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仮面ライダーぼっち19

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  1. 1 : : 2014/04/28(月) 00:36:51
    ライダーバトル、修学旅行編突入!
    絆を確認する奉仕部の面々。
    そんな中、陽乃やリュウガの陰謀によりさらにライダーバトルは苛烈さを増す。
    己の願いのため戦い続ける者、戦いを止めるため変身する者。
    運命は誰に味方するのか?
    戦わなければ生き残れない!

  2. 2 : : 2014/04/28(月) 15:22:28
    火野先生は力があるのに別の世界のライダーだからなにもしてやれなくて辛そうだなぁ....ところでくすっち天頂さん相模死んじゃったんだけどwwww龍騎の原作でできなかったオリジナルエンドを期待しています
  3. 3 : : 2014/04/28(月) 20:47:57
    →→→nyさん
    いつもコメントありがとうございます!毎度同じようなことしか言えないわたしの表現力が嫌になりますが、本当に励まされてます!
    相模、死んじゃいました……。おかげで体育祭編ができないぜ!
    文化祭が終わった時点でまだライダーが10人も残ってるんだが……?
    オルタナティブ入れたらもっといるし、いろはとかまだ出てきてないし……。
    しかも陽乃オーディンとか本気になったら倒せっこないよ!
    神崎結衣(そういえば由比ケ浜と名前同じですよね!)的ポジションの雪乃とは対立してるし……。
    色々と前途多難ですが、精一杯続けていくので、これからも応援お願いします!
  4. 4 : : 2014/04/28(月) 22:55:13
    すいません、神崎結衣⇒神崎優依ですね。
  5. 5 : : 2014/04/28(月) 22:55:50
    文化祭、体育祭が終わり、気温はめっきり下がり、涼しいというよりは寒い風が学校には吹いている。
    さらにいうと、俺の周りは更に寒々しい。
    教室の中心(あくまで位置的な意味でね!)にある俺の席の周りには誰もいない。
    いつもは俺を無視して俺の近くに人がいることもあるのだが、今俺は認識されていないのではなく、『意識などしていない』という意図的な視線を注がれている。
    文化祭の後、相模はどうやら他のライダーによって倒されたようだった。
    記憶の改変が行われたが、彼女の存在だけが消され、皆が俺に持った悪印象までは無くならなかった。
    ほんの一瞬だけちらりと向けられる嘲笑を含んだ視線。
    どこから向けられたものかと見返せば、ばっちりと目が合う。
    そんな視線に対しては自分からそらさないのが俺だ。
    となれば、相手が外してくるのが普通だ。
    今までは、そうだった。
    だが、自分が優位に立っていると思っている相手はそうはならない。
    それどころか数秒目線があった後に、周囲の連中とくすくす笑う。
    「なんかこっち見てる(笑)」「何あいつ(笑)」だのというくだらない会話を交わしながら。
    そんな悪意に慣れはしても腹が立つことには変わりない。
    文化祭で、雪ノ下を傷つけてしまったことからカードをめったなことでは使わないと決意していなければ、何度かドラグレッダーを呼んでいただろう。
    とはいっても、もともと周囲からほとんど認識されていない俺のことだ。
    このアンチ比企谷ブームが去るのも速いだろう。
    大きなあくびをして文庫本に視線を戻すと、周囲よりもいくらか大きい話声が耳についた。
    「っベー、修学旅行どうするよー」
    葉山グループに所属する戸部、仮面ライダーインペラ―だ。
    「京都だろ?U・S・J!U・S・J!」
    「それ大阪やないかーい!はッはッはッ!ルネッサーンス!」
    ……最後だけ面白かったな。
    三人は話題を変えて会話を続けている。時折女子の方を見ながら、「俺達今面白い話してね?」と目で語っているのが何とも残念だ。
    「つか、大阪まで行くのめんどいわ―」
    「せやな、せやせや」
    「……戸部だけ行けばいいんじゃね?」
    「っか―!俺だけハブとかそれナニタニくんだよ~!」
    よし、ドラグレッダー、行って来い。あいつライダーだから多少のことは大丈夫だ。
    見ると、他の生徒達も笑いを洩らしている。
    はいはい、面白い面白い。こいつらモンスターに襲われてても絶対助けねぇ。
    とまぁ、最近の俺の扱いはこんなもんだ。
    ちなみに我が校にいじめは存在しないので、これはただからかっているだけだ。
    どんなひどいことを言おうが、『ネタだろ?』の一言で済ませられてしまう何とも素晴らしい文化だ。
    受け入れがたいことに折り合いをつけるため、彼らは何もかも笑い話にする。
    それは、ヤンキーだった奴らが久々に再開した際に、『俺達も昔は悪やったよなー』というのと同じである。
    自らの行動を反省することなく、ただただ笑い飛ばす。
    きっと彼女はそれをしないだろう。
    そんな行為はまさに欺瞞であり、俺の忌み嫌うところだ。
    そうやってごまかしてうわべだけ取り繕って、そうやって得た物に一体いかほどの価値があるのだろう。
    そして、こうやって騒いでいることにさえも、彼らはすぐに飽きる。
    そうやって標的にされた者が受けた傷とともに忘却のかなたに追いやるのだ。
    「つーか、修学旅行やべぇよなー」
    「やばいな」
    何がやばいかなんて聞いてはいけない。やばいもんはやばい。そんなことを聞けばそいつの扱いがやばいことになる。
  6. 6 : : 2014/04/28(月) 22:55:55
    「そういや戸部、お前あれどうすんの?」
    大岡が聞きたくてたまらなかったというようにその質問をした。
    「聞いちゃう?それ聞いちゃう?まじ?困ったなー」
    その反応は聞いてほしくて仕方なかった奴の反応だ。
    「……って言うか、決めるでしょ」
    したり顔で戸部はいい、カードデッキを取りだした。
    「最初はこの力で、すんげぇ美人と付き合おうと思ってたけどさー、やっぱこういうのは、自分の力で手に入れてこそでしょ」
    戸部、お前、そんなことの為に……。
    「八幡!」
    突如、天使に声をかけられた。
    クラス内では、いつもにも増して比企谷シカトオーラが出ているが、天使である戸塚にはそんなもの関係ない。
    むしろ戸塚に冷たくされたら死ぬまである。
    「今度のロングホームルームで修学旅行の班決めするんだって」
    「へぇ……まぁみんな大体決まってるだろ」
    「そうかな……僕まだ決まってないんだ」
    威牙がいまだに決まっていないことを恥じるかのように戸塚は言う。
    「……なら、一緒に組むか?」
    「うん!」
    花のような眩しい笑顔が広がった。
    「なら、後二人だね」
    「ま、余った奴らと組めばいいんじゃないか」
    「そっか、あっ、もうすぐ時間だ。また後で!」
    思いもよらず戸塚と同じ班になることができた。
    こいつは少し楽しみになってきたな……。
  7. 7 : : 2014/04/29(火) 12:31:53
    期待です(((o(*゚▽゚*)o)))
    今後の展開もすごく楽しみにしてます!
  8. 8 : : 2014/05/01(木) 00:01:50
    ⇒⇒⇒六さん
    ありがとうございます!ご期待に沿えるよう頑張ります!
  9. 9 : : 2014/05/01(木) 00:02:44
    「そう言えば、修学旅行どこ行くか決めた―?」
    奉仕部部室で由比ケ浜が唐突に訪ねた。
    その言葉に雪ノ下が眉をひそめる。
    クラスの話題も最近そればかりだ。
    「これから決めるところよ」
    「俺は班の奴らしだいだからな―」
    こういう行事で意見を求められたことがない。
    周囲が決めた内容に黙ってついていくだけ。
    楽なことには違いないが、楽しいのとは違う。
    それは、ここにいる彼女も同じではないのだろうか。
    「そういや雪ノ下。お前こういう時どうしてんだ?」
    「……どうとは?」
    「お前、クラスに友達いないだろ?」
    「ええ」
    こんな質問をする方もそれに即答する方もどうなのだろうと思わないでもないが、まぁ俺達はそんなことを気にするような人間じゃない。
    「だから?」
    「いや、グループどうしてんのかと思ってよ」
    「ああ、そういうことなら、誘われるままにしているわ」
    「え?誘われんの?」
    「ええ、こういうグループ決めで困ったことはないわね」
    「あ、でもわかるかも。J組って女子多いからゆきのんみたいなカッコイイ子って好かれると思うな―。あっ、でもあたしがゆきのんを好きなのはそれだけじゃないからね!」
    そう言って由比ケ浜はいつものように雪ノ下に抱きつく。
    またそうやってお前らは……。
    いいぞ、もっとやれ。
    まぁ確かに、同性が多いということのメリットはある。
    男子の場合、女子の目を気にして機構に走るということが多々ある。
    教室での戸部達のバカ騒ぎや、材木座がやっていた厨二病もそれに含まれると言っていいかもしれない。
    そしておそらく、それは女子にも同じようにあるはずだ。
    「はぁ~。うちの学校も沖縄とか行きたかったな~。よさこ~い」
    「由比ケ浜さん、よさこいは沖縄と何の関係もないのだけど」
    「え!?そうなんだ、やっぱりゆきのんは物知りだね!」
    「お前が知らなすぎるだけだろ……」
    「む、ヒッキーいつも通り失礼だなぁ。でもさー、京都とか行ってもどうしようもなくない?お寺か神社しかないし。ミックス、ジンジャーレモン!」
    「お前、何言ってんの?後半部分全く理解できなかったんだけど……」
    「ええ!?ヒッキー遅れてない!?レモンエナジーだよレモンエナジー!」
    「余計わからん……」
    「由比ケ浜さんがよくわからないことを言い出すのはいつものことだから放っておきましょう」
    「ゆきのんひどいよ!?」
    「そもそも修学旅行とは遊びに行くのではないのよ?あくまで学習の一環なんだから」
    「いや、修学旅行ってそんなもんじゃないだろ」
    「あら、ならどういうものなのかしら?」
    「あれはだな、高い金払って好きでもない奴と寝食を共にすることにより社会の理不尽さに耐えられるようにする訓練なんだよ」
    「うわぁ、ヒッキーの修学旅行全然楽しくなさそう……」
    「そんな悲観的な目的で行われるとも思えないけれど……」
    「で、でもさ!ヒッキーの言う通りだとしてもそれを楽しむかどうかは自分次第でしょ?」
    「……まぁ、そうだな」
    「あなたにも楽しみにしていることの一つや二つあるのではないかしら」
    「ん、まぁな。戸塚と戸塚と、後、戸塚だろ?一緒にお風呂に入れるかもしれないしな!」
    「ヒッキーまじきもい……」
    「気持ち悪い、近寄らないでくれるかしら」
    「けっ、世の人は、我のことを、言わば言え。我がなすことは、我のみぞ知る」
    「成し遂げようとしていることが変態行為以外の何物でもないのだけど……」
    「で、そう言うお前はなんか行きたいとこあんのか?」
    「そうね、龍安寺の石庭や清水寺、金閣……見ておきたい所は結構あるわね」
    そう言って、手元の雑誌に視線を向けた。
    こいつが雑誌読むなんて珍しいな……。
    というか、呼んでる本が『じゃらん』だった。どんだけ楽しみにしてんだよ……。
    「あ、そうだ!ゆきのん、三日目一緒に回ろうよ!」
    「一緒に?」
    「うん!」
    「クラスが違うけど……いいのかしら」
    「え?いいんじゃない?自由行動だし!」
    超適当だな、こいつ……。
    「あっ、もちろん、ゆきのんがいやじゃなければ、だけど……」
    雪ノ下は微笑を浮かべて言った。
    「私は、構わないわ」
    「やったぁ!決まり!」
    クラスの対して親しくもない奴らと一緒に回るよりは、雪ノ下にとってもいいだろう。
    ま、俺なりにこいつらの旅が楽しくなるよう祈っててやるか。
    「ヒッキーも一緒に回ろうね!」
    「え……」
    雪ノ下がすごく嫌そうな顔をした。
    「お前その反応はひどすぎんだろ……」
    「冗談よ。それも面白いかもしれないわね」
    と、その時扉が叩かれる音がした。
  10. 10 : : 2014/05/01(木) 00:03:03
    「どうぞ」
    雪ノ下のその声で扉が開かれる。
    そこに現れたのは、俺達と因縁浅からぬ人物だった。
    「てめぇらっ」
    俺の語気が荒くなったのもしょうがないことだろう。
    葉山、戸部。それから取り巻きの大岡と大和だ。
    「……何か用かしら」
    雪ノ下は落ち着いているように見えるが、先程より明らかに語調が強い。
    「ああ、ちょっと相談事があってさ」
    そんな空気をものともしないように口を開いたのは葉山だ。
    冗談じゃない。こんな奴らに力を貸す気はないぞ。
    「ほら、戸部」
    「言っちゃえって!」
    横の二人に促されて戸部が前に出る。
    「……いや、ないわ―。ヒキタニ君に相談とかないわ―」
    ……ああん?
    あまりの怒りにスーパーサイヤ人にでもなりそうだったが、ここは部長である雪ノ下の顔を立てる意味でも何とかそれを抑えた。
    「戸部、頼みに来たのはこっちだろ」
    「や、でもほら、ヒキタニ君にはこういうこと話せないでしょ~。信頼度ゼロだし~」
    と、そのとき同時に立ち上がる音が聞こえた。
    「それ、あんまりじゃない?もっと他に言い方あるでしょ」
    由比ケ浜が珍しく怒りを含んだ声で言う。
    そしてそれに、身も凍るような声が続いた。
    「帰りなさい」
    言わずもがな、雪ノ下雪乃だ。
    「……え?」
    戸部が驚いたような声を上げる。
    「礼儀も知らない、礼節もわきまえない、つるむしか能がないような低能どもの頼みを聞いてやる必要なんてないわ」
    「な、そこまで言わなくても」
    そう言った戸部の言葉を雪ノ下がさえぎる。
    「ねぇ、忘れてない?私達は、敵なのよ?それを抜きにしても、私はあなたたちみたいな人間が大嫌いなの。今すぐここから出て行きなさい」
    カードデッキを取り出してそう言った。
    それは、これ以上にない意思表示だ。
    由比ケ浜も雪ノ下の隣に立ち並ぶ。
    ライダーの数はこちらが三であちらは二。不意打ちやらなんやらの卑怯な手段でしか戦ってこなかったこいつらがその勝負を受けるとは思えない。
    「まぁ、待ってくれ。俺達もなにもタダでやってもらおうなんて考えてない」
    場を取りなすように葉山が言った。
    そんな葉山を雪ノ下は冷たい目で見つめる。
    「この依頼を受けてもらえるんなら、インペラ―のカードデッキをそちらに譲渡する」
    「……」
    俺は少なからず驚いた。カードデッキの破棄、つまりそれはライダーバトルからの退場を意味する。
    「契約モンスターはこちらで処理するが、君達にとってもライダーが一人減るんだ。悪い話じゃないと思う」
    「そんな話を信じるとでも?」
    「だから、担保としてこれを預ける。……大和」
    「ああ。……これを」
    大和が雪ノ下に手渡したのは仮面ライダータイガのカードデッキだった。
    こんな猿芝居打つ意味あんのか……?こっちはその本来の持ち主が葉山であることは確信している。
    「これでどうかな?もし俺達が約束を破っても結局ライダーは一人減る。信用して、もらえないか?」
    「……あなた達の言い分はわかったわ。でもそれとは別に、私はたんに、あなた達の様な人の依頼を受けたくはない。奉仕部は、便利屋じゃないの」
    その声音はどこまでも冷たい。
    嫌悪感が溢れ出ている。
    「……頼むっ!どうしても、失敗するわけにはいかないんだっ!」
    それまでとは打って変わった真剣な表情で戸部がいい、頭を深く下げた。
    「……話聞くぐらいなら、いいんじゃねぇの」
    別にこいつの態度に心打たれたとかじゃない。
    だが、殺さずにライダーが減るというのは、逃したくない取引だった。
    雪ノ下は、いまだ小川絵里の意識を取り戻すことを諦めていない。
    俺や由比ケ浜と戦う気はないだろうが、それ以外のライダーに向ける闘志は一切鈍っていない。
    雪ノ下は力があり、倒そうという意思もあるが、いまだにライダーを自らの手で葬ったことはない。
    俺はこの少女に、人を殺めてほしくない。
    「受けるかどうかは、それから決めればいいだろ」
    雪ノ下は俺の言葉を受け入れてくれたようだ。
    黙って再びいすに座った。
    その様子を見た由比ケ浜も彼女にならう。
    「あの、実は俺……海老名さんのこと、いいなーって思ってて……それで、修学旅行で決めたいなーって……」
    うつむきながら戸部は言った。
    以外に純情なとこあんのな……。
  11. 11 : : 2014/05/01(木) 23:51:12
    奉仕部の3人が仲良くしている描写が原作に少ないからオリジナル感があって良いっすねぇ。俺の中で葉山が完全に嫌な奴になってるwwwwwwww東條に合わせてっからしょうがないよねwwwwwwww
  12. 12 : : 2014/05/02(金) 22:28:36
    →→→nyさん
    そうですねぇ。葉山以外にも結構黒くなってる……。
    奉仕部の面々はあまり変わってないけど、八幡は問題解決の際にドラグレッダーを使ったり。
    陽乃→雪乃とか関係なく自らの目的の為ひたすらにライダーバトルを進める。
    平塚→自らの命の為という目的はあれど、生徒と戦い、材木座を死に追いやる。
    折本かおり→原作九巻を見る限り、そこまで悪くない奴(中学時代八幡に告白されたことを周囲に言いふらしはしたが)→願いをかなえるためモンスターに人を襲わせる。
    相模→相模はまぁ、もとからクズですね。
    三浦→戦いを楽しみ、次々にライダーと戦う。材木座を殺す。
    葉山→原作では「和をもって貴しとなす」ような奴だったが、『英雄になる』ため、どんどん東條化!

