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番外編 空へ… ~かぐや姫後日談~

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  1. 1 : : 2014/05/18(日) 14:21:47
    こんにちは。執筆をはじめさせていただきます。
    このシリーズの前作にて、兵長を1日好きにできる権利を手に入れたペトラ。
    調査劇団のシリーズですが、今回は演劇という概念ではなく、普通のリヴァイとペトラの日常として、楽しんでいただけたらと思います。

    *数珠繋ぎの捏造、妄想あり。

    *シリアス

    *エロは…そんなに無い…

    *リヴァペト、オンリーです。

    以上の条件でも良い、という方は、ぜひどうぞ…
  2. 2 : : 2014/05/18(日) 14:34:09
    ※ペトラ視点です。

    <a.m.8:00>

    今日は、とてもいい天気だ。

    私は朝食を食べ終えて一息つくと、すぐに兵長に声をかけられた。

    リヴァイ 「…おい、ペトラ。」

    ペトラ 「は、はい、兵長…」

    リヴァイ 「そろそろ始めるか…」

    ペトラ 「へっ…はい?」

    私のいまいちな反応に、兵長はため息をついた。

    リヴァイ 「…この前の劇で、俺を1日好きにしていい、と言っただろ。」

    正直、あの時は半信半疑だった。その場だけの口約束だ、と後からはぐらかされても、兵長を責めるつもりはなかった。

    だが兵長は、きちんと約束を果たそうとしてくれている…。

    なんだか自分が、すごく恥ずかしい…。

    ペトラ 「はっ…そうでした…ね…」

    リヴァイ 「俺もできる事といえば、掃除か、力仕事くらいだが…」

    どうしよう。あの時は、あんなことやこんなこととか、色々妄想してたけど、いざ本番となると、何を頼んで良いのか…。

    よし、まずは無難に…

    ペトラ 「あの…兵長…」

    リヴァイ 「なんだ。」

    ペトラ 「個人的に…立体機動の訓練を…していただけないかと…」

    リヴァイ 「そうか。よし、立体機動を装備して、外へ出ろ。」

    ペトラ 「はい!」

  3. 3 : : 2014/05/18(日) 14:42:16
    <a.m.10:00>

    私は徹底的に、リヴァイ兵長から立体機動の技術を叩きこまれた。

    リヴァイ 「よし、大方基本はしっかりしている。あとは状況に応じて対応することを学べ。これは、型にはまった訓練で会得できるものじゃないが…」

    ペトラ 「はい、ありがとうございました!」

    リヴァイ 「」

    ペトラ 「」

    …気まずい沈黙。

    リヴァイ 「…で、次はどうするんだ?」

    あああ…兵長を待たせてしまっている…早く何か…

    ペトラ 「今日の昼食の材料、一緒に買いに行きませんか!?」

    リヴァイ 「…分かった。すぐに支度するぞ。」

    ペトラ 「はい!」
  4. 4 : : 2014/05/18(日) 14:55:49
    <a.m.10:30 ウォール.ローゼ繁華街にて>

    ペトラ 「今日は、何を食べましょうかね…」

    リヴァイ 「まあ、俺は何でもいいが…出る前に、エルドたちに聞いておけばよかったな…」

    ペトラ 「そうですね…」

    リヴァイ 「」

    ペトラ 「」

    リヴァイ 「…ペトラ。」

    ペトラ 「は、はい!」

    リヴァイ 「俺といて、楽しいのか?」

    ペトラ 「えっ!?」

    リヴァイ 「俺は、女のことはよく分からんが、俺といるより、エルドやグンタやエレン…とくにオルオといる時の方が、お前は楽しそうにみえるが…」

    私は考えた。確かに、一緒にいて、楽しいか楽しくないか、というのは、すごく重要だと思う。だけど、兵長と過ごす時間は、そういう次元のもとで語られるものではない、と思う…。

