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この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

ジャン「好きな女に頼るくらいなら…」ミーナ「助けなきゃ、帰れないよ!」

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  1. 1 : : 2016/04/09(土) 14:15:35


    進撃×DQの3スレ目です。


    1スレ目
    アルミン「エレン!!ミカサ!!どこぉ!?」スライム「ピギー!!」
    http://www.ssnote.net/archives/32924


    2スレ目
    ユミル「エレンの野郎が死んだ!?」ミカサ「皆は一体どこに…」
    http://www.ssnote.net/archives/34808
  2. 2 : : 2016/04/09(土) 14:19:29
    DQ(゚∀゚)キタコレ!!
    期待っす!
  3. 3 : : 2016/04/09(土) 23:40:48
    頑張ってください!
    応援してます!!
  4. 4 : : 2016/04/10(日) 18:44:48
    翌日、魔物の国ユグドラシル。



    サシャ「ミーナ!次はどうするんですかー!?」


    ミーナ「次は闘技場の方でドロルたちと後片付け!!」


    サシャ「え~…」


    ミーナ「私たちの生活の為よ!!さっさと行かなきゃ!!」


    サシャ「うー……。ご飯の為、頑張るしかないですね…」




    ハーイ、私はミーナ・カロライナ!

    ウォール・ローゼのトロスト区104期訓練兵団に所属する未来輝かしい訓練兵だよ!


    けどね、何故か私は今、そのトロスト区だのウォール・ローゼだのと全く関係ない場所で、汗だくになって働いています!
    女の子が汗だくになるなんてとんでもないことだよ!!

    この国キチクだよキチク!!

    …まあ、働かせてもらってるだけありがたいことなんだけどね。

    魔物の皆は優しいし、衣食住も確保してくれてるし。


    …話が逸れちゃった、閑話休題だね。



    約三ヶ月前、私たち13人の訓練兵はトロスト区訓練所のとある一室に集められた。

    集めたのはキース教官ということになってるの。

    なってるっていうのはどういうことかって?

    …うーん、その話はあとでね。


    その一室で、私たちは不可解な現象に見舞われたの。


    私の親友…とこちらが一方的に思っている、アニがいきなり倒れちゃったの!

    それからも、エレンやクリスタ、ほかの皆も次々と倒れていっちゃって………勿論わたしもね。

    最後まで残ったアルミンの話によると、皆倒れちゃったんだって。


    …その次に私が目を覚ましたのは、この国、ユグドラシルだった。


    皆は一体どこに行ったんだろう?

    ウォール・ローゼは?

    トロスト区は?



    そして、私はなんでこんなところにいるんだろう?



    見たこともない凶悪な姿をした魔物たち(当時の私にはそう見えた)を前にして、私は泣き出しちゃった。

    その姿を見て、優しかった魔物たちは私をあやそうとしてくれて、ようやく私はこの国で生きていく決意をした。



    …アルミンたちが、この国に来るまでは、ね。
  5. 5 : : 2016/04/10(日) 19:05:35
    ドロル「じゃあミーナ、ありがとね~」


    ミーナ「うん!こっちもパンありがとー!」

    サシャ「うっはー!!人数分頂けました~!!」





    くさった死体「よ~うミーナ~。今日も可愛いね~」


    ミーナ「ありがと!あなたも今日も良い腐り具合ね!」


    とかげ兵士「ミーナ、労働の後か?お疲れさま」


    ミーナ「うん!そちらも、お勤めお疲れさまであります!!」




    サシャ「ミーナ、人気なんですね~」

    ミーナ「そうかな?この国では唯一の人間だからね。めずらしいんじゃないかな?」

    サシャ「いや、ミーナなら人気者って言われても疑問はないですよ!」

    ミーナ「えへへ、ありがと!ほら、早く帰ろう!」
  6. 6 : : 2016/04/11(月) 15:31:52
    期待です!!
  7. 7 : : 2016/04/12(火) 15:33:52
    お待ちしております
  8. 8 : : 2016/04/12(火) 23:57:49
    楽しいです
  9. 9 : : 2016/04/14(木) 14:10:30
    期待でーす
  10. 10 : : 2016/04/18(月) 16:49:05
    楽しみに待ってます
  11. 11 : : 2016/04/18(月) 17:39:34
    楽しみです!
    期待です!
  12. 12 : : 2016/04/18(月) 18:39:16
    魔物の国ユグドラシル、とある一室…



    イー「…」







    昨夜…。



    リザードマン『この国に残る?何故だ?』


    イー『療養………。当然だろ。こんな身体で動けるか』

    リザードマン『そうか。まっ、何日かしたら戻って来い。ただ、オレたちは帰るぞ。ヒストリアを連れて帰らなきゃいけねえ。元々日帰りの予定だったんだ』

    イー『ああ。またな』


    リザードマン『…ああ……』ザッ


    リザードマン『……』



    イー『どうした?』


    リザードマン『…お前の…』


    イー『は?』



    リザードマン『お前の記憶を消させたのは、デスタムーア様だ』



    イー『…あぁ!?』


    リザードマン『本当は言うつもりはなかった。お前がその事実を知れば、魔王軍は崩壊しちまうからな』


    イー『…なら、なんで言った?』



    リザードマン『賭けさ。オレたちが後腐れなく、お前と過ごせるように。隠し事はしたくない』


    イー『賭け?』


    リザードマン『…どうなるかは…お前次第…』バサッ

    バサッ バサッ …



    イー『…なんだそりゃ』






  13. 13 : : 2016/04/18(月) 20:39:47
    イー「オレの記憶を消したのが…あのジジイだとぉ…?」




    デスタムーア『…儂らよりも人間が好きか』





    イー「!!!」ガタッ


    イー「あんのクソジジイ…!!少し思い出したぜど畜生!!!!」ゴォッ




    なんでデスタムーアの野郎はオレの記憶を消しやがった!?


    オレを完全に味方につける為か!?


    …しかも何でリュカはオレにそれを話したんだ?

    賭けってなんだよ。リュカは何を望んでるんだ?




    イー「…何か、オレの知らねえ所で色々行われてんな。つーかオレが忘れたのか」
  14. 14 : : 2016/04/18(月) 21:25:23
    コンコン


    イー「あ?どうぞー」



    ガチャ


    アルミン「変に礼儀正しいね君」

    ユミル「容体はどうだ?」

    ミカサ「…」



    イー「うわっ!!なんだお前ら、何でここに来た!?」



    アルミン「いや、隣だし」


    イー「…あ、そうだった」


    ユミル「ていうかお前めちゃくちゃ元気だなおい。コイツ、重傷じゃないのか?」

    アルミン「さあ?普通じゃないからね、彼」


    ミカサ「…貴方に訊きたいことがあって来た。どうか、答えて欲しい」



    イー「何だよ改まって。くだけていこうぜ、堅苦しい」


    ユミル「お前は軽すぎだ」




    ミカサ「何故あの時……私を助けたの?」
  15. 15 : : 2016/05/02(月) 11:13:38
    期待!!
  16. 16 : : 2016/05/03(火) 20:41:21
    イー「…お前は……あれだな。めんどくさい性格してるな」


    ミカサ「め、めんどう…」


    イー「…理由、ねえ…」



    彼らの会話は、ただの世間話のようだった。

    つい先日まで敵対し、命のやり取りをしていたとは思えないほどに。


    イー「…わからねえな」

    ミカサ「わからない?どういう意味?」


    彼らは続けていく。


    ミカサ「まさか…無意識だったの?」

    イー「…そうとしか思えねえ。お前があのままでは死ぬとわかった時、もう飛び出してたからな」


    ユミル「…開いた口が塞がらないとはこのことだな。お前、絶対早死にするタイプだ」

    アルミン「頭で損得勘定をしてないのか!?…君、すごいね。僕の親友にもそんな感じの子がいるけど…」



    ミカサ「…私は敵だったのに…」

    イー「…本能さ。敢えて言えばな」

    ミカサ「本能…」
  17. 17 : : 2016/05/03(火) 20:52:07
    イー「オレの本能が、お前のことを捨て置けなかった。ただそれだけのことなんだ。気にすることはねえ」

    ミカサ「…」


    ユミル(気にするなって方が無理だろ。頭では敵だってわかってるのに、本能では保護対象だと思った…。男が本能で女を求めたってことに、このミカサが気づくかは知らねえが)


    ユミル「…話は終わりか?今度は私の話だ。お前らは出ていってくれ」

    アルミン「え……大丈夫なの?」

    ユミル「立て込む話だ、とっとと出ていきな」

    イー「…?」

    アルミン「…わかった。行こう、ミカサ」


    ミカサ「…うん」



    ガチャ


    ミカサ「…ねえ」


    イー「おう、なんだ?」


    ミカサ「…いつか、この貸しは返す」

    イー「…へっ、そのときはありがたくもらっとくよ」




    ギィッ…


    バタン



    ユミル「さて…これで二人きりだな」

    イー「…襲う気か?」スッ

    ユミル「そうしてやろうか?」


    イー「……え」ゾワッ
  18. 18 : : 2016/05/04(水) 11:07:12
    個室の風呂場にて…。




    イー「……なんだよ、風呂に入ってこいって。マジで襲われるかと思ったじゃねえか」

    イー「そういえば、この国で仮面をはずすのは初めてだなー……」チャプン

    イー「……あの人間の女、何を企んでんのか……油断ならなそうだとは思ったが」



    ガラッ


    「湯加減はどうだ?」



    イー「へあっ?」
  19. 19 : : 2016/05/04(水) 11:11:33
    イー「ちょちょちょちょ!?なに入ってきてんだこの野郎!!」

    ユミル「野郎じゃねえよ。サービスショットだ、見ても良いんだぞ?」


    イー「いやけっこう!!遠慮する!!」

    ユミル「ウブだなぁ……」




    「……けど、今はそのウブさなんざ邪魔だ」




    スタスタ



    ガッ


    イー「うおおお!?」


    ユミル「……その面、しっかり見せやがれ!!」グイッ




    バシャアン…!
  20. 20 : : 2016/05/04(水) 11:14:52
    イー「うわぁ!!………………」

    ユミル「!!!」



    イー「……モロだ」


    ユミル「……やっぱり……予想は当たりか」


    イー「お前……少しは隠せよな。自慢出来るような身体でもねえくせに」





    ゴイン



    ユミル「相変わらず口が減らねえな」

    イー「いってえ~!!…………あ?相変わらず、だぁ?」


    ユミル「…」グイッ


    イー「うおっ……」
  21. 21 : : 2016/05/04(水) 11:18:23
    気づいたら、イーはユミルの胸元にいた。

    なぜ抱き締めた?

    あれ、こいつ敵だよな?

    つーか胸なんてねえとか思ったわりには結構柔らかいよこいつ。


    疑問がいくつか浮かび上がる中、イーはまた一つあることに気づく。


    目の前の人間が、涙を流しているということに。



    「……バカ野郎………」


    イー「…なにいってんだ?」
  22. 22 : : 2016/05/04(水) 11:26:40
    ユミル「…ああっ、本当に……?本当にお前なのか…?」

    ユミル「なら、どうして…お前はこんな状態に…!!」



    イー「…よくわからないけど、泣くんじゃねえよ。女を泣かすのは、男として最低だって言われたんだ」



    ユミル「っあ…、それ………女の子との話し方、か?」


    イー「お?よく知ってるな、誰からか教わったんだ」


    ユミル「……お前、このままどこへも行くな」


    イー「ああ?」



    ギュウッ…


    イー「うわっ、力いれるなって!!」


    ユミル「魔王軍になんか行くんじゃねえ!」

    イー「ちょっと…落ち着けっての!!」


    ユミル「私と…私たちと来い!!…いや、来てくれ!!」







    「お前の居場所はここだ……。ここなんだ、エレン…!!」
  23. 23 : : 2016/05/04(水) 17:49:01
    グレイト!
    やっぱ面白いっす!
    頑張ってください!
  24. 24 : : 2016/05/05(木) 15:46:55
    同じく、宿屋の一室にて…。






    「アニだ!!!」

    「マルコの方が先だ!!!」



    ミーナ「…ありゃ?」

    サシャ「あの二人、まだ続けていたんですか?」

    ライナー「うむ、あきれるほどにな」



    ベルトルト「ライナーからも言ってやってくれよ!!どう考えても先にアニの所に行くべきだって!!」

    ジャン「ベルトルトぉ…!!ようやく自分の意思を持ったと思ったら単なる我が儘かよ!?マルコの方が距離的に近いだろうが!!どうやってここから北の大陸に渡るんだよ!?」



    ミーナ「ちょーっとライナー…?」

    ライナー「放っとけ。それよりも、とりあえずもらった食糧を出し合おうじゃないか」

    サシャ「賛成でーす!!ライナー、いっぱい稼いできたんでしょうねぇ…」ウヒヒ

    ライナー「おいおい………お前、これはオレ達全員の分だからな?」
  25. 25 : : 2016/05/05(木) 15:53:38
    ミーナ「で、なんだっけ?マルコが同大陸の東の国、アニが北の大陸の霧の砂漠だっけ?」

    ライナー「ああ。距離ならマルコだな。ただ、個人的にはアニを優先したいという気持ちもないこともないんだが…」


    ベルトルト「アニは女の子なんだ!!マルコはしっかりしてるし、何より東の国にいるんだよ!?無事に決まってるさ!!」

    ジャン「おいおい、もうちょっと頭を使えこのデク野郎!!アニだってありゃ相当のタマだろう!!エレンやミカサと張り合うくらいの女なんざ、放っといても死なねぇよ!!」

    ベルトルト「このっ…!!…ミーナ!!」




    ミーナ「はい?」ベシッ

    サシャ「あぎゃ!」
  26. 26 : : 2016/05/05(木) 16:02:21
    ベルトルト「君だって親友のアニのことが心配だよね!?今すぐにでも助けにいきたいよね!!?」


    ミーナ「し、親友だなんてそんな~~」テレテレ


    ベルトルト「…いや……今はそこじゃなくて…」



    バサバサッ


    キドラ「たーだいまっと」トンッ

    サシャ「あ、おかえりなさいキドちゃん」モグモグ

    キドラ「…ライナー。またつまみ食いしてるッキーよ、この狩人」

    ライナー「サシャ…」




    ミーナ「…んーっとねぇ。確かにアニのことは心配だよ。あれほど協調性がない人そうはいないし、ぶっきらぼうだし」

    ミーナ「けどね……この場合はマルコの方に行くべきと思うわ」



    ベルトルト「え…」
  27. 27 : : 2016/05/05(木) 21:52:15
    ユミル‥‥!!
    期待です
  28. 28 : : 2016/05/05(木) 23:29:33
    まぁ距離的にね…
    アニ絶対死なないでしょ強すぎるんだから
  29. 29 : : 2016/05/06(金) 18:36:05
    ベルトルト「な…なんで!?」

    ミーナ「んー……まあ大体の理由はジャンが言った通りかな」

    ミーナ「けど、まだ決定打がある」



    ミーナ「…昨日、エレンが言ってたよね?アニは北の大陸、霧の砂漠にいるって」

    ベルトルト「うん!だからこそ、アニの方に…」

    ミーナ「その前にこうも言っていた。アニなら問題ないって」

    ベルトルト「っ……!!」

    ミーナ「アニのことが心配過ぎて気に忘れてたんでしょ。まったくもー……。……いい?」



    エレンがアニの居場所を把握していて、なおかつ問題ないというなら、エレンはアニに直接会っていて、その上でアニの安否を確認したってことなんでしょう?

    つまり、そのエレンが死ぬ直前までは、アニは確実に安全だったってことよ。

    死んだ後もそう言っていたから、相当安全な根拠を何か持っていたのよ、エレンは。

    というわけでアニについてはオールOK!


    次はマルコね。

    マルコの話は、西の国の王女に、その名前は聞いたことがあるような…って言われただけなんでしょ?

    誰か別人のマルコかもしれないし、マルコじゃなくてマルロやマルセルかもしれないし。

    名前のチョイス?いや、他意はないけど…。


    …まあとにかく、客観的に見て不安な方に行くべきだと、わたしは思うかな。
  30. 30 : : 2016/05/06(金) 19:25:16
    ミーナ「どう?ベルトルト」

    ベルトルト「…」


    サシャ「まあアニなら大丈夫ですよ。アニですからねー」

    ミーナ「ねー」


    ベルトルト「…そう…だね」


    ジャン「…」

    ライナー「やれやれ…」


    「…けど、そのベルトルトの気持ちも大事だよ」

    ベルトルト「―――――!!!」






    ミーナ「…それだけ想われたら、アニも振り向いてくれるんじゃないかな」

    ベルトルト「へ」
  31. 31 : : 2016/05/06(金) 19:33:54
    ベルトルト「ななななななんのことだいぼくはいったていやまちがえたいたってふつうさ」


    サシャ「あれ、ベルトルトってアニのことが…」

    ベルトルト「わーわーわーわーーーー!!!!」



    ライナー「ベルトルト!」


    ベルトルト「は、ひあ!!」

    ジャン「いや、そこは‘はい’だろ」


    ライナー「…モロバレだ、観念して諦めろ」


    ベルトルト「」


    ミーナ「あれ、固まった。ていうか白くなった?」

    ジャン「放っとけ。そのうち戻るだろ」



    サシャ「…んー、ベルトルトはわかりやすかったんですけど、アニはどうだったんですかねぇ」
  32. 32 : : 2016/05/06(金) 21:09:25
    ミーナ「アニは…どうかなぁ?あの子は、そんなものに眼を向けないほど、自分のやるべきことをやってたからねぇ…」


    ライナー「…アニは、そんな浮ついた考えなんて持ってなかったさ。だからこそ、同じようなエレンがなついてたんだよ」

    サシャ「いや、なついてたって……子供じゃないんですから」

    ジャン「あいつは冗談抜きでガキだったろ。同期で一番誕生日遅いし」

    ミーナ「そういえばそうね」

    サシャ「さすがジャンですね。そんなことまで覚えてるなんて………ラブラブですね!」

    ジャン「ぶっ刺すぞお前!!!」ギラリ


  33. 33 : : 2016/05/08(日) 14:02:47
    期待です
  34. 34 : : 2016/05/10(火) 21:54:17
    最高なり!
    頑張ってください!
  35. 35 : : 2016/05/11(水) 16:07:42
    ガチャ


    アルミン「ただいま!」

    ミカサ「…」



    ミーナ「イーくんどうだった?隣だけど」


    アルミン「ピンピンしてたよ。あれで敵わないデスタムーアやダークドレアムはどれほどのものか想像がつかないね」

    ミカサ「…まだまだ遠い…」


    ジャン「…オレだってお前に遠いよ」ボソッ



    キドラ「…オイラは、イーの所に行ってくるッキーよ」
  36. 36 : : 2016/05/11(水) 18:32:51
    ベルトルト「キドラ……君は彼のことを知っているのか?」

    サシャ「あ、復活しましたね」


    キドラ「…まあ、そうだッキーね。おいらはイーの部下だッキーよ」


    アルミン「」ピクッ


    ベルトルト「…部下か。まあ、そういうこともあるか」

    アルミン「…」


    キドラ「うん。じゃ」


    パタパタパタ…





    ジャン「…おい、ベルトルト…」

    ベルトルト「…ごめん。わかってるよ」
  37. 37 : : 2016/05/13(金) 20:49:25
    アルミン「それと…もう、この国を出ようと思うんだ」


    サシャ「え、もうですか!?もうちょっとゆっくりしていってもいいじゃないですか!ミカサだって疲れてるでしょうし…」

    アルミン「ミカサはもう大丈夫だってさ。ていうか、今回は僕じゃなくてミカサから言い出したことなんだ」

    ジャン「…どういうつもりだよ、ミカサ」


    ミカサ「…善は急げという」



    ジャン「ごまかすなよ、ミカサ」

    ミカサ「…」

    ジャン「焦る気持ちは分かるが……まあ待てよ。オレだって早くマルコの顔が見たい。けどな、焦って、出来て当然のようなこともできなくなったらどうすんだ?」

    ミカサ「………それでも…」


    「…エレンの元に、早く行きたいの」






  38. 38 : : 2016/05/13(金) 21:23:26
    ジャン「…はぁー…」


    ライナー「良いじゃないか、ジャン。行こう」


    ジャン「なんだよ、お前が賛成すんのかよ」

    ライナー「おまえだってそうだろう?」

    ジャン「……けっ、一人で行かれても困るからな」



    ミーナ「…素直じゃないなぁ、ジャン」

    サシャ「えーっと、なんだかんだ言ってジャンが優しいってことでいいんですか?」

    ミーナ「満点の回答だ、サシャ・ブラウス」

    サシャ「はっ、ありがとうございます教官!」



    ベルトルト「…ところで、どうやって東の国にいくの?あの標高何千メートルかわからない山脈こえて」





    「「「「「「「………」」」」」」」




    ミーナ「…なーんも考えてなかったね!」

    サシャ「前途多難ですねこの旅!毎度毎度な気はしますが!!」






    ガチャ



    「待て……!」
  39. 39 : : 2016/05/13(金) 21:43:55
    その部屋の全員が扉の方を向くと、つい昨日ボロボロになるまで戦っていたイーと、その少年に肩を貸すユミル、更にはその少年心配そうに見ているキドラが居た。


    どうやら、今の声はイーが出したようだ。

    …気のせいか、とても親近感がわくような声だったような…。

    ……なんだったんだろう?




    ミカサ「何の用?」


    イー「オレも連れていけ」




    アルミン「………ごめん、良く理解できなかったからもう一回」



    イー「だから、オレもお前らの旅に連れていけってんだよ」




    『…』


    …僕らは、一息ついてから、周囲5kmには聞こえたであろう大声で、思い思いに叫んだ。
  40. 40 : : 2016/05/13(金) 22:03:35
    アルミン「…えーと、話を要約すると、休暇中で暇だから、人間の世界を見ておきたいってこと?」


    イー「おう。よろしく頼むぜ」



    ベルトルト「…何がどうなったらこうなるんだい?」

    ユミル「…悪い、ほぼ私のせいだ。反省はする」


    ユミル「…だが、反対はしない。私はこいつを連れてくこと自体には大賛成だ」

    ベルトルト「理由は?」

    ユミル「言えない」


    …。


    ユミルの答えに、皆が沈黙した。

    分からない、というわけじゃなく、ましてや明確な明るい理由でもなく、”言えない”。

    勿論、反対するメンバーもいて。…というか、それが普通だ。



    アルミン「…明確に、簡単に行こう。多数決でいいかな?」


    …全員、同意見のようだ。


  41. 41 : : 2016/05/13(金) 23:03:42
    アルミン「僕は反対だ。魔王軍のNo.2を連れて歩くような真似は出来ない。彼と一緒だったら、普通に町にも入れないよ」

    ライナー「オレも反対だ。理由は大体アルミンと一緒だが、更に言うならメリットがない。仲間というより敵だからな」

    ユミル「さっきも言ったが、私は賛成だ。…もしこいつを連れてけないなら、私はこいつについていくってくらいにな」

    ミカサ「…賛成。彼は確かに魔王軍。けど、西の大陸では町の人々を誰も殺さなかった。意図はまだわからない。だからこそ、見極めたい」

    ジャン「…真に遺憾ながら賛成だ。正直、こいつは強い。いざという時に頼りになるのは事実だ。それに、魔王軍に対しても、ある程度の盾になる。こっちには万が一の時の抑止力っぽいのもいるからな」

    サシャ「反対ですね。理由は安直、何のつもりかわからないからです。狩りをするときもそうですが、仲間との絶対的な信頼関係がないと、安全なんてとても確保できません」

    ベルトルト「反対だ。キドラはまだアルミンたちが信頼しているから良い。命を助けてもらったこともあるみたいだしね。けど、彼は違う。単純明快な敵だ」

    ミーナ「賛成…かな。魔王軍がどれほど脅威のものかわからないけど、バズズみたいな魔物もいるんでしょ?なら、魔王軍の全員が悪かなんてわからないし。ていうか、彼を見ていたら普通に良い人だって思えたし。素顔が見えないのは何か隠されてる感じが否めないけど」



    …結果、4対4。

    8人ならこういうこともあるかと思ったが、本当に起きるとは思わなかったよ。

    ユミル以外全員反対すると踏んでたし。
  42. 42 : : 2016/05/15(日) 04:04:23
    やべぇ楽しい
  43. 43 : : 2016/05/15(日) 23:34:19
    最高
  44. 44 : : 2016/05/16(月) 21:20:19
    ユミル「…で、どうすんだこりゃ」


    アルミン「その前に、ユミルのその彼への入れ込みっぷりはどうなんだい?何があったの?」

    ユミル「…」


    「…さあな」



    …そうまでしても彼女は何も告げなかった。

    ユミルは以前から隠し事が多い……というか、自分のことをほとんど何も話さないような人物だったが、これほどまでとは思わなかった。

    …それに、僕らに何も言えない理由がわからない。

    何かリスクでもあるんだろうか?




