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希「カードがウチに告げるんや」

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  1. 1 : : 2014/06/20(金) 18:51:19
    今回は仮面ライダー龍騎を題材にした作品です。希→スピリチュアルな占い→占いは絶対に当たる→手塚の考えが思い付いた次第です。龍騎のストーリーとは若干違いますが、ご了承下さい
  2. 2 : : 2014/06/20(金) 19:12:43
    希「ふぅ……今日も練習も疲れたなぁ……でも、仕方ない事や」



    それはμ’sの練習後の帰り道、エリチと別れて家に帰った時の事や。やっとの思いでラブライブの最終予選まで来たんや。前はウチらが穂乃果ちゃんの体調に気がつかなくて危険したけど、今度こそ大丈夫や。今度こそ、ウチらはラブライブに出て優勝するんや。……そうや、占いで最終予選突破出来るか、見てみようかな。




    希「ん?……何や、これ?」



    テーブルの上に何かカードのようなものがある。おかしいなぁ……タロットカードはウチが常に持ってる物やから、置き忘れるはずがないんやけどなぁ。それに何かタロットカードとは違う。そのカードを捲った時




    希「!?何や、この音!?」



    突然、何やら耳鳴りのような音が頭に響いた。ウチの家の周りで工事をしてはないし、それとは全く違う。そして、ふと鏡を見ると




    希「何やこれ!?化けも……」




    この世に存在するはずがない……見た事もない化け物が鏡の中にいたんや。そして、声を上げる前に化け物がウチを鏡の中へと引き込んだ。



  3. 3 : : 2014/06/21(土) 04:21:58
    希「うっ……ここは……」



    目を覚ますとそこはウチが知らない外の世界だった。しかし、外の世界なのに人の気配が全く感じなかった。そして、ふと近くにあった鏡を見ると




    希「っ!?どういうことや!?」




    鏡を見るとそこにはたくさんの人が街中を歩いている。こちらの方に目を向けたかと思えば、何事もなかったように歩いて去っていった。もしかしたら、ここは鏡の向こうの世界だろうか?あの化け物が私をこの世界に引き込んだ。試しに叩いてもやはり向こうの人には気づいてもらえない。 そして、





    希「ひっ!!」




    グルル




    その化け物は犬によく似ており、今にも私の命を刈り取ろうと歯を剥き出しにしている。逃げようにも腰が抜けて足にも力が入らない。……もう、終わりだと悟った。抵抗したところで返り討ちに遭うだけ、ウチはもう何もしたくなかった。ただ、一つだけ心残りが




    希「皆と一緒にラブライブに出たかったなぁ」




    私は目を瞑って、死を覚悟した。






















































    しかし、どれだけ待っても死はやってこなかった。
  4. 4 : : 2014/06/21(土) 13:00:18
    目を開けると、犬のような化け物は突如鏡から飛び出したバイクによって吹き飛ばされた。そして、バイクのハッチが開き、搭乗者が降りた。その人物はまるで全体的に赤く、仮面を被っており、ヒーロー物のような格好である。そして、バイクから降りた搭乗者はウチを見るとこちらに向かってくる。



    「君、大丈夫!!怪我とかは?」



    希「あっ、はい……大丈夫です」




    「良かった……すぐに終わらせるから待ってて!」





    そう言って、仮面の人は犬のような化け物に立ち向かって行った。ウチは夢でも見てるみたいや。鏡の向こうの世界ってのもまだ信じられないけれど、仮面のヒーローが助けに来てくれるなんて夢を見てるとしかいいようがない。仮面の人は犬のような化け物に圧倒的な格闘で攻めていく。そして、仮面の人の正拳で犬のような化け物が吹き飛ばされた。




    希「す、凄い」




    そして、仮面の人はお腹のホルダーのような所に手を掛けると何かを取り出した。それはウチが今持っているカードとよく似ているものだった。そして、それを左腕にある赤い龍のようなカンドレットに差し込んだ。



    『final vent 』



    機械のような電子音と共に突如、空から龍が現れた。仮面の人は何か、気のような物を溜め込んだかと思うと空高く飛び上がった。そして、龍の方も仮面の人を纏うように飛び上がった。そして、仮面の人が空中で一回転、そのまま化け物に向かって蹴りを、そして、その蹴りと合わせるかのように龍が火炎弾を当てると、犬のような化け物は爆散した。
  5. 5 : : 2014/06/21(土) 22:48:30
    希「す、凄い」



    化け物は塵一つも残っていなかった。化け物が爆散するのを確認すると、こちらに駆け寄ってきた。




    希「あなたは一体……」




    真司「俺は城戸真司!OREジャーナルで働いて」




    希「いや、その姿何ですけど」




    真司「もう一つの俺は仮面ライダー龍騎!人々をモンスターの魔の手から救っているんだ……あぁ!モンスターってのは今倒したのがそうなんたけど」




    なるほど、あれはモンスターって言うんやな。……そや、こんな所で長い間いるわけにもいかん。さっさと元の世界に帰らないと絵里ち達が心配してるかもしれない。



    希「あの……城戸さん、ウチをこの世界から出してくれませんか?ウチには」



    真司「ごめん……それは出来ない」




    希「え?……嘘ですよね?だって……城戸さん、向こうの世界から」




    真司「それは仮面ライダーだから……モンスターによって引きずりこまれた人はこの世界から……ミラーワールドから出る事が出来ないんだ」




    希「そう……ですか」




    真司「……本当にごめん」




    希「謝らないで下さい……ウチが不用意にこんなカードに触れなければ」




    真司「なっ!?それって!?」




    ウチが持っているカードを見て城戸さんは驚いた。城戸さんの持ってるカードと良く似ているが、城戸さんのようにモンスターを倒せるほどの力はないだろう。 ましてや、ウチは仮面ライダーなんて大それた力など持っていない。



    城戸「ライダー?……いや、ライダーならデッキを持ってるはずだし、モンスターの事知ってる筈だよな」




    希「もういいです……ウチはここで」





    城戸「あっ!もしかしたら、そのカードを持っていればこの世界から出られるかも!物は試しだ!これに乗って!」



    城戸さんはウチの手を引いて、バイクの中に乗せてくれた。でも、ウチが叩いても出る事が出来なかった。……もしかして、鏡にかざすといいのだろうか?」





    真司「よっしゃ!これで出られ……のわぁ!」


















    バイクが急発進し、鏡に突っ込む……と、思いきや、そのまま通り抜けた。









  6. 6 : : 2014/06/22(日) 22:45:09
    希「ここは……外の世界?」




    そこは人通りが少ない路地だけれど、確かにそこには人がいた。そして、そこは音ノ木坂ではなく、私が知る世界ではなかった。どういうことや……まだ、ウチは




    真司「あの……お取り込み中悪いけど、退いてくれる?」




    希「あっ!……すみません!」



    鏡の向こうの世界から出れた喜びと自分の知らない外の世界に出た驚きで城戸さんに馬乗りの状態に気づかなかった。ウチは慌てて、城戸さんから退いた。




    希「あの!すみません!助けて頂いたのに!」




    真司「気にしなくていいよ、こうして外の世界に出る事が出来たんだから」




    希「でも……」



    真司「あっ!そういえば名前聞いてなかったね!名前なんていうの?」




    希「ウチは東絛希です……あの、ここは音ノ木坂じゃ」




    真司「音ノ木坂?……いや、違うけど」




    希「……やっぱり」

























    どうやら、鏡の向こうの世界に引き込まれただけじゃない。タイムスリップもしたようだ。




  7. 7 : : 2014/06/23(月) 18:35:43
    希「ちなみに今、西暦何年ですか?」




    真司「……2002年だけど?」




    聞くまでもなかった。10年以上前に来た上に仮面ライダーなる者が存在している世界だ。私が知る上でそんな前に仮面ライダーなんていなかった。つまりは私は別次元の世界に引き込まれたのだ。




    希「すいません……信じてもらえないかもしれませんが、聞いてもらえますか?」




    真司「俺でよければ何でも……って、難しい話はちょっと」




    希「では、簡単に言います……ウチはこの世界の人間じゃないんです」




    真司「えっ?……それって、どういうこと?」




    希「ウチは約10年後から来たみたいです……でも、そこは仮面ライダーやモンスターなんていう大それたものは一切存在しない世界なんです。……だから、ここはウチが住んでいた世界と良く似ていて、全く違う世界なんです」




    真司「え~と……ごめん。分かるように説明してくれる?」





    希「つまり、ウチはもう1つの世界からここへタイムスリップしてきたんです」





    真司「あぁ……なるほどね……そうか、もう1つの世界からタイムスリップね」




    希「あんまり驚かないんですね?」




    真司「いや……仮面ライダーになってから、そういうのにあまり驚かなくなって……それより、そのカード」



    希「???これですか?」




    真司「契約のカードとは違うみたいだし、なんで君がそんなものを?」




    希「これはウチが家に帰った時に、知らない間にテーブルの上にあって、触れたら耳鳴りのような音がして……そしたら、鏡の中に……それより、契約のカードって?」




    先ほどから気にはなっていた。城戸さんにはあのモンスターに似た龍の魔物を呼び出していた。あれと何か、関係があるのだろうか?



  8. 8 : : 2014/06/24(火) 12:41:59
    真司「契約のカードってのは、ライダーになるためにモンスターと契約するんだ……ほら、戦いの時に赤い龍がいただろ?あれはドラグレッターって言って俺の契約したモンスターなんだ」



    希「それが契約のカード……じゃあ、ウチが持ってるカードは?」




    真司「ごめん……それに関しては分からない」




    希「そう……ですか」




    ウチが持ってるカードが元の世界に戻れる手掛かりになると思っていた。しかし、手掛かりがなくなった瞬間、絶望に立たされたような気がした。そんなウチを見てか、城戸さんは慌てて始めた。




    真司「あっ!もしかしたら、そのカードに関して分かる奴がいるかも!もし、え~と……希が良ければ、悪いけど俺の下宿先まで来てくれるかな?」




    希「あっ……はい……迷惑じゃなければ」




    真司「よっしゃ!それなら早速行こう!あっ!それと」




    希「はい……何か?」




    真司「俺に敬語を使う必要なんてないからね!気軽に話してくれる方がいいから」




    希「……城戸さんは優しい人なんやなぁ」




    真司「そうだろ?それじゃ、後ろに乗って!」




    城戸さんはそう言って、ウチバイク用のヘルメットを渡してくれた。被るのに手間がかかったけどようやく被る事が出来た。
  9. 9 : : 2014/06/25(水) 01:24:53
    希「それじゃ、失礼します」ムギュ




    真司「おわっ!」




    希「???どうかしたん???」ムギュムギュ



    真司「い、いや……最近の女子高生はでかいんだな」ボソッ




    希「はよ出発しない?」ムギュムギュムギュ




    真司「あのさ……わざと?」




    希「ん~?別に何にもあらへんよ?ただ、バイクなんか乗った事がないから、引っ付いてるだけやん」



    真司「だ、だよね……バカか俺は」ボソッ




    ちょっと冷やかしが過ぎただろうか?バイクに初めて乗るからという名目で引っ付いていたけど、やっぱり男の人はこれに弱いんやね。バイクが発進してからは手元が狂わないようにしてるから平気やろ?

















































    うん、信号無視した……この人、ウチが後ろにいる事分かってるんやろか?
  10. 10 : : 2014/06/26(木) 12:37:37
    「それで……そんな事を俺に聞くためにわざわざ連れて来たのか?」




    真司「ライダーが長い蓮なら何か知ってると思ってさ」




    蓮「俺が知るわけないだろ……それに分かってる筈だ。ライダー同士、戦う運命にある……忘れたのか?」




    真司「……それは」




    蓮「用はそれだけか?なら、俺は行くぞ」




    男の人はそう言って、ここ……喫茶『花鶏』を出ていった。ぶっきらぼうにしてたけど、何か気になる、そんな様子だった。それにしてもライダー同士、戦う運命にあるというのはどういう事だろうか?




