このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
モブリットの日記帳
-
- 1 : 2014/04/17(木) 13:35:51 :
- モブリットの日記帳
題名通り、モブリットが日記を書いていきます
ネタバレは単行本
よろしくお願いいたします
-
- 2 : 2014/04/17(木) 13:38:18 :
- きた!!期待!!
-
- 3 : 2014/04/17(木) 13:40:30 :
- 皆さんこんにちは
私はモブリット・バーナー
調査兵団で分隊副長をしている、しがない兵士
モットーは、努力、忍耐、諦め
特技は、絵を描くこと
あだ名は…モブ、珍獣使い
そんなごくありふれた私の日記なんて、なんの面白味もないけれど、つらつらと書いていこうと思っているよ
-
- 4 : 2014/04/17(木) 13:49:30 :
- 4月17日
今日は暖かい日だ
午前中に買い出しがてらトロスト区の商店街に行ったよ
街の人たちがじろじろ見てくる…そりゃそうだ
だって私の隣には、変人で有名なハンジさんがいるんだから
ハンジさんは、私の上官
第四分隊長、調査兵団の幹部中の幹部
見た目はスラッとした体型で、顔も中性的で、一見性別が分かりづらいが、紛れもなく女性
普通にしていれば素敵な女性だとは思うけど…
いかんせん行動が常軌を逸する事が多々あって…
今日も町中をスキップで練り歩いて、注目を浴びていた
-
- 5 : 2014/04/17(木) 13:56:48 :
- 「分隊長、普通に歩けませんかね…」
私はついつい苦言を呈する
無駄に目立ちたくは無いし…
「普通に歩いているけど?」
そういいながら、またもやスキップし出す分隊長
―そうそう、どうせ私の言うことなんて聞きやしないんですよ、この人は
諦めてはぁ、とため息をつくと、分隊長は私に視線を向ける
「君はため息ばかりついてるね。眉間にはいつも皺が寄ってるし…ふけちゃうよ!?」
って、誰のお陰でこんなにため息ばかりついてると思ってるんですかね…
まあ、半分諦めているから、いいんだけどね…
-
- 9 : 2014/04/17(木) 17:16:23 :
- 買い出しも、普通の日用品ならばそんなに時間はかからないんだけど、今日の目的は、作戦に使用する新捕獲兵器の材料探し
問屋や商店をくまなく、日中いっぱい回り、やっと目星をつけることができた
調査兵団とはいえ、壁外に出ていない時はこうして、地道に活動しているんだ
さすがにスキップしていた分隊長…ハンジさんも疲れたのか、ふらふらと弱々しい歩き方になっていた
「大丈夫ですか?ハンジさん」
私は心配になって、顔を覗き込んだ
顔には疲れが出ていた
「うん、大丈夫だよ。ちょっと冷えてきたね」
春真っ盛りとはいえ、夕方から夜はまだ冷たい風が吹く
今日の風も、ひんやりしていた
「そうですね、風邪をひくといけない、早く戻りましょう」
そう言った私の兵服の袖を、ピンピンと引っ張る分隊長
私は怪訝そうな顔を、分隊長に向けた
-
- 10 : 2014/04/17(木) 17:24:35 :
- 「お腹すいた、モブリット」
甘える子どもの様にあどけない表情を見せる分隊長
私はこの顔をされると、反論が出来なくなる
それを知って、こういう表情を見せる訳ではないんだろう
ごく自然に溢れ出す、生き生きとした表情
それに、自然に惹かれていく自分
いいや…頭を振る
私はただの部下だ
このどうしようもない人の背中を守る
この人の下につく事に決まり、初めて話をした時
そう決めたのだから
-
- 11 : 2014/04/17(木) 17:41:36 :
- 結局分隊長に押しきられる形で、屋台の軽食を買って、公園のベンチで食べていた
「美味しいねえ!!モブリット!!」
魚のフライをパクつきながら、顔を綻ばせる分隊長
「それは、良かったです」
私は極力感情を表に出さない努力をした
「モブリットはどうして、美味しいものを美味しそうに食べないのかなあ!?」
少々唇を尖らせる分隊長
「…いえ、美味しいですよ。ただ、なんだか食欲が無くて…」
こめかみをおさえながら、呟く
体もなんだかだる重い気がした
「食欲がないの?今日動き回り過ぎたから、疲れたのかなあ」
そう言って、分隊長は私の額に手を伸ばして、触れた
-
- 13 : 2014/04/17(木) 17:56:01 :
- 「モブリット、おでこが熱い気がするよ…」
分隊長が眉をひそめた
「そうですか?大丈夫ですよ」
そう言いながら、鼻をずるっとすする
「風邪ひいたんじゃないの?モブリット」
今度は私の額に、自分の額をくっつける分隊長
「…モブリット、やっぱり熱いよ…?帰ろ!!」
分隊長はそう言うと、私の前に背中を見せてしゃがみこんだ
「…分隊長、何を?」
「おんぶ、してあげる、早く乗って?」
私は余計に頭痛が酷くなった気がした
だけど、冗談でやっているわけではないとわかっているので、言葉に出してはこう言った
「歩けますから、大丈夫ですよ。ご心配お掛けしてすみません、分隊長」
「…そっか。なら、早く帰ろうね?」
そう言って手を差しのべる分隊長
私はその手を、握ることが出来なかった
-
- 21 : 2014/04/17(木) 23:50:30 :
- 兵舎に戻ると、直ぐ様ハンジさんは医務室へ私を連れていった
