このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
リヴァイ「世界の果てまでいって」ハンジ「よし」!モブリット「天国に一番近い島編」
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- 1 : 2014/02/18(火) 20:56:58 :
- 世界の果てまでいってよし!
第2クール「天国に一番近い島編」です
メインキャラはリヴァイ、ハンジ、モブリット等
下の二つを先に読んで頂いた方が、よりわかりやすいです
第一クール「世界の果てまでいってよし!」
http://www.ssnote.net/archives/9816
番外編「世界の果てまでいってよし!温泉同好会」
http://www.ssnote.net/archives/10000
ギャグです
進撃キャラが、私たちの住む地球の観光地を巡ります
番外編ではないものは、実際作者が行ったことがある場所です
キャラ崩壊あり、捏造あり
ありえないカップリングももしかしたらありです
ご了承頂ける方、よろしくお願いいたしますm(__)m
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- 2 : 2014/02/18(火) 20:58:16 :
- 調査兵団の団長室は今日いつも通り騒がしい
ハンジ「さあ今夜も始まりました!!削ぎ削ぎ調査バラエティ、世界の果てまでいって」
エルヴィン「よし!!」
リヴァイ「天国に一番近い島編」
ハンジ「ついに来たねえ!!この綿密に練りに練った旅行計画を実行に移す日がぁぁ!!」
興奮ぎみのハンジ
モブリット「確かに貴女は、あれから日柄一日旅行計画ばかりにうつつを抜かして、調査兵としての仕事は全て押し付けて下さいましたね…分隊長…」
ハンジの分まで仕事をさせられたモブリットの目の下にはくっきり疲労の色が見えた
エルヴィン「旅行計画だけでなく、仕事もしろって言ったはずだが…」
ハンジ「いやあ、ついつい天国に一番近い島に滾っちゃって!!」
リヴァイ「そうだ、一つ疑問に思ったんだが、天国に一番近い島って…まさか、死んであの世に逝けって意味じゃねえだろうな…?エルヴィン」
エルヴィン「…さあて、どうだろうな」
明後日の方向に目をやるエルヴィン
リヴァイ「嫌な予感しかしねぇ…行きたくねえ…」
眉をひそめるリヴァイ
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- 3 : 2014/02/18(火) 20:58:54 :
- ハンジ「そうそう、今回は調査兵から一人、キャスターを選んできたよ!!じゃあ登場していただきましょう!!」
モブリット「リヴァイ兵長の副官、ミカサ・アッカーマンさんです!!」
リヴァイ「はぁ!?何だそれは!!聞いてねえ!!」
エルヴィンにエスコートされ、団長室に入室したミカサ
ミカサ「この度、エルヴィン団長より、リヴァイ兵士長の副官を拝命…いたしました、ミカサ・アッカーマンです」
エルヴィン「ミカサ、頑張るんだぞ!?」
リヴァイ「勝手に副官を決めんな!!こんなクソがきは副官には向かねえ!!」
ミカサ「兵長に身長以外も勝ちたい。ので、兵長の生活を研究したいと思う。ので、兵長の副官としてご一緒します」
ドンッ!!敬礼をするミカサ
リヴァイ「大迷惑だ!副官はいらん!!研究すんな!」
ミカサ「そう…兵長は身長以外が私に負けるのが、そんなに怖いんですね…」
リヴァイ「誰が!!お前なんかに負けるわけねぇだろうが!?クソがき!!」
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- 4 : 2014/02/18(火) 20:59:54 :
- ミカサ「身長は私の方が、優れている…ので、貴方の生活を盗めば、手足のリーチの差から考えても、私が人類最強になるはず…ちb…兵長」
リヴァイ「お前絶対わざとち…っていってるだろ!?」
ミカサ「私は嘘がつけないから」
ミカサは遠くを見つめながら呟いた
ハンジ「ミカサは直球だねぇ」
モブリット「怖いもの知らずですよねぇ」
ミカサの態度を見て震えるハンジ達
リヴァイ「お前ら、ミカサを止めろよ!?」
ハンジ「何でぇ?研究させてあげればいいんじゃない?手取り足取りいろいろ教えてあげればいいんじゃない~?」
にやにやしながら言うハンジ
モブリット「ミカサは希にみる逸材ですから、調査兵団の将来の為にも是非兵長が自ら鍛え上げるべきかと思います」
リヴァイ「モブリット、もっともらしい事を言ってる割りには顔がにやけてるぞ…?」
剣呑な目付きでモブリットをさすリヴァイ
モブリット「…元々笑い顔なんですよ」
眉をひそめるモブリット
リヴァイ「今さらとってつけたように困ったような顔すんな!人の不幸を喜ぶような奴だったのかお前!?」
モブリット「…不幸と言いますか、普通に兵長とミカサのコンビはなかなか良いと思いますよ」
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- 5 : 2014/02/18(火) 21:00:27 :
- ミカサ「ちび…兵長は男らしさの欠片もない…潔く研究されればいいのに」
リヴァイ「ミカサ、てめぇ今はっきりとちびって言いやがったな!?」
ミカサ「…ついうっかり…」
口を手で押さえる仕草をするミカサ
リヴァイ「うっかりって口調じゃなかったぞ!?」
激昂するリヴァイの肩にぽんと手を置くハンジ
ハンジ「まあ、もうエルヴィンからの辞令も出てるし、諦めなよ?リヴァイ」
まるで子どもを諭すかのように優しく言葉を掛けるハンジであった
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- 8 : 2014/02/19(水) 00:41:49 :
- ハンジ「さて、リヴァイの副官はミカサって事で決定!!」
リヴァイ「エルヴィンてめぇ、勝手に副官決めやがって!!」
エルヴィン「我ながら的を得た人事だと自負しているよ」
と、満面の笑みを浮かべるエルヴィン
リヴァイ「気色わりぃ笑い方しやがって!!」
そんなリヴァイに、眉をひそめるミカサ
ミカサ「兵長、だめです…エルヴィン団長をもっと敬わなければ。あなたがそんな態度だから、団長の頭髪が無くなってしまった、はず…精神的苦痛で」
エルヴィン「…ちょっと待てミカサ、毛は無くなっていない、あるぞ、ちゃんとある!」
自分の髪の毛?を思いきり引っ張って見せるエルヴィン
ミカサ「団長、無理はしないで…下さい。頭皮に良くない、はず」
ハンジ「あひゃひゃひゃ!!ひーお腹いてぇ!!」
ハンジはお腹を抱えて笑っている
モブリット「ハンジさん、笑いすぎですよ!?落ち着いて下さい!団長がかわいそうです」
エルヴィン団長とハンジを交互に見やって頭を抱えるモブリット
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- 9 : 2014/02/19(水) 00:42:18 :
- エルヴィン「地毛だと何度も証明しているのに、何故そんな噂が立つんだ…」
ミカサ「団長…今は技術が凄く進歩している…ので、地毛なのかヅラなのか植毛なのかの見分けは、つかない…ので、ヅラ疑惑が払拭されない…」
ハンジ「…!…!?!!わはははは!!」
リヴァイ「おいミカサ、お前が一番エルヴィンに失礼こいてんだぞ?わかってんのか…?」
ミカサ「私は嘘は言わない、正直に思ったことを言った…だけ」
ミカサは明後日の方向を見つめた
エルヴィン「…泣く子も黙る調査兵団団長に、なんて態度なんだ…恐るべし、ミカサ・アッカーマン…」
モブリット「団長、私はあなたをヅラだとか思っていませんから、ご安心下さい」
頭を抱えるエルヴィンの肩をぽんぽんと叩くモブリットであった
ハンジ「とりあえずさ、今回はこの四人で楽しい旅をしよう!!」
ミカサ「よろしく…お願いします」
モブリット「よろしくな、ミカサ」
リヴァイ「行きたくねぇ…」
ハンジ「じゃあ、エルヴィン行ってくるね♪」
エルヴィン「ああ、楽しんでこいよ!!」
ハンジ「では、何処でもワープ装置起動!!」
シュイイイン…四人は不思議な光に包まれた…!
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- 10 : 2014/02/19(水) 23:42:21 :
- ハンジ「さぁて!!到着いたしました!!ここは映画『天国に一番近い島』の舞台にもなった、『ニューカレドニア』だよ!!」
四人はニューカレドニアの首都ヌメアに降り立った
南洋杉が等間隔に植えられている、海岸沿いの散歩道に四人の姿はあった
モブリット「いやあ、トロスト区とは全然違いますねぇ。これが海外ですか…何だか匂いまで違う気がしますね」
キョロキョロ辺りを見回しながら目を丸くするモブリット
ミカサ「空気も違う気がする」
ミカサは大きく息を吸い込んだ
リヴァイ「ああ、そりゃそうだ。海辺だからな」
ハンジ「あっ、そっかあ。モブリットとミカサはまだ海を見たことが無いんだった。ほらごらん、あれが海だよ」
ハンジの指差す方向には、美しい砂浜と、その奥にはエメラルドの様な海があった
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- 11 : 2014/02/19(水) 23:42:42 :
- ミカサ「あ、あれが海…?水がたくさん…ずっと向こうまで続いている…」
モブリット「凄いですね…」
二人は初めて見る海に感無量だ
リヴァイ「早速泳ぐのか?」
ハンジ「いや、まずはホテルにチェックインして荷物を置きに行こう。観光はそれからね。さ、ホテルはここから近いから、散歩がてら歩こう」
ハンジに連れられて、颯爽と歩くリヴァイと、副官らしくリヴァイに寄り添うようについていくミカサ。
モブリットはおのぼりさん状態で、視線を移動させる度に歓声を上げていた
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- 12 : 2014/02/19(水) 23:43:07 :
- ハンジ「今日のお宿は、ヌメアのホテルの老舗『ル・サーフ ヌメア』だよ。早速部屋に行こう」
海沿いに面したコロニアル風のホテルは、豪華では無いものの、解放感あふれるリゾートホテルである
プールサイドでトロピカルジュースや、アルコールを飲んでいる観光客がいる
ハンジ「ニューカレドニアの詳しい話は、とりあえず着替えてからね?このままだと目立つし…」
四人は調査兵団の制服姿だったのだ
さすがに立体機動装置は着用してはいなかったが…
リヴァイ「部屋は二人で一つだな」
ハンジ「うん。ちょっと旅行の予算減らされちゃってるからさ、まあ後で稼ぎに行くつもりだけどね…」
ハンジはニンマリ笑った
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- 13 : 2014/02/19(水) 23:43:28 :
- ミカサ「ハンジさん、私は兵長と同じ部屋でお願いします」
リヴァイ「はぁ!?何言ってやがる、このばかは!!」
モブリット「ミカサ、いくらなんでもそれはむr…むぐぐ」
ミカサはモブリットの口を手で塞いだ
ミカサ「私は兵長を研究するためについてきている、ので同室でないといけない」
ハンジ「いや、さすがにだめだよ。君は私とおなj…ムグ」
ハンジの口も、手で塞いだ
ミカサ「私は強くなりたい、ので、兵長の寝ている時の呼吸回数、脈拍数、寝言…などを詳しく調べたいです」
モブリット「わ、わかった、私がそれは調べておいてあげるから、それでいいだろう?ミカサ」
ミカサ「副長…寝顔のスケッチもお願いします。あと、どんな体位で寝ているかもスケッチを…」
モブリット「やるやる、やるよ。任せて…」
モブリットは話を上手くそらしたのだったが…
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- 14 : 2014/02/19(水) 23:44:03 :
- リヴァイ「モブリット、俺は男にスケッチされながら寝る趣味はねえんだが…」
眉をひそめるリヴァイ
モブリット「私だって、寝ている男の顔をスケッチする趣味なんてありませんよ!?嫌なら兵長はミカサと同室でどうぞ!」
ハンジ「と言うことは、必然的に私はモブリットと同室になるね?私は構わないけど」
ミカサ「そうなりますね」
モブリット「うわぁぁぁ、そうでした…すっかり忘れてました…」
モブリットは顔を真っ赤にした
リヴァイ「お前…何を考えてそんなに顔が赤いんだ?モブリット」
ミカサ「副長は、ハンジさんと一緒の部屋が恥ずかしいから真っ赤になってるんですよ、兵長」
リヴァイに丁寧に説明してやるミカサ
リヴァイ「そんなもん説明しなくてもわかるわ!!」
ミカサ「…そう…兵長はちビ…の上にばかなのかと思いました」
リヴァイ「てめぇ…また言いやがったな!」
ぎゃーぎゃーと喧嘩をするリヴァイとミカサ
ハンジ「…リヴァイとミカサって、仲良しだよね」
モブリット「私もそう思います」
それを他人事のように、少し離れて見物するハンジとモブリットであった
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- 15 : 2014/02/20(木) 17:04:33 :
- リヴァイ「ちっ…ったく、とんだ災難だ…」
部屋に入るなり、荷物を置いてベッドに身を投げるリヴァイ
ミカサ「兵長…寝る前にまずはきちんと荷物の整理を…してください」
ミカサはそう言いながら、自分の荷物からハンジに貰ったこっちの世界の普段着を取り出した
結局、ミカサが頑として言うことを聞き入れず、上官と副官で同室になったのだ
リヴァイ「うるせぇ、俺は今何もやりたくねぇ気分なんだよ…」
ミカサ「何故…?折角の旅行だというのに…」
リヴァイ「てめぇのデリカシーが無さすぎだからじゃねえか!!」
ミカサ「私は一生懸命副官を勤めているつもりですが…」
悲しげに目を伏せるミカサ
リヴァイ「お前は副官には向いてねえ」
ぼそっと呟くリヴァイ
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- 16 : 2014/02/20(木) 17:06:54 :
- ミカサ「はっ!!そうだ!!」
ミカサはおもむろに兵服の内ポケットから紙を取り出し、目を通した
リヴァイ「…何だ、その紙は。何が書いてある…?」
ミカサが持っている紙を奪おうと、立ち上がって手を伸ばすリヴァイ
ミカサ「あっ、兵長だめです。機密文書なんで」
ミカサは紙を持つ手を天高く伸ばす
リヴァイ「くっ、届かねぇ!!」
リヴァイはジャンプをするが、ミカサも同じタイミングでジャンプするために奪えない
ミカサ「身長が違いすぎます。兵長諦めて…」
ミカサは胸ポケットに文書をなおした
リヴァイ「ちっ!!なんて日だ…」
人類最強の男はふて腐れてベッドに突っ伏した
ミカサ「兵長、少し出てきても構いませんか?」
リヴァイ「ああ、好きなだけいってこい。なんなら戻って来なくていいぞ?」
ミカサ「…戻りますから、着替えを済ませていてください」
ミカサは軽く頭を下げ会釈をし、部屋を出た
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- 17 : 2014/02/20(木) 17:21:29 :
- ハンジ「いやあ、結局ミカサの言うとおりにしちゃったねえ」
シングルベッドにごろごろしながら言うハンジ
モブリット「ハンジさん、服置いてあるんですから、早く着替えて下さいよ?」
モブリットは、ハンジの服を用意し、自分はさっさと服を着替えて、二人分の荷物の整理をしていた
ハンジ「モブリット、喉がかわいたなあ」
モブリット「はい、どうぞ」
さっとミネラルウォーターを手渡すモブリット
ハンジ「モブリットは痒いところにまで手が届く副官だなあ!!というわけで、背中が痒いからかいて?」
モブリット「…はいどうぞ」
そう言って孫の手を手渡す
ハンジ「モブリットがかいてくれよ」
モブリット「はぁ!?嫌ですよ!!それくらいご自分でやって下さい、分隊長!」
ハンジ「けち!!」
モブリット「けちで結構…ん?」
その時、ドアがノックされた
ハンジ「開いてるよ~どうぞ」
ガチャ…入ってきたのはミカサだった
ハンジ「どうしたのぉ?ミカサ、思い詰めた様な顔をして」
ミカサ「ハンジ分隊長…」
真剣な眼差しをハンジに向ける
ハンジ「なんだい?」
ミカサ「モブリット副長を少し貸して下さい」
モブリット「!!?」
ハンジ「いいよ!!どうぞどうぞ!好きなだけ使って?」
ミカサ「ありがとうございます…」
つかつか歩みより、モブリットの手をおもむろに掴む
モブリット「み、ミカサ!?わわわ…」
ハンジ「行ってらっしゃ~い!!」
モブリットはミカサに引き摺られる様に部屋から連行された
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- 18 : 2014/02/20(木) 18:16:59 :
- モブリット「み、ミカサ!痛いよ?!引き摺らなくてもついていくから…」
プールサイドのサンデッキにまで、モブリットを引き摺ったミカサ
モブリットの体を柱にどん、と押さえつけた
ミカサの真摯な眼差しがモブリットを射貫く
モブリット「ちょ、ちょっと?!ミカサ顔が怖いし近…」
ミカサ「モブリット副長、お願いがあります」
モブリット「…な、何かな…?」
モブリットの顔は恐怖と恥じらいが同時に来たように複雑な表情をしている
ミカサは少女の域をやっと脱したくらいの女性だが、ミステリアスな黒髪に、見た目の美しさが相まって、年齢にそぐわない色気を醸し出している
ミカサ「…教えて下さい…いろいろと」
モブリット「…ええっ!?」
ミカサ「お願いします…」
相変わらず真摯な眼差しをモブリットに向けているミカサ
モブリット「な、な、何を教えたらいいのかな…」
だんだん恐怖より恥ずかしさの方がウェイトを占めてきて、顔が真っ赤になったモブリット
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- 19 : 2014/02/20(木) 18:18:55 :
- ミカサ「…あなたは、副官として非常に優れていると聞きます。ので、そのノウハウを教えて欲しい…です」
モブリット「な、なんだ…そう言う話だったのか…」
モブリットはふぅっと息をもらした
ミカサ「教えて頂けますか?兵長は私が副官に向いていないと言う。私はなんだか悔しいんです」
モブリット「私がわかる範囲の事なら何でも教えるよ、ミカサ」
ミカサ「良かった…」
モブリット「そうだね、まずは人に物を頼むときには柱に押さえつけない事…かな」
ミカサ「…すみません副長。でも、機密文書にこうしろと書かれて…あっいえなにも…」
ミカサはモブリットを拘束していた手を離した
モブリット「ん?機密文書?」
今度は逆にミカサの顔を覗きこむモブリット
ミカサ「秘密です…」
顔を背けるミカサ
モブリット「団長かな…?」
ミカサ「…びくっ」
モブリット「まあいいか、副官としての心得だったよな?まずは、何をしてあげれば上官が動きやすいか、手間を省けるか、そんな所を意識してみたらどうかな?」
ミカサ「はい」
モブリット「兵長は優しい人だから、心を込めて接していればそれでいいと思うよ?また気がついたら教えあげるね」
モブリットはミカサの肩をポンと叩いた
ミカサ「はい、わかりました、副長。ありがとうございます」
ミカサは部屋に戻りながら、また幾つかアドバイスを貰っていた
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- 20 : 2014/02/21(金) 01:32:31 :
- ハンジ「さあ、今日は今からヌメアの街を観光するよ!!海岸沿いの散歩道を歩いて、バス停まで行くよ」
ハンジ達は、先程歩いた海岸沿いの散歩道にいた
ハンジの服装は、明るいカナリア色の半袖シャツに、首もとに赤いスカーフ、そしてジーンズだ
ジーンズを履きこなす脚は、戦い慣れているからか引き締まり、スマートだ
リヴァイ「海はいかねぇのか?」
リヴァイは半袖シャツに七分丈のカーゴパンツを履いている
ハンジ「海は明日から死ぬほど満喫するから安心して!!」
ハンジはムフフと笑った
モブリット「観光楽しみです。街の雰囲気が凄く素敵ですしね」
モブリットは、カットソーにジーンズと、ハンジとお揃いのような格好だ
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- 21 : 2014/02/21(金) 01:33:20 :
- ミカサ「あの、分隊長…気になる事が…」
ミカサが海岸を指差して眉をひそめている
ハンジ「ん、なんだい、ミカサ?」
ミカサ「砂浜で寝ている女性は、どうして胸を隠さないんですか?」
リヴァイ「…!?」
モブリット「え?うわ」
ハンジ「ああ、えっとね、ここニューカレドニアは、フランス領なんだ。ヨーロッパでは、まあ国にもよるけど、ああやって胸は隠さずに、トップレスで海水浴したりするのは普通なんだよ」
ハンジが丁寧に教える
ミカサ「恥ずかしくはないのでしょうか?私は恥ずかしい…」
ミカサは顔を赤くしている
ハンジ「トップレスの方がさ、日焼けした時に綺麗だからって理由の人がいたり様々だけど、ところ構わずやってるわけではないんだよ」
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- 22 : 2014/02/21(金) 01:33:59 :
- リヴァイ「あんなもん剥き出しにするのは駄目だ」
モブリット「目のやり場に困りますよね…」
ハンジ「私も明日はビーチでトップレスになろっかなあ!?」
ニヤリと笑うハンジ
リヴァイ「よし、今脱げ手伝ってやるよ」
手ぐすねを引くリヴァイ
ミカサ「私もお手伝いします、兵長」
ハンジ「いやいや、明日だって言ったよね!?今とは一言も…わあ!!」
ハンジはリヴァイに捕まった
ミカサはハンジのシャツのボタンを外そうとしている
モブリット「ちょっと!ダメですよ!!兵長、ミカサ!!」
モブリットがあわててミカサとリヴァイ引き離そうとしたが、人類最強と、並みの兵士100人分に相当するスーパーウーマンミカサには叶うはずもなかった
ハンジ「リヴァイ、ミカサやめろぉセクハラ!!!」
モブリット「駄目です二人とも!!」
ハンジとモブリットは悲鳴を上げた
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- 23 : 2014/02/21(金) 09:29:22 :
- ハンジ「全く!このセクハラ兵長にセクハラ副官は酷いよ!!」
ハンジは、シャツのボタンを留めながら、リヴァイとミカサに毒づいた
リヴァイ「冗談に決まってるだろうが、クソメガネ」
ハンジ「ミカサにそんな冗談通じるわけないだろ!?真面目なのに!!」
ミカサ「冗談だったんですね…」
眉をひそめるミカサ
ハンジ「ほら!!」
リヴァイ「ふん」
リヴァイはそっぽを向いた
モブリット「とりあえず、バスが来たようですし、乗りましょう皆さん」
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- 24 : 2014/02/21(金) 09:30:19 :
- 一行の前に止まったのは、真っ赤な車体のオープンタイプのおしゃれなバス
街の雰囲気を風と共に肌で感じることができる
このバスはヌメアの各主用ホテルや、海岸、施設等を回っている
なかなか時間通りにはこないが、観光にはうってつけの移動手段である
ミカサ「ハンジさん、今から何処へ向かうんですか?」
バスの中で身を縮ませながら言うミカサ
バスがかなり揺れるので怖いのだ
ハンジ「まずはマルシェっていう朝市に行くよ!!珍しい野菜や果物が沢山あるんだ!!後は美味しいカフェもあるんだ」
モブリット「そういえばお腹がすきましたね」
リヴァイ「朝も食べずに来たしな…お腹と背中がごっつんこしそうだ…」
リヴァイは鍛え上げられた腹筋に覆われた腹をさすった
ミカサ「兵長、お腹と背中がごっつんことはどんな状況なんですか?特にぶっかっている様子はありませんが…」
リヴァイの腹と背中を交互に心配そうに見るミカサ
リヴァイ「…腹が減ったっていうのの比喩表現だ…」
はぁ、と息をつき呟くように言った
ミカサ「体調不良ではないんですね、良かった」
ミカサはそう言って、はにかんだように微笑んだ
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- 25 : 2014/02/21(金) 09:31:49 :
- ハンジ「…ミカサっ!!かわいいなあ!!」
その様子を見たハンジが、弾かれた様に身を乗出し、ミカサの両頬に手を添えた
モブリット「ハンジさん!?バスの中で暴れない!!」
ミカサ「ハンジさん、恥ずかしい…皆見てますよ…?」
ハンジ「ミカサはリヴァイを研究するなら、私はミカサを研究しちゃおっかなあ!?」
ミカサの顎に手を添えるハンジ
リヴァイ「おお、そうしろ。奇行種同士気が合うと思うぞ」
ミカサ「奇行種はどこに!!?」
キョロキョロするミカサ
リヴァイ「お前の事だよ!!クソミカサ!!」
リヴァイはミカサの額を指でピンっとはじいた
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- 26 : 2014/02/21(金) 09:32:58 :
- ミカサ「…クソとはなんですか…?!ちびの癖に!!」
リヴァイ「上官に対してなんて物の言い方だ!?はっきりちびっていいやがって!!」
ミカサ「クソなんて言うから…です!!ち…び!!」
リヴァイ「てめぇミカサ!!」
ギャーギャーと、また喧嘩が始まった
モブリット「ちょっと上官副官らしくなったと思ったら…元に戻った…」
モブリットは、はぁっと肩を落とした
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- 34 : 2014/02/21(金) 23:17:38 :
- ハンジ「さぁてついにやってまいりました!!ヌメアの朝市、マルシェだよ!!クッソ旨い新鮮な食材がわんさか溢れているから、見に行こう!」
リヴァイ「ハンジ…お腹と背中がごっつんこ…」
リヴァイはお腹を押さえ、小さな体をより小さく折り曲げて倒れそうになっている
モブリット「兵長顔色が良くないですよ!?大丈夫ですか?」
ハンジ「リヴァイは人よりも新陳代謝が活発だから、直ぐにお腹が減るんだよね。とりあえず、先にカフェにブランチしに行こうか」
ミカサ「ハンジさん、私もお腹と背中がごっつんこです…」
ハンジ「よし、じゃあカフェに行こう♪」
一行はマルシェ内のカフェに向かった
リヴァイ「これは、う…うまい!!」
ミカサ「もぐもぐ…凄く美味しい…」
モブリット「なんて贅沢なんだ!!」
ハンジ「絶品という以外に表現できないよ!!」
四人が食べているのは、トーストにハムとチーズがふんだんに挟まっているもので、そのトーストサンドの上には、半熟の目玉焼きが鎮座している
そこに思い思いの量のブラックペッパーをふりかけると、絶品『クロックマダム』の完成
注文してから目の前で焼いてくれるので、ますます食欲をそそる
飲み物はこれまた名物の『カフェオレ
・ボウルサイズ』
名前のごとく、ボウルに入って出てくるカフェオレで、両手で持ち上げて飲む
モブリット「カフェオレも美味しいですね。コーヒーの味と、牛乳の量が絶妙なバランスで合わさっていますよ」
リヴァイ「俺は紅茶派だが、このカフェオレはうまいな」
ミカサ「…兵長、口の横にパンくずが…」フキフキ
ミカサがさっとリヴァイの口元をハンカチで拭く
リヴァイ「…」
リヴァイは無言だったが、幾分頬が紅潮していた
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- 35 : 2014/02/21(金) 23:50:39 :
- リヴァイ「よし、腹がいっぱいになった。そしてねみぃ…」
リヴァイはテーブルに突っ伏して目を閉じた
ハンジ「リヴァイは食べたら直ぐに眠たくなるよねぇ。体も小さいけど行動も子どもみたいだよねぇ。おっさんなのにさ…ぷぶ」
リヴァイをちらりと見て、吹き出すハンジ
リヴァイ「ババアにおっさんて言われたかねぇよ!!クソババアメガネ!!」
ハンジ「私はまだまだピッチピチだよ!?ねーモブリット!!」
モブリット「え…?うーん…」
困った様に首を傾げるモブリット
ミカサ「兵長。食べて直ぐに寝たら牛になってしまう…ので、起きなさい」
リヴァイ「…モーモー…」
ミカサを無視し、牛の泣き真似をしながら目を瞑っているリヴァイ
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- 36 : 2014/02/21(金) 23:51:03 :
- ミカサ「兵長!」
バシッ…平手打ちでリヴァイの頭をはたくミカサ
リヴァイ「いてっ!!ミカサてめぇ…」
ミカサ「寝てはダメと言ったはず…ちゃんと聞いて下さい」
リヴァイ「どこの世界に上官の頭をを平手打ちではたく副官がいる?!」
ミカサ「いますよ…駐屯兵団のアンカ・ラインベルガー参謀。ピクシス司令の頭をはたいて起こしたりしているそうです。だから私も見習ってはたきました、兵長」
胸を張って答えるミカサに
リヴァイ「そんなきわどい所だけを学んでくるんじゃねぇよ!!クソミカサ!」
と激昂するリヴァイ
ミカサ「ち…びには言われたくないです!!私はクソではありません!!」
リヴァイ「クソガキはクソガキだ!!」
ミカサ「兵長はクソしか言葉を知らないんですね、お気の毒…です」
眉をひそめるミカサ
リヴァイ「うるせぇ!!」
ハンジ「喧嘩をやめて~二人を止めて~♪」
モブリット「兵長とミカサはいい漫才コンビが組めそうだな…」
モブリットはひとりごちた
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- 37 : 2014/02/22(土) 19:14:30 :
- ミカサ「これは…ピーマン…?色が赤いし、大きいけど…」
ミカサは、色とりどりの野菜に興味津々である
ハンジ「パプリカだね。向こうにはない野菜だよね」
ミカサ「パプリカ…綺麗」
ミカサは春風が吹いたような、柔らかい表情で、うっとりしている
ハンジ「ミカサは野菜に興味があるの?」
ミカサ「はい。野菜や果物を作っていましたので…」
熱心に野菜や果物を見ながら、にこやかな笑顔になっていた
ハンジ「なるほどね!!興味があるなら買っていきなよ?」
ハンジはそういうと、紙幣を2、3枚ミカサに手渡した
ミカサ「ありがとうございます、分隊長。早速何か買ってみます」
ハンジ「うんうん、買っておいで…リヴァイ達は何やってるんだろ…あんなはしっこで…」
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- 38 : 2014/02/22(土) 19:14:53 :
- リヴァイ「…」
モブリット「…」カキカキ
モブリットがノートに何かを描いているのを、熱心に覗くリヴァイ
モブリット「…ふう、できました」
リヴァイ「おお、すげぇな…モブリット…」
モブリットのノートを見て驚くリヴァイ
ハンジ「何がすごいのぉ?リヴァイ」
ハンジがそんな二人に駆け寄ってきた
モブリット「マルシェの風景のデッサン画を描いてました」
リヴァイ「絵がうめぇ!!」
ハンジ「モブリットは右脳が発達しているからねぇ。芸術肌なんだよ…しかしほんと、うまいね!!」
モブリット「そうですかねぇ。適当ですが…」
ハンジ「天才だよ!!モブリットは!!」
リヴァイ「ああ、天才だな」
モブリット「…誉めても何も出ませんよ…お二人とも…」
誉められているのに、裏があるのではと素直に喜べず、後ずさるモブリットであった
-
- 39 : 2014/02/22(土) 19:15:18 :
- ミカサ「分隊長ー買ってきました。見てください、これはなんですか?」
ハンジが見せたのは、拳大の大きさの、緑の野菜だった
ハンジ「ああ、それはアボカドだね。パンに挟んだりしたら超美味しいよ!!」
ミカサ「ハンジさん、これも見てください、さつまいもが凄く大きいんです」
ミカサはいつになく興奮気味で、目を輝かせている
ハンジ「確かに大きいね!!私たちがいつも目にするさつまいもの、ゆうに3倍はでかいよ!!」
ミカサ「はい!!」
ミカサは大きなさつまいもを両手で大事そうに抱えて、笑顔になった
モブリット「…」サラサラカキカキ…
リヴァイ「!!」
モブリット「…できました」
リヴァイ「うめぇな、ハンジが美人過ぎるが…」
ハンジ「何々!?何描いたの~?わお!!」
ミカサ「…恥ずかしい…こんな顔をしていましたか…私…」
モブリット「いい表情をしていたよ」
モブリットが描いたのは、さつまいもとパプリカを手に笑顔になっているミカサと、ハンジの姿であった
-
- 44 : 2014/02/24(月) 09:03:42 :
- マルシェの中には、他にも土産物等が沢山売られていた
ハンジはその中の一角に立ち寄り、目を輝かせている
ハンジ「うわあ!!綺麗なパレオだなあ!!」
ミカサ「大きな布、ですね」
モブリット「手で染めてある様ですね…同じ色や模様のものが、一つとしてないですね」
パレオとは、大きな布を色とりどりに染め上げたもので、これを体に巻き付け、結ぶ事で、リゾート雰囲気満載のワンピースのようになる
ニューカレドニアの名物だ
ニューカレドニアはメラネシアン(肌の黒い、恰幅のよい人種)が多く、彼らはそういった、手で染められたシャツや布を纏うことが多かった
町も、カラフルな衣装を身に纏った人々が往来し、それを見ているだけでも飽きない
-
- 45 : 2014/02/24(月) 09:04:47 :
- リヴァイ「…」
リヴァイは色とりどりのパレオを一枚一枚手にとって見ている
ハンジ「リヴァイ、綺麗だろ!?これをさ…こうして…」
ハンジはパレオをおもむろにリヴァイの体に巻き付け、器用にワンピースに仕立てあげる
ハンジ「こうすれば、かわいいだろ?」
ミカサ「兵長似合う」
モブリット「…」サラサラカキカキ…
リヴァイ「んなわけねぇだろ!!俺に着せんな!!お前らが着ろよ!?モブリット描くな!!」
モブリット「兵長じっとして下さい。デッサンが狂います」
リヴァイ「だから描くなと!!」
モブリット「…完成です」
モブリットのノートを覗くミカサとハンジは…
ハンジ「うわあかわいいリヴァイ!!ピンクのパレオを身に纏っているよ!!」
ミカサ「身長的には違和感がありませんしね」
リヴァイ「お前ら俺で遊ぶなよ!?俺じゃなくてな、ハンジとミカサが着りゃあいいだろうが」
ハンジ「それもそうだね、そうしようか、ミカサ」
-
- 46 : 2014/02/24(月) 09:05:20 :
- ミカサ「私に似合うでしょうか。兵長に勝てそうにありません…」
リヴァイ「…んなわけねぇだろ!!よし、ミカサにはこれだ」
そう言ってリヴァイがミカサに渡したのは…
ミカサ「…綺麗」
赤と紫が綺麗にグラデーションになっているパレオだった
モブリット「ミカサには赤が確かに似合いますね。さすがは兵長。副官が似合うお色をご存じで」
ハンジ「何だかんだいいつつミカサをお気に入りのリヴァイ…あはは」
リヴァイ「ちっ、そんなんじゃねえ!!適当に選んだだけだ!」
リヴァイはプイッとそっぽを向いた
-
- 47 : 2014/02/24(月) 09:05:57 :
- モブリット「…ハンジさんには、これですね」
モブリットがハンジに選んだのは、エメラルドとブルーのグラデーションのパレオだった
ハンジ「おお!!まるで南国の海のようだ!!ありがとうモブリット!!」
ハンジはそう言うと、モブリットの背中に覆い被さるように抱きついた
モブリット「こら。離れてください!!重いですよ!?ハンジさん!!」
ミカサ「…兵長、どうぞ私の背中に…」
リヴァイ「ミカサ馬鹿か!?何言ってやがる!!」
ミカサ「モブリット副長はハンジさんを背に乗せています。ので、私はあなたを背に乗せます…副官として」
リヴァイ「あいつらは変態コンビだから真似しなくていいんだよ!!」
ハンジ「誰が変態だよ!?」
モブリット「そりゃ、あなたに決まってるでしょう。ハンジさん…」
モブリットは眉をひそめた
-
- 48 : 2014/02/24(月) 09:06:23 :
- ミカサ「兵長もそれ、買うんですね。嫌がっていたわりには脱がないし…」
リヴァイのピンクのパレオをつんつんと引っ張るミカサ
リヴァイ「買わんわ!!忘れてただけだ!!」
ミカサ「かわいいのに…」
リヴァイ「可愛くねぇ!!むしろ可愛くなりたくねぇ!!ハンジ、脱がせろ!!」
リヴァイがそう言うとハンジは…
ハンジ「まっぱにしてあげるね!?とりゃぁぁ!!」
パレオを素早く剥ぎ取り、シャツまで脱がせようとした
モブリット「ちょっとハンジさん!?」
リヴァイ「パレオだけ脱がせろって意味に決まってんだろうが馬鹿メガネ!!」
リヴァイはハンジに、強烈な頭突きを食らわすのであった
-
- 55 : 2014/02/25(火) 08:43:46 :
- マルシェを後にした一行は、のんびり歩きながら《プチパリ》と言われるお洒落な町並みを楽しんでいた
リヴァイ「なあハンジ」
リヴァイは歩きながら何かに気が付いた様子で、ハンジの背中をつついた
ハンジ「ん?どうしたのリヴァイ。歩くの疲れた?おんぶして欲しいの?」
ミカサ「兵長は背丈の関係で疲れやすいのですか?」
リヴァイ「…んなわけねぇだろ!?なんか坂が多くねぇか?しかもかなりの傾斜だ」
ハンジ「そうだね、ヌメアは坂の街としても有名だよ」
モブリット「あの登り坂なんて、上った先が空しか見えないですもんね」
ミカサ「確かに…凄い坂ですね」
-
- 56 : 2014/02/25(火) 08:44:08 :
- ハンジ「あの坂は、映画《天国に一番近い島》でも出てきた坂なんだよ」
モブリット「…」サラサラカキカキ…
リヴァイ「モブリットは絵日記描けそうだな」
モブリット「珍しいですからね…是非絵で残しておきたいです…完成」
全員でモブリットの絵を覗く
ハンジ「モブリットは何やらせても完璧だなあ!!」
ミカサ「兵長、私も副官、絵も勉強した方がいいでしょうか?」
リヴァイ「…したけりゃすりゃいいんじゃねぇか?描けることにこしたことはねぇしな」
-
- 57 : 2014/02/25(火) 08:44:38 :
- ミカサ「モブリット副長!!私に絵を教えて下さい!!」
ミカサはモブリットに詰め寄った
モブリット「でも、絵なんてどうやって教えたら良いのかわからないよ…?」
困った表情のモブリットに、リヴァイがニヤリと笑って言う
リヴァイ「手取り足取り丁寧に教えてやればいいんじゃねえか?」
ハンジ「そうだね、絵だけじゃなくていろいろ教えてあげなよ、モブリット」
モブリット「…お二人とも!!にやにやなさらないで下さい!!」
モブリットは顔を真っ赤にして怒った
-
- 58 : 2014/02/26(水) 08:18:08 :
- ヌメアの町をぶらぶら散策した一行
市街地の中心にある、おしゃれな公園に足を踏み入れた
ハンジ「この公園は、『ココティエ広場』市民の憩いの場になっているよ」
ミカサ「変わった木がありますね…赤い花を沢山つけている…」
公園には、南国らしい南洋やしや、ミカサが指差す真っ赤な花を沢山つけた木が、綺麗に植えられていた
ハンジ「ああ、あれはね、火炎樹(フランボワイヤン)だよ。緑の葉に、ああやって鮮やかな赤い花をつけるんだ。クリスマスみたいだよね」
ハンジは昼の陽気で、明るく眩しい公園を、目を細めて見やった
リヴァイ「観光客も多いな…噴水もあるぞ」
四人は噴水に足を運んだ
モブリット「美しい女性の像がありますね」
ハンジ「セレスト(天女)の像だよ。綺麗だよね。まあ私の魅力の前には見劣りするけどさあ!」
リヴァイ「…ハンジお前、眼鏡曇ってるだろ…?比べるのも失礼だぞ。天女と…」
モブリット「兵長に同意ですね。分隊長はまさか自分があんな風だと勘違いなさっているのでしょうか…こわいこわい」
ハンジ「ちょっとお!!私だって立体機動使わせたら、天女のようにふわりふわりと動けるじゃないか!?」
ミカサ「ハンジさんの立体機動は、ふわりというよりはバビュッという感じですね。後動きが読みづらいので、キテレツな動きに見えます」
ハンジ「誉められてるのか貶されてるのか、わかんないよ!?ミカサ!!」
リヴァイ「誉めてるわけねぇだろうが。立体機動の奇行種」
モブリット「兵長もある意味立体機動の奇行種ですけど…あ、いやいや、貴公子でよろしくお願いします!!」
リヴァイ「…ふん」
リヴァイは鼻をならした
-
- 59 : 2014/02/26(水) 17:26:33 :
- 公園でしばらくのんびり過ごし、昼食は軽く公園内にあるカフェテリアで摂った一行は、街のシンボルとも言える場所に行った