    ペトラ 「…兵長…」

    リヴァイ 「なんだ。」

    ペトラ 「兵長の言葉をお借りすれば…悪くない、です。」

    私の言葉に、兵長は少し戸惑った顔をしたが、すぐにいつもの表情にもどり、

    リヴァイ 「…そうか。」

    ペトラ 「兵長は…私たちリヴァイ班といて、楽しいですか?」

    私の問いに、兵長はすぐには答えなかった。

    リヴァイ 「…楽しいとか、そういう考えをもったことはないが…」

    ペトラ 「」

    リヴァイ 「…不快だと思ったことは、1度もない。」

    兵長のこの言葉、帰ったらみんなに聞かせてあげよう。
  5. 5 : : 2014/05/18(日) 15:10:13
    買い物をしている間も、私は兵長に、色々なことを質問してみた。

    兵長は、好きな食べ物はありますか、苦手なものは、得意な料理はありますか、私が作ったものの中で、美味しかったものはありますか…。

    その質問に、兵長は、間を開けながら、ゆっくりと答えてくれた。

    低く、よく通るその声で、ひとつひとつ、私の心を染めていった。

    ペトラ 「兵長は…お休みの日は、何をされてるんですか?」

    私はここで、言葉を切り、兵長が口を開く前に、こう付け足した。

    ペトラ 「掃除と訓練以外で。」

    私の補足を答えにしようと思っていたのか、兵長は考え込むように、下を向いた。

    しばらくの間、沈黙が続く。

    私は、たまらなくなって、ごめんなさい、と言おうとしたとき、ようやく兵長が口を開いた。

    リヴァイ 「…空を…」

    ペトラ 「えっ?」

    リヴァイ 「空を眺めている。」

    ペトラ 「空って…あの、空ですか?」

    あまりにも間の抜けた問いに、私は恥ずかしさのあまり、顔が赤くなるのを感じたが、兵長は気にしていないようだった。

    リヴァイ 「ああ。見上げると見える、空のことだ。俺は時間のある時は、空を見てる。」

    ペトラ 「そう…ですか。」

    自分から問いかけておいて、いざ回答してもらったのに、何て返したら良いか分からない。

    でも兵長は、気にしていない様子だった。
  6. 8 : : 2014/05/18(日) 15:22:13
    リヴァイ 「おかしいか?」

    ペトラ 「いえっ、おかしくないです。素敵だと思います。」

    兵長は、息をついた。

    リヴァイ 「…誰にも言うなよ。」

    ペトラ 「えっ…はあ…」

    リヴァイ 「この事を話したのは、お前が最初だからな。」

    ペトラ 「…え…///」

    私だけが知っている、兵長のこと。

    リヴァイ 「…分かったか?」

    ペトラ 「はっ、はい。誰にも言いません、絶対に。」

    だって、私だけの特別だもの。私の中の、事実の宝物。

    ありがとうございます、兵長。

    ペトラ 「あっ、そうだ…」

    リヴァイ 「どうした。」

    ペトラ 「兵長、ご存知ですか、この先に、きれいな原っぱがあるんですよ。」

    リヴァイ 「…いや、初耳だが…」

    ペトラ 「そこに行って、一緒に空を見ませんか。」

    リヴァイ 「…別に構わんが…」

    ペトラ 「じゃあ、行きましょう!」

    なぜだろう。私は今兵長と、空を眺めたくなった。

    澄みきったこの、美しい青空を、一緒に。
  7. 9 : : 2014/05/18(日) 15:32:07
    <a.m.11:30 町外れの原っぱにて>

    ペトラ 「ちょうど誰もいませんね…」

    心地よい風が、草をなびかせていた。

    荷物を置いて、私と兵長は、並んで座り、空を眺めた。

    ペトラ 「…いい天気ですね…」

    リヴァイ 「そうだな。」

    ペトラ 「明日も、晴れるといいですね。」

    リヴァイ 「…そうだな。」

    私たちは、しばらく黙って、空を眺めた。

    ペトラ 「…兵長は、なぜ空がお好きなんですか?」

    質問してから、慌てた。なんて間の抜けた質問を兵長に…。

    だけど兵長は、少し考えてから、答えてくれた。

    リヴァイ 「好き、とか、そういうのと同じか分からねぇが、空には巨人もいねぇし、壁も無い。苦しんでいる兵士や、ふざけた豚共を見なくて済むから…落ち着く。」

