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仮面ライダーぼっち15

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  1. 1 : : 2014/03/22(土) 22:31:14
    奉仕部夏の合宿が始まり、物語は新たなステージへ!
    ライダーたちが一堂に会するキャンプでは何が起こるのか!?
  2. 2 : : 2014/03/22(土) 22:58:32
    朝からセミがミンミンミンミンと五月蠅い。
    セミなのに蠅とかどういうことだよ……。
    なんとなく見ているテレビからは、今日はこの夏一番の暑さだというレポーターの声が聞こえてくる。
    そのセリフお前昨日も言ってなかったか?
    なぜか毎年現れる十年に一度の逸材という奴か?
    季節は少し流れ、今は夏休みだ。
    最近ではモンスター以外と戦うことがなくなり、ライダーバトルも小休止の様子を呈している。
    日常ではなかなか得られない自由を俺が満喫していると、突如携帯の着信音が鳴った。
    俺の携帯が鳴るなんて珍しい。スパムメールか何かと思って画面をタッチすると、差出人には『平塚静』の三文字が。
    あー、これ面倒臭い奴だー……。
    俺は黙って携帯をテーブルの上に置く。
    よし、あとは夜中にでも「ごめん寝てたー」とかうっとけば大丈夫だ。
    ごろりと再びソファに横になると、またも携帯が鳴る。
    んだようるせぇな。
    ニ度目の無視を決め込むが、形態は鳴りやまない。どうやら電話のようだ。
    一分ほどたつとその音がやむ。
    ふう、やっとか。
    すると次は、短期間で何度もメールが。
    何この人怖っ!ヤンデレかよ。アラサーのヤンデレとか需要がないにもほどがある……。
    恐る恐る最新のメールをチェックする。
    『差出人 平塚静
     件名 連絡をください。
     本文 比企谷君、夏休み中の奉仕部の活動について至急連絡を取りたいので折り返し連絡をください。もしかしてお昼寝中ですか(笑) 先ほどから何度もメールや電話をしているのですが……。  ねぇ、本当はみているんでしょう? 
     でんわ でろ」
    怖っ!マジで怖いよ!軽くトラウマになるレベル。軽くどころじゃねぇな……。
    彼女が結婚できない理由の一端を知ってしまった。
    過去のメールを見直すと、『長期休暇中のボランティアに参加しろ』とのことだった。
    『ざけんじゃねぇ!』某ドラマの小学生や教師のように机を蹴っ飛ばさなかった俺は大したものだと思う。
    こんなもの相手にしてはいられない。俺はそっと携帯の電話を切った。どうせほかには連絡など来ないのだ。ぼっち最高!
    俺は背伸びをして、一回のリビングに降りる。
    「およ?お兄ちゃん!」
    そこでは可愛い妹の小町が一服しているところだった。
    「おう、宿題はどうだ?」
    「うん、大体終わったよ。小町は頑張っているのです!」
    「そいつはご苦労なこって」
    「さて、お兄ちゃん」
    小町の顔つきが急にまじめになる。
    「ん、どした?」
    「小町はすごく頑張って勉強しました」
    「まぁ、そうだな。受験生なら当然だと思うけど」
    「がんばった小町には、自分へのご褒美が必要だと思うのです!」
    「お前は今どきのOLかよ」
    「とーにーかーくー、小町にはご褒美が必要なの!だからお兄ちゃんは小町と一緒に千葉に行かなければならないのです!」
    「だからの前後の文章が意味不明なんだが……」
    そう言うと、小町は顔を膨らませる。
    うわ、面倒臭いパターンだ。
    俺は黙って階段を上り、自分の部屋へ避難しようとする。
    すると、肩をグイッとつかまれる。爪がくいこんでいたいんですけど……。
    「お兄ちゃん!最近付き合い悪いよ!?」
    ライダーバトルとかで結構精神持ってかれるからなぁ……。それに奉仕部の面々や戸塚と過ごす機会も増えたし。材木座……?誰それ知らない。
    小町と過ごす時間が減ったのは事実だろう。






  3. 3 : : 2014/03/22(土) 23:07:57
    あの....ぼっち14はどうするの?
  4. 4 : : 2014/03/22(土) 23:12:48
    ごめんなさい、編集するの忘れてました!
    ご指摘ありがとうございます!
  5. 5 : : 2014/03/22(土) 23:19:48
    家族サービスができなくなるのも仕方ないことなのだ。
    ライダーバトルのせいでかなり精神持ってかれるし……。
    昨日なんて、風呂に入ってふと鏡を見たら、ドラグレッダーが俺のことガン見してたからな。
    少しえさをやらなかっただけなのに……。
    だが、それを言い訳にしてばかりもいられない。ここらで一つ相手をしてやりますか!
    「わーったよ、付き合ってやるよ」
    「やった!小町的にポイント高いよ!じゃぁ、動きやすい格好に着替えてきてね!小町も準備するから!」
    動きやすい格好?スポーツでもするつもりだろうか。
    ほどなくして、小町が戻ってきた。
    「それじゃ、レッツラゴー!」
    レッツラゴーって……古くないか?
    「はいお兄ちゃん、これ持って!」
    「えー……?」
    言って小町は、大きなバッグを俺に手渡す。
    「レディーに荷物を持たせるなんてポイント低いよ!」
    「ヘイヘイっと……」
    だがまぁ、妹のためにいろいろしてやるというのもやぶさかではない。
    しばらく歩いて駅につき、改札へ向かおうとすると、小町に止められる。
  6. 6 : : 2014/03/22(土) 23:31:39
    「ん?どした?」
    「お兄ちゃん、こっちだよ!」
    「あ?千葉に行くなら電車だろ」
    言って振り返る。すると小町が『あっちあっち』と指をさしている。
    見るとその先には、行き遅れアラサー教師の姿が……。
    うわぁ……。
    「さて、電話に出なかった言い訳を聞こうか」
    サングラスを外して俺に話しかけてきたのは、間違いなく平塚静その人だ。
    「いや、そもそも電話をかけたら相手が必ず出るという前提がおかしいんですよ。俺と先生は仕事上の付き合いがあるというわけではないんですから、こっちが気が向いたときだけ……」
    「ファイナルアタックライドォッ!」
    「ぐぶぉっ!!」
    言う途中で腹を殴られ、俺の発言は中断される。
    「ふぅ、もういい。最初からまともな言い訳など期待していなかったからな」
    「なら何故聞いた……」
    「最近いらいらしててな」
    「最低の理由じゃねぇか……。つーか俺、今から妹と千葉行くんすけど」
    「心配するな。我々も千葉に行くからな」
    「我々?」
    何故一人なのに複数形?と疑問に持っていると、背後から声をかけられる。
    「ヒッキー遅いし」
  7. 7 : : 2014/03/22(土) 23:37:16
    振り返ると、そこにはやたら布面積の狭い服を着た由比ケ浜が。
    その陰に隠れるようにして雪ノ下もいる。
    「え、なんでお前らいんの?」
    「なんでって、部活じゃん。小町ちゃんから聞いてないの?」
    なるほど、そういうことか。
    「小町、お前俺を騙したな?」
    「てへぺろ」
    うっわー、すっげぇ腹立つわー。かわいさ余って憎さ百倍。でも結局かわいいから許しちゃうのが俺の甘いところである。
    「はちまーん!」
    すると、再び後ろから聞きなれた声が。
    息を切らせて、朗らかな笑みを浮かべながら戸塚がやってくる。
    「と、戸塚ぁぁあっ!」
    さっきまでのイライラなんて一瞬で吹っ飛んだぜ!合宿最高!