    …そして、結局イーは僕たちについてくることになった。

    とりあえず、東の国まではついてくるらしい。

    というのも、僕たちの中で決まらないなら、もう一人の同行者、キドラに判断を任せてみてはとなったのだ。


    まあ、結果は予想通りになった。


    けど、キドラは少し悩んでいた。

    何か思うところでもあったのだろうか。
  45. 45 : : 2016/05/17(火) 19:12:26
    頑張ってください!
  46. 46 : : 2016/05/18(水) 19:50:10
    続きが気になる
  47. 47 : : 2016/05/23(月) 21:18:58
    応援してます!
  48. 48 : : 2016/05/25(水) 17:44:52
    期待!
  49. 49 : : 2016/05/26(木) 02:33:32
    期待です
  50. 50 : : 2016/05/26(木) 10:54:15
    イー「…それじゃあ、改めて自己紹介させてもらうぜ」


    イー「オレの名前はイー。名も姓もない、イーだ。歳はこの前16になったんで16歳。職業は……なんだろな?魔剣士?みたいなものかな?魔王軍の三将を張らしてもらってるぞ。現在休暇中なんで、ただの人間と思ってくれれば良い。一通りの剣技、格闘術、呪文にその他特技多数。よろしくな!」



    アルミン「…うん、よろしくね」


    イー「いまこの休暇中だけはお前らの味方だ。安心しな」


    そういって、イーが拳を置いたのは、彼の左胸だった。

    その途端、僕らの中に緊張が走る。

    その格好は、まるでかつての僕たちみたいだったから。


    イー「オレの心臓に誓う。この通りさ」
  51. 51 : : 2016/05/26(木) 11:02:03
    言葉だけじゃないのかとか、その場しのぎなだけではといった、嫌疑の声は不思議と出てこなかった。

    奇しくも似たようなポーズを取るイーの眼を見て、僕たちは悟ったから。

    本気なんだと。

    彼は、仲間であるうちは、決して手を出しはなしないだろうと。


    そう確信できた。



    ベルトルト「…わかったよ。よろしくね」

    ライナー「頼もしい奴だとはわかっているからな」

    イー「出来るなら技を盗んでくれても良いぜ?」

    ライナー「お、言ったな?」



    彼らの笑い声が響き渡るその部屋には、仲間を二人も失ってしまったという雰囲気は既になかった。

    そのせいで特にショックを受けていたミカサやユミルたちも笑っていたから、それはそれは和やかなムードだったんだ。
  52. 52 : : 2016/05/26(木) 22:32:40
    ミーナ「…えっと、じゃあ元の話に戻って良いかな?」

    ジャン「あの山脈をどうやって越えるかだろ?キドラのルーラでベルトルトが居た教会に一度戻って、そこから東の国に進めば良いじゃねえか」




    『………』



    サシャ「…ジャンって頭良いですよねえ」


    ジャン「え?」

    ミーナ「ほんとほんと。むしろ何でさっさと言ってくれなかったのってくらい」

    ジャン「え??」

    ライナー「全く、これだからジャンは」

    ジャン「うぉいこらぁ!!何だよこのノリ!」



    イー「…なあ、山脈を飛び越えて行ったら良いんだろ?」

    ユミル「ん?」


    イー「なら、普通に飛び越えりゃ良いじゃねえか」

    ユミル「それが出来たら苦労しねえよ」



    「…トベルーラ!」




    イーが浮いた。

    いや、本当にこの一言で全てが表せる。

    後でジャンから聞いたんだけど、ルーラ系の呪文では珍しい、常時使い続けることができる呪文らしい。

    空を飛べない人は、こうやって空中戦を繰り広げるそうだ。

    …ていうか、普通の人間は空なんか飛べないよ。
  53. 53 : : 2016/05/26(木) 22:44:27
    イー「オレの魔力だけでこの人数を東の王都までつれていくとなると、大体1週間はかかる。山脈の途中途中で野宿することになるが、それでも良いか?」

    アルミン「休憩地点に着いたら一旦ルーラで別の宿泊出来るとこに行って、また翌日に休憩地点に戻るって出来ないの?」

    キドラ「ルーラっていう呪文は、その場を記憶して、また戻って来られる様にする呪文だッキーが…ちょっと難しいッキーね。その場がただの山とか、特徴のないような地点だと覚えにくいッキー」

    アルミン「…うーん、仕方ないか」

    ミカサ「…貴方に頼りっきりになってしまう、良いの?」

    イー「ああ。夜の間に進んじまおう。まあ、そこらへんはよろしく頼むぜキドラ」

    キドラ「ええー……周囲の生態系の生活が狂うッキーよ?」

    イー「少しくらい大丈夫だっての」
  54. 54 : : 2016/05/27(金) 19:07:36
    期待!
  55. 55 : : 2016/05/28(土) 19:54:21
    応援してます!
  56. 56 : : 2016/06/01(水) 03:42:11
    期待です
  57. 57 : : 2016/06/01(水) 20:04:52
    頑張ってください!
  58. 58 : : 2016/06/07(火) 12:34:20
    翌朝、中央広場……


    ジャン「…ていうかアイツこねえし!!」


    ベルトルト「キドラもいないよ…」


    翌日、僕らはユグトラシルの中央広場に集まっていた。

    とりあえずイーとキドラ以外は揃っているんだ。

    あ、そういえば…。



    アルミン「ミーナもいないな?」

    ライナー「ああ、ミーナは…」 
     




    「みいいぃぃぃんんんんんなああああぁぁぁ!!!!!」




    サシャ「あれ、走ってますよミーナ」

    ユミル「超全力疾走だな」




    ミーナ「にげにげにげにげにげにげにげにぃげええぇ!!!」



    ジャン「にげ?」



    ミーナ「逃げるよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」





    ミカサ「……は?」
  59. 59 : : 2016/06/07(火) 16:19:42
    アルミン「この国の中央広場にしては……魔物の数が少ないとは思っていたけどねえ…」  

    ユミル「おい、なんだあれ…?」


    ミーナの後ろには、数十万を越える魔物たちが走ってきている。というか、追いかけてきている。

    サシャ「そういえばこの国には、この国を出ていく者にふるいをかけるなんていう暗黙の了解があるらしいですね」

    ユミル「それが追いかけ回すことなのか?」

    サシャ「捕まったらアウトですね!」



    ミーナ「早く出るよ!!イーはどこ?!」


    ミカサ「まだ来てない…!」

    アルミン「こっちからイーの所に行こう!!」
  60. 60 : : 2016/06/12(日) 12:50:50
    「待てやミーナぁ!!」

    「行かないでくれ歌姫ぇ~!!」

    「空を飛べる奴は先回りしとけ!!」



    追いかけてきている魔物たちは口々に好き勝手を言ってくれている。


    ジャン「おい、アイツら呪文とか技とか使おうとしてるぞ!!」

    ミーナ「反撃しちゃダメよ!」

    ジャン「何でだよ!?」

    ミーナ「そういうルールだもん!それに…」


    一瞬、躊躇したかのように見えたミーナだったけど、それでも彼女は言い切った。


    ミーナ「皆、人間じゃないけど…それでも大好きだから。たったの三ヶ月だけだけど、楽しかったのよ!!」




    アルミン「…だってさ」

    ジャン「…ちっ、仕方ねえか」



  61. 61 : : 2016/06/12(日) 12:51:11
    キドラ「! イー!」

    イー「おう、こっちも準備できたぞ」

    キドラ「モノは!?」

    イー「この絨毯だ、手伝え!」







    ユミル「おい、アイツらだ!」

    サシャ「なんですかねあれ!?」



    アルミン「イーたちまであと300mってところかな!急ご…」




    「いや、そうは問屋が下ろさんよ」




    大きな着地の音が聞こえると共に、目の前にバズズが立ちふさがった。

    この国の案内から宴まで、何から何まで施してくれて時とは違う、凶悪な魔力を身から放出して。





    ベルトルト「前門の虎、後門の狼か…」


    サシャ「どっちもヘビーですね…!」
  62. 62 : : 2016/06/12(日) 12:52:20
    バズズ「どうしたミーナ、そんなに萎縮して!」


    ミーナ「うぅっ……!ど、退いてよバズズ!私は行かなきゃいけないの!!」


    バズズ「ふん……世の中が全てお前の思い通りに行くとでも思っているのか?笑わせるな」

    バズズ「ここでお前の力を見せろ!それが出来なければ、到底エレンやクリスタ等といった、世界の犠牲者たちを救うなど出来ぬ!!」

    ミーナ「…!」


    バズズ「もしお前の仲間が全て倒れたらどうする!お前だけが頼りとなったらどうする!!その時は、今この瞬間の様に敵に助力を請うのか!!」


    バズズ「ミーナ……世界は貴様に優しくはないぞ!!」




    ミーナ「バズズ…」




    ミーナ「…皆、お願いがあるの」

    鞭を二本も手に取ったミーナは、こちらを振り向かなかった。



    ミカサ「…何?」


    ミーナ「後ろの魔物たちを足止めして。30秒で良いから」

  63. 63 : : 2016/06/12(日) 12:52:32
    サシャ「…意外、ですね」

    ユミル「ああ、意外だ」

    ミカサ「ここで私たちに逃げてと言わないとは…意外」



    アルミン「そこなの?」


    ユミル「そりゃそうだろ。クリスタの次に自分がねえのはアイツだぞ、間違いなく」

    そのユミルの一言に、男子勢は顔を見合わせる。

    ミーナは天真爛漫、お転婆といった特徴が挙がる、元気で可憐な一人の少女だった。

    正直な所、訓練兵なんかやるより、どこかの店の看板娘をやっている方が余程似合うだろうという見解がマジョリティだった。

    しかし、それは男子の中だけだったのかもしれない。

    女子たちの中では、寧ろマイノリティであったのかもしれない…。



    ミカサ「いつも誰かの傍にいて、その場の雰囲気に合わせて…」

    ユミル「一人で過ごすことはなく、まるで女版の劣化ベルトルさんだったよ」

    サシャ「そんなミーナが、誰かの為ではなく、自分の為に私たちに頼ってくれた」



    サシャ「ここで動かなければ、友達ではありません!」

    サシャ「アルミン、知恵を!皆さんも、力を貸してください!!」
  64. 64 : : 2016/06/19(日) 20:26:00
    ジャン「つっても…どうするんだ!?」

    アルミン「…」


    ミーナの目の前にいるのは、魔神に肉薄したイーや、正しく魔族代表みたいなイシュダルと同格と思われる元三将のバズズだ。

    どう凌ぐ気なんだ、ミーナ…!



    アルミン「けど、その前にこっちだね!ライナー!ベルトルト!」


    ライナー「おう!」

    ベルトルト「大丈夫。…砂塵の槍よ、散らせ!」

    ライナーが斧で地盤を砕き、ベルトルトがその近くに砂塵の槍を突き刺す。

    砂塵の槍は、突き刺された地面から僕たちと魔物たちの間を遮るように砂煙を巻き起こす。
  65. 65 : : 2016/06/19(日) 20:26:12
    「うおおお、前が見えねえ!!」

    「後方止まれ止まれぇー!!」



    なんだ、てっきりドミノ倒しみたいになると思ったんだけど、ちゃんと止まれてるよ。

    けど、流石にあの数じゃあね。

    あんな大軍が急ブレーキをかけたら流石に混乱が生じて止まる。

    僕たち…というより、ライナーとベルトルトだけど、たった少し視界を妨害するだけで簡単に軍勢を止めることができた。

    まあ、要は使い様だね。


    ミカサ「…なにもしてない」

    ユミル「良いんだよこれで。出来る奴にやらせておけば」

    サシャ「いや、それよりもミーナは…!」
  66. 66 : : 2016/06/19(日) 20:26:37
    「やああ!!」



    ミーナは徐に鞭を振るう。

    ミーナ・カロライナは普段は歌と躍りのみで戦闘というものを切り抜ける。

    そのミーナが鞭を振るったということは、明確な敵意を示したということだった。

    まず、その事自体にバズズは驚いていた。


    (まさか脅しとはいえ、攻撃してくるとは…)


    最初に鞭を己の武器として選んだのはミーナだったが、その後戦い方を教えたのはバズズだった。

    …故に、勿論鞭の先がバズズではなく、地面にあることに気づいていた。





    …が。



    「地這い大蛇!!」


    「!?」



    彼女は覚悟を決めていた。

    既に、これからは魔物たちと暮らすのだと思い込んでいた彼女の目の前に、かつての仲間たちが現れた。

    その時から既に出来ていたのだ。

    何をしてでも、かつての仲間全員と共に、元の世界へ帰るのだと――――――――――。
  67. 67 : : 2016/06/19(日) 20:34:25
    「ちいっ!!」


    バズズは咄嗟に跳んだ。

    自らの足元に岩の大蛇が出てくることが予見できていたのだ。

    だが、それだけでは足りないとスカラを唱える。

    そして、更に跳躍したままミーナの方を見やる。


    彼女は先程、二本の鞭を出していた。

    ならば、もう一本の鞭で追撃を図る筈。



    …それが誤算だった。
  68. 68 : : 2016/06/19(日) 20:44:34
    「何!?」


    ミーナはバズズを見てはいた。

    だが、もう一本の鞭は少しも動いていなかった。

    同時に、その瞬間にミーナは確信した。



    「…やたっ!」


    ニヒッと、可愛らしい笑顔でつぶやいた言葉に、バズズは目の前の少女がミーナ・カロライナであることを思い出した。



    (そうだ)

    (こいつが、世話になった者に攻撃するなど、出来るわけないじゃないか)



    そう思った時には、バズズは岩の大蛇に巻き付かれ、身じろぎすらもできなくなっていた。
  69. 69 : : 2016/06/19(日) 21:43:18
    (罠はいくつあった?3,4…?)


    優しい筈のミーナが攻撃してきたこと。

    その攻撃先はバズズではなく、地面であったこと。

    脅しかと思わせ、間接的に攻撃してきたこと。

    もう一本の鞭を掲げ、ミーナに第二波があると示してきたこと。

    その一連の行動が、ミーナは優しいという固定観念をバズズに捨てさせたこと。


    「…見事と言わざるを得んな。しかし、こんなことを良く思いつくものだ」

    「今日、バズズがが私の前に立ちはだかるのは分かっていたもの。いつも相手を疑う様にしてるバズズなら、ひっかかってくれるって思ったの」

    「ひっかかってくれる、か…」

    「…」


  70. 70 : : 2016/06/19(日) 22:18:51
    Armin side …




    ミーナ「みんな!!ありがと、もう大丈夫!」


    ライナー「うむ、急ぐぞ!」

    アルミン「イーたちはすぐそこだ、早く合流しよう!」


    よかった、ミーナが無事で。けど、ただ技を放っただけに見えたんだけど…。何か特別なことをしたんだろうか?




    ミーナ「ありがとう…」


    バズズ「…」




    ミーナがバズズとすれ違いざまに放った一言を、僕らは笑顔で聞き過ごした。
  71. 71 : : 2016/06/19(日) 22:53:27
    キドラ「こっちだッキー!!急いで!」


    それなりに焦った様子のキドラが、こちらに向かって翼をバタバタさせている。

    まあ、僕らの後方の魔物の軍勢が追いかける姿を見れば誰でもこうなるか。


    イー「うわぁ、祭りみてぇ」


    …違った、ここに例外が居た。


    キドラ「そんなこと言ってる場合じゃなくて、さっさとする!」

    イー「いや、終わった。長居は無用だ、行くぞ」


    そう告げながら、イーは綺麗な文様の絨毯を地面に敷く。

    …って、絨毯?

  72. 72 : : 2016/06/19(日) 23:13:48
    ユミル「絨毯?」

    ライナー「何のつもりだ?」


    イー「見ての通り……こいつで空を飛ぶのさ!」


    「ぬわんだとおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


    イーの発言に驚こうとしたら、隣から絶叫があがって何も言えなかった。

    ちょ、本当に驚いたんだけど!


    ジャン「どうなってんだこの野郎!!それ、マジモンのレジェンドアイテムじゃねぇか!!」

    イー「ちげーよパチモンだ。今から作るんだからな…。乗れ!!」



    サシャ「え!?」

    キドラ「早く!」

    サシャ「な、なんですか、何なんですかキドちゃん!?」
  73. 73 : : 2016/06/19(日) 23:54:43
    全員が絨毯に踏み入れると、イーは手をかざし、キドラは注意喚起を行う。

    キドラ「全員、乗ったッキーね!?言っとくけど、上空三千メートルからスカイダイブしたくなかったら、絨毯から身を乗り出しちゃダメだッキーよ!」


    ライナー「…これ、本当に飛ぶのか?」

    キドラ「黙って見てるッキー!」

    ミーナ「あ、皆にまだお礼言ってないんだけど…」

    キドラ「そんなこと言ってる場合かー!!」


    …もしもしキドラさん、語尾がなくなりましたよ?



    イー「行くぜ、あの空の彼方まで!」





    「トベルーラ!!!」




  74. 74 : : 2016/06/19(日) 23:55:00
    …彼の言葉で、僕たちは久しぶりに空を飛んだ。


    しかも、立体起動装置の範囲の数十メートルなんて高さどころか、ウォール・ローゼの高さすらものともしない………そう、鳥たちの世界だ!




    …エレン、君は今この瞬間、僕たちのことを見守ってくれているのだろうか?

    羨ましいだろう?


    下方に魔物たちの姿が見える。
    大小種族形が様々だ。

    国を越えたら、山脈が見える。

    もう少ししたら、世界樹を見下ろしたり、山脈の向こう側まで見通せたりするようになるだろう。

    この景色を、君にも見せてあげたい。

    僕たちはこんなにも自由なんだと感じずにはいられない、景色を――――――――――――!




    ミカサ「アルミン!」

    アルミン「うん!」



    「行こう!!誰一人欠けずに帰る為に!!!!」






    待っていてくれ、エレン!

    あと少しだ!!
  75. 75 : : 2016/06/20(月) 07:03:11
    Bazz side …


    「あ、あいつら…空を飛びやがった…」

    「おい、あれ魔法の絨毯じゃねえか?」

    「かつて二つの世界を飛び回ったっていう夢見の勇者が使ってたとかいうレジェンドアイテムか!」

    「すげえなおい、模造品を造っちまったぞ!」

    「…で、追うのか?空を飛べる魔物に追ってもらうか」




    バズズ「いや、もう良い…」


    「バズズ!」

    「あんた、もう動けるのか…」


    バズズ「ミーナは十分に成果を示した。もう良いだろう、見送ってやれ」


  76. 76 : : 2016/06/20(月) 14:21:28
    Armin side …


    サシャ「んー!」

    ライナー「いやぁ、中々快適だなこれは」


    サシャやライナーのみならず、皆寛いでるようだ。
    現在、僕たちは世界樹の枝葉の下あたりを飛んでいる。

    もう少ししたら、世界樹も越えるだろう。


    イー「なんだお前ら、怖くないのか?」

    ユミル「こんな高さは初めてだが、よく空は飛んでたからな」

    イー「なんだそりゃ」


    確かに普通の人は空なんか飛ばないから、イーの感想は正しいといえば正しいんだけど。

    でも彼は普通じゃないし。



    ミーナ「…」


    ベルトルト「…ミーナ、大丈夫?」

    ミーナ「ん?うん、だいじょぶだいじょぶ」

    ミーナ「別にバズズを攻撃したこととか気にしてないし」

    ベルトルト「気にしてるんじゃないか…」



    ジャン「そんな気になるんなら声かけてやれよ。何か集まってんぞ?」


    ミーナ「え!?」
  77. 77 : : 2016/06/20(月) 14:28:50
    『ミーナーーーーーーー!!!!!』



    ミーナ「あ…」




    「元気でやれよぉ!!?」

    「お前なら外の世界でも生きていける!!!」

    「ミーナ!!仕事手伝ってくれてサンキュー!!!」

    「歌をありがとおおおぉぉぉ!!!!」

    「楽しかったぞー!!!」

    「てめえらミーナを絶対守れよぉぉぉ!!!」

    「人間たちに栄光あれー!!!」

    「仮面の男ぉ!!バトルマスター!!お前らも最高だったぜぇぇぇ!!!」
  78. 78 : : 2016/06/20(月) 14:36:56

    まるで、地面が沸いているようだった。

    下の魔物たちは、誰しもが餞別の言葉を挙げている。

    彼らを見ていると、人間と魔物が争っているのが馬鹿馬鹿しく思えてくる程だった。




    ミーナ「みんな…。何よ、もう…!」



    ライナー「ははっ」

    サシャ「やっぱり、愛されてますね!」




    バズズ「ミーナ!!!!」



    ミーナ「バズズ…」



    バズズ「信じるな!!!」


    ミーナ「え?」
  79. 79 : : 2016/06/20(月) 14:42:43
    バズズ「疑え、何もかもを!!お前の目の前にいる相手が本当にその姿が真であるかを!!悪は本当に悪なのかを!!」

    バズズ「世界はお前に優しくない!!お前が生き残る為に疑うのだ!!!」



    ミーナ「っ!」




    …バズズが言うことは正しい。

    世の中、善人なんて一握りしかいないだろう。

    それは、人間であれ魔物であれ同じこと。

    笑顔で近づいてきた相手が、いきなり武器を振りかざしてきても、それは騙された本人が悪いのだ。



    …けど。



    ミーナ「それでも、私は!!」



    バズズ「だが!!」


    ミーナ「はい?」




    バズズ「…お前は正しい!」
  80. 80 : : 2016/06/20(月) 15:20:32
    バズズ「世界がお前を疑うというならばお前が世界を信じてやれ!!世界がお前に優しくないというならばお前が世界に優しくしてやれ!!!」


    バズズ「オレはかつて疑って疑って、疑い抜いて失敗した!!ならばオレは間違っていたということだ!!」


    バズズ「自分の信念を信じろ!!!さすれば全てはお前の望むままだ!!!」




    ミーナ「…」



    「何よ、本当に」


    「素直じゃない奴…」


    涙を流し続けている歌姫は立った。


    その涙は、太陽に当てられて、虹色に光る。

    虹の宝石を添えられた彼女は、笑った。







    「みんなぁ!!!!行ってきます!!!!!」
  81. 81 : : 2016/06/20(月) 15:26:01
    「バズズー!!!また来るからねー!!!」




    バズズ「…ふん」




    「だいすきーーーー!!!!!」



    バズズ「…」




    ユグドラシル『娘が旅立つ父親ですか、貴方は』


    バズズ「…ユグドラシル」


    ユグドラシル『はい?』


    バズズ「オレに、ミーナのような娘が居たら……」


    ユグドラシル『…』


    バズズ「…いや。何でもない」


    ユグドラシル『そうですか』


    バズズ「お前も最後くらい顔を見せてやったらどうだ」


    ユグドラシル『そうですね、そうしましょう』
  82. 82 : : 2016/06/20(月) 15:30:54
    アルミン「バズズ、良い人…じゃなかった、良い魔物だね」

    ミーナ「何だかんだあまいんだから!」

    サシャ「いや、娘の父親なんてそんなものですよ!ソースは私です!」

    ミカサ「ソース?」



    イー「あれがオレの前任ね…」

    ダークドレアム「奴があそこまで心を見せるのは珍しいことだ、勘違いはしてやるな」

    イー「ああそう。………あ?」

    ダークドレアム「一日振りだな」

    イー「てめえ!!!…あり?」

  83. 83 : : 2016/06/20(月) 15:41:49
    E side …


    アルミン「えっと…どうしたの?」


    イー「な、なんでもない」


    やべ、今のクソ恥ずかしい。

    ダークドレアムの野郎、自分の声だけをオレに飛ばしてやがる。ホント化け物だな、なんでもありかよ。


    ダークドレアム「ククッ、滑稽だな」

    イー「うっせ、何の用だ」


    ベルトルト「何か一人言始めたよ?」

    キドラ「いや、あれは一方的なテレパシーだッキーね」

    ジャン「なんだ、頭壊れたのかと思った」



    ダークドレアム「なに、餞別の言葉でもやろうかとな」

    イー「じゃあもういいな。帰れ」

    ダークドレアム「…そやつらといて、お前は目的を果たせるのか?」

    イー「…」
  84. 84 : : 2016/06/20(月) 15:48:40
    昨日、イーの部屋にて…



    イー『…お前の言いたいことはわかったよ』

    ユミル『! じゃあ…!』

    イー『けど、証拠はねえ。オレとそのエレンってのがただのそっくりな他人の関係にある可能性は否定できねえだろう?』

    ユミル『まあ、それはそうだけどよ…』

    イー『確証もねえのに、魔王軍を抜けてお前らに味方するなんてのは出来ねえ』

    ユミル『けど、時期は重なってる!それに、お前の行動にはエレンの野郎がダブるんだよ!!』

    イー『お前が、お前らが嘘をついてる可能性だってある。魔王軍の三将を務めるオレを騙そうなんて、十分有り得るぞ』

    ユミル『!!』
  85. 85 : : 2016/06/20(月) 15:54:33
    イー『まあ、嘘ではないってのは、お前らを見てりゃわかるけどな…』

    ユミル『え? そ、そうか…』

    イー『けどなあ……エレンって奴は死んでるんだろ?なのにオレは生きてるんだ。ちょっと無理があると思うぞ』

    ユミル『…はあ、それなんだよなぁ…』


    ガチャ


    キドラ『うーい』

    イー『うーい』

    ユミル『ん? ああ、お前ら知り合いなんだっけか』

    キドラ『おいらが部下で』

    イー『オレが上司』
  86. 86 : : 2016/06/20(月) 18:20:36
    ユミル((そういやキドラってどうやってドアを開けてるんだ?体当たり?))

    キドラ『ユミル、良い返事はもらえたッキーか?』

    ユミル『なっ、知ってたのか!?』

    キドラ『そりゃ、見てればなんとなくッキー』

    ユミル『こいつ、ドラキーだよな一応』

    イー『軍人なんてそんなものだぜ』


    キドラ『んー…そうだッキーね…。じゃあ、期間限定でならどうだッキー?』


    イー『オレは人気商品の安売りか』

    ユミル『よく知ってるなそんなこと。…つまり、何日間かだけ共に過ごそうってか』


    キドラ『それで実際に確かめてみれば良いッキー。イーが本当にお前たちの仲間かどうかを…』


  87. 87 : : 2016/06/20(月) 21:09:57
    キドラ『しかし、ちゃんとイーにもメリットはある』

    イー『お、なんだ?』

    キドラ『まず1つ、見たかったんだろうッキー?』

    イー『…何を?』


    キドラ『自分と同じ種族をだッキーよ』

    イー『おいおい…お前本当にただのドラキーだよな?』

    ユミル『自称最強のドラキーだってよ』

    キドラ『間違ってないから自称なんて言葉つけなくてけっこーだッキーよ』


    イー『まあそれは知ってるが…』


    キドラ『そして二つ目。まあ、これが最大の理由だッキーね』


    キドラ『自分の過去を…知ることができるかもしれないッキーよ』


    イー『!!!』
  88. 88 : : 2016/06/26(日) 21:16:27
    現在…。


    イー「…そんな未来のことなんて、オレが知るかよ。ただ、楽しそうだと思っただけさ」

    ダークドレアム「嘘がへたくそだな。貴様はそんな理由で行動する人間には見えん」

    イー「オレのなにがわかんだよ」

    ダークドレアム「わからんとも。だが、推測は出来る。貴様はよく似てるよ。かつての私にな…」

    イー「…」


    イー「帰りなクソ魔神。魔神になんざなる気はねぇ」

    ダークドレアム「うむ。気が向いたらまた来い」


    イー「…二度と来るかよ、バカ野郎」






    ダークドレアム(…私が誘ったのはイーという男に憑依したエレンという男であって、奴ではない。それが何故、奴がそのことを知っているのだ?誰かから聞いたのか?それとも…)

    ダークドレアム(…所詮、推測でしかない。結論は出せんし、出そうとも思わん)

    ダークドレアム(次の奴らの目的地は東の王都。途中に竜の巣があるな)

    ダークドレアム(竜族がどう奴らに関わるか、楽しみだ…)
  89. 89 : : 2016/06/26(日) 21:58:36
    ユグドラシル『…役割を担う者たちよ』


    サシャ「わひゃ!!」

    ライナー「何だこの声は!?何というか、身体の芯にまで響くような声とういか…」

    ミーナ「ユグドラシル様だ!」

    ユミル「闘技場の時の声の奴か」


    イー「…役割を担う者?…オレもか?」



    ユグドラシル『貴方たちの未来を案じ、道を示しましょう』


    アルミン「未来??」



    ユグドラシル『聞きたくなければ耳を閉じていただければ結構ですよ?』


    アルミン「いや、有り難い申し出です。是非ともお願いしたいくらいですね」

    ジャン「オレたちには情報が足りなすぎる。案じてくれるってんならいくらでも案じてくれや」
  90. 90 : : 2016/06/26(日) 22:39:33
    ユグドラシル『では、一人ずつ告げていきましょう』



    ユグドラシル『アルミン・アルレルト。貴方は未だに試練を越えていません。そう遠くないうちに、雲を越えし天啓の場にてその時を迎えるでしょう』

    アルミン「試練…ですか」

    ユグドラシル『ライナー・ブラウン。貴方は今抱える問題の大部分は、自分で解決するでしょう。ただ、そのあと最後の詰めを解決してもらうにはある人物たちが必要です。しかし、その中の一人には答えてもらえないかもしれません』

    ライナー「…」

    ユグドラシル『ユミル。貴女は貴女の想いを信じているのでしょう。しかし、それが時には貴女の仲間を傷つけてしまうことになるかもしれません。その時、貴女が仲間を傷つけてでも真実を伝えるか、仲間を守る為に嘘を吐くか、考えておいてください』

    ユミル(…それ、ここでそれを言っちまったら真実なんてばれちまうんじゃねぇか?)