    ペトラ 「…なるほど。」

    リヴァイ 「…それに…」

    ペトラ 「はい…」

    リヴァイ 「空には…汚れがねぇから…」

    ぼそりと付け足された一言に、私は思わず笑ってしまった。
  8. 10 : : 2014/05/18(日) 15:39:31
    リヴァイ 「…変か?」

    ペトラ 「いっ、いいえ、変じゃないです。ただ、兵長っていつも汚れを気にしてらっしゃるんだなって…」

    リヴァイ 「そういう男は…おかしいか?」

    ペトラ 「いえ、おかしくないですよ。」

    そう答えてから、私ははっとした。なんか、思わせぶりな質問だな、と思った。そういう男はおかしいか、お前は、俺という男をどう思っているのか…なんて…///

    リヴァイ 「…そろそろ帰るぞ。エルドたちが、腹を空かせて待っているからな。」

    ペトラ 「はっ、はい、兵長…」

    兵長…

    兵長は…私のこと…
  9. 12 : : 2014/05/18(日) 15:46:38
    <p.m.2:00>

    昼食を終え、兵長は私に声をかける。

    リヴァイ 「…この後は、どうするんだ?」

    答えは、決めていた。

    ペトラ 「お掃除しましょう!」

    リヴァイ 「…よし、ちょうど台所の汚れが気になっていたところだ。」

    エルドたちも手伝うと言ってくれたけど、パス。

    兵長と、2人で過ごしたかった。

    リヴァイ 「…お前は流しをやれ。」

    そう私に指示をだし、兵長は高所の汚れを落としはじめる。

    私は流しをひたすら磨きあげる。

    ひたすら黙々と掃除し続けて…
  10. 14 : : 2014/05/18(日) 15:51:32
    <p.m.5:00>

    私はもう、くたくただった。

    リヴァイ 「…まあ、少しはましになったか…」

    兵長は、満足げだ。

    リヴァイ 「…よし、風呂に入ってくるが…いいか?」

    ペトラ 「えっ、はい、どうぞ…」

    兵長は、黙って浴室に向かう。私もお風呂に入ることにした。

    そして、みんなで夕御飯を食べた。
  11. 15 : : 2014/05/18(日) 16:08:48
    <p.m.8:00 旧調査兵団本部、廊下にて>

    ペトラ 「兵長、今日は本当に、ありがとうございました。」

    私は兵長に、深々と頭を下げた。

    リヴァイ 「…ペトラ…」

    ペトラ 「はい。」

    リヴァイ 「これで終わりか?」

    ペトラ 「…はい?」

    リヴァイ 「俺は、1日俺を好きにしていい、と言った。まだ始めてから、12時間程しか経っていない。」

    ペトラ 「でも、もう大丈夫です。私、満足しましたから。あとは兵長の自由に過ごしていただいて結構です。」

    私はほんの少し、嘘をついた。

    リヴァイ 「…そうか。」

    兵長はほんの少し、残念そうにみえた。

    リヴァイ 「」

    ペトラ 「」

    リヴァイ 「」

    ペトラ 「」

    ペトラ 「あのっ…」 リヴァイ 「なあ…」

    同時に切り出してしまい、私たちはまた、沈黙した。

    リヴァイ 「…ペトラ、言いたいことがあるのなら、言え。」

    ペトラ 「あの、兵長…私、今日兵長と空を眺めることができて、よかったです…嬉しかった…です。」

    リヴァイ 「そうか。」

    ペトラ 「兵長は、何を言いかけたんですか?」

    兵長は眉を潜め、ため息をついた。

    リヴァイ 「…俺は、つくづく自分に嫌気がさした。」

    ペトラ 「えっ?」

    リヴァイ 「…お前を見て…今日、お前と過ごして…」

    兵長は、まっすぐに私を見た。

    リヴァイ 「今夜俺の部屋に…お前を誘いたくなった…」

    それは…つまり…

    リヴァイ 「所詮、俺も人間で、ただの1人の男だったってことだな。」

    兵長は、私から目をそらした。

    リヴァイ 「失望しただろ、こんな上官をもって…」

    立ち尽くす私に背を向け、兵長は歩き出そうとし…

    ペトラ 「兵長!」

    私は後ろから、彼を抱き締めていた。

  12. 16 : : 2014/05/18(日) 16:21:17