ハンジ「ここは、『セント・ジョゼフ大聖堂』だよ。大きくて美しい寺院だ」
リヴァイ「たしかにでかいな。鐘が塔のてっぺんに見えるな」
モブリット「たしか、先程のココティエ広場からも、この塔は見えていましたね」
ハンジ「ここはね、ニューカレドニアのカトリックの総本山なんだ。信仰のシンボルだね。あの鐘は、左右の鐘塔に一つずつあるよ」
ミカサ「信仰…ウォール教みたいなものですか…?」
ミカサは怪訝そうな表情を見せた
ハンジ「ウォール教とは全然違うんだけど、なにかを信仰している、という事に関しては同じかな」
-
- 60 : 2014/02/26(水) 17:26:59 :
- モブリット「中はどうなっているんですかね」
ハンジ「入ってみよう。あ、念のために言うけど、静かにしてね?奇声あげたりしないでね?」
口元に人差し指をあてるハンジ
リヴァイ「てめぇに言われたかねえよ、クソメガネ」
モブリット「ですね。一番奇声あげそうじゃないですか、ハンジさん」
ミカサ「私は奇声など、あげないです」
ハンジ「私がいつ奇声あげたんだよ!?」
ハンジは抗議するように言った
モブリット「常に奇声をあげてますよ、分隊長は…」
眉をひそめるモブリット
リヴァイ「モブリットが気の毒だな…」
ミカサ「モブリットさん大変そう…」
-
- 61 : 2014/02/26(水) 17:27:23 :
- ハンジ「ひでえ!!皆して私をいじめてひでえ!!」
モブリット「日頃の行いが悪いんですから、仕方ありませんね」
ふん、とモブリットにそっぽを向かれた
ハンジ「モブリットなんかキライだ!!」
モブリット「はいはい、構いませんよ」
ハンジ「ムキーー!!」
リヴァイ「おっ、痴話喧嘩が始まりそうだ」
ミカサ「痴話喧嘩…どんな喧嘩なのかな…」
ハンジ「…喧嘩なんかしないよ!!さっさと中に入ろ!!」
つん、と顔をモブリットから背けて、寺院の中に入って行った
-
- 62 : 2014/02/27(木) 13:49:06 :
- 大聖堂の中に一歩足を踏み入れると、明らかに外の空気とは違う、神聖な何かを全員が感じた
モブリット「なんだか、身が引き締まる気がしますね…」
静かに呟くようなモブリットの低い声は、大聖堂の天井にまで届くくらいに響いた
ミカサ「これは、何ですか…?」
ミカサが目にしているのは、大聖堂の入口付近に鎮座している、おおきな貝殻だった
中に水が入っている
ハンジ「それは、『聖水盤』だね。その貝は、シャコ貝。大きいだろ?海にはこんな大きな貝が生息しているんだ」
ミカサ「海って、凄いんですね」
ハンジ「ああ、そりゃあ母なる海なんて言われるくらいだからね。全ての生物の源だから…」
ハンジは天を仰いだ
-
- 63 : 2014/02/27(木) 13:49:31 :
- リヴァイ「喧嘩していたのも忘れるだろ、ハンジ」
ハンジ「…だから喧嘩してなんかいないって…」
ミカサ「痴話喧嘩…もっと見たかったりして…」
ハンジ「ミカサ!?リヴァイの意地悪な所までうつされたんじゃないの…?副官になって」
ハンジは眉をひそめた
ミカサ「痴話喧嘩の相手のモブリット副長は…」
ミカサが視線を巡らせると、三人とは離れた位置にある、礼拝用の椅子に腰かけているモブリットが見えた
リヴァイ「なんだか神妙な顔つきで筆を走らせてるな…モブリット」
ミカサ「そうですね」
ハンジ「書きおわるまで、そっとしておこう」
ハンジはちらりと副官に目をやって、小さく呟いた
-
- 64 : 2014/02/28(金) 00:16:24 :
- しばらく聖堂の中を見物した3人
モブリットはまだ絵を描いている
リヴァイ「俺は外に出てるぞ…?おいミカサ、行くぞ」
ミカサ「はい、兵長」
リヴァイはミカサを連れて、一足先に外に出ていった
残されたハンジは、そっとモブリットの背後に歩み寄った
ノートに描かれていたのは、美しいステンドグラスに飾られた、大聖堂の正面だった
軽く色鉛筆で色もつけていた
ハンジ「綺麗だね、ステンドグラス」
背後から声を掛けると、モブリットは後ろを振り返った
モブリット「そうですね。綺麗でしたので思わず集中して描いてしまっていました」
そう言うと、パタンとノートを閉じた
ハンジ「もういいの?」
モブリット「はい。お待たせしてすみませんでした」
モブリットは頭を下げた
ハンジ「モブリットは絵を描くのが好きだよね、上手いし」
自分より少し背の高い副官の顔を覗くハンジ
モブリット「まあ、お金の掛からない趣味ですから」
モブリットははにかんだような笑顔を見せた
-
- 67 : 2014/02/28(金) 23:32:45 :
- ヌメアの町巡りを終え、ホテルに帰ってきた一行
ハンジ「今から、これに着替えてきて」
ハンジが全員に紙袋を手渡した
リヴァイ「何だこれ…スーツか」
ハンジ「ああ、いまからフレンチレストランに行くからね。カジュアルな服装ではだめなんだよ。その後に行く所も、正装でなきゃだめなんだ」
リヴァイ「フレンチってあれか。オーストラリアの時にエルヴィンが行きたがってた…」
ハンジ「そうそう。折角フランス領に来たんだし、一回くらいフランス料理のフルコースを味わってみたくてね」
ミカサ「私の服は、赤いですね」
ハンジ「カクテルドレスだよ。ミカサに似合うと思う」
モブリット「ミカサは美人だから、何を着ても似合いそうだね」
そう笑顔で言うモブリットに、ミカサは頬を染める
ミカサ「美人…なんかじゃない…ですよ」
しかしその頬を染めた様子は、誰が見ても美しいと言うような表情だった
-
- 68 : 2014/03/01(土) 19:55:53 :
- ルサーフヌメアホテル内にある、『LA COUPOLE(ラ・クーポール)』というフランス料理店に、一行の姿はあった
老舗のフランス料理店に相応しく、客はみなきっちりと、スーツにネクタイ、女性はカクテルドレスやイブニングドレスを身に纏っていた
ハンジは、肩が大きく開いた、足首まで隠れるイブニングドレスを着ていた
すらりとした体型に見事にマッチした装いのせいか、普段はあまり見せないような大人の女性の色気を醸し出していた
ミカサは赤色の、膝下丈のカクテルドレス
こちらも適度な肌の露出が、彼女の美しさをより際立たせている
一方男性陣も負けてはいない
普段は兵服に身を包むべき、鍛えられた肉体を燕尾服にきっちり収め、ドレスコードといえる黒い蝶ネクタイでまるで隙がない
格好だけは一人前の上流階級になったのだが…
-
- 69 : 2014/03/01(土) 20:09:02 :
- リヴァイ「おいハンジ、お前肩出しすぎだろ…?胸も見えかかってるじゃねえか!?背中はまる見えだし…」
ハンジのドレスが肌の露出が多い事もあり、いらぬ心配をするリヴァイ
ハンジ「リヴァイはいつもそうだよね?ビキニを着ても隠せっていうしさ。そんなこと気にしてる方がスケベだと思うよ」
腕を組み、ふんと鼻をならすハンジ
リヴァイ「見たくもねぇのに見せてるから気分がわりぃんだよ!!」
リヴァイは顔を紅潮させて怒った
ハンジ「別に見せても減らないし、いいじゃないか」
リヴァイ「ああ勝手にしろ!!」
ミカサ「兵長はハンジさんの格好の何処が気に入らないの…?とても、綺麗なのに…」
ミカサはハンジの普段とは全く違った雰囲気に、うっとりしていた
モブリット「確かに肌の露出が多いですが、まあたまにはよろしいのでは、兵長。目の保養をさせていただきましょう」
モブリットは、不機嫌そうなリヴァイの肩をポンと叩いて言った
リヴァイ「…ふん」
そう呟いたリヴァイの顔は、心なしか紅く染まっていた
-
- 70 : 2014/03/02(日) 10:21:24 :
- 食前酒のベリーニを堪能しながら、アミューズのスモークサーモンのクリーム添えを口にする
ミカサはお酒を飲めないため、桃のジュースを飲んでいる
リヴァイ「酒とスモークサーモンはよく合うな」
ベリーニをちびちび飲みながら、すでに顔が赤いリヴァイ
ハンジ「リヴァイもう顔が赤いよ」
ハンジが口角をほんのり上げて微笑んだ
ミカサ「兵長は身長のせいか、体にアルコールがすぐにまわってしまう。あまり飲まないで…下さい」
ミカサは神妙な面持ちをリヴァイに向けて言った
リヴァイ「ミカサ、てめえさりげなくちびをアピールすんな!!」
ミカサ「…だって、本当にちびでしょう…だからお酒も回りやすい…」
リヴァイ「酒の弱さに背丈は関係ねえよ!!」
リヴァイは不機嫌な顔をミカサに向けて、吐き捨てるように言った
モブリット「兵長もミカサも、折角のフレンチなんですから、喧嘩なさらず…」
大喧嘩になりそうな所を、モブリットが慌てて割って入ったのであった
-
- 71 : 2014/03/02(日) 20:37:58 :
- リヴァイ「これ、凄く旨いな」
リヴァイはフォークとナイフを器用に扱いながら、上品に食事を楽しんでいる
ハンジ「それはフォアグラのソテーだね。この店自慢の一品らしいよ」
モブリット「この、カニのクリーム煮も美味しいですね。明らかに兵舎の食堂の料理とは味が違う…」
ハンジ「当たり前だよ、値段が違うもん。高級レストランだよ」
ミカサ「エレン達にも食べさせてあげたい…」
ミカサはそう言いながら、エスカルゴをほじくりだしていた
リヴァイ「ミカサの触ってるやつは俺はいらねぇ、気色わりぃ…」
リヴァイはエスカルゴを見て顔をしかめた
ミカサ「兵長、好き嫌いはいけない。見た目では味はわからない…ので、食べて」
ミカサは自分がほじくりだしたエスカルゴの中身を、リヴァイの皿に乗せた
リヴァイ「げっ…気色わりぃ…いらねぇって言ってるだろうが…」
ミカサ「好き嫌いばかりしているから、背丈の伸びが止まったんだ…兵長は…」
口角をあげ、ほくそ笑むミカサ
リヴァイ「俺の背丈は遺伝だ!!」
ミカサ「では、きっとご両親も好き嫌いが多かった…はず」
リヴァイ「うるせぇクソガキ!!」
ミカサ「…ち、び、兵長」
ハンジ「仲良しだねぇ」
モブリット「そうですねえ」
リヴァイとミカサの様子を、目を細めて見やるハンジ達であった
-
- 72 : 2014/03/02(日) 20:48:30 :
- ハンジ「エスカルゴほじくるの面倒くさいな…モブリット、剥いて」
自分のエスカルゴの皿をずいっとモブリットの前に移動させたハンジ
モブリット「分隊長、それくらいご自分でやって下さいよ…」
といいつつ、ハンジの皿のエスカルゴの処理に取り掛かるモブリット
リヴァイ「モブリットは副官の鑑のような奴だな」
リヴァイが感嘆の声をあげると、ミカサは首を傾げた
ミカサ「副長はただハンジさんに甘いだけだと思う…」
リヴァイ「確かにそうかもしれねえな…」
リヴァイも頷いた
-
- 73 : 2014/03/02(日) 21:32:04 :
- モブリット「さあ、剥けましたよ。分隊長」
モブリットが皿をハンジの方に戻そうとした時…
ハンジ「食べさせて?あ~ん」
ハンジはモブリットの方を見て、大きく口を開けた
モブリット「ちょっと!分隊長何考えてるんですか!?」
後ずさるモブリット
ハンジ「あ~ん」
モブリット「ご自分で食べて下さいよ!?」
ハンジ「一個だけ、あ~ん」
モブリット「分隊長!!あーっもう!!」
モブリットは皿から一つ、エスカルゴをフォークに突き刺して、ハンジの口に入れてやった
ハンジ「おいし~い!!」
モブリット「…はぁ」
モブリットはため息をもらした
-
- 74 : 2014/03/03(月) 08:32:49 :
- ミカサ「…」
ミカサはおもむろに、フォークにエスカルゴを突き刺した
ミカサ「はい、兵長。あ~ん」
そしてそれを、リヴァイの口元に持っていった
至極真面目な顔つきで…
リヴァイ「ミカサ!!てめぇなに考えてやがる!?」
リヴァイは眉をぎりぎりまで引き絞り、後ずさった
ミカサ「副官らしい振舞い…」
じりじりフォークをリヴァイに近づけるミカサ
リヴァイ「ちげぇ!!あんなの真似すんな!!後、エスカルゴ気色わりぃ!!」
ミカサ「兵長、好き嫌いは、いけないと言った、はず!さあ口を開けて」
リヴァイ「死んでも開けるか…ムグ」
リヴァイの言葉を遮り、エスカルゴを口に押し込んだ
ミカサ「…勝った…」
ミカサは小さく呟いた
モブリット「…」サラサラカキカキ…
ハンジ「リヴァイの可愛い姿上手く描けてるな、モブリット。あ~んしてるし」
リヴァイ「てめぇモブリット、描くなばかが!!」
リヴァイの悲鳴に、回りの客が視線を一行に集中させたのであった
-
- 75 : 2014/03/04(火) 12:14:05 :
- リヴァイ「これは何の肉だ?あっさりしていながらも旨味がある。なかなか旨いな」
リヴァイはマナーよく綺麗に皿の上の料理を片付けている
ハンジ「それは鴨のローストだね。『マグレ・ド・カナール』と呼ばれる料理だよ。さっきのフォアグラを取り除いた部分の、むね肉をローストしてあるんだ」
モブリット「しかし、兵長はフレンチのマナーがばっちりですね。ナイフとフォーク使いも綺麗で上品ですし…」
ミカサ「ほんとに意外…兵長は手掴みで食べると思っていた…野性的だし…」
リヴァイ「誰が野性的なんだよ誰が!?」
リヴァイは目くじらを立てた
ハンジ「確かにリヴァイは育ちが良さそうだけどねぇ…出身聞いても一切話そうとしないから、謎だよねえ」
じーっと探るような視線をリヴァイに浴びせるハンジ
リヴァイはぷいっとそっぽを向いた
リヴァイ「何処で生まれようが、関係ねえだろうが」
と、呟くように言った
-
- 76 : 2014/03/04(火) 12:30:15 :
- ミカサ「これは肉ですね…綺麗に削いで食べよう…」
カチャカチャと牛フィレ肉のローストを切ろうとするが、上手くいかないミカサ
見かねたリヴァイが、自分のナイフとフォークでミカサの肉を綺麗に一枚削いでやる
リヴァイ「いいか、お前みたいに上からぐいぐい押したら肉が潰れちまう。奥から手前に、引くように切るんだ」
ミカサ「はい、兵長」
ミカサは素直に頷いた
リヴァイ「それからな、肉を切るときは、左からだ。後、めんどくさいからといって、あのクソめがねみてえに先に肉を全部切っちまってはだめだ。肉が冷めやすくなるし、見た目も汚い」
ハンジ「これダメなのか!!」
ハンジは肉を全部一口サイズに切ってから食べていた
リヴァイ「駄目じゃねえが、あまり誉められた食べ方じゃねえな。まあ、基本は楽しく美味しく食事ができたらそれでいいんだがな」
リヴァイはそう言うと、牛フィレ肉の駆逐に取り掛かった
-
- 77 : 2014/03/07(金) 08:21:11 :
- フランス料理に舌鼓を打った一行は、ホテルに併設されているある施設に足を踏み入れた
ハンジ「ここはね、カジノなんだ!!今日は人間辞めてる動体視力の持ち主二人に、カジノでガッポリ稼いでもらって、旅費に充てるというすっばらしい作戦を実行するよ!!」
握りこぶしを振り上げ、気合い十分のハンジに、リヴァイが弦のような眉をひそめる
リヴァイ「人間辞めてるって…だれがだよ、お前だろ、ハンジ」
ハンジに鋭い視線をむけた
ハンジ「いやいや私は人間!辞めてるのは君たち黒髪コンビに決まってるじゃないか!!」
ミカサ「私は人間…!」
ハンジに剣呑な眼差しを向けるミカサ
モブリット「ま、まあまあ二人とも。兵長とミカサが普通の人より随分優れている、という事なんですから…喧嘩なさらないように…」
またまたハンジを庇う忠実な副官殿であった
-
- 78 : 2014/03/07(金) 08:34:57 :
- ハンジ「ミカサはここまでしか入れないから、モブリットとここでスロットで稼いでおいてね?」
ミカサ「やり方がわかりません、ハンジさん」
モブリット「私が解るから、大丈夫だよ。やってみよう、ミカサ」
モブリットはミカサの肩をぽんと叩き、そう言った
ハンジ「あっ、ちなみに、ミカサとリヴァイ、どちらが稼げたかを勝負してね!?じゃあ私たちは中に行こう」
ハンジはリヴァイを連れて、未成年者立ち入り禁止エリアに足を踏み入れた
スロットマシンの前にて…
モブリット「…ミカサ、また、入ったよ…」
モブリットが震えていた
ミカサ「…ここだ…ぽん…ぽん……ぽん」
チャラララ~
ジャラジャラジャラ…
ミカサは7を揃えまくって元金をみるみるうちに増やしていた
モブリット「凄い集中力…」
ミカサ「ぽん…ぽぽん…」
口でぽんぽんと言いながらボタンを押すミカサ
ミカサがスロットを回す度にコインが大量に排出され、あっという間に持ちきれないほどに溢れかえるコインの山が出来た
辺りの人々が、集まってきて歓声をあげていた
-
- 79 : 2014/03/07(金) 09:29:20 :
- 一方ハンジとリヴァイは…
ハンジ「また一目掛け!?」
二人はルーレットの前にいた
ディーラーがルーレットを回して、玉を投げ入れるのだが、その玉がルーレットが止まった時点で何処に入っているかの、数、色、数字の大小…によって配当がきまるゲーム
リヴァイはディーラーが投げ入れてしばらくルーレットを鋭い目付きで見て、おもむろに一目掛けという、一番配当の大きい賭け方をしていた
リヴァイ「…きただろうが」
ハンジ「…す、凄い…きたこれ…」
リヴァイの一目掛けは、ことごとく的中
他の客もついつい手を止め、ディーラー対リヴァイの一騎討ちの様相を呈していた
ルーレットを回して玉を投げ入れてから賭ける、後賭けが可能だったため、リヴァイに隙はなかった
それからも容赦なく勝ち続け、元金が百倍以上になった時、ディーラーが参りましたサインを出してきたのだった
-
- 80 : 2014/03/07(金) 09:37:29 :
- ルーレット台をなかば追い出された形の二人だったが懐が暖かくて、浮き足立っていた
ハンジ「これで豪遊できるねえ~」
リヴァイ「半分は貯金だ。こっちに口座作っとけよ、ハンジ」
ハンジ「えー、全部使おうよお!!貯金てなんだよ、男らしくないなあ」
ふて腐れるハンジ
リヴァイ「こんなに使わねえだろうが。次の旅行費にとっとけ。後はエルヴィンにも少し送っとけ。調査兵団の資金になるだろ」
ハンジ「リヴァイはこんな時にも仕事かあ…」
リヴァイ「俺たちが遊んでいる間に働いている奴らがいるんだから、当たり前だ。後な…奴に貸しを作るのも、悪くねえだろうが」
ハンジ「確かにそうだね、じゃあ次の旅行費と、調査兵団に寄付って形で 10分の1を…」
リヴァイ「半分だ」
ハンジ「はぁい」
じと目で睨まれて、肩を竦めるハンジであった
-
- 81 : 2014/03/07(金) 09:54:05 :
- ハンジ「おおっ、ミカサ達!」
未成年者立ち入り禁止エリアから出たハンジとリヴァイの目に、人だかりが見えた
真ん中ではミカサがスロットを叩いていた
モブリットがハンジ達に気がつき、駆け寄る
モブリット「ミカサが爆発しまして、元金が百倍をゆうに越えました…」
ハンジ「ミカサもか!!やっぱり!」
ハンジがガッツポーズをした
リヴァイ「ちっ…」
勝負がかかっていた事を忘れて、舌打ちをしたリヴァイ
ハンジ「モブリット、ミカサを止めてきて、もう十分だ。換金してずらがろう!!」
モブリット「ずらがるって…犯罪者みたいですよ…分隊長」
肩を竦めて、ミカサを呼びに行ったモブリットであった
-
- 82 : 2014/03/07(金) 10:04:19 :
- ホテルの部屋に帰る最中、四人はカジノでの儲けについて語り合っていた
ハンジ「今回は、同点だね。リヴァイは途中で降参宣言されちゃって、続けられなかったんだよ」
ミカサ「私だって止められなかったら、もっとやれた…はず」
ミカサは悔しそうに俯いた
リヴァイ「…ちっ。いいさ、俺の負けにしとけ。稼いだ額は少し負けたんだからな、俺が」
リヴァイのその言葉に顔をあげるミカサ
ミカサ「兵長に、勝った!?」
リヴァイ「ああ、勝った」
ミカサ「兵長が、私に、負けた?」
ミカサは目を輝かせ、リヴァイの顔を覗いた
リヴァイ「…ちっ、しつけえぞ、お前」
眉をひそめるリヴァイ
ミカサ「身長以外に、兵長に勝った…」
ミカサは満足そうに微笑んだ
リヴァイ「…ちっ…」
リヴァイは盛大な舌打ちをしたが、不思議な事に、機嫌が悪くはならなかった
-
- 83 : 2014/03/08(土) 22:08:57 :
- ホテルの部屋に帰還し、早速ベッドダイブをするハンジ
ハンジ「あ~今日は楽しかったなあ!!」
モブリット「分隊長、とりあえずドレスが皺になりますから、着替えて来てくださいよ、先に…」
モブリットはハンジの着替えをすでに部屋を出る前に仕度しており、抜かりはなかった
ドレスのままベッドでごろごろしている上官の上に、着替えをぽんと置いた
ハンジ「うーん、めんどくさいねえ」
渋る上官に、眉をひそめるモブリット
モブリット「あなたは一応女性ですよね?でしたらもう少し女性らしくなさってはいかがですか…」
ハンジ「女らしい私なんて私じゃなくなっちゃうよ」
モブリット「…とにかく、着替えて来てください」
モブリットは、しつこくベッドでごろごろしているハンジの手をとり、引っ張りあげた
ハンジ「はいはい、わかりました。あ~うるさい副官だよ…」
モブリット「さっさと行きなさい!!」
モブリットの声に追い立てられるかのように、着替えに行ったハンジであった
-
- 84 : 2014/03/08(土) 22:18:44 :
- 一方、リヴァイ・ミカサ組の部屋は…
ミカサ「……」カキカキカキ…
すでに寝間着に着替えたミカサが、机に向かって何かを一生懸命書いていた
リヴァイ「ミカサ、何書いてるんだ?」
後ろから覗くリヴァイに気が付き、慌てて隠すミカサ
ミカサ「兵長、覗かないで…エッチ…」
リヴァイ「はぁ!?何を言ってやがるんだ。頭おかしいんじゃねえかお前」
リヴァイは眉を限界まで引き絞った
ミカサ「覗かれたらこう言え、と指示が…いえなんでも…」
ミカサはついっと視線を遠くに移動させた
リヴァイ「ミカサお前…昼間から指示だのなんだの、誰がそんなふざけた指示を…って決まってるか…奴だな」
リヴァイははぁ、とため息をついた
ミカサ「兵長、団長に向かって奴、などと言ってはいけません…ってあっ…」
リヴァイ「団長って言っちまってるじゃねえか…詰めが甘い奴だな…お前」
呆れたように肩を竦めるリヴァイであった
-
- 85 : 2014/03/10(月) 08:02:28 :
- ミカサ「兵長、私は毎日日記を書くように言われている…ので、覗かないで欲しい、です。集中出来ない」
リヴァイ「ちなみにどんな内容なんだ?」
口下手なミカサの日記が気になるリヴァイは、素早くそれを奪おうと手を伸ばす
ミカサ「兵長!だめ!!」
寸前の所で日記を自分の胸に抱え込むミカサ
リヴァイ「見せたくないとは、やましいことでも書いてやがるのか…?ミカサ」
ミカサ「人の日記を覗くなんて、兵長の人格を疑う…元から疑っているけど…」
ちくっとリヴァイに鋭い視線を送ったミカサ
リヴァイ「お前の人格の方が疑わしいわ!!」
ミカサ「兵長には負けます…疑わしいさでは…」
リヴァイ「俺は品行方正だ!!」
ミカサ「兵長、意味わかってないでしょ?」
結局喧嘩になる二人であった
-
- 86 : 2014/03/10(月) 08:14:50 :
- ハンジ「皆さんおっはー!!よく眠れたかな!?」
ハンジの元気の良い声が、爽やかなヌメアの朝に響き渡る
ミカサ「おっはー…」
少々恥ずかしげにハンジの真似をするミカサ
モブリット「おはようございます。ミカサ、おっはーはもう少し元気よく言ってはどうだろう?恥ずかしがらずに」
モブリットが爽やかな笑顔でミカサにアドバイスを送った
ミカサ「おっはー!!…こんな感じでしょうか、モブリットさん」
顔を赤らめながらおっはーしてみるミカサに
ハンジ「ミカサ、可愛いよぉ~食べちゃいたいよぉ~!」
と言いながら抱きついて頬擦りするハンジであった
リヴァイ「…おっはー…ねみぃ…」
反対に、元気に言うつもりもないリヴァイは、目を擦りながら呟くように言った
-
- 87 : 2014/03/11(火) 08:14:48 :
- ハンジ「今日は船で離島に行くよ!?リヴァイ、起きなよ!?」
ミカサの肩に頭をコツンと乗せて、目を閉じるリヴァイ
ミカサ「兵長?!」
ミカサの声が届いたかわからないが、スースーと寝息をたてはじめたリヴァイ
モブリット「昨夜あまり眠れなかったのでしょうか…」
ハンジ「気持ち良さそうに寝てるねぇ…起こすのが可哀想」
ミカサ「ど、どうしたらいいですか…?」
狼狽えるミカサに、ハンジがにっこり笑った
ハンジ「そりゃぁ、ドロップキックで起こすべきだろ?」
モブリット「あんた何言ってるんですか!?」
ミカサ「王子さまがキスをすれば、寝てる人を起こせるよと、アルミンが前に教えてくれた…」
ハンジ「じゃあ、モブリットやってあげて!?さあはやく!!」
モブリット「嫌ですよ!!そんな趣味無いです!!」
モブリットの悲鳴で、リヴァイは目を開けたのであった
-
- 88 : 2014/03/11(火) 09:28:07 :
- リヴァイ「あぶねえ所だった…男のキスで起こされる寸前だった」
ぶるっと身を震わせるリヴァイ
モブリット「兵長!!そんな事しませんって!!」
ミカサ「モブリットさんはわからない。ハンジさんに命令されたら何でもやる…ので、面白がるハンジさんならきっと兵長へのキスを命ずるはず…ので…」
モブリット「命令されてもやらないって!!」
ハンジ「ミカサがすごく饒舌になってるねえ」
リヴァイ「これも旅の解放感かもな」
四人は船着き場に向かう道すがら、そんな会話をしていた
途中で、朝食がてらサンドイッチ屋に立ち寄った
ハンジ「生ハムと野菜のサンドイッチだよ!!」
ハンジが手渡したのは、サンドイッチ…というよりは、長いフランスパンのサイドに切れ目を入れて、その間に生ハムや野菜、ソースをサンドした物だった
モブリット「我々が思っているサンドイッチとは全然違いますね」
ハンジ「フランス領だからね、サンドイッチもフランスパンなんだろうね!!丸ごと一本のフランスパン、結構ボリュームあるだろ?」
ミカサ「これ、凄く美味しい」
リヴァイ「ほんとに旨いな。パンがかてぇが、この歯応えがまたいい」
四人はフランスパンのサンドイッチを食べながら、船着き場に向かった
-
- 89 : 2014/03/11(火) 17:07:28 :
- タクシーボートに乗って約15分、『メトル島』に到着した
ここは最近一島一リゾートとして新しくホテルがオープンし、そのホテルは5つ星として名高かった
ミカサ「一面海…綺麗…」
桟橋から海を眺めるミカサは、はじめて間近に見る海に、瞳を潤ませていた
ハンジ「とりあえず、ホテルにチェックインした後、海で遊んだりしよう!!ホテルもすっごい滾るからね~!」
桟橋を渡ると、直接ホテルロビーに繋がっている
この島は一周歩いても20分程の小さな島で、回りを美しい珊瑚礁と、白い砂浜に囲まれている
ホテルのロビーでハンジが受け付けをしている間、ロビーのソファにゆったり腰を落ち着けるリヴァイは、さすがに前回のオーストラリア旅行を体験しているだけあってか、落ち着き払っている
一方…
ミカサ「ちょっと待って、海って何処まで続いているの…?信じられない!!」
モブリット「本当だね!!まるで夢の世界のようだ…」
目を輝かせてあちらこちらで歓声をあげている二人
ミカサ「モブリットさん!!あの白い浜にいる黒い物体は何でしょう!?」
モブリット「いやあ、わからないけど、大きな芋虫に見える…沢山いるね」
ミカサ「後で調査します。日記に書かなきゃ…」
モブリット「私も一緒に行こう。珍しい物もスケッチしておきたいし…」
ハンジ「お待たせ!二人とも楽しそうだね!あの黒いのはなまこって言う生き物だよ。ホテルができる前はもっと沢山いたらしいけどね」
リヴァイ「あれみたいだな、ほら、風の谷のナウシカの、オーム…」
ミカサ「何ですか、その例え…わからない…」
ハンジ「リヴァイもこっちの世界にちょっと詳しくなったよね」
ハンジはくすくすと笑った
-
- 90 : 2014/03/12(水) 20:10:00 :
- ハンジ「ここは、《パークロイヤル エスカパード アイランド リゾート》というホテルだよ!!今日泊まるのは、その中でも一番人気、水上コテージなんだ!!」
ロビーの右手通路を進むと、バーが併設されたプールがあり、そのプールを抜けると、桟橋の様な通路が海に延びており、その中程あたりから、水上コテージが並んでいた
リヴァイ「水の上の部屋か。斬新だな」
ミカサ「海の音が聞こえる部屋…」
モブリット「テンションあがりますね!!すごい部屋ですよ…部屋というか、小さな一軒家と言った感じですね!!」
ハンジ「しかも、その中でも一番人気の、一番端の、一番島から遠い部屋を予約できたからね!!」
ハンジに導かれて、水上コテージに向かった
ハンジ「じゃ、部屋で水着に着替えたら、そっちの部屋に呼びに行くね?」
リヴァイ「って、また二人部屋かよ!?」
ハンジ「うん。水上コテージは二人用なんだ。カップルや夫婦に人気だよ!!」
ミカサ「カップル…?兵長とですか…?冗談…」
リヴァイ「こっちが言いたいセリフだ!!くそガキ!!」
とりあえず部屋に入室した一行であった
-
- 91 : 2014/03/13(木) 08:34:53 :
- ハンジ「うわっ!!凄い部屋だ!!大きいベッド~」
ハンジは部屋に入るなり、キングサイズのベッドにタイブした
モブリット「ハンジさん、喜ぶのはいいですが、兵長とミカサを待たせては申し訳ないですし、先に水着に着替えて下さい」
モブリットは、ハンジの荷物から水着とパレオを取り出して、寝転ぶハンジの上に置いた
ハンジ「モブリット先に着替えておいでよ?それとも着替えさせてあげよっか?!」
モブリット「…遠慮しておきます」
ぼそっと言うモブリット
ハンジ「そっかぁ、残念!!」
ハンジはにやりと笑った
モブリット「先に着替えてきますから、少々お待ちくださいね」
はぁ、とため息一つついて、洗面室に向かったモブリットであった
-
- 92 : 2014/03/13(木) 08:47:30 :
- 一方人間辞めてるコンビは―
ミカサ「兵長、見てください!!部屋から直接海に出られる…」
素早く着替えを済ませ、ハンジの用意したセパレートタイプのふりふり水着を着用したミカサは、コテージのサンデッキから海へと続く階段に座り込んでいた
二人のいる部屋は、一番先にあるため、視界は一面海…何も遮る物はない
リヴァイ「おい、ミカサ。お前これは着ねえのか?」
コテージからサンデッキに出てきたリヴァイが手に持っているのは、昨日マルシェでリヴァイが選んでやった、赤と紫のパレオだった
ミカサ「あ、私は…自分でやり方がわからなくて…ので、ハンジさんが来たら着せてもらおうかと…」
立ち上がり、困ったような表情をするミカサ
普段はあまりみない表情だ
リヴァイ「適当に巻いてやるよ」
リヴァイはそう言うと、おもむろにパレオをミカサの体に纏わせはじめた
数ヵ所結んで、一枚の布はふわりとしたワンピースに早変わりした
ミカサ「兵長器用…意外です」
リヴァイ「パレオ買ったときに、説明書きが店に貼ってあったからな…」
ミカサはくるりと体を一回転させた
パレオの裾がふわりと膨らむ
ミカサ「…かわいい」
リヴァイ「ま、そんなもんだろ」
リヴァイは鼻のあたまをポリポリと書いた
-
- 93 : 2014/03/14(金) 14:16:12 :
- ハンジ「二人ともお待たせ~!」
ハンジは人間辞めてる組の部屋に、ノックもせず突入した
モブリット「ハンジさん!!ノックくらいして下さいよ!?」
モブリットの咎めるような声を無視して、ハンジはつかつかと部屋の奥に移動する
リヴァイ「クソメガネ、ノックくらいしやがれ、馬鹿が」
リヴァイは、サンデッキからコテージ内に顔だけひょこっと出して、吐き捨てるように言った
ハンジ「サンデッキから眺め最高だろ!?」
ハンジたちもサンデッキに出た
ミカサ「ハンジさんとモブリットさん、本当に凄いです…海」
ミカサはチラッと二人を見てそう言ったが、また視線を海に投げた
ハンジ「ミカサ、パレオ可愛く結べたね♪凄いよ!!」
ハンジはミカサのパレオの裾をふわっと触って言った
ミカサ「兵長が着せてくれました」
ハンジ「なんと、意外だなあ。というか、リヴァイってほんとは優しいだろ、ミカサ?」
ハンジはにっこり笑って微笑んだ
ミカサ「まあ、そうかも…」
リヴァイ「優しくねえ!!」
モブリット「兵長が照れてますね」
モブリットの言葉を聞くや否や、リヴァイはヘッドロックをかけたのだった
-
- 96 : 2014/03/16(日) 09:08:44 :
- モブリット「げほっげほっ…死ぬかと思った…」
やっとヘッドロックから解放され、咳き込むモブリットに、ハンジはぽんぽんと背中を叩いてやっている
ハンジ「モブリット大丈夫~?リヴァイは都合が悪くなるとすぐにヘッドロックかけてくるから、注意しなよ!?ほんと死ねるし」
リヴァイをちらりと横目で見てそう言った
リヴァイ「うるせえクソメガネ!!」
ミカサ「兵長はやっぱり乱暴者…優しいは撤回…です」
ミカサもちらりとリヴァイを見た
リヴァイ「うるせえクソガキ!!」
ミカサ「クソしか言えない…チビ兵長」
ふふ、と鼻で笑うミカサに、リヴァイは激昂する
リヴァイ「ちび兵長ってなんだ!?」
モブリット「ちび兵長…なんだか可愛らしい…」
リヴァイ「あぁ!?なんか言ったかモブリット!?」
モブリット「いえいえ空耳ですっ!!」
あわてて敬礼をするモブリットであった
-
- 99 : 2014/03/17(月) 09:49:57 :
- ハンジ「よーし!!今日は早速海に行こうか!!まずは…」
ミカサ「ハンジさん、私はさっきの黒い…イモムシみたいなのを見に行きたい、です」
ミカサがハンジの言を遮り、そう言った
リヴァイ「オームって言うんだ、あの黒いのはな…」
人差し指をたて、ミカサに優しく教えてやるリヴァイ
ミカサ「オーム…メモメモ」
ミカサは熱心にメモをとった
ハンジ「違うだろ!?嘘を教えるなよ!?リヴァイ!!」
リヴァイ「…ちっ」
ミカサ「兵長!!嘘…なんですか!?」
モブリット「兵長って、意外とお茶目なんですね」
リヴァイ「ばかいえ、俺はもともと結構おちゃm…グフッ…」
リヴァイにどすっと手刀を落とすハンジ
ハンジ「言わせね~よ!!」
リヴァイ「ってぇなあ…」
ミカサ「ハンジさんが兵長に突っ込む…珍しい光景」
モブリット「これも旅の醍醐味だね」
結局海の前に、黒いオーム…ではなく、なまこを見に行く事にしたのだった
-
- 100 : 2014/03/17(月) 09:57:32 :
- 水上コテージの桟橋横のビーチに足を運んだ一行
ハンジ「ほら、沢山いるね、見ておいで?」
ミカサ「触っても平気ですか?」
リヴァイ「オームはな、怒らせたら赤くなって襲ってきやがる、気を付けろよ、ミカサ」
眉をひそめるリヴァイに、ミカサが頷く
ミカサ「わかりました、兵長」
ミカサは素直に頷いた
ハンジ「だからオームじゃなくてなまこだってば!!またリヴァイは嘘を教えて!!」
ミカサ「兵長は嘘ばかり教える!!信用できない!!チビだし!!」
リヴァイ「信用問題と背丈は関係ねえ!!ガキ!!」
お互い掴み掛かる人辞めてるコンビを、なんとか引き離そうとするハンジをよそに…
ビーチに座り込んで、なまこを凝視しながらスケッチするモブリットであった
-
- 101 : 2014/03/18(火) 07:20:43 :
- ミカサ「つんつん…つんつん…」
砂浜にしゃがんで、一心不乱に黒いなまこをつつくミカサ
なまこを見たことがない方に詳しく解説すると…
いや、食事中の方がいてはいけないので止めておこう
形は小さなオーム、まさに芋虫
小さいとはいえ、体長20㎝はある
ここにいるのはクロナマコである
一応食べられる…なまこ酢っていうものがあるくらいなので
リヴァイ「…そんなのつついて楽しいのか、ミカサ」
真剣な表情でなまこをつつくミカサを、怪訝そうに見つめるリヴァイ
ミカサ「はい、兵長。こんな生き物でも、つつけば可愛い仕草を見せます」
リヴァイ「…こんな下手物、可愛いなんてあり得ねえだろうが」
リヴァイはミカサの隣にしゃがんで、様子を伺う
つんつんとされるたびに、少しづつ身を捩らせて、逃げようとしているなまこ
ミカサ「ほら、可愛いです、兵長」
リヴァイ「…可愛くねえ…気持ちわりい」
リヴァイは眉を潜めた
-
- 102 : 2014/03/18(火) 07:34:54 :
- ハンジ「ちなみになまこは食べられるよ?リヴァイのためになまこ料理が食べられる所を探そうか?」
ハンジがミカサの隣にしゃがんで、なまこをつつきながらニヤリと笑った
リヴァイ「俺は下手物は嫌いだ!!エスカルゴよりもなまこが嫌いだ!!」
ミカサ「本人を前にして嫌いだなんて…酷いです、兵長…なまこが泣いていますよ…」
なまこを見ると、体から白い粘液のような物を出していた
リヴァイ「これは涙じゃねぇだろうが!!」
ミカサ「きっと悲しくて泣いている…はず」
リヴァイ「涙なら目からじゃねえか!こいつは全身から出してやがる…汗だ!!」
ハンジ「えっと、その白い粘液は、警戒したり、敵に襲われたりした時に出すね。要するに…」
リヴァイ「ミカサがつついたせいだろうが!!」
ハンジが頷くと、ミカサは両手のひらを口に当てた
ミカサ「ついうっかり強くつつきすぎた…」
そんな仲の良い三人の姿を、少し離れた位置から目を細めて見ながら、スケッチブックにペンを走らせているモブリットであった
-
- 105 : 2014/03/19(水) 09:17:00 :
- ハンジ「ねえねえ、ちょっと聞いて…ぼそぼそ…」
ハンジはリヴァイとミカサに小さな声で話しかけた
リヴァイ「いいなそれ、のった」
ミカサ「楽しそう…」
ハンジとミカサは、なまこを手で一匹ずつ掴んだ
リヴァイはハンカチごしに…なまこを掴む
そして、それを後ろ手に隠し持ち、今だスケッチに勤しむモブリットに近寄る
ハンジ「モブリット~」
モブリット「…あ、ハンジさん皆さん、もうなまこはいいんですか?」
リヴァイ「モブリット、俺からのプレゼントだ、受けとれ」
リヴァイはそう言うと、手に持っていたなまこをモブリットの頭に乗せた
ミカサ「モブリットさん、私からも!!」
ポスッ…とミカサはなまこをモブリットに放り投げた
ミカサの投げたなまこは、モブリットの膝にちょこんと乗った
モブリット「うわっ、兵長、ミカサ、何やってくれてるんですか!?」
慌ててスケッチブックを砂浜に置き、頭の上のなまこを掴もうとするモブリットに…
ハンジ「私からも、愛をこめて…やあっ!!」
ハンジはなまこをモブリット目掛けて投げつけた
それはモブリットの…顔面にヒットした
モブリット「…は、ハンジさぁぁん!?なんてことを!!顔がべとべとするじゃないですかぁ!!」
モブリットは顔を真っ赤にして怒りを爆発させた
-
- 106 : 2014/03/19(水) 09:17:20 :
- ハンジ「やばっモブリットが切れた顔してる、にげろ~」
ハンジはにやにやと笑いながら、海に逃げた
リヴァイ「モブリット、気色わりぃぞ…」
ミカサ「汚いですモブリットさん…」
眉をひそめる最強コンビに、激昂するモブリット
モブリット「あんたらがやったんでしょうがぁ!!こら、待ちなさい!!」
モブリットはなまこを投げ返そうとしたが、リヴァイとミカサも素早く海に逃げてしまった
リヴァイは逃げる前にモブリットに何かを投げて…
モブリット「…あの人たちは、全く!」
モブリットが、リヴァイが投げてよこしたものを確認すると、それは…
モブリット「濡れタオルじゃないか」
そのタオルで頭や顔を綺麗に吹き、砂浜に座り込んだ
モブリット「全く、イタズラ好きな人達だな。子どもみたいだ…」
そう言いながら、何故か微笑みを浮かべるモブリットであった
-
- 109 : 2014/03/20(木) 17:59:52 :
- ハンジ「おーい、モブリットもおいで~!」
ハンジが海から手を振ってモブリットを呼んだ
モブリット「…はいはい」
モブリットはひとりごち、立ち上がって砂を払った
スケッチブックを砂浜に置き、海に入ると、不思議と体がふわりと浮いた
モブリット「…普通の水ではないみたいだな…」
おもむろに水を少し口に含んでみる
モブリット「…塩辛い…塩水なのか」
ハンジ「モブリット、泳げないのお!?」
モブリット「失礼な…」
泳がずとも、腰辺りの水深で溺れる深さではないのだ
モブリットはさっさとハンジ達に合流する事にした
-
- 112 : 2014/03/21(金) 07:47:54 :
- ミカサ「海を泳いで、直接部屋に帰れる…んですね」
ミカサもハンジも、パレオを着たまま海に入ってしまっていたため、コテージから海に繋がる短い階段に、パレオを脱いで掛けておいた
ハンジ「そうだね、部屋から好きな時に海にダイブ出来ちゃうし、海をぼーっと眺めるのもいいし!!お魚釣るのもいいし!!」
モブリット「魚釣りですか…少しやってみたいですね」
リヴァイ「俺はとにかく綺麗な魚が見てえな」
ハンジは、コテージの階段に繋いでいた大きめのゴムボートに、何やら荷物を積み込んでいた
モブリット「ハンジさん、何をされているんですか?手伝いますよ」
モブリットは海から上がり、荷運びを手伝う
ハンジ「ああ、少し食料と水をね♪今から 50メートルほど先の…ほら、海の色が、エメラルドから、サファイヤブルーに変わってるだろ、あの辺りに泳ぎに行こうかとね」