    ユグドラシル『ミカサ・アッカーマン。貴女はすぐに一つの出会いを果たします。ただ、その時に全てが解決するというわけではなさそうです。そして、本当に道に迷うことがあれば、自分の後ろ、または横を見なさい。きっと助力をしてくれる友がいます』

    ミカサ(…すぐ?東の王都で、ということ?)
  91. 91 : : 2016/06/26(日) 23:43:33
    ユグドラシル『ジャン・キルシュタイン。貴方もまた、自分の中に葛藤を抱えていますね。それは、貴方の弱さからくるものだと自覚しているかもしれません。しかし、本当にそれが是であり正であるのか、一考してみませんか?』

    ジャン「なんでオレだけ疑問形なんだよ…」

    ユグドラシル『サシャ・ブラウス。貴女は貴女が思うよりも精神的に強いです。その迷いの無さが仲間を導きます。しかし、いずれ貴女でも迷う時が来るでしょう。その時こそ、貴女の先導者に気がつける筈です。…今は傍にはいないようですが』

    サシャ「…えーっと、全然わかんないです」

    ユグドラシル『ベルトルト・フーバー。貴方は既に一つの答えを出しています。折り合いも、自分の中ではつけられているのでしょう。しかし、その問題に対して全く同じ答えを他の回答者が出せるとは限りません。その時は、自らの意志だけではなく、他者の意志も尊重しなさい』

    ベルトルト「要するに、初心を忘れるなということですか」

    ユグドラシル『ミーナ・カロライナ。貴女も動機は別として、ジャンと同様に自分の力の無さを嘆くでしょう。しかし、力こそが全てではないということを分かっている筈です。バズズの言ったことを忘れずに、それさえ出来れば問題はないでしょう』

    ミーナ「はーい」

    キドラ「軽いッキーね。…ところで、オイラとイーには何もないッキーか?」

    ユグドラシル『イーには言うつもりでしたが…。分かりました、貴女にも告げましょう』

    ユグドラシル『キドラ。貴女が守る場所はいずれ無くなるものです。貴女もそれに薄々気づいてはいるのでしょう。しかし、その後を貴女がどう選択するかによって、世界は変わります。その前に、貴女の生死に関わる取捨選択があるのも知っておくべきでしょう』

    キドラ「…ついでの割にはけっこうでかい予言だッキーね!」

    ユグドラシル『そして、イー。貴方はいつか、大きな過ちを犯させられます。それに対する償いを、命を以て行うか、仲間たちとともに行うかで、その後の貴方の運命は大きく変わります。もしかしたら、その記憶を取り戻せたとしても、元の日常には戻れないかもしれません』

    イー(…過ちを、させられるのか?自分でするんじゃなくて?そんなこと出来る奴は限られてる。…つまり…)
  92. 92 : : 2016/06/26(日) 23:52:21
    ユグドラシル『最後にもう一つ。キドラとイー以外の全員は、共通の選択を迫られます。そのときこそ、貴方たちはおろか、この世界、ひいては貴方たちの世界の命運をも左右するほどの選択をする時です』


    アルミン「!!」

    ミカサ「私たちの…世界…?」

    ベルトルト「僕たちが元居た世界のことまでってことなのか!?」

    イー「え、お前ら異世界人なの?」


    ユグドラシル『皆、今は分からないことだらけでしょう。しかし、いつかはその時が来るということを忘れないでください。これは、一人の老人からの助言です』


    その時、大気が揺れていくのを僕たちは感じ取った。

    まるでダークドレアムが登場した時みたいだったが、少々違う。

    雰囲気としては真逆のものと言えるほど、温かいものを感じることができ、この先を案じていた僕たちはその暖かさに安心した。
  93. 93 : : 2016/06/27(月) 00:05:59
    ジャン「お、おい!下だ、下を見ろ!!」

    サシャ「す、すごい…!本当にすごいですよ!」


    二人の言葉に、僕たちは既に世界樹の上へと達した場から絨毯の下を見下ろす。

    すると、風に揺られたどころの揺れではないくらいに動く世界樹の葉や枝が目に入った。

    風どころか、どうやら幹から動いているようだ。そこでようやくこのユグドラシルの国の全容に気が付いた。

    山々に囲まれた巨大な盆地に、その場を覆う程の世界樹が根付いている。

    その盆地が、今まさに、顔を見せた…!
               ・・・・・



    ユミル「…!!!で、でかすぎるだろ…!!!」

    ジャン「あ、あいつ…!ユグドラシルなんて名前じゃねえ、エグドラシルだ!!!史上最大の魔物、世界樹の化身…!!!」

    キドラ「も、もしかして…一匹の魔物の上に、国があるってことッキーか!!!?」



    ミーナ「…ははっ!!初めて、ユグドラシル様の顔が見られた…!」







    「ウヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」







    『行ってらっしゃいミーナ。我が娘よ』


    『魔物の国ユグドラシルは、貴女とその仲間を、いつでも歓迎します』


    『探し追い求める者たちに祝福を――――――――――――――――!!!』
  94. 94 : : 2016/06/27(月) 00:27:24
    [アルミン・アルレルト] Job:僧侶
    E:裁きの杖 E:甲羅の盾 E:絹のローブ
    E:神官のタイツ E:素敵なサボ E:麻のマント
    持ち物:イオの巻物

    [ライナー・ブラウン] Job:戦士
    E:鉄の斧 E:鉄の盾 E:厚手の鎧
    E:鉄の膝当て E:鉄のグリーブ
    持ち物:毒消し草,上薬草×3

    [ユミル] Job:盗賊
    E:バタフライダガー E:バタフライダガー E:ターバン
    E:旅人の服 E:忍のズボン E:木の靴
    持ち物:果物ナイフ×10,薬草×10,世界樹の葉

    [ミカサ・アッカーマン] Job:バトルマスター
    E:鉄の剣 E:鉄の剣 E:エレンのマフラー
    E:絹のローブ E:ガーターベルト E:ハイヒール
    持ち物:イーの想い出の鈴(輝いている)

    [ジャン・キルシュタイン] Job:魔法剣士(魔法戦士)
    E:魔剣士のレイピア E:銀のリスト
    E:鎖かたびら E:鉄の膝当て E:ウエスタンブーツ
    E:破幻のリング
    持ち物:魔物図鑑,装備道具全集

    [サシャ・ブラウス] Job:狩人
    E:狩人の弓 E:旅人の手袋
    E:うさみみバンド E:かくれみの服
    E:ニーソックス E:素敵なサボ E:疾風のリング

    [ベルトルト・フーバー] Job:パラディン
    E:砂塵の槍 E:鉄の籠手
    E:スライムの冠 E:ホーリーチェイン
    E:レッドタイツ E:安全靴 E:守りのルビー

    [ミーナ・カロライナ] Job:吟遊詩人?
    E:蛇革の鞭 E:蛇革の鞭 E:真紅のグローブ
    E:踊り子のドレス E:ブルーガード
    E:イけてるミュール E:スライムピアス

    【キドラ】 Job:ドラキー
    E:スーパーリング
    持ち物:悪魔の手鏡(通信用),魔王軍の紋章

    【イ-】 Job:魔剣士
    E:雷鳴の剣 E:ソードブレイカー
    E:ミドルガントレット E:鉄仮面 E:シルバーマント
    E:鉄壁のレギンス E:ビーナスの涙

    【袋】
    訓練兵団制服セット×8


    【北の大陸の行方不明者】
    ・アニ・レオンハート    ・コニー・スプリンガー

    【東の大陸の行方不明者】
    ・マルコ・ボッド

    【死亡(推定。エレンのみ幽霊確認)】
    ・エレン・イェーガー(イーに憑依した際に会話。その後の幽体の行方は不明)
    ・クリスタ・レンズ
  95. 95 : : 2016/07/04(月) 01:04:35
    かつて、とある時代のこの世界では人と動植物しか生物が存在しなかった。
    魔物?そんなもん、影も形もなかったらしい。

    だが、平和が保たれていたある日、かつての西の王都に、次元の扉か現れたんだ。
    その時に、その場に居た人々は何人かが吸い込まれちまった。そこではなんとか扉を抑えられたものの、その時から世界に異変が起き始めた。
    …そう、魔物だ。
    伝承でしかその存在を認められていなかった魔物が現れ、世界は混沌に陥った。そんな中、我こそが魔王だと名乗り上げた奴がいた。それが今の大魔王デスタムーアだ。



    イー「んでなんやかんやあって今に至る。OK?」

    ジャン「なわけあるか!!」

    ユミル「暇だからこの世界について説明してやるとか言ったくせに具体性なしじゃねえか!!」
  96. 96 : : 2016/07/07(木) 23:01:37
    期待!!
  97. 97 : : 2016/07/31(日) 06:56:24
    このSSとても面白いんで、放置はしないでください

    http://www.ssnote.net/archives/33754
  98. 98 : : 2016/08/01(月) 14:39:35
    イー「そんなこと言われてもな…。大体、オレだって魔王軍に参加したのはここ最近なんだ」

    ジャン「ここ最近つっても…その前は違うだろ。…ってあれか、記憶喪失なんだっけ?」

    イー「正確には違う。消されたんだ、自分で無くしたわけじゃねぇ」

    ジャン「いるかそんな奴」


    キドラ「どっちにしろ、デスタムーア様がどこから来たかなんてわからないことだッキーよ。後から生まれたオイラたちにとっては」

    ユミル「戦争ってのはどのくらいつづいてるんだ?」

    キドラ「んー…。その質問にも答えかねるッキーね。今が戦争状態って言っていいのかよくわからないッキー。まあ、数年前に比べたら確かに魔王軍は活発的といえば活発的だッキーけど」

    アルミン「へー。なんで?」

    キドラ「…思えば、イーが軍に合流してからだッキーね」

    イー「ああそうだキドラ。オレってどこから来たんだ?教えてくれよ」

    キドラ「オイラがお前に会ったのはお前の魔王軍加入直後だッキーよ?知るわけないッキー」

  99. 99 : : 2016/08/01(月) 14:48:05
    サシャ「なんだか、難しそうな話してますねーあちらの皆さん」

    ベルトルト「え…そう?」

    サシャ「しかしなんだって記憶なんてなくすんでしょうね?不思議で仕方がありません」

    ベルトルト「サシャ、もうちょっと人の話を理解した方が良いよ」

    ミーナ「サシャにそんなこと期待しても無駄無駄。むしろその方がサシャらしいって」



    ミカサ「…」
  100. 100 : : 2016/08/02(火) 10:04:39
    Mikasa side …

    魔物の国ユグドラシルを出発してから三日が経った。

    魔法の絨毯の上は中々快適で、外部からの力を受けない限り落ちることはないらしい。それがトベルーラの本質だと言われたが、呪文にはかかわってないのでよくわからなかった。

    この旅では夜に移動するのは危ないらしく、昼間に移動している。それでも距離を稼げないと思ったらキドラがなんとかすると言っていたが…何をするのだろうか。するならさっさとしてほしい。

    …。

    …。

    …。

    …エレンの言葉が、未だに脳裏に焼きついている。


    『諦めない限り、その目標への道は……絶対に途切れねぇ』


    それはその通りだとは思う。けど、まだエレンが生きているという確証がない。

    恐らく、この世界でそれなりに長く過ごしていたはず。あんなに強かったのだから、それは間違いない。…が、そこからの手がかりがない。強いて言うなら、北の大陸に居ると言われているアニくらいだ。そのアニもマルコの後に探しに行くことになっている為、まだ先。

    …正直、焦るばかり。特に期限があるわけでもないのに、この焦燥感はなんだろうか。

  101. 101 : : 2016/08/02(火) 10:39:01
    ミカサ(それに、エレンが生きているとなると、説明のつかないことも出てくる)


    ライナー「…おい、何か今聞こえなかったか?」

    ジャン「え?」

    サシャ「…!」


    ミカサ(それはエレンの幽霊の存在。あれがエレンの何かなのは間違いない)


    キドラ「イー!今のって」

    イー「呪文詠唱だ!!全員身を守れ!!」



    ジャン「おいミカサぁ!!前、前!!!」




    ミカサ「あ」


    よく見たら目の前に魔法弾が迫っていた。

    ダメだ、考え事は性に合わないようだ。

    とりあえず避けよう。


    ミカサ「鬱陶しい」


    ジャン「な」

    ジャン(あの至近距離でも避けられるのかよ!!)



    ユミル「!!」

    イー「馬鹿野郎!!!」
  102. 102 : : 2016/08/02(火) 10:48:21
    ドンッという後ろから衝撃が来たと思ったら、身体が光り始めた。

    …おかしい。ちゃんと弾は避けた筈。


    ユミル「追尾弾か!!」

    ベルトルト(しかもミカサをロックオンしていた?ミカサが狙われているのか!?)


    追尾弾…。これだから呪文は苦手。
    …なんだか身体が浮いている感じがする。
    どこかへ飛ばされる?

    アルミン「ミカサ!!」

    ジャン「おい、浮いてるぞお前!!」

    サシャ「皆さん下もピンチです!!」

    キドラ「今度は何だッキー!!」



    イー「行かせるかよ!!!」


    イーがこちらに手を伸ばしている。

    その手を掴もうとした瞬間、私の視界は急激に変化していった…。
  103. 103 : : 2016/08/20(土) 01:16:15
    面白いです!また更新お願いします
  104. 104 : : 2016/08/23(火) 03:20:48
    期待!
  105. 105 : : 2016/08/23(火) 14:15:06
    ミカサにはエレンの事をずっと好きであってホスィ
    ジャンには悪いけど…
  106. 106 : : 2016/08/24(水) 02:41:49
    期待!楽しすぎる
    続き待ってます!
    これ漫画化しねぇかな
  107. 107 : : 2016/08/24(水) 17:28:25
    期待!
  108. 108 : : 2016/08/27(土) 01:41:34
    続きを待っております
  109. 109 : : 2016/08/28(日) 12:15:11
    「ここは…?」

    周りはただの岩場であるようだ。自分の他に誰かいる様子もない。どうやら、どこかへ飛ばされたらしい。先程の呪文はルーラ系の呪文だったのか。

    皆がいない。皆から遠ざかっていくときに、たくさんの影を見たが、あれはなんだったんだろうか。
    何にせよ、私たちは攻撃を受けた。皆が危ない。早く戻らなければ。

    「どうやって戻ろう…」



    「いや、ちょっと戻るのは早いかな」
  110. 110 : : 2016/08/28(日) 12:15:34


    声が、聞こえた。

    後ろ!


    「いや、そんな慌てなくても大丈夫よ」

    「貴女は…誰!?私をここへ連れてきたのは貴女なの!?」

    「うん」

    「なっ…」

    躊躇することもなく、誤魔化すこともせずに答えた彼女に呆気にとられてしまった。

    目の前の彼女は少々厳かな姿をしている。

    年齢は私と同じくらい。
    きらびやかな紫のローブをまとい、胸元には宝珠が中央に光るネックレス。頭には頑強そうな角が二本あり、手には何かの怪獣が模された木の杖を携えている。
    …人?なのだろうか。
    角があること以外は完全に人に見える。

    「私さー、竜以外に友達いなくてさ。ちょっと人間の女の子と話してみたかったんだ。急に呼んでごめんね」

    「…りゅう?」

    「うん、竜」

    竜?
    聞きなれない単語だ。
    何かの生物であることは間違いないが。

    「見る?竜の姿。この水晶を通して見えるよ」

    水晶を手渡されて、中をのぞくと、そこには初めて見る竜の姿があった。

  111. 111 : : 2016/08/28(日) 12:44:45
    子供の頃、エレンたちにみせてもらったトカゲに爪牙と翼と角と鱗を付けたようだ。
    だが、身体の厚さが全く違う。
    トカゲは逃げる為の身体であるとするなら、竜は相手を倒す為の身体。

    一緒に映る人間と比べても相当大きい。

    …あれ?


    「…これ、ジャン?」

    「ああ、君の仲間だよ。一緒に映ってるの」

    「竜に襲わせる気!?」

    「いや。とりあえず今の所は違う。彼らが君を追わないように牽制させているんだ。まあ、あのイーって男が暴れ始めたら私が出張らなきゃいけないけど」

    「本当に私と話したいだけなの?」

    「うん」


    …信用するのは難しい。
    けれど、現状手は出せない。
    私はアルミンたちの所にすぐ戻ることはできない。

    先の水晶にはあの竜が少なくとも二十は居た。
    イーがいくら強いといっても、そんな数相手に皆を守り切れるとは思えない。

    …乗るしかない。
    私が皆を守らねば。
  112. 112 : : 2016/08/28(日) 13:13:53
    「…では、聞きたいことがあるならどうぞ」

    腹をくくろう。

    「じゃあ、世界はどのくらい広いの?」

    「…へ?」

    世界の広さ?
    いきなり何を聞き出すの、この娘。

    「ねぇ、どのくらいなの!?」

    「………ちょっと待って」

    確かアルミンが模写した世界地図があった筈。


    「はいこれ」

    「? なぁにこれ」

    「世界地図」

    「えっ、ホント!?」

    よくわからないが、余程の世間知らずらしい。
    外に出たことがないのだろうか。
    …これなら、上手くいきそうだ。
  113. 113 : : 2016/08/28(日) 13:49:50
    「ここが私たちのいる大陸」

    「えー、ちっさい!!うわ、竜の巣せま!!」

    「これが世界の全容」

    「世界って四角いの?」

    「…そう。世界は四角」

    「わー!!」

    「この四角の外に出たら、奈落へと落ちてしまう」

    「ひぃぃぃ!!」

    「この世界は四頭の象に支えられている」

    「すごい、カオスドレイクより大きい象だなんて!!」

    「更にその四頭の象はもっと大きい亀の上に乗っている」

    「えええええ!!!」

    「なんとその亀もまた亀より大きい蛇に乗っている」

    「まだ居るのー!!?」

    「その蛇はアナンタ。この世界を支えている」

    「すごい!!本当に凄いよ!!!この世界が竜の一種の蛇に支えられてるなんて!!」

    (確かこんな筈だった。昔エレンが見せてくれた『THe 昔の世界全容想像』に書いてあった)

    「ねぇ、他にも色々聞いても良い!?」

    「うん」



    …この場に正しい指導者がいない為、ミカサの間違った常識授業は続いていった…。
  114. 114 : : 2016/08/28(日) 14:26:03

    ━━━━━━━━━
    ━━━━━━━
    ━━━━━
    ━━━


    Mikasa side …


    「はー楽しかった!!ありがとね、色々教えてくれて!」

    「…うん」

    疲れた。実に色々なことを聞かれた。人間の食べ物、最近の服の傾向、竜はそこらにいるのか、最近の魔王軍の調子はどうだとか、恋をしたことがあるかだとか。…最後の質問は黙秘した。


    「じゃあ、お礼とお詫びで一つ道を示そうかな!」

    「道?」

    …あれ?これって、もしかして出会いになるの?


    ユグドラシル『ミカサ・アッカーマン。貴女はすぐに一つの出会いを果たします。ただ、その時に全てが解決するというわけではなさそうです。そして、本当に道に迷うことがあれば、自分の後ろ、または横を見なさい。きっと助力をしてくれる友がいます』


    「貴女が…?」

    「? じゃあ、言うよ」

    「ズバリ!君、諦めてるでしょ?」


    「…」


    …は?
  115. 115 : : 2016/08/28(日) 14:55:10
    「君は既に諦めているのさ!何かを望んではいるんでしょう?けど、それが手に入る確証はない。だから…」

    「馬鹿なことを言うな」

    「ん?」

    「私は諦めてなんていない!!!エレンは絶対生きている!!」

    「違うね。君は死というものがよくわかっている。死が覆ることのない生の否定だということが理解できてしまっているのさ」

    「…!!」

    「そして!そんな君にボーナスチャンス!!!」


    「は」


    「生物を生き返らせる呪文は確かにある!!」

    「!」

    「…が、肉体が崩れていたらもう無理だね!因みに肉体が誰かに保存されてる場合はノープロブレムだけど!」

    「…そう」

    それでは、もしエレンが仮に死んでいたとして、どこかの草原に肉体が放置されていたとしたら…。

    「更に更にボーナストラック!!なんと、東の王都にはあるレジェンドアイテムがございます!!その名も、時の砂!!」

    「…時の砂?」

    「生物だろうが物体だろうがなんでもござれ!!その時の砂をかけちゃえば、対象の時が戻ります!!」

    「と、時が戻る?なら、腐敗した肉体も…」

    「OK!!」
  116. 116 : : 2016/08/28(日) 15:37:59
    「残念だけど、私には君が望む者がどこにいるかはわからない。生きているかどうかもわからない。けれど、解決策は与えよう。それが貴女の道となることを祈るよ」

    「…心から感謝する。ありがとう」

    「大丈夫?もう、迷わない?」

    「え?」

    「…」

    彼女の眼は、不思議な輝きを放っていた。
    心配?懸念?
    何か違う。
    なんというか、いたずらっ子がする期待の目をしている気が…。

    「…うん。大丈夫」

    「OK!じゃ、早速戻ろうか。本当はもうちょっと話してたかったけどね」

    「うん」

    …彼女の言葉を鵜呑みにしてよかったのだろうか。
    竜は恐らく魔物だ。そして、彼女はその指揮ができるほどの人物。
    そんな彼女の言葉を、私は…。

    …もう止そう。
    魔物が全て悪であるというわけじゃない。
    キドラやイーを見て分かっている筈だ。
  117. 117 : : 2016/08/28(日) 16:14:53
    Armin side …


    アルミン「ねえ、本当に無事なんだよね!!?」

    グレイトドラゴン「無事だって言ってんだろ!」

    ブラックドラゴン「うるせえガキだ、食うぞゴラァ!」

    サシャ「ひいいいいい!!!」

    ブラックドラゴン「だぁぁ、泣くんじゃねぇ!!」

    サシャ「ギィアァァァぁぁぁぁ!!!!」

    ブラックドラゴン「だから泣くなと…おい、どうすりゃいいんだ!!?」

    キドラ「黙れば黙るッキーよ」


    イー「パピラスにアンドレアル、プテラノドン…。お、グランシーザー。レアだな。スカイドラゴン、スノードラゴンにシュプリンガー、ウィングスネーク。うわ、キングリザードまでいるぞ。下の方にはダースドラゴン、雪原竜、カオスドレイク…。ここにはドラゴン系全種がいそうだな」

    ユミル「おい、本当に大丈夫なのか!?ミカサのやつ!」

    イー「多分な。オレの記憶が正しければ、ここには顔見知りが居る筈だ。竜の巣窟みたいだし」

    ライナー「どちらにしろこの数だ。下手には動けん」

    イー「な。見ろよあいつら」

    ベルトルト「ブレスか。僕はまだフバーハは使えない。この絨毯をまるごと覆うなんてことはできないよ」

    ミーナ「魔物が力を合わせようとしてるときに敵対しない方が良いよ。魔物たちって普段は力を合わせたりはしないのにあの強さだからね」

    ジャン「ましてやドラゴン系の屈強な連中のことだ。止したほうがいいぜ。…けど、ミカサよぉ…」

    グレイトドラゴン「お待ちかねだな。来たぞ」

    ジャン「なに!?」
  118. 118 : : 2016/08/28(日) 20:28:46
    「みんな!」

    ミカサがそれなりのスピードで飛んできていていた。まさか、また魔法か。

    ていうか、ミカサを連れて行った奴はいないのかな?

    アルミン「大丈夫だったミカサ!?」

    ジャン「怪我はないか!?」

    サシャ「どこも食べられていませんか!!?」

    ミーナ「サシャ、怖い想像はやめて」


    ミカサ「…大丈夫。大丈夫だから離れて、暑い」


    どうやら無事らしい。良かった…。


    イー「…やっぱてめぇか」

    「うぃ。半年ぶりくらい?」

    ミカサ「イー、その人のことを知ってるの?」



    イー「竜王…ローラン」


    ローラン「おす」


    竜王…すごい二つ名だな。
    とてもそんな厳かな人では見えない。
    確かに格好だけならそう呼ばれていてもおかしくはない気がするけど、見た目は僕たちと変わらない女の子だ。
  119. 119 : : 2016/08/28(日) 20:29:04
    ミカサ「竜王?竜の王様?」

    ローラン「うん。ガチで偉い人」

    ジャン「竜王!!?」

    キドラ「お久しぶりでございます、竜王様」

    ローラン「おお、キドラ。おひさー」


    ジャン「ちょ、まっ………は!!!?」

    ライナー「どうしたジャン、情緒不安定だぞ」

    ユミル「いや、気持ちはわかる」

    ライナー「なに?」

    ベルトルト「…彼女は、何者なんだ?」

    ベルトルト(イーやダークドレアムみたいな威圧感じゃない。寧ろ威圧感なんて全くない。だが、僕にはわかる。この場は、彼女とイーが制そうとしている…!!)

