このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
【856年】命を育む者ーコニー.スプリンガーー
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- 1 : 2014/04/20(日) 13:50:28 :
- 前作より4年前のお話です。
前作同様、登場人物、ストーリー共に私のイメージと妄想のみで書かれておりますので、ご了承くださいませm(_ _)m
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- 2 : 2014/04/20(日) 14:22:57 :
- ー壁外第1コロニー牛舎ー
コニー「ようサシャ、どうだ?マリアの様子は」
サシャ「あ、コニー、おはようございます。今の所大きな変化はないですが、だいぶお乳が張ってきてるので、近いうちにお産になりそうですね」
コニー「そうか…なんか落ち着かねぇな…」
サシャ「マリアは仔牛の頃からコニーが大事に育ててきた娘ですからね」
コニー「おう、こいつの子は絶対オレが取り上げてやる」
サシャ「頼もしいお父さんでよかったですねーマリア」
笑顔で母牛の背中を優しく撫でていたサシャだが、不意に真顔になると、コニーを見た
サシャ「ねぇコニー?あなたまた身長伸びました?」
コニー「ん?さすがにもう伸びないだろう」
サシャ「そうですかね…まぁ、かなり前に抜かされてからは、あまり気にしてはいなかったんですが…」
少し上目遣いでコニーをみあげる
サシャ「1.8m級…」
コニー「…なんだよ…」
サシャ「いや、こんな風にコニーを見上げる日が来ようとは…なんだか感慨深いと思いまして…」
コニー「バカ言ってるんじゃねぇよ。元々お前が、女にしてはデカすぎたんだ。アニやクリスタはオレより小さくて可愛かったんだからな」
サシャ「ふふふ、でも男の子の成長ってすごいですね。私たち女の子は5.6年前から身長も姿も大して変わってないのに…」
コニー「そんなもんじゃないのか?さぁオレは朝飯食ってくる。サシャも交代が来たら、少しは休めよ」
サシャ「ありがとうございますコニー。行ってらっしゃい!」
コニーを見送ったサシャは、出産を控えて気が立っているマリアの神経を逆撫でしないように、そっと優しくその背中をさすり続けていた
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- 4 : 2014/04/20(日) 14:51:36 :
兵士1「マジかよ!お前とうとう…」
兵士2「まぁな、お前らに先越されて黙ってる訳にはいかないしな」
兵士3「やっと男になったかー!」
コニーが食堂に着くと、入り口からほど近い場所で、通路を塞ぐように立ち話しをしている兵士たちの姿が目に入った
コニー「おいお前たち、こんなところに突っ立って話してたら、邪魔になるだろ」
兵士2「は!班長!」
兵士1「すみませんっ!」
慌てて道を開け、敬礼をする兵士たちに向かって怪訝な視線を向ける
コニー「朝っぱらから何を騒いでるんだ?」
コニーの問いに、まだ入団して間もない新兵たちは、モジモジとバツの悪そうな表情を浮かべている
コニー「…なんだよ、オレに言えないようなことなのか?」
数々の戦いを生き抜いてきた尊敬する班長の問いただすような視線を受けて、耐えられなくなった新兵の1人が、歯切れ悪く口を開いた
兵士2「えと…実は自分…先日の休暇に花街に出掛けまして…」
コニー「……?」
兵士1「そうなんですよ。やっとこいつも男になる儀式を終えたっていうんで、ちょっと盛り上がってしまいまして…」
コニー「…??」
兵士2「すみません!班長みたいにカッコ良くてイケてる方から見たら笑っちゃうようなことなんでしょうけど…」
コニー「…???」
兵士2「でももう自分も立派な男になりましたので、これからは班長のようなカッコいい大人になりますっ!」
コニー「…??????」
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- 5 : 2014/04/20(日) 15:07:35 :
- ーーその夜
コロニーを拠点に、その周辺の調査に出ていたアルミンが、自室で書類をまとめていると、ノックの音と一緒にコニーの思いつめたような声が聞こえた
コニー「おい、アルミン、ちょっといいか?」
アルミン「コニーだね。どうぞ」
中に迎え入れてみると、声と同様、いつもの様子とは全く違うコニーの雰囲気に、アルミンは思わず居住まいを正した