「疲れが溜まっている様ですね。あとは、風邪です。薬を出しますね」
私は薬と体温計、氷のうを手に、部屋に戻った
何故か分隊長が、後をついてきた
…部屋の中まで
「分隊長、一人で大丈夫ですから、部屋にお帰り下さい。うつるといけませんし」
私はそう言いながら、タンスから着替えを取り出した
「だめだよ。夜になったら絶対熱はあがるよ?だから看病してあげる」
…余計に疲れそうな気がする…とはさすがに言えないので、笑顔になってみる
「ほら、元気ですし、大丈夫ですよ?」
「無理して笑ってるよ?モブリット。ほら、さっさと着替えた着替えた!!」
分隊長は私の兵服を脱がそうとした
「ちょ、それは自分で出来ますよ!!」
私は慌てて身を翻した…が、ふらついてしまう
「わっと…大丈夫?」
倒れそうになる私の手を、しっかりと握る分隊長
その手は、氷を触っていたからか、ひんやり心地よかった
-
- 22 : 2014/04/18(金) 00:28:47 :
- 寝間着に着替えると、直ぐ様ベッドに押し込められた
布団をかけ、氷のうをおでこに置いて、口に体温計を加えさせてくれた、分隊長
「モブリット、ごめんね。無理をさせちゃったみたいだね」
分隊長が、ベッドの横にある簡素な椅子に腰を下ろして、小さく呟いた
その表情は、なんとも申し訳なさそうだった
「いえ…大丈夫ですよ、分隊長」
「もっと、早く気がついてあげれたら良かったね…ほんとにごめんね」
分隊長は項垂れた
「…大丈夫ですよ、謝らないで下さい。あっ…」
口を開きすぎたせいか、ぽろっと口から体温計が外れてしまった
分隊長は、素早くそれを拾い上げ、確認した
「落ちちゃったね…熱は…38度7分もあるよ…やっぱり明日は休んでね?モブリット」
分隊長はそう言って、私の額に手で触れた
ひんやり冷たい感触に、私は目を閉じた
「すみません、分隊長…」
「大丈夫だよ、明日は真面目に頑張っておくから!!勿論ご飯は持ってきてあげるし!顔も覗きに行くよ。モブリット、寂しいだろうしね」
分隊長は、そう言って笑った
-
- 27 : 2014/04/18(金) 07:36:33 :
- ※熱出しモブリットは、lineスタンプの可愛いモブリットからイメージしました
可愛いスタンプなので、是非一度見て下さいね♪
-
- 28 : 2014/04/18(金) 08:39:58 :
- 「さ、モブリット、目をつぶって…お休みなさい」
分隊長は、私の瞼を指でそっとなぞった
くすぐったいその感触は…幼い日に母に寝かしつけられる時に、よく感じた事を思い出した
「熱…これ以上上がらなきゃいいんだけどな…」
分隊長の手が、尚も額と瞼を撫でる
急速に…睡魔が襲ってきた
「…おやすみなさい…分隊長…」
「おやすみ、モブリット」
温かい何かに包まれるかの様な
久しぶりの、一人じゃない夜は
静かに更けて行った
-
- 29 : 2014/04/18(金) 08:55:50 :
- 4月18日
自分の体をまさぐる感覚で、ふと目が醒めた
「…ん…?」
「あ、ごめんね。起こしちゃったか…汗、凄いからさ、着替えさせてあげようと思って」
まだぼんやりとした視界の中に、寝間着姿の分隊長が入っていた
「分隊長…って、わ、わ、わ」
私は焦った
そして完全に目が醒めた
いつの間にか寝間着を脱がされ、上半身真っ裸だったからだ
分隊長は、タオルを持って首を傾げている
「どうしたの?汗、拭いてあげてたんだけど…」
きょとんとしたその表情のあどけなさ
変に意識した自分がなんだか、すごく恥ずかしくなった
「あ…はい、すみません…分隊長。ありがとうございます」
しどろもどろで何とか言葉を発した
その言葉を聞いた分隊長は、輝くような、笑顔を見せる
「いや、どういたしまして!!さ、新しいシャツを着てね」
私の上官は、変人だ
どうしようもない程暴走するし、手がつけられない程に、怒る事もある
私がいくら諌めても、言うことを聞いてくれない
だけどね…
やっぱり私の上官は、この人しか、いないんだ
-
- 32 : 2014/04/19(土) 09:07:42 :
- 翌朝、目を開けるとすでに朝日がカーテンの隙間から差し込んでいた
体を起こすと、まだ気だるい感じは残っていた
「うーん、よく寝たな…って!!もう七時半!!完全に遅刻じゃないか…」
呆然とする…今まで一度だって時間に遅れたことが無いだけが自慢だったのに…
あっ、それは当たり前の事か…
私は慌てて兵服に手を伸ばす
服はいつもハンガーに掛けていたが、今日はなぜか畳まれて、椅子の上に置いてあった
「そうか…分隊長が…あれ?」
兵服の上に、一枚のメモが置いてあった
内容は…
『モブリットおはよう。ゆっくり眠れたかな?たとえ動けそうでも、今日は一日大人しく部屋にいるんだよ?出てきたらお仕置き!!食事は持っていってあげるからね』
分隊長の筆跡
お仕置きって何だろうな…
ちょっと興味本意で試してみたい気もしたけど、怖いから止めておこう
寝間着から、楽なシャツとズボンに履き替え、もう一度ベッドに潜り込む
二度寝って幸せだ…
布団の中でごろごろしている間に…
またいつの間にか眠っていた
-
- 43 : 2014/04/20(日) 15:21:57 :
- つんつんつん…
何かが頬をつつく感触で目が覚める
「…?」
なんだろう、と目を開けると、目の前に爽やかな笑顔の美人がいた
「おはよう、モブリット。朝食持ってきたよ?」
