だけでは、伝えられそうにないな…
  49. 87 : : 2014/08/06(水) 14:49:20
    水遊びを一通り終えた後、林の中のある場所に全員を誘導した

    そこには大きめの池の様な場所があり、なんと、地下から暖かいお湯が涌き出ていた

    天然の風呂だ

    川遊びの後は風呂でのんびり身体を温める

    勿論水着のまま、混浴だ

    さすがのニファも、疲れたのだろうか

    もう兵士達にお湯をぶっかけて回ることはなく、湯に浸かったまま目を閉じていた

    俺はさっと浸かってさっと着替えた後、夕食の支度をするために、キャンプの場所に戻った

  50. 88 : : 2014/08/06(水) 14:53:51
    夕飯もまた、普段より豪華にした

    炭火で火を起こし、その上に網を乗せて、肉や魚や野菜を焼いた

    バーベキューだ

    これなら皆が思い思い自分で焼いて食べられる

    川遊びも終わったので、酒を解禁にした

    ミケさんとエルヴィン団長が手伝ってくれた薪に火をつけ、夜の闇を明るく照らした

    皆肉と、酒で酒宴に興じて、楽しげな笑い声が、普段は静かであろう山の中に響いていた
  51. 89 : : 2014/08/06(水) 15:03:20
    「副長、お肉ですよ、あーん」

    俺が食べずに皆の肉や魚を焼いていると、ニファがたまに串刺しの肉を持ってきてくれた

    「自分で食べると言っているのに…」
    そう、何度言っても聞いてもらえず、口に反無理矢理押し込まれていた

    「食べさせて貰ったら美味しいでしょう?」

    ニファはにやりと笑った

    「…ああ、旨い旨い。ほらニファ、あーんしなさい」

    俺は丁度焼けた魚を、ニファの口に近付けた

    「えっ!?私は自分で食べれます!!」

    「俺にやらせておいて、自分はしないなんて事が通用すると思うかい?ほら、あーん」

    「ああ、副長って思っているより随分意地悪なんですねっ!!」
    ニファは頬を膨らませながらも、結局魚を口に入れた

    「別に意地悪じゃないだろ?食べさせて貰ったからお返ししてるだけさ」

    「う、うーん、副長に、叶わないなあ…」
    ニファは降参と言った体で、首を振った

    「ほら、肉沢山焼けたから、皆に配ってきてくれよ、ニファ」

    「はぁい!わかりましたっ!!副長」
    ニファは敬礼を施すと、肉を持って踵を返していった



  52. 90 : : 2014/08/06(水) 15:09:23
    夜も更け、酒宴もいつの間にか終わり、皆テントの中や、木々の下やら、思い思いの場所で就寝したり、話し込んだりしていた