    真司「ごめんな希ちゃん……アイツは秋山蓮っていって、無愛想な奴でさ……でも、根は良い奴なんだ!許してやって?」



    希「ウチは全然気にしてないんで大丈夫や……でも……ライダー同士、戦う運命にあるってどういう事なん?」



    真司「あっ……えっと」




    何か不味い事を聞いてしまったのか、城戸さんは何か言いづらそうだった。




    希「あ、あの……別に言いたくなかったら」




    真司「いいんだよ……いずれ知ってもらうことになるから」




    城戸さんはそう言って、ポケットから何かを取り出した。それは先のモンスターと戦っていた時に使っていたカードホルダーのようなものだった。表面には金色で龍の紋章のようなものがついている。
  11. 11 : : 2014/06/27(金) 09:45:35
    真司「これは元々ライダー同士が戦うために神崎士郎って奴が作った物なんだ……そして、最後に生き残ったライダーは願いを一つだけ叶える事が出来る」



    希「じゃあ……あの蓮って人もライダーなん?」




    真司「うん……アイツは大切な人を助けるために戦ってる。それが間違ってるとは俺も否定は出来ない……でも、ライダー同士が戦って殺し合いをするのは絶対間違ってる……だから、俺は戦いを止めるために戦ってる」




    戦いを止めるために戦ってる。結局戦うのだから、それは明らかな矛盾だ。でも、城戸さんは違う。それは誰かを悲しませたくない純粋な心を持っている。間違っている事を正そうとしている。




    希「城戸さんは優しい人なんやな」




    真司「誰だって、人と殺し合いなんてしたくないはずだ……希ちゃんもそうだろ?」




    希「決まってるやん……ウチを誰だと思ってるん?スピリチュアルパワーの持ち主、東絛希ちゃんやで?」




    真司「す、スピリチュアルパワー?何か出来るの?」




    希「ウチが出来るとしたら占いやんなぁ」




    城戸さんはあまり理解してないというか、信じてないような顔をしてるので、ウチはポケットからタロットカードを取り出した。
  12. 12 : : 2014/06/29(日) 12:19:37
    希「そうやなぁ……城戸さんの仕事運でも占って見よか?」




    真司「仕事運か……じゃあ、頼むよ」





    ☆ ☆ ☆




    希「ほうほう……これはこれは」




    真司「ど、どう?」




    希「その前に城戸さん、二つ程聞いておきたい事があるんや」




    真司「……二つ?別にいいけど」




    希「まずは1つ……城戸さんの今の仕事は?」




    真司「ジャーナリストだよ……今はまだ新米だけど」





    希「うん……じゃあ、もう1つ……城戸さんの家って何かやってるんやない?……例えば、寿司屋とか?」





    真司「えっ!?何でそれを!?」




    希「ウチのスピリチュアルパワーは本物なんよ?」





    まぁ、寿司屋っていうのは適当に言ってみただけ……でも、何故か頭に寿司屋という言葉が浮かんだのだ。これもスピリチュアルパワーなんかな?
  13. 13 : : 2014/07/01(火) 23:25:02
    「何だ城戸……知らない女の子を連れて占ってもらってたのか?」




    城戸「あ、手塚」




    手塚と呼ばれる人は花鶏の階段から降りてきて、城戸さんに楽しそうに声をかける。まるでそれは面白いものを見つけたかのような顔である。




    手塚「それに見る限りじゃまだ学生だな……城戸、そういう趣味だったのか?」




    希「そうなん城戸さん?……やだなぁ、ウチ照れるやん」




    城戸「ば、バカ手塚!そんなんじゃないって!!」




    希「そうなん?……城戸さん、ウチの事嫌いなん?」




    手塚「ほら城戸、こんなに可愛いらしい女の子を泣かせるのか?」




    城戸「い、いや嫌いじゃないけど……あー!!だから、そうじゃなくてだな!!」




    落ち着いてから、城戸さんが今までの事を全て話した。私がミラーワールドに引きずり込まれた事、私が別次元の世界からタイムスリップしてきた事、私が城戸さんと同じようにカードを持っている事……手塚さんは黙って話を聞いていた。





    城戸「ってな感じなんだけど……手塚は分かるか?」




    手塚「ライダーでない者がカードを持ってるなどにわかには信じられない……それにタイムスリップという話もな」




    希「……ですよね」





    手塚「だが、可能性がないという訳ではない……現に俺達はモンスターと戦ってるんだ……そういう事が起きてもおかしくはない」
  14. 14 : : 2014/07/03(木) 12:12:54
    希「ウチの話が信用出来るん?」




    手塚「何もかも否定しては始まらない……まずは調べる事が大切だ……で、そのカードって言うのはら?」




    希「あ、これです」




    真司「俺も見せてもらったけど、カードの内容が読めなかったよ」




    そうなのだ。城戸さんに見てもらったのが、分からなかったのだ。城戸さんが分からないようだと残るは手塚さんと蓮さんだけだ。私は手塚さんにカードを手渡し、カードを見た瞬間




    手塚「!!」




    手塚さんは驚いたかのように目を大きく見開いた。カードの内容が分かったのだろうか?カードの内容が分かれば私としては元の世界に戻れるかもしれない。





    希「手塚さん?……何か分かったん?」




    真司「何だよ……勿体ぶってないで早く言えよ」




    手塚「悪い、二人とも……ちょっと、出掛けてくる……それと、このカードは俺が預かる」




    希「え?……どういう」




    手塚「安心しろ……このまま、持ち逃げなどしない……明日には戻ってくる」




    手塚さんはそう言って、花鶏から出て行ってしまった。突然で驚きのあまり、私と城戸さんは手塚さんを追いかけようとしなかった。








  15. 15 : : 2014/07/05(土) 12:59:33
    ???



    そこは今の時代にしては古ぼけた家だった。窓ガラスは全て割られており、人気が全くない。そこには1人の青年、手塚海之がいた。手塚は1枚のカードを割られていない鏡に向けた。




    手塚「神埼士郎……いるんだろ?」




    士郎「またお前か……今度は何の用だ?」



    鏡の向こうから1人の青年が現れた。少なくとも鏡に映っている手塚ではない。ロングコートを着ており、その目はどこか暗い闇を抱えているような感じだ。




    手塚「惚けるな……俺がここに来た理由などお前には分かってる筈だ……神埼、このカードは何だ?」




    手塚は先ほど希から拝借したカードを神埼士郎に見せた。神埼士郎はライダーシステムを作り出した張本人だ。それならば、このカードを知っているはず、そう手塚は踏んでいた。





    士郎「知らんな」




    手塚「ふざけるな!!ライダーシステムを作り出したお前が知らない訳がないだろ!!」




    士郎「知ってどうする?気になるのであればお前が使えばいい」




    手塚「使うも使わないも俺の勝手だ……だが、お前にはもう1つ聞いておきたい事がある……なぜ、あの東條希という少女を巻き込んだ?」




    士郎「知らんな」




    まただ。また、神埼士郎にはぐらかされている。なぜ、神埼士郎ははぐらかすのか……手塚の中で疑念が生まれていた。

  16. 16 : : 2014/07/08(火) 12:17:56
    士郎「そもそも俺はそんなカードを作った覚えはない」



    手塚「あくまでもしらを切るか……なら質問を変えてやる……お前は一体なんなんだ?どうしてライダー同士の戦いを?」




    士郎「お前はなぜ戦わない?」



    手塚「俺は戦いを止めるためにライダーになった」



    城戸と同じように手塚もライダー同士の戦いを止めるためにライダーになったのだ。無闇に人の命を奪うような事は絶対しない。手塚はそう心に決めたのだ。




    士郎「浅倉威をライダーにしたのはお前のためでもある」



    浅倉威……今、この場にはいないが、浅倉もまたライダーである。元々は犯罪者で物に当たったり、時には人を殺める。理由は『イライラしたから』だそうだ。そして、留置場にいた浅倉を神埼士郎はライダーにし脱獄した。 そして、浅倉威が一番厄介なライダーである。ライダー同士の戦いをできる浅倉にとっては好都合なのだ。それは誰にも捕まらない。捕まえる者がいれば、自分のモンスターの餌にすればいい。そして、ライダー同士の戦いこそが浅倉のストレス解消法なのだ。




    手塚(浅倉威をライダーにしたのはお前のためでもある……一体どういう事だ?)



    手塚は考えていると、神埼士郎はポケットに手を入れてカードを取り出した。そして、そのカードを手塚に投げ渡した。手塚は受け取ったカードを見た。そこには『サバイヴ 疾風』と書かれていた。
  17. 17 : : 2014/07/11(金) 00:37:11
    士郎「戦え……戦わなければ次に脱落するのはお前だ」



    その言葉が言い終わると共に目の前の鏡にヒビが入った。もう、そこには神埼士郎の姿はなかった。そして、手塚はもう一度、神埼士郎に渡されたカードを見る。……そして、ヒビが入った鏡の近くに何やらスケッチブックのようなものが置いてあった。手塚は吸い寄せられるようにそのスケッチブックを手に取り、開いた。




    手塚「…………」




    中身は何も無かった。意図的に破られていて、何が書いてあったのかは分からない。手塚は何が書かれていたのか疑問に思っていると



    手塚「っ!?」




    耳鳴りのような音が聞こえた瞬間、手塚の後方の鏡から鞭のような物が飛び出した。手塚は咄嗟に手を出して、身を守った。モンスターの仕業なのだろうが、既にその姿はなく、耳鳴りのような音もなくなっていた。




    「戦え……戦え!!」



    聞こえてくるのは姿なき神埼士郎の声だけだった。
  18. 18 : : 2014/07/12(土) 03:43:54
    あれから、手塚は花鶏に戻った。そこには城戸の姿はなく、希と神埼士郎の妹である、神埼優衣と楽しそうに話していた。




    優衣「あっ、お帰りなさい」




    手塚「ただいま……城戸は?」




    希「城戸さんならさっき仕事に行ってくるって……ところで、その傷どうしたん?」



    手塚「気にするな……ちょっと、考え事をして怪我しただけだ」



    希「だめやん……怪我を甘くみたらあかんよ?優衣さん、救急箱あります?」




    優衣「うん……ちょっと待ってて」



    優衣はそう言って、店の裏の階段を登って行った。そして、希はポケットからハンカチを取りだし、手塚の怪我している手に結んだ。



    希「とりあえず、救急箱が来るまでの応急措置や」



    手塚「手際がいいな」



    希「これでも元いた世界では皆の面倒を見てきたんよ」



    希は手塚に色んな事を話した。両親が転勤族であまり友達が出来なかった事、初めての友達が自分とよく似ていた事、廃校を阻止するために初めての友達と頑張った事、スクールアイドルの名前を自分が付けた事、そして……自らもスクールアイドルに入って廃校を阻止した事、今はラブライブの最終予選まで行った事を話した。
  19. 19 : : 2014/07/13(日) 12:23:39
    手塚「μ’s……神話に出る芸術の女神か……良い名前だな」