「あ、おはようナナバ。わざわざすまないね」
頬をつついていたのは、ナナバ
柔らかな美貌を持つ女性兵士だ
「いや、ハンジに頼まれてね。ノックしても返事がないからさ、死んでるのかと思った」
ふふ、と笑みを浮かべるナナバはとても魅力的だ
「もう、かなり元気なんだ。昼からは任務につくよ」
私の言葉に首を振るナナバ
「駄目だよ?ハンジが、モブリットは絶対そう言うから、止めてと言われてるんだ。約束やぶったらお仕置きだそうだ」
「…そうか…」
正直、寝ているのに飽きてきたし、分隊長がまともに仕事をしているのかも気にかかるし…
「あのさあ、私、すっごく気になるんだよね…お仕置きって言うのが」
ナナバがいたずらっぽく言った
「…ろくでもない事をやらされると思うよ…例えば巨人にキスをする…とかさ…」
考えただけで震えた
「言い付け、破ってみようか?ね、だってハンジの仕事振りだって気になるでしょ?」
ナナバは目を輝かせた
確かに気になる…
「お仕置きはともかく、もう熱もないし…仕事に復帰するよ」
朝食を平らげ、念のためにもう一度熱を測り、問題がなかったので、任務につく事にした
-
- 53 : 2014/04/20(日) 23:26:04 :
- 「モブリット、本当に大丈夫?熱は無くてもしんどいなら、無理はしないでよ?私がハンジに怒られるよ」
心配そうな顔を私に向けるナナバ
「なんだいナナバ、お仕置きが気になるから仕事しろって言ったのは、君だろ?」
「…ま、まあそうだけどさ…」
ナナバは口ごもった
「ま、本当に大丈夫だから心配いらないよ。早速分隊長室に行ってくるよ」
私はそう言うと、部屋を出た
そんな私の後ろ姿に、ナナバが艶やかな声をかける
「モブリット~元気になったらお酒のみに連れていってよ!!」
「ああ、わかった(他のナナバファンに睨まれそうで怖いけど…)」
そんな感じで、ナナバと私はたまに酒を酌み交わす仲だ
親友と言っても差し支えないだろう
凄く男性にもてるのは勿論、中性的で美しいために、女性にももてる
羨ましくない訳ではないが、私はそこまでもてたい願望がないからね
ただナナバの柔らかな笑みは、見るものを癒す効果があると思う
-
- 70 : 2014/04/23(水) 11:20:28 :
- 分隊長室へと足早に向かう私
分隊長はきっちり仕事をしているだろうか
周りの人を困らせてはいないだろうか
そんな不安が胸をよぎる
こんこん、と分隊長室の扉をノックする
「どうぞー」
なかから聞き馴染みのある声がした
私は部屋に入る
「分隊長、すみませんでした。もう熱も下がりましたので今から仕事に復帰させていただきます」
私は敬礼をしてそう言った
分隊長は執務机に向かって、一人書類の処理をしていた
顔を上げて、ぎろりと私を睨みつける
「モブリット?私は手紙を置いておいたとおもうんだけど。読んだよね?」
剣呑なまなざしを私にむけてくる分隊長
「は、はい」
私は後ずさりしようとして失敗する・・・そうだ、ここは扉の前だった
「モブリット、こっちにきて」
分隊長が手招きをするので、恐ろしいが仕方なく執務机に向かう
分隊長の横に控えるように立つと、いきなり襟首をつかまれて引き寄せられた
分隊長の空いた手が、私の額に触れる
「熱は、無いね・・・」
分隊長はふう、と息をついた
その息はおもいきり私の首筋にかかって、一瞬どきっとした
「はい、熱はさがりました」
分隊長はやっと私の襟首を開放したので、はだけかけた兵服を直しながらそう言った
「でも、私は熱が下がっていても、今日は休んでね、と書いたはず。出てきたらお仕置きだとね」
分隊長はまた目つきを鋭くした
「はい・・・そうでした」
私は恐れおののきながらも、頷いた
-
- 71 : 2014/04/23(水) 11:34:36 :
- 「なら、覚悟はできてるかな。モブリット」
剣呑なまなざしを私に向けながら、立ち上がる分隊長
「・・・いえ、できていません」
私は思わずそう言った
本気で怖かった
分隊長がたまに自分を失う瞬間がある、ほんとうにたまにだが
その時の顔を似ているような気がしたからだ
「覚悟しなさい、モブリット」
分隊長はそう言って、あろうことか私の体をベットに押し倒した
「ちょ、ちょ、ちょっと、分隊長?!」
どこからか取り出した紐で、私の手を縛る
暴れたつもりだったが、病み上がりで力がまったく入らない
「仕方ないよね、約束を、守らなかったんだから。君が、悪い」
分隊長はそう言って、私の耳にふうっと息を吹きかけた
今から何をされるのか、そんな事よりも
場違いな耳朶の熱さを何とかしたいと、そう思った
-
- 72 : 2014/04/23(水) 11:46:45 :
- 「分隊長・・・何を」
私は顔の熱さを感じながら、うめくような声を出した
「モブリットの声、低くて好きだな」
分隊長が突然そんなことを言い始める
「あ・・・そうですか、ありがとうございます」
なんとなく、お礼を言ってみた
私の上によいっしょっとまたがる分隊長の姿を視界にとらえながら、身をよじる事は可能なはずなのに、それをしない自分がなんだか情けないやら恥ずかしいやら、複雑な思いで推移を見守った
「さて、お仕置きだけど・・・何をすると思う?」
艶やかな笑みを浮かべながらささやく様に話す分隊長
メガネの奥の瞳が、怪しく輝いていた
「わ、わかりません・・・」
「本当に、わからないの?モブリット」