    やっと一日の仕事を終えて一段落ついた俺は、林の中の温泉に行った

    「ゆっくり浸かれなかったしな」

    松明の明かりだけが辺りを照らしている温泉だったが、それが間接照明の様な役割を果たし、いい雰囲気を作り出していた

    誰もいない、貸切状態の露天風呂

    「はぁ~疲れた…」

    でも、楽しかったな、いろいろと

    そんな事を考えながら目を閉じていると、カサッと辺りから音がした

    音の方向に視線を移動させると、そこには

    水着姿のニファがいた
  53. 92 : : 2014/08/06(水) 15:17:12
    「やあ、ニファ。ご苦労だったね、疲れただろう」

    俺が声を掛けると、ニファは首を振る

    「いえ、副長こそお疲れ様でした。あの、ご一緒してもいいですか?」

    「ああ、どうぞ。おいで」

    俺がそう言うと、ニファはそっと湯に入った

    「疲れただろう?いろいろ動いてくれていたもんな」

    「そんなこと無いですよ。副長が殆どやって下さったから。でも、本当に楽しかったです、私。いい思い出になりました」
    ニファは遠くを見るような目をして言った

    「そうか、楽しんで貰えたなら良かったよ」

    俺は微笑みをニファに向けた

    だがニファは、何故か思い詰めたような表情をしていた

  54. 93 : : 2014/08/06(水) 15:27:01
    「副長は、本当にいい人です」
    ニファはそう言って、俺に真剣な眼差しを向けた

    「ああ、ありがとう」
    なんだかとてつもなく恥ずかしくなって、鼻の頭をかいた

    「いい人過ぎるんです。恋敵にエールを送ったり、自分の物にならなくても、気にせず無償の愛を相手に向けたり…とっても損をしています」

    ニファは仏頂面でそう言った

    「ああ、その通りかもしれないね。いい人と言うよりは、不器用なのかもしれないな、俺は」

    「私は、器用な男は嫌いです。信用できません。副長みたいに、不器用だけど一生懸命な、そんな人が好きです」
    ニファは、俺に真摯な眼差しを向けて、そう言った

    「な、なるほどね」
    言葉の真意を読み取れず、相槌だけを打った

    すると、ニファが大きな瞳で、じっと俺を見つめた

    「…私は、副長が好きです。ずっと前から、好きでした」

    静かに、だがはっきりと、俺の耳に飛び込んできた言葉は、予想以上の威力で、胸を突き刺した
  55. 94 : : 2014/08/06(水) 15:34:31
    「本当は、言うつもりなんてなかった。だって副長が好きなのは間違いなくハンジさんで、それは今も昔も変わっていなくて…間に兵長が入っても、やっぱり変わらなくて…私は、傷付くのが怖くて、言うつもり無かったんです…でも」

    ニファは俯きながら、言葉を紡いだ

    「こんなご時世だし、いつ死ぬか分からないし…私だって恋はしたいし、何事も経験だって思うし…だから、言ってしまいました」

    ニファの言葉に、俺は気の利いたセリフ一つ口に出来そうに無かった

    自分が分隊長に対して恋心を抱いていた事を、ニファは知っていた

    その上で、ニファは俺を好きでいてくれた

    俺の態度がどれだけ彼女を傷付けてきただろうかと、考えるだけで胸が痛くなった

  56. 95 : : 2014/08/06(水) 15:47:08
    「気持ちは嬉しいけど…ニファ、君は最初に俺に、副長は私の大切な人ですからって言った時に、俺が本気にして笑っただろ…?その時は…」

    「その時も、好きでした。でも恥ずかしくって…ついそんな態度をとってしまいました…副長ごめんなさい」

    ニファはぺこりと頭を下げた

    「じゃあそれから何回も、同じことを言っていたのは…」

    「勿論、全部本気でした。副長は冗談だと思っていたみたいですけど…仕方ないですね、私は最初にあんな態度をしたから、いけなかったんです」

    ニファは項垂れた

    ニファの肩が、震えているのがわかった…
  57. 96 : : 2014/08/06(水) 15:56:15
    そっと顔を覗き込むが、ニファは顔を両手で覆ってしまって、表情が確認できなかった

    「ニファ…」
    俺は考えたあげく、意を決して彼女の顔を覆っている手を退かせた

    そして、今度は自分の手を彼女の両頬に添えて、上を向けさせせると…案の定、ニファの瞳には涙が今にも溢れんばかりになっていた

    こんな時にどう言葉を掛けたらいいか、全くわからない

    だから俺は…

    そっと彼女を抱き寄せて、頭を優しく撫でた

    程なくして、ニファは微かに声を出して泣き始めた

    俺は泣き止むまでずっと、そのまま頭を撫でていた
  58. 100 : : 2014/08/06(水) 16:31:26
    しばらくそうしていると、やがて落ち着いたのだろうか…ニファが顔を上げた