    希「当たり前やん。ウチがつけた名前なんよ……それに名前だけやないんよ」




    穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん、花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん、にこっち、えりち……皆がいたからここまで来れた。一番の影響は穂乃果ちゃんだけど、皆がいたからこそやっていけたのだと思う。だから、穂乃果ちゃんには感謝してる。




    手塚「そうだ……このカード、君に返そう」




    希「いえ……それは手塚さんが持ってて下さい」




    手塚「しかし、これは君の」




    希「カードがウチに告げるんや……それは手塚さんが預けておきなさいって」




    手塚「……分かった。これは預かっておく……どうだろう……少し、俺とこの付近を回ってみないか?この辺を知っておけば困らないだろうからな」




    希「ん?……それはデートのお誘いなん?」




    手塚「君がそう思うならそう思えばいい……俺は君に何か遭ってからでは困るからな」




    希「手塚さんは真面目な人なんやなぁ……それじゃ、エスコートお願いします」




    手塚「……からかってるのか?」





    優衣「出掛ける前に手当てはしてよね、お熱いお二人さん」





    そこには救急箱を取りに行った優衣さんがいつの間にか戻っており、ニヤニヤと私達二人を見ていた。うん、優衣さんって案外策士かも。

  20. 20 : : 2014/07/15(火) 12:09:17
    手塚「そんなじゃないさ……手当てが済んだらちょっと出掛けてくる」



    優衣「はいはい……ごゆっくり」




    希「すいません……何か優衣さんに迷惑が」




    優衣「気にしないで……後は私でやっておくから」




    希「ありがとうございます」





    私は手塚さんの怪我している手に慣れた手つきで応急措置をしていく。ことりちゃんがいつも怪我した人にやってるのを真似してたら、いつの間にか、不思議と出来た。そして、私は怪我していない手を握った。手塚さんが動揺するかと思ったら、至って普通だった。




    手塚「……この手は?」




    希「ウチをエスコートしてくれるんやろ?だったら、手塚さんがウチを引っ張ってもらわんと」




    手塚「なるほどな……分かった……じゃあ、行こうか?」




    希「あ、腕組みの方が良かった?」




    手塚「あんまり大人をからかうな」





    男の人は皆、羊の皮を被った狼って、にこっちから聞いたけど……手塚さんはそうじゃないみたいだ。まぁ、にこっちの話を信じた私も私だけど
  21. 21 : : 2014/07/16(水) 12:33:01
    色々分かった事だが、やはり音乃坂は存在していなかった。優衣さんに頼んで調べてもらったが、ここら一帯どころか……日本にすらなかったのだ。しかし、気を落としてはいられない。元の世界に戻れる可能性だってあるはずだからだ。




    手塚「喉渇かないか?歩いてばかりで疲れただろう?」




    希「ありがとう……じゃあ、お茶にしようなぁ」




    手塚「分かった……買ってくるから待っててくれ」




    手塚さんはそう言って、私から離れて自動販売機に向かった。手塚さんって、気遣いが出来る人だなぁと思った。女の人って、気遣いが出来るが好きって本当なんだと今実感した。私も将来結婚するならああいう人がいいなと思ったり





    「ねぇ……彼女1人?俺と遊ばない?」



    見るからに柄の悪そうな人が私に声を掛けてきた。前は人に声を掛けられるなんてなかったのに……やっぱり、スクールアイドルを始めた影響かな?……まぁ、なんであろうと私の答えは1つだ。




    希「ごめんなさい……人を待たせてるんで」




    男「そんな事、言わずにさぁ……君、可愛いしさぁ……ねぇ」




    そんな事を言えばホイホイ付いてくるとでも思ったのか?さっきから、顔を見ないで人の身体をチラチラと見てるのが丸わかりだ。所詮は身体目当てだろう。私はそんなに軽い女ではない。




    希「言いましたよね?……待たせてるんでって」




    男「チッ……いいから来いや!!」




    希「きゃっ!?」




    痺れを切らしたのか、男は強引に私の腕を掴んだ。スクールアイドルで鍛えたとはいえ、女の私男の力に勝てるわけがなかった。周りに助けを求めようにも見てみぬ振りをして、助けてくれそうもなかった。……ただ1人を除いては




    手塚「その手を放してもらおうか?」




    冷たい眼差しで相手を見る手塚さんは私を掴んでいる男の手を掴んで逆に捻った。
  22. 22 : : 2014/07/18(金) 00:34:06
    「いだだだだ!!な、何しやがる!!」




    手塚「聞こえなかったか?その手を放せと言ったんだ」




    「だ、誰が放すかよ!この女は俺がいだだだだ!!」




    手塚「口にも気を付けろ……力をいれすぎて、お前の手を折ってしまうかもしれない」




    「わ、分かった……は、放す、放すから」




    手塚さんは涙目の男の手を放した。今の私は手塚さんが恐くて声をかける事が出来ない。あの優しくて穏やかな手塚さんが今はもの凄く恐い。男はすごすごと帰ろうとしたが




    手塚「1つ……お前に伝えておくことがある」




    「……な、何か?」




    手塚「今日はそのまま家に帰った方がいい……お前は厄介な奴に絡まれる……その時は全力で逃げろ……これは忠告だ」




    「チッ……分かったよ」




    男は気に入らなそうに舌打ちをして、その場から去っていった。とりあえず、一安心だと私はホッとした。手塚さんを見るといつもの穏やかな顔をした手塚さんだった。そして、手塚さんは黙って、私を抱き寄せた。




    希「えっ?……あ、あの手塚さん?」




    手塚「すまない……恐い思いをさせて……もう大丈夫だ」




    どうやら、人前だというのを忘れているようだ。私なんか恥ずかしくて身体が熱いというのに、手塚さんは全く気にしてないようである。いくら恐い思いをしたとはいえ、男の人に抱きしめられたら恥ずかしいはずだ。



  23. 23 : : 2014/07/19(土) 12:27:21
    希「あ、あの手塚さん……ウチ、大丈夫はなので!その……そろそろ放してもらえると」



    手塚「あぁ、すまない」



    手塚さんが放してくれたとはいえ、まだ身体が熱い。それどころか、心臓がドキドキしてる。それはまるで恋をしてるような……信じられない。まだ、会ったばかりでそんなに時間は経ってないのだ。でも、今までこんな気持ちになった事がない。




    希「そ、そういえば手塚さん……何故あの人に忠告したんですか?」




    手塚「占いで分かった事だ……おそらく、奴は殺される……『あの男』によって」





    ------




    「くそっ……何がそのまま家に帰った方がいい、だ!……なめやがって」




    そこは街の路地裏……手塚によってあしらわれた男が悪態をついていた。近くにあったバケツを蹴り飛ばし、中の物が飛び散った。それが目の前の人物の足元に落ちたのが運の尽きだった。





    ???「イライラするよなぁ……何かを壊わさないと済まないくらい」




    「あ?何だよおま……ひぃっ!……あっ……あぁ」




    男はその人物を見るなり、顔が恐怖に染まった。その人物を見て、誰もが知らないはずがない人物……逃げなきゃ殺されてしまう。




    ???「お前、ライダーか?……そんな訳ないか……お前の弱そうな奴がライダーな訳がないか……なら」




    足がすくんで逃げられない。そう、手塚が忠告したのはこの人物に接触するから、そのまま帰れ、という意味だったのだ。




    「あ、……浅倉……威」



    浅倉「……消えろ」




    近くにあった窓ガラスからヘビを模したモンスターが男を丸飲みし、窓ガラスに戻っていった。そして、浅倉は何事もなかったかのようにその場から去っていった。
  24. 24 : : 2014/07/23(水) 12:09:48
    希「浅倉……威」



    手塚「あぁ……奴は人間としてもライダーとしても危険人物だ……だから、絡まれた者はただてまは済まない……実際、奴に殺されたライダーもいる」




    希「……そんな……同じ人間なのに……殺し合いなんて」




    手塚「あぁ……だから、俺はライダーになった……ライダーの戦いを止めるためになった」




    手塚さんも城戸さんと同じなんだと思った。でも、戦うことには変わりはなかった。何故だか、今にも手塚さんが遠くに行ってしまいそうや気がした。だから、私は手塚さんの手をぎゅっと放さないように握った。




    手塚「……?……どうした?」




    希「手塚さんが淋しくならんようにウチが手を握ってあげる♪」




    手塚「ふっ……分かった……じゃあ、俺もこの手を放さないでいる」




    希「……約束やで?」




    手塚「あぁ……約束だ」




    私と手塚さんはまるで子どもの誓いみたいに指切りげんまんをした。でも、本当に淋しいのは私の方だ。こうしてないと私が私でいられなくなってしまいそうだからだ。

  25. 25 : : 2014/07/24(木) 23:19:57
    一通り回って、私と手塚さんは喫茶店で紅茶とケーキを食べていた。その時に携帯の番号を教えてもらった。手塚さんは私の携帯を見て



    手塚「未来の携帯は変わってるな」




    と驚いていた。とりあえず、この時代でも私の携帯は電話もメールもネットが使える事が分かったのでよかった。でないと、何かあったら、公衆電話を探さなければならない。出来ればそうはしたくなかったので本当に良かったと思った。




    手塚「安心しろ……もしもの時のために俺の契約モンスター、エビルダイバーをつけておく」




    希「そ、そんな……そこまでする必要は」




    手塚「君を守るためだ……安心しろ、俺のエビルダイバーはそこらのモンスターより強い……それに間違ってもお前には襲ってこないから心配もいらない」





    ここまで私のためにしてくれる手塚さんに感謝の気持ちでいっぱいだった。手塚さんは私にこんなに私のためにしてくれるのに私は手塚さんのために何もしてあげられないのが悔しかった。……その時、私はある提案を思いついた。
  26. 26 : : 2014/07/26(土) 12:10:39
    希「じゃあ、ウチが手塚さんの彼女になったげる……それがウチが手塚さんに唯一できることや」




    手塚「彼女……か……君はおもしろいな」




    希「ん?……君じゃなくて、希……やろ?」




    手塚「……承諾した覚えがない」




    手塚さんも細かい事を気にしすぎだなぁと思う。もう、そこまで鈍感だと今まで彼女が出来てないように思える。……って事は私が手塚さんの最初の彼女?……何だか、そう考えると照れるなぁ。




    希「手塚さんはウチを守ってくれるんやろ?……それとも、ウチが嫌い?」




    手塚「……はぁ……海之だ」




    希「え?」





    手塚「俺の下の名前だ……俺の彼女なんだろ?……だったら、下の名前で呼んでくれ……希」




    希「は……はい……じゃあ……海之……さん」





    改めて名前で呼ばれると何か恥ずかしい。名前でなら、皆から呼ばれてるのに……男の人に呼ばれるとドキドキする。それに私も手塚……いや、海之さんが初めての恋人だからというのもあるのかもしれない。
  27. 27 : : 2014/07/29(火) 22:54:09
    希「じゃあ……約束して下さい」




    手塚「約束?……一体、何を約束するんだ?」




    希「ウチは危険な事があったら、無茶はしません……だから、海之さんも無茶をしないで下さい」




    手塚「………………」




    希「ウチには今、海之さんが必要なんや」




    今、この場で海之さんがいなくなってしまったら、私が私でいられなくなってしまいそうだから……私にとって、海之さんは大事な人なんだと……海之さんが私の心の支えなんだ。だから、だろうか?