リヴァイ「魚が沢山いるのか?」
ミカサ「オーム…なまこもいますかね」
ハンジ「あの青い所からは水深が深くて…下が珊瑚なんだ!!だからトロピカルフィッシュが沢山見られるよ!!」
モブリット「スケッチを…あっそうだ、スケッチブックは砂浜だ。取ってきます!!」
モブリットは慌てて走り去った
-
- 119 : 2014/03/22(土) 21:15:55 :
- ボートを四人で押しながら、50メートルほど先の、海の色が変化する地点にまで行った
ボートが動かない様に錨を落とす
ハンジ「ここからは水深8メートル位になるから、溺れないように気を付けてね?」
ハンジはそう言うと、ゴーグルひとつで、海の底に潜っていった
ミカサは浮き輪に入って、水中めがねを使って海の中を覗いている
たまに水から顔をあげて、歓声をあげる
ミカサ「青い魚や、オレンジの魚が沢山います…凄い…です」
リヴァイ「青いのはな、確か南洋ハギだ、前に教えてもらった気がする」
リヴァイがそう言うと、ザバッと海面に顔を出してハンジが頷く
ハンジ「うんうん、ナンヨウハギだね。あとオレンジのはクマノミだよ!?分からなかったら呼んでね!?じゃあ行ってくる!!」
ハンジはそう言って、また海に潜って行った
ミカサ「呼んでね…と言われても…ずっと潜っているし…」
リヴァイ「すげえ体力してやがるからな。泳ぎも上手い」
ミカサ「兵長は泳ぎはハンジさんに負けてるんですね…」
リヴァイ「ずっと浮き輪に掴まってなきゃいけねえお前よりは上だがな…」
リヴァイはふん、と鼻を鳴らした
-
- 122 : 2014/03/23(日) 20:33:55 :
- ぷかぷかと浮き輪で浮きながら、口を尖らすミカサ
ミカサ「私だって泳げる…と思う。足が届かなくても…たぶん」
ミカサは浮き輪から出ようとした
リヴァイ「無理すんな。お前、こんな所で溺れられても助けれねえぞ?」
リヴァイのその言葉に、一瞬表情が固まるミカサ―もともとあまり感情を表に出すタイプではないのだが
ミカサ「…それはいや。また兵長に助けられるのだけは、嫌」
ミカサはふるふると頭を振った
リヴァイ「…なら大人しく掴まってろ」
ミカサ「はい、兵長」
ミカサは意外にも素直に言うことを聞いたのだった
-
- 123 : 2014/03/23(日) 20:48:42 :
- リヴァイ「ま、そこでぷかぷか浮いてるだけでも、充分楽しめるだろ…下がすげえからな」
ミカサ「はい、兵長」
その時、誰かがいきなり、ざばっと海からミカサの浮き輪の横に顔を出した
ミカサ「わっ…」
ミカサは思わず声をあげた
モブリット「あ、ごめん。びっくりさせたかな…ほらミカサにプレゼント」
モブリットはポイッとミカサに何かを放り投げた
それはミカサの浮き輪の上にちょこんと乗った
ミカサ「オーム…あ、なまこ…」
つんつんとなまこをつつき出すミカサ
モブリット「兵長にも…はい!!」
モブリットは、手に持っていたなまこをリヴァイの顔面に投げつけた
リヴァイ「…モブリット、てめえ!?」
モブリット「じゃ!!また!」
モブリットは敬礼をすると、見事なフォームで水中に消えた
リヴァイ「…あいつも達者なのか…」
ミカサ「兵長は、ハンジさんにもモブリットさんにも負けた…」
ミカサは手を口元に持っていき、驚きの表情を見せたのだった
-
- 127 : 2014/03/24(月) 10:20:04 :
- ハンジ「うーん、やっぱり海はいいなあ!!」
水中と、海面を行ったり来たりしていたハンジは、少し休憩なのか、体を仰向けにしてぷかぷか海面に浮かんでいた
軽く脚をばたつかせている
背泳ぎの格好だ
そのすぐ横に、ざばっと人が顔を出した
モブリット「ハンジさん!」
涼しげな表情で微笑んでいる、モブリットであった
その少し低い声が、ハンジの名を呼んだ
ハンジ「おっ、モブリット!!君も相当泳げる口だね!?」
ハンジは体を起こして、立ち泳ぎをしだす
モブリット「ハンジさんにも、プレゼントです…えいっ!!」
モブリットは隠し持っていたなまこを二匹、ハンジに投げつけた
一匹は顔面に、一匹は頭の上にちょこんと乗った
ハンジ「うわっ…なまこ?!しかもべっとべとじゃないか!!」
顔が粘液まみれになったハンジは、悲鳴をあげた
モブリット「なまこが良くお似合いですよ、ハンジさん」
モブリットはにこっと笑ってそう言うと、水中に消えた
ハンジ「まあてえ!!こらあモブリットぉぉ!!」
ハンジはモブリットを追って、水中に入ったのであった
-
- 133 : 2014/03/25(火) 13:34:41 :
- ハンジは水中深く潜り、辺りを見回す
視界は良好、海の水はとても澄んでいて、遠くまで見渡せる
ゴーグル越しに、逃げた副官の姿を捉えるべく目を光らせる
ハンジ「(ちっ…どこ行ったんだろ…?)」
ハンジは水中で舌打ちをし、息をするために海上へ顔を出した…その時
バシャッ…顔を出した辺りに投げ込まれる…なまこ
モブリット「捕まりませんよ~、ハンジさん!」
20メートルほど先にいるモブリットは、見事なコントロールでなまこを投てきしたのであった
ハンジ「私が泳ぎで勝てないなんて…」
副官の意外な特技に、唖然とするハンジであった
-
- 139 : 2014/03/26(水) 15:25:29 :
- ミカサ「ハンジさんは、モブリットさんを捕まえられないみたいですね…」
ミカサは相変わらず浮き輪に入りながら、ぼそっと呟いた
リヴァイ「あのハンジより泳ぎが上とはな…何せあいつは半魚人て呼ばれてやがったんだぜ?」
リヴァイは、ミカサの入っている浮き輪のロープを引っ張って移動を手伝っていた
ミカサ「半魚人…ですか…確かに…」
ミカサはほくそ笑んだ
リヴァイ「この辺でいいか。真下に珊瑚が沢山だぞ、見てみろ」
リヴァイが海面を指差した
ミカサ「兵長、なまこを持っていてくれませんか?海に落ちてしまいます」
ミカサはなまこを大事そうに手で持って、リヴァイに差し出した
リヴァイは思いきり眉を引き絞る
リヴァイ「嫌だ!!絶対に触りたくねえ!!」
ミカサ「では、落ちないように見ていてくれませんか?」
リヴァイ「落としとけばいいんだよ!?」
リヴァイは、ミカサの懇願をはねのけた
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- 148 : 2014/03/27(木) 18:07:32 :
- ミカサ「兵長と私はとことん趣味が合わない…と思う」
ミカサは大事そうになまこを手に乗せながら、呟くように言った
リヴァイ「ああそうだな、心底ホッとしているぞ、お前みてえな変態と趣味が合わなくてな」
リヴァイはふん、と鼻を鳴らした
ミカサ「兵長が変態だと思う…」
リヴァイ「大事そうになまこを手にしてる奴に言われたくねえよ!!くそミカサ!!」
リヴァイのその言葉に、ミカサが鼻を鳴らした
ミカサ「兵長はなんでもくそ、をつければいいと思ってる…表現力が、皆無…」
リヴァイ「まともに喋れねえお前に言われたかねえよ!!」
ミカサ「私は喋れる…かなり流暢に…」
リヴァイ「流暢なんて言葉、お前には一番縁遠いわ!!馬鹿が!」
ミカサ「兵長…ち、び」
リヴァイ「お前もそれしか言えねえだろうが!!」
モブリット「要するに、結局似た者同士なんだよな…兵長とミカサは」
その様子を少し離れて見ていたモブリットは、うんうん、と頷いた
-
- 149 : 2014/03/27(木) 18:46:57 :
- そんな保護者然としたモブリットの背後からザバッと音がし、人影が襲いかかった
そして、モブリットは羽交い締めにされた
ハンジ「油断したねぇぇ~モブリットぉ?覚悟は出来てるだろうね…んっふっふっ…」
モブリット「しまった…忘れてた…」
ハンジ「さあて、どうしてくれよう…ヒッヒッヒッ…」
モブリット「あっ…向こうにクジラがいますよ!?ハンジさん!!」
モブリットはそう叫んだ
ハンジ「どっ…どこどこ!?くじらちゃん!?」
ハンジは羽交い締めを解いて、辺りをきょろきょろした
モブリット「クジラなんて…いませんよ?」
モブリットはふっと不敵な笑みを浮かべた
ハンジ「うっ、嘘をついたね!?モブリットひでえぇ…そんな奴だったとは思わなかった…」
モブリット「たまにはいいでしょう?分隊長…では失礼」
モブリットはまた、見事なフォームで水中に消えた
ハンジ「あああ、モブリットに良いように操られてる気がする…」
リヴァイ「気がするじゃない、操られてんだよ、クソメガネ」
いつの間にか隣に来ていたリヴァイがらぼそっと呟いた
ミカサ「モブリットさん、かっこいいかも…」
ハンジ「ま、たまにはいっか…」
ハンジは肩を竦めた
-
- 161 : 2014/03/29(土) 08:58:42 :
- ハンジ「へえ、ミカサは足の届かない所は怖いんだ。完全無欠なイメージがあるから、意外だね」
ハンジは浮き輪に入っているミカサと、ガールズ?トークをしていた
ミカサ「大丈夫…とは思う…のですが、何だか怖いんです」
そんな不安そうなミカサの頭を撫でるハンジ
ハンジ「海は初めてだしね、うんうん。後でまた浅い所へ行こうね!?」
ミカサ「ハンジさんは、優しい…それに引き換え兵長は…」
ミカサの視線の先には…
モブリット「ちょっと兵長!?邪魔をしないで下さいよお!!」
リヴァイ「俺にも描かせろモブリット」
ゴムボートの上で絵を描くモブリットの後ろから、筆を持って落書きしようとするリヴァイの姿があった
ハンジ「面白そうだね!!私も邪魔…もとい描きに行こっと♪」
そう言うと、ハンジは素早く泳いでゴムボートに張り付き、海水をモブリットにかけはじめた
ミカサ「やっぱりハンジさんも一緒だった…」
いたずら好きな上官に、肩をすくめるミカサであった
-
- 168 : 2014/03/31(月) 01:23:18 :
- ハンジ「あー、楽しかったね♪」
長い時間を海で過ごした一行は、ランチをとるために、ホテル内の開放的なレストランに行った
頼んだのは、おおえびの塩焼き
ビーフのワイン煮込みポテト添え
チキンソテー、蟹のチーズ焼きなど…
どれもボリューム満点である
ミカサ「美味しそう…頂きます」
リヴァイ「あー、腹へったな…」
リヴァイは泳ぎすぎてぐったり、テーブルに突っ伏していた
モブリット「はい、ハンジさんどうぞ」
モブリットはハンジのために、取り分け皿に料理を盛って渡した
ハンジ「モブリットありがとう!!頂きます!!」
モブリットに海でなまこをぶつけられたことも忘れたのか、気にしていないのか、にこにこと機嫌のよいハンジ
ミカサ「…兵長も、どうぞ」
ミカサはモブリットの真似をして、皿に料理を盛ってやる
リヴァイ「もう少し彩りを考えて盛れねえか…ミカサ」
リヴァイの言葉に、ミカサが口を尖らす
ミカサ「お腹に入ったら彩りなんて関係ない…はず。兵長はだからもてない、細かいから」
リヴァイ「モテないって断言すんな!!ミカサ!!」
リヴァイは声をあげた
-
- 176 : 2014/04/01(火) 19:15:39 :
- 昼食後は、ゆっくりメトル島内を歩いて一周する事にした
一周 20分ほどの小さな島であるから、散歩にはうってつけだ
南国の楽園の白いビーチを、彩り鮮やかなパレオをはためかせ、二人は駆ける
ハンジ「いやっふぅ~!そぉれっ!!」
ミカサ「…えいっ!!」
白いビーチの所々にあるなまこを、リヴァイとモブリットに投げつけるハンジとミカサ
リヴァイはサッ…と躱し、モブリットは網でキャッチしては、ビーチに戻すという作業に従事している
モブリット「ハンジさん、ミカサ!!なまこだって生き物なんですよ!?投げてはいけません!!」
リヴァイ「…モブリット、お前もさっき海で投げまくってたじゃねえか…」
リヴァイはじと目をモブリットに向けつつ、また飛んできたなまこを避ける
モブリット「兵長、海で投げても痛くないと思いませんか?でも地面なら、きっと痛いですよ」
リヴァイ「そういう問題でもないと思うがなあ…っと…あぶねえ…てめえらいい加減にしやがれ!!」
リヴァイはなまこを避けながら叫んだ
モブリットはため息をもらす
モブリット「普通にパレオをはためかせて走ってくれれば、追いかけ甲斐があるのになあ…」
独り言のように呟いたのだった
-
- 183 : 2014/04/03(木) 16:08:34 :
- ハンジ「はー、疲れた」
ハンジは白い砂浜にどさっと腰を下ろした
ミカサはまだ駆けずり回っている
ミカサ「兵長…えいっ!!」
リヴァイ「ちっ…まだ投げてきやがる!!」
リヴァイは一瞬たりとも油断ができない…止まればそこに、大嫌いななまこが飛んでくるからだ
モブリット「ミカサ、いい加減になまこを投げるのはやめ…うわっ…」
止めに入ったモブリットにまで、なまこを投げつけるミカサ…
ハンジ「ミカサが凄く生き生きしていて可愛いな。やらせてあげなよ、モブリット」
モブリット「しかしハンジさん、兵長がもの凄く不機嫌になりますよ…?」
ハンジ「モブリット、リヴァイは大丈夫だよ、ほら…」
ハンジが指を指す先には…
リヴァイ「俺は本気であいつを…つぶす!!」
なんと忌み嫌っていたなまこを素手でひっつかみ、ミカサに投げ始めた
ミカサ「兵長が攻撃してきた…うっ…」
ミカサはしっかりとなまこをキャッチし、リヴァイに投げ返した
モブリット「なまこのキャッチボール…」
ハンジ「ね?大丈夫だろ?」
ハンジはにっこり微笑んだ
-
- 184 : 2014/04/03(木) 16:23:20 :
- モブリット「…」カキカキ…
ハンジ「…」ジーッ…
ハンジは隣に腰を下ろしたモブリットの手元を凝視していた
白い砂浜に腰を下ろし、軽快に筆を滑らせるモブリット
ニューカレドニアに来て、まだ一泊しかしていないのだが、スケッチブックは既に一冊埋まりそうな勢いだった
ハンジ「モブリットはさあ…」
ハンジが静かに口を開いた
モブリット「はい…?何でしょうか」
モブリットは問いかけに顔を上げ、ハンジの方に視線を移動させた
ハンジは、海のずっと向こうを見ているように、目を細めて遠くを見つめていた
ハンジ「やっぱり、戦いたくはないよね?」
モブリット「…どういう意味ですか?」
ハンジの問いに、モブリットは首をかしげた
ハンジ「君にはいろんな才能があるじゃない?絵も、泳ぎも、それに頭もいい…どうして調査兵団に入ったの?」
ハンジが真摯な目をモブリットに向けて、言葉を発した
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- 185 : 2014/04/03(木) 17:50:14 :
- モブリット「どうして今さら…?」
モブリットは肩を竦めた
ハンジ「いや、ずっと聞きたかったんだよ、機会がなかっただけでさ…」
ハンジは少し頬を膨らまして呟いた
その様子を見ていたモブリットは、苦笑しながらも口を開く
モブリット「どうして…と理由を聞かれましてもね…新兵勧誘式で聞いた内容で…選んだんですよ、調査兵団を」
ハンジ「キース団長の勧誘…?」
モブリット「それもありましたが、当時のエルヴィン分隊長の演説が、私の心を打ちましたね…ま、入ってしばらくは、後悔の連続でしたが。生きた心地がしませんでしたし…ずっと」
モブリットは遠くを見るような目を、空に向けた
ハンジ「そっか…そうだよね…」
ハンジは副官の横顔をちらりと見て、頷いた
モブリット「運のつきが、第2分隊に配属された時でしたねえ…しかも分隊長の副官なんてものを拝命してしまいました」
ハンジ「…うん。私が第2分隊の分隊長に指名された時だね」
ハンジは頷いた
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- 186 : 2014/04/03(木) 18:29:36 :
- モブリット「そうです。ハンジ・ゾエと言えば、巨人のお尻を追いかける変人で有名でしたから…。私ももう、命は無いだろうなと覚悟したものです」
ハンジ「…ああ、そうだね、変人だよね」
ハンジは俯いた
モブリット「最初こそ、貴女の副官なんて…と重荷に感じていましたし、何故自分が…とも怨みましたが…副官として貴女につくようになって、貴女の良さに気が付くのに、時間はかからなかったんですよ…?」
モブリットが、はにかんだ様に笑みを浮かべた
ハンジ「モ…モブリット…」
モブリット「ところで…」
モブリットがハンジに顔を向けた時―
ハンジの顔が何時になく真っ赤に紅潮しているのが目に入った
モブリット「どうしてそんなに赤い顔をされているんですか…そんな顔をされては…私は、勘違いしてしまいますよ…?」
モブリットがまた、苦笑気味に呟いた
ハンジ「勘違い…?」
モブリット「はい、貴女には兵長がいるのに…私にそんな顔をしてはいけませんよ?」
モブリットは何処と無く寂しげに微笑んだ
-
- 189 : 2014/04/04(金) 09:54:02 :
- その時だった―
バシッ…
何処からか飛んできたなまこ、しかもベトベトお怒りversionが、モブリットの頭にぶつかった
モブリット「ふぁっ!?何ですかこれ…うっわ…ベトベト…」
何が起こったかわからず、後ろ頭をさすり振り返ると、リヴァイが後ろに立っていた
リヴァイ「ハンジには俺がいるってどういう事だ…こんな奇行種を俺に押し付けんな!!」
モブリット「へ、兵長…!ベトベトになったじゃないですか!?しかも押し付けんなってあなたね…!」
恨みのこもった目をリヴァイに向けるモブリット
ハンジ「ちょ、ちょっと喧嘩しないでよ!?」
ミカサ「ハンジさんが悪い…のか、兵長が悪い…のか…難しい問題…」
手でなまこを弄びながら、三人の様子を少し離れて伺うミカサであった
-
- 196 : 2014/04/05(土) 17:09:35 :
- 結局しばらくなまこの投げ合いになった調査兵団一行だったが、さすがに疲れて、コテージに戻っていた
一番先の部屋―人間辞めてるコンビの部屋―に、四人が集まっていた
ハンジ「これはどうかなあ、ミカサに似合うと思って!!」
ハンジは自分の荷物から、いろいろな服を取り出しては、ミカサに宛がっていた
白い膝下のワンピース、サマーニットにフレアスカート、女の子らしい服ばかりである
ミカサ「ハンジさん、こんなに沢山…」
ミカサにが呆れるほどに、様々な洋服が並べられていた
ハンジ「私にも妹がいたらこうしてあげたいな…って思っていたんだよ」
ハンジは嬉しそうに顔を綻ばせた
リヴァイ「似てねえ姉妹だな」
ハンジ「似てるよ!?ねーミカサ」
モブリット「ミカサは美人ですからねえ」
モブリットが首を振ってそう言った
ハンジ「…まるで私が美人じゃないみたいじゃないか!?」
リヴァイ「自分が美人だと思っているのかクソメガネ…」
リヴァイが眉をひそめた
ハンジ「美人だろ!?」
モブリット「美人って何でしたっけ…?」
ハンジ「リヴァイもモブリットも、ひでえ!!ミカサ、あっちの部屋行こ!」
ハンジは怒って、ミカサを連れて部屋を出ていってしまった
-
- 199 : 2014/04/06(日) 14:40:42 :
- モブリット「…はぁ」
モブリットは気が抜けたかの様に、ソファにドサッと腰を下ろした
リヴァイ「疲れてるみてえだな、お前」
リヴァイは向かい側に腰を下ろした
モブリット「まあ、いつも疲れているかもしれませんね、私は…はは」
モブリットは、そう言って力なく笑った
リヴァイ「まあ、飲め」
リヴァイが差し出したのは、冷えたミネラルウォーターだった
モブリット「すみません兵長、気が利かなくて…頂きます」
モブリットは一口飲んでため息をついた
リヴァイ「お前は、いつも気を使いすぎなんだ。あいつにも、俺にも、他の奴にもな」
モブリット「そうでもないですよ…多分ただ要領が悪いだけなんです」
そう言ってまた、力なく笑った
-
- 200 : 2014/04/06(日) 15:01:21 :
- リヴァイ「お前は、良くやっていると思う。気苦労は絶えないだろうがな」
モブリット「兵長にそう言って頂けると、凄く嬉しいです」
モブリットは顔をほころばせた
リヴァイ「奴の相手は、お前にしか出来ないと思う。暴走機関車みてえに、自分を省みずに特攻しやがるような奇行種だからな」
リヴァイの真摯な眼差しに、モブリットはそれを受け流すかの様な、柔らかい眼差しを返した
モブリット「…そうですね。確かに暴走される時もあります。そう言うときは勿論、全力でお止め致します。…あなたの大切な方ですからね」
モブリットのその言葉に、リヴァイが眉をひそめる
リヴァイ「その事だがな…さっきも言ったが、奴は確かに大切な存在に当たるだろう…一番付き合いの長い、馴染みだからな。だが、それだけだぞ」
モブリット「いえ、でも…」
モブリットは思い出していた
オーストラリア旅行での出来事が書かれた壁新聞を…
リヴァイ「お前の言いたいことはわかる。確かにそう言うことはあったが、あれっきりだぞ?帰ってからは一度もねえし、いつも通りの関係だ」
リヴァイは苦笑気味に言った
-
- 201 : 2014/04/07(月) 23:04:12 :
- モブリット「…ですが兵長、私にもよく分からないんです。ハンジさんの気持ちは勿論、自分自身の気持ちすら…」
モブリットは俯きため息をついた
リヴァイ「お前の気持ちか…?そんなのこれをみりゃわかるさ」
リヴァイが示したのは、テーブルに置かれたスケッチブックだった
リヴァイはそれを手にとり、ぱらぱらとめくる…
そしてあるページでめくる手を止めた
リヴァイ「ほら、これだ」
モブリット「…」
リヴァイ「こんなのを描くくらいだ。相当ハンジにお熱だと思うがな?」
リヴァイはいたずらっぽい笑みを浮かべてそう言った
-
- 208 : 2014/04/09(水) 17:19:27 :
- モブリット「兵長…笑うと…その…」
モブリットが、笑みを浮かべるリヴァイの顔を見ながら、呟くように言った
リヴァイ「あぁ?俺が笑うと変かよ?」
一瞬で、元の不機嫌そうな顔に戻ったリヴァイが、いつも通りの口調で言った
モブリット「はい、変です…と言うのは冗談ですが、お見受けした事が殆どありませんから、思わず見つめてしまいました」
モブリットは顔に柔らかな表情を浮かべて微笑んだ
リヴァイ「…あぁ、そういえば言葉を忘れて見つめていやがったな…俺はそんな趣味はねえぞ、モブリット」
モブリット「私もありませんよ。ただ…」
リヴァイ「ん、何だ?」
物言いたげに自分を見てくるモブリットに、リヴァイは首を傾げた
モブリット「兵長が女性なら、考えないわけではありませんが」
モブリットは顎に手をやって、考える素振りを見せた
リヴァイ「…あぁ?何をだ!?やっぱりお前!?」
後ずさるリヴァイ
モブリット「何故、逃げるんですか?」
困ったような表情をするモブリットに、眉をひそめるリヴァイ
リヴァイ「俺にはそんな趣味はねえからだ!!」
モブリット「私にもありませんって。私が言いたいのは…兵長は、いつも清潔ですし、掃除が趣味ですし、優しいですし、女性ならおもてになる事間違いないと言う事です」
リヴァイ「全く誉められている気がしねえ…」
リヴァイは俯き額に指をあてた
-
- 209 : 2014/04/09(水) 18:52:16 :
- モブリット「それに…兵長…兵長は優しすぎるんです」
モブリットがふう、と息をついた
リヴァイ「あぁ?」
モブリット「兵長は、私に遠慮なさっているのではないですか?ご自分の気持ちに、そっと蓋をされたのではないですか?」
モブリットは、生真面目な顔をリヴァイに見せた
リヴァイ「…いや、違うな。遠慮なんかしねえし、そっと蓋をする様な事が出来るほど、俺は人間できてねえよ」
モブリット「そうでしょうか…」
リヴァイ「あぁ、そうだ」
リヴァイはふん、と鼻を鳴らした
モブリット「ま、結局はあの人の気持ち次第なんですけどね」
モブリットははぁ、とため息をついた
-
- 213 : 2014/04/11(金) 09:00:24 :
- ―その頃、もう一つの部屋―
ハンジ「いやっふぅ♪ミカサちゃん可愛い!ハンジさん滾っちゃうよぉ!」
ハンジに白のサマードレスを着せられ、髪をポニーテールに結ってもらったミカサの姿
それを見て、まるで奇行種の如くぐるぐる回り、悶えながら喜ぶハンジ
ミカサ「ハ、ハンジさん…恥ずかしいんですが…」
ミカサは頬をほんのり赤く染めていた
ハンジ「恥ずかしいだなんて!!もっと可愛いじゃないか!?あーっもう!!私が男だったらなあ!!」
ミカサ「ハンジさんが男…正直違和感が無い…かもしれない…です」
ミカサはぼそっと呟いた
ハンジは一瞬、探るような目をミカサに向けたが、直ぐに笑顔になった
ハンジ「そうだろ!?」
ミカサ「…でも、やっぱりハンジさんは、女らしい…です」
ハンジ「えっ!?ど、どっちなんだよミカサ…」
ハンジは首を傾げた
-
- 214 : 2014/04/11(金) 09:15:42 :
- ミカサ「ハンジさんは、女性らしい…と思う。たまに奇行種になるけれど、普段はとても柔らかくて優しい…です」
ミカサは俯いて、両手の指と指を絡ませながら、恥ずかしげに呟いた
ハンジ「や、柔らかい?どこが!?胸!?体!?」
ミカサ「いえ、体は筋肉でかっちかちだと思う。柔らかいのは…上手く言えませんが、雰囲気というか…包容力というか…」
ミカサは目線を上に挙げて、必死に言葉を探そうとする
ハンジ「ミカサ…」
ミカサ「アルミンなら、きっとぴったりな言葉が言えるんだろうけれど…う~んと…あっ!!思い付きました!!」
ミカサがぽん!!と手のひらを拳で叩く仕草をした
ハンジ「な、なんだろ!?」
ミカサ「ハンジさんは…慈愛…です。そう、それだ!!」
ミカサは目を輝かせた
ハンジ「慈愛…に溢れてるって言うこと?」
ミカサ「はい、そうです。全てを温かく包み込んでくれる、と思う」
ハンジ「えー!?そうかなあ、全く自覚が無いし、むしろその逆だと思うんだけどなあ」
ハンジは鼻の頭をぽりぽりと掻いた
-
- 219 : 2014/04/13(日) 07:57:30 :
- ミカサ「私はハンジさんの事は…エレンに危ないことをさせる、危険人物と認識していた…けど、話をしたり、こうして一緒にいると…違うな、と思いました」
ハンジがソファに座ったので、ミカサも隣に腰掛ける
ハンジ「危険人物ね…うん、それは当たっているよ」
ミカサ「いえ、確かに危険な時もありますが、やっぱり慈愛…なんです。他の人には伝わりにくいかも…で、そのハンジさんの本質をわかっているのが、兵長と、モブリットさんなんだと思います」
ミカサはゆっくり、だが一生懸命話をした
ハンジ「リヴァイと、モブリットか…」
ハンジはため息をついた
ミカサ「ハンジさんの気持ちは、どちらに向いてるんですかね」
ミカサはハンジの顔を見ながら言った
ハンジ「…私は、どちらもえらべない。選ぶ資格なんか、無いよ」
ハンジはそう言うと、俯き目を閉じた
-
- 220 : 2014/04/13(日) 07:58:11 :
- ミカサ「どうして…ですか?ハンジさん」
ミカサはハンジの顔を怪訝そうに見た
ハンジ「…私は、自分の立場を利用してるだけだからさ…モブリットは副官だから、当たり前のようにいつも側にいてくれてる。副官じゃなかったら、私なんかに見向きもしないよ…」
ミカサ「違うと思う。モブリットさんはほんとにハンジさんが、好き…だと思う」
ハンジ「ミ、ミカサ…」
ハンジは顔を赤らめた
ミカサ「ハンジさん、顔が赤い…部下に惚れているんですか?」
ミカサの単刀直入な言葉に、ハンジは顔を真っ赤にしながら、首を振った
ハンジ「いや、そんなことは…考えてみた事もなかったよ…いつも、迷惑ばかり掛けてるのに…」
ミカサ「じゃあこの旅行は、考えるいい機会…になりそう」
ミカサはそう言って、ふふっと笑った
-
- 221 : 2014/04/13(日) 08:16:27 :
- ハンジはそんなミカサをじっと見つめた
そして、いきなりがばっと抱きつく
ハンジ「もー!!ミカサは子どもみたいだと思ったら、急に悟りきった様な事言っちゃって!!可愛いぞ!!」
そんなハンジにチラリと目をやり、ミカサは眉をひそめる
ミカサ「ハンジさん、懐かないで…?」
ハンジ「嫌だ、懐く!!」
ハンジはますますミカサを強く抱き締めた
ミカサ「顔が赤いのを見られたくない…から抱きついてる…でしょ?」
ハンジ「ち、違いますよ~だ」
ミカサ「では、顔を見せて…」
ハンジ「嫌だ!!」
ハンジのその言葉に、ミカサは身体をひねり、ハンジの腕の拘束から抜け出した
そして、ハンジの頬にそっと手をあてる
ミカサ「…ほら、真っ赤っか…」
ハンジ「…モブリットの事を、意識したことなかったから…」
ミカサ「あれだけ献身的なモブリットさんの事を、いままで全く意識しなかったなんて…鬼畜の所業…」
ミカサが眉をひそめた
ハンジ「な、なんだよ鬼畜の所業って!!」
ミカサ「兵長が教えてくれた…この世界で流行っているお笑い…のうたい文句?酷い有り様を指す言葉のようです」
ハンジ「リヴァイはいらない知識ばかりミカサに吹き込んで…」
ハンジは苦笑した
-
- 222 : 2014/04/13(日) 08:42:00 :
- ミカサ「兵長は、いろいろな事を教えてくれます…意外と」
ハンジ「リヴァイはもともと、優しい奴だよ。いつも不機嫌そうだし、態度も口調も粗暴だけど…」
ハンジはふっと笑みを浮かべながら言った
ミカサ「兵長の事も、好きなんですね」
ハンジ「…付き合いが長いからね。いろいろ共有してきたし、お互いのいろんな面も知ってる。だから、大事な人だよ」
ハンジは遠くを見るような目をした
-
- 226 : 2014/04/14(月) 19:13:08 :
- ミカサ「私と…エレンの様な感じ…ですかね」
ハンジ「いやあ、君たちほど長く一緒にいた訳じゃないけどさ…でも、そうだね、似てるかもしれないね」
ハンジはミカサにふっと笑顔を見せた
ミカサ「絆…ですかね。ハンジさんと兵長は、絆で繋がってる、そんな気がします」
ミカサはハンジの頭にそっと手を伸ばして、ゆっくり撫でた
ハンジ「絆かあ、そうかもしれないね」
ミカサ「モブリットさんとの間には…信頼、があります。絆はまだ、これからな気がする…」
ミカサのその言葉に、ハンジが驚いたように目をぱちくりさせる
ハンジ「ミカサ、どうしてそんな事がわかるの!?」
ミカサ「わたしも…よく考えるんです。エレンとの関係を…私はエレンのためならなんでも出来る…気がする。でもそれは一体何故なのか…」
ハンジ「それで、信頼と絆、かあ」
ハンジが納得したように頷いた
ミカサ「はい。アルミンに相談した事があって…それで…」
ハンジ「アルミンは、君たちの道しるべ何だね」
ミカサ「はい。アルミンはいつも私達を導いてくれます。私が育てた、自慢の子です!!」
えっへんと胸を張るミカサに、ハンジは思わず吹き出した
ハンジ「ミ、ミカサ…育てたって!!はは、ほんとに面白い!!」
ハンジはまた、ミカサに抱きついたのだった
-
- 227 : 2014/04/15(火) 17:11:02 :
- ハンジ「よし、とりあえず向こうの部屋に戻ろっか!!リヴァイが、ミカサがいなくて退屈してるかもしれないしね?」
ハンジはぽん、と膝を叩いて立ち上がった
ミカサ「あの、ハンジさん…この格好で行くんですか…?」
白のサマードレスのスカートの裾を摘まんでぼそっと呟くミカサ
丁度膝より少し下の長さで、すんなりとした脚がむき出し、である
ハンジ「可愛いからそのまんま!!ミカサは綺麗だから、何を着ても似合っちゃう!!お姉さんは楽しいよ!!」
ミカサ「私は着せ替え人形ですか!?」
抗議をするように詰め寄るミカサに、ハンジはにっこりほほえみ、頷く
ハンジ「うん」
ミカサ「こら!!」
ハンジ「あはは、ミカサ、行こ?」
ハンジの手がミカサに差し出される
ミカサはその手を、ぎゅっと握りしめた
姉がいたら、きっとこんな感じなんだろうなと、思いを馳せながら…
-
- 228 : 2014/04/15(火) 17:32:12 :
- ハンジ「やあやあ男性諸君、寂しかったかい!?戻ってきてやっ…むぐっ…」
リヴァイ達のいる部屋に戻るなり、大声で叫ぶハンジの顔に、クッションが飛んできた
リヴァイ「ノックくらいしろよ…あと、静かにしろ、クソメガネ」
リヴァイが指を指す方向には、ソファーで横になるモブリットの姿があった
ハンジ「ありゃりゃ…モブリット寝ちゃったか…」
ハンジはソファに歩み寄って、そっと顔を覗いた
体にはブランケットが掛けられていた
リヴァイ「昨日寝れてねえんじゃねえか?少し話ていたら、そのうちうつらうつらしやがった」
ハンジ「そっか、ごめんねリヴァイ」
ハンジはそっとモブリットの額に手を触れて、呟くように言った
-
- 229 : 2014/04/15(火) 17:33:55 :
リヴァイ「てめえはもっとモブリットに気を使ってやれよ…おいミカサ、ちょっと揉んでやるから、ついてこい」
リヴァイはそう言って、ミカサを手招きした
ミカサ「はい、兵長」
ミカサはこっくりと頷いた
ハンジ「も、揉んでやるって何を!?ミカサも暗黙の了解みたいに返事をしちゃってるし!!」
真っ赤になるハンジに、一瞥をくれるリヴァイ
リヴァイ「お前はやましい事しか頭にねえんだな、クソメガネ」
ミカサ「兵長に、旅の間、対人格闘の手合わせをお願いしているんです…」
ミカサもじと目でハンジを見た
ハンジ「な、何だ…そうだよね…あははは…」
リヴァイ「行ってくる…部屋を散らかすなよ!?」
リヴァイはそう言い残して、ミカサを伴って部屋から出て行った
-
- 236 : 2014/04/17(木) 22:59:07 :
- 砂浜で対峙する、リヴァイとミカサ
何度か脚や腕、拳を交わしたが、リーチが長いミカサでも、リヴァイにかする事すら叶わなかった
ミカサ「はぁ、はぁ…」
ミカサが肩で息をしているのに対し、リヴァイに息の乱れはない
リヴァイ「ミカサ、まだ無駄な力の使い方をしているな…只闇雲に、全部の攻撃に力を注いでは、もたないぞ」
ミカサ「ワンピースだから、負けたかも…」
リヴァイ「だから着替えろっつっただろうが…くそがき」
ミカサ「チビ…」
ミカサはリヴァイを睨み付けた
リヴァイ「俺はチビだがお前に負けん」
リヴァイはフン、と鼻を鳴らした
-
- 237 : 2014/04/17(木) 23:30:52 :
- リヴァイ「ほら、飲め」
砂浜に座るミカサに、リヴァイがオレンジジュースを差し出した
ミカサ「いただきます」
ミカサはぐびぐびと飲み干した
リヴァイは隣に腰を下ろして、ジュースを一口含んだ
ミカサ「兵長は…ハンジさんの事が、好きですか?」
ミカサの唐突な問いに、一瞬面食らったリヴァイ
リヴァイ「…まあ、嫌いじゃねえな。長い付き合いだからな」
ミカサ「大事な存在ですか?」
リヴァイ「…まあな。同志だしな」
ミカサはリヴァイの顔をじっと見た
「ハンジさんの事は…モブリットさんに任せるんですか?」
「…任せるもなにも、はなから俺の物でもねえし、大体な…俺は…」
リヴァイはそこで言葉を切った
「俺はもう、自分のせいで他人の人生を狂わせるのが嫌だ。だから深い付き合いはごめんだ」
ミカサ「なんだか、かなしいです、それ」
ミカサは表情を曇らせた
-
- 238 : 2014/04/18(金) 11:18:59 :
- ―水上コテージ―
ハンジ「モブリット、よく寝てるなぁ。昨日、寝られなかったって・・・もしかして、私のせいかな」
ミカサの言葉を思い出して、顔を赤くするハンジ
ハンジ「モブリットに、惚れてる・・・?私が」
ぼそっと呟いて、モブリットが寝ているソファの向かい側に、腰を下ろした
テーブルの上に置いてあったスケッチブックを、おもむろにめくる
ハンジ「たくさん描いたなぁ・・しかし、上手だね・・・って、あれ・・・?」
ハンジはページをめくる手を止めた
そのページには・・・
昨日行ったココティエ広場でみた、セレスト(天女)の像が描かれていた
だが、よく見ると、その顔はあきらかに昨日見た天女の顔ではなく・・・
メガネをかけて、慈愛に満ちた表情をしている・・・自分の顔
ハンジ「・・・モブリット・・・」
ハンジは泣き笑いの様な表情を顔に浮かべた
ハンジ「なんだよ、これ・・・私がこんな風だと勘違いしてるんじゃないかって、言ってたくせに・・・馬鹿」
呑気にすやすやと寝息を立てる、モブリットのそばに歩み寄って、跪く
ハンジ「モブリット・・・ねぇ、私、どうしたらいい?どうしたらいいか、わからないよ・・・」
モブリットの頬に手を伸ばそうとして、それを引っ込めたハンジ
そのまま、両手で顔を覆って、涙を流した
-
- 239 : 2014/04/19(土) 07:36:36 :
- モブリット「う…ん…」
その時、モブリットは寝返りを打った
体1つ分しかないソファの上で
結果的にどうなるかと言うと…
ハンジ「…わっ!!」
ドサッ…ソファの下で座り込んで泣いていた、ハンジの上に落ちた
モブリット「っつ…痛い…って、わっ!!」
ソファから落ちて目覚めたモブリット、真っ先に目に入ったのは…
涙を流している、ハンジの顔だった
慌てて飛び起きるモブリット
モブリット「ハ、ハンジさん、大丈夫ですか!?すみません、踏んでしまいまして!!お怪我は!?どこが、痛かったんですか!?」
泣いているハンジに詰め寄るモブリット
ハンジはその様子を見て、思わず笑った
ハンジ「…はは、大丈夫だよ、モブリット。ちょっと…膝が痛いかな」
モブリット「す、すみません、すみません」
必死に自分の膝を擦るモブリットの姿に、泣き顔が完全に笑顔に切り替わる
ハンジ「モブリット…君は…ふふ」
ハンジは呟く様にそう言って…
モブリットの頬に手を伸ばして、そっと撫でたのだった
-
- 240 : 2014/04/19(土) 09:41:36 :
- モブリット「ハンジさん…?」
流した涙の後を顔に残しながら、微笑むハンジに、首を傾げた
そして、慈愛に満ちた表情で自分の頬を撫でる上官に、思わず目を奪われる
ハンジ「ん、何?モブリット」
頬を撫でる手を止めて、首を傾げるハンジ
モブリット「…もしかして、泣かれていましたか…?」
ハンジ「…ああ、君が落ちてきて、痛かったからね?」
モブリットはハンジの顔をじっと見つめた
ハンジはつい…と視線を外す
モブリット「嘘をついていますね…ハンジさん。貴女の嘘は、分かりやすいんですよ?」
苦笑ぎみにそう言うモブリットに、ハンジはふわりと笑みを浮かべる
ハンジ「いいんだ、大丈夫だから。気にしないで?」
モブリット「…わかりました」
モブリットは何か言いたげな表情で、しばらくハンジを見つめていたが、それ以上何も言わなかった
-
- 242 : 2014/04/19(土) 20:08:37 :
- モブリットは、自分の頬に触れる上官の手を取り、その手を上官の膝の上に戻した
そして立ち上がる
モブリット「私はよく寝ていた様ですね。もう夕日が沈みかけています。絵を描いてきても構いません…か…」
モブリットは机の上のスケッチブックを手に取ろうとして、開いたままのページを目にした
上官の顔に視線を移すと…
何とも言えない…複雑な表情をしていた
ハンジ「天女の絵だ…綺麗な」
ハンジはまた、泣き笑いの様な顔を見せた
モブリットはしばらく何も言葉を発しなかった
だが、ふうと息をつき、柔らかで優しげな笑みを浮かべて、静かに口を開く
モブリット「綺麗でしょう。ココティエ広場の天女よりも、美しいと思います」
そう言い残して、一人部屋を後にした
-
- 246 : 2014/04/19(土) 21:24:21 :
- 部屋に残されたハンジ
ソファの下に座り込んだまま、また瞳を潤ませる
自分の右手を見る…先程までモブリットの頬に触れていた手
そっと握るが、その手は何も掴めない
ハンジ「私は…何て事を、してきたんだろう…」
モブリットの気持ちをはっきりと悟った今、ハンジは自分の今までにしてきた行動を後悔していた
彼を男として全く意識をしていなかった
何故ならいつもその顔は柔らかで優しげで、男というものを感じさせなかったからだ
いつも側にいる事が当たり前な、部下だった
それ以上でもそれ以下でもなかった
だから…あられもない姿でも、恥じらう事もなく、平気だった
脱ぎ散らかしたままの服を、何度彼は片付けただろう…その中に下着だって当然、あったのに…
どんな気持ちだったのだろう
彼は顔には一切出さなかったから、わからない
だがもし自分が同じ様にされたら…
深く傷ついたと思う
彼の寛容さに、甘えていたのだ
-
- 247 : 2014/04/20(日) 00:14:44 :
- 一人部屋を後にしたモブリットは、スケッチブックを手に、宛もなく歩く
どうして、あんな事を言ってしまったのだろうか…そう後悔の念を抱きながら
ハンジさんに、自分が男であると意識させてどうするのか
あの人を困らせるだけじゃないか
優しいあの人の事だ、きっと今ごろ泣いている
自分の気持ちなど、ずっと隠し通すべきだった
そのつもりで今まで仕えてきたつもりだ
それなのに…
いつの間にか、桟橋を渡り、島のビーチに来ていた
なまこが沢山いるビーチ
モブリットは砂浜に腰を下ろした
左手で、左頬に手をあてる…先程あの人の手が触れていた頬
自分の頬に触れるあの人の手を掴んだ時、そのまま引き寄せて、抱き締めたい衝動にかられた
そうしていれば、あの人は泣かなかったか?