    おおぅ、結構変わってるなぁ。ただ、龍騎の世界の様に命を懸けた戦いに巻き込まれれば普段は出ないその人の本質というのが出るのかもしれませんね。

    そんな彼らがこれからどんな運命をたどるのか、乞うご期待!
  13. 13 : : 2014/05/02(金) 22:57:04
    なぁくすっち天頂さんこれは提案なんだがこれからもしサキサキが出て来るなら殺さないでくれないかな(笑)俺のただのわがままなんですけど一番好きなキャラなんでwwwwwwwどうっすかねぇwwwwwwww
  14. 14 : : 2014/05/05(月) 23:09:12
    ほう、夏休みに言ってたことは本気だったのか。
    そういったことに興味がある由比ケ浜と、前情報があった俺は理解できたが、雪ノ下は怪訝な顔をして首をひねっている。
    そんな彼女に由比ケ浜が耳打ちをする。
    俺の方でも要点をまとめてやるとしよう。
    「つまりあれか。海老名姫菜に告白して恋人になりたいと、そういうことだな」
    「そうそう、そんな感じ。流石に振られるとかは避けたいわけ。ヒキタニくん話早くて助かるわ―」
    何という手のひら返し……。わかってはいたことだが……。
    「振られたくない、か……」
    中学時代の自分と、自らの手で殺めた少女の顔が頭をよぎる。
    そして、この話題に由比ケ浜が興味深々といった様子で立ち上がった。
    「いいじゃん、いいじゃんすげぇじゃん!うん、いいよ!そういうの、すっごくいいよ!」
    「由比ケ浜さんの口調が一瞬変わった……?」
    「雪ノ下、そこはつっこまないでやってくれ」
    そしてそのまましばらくして彼女は再び口を開いた。
    「付き合うって、具体的にどういうことすればいいのかしら」
    そこからか……。と思ったが俺も似たようなものだ。
    しかし、こういうことに協力するというのはどうなのだろう。
    小学校のころからこういう話題はたびたび上るが、人に協力してもらってうまくいったという前例を聞いたことがない。
    「やっぱりそう簡単にはいかないか……」
    葉山が苦笑交じりで言う。
    「そりゃそうだろ」
    「……わたしたちでは、役に立てそうにないわね」
    「だな」
    はい、これで話は終わり。無理なもんは無理だ。
    これはもう努力でどうにかなることじゃない。
    「そうか……。そうだな」
    葉山も納得したようにうなずいた。
    だが、その決定に不服の者もいるようだ。
    「ええー、いいじゃん、面白そうだし手伝ってあげようよー」
    面白そうって、思ってても本人の前で言うか、普通。
    由比ケ浜に袖をひかれた雪ノ下がこちらを見る。
    ええー、そこで俺に押し付けるの?
    彼女の視線の意味に気付いたのか、戸部が俺に向かってくる。
    「ヒキタニくん、いや、ヒキタニさん!オナシャス!」
    「ゆきのん、困ってるみたいだし……」
    「そうね……そこまで言うなら考えてみましょうか」
    雪ノ下、由比ケ浜に甘すぎぃ!
    こうなるともう駄目だ。奉仕部内の過半数を超える二人が賛成しているので、俺が何と言おうと変わらない。
    「じゃ、やるか……」
    「やっりぃ!マジサンキュー!」
    「まぁ、受けるのはいいんだが、具体的に俺達は何をすればいい?」
    「んっとさー、俺が告るじゃん?だからそのサポート的な?」
    えっと……話聞いてた?俺具体的にって言ったんだけどな……。
    「お前の思いの丈は、思いの丈だけはわかったが、告白ってかなりリスキーなんじゃないのか?」
    「リスキー?ああ、リスキーね、リスキー」
    こいつ、本当にわかってんのか……?
    「リスキー……?」
    由比ケ浜が不思議そうに首をかしげる。
  15. 15 : : 2014/05/05(月) 23:09:38
    「リスクというのは、危険度や損失を被る可能性のことよ」
    「意味くらいわかるし!どういうリスクがあるのかってこと!」
    仕方ない、ここは俺が説明するしかないみたいだな……。
    「まず告白するだろ?で、振られるだろ?」
    「ええ!?もう決まっちゃってるの!?」
    「それだけじゃない。もうその先まで決まってる。……さぁ、地獄を楽しめ」
    一呼吸おいて俺は口を開く。
    「告白した次の日には、そのことをクラスのみんなが知ってるんだ。それだけならまだいいが、時たまその話をしているのが聞こえてくる……」
    『昨日比企谷、かおりに告白したらしいよ』
    『うわー、かおり可哀想……』
    かわいそうって、一番かわいそうなの俺だろ……。
    『しかもメールだって』
    『何それビビり過ぎ。ぶっちゃけありえなくない?』
    お前は初代プリキュアの人かよ……。
    『あたしアドレス教えてなくてよかったー。圧倒的、感謝……』
    『ざわ、ざわざわ……』
    『本当に悪いと思っているのならどこでだって謝罪できる。たとえそれが、血を焼き、肉焦がす、鉄板の上でもっ……!』
    「と、こんな具合で愉快なおしゃべりのネタにされる」
    「て、最後の方カイジじゃん!」
    まぁそんなことは今はどうでもいい。
    このように、失恋で傷ついているところに更に追い打ちを喰らわせられるのだ。
    「ちなみに、告白しても『え?なんだって』と繰り返されて、挙句の果てに逃亡されることもある」
    「わかったか?」
    俺は少しだけ優しい目で戸部を見る。
    こいつのことはどうでもいいが、おわなくてもいい傷を負わせるのは忍びない。
    「それは、比企谷君でしょ……」
    「ばっかお前、結構な数の男子学生が経験してると思うぞ?」
    が、戸部にはそんな経験はなかったようだ。
    「オーケーオーケーおっけー牧場。つまりは直接言えば問題ないってことっしょ。それに俺、何言われても結構平気って言うか?鬼メンタルって言うの?」
    「まぁ、リスクはそれだけじゃない。仲いい子に振られた場合、その後の関係性が」
    「まぁまぁ、もうわかったからさ」
    葉山……お前は本当に俺の邪魔をするのが好きだな。
    まるで慰めるかのように、憐れむかのように俺の肩を叩き、言葉をさえぎった。
    「その辺はわかってるから、うまくやるさ」
    確かにこいつがその気になれば相当うまく立ち回れるだろう。
    問題は、その気になるかどうかという点だが。
    「じゃ、俺は部活あるから悪いけど後は頼むな。戸部もあんま遅くなるなよ」
    「あ、俺も行くわ」
    「俺も部活だ」
    大岡と大和も葉山に続いた。
    どうやらただの付き添いだったらしく、共に色々と考える気はないらしい。
    ま、居ても居なくても一緒か。
    「りょーかい。俺もすぐ行くわ」
    三人に軽く返した戸部は俺達に向き直った。
    「っつーわけで、バシッとよろしく!」
  16. 16 : : 2014/05/05(月) 23:09:52
    「そう言われても、何をしたものかしらね……」
    確かにこういった恋愛がらみのことに関しては俺達は全く経験や知識がない。
    この中で言えば由比ケ浜が一番詳しいだろうが、彼女だって交際経験はない。
    「というか、なぜ俺達のところに来たんだ?」
    「え、そりゃあれっしょー。隼人君のおすすめだし?」
    「その葉山に相談した方がよほど適任だと思うがな」
    「……いや、なんつーの?隼人君は超いい奴だし、すんげぇイケメンじゃん?だからそういうことで悩まないっていうか……」
    戸部の言わんとすることはわかる。
    イケメン無罪なんて言葉があるが、実際葉山はそういった話に困ったことはなさそうに見える。
    戸部の様に『頑張ってもてたいです!』といった、チャラ男や雰囲気イケメンとは格が違う。
    容姿は抜群で気配りもでき、すさまじい人望がある。
    何もしなくても女の方から寄ってくるというものだ。
    ただ、あくまでその優しさは彼の味方である限り、という条件付きではあるが。
    「確かに隼人君はそういう苦労なさそうだよねー」
    「だっしょ?」
    何その相槌……すげぇ腹立つんだけど……。
    「なるほど、だから比企谷君に相談する、と」
    「おいお前、俺が恋愛で苦労が多いみたいに言うんじゃねぇよ」
    「……ふっ」
    雪ノ下のその勝ち誇った顔がとても癪に障る。
    こんのあま……。
    ちなみに由比ケ浜は気まずそうに俺から視線をそらした。
    おいやめろ、深刻さが増しちゃうだろうが……。
    「ま、そういうことでよろしくね!ヒキタニくん!」
    言って戸部は教室を後にした。最後まで名前間違ったままだったな、あいつ……。
  17. 17 : : 2014/05/05(月) 23:10:12
    戸部の相談を受けた翌日から俺達は依頼内容の分析と具体策の検討を始めた。
    正直、というか全く気乗りしない内容だ。
    他人の恋路ほどどうでもいい物もない。
    俺達三人で吟味した依頼内容がこれだ。
    『戸部が海老名さんに告白するのでそのサポートをする』
    何これ、ざっくりしすぎでしょ……。
    ここからどうもっていけばいいんだよ……。
    「まずは情報収集をしないとね。私たち、海老名さんのこと何も知らないし……」
    「あ、ゆきのん!あたしわかるよ!」
    「ああ、そうだったわね。では、教えてくれる?」
    「えーっとねー、姫菜はねー、えーっと……男の子同士でエッチするのが、好き……?後は……あとは……うん、特にないね」
    半年一緒にいて思いついたのがそれだけ!?
    「それだけでは何とも言えないわね……」
    そうだね、わかったのは海老名さんが腐女子ってことだけだね。
    「後は、戸部君についても……」
    「ちょりーっす!」
    と、まさにその時扉が開いた。
    戸部翔その人だ。
    「戸部君、入る時はノックを」
    「あ、ごめんちょりす」
    何その語尾……。
    「戸部君、簡単に自己紹介を」
    「うっす。二年F組戸部翔。サッカー部ちょりす」
    「では、あなたのアピールポイントは?それをうまく使っていければあいての気を引くこともできると思うわ」
    「アピールポイント……隼人君と友達?」
    「それはあなたの長所じゃないじゃない……。他には?」
    「他?他か―……。うーん、後は―、特にないでちょりすねー」
    「戸部、さっきからずっと思ってたんだが、その話し方はなんだ?」
    「これでちょりすか?いやー、大和が―、相手の印象に残るように特徴的な語尾をつけるといいっていったんでちょりすよ―」
    「それ絶対逆効果だからやめた方がいいぞ」
    「エー、マジか―……。ないわ―、マジでないわ―。逆に一周してありじゃないかな?」
    「絶対にない」
    「そっかぁ……」
    「由比ケ浜さん、あなたから見て戸部君のいいところは?」
    「えっと―……明るい、とか?」
    うっわ―、これダメな奴だ―……。
    しかし、近くにいすぎて逆にわからない、ということもあるかもしれない。
    「雪ノ下、なんかないか?」
    「随分な難問を押しつけてくれたものね……。うるさい、いえ、騒がしい……?にぎやかなところかしら」
  18. 18 : : 2014/05/05(月) 23:10:28
    途中の思考回路は言わないであげた方が良かったんじゃないかなー?
    しかも難問って……。
    「そういうあなたは?」
    「おいおい、ない物を出せと言われてもそれは無理だろ」
    「ないのはあなたのやる気でしょう?」
    「ば、ばっかお前、やる気とか超あるよ!なんなら元気といわきもある!」
    「なぜいわきのぶこ元参議院議員が……」
    「やる気!元気!いわきです!」
    戸部、うるさい……。
    「戸部のいいところを探すより、海老名さんのいいところに目を向けてみないか?」
    ないものはどうしようもないしな……。
    「弱みを突いていくということね。流石比企谷君、卑怯な手段を考えさせたら右に出る者はいないわ」
    「それお前褒めてるつもり?」
    「ただの皮肉よ」
    「で、どうなんだ、海老名さんは。由比ケ浜曰く男同士の恋愛が好きということなんだが」
    「や、なんてーの?そういう部分もエキセントリックでファンタスティック!的な?」
    恋は盲目、というやつか。
    だがまぁ、目がくらむほどには彼女のことが好きということなのだろう。
    「戸部君の心情はともかくとして、海老名さんは戸部君のことをどう思っているのかしら」
    「ど、どうだろうね……」
    その質問に由比ケ浜が動揺した。
    うっわ―、もうこれ答え出てますねー。
    「やばいわ―、それ気になりまくりんぐっしょー」
    「おいお前、これはあれだぞ。いわゆるファイナルジャッジメントって奴だぞ」
    「エル・カンタ―レへの道は遠いわね……」
    「エロカンターレ?」
    「エルカンターレよ、由比ケ浜さん」
    「なにそれ?」
    「幸福の科学総裁大川隆法氏の……」
    「おいやめろ、お前信者だったの?」
    「小さい頃に姉さんが色々と吹き込んだのよ……」
    妹に布教するとかどんな姉だよ……。
    「ちなみに怪しい宗教団体をいくつかつぶしたらしいわ」
    雪ノ下陽乃マジパねぇ……。
    「って、宗教の話はいいって!今は俺のことを海老名さんがどう思ってるかって話っしょー」
    戸部……。ひどい結論しか出ないと思ってせっかく話をそらしてやったのに……。
    「じゃぁ、由比ケ浜、どうだ?」
    「……いい人、だとは思ってるんじゃないかな」
    目をそらしながら彼女は言った。
    うっ……涙が……。
    女子のいう『いい人』というのは99%『どうでもいい人』のことだ。
    つまりこれはもう駄目だということである。
    しかし、戸部はそうは受け取らなかったらしい。
    「いい人って……。やべぇじゃん!それ恋人まであと一歩じゃん!」