アルミン「一体どうしたんだい?コニー」
コニー「なぁ、アルミン」
アルミン「ん?」
コニー「アルミンは物知りだから、教えて欲しいんだけどよ…」
アルミン「あぁ…うん。僕にわかることならなんでも聞いて」
悪い知らせではなく、単なる質問であることが分かって少し安心したアルミンは、彼の不安を和らげるような笑顔を浮かべた
しかし書類整理に夢中で、すっかり冷えてしまった紅茶を一口口に含んだアルミンは、コニーが放った
コニー「『ふでおろし』ってなんだ?」
の一言に、その紅茶を盛大に書類の上に吹き出したのだった…
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- 6 : 2014/04/20(日) 16:09:58 :
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アルミン「ゲホゲホ…コ…コニー今なんて?!」
コニー「新兵たちが話してたんだよ。後、『花街』ってやつ」
訓練兵になってからの付き合いとはいえ、寝食を共にしてきた古い仲間のとんでもない質問に、ただただ驚いて目を丸くするアルミン
そんな彼に無邪気な同期生は、トドメを刺すように言った
コニー「あ、後、『男になる為の儀式』ってなんだ?」
アルミン「………………」
アルミン(落ち着け…落ち着け僕…コニーだって、男女の営みがどういうものか知らない訳ではないはずだ…。おしべとめしべの話からする必要はないよね…?)
アルミン(いや、そこからなのか?大体こんなことは、もっと若い頃に友達同士の会話の中で………あ!……そうか……)
この間約0.5秒
伊達に正解を導き出すことが出来る男と呼ばれている訳ではない
この奇妙な一連の流れをすっかり理解したアルミン
アルミン(だけど…言い方次第ではコニーを傷つけてしまうかもしれないな…これは言葉を慎重に選ばないと…)
コニー「どうした?オレ、なんかおかしなこと聞いちまったのかな?」
アルミン(まさかこの歳になって、同期とこんな話をすることになるとは…エレンの戦術的価値を説いた時以来のプレッシャーだよ…)
そして一呼吸
覚悟を決めたアルミンは、落ち着きを取り戻した笑顔でその口を開いた
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- 7 : 2014/04/20(日) 16:37:16 :
ーー1時間後
コニー「そっか…そういうことか…」
アルミン「まぁ、僕もそういう事には疎い方だけどね…」
コニー「なんか恥ずかしくなってきたぞ…いい歳して、こんなことも知らなかったなんて…新兵だって知ってるのにな」
アルミン「コニー、さっきも言ったけど、そんな事は気にしなくていいんだよ。彼等と僕たちは生きて来た時代が違う。歳自体はそう変わらないけど、彼等が花街や男になる為の儀式の話をしていた年頃には、僕たちは生死をかけた戦いの中にいたんだから」
コニー「まぁな、落ち着いた後も、復興や開拓でそれどころじゃなかったしな…」
アルミン「うん、その通りだよ」
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- 8 : 2014/04/20(日) 16:45:19 :
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コニー「なぁ、アルミンは花街に行ったことがあるのか?」
アルミン「え?!いや…僕は無いけど…」
その時神のようなタイミングでノックの音がし、報告書を片手に持ったジャンが入室してきた
ジャン「おう、アルミン、書類出来たぞ」
アルミン「あぁ、ありがとうジャン。そこに置いておいて。後で確認するから」
ジャン「ん?珍しいなコニー。お前がこんなところにいるなんて」
アルミン「ちょうど良かったよ、ジャン。コニーに花街の話をしてあげてくれないかな?」
ジャン「花街?なんだ、コニーもようやく色気付いてきたのか」
からかうようにジャンが笑う
コニー「別にそういうワケじゃねぇけどよ…」
アルミン「コニー、ジャンはかなり花街で浮名を流してるらしいから、きっと色々教えてくれると思うよ」
アルミンは一見無邪気そうに見える笑みを浮かべて、そう言った
ここに彼の幼馴染みたちがいたら、またアルミンの悪い癖が出たと、ため息を付いただろう
コニー「へぇ、なんだよジャン、いつの間に…」