    「僕も呼んでもらえて……うれしいな」
    「当たり前じゃねぇか!戸塚を呼ばずに誰を呼ぶんだよ!」
    「我もいるぞっ!はちまーんっ!」
  8. 8 : : 2014/03/22(土) 23:37:31
    そうです、材木座も出るんです!
    by作者
  9. 9 : : 2014/03/22(土) 23:46:16
    太った体でぜいぜい言いながら材木座義輝が走ってくる。
    「お前、なんでいるの?」
    「それは愚問だぞ八幡っ!八幡のいるところには、大体いるぞぉっ!」
    「それほとんどストーカーじゃねぇかよ……」
    「よし、これで全員そろったな!それではいくぞ、レッツラゴーだ!」
    だからそれ古いって……。
    俺達は七人乗りの大型車に乗って目的地へと向かう。
    ちなみに一番後ろの後部座席に男子三人で乗った。
    材木座、スペース取りすぎ……。
    「戸塚氏、お主もライダーらしいな」
    「え?うん。材木座君も?」
    「うむ!だが安心せよ!お主の身は我が守って見せる故」
    「あは、ありがとう」
    「でも材木座君、かなえたい願いがあるんじゃないの?」
    「うむ、ラノベ作家になりたいと願おうと思ったが、それは自分の力でかなえてこそだと思ってな。我は人を守るためだけに変身するのだ!」
    「甘いな、材木座。そんなことでは生き残れないぞ?」
    突如、平塚先生が口を開いた。
    「平塚、先生……あんたは、いったい?」
    その声はとても冷たくて。俺に嫌な予感を感じさせるに十分だった。
  10. 10 : : 2014/03/23(日) 00:00:38
    未だその正体がわかっていないライダーが、現時点で二人いる。
    一人は虎のモンスターと契約した仮面ライダータイガ。だが、この正体は十中八九葉山隼人だ。
    そして、一切見当もついていなかった緑のライダー。重火器を多用し、俺と雪ノ下、由比ケ浜の三人がかりでも圧倒された戦士、ゾルダ。
    もしかして、その正体は……。
    「人のためなんて、そんな心意気では作家なんぞなれんぞ?もっと積極的にいかないとな!」
    そういった彼女の声はすっかりもと通りだった。
    だがそれを、決して認可しない人物がこの中に入る。
    「このようなものに見覚えはありませんか?」
    言って雪ノ下は、バックルを取り出す。
    「ばっ、お前っ!」
    「なんだそれは?まったく見たことがないな」
    「こんなくだらないやり取り、やめませんか?平塚先生、いえ、仮面ライダーゾルダ」
    「仮面ライダー?ハハ、雪ノ下まで興味を持っていたとはね。驚いたよ」
    「ダークウイング!」
    雪ノ下の声に呼応して、平塚先生の目の前のガラスの中にダークウイングの姿が現れる。
    「……」
    「驚いた様子がありませんね。普通なら……」
    「やめろ雪ノ下。今の君たちでは、私には勝てないよ」
    「……っ。やはり」
    「せんせー、なんでそんな……?」
    「人にはいろいろ望みがあるということさ。だが、今私は君たちと戦うつもりはない」
    平塚先生が仮面ライダーゾルダ、か。
    「さっきから皆さん何の話をしてるんですか?」
    ただ一人事情を知らない小町が口をはさむ。
    「ハハ、ちょっと材木座の厨ニごっこに付き合ってただけさ。なぁ、雪ノ下?」
    「……ええ、そうですね」
    「えー、雪乃さんがそういうことに付き合うなんて以外ですねー」
    「……たまには、ね」
    何とも言えない空気の中、ライダー六人が同乗した車は進んでいく。
    着いた先でさらにライダーと合流することになるだなんて、この時の俺にどうして予想ができただろうか。
  11. 11 : : 2014/03/23(日) 00:24:57
    車がついた先は、小中学生の宿泊学習などでよくつかわれる施設『千葉村』だった。
    「千葉に行くんじゃなかったのかよ……」
    「一体いつから千葉駅に向かうと錯覚していた?」
    「いや、普通千葉っつったら……」
    「残念!千葉村でした!」
    まさに、G・E・D・O・U!
    平塚先生の態度は既に元に戻り、俺達もこの件は一端忘れて、この合宿に専念しようということになった。
    雪ノ下だけはけげんな表情を浮かべたままだったが……。
    なにはともあれ、俺達は宿泊する本館へと向かう。
    到着すると、そこには俺達以外の集団もいた。その中には、見覚えのあるやつらも……。
    「やぁ、比企谷君」
    「……葉山」
    葉山と三浦にその取り巻きども。
    この場にライダーが、八人だと!?
    「平塚先生ですか、彼らをここに招いたのは」
    「ああ、そうだが」
    どういうつもりなんだ。あんたは。
    「ここね、祭りの場所は。ほんと、楽しみだわー」
    三浦がにやりと笑みを浮かべる。
    「この間は戸塚君に負けたばかりだというのに、随分威勢がいいのね。仮面ライダー王蛇?」
    「雪ノ下っ。何なら今からやってもいいのよ?」
    「あら、望むところだわ」
    「やめろ、雪ノ下」
    「まぁまぁ優美子、ここは落ち着こうよ」
    葉山になだめられて三浦も渋々引きさがる。
    「……平塚先生」
    「なんだね、比企谷」
    「あんたの狙いは何だ、何を考えている」
    「簡単なことだよ。ライダーバトルの加速だ」
    「ライダーバトルの、加速……?」
    「13人の仮面ライダーで戦うライダーバトルが始まってからすでに四カ月ほどがたった。なのにこの現状は何だ、いまだ脱落したライダーはたったの一人。その上君たちは不戦同盟のようなものまで作っている。ライダー同士は共存できないって、わかっているだろ?」
    13人?仮面ライダーは、全部で13人なのか?何故この人は、そんなことまで知っている?