    海之「……っ!……どうした!」




    希「ご、ごめんなさい……ウチ、どうかしてるんかなぁ」




    不意に涙が出てくる。止めようと思っても止まらない。まるでダムが決壊したかのようにボロボロと流れでてくる。おかしいなぁ……海之さんはここにいるのに、いなくなってしまったらと思うと悲しい気持ちになってしまう。すると、海之さんは優しい笑顔で私の頭を撫でてくれた。




    海之「心配するな……俺は希の前からいなくなったりしない……俺の彼女は希だけだ」




    海之さんは女の子を慰めるのが下手だ。そんな嬉しい事を言われたら、涙を止めようにも止められない。それでも嬉しかった。海之さんの言葉は私の不安を払ってくれる。どんな些細な言葉でもいい。




    海之「もう泣くな……可愛い顔が台無しだ」




    希「先に泣かしたのは海之さんやん」




    希「でも……ありがとうさん……ウチ、元気出た」




    海之「そうか……そろそろ花鶏の方に戻ろう……城戸達が戻ってきてもいい頃だろう」




    希「そやね……それじゃ、海之さん」




    海之「代金はよろしく、だろ?……問題ない」




    喫茶店から出て私達は行きとは違う関係で花鶏へと帰った。
  28. 28 : : 2014/07/30(水) 12:12:48
    手塚「次に消えるライダーは……俺だ」



    その夜、私と海之さん、城戸さんはテーブルに座ってマッチ占いをしていた。優衣さんと蓮さんは私が来る前に優衣さんが倒れた事があったらしく、心配になった蓮さんが今、二階の部屋にいる。なので、今の状況を知らない。




    希「………………」




    海之さんの顔は驚きというよりかは信じられないと言ったところだ。しかも、海之さんは嘘をついている。ほんの一瞬だが、マッチの炎から何かが見えた。その見えたものは




    希「あ、あの!」




    手塚「話はここまでだ……俺はもう寝る」




    私が何かを言おうとしたところを、海之さんは突然話を切って、二階へと上がって行った。私も海之さんを追いかけるように階段を登っていく。城戸さんはあまりの宣告に呆然としていた。だが、もしそれが『嘘』だというのを城戸さんが知ったら、どうなってしまうのだろうか?……でも、今の私にはそんな事を考えてる暇はなかった。




    希「海之さん……さっきの占い、どういうことなん?」




    手塚「……どういう意味だ?」




    希「さっきの占い……あれ、嘘やろ?」




    手塚「俺の占いは当たる……前に言わなかったか?」




    希「……ウチには見えたよ」





    私には見えた……次に消えるライダーが
  29. 29 : : 2014/08/02(土) 12:34:34
    手塚「お前に見える訳がない」




    希「ウチには本当に見えたんよ……次に消えるライダーが」




    手塚「なら……何でその場で言わなかった?」




    希「……海之さんの悲しい顔を見たくなかったんや」




    私には分かる。海之さんの今の気持ちが……。悲しさと悔しさの念が渦巻いているのがよく分かる。今だって、それを出さないように必死に出さないようにしてるのがよく分かる。でも、それを出さないようにして辛い顔をしている海之さんを見たくない。




    希「海之さん言ってくれたやん……運命は変えるものだって……だから、頑張ろ?ウチも頑張るから」




    手塚「……ふっ」




    希「っ!?な、何がおかしいの?」




    手塚「いつ、俺が諦めると言った?……諦めるつもりは更々ない」




    希「……海之さん」



    ようやく、いつもの海之さんに戻ってくれた。やっぱり、好きな人には笑っていてほしい。辛い顔ばかり見てると私まで辛くなってしまう。でも、もう大丈夫だろう。もし、海之さんが辛くなってしまったら、私もそれを一緒に背負って助けよう……μ’sの皆のように。




    手塚「……しかし、驚いたな」




    希「???……何か変な事言った?」




    手塚「標準語……話せるんだなって思っただけだ」




    海之さんが可笑しそうに笑っている。それは人を馬鹿にするようではなく、素直な気持ちで笑っているようだった。……海之さんも存外酷い人だ。
  30. 30 : : 2014/08/07(木) 16:30:31
    翌日、私と海之さん、城戸さんはこの前の喫茶店に来ていた。理由はもちろん神埼士郎についてだ。私は神埼士郎について何も知らないので海之さんに頼んで、朝早くに旧神埼邸に連れて行ってもらった。旧神埼邸の中はしばらく誰も住んでいなかったためか、寂れていた。しかも、ほとんどが鏡ばかりで不気味だった。程なくして私達は旧神埼邸から出て、近所の聞き込みをした。どうやら、13年前に爆発事故があったらしい。原因は不明で神埼夫妻は死亡、神埼士郎は重症を負い、優衣さんは無傷だった。私は何故、爆発事故が起きたのか、何故、優衣さんは無傷だったのぎ気になった。




    城戸「そういえばさ……俺、ずっと気になってた事があるんだ……どうして、手塚はライダーになったんだ?」



    そういえば、それについては私も気にはなっていた。戦う理由については分かってはいるが、どうしてライダーになろうとしたのかは知らなかった。本来であれば危険を承知でライダーなどにはなろうとはしないはずだ。ましてや、命が懸かっているのだ。よっぽどの理由がない限りはライダーにはならない。




    手塚「俺には親友がいた……本当ならその男がライダーになるはずだった」



    海之さんは立ち上がったので、私も立ち上がった。海之さんの顔を見ると悲しげな顔をしていた。とても、嫌な予感がした。聞きたくない。




    城戸「……で、そいつは?」

































    手塚「…………死んだ」









  31. 31 : : 2014/08/12(火) 23:04:07
    店から出てから、私と海之さんの会話がなかった。海之さんに聞こうにもどのタイミングで聞けばいいのか分からなかった。だから、私は黙って海之さんの後ろについていった。でも、海之さんの親友と言うのはどういう人なんだろう?私とエリチのような似たような関係なのか?
    もう、駐車場だ……聞くなら、今しかない。




    希「あ、あの!……っ!?」




    また、あの耳障りな音がした。すると、海之さんは素早く振り返って私を抱き締めた。突然抱き締められたので普段の私でさえも動揺してしまった。



    手塚「希……モンスターだ……いいか、絶対に……俺の側から離れるな」




    希「う、うん……そんなに抱き締められたら、離れようにも離れへんよ」




    手塚「ならいい……希、俺のポケットから」




    海之さんが言いかけた瞬間だった。海之さんは私を突き飛ばすと、近くの車の鏡から尾のようなものが飛び出し、海之さんの首を捕らえた。海之さんは苦悶の表情を浮かべながら、必死にバイクのハンドルを掴んで引き込まれてないように耐えていた。海之さんが掴んでいる手は怪我をしている。あまり、長くは持たないと分かった私は急いで立ち上がって、海之さんのポケットに手を入れた。




    希(海之さんがさっき言いかけたのは……恐らく、デッキを取り出してくれって事や)



    ポケットの中から手触りで四角い物を感じたので私はそれを取り出した。私の手には間違いなく、デッキのようなもので赤くエイのようなシルエットが描かれている。私は急いで、それを海之さんに渡した。





    手塚「へ……変身!」



    そして、変身したと同時に海之さんはミラーワールドへと引き込まれた。











  32. 32 : : 2014/08/18(月) 00:59:40
    城戸「どうしたんだよ……あんな強引な戦いをして」



    強引な戦い……海之さんがミラーワールドに入った後、城戸さんも来てミラーワールドに入った。そして、私は鏡から海之さん達の戦いを見ていた。しかし、海之さんの戦いに何故か違和感を感じた。海之さんの戦いを見たのは初めてだが、まるで怒りと憎悪に身を任せたような戦いだった。城戸さんも海之さんの戦いに可笑しさを感じたのか、海之さんの止めに入るもそれさえ弾いてモンスターに立ち向かった。そして、海之さんはファイナルベントカードを使って、モンスターを倒した。



    手塚「俺の前にライダーになるはずだった男がいると言ったな……そいつの命を奪ったのはあのモンスターだ」



    城戸「!?」



    希「!?」



    ---------




    私達はあの駐車場から離れて噴水がある公園へと向かった。そして、そこに行くまで黙っていた口がようやく開いた。
  33. 33 : : 2014/08/18(月) 17:38:55
    手塚「アイツは……斉藤雄一という男は最後までライダーになって戦うことを拒絶した」



    希「その……斉藤雄一さんってどんな人だったん?」



    手塚「雄一は駆け出しのピアニストだった。バイトしながらもコンクールに入賞してこれからという時だった」




    手塚「ただ通りかかった偶然の事件に巻き込まれて全てを終わらされた」



    手塚「神崎士郎はそんな雄一を選んでデッキを渡したんだ……最後の1人まで勝ち残った時、その力でもとの体に戻れると」



    城戸「そんな」




    城戸「他のライダーと同じように、それは雄一にとって神に祈るよりマシな事に思えたはずだ……それでも、アイツは」



    斉藤雄一は拒絶したのだろう。例え、元の身体に戻れるとしても、人との戦いをしたくやかった。私でも元の身体に戻れるとしても、人との戦いはしたくない。……他の事で元の身体に戻れるなら、何でもするのに、と。



    手塚「そして、契約を拒絶したために雄一は……」



    希「……あのモンスターに」




    手塚「俺にはアイツがライダーにならなければ、破滅するのは運命に見えていた。それなのに運命を変えることが出来なかった」




    希「なら、なんで雄一さんって人に教えなかったん?……教えてたら」




    手塚「多分、雄一にも分かってただろう……それでも戦いを拒絶したんだ。それを臆病だと言う奴もいるかもしれないが……俺はアイツが誰よりも強いし、正しかったと信じてる」



    城戸「それで……戦いを止めるためにライダーに……」



    手塚「アイツの信じた正義を無駄にしない為だ……それと変えられなかった運命を変えるために」
  34. 34 : : 2014/08/18(月) 20:05:01
    海之さんが前に言っていた、運命は変わらないものではなく、むしろ変えるものと言っていた意味がようやく分かった気がした。海之さんも変えられなかった運命を変えたいと必死に運命と戦っていたんだ。そして、同じ過ちが繰り返されないように運命を変えようとしているんだ。



    城戸「凄い分かるし、前の俺なら協力していたと思う……でも、今はただ戦いを止めるのがいいか、分からない」



    手塚「……正直だな」




    城戸さんは城戸さんでまだ何か悩んでいるようだ。それから会話せずに私達は別々に花鶏へと戻った。








    城戸「おい……何で急に出て行くんだよ」



    その夜、海之さんは荷物をまとめて、花鶏から出ようとしていた。どうやら、神崎士郎についてもう少し、調べたいようだ。私も無理を言って、海之さんについて行く事にした。海之さんは、ここにいれば城戸や秋山がいるから安全だから、と言っていたが……私は不安で仕方がなかった。このまま、ついていかないとどこかに消えてしまいそうで恐いのだ。