ジャン「こういうことは、口で教えるようなことじゃないんだけどな。感覚っていうか…才能っていうかな。まぁ、俺ほどの奴になると…ーーー」
コニー「………」
コニーがアルミンの耳元に口を近づける
コニー「なぁアルミン…ずっと昔に、こんな光景見たような気がするのは、オレの気のせいか?」
アルミン「いや…コニー、君の記憶は正しいよ…」
自慢気に花街での武勇伝(?)を語るジャンを横目で見ながら、アルミンは紅茶で汚れてしまった書類の書き直しをするのだった
アルミン(ジャン…1年前先輩兵士に花街に誘われた時、ミカサに申し訳が立たないから行けないと断った君が、3人がかりで引きずられて行って、ベソをかいていたことは…内緒にしておくよ)
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- 10 : 2014/04/20(日) 17:07:51 :
ーー翌日
サシャ「コニー!」
コロニーから少し離れた牧草地で、牛たちを放牧していたコニーの元に、馬に乗ったサシャが駆け込んできた
コニー「おう、どうした?」
サシャ「マリアが破水しました!もうお産が始まりますよ!」
コニー「ほんとか?!って、お前、ついてなくていいのかよ!」
サシャ「大丈夫ですよ。仔牛が出るまではまだかかります。それに、早馬なら私より早い兵はここにはいませんからね」
コニー「確かにな」
コニーは牛と一緒に放していた自分の馬を指笛で呼ぶ
コニー「おい、お前ら、後は頼む。今日は早目に牛舎に戻って来い」
馬に跨りながら指示を出したコニーは、サシャと一緒にコロニーに向かって走り出した
コニー「マリア…大丈夫かな…」
サシャ「大丈夫です。そもそも私たちが手伝えるのは、出産中にトラブルがあった時だけです」
コニー「あぁ」
サシャ「お母さんは、誰に教わったわけではないのに、ちゃんと赤ちゃんを産めるんですよ」
コニー「なんかすごいよな…」
サシャ「そうですね。ふふ」
そうこうしてるうちにコロニーに着いた2人は、真っ直ぐにマリアのいる牛舎へと向かった
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- 12 : 2014/04/20(日) 17:30:14 :
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母牛を驚かせないように静かに見守る
コニー「マリア、がんばれよ」
極限まで張り詰めた大きなお腹
それを支える脚はふらつき、呼吸も心なしか苦しそうに見える
サシャ「ここまで来たら、私たちはマリアを信じて見守るしかないです」
コニー「…おう」
永遠に続くかと思われた緊迫した空気は、突然の鐘の音で壊された
その音のけたたましさに、母牛はビクリと身体を震わせる
コニー「なんだよ、こんな時に」
兵士「コニー班長、4m級の通常種一体が、コロニーの西方から牧草地の方に向かって進行中です」
駆け込んで来た兵士が、場所をわきまえた様子で、小声でコニーに報告する
コニー「牧草地に着く前に仕留める。馬を回せ」
兵士「はっ」
サシャ「コニー、私も行きます」
サシャの申し出に、コニーは首を振った
コニー「ダメだ。お前はマリアを見ててやれ。お前は実家で馬のお産を見てただろ?他の奴らは皆、出産の初心者ばかりなんだからな」
サシャ「じゃあ、兵舎にいるジャンを呼んで来ますから、少し待ってて下さい」
コニー「時間が無い。牧草地にはまだ兵が残ってるんだ。先に出るぞ」
言いながら、手早く装備を確認すると、熟練度の高い2人の兵士の名を呼んだ
コニー「ケビン、ジェイク、補佐に付け!」
「はっ!」
コニー「4m級の通常種一体ぐらい、ジャンが来る前に片付けてやるさ」
それでも心配そうなサシャの頭にポンと手を置くと、笑顔で言った
コニー「マリアを頼むぞ」
サシャ「分かりました。コニー、くれぐれも気をつけて…」
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- 15 : 2014/04/20(日) 20:11:19 :
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エレンの持つ力と、ハンジ団長、アルミンが立案した大規模な巨人討伐作戦のお陰で、現在巨人と遭遇する確率は格段に減ってきている
それでも全ての巨人が駆逐されたわけでは無い以上、このように迷い込んできた巨人との戦いは、今の時代になっても、避けては通れない道だった