分隊長は耳元に顔を近づけ、吐息交じりにそうつぶやいた
私はもう、これから行われる事がなんであるか、それを考えただけで、体が熱くなるのを感じていた
-
- 73 : 2014/04/23(水) 11:56:02 :
- 「覚悟してね、モブリット」
分隊長のその言葉に、もう目を閉じるくらいしかできない私
目を閉じたその瞬間
突然体のある部分をまさぐりはじめる分隊長
その部分とは・・・
「ちょちょちょちょ・・だ、だめですよ・・・あひゃ・・・ひゃひゃひゃ・・・分隊ちょ・・・」
脇の下を、おもいきりくすぐられていた
「ほらほらほら、泣くまでやめないからねーwうふふ」
「ちょちょと本当にやめt・・・うわぁぁぁくすぐった・・・あひゃひゃ」
「笑い方面白いなぁ・・・wかわいいよw」
結局小一時間体中をくすぐりまわされて、お仕置きは終了したのだった
-
- 80 : 2014/04/24(木) 11:15:34 :
-
「モブリット?どうだった?」
やっと手首の拘束を解かれて、体も解放された私に、艶やかな笑みを浮かべながらそう問いかける分隊長
「どうって・・・なんだか疲れましたよ・・・」
私はベッドの上に座り込んで、はぁとため息をついた
「そっか・・・刺激が強すぎたかな?」
いたずらっぽい笑みを浮かべる分隊長は、私は恨めし気な目を向ける
「刺激といいますか…まあ、もうお戯れはおやめ下さいね」
私はなんだかとてもいらだっていた
なんででしょう・・・よくわかりませんが
まあ、いいんです、不条理な事って私の周りにはたくさん起こりすぎていて、なにが普通なのかすら、わからなくなっているんですから
「・・・あれ?なんだか顔が赤いよ?モブリット」
分隊長が、また顔を私に近づけてきた
「も、もう近寄らないでくださいよ・・・」
私は思わず後ずさった
私をなんだと思っているんでしょうね・・・
ペットか何かと勘違いされていそうです、ほんと
-
- 81 : 2014/04/24(木) 11:15:49 :
- 分隊長は逃げるような私に手を伸ばし、また額に手を当てた
温かい手から感じるぬくもり・・・それに触れていると不思議と安心した
「モブリット・・・また熱が上がってるよ?ちょっと休んだ方がいい、本当に・・・ここで寝て?どうせ見てなきゃまたおきてくるだろ?君は、いつも無理をするから・・・」
そう言うハンジさんの表情は、憂いを秘めていて、私に有無を言わせる余地など、見当たらなかった
「・・・分隊長すみません」
「・・・あやまらないでくれよ、たまには休んでね?モブリット」
分隊長はそう言うと、私の体の立体起動ベルトを手際よく外していった
私は自分でしますと言おうとしたが、折角の好意だし、ここは素直にじっとしている事にした
「私がじっとしていなかったから、悪いんですね」
「そうだよ、ばかだねモブリット・・・さ、全部外れたよ、ブーツを脱いで・・・はいおやすみなさい」
そう言って、また私の瞼を優しく撫でおろす分隊長
心地良いその感触に、私は身体がふわりと浮かぶような、そんな感覚になった気がした
睡魔が私を支配するのに、さして時間はかからなかった
-
- 86 : 2014/04/26(土) 12:06:23 :
- 巨人が大きな口を開けて、私に襲い掛かってくる
その口が、私をぺろりと飲み込む
「うわぁぁぁあぁあ」
私は、そこで人生の幕を下ろす
そう、巨人の胃袋の中で・・・
「・・・はっ」
「モブリット?大丈夫?うなされてたみたいだけど・・・」
どうやら私は夢を見ていたようだった
しかし、リアルな夢だったな・・・
その私の不安を感じとってか、分隊長が心配そうに私の顔を覗いていた
「だ、大丈夫です・・・変な夢をみてしまったもので・・・」
「へぇ・・・どんな?」
分隊長は私の額の汗をタオルでそっとぬぐいながら、問いかけた
「…巨人と戦って、ぱくりと食べられて・・・胃袋の中に入る話です」
私がそう言うと、分隊長は突然ガッツポーズをした
-
- 87 : 2014/04/26(土) 12:06:57 :
- 「モ、モ、モブリット・・・胃袋ってどんな感じだった?ねぇねぇ教えて?!」
突然顔を紅潮させ、ベッドに寝る私の上に馬乗りになって顔を私に近づける、分隊長
・・・ああ、キレてしまったか
こうなってはもはや手は付けられない
落ち着くのをまつしかない
そう、嵐が過ぎ去るのを戸締りを厳重にした家の片隅で、じっと待つように・・・
「分隊長近すぎます・・・」
「早く、教えてよ!!!」
私の言葉を聞くどころか、ますます顔を近づける分隊長
「ですから・・・あまり覚えていないのですが・・・」
「だったらもう一回寝て夢をみて?ねぇねぇ」
・・・だめだ、取りつく島もない
ここは本当に思い出して語るしかないな
「あのですね・・・胃の中は、暑かった…様な気がしますね。蒸気か?もやがかっていたようにみえました」
「ほうほうほう!!!!」
興奮気味に、ますます私の顔に自分の顔を寄せる分隊長
・・・はぁ、いい加減にしてほしい・・・
「ですが、夢の話ですよ?現実ではないんですから・・・そこのところはき違えないでくださいよ?」
「だってさ、妙にリアルじゃないかー。そ、そうだ、いい事を思いついたぞ!!モブリット、一回巨人に食べられてよ?!ロープかなんかでつないでおいてあげるからさ、口を大きく開けたソニーの中にはいるんだ!!どうかな!」
・・・ちょっと、この人何言ってるんでしょうか
私に、死ねと言っているのでしょうか・・・