    絶対に違う……。
    こいつどこまでプラス思考なんだよ……。薄っぺらいだけか……。
    「で、でもまぁ、嫌われてないってのはいいことだよね!」
    由比ケ浜が明るく言うが、俺と雪ノ下の間ではすでにあきらめムードが充満している。
    『目標達成には努力あるのみ』といってのけた彼女が諦めているのだから、もうこれは完璧にアウトである。
    アウト!アウトお前アウト!スリーアウト、チェンジ!
    「これは私達だけでは限界があるわね……」
    「まぁ、戸部と海老名さんの間の溝が深すぎるよな……」
    「そんなもん、愛の力があれば余裕っしょ!」
    その愛はお前からの一方通行だから……。アクセラレータだから……。
    ここで海老名さんに関してもう一度考えてみよう。
    いわゆる『腐女子』のとしてトップカーストに位置しているというのは珍しい。
    その趣味を隠してその位置にいるのはありそうだが、彼女の様に大っぴらにしてというのは珍しい。
    だが、この常識を覆したのがクラスの王者(王蛇)三浦優美子だ。
    三浦はグループ編成の際に、ただただ可愛さという基準だけでメンバーを選んだ。
    そしてこの状況を作り出した村は、今回の件のキーパーソンになりうるかもしれない。
    「誰かほかに協力者がいた方がいいかもね。優美子とか」
    「……王蛇?」
  19. 19 : : 2014/05/05(月) 23:10:46
    うっわ―、雪ノ下さんの機嫌が一気に悪くなった―……。
    「でも、優美子こういう話好きだし」
    「……やめとけ」
    もちろん俺や雪ノ下があいつと関わりたくないという主観的な条件もあるが、客観的に見てもこの提案には問題がある。
    この依頼、十中八九うまくいかない。
    そして失敗した時、海老名さんからすれば由比ケ浜や三浦がけしかけたと思うだろう。
    由比ケ浜だけならあるいは、『奉仕部』だからという言い訳ができる。
    だが、三浦がこの件に絡んだ時その言い訳は使えなくなり、彼女達の関係に悪影響が出る
    だろう。俺としては、由比ケ浜にはあまりあいつらと関わってほしくないが、彼女自身がそれを望んでいない以上、俺がそれに加担するようなまねはしたくない。
    「まぁ、とにかくやめとけ」
    「……うん、わかった」
    説明を求められなくて助かった。
    まずうまく言えないだろうから。
    「となると、完全に手詰まりね」
    「もう諦めろ」
    「っか―。ヒキタニくんマジひどいわ―。隼人君の言うとおりひどい奴だわ―」
    葉山……俺のネガティブキャンペーンをしてくれてどうもありがとう。
    「でも、あれっしょ?そういうキャラなんっしょ?」
    「いや、大マジだよ」
    「でもさー、よくいうべ?好きの反対は無関心って」
    「お前はどこのマザーテレサだよ……」
    好きの反対はどう考えても嫌い、だ。
    あるいは憎悪、殺意。俺が葉山や三浦、雪ノ下陽乃に抱いているような……。
    「俺、結構マジなんよ……。告白の台詞とかも考えてて―……。『僕につられてみる?』とかどう?」
    「か、軽い……」
    「それはあんまりだよ……」
    「下の毛、といったところね」
    「あっ、じゃぁこれは?『お前僕と付き合うよね?答えは聞いてない!』とか」
    「お前それ本気で言ってんのか?」
    「絶対無理だと思う……」
    「下の下ね」
    「っか―、言われちゃってるー。いわれちゃってるよ俺―」
    と、その時携帯のバイブ音が鳴った。
    「はいもすもす。え、ガチンコ!?おっけ、すぐ行くわ!」
    あわてた様子で電話を切り、荷物をまとめ出す。
    「どしたの?」
    「部活の先輩が来てるらしいんだわ。つーわけでごめん、じゃ、また!」
    「まったく騒がしい……」
    戸部がいなくなったことで、部室に静寂が訪れる。
    「あっ、そうだ!」
    唐突に由比ケ浜が手を叩く。
    「どうしたの?」
    「修学旅行の班を一緒にすればいいんだよ!姫菜京都好きだし、見て回ってるうちにいい空気になるかも!」
    「それはなかなかいいかもしれないわね」
    「一日目はクラス行動だから大丈夫だね。で、グループは多分あたしと姫菜と優美子が一緒になるのはほとんど決まり」
    ま、そりゃそうなるよな。
    「で、男子の方はヒッキーが一緒になればいいよ。そしたら二日目も一緒にいられるし」
    「え……俺もう戸塚と組んでるし」
    「そうね、それに戸部君達はもう四人組決まっているんじゃないの?そこにこんな男を放り込んでも誰も幸せにならないと思うけど」
    お前はいちいち俺をディスらないと発言できないの……?
    「うーん、でもサポート役は二人いた方がいいと思うんだよね」
    「なるほど……。まぁあの……何だったかしら、大和、君?と風見鶏の……」
    「大和と大岡、な」
    「そう、その二人は一緒に相談に来たくらいだし事情を話せば了解してくれそうね」
    おい待て、なんで俺が関わってるのに俺抜きで話が進んでるの?
    「ちょっと俺の話も……」
    「じゃ、班分け男子の方はあの四人を二つに分けて、そこにヒッキーとさいちゃんを入れるってことで」
    ……上の上ですね。
  20. 20 : : 2014/05/05(月) 23:12:39
    「あたし達はあと一人だね」
    今は修学旅行の班決めの真っ最中である。
    由比ケ浜がそういうと、三浦が返す。
    「別に三人でよくね?」
    よくないから、全然よくないから。
    さらっとルールを破ろうとする当たり流石は王蛇。
    「おまた~」
    「あ、姫菜。四人組なんだけど……」
    と、そこには海老名さんに連れられた一人の少女がいた。
    「サキサキも一緒でどう?」
    川崎沙希。青髪ポニーテールが特徴的だ。俺と同じであまり友達が多いタイプではない。
    奉仕部ともかかわりがある人物だ。まぁその件に関しては割愛してもいいだろう。
    重度のブラコンで、この弟の大志とかいうクソガキは、マイラブリーエンジェル小町に好意を抱いている野郎だ。
    「あ、あたしは別に……。後、サキサキ言うな」
    「川崎さんさえよければ一緒にどう?」
    「まぁ、いいけど。どうせ他に組む人いないし……。笑えよ」
    わ、わらえねー……。
    「どうせあたしは、日向の道を歩けない」
    あれー?この人こんなネガティブ思考だっけ……?
    川、川……川なんとかさん。
  21. 21 : : 2014/05/05(月) 23:15:22
    →→→nyさん
    コメント&提案ありがとうございます!
    出ましたよ、サキサキ!
    彼女は人数の都合上龍騎世界以外のライダーになってもらいますが。
    誰でしょうねぇ……。
    もう完全に出オチですけど。……笑えよ。
    それに伴ったキャラ崩壊あると思いますがどうかご容赦を。
  22. 22 : : 2014/05/08(木) 00:17:41
    「じゃ、決まりね!」
    海老名さんが明るい声でそういった。
    「う、うん……」
    「あ、男子も一緒だけどいいかな?」
    「男子?」
    「うん、葉山君とヒキタニ君のはやはちが間近で見れるんだよ!」
    「そ、それはどうでもいいけど」
    「は?今なんて?」
    と、その時三浦が椅子から音を立てて立ち上がった。
    うわぁ、臨戦態勢だ……。
    「どうでもいいっていったんだ。あたしの言うことなんて聞こえないってか?……笑えよ」
    「どうでもいい?はぁ!?」
    「あ?」
    うっわぁ、どっちもやる気満々じゃねぇか……。
    「ま、まぁまぁ。とにかくグループ決まったってことで」
    由比ケ浜が間に入り、なんとかその場を収める。
    こいつらと一緒に修学旅行行くの嫌だなぁ……。
  23. 23 : : 2014/05/08(木) 00:18:14
    いよいよ明日からは修学旅行だ。
    奉仕部部室では最終確認が行われていた。
    といっても、お勧めスポットを探すくらいの簡単な仕事だが。
    「じゃぁ考えよう!」
    由比ケ浜がずらっと観光ガイドやら旅行雑誌やらを並べる。
    「何でこんなにあんだよ……」
    「え?ゆきのんが持ってたやつと、図書室から持ってきたのと、後は火野先生から」
    「火野先生……。そういえばあの人旅好きだったな」
    「どういうところがいいかなぁ……」
    「それこそ火野先生に聞いてこなかったのかよ」
    「あっ、そうだね。でも火野先生、いいムードの場所とか考えたことなさそうだし」
    まぁ、そりゃそうだな。何せ女子に平気でパンツだの言いだす人だ。
    セクハラをする気が皆無なのでなおさら達が悪い。
    「そうね……。まだあちらも紅葉の季節でしょうし、嵐山なんかいいかもしれないわね。近くに伏見稲荷もあるし」
    「お前詳しいな、行ったことあんの?」
    「無いわ。だからこそいろいろ調べるのが楽しいんじゃない。それに、あなたと一緒だし……」
    雪ノ下の照れたような視線の先にいるのは、当然由比ケ浜だ。
    おい、一瞬ドキッとしちゃっただろうが!
    ドキドキプリキュア!ちなみにあれブレイド意識しすぎだよな……。
    「ゆきのん!」
    抱きついてきた由比ケ浜の背中を雪ノ下がトントンと叩く。
    やばい、雪ノ下が百合化してきている……。
    と、その時扉が叩かれた。
    急いで雪ノ下は由比ケ浜から体を離す。
    すると由比ケ浜は残念そうな顔をした。
    大丈夫だよね?お前らノーマルだよね?
    「どうぞ」
    「失礼します」
    部室に入ってきたのは一人の少女。
    肩までの黒髪、赤フレームの眼鏡。
    レンズの先の瞳はすんでいる。
    「って姫菜じゃん」
    「あ、結衣。はろはろ~」
    何その挨拶。どこかのロボアニメにでも出るの?
    「やっはろー!」
    しかし由比ケ浜は気にすることなく挨拶を返す。
    「雪ノ下さんも比企谷君もはろはろ~」
    雪ノ下は彼女を見て少しいやな顔をする。
    三浦の仲間である彼女に好印象を持っていないのだろう。
    それはまた俺もしかりだが。
    「どーも」
    「どうぞ、好きにかけて」
    「ふぅん、ここが奉仕部……」
    呟いて部室内を見回すと、俺達に向き直る。
    「ちょっと相談したいことがあってさ……」
    普段ならばあまり聞きたくないが、戸部の件があるので今は話が違う。
    彼女に関する情報は少しでも多く集めておきたい。
    「あのね……戸部っちのことで相談があって」
    「と、ととべっち!?」
    ととべっちってなんだよ。たまごっちに出てきそうだな。
    うわ、絶対育てたくねぇ。
    おいおい、なんか海老名さんの顔赤くないか?まさかの戸部大勝利なのか?
    「とべっち、最近隼人君やヒキタニくんと仲良すぎじゃない!?大岡君や大和君とのただれた関係がみたいのに!」
    のに!のに!のに……。
    まさに絶句。無言絶句。ZECKって書くとなんかかっこいい。
    ZECTみたいだな。チェンジ!ビートル!
    「えっと、つまりどういうこと……?」
    口を開いたのは由比ケ浜だ。
    さすが普段から一緒にいるだけあって慣れている。
    「最近戸部っち、ヒキタニ君とよく話してるじゃない?それにグループ決めの時とかも意味ありげな視線を送ったりしてたし。ぐ腐腐腐腐」
    うわぁ……ダメだこいつ……。
    と、少し真剣な表情になって彼女は言う。
    「仲良くするのはもちろんいいんだけど、大岡君達と距離置いたのが気になってさ」
    なるほど、そういうことか。
    確かにすでに出来上がっているグループに俺と戸塚が入るというのは不自然な構図だ。
  24. 24 : : 2014/05/08(木) 00:19:04
    「まぁ、人にはいろいろ事情があんのさ」
    「うーん、まぁそうなんだろうけどね。あのね、誘うならみんなを誘ってほしいの。そして、全部受け止めてほしい!ふふ、ヒキタニ君総受けとかきましたわ―」
    「冗談じゃねぇよ……」
    「それで、結局何がいいたいのかしら?」
    流れる空気をすべて無視して雪ノ下は問いかける。
    「うーん、なんかね、今までいたグループがちょっと変わっちゃったなぁって……」
    彼女の声が憂いを帯びたものに変わる。
    「さっきも言ったけど、人には色々ある。仲良くする相手が変わるなんてよくあることだろ」
    言ってから思う。今居るこの居場所は変わらずにいてほしい、と。
    だから、海老名姫菜の想いも理解してしまった。
    「それでも、今までどおり仲良くしたいから」
    その笑顔は腐ってもなく邪気もなく、どこまでも自然な笑顔だった。
    みんな仲良く、たとえそれが上っ面だけの関係だとしてもその継続を望む者はいるだろう。いや、ほとんどの者がそうだ。
    しかし、だ。
    今目の前にいる海老名姫菜という人間の真意がそんな単純なものなのか、俺は測りあぐねている。
    「それじゃヒキタニ君、よろしくね。あ、修学旅行でもいいホモシーン楽しみにしてるから!それでは~!」
    「なんだったのかしら……」
    「さぁ、な。ま、あいつらみんな仲良くしてやりゃぁいいんじゃねぇの。上っ面の関係だ。きれいに見せるのは難しいことじゃない」
    「変わらないわね、あなたも」
    「でもさぁ、男子同士ってどうやって仲良くなるのかな?」
    由比ケ浜が首をかしげて俺を見る。
    「由比ケ浜さん、そんな質問を比企谷君にするのはあまりに酷だと思わない?もう少し気を使った方がいいと思うわ」
    「本当、もっと気を使えよな、お前が」
    なにはともあれ、明日は修学旅行だ。
    抱えている懸案は戸部の告白だけ。
    つまりは何の心配もないということだ。
    戸塚とともに京都を歩く自分を想像し、少し高揚しながら俺は帰路に就いた。