    手塚「長居しすぎた……お前と秋山とは違う道になりそうだからな……それと、あんたには…………いや、泊めてもらって助かった。おばさんにはよろしく」



    希「すいません、ありがとうございました」



    私はそう言って頭を下げてから、海之さんと一緒に花鶏を出て行くと、少ししてから城戸さんが追いかけてきた。



    城戸「なぁ……もう少しいた方がよくないか?……お前の占いじゃ……」



    手塚「大丈夫だ……俺はそう簡単には死なないし、今は守りたいものがある…………それより、お前」



    城戸「……なんだよ」



    手塚「神崎優衣から目を離すな」



    城戸「……どういう意味?」



    手塚「今は……それしかいえない」




    城戸「今はって……だったら、いつならいいんだよ?」



    私は何故、優衣さんを疑うのかよく分からなかった。でも、昔の爆発事故で両親は死亡、神崎士郎は重症の怪我をしているのに、優衣さんだけは無傷だったのだ。疑問に思わない方がおかしい。すると、バイクがこちらに向かってきて花鶏に止めた。ヘルメットを取るとそれは秋山さんだった。




    城戸「蓮……手塚が出ていくってさ」




    秋山さんは別に気にも止めないようだが、目は不思議そうに見ていた。そして、海之さんはポケットからカードを取り出した。私が持っていたカードとは別のカードだ。そして、そのカードを秋山さんに差し出した。



    手塚「秋山……このカードはお前が使え」



    秋山「……これは?」




    手塚「神崎士郎が俺を戦う気にさせるために俺に寄越した……浅倉を倒せと」



    希「!?」




    城戸「なんで浅倉を!」



    手塚「雄一の巻き込また事件の犯人は浅倉だ……だが、挑発に乗るつもりはない……じゃあな」




    海之さんはそう言って、バイクに跨がり、私が乗るのを確認すると、バイクは発進した。




    希「海之さん……秋山さんに渡したあのカード……一体何のカードなん?」



    手塚「俺もあの手のカードを見るのは初めてだが、恐らくはライダー強化のカードだろう……恐らく、そのカードを使えば、並大抵のライダーやモンスターを難なく倒せる」



    希「神崎士郎って人は……そのカードを使わせて、海之さんをそのカードの力で溺れさせようとしたんかな」



    手塚「恐らく、そのつもりだろう……だから、俺は秋山にあのカードを渡した……今の秋山なら、あのカードの力に溺れずに対抗できるはずだ」




    希「……優しいんやね」



    海之「ふっ……さて、今日はビジネスホテルに泊まりになりそうだ……流石に野宿は御免だろ?」



    希「ん?……ウチはイケナイホテルでもええよ?」




    海之「……大人をからかうな」




    そして、私達は適当なビジネスホテルで一晩を過ごした。
  35. 35 : : 2014/08/18(月) 20:36:59
    翌朝、私達は街中で最悪な場面に出くわしてしまった。電話ボックスに誰かがいる。それは電話ボックスの中でも外でもない。電話ボックスのガラスから写っていた。ロングコートを着た男性がこちらを見ている。……多分、この人が……。



    士郎「……お前の女か?」




    海之「黙れ……お前には関係ない……それと何でここにいる」



    士郎「聞きたい事と教えておきたい事があってな……どうしても、戦いをとめるつもりか?」



    手塚「あぁ」




    士郎「だが、お前は知らない……奴はライダーにならなかった事を悔やんでいる。自分の為に戦うべきだった、と」



    手塚「……嘘だ」



    士郎「人間なら当然だ……奴は後悔にまみれながら死んだ」



    手塚「そんな事はない!」



    士郎「お前もそうなる」



    電話ボックスから男性が消えると、いつの間にか、そこには別の男性がいた。それはまるで血に飢えた猛獣のような危険な目をした茶髪でボサボサした髪型の男性だ。



    手塚「……浅倉威」



    希「!?」




    この人が海之さんが言っていた浅倉威……見るからに危険なオーラを醸し出している。不味い、このままでは危険だ。何とかして逃げないと。



    浅倉「ほぅ……お前の女か?」



    手塚「手を出すな」



    浅倉「ふん……まぁいい、来いよ……お前が戦わないなら、ここで俺が何をするか自分でも分からないぜ」



    希「ひ、……卑怯や」



    こんな街中で暴れたら、どれだけの被害が出るか分かったものじゃない。しかもそういう風に言えば海之さんが逃げるわけがない。それを分かっていて言ってるんだ、この人は。



    浅倉「どうせ、俺はこの手で何人もやってきた……卑怯だろうが、なんだろうが関係ねぇ……俺のイライラがスッキリすればそれでいい」



    手塚「……いいだろう、場所を変えよう」



    希「海之さん!待って!」




    私の制止も聞かずに二人とも人気のないところへ行き、ミラーワールドへと入っていた。
  36. 36 : : 2014/08/20(水) 01:41:14
    私は鏡から戦いを見ていたが、一方的だった。と言うよりも、海之さんから戦う意志が見られない。先程の神崎士郎に言われた事を疑っているのだろうか?ライダーにならなかった事を悔やんでいると神崎士郎は言っていた。今の海之さんにはそれが頭の中でいっぱいなのだろう。



    城戸「希ちゃん!!手塚は!!」



    希「……浅倉って人と戦ってます」



    城戸「くそっ!!……変身!!」



    城戸さんも変身してミラーワールドへと入った。一方的にやられている海之さんの加勢に入るも、城戸さんまでもがやられている。浅倉威という人がそれだけ強いという事なのだろう。すると、手塚さんはデッキから1枚のカードを引いた。もしかして、一撃必殺のカードだろうか?確かに今は城戸さんに気を取られているから、チャンスといえばチャンスだ。しかし、そのカードを見つめたまま、差し込む気配がない。




    希(海之さん?……早くしないと、城戸さんが)




    すると、海之さんは不意にこちらを見た。何故だか分からないが、不安になった。まるでもう海之さんがいなくなるような……まさか、あのカードは!!



    希「海之さん!!駄目や!!そのカードを使ったら、駄目や!!」



    海之さんはまた私の制止を聞かずに、そのカードをガントレットに差し込んだ。




    『ミューズ ベント』



    そう電子音が聞こえたかと思うと、今にもトドメを刺される城戸さんを突き飛ばして、浅倉の一撃必殺技が直撃した。
  37. 37 : : 2014/08/20(水) 02:25:46
    目の前が真っ暗になった。私の大切な人がやられてしまった。不意に誰かに声を掛けられたふような気がするが、今はそれどころではなかった。大切な人がやられてしまった。視界がぼやけて前が見えない。すると、ミラーワールドから海之さんを引きずる城戸さんが現れた。




    希「海之さん!!」




    城戸「希ちゃん!!救急車だ!!」




    希「海之さん!!海之さん!!死んだらアカンよ!!」




    城戸「っ!?手塚!!しっかりしろよ……お前は運命を変えるんだろ?……運命に決められた通りに死ぬのかよ?」



    手塚「違う……あの時占った……次に消えるライダーは……本当はお前だった……しかし、運命は変わる」



    城戸「手塚……手塚……優衣ちゃん、救急車……早く!!」



    いつの間にか、そこには優衣さんがいて携帯で救急車を呼んでいた。私は海之さんが冷たくならないように手を握った。しかし、海之さんの手は段々と冷たくなっていった。



    海之「……俺はもう……助からない……そういう運命だ」




    城戸「どういう事だよ……それ」



    海之「希が持っていたあのカード……『μ’s vent』は使用者の願いを一つ叶える事が出来る……使用者の命を代償に……」



    城戸「そんな……じゃあ、お前は戦いを止めるっていう」



    海之「いや……違う……希……君を元の世界に戻すむという願いだ」



    希「え?」



    私は全然話についていけなかった。μ’sのカード?願いを叶える?命を代償?意味が分からない。どうして、そんなことを海之さんが知ってるの?城戸さんにだって分からなかったのに。




    城戸「手塚、どういう事だよ……だって、お前」




    手塚「あのカードは……近い将来、死ぬ者にしか見えない……だから、占いではお前が死ぬようで俺がこうした」



    希「なんで、そんなカード使ったん!!……ウチは……ウチは……海之さんと一緒に」




    手塚「確かに……俺も一緒にいたかった……だが、浅倉と出くわしたのが運の尽き……俺には……俺と城戸をやった後、お前をやる運命が見えていた……だから」



    だから……そんな事になるぐらいなら、自分の命を捨ててでも、守りたかったと言いたいのだろうか?そんなの……そんなの、ただの自分勝手じゃないか。



    海之「……最後に……俺からのささやかなプレゼントだ……受け取ってくれ」



    希「最後なんて言わないで……ウチは……本当に海之さんが好きなんよ……本当……に……」



    海之さんから手渡された物を受け取ると、私の身体は突然光に包まれた。嘘だ。このまま、海之さんと離れるなんて嫌だ。私は手塚さんに触れようと手を出すが、すり抜けてしまった。



    希「海之さん!!嫌!!ウチ、まだ海之さんといたいよ!!ずっとずっと!!」



    すると、泣いている私の顔にそっと手塚さんの手が触れた。触れたという感触はないが、触れられているような感覚はあった。そして、海之さんは笑顔でこう言った。




    海之「俺も……希が好きだ……ありがとう」




























    その言葉を最後に私はいくつもの光の粒子になって消えた。
  38. 38 : : 2014/08/23(土) 22:57:05
    希「……うっ……」




    私は外の耳障りな音により、目を覚ました。どうやら、私はこのテーブルで寝ていたようだ。日付を見ると、全然変わっていやかった。そうか、あれは夢だったのか。疲れたから、そのまま寝てしまったんだろう。……そう思って、何かを握っている手を開いた。




    希「……っ!?……ヒグッ……ヒグッ……」




    夢ではなかった。あの出来事は本当にあった事なのだ。私の手に握られている物がなにより証拠だった。大切な人が最後に私にくれたプレゼントだった。私の手には海之さんがいつも身につけていた指輪があった。




    希「……うわああぁあぁぁあん!!……うわああぁあぁぁあん!!」





























    その日、私は一日中泣き続けた。哀しみのどん底に落とされ、最早すがるものなど無かった。そして、その日を境に私は学校を休み続けた。
  39. 39 : : 2014/08/24(日) 00:10:20
    あれから1週間とちょっとが過ぎた。休みが続いているせいか、メンバーの皆から電話やメールがあったが、全く返事もしなかった。そんな事を続けたせいか、エリチとにこっちが私の家に来た。どうやら、メンバー全員で押し掛けるつもりだったらしいが、三年生の方が話を付けやすいだろうということで二人で来たらしい。



    絵里「単刀直入に聞くわ……何かあったの?」




    希「別に何にもあらへんよ?風邪で休んでただけやん」




    にこ「なら……あんたのそれは何なのよ」




    希「風邪引いてたんやし、食欲がないのもお風呂に入るのを控えるのは当たり前やろ?」




    にこ「ふ~ん……私は1週間近くも同じ服装だったのかって聞いたんだけどね」




    希「にこっちも人が悪いなぁ」



    確かにここ1週間と同じ服装だし、あまり食べてもない。おまけにお風呂に入ってないから、髪の毛がボサボサなのだ。アイドルを目指しているにこっちにはウチが許せないんやろな。