-
- 88 : 2014/04/26(土) 12:07:21 :
- 「・・・分隊長、それは私に死ねと命令していると解釈してよろしいので?」
私はことさら冷たくそう言い放った
分隊長はきょとんとした
「いや、死なないよ?ちゃんとロープで・・・」
「そのロープ、巨人の胃液に耐えられるように、つくられているのでしょうか?どんな、胃液なのかもわからないですよね?もし人間の酸とはちがう、毒の様な液だったらどうします?私は死にますよね。ああ、死ねと命令されるなら仕方がありませんが・・・」
私は捲し立てる様に言った
まだ熱があるというのに、あまりにひどい言葉
さすがに我慢の限界が来た
「そんな、死ねだなんて言ってないよ、モブリット」
さすがに興奮状態がおさまってきたのか、少し冷静になりはじめた分隊長
「・・・言っていい事と悪い事があります、分隊長。先ほどの提案は、言ってはいけないことです」
私の上にうまのりになったままの分隊長に向かって、静かにそう言った
「…うん、モブリット・・・ごめん。またおかしなこと言っちゃった」
分隊長は項垂れた
「わかってくださればよいのです」
私はほほ笑んだ
「モブリット・・・ごめんね。死んだら、いやだよ」
分隊長はそう言うと、顔を近づけて、私の頬に唇を落とした
「・・・とりあえず、のいてもらえませんか・・・重たいんです」
私のその言葉に、分隊長は
「本当に、のいてほしいの?モブリット」
艶やかな声で、そう言うのだった
-
- 92 : 2014/04/28(月) 10:41:17 :
-
「はい、退いて欲しいです、分隊長。私は熱が、あるんですよ?」
私の言葉に、はっとする分隊長
「そうだった、ごめんモブリット」
分隊長はそう言って、すぐさま私の上から退いた・・・と思ったら、今度は隣に寝転んだ
・・・何を考えているんでしょうか、この人は
「分隊長、仕事の続きをなさってください」
「私も眠たくなってきちゃったから、添い寝ー」
「・・・貴女が寝るなら、私は貴女のかわりに仕事をします。熱が高いのですが、もう仕方がありません。貴女のせいで熱が上がりすぎて死ぬかもしれませんが、それはそれで、本望です」
私はそう言うと、体を起こしてベッドから降りようとした
その私の体を、また布団に押し付ける分隊長
「冗談だよ、ちゃんとやるから、寝ていて?モブリット」
そう言って、ふわりと私の頬を撫でる分隊長
「はい、すみません分隊長」
「それと・・・死んだら嫌だよ?私のせいで死んで本望は、もう言わないでね、冗談でも、いやだ」
分隊長は真摯なまなざしを私に向けながら、憂いを秘めた表情でそう言葉を発した
「・・・わかりました。すみません言葉が、過ぎましたね」
「いや、いいんだ。気持ちは、うれしいからさ」
そう言って、また艶やかな笑みを浮かべる分隊長に、私は限りなく愛に近い感情を抱いているのかもしれないなと思った
-
- 94 : 2014/04/29(火) 15:00:23 :
- そうだ、分隊長はいつも部下の事を気にかけている人なんだ
たくさんの仲間が目の前で食われていく現実を目の当たりにして、いつしかその心が壊れかけて暴走するようになった
やらなくてもいい無茶を壁外でやらかしたり、その結果部下をまた犠牲にしてしまったり・・・
とにかくこの人はいろいろな体験をしてきた
この人の下についてはや5年
巨人を目の前に無茶をする分隊長と
こうして熱を出している部下にいたわりの言葉をなげかける分隊長
この両者はどちらもまぎれもなく分隊長
無茶をさせないためには、巨人の謎を解明し、巨人におびえなくて済む世界にするしか、道はないのかもしれないね
そのために私たち調査兵団は、日々戦い続けているんだ
-
- 95 : 2014/04/29(火) 15:19:38 :
- そんなことを考えているうちに、急に眠気が襲ってきた
分隊長は執務机で、書類と格闘している
どうやら集中しているようだ…この分だと、わざわざ私が監視していなくても大丈夫だろう
私は眠気に身をゆだねることにした
・・・どうか巨人に食われる夢は見ませんように
「ん・・・」
目を覚ますと、薄暗い部屋の天井が目に入った
身体を起こす・・・まだすこし脱力感はあるが、体のだる重い感じはかなり抜けてきてたようだ
執務机に目をやると、夕焼けから夜に変わろうとしている日の光を背に、分隊長は机に突っ伏して寝ていた
私はそっと起き上がり、布団を片手に執務机に近寄った
分隊長はメガネをかけたまま、顔を横にして寝ていた
書類は・・・ほとんどが処理されているようだった
「分隊長」
私は小さな声でそう呟いて、そっとメガネをはずし、机に置いた
その少し・・・というかかなり乱れた髪に、ほんの少し触れてみた
ばっしばしだ、今日は無理やりにでも風呂に入ってもらわないとな・・・
でもその前に・・・この人にも睡眠は必要だ
手に持った布団をそっと背中にかけて、まだ処理されていない書類の整理に取り掛かる事にした
-
- 98 : 2014/04/30(水) 13:11:10 :
- ハンジさんはすーすーと穏やかな寝息を立てて寝ていた
本当に幸せそうだ
見ているこっちが心が温かくなる気がした
そう思いながら、書類をぱぱっと処理していく
身体のだるさもまだ少し残って入るが、逆にふわふわと心地いい
書類数枚を処理して、本日の仕事は終了した
窓の外は夕焼けから夜にすっかり移り変わっていた