どうすれば良かった…?わからない
一つわかる事、それは…
あの人を泣かせたくはない
あの人に笑顔でいて欲しい
それだけだった
-
- 248 : 2014/04/20(日) 09:26:23 :
- なまこビーチを後にし、何となく船着き場の桟橋へ歩を進める
夕焼けに照らされる島の風景はえもいわれぬ美しさと、何処と無く哀愁が漂っている様に見えた
絵を描くと言って出てきたにも関わらず、ペンを持ってこなかった
思わずため息が洩れる
手に持つスケッチブックは、何時もより重みを感じる気がした
小さなボートが数隻、停泊している桟橋
折角こんなに素敵な場所に来ているのに、あの人に辛い思いをさせてしまった
後悔先に立たず
桟橋から海を覗くと、小さな魚が泳いでいるのが見えた
桟橋から身を乗り出すように眺めていた、その時―
-
- 249 : 2014/04/20(日) 09:28:13 :
- モブリット「…うわっ!?」
いきなり後ろから抱きすくめられた―
と思ったら、後ろに体を引かれた
ミカサ「モブリットさん、早まらないで!!」
モブリットが振り向くと、顔を紅潮させて、息を荒げているミカサの姿がそこにあった
モブリット「…ミカサ?」
ミカサ「死んではいけない…飛び込まないで…」
ミカサは真摯な表情をモブリットに見せた
モブリット「死ぬって…ミカサ。ここから飛び込んでも死ねないよ。私は泳ぎが得意だし…第一浅すぎるよ」
モブリットは困ったような表情を見せた
ミカサ「確かに…浅い…いいえ、きっとモブリットさんは、海底に頭を打ち付けて死ぬつもりだった…はず」
モブリット「…はは」
ミカサのその言葉に、自然と笑みを浮かべた
-
- 250 : 2014/04/20(日) 09:32:35 :
- ミカサ「だって…思い詰めた表情をしていたから…」
顔を曇らせるミカサ
モブリット「…そんな顔をしていたかな?心配してくれたんだね、ありがとう、ミカサ」
モブリットはミカサの頭を優しく撫でた
ミカサ「今にも死にそうな顔でした」
モブリット「そうか…でも大丈夫だよ」
未だ心配そうに自分を見つめるミカサに、モブリットははにかんだ様な笑みを見せた
ミカサ「モブリットさん、部屋に戻りましょう。私はお腹がすきました」
ミカサはお腹をおさえて眉をひそめた
モブリット「ああ、そうだね。戻ろうか、ミカサ」
モブリットは、ミカサの頭をもう一度よしよしと撫でて、にっこりと笑った
-
- 253 : 2014/04/20(日) 22:45:28 :
- モブリットがミカサと船着き場で会話をしていた頃
水上コテージに、リヴァイが戻ってきた
部屋に入ると、ソファに腰を下ろして、俯いているハンジが目に入った
リヴァイ「ハンジ」
ハンジ「…リヴァイ、帰ってきたんだね」
ハンジは笑みを浮かべてそう言った
しかし、その笑みが何処と無く不自然なのと、目の周りの赤さ、潤んだ瞳で、何かがあった事がわかった
リヴァイ「どうかしたか?何かあったか?」
リヴァイはハンジの向かい側のソファに腰を下ろし、その様子を伺った
ハンジ「…君の言う通りだった。私はさ…もっとモブリットを気遣ってやらなきゃならなかった…」
ハンジは俯いたまま、力なく言葉を発した
リヴァイ「気が付いたか、あいつの気持ち」
ハンジ「…ああ…」
ハンジはゆっくり頷いた
-
- 254 : 2014/04/20(日) 23:05:58 :
- リヴァイ「ハンジ、お前はどうしたい?」
リヴァイの言葉に顔を上に上げたハンジ
ハンジ「私は…自分がどうしたらいいのか、どうしたいのか、わからないんだ…」
ハンジは両手で顔を覆った
すでに眼鏡は外してテーブルに置いていた
リヴァイ「迷っているか」
ハンジ「迷っていると言うか…本当に青天の霹靂でさ…びっくりしてて…」
ハンジが顔を上げると、自分に紳士な表情を見せるリヴァイがいた
リヴァイ「ま、ゆっくり確認すればいいんじゃねえか?モブリットの事をもう一度見つめ直すいい機会だ」
ハンジ「…リヴァイ…」
ハンジは何か言いたげな表情をリヴァイに向けた
リヴァイ「俺は、モブリットはお前を大切にすると思う。あいつは、優しいいいやつだ。だがな…」
リヴァイはそこで、一旦言葉を切った
リヴァイ「俺も一度お前を抱いた責任がある。だからハンジ…よく考えろ。俺はどんな結論が出ても受け入れる」
リヴァイは立ち上がり、ハンジの肩をぽんと叩いた
-
- 257 : 2014/04/23(水) 12:21:01 :
-
「リヴァイ・・・うん。ちゃんと向き合ってみるよ。ありがとう」
ハンジはやっと顔を上げた
「うじうじ悩んでるのはお前らしくねぇ、気色わりぃ」
リヴァイはそういって、眉をひそめた
「気色悪いって・・・相変わらず暴言はくねぇ、リヴァイ」
ハンジは立ち上がった
「気色悪いもんは気色悪い。さっさと立ち直りやがれ。涙なんかお前には似合わねえ」
リヴァイはテーブルの上のメガネを綺麗にふいてやり、ハンジの顔にかけてやった
「ありがとう、リヴァイ」
ハンジの輝くような笑顔に、リヴァイはなぜか顔をそむけた
「礼なんかいらねえよ。それよりなるべくいつも通りにしてろ、いいな。あいつが気を使う」
「・・・ああ、そうするよ、リヴァイ」
ハンジはリヴァイの肩にぽんと手を置いて、またにっこり笑った
「そうやって、笑ってればいいんだよ、お前は」
リヴァイはぼそっと呟く様に言ったのだった
-
- 258 : 2014/04/23(水) 12:41:40 :
- 「もどりました。兵長のせいで体が痛いです」
ミカサが水上コテージに戻ってきた
後ろからモブリットもついてきていた
「ただいま戻りました」
それを見るなり、ハンジがモブリットに駆け寄った
「おかえり、モブリット、絵を描きに行くっていってたのに、ペンを持って行ってなかっただろ?今から持っていこうと思っていたんだ」
そういって笑顔を見せた
「分隊長、そうなんです、忘れてしまって・・・すみませんわざわざありがとうございます」
モブリットも、はにかんだような笑みを浮かべた
「ミカサ、こっちにこい。ちょっと揉んでやる。おい、お前ら部屋からでてけ。今すぐ出てけ。邪魔だ」
リヴァイがミカサを手招きしながら、ハンジとモブリットに鋭い視線を送った
「ちょっと、揉んでやるって・・・何するの?!だめだよ、リヴァイ!」
ハンジはあたふたしたが、ミカサは至って冷静に
「はい、兵長」
と、リヴァイに歩み寄る
「ちょっと、ミカサ!!!」
ハンジはミカサを止めようとしたが、モブリットに止められる
「ハンジさん、行きましょう。邪魔をしてはいけませんし」
「も、モブリットまで何を!!」
ハンジは限界まで顔を赤くした
-
- 259 : 2014/04/23(水) 23:20:02 :
- 部屋を追い出された形のハンジとモブリットは、結局そのまま自分たちの部屋に戻った
ハンジ「モブリット、絵はもういいの?」
ハンジはペンを手にしながら言った
モブリットはスケッチブックを机に置きながら、首を横に振る
モブリット「はい、また後程描きに行こうかなと思います、分隊長」
モブリットは、いつもと変わらない口調で、まるで何事もなかったかのように涼しげな顔をしていた
ハンジはその様子を見つめながら、もしかしたら勘違いだったのかな・・・と思ってみたりした
だが、もしかしたら彼も私と同じように意識せずに接しようとしているのかもしれない
ふとそう思い至って、誠実で律儀な副官の事をもう少し深く理解してあげられるようになろうと思ったのだった
モブリット「・・・分隊長?どうされましたか?」
いつの間にかハンジは食い入るようにモブリットを見つめていた
その視線を感じたのだろう
荷物の整理をしていたモブリットが、怪訝そうな顔をハンジにむけて問いかけた
ハンジ「ううん、何でもないよ。荷物の整理、いつもやってもらってごめんね」
ハンジは今まで一度も口に出したことがないような事を言ってみた
よく考えたら、いままで当たり前の様にやってもらっていたことほぼすべてにおいて、副官にお礼を言ったことがない気がしたからだ
案の定、モブリットはハンジの顔をぽかーんと口をあけてみていたが、やがて柔らかなほほ笑みを浮かべた
モブリット「いいえ、荷物整理は趣味のようなものですから、御気になさらず」
そう言って、また荷物の整理をし始めるのであった
-
- 260 : 2014/04/23(水) 23:20:15 :
- ハンジは手持無沙汰になって、モブリットに歩み寄った
ハンジ「ねえ、モブリット、何か手伝おうか?」
床に座り込んでごそごそしているモブリットの背後から、そう声をかけた
モブリットは振り返り、首を横に振る
モブリット「あ、大丈夫ですけど・・・お暇なんですか?」
ハンジはその言葉にうなずいた
ハンジ「うん」
モブリット「でしたら、もうすぐ終わりますので、海でも見ていてはいかがですか?夕焼けがとてもきれいですよ、分隊長」
ハンジ「モブリットは見ないの?」
ハンジは首を傾げた
モブリット「私は先ほどみましたから、デッキから綺麗にみえるはずですよ。ご覧になってみてください」
ハンジ「・・・うん、そうするね」
ハンジはモブリットに促される様に、一人サンデッキに出た
-
- 261 : 2014/04/24(木) 11:34:55 :
- サンデッキに出て行った上官の背を見送り、はぁとため息をつくモブリット
「普通に・・・接することができていたかな・・・」
小さな声で一人ごちた
ミカサと部屋に帰る道すがら、自分なりにいろいろ考えた
その結果、やはり自分の気持ちというのをこれ以上出すのをやめる事にした
なぜなら、敬愛する上官をこれ以上困らせたくはなかったし、それに・・・
今まで通り、副官としてでもいい、あの人の背中を追いかけている方が、自分には合ってる気がしたからだ
それ以上求めることは、不相応だとも思った
そして、リヴァイ兵長の事もある
怒られるかもしれないが、兵長はあまり人に心を開かない人だ
唯一心を開いているのが、ハンジさんだろう
そんなリヴァイ兵長の事を知ってなお、その間に割って入るような真似は、自分には到底できない
私はハンジさんが好きだ
でも、リヴァイ兵長のことも敬愛している
そのお二人の仲を裂く様な事を・・・
絶対できない、そう思った
-
- 262 : 2014/04/24(木) 11:46:46 :
- ハンジはサンデッキから海に続く階段に、腰を下ろした
西日がきれいに海の向こうに沈んでゆく
ハンジ「私は、ちゃんとモブリットのことを見てあげられるかな」
はぁとため息をついて、つぶやくように言った
ハンジ「綺麗だなぁ・・・夕焼け」
憂いを瞳を水平線に向けた
何もかも包み込んでくれる様な、母なる海
そこに飛び込みたい衝動に、突然かられた
飛び込めば、何かが芽生えるかもしれない
何かを、海が教えてくれるかもしれない
唐突にそう思った
思い立てば行動が早い私
早速服のまま、ざばーんと海にダイブした
少し動きにくいが、私は泳ぎが得意だ
少し泳いで、夕焼けが手に届くところまで行こうとする
もう少しで手が届きそうで届かない
まるでそれは、私の心の中を表している様に思えた
-
- 264 : 2014/04/24(木) 11:58:58 :
- ハンジ「やっぱり、届かないや・・・そうだよね」
ハンジは100メートルほど沖まで泳いだ所で、夕焼けをつかむのをあきらめた
ふう、とため息をつく
背浮で体を海面に浮かしながら、脱力する
ハンジ「・・・このままきっと、何もつかめないんだ、私は」
なんとなく物悲しくなって、瞳を潤ませた
立ち泳ぎをすると、下に色とりどりの魚が見えていた
潜ってみようか・・・そう思った時
「分隊長!」
後ろからかかる、聞き馴染みのある声
何度も呼ばれたことのある、階級
私がいつも当たり前の様に聞いていた、その声
その声の主は、私を後ろからしっかりと抱きしめた
「モブリット・・・?」
私は振り返ろうとしたが、強く抱かれているためにそれができない
加えて立ち泳ぎだ、安定しない
「突然飛び込んで・・・服のままこんな遠くまできて・・・もし足でもつったら、どうするおつもりですか?分隊長・・・」
震えるような、モブリットの声
私は、何も言えなかった
-
- 265 : 2014/04/24(木) 12:11:16 :
- モブリット「いいですか?分隊長。服のまま泳ぐのはリスクが高いんです。いくら泳ぎが得意でも、服の重みで突然足がつったり、思う様に体が動かなくて疲れたりして、大変な事になってしまうんです」
モブリットはハンジをしっかりと抱いたまま、耳元で言葉を発していた
ハンジ「うん・・・ごめん」
ハンジは項垂れた
モブリット「私も、あわてていたのでズボンをはいたままです。上は、破り捨ててきましたが」
ハンジ「・・・・・・」
ハンジはもはや、何も言えなくなった
モブリット「さあ、戻りましょう。私もそう長い間この状態を保てる気がしません。分隊長・・・?」
そこでやっと、モブリットは自分が抱いている体が震えていることに気が付いた
抱いていた腕を離し、ハンジの前に身を躍らせて、絶句した
自分がいましがた、その背中を守ろうと再確認したその人が
その瞳から、涙をぽろぽろとこぼしていた
ハンジ「な、なんでもないんだ、本当に。なんだろうね、おかしいね、私の涙腺・・・」
泣き笑いの様なハンジの顔に、はじかれる様に
その体をしっかりと抱き寄せた・・・そして
モブリット「分隊長・・・すみません」
そうちいさく言葉を発したのだった
-
- 266 : 2014/04/24(木) 12:31:14 :
- そのままハンジを連れてコテージに戻ったモブリットは、デッキの階段にハンジを座らせて、コテージの中に消えた
ハンジはデッキの階段に、ボタンが引きちぎられたブラウスが落ちているのを目にした
さきほどまでモブリットが来ていた物だ
それをそっと手に取り、握りしめた
また、涙があふれてきた
モブリット「分隊長、お風呂の支度をしましたから、入ってきてください。風邪をひいてしまいま・・・」
コテージからサンデッキを覗いてそう声をかけたモブリットは、途中で言葉を止めた
いつもは頼もしい分隊長の背中が、震えていた
しかも、自分が脱ぎ捨てたブラウスを握りしめて
先ほど固く誓った決意
自分の気持ちをこれ以上この人にぶつけないと決めた、その決意
それがこんなに早く、崩れ去るとは、自分でも予想していなかった
モブリット「分隊長」
そう一言だけ言って、座り込み俯くハンジの腕を取り、立たせた
顔を上げようとしないハンジの顎にそっと手を触れ上を向かせる
片方の腕は、しっかりと腰にまわす・・・冷たい、その体
今までに見た事がないほど、顔にたくさんの涙の川を作っている上司の、潤んだその瞳に吸い込まれる様に
そのまぶたに、そっと唇を落としたのだった
-
- 267 : 2014/04/24(木) 16:06:43 :
- モブリットは、しばらくそのままハンジの顔をじっと眺めていた
涙に濡れた瞳、幾重にも出来た涙の川、赤い目のまわり
それら全て、自分が起因して起こっている事だと思うと、胸が痛んだ
ハンジ「モブリット…寒い…」
ハンジはそう言って、また一筋涙をこぼした
モブリット「…お風呂に入って下さい、分隊長」
モブリットは、頬を伝う涙を指で掬ってやりながら、極力優しく言った
ハンジ「…ああ、そうする、ね」
ハンジは泣き笑いの様な表情をモブリットに向けた
モブリットは、明らかに無理をして笑っているハンジを見て、情けなく思った
モブリット「さ、行きましょう。本当に体が冷たい。風邪をひいてしまいます」
モブリットはそう言って、ハンジの手を引いてコテージに入った
-
- 269 : 2014/04/24(木) 17:12:03 :
- ハンジを無理矢理風呂場に押し込んで、モブリットははぁ、とため息をついた
どうしようもない、この想い
ともすれば溢れだしそうな、感情の洪水
何とか鎮めて落ち着けようと、もう一度深く深呼吸をした
モブリット「…ふぅ…」
目を閉じ、息を整える
目を閉じれば、脳内に描き出される先程のハンジの泣き顔
慌てて目を開き、首を振る
…どうすればいいのか、わからない
全く答えが…出ない
先程、冷たい体を抱いた時、気の利いた言葉でも言えばよかったか
それとも、唇を奪えばよかったか
考えても答えは出ない
…だめだ、このままではあの人の顔を見れば、次は抑えられない気がする
自分の冷えきった体を、コテージから外に出そうと足を一歩二歩踏み出した時…
ハンジ「…ごめんモブリット、出たよ。君も、入ってきて?」
背後からかかる、まだ少し元気の無い声
振り返ると、明らかに無理して笑う、敬愛する上官の顔
モブリット「…はい、分隊長」
彼もまた無理矢理微笑んで、入れ替わりで風呂場に入った
-
- 271 : 2014/04/24(木) 23:41:32 :
- モブリットが風呂場に消えた後
ハンジは大きなベッドに横になった
手には、風呂に行く前に握り締めていたモブリットのブラウスが、いまだに握られていた
ハンジ「ボタンを、外している間すら惜しんで…来てくれたんだよね…」
ハンジはブラウスをぎゅっと胸に抱いた
そのまま目を閉じた
泳ぎ疲れた後、風呂に入ったからだろうか、急に眠気が襲ってきた
睡魔に身を任せ…そのまま眠りに落ちた
風呂からは海が見渡せる、絶好のロケーション
モブリットは、そんな風呂で一人体を暖めていた
もう夕暮れが夜に移り変わろうとしていた
夜になると、きっと星が綺麗だろう
サンデッキで、星の観察でもしようか
ハンジさんも、見たいだろうか
首を振った…だめだ、これ以上は…
はぁ、とため息をついた
-
- 272 : 2014/04/25(金) 13:22:44 :
- 風呂から上がると、部屋はすでに薄暗くなっていた
部屋の明かりをつけると、オリエンタルな雰囲気のライトが、昼間とはまた違った印象を、部屋に与えた
部屋にはキングサイズのベッドが一つ設えてある
上官の姿はそのベッドの上にあった
しばらくためらった後、布団も何も掛けていない事がどうしても気になり、そっとベッドに歩み寄った
ベッドですーすーと寝息をたてている上官の姿を見て、また先程の決意が揺らぎそうになる、モブリット
何故なら上官は、自分が先程脱いだブラウスをまだ持っていて、それを胸に抱いていたからだ
モブリットはハンジの体にそっと布団を掛けてやった
モブリット「分隊長…」
モブリットはそう呟いて、そっとハンジの頬に手を伸ばし、撫でた
-
- 273 : 2014/04/25(金) 13:24:01 :
- モブリット「…私は…あなたが好きです…どうしようも、ないんです…」
そう呟いた
モブリット「ですが…あなたが目覚めた時には、またこの気持ちには蓋をします。ですから、今まで通り…笑っていて下さい」
モブリットは上官の顔をじっと見つめた
あどけない寝顔
目元はまだ赤く、泣いた跡ははっきりわかった
モブリット「…ハンジさん…」
その顔に自分の顔を、ゆっくり近づける
モブリット「泣かせてしまって…すみませんでした。もう、泣かせたくはありません…ですから…私は…」
モブリットはそこまで言うと、鼻と鼻が触れあう距離にまで、顔を近づけた
モブリット「…これだけ、一度だけ、私に下さい…ハンジさん」
そう言うとほんの一瞬、自分の唇で、ハンジのそれに触れた
それで、自分の恋は終わらせようと思った
ふぅと息をつき、多分お腹の減り具合が限界であろうミカサのために、先に食事をしておくよう頼みに行くために、部屋を後にした
-
- 274 : 2014/04/25(金) 13:47:23 :
- 薄明かりの室内灯が灯るベッドルーム
モブリットが部屋を出た後…
ゆっくり目を開ける、ハンジ
ハンジ「……モブリット…」
たった今、寝ている自分に愛の告白と、別れを同時に、勝手にして行った副官の後ろ姿
少し小さく見えた、背中
それをはっきりと、自分の目で追っていた
彼が振り返れば、目があっただろう
そうすれば、また違っていたかもしれない
自分がもっと早く目を開けていれば、また違ったかもしれない
だが、後悔は先に立たない
もう、モブリットは行ってしまった
自分の返事も、気持ちも聞かぬまま
…勝手にキスをして、行ってしまった
あんなに短い、遠慮がちなキスで何が伝わる
どうして、自分の気持ちを圧し殺すんだろう…どうして、ちゃんと言ってくれないんだろう
ハンジは、またその瞳から、涙をこぼした
-
- 276 : 2014/04/25(金) 14:48:22 :
- ―人間やめてるコンビの部屋―
ミカサ「い、いたたたたっ…兵長、そこは……」
リヴァイ「ほう、ここか…ふんっ」
ミカサ「兵長…痛い…やめて、手加減…して…」
リヴァイとミカサは二人、キングサイズのベッドの上で絡まり合っていた
ミカサをうつぶせにし、その腰の辺りに座るリヴァイ
リヴァイ「ここがきついか…ちょっと緩めるかな…ふんっ」
ミカサ「ああっ…痛…」
ミカサは目に涙を溜めていた
リヴァイ「…確かに筋肉が凝り固まっているな…もう少し柔らかくしとかねえと、怪我するぞ、ミカサ…ふんっ」
ミカサ「いったぁぁぁい!!」
リヴァイ「ま、こんなもんだろ。おしまいだ、ミカサ」
リヴァイはそう言うと、ミカサの上から降りて、頭をぽんとたたいた
ミカサ「兵長は、力を入れすぎる…私は骨が折れた…気がする…」
そう、リヴァイはミカサのために、筋肉をほぐしてやっていたのだった
-
- 277 : 2014/04/25(金) 16:11:49 :
- ミカサ「兵長は、力を入れすぎる。私は骨が折れたと思う」
ミカサは恨めしげな目をリヴァイに向けた
リヴァイ「骨なんか折るかよ。騙されたと思ってストレッチしてみろ」
リヴァイの言葉に、ミカサはストレッチをしてみた
ミカサ「…あっ…」
先程まで痛かった身体中が、なんだか楽になった気がした
リヴァイ「どうだ、楽になっただろうが」
ミカサ「…はい、兵長。ありがとうございます」
それからしばらくはだらだらと過ごした
ミカサに紅茶のいれかたを教えて、掃除の仕方を教え、皺になりにくい畳み方を教えたりした
すると、扉をノックする音がしたため、リヴァイが扉を開けると、なんとも言えない表情のモブリットが、そこにいた
-
- 278 : 2014/04/28(月) 11:41:04 :
- リヴァイ「おい、モブリット・・・お前なんて面だ」
リヴァイは思わずそう言った
それほどまでに、モブリットの表情が普通ではなかった
モブリット「すみません兵長、ミカサ、お腹が空きましたよね。先に、食べてきてください」
そう言うと、夕食のチケットをリヴァイに手渡した
リヴァイ「ハンジはどうした?」
リヴァイの問いに、モブリットははかなげな笑みを浮かべて言葉を発した
モブリット「お疲れになられているようで・・・寝ていらっしゃいます」
ミカサ「起こしてはどう、でしょうか。ハンジさんもお腹がすく・・はず」
ミカサが歩み寄り、そう言った
リヴァイ「そうだな、起こしてくるか」
リヴァイのその言葉に、モブリットは一瞬何かを考えるような表情をしたが、ふうと息をついた
モブリット「では、兵長お願いできますでしょうか。私はミカサを連れて先に行ってますので。ミカサ、ずっとお腹がすいていたのに、待たせてすまないね。行こう」
リヴァイ「おい、モブリット」
リヴァイの言葉を聞いたか聞いていないかは定かではないが、モブリットはミカサをつれて夕食会場へと向かった
リヴァイ「・・・ちっ。何考えてやがる・・・あんな顔、しやがって」
リヴァイは舌打ちをし、ハンジが寝ているであろう部屋に向かった
-
- 282 : 2014/05/01(木) 12:57:39 :
- ミカサを伴って夕食会場にきたモブリット
バイキング形式で、好きなものを好きなだけ食べる事ができる
モブリットはミカサのためにバランスよくいろんなものをとってやっていたが、じぶんはほとんど何も口にしなかった
ミカサ「モブリットさん・・・もう少し何か、食べてほしい」
ミカサは見かねて、フォークに突き刺した肉を、モブリットに差し出した
モブリット「ああ、ミカサごめん。君に心配をかけてしまっているね、情けない」
そういって憂いを秘めた表情で笑みを浮かべるモブリットに、ミカサは首を横に振った
ミカサ「心配はしていない・・・です。ただ、兵士たるもの、食べれるときに食べないと・・・」
そう言って、フォークに突き刺した肉を無理やり、モブリットの口の中に押し込んだ
モブリット「・・・」
ミカサ「おいしい、はず」
モブリット「ああ、おいしいね。ありがとう、ミカサ」
モブリットはそういって、ミカサにほほ笑みかけたのだった
ミカサ「兵長たち、遅い・・です。これに詰めて持って帰ろう」
ミカサはそういうと、どこからともなくタッパーを取り出して、その中に料理を詰め始めた
モブリット「本当はだめだけど、そうだね、二人とも来ないし、少し持って帰ろう」
モブリットも料理の折詰を手伝うのだった
ミカサ「ハンジさんと、何かあったんですか、モブリットさん」
モブリット「・・・いや、何もないよ。もう、これからは何もないから。大丈夫」
ミカサ「もうこれからは?・・・よく、わかりません」
ミカサは眉をひそめた
-
- 283 : 2014/05/01(木) 13:17:43 :
-
ハンジの部屋の扉をノックしたが、返答がなかったため、リヴァイは扉を開けて部屋に入った
リヴァイ「ハンジ、いるか?」
少し大きめに声を張って呼んでみたが、やはり返答は無かった
リヴァイ「・・・まだ寝てるか」
リヴァイは一人ごちて、奥のベットルームに足を運んだ
部屋の扉を開けると、薄暗い中、確かにベッドの上に人の姿を確認する事ができた
上半身を起こして俯いている、ハンジだった
リヴァイ「ハンジ、起きていたか」
リヴァイの言葉に、はっと顔を上げるハンジ
薄暗い中ではあったが、その顔が泣き顔である事は確認できたリヴァイ
ハンジ「リヴァイ・・・」
力なくつぶやく、自分の今や唯一の馴染み
憔悴しきった様子、その声
リヴァイはそっとハンジに歩み寄った
リヴァイ「お前、また泣いてやがったのか・・・さっき泣くなといっただろうが」
その表情はいつもの様に不機嫌そうだが、その声は限りなく優しいものだった
そのリヴァイの言葉に、ハンジはまた顔を伏せる
ハンジ「・・・私、最低だ。もう、どうしようもないよ、リヴァイ」
瞳からとめどなく涙があふれ出した
リヴァイ「何が最低なんだ、泣くなバカが」
リヴァイはベッドに腰を掛けて、ハンジの頭を撫でた
-
- 284 : 2014/05/02(金) 11:59:37 :
- ハンジ「最低なんだよ、本当に・・・自分でまいた種なのに、自分で回収できない・・・しかも、人を傷つけてる・・・最低だ」
リヴァイ「・・・」
リヴァイは何も言わずただハンジの背をとんとんとたたいてやっていた
ハンジ「モブリットの気持ちに気が付いたから、だからどうするって・・・どうすることも、できないんだ。私には、その気持ちに応える事は・・・できないんだから」
ハンジはついに、両手で顔を覆って泣き始めた
リヴァイ「そうか、そうだろうな。お前はそういう奴だ」
リヴァイは静かにそう呟いた
ハンジ「なんでもわかったように言わないでくれよ、リヴァイ」
リヴァイ「わかるんだから仕方がねぇだろ・・・。だがな、そうやって人の気持ちに向き合うって大事な事だと思わねぇか?例え前向きな話にならなくても、だ。そのままずるずるとあいつをひきずってやるよりは、俺はいいと思うんだがな」
ハンジ「はは・・・そう簡単に割り切れたら、苦労はしないよ・・・」
ハンジは自嘲気味に笑った
リヴァイ「お前の気持ちはもうわかってる。お前は・・・誰の物にもなるつもりは、ねえんだ。そうだろ」
ハンジはその言葉に、リヴァイの顔に視線を向けた
リヴァイの表情は、感情を一切表に出していない様に見えた…だが、どことなく憂いを秘めたその瞳だけが、リヴァイの心のうちを物語っているようだった
ハンジ「リヴァイ・・・君は・・・」
ハンジはリヴァイに何もかも見透かされている事に、いまさらながらに気が付いたのだった
-
- 285 : 2014/05/02(金) 12:20:47 :
- リヴァイ「お前、俺と何年一緒にいると思っている?そんなことくらい、理解しているつもりだ。俺と・・・同じだからな、その考え方は」
ハンジ「リヴァイ・・・」
ハンジは項垂れた
リヴァイ「俺とお前は、同じ穴のムジナだ。程度も場所も違うだろうが、同じくらい傷ついて同じくらい、欲している物がある。それは・・・今はまだ、手に入れることはかなわない」
ハンジ「・・・ああ。そうだね」
ハンジは頷いた