    希「まあまあ……そんな顔しないで……せや、来週にはきちんと」



    絵里「ねぇ……本当に何があったの?」



    希「だから、何にも」



    にこ「あぁもう!!じゃあ、その腫れた顔は何なのよ!!そんなのアイドル以前に女の子としてどうかしてるわ!!」



    希「何にもないって言ってるやろ!!」




    にこ「なっ!!何にもないはずないじゃない!!現に」




    希「何にもないって言ったら、何にもないんや!! 」




    絵里「の、希?お、落ち着きなさい」



    希「さっきから何も言わないでいたけど……余計なお節介なんよ!!何にも知らないくせに!!」




    にこ「何よ!!こっちはあんたが心配で来たのに!!どれだけ、心配したと思ってるの!!」




    希「それが余計なんよ!!誰かに心配される覚えなんかない!!」




    にこ「あ、あんた」
















    パシンっ





















    渇いた音共に周りは静かになった。そう、エリチがウチの頬を引っ張たいたからだ。
  40. 40 : : 2014/08/24(日) 12:52:59
    絵里「誰にも心配される覚えなんかない?余計なお節介?よく、そんな事が言えるわね」



    希「………………」




    私は少し、放心状態になっていた。今までエリチに頬を叩かれるなどなかった。今のエリチは怒りに震えているのか、目付きが恐かった。確かにエリチの言うことは納得出来る。でも、




    絵里「私達がどれだけ、希を心配したと思ってるの!!私は希に何かあったんじゃないかって、ずっとずっと心配で練習にも勉強にも集中出来なかったの!!希が一人で何かを抱えてるんじゃないかって心配だったから、こうして!!」



    希「エリチには分からないよ!!大切な人を失った気持ちが!!一番の支えがなくなる気持ちが!!」



    にこ「あぁもう!!二人とも落ち着きなさい!!希、話が見えないんだけど?……一番の支えって……その……両親が?」




    希「……そんなんじゃないんよ」




    私はあの日の出来事を全て二人に話した。私がミラーワールドという場所に引き込まれた事、そこで仮面ライダーである城戸さんに助けてもらった事、私がいた世界とは違う世界にタイムスリップした事、海之さんに出会った事、海之さんの恋人になった事、そして海之さんが自分の命と引き換えに私をこの世界に帰してくれた事、全て話した。信じてもらえないかもしれない。でも、本当に起こった事なのだ。
  41. 41 : : 2014/08/24(日) 23:05:37
    にこ「にわかには信じられない話ね」




    希「それでも本当にあった事なんよ」



    だって、海之さんが最後に渡してくれた指輪が何よりの証拠で、まだ海之さんの温もりが残っているのが何よりの証拠なのだ。すると、にこっちは、呆れたようにため息をついた。




    にこ「あんたの話はよく分かったわ……信じてあげる……でも、これだけは言わせてもらうわ……亡くなった人に対して不謹慎だけど……あんたがもし、『そんな事』をしようとしてもその手塚さんって人は喜ばないわ」



    にこっちは私の腕に指を指した。……バレてたか。このまま隠してもにこっちが怒るだけだから、ここは素直に見せた方がいいかな。私は服を捲って、二人にそれを見せた。




    絵里「っ!?」




    希「にこっち、いつから気づいてたん?」




    にこ「そんなの最初からよ……服の隙間からチラチラと包帯が見えたし、妙に腕を押さえてたからね」




    希「そっかぁ……案外、簡単にいかないもんなんよ、これ」



    私はそう言って、刃物で切ったような傷を二人に見せた。いわゆる、リストカットというやつだ。テレビや漫画みたいに上手くいかなくて、傷ばかりがついてしまった。



    絵里「希……どうして、そんなことを……」




    希「決まってるやん……後追いってやつやん……こんな世界に生きてる意味がないから……死にたいんよ」
































    にこ「なら、さっさと死になさいよ」




  42. 42 : : 2014/08/26(火) 22:31:19
    にこっちからそんな残酷な言葉が出るとは思わなかった。にこっちを見ると、冗談とかではなく、失望したかのような目で私を見ている。



    絵里「……にこ」




    にこ「どうしたの?死にたいんでしょ?なら、さっさと死になさいよ……今、ここで」




    絵里「やめなさいにこ!!」




    にこ「絵里は黙って!!今、私はこいつと話してるの!!心配して家に来てみれば何?死にたいですって?心配した私や皆がバカみたいじゃない!!」




    絵里「だからって!!」




    希「もうええよ……エリチ」




    にこっちの言う通りだ。死にたいならさっさと死ねばいいのだ。カッターなんかじゃ駄目だ。台所にある包丁を使おう。そっちの方が簡単に死ぬ事が出来る。私は台所にある包丁を取りに言った。




    希「ごめんね……二人とも……ウチは」



    絵里「やめて……お願い、希……バカな事しないで」




    希「もう……疲れたんよ」




    泣いているエリチを前に私は目を瞑った。そして、持っている包丁を心臓に目掛けて突き刺そうとした瞬間だった。誰かが包丁を持っている私の手を掴んで、静止した。

























    にこ「……本当にバカじゃないの」
  43. 43 : : 2014/08/26(火) 23:17:24
    希「にこっち……ウチは 」




    にこ「死にたいと思ってる人間はそんなに震えたりしいわ」





    にこっちの言う通りだ。死を覚悟したというのに身体中が震えていた。死にたいと思っていても本能が生きていたいと思っている。にこっちはそれが分かっていたから……私を掴んでいるにこっちの手を見ると包丁の刃に当たったのか、血が流れていた。




    希「にこっち!!手から血が!!手当てせんと!!」




    にこ「そう思うなら、その包丁を置きなさい」




    私は素直に包丁を置いた。そして、自分の部屋にある救急セットを持ってきて、怪我しているにこっちの手を素早く手当てした。幸い、傷は浅いので1週間もすれば傷は癒えるはずだ。




    にこ「……これで分かった?」




    希「え?」




    にこ「死ぬのがどれだけ恐いか……分かった?」




    希「……うん」




    それは自分がよく分かっていた。恐くて辛くて胸が張り裂けそうなくらいだった。にこっちの言う通り、人は簡単に自ら死ぬ事は出来ない。よほどの覚悟がない限り、死ぬ事なんて出来ない。海之さんは覚悟があったからこそ出来たのだ。




    絵里「希……もし……もし、あのままにこが止めずに死んで、その海之さんの元に逝けたとして
    ……海之さんは喜ぶと思う?」





    希「……喜ばない」




    絵里「うん……私もそうは思わないわ……だって、助けてもらったのに後追いするなんて、死んだ人に失礼だもの」





    希「……うん」



    分かってはいる。分かってはいるけど、私は辛い。何故、海之さんは私を助けてくれたんだろう?

  44. 44 : : 2014/08/27(水) 22:52:32
    にこ「教えてあげようか……何で希を助けたか」




    希「……え?」



    にこ「これはあくまで予想……希の事が本当に好きだからよ」




    にこ「確かにその時、本来の自分の願いを叶える事は出来たかもしれない……でも、それでは残された希はずっと、一人になって悲しい思いをさせてしまう……そうなくらいなら、希を元の世界に帰してあげた方がいい……多分、そう思ってたはずよ」




    絵里「中々いないわよ……自分の願いより相手を優先してくれる人なんて」




    希「」





    私はバカだった。悲しみに明け暮れるばかりで海之さんの思いなんて全然考えてなかった。海之さんは自分の願いなんかよりも私の事を思って、その願いを無視してまで私を助けてくれたんだ。私の事が好きだから、助けてくれたんだ。





    希「ごめんね……最後にもう一度……泣いていいな?」




    絵里「泣きたいだけ泣きなさい」




    にこ「泣くのに人の許可なんていらないわよ」




    希「うっ……うわあぁあぁぁあ!!うわあぁあぁぁあ!!」















    私は二人がいるにも関わらず、たくさん大泣きした。
  45. 45 : : 2014/09/01(月) 14:37:51
    それから、私は学校に出るようになった。そして、μ’sの皆に謝った。本当の事を言うと、面倒な事になりそうだから、内緒にしようとエリチが言っていたので、過労と重い風邪を引いたということにした。そしたら、皆が騒ぎ出した。穂乃果ちゃんとことりちゃんはオーバーに心配するし、海未ちゃんは海未ちゃんで、練習をもっと軽くするだとか、バランスのいい食事を考えるとか言うし、花陽ちゃんや凛ちゃんはご飯がいいとかラーメンがいいとか言うし……真姫ちゃんはウチの病院に通院した方が良いなんか言うから、皆も将来が心配だなって思った。




    希「もう平気やから、心配せんといて……エリチとにこっちが滋養の良い物を作ってくれたから大丈夫だよ」




    希「それより……今日は明日のラブライブ最終予選のインタビューを考えないと……リーダーの穂乃果ちゃんが言わなきゃいけないんやからね」




    私がそう言うと、そうだったー!!、と頭を抱えて悶えはじめた。まぁ、気持ちが分からないでもないけど、リーダーとしてはそこはビシッと決めてもらわないと困るからね。




    でもね、穂乃果ちゃん……一人じゃないよ。私達がいる。私達がいるから、一人で悩まなくてもいいんだよ。皆で悩んで一緒に解決すればいいんだよ。私は皆に救われた。皆に救われたから、私がいる。その恩返しをしたい私がいる。μ’sが好きな私がいる。μ’sとの毎日が好きな私がいる。だからこそ





























    ラブライブに優勝したいと思った。
  46. 46 : : 2014/09/01(月) 20:19:02
    にこ「何堂々と優勝宣言してんのよ」




    穂乃果「いやぁ……勢いで」




    翌日、穂乃果ちゃんはやらかしてくれた。他のスクールアイドル、一番の優勝候補とされるA-RISEがいるにも関わらず、テレビの前で堂々と優勝宣言したのだ。まぁ、穂乃果ちゃんらしいといえば穂乃果ちゃんらしいけどね。



    真姫「でも……実際に目指してるんだし、問題ないでしょ」



    海未「確かにA-RISEも」




    あの時、A-RISEのリーダーである綺羅ツバサさんもこの最終予選は本大会に匹敵するレベルの高さだと言っていた。確かに周りはレベルの高いグループだけど、逆に考えるとそれはμ’sの実力を認められていると言うことだ。



    穂乃果「そっかぁ……認められてるんだ、私達」



    絵里「それじゃあ、これから最終予選に歌う曲を決めましょう……歌える曲は1曲だけだから、慎重に決めたいところね」



    花陽「……勝つために」




    にこ「私は新曲がいいと思うわ」




    穂乃果「おぉ!!新曲!!」





    凛「面白そうにゃ!」




    海未「予選は新曲のみとされてましたから、その方が有利かもしれません」




    花陽「でも……そんな理由で歌う曲を決めるの」



    真姫「新曲が有利っていうのも本当かどうか分からないじゃない」



    ことり「それにこの前やってたみたいに無理に新しくするのも」




    ことりちゃんが言っているのは恐らく、ハロウィンイベントの事だ。イメージを変えるなんて言って、部活系アイドルやらキャラ総入れ換えやらロックやら……色々試してようやく、素の自分こそが私達なんだって事に気がついた。