カーテンを閉め、室内灯を灯し、少しだけ部屋を明るくする
そろそろ夜の7時、夕食の時間
まだ心地よさそうに寝ている分隊長をそのままにして、食堂に食事をとりにいった
あの分だとまだしばらくは寝るだろう
分隊長室に夕食を持ってきておけば、起きればすぐに食べられる
・・・まあ、冷めてしまうけど、それは致し方ない
-
- 99 : 2014/04/30(水) 13:11:20 :
-
その間を縫うように、食堂のおばさんのところへ行こうとすると、横合いから声がかかった
「モブリット、一緒に食べないか?」
そう声を書けてきたのは、ケイジだった
ケイジは私と同じ、第四分隊に所属している兵士だ
ハンジ分隊長の直属の部下にあたる
隣にはもう一人、黒いおかっぱ頭の女性がいた
彼女はニファ
同じく第四分隊に所属している兵士で、女だてらに調査兵団の精鋭として活躍している
「ああ、ありがとう。でも分隊長に食事を持っていかないといけないんだ」
私がそう言うと、ニファは少し表情を曇らせたように見えたが、気のせいだろう
「そうか、いつもご苦労だなぁ・・・ハンジ分隊長の世話・・・」
ケイジが心底気の毒そうに、私を見た
「いや、今日は分隊長は仕事を頑張っておられてね、だから休んでもらっているんだじゃあまた明日」
私はそう言い残して、食事を受け取り分隊長室に戻った
-
- 100 : 2014/05/02(金) 15:06:00 :
- 私が部屋に帰ると、まだ分隊長は寝たままだった
食事のトレイを二人分机に置き、そっと執務机に歩み寄った
まだ、スースーと規則正しい寝息をたてていた
昼寝にしては遅い時間
風呂にも入ってほしいし、食事もとってほしいし・・・
夜寝れなくなっても困るし・・・
私は意を決して分隊長を起こすことにした
掛けてあった布団をベッドに戻して、肩をぽんぽんとたたく
「分隊長、起きてください。夕食ですよ」
「う、うーん」
そう言葉を発したが、また眠りについてしまった
・・・よほど、疲れているのかな
私はもう一度、今度は少し強めに背中をとんとんとたたいてみる
「分隊長、夕食もってきました。起きてください」
「う、あ・・・モブリット?」
分隊長は目をこすりながら、むっくりと体を起こした
けだるげな表情が、何故か私のどこかを刺激したような気がした
「起きましたか、分隊長、夕食食べてください。まだ温かいうちに・・・」
「あ、うん、書類・・・最後までやれてなかったのに、やってくれたの?ありがとうモブリット」
「少しだけでしたからね、よく、がんばりましたね、分隊長」
そう言う私に、分隊長は手を伸ばす
その手は私の頬を撫でる
まるで、誘う様に
「モブリットに褒めてもらうと・・・なんだかうれしいね。なんだか、背中がむずかゆいけどね」
そう言って、いたずらっぽく笑うのだった
-
- 101 : 2014/05/02(金) 15:19:49 :
- 食事を平らげた後、半ば無理やり浴場に連れて行った
「分隊長、髪の毛を綺麗に、ぴかぴかに、洗ってきてくださいね。体も隅々まで、いいですか?」
私は石鹸とタオルを分隊長に手渡しながら諭すように言った
「めんどくさいよ・・・モブリット、一緒に入ろ?」
「・・・ここは男湯と女湯がわかれていますね」
「ああ、そうだね」
「一緒に入るとなりますと、あなたが男湯に入るか、私が女湯に入るかのどちらかの選択になるわけですが」
「ああ、そうだよ。君が女湯に入るんだよ」
「・・・ちかんで即憲兵団につかまりますね」
「うん、そうかもね」
「・・・じゃあ一緒に入りましょう」
私は分隊長の首根っこをつかんで、男湯の方に移動しようとした
「うああ、冗談だよ冗談!私がちかんでつかまっちゃうよ!!」
「いいんじゃないですか?ちょっと憲兵にお仕置きでもされれば、おとなしくなりそうですし」
「いやだよいやだよ・・・ごめんてば!は、な、せーーー!」
分隊長は私の腕を振りほどいて、あとずさった
「では、おとなしく入ってくださいね、分隊長」
「ああ、わかったよ、モブリットは怖いなぁ・・ほんと」
「やっぱり男湯・・・」
「うそだようそ、モブリットは優しい!行ってきまーす!」
分隊長はあわてて女湯に入っていった
風呂一つ入れるためにこの騒動・・・
普段の行動がどれほど大変なのか、もうわかるよね・・・
-
- 106 : 2014/05/07(水) 10:35:41 :
- 「モブリットーーーーー!」
湯船につかってのんびりしていると、女湯からけたたましい叫び声同然の声が響いてきた
「・・・」
私は聞こえないふりをした
「モブリットったらぁぁぁあ!!返事をしろーーーー!」
「・・・」
聞こえない、聞こえない
すると、隣で湯船につかっていた人物が、つんつんと私の肩を叩いてきた
「副長・・・返事してやらなきゃずっとうるさいまんまですよ・・・きっと」
そう言ってきたのは、同じハンジ分隊所属のケイジだ
同じ分隊なだけあって、分隊長の人となりを十分すぎるほど知っている人物だった
「ああ・・・わかってはいるんだけどね・・・風呂にいる時くらい忘れたいというか・・・」
肩を落としながらそういう私に、気の毒そうな表情を見せるケイジ
「よく、わかりますよ、副長・・・ご苦労様です」
「ああ、ありがとう」
そんな会話をしていると、また叫び声が
「モブリットーーーー!!ナナバがすっげープロポーションなんですけどぉぉ!!」
「ちょっと、ハンジやめてよ!!」