    そして翌日、いよいよ修学旅行当日だ。
    新幹線に乗るため、いつもより少し早く家を出た。
    快速に乗り越え、扉が閉まって一息ついたところで、青い瞳と視線がぶつかった。
    「……」
    「……おい、今私を笑ったか……?」
    「いや、別に笑ってねぇけど……」
    「笑え、笑えよ……」
    やだ、この人怖い……。
    川崎沙希。こんな奴だったっけなぁ……。
  25. 25 : : 2014/05/08(木) 00:19:21
    京都駅までは新幹線で二時間ほど。
    俺は寒さを感じながらバス乗り場へと向かった。
    ちなみにこの時点で班の連中とも合流している。
    本日の予定では、これから清水寺に向かうらしい。
    クラスごとにバスに乗り込む。
    ちなみに戸部と海老名さんは通路をはさんで隣に座っている。
    しかし進展は見込めそうにない。
    目的地まであまり時間がかからないし、席の自由度が比較的高いからだ。
    紅葉のピークは過ぎたものの、観光客の数は多い。
    どうやらここで集合写真を撮るようだ。
    適当にそれを流し、清水寺拝観入り口に並ぶ。
    しかし人が多く、これは少し待ちそうだ。
    「ヒッキー!」
    声をかけてきたのは由比ケ浜だ。
    というかこのクラスで俺に声をかけるのは戸塚か由比ケ浜くらいしかいない。
    「どうした?おとなしくならんどかないと抜かされるぞ?」
    「うーん、でもまだしばらく進みそうにないからさ。ちょっと面白そうなところ見つけたの。行ってみない?」
    「また後でな」
    「もう戸部っちと姫菜呼んでるからさ」
    「ああ、そういうことか……」
    「うん!そういうこと!」
    「なんでこいつらまでいるんだ……?」
    由比ケ浜につれられるままに行くと、そこには葉山と三浦もいた。
    この二人の顔は、見たくない。
    「だって戸部っちたちだけ呼んだら不自然じゃん」
    「ま、そうだが……」
    「ほら、行こ行こ」
    由比ケ浜にうながされ、施設内に入る。
    RPGのダンジョンの中のようだ。
    「んじゃ、優美子と葉山君が最初ね。あたし達は最後に行くから」
    「ああ、わかった」
    「結構楽しそうじゃん。隼人、早くいこいこ!」
    「うっわ―、これ結構くらいしテンションあがりまくりっしょー!」
    お前はいつもテンション高いけどな……。
    「やばっ!暗い暗いくらい!これやばいって!ヒキオくらい暗いって!」
    先行する三浦が他人も気にせず大声で騒ぐ。
    なんでお前も俺をディスるの……?
    しばらく歩くと、明かりがともった少し開けた場所に出た。
    「ここで石を回しながらお願いするんだって」
    願い……か。
    ライダーバトルの終結、というのも一瞬浮かんだが、それを神に祈るのは何か違う気がする。
    「お願い事、決まった?」
    「ああ」
    「じゃぁ、一緒にまわそっか」
    ま、小町の受験合格でも祈っとくか。
    そこから少し歩くと、出口が見えてきた。
    「どうです?生まれ変わった気分でしょう?」
    受付のおじさんから声をかけられたのは戸部だ。
    「いやー、マジすっきりっすわ―。なんてーの?生まれ変わった、的な?」
    うん、何一つ変わってないな。
  26. 26 : : 2014/05/14(水) 22:46:10
    ハイペースで書いてくのはなかなか難しいですよねぇ無理せず更新していってください。楽しみにしています。
  27. 27 : : 2014/05/15(木) 22:02:49
    気づいた時には布団に横になっていた。
    「何でこうなったんだっけ……」
    記憶を整理する。今日は修学旅行初日だったはずだ。
    清水寺に行き、銀閣やらなんやら他の寺社仏閣も回った。
    戸部と海老名さんの雰囲気も決して悪くなかったと思う。
    で、宿に入って飯食って……
    「あ、八幡、起きた?」
    横で体育座りをしていた戸塚が顔を覗き込んでくる。
    「お風呂の時間過ぎちゃったけど、内風呂使っていいって」
    「なに!!?」
    戸塚とのお風呂タイムが終わってしまった……。何という失態。
    「ユニットバスはあっちだよ」
    「ああ、ありがと」
    軽くシャワーを浴びて風呂からあがると、戸部が横になっていた。
    「おお、ヒキタニくん。一緒にマージャンやんね?こいつらみんな強くてさー」
    「いや、俺良くルールわかんねーから」
    適当にあしらうと、戸部も深追いしてこなかった。
    のどが渇き、手荷物を確認したが、飲み物はもう残っていない。
    「買いに行ってくるか」
    軽い音をたてて階段を下りていく。
    上の階は女子の部屋になっているらしい。
    そして、俺が目指すジュースの自販機は一階にある。
    就寝時間前ならここまでの移動は許可されているが、皆友達との交流で忙しく、ほとんど誰もいない。
    押し寄せる疲れをいやすべく、好物のMAXコーヒーをチョイスした。
    ……?
    自販機を上から確認するが、目的の物が見つからない。
    どうなってんだ……?
    仕方ないので、俺は妥協してカフェオレを買った。
    控えめな甘さに一息ついていると、ロビーの一角に見知った人物が現れた。
    やけに堂々とした様子で歩くのは雪ノ下雪乃。
    風呂上がりの後だからか、珍しくラフな格好だ。
    雪ノ下はそのままお土産コーナーへと向かった。
    やたら真剣な目で何かを見つめている。
    まぁあいつがあんな目をして見る物は一つしかないんだけど。
    商品に手を伸ばしたその時、周囲を見回した。
    無論、ずっと見ていた俺と視線が合う。
    と、彼女はこちらに寄ってきた。
    「こんな夜中に奇遇ね」
    「そうだな」