船を使って物資を供給する都合上、基本的にコロニーは川に近く、立体起動の利を生かせる森や林を包括している土地に作られる
コニーたちのコロニーにも森はあったが、今回現れた巨人をそこに誘い込むには、コロニーを回り込む形で、長い距離誘導しなくてはならなかった
コニー「森に誘導する時間が勿体ねぇ、このままいくぞ」
コニーは馬を走らせながら、2人の兵士に向かって指示を出す
コニー「お前らは脚の腱を削げ。オレが仕留める」
兵士「はっ!」
この2人なら、平地であっても、巨人の身体を上手く使って充分に補佐を務められるだろう
全速力で馬を駆り、巨人の後ろに回り込んだ3人は、一斉にその巨体に向かって飛んだ
巨人の腰にアンカーを打ち、戻す勢いに乗って脚の腱を削ぐケビンとジェイク
バランスを崩し、前のめりに倒れかかった巨人の背中を駆け上がって、項を削ぐ
コニー「よしっ!」
無事討伐を終え馬に跨ったコニーに、ケビンが叫んだ
ケビン「班長!黒の煙弾です!」
コニー「何っ?!」
見ると、櫓の上から黒い筋が一本伸びている
その隣、西側の低い位置にもう一本
コニー「オマケもついて来やがったのか…」
黒い煙弾…奇行種は、動きが早く行動が読めない為、立体起動の利をフルに使って、撹乱しつつ仕留める必要があった
コニー「森まで連れて行く!ついて来てくれるかは、運次第だけどな…」
先程までは余裕が感じられたコニーの口調にも、緊張が混じる
それを感じて身体を固くする2人の兵士
ジェイク「来ました!7m級!」
ケビン「速いっ!!」
コニー「走れっ!」
巨人をギリギリまで引きつけ、その鼻先で手綱を切る
コニー「よしっ、ついて来た!このまま森まで行くぞ!」
兵士たち「了解!」
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- 16 : 2014/04/20(日) 20:39:38 :
- コニー「この調子だったら、追いつかれる心配はなさそうだな」
順調に誘導できていると思った
次の瞬間
奇行種の身体が大きく跳ねた
コニー「跳んだ?!」
そしてそのまま、一番後方を走っていたジェイクを掴みあげる
ジェイク「うわぁぁぁぁ!!!!」
コニー「ジェイク!」
人の骨が折れる嫌な音…
奇行種は大きく裂けた口を開けると、コニーの大切な部下を飲み込もうとした
コニー「くそぉ!!」
馬上からアンカーを噴出させると、一気に肩口まで駆け上がり、体重をかけた深い斬撃で腕を切り落とす
すかさずケビンが腕の落下地点に駆け寄り、蒸気をあげる巨人の手から、ジェイクを助け出した
奇行種は肩に止まったコニーに向かって、うるさいハエでも払うかのように、もう一本の手を伸ばす
それをギリギリのところでかわすが、暴れる奇行種の上にいては、バランスを保つだけで精一杯だった
「コニー!」
その時、ジャンが兵士たちを引き連れて、コロニーの方向から全速力でこちらに向かって来ているのが見えた
コニー「ジャン!」
ジャンが連れて来た5人の兵士たちは、自分の役割が身についているかのような、無駄のない動きで奇行種に取り付くと、その四肢を切り刻んでいく
機動力を失った巨人は、それでももがくように身体を震わせたが、コニーの目の前でジャンの手によってあっさり項を削がれた
ジャン「大丈夫か?」
コニー「オレは大丈夫だ」
そしてジェイクとケビンがいる方へと目をやる
そこには、肩を落として項垂れるケビンの姿と、静かに横たわるジェイクの姿があった
コニー「……」
ジャン「とりあえず戻るぞ。放牧地の連中にも、牛を置いて戻るように伝えてある」
コニー「………」
コニーは黙ったままジェイクの身体を抱き上げ、そのまま自分の馬に乗せると、コロニーへの道を戻っていった
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- 18 : 2014/04/20(日) 22:16:58 :
ーーその夜、兵舎裏ーー
サシャ「コニー、こんな所に居たんですか」
サシャは黙ったままのコニーの隣に腰を下ろした
サシャ「今日は…本当にお疲れ様でした。ジェイクの事は、明日ジャンがご家族に報告に行くそうです」
コニー「……」
サシャ「マリアもとても頑張って、立派に可愛い仔牛を産みましたよ」
コニー「……」
サシャ「今回は立ち会えなかったけど、次はきっと一緒に赤ちゃんを取り上げましょうね」
コニー「……」
サシャ「……」
2人の間に流れる重い沈黙を破ったのは、戻ってから一度も口を開くことのなかったコニーだった
コニー「オレさ…今日仲間が死ぬのを見たんだ…」
サシャ「…はい」