「・・・」
聞こえない
「副長・・・ゆっくり入れそうにないですね」
「ああ、仕方ないね。先に上がるよ。そしたら静かになるだろう」
すると、ケイジが大きく息を吸い込んだ
そして・・・
「分隊長ー!!モブリット副長はもう風呂を出られましたよー!!なのでいくら叫んでも返事はありませーん!」
そう叫んだ
「ありがとう、ケイジ。じゃあゆっくりな」
私はそう言い残して、ゆっくりつかれなかった風呂に別れを告げた
-
- 116 : 2014/05/14(水) 11:02:21 :
- 風呂から上がり、しばし壁にもたれかかって分隊長が出てくるのを待つ
ほとんど温まっていない身体ではあったけど、また一人の時にゆっくり入るとしよう
…さしあたって汚れはそぎ落とせたしね
しかし、ナナバと一緒に入っているのか
え、いや特になにも含みがあるわけじゃないけど、プロポーションがどうのとか言ってたね、分隊長
・・・いやいや、何も考えていないよ、断じて、うん
まあ、男なんてものはしょせんそんな物なんだよ
と、開き直ったところで、分隊長が風呂から上がってきた
「モブリットーお待たせ!ゆっくり浸かれた?」
・・・ゆっくり浸かれるわけがないじゃないか
と心の中で思いつつも、口には出さないのが私の副官としての流儀
「はい、おかげ様で」
その時、後ろからでてきたナナバが口を挟んでくる
「ゆっくり浸かれるわけがないじゃない?男湯に向かって大声で叫んでさ・・・恥ずかしかったでしょ?モブリット」
「あ、ああ・・・恥ずかしかった・・・かもしれないね」
「ええーーーモブリットがちっとも返事をしないから死んでるのかと思っただけじゃないかー」
分隊長は頬を膨らませた
「うそだよ、完全に愉しそうな顔しながら叫んでたじゃない?私までネタにしてさ・・・もう」
ナナバははあ、とため息交じりに言葉を発した
「だよね・・・はぁ」
私もつられてため息をついた
「二人ともなんだよー。まるで私が悪いみたいじゃないか!」
分隊長のその言葉に
「貴女が悪いよ」
「分隊長が悪いです」
ナナバと私の言葉がほぼ同時に繰り出されたのだった
-
- 117 : 2014/05/15(木) 16:36:35 :
- 分隊長室までの廊下を、並んで歩く
この人の下についてからというものの、心安らぐ日など皆無に近く、いつも全力疾走している気がしている
ただ、やり甲斐はある
この人はこう見えても調査兵団の幹部だ
そんな人の副官、責任ある立場だ
一緒にいれば目眩がするような事ばかりだけど、何らかの達成感はあるし、自分も世の中を動かす一つの歯車になっている、そんな気分になれる
ただ現実問題として、やはりたまには休息が欲しいなあと思うのも事実
次の休暇はまだ先だ
そしてその休暇は分隊長と同じ日…
またしてもゆっくり出来ないのかもなあ…
私はついついため息をもらした
-
- 118 : 2014/05/15(木) 16:52:31 :
- 分隊長室につくと、即ベッドにダイブする分隊長
「分隊長、歯磨きくらいしておやすみ下さい」
私はまたしても小言を言うはめになった
たまには言われずやってもらえないだろうか…
「うぅん…めんどくさい…」
気だるげにそう言って、目を閉じる分隊長
私はつかつかと歩み寄って、体を抱き起こす
「歯磨き、なさって下さい」
すると、分隊長の手がひらりと延び、私の頬に触れる
「さっきね、ナナバにいちごのキャンディ貰って食べたよ」
「はあ、そうですか。それは良かったですね」
何故歯磨きの話からいちごのキャンディの話になるのか、私の脳みそでは理解出来なかった
「どんな味か、知りたくない?」
いたずらっぽくそう言いながら、私の頬を撫でる分隊長
「いちごの味でしょう?知っていますので特に知りたいとは思いませんね」
私はそう言って、頬に触れる手から離れる様に後ずさった
-
- 123 : 2014/05/20(火) 15:12:52 :
- 「歯磨きしたらね、消えちゃうんだ、いちご味」
分隊長は当たり前のことを言う
「そうですよ、消すために歯磨きをするんじゃないですか。虫歯になりますよ?」
「んーそうなんだけど・・・」
そう言って頬を膨らます分隊長
いったい何を考えているのか
いや、本当にわからないわけではない、わからないふりをしているだけだ
「・・・何がおっしゃりたいのですか?」
「だから、いちご味を教えてあげたい、直接」
「・・・要するに、キスがしたいということですか?」
私のその言葉に、分隊長の顔が赤く染まる
「ああ、そうだよ。駄目かな?」
赤くそまった分隊長の顔
ベッドに腰を下ろし、その頬をそっと撫でる
くすぐったそうに目を細める分隊長
その表情が妙に色っぽい
そう感じる
「さあ、どうぞ教えてください」
私は目を閉じてそう言った
「え、キスしてくれるんじゃないの?」
分隊長の不満じみた声
「分隊長が教えて下さるのでは、直接。そうおっしゃいましたよね?」
私は目を開けて言った
分隊長は顔を真っ赤にそめながら、ぼそっとつぶやく
「いや、まあそうだけどさ」
「ですよね、さあどうぞ」
私は再度目を閉じる
「いやいや、どうぞなんて言われてするものじゃ・・・」
「・・・分隊長。私は部屋に帰らせて頂きます」
そう言って目を開け、立ち上がろうとする私の腕を引く分隊長
「モブリットは、いじわるだ」
ふてくされたように頬を膨らます、子どもの様な分隊長