リヴァイ「まずは、それを手に入れてから・・・そう言う事だろ」
ハンジ「・・・ああ、そうだ。まったく・・・リヴァイにはかなわないよ」
ハンジはリヴァイの肩にポンと頭を乗せた
リヴァイ「まっすぐに愛をぶつけてきて、その上身を引こうとしているあいつに、一度くらい応えてやっても、俺はばちはあたらんとおもうがな」
ハンジ「・・・」
リヴァイ「もしかしたら、またそのせいであいつが離れられなくなるかもしれねえがな」
ハンジ「・・・考えるよ」
ハンジは真摯な瞳を、リヴァイに向けた
リヴァイ「お前の欲求不満を、俺で解消するのはごめんだ。他をあたってくれ」
ハンジ「・・・自分が欲求不満なくせに、よく言うよ」
リヴァイ「勝手に言ってろ。俺は間に合ってる。減らず口が叩けるようになったなら大丈夫だな、ハンジ」
リヴァイはポンとハンジの背を叩いた
リヴァイ「腹が減った。飯、食いに行くぞ」
そう言ってリヴァイの差し出す右手を、ハンジはしっかりと握りしめたのだった
-
- 288 : 2014/05/11(日) 16:34:23 :
- リヴァイとハンジがベッドルームから手を携え出てきた所へ、扉がノックされる音が聞こえてきた
リヴァイが扉を開けると、ミカサを伴ったモブリットが立っていた
ミカサ「兵長、遅かったので夕食をもらってきました」
ミカサは手にもっていた夕食の折詰をずいっとリヴァイに押し付けた
モブリット「お二人ともなにをされていたんですか?ちっともいらっしゃらないので・・・心配しましたよ」
モブリットは苦笑気味に言葉を発した
リヴァイ「わざわざ持ってきてくれたか。すまないなミカサ。部屋に戻って食うかな・・・ハンジが寝ぼけて大変だったから疲れた」
ミカサ「寝ぼけて大変って・・・どんな状況?なんですか」
リヴァイ「大声で奇声をあげて大暴れだ。巨人の夢でも見ていやがったのかもしれねえな。挙句の果てに俺を巨人と間違えて襲いかけやがってな」
リヴァイは肩をすくめてうそぶいた
ハンジ「ちょっとリヴァイ何・・・」
リヴァイ「じゃ、ちょっとゆっくりさせてくれ。またな」
ハンジの言を遮る様に、リヴァイはミカサを伴って部屋を出て行ってしまった
腑に落ちないような顔をしているハンジに、モブリットはいつも通りの口調で、いつもの様に話しかける
モブリット「ハンジさん、お腹が空いたでしょう。今準備しますから・・・座っていて下さいね」
テーブルの上にハンジのために持ってきた食事の折詰を置いて、モブリットは炊事場に消えた
ハンジはおとなしく、椅子に座って待つ事にした
-
- 289 : 2014/05/11(日) 16:41:21 :
- 部屋を出て、自分たちの部屋へ戻ったリヴァイとミカサ
リヴァイは部屋に入るなりさっそく、折詰を開封してつまみ始めた
ミカサはリヴァイに教えてもらったやり方で紅茶を淹れて、それをすっと差し出す
ミカサ「兵長・・・どうぞ。うまく、できたと思う」
ミカサは幾分緊張した面持ちで、自分が渾身の力を振り絞って淹れた紅茶を口に含むリヴァイを凝視した
リヴァイ「・・・うまいな」
リヴァイは一口すすってそう言った
ミカサ「ありがとうございます」
ミカサはリヴァイにぺこりと頭を下げた
リヴァイ「食事もうまいな。・・・ミカサ、お前も食うか?」
ミカサ「いえ兵長。私はモブリットさんに死ぬほど食べさせられましたので・・・バランスよく、大量に」
リヴァイ「モブリットか・・・そうか」
リヴァイは遠くを見る様な目をした
ミカサ「・・・モブリットさんは、ほとんど何も口にされませんでした」
ミカサはぼそっと呟いた
リヴァイ「そうか・・・」
リヴァイはしばらく食事をつつく手を止めて、何かを考える様に俯き顎に手をやった
ミカサ「大人って、なんだかややこしいですね」
ミカサはリヴァイのそんな様子にちらりと目をやりながら、はあとため息をついた
-
- 290 : 2014/05/11(日) 16:55:30 :
- モブリット「お茶をお入れしましたよ、さ、たくさん食べてくださいね。ミカサが分隊長が好きそうな物をとわざわざ選んで入れてくれていました」
モブリットは折詰のふたを開けて、いまだそれに手をつけようとしないハンジに、フォークを差し出した
ハンジ「ああ・・・ありがとう、モブリット」
ハンジは笑いかけようとして、失敗した・・・そんな表情を副官に見せた
モブリット「・・・なんですか分隊長。その変な顔は」
モブリットがその様子に眉をひそめた
ハンジはその言葉に目を見開く
ハンジ「ちょ・・・変な顔ってどういう意味だよ・・・モブリット」
モブリット「そのまんまの意味ですよ。そうでなくても面白い顔なのに、ますます面白くなるからおやめください」
ハンジ「え!ちょっとそれひどくない?!」
ハンジは頬を膨らませた
モブリット「正直に見たままをお伝えしただけですが、何か?」
モブリットはふん、と鼻を鳴らした
ハンジ「・・・ああ、変な顔だよ。どうせね」
ハンジはつん、とそっぽを向いた
モブリット「変な顔を直すためにも、しっかり食べてください、分隊長」
そう言って笑顔を見せる、モブリット
その笑顔はいつものような優しく温かさが伝わるものだったが、どことなく憂いを帯びているように、ハンジには見えた
ハンジ「・・・君の言う通りに、するよ。いただきます」
そう言って、おとなしく料理をつつき始めたハンジを見ながら、心の中でふうと息をついたモブリットであった
-
- 291 : 2014/05/11(日) 17:08:54 :
- ハンジ「美味しいね、これ」
ハンジは一口食べてエンジンがかかったのか、ぱくぱくと次々料理を平らげていった
モブリット「そうでしょう、たくさん食べてくださいね」
モブリットはハンジの向かい側に腰を下ろして、頬杖をついてその様子を見ていた
ハンジ「・・・はい、あーん」
ハンジが突然、モブリットに肉をつきさしたフォークを差し出した
モブリット「・・・何です?」
ハンジ「あーん」
モブリット「・・・結構です」
ハンジ「早く、あーん。どうせ食べてないんでしょ?」
ハンジはそう言って、いたずらっぽい笑みを浮かべた
モブリット「・・・どうして、わかるんですか?」
モブリットは静かに言葉を発した
ハンジ「君の事だから・・・ね」
ハンジは困った様に、微笑んだ
モブリット「・・・貴女には、かないませんね」
モブリットはそう言って、差し出されたフォークの先端に突き刺さっていた肉をぱくりと口にした
ハンジ「美味しい?」
モブリット「美味しいです、分隊長」
素直に頷く副官の頭をくしゃっと撫でて、ハンジは輝くような笑みを浮かべた
-
- 294 : 2014/05/13(火) 11:03:16 :
- リヴァイ「おいミカサ、何書いてやがる?絵日記か」
机に向かって一心不乱にペンを走らせるミカサを後ろから覗くリヴァイ
ミカサ「はい。団長に定例報告をしなければいけない・・・ので」
リヴァイ「何書いてるんだ?見せろ」
リヴァイはその内容を覗こうとしたのだが、ミカサが寸前のところで日記に覆いかぶさってしまう
ミカサ「兵長のエッチ」
ミカサは顔だけリヴァイの方に向けて、無表情でそう言った
リヴァイ「・・・また言いやがったな・・・ちっ。エルヴィンの奴め、へんな事ばかり吹き込みやがって」
リヴァイは舌打ちをした
ミカサ「ちゃんと事細かに書いている・・・ので安心してほしい」
リヴァイ「事細かにって、もしかして、ハンジとモブリットの事もか?」
ミカサ「当たり前じゃないですか・・・全部事細かに記載しています」
リヴァイ「あいつら気の毒に・・・」
リヴァイはため息をついた
-
- 295 : 2014/05/13(火) 11:03:31 :
- ミカサ「兵長との三角関係を事細かに描写しています。のでご安心を」
ミカサのその発言に、リヴァイの顔色が一気に変わる
リヴァイ「お、俺の事もかよ?!やめろ!却下だ!」
リヴァイは日記を奪おうと、ミカサの肩をがっしりつかんで机から引き離そうとするが、できない
ミカサ「絶対に、書ききって団長に渡します。そして、壁新聞にして兵団内に張り出す・・・」
ミカサはひらりと身をひるがえし、ベッドの上に立つ
その手には日記がしっかりと握られており、ページには写真が貼ってあるのが確認できた
リヴァイ「や、やめろお前!!丁寧にいつの間にか写真までとってやがって・・・ちっ」
ミカサ「兵長、油断は禁物。オーストラリアでは、エルヴィン団長にたくさん写真を撮られたのでしょう?ここでは私がたくさん撮りますから・・・ふふ」
リヴァイ「ちっエルヴィンめ・・・どこまでも抜け目がねえ奴だ・・・・」
ミカサ「一節読んで差し上げます・・・。ハンジ分隊長は、モブリット副長の気持ちに気が付き、その瞳を潤ませた。その姿をみたリヴァイ兵長はいてもたってもいられず、ハンジ分隊長を後ろから抱きすくめる。そして甘い言葉でこうささやく。俺はお前が守る」
リヴァイ「おいそれ!日記じゃねえ!うそだろうが!作り話じゃねえか!!」
ミカサ「ハンジ分隊長は首を横に振る。あなたの物にはならない、私は誰の物にもならない。兵長はそれでもあきらめない。いや、お前は俺の物だ。誰にも渡さない」
リヴァイ「・・・・・・・・・・何の話だ!」
ミカサ「欲しいなら力づくで全力で奪え、と私は思う。兵長も、モブリットさんも。じれったくて見てられない」
ミカサはふんと鼻を鳴らした
-
- 296 : 2014/05/13(火) 11:15:25 :
- リヴァイ「というかだな、ミカサ。お前普段口下手なくせに、なんで日記ではそんなに饒舌なんだよ?!」
ミカサ「あ、兵長・・・話をそらしましたね・・・」
リヴァイ「ちっ・・・」
ミカサ「自分の気持ちには素直になるべきです。振り向かないなら振り向かせればいい」
ミカサの真摯な視線がリヴァイの顔に突き刺さる
リヴァイ「・・・そんなに簡単な話じゃねえんだよ」
ミカサ「モブリットさんに遠慮しているんですか」
リヴァイ「違う。ハンジの気持ちが、わかるからだ」
ミカサ「受け入れられる受け入れられない、関係なく、気持ちを伝えるくらいいいと思う。振られたら、慰めてあげますよ」
ミカサはふふ、と不敵な笑みを浮かべた
リヴァイ「お前になぐさめてもらうなんて、死んでもごめんだ」
リヴァイはぷいっとそっぽを向いた
ミカサ「ハンジ、お前が俺を好きじゃなくても、お前の体は俺を拒んじゃいない・・・と、書き書き・・・」
リヴァイ「ミカサ!お前何書いてやがる!」
ミカサ「前読んだ本にのっていた・・・アルミンが貸してくれた、本に」
リヴァイ「アルレルト!!!!!」
リヴァイは明後日の方向を向いて激昂した
-
- 297 : 2014/05/14(水) 11:27:52 :
- ハンジ「うーんお腹いっぱいーー!!もう入らないよ!」
ハンジは折詰の料理を遠慮するモブリットの口に、たまに料理を無理やり放り込みながらほぼ平らげて、満足げに机に突っ伏した
モブリット「良く食べましたね。さて、片付けてきます」
モブリットはそう言うと、料理の後片付けをすべく折詰やらフォークやらを炊事場へ持って行った
ハンジは心地よい二人の間の空気感に、気を緩ませる
目を閉じればこのまま眠れそうな・・・
その時、いつもの様に声がかかる
モブリット「分隊長、寝るなら寝間着に着替えて、ベッドで寝てください」
そう言う副官が手にしているのは、ハンジの寝間着
いつの間にか用意していた様だ
・・・ハンジが知らない間に
ハンジ「あ、うん。着替えてくるよ」
モブリット「はい、そうしてください」
そう言って微笑む副官の表情には、先ほど見せた様な切なさは微塵も見えない
逆にまるで吹っ切れたかの様に、爽やかな笑みを見せていた
ハンジは着替えるために洗面室に行った
-
- 298 : 2014/05/14(水) 11:38:04 :
- その後ろ姿を見送って、ふうとため息をつくモブリット
モブリット「何とか、大丈夫そうだ」
いつも通りいつも通りと念じながら、上官に接する
少し詰め過ぎた上官との距離を適切な位置にまで後退させて、見守る
だが、何かがあった時にはすぐに駆けつけられる様な、気が付ける様な、そんな位置に
自分がもともといた場所にまで、自分の立ち位置を戻す努力をしていた
ハンジ「モブリットーお待たせ!モブリットも着替えてきなよ」
ハンジは洗面室から出るなり、モブリットにそう声を掛けた
モブリット「はい、そうしますね」
機嫌の良さそうな上官に、ほっと胸をなでおろしながら、モブリットは着替えに行った
ハンジ「ふう・・・元通り元通り」
ハンジは息をついた
ハンジ「モブリットも、気を使ってくれているんだろうね、きっと。だって、もともとよく気が利くんだしね」
モブリットと同様、ハンジも自分の立ち位置を戻す努力をしていた
そうする事が今は最適だと考えたからだ
でも、リヴァイが言っていた言葉が頭に残る
・・・一度くらい応えてやってもいいんじゃねえか
ハンジは目を閉じ、ゆっくり息を吐いた
自分の考えを、気持ちをまるでまとめるかの様に、ゆっくりと
-
- 299 : 2014/05/15(木) 13:40:31 :
- ミカサ「うーん、これをこうして・・こうして、出来た!」
ミカサは床に座り込んで細く長い棒の様なものをいじっていた
リヴァイ「・・・ミカサ、何してやがる?」
ミカサ「釣竿・・ですね。荷物の中にありましたので。ここでなにか釣れたら面白い・・・かなと」
リヴァイ「なるほどな、ちょっと貸せ」
ミカサ「兵長だめ、一本しかありませんので、順番です、まずは私から・・・」
ミカサはリヴァイに奪われそうになった竿を、ひらりと身をひるがえして死守した
リヴァイ「ちっ仕方ねえな・・・さっさと外でるぞ」
ミカサ「はい、兵長」
ミカサはリヴァイをちらりと見て、返事をした
リヴァイとミカサのいる部屋は、島から一番離れた特等席の様な場所
見渡す限りの海と、星がきれいな夜空
ロマンチックなそんな場所で、二人の釣りバトルが勃発する
ミカサ「・・・・・・きたっ!!!」
ミカサは釣りをしたことがなかった
釣竿を海面にたらすことなく、じっと構え、海を食い入るように見つめる
そして、魚の影がミカサの目に飛び込んだその瞬間
釣竿を振り、見事なコントロールでその魚に針をひっかける
リヴァイ「・・・南洋ハギだな」
ミカサ「討伐数3!」
ミカサはニヤリと笑った
-
- 301 : 2014/05/15(木) 13:45:12 :
- リヴァイ「さあ次は俺の番だ。貸せ」
リヴァイも同じように、釣り糸を海面にたらさずに、狙いすますかの様な視線を海に投げかける
そして、同じように魚を釣り上げ・・・・引っ掛ける
それを数回続けた
リヴァイ「討伐数5。ざっとこんなもんだろ」
リヴァイはふんと鼻で笑った
ミカサ「確かに兵長は5、私は3…ですが、大きさでは私の方が上・・・なので私の勝ち・・・です」
リヴァイ「数の勝負に決まってるだろうが。だからお前はま・け・だ」
リヴァイはまたふんと鼻をならした
ミカサ「兵長やりかたが汚い・・・絶対に大きさで勝負です・・・」
リヴァイ「数だ、数」
ミカサ「こうなったら、ハンジさんとモブリットさんを呼んできて、判定してもらいましょう!!」
ミカサはそう言うや否や、ダッシュでサンデッキからコテージに消えた
リヴァイ「お、おい待てミカサ・・・って・・・いっちまいやがった」
リヴァイは頭を抱えたが、仕方なしに後を追った
-
- 302 : 2014/05/15(木) 13:55:47 :
- ハンジ「ねえモブリット、見てあれが、南十字星だよ」
ハンジの指さす方向の夜空には、星で大きな十字が描かれていた
モブリット「綺麗ですね・・・。星と星をつなぐと、いろいろな絵に見えてきます」
モブリットは夜空を眺めながら静かに呟いた
二人はサンデッキにあるビーチベッドに寝そべって星空観賞をしていた
端から見ればカップルにしか見えない二人
だがその二人の距離はある一定を保っていて、その一線を越えようとする事はもうどちらからもなかった
ハンジ「いろんな絵かあ・・・そう言えばさ、あの、天女の絵あるだろ?」
モブリット「はい」
ハンジ「あれ、私にくれないかな」
ハンジは夜空を見上げながら、小さな声で言った
モブリット「・・・ただの、落書きですよ」
モブリットはほんの少し、悲しげな表情を浮かべたが、口調には一切出さずにそう答えた
ハンジ「落書きだなんて・・・そんな事はないよ。だめかな」
モブリット「・・・構いませんよ。持って行って下さい」
ハンジ「ありがとう、モブリット。あの絵、大好きなんだ」
ハンジははにかんだような笑みを浮かべてそう言った
モブリット「そうですか・・・気に入って頂けて良かったです」
そういうモブリットの表情は、胸の中にしまい込んだ気持ちが揺蕩う様にゆれている様を見せていた
-
- 303 : 2014/05/16(金) 15:14:04 :
- ハンジ「ねえ、モブリット。実はさ…」
ハンジはそこまで言って、言葉を止めた
モブリット「…分隊長?」
ハンジ「あのさ…さっき、私が寝ていた時…君、私に話し掛けていたよね。あれ…実は聞いていたんだ…ごめん」
モブリット「…そう、でしたか」
モブリットは心の動揺を落ち着かせる様に、ゆっくり言葉を発した
ハンジ「君の気持ちは…嬉しかったよ」
ハンジは微笑みながらそう言った
モブリット「…」
モブリットは何も言わず、ただ星空を見つめていた
ハンジ「私はさ、今は…まだその気持ちに応えられない」
ハンジの口調は、苦しげな胸のうちを表すかの様に、震えていた
モブリット「はい、わかっています」
モブリットは目を閉じ頷いた
ハンジ「私には、やらなきゃならない事があるから…だから」
モブリット「はい。私も全力であなたにお仕えするつもりです。許されるのならば…」
ハンジ「許すも許さないも…君なしでは私は…まともに何も出来やしないよ…だから…これからもよろしく頼むよ」
モブリット「はい、こちらこそよろしくお願いします、分隊長」
モブリットは体を起こし、ハンジに目を向けた
上官は、モブリットを見つめて、微笑んでいた
-
- 306 : 2014/05/18(日) 10:27:55 :
- ハンジ「でね、相談なんだけど…旅の間くらい楽しみたいなって思うんだ」
ハンジはそう言って、モブリットの方に身を乗り出した
モブリット「はあ」
モブリットはその言葉の真意を図りかねて首を傾げた
ハンジ「だからさ、この旅の間は上司と部下はやめ!!無礼講ね?私に変に気を使うのもなし、なんならずっとあんたって呼んでも構わないよ」
モブリット「は、はあ」
モブリットはまだ、言葉の真意を読めておらず、怪訝そうにハンジを見ていた
それを見たハンジが、艶やかな笑みを浮かべて、言葉を発する
ハンジ「それか…恋人同士にでも、なる?」
モブリットは目を丸くする
モブリット「…ええっ!?なりませんよ!!旅の間だけとか、そんなに器用なタイプではありませんから!!」
モブリットは首を何度も横に振った
ハンジ「そっか、残念!!」
ハンジはははっと笑った
モブリット「…残念って…はぁ…」
モブリットはため息をついた
ハンジはモブリットの頬に手を伸ばして触れた
心なしか熱を帯びた、ほんのり温かい頬がハンジの心を暖める
ハンジ「…今は、今しか来ない。後悔はしたくない…取り戻すなら、今だよ」
そう言って、モブリットの顔に自らの顔を近付けた
-
- 307 : 2014/05/18(日) 10:53:51 :
- その時…
パシャパシャ…
二人の背後から、カメラのシャッター音が聞こえてきた
ハンジ「…えっ?!」
モブリット「!?」
二人が振り返ると、ミカサがいつの間にか後ろでカメラを構えていた
ミカサ「あっ…ばれてしまった…」
ミカサは肩をすくめた
リヴァイ「もっと遠くから撮りゃ良かったんだろうが…がっつきすぎだ、ミカサ」
ミカサ「兵長、でも見て…ベストショットです」
リヴァイ「…おお、何処からどうみても、ハンジがモブリットを襲ってキスしている様にしか見えねえな」
リヴァイはふん、と鼻で笑った
ハンジ「な、な、何?!どういうこと!?」
ハンジは狼狽えた
リヴァイ「オーストラリアの時に散々やられただろうが…それをミカサがやってやがる。エルヴィンの指示でな…」
ハンジ「ま。まさか、またあることないこと報告されて、壁新聞にして兵団内に貼り出されるの?!」
リヴァイ「そのまさかだ。ご愁傷さまだな」
モブリット「ど、ど、ど…」
モブリットは言葉にならないほど狼狽えていた
-
- 308 : 2014/05/18(日) 11:07:56 :
- ミカサ「ちなみに今一節書きました。―ハンジ分隊長は、部下の想いに今はこたえられない…そう言いながらも、体の奥底で蠢く衝動を抑える事が出来なかった。彼女は、自分の言うことに抵抗できない忠実な部下に、無理矢理その触手を伸ばした」
ハンジ「ちょ、ちょ、それなんだよ!!」
ハンジは顔を真っ赤にして抗議の声をあげた
リヴァイ「く、く…」
リヴァイは苦しげに腹を押さえて笑っていた
モブリット「ミ、ミカサ…」
モブリットはこめかみを指で押さえて呻くように言葉を発した
ミカサ「完璧です。満足のいく壁新聞ができそう…さあ、続きをどうぞ、ハンジさん」
ミカサはそう言って、カメラを構えた
ハンジ「続きなんて、するわけないだろ!?人前で!!しかもカメラの前で!!」
リヴァイ「おいミカサ、人前じゃなけりゃ続きをやるらしい。隠しカメラが必要だな」
ミカサ「はい、早急に準備して、お二人が気がつかない間にセッティングします」
ハンジ「うわぁ!!墓穴掘ったぁぁ!!まるでミカサがエルヴィンに見えてきたよ…怖い…」
モブリット「エルヴィン団長の指示書を持ってますからね、ミカサは…一切油断はできません…」
モブリットは仕事の顔に戻ったように真剣な眼差しでハンジを見た
-
- 309 : 2014/05/21(水) 11:05:28 :
- ミカサ「はっ・・・そうだ!写真も取れた事だし、お二人に相談が!!」
ミカサはそう言うと、魚の入ったバケツを二つ、ハンジとモブリットに見せた
ハンジ「お、南洋ハギやらイットウダイやら・・・いるね!釣ったんだ」
モブリット「一つには3匹、一つには5匹入ってますね」
ミカサ「先ほど釣り大会を開催していたのです・・・が、兵長は小さいのを5匹なのに、大きいの3匹つった私が負けだというんです」
ミカサは頬を膨らませた
リヴァイ「釣り大会なんて、だいたい数だろ?」
その言葉にモブリットが首を振った
モブリット「いえ、兵長お言葉ですが、数よりは大きさを競う大会の方が多いように感じます」
ミカサ「モブリットさん・・・!さすが!!」
ミカサはモブリットの背にしがみついた
ハンジ「そうだねえ・・・最初にルールを作っておかなかったから、あいこでいいんじゃないの?」
リヴァイ「あいこなんて勝負にはねえ!!!勝つか負けるか!だ」
モブリット「じゃあ、兵長が負けですね」
ミカサ「よし、兵長に勝った!」
リヴァイ「おいモブリット、お前俺に何の恨みが・・・」
ハンジ「リヴァイは大人げないなあ。ミカサより2倍くらい年食ってるくせにさ。ゆずってやりなよ」
ハンジは肩をすくめた
リヴァイ「俺はカジノで勝ちを譲ってやった!だからここでは俺が勝ちだ!」
ミカサ「兵長・・・こどもみたい」
ミカサはその様子をみてふふっとほくそえんだ
-
- 310 : 2014/05/21(水) 11:58:11 :
- 結局ミカサもリヴァイもお互い勝ちを譲らず、最終的にはどっちも負けだとハンジに言われて、ぶーぶー言いながら部屋に帰って行った
嵐が去り、残されたハンジとモブリット
ハンジ「ふう・・・なんだか気を削がれてしまったよ」
ハンジはため息をついた
モブリット「写真を撮られてしまいましたね。しかし、ミカサのあの文章・・・」
モブリットはまた頭を抱えた
ハンジ「・・・あながち、うそは書いてないよ」
ぼそっと呟く様なハンジの言葉は、海の波音にかき消される様に小さかったが、辛うじてモブリットの耳に届いた
モブリット「分隊長・・・?」
モブリットがハンジのその言葉に顔を上げる・・・声の主は何とも言えない困ったような表情を見せていた
ハンジは立ち上がり、モブリットに手をさしのべる
ハンジ「寒くなったね、部屋に戻ろう。そして・・・少し暖めてくれない?」
モブリットは差し伸べられたその手を握る事に一瞬躊躇を見せる
だが、首を振り、意を決した様にその手に自分の手を重ねて握る
モブリット「私でよければ・・・ハンジさん」
海の優しい波音が二人の背中を押す様に、お互いの心と身体の距離を極限にまで縮めた
-
- 311 : 2014/05/21(水) 11:58:24 :
- 大きなベッドに出来る限り優しくハンジの体を横たえる、モブリット
ハンジは顔を真っ赤にしていた
なぜなら―
ハンジ「モブリット・・・お姫様だっこなんてしなくてよかったのに・・・腰いわしちゃうよ?」
モブリット「やるなら1から10まで完璧に・・・がモットーです」
そう、モブリットはハンジを軽々お姫様だっこして、部屋に連れ込んだのだった
ハンジ「そ、そうなんだ」
モブリット「それに・・・これが最後かもしれないんです。あなたを抱くという行為がです。何も・・・思い残すことを作りたくないんです」
モブリットの真摯な眼差しが、ハンジの赤い顔を射抜いた
ハンジはモブリットのその眼差しに目を見開いたが、やがて優しげな微笑みを浮かべた
そして、その手を今まで自分の身を挺してまで守ってくれていた忠実な副官の頬にのばす
ハンジ「最後・・・になるのかな」
モブリット「それは、わかりません。未来は誰にもわかりません。この先自分の命がどうなるのかも、わかりません。ですから、なるべく悔いは残したくないんです」
そう言って、ハンジの身体に覆いかぶさるようにしながら、その唇を奪う
ハンジは、唇を離した後のモブリットの表情に絶句する
ハンジ「君・・・なんて顔してる・・の?」
モブリットの表情は、今にも泣きそうな様相だった
モブリット「・・・私は・・・貴女が好きです。本当に、愛しています」
絞るような声でそう言うモブリットに、ハンジは思わず起き上がり、その身体を抱きしめる
ハンジ「君は本当に・・・ばかだよ。どうして私なんか・・・」
ハンジはモブリットの頬に自分の頬を触れさせる
モブリットの目から、一すじだけ涙が零れ落ちた
-
- 312 : 2014/05/25(日) 15:02:30 :
- ハンジは抱きしめていた腕をゆるめて、モブリットの顔をじっと見つめる
ハンジ「君が言う通り、未来は誰にもわからないんだ。こんなご時世だ、いつどうなってもおかしくないよね。だから、私は自分より大切な存在を作る事が怖かった。そのせいで歩みが鈍る事があるかもしれない。もしその大切な存在が命を落としたら、そう考えると胸が張り裂けそうになる」
モブリット「はい、実際あなたは昔よく心を折られていました」
ハンジ「ああ・・・その度に浮上させてくれたのが、君さ」
ハンジのその言葉に、モブリットは目を伏せた
モブリット「私に・・・それができていたでしょうか」
ハンジ「できていたさ・・・だから今私はここにいる事が出来ているんだよ」
ハンジははにかんだような笑みを浮かべた
モブリット「兵長が、貴女の心の支えでした」
ハンジ「そうだね、リヴァイにも、支えてもらっていた。いや、お互い支え合っていたというべきかな」
モブリット「私には、その間に入る事などできませんでした」
ハンジ「そりゃそうだ、リヴァイとは付き合いが長いんだ。でもね、ずっとそばで支えていてくれたのは君だ。私とリヴァイは支え合っていた。でも君と私は・・・」
ハンジはそこで言葉を詰まらせた
ゆっくり息を吐いて、また言葉を発する
「君は、私を支えてくれていたけれど、私は・・・君になにもしてあげていなかった」
モブリット「・・・私は、貴女が自由に飛べれば、それで良かったのです」
ハンジ「そう、君は私にまさに、無償の愛をくれていたんだ。何の見返りも求めない愛をね。それに今更、気が付いた」
ハンジはそう言うと、モブリットの目から零れ落ちた涙の筋を指でなぞった
モブリット「この気持ちは、墓場まで持っていくつもりでした」
モブリットは静かにそう言った
ハンジ「墓場まで・・・持っていく前に、私にちゃんと示して。それで未来が変えられるのかはわからないけど・・・君が今まで支えてくれた分、私が君を支えて、受け入れよう」
広げられるハンジの両の腕
まるでその腕の中に母なる海を見る様に、モブリットはその海に飛び込んでいくのだった
-
- 317 : 2014/05/30(金) 11:29:31 :
- ふと目を覚ます
見慣れない天井が目に入る
微かな潮騒の音が耳を撫でる
現実か、夢か?