    皆が悩んでいる中、私には考えがあった。私が経験した事を、あの思いを歌にしたい。
























    希「例えばやけど……この9人でラブソングを歌ってみるのはどうやろか?」


  47. 47 : : 2014/09/02(火) 16:39:02
    ついに来たラブライブ最終予選。この日まで色々してきた。ラブソングを作ろうと色々な案を出したりした。エリチも何かを察したのか、私に協力してくれた。でも、やり方がちょっと強引や感じで皆が戸惑っていた。一度はラブソングを作る事を諦めだけど、勘の良い真姫ちゃんは私とエリチを怪しんで、つけてきたしね。




    そして、話合いの場を作るために私の家に招き入れた。招き入れたのはいいのだけど、いつまでも煮え切らない私に、話が見えない、と真姫ちゃんに怒られてしまった。もう、ここまできたら、隠しておける自信はなかった。私は真姫 ちゃんに全てを話した。海之さんの思いを込めて作りたいのもあるけど、9人皆で作りたい……ラブソングじゃなくても、9人で作った曲でラブライブに出たい。海之さんの話を聞いた真姫ちゃんは半信半疑だったけど、海之さんの最後の贈り物を見せてあげたら、信じてくれた。



    諦めていたのに、エリチと真姫ちゃんは皆を私の家に呼んで、ラブソングを作ろうという話になった。皆で悩んで考えて……大変だったけど、今私達はこうして最終予選の舞台に立っている。
  48. 48 : : 2014/09/02(火) 22:58:50
    そして、結果はなんとあのA-RISEを抜いての一位通過だった。結果を見て、唖然としていた。何かの夢かと何度も見るが、そこにはμ’sが一位としか映っていた。



    そして、その結果の嬉しさに私達は喜び、抱き合った。あのA-RISEを抜いての一位だ。嬉しくない訳がない。 そして、私達は会場のお客さん達に、感謝を言って頭を下げた。そして、頭を上げて、舞台から降りようとした時




    希「海之……さん?」



    会場を立ち去る一人の男性がいた。顔は見えなかったけど、雰囲気で分かる。あの人は海之さんだ。私は急いで男性を追いかけた。エリチの制止があったけど、気にも止めなかった。今は海之さんを追いかける事しか、頭に入っていなかった。角を曲がれば、海之さんに追い付けるはずだった。




    希「海之さん!!」




    しかし、そこには海之さんはいなくてバイクが通りかかっただけだった。あれが海之さんなのかもしれないが、もう目視できないくらいに遠かったので分からない。




    絵里「希!!……はぁ、やっと追い付いた」




    真姫「どうしたのよ?急に走ったりして」




    にこ「そうよ!心配して来ちゃったじゃない……それとも誰か知り合いでもいたの?」




    希「……海之さんがいた」



    絵里「海之さんって……希が言ってた」



    真姫「でも、その人は……その……もういないんでしょ?」



    にこ「気のせいじゃないの?」




    希「ううん……あの人は間違いなく海之さん」






























    でも、一体どういう事?海之さんはあの世界で命を落とした筈なのに……訳が分からない。分からないまま、時間だけが過ぎて行った。
  49. 49 : : 2014/09/02(火) 23:53:14
    気がつけばもう卒業式だ。本当に時間が経つのは早いと思った。変わった事といえば、まず一つはμ’sが解散になった事だ。解散になったと言っても皆がバラバラになった訳ではない。私達三年生が抜けても残りの一年生、二年生達でスクールアイドルをやる。でも、μ’sだけは解散にする。それは私達9人の思い出にしたいからだ。誰かが抜けて誰かが入るのは分かる。でも、私達はこの9人揃ってこそのμ’sなのだ。そう、穂乃果ちゃん達は言っていた。だから、μ’sは解散したのだ。




    そして、もう一つはラブライブの優勝だ。あれから、μ’sのキャッチフレーズも考えたりと大変だったのだ。『みんなで叶える物語』というキャッチフレーズだ。最初は中々決まらなくて色々悩んだけど、それを気づかせてくれたのは私達を応援してくれる色々な人達だった。私達を応援してくれて、支えてくれたから優勝出来たのだと私は思う。




    ただ、一つ気になることが海之さんの事だ。あの最終予選以来、姿を見ていない。もしかしたら、本選に来ていたかもしれないが、あの大勢いるお客さんの中から海之さんを見つけるのは無理だった。何故、あそこに海之さんがいたのか、分からないままだった。……それより、先ずは卒業式に集中しないとね。
  50. 50 : : 2014/09/03(水) 12:55:23
    そして、卒業式の穂乃果ちゃんの送辞とサプライズ。まぁ、送辞は想像してた通りだった。あの穂乃果ちゃんには送辞なんて難しい事が出来るとは思っていなかった。でも、穂乃果ちゃんらしいといえば穂乃果ちゃんらしい送辞だった。




    そして、サプライズは『愛してるばんざーい』を皆が歌ってくれた。卒業式で皆が歌うなんて、国歌ぐらいしかないのに……歌ってたら、私は涙が出てきた。隣のエリチも涙は堪えているけど、泣きそうなにこっちも……にこっちは相変わらず意地っ張り、泣いてもいいと思うな。卒業式でもこんなに感動して嬉しい気持ち、この学校に来て卒業出来て良かったなんて思う事なんてないよ。





    そして、卒業式が終わった後、私達は校内を見て回った。ライブで使った講堂はあのラブライブ本選に使ったステージと比べると遥かに小さい気がした。それだけ、私達が成長したんだな
    って思った。そして、最後に屋上だ。μ’sの始まりの場所とも言えるこの場所が一番思い入れのある場所と言ってもいいくらいだ。だから、皆でこの屋上にお礼をした。そして、その場を後にした。そして、そのまま帰るはずだった。




























    花陽ちゃんの携帯にあるメールが来るまでは
  51. 51 : : 2014/09/04(木) 12:31:22
    それから、また学校に戻って皆と話合いをした。話合いの内容は花陽ちゃんの携帯に来たあるメール。内容までは詳しく言えないが、とても凄い内容だと言える。そしたら、気づかないうちに辺りはオレンジ色に染まっていた。私達はこれ以上遅くならないようにその場で解散になった。




    にこ「……で?なんだって私についてくるのよ」




    絵里「たまにはこの三人で帰るのもいいじゃない……それに夜遅くまでになったら、大変だしね」




    希「まぁ、にこっちは平気かもしれへんけど、世の中にはにこっちみたいな絶壁のが好きって言う人もいるからね」




    にこ「どういう意味よ、それ!!希、私のスリーサイズ知ってるでしょ? 」




    希「あれ……盛ったんやろ?」(にこSID参照)




    にこ「っ!?」




    私が知らないはずがない。今まで何度、にこっちの絶壁をワシワシしてたと思う?にこっちの絶壁に少しでも膨らみが出来るようにしたのだ。なのに、にこっちの絶壁は絶壁のままだ。胸を揉むと大きくなると言うのは嘘だったのか?……あっ、でも……私やエリチは揉んでもないのに、大きいなぁ。




    絵里「?……何よ?」




    希「いや……みんな、違って、みんな、いいってこの事なんやな」




    絵里「何言ってるのよ……あれ?」




    希「ん?……どうしたん?」



    絵里「あの人、花束持ってこっちに来る」


























    確かに花束を持ってこっちに来る人がいる。しかし、私は驚いた。その人は最終予選以来、姿を見せていなかった人物、手塚海之さん、その人だった。
  52. 52 : : 2014/09/04(木) 22:58:31
    海之「久しぶりだな……希」




    希「え……あ……」




    突然の出来事に私はうまく答えられず、狼狽えてしまった。目の前にいるのは紛れもなく、海之さんだ。やっぱり、あの時に見た人は間違いなく海之さんだったのだ。……でも、海之さんはあの世界で



    にこ「あの……希の知り合いか何か……って、へぁ!?ののののの希!!私達、急に用事を思い出したわ!!じゃ、ごゆっくり!!」



    絵里「ちょ、ちょっと急に引っ張らないでよ!!」



    にこっちは海之さんを見たあと、花束を見て驚いたかのように目を開いた。そして、言うが早いか……エリチの手を引っ張って走り去って行った。……何かあったのかな?


























    絵里「どうしたのよ……急に引っ張って」




    にこ「あの花よ……あの花束よ」




    絵里「花?……確かに綺麗な花束よね」




    にこ「あの花は決して卒業式に渡す花じゃないわよ」




    絵里「何……縁起の悪い花なの?」




    にこ「いや、むしろ逆……問題は花言葉にあるのよ」




    絵里「もう!勿体ぶってないで言いなさいよ」




    にこ「いい?あの花はブーゲンビリアって言ってね……花言葉は『あなたしか見えない』。つまり、プロポーズや結婚式に使われる花なのよ」




    絵里「へぇ……プロポーズにね」





    絵里「……………………」































    絵里「ほわぁ!?」



  53. 53 : : 2014/09/06(土) 23:56:04
    海之「驚いたか……まぁ、一度は死んだ人間が時空を越えてきたのだから、当たり前か」





    希「どうして、海之さんがここに……あの時」




    海之「あの時、確かに俺は死んだ……しかし、最後に生き残ったライダーが願いを叶えてくれたお陰で俺は生き返り、ここに来た」




    希「最後に生き残ったライダー……城戸さん?」




    海之「いや……秋山だ……城戸は神埼優衣が死んだことをきっかけに神埼士郎が現実世界に放った大量のモンスターを食い止めるために戦ったが、近くにいた少女を庇うも重症の傷を負い、死んだ……そして、秋山も神埼士郎を倒し、願いを叶えるも神埼士郎の必殺をまともに喰らったのがきっかけにより叶えた後に死んだ」



    希「……願いって」



    海之「秋山は、世界のリセットと共にライダーとは無縁の世界にするのと俺を希のいる世界に連れていく事だ……こうして希に会えたのも秋山が気を使ってくれたお陰だ」




    信じられない。あの城戸さんや秋山さんが死んだなんて……それに秋山さんが海之さんを助けてくれたなんて……秋山さんって、案外優しい人なんだなって思った。



    海之「実は……希のご両親に会ってきた」




    希「え?……両親に?」




    海之「あぁ……俺の事を全て話してきた……疑われたものの、最終的には信じてくれた」




    希「……いつ、会ったの?」




    海之「……最終予選の時だ」
  54. 54 : : 2014/09/09(火) 23:01:21
    希「やっぱり……あれは海之さんだったんやね…なんで」



    海之「あの時、俺は会うわけにはいかなかった…もし、あの時希と会って驚かせたくなかったし、それにご両親との約束があった」



    その両親の約束というのがラブライブ優勝が条件だった。ラブライブ優勝までは応援はともかく、会う事だけは避けて欲しいという事だった。μ’sで頑張っているのに、そこで会ってしまったら、私が卒倒するのではないかと両親は思っていたらしい。そして、次元を越えてきたなんて人が現れたら、世間に騒がれては大変だと言う事でこの事は誰にも口外をしないと両親に念を押されたようだ。



    海之「…悪かった」



    希「謝らんといて…ウチ、海之さんに会えてすっごい嬉しいんよ?」




    海之「希…そうだ…卒業おめでとう」



    希「あっ…綺麗な花やね…これ、卒業の花束?」



    海之「実は…違うんだ」



    希「え?」























    海之「その花はユーゲンビリア…花言葉は『あなたしか見えない』…プロポーズに使われる花…らしい」




    希「へぇ…プロポーズにね」





    希「………………」




























    希「ふにゃぁ!?」


  55. 55 : : 2014/09/14(日) 22:37:24
    今、何て言った?プロポーズ?いやいや、何かの聞き間違いだろう……うん、きっとそうだ。そうに違いない。確かに結婚出来る年齢だけど、海之さんはからかってるんだろう。