    「そこで私は考えたのさ。ここらで誰かが刺激を与えなければ、とね。幸い仮面ライダー王蛇 三浦優美子は好戦的な性格だ。君たちが一堂に長い時間を連続して過ごせば、必然的にライダーバトルが起きる。ま、もし起きなければその時は私が」
    「あんた、それでも教師かよ」
    「勘違いするなよ比企谷。私は教師である前に一人の人間だ。自分の欲望を優先させるのは当然のことだ」
    「……っ」
    「そういうことなら平塚先生、自分が倒される覚悟も当然のありですよね?」
    それまでこのやり取りには参加していなかった雪ノ下が口を開く。




  12. 12 : : 2014/03/23(日) 22:25:02
    「ああ、もちろんだとも。だが今は興が乗らない。それに運転で疲れていてね。またの機会にしよう。それよりほら、君達には自己紹介をしてもらわなければならない」
    「自己紹介?」
    「ああ、これから君達には三日間、小学生の宿泊学習のサポートをしてもらう」
    「宿泊学習?」
    「ああ。ま、総武高校としてのボランティアのようなものだよ」
    少し進んでいくと広場にいると、確かにそこにはたくさんの小学生が騒いでいた。
    動物園かよ……。
    生徒たちの真ん前に教師がたっているが、なかなか収まる気配がない。
    数分すると、やっとだんだんと静かになっていく。
    「302秒。それがお前達の絶望への時間だ」
    な、なんか変な奴が教師やってるなぁ……。
    「絶望がお前達のゴールだ!」
    最後にそう叫び、その教師は俺達の方へと向かってくる。
    「今日はよろしくお願いします、私の名前は照井竜です。早速ですが、子供たちに自己紹介をお願いします」
    「これから三日間、皆さんのお手伝いをします。困ったことがあったらいつでも言ってくださいね」
    そう言って葉山はにこりと笑う。
    女子どもはキャーキャーと騒いでいる。
    流石は葉山といったところか。人心掌握が上手いというかなんというか……。
    「お前も奉仕部の部長として、あいさつすれば?」
    雪ノ下に声をかける。
    「……いえ、遠慮しておくわ」
    「あっそ」
    こいつが嫌だというのなら、無理強いする理由もない。
    そうして、オリエンテーリングが始まった。
  13. 13 : : 2014/03/23(日) 22:42:47
    「いやー、小学生マジ若いわー。俺ら高校生とかもうおっさんじゃん」
    「ちょっと戸部、それだとあーしがばばあみたいじゃん」
    「いや、ちげーって。マジ言ってねーって」
    三浦に威嚇されて戸部が弁解を始める。
    「あー、いいかね」
    そんなこんなのくだらないやり取りをしていると、平塚先生がやってきた。
    「このオリエンテーリングでの君たちの仕事だが、ゴール地点での昼食の準備などを頼む。生徒たちの弁当や飲み物の配膳なんかもな」
    言い残して、自分は車でさっさと山頂へと向かって言った。
    オリエンテーリングとは、フィールド上のチェックポイントを通過していき、ゴールまでのタイムを競う競技だ。
    本来はかなり殺伐としたもののようだが、小学生がやるのだからもっとのほほんとしたものだ。
    数人の班で山中を歩きまわってクイズに答え、その正解数とタイムを競う。
    「ねー隼人。あーし意外と子供超好きなんだよねー」
    はいはい、お前が好きなのは子作りの方だろ。このビッチ野郎が。
    「そうなんだ」
    「子供ってさ、超可愛くない?」
    出た、可愛いって言ってる自分ってかわいいアピール。ほとほと嫌になる。
    雪ノ下は三浦の声を聞くだけでも嫌らしく、先ほどからずっと顔をしかめている。
    「ねーねー、おにーさんおねーさん」
    しばらく歩き続けていると、一つの女子集団から話しかけられた。
    ほとんどマンツーマン状態だ。
    もちろん僕と雪ノ下さんにはだれも話しかけてきませんよ、ええ。
    話を聞いていると、ファッション話やらスポーツの話やらもろもろだった。そしてそのまま話の流れで、一緒に近くのチェックポイントを探すことになった。
    「じゃぁ、一個だけな?みんなには内緒だよ?」
    葉山の声に、小学生達は一斉に元気のいい返事をする。
    距離を縮めるにはいい手だ。秘密の共有は、人と人を強く結ぶ。いい意味でも、悪い意味でも、だが。
    暇つぶしに小学生たちを観察していると、俺と雪ノ下同様、集団からあぶれている一人の子を発見した。
    その子はみんなから一歩下がって、つまらなさそうにカメラをいじっていた。
    すらりと健康的に伸びた手足、紫が混じった闇色の髪、綺麗に整った顔立ち。他の子たちよりも垢抜けて可愛い。わりと目立つ子のはずだ。
    だが、誰も彼女の相手をしない。
    時折そろって彼女の方を振り返っては、意地の悪い笑みを浮かべる。
    「……はぁ」
    雪ノ下が小さなため息をつく。
  14. 14 : : 2014/03/23(日) 22:53:08
    どうやらこいつもこの状況に気付いたようだな。
    まぁ、別に悪いことではない。孤独でいることでしか学べないものというのは、少なからず存在する。
    だが、問題なのは、おそらく彼女が悪意によって孤立させられていることだろう。
    「チェックポイントは見つかった?」
    その子に話しかけたのは葉山隼人だった。
    「……いいえ」
    その子は困ったように笑って返事をする。
    「そっか、じゃぁみんなで探そう」
    「鶴見留美」
    「俺は葉山隼人、よろしくね」
    言いながら葉山は留美をみんなの方に誘導していく。
    ……またくだらないことしてるな、あいつは。ま、英雄様にとっては自分のまわりすべてが順調じゃないと納得しないのかね。
    「なんであんなことをするのかしらね」
    雪ノ下が再びため息を漏らす。
    留美は葉山につれられるまま、グループの真ん中にいた。が、決して楽しそうには見えない。
    楽しそうでないのは何も留美だけではない。自分達の中に彼女が入ってきた途端、他の奴らの表情がけわしくなった。決してあからさまにさけたりはしない。とがめられるようなことはしない。
    ただただ、空気で断罪を行う。
    お前はこの空間にいらないのだと、その無言の圧力はある意味暴力よりもはるかにたちが悪い。
    「本当に、くだらないわね……」
    「それが人の本質だ。だから俺は、他人とのかかわりを極力排除してきたんだ」
    「そうね」
    「それでもあいつは、つながりを求めてるんだろうな」
    「……どうかしらね。人の気持ちなんてわからないわ」
    「そりゃそうだ。でも俺は、お前達といるのは悪くないと思ってるよ」
    「そういうこと突然言わないでくれるかしら。怖気が走るわ」「ヘイヘイ、そりゃすいませんでしたね」
    俺達が話している間に、チェックポイントの問題は解けたようだ。
    振り返ると、またしても集団から一歩後ろを歩く留美の姿が見えた。
  15. 15 : : 2014/03/23(日) 23:06:30
    キャンプといえばカレーだ。
    これは全国共通の認識といっても過言ではないだろう。
    実際、ルーさえ入れてしまえばどんなものでもカレーになるのだから、すべての食材はカレーの材料といっても差し支えないはずだ。
    だから、誰が作ってもある程度の完成度は見込める。
    そんなわけで、今晩の夕食はカレーです。
    小学生にのつけ方を教えるところから始まる。
    「まずは私が手本を見せる」
    言って平塚先生は新聞紙にさっさと火をつける。
    その中に油をぶち込み、一気に火柱が上がる。
    あっぶねぇな……。
    唇にたばこをくわえ、ドヤ顔を浮かべる。
    「ざっとこんなもんだ」
    「慣れてますね」
    「ま、大学時代にはよくサークルでキャンプやってたからな。私が必死に火をつけてる横であいつらイチャコラいちゃこらと……」
    嫌なことを思い出したようで、静かにちっと舌打ちをする。
    「男子は火の準備、女子は食材の用意をしてくれ」
    大丈夫?個人的な恨みで男女を引き離してない?