    ユミル(この二人が鍔ぜり合う…。つまり、イーと同等の実力者であるということ)

    ミカサ(成程…。なぜ私が彼女…ローランに襲い掛かろうとしなかったかが分かった。敵いそうにないと、本能的に理解できていたということ)


    ミーナ「んで、彼女は何なの?」

    ジャン「竜王を知らないのか!!魔王の一人だぞ!!」

    ミーナ「…はい?」
  120. 120 : : 2016/08/28(日) 21:32:54
    ミーナ「えーと…。え?貴女も魔王軍なの?」

    ローラン「いや、統治に興味はないよ。私の興味は未知にのみ向けられる」


    ジャン「だが…ちょっと待て。いくら何でも変だろ。あんたはどう見ても人間だ。とても魔族には思えん」

    ローラン「君が私の愛しい人なら証拠はいくらでも見せられるのだがね…。残念」

    ジャン「はあ!!?」


    サシャ「…ジャンってこっちの世界では異様にモテますよね」

    ライナー「普段はともかく、非常時には頼りになる奴だからな。常時非常時みたいなこの状況下では魅力的に見えてもおかしくはない」

    ベルトルト「…ライナー、君までそう思ってないよね?」

    ライナー「ン?なにが?」

    ベルトルト「…いや」


    ローラン「私の背中や腕といった、身体の外側には鱗もある。見えぬかもしれないけど、尾もある。私の先祖は、人と交わってきたの。魔王はいわば生物の変種。他の生物と交わるほかに子孫を残す方法はそうないからね…」


    キドラ「大魔王デスタムーア様もですか?」

    ローラン「うん。どうするかはわからないけどね。あのじじいもそろそろいい歳だし。でも、あのじじいが人間の女に興味があるとは思えないなー。イー、君だってダークドレアムに誘われたんでしょ?」

    イー「アレはオレじゃねぇ」

    ローラン「…ああ、そうだったね。ややこしいなぁ…」

    アルミン「待ってくれ、どうして貴女はそのことを知っているんだ?」

    ローラン「世界の面白そうなことは大体見てるんだ。この水晶で」

    アルミン「…!」

    そういえば、教会でキメイラと話している時もデスタムーアがどこからか手を出してきて、キメイラは殺された。

    何もかも筒抜けということか…。
  121. 121 : : 2016/08/28(日) 22:14:21
    更新ありがとうございます!
    とても面白いです!
  122. 122 : : 2016/08/28(日) 23:11:54
    期待!
  123. 123 : : 2016/08/29(月) 19:41:31
    竜王ってカッコイイよね
  124. 124 : : 2016/08/30(火) 01:25:11
    あ、マスタードラゴン出すんですか?
  125. 125 : : 2016/08/30(火) 13:05:32
    イー「それで用事は終わったのか?」

    ライナー「用事?」

    ローラン「うん。色々教えてもらったよ」

    アルミン「ミカサ、何を教えたの?」

    ミカサ「この世界の広さとか、人々の常識とか」

    …正直な話、君が常識を語れる程常識は甘くないんだけど。エレンから得た間違った知識なんて伝えてないよね?魔王の一人に誤ちを教えただなんてただでは済みそうにない事案なんだけど。
  126. 126 : : 2016/08/30(火) 13:06:18
    ユミル「そうか。じゃあ駄賃をもらおうか」

    イー「がめついなおい」

    ユミル「貰えるものは貰うさ。それとも、魔王様ともあろうお方が、礼儀も尽くさねえってのか?」

    ブラックドラゴン「貴様…!」

    ユミル「筋違いではねえだろ」

    サシャ「ぎゃー!!ユミル、よしましょうよぉ…」

    ミーナ「盗賊らしい潔さね…。サシャ、泣いてもダメだよあれじゃ。逆に食べられるよ?」

    サシャ「ううっ…。まだ食べられたくないですぅ…」

    ライナー「…食べられる、か」
  127. 127 : : 2016/08/30(火) 13:07:30
    ローラン「ミカサちゃんにはお礼はしたよ?」

    ユミル「私らは足止めされたんだ。せめてその分は稼ぎたいね」

    ローラン「え、そんなのでいいの?」

    ユミル「…ん?」

    ベルトルト「ユミル、選択肢間違えたね…」

    キドラ「流石に竜王様をなめすぎだッキー」


    ジャン「何か出来るのか?」

    ローラン「もち。さあ、皆乗った乗った。始めるよー」

    ミカサ「あ、あの…!」

    ローラン「んにゅ?なぁに?」

    ミカサ「ありがとう。絶対に無駄にしないから」

    ローラン「いいよいいよ!頑張ってね!…あ、そうだ。一応聞くけど、名前は?」

    ミカサ「ミカサ。ミカサ・アッカーマン」

    ローラン「私は竜王、ローレシア・E・アレフガルド!ローランでいいよ、またね!…えへへ、初めての友達だよ!」

    ミカサ「…うん。私も、竜族の友達は初めて」
  128. 128 : : 2016/08/30(火) 13:10:01
    ユミル「おい、結局何をしてくれるんだ!?」

    ライナー「お前、ストレートすぎるだろう…」

    ユミル「こういう時は回りくどいとゴネられるんだよ」

    ミーナ「ストレートだと嫌がられると思うんだけど…」


    ローラン「君たちを一歩先に行かせてあげる」


    ユミル「…あ?」

    ジャン「物理的にじゃねえよな?もっと別の、進捗とか訪ねる方だよな?」

    ローラン「それに、そうすることで予想外のイイことも起きると思うよ?イー」

    イー「なんだ、オレ限定か?悪いなー」

    キドラ「今回なにもしてないのにッキーね。寧ろここまで来るのに頑張る予定だったのはオイラだッキー」

    ローラン「あーキドラ、ラナルータは竜の巣では禁止ね」

    キドラ「ガーン!」

  129. 129 : : 2016/08/30(火) 13:11:01
    ローラン「みんなびっくりしちゃうでしょ。竜の咆哮が世界に響くよ?」

    キドラ「…かしこまりましたッキー」

    アルミン「ブーたれないの」

    サシャ「ラナルータって何ですか?」

    アルミン「術者の周辺地帯の昼夜を暫くの間だけ逆転する、ラナ系の呪文でも特異な呪文だよ。キドラみたいなドラキー系は得意だったね」

    サシャ「本当ですか!!狩りの幅が広がりますよ、その呪文!」

    ミーナ「ドラゴン系は夜行性の飛竜が多いからね。時間が足りなかったらラナルータを使って強制的に昼間に変更、それで距離を稼ぐつもりだったんでしょ」

    キドラ「キキッ、悪くない策だッキー?」
  130. 130 : : 2016/08/30(火) 13:17:52
    ローラン「あ、そうだ!キングリザード、あれをミカサにあげて!!」

    キングリザード「はっ」


    キングリザードが恭しく取り出したオーブを、ミカサが受け取った。…なんだろう、これ。弱々しく光ってるけど…。
    …けど、このオーブの奥底に感じ取れる力は、僕らを優しく包み込んでいるような感覚も受け取れる。


    ローラン「大事にしてね。もしかしたら、何かの役に立てるかも」

    ミカサ「…何から何まで、申し訳ない」

    ローラン「私が君から受け取ったものは、それほどまでに大きなものだったの。それだけだよ」



    ローラン「…さて。始めますか」
  131. 131 : : 2016/08/30(火) 13:32:00
    「さてさて、冒険者の皆さまよ!!」

    ローランさんが、轟くような声で語り始めた。その声は、人ではなく、身体の芯に響く、竜の咆哮。



    「古来より竜は生きてきた!!遥か昔、人が誕生するその時より、ずっと遠くから!!」

    「竜は時に人に試練を与え、時に仇なし、時に与し、時に神となって人を導いた!!」

    「最初期はもう記録にすら残っていない!!だが、それでも竜は人と共に生きてきたことは間違いない!!」

    「我が遠い先祖は、ある一人の人間の強者と覇を競い合った!!!またその子孫は、今度はその人間の子孫に道を示した!!!」

    「そしてそのまた子孫である私は…どうするかはわからない!!」

    「人を喰らう竜もいただろう!人間に付き添う竜もいただろう!!!」

    「だが、それはその竜の個の意志だ!!…竜は気まぐれなのだから!!!」

    「だが、それでもこのように心に留めよ!!!竜はお前たちをいつでも見ていると!!」

    「道に迷いし時は空を見上げよ!!その時は、強大な爪牙と雄大な翼を目の当たりにするだろう!!」

    「竜の心は人にはわからない!!だがそれでも、人々はその冒険に心を躍らせ、こう呼んだ!!」


    「ドラゴンクエスト、と…!!」
  132. 132 : : 2016/08/30(火) 13:39:09
    「ゆくがよい、冒険者よ!!!お前たちにはいつでも竜がついている!!!」

    「かつて我が先祖が人間に救われた時のように、今度は私がお前たち人間を助けよう、この呪文で!!!」

    「オクルーラ!!!」



    …僕は見た。

    山が、谷が、竜に震え、竜を称えているのを。

    確かに竜は恐ろしい。
    それでも、これだけは言いたかった。
    例え、また会う時に、爪と刃が交わるとしても。



    「―――――ありがとう!!!」
  133. 133 : : 2016/08/30(火) 13:53:16
    グレイトドラゴン「…行ったな、あいつら」

    ブラックドラゴン「けっ、静かになってせいせいしたぜ」

    グレイトドラゴン「実はさみしいんじゃないか?」

    ブラックドラゴン「何を!!?」


    ローラン「…ふう」

    キングリザード「竜王様、なぜドラゴンオーブをあの少女に…?あれは、いざという時の奥の手では」

    ローラン「いいんだよ、マスタードラゴンの力なんて。今の私にもそれくらいの力はある」

    キングリザード「しかし…!」

  134. 134 : : 2016/08/30(火) 13:53:22
    ローラン「それにね、あのオーブはいずれイーの為に役立てる」

    キングリザード「…! まさか、その為に手渡したのですか!?」

    ローラン「うん。そうしたら、あのデスタムーアも少しは苦しむでしょ」

    キングリザード「…」

    ローラン「それより、魔王軍の状況は?」

    キングリザード「はい。やはり、イー様御一行の動向を見張っていたようです。御一行本来東の王都に着く予定の二日前ですが、明日!東の王都を襲来すると、間者から」

    ローラン「りょーかい。じゃ、これでイーとデスタムーアは激突しなければいいんだけど…多分無理だね。イーなら間違いなくすぐにツッコミに行く。後は人間たちに任せようかな」

    キングリザード「…竜王様、イー様には何も告げなくて良かったので?」

    ローラン「良いのよあの朴念仁のことなんか。どうせ気づきはしないし。…まあ、気づかれたらアイツらぶっ殺して、イーだけもらおうと思ったんだけど…。ミカサのこと気に入っちゃってね」

    キングリザード「はぁ…」

    ローラン「…まあ、まだイーのことは諦めてないけど。ほら、行きましょ!ミカサに教えてもらったこと、沢山話してあげるから!!」

    キングリザード「…左様ですか」

    ローラン「まずねー、世界って四角なのよ!!?」

    キングリザード「…あのー、竜王様?」
  135. 135 : : 2016/08/30(火) 13:55:11
    [アルミン・アルレルト] Job:僧侶
    E:裁きの杖 E:甲羅の盾 E:絹のローブ
    E:神官のタイツ E:素敵なサボ E:麻のマント
    持ち物:イオの巻物

    [ライナー・ブラウン] Job:戦士
    E:鉄の斧 E:鉄の盾 E:厚手の鎧
    E:鉄の膝当て E:鉄のグリーブ
    持ち物:毒消し草,上薬草×3

    [ユミル] Job:盗賊
    E:バタフライダガー E:バタフライダガー E:ターバン
    E:旅人の服 E:忍のズボン E:木の靴
    持ち物:果物ナイフ×10,薬草×10,世界樹の葉

    [ミカサ・アッカーマン] Job:バトルマスター
    E:鉄の剣 E:鉄の剣 E:エレンのマフラー
    E:絹のローブ E:ガーターベルト E:ハイヒール
    持ち物:イーの想い出の鈴(輝いている),ドラゴンオーブ

    [ジャン・キルシュタイン] Job:魔法剣士(魔法戦士)
    E:魔剣士のレイピア E:銀のリスト
    E:鎖かたびら E:鉄の膝当て E:ウエスタンブーツ
    E:破幻のリング
    持ち物:魔物図鑑,装備道具全集

    [サシャ・ブラウス] Job:狩人
    E:狩人の弓 E:旅人の手袋
    E:うさみみバンド E:かくれみの服
    E:ニーソックス E:素敵なサボ E:疾風のリング

    [ベルトルト・フーバー] Job:パラディン
    E:砂塵の槍 E:鉄の籠手
    E:スライムの冠 E:ホーリーチェイン
    E:レッドタイツ E:安全靴 E:守りのルビー

    [ミーナ・カロライナ] Job:吟遊詩人?
    E:蛇革の鞭 E:蛇革の鞭 E:真紅のグローブ
    E:踊り子のドレス E:ブルーガード
    E:イけてるミュール E:スライムピアス

    【キドラ】 Job:ドラキー
    E:スーパーリング
    持ち物:悪魔の手鏡(通信用),魔王軍の紋章

    【イ-】 Job:魔剣士
    E:雷鳴の剣 E:ソードブレイカー
    E:ミドルガントレット E:鉄仮面 E:シルバーマント
    E:鉄壁のレギンス E:ビーナスの涙

    【袋】
    訓練兵団制服セット×8


    【北の大陸の行方不明者】
    ・アニ・レオンハート    ・コニー・スプリンガー

    【東の大陸の行方不明者】
    ・マルコ・ボッド

    【死亡(推定。エレンのみ幽霊確認)】
    ・エレン・イェーガー(イーに憑依した際に会話。その後の幽体の行方は不明)
    ・クリスタ・レンズ
  136. 136 : : 2016/08/30(火) 19:03:57
    期待!
  137. 137 : : 2016/08/30(火) 20:28:26
    魔界、魔王城にて…




    「…ふん、竜王め…。余計なことをしてくれる」


    「…いかがいたしましょう、デスタムーア様」


    「士気に関わるが仕方あるまい。予定を二日ほど遅らせよ。イーにはいずれ知れることだしの」


    「はっ」

    「しかしデスタムーア様、二日後には武闘大会も終盤です。リスクが大きいのでは」


    「イーに知られないことを目的に予定を早めようとしただけじゃ。それが適わぬのなら予定通りに動けばよい。それにリスクは高いが、人間の実力者どもを一網打尽に出来るというのは大きい」

    「そうじゃろう?」


    「では、そのように」

    「…あの、アルミン一行もそこに?」


    「うむ、イーとキドラも共にいるようでの。仲は良いようじゃ」


    「キドラもですか?なぜキドラが…」

    「おかしいわね、魅惑の館では見なかったけど」


    「…さあの」





    ヒストリア「…イーったら、人に心配かけさせておいてどこをほっつき歩いてんのよ!」

    シャンタク「…ううむ。そ、そうだな…」

    ヒストリア「ちょっとリリィ、私を人間界まで送って!イーを探しに行くから!」

    ベビーサタン「おい、それはなしだ!だいたい、今日の処置もまだ終わってないんだぞ!!」

    ヒストリア「じゃあさっさとしてよ!そうしたら行っていいんでしょ!!」

    ベビーサタン「それでもダメだ!!」

    ヒストリア「うう~!!リリィ!!!」

    ベビーサタン「おい、ちょっと落ち着け!口調変わってんぞ!!…リリィ、お前も準備してんじゃねぇ!!あ~、イー、早く帰ってきてくれよぉ…」
  138. 138 : : 2016/08/30(火) 20:35:21
    期待すぎます♪
  139. 139 : : 2016/08/30(火) 21:21:09
    同意であります
    応援してます!頑張ってください!
  140. 140 : : 2016/08/30(火) 21:23:30
    そういえばアルミンとライナーのjobって変わってなかったんですね
  141. 141 : : 2016/08/30(火) 22:27:00
    >>124 マスタードラゴンは恐らく出ません。大体展開は既に決まっています。
    >>140 アルミンは厳密にいえばまだ賢者ではありません。ライナーはいわずもがなです。


    ━━━━━━━━━
    ━━━━━━━
    ━━━━━
    ━━━


    東の王都にて。


    アルミン「…んっ…。…んん?」

    ミカサ「アルミン。気が付いた?」

    アルミン「ミカサ…」


    ここは…?確か、ローランさんにオクルーラをされて…。…あ!!


    アルミン「東の王都は!!どこ!!?」

    ミカサ「うしろ」

    アルミン「えっ!?」


    ミカサに指摘されて後ろを向くと、確かに王都と呼べそうな街並みがあった。

    呼べそうな、というのも、正直町が大きすぎて全容が見えなかったんだ。

    多分、僕たちが居る場所は街の入口だったんだろう。それでも、街の全容は見えなかった。


    アルミン「な……なに、これ…」

    ライナー「お、アルミン!目が覚めたか!」

    サシャ「アルミン、わかりますか!?ここは東の王都ですよ、王都!!すごいですねぇ、オクルーラ!!」

    アルミン「いや、僕は一度勇者さんに使ってもらったことがあるんだ」

    サシャ「えー、羨ましいです…」

    ジャン「…そういや、アイツらってこの東の王都に行くなんて言ってなかったか?」

    ミカサ「…そういえば」

    ミーナ「ええええ、勇者様に会えるの~!!?」


    ベルトルト「シスターやミリアたちもここに来てるんだったな。会えるかなぁ…」

    キドラ「ベルトルト、お土産のポールアックスは?」

    ベルトルト「あっ…」
  142. 142 : : 2016/08/30(火) 22:39:45
    イー「勇者ねぇ…」

    ユミル「お前の因縁の相手だな」

    イー「あの未熟な奴だろ?強くなったかね、あの人間たち」

    ユミル「…そんなことを勇者たちに言えるのは、世界でもそういねぇだろうな」


    ミーナ「あーでも、お風呂に入りたいなぁ。勇者様に会うんだったらなおさらね!」

    サシャ「わーい!賛成です!!もう三日も入れてないですからね!!」

    キドラ「じゃあ宿屋だッキーか?」

    サシャ「いや、銭湯があるらしいですよ!!」

    アルミン「え、どうしてそんなことを知っているの?」

    サシャ「あそこに書いてあります!」

    そう言ってサシャが指さす先には、100mはある噴水の看板。…あの、読めないんですが。相変わらずすごい視力だね。


  143. 143 : : 2016/08/30(火) 22:47:14
    イー「おー良いな。じゃ、早速…」

    ユミル「お前は私と用事だ、行くぞ」

    イー「はい?」

    ユミル「キドラ、お前はどうする?」

    キドラ「さっさとお風呂入りたいんで皆と行くッキー」

    ユミル「あいよ。じゃ、集合場所は…」

    ライナー「あの一際大きい丸みを帯びた建物にしよう。魔物の国の闘技場みたいなアレだ」

    ユミル「了解。じゃ、あとでな」

    イー「お、おい!」


    ミカサ「あ…」

    ジャン「…ミカサ,行くぞ」

    ミカサ「…わかった」


    ベルトルト「…なんだろうね?」

    ミーナ「ラブの嵐だね!」

    ベルトルト「何を言ってるの?」



    ジャン(…マルコ、もう少しだからな)
  144. 144 : : 2016/08/30(火) 23:44:39
    展開決まってるって事は結構更新多くなったりしますかね!ひゃっふぅ!期待!
  145. 145 : : 2016/08/30(火) 23:46:39
    応援してます
  146. 146 : : 2016/08/31(水) 19:18:18
    期待!
  147. 147 : : 2016/09/01(木) 20:52:22
    東の王都、南部城下町。
    銭湯にて。


    ライナー「ベルトルト、背中流してやろうか」

    ベルトルト「うん、お願いするよ」



    僕たちは今、銭湯で旅の疲れを癒している最中だ。
    この世界には王族と平民の間にはあまり格差はないようで、この民間の銭湯も、見る所全てがキラキラ光っているような豪華な銭湯だ。

    元の世界にも銭湯のようなものはあったけど、これほど綺麗ではなかった。この世界は、本当に良い世界だ。…魔王軍なんてものがなかったら更に良いんだろうけど。


    ジャン「…」

    ライナー「…ジャン、ここは銭湯だ。逸る気持ちはわかるが、ゆっくり湯に浸かるのがルールだぞ」

    ジャン「…あるかよ、そんなルール」


    それでも、ちゃんと湯に浸かりはするんだね。


    アルミン「それにしても、人が多いね」

    ライナー「とても人気というわけじゃないだろう。人口密度が高い訳じゃなさそうだ」

    ベルトルト「じゃあ、ただ単純に人が多いだけだね。外から見ても頑丈そうな都市だったし」
  148. 148 : : 2016/09/01(木) 21:11:28
    ジャン「…なあ、あの壁の向こうはは女湯だったよな」


    ベルトルト「そうだけど…」

    アルミン「…」

    ライナー「…おい、変なことは考えてないよなジャン」


    ジャン「今はそんな気分じゃねえよ。それに良く見ろ、あの壁にくっついてるキモイ奴。あいつ、何してるんだ?」


    ライナー「…ん!?おい、覗きだあれは!!」

    ジャン「やっぱりそうか!!あの野郎!!!」

    アルミン「止めなきゃ!!」

  149. 149 : : 2016/09/01(木) 21:45:52
    女湯…。


    ミカサ「ふう…」

    サシャ「あ~、やっぱりお風呂は良いですねー」

    キドラ「うんうん、同意だッキー。人も魔物もお風呂が好きなのは変わらないッキーね」

    ミーナ「こんなに人がたくさん居る所は久しぶりね。やっぱり人里も捨てがたいなぁ」

    サシャ「こうもゆっくりとお湯に浸かっていると、悩みも忘れてリラックスできますね…」

    ミカサ「サシャ、忘れちゃダメ」

    サシャ「わかっていますよぅ。けど、ね…」

    ミーナ「ていうかキドラはそのままの姿で良いの?」

    キドラ「街の門番に何も言われなかったから良いんじゃないッキーか?」
  150. 150 : : 2016/09/01(木) 22:10:16
    ミーナ「…ユミルは、どこに行ったんだろうねー。イーも連れてさ」

    キドラ「んー…。イーは人間の生活を見たいとも言ってたし、それを親切に手伝っているとか?」

    ミーナ「えー、そんなの私たちとでもよくない?」

    サシャ「デートとか」

    ミーナ「やっぱり!?あの二人なんか怪しい気がしたのよね~!?ユミルはイーの同行にもかなり前向きだったしさ!!」





    「…気のせいだと思う」
  151. 151 : : 2016/09/01(木) 22:43:30
    ミーナ「…え、ミカサ?」

    ミカサ「なんでもない」



    「「「……」」」



    二人の少女と一匹は、友の異変に目配せだけでうなずき合う。無愛想で幼馴染の二人がとても大事であり、その内の一人とは何かあるのではという邪推でさえ、新参者のキドラも行うほどミカサの性格はよく知られている。

    そのミカサが、幼馴染以外の異性に目を向けた。しかも、元敵。
    これは、もしかするとおいしい話題ではないのか。

    …二人と一匹は話し始めた。


    『え?え?どういうことなんですか?』

    『え、いやぁ…そういうことなんでしょ?』

    『ミカサってそのエレンが好きなんじゃないッキーか!?』

    『それは私たちや他の訓練兵でも噂されてたけど、結局よくわからなかったのよ!ミカサはエレンとは家族としか言わないし、エレンは関心なさすぎだし、アルミンは誤魔化すし!!』
  152. 152 : : 2016/09/01(木) 23:00:38
    ミカサ「三人ともどうしたの?」


    ミーナ「な、なんでもないよ」
    サシャ「そうですよ、ミカサの恋愛事情なんて…」
    キドラ「サシャ、わけのわからないことを言っているとミカサが困るッキーよ!!」
    サシャ「あああああそうですね!!ごめんなさいミカサ!!!」


    ミカサ「…うん」



    『サシャのバカー!』

    『すみません、つい…』

    『こういう話は本人には言わないものッキー!!』

    『はい…』




    「…あれ?ミカサちゃん?」
  153. 153 : : 2016/09/01(木) 23:42:25
    ミカサ「え?」

    「やっぱり!久しぶりですね!」

    サシャ「あ、僧侶さん!」

    ミーナ「僧侶さん?」

    サシャ「僧侶さんは勇者のレオさんの仲間なんですよ!」

    ミーナ「じゃ、じゃあ!!勇者パーティの一人ってことですか!!?」

    僧侶「はい。私は、勇者レオとともに魔王討伐の目的とした旅をしています、僧侶のマァヤです。貴女もミカサちゃんとサシャちゃんのお友達なんですか?」

    ミーナ「はい!ミーナ・カロライナです!!お会いできて光栄です!!」
  154. 154 : : 2016/09/02(金) 00:15:37
    応援してます
  155. 155 : : 2016/09/03(土) 11:27:13
    サシャ「あれ、他のメンバーはどうされたんですか?王女様もいましたよね?」

    ミーナ「王女!!?ちょっと、みんなはどんなコネクション持ってんの!!?」

    キドラ「成り行きだッキー」

    僧侶「勇者たちは明日の武闘大会に向けて準備しているんですよ。レイチェルさんも一緒です」

    ミカサ「武闘大会?明日行われるのですか」

    僧侶「ええ。実力者が大勢集まるでしょうから、そこで対魔王軍精鋭部隊の徴兵を呼びかけます」

    キドラ「まだ呼びかけてないってことッキーか?」

    僧侶「はい。インパクトが大事だから、興奮が冷め止まぬ時に伝えてその気にさせようと、レイチェルさんが」

    サシャ「あの王女様、強かですね…」
  156. 156 : : 2016/09/03(土) 11:43:25
    僧侶「貴女たちも出てはいかがですか?」

    ミーナ「なにか賞金があるんですか?」

    僧侶「3位は100000ゴールド、2位は一級品の武具防具一式、1位は”可能な限りなんでも王様が叶えてあげるよお願い券”ですね」

    サシャ「100000ゴールド!!?」

    ミーナ「すごいのそれ?」

    サシャ「ちょ、ミーナ!!お金がわからないんですか!?」

    ミーナ「だってユグドラシルの皆はお金なんて使ってなかったし。金貨とかたくさんあったらしいけど誰も目すら向けてなかったよ」

    サシャ「えー…」

    キドラ「流石は鎖国の国」

    ミカサ「…そういえば、ルイーダの酒場での依頼…」

    僧侶「あ、同じ報酬を東の国王様が確かに出していましたね」

    ミカサ「この大陸の南方の未開の地の探索を行い、その成果が報酬に値するなら、東の王がなんでも一つお願いを叶えてくれると」

    サシャ「え、それって……ムグッ!!?」

    ミーナ「ちょっとサシャ、黙ってくれるかな?」

    キドラ「…ミーナ、そのセリフを笑顔で言うのは恐ろしいッキーよ…」
  157. 157 : : 2016/09/03(土) 12:05:14
    ミーナ(ユグドラシルの皆には静かに暮らしてもらいたい。魔王軍を討とうとしている人たちなんだ、魔物が大勢いるなんて知ったら何をするかわからないじゃない!)