一瞬戸惑い瞬きをする
・・・そしてようやくこれが現実だとわかる
顔を横にすると、そこには心地よさそうに眠りについている自分の上司の顔が目の前にあった
その顔に手を伸ばし、頬にそっと触れる
ハンジ「ん・・・」
その瞬間聞こえてきた微かな声と、身じろぎに、あわてて手を引っ込める
一切衣を身に着けていない自分と、たぶん布団の下は同じ状態のハンジ
ベッドから体を起こしあたりを見回すと、脱ぎ散らかしたままのパジャマに下着
それらの状況でやっと、先ほどの行為が夢ではなかったと悟る
モブリット「良かったのか?これで」
手を開き、それを見つめる
確かにこの手であの人に触れた
あの人の全てが愛おしくてたまらなかった
だから、全てを知りたくてただ一心不乱に、あの人の身体に触れた
自分の想いを全て、伝えるかの様に
沢山、言葉も発したと思う
何を言ったのか殆ど覚えていない、たぶん普段は絶対に言わないようなことをたくさん言ったはずだ
ふうと息をつく・・・そうだ、後悔はしない、後は前を見て進むだけだ
さしあたっては、散らかった衣服の片付けだ、それが自分に与えられた役割なのだから
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- 318 : 2014/05/30(金) 11:49:21 :
- モブリットはそっとベッドから降りて散らばった衣服を回収する
ささっと自分の寝間着を着て、ハンジの物は畳んでベッドのサイドに置いてあるローテーブルに置いておく
ざざ・・・
また耳に入ってくる潮騒の音
それに引かれる様にテラスに足を踏み出したその時
ハンジ「モブリット」
自分の名を呼ぶ上司の声
振り向くと、ハンジは上半身を起こしてモブリットに視線を送っていた
モブリット「ハンジさん、起こしてしまいましたか」
モブリットはそう言いながら、彼女に歩み寄った
ハンジ「君が起こしたんじゃなくて、勝手に起きたんだよ、大丈夫」
ハンジはそう言うと、はにかんだような笑みを浮かべた
モブリット「なら、良かったです」
モブリットはその笑みに、自分の胸の奥がちくっと痛んだ気がしたが、気のせいにした
ハンジ「モブリット、どこかへ行こうとしたの?」
ハンジが手招きをしながらそう問いかけた
モブリットはベッドに腰を下ろす
モブリット「海の音が聞こえてきたので、ちょっと外に出てみようかと」
ハンジ「飛び込むの?」
モブリット「まさか・・・貴女じゃあるまいし。そんな事しませんよ」
ハンジ「そっか、そうだよね」
ハンジはいたずらっぽい笑みを浮かべながら、モブリットの頬に手を伸ばして撫でた
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- 321 : 2014/06/03(火) 02:04:23 :
- ハンジ「モブリットずるい。服着てるじゃないか」
ハンジは突然顔を赤くしてそう言った・・・布団で前は隠していたが、女性特有のなだらかな背中のラインは、惜しげもなくさらされていた
モブリット「・・・起きた時に着たんですよ。ほんの先ほどまで同じ状態でした」
モブリットは苦笑気味に言葉を発し、先ほどローテーブルに置いたハンジの服に手を伸ばした
ハンジ「ありがとう」
ハンジはモブリットから服を手渡された・・・今までにはあまり感じなかった恥ずかしさ、なのだろうか。
ハンジの顔は真っ赤になっていた
モブリット「ハンジさん、顔が赤くないですか?」
微かな明かりに照らされた上官の顔がいつになく朱に染まっているのを見て、その頬に手を伸ばす・・・が、モブリットはその頬に触れる寸前で手を止めた
ハンジはその動作に首を傾げる
ハンジ「モブリット?」
そして、何ともさびしげな表情を見せた
モブリット「私は・・・貴女に触れてよかったのでしょうか、今更・・・なんですが」
彼女の忠実なる副官は、忠実であるが故の悩みにさいなまれていたのだった
ハンジは視線を下に、肩を落とすモブリットの頭をそっと撫でる
ハンジ「ほんと、今更だよ。あんなに言葉攻めにしておいて・・・よく言うよ」
いたずらっぽくそう言うと、頭を撫でていた手で彼の頬を軽くつねった
モブリット「痛っ・・・そんなに何か言ってましたか」
ハンジ「言ってたよ。だから顔が真っ赤になってるんじゃないか・・・思い出してしまったよ」
そう言ってまた顔を赤くしたハンジは、布団がはだけるのも構わず、彼女の忠実なる副官に抱きついた
モブリット「何を言っていましたか?」
あらわになっている背中にそっと指で触れながらそう言葉を発するモブリットに、ハンジは
ハンジ「そんなの、言えないよ。恥ずかしくって」
そういってことさら強く、モブリットの体にしがみついたのだった
-
- 322 : 2014/06/03(火) 02:34:41 :
- モブリット「まあ、あなたに恥じらいというものを認識していただけたのであれば、良かったかもしれないです」
モブリットはしがみつくハンジの身体を離すと、寝間着をはおらせてボタンをとめはじめた
ハンジ「な、なんだよそれ・・・」
ハンジは着せ替え人形のごとくされるがままになりながら、唇を尖らせた
モブリット「今まで一切恥じらった事などなかったじゃないですか、私に対して、です」
ハンジ「そ、そうだっけ・・・まあそうかもしれないけど、もういいじゃない、一生分くらい恥ずかしい思いしたし」
モブリット「私が男だとやっと認識していただけたようで、感極まって泣きそうです」
モブリットは言葉とは裏腹に、ふん、と鼻を鳴らして口を尖らせた
ハンジ「うわあ、なんていじわるな・・・モブリットってそんな子だったんだね・・・」
ハンジはそんなモブリットの表情をちらりとみて、下着と寝間着のズボンをさっと履いた
モブリット「そうですよ、そんな子ですよ」
ハンジ「いつも、そんな風に私を見ていただなんて!」
ハンジは自分の身体をかき抱いてそう言った・・・ことさらオーバーアクションで
モブリット「そんな風にとは、どんな風にです?」
それをさらりとかわす様に言葉を投げかけるモブリット
ハンジ「え、いやそれは・・・」
ハンジは口ごもり、後ずさった
モブリット「私はどんな風に、貴女を見ていたのでしょうか、教えてください」
モブリットは自分から距離を取ろうとするハンジの手を握りしめてそう言った
ハンジ「そ、そんなの・・・私の口からは言えないよ!」
顔を真っ赤にしてそう言うハンジに対して、また愛おしさがこみあげてきたモブリットは、彼女をそっと抱き寄せて耳元に口をよせる
モブリット「いくらでも言って、さしあげますよ」
そうつぶやいて、またハンジの身体の力を抜くのに成功するのであった
-
- 326 : 2014/06/14(土) 18:22:26 :
- 翌朝
ハンジ「おはよう…ふぁぁ…眠い…」
モブリット「おはようございます!!」
ミカサ「おはようございます、ハンジさんは眠たそうですね…何か…あったんでしょうか」
リヴァイ「あったに決まってるだろうが、ミカサ。野暮な事を聞くな」
ミカサ「モブリットさんがかなり晴れやかな表情ですね」
モブリット「お陰様でね」
ハンジ「…えらい目にあった…」
リヴァイ「ほう。くわしく教えろ」
ミカサ「メモしなければ…」
モブリット「いいですよ、詳しくお話しま…むぐぐ…」
ハンジ「言うなよ、ばか!!」
ハンジは顔を赤くしながら、モブリットの口をふさいだ
-
- 327 : 2014/06/14(土) 19:04:10 :
- ハンジ「今日は一旦本島に戻った後、国内線の飛行機でまた離島にいくよ!!」
モブリット「要するに、耳が弱点なんですよ。これは由々しき事態です。万が一巨人に、分隊長の弱点を知られては一網打尽にされます」
ミカサ「それはやっかい…」
リヴァイ「確かにな…」
モブリット「ですので、その弱点克服のため、とことん耳を攻めました」
リヴァイ「ほう、で、結果は?」
モブリット「案の定、少し耳に息を吹き掛けただけで、体から力が抜けました。そこに畳み掛ける様に甘くささやくだけで、チェックメイトです」
ミカサ「例えばどのような言葉ですか?」
モブリット「知りたいのか…15才の君の耳に入れていいものか悩むな」
リヴァイ「大丈夫だ、ミカサはアルミンから借りた、かなり強烈なR18指定の小説を読んでいるからな」
ハンジ「ちょ、ちょっと君たち!!私の話を聞けよ!!」
ハンジは激昂した
-
- 330 : 2014/06/14(土) 23:27:56 :
- モブリット「分隊長、ミカサへの教育的指導の観点から、こういった類いの発言に関して伝えるべきと考えるのですが」
ハンジ「どんな教育的指導するつもりなんだよ、君は…」
ミカサ「興味があります、モブリットさんの発言」
ミカサは真摯な眼差しをモブリットに向けた
リヴァイ「俺も興味がある」
ハンジ「リヴァイまで!!この変態似た者同士め!!」
モブリット「そうですね…ミカサに言っても差し支えない内容といえば…とにかく身体中を誉めちぎるのです」
ミカサ「…例えば」
モブリット「分隊長は一体どこに胸を隠してらしたんですか…さらし…そんなものでこんなに美しく柔らかい物を締め付けるのはお止めになって、常に解放していて下さい。私がいつでも愛でられるように…」
リヴァイ「お前、最中にそんな事言うのか…ある意味尊敬する」
ミカサ「…メモメモ」
モブリット「ああ、勿論その部分をしっかり愛でながら、発言するんですよ」
リヴァイ「なるほどな」
ハンジ「なるほどな、じゃないよばか!!」
ミカサ「ハンジさん顔真っ赤…」
ミカサはハンジの顔にそっと手で触れた
-
- 335 : 2014/06/26(木) 09:32:53 :
- ハンジ「さ・・・さて気を取り直して、今日はさっき言ったみたいに、一度本島に戻って、そこから飛行機に乗るよ!」
リヴァイ「飛行機か、落ちねえだろうな?!」
リヴァイはぶるっと身を震わせた
ミカサ「兵長、飛行機ってなんですか?」
モブリット「私は前回の旅行記のレポートで名前だけは知っていますが・・・」
二人がきょとんとした
ハンジ「そっか!二人は初めてだもんね?飛行機って、空飛ぶ乗り物なんだよ!それに乗って、また離島へ渡るんだ!」
ハンジは目をきらきらさせながら言った
モブリット「離島ですか、楽しみですね」
ハンジ「とっても綺麗なところなんだよ!ここよりも、もっと綺麗なんだ!今回の旅の目玉ともいえるかなぁ!」
ミカサ「そうですか、そしてそんな美しい南国の島の楽園で繰り広げられる、分隊長をめぐる、兵長と副長のせめぎ合いがまたみられるんですね。わくわく」
ミカサは真顔でメモを片手にそう言った
ハンジ「ちょ、ちょっとミカサ?!」
リヴァイ「せめぎあってねえ!」
モブリット「兵長とせめぎ合うなんて、命知らずなマネはできません」
リヴァイ「・・・あぁ?そういやお前、昨日はお楽しみだったようだな」
リヴァイはモブリットをぎろりと睨んだ
モブリット「兵長・・・がけしかけたんじゃないですか!」
モブリットは悲鳴を上げた
-
- 336 : 2014/06/26(木) 09:33:07 :
- リヴァイ「…確かにそうかもしれん。だが実際そうなってみるとなんだかしっくりこねえ。ああ、やっぱりせめぎ合った方がいいのかもしれねえな」
リヴァイはふんと鼻を鳴らした
モブリット「いいえ、せめぎ合いませんよ、兵長とは。ですのでどうぞ、隙だらけの分隊長を煮るなり焼くなり・・・」
リヴァイ「そうだ、もとはといえばこの隙だらけのクソメガネがいけねえんだ」
ミカサ「確かにそうかもしれませんね」
ミカサはちらりとハンジを見た
ハンジ「ちょっとお、私ばっかり悪者にしないでよ!ちょっと鈍いだけなんだよ・・・」
ハンジは項垂れた
モブリットはハンジの肩にそっと手を乗せた
モブリット「そうです、ハンジさんは悪くないんです。巨人の事ばかり考えているうちに、周りのことが少しばかり、いやかなり見えなくなっていただけの話ですから。でも私は、一生懸命前を見据える、そんなハンジさんが好きです」
ハンジ「ふが?!」
突然の告白に、ハンジは変な声を上げた
ミカサ「モブリットさんがアグレッシブになった」
ミカサは一字一句もらすまいとメモを走らせながらつぶやいた
リヴァイ「それがお前の本心だな、モブリット」
リヴァイは真摯な眼差しをモブリットに向けた
モブリット「はい、兵長」
その眼差しを受け止めながら、モブリットは頷いた
リヴァイ「ならば俺と戦え」
リヴァイは静かにそう言い放った
-
- 337 : 2014/06/26(木) 09:33:24 :
- モブリット「・・・はい」
ハンジ「えええええ?!ちょっとモブリット、無理だよ!リヴァイと戦うなんて!リヴァイ、バカな事はやめて!」
ハンジは顔を青ざめさせながら二人の間にはいって右往左往した
リヴァイ「いや、決着をつけねえとな。白黒はっきり。グレーはいらねえ」
モブリット「はい、そう思います。でないと前に進めない気がしますので」
モブリットは決意を固めた表情でリヴァイに同意を示した
ハンジ「や、やだよ・・・ちょっと本当にやめてくれよ・・・」
ハンジは座り込んで頭を抱えた
ミカサ「喧嘩をやめてー二人をとめてーハンジさんのーためーに、あらそーわないーでー」
ミカサの美しい歌声がBGMとなって、朝の愛のせめぎ合いに色を添えた
リヴァイ「もちろん、戦うわけだからな、対人格闘で勝負だ」
リヴァイは鋭い目でモブリットを見た
モブリット「兵長、お言葉ですが・・・ここにはこんなに素敵な舞台がある。ので、ここはあの島までどちらが早くたどり着けるかな?!おぼれちゃやーよ!スイミング対決!で行きましょう」
ミカサ「モブリットさん密かに私のマネをした・・・」
ミカサはモブリットにちらりと目をやった
ハンジ「そして即興で考えたであろう番組コールが冴える・・・」
女性陣はモブリットの隠れた才能?に舌を巻いた
-
- 338 : 2014/06/26(木) 09:33:36 :
- リヴァイ「スイミング対決だと?お前、俺が勝てるわけねえじゃねえか」
モブリット「対人格闘ですって?私が立体機動装置にスナップブレード使用許可、兵長はまるごし、なら考えますけど」
リヴァイ「お前、俺を殺す気か?」
モブリット「めっそうもない。あまりにも実力差がはっきりしている場合はハンデ戦というものがあるじゃないですか」
リヴァイ「ハンデがでかすぎるだろうが、丸腰ってお前・・・じゃあ、スイミング対決だが、俺は50メートル、お前はあの島まで・・・たぶん10㎞くらいあるか?なら勝負してやってもいいぞ」
モブリット「どんなハンデなんですかそれ・・・イルカでも勝てませんよ!」
リヴァイ「お前イルカになればいいじゃねえか。ほらキグルミとかひれとかつけてだな」
モブリット「それ、ただかわいいだけじゃないですか。仕方ない、兵長はブレードだけは使用許可しますよ。段ボールでつくった張りぼてのブレードならば」
リヴァイ「お前、絶対に負けるつもりは無さそうだな」
モブリット「もちろんです。実は負けず嫌いなんで」
リヴァイ「奇遇だな。俺もだ」
モブリット「兵長とは仲良くなれそうです」
リヴァイ「ああ、そうだな」
二人はがっちりと握手を交わした・・・何故か、友情が芽生えたのだった
-
- 343 : 2014/07/10(木) 09:17:25 :
- ハンジ「はあー!良かった、喧嘩にならなくて・・・」
ハンジは、島からの帰りの船の上でほっとした様に息をついた
ミカサ「元はといえば、ハンジさんがはっきりしないからだめ。ので、反省してください」
ミカサが神妙な面持ちで言葉を発した
ハンジは頷く
ハンジ「そうだよね。本当にそう思うよ。でもね・・・まさかモブリットまで私をそう言う風に好いていてくれたとは思わなくって・・・」
ミカサ「ハンジさんは、ご自分の魅力に・・・気が付かなさすぎ・・・です」
ハンジ「えっ!魅力?!なんだよそれ、そんなのあるわけないだろ、ミカサ!」
ミカサ「ありますよ、ハンジさんは女からみてもかなり変態ですがかっこいいですし、スタイルだって抜群ですし、ちょっとたまに加齢臭?っぽい匂いが漂う事はありますが、知的な美人だと思いますし・・・」
ハンジ「ちょっとそれ、褒めてるのかけなしているのかわからないよ・・・ミカサ!」
ミカサ「すべて、真実を語っています」
ミカサはどんと心臓をささげる敬礼をした
ハンジ「はは、ありがとうミカサ」
ハンジはミカサに微笑みかけて、その頭を撫でてやるのだった
ミカサ「兵長とモブリットさんは・・・意気投合してるみたいですねえ」
ミカサが指をさす方向には、海を眺めながら二人談笑している姿があった
ハンジ「ああ、そうだね。雨降って地固まるとでもいうのかな?」
ミカサ「モブリットさん、兵長の副官になりますなんて言いかねない。そうなると、私がハンジさんの副官に?ハンジさんと兵長・・・どちらがいいか。そう聞かれると、兵長の方が部屋は綺麗だし、加齢臭っぽい匂いはしなくていつも石鹸の匂いだし、ちび・・・だけど結構優しいところはあるし、何よりちびと罵るのは日課の様になっていて楽しいし・・・」
ハンジ「ミカサ・・・なにをぶつぶつ言ってるの?全部聞こえてるんだけど・・・」
ハンジは肩をすくめた
-
- 344 : 2014/07/10(木) 09:18:19 :
- リヴァイ「お前も、いろいろ大変だったよな。まあ夜のお勤めご苦労といったところか」
モブリット「・・・兵長、それ言わないでくださいよ」
リヴァイ「ん?何故だ?確か俺は以前お前たちに詳しく当時の状況を説明したと思うんだが、お前にも俺にそうする義務があると思うんだがな」
モブリット「な、何言ってるんですか兵長・・・。そんな義務どこにも転がってやしませんよ!」
リヴァイ「いいや、俺にはそれを聞く権利がある。ああそうだ。なぜなら俺とお前は兄弟・・・」
モブリット「わわわわ!兵長ストップ!」
リヴァイ「だからなぜ止めるんだ」
モブリット「当たり前じゃないですか・・・というかそんなのどうして話さなきゃならないんですか」
リヴァイ「まあ別に、お前とハンジの性生活に興味があるわけじゃねえ。ただ嫌がらせをしてるだけだ、お前にな」
モブリット「やめてくださいよ、そういう精神を直接つつくような嫌がらせは・・・」
リヴァイ「いいかモブリット、俺は女を寝取られたんだ。嫌がらせくらいさせてくれてもいいだろうが」
モブリット「兵長、にやりと笑いながらそう言う事を言うのはおやめください・・・本当に怖いです」
リヴァイ「泣いても震えても俺の追求は甘くはならねえぞ。さあ話せ」
モブリット「寝取ったって・・・人聞きの悪い。もともと兵長がけしかけたんですし、私は分隊長に誘われたからそれに応えただけですし」
リヴァイ「副官の鑑だろ?お前。なら最初から最後までそれを貫き通せよ」
モブリット「私だって男ですよ・・・我慢の限界というものが存在しますから・・・」
リヴァイ「我慢して一人でもんもんとしてりゃいいじゃねえか」
モブリット「いままでずっとそうしてきましたよ・・・」
リヴァイ「ほう、すごいカミングアウトだな。いつもハンジを夜のおかずにしていた・・と。あとでハンジに報告しておこう、あとミカサにもな。壁新聞に記載しなきゃならねえしな」
モブリット「そ、そんな事言ってないじゃないですか・・・兵長!」
二人は大の仲良し?になった
-
- 347 : 2014/08/03(日) 21:34:55 :
- モブリット「こ、これが飛ぶんですか…空を…」
モブリットは、小さな飛行機を見ながらびくびくしていた
空を飛ぶ乗り物がまだない世界にいるモブリットにとって、飛行機は未知の物体だった
リヴァイ「そうだな。思いきり高く飛ぶぞ」
ミカサ「怖い…ハンジさん、立体機動装置の着用を許可してください…」
ハンジ「ははは、大丈夫だよ。落ちても立体機動なんか使う暇ないし、一瞬だから!」
モブリット「そんな、ハンジさん身も蓋もない…」
モブリットはミカサと二人で後ずさった
リヴァイ「まあ心配するな。あっちの世界の気球よりはよほど安全だ」
ミカサ「気球…王に禁じられた乗り物ですか…」
リヴァイ「ああそうだ。いつか王のやつを蹴散らして、自由に空が飛べる…そんな時代にしたいもんだな」
リヴァイは遠くを見詰めるような目をした
-
- 348 : 2014/08/03(日) 21:49:28 :
- ハンジ「さて、飛行機が離陸したよ!!ってちょっとモブリット、へばりつかないでくれよ!?」
モブリット「こ、怖い怖い怖い…何でこんな大きな物が空飛んでるんですか…私は高所恐怖症なんですよぉ…」
モブリットは離陸直後から、ハンジの身体にしがみついていた…シートベルトを限界にまで引き延ばして
リヴァイ「おいてめえモブリット…公然ワイセツで逮捕だぞお前…」
リヴァイはその姿を見ながら、苦虫を噛み潰したような顔をした
モブリット「だ、だって…怖いものは怖いですよ…ハンジさんに掴まっていれば何故か安心するんですよ…」
リヴァイ「ほう、のろけか、そうか」
モブリット「違います違います!!ハンジさんは死にそうにないじゃないですか…?そんな人にくっついてれば安心かと…」
ハンジ「モブリット酷い!!わたしをそんな便利グッズみたいに扱わないでくれよ!?私が頼れるとか、ちょっとセクハラしてみたかったとか、いろいろ言い方があるだろ!?」
モブリット「ハンジさんは頼れますし、セクハラしてみたかったです。はいこれでいいですか?!」
モブリットはそう言うなり、ハンジにますますしがみついた
リヴァイ「ちっ…くっつきやがって…」
ミカサ「苦虫を噛み潰したような兵長をよそに、飛行機の座席で二人は、上官と副官という立場をかなぐり捨てるかの様に抱き合い、お互いの身体を無遠慮に探り合うのであった…」
ハンジ「ミカサっ、何を書いているんだよっ!!」
ミカサ「見たままを描写しているだけです」
ミカサは勝ち誇ったような笑みを浮かべた
-
- 350 : 2014/08/05(火) 16:51:58 :
- ハンジ「さて、無事到着したよ!!ここが映画『天国に一番近い島』の舞台になった島、ウベア島だよ」
モブリット「じ、じ、地面だ…懐かしい気がするよ…」
ミカサ「生きた心地がしませんでした…」
モブリットとミカサは、着陸して飛行機を降りるや否や、その場に崩折れた
リヴァイ「そんなに大袈裟なもんかよ…」
リヴァイは肩を竦めた
モブリット「兵長は初めて飛行機に乗った時、怖くなかったんですか…?こんな物が空を飛ぶんですよ…?信じられる訳がないじゃないですか」
モブリットは座り込んで、地面に手をついていた
ミカサ「立体機動ほどではないけど…上がる時と落ちる時にかなりのGを感じました…」
ハンジ「上がる時はともかく、落ちる時って…!ははは、ミカサ可愛いなあ!!」
ハンジは身体を震わせるミカサの頭を撫でてやるのだった
-
- 351 : 2014/08/05(火) 17:25:10 :
- ハンジ「早速だけど、ホテルにチェックインしてから遊ぼうか!!今日も、海に面した部屋に泊まるよ」
空港から南へ、海沿いの道をハイヤーで進みながら、景色を楽しむ
ミカサ「これは…凄く綺麗な海ですね。昨日の島よりももっと綺麗…」
ミカサが窓の外の景色を見ながらうっ、とりしていた
モブリット「本当に美しいですね。砂浜も真っ白で…海とのコントラストが素晴らしいです」
リヴァイ「さすがは天国に一番近いだな。死んだらこんな所に行くのか?」
ハンジ「うーん、リヴァイは殺しても死なないから心配ないさ!!さて、もうすぐ絶景ポイントに着くから、お楽しみに!!」
ハンジはニヤリと笑った
リヴァイ「殺しても死にそうにねえのはお前だろ、ハンジ」
ミカサ「はい、そう思います」
モブリット「激しく同意です、兵長」
ハンジ「君たちひっどいなあ!?私だって殺されたら死ぬってば!!」
ハンジは激昂した
-
- 357 : 2014/08/08(金) 11:08:38 :
- ハンジ「さて、着いたよ。車降りてみて?」
ハンジの言葉に、一同は車を降りた…そして、目の前に拓ける絶景に、言葉を失う
ミカサ「すっごく…綺麗…」
ミカサは遠くまで見通す様に、目を細めた
リヴァイ「橋からの絶景か…」
ハンジ「うん、ここはムリ橋って言うんだ。島の岬と岬を繋ぐような形で掛けられているんだ。島と海と空と橋と…全てが相俟ってできる絶景さ!!」
モブリット「………」
モブリットはペンを目の前に立てて精神集中モードに入っていた
ミカサ「モブリットさんが真剣な表情…」
ハンジ「モブリットが絵を描いている間、しばらく景色を楽しもう!!」
三人は並んで、橋の下を覗いたり、何故か願い事を叫んだりして楽しんだ
モブリット「…皆さんお待たせしました」
ハンジ「おっ、出来た!?見せて見せて!!」
モブリット「まだ完成していませんから、後程」
モブリットはそう言うと、スケッチブックをパタンと閉じた
-
- 361 : 2014/08/11(月) 09:32:11 :
- ムリ橋の絶景を楽しんだ後、ハイヤーでホテルに移動した一行
ハンジ「さあ、今日泊まるホテルはここ、パラディ ド ウベア。離島の雰囲気を思いきり満喫できるよ!!」
ミカサ「兵長、今日もマッサージお願いします。あれのおかげで、私はまた強くなった…気がするから」
リヴァイ「あぁ!?面倒くせえな…俺は一人でゆっくり満喫してえんだよ、リゾートをな…」
モブリット「一人でリゾート…何だか寂しすぎる響きですよ、兵長」
モブリットがまゆをひそめた
ミカサ「兵長は一人じゃない…私の研究対象…ので、私が付きっきりで面倒を見る…嫌いだけど、背に腹は変えられない」
ハンジ「リヴァイはミカサにいろいろ教える役割を与えられてるからねぇ、エルヴィンから」
モブリット「兵長とミカサはいいコンビだと思います」
ミカサ「モブリットさん、それはない…です」
リヴァイ「モブリット、んなわけねぇだろ」
二人の否定が重なった
-
- 364 : 2014/08/13(水) 08:21:31 :
- ハンジ「このホテルはね、ユネスコの世界遺産である、ウベアのラグーンが目の前に見られるんだ!!絶景だよ!!」
ホテルマンに案内されながら、ハンジは彼の異国語を翻訳していた
モブリット「分隊長って、語学堪能なんですね」
リヴァイ「こいつは遊びのためならなんでも頭に詰め込むやつさ」
ミカサ「ちび…兵長は羨んでいる。自分の小さい脳みそには、もう新しい事を吸収する余地はない…から」
リヴァイ「てめえミカサ!!削ぐぞ!?」
ミカサ「兵長、私の特技は…肉を綺麗に削ぐ事…」
リヴァイ「俺の特技は、てめえより綺麗に肉を削ぐ事だ」
ミカサ「負けるわけない…」
リヴァイ「そりゃ、こっちのセリフだ…」
二人の間の空気が、不穏な様相を呈していたその時
ハンジ「部屋についたよ!!」
ミカサ「兵長、勝負の続きは部屋で…」
リヴァイ「ほう、覚悟してろよ…」
モブリット「あ、兵長今日はご一緒に…行ってしまった」
モブリットはリヴァイに声を掛けたが、二人の似た者同士は、すでに隣の部屋に向かってしまっていた
ハンジ「モブリット、私と一緒じゃ嫌かな?」
ハンジの少し寂しげな表情を見たモブリットは首をぶんぶん振った
モブリット「そんなわけ、ないじゃないですか」
モブリットはそう言って、微笑んだ
-
- 372 : 2014/08/17(日) 07:25:12 :
- ミカサ「兵長、見て…部屋の前が砂浜です…綺麗…」
ミカサは部屋に入るなり、テラスから外へ飛び出した
テラスの外は、プライベートビーチであった
リヴァイ「ああ、すげえな」
リヴァイはミカサの後からテラスへ出て、ぼそっと呟いた
そしてふと気が付く…テラスに設えてある風呂の存在に
ミカサ「兵長、何ですか、ソレ」
リヴァイ「風呂みてえだな。外に設置されていて、しかも洗い場がねえ辺りを考えると…ただ浸かって景色を楽しむための物かもしれねぇな」
ミカサ「兵長、なんかボタンがありますよ。押そう…ポチっ」
ミカサは風呂に付いていたボタンを、自らの口で効果音を発しながら押してみた
すると、風呂の中のお湯が躍りだし、水流と泡を出し始めた
ミカサ「わっ!!凄い、お湯が暴れている…」
リヴァイ「風呂に浸かりながら、マッサージ効果があるんだろうな。後で入ってみるか」
ミカサ「はい、兵長」
ミカサは頷いた…旅が始まった当初よりも、リヴァイに対して少し素直になったミカサであった
-
- 373 : 2014/08/17(日) 07:38:15 :
- ミカサ「フンフンフン~」
ミカサは鼻歌混じで、荷物の整理をしていた
リヴァイはすでに整理を終えて、大きなベッドに体を投げ出し、目を瞑っていた
ミカサ「海に行く…ので、水着と…やっぱりパレオ…。でも、この白いワンピースもいいな…兵長…」
ミカサはパレオとワンピースを手に、リヴァイを見た
ベッドの上に、小さな体を横たえて、うつ伏せで寝ている上司を目にして、ふと、邪な考えが浮かぶ
ミカサ「兵長…寝ましたか…?」
つん、と頬をつつくが、反応はない
ミカサはニヤリと笑った
そして、おもむろに、だが迅速に、リヴァイの両ふくらはぎの上に、自分の足をのせ、両腕をひっつかみ、勢いよく自ら後ろに倒れる
リヴァイ「あ!?」
ミカサ「すきあり兵長!!ローリングサンダァァァァァ!」
リヴァイ「てっめえぇ!!何しやがる!?」
ミカサ「ローリングサンダーです、兵長…ププ」
リヴァイ「そりゃ、わかってる!!いきなり技かけるなクソガキ!!怪我したらどうするんだ!!」
ミカサ「兵長は殺してもしなない…」
その時、背後でパシャっと音がした
-
- 374 : 2014/08/17(日) 07:43:26 :
- ハンジ「リヴァイが技かけられてる写真、とったど~!!」
いつの間にか部屋にきていたハンジが、カメラを片手にガッツポーズをした
ミカサ「ハンジさん、ナイスタイミング」
リヴァイ「ハンジ、てめえぇ!!」
モブリット「ミカサ、まだ離さないでくれよ。兵長の貴重な姿をスケッチしているんだからな…かきかきかき」
リヴァイ「モブリット、書くんじゃねえ!!」
モブリット「すみません兵長、それは聞けません…かきかきかき」
結局その後、リヴァイ対ミカサのプロレス大会になったのは言うまでもない
-
- 377 : 2014/08/26(火) 17:16:32 :
- ハンジ「じゃあ今から、島内を観光するよ。大きな島ではないけど、見所は沢山あるからね」
観光用のハイヤーに揺られながら、一行は、島の北へ向かっていた
モブリット「しかし、本当に手付かずの自然というか…人工物があまり見当たりませんよね」
ハンジ「そうなんだ。ウベアは自然豊かな場所でね。治外法権の場所があるほど、この島の原住民の意思が尊重されているんだ。無闇に土地に入ったりしてはいけない場所があるから、勝手な行動はしないでね?」
ミカサ「私は大人しいし素直、ので勝手な行動はしないし、怪しまれない。でも兵長は怪しい…人相が悪い、ので原住民に捕まるかも」
リヴァイ「誰が大人しいんだ誰が!!人相が悪いってほっとけ!!」
ハンジ「リヴァイはいつも仏頂面だもんねえ…」
モブリット「いやしかし、兵長がいつもにっこり微笑んでいるのは想像つかないですし、怖いですよ」
リヴァイ「モブリットてめえ、今朝からなんか、俺に喧嘩を売りてえらしいなあ…」
リヴァイはモブリットをぎろりと睨み付けた
モブリット「いや、そんな事は…兵長怖いですよ…」
ミカサ「ほら、人相が悪い…人畜無害なモブリットさんを苛めてるし…」
ミカサはリヴァイの視線を遮る様に、モブリットの前に立った
ハンジ「まあ、喧嘩は止めて。もうすぐとっておきの場所に着くからね?」
ハンジはそう言って、リヴァイと睨み合っているミカサの頭を撫でた
-
- 378 : 2014/08/26(火) 17:16:51 :
- モブリット「これは、凄いですね」
リヴァイ「ほう、絶景だな」
ミカサ「こ、怖い…」
3人は連れてこられた場所を見るなりそう言った
ハンジ「ここはね、『アナワのブルーホール』っていう場所さ。30メートル程の深さがある穴でね、海水と淡水が入り交じっているんだ。たまにうみがめも見られるよ」
海に面した小高い丘の上に、ぽっかりあいた巨大な穴は、沢山の魚が泳ぐ、ダイビングスポットである
モブリット「飛び込んでも構わないんですかね?」
ハンジ「ああ、ただ上がる時はロープ一本でよじ登らなきゃだけどね…崖を」
穴の淵から水面まで三メートルほどあり、切り立っているためにロープが備え付けられてはいたが、よほどの腕自慢でないとよじ登るのは不可能だった
ミカサ「私は力に自信がある…ので飛び込む…トウッ!!」
ミカサがいの一番に飛び込んだ
ハンジ「ミカサ!!水深30メートル!!足つかないよ!!」
ハンジが叫ぶや否や、モブリットとリヴァイがほぼ同時にブルーホールに飛び込んだ
あっぷあっぷしながら溺れかけているミカサを、二人がかりでロープに捕まらせたのだった
ミカサ「すみません…う、うかつだった…私は泳げなかった…」
ミカサはロープに掴まりながら項垂れた
リヴァイ「ちっ…脳みそまで筋肉なんじゃねえのかミカサ…」
ミカサ「ちょっと楽しくて舞い上がっていただけ…」
モブリット「まあ、兵長いいじゃないですか、無事だったわけですし。ミカサには私が泳ぎを教えてあげるよ。ここでは無理だけどね」
ミカサ「モブリットさんは優しい…兵長とは違う…だからハンジさんはモブリットさんに振り向いた…はず」
リヴァイ「うるせえぞ!!ミカサ!!」
リヴァイはちっ、と舌打ちをした
-
- 379 : 2014/08/26(火) 17:32:53 :
- ハンジ「さあ、皆準備はいいか!?」
ハンジのゴーグルがきらりと輝く
モブリット「はい、分隊長!!」
リヴァイ「ちっ、なんで俺まで…」
ミカサ「目標西三メートル、深さ7メートル!!」
ミカサが穴の淵から、水面を単眼鏡で何かを覗く
ハンジ「長距離…じゃないけど策敵陣形展開!!」
モブリット「目標海亀のかめ子ちゃん!!」
ハンジ「前進せよ!!」
リヴァイ「…この茶番劇が必要なのか…?」
ミカサの指示の元、3人は策亀陣形を展開して、青く神秘的な大きな穴の中を縦横無尽に泳ぎ回るのだった
-
- 381 : 2014/08/27(水) 14:22:00 :
- ハンジ「結局、かめ子ちゃんにタッチ出来たのはモブリットだけかあ…羨ましいなあ…どんな感触だった?!」
モブリット「どんなと言われましても…固くてごつごつしてて、ざらっとしてたくらいしか…」
モブリットは手の平を握ったり開いたりしながら、言葉を発した
リヴァイ「亀は深く潜って行ったもんな…さすがに追い掛けられねえ。モブリットだけは着いていけたが…深海魚かよお前」
モブリット「深海魚って…10メートルちょっとですよ、私が潜ったのは」
リヴァイ「深海生物モブ・リット」
モブリット「人を珍獣扱いしないで頂きたいです、兵長」
ハンジ「でも、モブリットに泳ぎが負けるなんて、なんかショックだなあ…」
リヴァイ「奇遇だな、俺もショックだ」
ミカサ「二人とも、完膚なきまでに負けている…醜い嫉妬に顔が歪んでいる」
ミカサはそう言いながら、メモをとった
モブリット「人間一つくらいは取り柄があるものですよ。それがたまたま私の場合は泳ぎだっただけで…というか日常の生活になんのメリットももたらさないんですよ…?」
ハンジ「なーんかモブリットには負けたくないんだよね…」
リヴァイ「奇遇だな、俺もだ」
ハンジ「じゃあ、勝負しよう!!」
リヴァイ「ああ、そうだな…」
モブリット「ちょっとお二人、勝手に決めないで下さいよ!?なんで勝負なんてする必要が…」
ミカサ「面白そう。モブリットさん対兵長、分隊長組のスイミング対決…」
ミカサはほくそえんだ
-
- 382 : 2014/08/27(水) 17:55:44 :
- リヴァイ「いや、ミカサ、お前も勿論参加するんだ。チームモブリットにな」
リヴァイの言葉に、ミカサが慌てる
ミカサ「兵長!!私は浮き輪が無いと泳げない…のに、勝負にならない。兵長はそこまでしてモブリットさんに勝ちたいのか…」
ハンジ「そうだよ、ミカサは泳げないんだから、競争なんて無理だろ?リヴァイ」
リヴァイ「ふん、ハンジと俺、モブリットとミカサで、丁度いいくらいだろうが。なあ、モブリット」
モブリット「…そうですね」
ミカサ「モブリットさん!?私と組むなんて、勝負を捨てている…ので、考え直して…」
ミカサの悲痛な言葉に、モブリットは首を振る
モブリット「ミカサ、勝負を捨てるなんてしていないつもりだよ。分隊長、勝った暁には、私と一緒になって下さいね」
ハンジ「ええ!?ちょ、ちょっと…それって…えええ!?」
ハンジは突然の告白に顔を真っ赤に染めた
リヴァイ「あくまで勝つつもりなんだな、分かった。ハンジ、お前、モブリットと一緒になりてえからって、手を抜くんじゃねえぞ?俺は一緒になるとかはどうでもいいが、負けたくねえんだからな」
モブリット「勝負まで、三日頂きたいです。ミカサ、巻き込んですまないが、一緒に頑張って欲しいんだけど」
ミカサ「…わかりました。ついていきます…私だって負けたくない…」
ミカサは燃えるような目をしていた
ハンジ「本当にやるのかい…?三日後なら、また次の島に渡ってるね…そこで勝負ってことになるね」
モブリット「はい、わかりました」
ひょんな事から勝負に発展した一行
暗雲立ち込める様な表情のミカサの運命はいかに…
-
- 384 : 2014/08/28(木) 09:37:38 :
- アナワのブルーホールを後にした一行は、島の南にある美しい教会に来ていた
南洋杉に囲まれた、赤い屋根に白亜の壁の美しい教会だ
ハンジ「ここはムリ教会。映画の舞台になったビーチに隣接しているんだ」
ミカサ「可愛い教会…」
ミカサは両手を頬にあてて、うっとりしていた
ハンジ「ミカサって結構乙女なんだねえ。いつもエレンエレンって血走ってるイメージがあるんだけど…」
ミカサ「いつも巨人巨人のハンジさんよりは血走ってない…と思う」
モブリット「それは言えてると思う」
リヴァイ「以下同文…だと思う」
ハンジ「ちょっと、揃いも揃って…まあ否定は出来ないけどさ…」
ハンジはぽりぽりと鼻の頭を掻いた
-
- 385 : 2014/08/28(木) 11:47:41 :
- 教会と南洋杉と、白い砂浜に青い海…美しい風景を絵に納めるべく、モブリットは筆を走らせていた
ミカサ「あの…モブリットさん」
モブリット「なんだい?ミカサ」
モブリットは絵からミカサの顔に視線を移動させた…ミカサは何時になく不安そうな面持ちで、モブリットを見ていた
ミカサ「大事な戦いに…私は足手まといにはなりたくない。ハンジさんにその、プロポーズをしましたよね…そんな大事な返事がかかった戦いに…私は」
ミカサはそう言って目を伏せた
モブリットはミカサの頭をよしよしと撫でつつ、口を開く
モブリット「大丈夫だよ。君が心配する事はないさ。第一、悔しくないのかい?兵長に、勝ちたいんだろ?弱音は君には似合わないよ」
ミカサ「でも、私は泳げない…」
モブリット「いいや、食わず嫌いと同じさ。やってみれば意外といけるものだよ?君は背も高くて、手も大きい。足は普通だけど…元々凄い運動能力だし、必ず泳げるようになるよ」
ミカサ「本当ですか…?」
モブリット「ああ、本当だ。少々スパルタになるけど、大丈夫だろ?君なら」
ミカサ「はい、頑張ります!!モブリットさん!!」
ミカサは立ち上がり、びしっと敬礼をした
モブリット「こちらこそよろしく頼むよ。頑張ろうね」
二人はこうして、暇があれば水泳の師匠と弟子として、修行に明け暮れる事になるのであった
-
- 387 : 2014/08/28(木) 20:11:13 :
- 教会を後にし、ホテルに戻った一行は早速海水浴に繰り出す
バンガローの目の前に広がるプライベートビーチ
サンデッキにはジャグジーもあり、疲れた身体を癒すことが出来る…絶景のリゾートホテルだ
モブリット「ではハンジさん、私はミカサと一緒に泳ぎの練習をしてきますので、ごゆっくりおくつろぎ下さい」