  16. 16 : : 2014/03/23(日) 23:22:41
    なんとなくの分担ではあったものの、カレーの下ごしらえが終了した。
    これで俺達の分は準備完了だ。
    飯盒をセットし、野菜をいためていると、三浦グループの一人海老名さんが、「野菜ってやおいに似てる……卑猥」などと言っているのが聞こえた。
    こいつ、腐ってやがるっ!
    ちなみに彼女は三浦にぺちぺちと頭を叩かれていた。
    周囲を見渡すと、煙が当たりにちらほらとみられる。
    しかし、この段階になるともうやることがない。
    「暇なら見周りでもして来い」
    「えー……」
    「いいですね、小学生と話す機会なんてほとんどないし」
    「超面白そー」
    なんでリア充ってこんなにアクティブなの……?
    「でも、なべに火かけてるしな」
    「そうだな、一か所だけにしとこうか」
    な・ん・で・そ・う・な・る・の?
    「じゃぁ俺なべ見てるから」
    「気にするな。私が見といてやるから」
    チッ、退路を断ちやがったな。
    面倒臭い……。
    小学生達のもとへ行くと、自分達のカレーがいかに特別であるかを熱心に語られた。
    俺は早々に戦線を離脱したが、葉山達は和気あいあいとやっている。
    さすが英雄様だな。
    その英雄様は、橋でポツリと一人でいる少女に話しかけた。鶴見留美である。
    「カレー、好き?」
    「別に」
    彼女はぼそりとつぶやく。そう、彼女はこうするしかなかったのだ。
    肯定すれば『調子に乗ってる』となるし、すげなく答えても、『何様のつもり?』となる。
    だから葉山が打ったのは悪手。
    むしろあえてこのようなことをして留美を追いつめているトラ思える。
    葉山は不穏な空気を今察したふりをして(俺の穿ち過ぎかもしれないが)、次はみんなに問いかける。
    「じゃぁみんな、せっかくだから隠し味でも入れてみようか!」
    聞いた者すべての注意を自分に向けるためのリア充特有のどこかうそくさい明るい声。
    小学生達は、はいはいっ!と挙手しては思い思いの意見を言っていく。
    「はいっ!オレンジ入れようよオレンジ!オレンジアームズ!花道オンステージ!」
    なに言ってるんだあいつは……。
    「あっ!レモンもいいかも!レモンエナジーアームズ!ミックス、ジンバーレモン!」
    「あっ、でもパインも捨てがたい!パインアームズ!粉砕、デストロイ!」
    先ほどからあほな発言を繰り返しているのは由比ケ浜だ。
    さすがの葉山の笑顔もひきつっている。
    「あのバカは……」
    「ほんと、バカばっか」
  17. 17 : : 2014/03/23(日) 23:40:27
    そうつぶやいたのは渦中の人鶴見留美だ。
    仲間外しにされてるんだから『渦中の人』はおかしいか。
    「ま、世の中大概そうだ。早めに気付いてよかったな」
    俺が言うと、留美は少し不思議そうな顔でこちらを見る。こいつ結構可愛いな。
    しかし、値踏みするかのような視線はいささか居心地が悪い。
    その視線に雪ノ下が割り込んでくる。
    「あなたもその大概でしょ?」
    「はっ、あまり俺をなめるなよ。大概やらその他大勢の中でも一人になれる逸材だぞ、俺は」
    「そんなことを誇らしげに言えるのはあなたくらいのものでしょうね」
    「そりゃお前だって同じだろうが」
    俺達のやり取りを聞いて、留美が少し近づいてくる。
    「名前」
    「あ?」
    「名前聞いてんの。普通わかるでしょ」
    「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
    俺のギャグを無視して、雪ノ下は口を開く。
    「人に名前を尋ねる時はまず自分から、最低限の礼儀よ」
    「……鶴見留美」
    「私は雪ノ下雪乃。そこにいるのは、ヒキガエルくんよ」
    「おい、なんで俺の昔のあだ名知ってるんだよ。初めてあだ名つけられてそんなのでも喜んじゃった当時の俺の残念さと一緒に思い出しちゃうだろうが」
    「思った以上に悲惨な過去を持ってるのね……」
    「で、結局あんたなんて言うの?」
    「比企谷八幡だ」
    このままでは小学生にヒキガエル呼ばわりされてしまいそうなので、俺はあわてて名乗った。
    「で、こいつが由比ケ浜結衣な」
    「ん?どったの?」
    近くに来ていた由比ケ浜を指さす。
    由比ケ浜は俺達三人の様子をして、大まかな状況を把握したようだ。
    「そうそう。あたしが由比ケ浜結衣ね。よろしく、留美ちゃん!占いがしたい時は言って!あたしの占いはすっごく当たるんだー」
    お前まだそんなこと言ってたのか……。
    だが留美は、由比ケ浜にはあまり興味がないようだ。
    「なんかそっちの二人はほかの人たちと違う気がする」
    二人、というのは俺と雪ノ下のことだろう。
    「私もあのへんのとは違うの」
  18. 18 : : 2014/03/23(日) 23:58:43
    「違うって、何が違うんだ?」
    留美はかみしめるように告げる。由比ケ浜の顔つきが真剣なものに変わる。
    「みんなガキなんだもん。私もその中で結構うまくやれてたと思うんだけど……。なんか、そういうのくだらないって思って。一人でもいいかなって」
    「で、でもさ。小学校の時の友達とか大事だと思うなぁ」
    「別に思い出なんかいらないし。中学で他の学校から来たこと友達になればいいし」
    そういった留美の眼には、一筋の希望が宿っていた。
    だが、現実はそうではない。
    そんな希望は、まやかしだ。
    「残念だけど、そうはならないわ」
    留美のうらみがましい視線にたじろぐことなく、一切つくろわずに雪ノ下は淡々と告げる。
    「あなたを仲間はずれにしている子たちも同じ中学に進学するのでょう?なら、その別の学校の子たちも一緒にあなたを仲間はずれにするわ。……敵が増えるだけよ」