    「副長、すみません泣いてしまって」
    ニファは笑顔を見せた

    ひとしきり泣いた後の、爽やかと言っていい笑顔だった

    「いや、構わないよ…ニファ。もう大丈夫かな?」
    俺の言葉にニファは頷いた

    「はい、でも…もう少しこのままでいさせて下さい、副長」
    そう言うと、ニファはまた、俺の胸に顔を埋めた

    俺はただ黙って、ニファの頭を撫でる事しか出来なかった

    ニファの泣き顔に、笑顔

    どちらも俺の心の何処かを射抜いて離さない物だった

    ニファが俺に恋をしてくれたように

    俺もニファに、恋をしはじめているのかもしれない…そう思った
  59. 101 : : 2014/08/06(水) 17:24:34
    「ニファ、そのまま聞いてくれるかな?」

    俺はニファに胸を貸したまま、そう言った

    ニファはこくんと頷いた

    「君が、俺の気持ちを知っていながら、それでも好きでいてくれた事、本当に嬉しいよ。何だろうな…俺はもう、幸せになんかなれそうにないなと、諦めかけていたんだ。それくらい、分隊長の事が好きだったわけだけど…」

    「はい」
    ニファは俺の腕の中で、顔を上げた

    その大きな瞳は、まだ涙で潤んでいたが、優しげな光を宿していた

    「そんなどうしようもない自分を、まさか好きでいてくれたとは…本当に、びっくりだよ」

    「副長は、どうしようもなくなんか、無いですよ。ただ優しすぎるんです。自分の事より人の事だし…それはハンジさんに対してだけではないから、そういう性分なんでしょうけど…。だから私は、そんな副長の事が…」

    ニファはそこまで言って、また瞳から涙を溢した

    「放ってはおけなくて…いつの間にか好きになっていました」

    ニファの頬を流れ落ちる涙を、指で掬うが、まるで追い付かない

    涙がまるで滝のように、大きな瞳から流れ落ちた

    「ニファ…」
    涙に濡れた頬をそっと撫でると、ニファは大きな瞳を閉じた

    また大粒の涙が、閉じられた瞼の下からポタッと溢れた

    俺はその涙の粒に、そっと唇を寄せた
  60. 102 : : 2014/08/06(水) 17:46:22
    俺の唇が、ニファの涙に触れた瞬間…ニファはビクッと身体を震わせて、目を開けた