    サシャ「むぐ~!!むう、むぐぐぐ!!!」

    キドラ「ちょ、ミーナ!!」



    ミカサ(ミーナの様子では、きっとルイーダの酒場の依頼を成功することは出来ない。よし…)

    ミカサ「…なら、出てみます」

    僧侶「そうですか!出場するには一組三人で、今日の夕暮れまでに近くの闘技場で受付をしなければいけません」

    ミカサ「三人…!」

    ミカサ(私で一人、ユミルとイーは捉まるかわからないから除外。後はサシャ、ミーナ、アルミン、ジャン、ライナー、ベルトルト。……そうだ)

    ミカサ「魔物も出られるんですか?」

    僧侶「はい、この国も敵意がなければ魔物は入れます。そこのキドラちゃんも出られますよ」

    ミカサ「キドラ、どう?」

    キドラ「えー…。疲れてるからやめとくッキー」

    ミカサ「そう。なら、7人から1組ないしは2組作らなければ…」




    サシャ「むぐっ…」

    ミーナ「ふーん…。あれ、サシャ何してんの?」

    キドラ「…酷い」
  158. 158 : : 2016/09/03(土) 12:17:13
    銭湯、受付にて…。


    西王女「久しいな、お前たち。…で、何をしてるんだ」

    ジャン「覗きをとっ捕まえたから引き渡しに来たんだよ」

    ?「クソォ、このロープを解けぇ!!!僕を誰だと思っているんだ!!?」

    ライナー「覗き犯だろう」

    ベルトルト「全く、とんでもない奴だね」

    アルミン「お久しぶりです、王女様」

    西王女「堅苦しいぞ、アルミン。レイチェルで良い」

    ジャン「なんだ、今日は随分と殊勝だな」

    西王女「この国では私はただの武道家だ」


    西王女(…全く、タオル一枚で現れおって。貴様を頂きたくなるだろう)

    ジャン「?」
  159. 159 : : 2016/09/03(土) 13:13:21
    西王女「とりあえず、離してやれ。そいつはこの国で捕まえても意味がない」

    ジャン「あ?なんだそりゃ」

    ?「ん~?レイチェル、僕の所に嫁ぎたくなったのか!?」

    西王女「くたばれ」

    ?「なっ…!お前!!西の王女だろうがなんだろうが無礼だぞ!!」

    西王女「知るかクソ王子め。貴様の意見など、国民は愚か父ですら聞かぬだろう」

    ジャン「クソ……王子?」

    ベルトルト「王子って…この国の王子ですか!!?」

    東王子「へっ!僕は東の大国の第一王子、パッセン・ロイヤルだ!!早く僕を解放しろこの無礼者!」

    ライナー「…とりあえず、離してやるか」
  160. 160 : : 2016/09/03(土) 13:39:45
    アルミン「そういえば…東の王子はろくでもないって言ってましたね」

    東王子「なんだと!!?誰がそんなことを!?」

    ジャン「こいつだよ」

    西王女「ふん」

    東王子「ぐっ…くそ!お前、明日ギッタンギッタンにしてやるからな!!そして、その時は僕の侍従にしてやる!!!」

    西王女「やれるものならやってみろ。……それと、覗きの件は貴様の父にしかと伝えるからな」

    東王子「うぅっ」





    アルミン「行っていまいましたね…」

    ライナー「明日、何かあるのか?」

    西王女「そうだ、ジャン。そのことでお前に話がある。私と共に武闘大会にでないか」

    ジャン「ああ!?」
  161. 161 : : 2016/09/03(土) 13:51:13
    ━━━━━━━━━
    ━━━━━━━
    ━━━━━
    ━━━



    アルミン「三人一組の武闘大会!?」

    ライナー「何でも叶えてくれるだと!!?」

    ジャン「…よし、出るぜ。お前とってのが癪だけど」

    西王女「ふっ、言うじゃないか。私の足を引っ張るなよ、ジャン。あのエロキモクソ王子をぶちのめすぞ」

    ジャン「お、おう」

    ベルトルト「…ねぇ、この人本当に王女様なの?」

    ライナー「気にしたら負けだ、気にするな」




    ミカサ「アルミン!………何その恰好」

    アルミン「え」

    ミカサ「早く着替えてきなさい。ジャンたちも」

    ジャン「は、はい」
  162. 162 : : 2016/09/03(土) 14:02:41
    僧侶「あ、レイチェルさん。もう戻ってきたんですか?メンバーの方は…」

    西王女「一人はジャンだ。あと一人、どうするかな…」

    ミカサ「私が出ても良い?」

    西王女「なに!!よし、ではそうしよう!よろしく頼むよ」

    ミカサ「うん」



    サシャ「え」

    キドラ「うわあドロドロしそう…」

    ミーナ「なんで?」

    サシャ「ジャン→ミカサでレイチェル→ジャンなんです…」

    キドラ「しかもお互い気づいてないッキー…」

    ミーナ「え!!?レイチェル→ジャン→ミカサなの!!?何それお芝居!!?」

    サシャ「リアルです…」
  163. 163 : : 2016/09/03(土) 14:45:23
    同時刻、東の国、某宿屋にて。

    Ymir side …


    とりあえず風呂には入れた。このあとは、イーと一緒に街を回ると。いつもと違う格好しねぇとアルミンたちに見つかりやすくなるしな…。


    イー「あー良いお湯だった」

    ユミル「そうかよ。じゃあそこの服に着替えろ」

    イー「なんだよ、買ってきてくれたのか?」

    ユミル「そりゃそうだろ、お前魔王軍三将の格好をする気か?」

    イー「…まずい、かな?」

    ユミル「魔王軍をつぶそうとしてるような奴らがいるんだぞ。そんなとこに幹部だの三将だのいたら殺されるぞお前」

    イー「オレがやられるかよ」

    ユミル「当然その仮面も禁止だ」

    イー「うっ…」

    ユミル「代わりにその魔法のバンダナとサングラスでもつけてろ。あまりその素顔を晒してくれるな」

    イー「まあ良いけど。なんで?」

    ユミル(…あのバカにしか見えなくなってくるからだよ。どうにかなっちまいそうだ)
  164. 164 : : 2016/09/03(土) 14:59:06
    イー「んで、今からどうするんだ?」

    ユミル「街に出るぞ。行きたいだろ?」

    イー「…何考えてやがる、いきなり連れ出してよ」

    ユミル「アホかお前は。お前があのまま堂々と街を歩いたらパニックになってたぞ。お前の為だったんだ、ありがたく思え」

    イー「…なんだ、そうだったのか。悪かったな」

    ユミル(…連れ出したは良かったけど、ここからどうするかな。デート?……デートぉぉぉ?)

    ユミル(…アホらし。いくらこいつがエレンかもしれないって言ってもそれは…)


    ユミル(…いやいやいや!!別に私がアイツとデートしたいってわけじゃないし!!)


    ユミル「…」



    ユミル「…おい」

    イー「ん?」

    ユミル「……デート、いくぞ」

    イー「…」





    「んん?」
  165. 165 : : 2016/09/03(土) 21:30:48
    東の国、南部城下町にて。


    Ymir side …

    「…」

    「…」


    …なんだ?この状況…。
    自分から言い出したとはいえ、訳わかんねえ。


    「…ま、まあその姿なら誰もお前のことなんかわかんねえだろ」


    …想像以上にバンダナ姿がキたからすぐにサングラスかけさせちまった。あークソ、こんなの元の世界じゃあり得ねえな。


    「…おう。お前も、服変えたんだな」

    「え!?えーっと、そうだな。気分転換だよ」

    イー「ふーん…」


    それで終わりかよ!!ツッコミいれられるとは思わなかったけど。
  166. 166 : : 2016/09/03(土) 21:31:10
    「お、あれはなんだ?」

    「あ?あれはりんごだろ」

    「ほー。リンゴか。食い物っぽいな」

    「…おい、もしかしてりんごを知らねえとか言わねえよな」

    「おう、知らねえ」

    「…」


    …やっぱりこいつエレンじゃない気がしてきた。なんでりんごを知らねえんだ?元の世界では高級品として庶民から憧れの果物と認識されてた筈なんだが。

    いや待てよ。こいつ確か記憶を消されたとか言ってたな。じゃあ、りんごのことを忘れててもおかしくはないのか。
  167. 167 : : 2016/09/03(土) 21:31:33
    厄介なことをしてくれたな、幻魔王デスタムーア。こいつの記憶が戻れば多少どころか大分話がスムーズになるんだが。


    「あれ食ってみたいな!買おう!」

    「あー。まあ、安いしな」


    本当に、元の世界に比べて安い。
    というより、りんご一個を買うためのお金が簡単に手に入る。

    元の世界ではりんごを一つ買うためには三日は丸々働く必要がある。だが、この世界でならひのきの棒一本持って外でスライムを2,3匹倒せば簡単に稼げる。まあ、スライムに会うまでに他の強力な魔物に出会う可能性は否めないが。
  168. 168 : : 2016/09/03(土) 21:31:56
    どちらにせよ、この世界では日常品はとにかく安い。
    逆に高いのは武器や魔法関連のアイテムだな。

    …まあ、元の世界は土地が人口に対して異様に足りないせいで、食用品が高いのかもしれないが。

    でも、人類がウォール・マリアを万が一取り返したとしても、それでも土地は多分足りない。面倒な世界だな本当に。


    「んんっ、上手いなこれ!!おっちゃん、上手いぞこのリンゴ!」

    「毎度あり!」

    「どわっ!!イー、お前何個買ってんだよ!!一つ寄越せ!」

    「いいぞー。ほい」
  169. 169 : : 2016/09/03(土) 21:32:18
    …こいつ、戦闘時と非戦闘時では別人みたいだな。仮面から見えた目付きが全然ちがう。どちらにせよ目付きは悪いが。


    「…あんた、イーっていうのか?」

    「え?」

    「も、もしかして……ま、魔王軍の?!!!」


    「「!!!」」



    「い、いや、イーじゃなくて…!…そう、イー感じだなぁ、みたいな意味で言ったんだよ!なあ、エレン?」

    「え、エレン!?………あ、ああ!イー感じだぞこのリンゴ!」

    「……なんだ、そうだったのか。悪かったな疑って」
  170. 170 : : 2016/09/03(土) 21:32:38
    あっぶね…!
    何でこんな民間人が魔王軍の三将の名前知ってんだよ!?


    「最近世界は物騒らしくてなぁ。西の大陸ではこの1ヶ月で3つも街が襲われてるし、この前だってこの大陸にある聖地、シスター・マリアの教会が襲われたばかりだ。国王様や勇者様も、魔王軍の情報を出して警戒するように呼び掛けてるんだ。俺達みたい国民も、充分に気をつけねえと」


    …店主のおっさんが言った事件の内の二つに私達が関わってるな。ただ単純に運が悪いだけなのか。
  171. 171 : : 2016/09/03(土) 21:33:06
    「おめえさんたちも気を付けろ。見ねえ顔だな、旅人か?街でデートも良いが、警戒を怠るなよ」

    「やっぱりデートに見えるか?」

    「そりゃねえだろ若旦那さんよぉ~。嫁は大事にしねえと、逃げられちまうぞ?」


    何を言い出すんだこのクソ店主!!

    …もうちょい言ってやれ。

    つーかこの歳で夫婦に見えるのか。この世界では結婚適齢期が早めなのか?


    「いや、違うけど…」

    「と、ところでおっさん!何かこの街、凄い賑やかじゃねえか!?西の王都にも訪れたことはあるが、これほどじゃなかったぞ!」
  172. 172 : : 2016/09/03(土) 21:33:30
    「ああ、明日明後日は年に一度の武闘大会が開かれるからな。その一週間前から祭りをやってるんだ。今日は前夜祭だな」

    「武闘大会!?」


    あ、目の色変わった。
    大会ってことは何か賞金や賞品もあるのか?


    「おっさん、優勝者には何かあるのか?」

    「ね、姉ちゃん、目が怖いぞ…」


    …目の色が変わったのはイーだけじゃなかったらしい。怖いとか言うんじゃねえよ。


    ━━━━━━━━━
    ━━━━━━━
    ━━━━━
    ━━━



    「優勝者には何でも願いを叶えさせてくれる、ねえ。随分太っ腹だな」

    「全くだ。何か裏があるんじゃねえのか?」
  173. 173 : : 2016/09/03(土) 21:41:46
    あの後、露店から立ち去った私達は、別の店中で武闘大会のことについて話していた。因みにここは茶葉を売っているらしい。あまり紅茶は飲まないが、良い茶葉を売っていることはわかる。


    「それで、出るのか?」

    「当然。お前もオレと出ろよ、ユミル」

    「まあ、優勝賞品には惹かれるものがある。良いぜ、出てやる」


    ただ、問題は…。


    「最後の三人目をどうするか、だな」

    「二人じゃダメ…なんだよな?」

    「らしいな」

    「けっ、二人どころかオレ一人で充分だっての」


    まあ、お前はそうかもしれないが。
    三人に限定してきたってことは、チーム戦でもさせる気か。
    明日が予選で明後日が本選とも言ってた。
    予選を行うってことは、相当な数の出場者が出るってことか…。
    毎年のことらしいしな。


  174. 174 : : 2016/09/03(土) 21:58:04
    「じゃあ、アルミン達の所へ行こうぜ。あいつらの誰か……ミカサ辺りをつかまえれば良い」

    「それは別に良いけど…どうやって連絡とるんだ?」

    「…しまった。受付って何時までだっけ?」

    「今日の日の入りまでだ。まいったな、その時間までにあいつらが闘技場まで来てくれるわかんねえぞ」

    「じゃあ、どうすれば…!おい、オレは出たいぞ!」

    「そういえば、エレン。お前は何で出たいんだよ?」

    「おい、エレンってなんだ」

    「うるせえ、お前のこの街での名前はエレンだ。さっきそう咄嗟に言っちまったんだから仕方ないだろ」

    「…ちっ、まあいいか」
  175. 175 : : 2016/09/04(日) 00:09:41
    デートかぁ…青春してるなー
  176. 176 : : 2016/09/04(日) 11:18:15
    店を冷やかしつつ、次の目的地へ向かう。
    その間も、私たちの雰囲気は変わらない。
    というより、少々懐かしい気もする。

    …なんだかな、変な気分になってきた。

    今なららしくないことも言えそうだ。


    「そりゃ当然、人間たちがどれくらい強いか見たいからさ。勇者たちも少しは成長しただろ」

    「…それ、お前ら魔王軍からしたら困るんじゃねぇの?」

    「まあ、そうなんだが…。なんか人間たちには強くなってもらわないと困るんだよ。なぜかは忘れたけど」

    「…お前、そんなことよりも記憶を取り戻した方が良いんじゃないか?」

    「ま、それはおいおいだな」


  177. 177 : : 2016/09/04(日) 11:25:06
    「で、これはどこへ向かってるんだ?」

    「ルイーダの酒場」

    「あ?なんで?」

    「ミカサが西の王都で人探しの依頼を出したからな…。その成果を確認しに行くんだ」

    「あー、お前らの仲間探しな。見つかると良いな」

    「…そのためにも、お前の記憶を戻さないとな」

    「お前、やっぱりそういう目的か?オレに近づくのは…」

    「利害の一致だ。悪くないだろ」

    「…ま、少しはな…」


    頭をポリポリと掻いて、そっぽを向くイーに、照れているということを覚った。

    …なんだ、可愛いところもあるじゃねぇか。

  178. 178 : : 2016/09/04(日) 11:30:10

    ユミル「へっ、少しは素直になれたか」

    イー「誰が素直じゃねぇんだよ!……ん?」

    ユミル「どうした?」

    イー「おい、喧嘩だ!」


    イーの言葉に従って、その方を向くと歓声と人だかり。

    近づいて覗き込むと、成程、確かに喧嘩をしている。武器まで持ち出して…。
    これ、衛兵は止めなくていいのか?


    ユミル「なあ、止めなくていいのか?」

    「なぁにいってんだよ!止めるなんてもったいない!」

    ユミル「あ?」

    イー「どういうことだ?」


    野次馬の一人に声をかけると、ぶんぶん首を横に振る男。
    どうやら、事情でもあるらしい。
    雰囲気からして険悪ってわけじゃないが。
    どちらかというと、今の祭りの雰囲気に近い。
  179. 179 : : 2016/09/04(日) 11:33:12
    きたい
  180. 180 : : 2016/09/04(日) 11:36:04

    「明日の武闘大会について一悶着あったらしい。これは前座の野良試合だ!」

    ユミル「野良試合?」

    「そう、このお祭り騒ぎだからな。衛兵や魔法騎士団もお祭りを盛り上げる一因として、こんな野良試合を止めようとはしないんだ。寧ろ騒いで踊れって国王様がお触れを出してるくらいなんだぜ!」

    イー「ほー、そりゃあ良い!オレは気が合いそうだな、その国王とは」

    ユミル「魔法騎士団?そんな連中がいるのか?」

    「この国を守る王族直属の騎士団だ。最近ルーキーが一気に副団長になったばかりだぜ!…その反対に、団長が最近行方不明になってな」

    ユミル「おい……」

    イー「大丈夫か?その魔法騎士団…」
  181. 181 : : 2016/09/04(日) 11:43:47
    「そのせいで、勇者様の仲間の、魔法使いのルナちゃんが団長に就任することになったんだ」

    イー「勇者パーティの?」

    ユミル「あいつら旅してるだろ。旅する団長っていいのかよ」

    「いや、暫くはこの国にいるらしいぞ。この国の国立図書館に用があるんだってよ」

    ユミル「…あんた、詳しいな」

    「ああ、勇者のレオくんと魔法使いのルナちゃんは二人が小さい頃から、この国では有名なんだ。二人はこの国の全員の子供みたいなもんさ!」

    ユミル「へー」
  182. 182 : : 2016/09/04(日) 12:44:04
    期待!
  183. 183 : : 2016/09/04(日) 12:54:20
    「おおっと、それどころじゃねぇ。今いいところなんだよ!」

    ユミル「ほー、どれどれ」

    イー「あれはごろつきだな。もう片方は……ガキ?」

    ユミル「おい、あの覆面…魔物のごろつきじゃないか?」

    イー「そうだな。どうやらこの国、魔物も入れるみたいだ」

    ユミル「じゃあキドラも問題はなさそうだな。…あれ?あの子供は…」


    人だかりに囲まれて、ごろつきと少女が戦っている。

    どちらも斧を使っているな。
    ごろつきは片手斧を、少女はそれと同じくらい大きい両手斧を振り回している。
    …が、ごろつきが持つ片手斧は少女の身長並みの大きさだ。別の言い方をすれば、少女は自分の身長程もある斧を振り回していることになる。

    そして、私はそいつを知っていた。




    褐色少女「おおりゃあああああ!!!」
  184. 184 : : 2016/09/04(日) 13:00:28
    ユミル「あいつ……ミリアだ!!」

    イー「知り合いか?」



    褐色少女「え!?」


    ミリアはこちらの声に反応して、こちらに振り向く。
    それと同時に、ごろつきは好機と見て斧を振りかざした。
    …じゃねぇ、まずい!!


    「危ない!!」

    「きゃあああああああああ!!!」


    観客から悲鳴や喚起が起きるとともに、ミリアはそのまま回転する。そしてごろつきの片手斧は、ミリアの両手斧によってこちらに弾き飛ばされた。
  185. 185 : : 2016/09/04(日) 13:23:37
    ごろつき「ぐわっ!!」

    褐色少女「しまった!逃げてくれ!!」


    片手斧がかなりの勢いで回転しつつ、こちらへ飛んでくる。
    あれに当たればただでは済まないだろう。
    …そんなこと言ってる場合じゃねぇな!


    ユミル「避けるぞ!!」

    イー「避けねぇし逃げねえよ」


    イーの言葉に動きを止めてしまった私は、目の前の斧に対してどうすることもできない。


    イー「取ればいい」


    その言葉と同時に、イーは無造作に右手を挙げると、回転する斧の柄をいとも簡単につかんでしまった。


    ユミル「…マジかよ」

    イー「へっ」

    褐色少女「す、すげえ!」
  186. 186 : : 2016/09/04(日) 21:51:39
    イー「返す」

    ごろつき「あ、ああ」


    斧をごろつきに返しに行くイー、受け取るごろつき。
    その間、野次馬は好奇の目でイーを見ている。
    人間離れした業を行ったイーから目が離せないんだろう。


    褐色少女「へっ、その程度の実力で武闘大会で優勝するなんざ無理な話だ!大口叩いてんじゃねぇよマスク野郎!!」

    ごろつき「なんだとクソガキ!!お前なんて、出場すらできないじゃねぇか!!」

    褐色少女「ぐっ…」

    ユミル「!」

    ごろつき「それに俺のチームにはとっておきがいる!!優勝するのは俺たちだ!!」

    褐色少女「なんだとコラァ!!」

    ごろつき「へっ、あばよ!」
  187. 187 : : 2016/09/04(日) 22:02:38
    褐色少女「くっ…あの野郎!!」

    イー「行っちまったな」


    最後は少々有耶無耶になったが、勝敗は決した。
    …けど、やっぱりあのミリアは強いな。ヤンガスの子孫だっけ?
    まあ、今の私たちは運が良い。

    見つかったぞ、三人目…!


    褐色少女「でも……あんた強いな!!間違いねえ!!」

    イー「おう、オレは強いぞ」

    褐色少女「あんたも明日の武闘大会に出るのか?」

    イー「そうしたいんだけど…一人足りなくてな」

    ユミル「そこで!お前、私たちと出ないか?」

    褐色少女「あ、ユミルの姉ちゃん!?もうこの国に来たのか!?」

    ユミル「まあな。で、どうよ」


    イーはいくつか訊きたいことがありそうな顔をしているが、オール無視。
    私の誘いに、ミリアはニヤリと口角を上げる。


    褐色少女「そんなの、決まってんだろ…!」
  188. 188 : : 2016/09/04(日) 22:12:43
    東の王都、南部城下町にて。

    Armin side …


    アルミン「ミカサ、これはどこへ向かっているの?」

    ミカサ「ルイーダの酒場」

    サシャ「え、でもルイーダの酒場の依頼って、ミーナのお願いでもう無理なんじゃないですか?」

    ミカサ「そちらではなく、仲間の捜索依頼」

    サシャ「あ、そういえば!」

    キドラ「お前、中々薄情だッキーね…」

    サシャ「だってあとはとりあえずはコニーだけじゃないですか」

    キドラ「? 何でッキー?」
  189. 189 : : 2016/09/04(日) 22:22:30
    サシャの言葉に多少疑問を感じつつ、サシャの説明を待つ。

    サシャ「マルコはこの国にいるでしょう?アニは北の大陸の霧の砂漠にいる。クリスタはエレンいわくどうにでもなるらしいし、そのエレンは生死の状態にかかわらず恐らく普通ではないでしょう。一般人はおろか、冒険者にエレンの捜索は無理ですよ。なら残るはコニーなんですけど…コニーもどうにでもなる気がするんですよね」


    キドラ「…え、なにこれ。本当にこいつサシャだッキーか?」

    ベルトルト「サシャは9割間が抜けているところもあるけど」

    アルミン「こういった頭を使う部分もあるよ。サシャは元の世界では狩猟を生業とした一族の出身だからね」

    サシャ「はい!狩りには獲物を追い詰めるために理詰めを行わなきゃいけない場合もありますからね!それの応用です!」

    ミカサ「…似合わない」

    サシャ「ちょっとミカサ!!?」
  190. 190 : : 2016/09/04(日) 22:30:24
    アルミン「で、コニーに関してはどうしてそう思うの?」

    サシャ「それは勘ですね!!」

    キドラ「…やっぱりサシャだッキーね」

    サシャ「キドちゃん!?酷くないですか!?」


    一人と一匹が騒いでる中、少し思案気味の顔をしているミカサ。
    ミカサ…大丈夫かな。
    大会に出たがる理由は分かる。
    優勝者に与えられる副賞は、まちがいなく僕らの旅、しいては仲間探しに役立つ。

    けど、出場者のレベルが気になる。というより、僕たちは一般的な冒険者から見たらどのくらいの位置にあたるんだろうか?

    西の王女のレイチェルさんはともかく、ミカサとジャンは大丈夫なんだろうか?怪我をしなければ良いけど。
  191. 191 : : 2016/09/04(日) 22:37:36
    ベルトルト「そういえばジャンは?」

    アルミン「ああ、ジャンならレイチェルさんを待って銭湯に残ってるよ」

    ベルトルト「…はい?」

    サシャ「ジャンは西の王女様の侍従なんですよ♡」

    ベルトルト「…どういうことなの、それ」

    ライナー「細かいことは気にするな、ベルトルト」

    ミーナ「ジャンって…そういう願望があったの!!?」


    本人がそれ聞いたら絶対違うって言い張るだろうけどね。
    けど、他人から見たら照れてるようにしか見えないんだけどな…。それで囃し立てられるんだよなぁ。これでジャンも少しはエレンの気持ちが分かっただろうか。
  192. 192 : : 2016/09/04(日) 22:44:24
    ライナー「そうだ。ミーナ、ここで言わないと」

    ミーナ「う、うん。…あのね、みんな!」


    ミーナの声に全員が振り向く。その表情は、魔物の国でバズズと対峙した、あの時の顔に浮かんでいたものと同じ。

    何かを決意した、訓練兵の顔だった。



    ミーナ「わたし……!わたしも、武闘大会に出る!」



    サシャ「うえぇ!!?」

    アルミン「ほ、ほんとに!?」
  193. 193 : : 2016/09/04(日) 22:52:37
    ライナー「ちなみにオレも出るぞ。メンバーはあと一人だ」

    ミカサ「…どうして?確かに、複数チームで出場した方が優勝の可能性は増えるけど…」

    ミーナ「…これから先の、ユグドラシルの未来を案じていたの」

    アルミン「あの魔物の国の…未来?」


    ミーナは胸に手を当てつつ、僕の疑問に少し弱まった顔で、けれど強い口調で答えていく。


    ミーナ「あの国の魔物たちはね、人間と仲良くしたいっていう子たちが大部分なの。けど、人間を恐れているのも事実。…だからこそ、ユグドラシルのみんなには人間たちと仲良くしてほしい。その為に、国王様に約束をとりつけてもらうんだ!」


    ベルトルト「約束?」
  194. 194 : : 2016/09/04(日) 23:01:02
    ミーナ「ユグドラシルの魔物たち…ううん、違う。魔物たちに敵意がないなら、魔物に危害を加えるのを禁止するっていう法律を作ってもらう!」


    サシャ「法律!!?」

    アルミン「一国の政治に関わるつもりなの、ミーナ!!」

    ミーナ「え?そうなるの?」

    ベルトルト「うーん…。そうなるね」

    ミーナ「うう、そう考えると私のやろうとすることってすごい大きな感じがしてきた」

    ライナー「いや、十分大きいぞ」

    キドラ「事の重大さに気が付いてないッキーね…」


    ミーナ「……それでも、やっぱりそうしたい!」


    ミーナの決意は揺るがない。確かにミーナの願いを叶える為の最短ルートは、それしかないだろう。けど…。


    ミカサ「…ミーナ。じゃあ、エレンたちの捜索は?どうするの?ルイーダの酒場の依頼だけでどうにかするの?」
  195. 195 : : 2016/09/04(日) 23:11:15
    ミーナ「大丈夫。その法律を施行してもらえたら、ルイーダの酒場の依頼が成功する!」

    サシャ「え…。捜索の件ですか?どうしてそんなことがわかるんです?」

    ミカサ「…あ」

    アルミン「そうか!サシャ、そっちじゃないよ!東の大陸南方、未開の地の探索依頼だ!」

    キドラ「成程。害のない魔物を傷つければ捕まるという法律があれば、魔物の国での人間による無差別狩猟はなくなる。まあ、東の国と魔物の国とが連携したらの話だッキーけど」

    ライナー「それに、そんなことをしようものなら、ダークドレアムが黙っていないだろうがな」

    ベルトルト「法律のおかげで、探索依頼のこと…つまり、魔物の国のことを公に話しても、国の魔物たちが傷つけられることはなくなるってことか」
  196. 196 : : 2016/09/04(日) 23:18:13
    サシャ「そ、そうですね!じゃあ、その依頼の成功報酬は…!」

    ミカサ「東の国王が、なんでも一つ願いをかなえてくれる!」

    サシャ「!! じゃあ、ミーナのお願いと私たちのお願いを同時に叶えられるじゃないですか!!」

    キドラ「おお、これが噂の一石二鳥ッキー!」

    ミーナ「というわけで、もう一人出場者募集!誰かどう!?」


    ミカサとジャンは既にレイチェルさんと出ることが決まっている。ユミルとイーはどこにいるかわからない。

    なら後は、僕、ベルトルト、サシャ、キドラの誰かだ。


    ベルトルト「うーん…。出たいのはやまやまなんだけど、僕は出られないね」

    ライナー「? 何故だベルトルト?」
  197. 197 : : 2016/09/04(日) 23:26:03
    ベルトルト「僕は主に砂塵の槍を使った戦い方をする。…というより、それしかできない。けど、武闘大会っていうからには対人戦もあるんだろう。対人戦において、刃つきの武器を使えるか保証がないんだ」

    ミカサ「有り得る。木の武器を渡されてそれで闘えと言われるかもしれない」

    ライナー「成程な…」

    ベルトルト「ごめんねミーナ」

    ミーナ「ううん!仕方ないよ、ありがとう!」

    ライナー「ここは魔法の国と呼ばれるくらいだ。というわけでどうだ、アルミン、キドラ」

    アルミン「…サシャ、キドラ。どうする?」

    サシャ「私は…まあ、出なくていいですかね。大体、狩人の私からして不利な大会にしか見えませんよ」

    キドラ「オイラも。正直、目立ちたくはないッキーね。オイラが魔王軍だってことも考えて」
  198. 198 : : 2016/09/04(日) 23:33:21
    アルミン「じゃ、僕とライナー、ミーナだね。よろしくね!」

    ライナー「おう」

    ミーナ「大丈夫、頑張るから!ていうか、わたしが頑張らなきゃどうするのよ!」


    三人で明日の大会に向けて話し合わなきゃな。どんなことをやるかはわからないけど、キツそうな大会なのは間違いない。
    僧侶さんの話によると、世界中から実力者が集まるらしいし、勇者さんたちまで出てくるという。

    対人戦における立ち回り方を考えていると、前方から僧侶さんが走ってくるのが見えた。

    先にルイーダの酒場に行っていてもらったんだけど、依頼に関する資料がそろったのかな?