    少し間をおいて、彼女は告げる。
    「そのくらい、あなたにはわかってるんじゃないかしら」
    「……やっぱり、そうなんだ」
    まるで過去の自分を哀れむかのようにして留美は続ける。
    「ほんと、バカなことしてたなぁ」
    「何か、あったの?」
    由比ケ浜は優しく問う。
    「誰かをハブるのは何回かあって、でも、しばらくしたら終わって。マイブームみたいなもんだったの。誰かがいい出して、なんとなくみんなそれに乗る」
    くだらない。本当にくだらないが、人間という生き物がくだらない存在なのだから、それに乗るのも仕方ないこと、なのだろう……。
    「仲良かった子がハブられた時は私も距離置いちゃって」
    「そしたらいつの間にか、ターゲットが私になってた。私、その子にいろいろ話しちゃってたから……」
    昨日の友は今日の敵。人の大切な秘密を、彼女達は仲良くなるためのツールとして使う。
    言ってほしくないことほど言いふらされてしまう。
    出川哲郎か上島龍平かなんかかよ。
    信頼して相談した仲間が、敵として自分を攻撃する。
    それは、悪夢以外の何物でもないだろう。
  19. 19 : : 2014/03/24(月) 00:04:12
    『戦わなければ生き残れない』とは、何の言葉だったか。
    雪ノ下がこのライダーバトルについて教えてくれたときに言った言葉だったっけ。
    確かにそうだろう。あの熾烈な戦いの中では、敵をつぶし、自分が生き残るために画策しなくてはいけない。
    だが、それはこの現実世界にもいえることじゃないのだろうか。
    自分の身を守るために仲間を売って……。
    「中学校でも、こんなふうになるのかな……」
    呟いた彼女の声はどこまでもはかなくて。
    たかが十メートルも離れていない場所での賑やかな笑い声が、遥か異郷の地での出来事のように思えた。
  20. 20 : : 2014/03/24(月) 02:54:04
    くそつまんないし誰得なのこのシリーズ
  21. 21 : : 2014/03/24(月) 04:46:57
    この投稿は削除されました。
  22. 22 : : 2014/03/24(月) 21:12:42
    つまらないですか……。
    退屈な時間を過ごさせてしまってごめんなさい。
    文章下手くそですよね、自覚してます……。
    自分は俺ガイルと仮面ライダー龍騎が大好きなので、そのSSを書いてみた次第です。
    完全に自己満足な作品ですが、少しだけ読んでくださっている方もいるようなので、これからも書き続けていこうと思います。
    ここまでに読んでくれて本当にありがとうございました!
  23. 23 : : 2014/03/24(月) 22:11:41
    >>22
    これからも頑張って下さいね(*^^*)
    私はこのシリーズ好きですので( ^ω^ )
  24. 24 : : 2014/03/24(月) 22:23:50
    >>六さん
    ありがとうございます!
    いろはの新作読みましたよ~。
    おもしろかったです!いろはす可愛いですね!
    早くいろはすのシーン書きたいな~。


  25. 25 : : 2014/03/24(月) 22:40:26
    「大丈夫かな……」
    夕食を食べ終わった後、唐突に由比ケ浜が呟く。
    何のことかなどとうまでもない。鶴見留美のことだろう。
    彼女が孤立していることには、皆気づいている。
    あんなのは、見れば誰にだってわかる。
    「なにかあったのか?」
    「少し孤立しちゃってる子がいまして……」
    平塚先生の問いに答えたのは葉山だ。
    「ほんと、かわいそーだよねー」
    三浦は当然のようにその言葉を発したが、俺はそれを肯定できない。
    「それはちげぇよ。孤立すること、一人でいることは決して悪いことじゃない。問題なのは、他人の悪意によってその状況を作りだされていることだ」
    「は?何が違うわけ?」
    「好きで一人でいる人間と、そうでない人間がいる。そういうことかなヒキタニくん」
    「ああ、そうだ」
    だから変えるべきは、彼女の周りの環境だ。
    「それで、きみたちはどうしたいんだ?」
    平塚先生に言われて、皆一様に口をつぐむ。
    別に具体的にどうしたいというわけではないのだ。要は感動する映画を見て泣いて、いい話だったと話すくらいの、それだけのことでしかない。
    俺にとっても三浦にとっても葉山にとっても。雪ノ下と由比ケ浜は違うかもしれないが、他の面々は同じように考えているはずだ。
    自分達には関係ないが、知ったからにはせめて憐れむくらいは……。
    という、一見高尚に見えて、これ以上になく汚い感情だ。
    「できれば、可能な範囲で何とかしてあげたいです」
    その言葉は実に葉山らしい。いや、偽善者らしいというべきか。誰も傷つかない優しい言い方。できなくても、誰にも責任を背負わせない、そんな欺瞞に満ちた言葉だ。
    「あなたでは無理よ。そうだったでしょう?」
    そんな言葉を一刀両断に斬り伏せて見せたのは言わずと知れた雪ノ下雪乃だ。
    理由の説明などしない、確定した事実としてただ彼女はそう言ってのけた。
    葉山は苦虫をすりつぶしたような顔を一瞬だけ浮かべた。
    「そう、だったかもな。……でも今は違う」
    「違わないわ。あなたは変わっていないのよ。あの時から、ずっと。英雄気取りの偽善者で……」
    「あんさー、雪ノ下さん、あんた調子乗りすぎじゃない?」
    雪ノ下の言葉に割って入って行ったのは、炎の女王三浦優美子。
    「あら、私のどこが調子に乗っているというかしら?」
    「……そういうとこだよ。いっつも人を見下したようなその態度、イライラするんだよ」
    「見下している?そんなつもりはないのだけれど。劣っているという自覚があるからそう感じるだけではないの?」