    視線と視線が交錯する

    ニファの濡れた瞳は、真っ直ぐ俺を見詰める

    恐れを克服した、強い光を宿した瞳

    ニファの、見た目の可愛らしさとは裏腹の、勇気が、その瞳に宿ったように見えた

    「副長、私はあなたが好きです」
    淀みなくはっきりと、言葉を紡ぐニファ

    その言葉にも、その瞳にも、そして腕の中に感じる彼女の温もりと柔らかさにも…

    そう、全てにおいて抗える要素など無くて

    自分を好いてくれていた、可愛らしくて強い彼女のその唇に、俺は自分のそれを重ね合わせた

  61. 103 : : 2014/08/06(水) 18:24:01
    「…副長」
    ニファは、唇が離れると小さな声で俺を呼んだ

    「なんだい、ニファ」
    俺は、ニファの頬をそっと撫でた

    「今、気が付いたんですけど…。私たち、凄く際どい格好をしてますよね」

    そう、温泉に水着で入っているわけだが、端から見たら、裸で抱き合っているように見えなくもない

    「そうだな…確かに」

    「副長は、恥ずかしくないんですか…?私は何だか恥ずかしいんですけど…」

    ニファは顔を真っ赤にしていた

    「別に恥ずかしくないけどな…裸で抱き合っているわけではないし」

    「恥ずかしいですよ…私はこうして抱かれている事自体あまり経験が無いんですから…副長は慣れてるんでしょうけど…」
    ニファは頬を膨らませた

    「俺だってそんなに慣れていないよ。遊び人じゃあるまいし…」

    「だって、よく分隊長と抱き合ってるじゃないですか…」
    ニファはジト目で俺を見た

    「まてまて、抱き合ってなんかいないぞ?!」

    「抱き合ってますよ!!後ろから抱き付いたり…」

    「あれは、分隊長の奇行を止めるためであって、抱き合っているわけじゃないだろ…」

    俺は肩を竦めた

    「分隊長が羨ましかったです!!」
    ニファはそう言うと、俺の首に腕を絡めて抱き付いてきた

    「なんだ…後ろから抱き付いて欲しいのか。今度そうしてあげるよ」

    「ち、違いますよっ!!副長のばかっ!!」

    勇気があるのに、いざとなると頬を染めるこの可愛らしい女性を、もう一度、しっかりと抱き締めた

  62. 110 : : 2014/08/06(水) 20:10:21
    夜更けの温かい露天風呂の中、俺とニファは今まで言えずにいた全ての事を、お互いに伝えあった