    ミカサ「…アルミン。あと一つ、エレンを助けるための願いがあるのだけど」

    アルミン「え?」
  199. 199 : : 2016/09/04(日) 23:42:08
    ミカサ「時の砂が、欲しい」




    ━━━━━━━━━
    ━━━━━━━
    ━━━━━
    ━━━



    アルミン「仲間の捜索依頼に大きな進展があったって本当ですか!!!?」

    僧侶「は、はい!!あちらにルイーダの酒場が!!」


    ミカサの言った時の砂のことについて言及しようとしたら、僧侶さんに急に言葉を告げられた。

    その依頼について、二人の人物から言伝を預かった。
    急いで確認してほしい。

    そうルイーダさんからの言葉を僧侶さんが言うと、それと同時にミカサとサシャが走り出す。

    一瞬遅れて、ライナーとベルトルト、ミーナが走り出して、キドラがミーナの肩に乗り移る。

    僕?

    勿論、僧侶さんの手を取って真っ先に走り出したさ!
  200. 200 : : 2016/09/04(日) 23:49:49
    東の王都、南部城下町、ルイーダの酒場にて。

    Mikasa side …


    早く、早く。

    ルイーダの酒場に着いたと同時に、ルイーダさんに駆け込む。
    ルイーダさんが資料を並べる時間すらも惜しい。

    早く、早く。


    ルイーダ「えーっと、じゃあ読むわね」


    後ろから遅れて誰かが酒場に入ってきた。
    ライナーたちとアルミンたち。
    …アルミン、真っ先に走り出したのに…。



    「『僕はこの東の国、東の王都に居る。いつまでも待っているよ』」


    「『マルコ・ボッド』」
  201. 201 : : 2016/09/04(日) 23:58:44
    アルミン「ま、マルコ………!!!」

    ライナー「よし!!」


    私たちはルイーダさんの言葉に歓喜し、安堵した。
    やはり、せめてもの噂だけじゃなくて、実際の証拠を目の前にした方が確信して、安心できる。

    何にせよ、良かった。

    本当に良かった…。


    ルイーダ「…あの、まだ一人分残ってるのよ?伝言」

    ミカサ「…え!?」


    ルイーダ「じゃ、言うわね」




    「『おれを探してくれてるのか!?ありがとな!おれも、これで張り切ってみんなを探せるぜ!!バカでもがんばるからな!!!』」


    「『コニー・スプリンガー』」




    …忘れていた。

    サシャの勘は、よく当たる。




    サシャ『コニーもどうにでもなる気がするんですよね』

  202. 202 : : 2016/09/04(日) 23:59:50
    今日はここまでにします。

    ありがとうございました。
  203. 203 : : 2016/09/05(月) 01:01:58
    次回の更新楽しみに待ってます
  204. 204 : : 2016/09/12(月) 09:42:09
    Armin side …


    「コニー!?あのハゲか!!あいつ、この大陸に来てたのか!?」


    予想外の珍事に驚いていると、ユミルとイー、それから教会で出会ったミリアがやってきた。ユミルも依頼の状況を確認したかったらしい。


    「うん。しかも、マルコよりも先にメッセージを残したらしくて…。マルコのメッセージを見てないんだ、多分。それで、もうこの国を出ちゃったって…」

    「なにやってんだあのバカ!!」


    まあ、僕たちも移動しているし、人のことは言えないけど。
    どうしようかと悩んでいると、ライナーがずいっと前へ出て話し始める。


    「ひとまず状況を整理しよう。これからの方針も含めてだ」




    「…イー。貴方そのサングラスとバンダナは?仮面はどうしたの?」

    「ああ、これか?ユミルが仮面のままだと身分がバレるだろって。それと、オレのこの国での名前はエレンだそうだ」

    「…は?」

    「文句ならユミルに言ってくれ」
  205. 205 : : 2016/09/12(月) 10:05:49
    ユミル「ところで、ジャンはどうした?」

    ベルトルト「ジャンなら西の王女様にさらわれたよ」

    ユミル「…あいつ、ついに婿入りか?」

    ミーナ「こらこら」


    ライナー「…で、マルコはこの国にいるんだな?」

    ミカサ「うん。ルイーダさんはそう言ってた」

    サシャ「じゃあ、後はやっぱりコニーですね」

    ライナー「なら、やはり目指すのはこの武闘大会の優勝だな」


    褐色少女「え、兄ちゃんたちも出るの?ベル兄も?」

    ベルトルト「僕は出ないけど、僕たちの仲間からは2チーム出るよ」

    褐色少女「えー、出ないのベル兄!!ちぇっ、ベル兄と戦えると思ったのによー…」

    ベルトルト「まった!ミリア、出るつもりなのかい!?」

    褐色少女「わるいか!!子供扱いすんな朴念仁兄!!」

    ベルトルト「ぼ、朴念仁?」
  206. 206 : : 2016/09/14(水) 14:30:44
    待ってました
    期待!
  207. 207 : : 2016/10/07(金) 22:37:31
    期待!
  208. 208 : : 2016/10/16(日) 13:40:17
    待ってまーす。
  209. 209 : : 2016/10/23(日) 14:54:55
    是非とも完結させてください。
  210. 210 : : 2016/11/03(木) 23:49:16
    頑張ってくださーい
  211. 211 : : 2016/11/04(金) 19:15:49
    楽しみにしております
    あ、コメント削除お願いします
  212. 212 : : 2016/11/07(月) 16:27:34

    サシャ「ミリアちゃんも出るってことは…えーと?何チームですか?」

    ライナー「オレとアルミン、ミーナのミーナ組。ミカサとジャン、西の王女様の王女組。最後に、ユミル、ミリア、イーのイー組だな。三組だ」

    ユミル「おい、それとこいつのこの国での名前はエレンだからな。間違っても本名の方で呼ぶなよ」

    ユミルの言葉に、一同の目つきが変わった。皆の想いは様々だろう。そして、その複雑さにあのユミルが気づかないはずがない。…聞いてみようか。

    アルミン「ちょっとユミル。理由は分かるけど、それは…」

    ユミル「しょうがねぇだろ、咄嗟に出た名前がそれだったんだから」

    …今、わけがわからないことを言ったぞ。ユミルの言う通りなら、イーは…。


    ベルトルト「…仕方ないか。君はそれでいいのかい、エレン」

    イー「ん?まあ、仕方ねえかな。我慢してれば、人間の生活も見られるんだ。文句はない。…多分」

    褐色少女「文句なんか言うなよ。私が大会に出られなくなる!」

    イー「お前の都合かよ」


    ミカサ「…彼女はイーのことを知らないの?」

    ベルトルト「物心がついてない時にはもう教会にいたらしいんだ。世間知らずなんだよ」

    ジャン「そりゃ都合が良い」

    ベルトルト「まあ、ラッキーだった…って!!?」

    ミカサ「ジャン。来てたの」

    西王女「私もな」

  213. 213 : : 2016/11/07(月) 17:05:51
    西王女「もうすぐ日の入りだ。急がないと、受付に間に合わなくなるぞ」

    ミーナ「ああっ、そうでした!」

    サシャ「走りましょう!」

    キドラ「ジャン、肩!」

    ジャン「またかよ!?」



    ━━━━━━━━━
    ━━━━━━━
    ━━━━━
    ━━━




    ミーナ「終わったよー」

    ライナー「やれやれ…本当にギリギリだな」

    褐色少女「もうすっかり夜だ。私はシスターの所に帰るぜ。ベル兄は?」

    ベルトルト「いや、今日は良いや。また明日会いに行くよ」

    褐色少女「りょーかい。んじゃ、また明日な~」

    ユミル「開会式は明日の正午からだ!忘れんなよ!」

    褐色少女「おう!」



    ミーナ「なんていうか…元気なっていうよりは男勝りな娘だねぇ。うちの訓練兵にはいなかったタイプだなー」

    ジャン「それに強いしな。あんなちっこい身体で斧をぶん回すんだぜ。しかも両手斧」

    ミーナ「うそ!!」
  214. 214 : : 2016/11/07(月) 17:14:57
    西王女「さて…私も宿に戻るとするか。お前たちもどうだ。勇者たちもいるぞ、それにすぐそこだし」

    ミーナ「はい!!ぜひ!!!」

    サシャ「ミーナ、テンション高いですねぇ」

    アルミン「そんなに勇者さんたちに会いたいのかな?」

    ミカサ「おとぎ話が大好きだったと思う。…ジャン」

    ジャン「わかってるぜ。明日の話だろう?宿屋についてからだ」

    ライナー「俺たちも作戦を立てなければな」

    西王女「よし、では行こうか」



    イー「…なあ、今から行く宿って俺が行っても大丈夫なのか?」

    キドラ「…かなーり不安だッキーが、何とかなるんじゃないかッキー?」

    ミカサ「いざとなったら匿うから、大丈夫」
  215. 215 : : 2016/11/07(月) 22:27:16
    「そういえば、そこの三人は知らんな。誰だ?」

    宿屋へと向かいながら、雑談をする僕たち。行く道は、城下町の中央通りらしく、この時間帯でもとてもにぎわっている。明日の準備をするのだろうか、飾りを両手に抱えた女性たちが大勢だ。


    「お初にお目にかかります。パラディンのベルトルト・フーバーです。以前、聖地であるシスターマリアの教会にて守り人を務めていました。アルミンたちの仲間です」

    「え、えっと…!み、右に同じく!吟遊詩人のミーナ・カロライナです!えーっと、ユグドラシ…じゃなかった、えーと、えーと…!な、南方の集落からやってきました!ベルトルトと同じ、アルミンたちの仲間です!」


    「うむ。そんなにかしこまらなくていいぞ。では、そいつは?」


    う。

    まずい、この場合、イーはなんて答えたらいいんだ?

    とりあえず素直にペラペラしゃべるのだけは止してくれよ…!
  216. 216 : : 2016/11/08(火) 23:17:05
    おかえりなさーーーい!
    まってましたぁ!
  217. 217 : : 2016/11/08(火) 23:21:28
    楽しみにしております
  218. 218 : : 2016/11/12(土) 00:33:59
    期待!
  219. 219 : : 2016/11/12(土) 16:46:40
    ある種の緊張感が異世界組に流れる。

    そして、イーの口が開かれ…。

    「初めまして、西の国の王女様。自分はエレンです。職業は剣士。ミーナより更に南方の地よりきました。また同様に、アルミンたちの仲間です」

    僕たちはあいた口が塞がらなくなった。



    「ほう、お前がエレンか!お前は死んだと聞いていたが…。無事で何よりだ」

    「そう簡単に死ねませんよ。まだまだすべきことがありますから」

    「うむ。大会では手加減せんからな。あと、敬語はいらんぞ」

    「オーケイ、よろしくな姫様」


    …一体何がどうなってるんだ?
    とりあえず、知ってそうな顔をしている彼女を手招きして、少し離れた所で話を聞く。


    「ちょっとユミル、どうなってるの?」

    「いや、私はとぼけろとしか言ってないぞ。ありゃアドリブだ」
  220. 220 : : 2016/11/12(土) 23:39:49
    「あれが…?」

    レイチェルさんと談笑するイー。とてもじゃないが嘘を吐いているような表情には全く見えない。

    …なんというか…。


    「…あざとい」

    「本当だよ。…それにしても、ちょっと妙だね」

    「…なにがだ?」





    君のその態度がだよ、ユミル。

  221. 221 : : 2016/11/13(日) 11:42:31
    「さ、ここだ。早く入ろう」

    ついた宿屋は、絢爛豪華なお屋敷。飾られた灯りが、夜の空から降る黒に相反するかのように煌々としている。

    元の世界では想像もつかないような光景だ。

    その幻想のようなお屋敷に、僕たち…特にサシャが興奮してしまっている。


    「げへへ……これだけ大きなお屋敷なら、出される食事はそれに見合う物でしょうね…。げへへ」

    違ったよ。ていうか女の子がげへへとか言わないでくれる?それも二回。


    「あー…。その、レイチェル王女」

    「ん?」

    「一応確認しておきたいんだが…ここ、宿泊料いくらなんだ?」

    「一人500ゴールド」


    …質問したライナーがフリーズした。いや、ベルトルトとミカサもフリーズしてる。ベルトルトは教会にいたから無償の提供が基本だっただろうし、ミカサは西の国で宿屋を経営していたから、その法外な値段がよくわかるんだろう。

    反対に、キョトンとしているのはミーナだ。…ミーナには金銭感覚を養ってもらわないと、ちょっと危ないかも。


    「ん?…ああ、宿泊費は気にするなよ。私が払ってやる。友人を招待しようというんだ、当然だろう」

    「ええ、そんな!悪いですよ、僕たちで合わせて4500ゴールドもするんですよ!?」
  222. 222 : : 2016/11/13(日) 12:44:50
    「それほど私の…いや、私たちのお前たちに対する期待が大きいということだ。シスターからお前たちの『役割』については聞いている」

    「え…」


    …『役割』。
    それは、誰しもが持つ神に与えられたもの。

    生きとし生けるものの多くは皆、“自由に生きる”という役割を持つ。
    けれど、極稀に決まった役割を持つ者がいて、その役割を全うしようとすれば、その者は無限の成功を果たすとか。

    そして、僕たちはなぜか、それぞれの決まった役割を持っている……らしい。しかも全員。

    ミーナやイー、キドラは知らないけど、イーはおそらく持っているだろうし、ミーナも可能性は高い。

    逆に考えれば、成功している人ほど、役割を持つ人ってことになるんだし。
  223. 223 : : 2016/11/13(日) 14:08:30
    「特定の役割を持つ者は大抵、大物になる。そして、私はお前たちが気に入った。西の国の王女としても、友人としても、私はお前たちを大切にしたい」


    王女の、本当の気持ちが伝わってきた。
    元々、民を大切に思う王族なんだ。当然といえば当然だけど、改めて彼女の心を知ることができた。

    「お前そういうところは王女っぽいよな」

    「言うじゃないかジャン。明日はこき使ってやろう」

    「げぇっ!!」

    「ふふ…。さあ、立ち往生していても難だ。中へ入るぞ」
  224. 224 : : 2016/11/13(日) 16:01:04
    中へ入れば、これまた昼間かと錯覚するほどのまぶしい光。
    どうやら、外観の灯りとは違い、中は火ではない光源を使っているらしい。

    奥の方に受付が、受付の両脇には赤のカーペットが敷かれた階段が見える。何で上に上がる階段が二つもあるんだろうか?見た所二つとも同じテラスへつながっているし。

    すると、右奥の人だかりから駆け寄ってくるシスターの姿が見えた……って、シスターマリアじゃないか。


    「ベルトルトさん!皆さん!レイチェルさんも!」

    「マ、マリアさん!?」

    「マリア!精が出るな、教えを広めているのか?」
  225. 225 : : 2016/11/13(日) 21:30:02
    頑張ってください応援しています
  226. 226 : : 2016/11/16(水) 00:42:32
    ファイトー
  227. 227 : : 2016/11/26(土) 12:16:27
    シスター「教えというほどでは…。ただ、わたしが信じる道を、皆さんに知ってもらいたいだけで。…あ、そうですベルトルトさん!今、ベルトルトさんのお話をしてたんですよ!」

    ベルトルト「え?」

    シスター「さあ、こちらへ!」

    ベルトルト「ま、待ってくださいシスター!」


    あ、ベルトルトが連れてかれた。

    人だかりの向こうであたふたしている姿を見ると、中々新鮮かも。

    ユミル「ん?あのシスターがいるってことは…」

    褐色少女「あれ、ユミル姉じゃん。なんでここに?」

    ユミル「…やっぱり」
  228. 228 : : 2016/12/07(水) 20:20:39
    期待!
  229. 229 : : 2016/12/15(木) 19:11:45
    楽しみやで
  230. 230 : : 2016/12/20(火) 00:12:12
    楽しみに待ってます
  231. 231 : : 2016/12/24(土) 00:48:09
    応援してますよー
  232. 232 : : 2016/12/25(日) 21:02:41
    ユミル「…で、何でこんなにイカつい連中がたくさんたむろってるんだ?」

    シスターやベルトルトの人だかりの所には、多くの市民たちがいる。
    ただ、それ以外の人々は、外行きの装備をしていたり、魔物を粉砕してしまうような武器を持っていたりと、間違いなく一般人ではない。
    いくら宿には冒険者が集まるとはいえ、商人や旅芸人の割合が少ない。

    褐色少女「この宿は、武闘大会の歴代の優勝者たちが泊まったってことで有名なんだ。そのジンクスにあやかろうってな」

  233. 233 : : 2016/12/25(日) 21:43:11
    ユミル「ジンクスぅ?そんなもので、勝ち残ろうってか?」

    褐色少女「この大会、かなり厳しいぜ。出場者は三人一組だが、合計すると千人は超える。その中から、褒賞を与えられる者は上位三組までだ」

    ライナー「そうすると…たった1%だけが勝者ってことか。なるほど、ジンクスにも縋りたくはなるかもな」

    西王女「もちろん、勇者たちが王宮に泊まらず、この宿に泊まってる理由は、大部分はそれだ」

    アルミン「大部分?」

    西王女「あとは私が推した。あのクソ王子の居る所に泊まってたまるか」

    ジャン「お前…西の国の王女として、そんな対応で良いのか?東の国王だって怒るぞそれ」
  234. 234 : : 2016/12/26(月) 20:51:28
    さぁ、早速夕食にありつきましょうとサシャが皆を急かしたとき、宿のエントランスの雰囲気が変わった。
    まるでモーゼが割った海の様に人だかりが両断され、そこから数人がこちらへ歩いて来る。

    勇者「アルミン君!」

    アルミン「勇者さん!…相変わらずわかりやすいですね」

    ミカサ「右に同意」


    ミーナ「ゆゆゆゆゆ!!勇者様!!!?」
    キドラ「うわ、なんだッキー!?ミーナがすごい早口に!」
    ライナー「気にしなくて良いぞ、緊張してるだけだからな」


    戦士「む、無事に会えたようだな」

    ジャン「あ?ミーナとベルトルトのことか?」
    西王女「ガラマぁ!!!その口を叩きつぶすぞ!!」

    魔法使い「マァヤ、アルミン君たちと居たのね」
    僧侶「はい。ルナさん、魔法騎士団のお仕事の方は大丈夫ですか?」
    魔法使い「副団長に全部投げてきたから大丈夫よ♡」
    サシャ「あーよく使いましたその手。主にコニーとエレンに」
    ベルトルト「いや…ぜぇ、ダメでしょ……ぜぇ」
  235. 235 : : 2016/12/26(月) 21:01:36
    ユミル「なんだ、逃げてきたのかよベルトルさん」
    イー「お前、人気者だな」

    ベルトルト「勘弁してくれ…」

    西王女「レオ、こっちがこいつらの新たな仲間だそうだ。右からミーナ、ベルトルト、エレンという」

    ミーナ「は、はじめまして!!!わたしはミーナ・カロライナです!!ど、どうぞよろしくお願いいたします!!」

    勇者「そ、そんなにかしこまらなくても…」

    ベルトルト「お会いできて光栄です。ベルトルト・フーバーと申します。この度は、シスターマリアや教会の子供達を保護してくださり、ありがとうございます」

    勇者「マリアさんも僕たちの仲間だ。そして、僕たちは守るべき人々を守る。当然のことだよ」

    イー「…エレンといいます、勇者レオ。どうかよろしく」

    勇者「…」
  236. 236 : : 2016/12/26(月) 21:29:29
    魔法使い「レオ?どうしたの?」

    勇者「…いや。とても腕が立ちそうだなと思ってね。君も明日の大会に出るのかい?」

    イー「当然」

    勇者「全力で闘うよ」

    イー「ならこっちも、手加減する気はねえよ」


    ユミル(バレたかと肝を冷やしたぜ…。勇者ってのは伊達じゃねえな)

    キドラ(一瞬臨戦体勢になったッキーね…。絢爛豪華な宿が瞬く間に廃屋になる所だッキーよ)


    シスター「もう、なんでどこかへ行っちゃうんですかベルトルトさん!」

    ベルトルト「すみません、ああいう場が苦手で…」

    僧侶「あ、マリアさん。鑑定士の役割で、ミーナさんたちの役割を見てもらっても良いですか?」
  237. 237 : : 2016/12/26(月) 21:34:29
    シスター「あら、ベルトルトさんの新しいお友達ですね?そういえば、ライナーさんやユミルさんの役割は見ていませんでしたね。ここで、ベルトルトさんたちの役割を全て把握しておきましょうか」

    アルミン「あ、じゃあお願いします」

    イー「役割?なんだそりゃ」
    ユミル「いわば神から与えられた啓司みたいなもんだな」
    イー「神に啓司ときたか。興味ねえなどっちも」
    ユミル「まあ、お前はそんな感じがするな」
  238. 238 : : 2016/12/26(月) 21:43:30
    シスター「えーと、それでは。鑑定しますね」


    「アルミン・アルレルト。汝、賢者の役割を担う者。だが、汝はその道へ向かってはいるものの、道の始まりを目にしてはいない」

    アルミン(方向性は間違ってない…ってことかな?)

    「ライナー・ブラウン。汝、戦士の役割を担う者。このまま進めば多大な成功を手にするだろう」

    ライナー「おお、大丈夫そうだな。良かった」

    「ユミル。汝、魔物使いの役割を担う者。進む道は違えど、その心は魔物使いも盗賊も変わらない。魔物に対する心を、人々に対する心として、義賊としてこのまま進むが良い」

    ユミル「義賊って…別にそんなんじゃねえよ」

  239. 239 : : 2016/12/26(月) 21:50:12
    「ミカサ・アッカーマン。汝、バトルマスターの役割を担う者。その道はまもなく頂に繋がる。後は汝の心次第で、その景色が見えてこよう」

    ミカサ「心…。そのままの意味ではなさそう」

    「ジャン・キルシュタイン。汝、魔法剣士の役割を担う者。その心は不本意とは思えども、姿は騎士そのもの。誇れ、さもあれば西は栄えん」

    ジャン「おい、それって…」

    「サシャ・ブラウス。汝、狩人の役割を担う者。汝は既に頂に達している。更なる道は、自らの手で創れ」

    サシャ「え」


  240. 240 : : 2016/12/26(月) 22:07:19
    「ベルトルト・フーバー。汝、パラディンの役割を担う者。神を信仰せずとも、汝の盾は既に守るべき者の前へと寄り添っている。次は、汝の槍を何に向けるかだ」

    ベルトルト「倒すべき相手を、間違えるなということですか。…わかりました」

    「ミーナ・カロライナ。汝、スーパースターの役割を担う者。汝が焦がれた者に、汝が成るべき時が近づいている。先ずは、舞う者と成るべく動き出すべし」

    ミーナ「ごめん待ってツッコミどころ多い。多いよ」



  241. 241 : : 2016/12/26(月) 22:13:08
    「エレン。汝…」

    イー「…」

    「…」

    ベルトルト「…マリアさん?」

    勇者「?」

    シスター「…初めて見ました。役割を複数与えられている人を」

    イー「…へえ。ちなみにどんな奴なんだ?」

    シスター「ごめんなさい、わかりません」

    イー「は?」


    勇者「…!」

    アルミン「…わからないなんてことがあるんですか?」

    西王女「マリアとは幼少の頃からの付き合いだが、これは初めて見るな。複数の役割も、わからないなんてことも」
  242. 242 : : 2016/12/26(月) 22:17:43
    勇者「すまない、今日はここまでにしておこう。明日も早いし、英気を養っておかないと」

    シスター「お気遣い、ありがとうございます。ごめんなさいね、エレンさん」

    イー「いや、大丈夫だ。わるいな」

    シスター「ミリア、行きましょう。おやすみなさい、ベルトルトさん、皆さん」
    褐色少女「ユミル姉、エレン兄!!明日、絶対勝とうな!!」

    イー「おーう」
    ユミル「よく寝ろよ!」

    褐色少女「子供扱いすんな!」
  243. 243 : : 2016/12/26(月) 22:24:20
    勇者「じゃあ、そういうことで」

    アルミン「はい、また明日」

    僧侶「レイチェルさんは、ミカサさんたちと寝るんですよね?」

    西王女「は!?一体いつそんなことを言った!?」

    僧侶「え、だってガラマさんが…」

    戦士「ぐっどらっく、だな」

    西王女「貴様ぁ…!!…貸しにしておいてやる」
    戦士「それはこっちの台詞のはずなんだが…」



    アルミン「…ねえ、ミカサ」

    ミカサ「うん、わかってる。…何か、おかしかった。シスターじゃなくて、勇者さんが」

    アルミン「うん。…悪いことではないはずだけど、なんだろう」

    アルミン(寧ろ悪いのってこっちだよね。魔王軍に所属する二人を匿ってるんだし…)

    アルミン「うーん…」
    キドラ「? どうかしたッキーか?」
    アルミン「いや、心臓に悪いなぁと」
    キドラ「へー」
    アルミン「主に君たちのせいなんだけど…」
  244. 244 : : 2016/12/26(月) 22:34:40
    勇者「…シスター」

    シスター「…はい」

    勇者「どこまでが、本当なんだ?」

    シスター「彼…エレンさんが役割を複数持っているのは、本当です」

    勇者「具体的にはいくつ?」

    シスター「三つです」

    勇者「なるほど、確かに多い。…では、嘘をついたのは?」

    シスター「彼の役割をわからないと。そう嘘を告げました」

    勇者「何故?」

    シスター「彼の役割に、彼が気づくこと。それが、彼以外のものに多大な影響を与えてしまうからです」

    勇者「周囲というと…どのくらいなんだ?」

    シスター「この世界と、アルミンさんたちの世界。それが最低限ですね」

    勇者「…最大限は?」

    シスター「同じ時を生きる命やその世界全てです」

    勇者「…なんて話だ」


    「彼は…何者なんだ?」

    「私にはわかりません。しかし、知らなければならない事項が一つあります」


    「彼は…、一体、どこから来たのでしょうか?」
  245. 245 : : 2016/12/28(水) 20:54:48
    更新ありがとうございます!
    期待です!
  246. 246 : : 2016/12/30(金) 15:23:03
    応援してまーす
  247. 247 : : 2016/12/30(金) 16:56:00
    都に進むは古より来る魔

    都に立つは英雄か

    はたまた墓標か…



    「…迫っている。光でもない、闇ですらない。東の王都に、悪が迫っている…!」

    「…どうすんの賢者。あんたは行くの?」

    「私は…どうでしょうね。私は人の世から離れた、いわば世捨て人。今更人々を助けに行くなんて…。まあ、勇者くんもいるし。あの子がピンチになるなら行きますけど」

    「どんな賢者だ」

    「じゃあ、貴女はどうするのですか?気高き獅子よ」

    「獅子っていうのやめてくれない?ガラじゃないんだけど」

    「良いじゃないですか、名前にも入ってるんだし」

    「はぁ……。……いや、私も行かないよ。私にはすべきことがまだ残っている。アイツからの頼まれごと、面倒が重なってるけどね」

    「愛故にですね!」

    「それに、13人の内10人も集まってるんだ。舐めてもらっちゃ困るね」

    「ちょっと、無視は良くないですよ?」

    「あいつ等はただの10人じゃない。アイツに惹かれて引っ張り上げられた十振りの刃だ」

    「おーい、アニちゃーん?」



    アニ「魔物だろうがなんだろうが敵じゃない。自覚さえしてれば、無敵の十人だ」
  248. 248 : : 2017/01/10(火) 22:07:56
    これ最初に見た時は面白いので丸一日潰して見てました(笑)
    104期生とドラクエ好きなんで更新を楽しみにしてます!!
  249. 249 : : 2017/01/15(日) 11:52:10
    ↑同じく!
  250. 250 : : 2017/01/25(水) 17:11:17
    楽しい
  251. 251 : : 2017/02/02(木) 11:21:12
    「…今日の良き日に、我々は自らの体と技、魂を以て、覇を競う。年に一度のこの戦を、我らが神々は見守っておられる。神々に恥じぬ戦士としての戦に我らは生きることを、誓う」

    「第二十八代東の王、アシェン・ロイヤルの名において、第八百四十三回東国武闘大会の開催を宣言する」




    わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………!!!!!!!