その仕草すら愛おしいと思えてしまう、自分は恋の末期症状に侵されているいるのかもしれない
これ以上じらすのは酷だ
勝手に自分に都合の良い様に解釈し、分隊長の唇に自分のそれを重ねる
このキスが私の人生を大きく変えようとは、その時は知る由もなかった
-
- 124 : 2014/05/20(火) 15:33:27 :
- そう、ただキスをしただけだった
いちごの味・・・確かにいちごの味がする甘いキスだった
だた、それだけのつもりだったんだが
そのキスが分隊長に甘い何かを吹きこんだのだろうか
分隊長は私に抱きつきしがみついて、離れようとしなかった
そのうち顔を上げて、私の頬に、額に、首筋に、唇を落とす
最後に耳にキスをして、ささやいてくる
「私は・・・君が好きだよ」
その熱を帯びた吐息交じりの声が、私の頭のどこかに甘い刺激を送りこむ
「分隊長、私は・・・」
そこまで言って、その先を言うのを躊躇する
未だにしつこく残る私の理性が、その先を言うのを躊躇させているのだろうか
「私は・・・何?嫌い?」
分隊長は不安げな表情を浮かべながら、私の顔を覗きこむ
私はふうと息を吐いた
「嫌いなわけがありません。もちろん、あなたを・・・お慕いしております」
「・・・お慕いしているって、どういう意味?」
「そのままの、意味です。上官としてはもちろんですが、それ以上に、女性として」
私がそう言うと、分隊長の顔は華が急に満開になったようにぱっと明るくなる
「ほんと?嬉しい、そんなそぶり、なかったから」
はにかんだような笑みを浮かべる分隊長に、もう一度、今度は念入りに唇を重ねる
柔らかいその感触だけではなく、想いか心か、何かが伝わるような、そんなキスを・・・
嬉しそうな顔で、私の唇を受け入れる分隊長
そんな表情を見せる女性を目の前に、理性のたがを守り抜ける男なんているはずがないと思う
だから、いくら副官の鑑だと言われた私だって例外でなはく
上官だからといって遠慮することもなく、その心を身体ごと知りたくて、調査を開始する
-
- 125 : 2014/05/21(水) 10:52:59 :
- 「ねえモブリット・・・」
「はい」
一通り事を済ませて、案外華奢だった分隊長の体を抱きながら他愛もない話をする
キスの力というのはすごいのか、今まで必死に守り抜いてきた理性の壁を、一気に崩壊に追い込んでしまった
「あのさ、私、変じゃなかった?」
「・・・何がですか?」
また妙な質問を投げかけてくる分隊長の、頬にかかる髪をかき上げながらそう尋ね返した
「んー、久しぶりだったから」
「・・・なるほど、別に変ではなかったですよ」
「そっか!良かった!風呂にも入ってて良かった!」
そう言ってうふふと笑う分隊長に、また愛しさがこみ上げてくる
その頬に、その唇に、もう一度魔法のキスを落とす
そうすれば、また我を忘れて自らの欲に、忠実になれる
「分隊長・・・むしろ、もっと変になってくださいよ」
そう耳元でささやけば、返ってくるのは吐息交じりの艶やかな声
「モブリットが普段言いそうにない言葉ランキングに入りそう・・・だね」
「・・・なんですかそのくだらないランキング・・・あなたは少し黙っててください」
そう言い捨てて、無駄口を叩く分隊長の口を自らの口でふさいだ
-
- 126 : 2014/05/21(水) 10:53:59 :
- キスがもたらした思いがけない関係の始まり
ここまで来たら、後戻りはできない
未来永劫、この人に公私ともに添い遂げる覚悟を決めて
またお互いの身体の熱で、お互いを暖め合う
この命尽き果てるまで、いや、たとえ尽き果てようとも
―完―
-
- 127 : 2014/05/21(水) 11:01:54 :
- 88師匠のモブリットいつも格好いいから大好き!!お疲れ様でした!!!!
次も期待です!!
-
- 128 : 2014/05/21(水) 11:35:27 :
- >EreAni師匠!読んでくれてありがとうございます!
かっこいいって言っていただけてうれしいーです♪
次もがんばるよおおおお!!
-
- 129 : 2014/05/22(木) 18:45:38 :
- ふおお...!!
すっごい良い終わりかた...
ハンジさんがこれまた可愛い!!
リスペクトだよ姉さん!!
-
- 130 : 2014/06/04(水) 08:31:41 :
- >妹姫☆
読んでくれてありがとう♪
私が書くモブリットってどうして…ww
こんな私をRESPECTしてくれるのはアナタダケだよ(///∇///)
-
- 131 : 2014/07/09(水) 22:18:58 :
- 面白いかったです!!
何回も読みましたー
-
- 132 : 2014/07/09(水) 22:21:27 :
- >ハンジ大好きさん☆
読んで頂きありがとうございます♪
何回も読んで下さったのですね…感激です(///∇///)
わたしもハンジさん大好きです!!
また遊びにきてください♪
- このスレッドは書き込みが制限されています。
- スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
-
兵士の日常シリーズ シリーズ
- 「進撃の巨人」カテゴリの人気記事
- 「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
- 「進撃の巨人」SSの交流広場
- 進撃の巨人 交流広場