    俺の腕の中のニファは、時おり笑い、時おり涙を貯めながらも、俺から目線を外すことはなかった

    「副長、私は夢があるんですよ」
    ニファはそう言って、微笑んだ

    「君の夢か、なんだい?」
    ニファのおかっぱ頭の前髪を、指で掬いながら聞いた

    「そりゃあもう、女の子の夢と言えば、お姫様になること、ですよ!!皆が一度は憧れる事です!!」

    ニファは、瞳をキラキラさせながら言った

    「お姫様…ねえ。王都へでも行きたいのか?」

    「王都!?そんな腐った所に行きたいわけ無いじゃないですか!!」

    ニファはブンブンと首を振った

    「いや、君がお姫様になりたいって言うから、真面目に考えているだけだろ?現実的には姫は王都にしかいないし…」

    「ああっ、副長は本当に真面目ですね…。でも少しニュアンスが違うんですよ」
    ニファは真面目な顔をしてそう言うと、俺の手を握りしめた

    俺は首を傾げる
    「どう違うんだ?よくわからないんだけどな…女性の考えって」

    「えっとですね…お姫様になりたいって言っても、お城に住みたいとかそう言うのじゃなくてですね…あの、その…」

    ニファは握りしめていた手をパッと離すと、もじもじと身体をよじった

    「ドレスが着たいとかかい?」

    「あー、そうじゃないんです…あっでもドレスも着たいですが…」

    「ニファ、ちゃんと言ってくれなきゃわからないよ。君の夢、叶えられるなら叶えたいから」

    俺のその言葉に、ニファは顔を真っ赤にした



  63. 111 : : 2014/08/06(水) 20:28:27
    「副長、あのっ!!あのですね!!」

    ニファが突然ザバッと立ち上がった
    お湯が辺りに跳ねた

    「ん、なんだい?」

    ニファは、座っている俺を見下ろす位置で、顔を真っ赤にしながらも、俺の顔をじっと見つめた

    そして、大きく息を吸い込んだ

    「副長!!お姫様だっこ、して下さい!!」

    夜の闇を切り裂く様な、ニファの叫びは、十分すぎる程の音量と威力でもって、俺の耳に届いた

    「お姫様…だっこ…?」
    俺は今一度、聞き返した

    「は、はいっ!!」
    ニファはこくんと頷いた

    その様子に、思わず
    「…ははは」
    笑ってしまった

    「ふ、副長酷い!!折角勇気を振り絞って言ったのに、笑いましたね!?」
    ニファは口を尖らせて、そっぽを向いてしまった

    「す、すまない。あまりにも、その…可愛いかったものだから、つい…」

    「副長は意地悪です!!優しいと思ったら急に意地悪にな…わっ!!」

    ニファの言葉が終わるのを待つ事なく、彼女の身体をひょいっと抱き上げる

    「これでいいかな、お姫様」

    「…は、はい。ありがとうございます…副長」
    ニファは顔を真っ赤にしながら、小さな声で呟いた


  64. 115 : : 2014/08/06(水) 22:15:42
    「どうかな、俺はそんなに背が高くないから、景色はあまり変わらないだろうけど」

    「…いえ、感無量です、副長」
    ニファは俺の首辺りに後ろから手を回して、じっとしていた

    「これが、君の夢だったのか」

    「はい、本当は、白いドレスを着てですね…」

    そこでニファは首を振った

    「いえ、いえ、これで十分すぎるんです。副長にお姫様だっこをしてもらってるんですから」
    ニファは照れたような笑みを浮かべた

    「白いドレスね…。了解したよ」

    俺の言葉に、ニファが目を丸くする
    「えっ!?えっ!?副長それってどういう…」

    「そのままの意味だよ。白いドレスを着て、お姫様だっこだろ?」

    「そ、そうなんですけど…」
    ニファは言いにくそうに言葉を濁した

    「今直ぐには無理だけど…この年齢で付き合うとなれば、そう言う事だって念頭におくだろ?」

    それを聞いたニファが、ぎゅっと俺にしがみつく

    「副長って、本当に真面目なんですね。でも嬉しい!!ありがとうございます」

    そう言って俺の頬にキスをした
  65. 116 : : 2014/08/06(水) 22:57:11
    慰安旅行を滞りなく終え、帰還すると、俺とニファにも、調査兵達にも、また日々の仕事が待っていた