    東の王様の言葉が、国中を揺らす。
    我こそがと武器を握るもの。
    今回はアイツが勝つな、と金貨を手に賭けるもの。
    妖しく目を光らせるもの。

    様々な者たちが、この武闘大会を待ちわびていた。

    そしてこの大会こそが、僕らの運命を決定づけるものとは。

    まだ、誰も予想できなかった…。
  252. 252 : : 2017/02/02(木) 12:09:42
    「本日は予選が行われる。その予選により、三百五十五組の出場者の内、八組に絞られる。そして明日の本戦、トーナメント方式によって順位を決めていく。褒章は3位は100000ゴールド、2位は一級品の武具防具一式、1位は”可能な限りなんでも王様が叶えてあげるよお願い券”といたす」




    アルミン「…なんていうか、あの王様真面目だね」

    ライナー「全くだ。真顔で、可能な限りなんでも王様が叶えてあげるよお願い券と言うとか…。真面目と言うよりお茶目だな」

    ミカサ「冗談は通じるらしい」

    ライナー「それはレイチェルから聞いたのか?…その本人がいないようだが」

    ミカサ「今にわかる」

    アルミン「?」



    イー「おい、大丈夫かお前…」

    ミーナ「き、緊張して、気持ち悪い…」

    褐色少女「あれ、ベル兄やサシャ姉は?」

    ユミル「あいつ等は今回出ねぇからな。観客席だ」

  253. 253 : : 2017/02/02(木) 14:10:36
    東王「では、今回の特別出場者の紹介をさせていただく。我が盟友である西の王トール・イェーガー殿の愛娘、レイチェル・イェーガー王女である!」


    ライナー「…なるほど、西の王女としての挨拶か」

    ミーナ「…よくあんなところで堂々と立ってられるねぇ…私だったら死んじゃいそう」

    ユミル「…おい」

    アルミン「え?」

    ユミル「レイチェルの後ろで突っ立ってんのって…」




    ミカサ「…」
  254. 254 : : 2017/02/02(木) 14:20:51
    西王女「此度はお招きいただき、誠にありがとうございます。ロイヤル国王」

    東王「なに、友人の娘の頼みだ。いくらでも甘えさせてやろう。…それと、トール殿はそなたのことを知らぬな?」

    西王女「はい、お察しの通りです」

    東王「ふむ、なんとも豪胆。だが、それもまた今の世界には必要か」



    イー「…あいつら、あの日常会話をオレたちに聞かせ続けるつもりか?」

    褐色少女「まあ、仲良しだってこと見せつけられて良いんじゃないの?」
  255. 255 : : 2017/02/02(木) 14:25:47
    東王「して、一つだけ聞かせてもらいたいのだが」

    西王女「はい、なんなりと」

    東王「そなたの後ろに立つ男は……何者だ?」

    西王女「申し訳ありません。この場を借りて、世にお披露目したい男であります」

    東王「…なんと」

    西王女「…来なさい、我が剣よ」


    ジャン「…マジかよ」




    ユミル「ゲッ、マジでジャンじゃねぇか!」

    ライナー「お、おい、ミカサ!一体何がどうなってるんだ!?」

    ミカサ「西の王女としての戦略、らしい」

    アルミン「…もしかして、ジャンってとんでもない人に目をつけられたんじゃないの?」
  256. 256 : : 2017/02/03(金) 11:13:41
    ジャン「おい、どういうことだ!?良いから黙ってついて来いとか言われたと思ったらなんだこの状況!!なんで正装までさせられてんだよ!!」

    西王女「似合っているぞ」

    ジャン「違う!!そういう問題じゃねえ!なんのつもりだって聞いてんだよ!!」

    西王女「さっきも言った通りこれはお披露目会だ。正確には、私とお前のな」

    ジャン「…オレはわかる…いや、わからねえけど。じゃなくて、オレはともかくなんでお前なんだ?」

    西王女「正直な話、私は知名度が低い。何せ、父上は私を表舞台に出しはしたものなにもさせなかったからな」

    ジャン「そりゃ単にお前がお転婆だからじゃねぇの…」
  257. 257 : : 2017/02/03(金) 11:35:03
    西王女「カリスマが必要なんだ。多くの兵を率いるためのカリスマが。対魔王軍の精兵部隊…。さぞ強き者たちが集まるだろう。それを率いる為には、それ以上の強さか、それに準ずるカリスマが必要なのだ」

    ジャン「…はあ。まあ、それは分かった。じゃあ、何でオレなんだ?」

    西王女「私は今齢十七…。そろそろ婚約者候補の一人や二人が出て来なければまずい時期だ」

    ジャン「はぁ?婚約者?」

    西王女「今のところの第一候補は東の第一王子、パッセン・ロイヤルということになってはいるが…。お前も知った通り、あんなキモ王子と添い遂げる気は毛頭ない」

    ジャン「おい、目の前に親がいるんだが!?」

    東王「いや、構わん。儂もそう思うておる」

    ジャン「良いのかよ…」
  258. 258 : : 2017/02/03(金) 11:39:47
    ジャン「ん?ちょっと待て。ってことは、オレは…」

    西王女「そうだ。先日の別れ際では曖昧になってしまったが、改めて告げよう」



    「ジャン。我が騎士となれ。我が剣として、盾として、西の国とこの世界を導くのだ」

    「そして、世界に平和が訪れた暁には我が夫になり、私をお前の腕で抱いてくれ」



    ジャン「…マジか?」


    西王女「大マジだ」
  259. 259 : : 2017/02/03(金) 12:17:36
    ジャン「…えーっとだな」

    西王女「返事はまだ良い。だが、我が騎士となることは既に決定した」

    ジャン「はあ!!?」

    西王女「共に行くぞ。我々は力を示さねばならん!」

    ジャン「おいおいおい…!」




    ライナー「…とんでもないことになったな」

    アルミン「僕たちの中でも一番の出世頭だよ」

    ライナー「いや、出世は良いんだが…。アイツ、この世界に残るのか?もし仮に、俺たちが元の世界に帰る術を見つけたとしても、それでもレイチェル王女のそばに居るのか?」

    アルミン「…残念ながら、それは僕たちが決めることじゃない」
  260. 260 : : 2017/02/11(土) 00:33:31
    なんかすごい展開になってきた
  261. 261 : : 2017/02/23(木) 13:39:57
    頑張ってくださーい( ˆoˆ )/
  262. 262 : : 2017/03/09(木) 23:48:22
    期待!
  263. 263 : : 2017/03/18(土) 14:03:55
    更新がない…
  264. 264 : : 2017/04/02(日) 01:47:21
    ふぁいとぅー
  265. 265 : : 2017/04/12(水) 05:55:08
    つづき期待!!
  266. 266 : : 2017/04/29(土) 18:12:02
    9要素入れてください。

  267. 267 : : 2017/04/29(土) 18:12:13
    例えば
  268. 268 : : 2017/04/29(土) 18:13:22
    天の方舟で
    元の世界にもどるなど
  269. 269 : : 2017/05/07(日) 19:10:16
    待っとります
  270. 270 : : 2017/06/05(月) 11:11:34
    すごい間が空いたなぁ
  271. 271 : : 2017/08/21(月) 10:41:10
    放置やめてー
  272. 272 : : 2017/10/10(火) 00:18:07
    長々と放置して申し訳ありませんでした。
    内容もうろ覚えになってしまいましたが、これからは更新出来る時にして必ず書き終えます。
  273. 273 : : 2017/10/10(火) 00:24:46
    「すまんな、こんな形で。どうしてもお前が欲しかった」
    「前々から思ってたんだけどよ…何で俺なんだ?お前王女だろ。男なんて選り取り見取りだろうが」
    「…女が男に惚れる理由なんて単純なものだ。男が女に一目惚れするようにな」
    「その理論だとお前は俺に一目惚れしたってことになるんだけどよ…」

    あり得んな。そう吐き捨てる西の王女。彼女は後に、勇者レオにその理由を語っている。

    別にかっこよくもなんともなかった。ただ、自分を守る為にその背中を何の躊躇もなく見せてくれた。
    欲しいと思った理由なんてそれだけだ、と。
  274. 274 : : 2017/10/10(火) 00:29:55
    「以上、西の王女レイチェル・イェーガーによるお言葉であった。…ではこれより、予選のルールを説明する!」

    東の王、アシェン・ロイヤルの言葉が強者たちの心を引き締らせる。
    今年は何だ。
    バトルロワイヤルか。
    チキンレースか。
    争奪戦か。
    なんにせよ、混戦苦戦必至に違いない。

    「今年は、魔物との融和をテーマとする!!」


    『……』




    は?
  275. 275 : : 2017/10/10(火) 00:41:00
    「これより一刻、魔物を王都の至る所に出現させる!全ての魔物が、一流のモンスターマスターの魔物たちなので、無闇に危害を加えることはない!その点は安心して欲しい」
    「そして、一体の魔物をこの本戦開催予定のここ、闘技場へと連れてくるのだ!その魔物のレアリティ、強さ、連れてきた時間により点数をつける!その合計点数により順位を決め、上位八組を本戦出場とする!」
    「そして!絶対のルールとして、魔物を傷つけることを禁ずる!傷の1つでもあった時点で失格だ!」

    アシェン王が立て続けに並べたルールに、出場者たちのほとんどが怪訝な顔をする。
    途中までは良かった。魔物を捕らえて、連れてくる。それはただ単純なルール。
    しかし、最後のルールである、魔物への傷害の禁止がよく理解できないのが大半。
    それでは、剣闘大会だなんて言えるのか?
    そもそも、魔物を無傷で無力化するのも相当難しいだろう。
    アルミンの仲間内では、特にユミルやミカサ、ベルトルトがその真意を測りかねていた。
    ミカサは、敵なんて打ちのめすのみ。
    ユミルは、何故魔物を傷つけないのか?
    ベルトルトは、敵に容赦をしてはこちらの命が逆に危なくなる。
    三人ともが、疑問を持って王の言葉を案じていた…。
  276. 276 : : 2017/10/11(水) 21:12:58
    その魔物は走っていた。
    生まれてこの方、彼は眠るとき以外、その俊足を休めたことがなかったのだ。…いや、正しく言えば一度だけあった。
    つい先日、ある人間に捕えられた、その時だ。その人間はモンスターマスターという者らしく、彼に肉を与えてくれた。…餌付けである。何でも、東の王都中を暫くの間走り回っていれば良いらしい。

    それだけで良いのか。常に走り続けているこの僕に、走れと。

    お安い御用だと引き受けた一昨日の自分とモンスターマスターに渾身の体当たりをかましてやりたい。

    なに安請け合いしてるんだ僕!
    そしてMMの女!説明が足りないぞ!


    走っている間、こんな化け物たちが襲ってくるなんて!!


    「そっちだミカサ!!」
    「わかってる」
    「身体が金属の魔物は大体強い筈だ!必ず捕まえるぞ!」
  277. 277 : : 2017/10/11(水) 21:44:43
    時がさかのぼること10分。

    予選が始まってから20分、その魔物を目に捉えたのはミカサだった。…正しく言えば、捉えられたのは、である。
    ミカサ自身もあまり確信が持てなかった。目の前を過ぎ去ったものが、魔物だということが。

    「…銀色の、風?」
    「すげえ風だったな。今日はそんなに天気が荒れてるってわけじゃないんだが…」
    「…違う…!?」
    「あ?なにが?」

    「魔物、かもしれない…」

    「! 本当かミカサ!」
    「もしかして、メタル系の…!やべぇ、早く追うぞ!」


    ジャンは、メタル系の特徴である、魔物の韋駄天なんて目ではないほどの俊足と、その硬度を知っていた。

    その二つの特徴から、生態系や生活圏までわかっていないことが多く、魔物としての珍しさもかなり高い。

    間違いなく、点数も高いであろう。
  278. 278 : : 2017/10/11(水) 22:31:06
    ミカサとレイチェルが、凄まじい速度で走る銀の魔物を追う。
    当然、普通に走っても追いつけない為、二人は家々の屋上や屋根を伝って追っていた。

    特にミカサは慣れたものである。
    元の世界では、対巨人の想定訓練において、町中での戦闘訓練もあったのだ。

    王都での予選ということで、勿論、建物や銅像といった障害物や、更には外で見学している人もいる。

    危ないので家の中から見るようにと、王からのお触れは出てはいるが、忠告なだけであって命令ではない。
    迫力があって良いと、命知らずな物好きも多いのだ。

    …無論、魔物たちが人に危害を加えることはなく、予選参加者たちもその配慮を行うよう告げられている。



    ジャンは銀の魔物の姿をようやく捉えた後、先回りをしていた。
    それと同時に、その魔物に対する分析も進めていた。

    「…もしかしてあれ、メタルキング…?いや、それにしては妙にでかいような…」

    ジャンの眼下にはミカサとレイチェル、そして二人に肉薄されている魔物の姿が見える。

    二人の美少女に迫られている光景は羨ましく見えなくもないが、方や真顔の双剣使い、方や豪と拳を放つ切れ長の目の王女。

    攻められる側としてはたまったものではないだろう。
  279. 279 : : 2017/10/28(土) 23:39:50
    主要キャラの中にミーナが混じってるの違和感あるな
  280. 280 : : 2017/11/06(月) 02:21:17
    めっちゃ期待です!
    ほんと凄く面白くてお腹が痛くなりました!w
  281. 281 : : 2017/11/26(日) 21:09:32
    期待
  282. 282 : : 2017/11/26(日) 21:10:48
    です!✨
  283. 283 : : 2018/01/11(木) 17:12:56
    期待です
  284. 284 : : 2018/03/29(木) 11:42:13
    期待です
  285. 285 : : 2018/05/12(土) 23:03:19
    更新マダー?
  286. 286 : : 2018/07/12(木) 14:52:43
    早く更新しろよカス
  287. 287 : : 2018/07/21(土) 19:19:38
    期待してたんだけどな
  288. 288 : : 2018/07/27(金) 09:12:29
    凄くもったいないなぁ
  289. 289 : : 2018/09/18(火) 10:42:17
    更新早く
  290. 290 : : 2018/11/14(水) 18:45:57
    待ってます!
  291. 291 : : 2018/11/19(月) 22:29:48
    ずっと待ってますよ!
  292. 292 : : 2019/01/17(木) 19:44:32
    更新マダー?
  293. 293 : : 2019/03/03(日) 08:00:25
    まだか?
  294. 294 : : 2019/04/15(月) 03:14:59
    マダー?
  295. 295 : : 2019/05/08(水) 13:06:03
    更新まだッスか?
  296. 296 : : 2019/05/09(木) 01:18:12
    頑張ってください!
  297. 297 : : 2019/06/26(水) 22:50:13
    生きてますかー?
  298. 298 : : 2019/08/10(土) 18:21:10
    おーい生きてるかー?
  299. 299 : : 2019/11/23(土) 07:52:48
    ミカビッチ死ね
  300. 300 : : 2020/02/01(土) 02:51:50
    引退したならスレ消した方がいいと思うぞ
  301. 301 : : 2020/04/21(火) 07:51:00
    引退したんなら報告くらいしてほしいな
  302. 302 : : 2020/06/10(水) 11:49:45
    今回、三年も放置したことになります。
    誠に申し訳ありませんでした。
    今後の展開で不可解な点が出来、それをどう変更するか‥と悩んでいた次第ですが、忘れていたことになります。
    尚エレン改変のssは、原作が凄まじい方向へ舵を切ったため、流石に原作に横付けができなくなり、削除いたしました。
    誠に申し訳ありません。
    今後、ssnoteが廃れていくとは思いますが、このssだけはせめて完結させるつもりです。
    気長にお待ちください。
  303. 303 : : 2020/06/10(水) 12:46:32
    期待してます!
  304. 304 : : 2020/06/11(木) 21:53:12
    >>302
    生きてたのか
  305. 305 : : 2020/06/11(木) 22:00:20
    別に無理に原作に沿って書く必要無くね?
    SSなんだから好きなように書けばいいだろ
  306. 306 : : 2020/06/11(木) 23:09:40
    >>302
    このスレが完結したら引退しちゃうんですか?
  307. 307 : : 2020/06/12(金) 14:38:13
    「‥おい、なにしてる‥‥っていうか、どうなってんだお前?」
    「ん?」

    イーとミリアは目の前の光景に圧倒されていた。
    数多の魔物たちが暴れることもなく、逃げ出すこともなく、車座を作るように並んで座っている。
    その中心にいるのはユミルだ。

    競技が始まり、いざ魔物の捕獲・選定をと意気込んで街に出ると、何故か出くわした魔物が皆ニコニコしながらユミルのところへと擦り寄ってきたのだ。

    「‥多分、魔物使いの役割を持ってるからだな。シスターに言われたやつ」
    「相変わらず反則臭いな、役割って」

    王都に放たれた魔物たちは皆全て、一度モンスターマスターによって捕らえられ、訓練されていた。
    それ故か、魔物使いであるユミルにもなつき易いのかもしれない。

    「エレン兄ちゃんは役割、いくつかあるんだろ?何があるんだろうな!?」
    「エレ‥‥‥あ、ああ。なんだろうなあ」

    エレンと呼ばれることにまだ慣れておらず、返事にとまどうイー。
    役割というものについては理解できていた。
    だが、それがまさか自分にまであるとは。
    もしかしたら、魔剣士という役割をもっているのかもしれない。
    だが、複数あるというし、それがわからないという。

    「‥なんだろうな」
    「?」
    「おいこら‥くっつきすぎだってお前ら。誰選ぶかな‥この中から」
  308. 308 : : 2020/06/12(金) 21:51:51
    エレヒスですか?エレアニですか?それともハーレムですか?
  309. 310 : : 2020/06/13(土) 15:46:55
    一方、ミーナ、アルミン、ライナーの三人は。

    「え~ん、なんでみんなどっかいっちゃうわけー!?」

    ミーナの言葉に、ライナーとアルミンはそれぞれ辺りを見渡す。
    魔物はいることにはいる。
    それこそ地を這うよろいムカデ、街を我が物顔で歩くギガンテス、宙を羽ばたくプテラノドン。
    だが、どれも彼も皆一方向を目指して脇目も降らずに歩いていくのだ。

    「何か目指してる‥と思うが、どうするアルミン。追うか?」
    「‥迷いどころだね。追って解決できて、尚且つ僕らに靡いてくれる魔物がいるかどうか。それよりも、更に遠くの魔物を探しに行くか‥」

    残り時間はおよそ一時間。
    開催式が行われた場所は王城が擁する闘技場で、アルミン達がいる地点からは急いで走って5分といったところか。

    「時間も遅れれば遅れるほど減点される。‥急がないと」
    「じゃ、じゃあ‥‥や、やっぱり追わない方がいいってこと!?」
    「うん。解決できる自信がない。ここはさらに王都の外側に向けて‥‥」

    アルミンが言葉を言い切るその時、鐘の音が響く。
    王城に備え付けられた大きな撞鐘だ。

    「へ?もう時間?」
    「いや、これは‥」
  310. 311 : : 2020/06/13(土) 16:18:32
    東の王都、王城内部闘技場にて。

    『なななななな、なんということでしょ~~~か!!』

    闘技場の観客席が騒めく。
    東の王、アシェン・ロイヤルも驚きを隠せないでいた。

    競技開始から一時間足らず。
    既に、魔物を引き連れたパーティが到着したとの報せが入ったのだ。

    しかも、二組。

    一組はわかる。
    勇者パーティだからだ。
    彼らの強さは既知であり、寧ろ予選など必要ないのではと言われたほど。
    公平を期す為に予選に組み込まれたが‥。

    もう一組はというと、まだうら若き少年一人少女一人、更に幼い少女とが一人。
    風体だけ言葉にして聞くと、とてもではないが他の冒険者たちよりも早く魔物を連れて戻ってこられるとは思えない。

    だが、その少年たちを見たアシェン王は。

    (‥儂の考えは、浅はかじゃったの)

    「まさか、君たちと同着とはね‥」
    「流石に勇者って呼ばれてるだけはあるな。こっちちょっと反則気味の手を使ってんのによ」
    「は、反則?」
    「おい、余計なことは言わなくていいぞ。ていうか前に出過ぎてんなよエレン」
    「ぐえっ」

    『まさかの同着!!時間点は両パーティ満点です!!』
  311. 312 : : 2020/06/13(土) 16:49:17
    東の王都、南部城下町にて。

    『帰還パーティ発生。残り時間54分、現在二組!』
    「え゛」

    ミーナがピシリと固まる。

    「もう出たか!!‥‥ミーナ、アルミン!急ぐぞ!!」
    「あれ?見て二人とも!!」

    アルミンが指さす先。
    さっきまでは魔物たちが一方向に向かって流れを作っていたのに対し、今は先ほどまでの様相はどこへやら、自由なままに過ごしている。

    「?? なんだ、終わった‥のか!?」
    「ちゃ、チャンスだよ!今なら近くの魔物たちも手懐けられる!!」
    「け、けど‥‥だからと言って懐いてくれるかどうかは別問題だ!!」

    魔物たちはアルミンたちのことを見向きもしない。
    なんとか魔物たちの前へ出てアピール(?)してみるが、一瞥されただけでそっぽを向かれている。

    「これ‥‥どうしたらいいのーー!?」
  312. 313 : : 2020/06/13(土) 17:05:04
    「そう。魔物はすべて私が一度懐かせた魔物たち。だからこそ、私を上回る何かがないと興味すら抱いてくれない」

    くすりと、滑らかなブロンド髪の女性が笑う。
    王都の上空。
    参加者たちを見下ろすように、金色に輝く大きな鳥が羽ばたいていた。
    その背中に、彼女はいた。

    「さて‥‥何組が通過できるかしら?」
    「貴女も意地が悪いですね。点数制などにしなくても‥‥。どんな魔物でも懐かせられるかどうかすらわからないのに」
    「万が一があっては困るじゃない?ねえ、ラーミア」

    くすくすと子供のように笑う女性を乗せたその神の鳥は、競技参加者たちを気の毒に思った。
    これでは競技が成立しない。
    予選通過パーティは8組までのはずだが、これでは8組も出るかわからない。

    「! ‥ラーミア。出たわよ」
    「‥不届き者ですね」

    一人と一羽の眼下には、魔物に対して危害を加えている参加者たち。
    脅しとして繰り出された攻撃が当たってないならともかく、当てていたらどんなつもりでもアウトだ。

    「いくわよ!」
    「はい!」
  313. 314 : : 2020/06/13(土) 17:08:11
    >>304 生きてました
    >>305 確かにそうですが、これは自分の中での問題です
    >>306 実は色んなところで小説は書いています。しかし、ここでSSを書くかどうかは未定です
    >>308 何も考えていません。展開によります
  314. 315 : : 2020/06/14(日) 10:47:17
    >>314
    ここ以外でも活動してたの?よければSSのタイトル教えてほしいんだが
  315. 316 : : 2020/06/14(日) 21:58:47
    >>315 ごめんなさい、進撃の巨人ではありません


    競技開始から1時間30分。
    ラーミアの予想とは少々外れ、既に10組が闘技場に魔物を連れて戻ってきていた。
    モンスターマスターの影響下にあった魔物たちが、一度ユミルに惹かれたことにより、多少は他の者に靡きやすくなったと言える。

    そして、ミカサ・ジャン・レイチェルの三人もなんとか戻ってきていた。
    ‥とても、苦労しながら。

    「‥おい、そろそろ自分の足で歩けお前!」
    「ぷぎ、ぷぎ!王たる僕に自分で歩けと!?」
    「お前さっき全力で走ってただろうがこのきらきらデブ!!」

    「‥レイチェルさん、あの魔物は‥」
    「ううむ、私の知識にはない。ジャンの魔物図鑑はどうだ?」
    「ジャンの図鑑にも乗ってなかった。けど、ジャンの機転が利いてよかった」
    「まさかくんせいにくで餌付けできるとは思わなかった。ていうかあやつ、私たちが二人で魔物を追い詰めている間に肉屋で呑気に買い物していたということか?」
    「‥それは、気にしないことをおすすめします」
  316. 317 : : 2020/06/15(月) 09:11:28
    『現在帰還パーティ10組!残り時間、25分です!』