コニー「凄くショックで…凄く悲しくてよ…」
サシャ「…はい」
コニー「でもさ…よく考えたら、オレたちもっとたくさんの人が死ぬのを見てるんだよな…」
サシャ「……そう…ですね…」
コニー「だけどさ…あの時はこんな気持ちにはならなかったんだ…」
サシャ「……」
コニー「凄くたくさんの人たちが…まるで雑草みたいに踏み潰されて…食われていくのを見ても…オレ…生きてて良かったって気持ちの方が強くて…オレ…」
不器用に、それでも懸命に言葉をつないでいくコニーの目からは、大粒の涙がほろほろと流れていた
サシャはそんなコニーの頭に手を伸ばすと、自分の胸に抱いて優しく言った
サシャ「コニー、もういいです。もう何も言わないで…」
サシャの言葉に、力強く首を振るコニー
コニー「いや、言わせてくれ…サシャ…聞いて欲しい…」
サシャ「コニー…」
頭をサシャに預けたまま、コニーは言葉を絞り出した
コニー「…オレの村…母ちゃんや家族が巨人に食われたかもしれないって時も…今の気持ちとは全然違ってた…」
コニー「きっとオレ、おかしくなってたんだ…あんな風に死んじまった人にも家族がいて…みんな母ちゃんが命がけで産んだ命で…大切に育ててもらった命で…なのに…なのに…あんなに簡単に…」
いつの間にかサシャの瞳からも涙がこぼれ落ちていた
コニー「今ならちゃんと分かることが、あの時のオレには分かってなかった…オレは…やっぱり馬鹿なんだな…」
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- 19 : 2014/04/20(日) 22:26:08 :
- サシャ「コニー、私もコニーと一緒です…
でも一人一人の死を深く悲しんでいたら、私たちは今ここに居なかった」
コニー「…」
サシャ「私たちには後ろを振り返る時間は無かった。前に進むことだけで精一杯で、失ったものを顧みる余裕は無かったんですから…」
コニー「でもよ…でも…」
サシャ「ねぇコニー、失ってしまった命は、どれだけ悲しんでも、もう戻っては来ないんです」
コニー「…!」
サシャ「だから…何年経っても、何年かけても、繰り返し彼等を思い出して、その生きた証しが消えないように…その死が無駄にならないように、生きていくことが私たちの務めなんです」
サシャは胸に抱いたコニーの頭に手を置いた
サシャ「悲しむのはゆっくりで大丈夫。彼等は逃げたりしませんから」
コニー「サシャ…」
サシャ「なんですか?コニー」
コニー「………お前…強いな…」
コニーの言葉に、サシャは泣き笑いになった
サシャ「ふふ、コニーは私よりずっと大きくなったのに、子どもみたいです…」
コニー「うるせぇ………もう少し…こうしてていいか?」
サシャ「いくらでもどうぞ」
サシャの暖かい腕に包まれて、その手でそっと頭をなでられながら、コニーは声をあげて泣き続けた
やがて…泣き疲れて眠りに落ちかけたコニーの耳に、優しく囁くサシャの声が聞こえた
サシャ「コニー、女の子はね…お母さんになる為に強くなっていくんよ…」
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- 21 : 2014/04/20(日) 23:49:59 :
- ーー翌日
ジェイクの実家に向かおうとしたジャンの所に、コニーがやって来た
コニー「ジャン、オレも行く」
見るとその瞼は、泣きはらした後のように赤く腫れている
ジャン「大丈夫なのか?」
コニー「大丈夫だ」
ジャン「そうか…なら行くぞ」
ジェイクの実家までの道程は、2人共会話もなく、ただ黙々と馬を進めた
半日掛で市街地にある実家に着くと、そこには彼の両親とまだ幼い妹が揃って昼食をとっていて、悲しい知らせを運んで来た2人を出迎えた
始め母親は、息子の早すぎる死を受け入れられない様子で放心していたが、やがて悲しみの波に飲み込まれ、ジャンとコニーを罵倒しながら泣き叫んだ
幼い妹は、そんな母親を心配そうに見上げながら、それでもずっとそのそばから離れず、父親はそんな妻の肩をしっかりと抱きながら、2人に向かって静かに頭を下げた
そして帰り際、見送りに出た父親は2人に言った
父親「今日は息子の為に、わざわざお越し頂いてありがとうございました。妻の言ったことはお気になさらないで下さい。」
真っ直ぐに、強い決意を秘めた瞳で2人を見つめる
父親「妻も娘も私がしっかりと守ります。そして、必ず彼女の笑顔を取り戻してみせますので…」
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- 22 : 2014/04/21(月) 00:05:48 :