    「どうしたの?部屋に居辛くなったの?」
    「そんなんじゃねぇ。後は若い人だけで、って奴だ」
    「あなたに仲人なんてできるとは思えないのだけど」
    「うるせぇな。そういうお前は?」
    「クラスメイトの話題の矛先がこちらに向かってきてね。本当にどうしてああいう話が好きなのかしら」
    「まぁ、修学旅行の夜なんてそんなもんだろ」
    「他人事のように言うけど、そもそもあなたが……」
    「おいちょっと待て。俺絶対関係ないだろ」
    「はぁ……。まぁいいわ。で、ここでなにしているの?」
    「休憩、ってとこだな。お前は?お土産買うんじゃねぇの?」
    「別にそういうことでもないけれど」
    そう言って彼女は視線をそらす。
    そうですか……まぁ本人がそういうならそういうことにしておこう。
    「あなたこそお土産は?」
    「今買っても邪魔になるだけだから帰りに買うわ。まぁ、小町に頼まれた物買うだけだからそんな多くはなんないけどな」
    「そう、それで、依頼の調子はどう?」
    「何とも言えん、可もなく不可もなくって奴だ」
    「すまないわね、クラスが違って手伝えなくて……」
    「気にすんな。俺だって同じクラスだけど何もしてない」
    「それは気にしなさい……」
    と、そんな話しをしていると火野先生が通りかかった。
    「あ、君達」
    「こんばんは」
    「こんばんは、どうしたんですか?こんな時間に」
    「うん、ラーメンを食べに行こうと思ってね。ラーメン二郎のラーメン、ずっと気になってたんだ」
    「そうなんですか」
    「あ、よかったら比企谷君と雪ノ下さんもどうかな?一人で行くのもいいけど、修学旅行の夜にっていうのは少しさびしい気もするし」
    修学旅行っていうかあなたは引率者の側なんですけどね……。
    ただ、ラーメン二郎は俺も気になっていた店である。
    「いいですね、お供します」
    「雪ノ下さんは?」
    「……私も行きます。店のラーメンというものは食べたことがないから気になるし……」
    ラーメン食ったこと無いってどんだけお嬢様なんだよ。
    「あ、でもこんな恰好で……」
    雪ノ下は自分の服装を思い出したらしい。確かにラーメン屋に行くのにはあまりふさわしくない。
    「あ、ならこれを着るといいよ」
    そう言って火野先生は自分の羽織っていた上着を渡す。
    「風邪引くといけないしね」
    火野先生SUGEEEEEE!しかし顔も振る舞いめっちゃ男前なのに女性の影がないのはなんでなんだろう……。

  28. 28 : : 2014/05/15(木) 22:03:14
    ホテルから出ると、冷たい夜風を感じる。
    「さ、乗って乗って」
    タクシーを止め、先に俺達を乗せてくれる。
    「一条寺までお願いします」

    タクシーに乗ること十数分。
    「ここがラーメン二郎……」
    「そんなに有名なお店なの?」
    「ああ、まぁな」
    「いやー、楽しみだなぁ!さぁ、入ろう!」
    店内に入った途端に広がる濃厚な豚骨スープのにおい。
    「……」
    雪ノ下は怪訝な顔をしている。
    「券買わないとね。大と小、どっちにする?」
    「あー、俺は大で」
    「……」
    「雪ノ下さん?」
    「ごめんなさい、私は結構です。食べられそうにありません」
    「そっか……。わかった」
    そう言って火野先生は二枚の「大」食券を買う。
    「あ、払いますよ」
    「いいっていいって。俺が誘ったんだしさ」
    「すいません……ありがとうございます」
    注文してしばらくすると、ラーメンが運ばれてきた。
    「……豚の餌」
    「おい雪ノ下、それは禁句だ!」
    しかし、想像していたよりも遥かに量が多い。
    何これ、野菜で麺が見えないんだけど?
    「い、いやー、これは食べ応えがあるなぁ」
    火野先生の顔も少しひきつっている。
    「「いただきます」」
    多い。これはあまりに多すぎる。
    三分の一くらいしか食べていないのにもう満腹だ。
    「こ、これ多すぎんだろ……オエっ」
    「確かにこれはきつい……うっ」
    「というかこれ、一食分にしては桁違いの量なのだけど……」
    「すいません先生、俺もう無理です」
    「うん、俺もちょっと……」
    残すのは忍びないが、これを全部食べるなんて到底無理な話だ。
    「「ごちそうさまでした」」
    と、その時。
    「ギルティ!」
    俺達の席に一人の男性客がやって来てそう言った。
    「「ギルティ!ギルティ!」」
    さらに二人の客もやって来て異口同音に言う。
    それを近くにいた店員が腕を組んでみている。
    「ギルティ……罪……どういう意味かしら」
    「何この人たち、頭おかしいの?」
    「どうしたんだ……まさか洗脳系のヤミーに」
    「俺はロッドマスターの剣崎一真だ!お前達はギルティを犯した!ウェーイッ!」
    何だこいつ……ちなみに最後のウェーイはチャラ男たちが使うそれではなく、気合を入れる為の声のようだった。
    「……これ食っていい?」
    「橘さん!何人の食べ残し食べようとしてるんですか!今はこいつらのギルティを責める時でしょう!」
    「その通りだ、食べ物を残すのは幼女だけの特権……」
    「黙れ始!このロリコンアンデット!」
    「……」
    何これ、コント?しかし三人とも男前だな……。
    「橘さん!小夜子さんとよく食べたっていう思い出の一品なんでしょ!黙ってていいんですか!」
    「ザヨゴォォォォッッ!」
    「その意気です橘さん!」
    いや、その意気ですじゃねぇよ……。
    「この距離ならバリアは張れないな!」
    そう言って、橘と呼ばれた男が俺の頭に手で銃の形を作って押し付けてきた。
  29. 29 : : 2014/05/15(木) 22:03:33
    「俺は全てを失った。信じるべき正義も、組織も……愛する者も、何もかも……だから最後に残った物だけは……失いたくはない!二郎の、ラーメンだけはっ!」
    「最後に残ったのがラーメンだったのね……」
    雪ノ下が憐れむような眼をしていた。
    「統制者が言っている。アンデッドを二体確認、バトルファイトを再開しろ、と」
    「二体の、アンデッド……?」
    始という男と剣崎という男が会話を始める。
    「ああ、ヒューマンアンデッドと、ラーメンアンデッドだ」
    「ラーメンアンデッド……」
    「四枚のカテゴリーキングがそろった時に現れる、伝説のアンデッド……」
    「それフォーティーン……」
    「黙れ剣崎」
    「ウェイ……」
    「だが今俺は、戦わなくていいと思っている」
    「ラーメンがそこにあるんだ!倒すしかないだろ!」
    「剣崎、俺は思った。きっとこの二つのアンデッドは共存できる。それが、それこそが運命なんだ……」
    「もし、もしそれが運命だというのなら……俺は運命と戦う!そして、勝ってみせる!」
    「それが、お前の答か……」
    「ああ……さぁお前ら、ラーメンを食うんだ」
    「すいません、もう食べれないです……」
    「俺も……」
    「なんという根性無し……所長!烏丸所長!何とか言ってください!」
    「確かにわたしのラーメンは多すぎたかもしれない。だがわたしは謝らない!それが君達の為になると信じてるからだ!」
    「その通りだ!この大量のラーメンこそが、ラーメン二郎の、いや、BOARDの誇りだ!」
    「確かに、残したのは悪かったですけど……ならどうすればいいんです?」
    火野先生が穏やかな口調で聞くと、剣崎という男が答える。
    「ラーメン二郎の鉄の掟!残した者は土下座!」
    「……あなた、頭がおかしいんじゃないの?確かに食べ物を残すことはよくないことだわ。でも、だからといって土下座を強要するなんて筋が通ってないわ!」
    ……キュアマーチ?
    「な、なんだと!もう許せない!変身!」
    「Change」
    その音が響き渡ると同時、剣崎の体に変化が起きる。青と銀の金属質の体。
    見まがいようもない、仮面ライダーだ。

    「あなた達も、仮面ライダー?」
    「いや、あのベルトは、龍騎の世界のものじゃない。この人たちも、俺と同じように……」
    「なにはともあれ、正義は拳で語れということかしら?なら、受けて立つわ。……変身!」
    雪ノ下がナイトに変身する。
    「お前達……剣崎、俺も加勢する」
    「Change」
    ロリコンアンデット、もとい始と呼ばれた男が、黒と赤の少し不気味なフォルムのライダーに変身する。
    仕方ない、俺もやるしかないようだ。
    「変身!」
    「剣崎、……俺も戦おう」
    「Turn Up」
    赤と銀色のクワガタの様なフォルムに橘が変身する。
    「三対二……俺も行くよ!変身!」
    「タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!」
  30. 30 : : 2014/05/15(木) 22:05:35
    →→→nyさん
    コメントありがとうございます!
    すみません、テスト期間で更新が滞ってしまいました……。
    来週からは元のペースに戻せると思います!
    赤点さえとらなければ、な……。
    数学14点とかどこのヒキタニくんだよ……。
  31. 31 : : 2014/05/15(木) 22:59:49
    ブレイドキャラが完全にギャグ枠でとうじょうwwwwwブレイバックルの音声も「turn up」じゃないでしょうか?
  32. 32 : : 2014/05/16(金) 21:47:52
    →→→nyさん
    この剣崎は、ブレイド最終回で始と戦い、アンデッドとなった剣崎ということで書いています。
    そのため彼はジョーカーとなり、変身の際も始同様「Change」の音声が鳴る、という設定です。ご指摘ありがとうございました!これからもおかしいと思う点があったら
    教えてください!
  33. 33 : : 2014/05/29(木) 00:08:05
    o(^o^)o頑張れぇーうぉぉぉぉ               でも無理しちゃダメだよ勉強もSSも( ´▽`)        あと数学14点は高得点ですよ(確信)自分は8点とったことありますから.....笑えよ。
  34. 34 : : 2014/05/29(木) 12:23:53
    「私はこの黒いのを相手するわ!」
    「俺の名はカリス、仮面ライダー、カリスだ!」
    「Sword Vent」
    「Bind」
    雪ノ下が剣を呼び出すと、カリスもカードを弓状の武器にカードをスキャンする。
    「あなた達も、カードで戦うライダー……」
    「それだけじゃない、俺達にはコンボがある!行くぞ!オーズ!」
    「Drop Fire Jemini……Burning Devide」
    「ギャレン……炎には、このコンボだ!」
    「シャチ!ウナギ!タコ! シャ・シャ・シャウタ!シャ・シャ・シャウタ! スキャニングチャージ!」
    飛び上がって二体になったギャレンにオーズが電気の鞭で応戦する。
    「二郎をコケにしたこと、後悔させてやる!」
    「Kick Thunder Mahha……Ritning Sonic」
    すると剣崎、ブレイドが高速で走って飛び上がり、雷の力を宿したキックを放ってきた。
    「みすみす食らうかっ……」
    「Guard Vent」
    体勢を崩すも、何とか攻撃を防ぐ。
    「今度はこっちの番だ!」
    「Advent」
    「グガアァァァァッッ!」
  35. 35 : : 2014/05/29(木) 12:24:10
    突進するドラグレッダーにブレイドは強烈な蹴りを放つ。
    しかし体格差は歴然。ブレイドの体が大きく吹き飛ばされる。
    「くそっ、ならこれでどうだ!」
    「Absorb Queen Fusion Jack」
    二枚のカードをスキャンすると、ブレイドの姿が変わり、背中からについの翼が生えた。
    「いくぞっ!」
    「Thunder Srash……Ritning Srash」
    ブレイドの剣に雷の力が宿る。
    空中に舞い上がり、加速をつけてこちらに突進。受け止めようと剣を構えた俺のすぐ横をしかしブレイドはすりぬけていく。
    「……え?」
    「ウェーーーーイッ!」
    ブレイドはそのまま俺の背中で硬度を上げ、背後から再び同様のも攻撃を放ってきた。
    相手の狙いに気づき身をひるがえそうとするが、間に合いそうにない。
    襲い来る衝撃に備えたその時、
    「ハァッ!」
    ブレイドの攻撃が何者かによって止められた。
    「ま、真琴……」
    「兄さん、何をやってるの!」
    俺達の様子に気づいた雪ノ下達も戦いの手を止めている。
    剣崎の攻撃を止めたのは、白と紫の衣装を着た見目麗しい少女だった。
    あれ?というかこの子見覚えが……。
    何かを思い出しそうになったその時、突如俺を激しい頭痛が襲った。
    それは一瞬のことだったが、直前に何を考えていたのかがすっぽりと抜け落ちていたようだった。
    この少女に関して俺は何か知っているはずなんだが……。
    「兄が失礼しました、私はキュアソード……いえ、剣崎真琴です」
    「ダビィ!」
    「ダビィ、少し静かにしててね」
    ひとりでに音を出した携帯のようなものを彼女が触ると、彼女の装いが変わり、奇抜な衣装からありふれた(それでも持ち主のセンスは大いに感じ取れるが)服装になった。
    「兄さん、あなたいったい何をしていたの?橘さんと、相川さんも一緒になっていたようだけど……六花とマナに言いつけるわよ?」
    「それはやめてくれ……ダイヤヒーローの先輩としての面目が立たん……」
    「そんなことをやってみろ。俺はお前を、ムッコロス!マナちゃんは俺の嫁だからな……」
    「ふざけたことを言わないでくださいロリコンアンデット。それにあなたには天音ちゃんがいるんじゃないですか?」
    この人がロリコンであることは共通認識なのか……。ていうかさっきからこの人達滑舌悪くないか……?
    「天音ちゃんはもう、おばさんだから……」
    「おばさんって年じゃないだろ……ジョーカーがロリコンとか本当かっこ悪いから勘弁してくれ……」
    橘が頭を抱える。
    「……あなたは、この人達とどういう関係なのかしら」
    いつの間にか変身を解いていた雪ノ下が真琴に尋ねる。
    「さっきも言った通り、私の名前は剣崎真琴。ここにいる剣崎一真の妹よ」
    「あなた、何者、なの?見たところ、仮面ライダーではないようだけど」
    確かにこんなふうに素顔が見えるライダーなど知らない。そもそも仮面をしていない。
    「私は、プリキュア。伝説の戦士、プリキュアよ」
    ……プリキュア?
    その時再び俺の頭にノイズが走った。
    「プリキュア?」
    「ええ、まぁ、仮面ライダーと同じように人を助ける存在のことよ」
    「そうなの……これも姉さんがやったことに関係あるのかしら」
    「プリキュアとライダーが同じ世界で、しかも兄弟……?世界のバランスの崩壊は、思わぬところで思わぬところでも起こってるみたいだな……」
    火野先生がぼそりと一人つぶやく。
    「おいお前達、もう時間も遅い。残したことに関しては特別に許してやるからさっさと帰れ」
    店から出てきた烏丸が言う。
    「あっ、ベール!あなたまた何かしたの!?」
    「今の私はベールではない、烏丸だ。そんなことよりキュアエース、貴様もさっさと帰れ。ハート達が心配しているんじゃないか?」
    「まさかあなたに心配される日が来るとはね」
    「……今とやかく考えてもどうしようもないか、比企谷君、雪ノ下さん、ホテルに戻ろう」
    「はい」
    「わかりました」
    「……待て」
    剣崎兄が俺達を呼びとめた。
    「何でしょうか?」
    雪ノ下が冷たい声音で答える。え?お前この短時間でこの人のこと嫌いになったの?
    「悔しいことに、俺達はこの世界では大して何をすることもできない。こんなこと初対面の奴に言うようなことなのか分からないが……色々あると思うが、頑張ってくれ。どんな困難でも乗り越えられるはずだ、お前達に、ライダーとしての資格があるなら」
    「はい」
    「お~い、剣崎く~ん。僕の牛乳しらな~い?」
    「小太郎、仕方ない奴だ……」
    最後に小さなため息をつき、剣崎は俺達のもとを去っていった。
    「それじゃ、俺達も行こうか」
    今日起きた謎の頭痛と見たこともないライダーについて考えながら、俺はホテルへと戻った。
  36. 36 : : 2014/05/29(木) 12:34:24
    →→→nyさん
    そうですよね!14点は高得点ですよね!
    だってまだ下に3人いるもん!上には200人以上おるんやけどな……。
    目いっぱいありがたい指導を受けさせていただきました!
    でもな、いきなり発展問題の解説とかされても困るんやで?
    こっちは基礎ができてないんだからな(^o^)丿