    希「海之さん、冗談やろ?」




    海之「本気だ」



    海之さんはそう言って、私を抱き締めた。急に抱き締められたのもあって、私は驚いた。やばい。心臓が爆発するくらいにドキドキといっている。この場にエリチやにこっちがいなくて良かった。こんなの見られていたら、もう二人に顔向け出来ない。



    海之「ずっと心配だった……結果的に君を救ったとはいえ、悲しい思いをさせてしまった……だから、俺は決めた……もう、あんな悲しい思いをさせはしない……ずっと一緒にいたい……希と一緒に歩いていきたい……だから」




    希「うん……うちもな……ずっと一緒にいたい……ヒグッ……ずっと一緒……いたいよ」




    まただ。また、視界がぼやけてきた。海之さんの言葉が嬉しくて嬉しくて心に光が射すような感じだった。 でも、気づいた頃にはもう涙が止まらない。そして、私が泣き止むまで海之さんは優しく頭を撫でてくれた。
































    そして、私達はーーー、
























  56. 56 : : 2014/09/14(日) 23:52:11
    それから、数年後




    希「今日は最高のピクニック日和やね」




    海之「そうだな……風も心地がいいな」




    あれから、私達は結婚した。海之さんを紹介をした時は皆、驚いていた。流石にタイムスリップしたという話は伏せておいた。まぁ、にこっちやエリチは事情が分かっていたいけど、とくに言われなかった。でも、結婚するって言ったら、さらにびっくりしてた。海未ちゃんなんかはハレンチ呼ばわれされるし、にこっちはアイドルは恋愛禁止だって言われるし、後は……まぁ、納得してくれた。




    卒業してから、1年半たって式をあげた。皆、忙しい中でも来てくれた。しかし、穂乃果ちゃんには驚かされたな。音乃木坂全校生徒の寄せ書きを渡してくれたり、穂むらの割引券をくれたり、会場の皆が『愛してるばんざーい』を歌ってくれたり……後で聞いたら、私達には内緒で皆に歌詞カードを配ってみたい……そして、私達を驚かせようとしてたみたいだ。本当に穂乃果ちゃんには敵わないな。そして、私のブーケトスで受け取ったのはなんと花陽ちゃん。でも、花陽ちゃんは可愛いから……すぐにでも相手が見つかる。





    ……と思っていたら、それから1年後に付き合い始めた。相手は同じ大学のサークルの人。花陽ちゃんもよく『お米研究会』っていう分かるような分からんサークルに入ったなと思った。まぁ、お米って言葉に誘われたのだろう。驚きなのは凛ちゃんが花陽ちゃんと同じ大学に行った事。こう言っちゃなんだけど、凛ちゃんの頭でよく花陽ちゃんと同じ大学に入れたな……多分、真姫ちゃんの指導の基だろうけどね。




    それから、海之さん……結婚するまで結構大変だった。何しろ、タイムスリップしてきた訳だから住民票というものがない。しかし、その問題はある人に相談したら、あっさりと解決した。真姫ちゃんのお父さんだ。真姫ちゃんのお父さんが知事の人とあれこれ交渉してくれたおかげで何とか住民票を手に入れた。真姫ちゃんのお父さんには感謝しきれない。それから、海之さんは苦労に苦労を掛けて、教師になった。しかも音乃木坂の先生だ。驚きがいっぱいだった。




    そんなこんなでもう数年がたった。もう、20代後半になり、





    ?「パパー!キャッチボールしよー!」




    ?「ままー!おはなのかんむりつくろー!」
  57. 57 : : 2014/09/15(月) 01:37:38
    海之「そうだな優希……じゃあ、あっちでやろう」



    希「そうやね海咲……ここには綺麗なお花がいっぱいあるし、可愛いのを作ろうね」




    そして、私は二人の子供を産んだ。今年で七歳になる男の子の優希と五歳になる女の子の海咲 。分かるだろうけど、私と海之さんの名前が1字入ってるのだ。それだけ、子供に思い入れがある。しかし、子供を産むというのは案外大変だった。ドラマとか見て辛そうだなと思ったら、本当に辛かった。食事に制限はあるし、つわりもあるし、一番辛かったのはやっぱり最初の優希を産んだ時だな。あれは本当に辛かった。男の人には分からないだろうけど、表現が出来ないくらい辛かった。海咲を産んだ時はそれ以上に辛かった。子供好きとはいえ、三人目は流石に勘弁だなと思った。




    海咲「ままー!このおはなじゃ、かんむり出来ないー?」



    希「ん?……大丈夫や、ママに任しといて……海咲に似合う最高のかんむりを作ってあげる」




    そう言って、海咲が集めてきた花を受け取った。ちなみにピクニックの場所は合宿の時に来た真姫ちゃんの別荘にある山だ。真姫ちゃんは別荘を使ってもいいって言ってたけど、泊まるわけではないから大丈夫と言っておいた。まぁ、泊まれるなら夏休みとかがいいだろう。宿泊代は掛からないし、お風呂もあるし……まぁ、掛かるとしたら食事代だけどやすいものだ。おっと、そんな事を考えてたら




    希「はい……お花のかんむり、かんせーい!」



    海咲「うわぁ……まま、すごーい!はやーい!」




    希「そうやろ?ほら、被ってごらん?」



    私はそう言って、海咲に花のかんむりを渡した。海咲は受け取った花のかんむりをすぐに被ろうとせずに何か考えているようだった。気に入らなかった?……と、思っていると



    海咲「ままー!あたまだして!」



    希「ん?……こう?」



    海咲「うん!……うんしょ……はい!ままにおはなのかんむり!」




    海咲は可愛いらしく背伸びをして、私にお花のかんむりを被せてくれた。こんな顔が見られるなら、もう1人産んでも良いかもと思ったが……あの忌まわしい出産を思い出したのでやめにした。
  58. 58 : : 2014/09/15(月) 03:55:08
    希「やっぱり、ここは広いなぁ……流石は真姫ちゃんの別荘やなぁ」



    海咲「?まきせんせいがどうかしたの?」




    希「真姫先生はお金持ちやねって」




    海咲「そうだね……みさきのいえよりもおっきいし、みさきのいえよりもおかねもちだもんね」




    希「うっ!……」



    何というか、わざとじゃないと思うけど……子供って時々グサリと言うときがあって、それがまた辛い。そうそう……真姫先生って言ってたのは真姫ちゃんがあの病院の先生になったのだ。まだ、病院を継いだわけではないようだが、もうその日は近いみたいだ。海咲が何で真姫ちゃんを知ってるのかと言うと、公園の滑り台を何を思ったのか頭から滑った海咲が止まりきれずに地面に頭を打ったからだ。幸い、後遺症には至らなかったものの、真姫ちゃんに宥めてもらうまでは落ち着けなかった。真姫ちゃんは、こんな親だと子供は苦労するわね、と言っていた。




    そこからは私と海咲、後から駆けつけてきた海之さんと優希への説教だった。どうやら、あの頭から滑る事を教えたのは穂乃果ちゃんのようだ。補助がついてれば大丈夫、と海之さんを丸め込んで教えてあげたらしい。そして、真姫ちゃんは犯人である穂乃果ちゃんを病院に呼び出しては別室(そこは防音対策が施されていた)に連れ込んだ。念のため、優希と海咲に耳を塞いで良かった。




    真姫「穂乃果!!あなた、バカなの!!子供にあんな危ない遊びを教えて!!今回はなんでもなかったけど、一つ誤れば死んでたかも知れないのよ!!分かってるの!!」



    穂乃果「うっ……わ、分かってたいたんだけど……その……ほら、最近の子供は過激な遊びを求めているわけで」




    真姫「言い訳いらない!!もし、穂乃果の子供が他の親に傷をつけられたら、あなたは許せるの?許せないでしょ!!」



























    μ’sの時じゃ、あり得ないくらいに真姫ちゃんが激怒してる。あそこが防音対策してなかったら、間違いなく患者さんや看護婦さんに聞かれてたね。
  59. 59 : : 2014/09/15(月) 04:20:00
    穂乃果「その……えっと……真姫ちゃん?」




    真姫「私は今、人の命を預かる身なの!!人が当たり前の毎日を送れるように頑張ってる!!もう、誰もあんな悲しい思いをさせたくない!!だから、私は医者を続けているの!!だから、私は命を奪うような真似はしない!!穂乃果、あなたは人として最低な事をしたのよ!!」




    穂乃果「っ!?」




    真姫「……もし、反省してるなら、隣の部屋にいる希達に謝りなさい……反省してないなら、この部屋から出て行って……それからはもう希やねって私の前に顔を見せないで」



    そう言って、真姫ちゃんは隣にいる私達の部屋に入ってきた。真姫ちゃんの顔は怒っていたのに何か辛そうだった。今までたくさんの苦労があったのだろう。それと昔の仲間にあんな事を言ってしまったのが辛かったのだろう。



    希「……真姫ちゃん」




    真姫「……言いたい事は分かるわ……大丈夫、私は医者よ……それと、手塚さん?もう、あんな危険な遊びをさせないで下さいね……優希君、海咲ちゃん………優希君、海咲ちゃん……もう、危ない遊びをしちゃ駄目よ?真姫先生と約束」




    優希「うん!」



    海咲「やくそくー!」




    海之さんは面目なさそうに頭を下げていた。まぁ、あの真姫ちゃんの激怒を聞けば言うことを聞かざるえないだろう。真姫ちゃん、海之さんには怖い顔をするのに優希や海咲には笑顔なんだね。しかも楽しそうに指切りなんかしてると思っていると、隣の部屋の扉が恐る恐る開いた。そこには恐る恐る覗く穂乃果ちゃんがいた。




    真姫「ふぅ……それじゃ、私……仕事に戻るから」




    穂乃果「待って!……真姫ちゃんもいてほしいの」
  60. 60 : : 2014/09/15(月) 04:37:24
    それから、穂乃果ちゃんは色々謝罪してくれた。慰謝料を払うとも言っていたが、そこは丁重に断った。ただ、またこんな事が起こさないように私と真姫ちゃんで釘を刺しておいた。優希や海咲に聞かれると不味いから、穂乃果ちゃんの耳元で





    希「ワシワシ地獄百年の刑やね」




    真姫「針千本飲ますからね」




    あの時の穂乃果ちゃんの顔がすっごい青ざめてたのを覚えてる。正直、やり過ぎかなって思ったけど……私があんなに心配したのだ。いい薬になっただろう。……おっ、そろそろかな。




    優希「ママー!!お腹空いたー!!お弁当にしよー!!」




    希「やっぱり、戻ってきたな……思った通りや」




    海咲「ん?なにがおもったとおりなの?ゆうきおにいちゃん、わかる?」




    優希「ん~……分かんない……パパは分かる?」




    海之「さぁ、分からないな……ママ、どうなんだ?」




    海之さんが楽しそうに私に聞いてくる。もう、分かってるくせにしらばっくれちゃって……




    私達はこれからも一緒だ。例え、離ればなれになっても運命が私達を結びつけてくれる。これからもいつもどんなときもずっと……私達が愛し続けている限り……運命はかわるけど、私達の愛は変わらない。

































    希「カードがウチに告げるんや」




    おしまい

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