帰り道、どこか晴れやかな顔をしたコニーはジャンに言った
コニー「ジャン、オレ、父ちゃんになる!」
ジャン「……?なんだお前…馬鹿だと思ってたけど、本格的におかしくなったのか?」
コニー「かっこいい男になんかならなくてもいいんだ。父ちゃんみたいに、大切なものを育てて、守っていけるようになりたい」
ジャン「お前が今育ててるのは牛だぞ?牛の父ちゃんになるのか?」
コニー「牛もだけど……オレより若い兵士たちもだ。これからはあいつらを絶対死なせたく無い」
ジャン「……そうか」
ジャンはそんなコニーを眩しそうに見ると、からかうような口調で言った
ジャン「じゃあ、花街はお預けだな」
コニー「なっ?!なんでだよ!」
ジャン「だってお前は男より父ちゃんになりたいんだろ?だったら母ちゃんになってくれる相手を見つけるまで、お預けだろう」
コニー「うむ…そっか…なんか勿体無い気もするけど…しょうがねぇ」
ジャン「……納得したのかよ…やっぱり馬鹿だな…」
コニー「てめえ、人のこと馬鹿馬鹿言うんじゃねぇ!」
ジャン「はっ、すまないな、俺は正直者なんでね」
「コニーーー!ジャンーーー!おかえりなさーい!!」
見上げると、櫓の上から大きく手を振るサシャの姿と、その背後に真っ赤に沈みかけた美しい夕日が2人を迎えてくれていた
fin
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- 23 : 2014/04/21(月) 00:07:23 :
- いい話だなー(/ _ ; )
-
- 24 : 2014/04/21(月) 00:13:02 :
- コニーはライナーに憧れていたようですし、兄貴越えのまさかの父ちゃん宣言をしてしまった…というお話でした。
砂糖楽夢さん、楽しんで頂けたようで良かったです♪いつもありがとうございます(^-^)
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- 25 : 2014/04/21(月) 00:13:30 :
- 名無しさんもありがとうございます(。-_-。)
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- 26 : 2014/04/21(月) 00:41:06 :
- 感動した。
もう、号泣ですよ……。
次回作も期待してます、おつかれさまでした(^-^ゞ
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- 27 : 2014/04/25(金) 12:57:08 :
- 執筆お疲れ様でした。前作のジャンのエピソードから拝読しておりましたが、今作も本当に素晴らしかったてす。
前半の花街の流れから後半の生と死の話への変遷に、はっとさせられました。
この2作のタイトルからして、何作かのシリーズものになっているのでしょうか?
もしそうでしたら、続きにも大いに期待しております…!
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- 28 : 2014/04/26(土) 14:48:21 :
- submarineさん、丁寧なご感想ありがとうございます(。-_-。)
三部作の予定で始めたので後1話ありますが、なかなか納得がいくものに仕上がらないので書き直しを繰り返しております…
ご期待に添えるかどうかは分かりませんが、頑張ります(>_<)
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- 29 : 2014/04/28(月) 13:34:27 :
- 前作、読ませていただきました。とても心が晴れるお話でした。今回の作品はコニーの優しさが感じられます。次回作も頑張ってください。とても期待しております。
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- 30 : 2014/04/28(月) 23:17:18 :
- 蘭々さん、ありがとうございます(^-^)
私にとっては、コニーとサシャは癒し要員ですね〜大好きです(。-_-。)
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
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