    ただ、旅行前よりも幾分、兵士同士の繋がりが強くなった様に感じた

    旅行中に打ち解けた兵士達もいたらしい…そういう意味でも、慰安旅行は大成功だった

    兵長と分隊長も、すっかり仲直りをした様子だった

    そして、兵団の中で一番話題となったのは…

    「副長~仕事終わりましたか!?早く出掛けましょうよー!!」

    俺の仕事終わりを見計らうかの様に登場する、今や俺の彼女という立場になった、ニファだった

    「今終わったよ。待たせたね…分隊長がまともに仕事をしないから、少し長引いたよ」

    俺の言葉に、分隊長が口を尖らせる

    「えー!!人のせいにするなよ、モブリット!!」

    「もう、分隊長、しっかり仕事に集中しなきゃダメですよ!!」

    分隊長は、ニファに叱責されて、肩を竦める

    「うわぁ、モブリットが二人いるみたいで、きっついなあ…小言ばかり言われてさあ」

    「ちゃんと集中して下さったら、ニファに言われずに済むんですよ…。あ、分隊長、必ず風呂に入って下さいね?ではいってきます」

    「ハンジさん、いってきますね!!」
    ニファと共に、上司に頭を下げて…

    夜の町へと繰り出した


  66. 117 : : 2014/08/06(水) 23:03:16
    酒はニファには飲ませずに、俺は嗜む程度に飲む

    美味しい料理を二人でつつきながら、他愛の無い話に華を咲かせる

    ニファは幸せそうに、笑顔を見せていた

    いつか彼女に白いドレスを着せてやりたい

    それが、俺の夢になるのに、さほど時間はかからなかった


    それから数ヵ月後

    俺は彼女に、念願の白いドレスを着せて、お姫様だっこをしてあげる事が叶ったのだった

  67. 118 : : 2014/08/06(水) 23:03:36
    終わった恋と始まった恋

    暑い夏がもたらした、二人の夏物語

    たとえ暑い夏が過ぎ、季節が移り変わっても

    たとえ時代が移り変わろうとも

    ずっとずっと、繋がり続ける

    ―完―
  68. 119 : : 2014/08/06(水) 23:05:18
    すごいです!!
    もう、顔がニヤニヤしてます(o◞ิ‿◟ิo) 
    後、1時間くらいでモブリットの日ですね!
    今日はずっと起きてモブリット祭りを
    待ってますO(≧▽≦)O ワーイ♪
  69. 120 : : 2014/08/06(水) 23:07:23
    >ハンジ大好きさん☆
    読んで頂き、ありがとうございます♪
    モブハンを主力wとしていた私にとって、モブニファはチャレンジでしたが、沢山コメントを頂けて、とても励みになりました!!
    バーナーの日、一緒に楽しみましょうね!!
  70. 121 : : 2014/08/06(水) 23:07:43
    乙です!
    最後まで感動でした!㌆㌆㌆㌆。゚(゚´Д`゚)゚。㌆㌆㌆㌆
    こんないい話をかけるなんて、神様ですか?w
  71. 122 : : 2014/08/06(水) 23:08:57
    >ハンジ大好きさん☆
    ありがとうございますm(。≧Д≦。)m
    感動して頂けて嬉しい♪
    神様!?いやいや一般人ですよww
  72. 123 : : 2014/08/06(水) 23:22:59
    いつもモブハンを読ませていただいていました!
    今回のモブニファはホントに面白かったですよ!!!
    バーナー祭りを企画してくださり、ありがとうございました感謝♪感激♪(´∀`人)
  73. 124 : : 2014/08/06(水) 23:29:16
    >ハンジ大好きさん☆
    モブハンも読んで頂きありがとうございますm(。≧Д≦。)m
    また新作をあげましたので、良ければ読んでやって下さいね♪(❀ฺ´∀`❀ฺ)ノ
  74. 125 : : 2014/08/06(水) 23:33:39
    もちろん読みますO(≧▽≦)O ワーイ♪
    期待です!!!
  75. 126 : : 2014/08/07(木) 06:39:59

    お疲れ様です!
    やはり毎度の如く素晴らしい作品でした!
    87様の次回作に期待です!(`^´)ゞ

    ぺーぺーのクセに偉そうな書き込み、申し訳ありません…
  76. 127 : : 2014/08/07(木) 08:31:52
    >ハンジ大好きさん☆
    ありがとうございますm(。≧Д≦。)m

    >96猫さん☆
    読んで頂きありがとうございますm(。≧Д≦。)m
    嬉しいお言葉感謝です(*´∀`)
    これからも頑張りますので、また遊びにきて下さい♪
  77. 128 : : 2014/08/07(木) 11:27:37
    執筆お疲れ様でした!
    ニファちゃん可愛い!(って、前も言ってた気が)
    キャンプ楽しそうでいいですね~。壁外はゴメンですが、こういうときはモブ兵士になって参加したいなぁと思います。
    ニファ相手だと押せ押せなモブリットが見れて楽しいです。
    やっぱりモブリットはイケメンだわ。
  78. 129 : : 2014/08/07(木) 11:37:47
    >キミドリさん☆
    読んで頂きありがとうございます(*´∀`)
    そうですね!!私も皆で川遊びとか、キャンプしたいです!
    ニファは可愛いですからね、副長も男な部分が普段より5割増しでしょう(//∇//)
    モブリット、どうしてもイケメンにしてしまいます…病気だわこれはw
  79. 130 : : 2014/08/07(木) 13:07:04
    登場人物、みんなが
    キラキラしてて、まぶしかったです!(笑)
    特にニファが良かったです!
    また書いてくださいね!!
  80. 131 : : 2014/08/07(木) 13:31:54
    >anjoさん☆
    ありがとうございます(*´∀`)
    皆こういう時には輝いていて欲しいですね!!
    いつも過酷な戦いをしているから…
    また書きますので、遊びにきて下さい♪
  81. 132 : : 2014/08/09(土) 09:42:31
    お疲れ様です!!
    こういう楽しいss大好きです!!
    他の作品も期待します!!
  82. 133 : : 2014/08/09(土) 10:03:35
    >うめちゃんさん☆
    読んで頂き、ありがとうございます♪
    楽しいSSと言って頂けて嬉しいです♪
    また遊びにきてくださいね♪
  83. 134 : : 2014/08/10(日) 15:25:01
    短編なのに凝縮されていて面白かったです。
    たくさんお話書かれていますね。
    きたいしています。
  84. 135 : : 2014/08/10(日) 15:50:27
    >nyarukoさん☆
    読んで頂きありがとうございます♪
    話数だけは多いんです、私(*´∀`)
    沢山読んで下さって感謝しております♪
    頑張ります!!

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fransowa

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