    とまぁ色々ありましたが、無事追試に合格したので(数学のテストなのに補習プリントから丸ごとでるというただの暗記テスト……)多分元のペースに戻せると思います!


    ちなみにプリキュアや剣崎(一真)達は、新たな物語の伏線になっている、かも……?
    とりあえずしばらくこの話も続くので随分先の話ですけどね!

    数学苦手って親近感わきますww
    自分は模試で6点取ったことあるので僕の勝ちですね!(何の勝負だ……)
    いつもコメント本当にありがとうございます!
  37. 37 : : 2014/05/29(木) 12:55:47
    修学旅行も二日目だ。
    太秦映画村を出て、次なる目的地は洛西エリアだ。
    金閣やらなんやらがの観光スポットが数多くあるスポットである。
    俺達はタクシーに分乗して目的地へと向かっている。
    俺が乗っているタクシーには俺、由比ケ浜、戸塚、川崎。他は戸部、海老名、大岡が乗っているのと葉山、三浦、大和が乗っている物の計3台で向かっている。
    と、その時だ。
    運転手が悲鳴を上げたかと思うと、車がスリップした。
    見ると、鏡から出てきた腕に運転手が腕を掴まれていた。
    こんな時にっ……!
    俺と由比ケ浜、戸塚でモンスターの腕から何とか救出する。
    「あんたら、勇気あるね」
    川崎が称賛の声を漏らし、車の外に出る。
    「ここからはあたしがやる。来い!ホッパーゼクター!」
    川崎が叫ぶと、どこから現れたのか黄緑色の、バッタを模した小さな機械が現れた。
    「変身!」
    「Change Kick Hopper」
    全身緑で、両目が赤く光る少し不気味な姿。
    しかしそれは、見まがいようもなく、仮面ライダーそのものだった。
    「ハッ!」
    川崎は、タクシーの窓からミラーワールドへと向かう。
    「あいつもライダーだってのか……?」
    「でも、なんかあたし達とは違う感じがした。ベルトも違うし……」
    「と、とにかく。今は僕達も変身しないと」
    「っと、そうだな。一緒に頑張ろうな!戸塚!」
    「って、何でさいちゃんだけ!?ヒッキーまじきもい!」
    「由比ケ浜、いつまでバカなこと言ってんだ?……変身!」
    「ひ、ヒッキーが悪いんでしょ!?もぉ……変身!」
    「あ、あはは……大丈夫かな……変身」
    珍しく笑いながら変身したこの時の俺は、ミラーワールドの恐ろしさをすっかり忘れていたのかもしれない。
    悔やんでも悔やみきれない、あんなことが起きるなんて……。
  38. 38 : : 2014/05/30(金) 23:59:11
    ミラーワールドにいたのは赤い猪型のモンスターだった。
    先に来た川崎と様子をうかがいあっている。
    「グルアァァァァッッ!」
    耳を割くような咆哮とともにイノシシが突進する。
    「……おい、今私を笑ったか?」
    それとは対照的に川崎は落ち着いてつぶやく。
    そしてクルリと回り、敵に蹴りを放つ。
    「ライダー……ジャンプ」
    「Rider Jamp」
    ベルトに軽く手を触れて、川崎は高く跳び上がる。
    「ライダー……キック」
    「Rider Kick」
    大きな音を立てて敵が爆発する。
    「「「「グルアァァアアッッッ!」」」」
    それと同時、物陰から同種のモンスターが四体出現した。
    「なっ……こいつら群れで動くタイプか……」
    「四人で協力して倒そう!」
    由比ケ浜が陽々として言うと、すかさず川崎が返す。
    「協力して……?もうパーフェクトもハーモニーもないんだよ」
    どうやら協力するつもりはないらしい。
    「なら、一人一匹ずつってことでいいか?」
    川崎は黙って首肯する。
    「イノシシども……いいよなぁお前らは。そんなに仲間がいてさぁ」
    ……やさぐれてるなぁ。
    「じゃぁ、行くか。戸塚、危なくなったらいつでも言えよ!」
    「うん、ありがとね、八幡」
    「むぅ……ヒッキー……」
    「いいよなぁあんたらは。仲がよさそうで」
    いかん、このままでは川崎が一層やさぐれてしまう。
    「Sword Vent」
    一匹の敵に斬りかかる。
    「Swing Vent」
    「Sword Vent」
    「Rider Jamp」
    三人もそれに続く。
    イノシシの巨体と剣が衝突する。
    こいつ、かなりのパワーだな……。
    「デァッッ!」
    力に比べるとスピードはそれほどでもないので先程から何発も体を切りつけているが、ほとんどダメージが通っていない。
    「ガァッ!」
    敵が大きく体を動かすと、その衝撃で俺は空中に投げ飛ばされる。
    イノシシは俺の落下地点を予想して突進を繰り出してくる。
    こんなもんまともに食らってられるかっ!
    「Advent」
    ドラグレッダーを呼び出してその背に背中から着地しその上で体勢を戻す。
    そして頭からこちらも突進する。
    今度は相手が体勢を崩した。
    「Strike Vent」
    距離を取ってからの炎攻撃で追撃する。
    「これでっ、終わりだ!」
    「Final Vent」
    再びドラグレッダーを呼び出し、必殺技を放つ。
    「ダァァアアァァッ!」
    俺の蹴りが当たると同時、敵が爆発する。
    そして周りを見渡すと、それぞれとどめを刺すところらしかった。
    「よし、片付いたな」
    「でも、みんなでいる時でよかったね。一人の時にあんな数に襲われてたらどうなってたか……」
    「大丈夫だ、戸塚は俺が守るから」
    「もーヒッキー」
    由比ケ浜がいつものように俺を軽く叩こうとした、その瞬間。
    「Advent」
    突如として地中から黒龍が現れ、戸塚にかみつきそのまま地面に当てながら猛スピードで進んでいく。
    こいつは……ドラグブラッカ―!?
    「あぁぁぁああっ!」
    「戸塚っ!?」
    「さいちゃん!?」
    「おい!」
    龍は戸塚にかみついたまま高く舞い上がる。
    そして、少し離れたビルの屋上に吐き捨てた。
    「おい由比ケ浜!アドベントカードは使えるか!?」
    「無理!さっき使ったばっかだからしばらくは……」
    モンスターの力がなければ俺達はあそこまで登れない。
    内部の階段を使うにしてもかなりの時間が経ってしまう。
    「っ、川崎!お前のあのジャンプで何とかできないか!?」
    「あの高さはさすがに無理だ……」
    「くそっ!」
  39. 39 : : 2014/05/30(金) 23:59:18
    俺は急いで走りだす。
    とにかく今は一刻も早く戸塚のもとに行かなければ。
    俺の分身、仮面ライダーリュウガは、戸塚よりも戦闘能力が高い。
    サバイブのカードを所持しているうえ、戸塚は先程の戦いで無視できないダメージを受けていた。
    ……このままでは、確実に負ける。
    自らの出せる最大限の力で階段を駆け上がる。
    由比ケ浜と川崎は俺の後を追っていくらか下の階を上っている。
    と、その時だ。
    俺の視界に空中から落ちてくる戸塚の姿が目に入った。
    背中の翼を広げて無事着地に成功したようだ。
    それから一秒もせず、ドスンという嫌な音が聞こえた。
    リュウガが地面に着地した音だ。
    彼の足もとはかなり沈んでいる。
    あれだけの高さから落りて、少しもダメージを受けた様子がない。
    そしてリュウガは、あらかじめカードをセットしていたであろうバイザーを引く。
    『Final Vent』
    聞こえるはずなどないのに、俺の耳にその音は明瞭に聞こえた。
    リュウガの周りをドラグブラッカ―が回りながら上昇していく。
    壁を力ずくで壊し、そこから飛び出る。
    だが、……間に合わない!
    闇をまとったリュウガが戸塚に向かっていく。
    戸塚は深刻なダメージのせいか、まともに防御姿勢もとれていない。
    「やめろぉぉぉぉぉぉっっっ!」
    「でいやぁぁああぁぁっ!」
    それは、俺がつい先ほどモンスターを倒した時の焼き直しのように、リュウガの攻撃が届くと同時、大きな爆発が起きる。
    戸塚がいたはずの場所には、カードデッキ一つ落ちていなかった。
    ……何一つ、残ってはいなかった。
  40. 40 : : 2014/06/01(日) 23:20:48
    「と、戸塚ぁぁぁぁっっっ!」
    「……よぉ、久しぶりだな。ったく、お前らはダラダラしすぎなんだよ」
    「よくも、よくも戸塚をっ!絶対にゆるさねぇ!」
    「Survive」
    「Final Vent」
    「今日はもうこれ以上戦う気はない。じゃぁな」
    リュウガはドラグブラッカ―の背に乗り去っていった。
    「そんな……とつ、か……」
    「嘘、でしょ……?さいちゃんが……」
    「くっ……」
    由比ケ浜が地面に膝をつき、川崎が顔を下に向ける。
    突然の出来事に俺は茫然としていた。
    涙さえも出てこない理由は、変身しているからではないはずだ。
    その時、俺の体から粒子が流れだした。
    この世界にいられるタイムリミットが近づいた合図だ。
    「比企谷、由比ケ浜!とりあえずここを出るよ!」
    「また、守れなかった……ここで朽ちるのも俺らしいかもな……」
    「馬鹿言ってんじゃないよ!そんなことを知ったら戸塚はどう思う!あいつは自分を責めるだろ!死者への礼儀すら分からないのか!」
    「っ……」
    そうだ。今俺達が死んだら戸塚は……重い腰を上げて、三人でミラーワールドを去る。
    「と、つか……戸塚ぁあああああっっ!」
    元の世界に戻った俺は、周囲の目など全く介さずに叫んだ。
    「うっ、ううっ……」
    こうして大切な人を失うのは二度目だ。
    材木座が死んだ時、もう二度とこんなことは起こさせないと決めたのに。
    「……二人とも、とにかく旅館に戻るよ」
    半ば強引に川崎に連れられて、俺達は旅館の自室へと戻った。
    そのまま俺は何をするでもなく、無為に時間を過ごした。
    いつの間にか涙は枯れ果てていた。
    と、そんな時。
    こんこん、と、俺の部屋の扉が叩かれた。
    腕時計を見るが、まだ他の連中が戻ってくるには早すぎる。
    「失礼してもいいかしら」
    聞き間違えるはずもない、雪ノ下雪乃の声だ。
    「……何のようだ」
    「……戸塚君のことについてよ」
    「……今じゃなきゃだめなのかよ」
    無意識のうちに声が攻撃的になる。
    「わたしだってこんな状況で聞きたくはない。だけど、残念ながら私達には悲しんでる暇さえ与えられない」
    「……っ!お前わかってんのかよ!人が死んだんだぞ!」
    「わかってるわよ!だから、だからこれ以上被害を増やさないために聞いてるのよ!」
    「……そうだな、すまない。お前が正しいよ」
    「頭で理解できても、心では納得できないことがある。それは承知のうえよ。その上で、あなたに話を聞きたい」
    彼女だって、こんな話はしたくないはずだ。
    なら俺だけが悲劇のヒーローぶるわけにはいかない。
    今すべきことを全力でやる。この戦いで生き残るためにはそれしかない。
    「ああ、わかった」
    ――――
    ――――
    ――――
    「そう……あのライダー……リュウガが……また、裏で姉さんが糸を引いていたのね……」
    「俺は、止められなかったっ……」
    「自分のせい、だと?」
    「そうだろうが、俺がもっと気をつけていれば……俺の、せいだ……」
    雪ノ下の冷たい視線が俺を射抜く。そしてそれは次の瞬間、少しだけ温かみを帯びた。
    「そう思っているのは、あなただけよ」
    そう言うと雪ノ下は、ゆっくり包み込むようにして俺を抱きしめた。
    それに対する驚きが湧き上がることもなく、俺はただただ声を押し殺して泣いた。ただひたすらに、涙を流し続けた。
  41. 41 : : 2014/06/03(火) 00:37:26
    「とりあえず、今から私達がやるべきことを考えましょう。……残念だし、悔しいけれど、私達には、立ち止まり悲しむ時間すらないわ」
    俺の涙が再び枯れ果てた頃、雪ノ下が口を開いた。
    「……ああ、そうだな」
    「このライダーバトルを、一刻も早く終わらせないと……そのために、できることを」
    「……なら、戸部の告白のサポートが妥当なところか?」
    「今はそうなるでしょうね。どう転んでもライダーが一人減る」
    「ああ、そうだな……わかってる、けど……今日だけは、休ませてくれないか」
    「ええ、わかったわ……一人で、大丈夫?」
    「なめんな、何年ぼっちやってると思ってんだよ」
    「それもそうだったわね。それでは、失礼するわ」
    扉をあけると、雪ノ下がゆっくりと振り返った。
    「……あなたはもう、一人ではないから」
    そんなこと言うな。また涙が出てくる。
    「そりゃありがたいこって」
    涙は隠せていなかったかもしれないけれど、せめてもの抵抗として俺は悪態をついて彼女に背を向けた。