    「……っ、ベノスネーカー!」
    三浦が契約のカードをかざし、紫色のコブラが現れる。
    場の空気が一瞬にして緊張に包まれる。
  26. 26 : : 2014/03/24(月) 22:47:47
    「ダークウイング!」
    雪ノ下の蝙蝠のモンスターも現れ、コブラと対峙する。
    二体とも相手を激しく威嚇している。
    他の面々も不測の事態に備えて、鏡の中に契約モンスターを呼んでいる。
    葉山は何のアクションも起さなかったが……。
    「ほんっとイライラする。あんた、今日で終わりなよ」
    「あら。望むところね。あなたの汚い言葉を聞くのにはうんざりしてたの」
    二人がバックルをかざし、変身しようとしたその時だ。
    「ルァァァァッッ!」
    けたたましい声をあげて、エイのモンスターが二体のモンスターの間を通り過ぎていく。
    コブラと蝙蝠はそれぞれ少し後退し、わずかだが空間に余裕ができた。
    「やめてよゆきのん!優美子!今はこんなことしてる場合じゃないでしょ!」
    由比ケ浜の必死の声に、二人はしぶしぶバックルをしまう。
    「……ちっ!」
    「……命拾いしたわね」
    重たい空気が流れ、自然と皆散り散りになる。
    見上げた夜空は、今にも雨が降り出しそうな曇天だった。
  27. 27 : : 2014/03/24(月) 23:12:03
    風呂から上がった俺は今、バンガローにいる。
    俺、戸塚、葉山、戸部の四人の男子の相部屋だ。
    「いやー、さっきの雪ノ下さんと優美子激熱だったわー」
    「戸部、楽しそうに話すことじゃないぞ」
    「わーってるよー。はー、俺もそろそろかねー」
    言いながら戸部は、一枚のカードをクルクルと回している。
    「アドベントカード!?」
    そのカードに移っていたのは、見間違いようもない契約のカード。一瞬見ただけだが、レイヨウ(牛と鹿の中間種のようなもの)のモンスターだった。
    「あ、やべー。ばれちったか。ま、そういうことだから」
    戸部はそう言ってへらへらと笑う。
    これで、このキャンプ場にいるライダーは九人。
    「いつかは比企谷君ともやるかもなー」
    シュッシュッとシャドウボクシングをしながら、大したことでもないようにそう告げた。
    「戸部君……」
    戸塚も驚きを隠せない様子だ。
    「ハハ、戸塚君もよろしく~」
    「戸部、そうやって場をかき乱すようなまねはやめろ」
    「うぃーっす」
    何とも言えない空気のまま、俺達は床についた。
    「なぁ、好きな人の話しようぜ」
    電気を消した数分後、戸部が口を開いた。
    「嫌だよ」
    葉山が意思のこもった声ではっきりと拒絶した。英雄様が珍しいこともあるもんだ。
    「あはは、恥ずかしいよね」
    「なんで!?いいじゃん!じゃぁ俺からいきまーす!」
    ああ、自分が言いたかっただけか。
    戸塚と葉山も少し笑ってため息をついた。
    「俺、実はさ……」
    少しだけ間をおいて
    「海老名さん、いいと思ってんだよねー」
    「まじか!?」
    思わず声を出してしまう。
    海老名さんというのは、三浦のグループに所属する、ありていに言うと腐女子だ。
    容姿はなかなか良く、ギャルゲーで言う図書委員タイプ。
    「あ、ヒキタニ君聞いてたのかよー。寝てたかと思ったわー。罰としてアドベントカード没収~」
    それイコール死だからな!?
    「でも意外だな。戸部君は三浦さんのことが好きなんだと思ってた」
    「いやー、優美子はちょっと怖いしなー。すぐ蛇出すし……」
    確かに……。
    「でも、よく三浦さんと話してるよね?」
    「あー、それはあれだよ。将を討つならまず馬をってやつ」
    将を射んと欲すればまず馬を射よ、な。
    「まぁ、三浦の方が明らかに武将っぽいが」
    誠に遺憾ながら、戸部の思いには共感できる。好きな子ほど話しかけられなかったり、いたずらしてしまったりするものあのだ。
    「結衣もいいけどさ、あいつはアホだし」
    お前も大概だと思うんだが……。
    「それに結構人気あるしな」
    まぁそうだろうな。あいつは誰にでも優しいから、勘違いしてしまう女子は多いはずだ。
    アホなのに魔性の女、由比ケ浜結衣、恐ろしい子!
    「その点海老名さんは、男子でも引いてるやつ多いから狙い目っつーか」
    いけそうだから好きになるってのは人としてどうなんだろう。
    「お前らはどうなんだよ!俺にだけ言わせるなんてずリーっしょ!」
    お前は自分から言いたがったんだろうが……。
    「好きな女の子は、特にいないかなぁ」
    それでこそ俺の戸塚だぜ!
    「隼人君はー?」
    「俺は……いや、俺はいいや」
    「それないわー。いるんでしょー。言ってよー」
    「……」
    「イニシャルだけでいいからさー」
    ハァ、とため息をついては山は小さくつぶやく。
    「……Y」
    「Yってちょっ、Y・M・C・A!?」
    それはヤングマンだろ……。
    いつの歌だよ。
    つーか、Yっつったら……。
    「もういいだろ、寝よう」
    その声にはどこか反論できない威圧感があった。
  28. 28 : : 2014/03/24(月) 23:30:37
    「八幡、起きてよ八幡!」
    目を開けるとそこには、麗しい天使の顔が。
    ああ、ついに俺も天に召される時が来たのか……。
    「もう、朝ごはんなくなっちゃうよ!」
    「って、なんだ戸塚か。天使かと思ったぜ」
    「え?」
    「あ、いや何でもない」
    「八幡、夏休み不規則な生活してるでしょ」
    少しだけ咎めるようにして戸塚が言う。
    「え?ま、まぁそうかもな」
    「運動とかしてる?」
    運動……ライダーバトルならばっちりやってますよ?