モブリットはそう言うと、頭を下げてビーチへ出て行った
ハンジ「ミカサ、大丈夫なのかなあ…と言うか、さっきのあれは…プロポーズ、だよね…どうしよう」
ハンジは、ベッドにうつ伏せになって、枕を抱きながら呟いた
あっさり言われたが、後から考えると顔から火が出るくらい恥ずかしかった
ハンジ「真面目なモブリットの事だ。一度そうなれば、結婚を申し込むのが礼儀だと思っているんだろうな…。でも、確か一回だけ、みたいに言っていたし…うーん、何考えてるのかわかんないよ…」
リヴァイ「まあ奴は真面目だからな。だがそれだけじゃねえ。お前を諦めるのを止めたんだ。腹を括ったんだろう。もうしおらしくお前を眺めているだけは止めたんだ。覚悟しておけよ、ハンジ」
ハンジ「わっ、リヴァイ何時の間に!!びっくりしたあ…」
リヴァイ「さっきからずっと後ろにいたぞ。お前が枕を奴の代わりにして抱き締めていた所からな」
リヴァイは肩を竦めた
ハンジ「いやいや、枕をモブリットの代わりになんかしてないさ…」
リヴァイ「顔が真っ赤だな、ハンジ」
リヴァイはハンジの頬にそっと手で触れた
ハンジ「そりゃあ、あんな風に言われればさ…でも…」
リヴァイ「もう一度言っておくが、俺は負ける気はねえ。と言うより、実は俺もあいつが何を考えているのか読めねえ。出来レースでプロポーズの返事をさせる様な奴じゃねえからな」
ハンジ「私も、そこがわからないんだ。モブリットはそう言う大事な事をレースの勝負まかせにする様な性格じゃないからね…」
リヴァイ「ま、せいぜい奴とせめぎあうんだな。散々振り回したばつだ。俺との関係みてえに一夏の思い出にするもよし、一生添い遂げるもよし」
リヴァイは言葉の意地悪さとは裏腹、労るような、優しげな瞳をハンジに向けていたのだった
-
- 390 : 2014/08/28(木) 21:02:18 :
- ミカサ「ひゃぁぁぁ…死ぬぅぅぅ!!」
ミカサは足の届かない海面で、必死に浮かぼうともがいていた
モブリット「ミカサ、落ち着いて。力を抜くんだ、ふわっと、海に身を任せる様に」
モブリットはその様子を冷静に見つめながら、声をかけた
ミカサはモブリットの背に掴まる形で、ビーチから離れた場所に連れてこられた
浮き輪は金輪際禁止だと言われて、浜辺に置いてきた
モブリットはまさにスパルタだった
一度は完全に海に沈むまで見ていたくらいだ
普通の人間ならトラウマになりかねないこの訓練にも、ミカサは負けてはいなかった
しばらくもがいていたが、やがて頭が完全に海中に沈んだ時、ふわりとミカサの身体を浮かび上がらせる
ミカサ「はぁはぁはぁはぁ…」
ミカサは今や唯一の命綱であるモブリットの首にしがみついた
モブリット「ミカサ、少し休憩したらもう一度だ」
ミカサ「モブリットさん、私は死んでしまう…きっと死ぬ…何度やっても沈む…」
ミカサはモブリットにしがみついて、離れようとしなかった
モブリット「大丈夫、ちゃんと見てるから死なないよ。信じて、ミカサ」
モブリットの真摯な眼差しに、ミカサは素直に頷くのだった
-
- 391 : 2014/08/28(木) 23:07:01 :
- モブリット「ミカサ、お疲れ様。大丈夫かい?」
特訓を終えてビーチに戻った二人…ミカサは倒れ込む様に、砂浜に寝転んだ
ミカサ「だ、大丈夫…私は負けない…」
ミカサはそう言ったが、かなりの体力を消耗したせいか、言葉を発するのも辛そうだった
モブリット「ミカサ、これを飲んで」
モブリットが水を渡すと、ミカサはごくごくと一気に飲み干した
ミカサ「はあ、少し生き返りました」
モブリット「はは、さすがだね。いやあ、しかし、あれだけ沈んでいるのに諦めない…やっぱり君は凄いね、ミカサ」
ミカサ「本気で死にそうでした。でも必ず泳げるようになりたい…それに、モブリットさんが信じてと言った…ので私は信じる」
モブリット「ありがとう、ミカサ。君は必ず泳げるようになるよ」
ミカサ「私はモブリットさんをも抜くくらいの意気込みで訓練する…ので伝授して下さい」
ミカサの熱い闘志に、モブリットは内心舌を巻くのだった
-
- 392 : 2014/08/29(金) 09:16:07 :
- リヴァイは海で泳いだあと、一人サンデッキのジャグジーに入っていた
リヴァイ「………」
静かなプライベートビーチ、目の前に広がる美しい海と白い砂浜のコントラスト…ずっと眺めているだけで飽きない
その時、ふらふらと歩く人影がこちらに向かって来ているのに気が付く
ミカサ「兵長ただいま戻りました…」
ミカサのぐったりした様子に、リヴァイは一瞬目を見開いた
リヴァイ「…えらく疲れてるみてえだな。絞られたか」
ミカサ「はい、モブリットさんは見た目よりずっと厳しい…」
リヴァイ「まあ、入れ。気持ちがいいぞ。ジャグジーって言うらしい」
ミカサ「暴れるお風呂ですか…」
ミカサはおそるおそる足を風呂につけた
足に当たる心地よい水流と泡に、ミカサは目を細める
そして、ザブンと頭まで潜った
リヴァイ「…おい」
リヴァイは眉をひそめたが、それ以上なにも言わなかった
ミカサ「はあ、気持ちがいい。エレンと一緒に入りたい…」
そう言ってちらりと隣を見るミカサに、リヴァイは顔を歪ませる
リヴァイ「そりゃ、こっちのセリフだ。折角一人静かな時間を満喫していたってのに…」
ミカサ「寂しい人…ふふ」
リヴァイ「うるせえ、クソガキ!!」
ミカサ「はあ、身長がち…びだと心も小さいのか…」
リヴァイ「…ちっ、だがお前…潜れるようになったのか?顔を沈めていたが」
ミカサ「はっ、そういえば自然に潜ってた…」
ミカサは両手を口に当てて驚いた
リヴァイ「特訓の成果か…」
リヴァイは舌を巻いた
-
- 397 : 2014/08/29(金) 18:36:10 :
- ハンジ「モブリット、おかえり」
モブリットがビーチから戻ると、サンデッキのチェアに腰を掛けているハンジが声をかけた
モブリット「ハンジさん、ただいま戻りました…あれ、裁縫ですか?珍しい」
モブリットはハンジの手元を覗き、そして目を見開いた
ハンジ「ああ、これね。君が昨日着てたシャツだよ。ボタンが弾けとんだから、直してるんだ」
そのシャツは、昨日モブリットがハンジの後を追うために破り捨てたはずの物だった
モブリット「まだ持っていらしたんですか…」
ハンジ「ああ、だってこれは、私の宝物だからね」
ハンジはそう言うと、はにかんだ様な笑みを浮かべた
モブリット「そんなものを宝物だなんて。シャツならまだ沢山ありますから…」
ハンジ「いいや、あの時のこれが宝物なんだよ。モブリットはもういらないだろ?捨てたわけだし…だから私のだ」
モブリット「…どうするんですか、そんなもの」
ハンジ「ん?寂しい時は抱いて寝ようかな~?」
ハンジのいたずらっぽい笑みに、モブリットは目を奪われずにはいられなかった
-
- 398 : 2014/08/30(土) 08:35:40 :
- モブリット「しかし、何と言うかあまり綺麗とは言えないボタン付けですねえ…やりましょうか?」
そう言いながら、ハンジの持つ針に手を伸ばそうとするモブリット
ハンジ「ダメだよ?これは私が直すんだからね。下手くそでもいいんだよ」
ハンジは頬を膨らませた
モブリット「…そうですか。まあ花嫁修行だと思って頑張るのもいいかもしれませんね」
モブリットは肩を竦めた
ハンジ「花嫁…ねえ、君…あれは本気なのかい…?勝ったら何とかっていうの…」
モブリット「…私が冗談でそういう事を言うかどうか、あなたならお分かりだと思いますが」
モブリットは真摯な眼差しをハンジに向けて、静かな声で言った
ハンジ「そう、だよね…」
モブリット「そうですよ。さて、私はあなたの不器用さと美しい景色を見ながら、ジャグジーでも入りますかね」
モブリットの言葉に、ハンジは不服そうな顔をする
ハンジ「景色と比べないでくれよ…一生懸命慣れない事をやってるのにさ…」
モブリット「比べていません。どちらも私にとっては貴重な風景ですから」
モブリットはそう言って、はにかんだような笑顔を見せた
-
- 399 : 2014/08/30(土) 18:13:11 :
- ハンジ「夕日が綺麗だねえ…」
サンデッキで見る夕日の美しさは格別だ
海の青に夕日の赤やオレンジが絶妙なコントラストを紡ぎ出す
モブリット「本当に美しい景色です。静かで贅沢な時間です」
ハンジ「何もせずにボーッとするのも貴重な時間だしね…私達は、いつも駆け足だから」
モブリット「分隊長はいつも猛ダッシュしていますけどね」
モブリットは、ジャグジーの泡に包まれながら隣で寛ぐ上官に、ちらりと目をやった
ハンジ「そうだね。生き急ぎ過ぎですって何度も言われてるしね、君に」
ハンジはふわりと笑った
モブリット「これからも何度も言わせるんでしょうね。あなたの事ですから」
モブリットは肩を竦めた
ハンジ「よろしく頼むよ。君の突っ込み、好きだ。絶妙なタイミングで入ってくるからね」
ハンジはそう言うと、モブリットの頭をよしよし、と撫でた
-
- 400 : 2014/08/31(日) 10:08:33 :
- リヴァイ「チッ、重てえ…」
リヴァイは、サンデッキで夕日を眺めているうちにうたた寝してしまったミカサを、抱き上げてベッドに寝かせようとしていた
ミカサ「う…ん…」
ミカサは一瞬身じろぎしたが、部屋に設えてある大きなベッドに身体を横たえてやると、またスヤスヤと眠りについた
ちらりと寝顔を覗くと、思っている以上にあどけない
凄い力を持っていて、その上生意気な口を聞くが、まだ15才
…まだ子どもだと言える年齢だ
こんな子どもが戦わなければならないあの世界
それが普通だと思っていたが、やはりなにかが引っ掛かる…
子どもが戦わなくてもいい世界に、いつかなるんだろうか
ミカサの寝顔を見ながら、ふと故郷である壁の中の世界に、思いを馳せるリヴァイであった
-
- 401 : 2014/09/05(金) 09:05:42 :
- 日が沈み、夜のとばりが降りた
ホテルにあるレストランでフランス料理を食べた一行は、四人で部屋に戻った
ソファやベッドでおもいおもい、リラックスしていた
ミカサ「本当に、殺されるかと思いました…モブリットさんは見た目とは違って鬼畜です」
ハンジ「だろ…いつも一緒にいる私の気持ちがわかったかい?モブリットは実はドSの鬼畜だとね」
モブリット「誰がドSの鬼畜ですか…人聞きの悪い」
ミカサ「私もS、兵長はただのSじゃなくて、SSですね。身長もSSですが…クス」
リヴァイ「誰がSSなんだよ、さりげなくチビをアピールすんな!!」
ミカサ「自分でチビって言った…ププ」
リヴァイ「ちっ…うるせえクソミカサ」
ミカサ「兵長は都合が悪くなるとすぐにクソをつける。まるで子ども…おじさんなのに…ププ」
リヴァイ「うるせえクソがき!!」
さすがのリヴァイも、ミカサの態度になかなか勝てそうになかった
-
- 402 : 2014/09/05(金) 09:06:02 :
- ミカサ「でも、そう考えると、ハンジさんはどMなんでしょうね。これだけまわりにSが集まってくるんですから」
ハンジ「えええ、私は普通だよ!!」
モブリット「確かにそうかもしれませんね。ハンジさんはMです」
リヴァイ「どMの奇行種だな」
ミカサ「兵長は人類最強のSS」
ハンジ「ミカサに同意!!」
モブリット「私も同意…って兵長睨まないで下さいよ…」
モブリットはリヴァイの鋭い一瞥に、身を縮こまらせた
ハンジ「所で…話を戻すけど、ミカサは泳げるようになったのかい?モブリットのスパルタで」
リヴァイ「潜れるようにはなっていたぞ。ジャグジーでだがな」
ミカサ「私に不可能はない…はず。だって私は人類最強になる…ので、兵長にだけは負けない」
モブリット「泳げるようになったかどうかは……秘密です。何処の世界に、勝負前に敵に手の内を明かすバカがいますか」
ミカサ「バカになりかけた…ごめんなさいモブリットさん」
ミカサはそう言うと、両手で口を覆った
モブリット「君は最終兵器だからね、ミカサ」
ハンジ「まあ、私たちも勝負には負けるつもりはないよ」
リヴァイ「精々無駄なあがきしてろよ、ミカサ」
ミカサ「首を洗ってまってろ…兵長…」
ミカサはリヴァイに、鋭い視線を投げて、静かにそう言ったのだった
-
- 403 : 2014/09/05(金) 09:06:25 :
- 深夜…静まり返ったホテルには、潮騒の音だけが涼やかに聴こえていた
ミカサ「さあ、やってまいりました…旅ロケ恒例、寝起きドッキリの時間ですよ…」
ミカサは小声でそう言った
ミカサ「今日のターゲットは、ハンジさん…なんだけど、モブリットさんと同室だから、二人がターゲット…」
ミカサ「あっ、そんな部屋にいきなりドッキリ仕掛けるのはまずい…かな。でも、団長の命令だし…ので、突撃してみる…どきどき…えっ?いや、なにも期待していない…私はそう言うのには一切興味が…エレンは興味あるのかな…」
ミカサは頬を幾分紅潮させながら、ゆっくりハンジの部屋の扉を開けた
ミカサ「部屋は整理されている。翌日に着る服まで、ハンガーにかかっている…さすがはモブリットさん。抜け目がない…鬼畜スパルタトレーナーだけど…」
ミカサはブルッと身体を震わせた
ミカサ「さて、洗面所には歯ブラシが二つ…本家のドッキリなら、アイドルの歯ブラシを口にいれて、間接キッスなんかするらしい…けど私はやらない…その代わり…ぬりぬり」
ミカサは二本立っていた歯ブラシに、なにかを塗りつけた
ミカサ「そして、これを横に置いて…」
ミカサは歯ブラシの横に、水入りペットボトルをおいた
ミカサ「カジノでもうけて買った、ビデオカメラをセットして…完成…」
ミカサはほくそえんだ
-
- 404 : 2014/09/05(金) 09:06:48 :
- ミカサ「さ、これは翌朝のお・た・の・し・み♪さて、寝起きドッキリに行こう…」
ミカサはベッドルームに足を運んだ
ベッドルームは真っ暗やみだった
ミカサは足音を立てずにそっとベッドに歩み寄る
そして、布団をそっとまくりあげた
ミカサ「ハンジさんはグッスリですね…背を向けて寝ているモブリットさんを、後ろから抱き抱える様にくっついてます…甘えてるのかな…」
ミカサは人差し指を口元に持っていった
ミカサ「仲良しで羨ましい…私もエレンとこうしてみたい…ちがうっ、エレンは家族エレンは家族…兵長は…ちがうっわたしのバカ!」
ミカサは首をぶんぶんふった
ミカサ「さて、二人がなんだかお熱いのに腹が立ってきた視聴者もいるだろうし、この辺でびっくりさせてやる…ふふ…団長から預かった、リアルなゾンビのマスクをかぶって…」
ミカサは頭だけゾンビになって、ハンジの肩をポンポンと何度も叩いた
ハンジ「う、…なんだよモブリット…もう、続きは明日にしてよ…いい加減疲れ………ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
ハンジ目を開けて、絶叫したのだった
-
- 406 : 2014/09/07(日) 17:17:58 :
- ミカサ「げへへへへ」
ミカサは精一杯怖い声を出しながら、ハンジを組み敷いた
ハンジ「ぎゃぁぁぁいゃぁぁぁぁ!」
ハンジの悲鳴に、爆睡していたモブリットが目を覚ます
モブリット「な、何ですか…こんな夜中に…ってうわぁぁぁ!!」
モブリットは隣でゾンビに組み敷かれているハンジを見て絶叫した
ミカサ「げへへへへ…」
ミカサはハンジを巧みに組み敷きつつ、モブリットに顔を向けた
モブリット「うわぁぁぁこっち見るなぁぁぁ」
モブリットは思わずベッドから飛び降りた
ハンジ「モブリット、助けてくれよ…びくともしない、このお化け!!」
モブリット「すっごい人相ですよ…スプラッタです…ってあれ…」
モブリットは何かに気がついた様に、ゾンビに歩み寄った
ミカサ「げへへへへ」
モブリット「なんだ、ミカサだね。赤いマフラーしてるからわかったよ」
ゾンビに扮したミカサは、エレンからもらったマフラーを着用していたのだった
-
- 409 : 2014/09/08(月) 10:03:45 :
- ミカサ「チッ…ばれたか…」
ミカサは舌打ちをし、ゾンビマスクを外した
ハンジ「びっくりしたぁ…ミカサのイタズラ半端ないよ…」
ミカサ「イタズラではなく、ドッキリです。『調査兵団ドッキリマル秘報告inニューカレドニア』です」
モブリット「また日記に書かれて、壁新聞になるんだろうな…上官二人のびびり様が…」
ミカサ「勿論…ふふ。それに、ハンジさんが寝ぼけて、続きは明日にしてよ、いい加減疲れた…って言いました。何の続きなのか…ふふ。それも日記に書いちゃお…」
ミカサは不敵な笑みを浮かべた
モブリット「ハ、ハンジさん!!何てことを…」
ハンジ「あれだよあれ、マッサージ!!そうマッサージ!!」
ミカサ「なるほど、疲れるマッサージですね」
リヴァイ「あれしかねえな」
リヴァイが突如背後から言葉を発した
-
- 410 : 2014/09/08(月) 10:04:10 :
- ミカサ「兵長、いつの間に…」
ハンジ「リヴァイ、副官になんとか言ってやってよ…夜にこっそり入ってきてさ…最中ならどうするんだよ」
モブリット「ハ、ハンジさん?!」
ミカサ「それはそれで番組的には美味しい展開。団長大喜び…ので続きをどうぞ」
ミカサはハンジの手を取り、モブリットの肩につかまらせた
リヴァイ「俺が何でミカサの躾なんかしなきゃいけねえんだよめんどくせえっておい!!」
ミカサはリヴァイの手を取り、ハンジの胸に手を触れさせた
ハンジ「うわっ!?」
その瞬間、ミカサはカメラのシャッターを高速できった
ミカサ「パシャパシャ…いい写真が撮れた…。ドッキリの最中に、二人の男がハンジさんを襲う様子、激写!!」
リヴァイ「ミカサてめぇ!!」
ハンジ「うわぁぁしまったぁぁ!!」
モブリット「アーメン…」
三人の大人組は、ものの見事にミカサの策略にはまるのであった
-
- 411 : 2014/09/10(水) 22:17:17 :
- ミカサ「さて、疲れたのでお先に寝ますね、おやすみなさい。兵長…行きましょう」
ミカサはそう言うと、リヴァイを促して部屋を後にした
外に出た後、ミカサが立ち止まる
リヴァイ「おい、俺はねみぃんだ。早く帰って寝るぞ」
ミカサ「兵長、明日の朝、また面白い物が見られますよ…ふふ」
リヴァイ「お前、また何か仕掛けたのかよ…」
ミカサ「はい、イタズラは楽しい…やられるのは嫌だけど…」
ミカサは目をキラキラ輝かせていた
リヴァイ「まあ、旅行の間くらい楽しめばいい…お前は生意気だが、まだ15才だしな」
リヴァイの言葉に、ミカサが後ずさる
ミカサ「兵長が優しい…きっと明日は雪が降る…いや、ひょうが降るかも…」
リヴァイ「ばかいえ、たまには俺も…」
ミカサ「兵長はたまに優しい。それは認める…かも」
ミカサはそう言うと、さっさと部屋に入って行った
リヴァイ「ちっ…」
リヴァイの顔は心なしか赤く染まっていた
-
- 414 : 2014/09/12(金) 11:02:18 :
- ハンジ「ふぁ~もう朝だ…」
ハンジが目を覚ました時、すでに部屋は朝日に照らされていた
隣にいたはずのモブリットはいない
もう起きて、朝の支度を整えたのかもしれない
ハンジはゆるりと立ち上がり、洗面所へ向かった
ハンジ「はあ、昨日はしっかしびっくりしたなあ…ミカサのせいで…」
ハンジは鏡に写る、明らかに寝不足な顔を見ながら、肩を竦めた
そして、顔を洗い、歯ブラシを口に入れた…その瞬間
ハンジ「うぎゃぁぁぁぁ、か、かっら…なんだよこれっ…げほっげほっ…」
何時もならこんな時には飛んでくるモブリットも来ない
お誂え向きに、ペットボトルの水が置いてあった
ハンジはそれを口直しとばかりに、がぶりと飲む
ハンジ「ブエッ!!ひー!!からからからぁい!!」
口に含んだ水を吐き出しながら、洗面所のシンクに突っ伏した
-
- 417 : 2014/09/16(火) 09:59:00 :
- リヴァイ「あさっぱらからうるせえなクソメガネ・・・」
寝癖を撫でつけながら、リヴァイが背後から現れた
ハンジ「うおっリヴァイおはよう。いやあ歯磨きしようとしたらさぁ・・・歯ブラシに何か仕掛けてあって辛くてさあ。しかも水飲んだらこれも辛くて・・・死にかけたよ」
リヴァイ「そういえば昨日ミカサが朝面白い事が起こるとか言っていたが、この事か・・・」
ハンジ「ん、面白い事?もしかしてこれ、ミカサが仕掛けたのか・・・もう!って、リヴァイ何見てるの?」
リヴァイ「何かがのぞいているような気がしてな・・・なるほど」
リヴァイは洗面台の背後の脱衣かごを漁った。すると、巧妙に隠されたビデオカメラがお目見えした
ハンジ「うわっ動画まで撮られていたのか・・・!リヴァイそれ貸して!消去しなきゃ消去!」
リヴァイ「いやだめだ。折角の面白動画、エルヴィンにも見てもらえ」
ビデオをとり返そうとまとわりつくハンジを、ひらりひらりと躱しながらリヴァイは言葉を発した
ハンジ「か、返してくれよーーー!リヴァイ―!」
ハンジは不意にびょんとジャンプして、リヴァイに襲い掛かる
リヴァイ「てめえクソメガネ・・・っ!」
バターン・・・リヴァイはハンジの行動を躱しきれず、二人で床に転がった
その体勢、ハンジが、ビデオを片手に持つリヴァイを押し倒す格好。
限界まで近づいた二人の距離・・・
ハンジが顔を真っ赤にしかけたその時だった
パシャパシャパシャ・・・カメラのシャッターの音があたりに鳴り響いた
ミカサ「ハンジさんが兵長を襲うシーン、激写・・・そしてビデオは回収」
ミカサが不敵な笑みを浮かべてカメラを構えつつ、リヴァイの手の中のビデオカメラを回収したのだった
-
- 418 : 2014/09/16(火) 09:59:26 :
- モブリット「朝からなにをやってるんですか・・・お二人とも」
呆れた様な表情のモブリットが、ミカサの背後から現れた
ミカサ「モブリットさん、ハンジさんと兵長は朝からさかっている様です」
リヴァイ「だれがさかってるんだ誰が!」
ミカサ「兵長が」
モブリット「いや、この状況から察するに、ハンジさんが兵長相手にさかっている様に見えるな」
ミカサ「確かにそうかもしれない。でも兵長もはねのけないあたり、どのみち二人とも節操がない事に変わりはないです」
ハンジ「違うってば誤解だよ誤解!!」
リヴァイ「クソメガネ早くのけよ!!」
二人の悲鳴があたりに響いた
ハンジ「そういえば、二人ともどこ行ってたの?君たちこそこっそり二人で抜け出してさかってたとか・・・」
モブリット「私がミカサの様なまだいたいけな少女に対してそう言う事をする人間だとお思いなんですかね」
ミカサ「ハンジさんはひどい・・・モブリットさんがそんなことをするはずがないのをわかっていて、わざと言っている。ハンジさんは私に嫉妬しているんだ。そうか・・・」
ハンジ「じょ、冗談だってば!で、二人で何やってたんだよ・・・」
モブリット「それは・・・」
ミカサ「ひみつです」
副官二人は顔を見合わせてにやりと笑った
-
- 419 : 2014/09/16(火) 09:59:57 :
- ハンジ「さて、今日で天国に一番近い島、ウベア島とはお別れだよ!今日は今からまた別の場所に移動するよ。とりあえずは本当ヌメアに戻るよ・・・って、モブリットいい加減離れてくれよ・・・」
モブリット「こんなものが空を跳ぶのは有りえない有りえない・・・」
飛行機でウベア島を後にする一行・・・二度目の飛行機だが、モブリットは相変わらずハンジにしがみついて離れなかった
リヴァイ「おいミカサ、こういう状況を『さかっている』というんだおぼえとけ」
ミカサ「モブリットさんがさかっている・・・モブリットさんの節操がない。という事は、節操があるのは私だけ・・・自分だけが頼り・・・」
ミカサは眉をひそめながらぼそっと呟いた
モブリット「さかっているんじゃないでしょうが・・・・ガクガク。怖がっているんですよ・・・ブルブル」
モブリットの顔色はすごぶる悪かった
ハンジ「うん、でもやっぱりこれでこそモブリットだよ。この頼りなさそうな顔。こうでなきゃだめだね。モブリットは水がなかったらモブリットなんだ」
ハンジは何故か満足そうにモブリットの頭をぽんぽんとたたいたのだった
モブリット「だ、誰が頼り無さそうな顔なんです・・・っかぁっぁぁll・・・!」
その時乱気流に飲まれて飛行機が急降下する・・・モブリットはハンジにより一層強くしがみついた
ミカサ「確かに水の中にいないモブリットさんは、モブリットさんって感じかも・・・」
リヴァイ「同意だ」
モブリット「早く地面・・・地面が恋しい・・・」
飛行機が着陸するまで、モブリットの戦いは続くのであった
-
- 421 : 2014/09/21(日) 14:32:25 :
- ヌメア本島に戻った後、バスにて本日宿泊予定のホテルに到着した
モブリット「さて、今日は私はミカサと所用がありますので、お二人はどうぞごゆっくりおくつろぎ下さい」
モブリットはホテルに着くや否や、その豪華な内装を楽しむそぶりも見せずにそう言った
ハンジ「あれ、今日は本島を観光予定なんだけど、行かないの?二人とも」
ミカサ「私はとっても大事な用事がある・・・ので今日はハンジさんは兵長とデートでもしているがいい」
ミカサは不敵な笑みを浮かべた
リヴァイ「あれか、明日の戦いの特訓か。まあそれなら邪魔するのも野暮だな」
ハンジ「な、なるほどね・・・」
モブリット「じゃあ、ミカサ、早速部屋で支度をして出かけようか」
ミカサ「はい、モブリットさん」
ミカサはモブリットに連れられて、与えられた部屋に消えて行った
ハンジ「折角ホテルにたくさん美味しいレストランも、お酒もあるのに・・・慌ただしいなあ」
リヴァイ「まあそれだけ奴らは本気だってことだろ。俺たちは何もしなくても大丈夫なのかよ」
ハンジ「どうだろうね・・・今日一日特訓したからと言って、私たちがすごく泳げるようになるはずはないし、折角だから楽しみたいね、私は」
リヴァイ「まあ、そう言う事にしておいてやるか」
リヴァイはハンジの横顔をちらりと伺いながら、呟く様にそう言った
-
- 424 : 2014/09/21(日) 15:05:42 :
- ハンジ「ついに、あの子に会える!!飛べないあの子に会えるんだ!」
ハンジは車の中で興奮気味に何度もそう言った
リヴァイ「何なんださっきから、飛べないあの子飛べないあの子って。静かにできねえのかよクソメガネ」
ハンジ「とっても興味深いあの子にやっと会えるんだ、興奮せずにいられるわけがないさ!」
リヴァイ「とりあえずお前、どこに向かってるとか説明しろよな・・・有無言わせず車に乗せられて、空のペットボトル数本握らされて・・・」
ハンジ「まあまあ、着いたらちゃんと説明するから・・・ふふふふふ」
リヴァイ「いやーな予感しかしねえ。オーストラリアの時のワニを思い出す・・・」
リヴァイは身震いした
ハンジ「まあ、あたらずも遠からずかな・・・ワニみたいな怖い子ではないよ、うん。きっとリヴァイもあの子の事を気に入ると思う」
ハンジはニヤリと笑った
そうこうしている間に、車がある場所で停車した
ヌメアから車で約2時間、山道を揺られながらたどり着いたその場所は・・・
ハンジ「ここは、リヴィエルブルー州立公園。ニューカレドニアといえば海のイメージだけど、海だけじゃなくて陸地にもいろいろ不思議がつまってるんだ。それを感じさせてくれるのがこの公園さ」
目の前に広がる森林から、マイナスイオンの風をうけながら、ハンジは大きく深呼吸をしてそう言った
リヴァイ「ここにそのあの子…とやらがいるんだな」
ハンジ「うん、たぶん会えると思う。あの子に会えたら幸せになれるらしいよ、リヴァイ。必死で見つけなきゃね!!」
リヴァイ「オーストラリアの時の幻の青い蝶みたいに、3匹見つけたら不幸になるとかじゃねえだろうな・・・」
ハンジ「大丈夫だって・・・たぶんね」
ハンジはほくそ笑んだ
-
- 427 : 2014/09/22(月) 09:35:35 :
- ハンジ「この橋は『ペリニョン橋』。前までは車で渡れていたんだけど、台風の影響で壊れたままらしくてね。徒歩で向こう側までわたるよ」
リヴァイ「車は先回りか」
ハンジ「そういう事だね。まあゆっくり自然の静けさを満喫しながら渡るとしよう・・・ふふふ」
ハンジは何故か顔を赤らめながらほくそ笑んだ
リヴァイ「クソメガネ、大自然にそぐわねえその表情なんとかならねえか・・・」
ハンジ「し、仕方ないだろ、あの子にやっと出会えるかもしれないんだから。ああ、待ち遠しくてたまらないよ・・・」
ハンジは両手を胸の所で握り合わせ、視線を遠くへ向けた
リヴァイ「どんなゲテモノが待ち受けてやがるんだろうな・・・」
リヴァイはそんなハンジの様子を見ながら、ため息をもらした
橋を渡り、しばらく車で進むと不思議な風景を目にする
リヴァイ「おいクソメガネ。、湖から木が生えてやがる・・・葉はねえみてえだが」
リヴァイが指さす方向には確かに、湖の中からたくさんの木が生えている様に見えた
ハンジ「ああ、あれはニアウリの木なんだ。このヤテ湖は人口の湖でね、もともとここにニアウリの木が自生していたんだけど、そこを貯水湖にしたんだ。その結果、ニアウリの木も湖に沈んだんだけど、もともと殺菌作用のあるニアウリの幹だけ、水の中にあっても腐らずに残っているんだ」
リヴァイ「枯れているが、姿は残っているんだな」
ハンジ「そう、別名沈める森と言われているよ。なんだか哀愁が漂う光景だろ」
二人はどこか清廉な風景に、しばし心を奪われたのであった
-
- 428 : 2014/09/22(月) 09:58:11 :
- ヤテの湖から、森の奥へと続く遊歩道を散策する
ハンジ「ニューカレドニアにはね、固有種の植物が多いんだ。ほら、あそこに咲いている蘭も、固有種。白くて可愛い花だろ。野生の蘭なんだ」
リヴァイ「足元に白い綿みてえなのが生えてるぞ」
ハンジ「これはこけの一種だね。原始的な地衣類の仲間らしいよ。あとはほら、食虫植物がたーくさん。足元にはモウセンゴケ」
リヴァイ「虫を食う植物か・・・。肉食な奴らなんだな」
ハンジ「肉食・・・かどうかはわからないけど、不思議だよね」
リヴァイ「しかし、背の高い木が多いな」
ハンジ「そうだね。巨大樹の森の木よりもずっと背の高い木ばかりだよ。30メートル級がわんさかだ」
遊歩道脇にうっそうと茂る木々は、どれも巨木というにふさわしい佇まいを見せていた
その下にひっそりと自生するコケやシダ植物・・・ニューカレドニア=海のイメージを覆すような光景だ
リヴァイ「おい、一際でけえ木があるぞ。ありゃなんだ」
リヴァイの指さす方向には、確かに明らかにあたりの巨木とはスケールが違う木がまさにそびえ立っていた
ハンジ「ああ、あれがグランドカオリと呼ばれている巨木だね。樹齢1000年を超えるという木だ。高さは40メートル程、幹の直径が2・7メートル。周りの木を圧倒しているね」
リヴァイ「背が高けえな、おい・・・」
ハンジ「森の神様にまでひがむなよリヴァイ・・・ぷぷ」
リヴァイ「ひがんでねえ!クソメガネ!」
リヴァイはちっと舌打ちをした
-
- 429 : 2014/09/22(月) 10:10:16 :
- 来た道を戻っていた矢先、ハンジが突如立ち止まった
ハンジ「いた、あの子が・・・ついにあの子を発見した・・・」
ハンジは体を震わせて、木々の間を指さした
リヴァイ「・・・なんだよあの子って・・・あれか。あの灰色の鳩」
ハンジ「はとじゃないよ!あれが飛べないあの子、国鳥カグ―だよ!可愛いだろ!!何で飛べないか知りたいだろ?」
ハンジは目をきらきらと輝かせながら、興奮気味にまくしたてた
リヴァイ「とさかみてえなのが頭の後ろに生えてんだな、確かにちょっと可愛いかもしれねえ」
ハンジ「つぶらな瞳、そして翼を広げても飛べない愛らしさ・・・母性本能をくすぐるタイプだよ!」
リヴァイ「お前の母性本能って・・・まあ巨人にすらそれを発揮するくらいだからな。常人と一緒にするのがそもそも間違いだった」
ハンジ「カグ―がなぜ飛べないのか、それはね、ニューカレドニアには鳥の天敵になる様な動物がいなかったんだ。そんな環境が何万年も続く間に、羽が退化してしまったと言われているんだ」
リヴァイ「なるほどな。戦う必要や、逃げる必要がなけりゃ、能力は薄れていくという事か」
ハンジ「そう言う事だね。しっかしかっわいいなあ・・・だっこしたい。だっこ」
ハンジがそう言いながら、じり、じりとカグ―ににじりよると、その異様な雰囲気を察したのだろうか、カグ―は一目散に森の奥へと走り去っていった
ハンジ「後ろ姿も可愛い――!!!」
リヴァイ「まあ、わによりは可愛い事は認める」
いつまでも悶えるハンジに、リヴァイは肩をすくめた
-
- 430 : 2014/09/22(月) 10:23:23 :
- ニューカレドニアの陸地の大自然を満喫した二人は、現地のガイドが用意してくれたバーベキューで腹を満たし、帰路に着くべく車で州立公園を後にした
その途中で、モンドールの滝というところに立ち寄った
そこは豊富な水量の川と、美しい滝がみられる絶景ポイントなのだが、その湧水がまたとても美味しいと有名であった
リヴァイ「なるほどな、ここでこの持たされた空のペットボトルが役に立つわけだ」
ハンジ「そういうこと、ただで美味しいお水がもらえるからね。モンドールの水は、普通にニューカレドニアの各地でミネラルウォーターとして売られているほど美味しいんだよ!」
二人は地元民に交じって、モンドールの水をペットボトルに入れる作業に没頭しつつ、たまに口に含んでその味を確かめたのだった
ホテルに到着した時には、すでに夕刻を回っていた
ハンジ「このホテルはヌメア本島で一番の高級リゾートホテル、ル・メリディアンヌメア。今日止まるのも二人用の部屋だよ。ほら、広いデッキからニューカレドニアの海が一望できる!」
リヴァイ「一泊目のホテルより数倍高そうな雰囲気だな」
ハンジ「まあ、数倍たかいよ。君たちがカジノで大儲けしてくれたから泊まれたけどね。ここのレストランは料理もおいしい。あとで食べに行こう」
ベッドにどさっと体をなげだしながら、ハンジはそう言った
リヴァイ「あいつらはまだやってるのかな。特訓」
ハンジ「やっぱり、特訓してるのかなあ・・・ミカサが死にやしないか心配だよ」
リヴァイ「モブリットの事だ、そんなへまはしねえだろうし、だいたいミカサがそう簡単に死ぬともへこたれるとも思えねえ。しつこく教えを乞う姿を想像しているぞ、俺は」
ハンジ「確かに、ミカサは頑張り屋さんだからね。あの子たちが帰ってくるまで少し寝よっと」
ハンジはそのまま目を閉じた
-
- 436 : 2014/10/17(金) 15:52:29 :
- ハンジ「もう…食べらんない…ムニャムニャ」
リヴァイ「チッ…何食ってんだ、夢の中で」
リヴァイは、大きなベッドに身体を預けて寝ているハンジに、ちらりと目をやり独りごちた
辺りは夕焼けを通り越して夜になった
広い部屋は、しんと静まり返っていた
聴こえるのは微かな潮騒と、ハンジの寝言
リヴァイ「あいつら遅えな、大丈夫なのかよ。…チッ腹へった」
リヴァイは空きっ腹を押さえて、ぼそっと呟いた
ハンジは呑気に寝息をたてている
起きていればやいやいと騒がしく、女らしさをあまり感じさせないハンジではあるが、寝ていれば妙齢の女性の形容しがたい色気を感じさせる
人類最強などという、本人にとっては迷惑極まりない煩わしい称号を冠するこの男にあっても、それは同じだった
ハンジを女性として認識している、それは間違いない
一度は深い関係になったのだから
ただ、それが彼女を愛するが故の行為だったのか、それともお互いの欲を解消しあっただけだったのか
それははっきりわからない
リヴァイは、自分の心の中がわからなかった
解っていたのかもしれないが、解りたくなかった
これから進むべき道に、そんな感情を携えて進めるのか
ただ、モブリットは覚悟を決めた
彼女を愛しながら、共に茨の道を歩んでいくと
だからこそ、ハンジを抱いた
見た目や普段の行動からすれば、それがいかに勇気のいる事であったか
自分にそれができるか、ミカサが言うように、欲しければ無理矢理にでも奪うべきなのか
リヴァイ「チッ…」
悩む自分を尻目に、呑気に眠るハンジを見て舌打ちをした
そして、彼女の背中にどすっと手刀を落としたのだった
-
- 443 : 2014/11/15(土) 22:05:47 :
- ハンジ「…ってえぇぇ!!背中、いってぇぇ!!」
ハンジはのたうち回った
リヴァイ「ようクソメガネ、起きたか」
ハンジ「なんて起こし方なんだよ、リヴァイ。乙女の眠りを覚ますには、あれしかないだろ、あれしか!!」
リヴァイ「エルボードロップ」
ハンジ「死ぬわ!!寝起きにそんな事されたら!!」
リヴァイ「俺はお前の王子じゃねえからな。チョップで十分だろ」
リヴァイは肩を竦めた
ハンジ「リヴァイに色気なんか期待するのは間違ってるね、確かに」
リヴァイ「色気については、お前に言われたくねえよ」
ハンジ「はいはい…と言うか、もう真っ暗じゃないか。今何時?」
リヴァイ「もう八時だ、あいつらまだ戻らねえぞ、大丈夫か?」
リヴァイの言葉に、ハンジはしばし考えを巡らせた
ハンジ「大丈夫だろ、モブリットがいるから、滅多なことにはならないよ。きっと夕食も食べて帰ってくるんじゃないかな」
リヴァイ「…だな。俺も腹が減った。めし、行くぞ」
リヴァイはハンジを伴って、部屋を出た
-
- 444 : 2014/11/15(土) 22:28:46 :
- その頃、ホテルから少し離れた砂浜に、二つの人影が並んでいた
モブリット「ミカサ、よく、頑張ったね」
フランスパンのサンドイッチを頬張るミカサに、モブリットはそう声をかけた
ミカサ「…ふぁい」
ミカサは口をもぐもぐと動かしながら、返事をした
結局二人は日中一杯泳ぎの特訓に費やしていたのであった
モブリットは夜ご飯になんでも好きなものを食べさせるつもりでいた
そんなモブリットにミカサは、以前食べたこのサンドイッチを真っ先に食べたいと言ったのだった
モブリット「生ハムのサンドイッチ、そんなに気に入ったんだね」
ミカサ「はい、フランス料理のフルコースよりも、このサンドイッチが好き、です」
ミカサは頷き、またパンを口にした
モブリット「美味しそうに食べるね、ははは」
モブリットはミカサの頭を優しく撫でてやるのだった
-
- 445 : 2014/11/19(水) 11:01:36 :
- 一日目に泊まったホテルの近くに、おいしいイタリアンがあると聞き、やってきたリヴァイとハンジ
二人は大盛りパスタに、ピザを一枚注文したのだが、ハンジはとにかく大はしゃぎ
オーストラリアでワニに興奮した以上に顔を真っ赤にしていた
ハンジの言う通り、店のウエイターは男ばかり、しかも全員がイケメンだった
リヴァイ「ちっうるせえな。クソメガネ。お前をみてスマイルなんか、営業用に決まってるだろうがバカが」
ハンジ「それはわかってるけどさあ・・・やっぱりイケメンは目の保養だと思うんだ!」
リヴァイ「お前に男の顔の造作を気にする様な感覚があったのが驚きだ」
ハンジ「美的感覚くらいあるさ。まあ、あくまで目の保養、というだけの話だけどさ。ほら、美人は三日で飽きるとかいうじゃない?」
リヴァイ「そうか?」
ハンジ「違うのかい?」
リヴァイ「美人は三日たっても美人だと思うが」
ハンジ「物のたとえだよ、たとえ」
リヴァイ「ンな事くらいわかってる。ほら、イケメンが持ってきたピザ食うぞ」
ハンジ「わーーイケメンありがとう!いただきまあす!!うむ、イケメンが作ったピザはうまい」
リヴァイ「イケメンは持ってきただけだ。厨房にはわりとかわいらしいおっさんがいたぞ。おっさんが作ったと思う」
ハンジ「かわいいおじ様も好きさ!」
リヴァイ「許容範囲が広すぎるぞお前」
ハンジ「下は15、上は80才までおkさ!」