    翌日、修学旅行三日目だ。
    そして、戸部翔が海老名姫菜に告白する日。
    そのセッティングは俺達奉仕部が行った。
    由比ケ浜は雪ノ下のケアを受けたのか、昨日よりは随分ましな状態になっていた。
    しかしそれでも、あんなにひきつった笑顔の『やっはろー』を見るのは初めてだったし、見たくもなかったが。

    その日の昼、昼食を購入すべくコンビニに入った俺は意外な人物に声をかけられた。
    「ヒキオじゃん」
    三浦優美子、由比ケ浜と海老名の属するグループの女王にして、材木座義輝を殺害した仮面ライダー王蛇。
    俺と因縁浅からぬ相手だ。
    「あんさー、あんたら一体何してるわけ?」
    「あんま姫菜にちょっかい出すのやめてくんない?」
    俺は彼女の声には答えず、手にしていた週刊誌のページをめくる。
    「聞いてんの?」
    「聞いてる。それに、ちょっかい出してるわけじゃない」
    答える声はどうしても攻撃的になる。
    こいつらの依頼を受けなければ戸塚が死ぬこともなかったはずだ。
    実のところはこいつは依頼人ではないが、だからといって気にせずにいられるほど俺は大人ではない。
    「出してんでしょ。見てればわかっし。そういうの、迷惑なんだよね」
    「迷惑、ね。でもそうしてほしい奴もいるみたいだぜ?お前の仲良しグループの中によ」
    「はぁ?」
    「それに、お前はそれによって何か被害を受けたか?」
    「これから受けんだよ」
    「お前のくだらん推測でとやかく言われてたらたまんねぇな」
    「あんたねぇ……」
    「それに、これは葉山がやろうとしてることでもある。確認してもらってもかまわないぜ?」
    「そう……わかった。でも、あんたが姫菜にかかわるんなら知っててほしいことがある」
    「……」
    「姫菜、黙ってれば可愛いから、紹介してほしいって男結構いんのね?でも薦めても、なんだかんだで断られてさ、でもあーしてれてるだけだと思って結構しつこくやっちゃったわけ。そしたらあいつ、なんて言ったと思う?」
    「その答えが俺にわかるとお前は思っているのか?」
    しかし三浦は俺の悪態を意にも介さぬ、というよりこちらの言うことなど聞いていないようだ。
    「『あ、じゃぁもういいです』って言ったの。赤の他人みたいな感じで」
    彼女のそんな様子は、あまり彼女に対してよく知らない俺でさえ想像するに難くなかった。
    「あーし、今の関係、結構気に入ってるわけ。でも、姫菜が離れて行ったら今みたいではいられなくなる。もう一緒にばかみたいなことやってらんなくなる」
    一拍置いて、冷たい声音で彼女はつづけた。
    「だから、余計なことすんな」
    そう言い残し、彼女は俺の前を去っていった。
    お前達の幸せなど壊してしまいたいと思った俺は、嫌な奴なのだろうか。
  42. 42 : : 2014/06/03(火) 00:37:43
    日も少し暮れかかってきた。
    京都の夕日はとても美しい。
    俺は雪ノ下、由比ケ浜と合流し、告白サポート体制に入っている。
    トイレ帰りで周りを見ながら少しぶらぶらしていると、誰かに声をかけられた。
    「ヒキタニくん、はろはろ~」
    海老名姫菜だ。
    普段は隠している、醜く仄暗い瞳。
    彼女につられるように、俺は後に続く。
    歩きながら彼女は口を開いた。
    「相談、忘れてないよね?」
    「ああ、俺が間違うことはない」
    「あははっ、比企谷君おもしろいな~。……本当は間違ってばかり、いや、言うなら、間違わなかったことはない、かな?」
    「……っ!」
    「な~んてね、冗談冗談。頼りにしてるよ?」
    「……言うほど、悪い奴じゃないと思うけどな」
    「あはは、無理無理。わたし、腐ってるから」
    「ああ、なら仕方ねぇな。腐ってるんだから」
    お前は、お前達の関係は、腐敗しきっている。
    それから俺達は何も言わず、互いに背を向け歩き出した。欺瞞と悲しみに満ちた道を。


    「待たせて悪いな」
    「全然」
    「では、行きましょうか」
    由比ケ浜と雪ノ下との三人で最後の目的地へと向かう。
    嵐山。四季折々の美しい景色を見せてくれる京都一とも言われる名所だ。
    告白には、ぴったりだろう。
    実際にそれを見てみると、思わず感嘆の声が漏れた。
    写真で見るのとは全く違う。
    「すごいね、ここ……」
    「ええ、それに足元」
    「灯籠、か」
    「夜になると、竹林自体もライトアップされるそうよ」
    「じゃ、あいつが勝負すんのはそん時か」
    「ええ、なかなかいいロケーションだと思うわ。負けるにしても、せめてベストは尽くしておいた方が悔いは少ないはずだしね」
    「ひでぇいいようだな。しかし、お前がそんなこと言うとは驚きだな」
    「比企谷菌に感染してしまったのかしら……この世の終わりね」
    「比企谷菌にはバリアーは効かないからな……」
    「比企谷菌強すぎでしょ……」