    「今度さ、一緒にテニスしようよ!」
    「ん、ああ。そのうち適当に連絡くれ」
    「うん!」
    こう言ったらほとんど連絡されることはないのだが、どうやら戸塚は違うようだ。
    「じゃぁさ、八幡の連絡先教えて?」
    ついに、ついにこの日が!ついに俺の携帯に戸塚のアドレスを入れる日がぁっ!
    僕の、僕の赤外線受信部は君の番号を入れるためだけにあるんだぁっ!普段の何気ないことを電話で話したり……
    っといけない、興奮のあまりゴールデンボンバーの歌を思い出してしまった。
    あのPV海老名さんが見たら鼻血出すかもしれない。
    「アドレス、これな」
    画面に自分のアドレスを表示させる。
    すると、「ピコン」という音が、メールの着信を告げた。
    『初めてのメールです、これからもよろしくね!』
    思わず涙が出てしまった。
    これは絶対に保存して、さらにバックアップも取っておかねば!
    「じゃぁ、食べにいこっか」
    そして俺達は二人で朝食を食べた。
    他の奴らはすでに食べ終えてそれぞれどこかに行ったようだ。
    俺は戸塚との楽しい朝食をゆっくりと終え、一人山の方へ向かった。
    何故かだと?そこに山があるからさ!
    いや、そんなもんじゃない。ただ何もやることがなかったというだけだ。
    と、山の中腹に差し掛かったころだ。
    キィィンと、突如頭痛に襲われた。
    モンスターか!
    「まいったな、ここらで鏡ってーと……」
    あたりを見渡すが、当然そんなものはない。
    「どうすっか……あ!」
    俺はある考えを思い付き、水筒の水を地面に少したらした。
    ミラーワールドへの移動は、なにも鏡を使わなくても、その役割を果たすものであればいい。
    「変身!」
    どこにモンスターが現れたかは知らないが、今この辺りにはたくさんの小学生達がいる。どこであってもとても危険であることは間違いない。
    俺は急いでミラーワールドへと向かった。
  29. 29 : : 2014/03/25(火) 00:14:34
    ライドシューターを全力で走らせてモンスターを探す。
    「くそっ、どこだよ……」
    俺がつぶやいた次の瞬間、車体に衝撃が走ったので、急いでブレーキをかける。
    すると、車の上から何者かが飛び降りた。レイヨウ獣のモンスターだ。
    ……戸部の仕業か!?
    「って、今はそんなこと考えてる場合じゃねぇな……」
    それは後に考えることと判断し、俺は戦闘モードに頭を切り替える。
    「いくぞ!」
    「Sword Vent」
    俺の横なぎのひと振りを、モンスターは高くジャンプして軽々とかわす。
    そしてそのまま俺の頭の上に着地し、からかうような声をあげる。
    「このやろ……」
    何度も剣をふるうが、なかなか当たらない。
    というか相手には、あまり攻撃してくる意思がないように見える。俺の攻撃を受けながら少しずつ後退して、まるでどこかに誘い込むかのような……。
    「ちっ、らちがあかねぇ」
    「Strike Vent」
    「グリャヤァッ!?」
    炎が直撃し、敵が絶叫を上げる。
    そしてそのまま、さらに勢いを増して逃走を図った。
    「逃がすかよ」
    モンスターが逃げ込んだのは、とても広い、古びた工場だった。
    以前は稼働していたようだが、千葉村ができてからは操業を停止したらしい。
    どこにいる……?
    「リャォォッ!」
    またも上方から、敵が飛びかかってくる。それを床に転がってかわすと、さらに二匹目のモンスターが飛び降りてきて、俺に強烈なけりをくらわせた。
    「二体目……?」
    色合いは違うが、同じレイヨウタイプのモンスターだ。
    ライダーが契約できるモンスターは一体だけのはず。こいつらは、戸部のモンスターじゃないのか……?
    「「リャゥゥッ!」」
    二匹が前後から同時に杖上の武器で攻撃が来る。
    「Guard Vent」
    とっさに二つの盾を出してそれを防ぐ。
    「龍騎!」
    苦戦していた俺のもとに現れたのは、雪ノ下雪乃、仮面ライダーナイトだった。
    「すまない!」
    「あなたはそっちのを相手して!」
    「わかった!」
    一対一ならモンスターにそうそうひけはとらない。
    徐々に俺達が押していく。
    「ナイト!一気に決めるぞ!」
    「わかったわ!」
    「「Advent」」
    同時にモンスターを呼び出す。
    ドラグレッダーが火を吐き、弱った敵をダークウイングの翼で斬り裂く。
    「「リャォォッッ!?」」
    モンスターが爆発してエネルギーになり、それを吸収させようとしたその時、
    「Return Vent」
    その音声が響き渡った瞬間、エネルギーの球になったモンスターがもとの姿に戻った。
    そして、物陰から出てきたライダーは……
    「仮面ライダー、タイガ……」
    「君はこの世界に必要のない存在だ。消えてもらうぞ、龍騎!」
  30. 30 : : 2014/03/25(火) 00:18:18
    *注釈 
    本来「リターンベント」は、「コンファインベント」で打ち消されたカードを再び使う、一度使ったカードを再び使えるようにするというものですが、本作では展開の都合上、「倒されモンスターを生き返らせる」という能力も付加しています。ご了承ください。
  31. 31 : : 2014/03/25(火) 00:22:48
    「あなたは……」
    「君にはこいつらの相手をしてもらう、やれっ!」
    モンスターたちが俺と雪ノ下の間に割って入り、俺達は分断されてしまう。
    「お前、今日で終われ」
    「えらく嫌われたもんだな、俺も」
    「いくぞっっ!」
    「Strike Vent」
    「Sword Vent」
    ガキィ、という激しい金属の衝突音が響き渡る。
    「Advent」
    「Advent」
    たがいに契約モンスターを呼び出す。
    タイガは二体のモンスターが攻撃動作に入った瞬間を見計らって、
    「Freeze Vent」
    一枚のカードをスキャンした。

  32. 32 : : 2014/03/27(木) 21:36:47
    その瞬間、ドラグレッダーの動きが止まる。
    「なに?」
    その間に敵のモンスターはこちらにきて、その鋭い爪で腹部にきつい一撃を見舞ってくれた。
    「モンスターの動きを止める技……?んなもん反則じゃねぇのかよ」
    意味がないとわかっているのについつい口に出してしまう。
    「お前の声は聞きたくない。……永遠に黙れ」
    「Final Vent」
    来たるべき攻撃に備えて体勢を立て直す。モンスターと戦っている雪ノ下も、固まったままになっているドラグレッダーの支援も望めない。