    ペトラ 「私…失望なんてしてません…むしろ、このまま私…」

    彼は、息をついた。

    リヴァイ 「…ペトラ…」

    ペトラ 「…はい…」

    リヴァイ 「俺には今日、1つ目標が増えた。」

    ペトラ 「目…標…ですか…」

    リヴァイ 「前から俺は、巨人を絶滅させることが目標だったが、さらにもう1つできた。」

    ペトラ 「」

    リヴァイ 「お前ともう1度…空を眺めたい…」

    ペトラ 「…!」

    リヴァイ 「もちろん、お前が構わねぇと言うのなら、だが…」

    彼のぬくもりが、私の中に入っていく。私の答えは、決まっていた。

    ペトラ 「私ももう1度あなたと…あの場所で空を見たい…です。」

    彼は振り向き、私と向かい合った。

    私はほほえんだ。彼が口を開く。

    リヴァイ 「…だったら、俺たちは、これ以上の関係になるべきじゃねぇ。お前を抱いたあとで、また壁外に出て、人類最強として、何の犠牲もおそれずに戦う自信が、俺にはない。」

    ペトラ 「はい…分かります。」

    彼は、私から目をそらした。ちょっと照れ臭そうに。

    リヴァイ 「だったら、今夜はもう、自分の部屋へ戻れ。」

    ペトラ 「はい、分かりました…」

    私たちは別れた。自分たちの中にある何かを、1つにして…。
  13. 18 : : 2014/05/18(日) 16:33:07
    <第57回壁外遠征、巨大樹の森にて>

    ペトラ 「方目だけ!?方目だけ優先して治した!?そんなことができるなんて!?」

    オルオ 「ペトラ!!早く体勢を直せ!!ペトラ!!早くし…」






    ペトラ (身体中の力が…ぬけてゆく…)

    ペトラ (私…死ぬ…の…かな…)

    ペトラ 「」

    ペトラ (…光…が…見える…空…だ…)

    『お前ともう1度…空を眺めたい…』

    ペトラ (兵長…私、あの空へゆきます…)

    ペトラ (…あなたがまた…空を見上げるのを…待って…います…)

    ペトラ (だから…だから…)
  14. 20 : : 2014/05/18(日) 16:39:07
    <数日後…>

    リヴァイは、ほんの数日前にペトラと訪れた原っぱに1人、佇んでいた。

    空を見上げる。

    それは、あの日と同じ、澄みきった青い空だった。

    ただ、なぜだろう。以前よりも、あたたかな陽射しが、自分を包み込んでいる気がした。

    リヴァイはふと、誰かの身体を抱きすくめるように、そっと腕を結んだ。

    リヴァイ (今日も、いい天気になったな…ペトラ…)
  15. 21 : : 2014/05/18(日) 16:44:22
    …以上で終了とさせていただきます。
    初リヴァペト。
    おもいっきりシリアスに仕上がりました。
    …えっと、今回は番外編ですので、本編の劇団では、リヴァイ班の皆さんも、また元気に出演しますので(^_^;)
    よろしくお願いします。
    次回の公演は、
    【オズの魔法使い】
    を、予定しています。よろしければまた、読んでいただけると、ありがたいです。
    読んでいただき、ありがとうございました。では失礼します…。
  16. 32 : : 2014/09/18(木) 20:44:51
    泣けるよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  17. 33 : : 2014/09/18(木) 21:13:38
    >>32 さっちさん
    読んでいただき、ありがとうございます。
    数珠繋ぎ、初のリヴァペトでした(´∀`;)感動していただけて、嬉しいです。
  18. 34 : : 2016/10/06(木) 22:14:50
    ハイセさん並の神作だ・・・

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kaku

数珠繋ぎ@引っ越しました

@kaku

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進撃の調査劇団 シリーズ

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