    下見を終えた俺達は、修学旅行最後の夕食を終え、部屋に戻った。
    竹林がライトアップされている時間は限られている。
    そろそろ出た方がよさそうだ。
    「っべー、緊張してきたー」
    そんな戸部の背中を大和と大岡が叩く。
    その時、それまで沈黙を守っていた葉山がおもむろに立ち上がった。
    「……なぁ、戸部」
    「なんだべ?」
    「本当に告白、するんだよな」
    「ったりめぇっしょー。ここまで来て引くとか男じゃないわ―」
    「そうか……」
    事ここに至っても、葉山の態度は変わらず、か。
    盛り上がっている室内から静かに出た葉山に続いて俺も部屋を後にする。
    「やけに非協力的だな」
    「そうかい?」
    「ああ、そうさ。むしろ、邪魔されてる気がするけどな」
    「そんなつもりはなかったんだが」
    「やめようぜ、こんなくだらない上辺を取り繕うような会話は。俺達にそんなのはいらねぇだろ」
    「まるで親友同士の会話だな」
    「ハッ、冗談。ま、殺し合いする関係なんざ、下手すりゃ親友なんかよりよっぽど濃い関係かもしんねぇけどな」
    一拍置いて、俺は続ける。
    「そういうつもりじゃないというなら、どういうつもりだった?」
    「俺は気に入ってるんだ、今の関係が……」
    「三浦も、同じこと言ってたぜ」
    「なら、わかるだろ。だから俺は……」
    「それで壊れちまうんなら、その程度だったってことだろ」
    「……確かにな、でも、失ったものは戻らない」
    「まぁ、何事もなかったかのように取り繕うことはできるかもしれないけどな」
    「ああ、お前そういうの得意そうだからな」
    「……お前に俺の何が分かる」
    「お前のことを知らない俺でさえわかるほどひでぇってことだよ」
    「……」
    葉山は黙ってポケットに手を入れる。
    「今はやめようぜ?正直俺もテメェらを叩きのめしたい気分だが、お互い、今やるのは損しかない、そうだろ?」
    「……」
    葉山はまたも黙って両手をポケットから出した。
    「お前はそう言うが、得ることよりも失わないことが大事なことだってあるだろ」
    「そりゃそうだ、でも、今回のことに関しては到底そうは思えないけどな」
    「はぁ……やめよう。俺達が一緒にいるとろくなことが起きない。……俺はもう行くよ、戸部をよろしく」
    俺は黙って、決して道の交わることのない男の背中を見送った。
  43. 43 : : 2014/06/03(火) 12:32:14
    竹林の中にぽつりと灯籠がともっている。
    これこそが、戸部翔のために用意された舞台。
    くしくも彼は近くに実物があるこの場所で清水の舞台から飛び降りることとなる。
    「……戸部」
    「おぉ、ヒキタニ君。っベーわ―、マジ緊張するわ―」
    「……お前、振られたらどうする気だ?」
    「えぇ……今それ聞いちゃう?聞いちゃう感じぃー?あ、なんか緊張解けてきたわ―。ヒキタニ君やるなー、アロマセラピーって奴?」
    俺がいつアロマを使ったんだ……?
    「いいから、早く答えろ。大事なことだ」
    「……そりゃ、諦めらんないっしょ」
    彼は珍しく真剣な表情で言う。
    「俺ってさ、こういう適当な性格じゃん?だから、今まで適当にしか付き合ったことねーんだ。でも、今回は違うっていうかさ」
    「そうか、なら、頑張れよ」
    「おお!センキュな!やっぱヒキタニ君いい奴じゃん!」
    それに対する返答はせず、雪ノ下と由比ケ浜のもとに戻る。
    「ヒッキーいいとこあるじゃん」
    「随分らしくないことをするのね」
    「そういうことじゃないんだがな……このままいけば、まず間違いなく戸部は振られる」
    「そう、だね……」
    「おそらくそうなるでしょうね」
    「丸く収める方法が、無いでもない」
    「どんな?」
    由比ケ浜が首をかしげて尋ねてくる。だが、それを今言うわけにはいかない。
    「……まぁ、あなたに任せるわ」
    聞かないでくれるのはありがたかった。
    と、その時、誰かの足音が聞こえてきた。
    言うまでもない、海老名姫菜だ。
    それを戸部が緊張の面持ちで迎える。
    「あの……」
    「うん……」
    遠くから見ているだけで胸が痛む。
    一瞬、この手で命を奪った少女のことを思い出し、更に俺の気分を暗くする。
    戸部は振られる。これはネガティブ思考とかそういうものではなく、もはや揺るがない事実だ。
    そしてその後は、互いに何もなかったかのようにふるまって、そして自然と交流が無くなって行くのだ。
    ……今はだめでも、未来は違うかもしれない。
    今ここで砕けるのではなくて、もう少し、ゆっくりと距離を詰めていったならばあるいは。
    「俺さ、その……」
    戸部の声に海老名は何も答えない。
    戸部を振られないようにし、かつ彼らグループの状態を現状維持させる。
  44. 44 : : 2014/06/03(火) 12:49:21
    方法は一つ。
    重要なのはタイミング。
    「あのさ……」
    戸部が意を決したように口を開いた。
    行くなら今だ。
    戸部の後ろから海老名姫菜に声をかける。
    「ずっと前から好きでした、付き合ってください」
    言われた海老名は目を丸くしている。
    そりゃそうだ、何なら俺もびっくりだ。
    だが彼女は、すぐに今言うべき言葉を理解したらしい。
    「ごめんなさい、今は誰とも付き合う気がないの。例え誰にどんなシチュエーションで告白されても絶対につきあう気はない。それじゃ」
    クルリと背を向け、小走りで彼女は去っていった。
    「だとよ」
    「マジか―……。ヒキタニ君、そりゃないっしょ―……あんまりっしょー。まぁ、振られる前にわかってよかったけどさ」
    大きくため息をつき、
    「でもま、今はって言ってたし?俺、負けねーから」
    そう言い残し、彼もまた去っていった。向かう先には大和と大岡がいた。
    葉山も戸部の後を追う。すれ違いざま、彼は小さな声で呟いた。
    「……みじめだな」
    「誰のせいだよ」
    その憐れむような表情には耐えられなかった。
    怒りで飛び出しそうになる拳を必死で押さえる。
    あわただしく皆が去っていき、残っているのは俺と雪ノ下、由比ケ浜だけになった。
    冷たく糾弾するような視線で雪ノ下は俺を睨む。
    「……あなたのやり方、嫌いだわ。上手く言えなくて、とてももどかしいのだけれど……あなたのそういうやり方、とても嫌い」
    「ゆきのん……」
    一人、彼女は去っていった。
    俺は、返すべき言葉を持っていなかった。
    「あたし達も、もどろっか」
    一歩遅れて由比ケ浜が俺の後をついてくる。
    「いやー、あれはだめだったねー」
    「そうだな」
    「結構びっくりだった、一瞬本気かと思っちゃったもん」
    「んなわけないだろ」
    「でも、もうこういうことやめてね」
    「ならお前は、お前達は、何かほかに策があったってのか?」
    「それは……」
    「あれが一番効果的だった、それだけのことだ。それに俺は、あいつらとの間でいくら確執が生まれようが溝ができようが関係ないしな」
    「……そういう問題じゃ、ないよ」
    「なら、どうすればよかったんだ?」
    いけない、と自分でもわかっている。これは完全な奴当たりだ。
    「考えもなしに、人の批判ばかりするな、お前も、雪ノ下もだ」
    「けど、けどさ……人の気持ち、もっと考えてよ」
    「誰の気持ちをだ?ああしたことで誰かが傷ついたのか?」
    「……なんでいろんなことが分かるのに、それがわからないの?」
    「お前と雪ノ下に気を使ってほしかったと言っているのか?目の前で同じ部活のメンバーが傷つくのを見るのは罪悪感があるから、ってか?」
    「……バカ」
    幼子のような弱々しい声で呟き、彼女は俺の先を歩いていった。
  45. 45 : : 2014/06/03(火) 21:29:36
    八幡はもう自分が傷つくと誰が傷つくか本当は分かってるじゃないだろうか?気付いてるのに表に出さない感じがいかにも高校生って感じがしますけど。八幡はBUMP OF CHICKENの「ギルド」とか聞いて欲しいなぁ.....いや伝わんないと思うけど(笑)
  46. 46 : : 2014/06/03(火) 23:35:17
    →→→nyさん
    わかった上で、それでも気付かないふりをしないとやってられないんでしょうね……
    身近な存在を失い、数少ない友からは責められて……。
    彼にとってのハッピーエンドにしたいです!
    龍騎のままなら最終回前に……
    ところで今回ガハマさんが……
  47. 47 : : 2014/06/03(火) 23:35:58
    視界から由比ケ浜が消えたことを確認した俺は、その場に膝をついた
    心に負担がかかることが立て続けに起きすぎている。
    「ほんと、どうすりゃよかったんだろうな……」
    と、その時、不快な音が頭に鳴り響く。
    モンスター襲来の合図だ。
    「……ありがたい」
    モンスターにならどれだけ当たっても問題ないはずだ。
    今は、こうやって呆けているのが一番嫌だ。
    「変身!」
    ミラーワールドで俺を待っていたのは、先日と同種の、三匹の猪型モンスターだった。
    「いくぞ」
    「Sword Vent」
    「らぁぁっ!」
    一匹の右腕に攻撃が当たると、横から突進を喰らわされる。
    「クソが……」
    「Strike Vent」
    龍頭の武器を振り回し、炎を撒き散らす。
    だが、イマイチ聞いていないようだ。
    「グルァァッ!」
    再び突進を喰らい、体が宙を浮く。
    「このままじゃラチがあかねぇ」
    俺の体を美しい炎が包む。
    「Survive」
    「一気に終わらせる」
    「Final Vent」
    ドラグランザーに飛び乗り、猪たちを焼き、轢き殺す。
    爆発が起き、必殺技を使ったことにより、俺は通常体へと戻る。
    ドラグレッダーが三つのエネルギー球を取り込もうとしたその時、突如として現れたサイトコブラのモンスターによってそれを横取りされた。
    「なっ……」
    「ヒキオー、随分なめたまねしてくれたじゃん、余計なことはしないんじゃなかったの?ま、それをなしにしても、あーしずっとあんたのこと殺したかったんだよね」
    そう言って、王蛇は俺に襲いかかってきた。
    「テメェなんかに!」
    「Sword Vent」
    剣と剣とがぶつかる。
    だが、こちらは戦闘終わりで、さらにサバイブ使用直後であるため、持つ力全てを出すことができない。
    明らかに押されている。
    「オラッ、こいつもくらいな!」
    「Strike Vent」
    右手に自らの剣、左手に材木座のメタルホーンを持ち、三浦の攻撃はさらに苛烈さを極めた。
    「くそっ……」
    「Guard Vent」
    こちらの攻撃の手を緩めることは相手にさらに攻撃のチャンスを与えることになり、決して良い手ではない。
    だが、それを考慮したうえでも、これが最善手だった。
    「はっ」
    「Advent」
    背後からベノスネークが現れ、毒液を吐きだす。
    とっさに体を守った盾が嫌な音を立てて溶けていく。
    やばい……。
    「Strike Vent」
    右手に再び龍頭の武器を装備する。
    「それであんたの武器終わりっしょ?」
    「Steal Vent」
    いつかのように、ドラグクローを奪われる。
    しまった、このカードの存在を完全に失念していた。
    ドラグクローを装備するに当たり、剣は消えてしまった。
    つまり俺にはもう武器がない。
    「オラオラオラッ!」
    そんな俺に三浦は遠距離から炎攻撃を繰り出してくる。
    「くっ……」
    完全に手詰まり。
    このままでは確実に負ける。
    「ほらよ」
    そう言って三浦がメタルホーンを地づたいにこちらによこしてきた。
    「なんのつもりだ」
    「拾いなよ、こんなんじゃつまんないっしょ」
    敵の情けを受けるとは癪だが、武器がなければまともに戦うことすらできない。
    俺がかがんだその時だ。
    「Advent」
    現れたメタルゲラスの強烈な突進を喰らう。
    先程受けたイノシシの攻撃よりも遥かに威力は上だ。
    「ぐッ……がっっ……」
    地面を転がる。
    「はっはははっ、ほんっと、バカだよねー。あんた、もう終わりなよ」
    「Final Vent」
  48. 48 : : 2014/06/03(火) 23:36:18
    ベノスネークが再び現れ、王蛇が飛び上がる。
    この姿勢からでは、よけられないっ!
    「ダァァァァッッ!」
    足を激しく動かしながら、接近してくる。
    俺が死すら覚悟したその時だ。
    「危ないっ!」
    後ろから勢いよく背中を押され、俺は前に倒れ込み、その攻撃を受けずに済んだ。
    しかし、
    「あああぁぁぁぁぁっっっ!」
    聞き慣れたその声。
    俺は恐る恐る後ろを振り返った。
    そこには、王蛇のファイナルベントを受けて吹き飛び、変身が解除された仮面ライダーライア、由比ケ浜結衣の姿があった。
    「由比ケ浜ぁぁああああぁぁっっ!」
    「あんたはまだ殺すつもりはなかったんだけどなー、ま、いっか。それじゃぁね。バイバイ、結衣」
    去ってゆく三浦など視界にも止めず、由比ケ浜のもとに駆け寄る。
    「ヒッキー……」
    とりあえず、ミラーワールドから出さなければ!
    「待ってろ、今、救急車呼ぶから!」
    スマホを取りだした俺の手を由比ケ浜は優しく握り、小さく首を横に振った。
    「もう、無理だよ……ごめんね、つらい思いさせちゃったね……」
    「馬鹿、謝るな!諦めるな!」
    「えへへ、好きな人の腕の中で死ぬなら、あたし、幸せ者かもね」
    「馬鹿、なんだよそれ、そんなの聞いてねぇよ。生きろ!生きろよ!生きて、もう一度っ……」
    そう言う俺の顔を見て、由比ケ浜は優しく笑う。
    「お前の占いは当たるんだろうが……わからなかったのかよ……」
    「本当はね、次に消えるライダーは、ヒッキーだったんだよ。好きな人を助けられたんだから、こんなに幸せなことはないよ」
    そう言って、由比ケ浜は最期の力を振り絞るようにして姿勢を起こした。
    そしてそのまま、俺の唇に自分のそれを重ねた。
    「あたしの占いが、やっと、外れる……」
    「由比ケ浜ぁぁぁっっ!」
    彼女がその目をあけることは、二度と無かった。
  49. 49 : : 2014/06/03(火) 23:36:35
    次回予告
    今回から意味もなく次回予告をします。基本あんまりあてになりません。

    Open Your Eyes For The Next Botti
    一色「私も仮面ライダー、オルタナティブです」

    雪ノ下「あなたが、由比ケ浜さんをっ……!あなただけは、生かしておかない!」
    「Survive」

    陽乃「ガハマちゃんを救う方法が、ひとつだけあるよ?」
    「Time Vent」

    三浦「忌々しいライダーの亡霊が……」
    「Unite Vent」

    戸部「そんな、隼人君、なんで……?」
    葉山「君は大切な人だから、君を殺せば英雄にまた一歩近づける」

    リュウガ「お前はもう、消えろ……」

    雪ノ下「本当に守るべきものを、あなたも見つけなさい」
    八幡「あいつの為に、ライダーを倒さなきゃいけないなら……」

    戦わなければ生き残れない!
  50. 50 : : 2014/06/05(木) 19:23:21
    面白かったです、そして作者さんお疲れ様です。
    とりあえず次回にも期待してます、余談ですが葉山さんが退場フラグビンビンなので下手したら『隼人だけにライダーキラーになって復活するんじゃないの?www』と勝手に想像を膨らませたりしてます・・・
  51. 51 : : 2014/06/08(日) 22:11:04
    →→→マシュマロ大使さん
    コメントありがとうございます!
    葉山はどうなるんでしょうね……。龍騎本編の様に英雄として死ねるのでしょうか……
    最期に彼が守りたい物とは、何なんでしょうね……
    そして、由比ケ浜を失った奉仕部は。
    各々の目的の為に戦うそれぞれのライダーは……。
    更に加速するライダーバトル!
    どうぞご期待ください。

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