    何とか自力で耐えるしかない。
    「ググァガァッ!」
    虎が飛びかかってきたその時、
    「Final Vent」
    「はぁぁぁああっ!」
    エビルダイバーに乗った由比ケ浜が、虎の体を吹き飛ばす。
    「デストワイルダー!」
    必殺の一撃をくらったモンスターは、息も絶え絶えといった様子だ。
    「くそ、またしても邪魔を……。ここは引くか」
    言い残して、タイガは現実世界へと帰って行った。
    「由比ケ浜、助かった。すまない」
    「ううん、これも占いで出てたからね。それより、厨ニは!?」
    「材木座が、どうかしたのか?」
    「占いで出たの!このままじゃ次に消えるライダーは、厨ニなんだ!」
  33. 33 : : 2014/03/27(木) 22:15:05
    由比ケ浜結衣の口癖は、「私の占いは当たる」だ。
    これまでも何度もその言葉を使ってきた。
    雪ノ下も俺もそういった類の物を信じる方ではないが、確かに彼女の占いが外れたところを見たことがない。
    それに加えて、彼女はこんな重大なことで冗談を言うような人物ではないということもわかっている。
    つまりこの状況下において、由比ケ浜結衣のこの言葉は、十分信用に値するのだ。
    「材木座が、やられるだと……?」
    「うん!それも近いうちに!だから速く見つけないと……」
    「また占いかしら、由比ケ浜さん?」
    いつの間にかモンスターを倒した雪ノ下がこちらに来た。
    「誰が何と言おうと、そんなものを私は信じない」
    「ゆきのん、だけど……」
    「でもね、私はあなたの言葉なら信じるわ」
    「ゆきのん!」
    「そうと決まれば急ぎましょう、時間がないのでしょう?」
    「うん!」
    最後にお互いの顔を見て、俺達は走りだす。
    と、倉庫のどこかから爆発音が聞こえた。
    しかしこの倉庫、広い上に入り組んでいて、なかなか場所の見当がつかない。音もあらゆる方向に反響してしまうのだ。
    「ここは別れましょう」
    「わかった!」
    「了解だ」

    「どこにいる、材木座……」
    あいつは自分勝手で空気を読まなくて、すっげぇうっとうしい奴だけど、それでも、それでも決して悪い奴ではないのだ。
    もしも俺に同性の友達と呼べる者がいるなら、それはきっと……。
    「ぎがぁぁぁっ!」
    突如、上空から声が響き渡る。
    「このモンスター、また……」
    レイヨウ型のモンスターだ。先ほどのとは色や姿が若干違うので別固体だろう。
    「今はお前達にかまってる暇なんてないってのに……」
    「Sword Vent」
    「アアアァァァアッッ!!」
    手にしたドラグセイバーで一心不乱に斬りつける。しかし、怒りにまかせた単調な攻撃は、いともたやすく敵の杖に受け止められてしまう。
    「クキキッ!」
    右足のけりが俺の鳩尾にヒットする。
    「Advent」
    凍結から復活したドラグレッダーが現れ、勢いよく炎を吐く。
    しかしその攻撃も、高くジャンプすることでよけられてしまう。
    さらにそのジャンプを利用した急降下キックをくらわせてきた。勢いよく吹き飛ばされた俺は、壁を突き破って隣の部屋(?)に出た。
    そこでは、
    「おらぁっ!」
    「はぁっ!」
    「ゴラムゴラムッ!」
    「きぃぃっ!」
    仮面ライダーファム 戸塚と、仮面ライダーインペラー 戸部が、そしてそこから少し離れたところでは、レイヨウタイプではない別のモンスターと仮面ライダーガイ 材木座が戦闘を繰り広げていた。
    「はぁぁぁっ!」
    「消えろ、雪ノ下ぁっ!」
    さらにそこから少し場所を開けたところでは、雪ノ下と三浦が激闘を繰り広げていた。
    もう一度見渡すが、由比ケ浜の姿はない。
    「すごいことになってるな……」
    だが、現状を見た限り、材木座に気球の危険が迫っているようには見えない。
    「しかし、これは……」
    憎しみの感情をあらわにして争いあう姿は、まさにライダーバトルの壮絶さを物語っていて……。
    その光景に、思わず圧倒される。
    でも、俺は……。
    「そうさ、俺は、戦いを止めるためにライダーになったんだ。だから……」
    ドラグセイバーを右手に強く握りしめる。
    たとえお前たちにどんな戦う理由があっても!
    戦闘を止めるため、割って入ろうとしたその時、俺は視界に不吉な赤い光をとらえた。
    ……なんだ?
    目を凝らしてもう一度その光を見つけようと試みる。
    「あれはっ!」

    「こういうごちゃごちゃしたのは、嫌いだ。みんなまとめて行ってしまえ」
    「Final Vent」
    緑の牛の巨人が出現する。
    「みんな、伏せろぉっ!」
    「はい、おしまい」
    耳を裂くような轟音とともに、大量の火器が放出される。
    何度も死の淵へと追いやられた、最強の技。
    「「「うわぁぁぁぁあぁっっ!!」」」
    皆の激痛を訴える叫び声が、倉庫内に響き渡った。
  34. 34 : : 2014/03/27(木) 22:25:49
    倉庫内のあらゆる場所で爆発が起きる。
    それは、その攻撃の強烈さをありありと物語っていた。
    ゾルダから一番近くにいたのは、確か三浦だったが、大丈夫だっただろうか……。
    そう思い、顔を上げると
    「な、なぜ、我を……」
    三浦につき放された材木座が倒れこんだ。
    「あ、あいつ、材木座を楯にしたのか……」
    ガイの体は、王蛇よりもいくらか大きい。どうやら彼女は材木座を利用して、被弾を免れたらしい。
    「近くにいた、お前が悪い」
    「く、こんな、事が……」
    「ちょうどいい、お前、消えろ」
    「Final Vent」
    「や、やめろぉぉっ!」
    だが、俺の叫びは届かない。
    彼女達の近くには、皆先ほどの攻撃で吹き飛ばされたこともあり、誰もいない。
    つまり、この攻撃を止められるものは……。
    「い、嫌だ……」
    三浦が回転しながら高く跳びあがる。
    「ベノクラッシュ!」
    毒液を体にまとって放たれたその攻撃を、無防備に受ける以外に、彼にできることはなかった。
    「あっっ……はっ……ぐあぁぁぁっ!」
    絶望に塗りつぶされたその叫びが響き渡り、彼の体が爆発四散した。
    後には、砕けたベルトのバックルだけが残った。

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kusutti

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