リヴァイ「上はともかく、下は犯罪になるからやめておけ」
ハンジ「へいへい、リヴァイ兵士長殿は異性交遊に厳しゅうございまするなぁ」
リヴァイ「変なしゃべり方すんな、ばかメガネ」
なんだかんだ言いながら、二人の呼吸は凹凸がぴったり合う様だった
-
- 446 : 2014/11/19(水) 11:12:08 :
- リヴァイ「あー、腹がいっぱいになりすぎて気持ちわりい」
夜の海岸沿いの散歩道を歩きながら、リヴァイは腹をさすっていた
ハンジ「イケメンピザ、おかわりするんだもん、食べ過ぎだよ」
リヴァイ「おっさんピザだ。旨かったんだから仕方ねえだろうが」
ハンジ「ま、確かに美味しかったね。ミカサとモブリットはちゃんと食事してるだろうか」
リヴァイ「今更心配になってやがる・・・遅え・・・」
リヴァイは肩をすくめた
ハンジ「ミカサは一生懸命な子だからさ。まっすぐだし・・・モブリットの言う事聞かずに自ら死地に赴きそうじゃない?」
リヴァイ「要するに、言う事を聞かずに特訓しまくってるって意味か?」
ハンジ「そうそう」
ハンジはこくりと頷いた
リヴァイ「大丈夫だろ。あいつは頑固だし、上司だろうがなんだろうが言う事を聞かない時は聞かないが・・・」
ハンジ「だろ?」
リヴァイ「だが、モブリットの言う事は聞くだろ。師匠とか呼んでたしな」
ハンジ「そうなんだ、ミカサがモブリットの事をねえ」
ハンジは街道沿いに設えてあるベンチにどさっと腰をおろして、呟く様に言った
リヴァイも隣に腰を下ろす
リヴァイ「俺やお前はともかく、まともな感覚のモブリットに対しては多少の敬意は表してるのかもしれねえな」
ハンジ「私はまともだけどな!ミカサだって私になついてくれてるもん」
リヴァイ「お前がミカサになついてる、の間違いだろ」
ハンジ「ちっ、うるせーなくそちび」
リヴァイ「俺のマネすんな」
ハンジ「へいへい。でもさあ、明日かあ・・・どうなるんだろうねえ」
リヴァイ「なる様にしかならねえ」
ハンジ「そうだけどさ・・・ミカサが無理して溺れなきゃいいんだけどね」
ハンジは遠く、水平線を見つめながら言葉を発した
-
- 447 : 2014/11/19(水) 11:22:53 :
- リヴァイ「作戦とか立てなくていいのかよ?」
ハンジ「そんなのいらないだろ。負けるわけないし」
リヴァイ「お前、あいつをあなどってないか?」
リヴァイは真摯な眼差しをハンジに向けた
ハンジ「あいつ?ミカサの事かい?」
リヴァイ「違う、モブリットの事だ」
リヴァイの言葉に、ハンジは一瞬視線を宙に躍らせた
ハンジ「・・・あなどって、ないよ。おとなしそうに見えるし、目立たないけど・・・実は結構したたかで計算ができる男だよ、モブリットは」
リヴァイ「したたかになるのは、お前に関わる事だけだがな」
ハンジ「・・・ああ、そうだね」
ハンジはふうと息をついた
リヴァイはハンジの目をじっと見つめる
彼女の瞳の中に宿るのは、憂いと迷いの様な力無い光だった
-
- 448 : 2014/11/19(水) 11:27:13 :
- リヴァイ「お前、迷ってるだろ。本気を出すか出さないか」
ハンジ「私はね、戦いたくなんかない。正直そう思ってるよ」
ハンジは俯きながらぼそっと呟く様に言った
リヴァイ「あいつを敵に回したことなんか、一度もなかったからな」
ハンジ「うん」
リヴァイ「でもあいつは、本気だぞ。それなのにお前が本気を出さなけりゃ、結果はどうなろうと、あいつと、ミカサが可哀そうだとは思わねえのかよ」
ハンジ「・・・」
リヴァイ「あいつを受け止めてやるっていうのは、そういう意味も含めてるんだ。八百長なんかあいつらにすぐにばれる。しっかりしやがれクソメガネ」
ハンジ「・・・そうだね、本気でぶつかってくるんだ、こっちも本気でぶつからなきゃ、失礼だよね」
リヴァイ「もう一度言っておくが、俺は負ける気はねえ。何が何でも勝つからな。負けるのはもう、飽きた。足引っ張るなよ、ハンジ」
リヴァイはそう言うと、ハンジの背中をばしっと叩いた
ハンジ「っってぇ!背中にもみじ腫れができてるよ絶対!!」
リヴァイ「柄にもなく悩んでて気持ちわりいからお仕置きだ」
ハンジ「悩むのはやめた。このハンジ様が、モブリットごときに負けるはずがないからな!!」
リヴァイ「モブリットごときは言い過ぎだ。それになにがハンジ様だよ、お前はクソメガネで十分だ」
ハンジ「リヴァイはどっちの味方なんだよ!!!!」
リヴァイ「俺は俺しか信じねえ」
ハンジ「ちぇ!!」
リヴァイ「じゃ、明日のためにもさっさと帰って寝るぞ」
ハンジ「へいへい!」
こうして二人の夜は更けてゆく
-
- 449 : 2014/12/02(火) 13:48:25 :
- ミカサ「モブリットさん」
夕食にしては軽い物を、だがたらふく食べて部屋に帰ったミカサとモブリット
直ぐ様風呂の支度を始めたモブリットに、ミカサが声をかけた
モブリット「なんだい?」
ミカサ「明日…勝てるでしょうか」
ミカサは思い詰めた様な表情をしていた
モブリット「ミカサ…」
モブリットはそんなミカサを椅子に座らせた
ミカサ「私は心配…だって勝てなかったら、ハンジさんは…」
モブリット「ごめん、ミカサ。ハンジさんの名前なんて出すべきじゃなかった。私が悪かったよ、反省してる」
ミカサ「いえ…私はモブリットさんが今までの苦労に見あった立場になってほしいです。だから勝ちたい。ですが…兵長も…」
モブリット「そうだね、君は兵長の副官なんだから、兵長の事を一番に考えてあげなきゃね」
ミカサ「一番はエレン…後は皆同じくらい大切」
モブリット「そうか。ミカサは偉いな。絶対に曲がらないもんな、エレンに対する意志は」
ミカサ「はい、それだけは曲げません。私の唯一の希望です」
モブリット「エレンは幸福者だね。君みたいな素敵な子にそこまで思われて」
ミカサ「いいえ…エレンは私を少し迷惑に思っている…私がつきまとうから…」
ミカサは肩を落とした
-
- 450 : 2014/12/11(木) 16:20:01 :
- モブリット「エレンが君を迷惑に?そんな事はあり得ないよ」
ミカサ「そうでしょうか…私は何だかそんな気がしているんですが…」
ミカサの不安そうな言葉に、モブリットは跪いて顔を覗いた
ミカサの瞳は、見た事が無いほど自信なさげに揺れていた
モブリット「大丈夫だよ。近すぎて分からない事だってあるんだ。エレンも、君もね、ミカサ」
ミカサ「ハンジさんとモブリットさんの様に…ですか」
モブリット「おっと…風呂が沸きそうだ」
ミカサ「逃げないで」
ミカサは立ち上がろうとしたモブリットの襟首を、ぐっと掴んだ
モブリット「うっ…」
ミカサ「私は明日やる。絶対に勝って、ハンジさんをモブリットさんのお嫁さんにする」
ミカサは握り拳を作った
モブリット「ミカサ?!」
ミカサ「私はやると言ったらやります。足を引っ張らないで、後、兵長に遠慮しないで、モブリットさん」
モブリット「わかったよ。私も死ぬ気でやろう」
ミカサ「ハンジさんの花嫁姿はきっと綺麗。必ずモブリットさんの物にします」
モブリット「はは、よろしく頼むよ」
モブリットはそう言うと、ミカサの頭を撫でたのであった
-
- 451 : 2014/12/11(木) 16:59:23 :
- 翌朝ハンジら一行は、ホテルから少し離れた浜辺にいた
決戦の舞台だ
ハンジ「あそこに島がある。そこまでは約500メートル。往復で勝負しよう」
モブリット「では、復路は島に渡っておかなければ、ですね」
ハンジ「そうなるね。ミカサ…大丈夫かい?顔色が良くないよ」
ミカサ「大丈夫です。私が先でいいですか?」
モブリット「ああ、構わないよ」
ハンジ「私は向こうに渡るね。リヴァイ、よろしく頼むよ」
リヴァイ「任せておけ」
かくして、水泳対決は静かに幕を開けようとしていたのであった
-
- 452 : 2014/12/11(木) 17:13:50 :
- ハンジ「ねえ、モブリット」
モブリット「はい、何でしょうか」
ハンジは島へ渡るトレジャーボートに揺られながら、隣で海面を見つめているモブリットに声をかけた
ハンジ「あのさ、私ね…」
モブリット「今は敵同士。馴れ合うのは如何なものかと」
モブリットはちらりとハンジに目をやったが、冷たくそう言い放つと、また海面に視線を戻した
ハンジ「モブリット…敵だなんて、君…」
モブリット「貴女の敵になんかなる時が来るとは、自分でも思いませんでした。ですが、こればかりは負けられません。頑張ったミカサのためにも」
ハンジ「モブリット…」
ハンジは俯いた
モブリットは海面から視線を外し、俯くハンジの口元に、なにかを押し当てた
モブリット「それ、飲んでいて下さい。いくら海とはいえ、こう暑いと脱水をおこしかねませんから」
ハンジ「ありがとう、モブリット」
ハンジはそう言って笑顔になったが、モブリットはその顔に吸い込まれそうになりながら、辛うじて顔を背けたのであった
-
- 453 : 2014/12/11(木) 17:15:38 :
- 更新されていて歓喜で踊りました
超絶期待です
-
- 454 : 2014/12/11(木) 17:22:21 :
- ハンジとモブリットが向こうに渡っている時、リヴァイとミカサは静かにその時を待っていた
ミカサ「兵長、私は負けない…必ず勝つ」
リヴァイ「かなづちのおまえに負けるかよ」
リヴァイはふん、と鼻を鳴らした
そんなやり取りをしていると、島から赤い信煙弾が上がった
リヴァイ「よし、スタートだ。ミカサ、行くぞ」
ミカサ「はい、兵長!」
二人は一斉に海に飛び込んだ
リヴァイはしばらく泳いで後ろを確認した
ミカサはゆっくりではあるが、確実に着いてきていた
リヴァイ「泳げるように、なってやがる…」
リヴァイは内心舌を巻いた
全く泳げなかったはずだ
しかもここは足が届かない水深
10メートルはゆうにあるだろう
ミカサは普通に泳いでいた
リヴァイ「…本気でやらんと、復路で食われる」
ハンジがいくら泳ぎが得意とはいえ、モブリットのそれは別格だ
リードは沢山作らなければいけない
リヴァイは一心不乱に泳ぎ始めた
-
- 455 : 2014/12/11(木) 17:42:10 :
- ハンジ「ミカサ、大丈夫かなあ…」
ハンジは心配そうな面持ちで海を見つめていた
モブリット「大丈夫ですよ」
ハンジ「泳げるようになったのかい?」
モブリット「泳げるようになっていないなら、泳がせませんよ」
ハンジ「だよね…あっ…リヴァイが来た」
モブリット「さすがは兵長、速いですね。分隊長お気をつけて」
ハンジ「ああ、行ってくる」
リヴァイが浜辺に上がったと同時に、ハンジが海に飛び込んだ
リヴァイ「モブリット、お前…ミカサに何をどうやって教えたんだ」
リヴァイははぁはぁと息を切らせながら、モブリットに問いかけた
モブリット「死地ですよ。限界まで危ない目にあわせました」
リヴァイ「…そうか。見違えるほどに泳げるようになっていやがったからな、感心した」
モブリット「それは是非、ミカサに言って上げて下さい、兵長」
モブリットはそう言うと、海に視線を写した
リヴァイ「ミカサが来たな。俺たちはボートで向こうに戻っているからな」
モブリット「はい、了解しました」
ミカサが浜辺に上がった時、モブリットはミカサの頭をくしゃっと撫でて、海に飛び込んでいった
-
- 456 : 2014/12/11(木) 17:44:14 :
- モブリットの体は海面から消えた
リヴァイ「…潜水か」
ミカサ「はあ、はぁ…そう。モブリットさんは潜ると言っていた」
ミカサはボートにどさっと腰を下ろしながらそう言った
リヴァイ「潜る?」
ミカサ「はい、潮の関係だそうです。海面と海底では潮の流れが違うようで…」
トレジャーボートを走らせながら、ミカサは海面を指差した
リヴァイ「…潮の流れ?」
ミカサ「はい。詳しくはわかりません。ただ、海面には離岸流という、向こうからこっちに急激に引き込まれる潮の流れがあるそうです。だから、私たち往路は楽だったんです」
リヴァイ「なるほどな…」
ミカサ「離岸流に入ると、思うように進みません。モブリットさんはそれを避けるために、海底を潜水すると言っていました」
リヴァイ「奴は海の事なんか何も知らねえくせに、なんでそんなに詳しいんだ…」
ミカサ「私たちは、泳ぐ練習だけしていたんじゃない。モブリットさんは勝つために、海を知ろうと勉強していた。勝つために…」
リヴァイ「…そうか」
リヴァイはミカサだけでなく、モブリットの行動にも舌を巻いたのであった
-
- 457 : 2014/12/11(木) 17:54:30 :
- ハンジ「…おかしい、ちっとも進んでいる気がしない…」
ハンジは泳いでも泳いでも浜が近づいてこない事に、苛立っていた
ハンジ「体が島の向こうの外海に引き込まれそうになる…」
ハンジはそう言いながらも、必死に泳ぎ続けた
まさに離岸流の餌食となっていたのである
一方モブリットは…
ミカサ「モブリットさんが先に戻ってきた!!勝った!!」
本島の浜辺に戻ってきたモブリットに、ミカサは飛び上がって喜んだ
リヴァイ「ちっ…負けたか…」
リヴァイは舌打ちをした
モブリット「ミカサ、よく頑張ったね。君のおかげでいい勝負が出来たよ。ところでハンジさんは?」
リヴァイ「まだ見当たらねえ」
リヴァイの言葉に、モブリットは首を傾げた
モブリット「まだ…?」
ミカサ「見えませんね…」
ミカサの言葉に、モブリットは弾かれた様に海に向かって駆け出した
モブリット「兵長とミカサは、ボートで探して下さい!!あまりにも時間が掛かりすぎています!!」
モブリットはそう言うと、海に飛び込んでいった
-
- 458 : 2014/12/11(木) 17:59:09 :
- ミカサ「兵長…ハンジさん、溺れたんでしょうか…大丈夫、かな…」
リヴァイ「とにかく目を凝らせ。海底に沈んでなきゃいいがな…」
ミカサ「兵長、不吉な事を言わないで欲しい…」
リヴァイ「悪かった。とにかく探すぞ」
リヴァイはミカサと共に、必死にボートを漕ぎながら、目を凝らし続けた
-
- 459 : 2014/12/11(木) 18:20:22 :
- ハンジ「もう、ダメかもしれないな…浜辺どころか、島の沖に流されてるよ…」
ハンジは泳ぐ力を無くして、海面に体を浮かべていた
すると、体がどんどん沖へ流されていくのがわかる
だが、どうすることも出来なかった
ハンジ「海って不思議だな…こんな流れがあるなんて。川とは全く違うよ。そういえば、勝負は…ミカサたちの勝ちだね。私がこんな所に浮いているんだもん」
ハンジは自嘲気味に笑った
ハンジ「やっぱり、モブリットを敵になんて回すんじゃ、なかったな…。側にいなくなって初めて、気がつくってこういう事か…」
ハンジは目を閉じた
体が急激に重くなる感覚
浮力を得ようと足をばたつかせる事すら出来なくなっていたのだ
ハンジ「南の海に抱かれて死ぬのも…悪くない…」
ハンジは笑みを浮かべると、全身から力を抜いた
海がハンジの体をゆっくり飲み込んで行った
-
- 460 : 2014/12/11(木) 18:38:04 :
- その時だった
不意にハンジは、自分の沈みかけた体が、何かによって海面に押し上げられていくのを感じた
ハンジ「げほっ…げほっ…」
モブリット「ハンジさん!大丈夫ですか?!」
聞き馴染んでいる声
いつも一番側で聞いていた声
敵に回した事を後悔した、その声の主
ハンジ「モブ…リット…なんで…?」
モブリット「なんでって…戻っていらっしゃらないから、お探ししていたんですよ…」
ハンジ「そ、そっか…はは…」
モブリット「とにかく、戻りましょう」
モブリットはハンジの体を支える様に泳ごうとした
ハンジ「無理だ。私はもう、力が抜けちゃって…」
モブリット「大丈夫です。私がちゃんと、浜辺までお連れしますから。つかまっていて下さいね」
モブリットはハンジを片手で抱えるように、泳ぎ始めた
ハンジ「モブリット…ありがとう」
ハンジの言葉に、モブリットは一瞬瞳を揺らしたが、堪えて首を振ったのだった
-
- 461 : 2014/12/11(木) 18:49:12 :
- 途中でリヴァイ達のボートに乗り、ハンジは無事に浜辺にたどり着いた
ミカサ「とにかく、無事で良かった」
ミカサはハンジの介抱をしながら、瞳を潤ませていた
ハンジ「ミカサ、心配かけてごめん。ありがとう…それと、君は凄いよ。あんなに泳げるようになっていて」
リヴァイ「勝負は完全に敗けだ。仕方ねえ」
ミカサ「ハンジさんは、モブリットさんのお嫁さんになるんですね」
ミカサは目をきらきらと輝かせた
モブリット「いや、私にそんな資格はないよ。ミカサ、本当によく頑張ってくれたね、ありがとう」
モブリットはミカサをぎゅっと抱き締めると、足早にその場を立ち去ってしまった
ミカサ「モブリットさん?!どうして…?資格がないなんて…勝ったのに」
ハンジ「モブリット…」
リヴァイ「とにかく、部屋に戻って休め、ハンジ」
ハンジ「あ、ああ…そうだね…」
ハンジはモブリットの去った方を見つめながら、唇をかんだ
-
- 462 : 2014/12/11(木) 19:05:31 :
- ハンジを部屋に戻して風呂に入れ、着替えてベッドに寝かせると、ミカサはリヴァイの部屋に戻った
ミカサ「兵長、ハンジさんをベッドに押し込んできました」
リヴァイ「ご苦労。お前も疲れただろ。風呂入ってこい」
ミカサ「…兵長は?」
リヴァイ「俺は後から入る。さっさと入ってこい」
ミカサ「はい、兵長」
リヴァイ「それと…今日は驚いた。よく、練習したんだな」
ミカサ「……はい」
リヴァイ「俺の敗けだ」
ミカサ「いいえ、モブリットさんのおかげで勝負には勝ちました。でも、私と兵長の勝負なら、完全に私のまけ、ので、また挑戦します」
リヴァイ「ああ、返り討ちにしてやる」
ミカサ「吠え面かかせてやります…では失礼」
ミカサはそう言って、風呂場に消えた
リヴァイ「吠え面か…かかせてみやがれ」
リヴァイは肩を竦めた
-
- 463 : 2014/12/11(木) 19:49:36 :
- ハンジはベッドに横たわりながら、窓の外から見える美しい夕陽に、目を細めていた
ハンジ「綺麗だなあ…海と夕陽のコントラスト…。モブリットは、何処に行っちゃったのかな…」
ハンジは体をゆっくり起こした
手足を動かしてみる…多少だるいが問題なく動く
ハンジ「散歩でもしたいけど…ミカサに動くなって言われちゃったしね」
ハンジはまた、窓の外に視線を向けた
夕焼けがゆっくり、濃い青に侵食され始める
得も言われぬ美しさだ
ハンジ「綺麗だな…モブリットなら、きっとすぐに絵を描くね…間違いない」
先程、立ち去ってしまった副官を思いながら、ハンジは目を閉じた
ハンジ「資格がない…か。それは私のセリフなのにな…」
ハンジは小さな声でそう呟くと、ため息をついた
もう一度、窓の外に視線を移すと…
目の前は紺碧の夜に彩られていた
-
- 464 : 2014/12/11(木) 20:07:43 :
- ハンジがしばらくそのまま、窓の外の紺碧の夜に目を奪われていると、部屋の扉が静かに開いた
ハンジが扉に視線を移すと、紙袋を両手に提げたモブリットが、部屋に入ってくる所だった
ハンジ「モブリット、おかえり」
モブリット「ただいま戻りました、分隊長」
モブリットはそう言うと、テーブルの上に紙袋を置いた
ハンジ「なんだい、それ」
モブリット「夕食ですよ。外に食べに行くにもお疲れでしょうし、買ってきました。ちなみにミカサと兵長は、イケメンピザとやらに行きました」
ハンジ「イケメンピザか…はは」
ハンジは笑うと、ベッドから降りようと足を動かした
モブリット「ミカサに動くなと言われましたよね、分隊長」
ハンジ「もう、大丈夫だよ。だって動かなきゃトイレに行けないじゃないか。それとも君がおぶってくれるの?」
モブリット「…必要ならばそうしますよ」
モブリットは静かにそう言いながら、てきぱきと夕食の支度を整えていく
ハンジ「ねえ、モブリット」
ハンジはモブリットを呼んだ
モブリット「はい、何でしょうか、分隊長」
ハンジ「ちょっと話がしたいんだ」
モブリット「…先に食事をしましょうか。お腹、すいたでしょう」
ハンジ「…うん、そうしよう」
ハンジは何か言いたげな表情をモブリットに向けたが、やがて息をつき、ベッドから下りた
-
- 465 : 2014/12/11(木) 20:34:51 :
- ハンジ「美味しかった、ご馳走さま」
ハンジはそう言って、お腹をさすった
モブリット「良かったです。片付けてきますから、歯を磨いて寝てください」
ハンジ「まだ、眠たくないんだけどな…」
モブリット「今日はお疲れなはずです。休んで下さい」
ハンジ「…わかったよ。歯みがきしてくる」
ハンジはそう言うと、洗面室へ足を向けた
その後ろ姿をちらりと見て、モブリットは秘かに息をついた
-
- 466 : 2014/12/11(木) 20:51:52 :
- モブリットが片付けをしている間に歯みがきを済ませ、寝るだけになったハンジは、とりあえずベッドの上に座って、窓の外を眺めていた
浜辺にはちらちらと人影が見える
ハンジ「ねえ、モブリット」
ハンジは窓の外に視線を向けながら、モブリットを呼んだ
モブリット「はい、何でしょうか」
モブリットは片付けをしながら返事をした
ハンジ「浜辺で散歩してる人がいるよ、と思ったらさ、リヴァイとミカサだった」
モブリット「そうですか。イケメンピザは、美味しかったんですかね」
モブリットは窓辺に歩み寄って、外を覗いた
確かに二人の影が見えていた
ハンジ「美味しかったよ。昨日も行ったんだけどなあ。リヴァイがミカサを連れていってやりたかったのかな。イケメンを見せるために…」
モブリット「ミカサが、エレンよりイケメンがいるはずがない、と言って、言い争いながら出ていきました」
ハンジ「はは」
ハンジは愉しげに笑った
-
- 467 : 2014/12/11(木) 21:16:25 :
- ハンジ「モブリット、お風呂入って着替えてきたら?君だって疲れただろ?」
モブリット「そうですね…。お風呂、頂いてきます」
ハンジ「うん。後で、話がしたいんだ」
ハンジはモブリットに、真剣な眼差しを向けた
モブリット「はい、わかりました」
モブリットはハンジに頭を下げると、風呂場に消えた
窓の外を見ると、二人の姿は無くなっていた
ハンジ「何だかんだ言って、仲良しなんだよね、あの二人」
ハンジは含み笑いをすると、ベッドの枕を背中にひいてクッションにしながら、窓の外の夜空を眺める事にした
-
- 468 : 2014/12/11(木) 21:44:13 :
- その頃リヴァイとミカサは…
リヴァイ「これは別腹だな」
ミカサ「そうでしょう、私はこれが一番好き」
ミカサがお気に入りのフランスパンまるごとサンドイッチを、二人でぱくついていた
リヴァイ「確かに、これが一番旨いかもな」
ミカサ「あっちの世界が平和になったら、私はサンドイッチ屋さんをする…そのために毎日これを食べて、味を盗む」
リヴァイ「お前がサンドイッチ屋、似合わねえ」
ミカサ「兵長はイケメンじゃないくせにピザ屋をやるっていった」
リヴァイ「イケメンじゃなくてもピザ屋くらいなれるだろうが」
ミカサ「しかも兵長はチビだ」
リヴァイ「うるせえ、お前最近チビだって言うのに、なんの躊躇もしなくなったな」
ミカサ「躊躇する理由がない。真実だから」
リヴァイ「うるせえな…」
ミカサ「兵長はうるせえ、しかいわない。言葉を知らない、お気の毒」
リヴァイ「うるせえ!明日水泳勝負だ!!」
ミカサ「ほら、またうるせえ」
リヴァイ「ちっ…」
ミカサ「でも…私は兵長が可哀想だから、暖かく見守る」
リヴァイ「いらん!!」
ミカサ「勝負に負けて、女を取られたわけですから…」
リヴァイ「もともとハンジは俺の女じゃねえよ」
ミカサ「そう、ですか。まあ、モブリットさんの一途さは異常ですから、仕方がないです、負けたって」
リヴァイ「確かに異常だな、そこは同意だ」
ミカサ「号外!!リヴァイ兵長振られるの巻!!」
リヴァイ「おい!!余計なことを報告すんな!!」
ミカサ「嫌です、逐一報告せよ、という命令ですから…」
リヴァイ「エルヴィンめ…」
リヴァイは天に向かって舌打ちをしたのだった
-
- 469 : 2014/12/11(木) 22:04:26 :
- ハンジが窓の外に視線を向けて、星の数を数えていると、風呂場からモブリットが出てきた
ハンジ「モブリット、よく温まった?」
ハンジの言葉に、モブリットは頷く
モブリット「はい、体もほぐれました。なんだか眠たいです」
ハンジ「そっか、君も疲れているもんね。話は…今度でいいや」
モブリット「いえ、お話、伺いますよ。すみません、気を使わせてしまって」
モブリットはベッドに歩み寄って、頭を下げた
ハンジ「大丈夫?なら座って」
モブリット「はい、分隊長」
モブリットはハンジに誘われる様に、ベッドの縁に腰をおろした
ハンジ「あのね、まずはさ、勝負、見事だったよ。どんな手を使ったのかわからないけど、ミカサがあんなに泳げるようになっていて、びっくりした」
モブリット「ミカサが、本当によく頑張ってくれました。彼女のおかげです」
ハンジ「後さ、助けに来てくれて、ありがとう。もう、ダメかと思って、諦めた時に…君が来てくれたんだよ」
モブリット「…あれは、俺が悪いんです」
モブリットは絞り出すような声でそう言った
ハンジ「どうして?」
モブリット「離岸流のことを、あなたに教えませんでした。結果あなたの命を危険にさらしたんです」
モブリットは俯いたまま、言葉を発した
ハンジ「だって、勝つための作戦じゃないか。君は勝つためにいろいろ準備をした。私たちはそれを怠った。それだけの話だ」
モブリット「ですが、勝つためとはいえ、一番大切な事を忘れている様では、私はあなたの側にいる資格はありません。ですから私は…」
モブリットはそこまで言って言葉を詰まらせた
ハンジ「モブリット…?」
モブリット「私たちは勝負には勝ちました。ですが、あなたに一緒になって欲しいと言う約束は、無かったことにして下さい」
モブリットの言葉に、ハンジはしばし彼の表情を伺った
唇を噛み締めて、目を伏せるモブリットに、ハンジはそっと手を伸ばした
-
- 470 : 2014/12/11(木) 22:16:12 :
- ハンジ「私さ、海で流されている間、ずっと君の事を考えていたんだよ。君が敵にまわってはじめて、君のありがたみを知ったし、いなかったら不安になることも、知った」
モブリット「…」
ハンジ「私は、寂しかった。いつも当然の様に私の側にいてくれて、私の味方でいてくれた君が、敵だと言った時に…本当に寂しかったんだ」
モブリット「…」
ハンジ「私は…君に側にいてほしいんだ。どんな時も、一緒にいてほしい。これが私が話したかった事だ。聞いてくれて、ありが……」
ハンジは最後まで言葉を発することが叶わなかった
ベッドの縁に座っていたモブリットに、抱き寄せられていたのだった
-
- 471 : 2014/12/12(金) 08:50:45 :
- ハンジ「モブリット…」
強く抱き締められるその感覚に包まれながら、ハンジは小さな声で彼の名を呼んだ
自分の腕を彼の背に回そうとするが、腕ごと抱きすくめられていて、それが叶わない
彼の胸に耳を当てると、トクトクと規則正しい心臓の音が聴こえてきた
彼は返事をしない
ただただ力強く、ハンジの体を抱き締めた
もう、二度と離さないと言う意思表示の様に、しっかりと
-
- 472 : 2014/12/12(金) 09:30:30 :
- やがてモブリットの腕の力が弛むと、ハンジは彼の胸から顔を上げた
今にも涙腺が決壊しそうなモブリットの顔を見て、ハンジは彼の頬をそっと撫でた
ハンジ「モブリット、変な顔してるよ?」
モブリット「すみません…どんな顔をしていいのか、わからないんです…」
ハンジ「泣きたかったら、泣いてもいいんだよ。我慢しなくていい」
ハンジはモブリットの頭を撫でた
モブリット「ハンジさん、すみません…私はもう二度と、あなたの敵に回ったりはしません。ずっと、あなたのお側で、あなたのために…生きていきます」
ハンジ「ありがとう、モブリット。私ももう、君を敵に回すのはこりごりだ。君と共に、生きるよ。だからさ…」
ハンジはそこまで言うと、モブリットの耳元に唇を寄せた
そして、小さく何かを囁きかける
その言葉を耳にした時、モブリットは目を見開いた
そして次の瞬間、彼の両の瞳から涙がこぼれ落ちたのだった
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- 473 : 2014/12/12(金) 09:41:10 :
- ハンジ「ありゃ…泣かせちゃった?」
ハンジはぽろぽろと涙を溢すモブリットの顔を覗きこんだ
モブリット「不意を…つくからじゃないですか…」
ハンジ「ははっ。だいたいプロポーズってものは、不意をつくものだろ?男女の立場が逆転しちゃってる気がするけど、気のせいだよね、うん」
モブリット「気のせいじゃなくて、逆転してますよ…」
ハンジ「まあいいじゃないか。もともと私の方が男らしいし、君は掃除洗濯後片付け、そんなのが得意で女子力高いしさ」
モブリット「否定できません…」
ハンジ「ま、黙って私についてきたらいいさ」
ハンジはそう言うと、モブリットの唇に自分のそれを押し付けた
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- 474 : 2014/12/12(金) 09:55:37 :
- ハンジ「…で、返事をもらってないんだけど」
唇を離してから、ハンジはモブリットに問いかけた
モブリット「返事…」
ハンジ「プロポーズの返事。ちなみに私はいつまでも待ってるとかは無し。今すぐ白黒はっきりさせてくれ」
ハンジはモブリットの手を握りしめながら、真摯な眼差しを彼に向けた
モブリット「そんなの…勿論yesです、ハンジさん」
ハンジ「だよね。じゃあ決定だ。早速いろいろ手配しなきゃ」
ハンジはそう言うと、電話をあちこちにかけ始めた
モブリット「手配って…一体何の…?」
モブリットはベッドに座ったまま、ハンジの様子に首を傾げていたのであった
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- 475 : 2014/12/12(金) 11:31:23 :
- >とあちゃん☆
ありがとう♪頑張るね♪v(*'-^*)^☆
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- 476 : 2014/12/12(金) 13:12:27 :
- モブリット「ハ、ハンジさん、何を…?」
ようやく電話をし終えたハンジに、モブリットは訝しげな表情で問いかけた
ハンジ「ん?何をって、決まってるじゃないか。ウェディングだよ、ウェディングの予約」
モブリット「ウェディング…?」
ハンジ「結婚式だよ」
モブリット「なるほど、結婚式ですか…ってちょっと待って下さい!」
ハンジ「待ったは無いってさっき言わなかったっけ」
モブリット「お聞きしましたけど…その、性急すぎやしませんか?!」
ハンジ「じゃあ結婚しないのかい?」
モブリット「結婚は、します。ですが…」
ハンジ「あー、もう、こういうのは期を逃さず一気にやっちゃわないとダメなんだよ」
モブリット「そ、そんなものでしょうか…」
ハンジ「そんなもんだよ。君は黙ってついてきたらいいんだ。わかったね?」
ハンジはそう言うと、未だ事情がよく飲み込めていないのか、間の抜けた様な顔のモブリットの頬をつついたのだった
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- 477 : 2014/12/13(土) 22:33:07 :
- モブリット「と、とにかく、今日は夜遅いですし、そろそろ休みましょうか、分隊長」
ハンジ「うん、そうだね。流石に疲れたよ。ほんとはまだ、散歩とかしたかったんだけど…」
ハンジはそう言うと、ヒラリとベッドに飛び乗った
モブリット「散歩はまた明日にでもできますからね」
ハンジ「ああ、そうだね。明日は夜の散歩しよう」
ハンジはそう言うと、手をヒラヒラと振ってみせた
モブリットを誘うように
モブリット「分隊長…?」
ハンジ「一緒に寝よ?」
そう言って魅惑的な笑みを浮かべる、たった今婚約者となったハンジに、モブリットは抗う術など持ち合わせてはいないのであった
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- 478 : 2014/12/13(土) 22:53:30 :
- その頃リヴァイ達の部屋では…
ミカサ「あっ、も、もう、駄目…」
ミカサがベッドの上で息も絶え絶えといった体でうつ伏せになっていた
リヴァイ「早すぎるぞ、ミカサ。まだまだこれからだ」
ミカサ「兵長は鬼畜…私は必死で泳いだ結果、体の自由がききにくいのに…」
リヴァイ「だから、マッサージしてやってるんだろうが」
ミカサ「もっと優しくとか、兵長の辞書には無いのか」
リヴァイ「そんなもん、ねえな」
ミカサ「兵長は優しいとほんの少し思ったけど、撤回する…」
リヴァイ「優しいわけねえだろ…フッ!」
ミカサ「う、あああ!」
リヴァイ「うらっ!」
ミカサ「ああっ…!」
リヴァイの地獄のマッサージが、ミカサに涙を流させるのであった
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- 479 : 2014/12/14(日) 17:26:41 :
- 翌朝
ハンジ「おはよう!今日は今から国内線で離島に行くよー!」
モブリット「ま、また飛行機ですか…」
ミカサ「私はもう慣れた。ので怖がりはモブリットさんだけ。飛行機と言う密室の中、ハンジさんに甘えるといい。いや、甘えるべき。そして壁新聞の記事のネタにする」
モブリット「わ、私だってもう怖くない…かもしれない…」
リヴァイ「そのわりには情けねえ顔だな、お前」
モブリット「もともとこんな顔ですから…」
ミカサ「私に特訓している時は鬼のようだったのに…」
ハンジ「モブリットが鬼のようだったとは、ねえ」
ミカサ「それだけハンジさんを自分のものにしたかったんですよ」
ハンジ「いやあ、照れるなあ!」
ミカサ「昨夜はお楽しみだったんでしょうね…」
ハンジ「ははっ、まあね!」
モブリット「ハンジさん?!」
ミカサ「そこの話を是非詳しく…」
ハンジ「えっとねえ、誘ったのは私なんだけどさぁ、モブリットは火が着くと止まらないんだよね。顔に似合わずアグレッシブな攻めでね…」
モブリット「ハンジさん何を!?」
ミカサ「ふむふむメモメモ」
リヴァイ「写真も隠し撮りすりゃあ完璧だな」
モブリット「兵長まで何を!?」
モブリットの悲鳴が辺りに響いた
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- 480 : 2014/12/25(木) 16:39:29 :
- ハンジ「さあて、ついにニューカレドニア最高の楽園、イル・デ・パン島にやってきたよ!」
リヴァイ「常夏の島って感じだな。ヤシの木がたくさんある」
ハンジ「ここでは、ちょっとイベントを企画してるから、君たちも参加してくれよ?」
リヴァイ「イベントってなんだ?というか、モブリットがいねえんだが」
ハンジ「ありゃ、モブリットどこいっちゃったんだろ?確かに飛行機は一緒に降りたけどなあ…」
ミカサ「モブリットさんは気分が悪くなって、トイレに駆け込んでいます。飛行機が、あまりに揺れるから」
リヴァイ「確かに、今日の飛行機は今までで一番アグレッシブな攻めの飛行だったな」
ハンジ「おんぼろ飛行機だったしね!いやあ落ちなくて良かったよ!」
ミカサ「飛行機にアグレッシブな攻めなんか必要ない、馬鹿兵長」
リヴァイ「うるせぇくそがき。凄い滑空だったろうが。途中でエンジンが切れたかと思った」
ハンジ「ま、モブリットもそのうち出てくるだろ。今日は忙しいんだ。休む暇はないよ」
ハンジはそう言いながら、メモをペラペラとめくっていた
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- 481 : 2014/12/25(木) 16:49:42 :
- モブリット「す、すみません、お待たせしました…」
リヴァイ「モブリット、お前顔色がわりぃぞ。大丈夫か?」
ハンジ「本当だね。飛行機きつかったかい?モブリット」
モブリット「いえ、大丈夫ですよ。飛行機は怖かったですが…」
ミカサ「違う、モブリットさんが顔色悪いのは、疲れているから。ハンジさんに気を使いまくって、その上無尽蔵なハンジさんの性欲に付き合わされるしまつ。どんな超人も干物にしてしまう、それがハンジ・ゾエ…と。メモメモ」
ハンジ「ちょっ!なんだよそれ!」
リヴァイ「ミカサ、お前変な能力だけ上がってるな。捏造能力」
ミカサ「捏造じゃない。本当の事。だってエルヴィン団長が言ってた。ハンジさんに毎晩夜這いされたと。オーストラリアの旅行の時に…」
ハンジ「ち、違う!あれは夜這いじゃないって!」
モブリット「……壁新聞にのってましたね。あげくの果てに兵長まで手込めに…」
リヴァイ「俺は被害者だ。ハンジの性欲処理のな」
ハンジ「ひ、ひでえ!なんて事だ!モブリットまでそんなことを…もう、結婚しないんだからな!」
ハンジはそう叫ぶと、明後日の方向へ走り去ってしまった
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- 482 : 2014/12/26(金) 13:37:25 :
- リヴァイ「結婚しないんだからな、と聞こえた気がしたが、正気か?モブリット」
モブリット「昨夜、勢いだったと思うのですが、プロポーズされまして」
ミカサ「もちろん即答したでしょうね、モブリットさんはハンジさんにぞっこんだから」
モブリット「ああ、否定はしないよ」
リヴァイ「よく貰える気になったな、勇者だぞ、お前」
モブリット「あの人のためなら、勇者でもなんでもなりたいです。しかし…機嫌を損ねてしまいましたね…分隊長」
ミカサ「冗談なのに」
リヴァイ「お前のは冗談なのか本気なのかわかんねえんだよ、だからわりぃ」
ミカサ「兵長には言われたくない。あなたの方が悪い」
リヴァイ「お前が!」
ミカサ「あなたが!」
モブリット「喧嘩はお止めください!殴りかからない!」
モブリットは、猛獣のような目でにらみ合う二人の間に割ってはいるのであった
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- 483 : 2015/03/10(火) 22:30:38 :
- 期待です!!
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- 484 : 2015/03/13(金) 18:03:50 :
- >名無しさん☆
ありがとうございます♪
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- 485 : 2015/03/30(月) 19:44:20 :
- 前作から見てます。頑張って下さいね
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- 486 : 2015/03/30(月) 20:02:52 :
- >りんねさん☆
ありがとうございます!
必ずかきますので……
更新しましたら、私のプロフィールからのグループにて通知させていただきます♪
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