    「うわぁどうしようどうしようどうしよう!!」
    「落ち着けミーナ!戻る時間を考えてもまだ10分はある!」
    「あと10分しかないよう!!あ〜〜、どんどん点数が減ってく‥!」

    けど、どうしようもないと状況を確認するアルミン。
    既に目に見える周囲の魔物は全て声をかけた。
    だが、誰も懐いてはくれなかったのだ。
    エサがいるのでは?と肉を与えたものの、それも反応なし。

    「も、もう時間が‥」
    「‥アルミン!」
    「まだだ!魔物の中には周囲の風景に擬態したり、隠れたりして身を隠す魔物もいる!その魔物たちを探そう!強さという点では点数は低いかもしれないけど、珍しさで点数を採りにいく!」
    「そ、それを見つけるのか!?わざわざ見つけにくい魔物を!?」
  317. 318 : : 2020/06/15(月) 09:12:51

    ライナーはキョロキョロと辺りを見渡す。
    既に何度も見た風景だ。
    石造りの家々、石畳の道。
    あの噴水は先ほども前を通ったばかり。
    他には王都に住む人々がライナーたちを観戦していたり、あの動く石像にも声をかけたばかりだ。

    「‥隠れてる魔物なんて、いるのか!?」
    「わかんないけど、探すしかないよ!」
    「わ、わかった!急がなきゃ‥‥ふぎゃ!?」
    「ミーナ!?」

    走り出してすぐにミーナが石畳につまづいて転んでしまう。
    やっちゃった‥‥と、起き上がろうとするも、見上げるとなぜか暗い。
    動く石像の真下に転んでしまったらしい。

    (‥そういえば、動く石像の服の下ってどうなってるんだろう?)
  318. 319 : : 2020/06/15(月) 09:15:57
    「‥おい、ミーナ?」
    「ちょっ、ミーナなにしてんの‥‥」

    なぜかミーナが動く石像の真下で立ち上がり、ゴソゴソと動く石像の服にあたる部分の内側をまさぐっている。

    「‥おい、あのミーナの姿‥‥一歩間違えば変態だぞ」
    「やめてよライナー、言いがかりは‥‥相手は魔物じゃないか。‥‥だから、見なかったことにしよう」
    「‥うん、それが正解だな」
    「ねえ、ふたりともー」
    「ミーナ、変態じみたことしてないで急ぐぞ!!」
    「無視できてないじゃないかライナー!!」
    「なんかいたー」
    「「‥‥へ?」」
  319. 320 : : 2020/06/15(月) 09:24:08
    東の王都、王城内部闘技場にて。

    「‥あと、2分!」
    「おい、ミーナたちがまだ戻ってきてないぞ!?誰か見てないのか!」
    「一緒の方向に行ったら魔物たちを見つけにくくなるから分散しよう、とかぬかしたのはアルミンのアホだぜ!?そのアホが戻ってきてないとかバカじゃねえか!!」

    「‥アルミン」
    「あいつ、大丈夫なのか?頭良いって聞いてたけどよ‥」
    「‥‥アルミンなら平気」
    「その根拠は?」
    「‥エレンと」
    「ん?‥いや、オレじゃなくてアレか、お前らの仲間の方か」
    「エレンと、私が‥信じてる」
    「‥へっ、言うじゃねえか」
  320. 321 : : 2020/06/15(月) 09:35:20
    観客席。

    「あ、ああ!あと1分しかないですよう!ど、どうしましょう!やっぱり、隠れてついて行った方が良かったですかね!?」
    「いや、それ反則だッキーよ?」
    「‥ベルトルトさん。ライナーさんたち‥」
    「‥信じましょう。この大会で優勝すれば、仲間探しに進展ができます。コニーとアニを、なんとしても探し当てるためにも‥‥ライナーたちが、こんなところで躓くはずが無い!」
    「あ、見てください!」

    勇者パーティの一人、僧侶のマァヤが指差した先。
    闘技場の入り口を、大慌てで潜り抜けてきた三人。

    「あ、ミーナたちです!」
    「よかった、間に合ったみたいだね‥!」
    「‥けど、魔物が見当たりません。どこに‥?」
    「‥あれ、ミーナのお腹ってあんなに膨れてたッキーか?」
  321. 322 : : 2020/06/15(月) 09:43:03
    「アルミン!よかった‥」
    「アルミン兄〜遅いぜー?‥‥ミーナ姉、なにそのお腹」
    「え?ま、魔物ちゃんが服の中に入っちゃって‥出てきてくれないの」
    「‥小さくねーかその魔物。おいアルミン、ライナー。どんな奴が入ってるんだ?」
    「そ、それが‥僕らまだ顔を見てないんだ」
    「は??」
    「いや、本当だぞジャン。ミーナには姿を見せたみたいだが‥俺たちには見せてくれないんだ」
    「???」

    イーが、ミーナに歩み寄る。
    途端にミーナの服の中にいる魔物がぴくり、と反応し、そそくさとミーナの背中側に回る。

    「‥‥おい」
    「エレン、近づくな。かなりの臆病者みたいだ、逃げられてもミーナたちが困ンだろ?」
    「ちぇっ、一回見るくらい良いだろーよ」

    ユミルがイーを嗜めると同時に、王城の鐘が何度目かの音色を鳴らす。

    『‥ただいま時間制限一杯です!帰還パーティは計15組!この中から8組を選出し、本戦通過パーティと致します!』
  322. 323 : : 2020/06/15(月) 09:52:57
    「8組か‥やっぱり、例年通りトーナメントやるみたいだぜ、ユミル姉、エレン兄」
    「トーナメント?」
    「本戦はそれで終わりか?」
    「ああ。チーム組まされて本戦トーナメントってのは毎年のことなんだ」
    「‥じゃ、あとは本戦に出られるよう選ばれるだけだな」
    「俺たちは問題ないぜ!勇者のレオ兄たちもな!けど、ミカサ姉たちや‥特にアルミン兄のチームは大丈夫かなぁ?」

    ミリアの言葉に、確かにと肯くユミル。
    アルミンたちは時間ギリギリに戻ってきた。
    ミカサたちも時間点は低い方だ。
    点数配分まではわからないが、総合点が下がってしまうのは免れないだろう。

    『それでは、ただいまより!モンスターマスターによる各パーティの採点を行います!モンスターマスターは勿論この人!!モンスターマスター、どうぞ臨場を!!』

    ばさり、と羽ばたく音がした。
    イーが上空を見上げ、レイチェルやミカサも続いて顔を上げて、それを見た。

    「ふん‥相変わらず、派手な登場だ」
    「お知り合いですか?王女様」
    「アルミン、その呼び方はこの国では‥‥‥。‥‥まあいい。アイツも、勇者の仲間の一人だ。名をレーヌ。とある高名なモンスターマスターの子孫さ」
  323. 324 : : 2020/06/15(月) 10:05:00
    「‥‥おい、あの鳥‥」
    「ら、ラーミアか!?かつて、魔王バラモスにロトの勇者一行が挑む際、6つのオーブを集めた勇者たちにその力を貸した、伝説の神鳥!!」
    「おまえ、相変わらず詳しいな‥‥ジャン」

    「ふふ‥ラーミア、噂されていますよ」
    「‥私のファンでしょうか?」
    「いやちげーよ」
    「レーヌ、あの変な刈り上げの者は失格にしてください」
    「変!?変か!?この髪型!!カッコイイだろうが!!」
    「ジャン、私は良いが‥‥私の騎士になるなら兜を被るからあまり意味がないぞ」
    「なるかならねーか返事してねーよ!!」
    「なんだと貴様」
    「はうっ」

    「‥進めますよ?惚気は程々にお願いしますね、レイチェル」
    「だ、誰が惚気てるか!!」
  324. 325 : : 2020/06/15(月) 10:13:36
    『では、採点をお願いします!』

    「では、一番乗りの勇者パーティと、西の王女パーティから採点するわね?時間点は両パーティ満点。‥では、魔物を前へ!」
    「僕たちの魔物は、彼です!」

    勇者レオの後ろに待機していた魔物が、飛び立った。
    雄々しく羽ばたかれる悪魔の翼と強靭な四肢。
    太く強固な牙。
    身体の青い身体に黒い斑点。
    銀の立て髪が頭から背中にかけて伸びている。

    「‥ダークパンサー!ふむふむ、これはこれは!珍しさB、強さS!暫定一位ですね!」
    「‥Sって、どのくらいなんだ?わかんねーぞ」
    「いや、あのダークパンサーって魔物はかなり強い魔物の筈だ。目撃数も多くねえ。点数高いぜアレは」

    ユミルの言葉に、ジャンが持っていた魔物図鑑をペラペラとめくりながら調べる。
    それを見たアルミンは、ミーナにも声をかける。

    「ミーナ、ジャンに魔物図鑑を貸してもらって、ミーナの服の中にいる魔物のことを調べたら?」
    「あ、そうだね!ジャン!」
  325. 326 : : 2020/06/15(月) 10:30:38
    「では、次!ミリアパーティ、魔物を前へ!」
    「よし、ユミル!」
    「ああ。‥ほら、こっちだ」

    ユミルに連れられて前へ出るが、その身体はユミルの倍以上の大きさである。
    ブルル、といなないたその魔物は、赤く燃える蹄鉄を響かせて悠然と歩む。
    身体は全体的に灰色だが、首回りの毛や立て髪、尾は鮮やかな黄色だ。

    「‥煉獄天馬。よく見つけましたね、この魔物を」
    「いや、普通に寄ってきたけど」
    「‥あら?貴女、魔物使い‥?」
    「私のことはいいからよ、採点頼むわ」

    ユミルがひらひらと手を払う。
    その手に反応して顔をすり寄せる煉獄天馬。
    強そうだ、と抱いた感想以外に、ユミルに対するこの懐き具合も煉獄天馬を選んだ要因である。

    「‥うん、珍しさS、強さA!暫定一位ね!」
    「お、勇者たちより上か?やったぜユミル!」
    「へっ」
    「ゆ、ユミル姉すげえんだな!あんな魔物をあっさり‥」

    「‥レオ。珍しく予選一位通過は出来なさそうね」
    「関係ないよルナ。僕らは予選を通過して、対魔王軍の精鋭部隊招集の揮発剤になるだけの力を見せることが目的だからね」
    「だが、優勝は目指すよな?レオ」
    「‥当然さ、ガラマ!」
  326. 327 : : 2020/06/15(月) 10:50:02
    「さあ、つづいて三番目に到着したパーティね!東の王子パーティ、魔物を!」

    「ちっ‥キモ王子か」
    「アイツ、そんなに早かったのか?」
    「どうせ不正してるのさ。奴が早いのは毎年のことらしい。一昨年なんて勇者たちよりも早くて明らかにおかしいと失格をくらったくらいだ」
    「言うじゃないか、レイチェル‥」
    「馴れ馴れしく呼ぶなキモブタ」
    「せめて王子をつけろ愚か者!!‥ふん、今年は不正はなしだ!僕の新しい部下が優秀なんでな!!」

    西の王女のレイチェルと、東の王子のパッセンの仲の悪さを見て、ため息をつく東の王・アシェン。

    ジャンがパッセンの後ろに立つフードを被った二人を見やる。
    片方はかなり背が低い。
    ミーナよりも低いのではないか。
    もう片方は反対に、ジャンと同じくらいの背の高さだ。
    だが、どちらもフードのせいで顔貌がよく見えない。
  327. 328 : : 2020/06/15(月) 10:58:59
    「さあ、前へ出ろサージタウス!!」
    「な、なんだあのデカイのは!?ダークパンサーと同じくらいでけえぞアレ!」
    「サージタウス!ドクターデロトの最高傑作にして、遺跡の守護者である殺戮マシンか!勇者たちと共に捕まえてきた魔物だろうが‥よく連れてきたな‥」

    「これはかなりのモノですね‥どうやって動かしたか謎ですが。配置しておいた私が言うのもなんですが、この子だけは動かせないと思ってました。流石は‥先先代魔法騎士団団長ですか」
    「むっ。ということは、あのフードの片割れは‥」
    「ホッホッホ。バラされては、仕方がないのう‥」

    背の低いフードの人物がフードを取る。
    そこには、立派な髭と丸い頭が特徴の、ひょろひょろとした老人がいた。

    「ガナック翁!ちっ、厄介なジジイが出たか!」
    「ホッホッホ、よろしく頼むぞレイチェル王女」
    「‥なんだ?あのジジイ、そんな強いのか」
    「気を付けろよ、ジャン、ミカサ!奴ほどタチの悪い魔法使いはおらんぞ!」
    「魔法使い‥」

    「サージタウス、珍しさA、強さS!暫定3位ね!」
    「げっ、3位!?くそ、遅かったのか!?」
  328. 329 : : 2020/06/15(月) 11:17:17
    そして、順当に進んでいく審査。

    TOP3は変わらず、4から8位までが入れ替わる形で変動していく。
    そして、ミカサたちの番がやってくる。

    「では、10番目のパーティ!西の王女パーティ、魔物を前へ!」
    「よし、ジャンよ!魔物を前へ出してやれ!」
    「おう!」
    「‥ジャン、もう命令され慣れてる‥」

    「ぷぎ、ぷぎ!押すなちくしょうめ!」

    メタルの身体に、大きなダイヤモンドのような形のスライム。
    その姿に、ぽかんと呆気に取られるレーヌ。

    「‥え?貴方が捕まったんですか?」
    「う、うるさい!がんばるこやつらの顔を立ててやろうとわざと捕まってやったんだ、ぷぎ!」
    「肉一個で大人しくなったぞ」
    「この野郎ー!!」
    「うげえっ!?」
    「‥‥プラチナキング。珍しさS、強さS!暫定1位です!」

    「す、すげえな馬兄!」
    「い、いい加減‥‥その呼び方は‥‥やめ‥‥ろ‥‥」
    「あ、生きてた」
    「いや、そろそろ潰れて死ぬぞあれ‥」
  329. 330 : : 2020/06/15(月) 11:33:24
    そして、ミーナたちの番がやってくる。

    「ミーナたちの時間点は最低点数だ。アイツら、よほどの魔物を連れてこねーと予選通過できねーぞ?」
    「ミーナの服の中にいる魔物が、どんな奴かだが‥」
    「‥なあ、エレン兄、ユミル姉」
    「どした?ミリア」
    「‥‥あれ、どうやって採点されるんだ?」
    「「‥‥あ」」

    「えーと、顔を出してくれないかしら?」
    「だ、ダメみたいです‥」
    「おかしいわねえ、こんな恥ずかしがりな子なんていたかしら?」
    「お、お願い‥‥出てきてくれない?わたしたち、どうしても本戦に行かなきゃいけないの!」

    その時、ミーナの服がふるふると震え、ミーナは何かに気がつき、ふんふんと頷いている。

    「あの‥‥姿を見せてもいいけど、服の中からは出たくないって」
    「あら、そうなの?それじゃ失礼するわね」
    「へ?」

    徐にミーナの服を引っ張り、中を覗くレーヌ。
    ひぎゃあ!!と顔を赤くして叫ぶミーナ。

    「‥レーヌさんが女でよかったな」
    「ライナー、鼻血出てるよ」
    「お前も顔が赤いぞ、アルミン‥」

    「‥‥こ、この子は‥‥」
  330. 331 : : 2020/06/15(月) 11:45:03
    「ら、ラーミア!ラーミア!」
    「なんですか騒々しい。我がマスターならもう少し落ち着きを持ちなさい」
    「お、お願い!貴女も見て頂戴!自信がないのよ‥」
    「‥は?」

    ラーミアもスタスタと歩いて、ミーナの服の中身を覗きに行く。
    その中身を見て、ラーミアの目が点になってしまう。

    「‥‥ま、まさか!?なんて子を‥捕まえてきたのですか貴女は!?」
    「は、はい?」

    『‥あのー、レーヌさん。採点を‥』
    「‥かくれんぼう」
    『へ?』
    「かくれんぼうよ、かくれんぼう!!伝承にある、姿が絶対に見えない魔物!その数はおそらく一体のみ!伝承の絵もかくれんぼうの想像図のみ!けど、間違いない!ラーミア、貴方は見たことがあるんでしょう!?」
    「私も直接見たのは初めてです。私が見たのは水面に映る姿だけ。‥‥まさか、こんな人間の子と共にいるとは‥。‥ミーナと言いましたね、貴女はこのかくれんぼうをどこで!?」
    「え、ええ?う、動く石像の中に‥」
    「はあ?」
  331. 332 : : 2020/06/15(月) 11:49:59
    『そ、それでその‥採点は?』

    解説者も恐る恐るとレーヌに問う。
    だが、レーヌは震えながらも予想外の回答を返した。

    「‥私には、見当もつかない」
    『え‥』
    「強さは、恐らくSクラス。けど、珍しさは‥この世の魔物で一番珍しいといっても過言では無いわ!!まだ大魔王たちの姿を見る方が簡単なのよ!!それほどの魔物なの!」
    「そ、そうなの?えっと‥‥かくれんぼう?」
    「‥」

    『と、ということは‥』
    「‥‥一位よ」

    『な、なななななんと!!制限時間ギリギリ滑り込みミーナパーティ、一位を獲得!!これにて順位が確定いたしました!!!』

    「え」
    「‥ミーナ、大金星だね」
    「俺たち、何もしてないぞ‥」
  332. 333 : : 2020/06/15(月) 12:06:55
    『では、順位の発表です!!
    一位、ミーナパーティ!!
    二位、西の王女パーティ!!
    三位、ミリアパーティ!!
    四位、勇者パーティ!!
    五位、東の王子パーティ!!
    六位、古戦士パーティ!!
    七位、カンダタパーティ!!
    八位、女傑パーティ!!
    以上が明日の本戦出場者たちとなります!!
    皆様、盛大な拍手を!!!』

    観客席から拍手や歓声が送られ、それに答える本戦出場者たち。
    だが、アルミンは見た。
    イーの、サングラスに隠れたはずの目。
    その目が、勇者レオと合わせられていることを。
  333. 334 : : 2020/06/15(月) 12:46:19
    鼻血とか表現古くね?w
  334. 335 : : 2020/06/16(火) 18:24:06
    >>334 古い表現ってわかりやすくて好きなんですよ


    「おい‥‥お前、もう少し早く歩け!」
    「ぷぎぷぎぷぎ!王たるもの、ゆとりを持って行動するもの!」
    「‥‥こいつ、何言っても無駄なのか?」
    「プライドが高いんだろう、歩調を合わせるしかあるまい」
    「どこぞの王女と一緒だな」

    プラチナキングの後ろで西の王女に殴り飛ばされるジャン。
    今は武闘大会予選の帰り道だ。

    「でも、なんで予選の魔物を連れて帰らないといけないんだろね?」
    「そりゃあ‥やはり明日の本戦で何か役立つんじゃないか?」
    「だとすると、私たちの魔物‥‥かくれんぼうのれんちゃんは‥」
    「‥‥ううむ、うまく動いてくれるといいのだが‥」
    「既に名前をつけてるのはスルーッキーか」
  335. 336 : : 2020/06/16(火) 18:40:37
    >>335
    原作の進撃は鼻血表現使わないから違和感あるんだよな
  336. 337 : : 2020/06/16(火) 19:53:21
    >>336 SSだと納得しておいてください


    かくれんぼうは今もミーナの服の中で動かない。
    ミーナはミーナで暖かそうにしてるので問題なさそうだけど、本戦の時に戦わなければいけなくなった時‥僕たちは苦戦せざるを得ないだろう。

    「それに比べて‥この煉獄天馬は強そうだぜ!」
    「ああ、こいつに乗って戦うのもアリかもな」

    ユミルの言葉に、煉獄天馬は嬉しそうにいななく。
    完全にユミルに懐いているようだ。

    「うーん、この馬‥‥空を飛べるなら、狩りの幅が広がりそうですねぇ‥。‥なんとか連れて帰れないですかね?」
    「元の世界に!?いやいやいや、あのねサシャ‥」
    「‥」
    「シスター、どうしたんだ?」
    「え?‥‥いいえ、大丈夫ですよミリア」

    シスター・マリアの顔は暗い。
    ベルトルトをソッと見るも、憂鬱そうに顔を背けてしまう。
  337. 338 : : 2020/06/17(水) 07:56:05
    「‥どうしたんだろ?シスター」
    「女の悩みに漬け込もうとするなよ頭でっかち」
    「ちょ!!しないよそんなこと!」
    「冗談だよ。それよりも、他のパーティの対策をしないといけねえな」
    「同感だ。特に勇者さんたちだな。魔物も強そうだったし‥勝てるかどうかどころか、勝負になるか分からんぞ」

    ユミルの言葉に、ライナーが同意する。
    その横でイーが、首を傾げて疑問を呈す。

    「え‥それよりも、身内同士で当たった時のことを考えた方が良くねえか?」
    「う」
    「あ、忘れてた!」
    「待ってイー‥じゃなかった、エレンたちのところと当たったらそれこそ勝ち目ないよ‥」

    そうなのだ。
    今大会には勇者一人、魔王軍三将が一人と大会に出るにはあまりに豪華な面子がいる。
    けれど。

    「でも、やっぱり強いパーティが勝ち進むべきさ。僕らの狙いはそれぞれが優勝することじゃなくて、どこか一つが優勝して願いを叶えることだからね」
  338. 339 : : 2020/06/17(水) 08:01:12
    「いてて‥‥ああ、アルミンと同意見だぜ」
    「私も西の王女として、強い指導者になれると示すだけだ。もちろん優勝するに越したことはないがな‥。その分、真剣に戦うのみ」
    「ええ‥‥大会とはいえ、皆で争うのを見るのは嫌ですね‥」
    「仕方ない‥‥。けど、話は決まった」

    ミカサの言葉に、全員が肯く。
    もしお互い試合で当たっても真剣勝負。
    勝った方が、勝ち進む。

    「そもそも私たち‥勝てるかなあ?」
    「ミーナ、頑張ろうね!」
    「前衛は任せろ!」
    「う、うん‥‥。で、でも‥憧れの勇者さんと闘えるかもっていうのはちょっと楽しみ‥!」
    「‥なかなかポジティブだな、ミーナとやらは」
    「アイツは好きなことならオールOKみたいな奴だからな‥」
  339. 340 : : 2020/06/17(水) 08:07:21
    思い思いの一夜を過ごす、本戦出場者たち。

    Mina side ...

    「れんちゃん‥‥バゲット食べる?」
    「‥服の中にパンを突っ込むのは、なぜか既視感があるんだが‥」
    「サシャだよ。いつもコソコソと予備のパンを盗んで部屋に持ち帰っていたじゃないか」
    「ああ‥‥懐かしいもんだ。もう1ヶ月も前か‥」

    ライナーの言葉に、三人はしんみりとした雰囲気になる。
    懐かしい訓練所。
    厳しく辛い思い出ばかりだったが、訓練がない今では懐かしいという思いすら生まれてくる。

    「‥帰りたいね」
    「‥でも、さ‥。‥アニも、エレンも‥マルコもコニーもクリスタも!みんな助けないと、帰れないよ!」
    「‥だな」
    「その為にも明日、頑張らないとね!」
    「うん!」

    ミーナの服の中のかくれんぼうがもぞりと動く。
    かくれんぼうも、少しは動いてくれると助かるんだけど。
  340. 341 : : 2020/06/17(水) 08:16:46
    Mikasa side ...

    「‥良い湯だろう」
    「本当に。訓練兵の時は、考えられなかった。このように、ゆっくり湯に浸かるなんて」
    「うむ。この時だけかも知れん、ゆるりと気を鎮めてゆくと良い。‥‥おいジャン!覗くんじゃないぞ!!」
    『アホか!!声かけんじゃねー!!』
    「何を恥ずかしがっとるんだ、アイツは。普通逆だぞ‥」

    ジャンに向かって気軽に声をかけるレイチェル。
    もちろんジャンは浴室の外、寝室の方にいる。
    男女混合の寝室だが、今夜だけはパーティに分かれて作戦会議をした方が良いという話になったのだ。

    「‥レイチェルさん」
    「ん?なんだ」
    「本当に、ジャンをこの世界に‥‥?」
    「‥私は、そう考えているよ。決めるのはジャンだがな‥」
    「‥そう、ですか」
    「引き留めたいなら引き留めよ。ジャンと共に時を過ごした友であるお前には、その権利がある」
    「‥」
    「それに肯くかどうかも、ジャンが決めることだがな」
    「‥‥私は」
  341. 342 : : 2020/06/17(水) 08:26:01
    Ymir side ...

    「煉獄天馬も部屋に入れてくれるとはな」
    「炎を抑えてくれてるし、部屋を燃やす心配がなくなったんだろ。賢いぜ!」

    イーとミリアが煉獄天馬の頭を撫で、毛繕いをする。
    だが、ユミルは浮かない顔だ。
    ユミルが考えているのは、主に明日の試合のこと。
    勝つ負けるではなく、イーのことだった。

    「‥おい、エレン。明日は本気で戦うんじゃねーぞ」
    「は?何言ってんだお前」
    「何言ってんだはこっちのセリフだ!おめー全力出して勇者や王女たちに目をつけられたらどうすんだ!?」
    「げ」

    こいつ、自覚が足りてねえ。
    頭を抱えるユミル。
    魔王軍三将であるといきなりバレるとまでは思ってないが、貴重な戦力だ、と睨まれたらどうする気なのか。
    対魔王軍精鋭部隊を作ると言っている時期でもあるし、嫌な予感しかしない。
    ミリアにもレイチェルにも魔王軍三将であるとは告げてないが、どうしても不安が過ぎる。

    明日の大会、勝つのはミカサやミーナたちに任せて、イーの正体がバレないように徹底しようと心に誓ったユミルであった。
  342. 343 : : 2020/06/17(水) 08:35:05
    Hero Reo side ...

    「カンダタ!?なんでアイツが出てんのよ、こんな大会に!」
    「子分を引き連れて堂々と参加登録を済ませたようだ。懐かせた魔物もそれなりに強そうだったし、手強いぞ」

    魔法使いのルナと戦士のガラマが明日の作戦会議を開いていた。
    その横で僧侶のマァヤも話を聞いている。
    勇者レオも、思案顔で会議に参加していた。

    「他にも、古戦士のランガルフのパーティ。女傑パーティとまで呼ばれる女冒険者三人衆。先先代魔法騎士団長がいる東の王子パーティ。レイチェルも相当の強者だ。楽に勝てそうにはないな」
    「アルミンさんや、ユミルさんのパーティと当たったら‥どうするんですか?」
    「‥んー。可哀想だけど、勝つわよもちろん」
    「‥いや」

    今まで閉口していたレオが口を開く。

    「あの子たちも、強敵だ。役割を持ってるし、何よりミカサちゃんや‥あのエレンくんは、恐らく大会参加者の中でも一、二を争うほどだと思う」
    「え?なんでそんなことわかんのよ」
    「目だよ。ライナーくんやベルトルトくんも、ユミルちゃんもそうだが‥目が違う。アレは、何があっても覚悟が揺るがない。そんな目だ」
  343. 344 : : 2020/06/19(金) 12:17:04
    翌日、東の王都内部闘技場観客席。


    「ふわぁ〜‥昨日よりも人たくさんいますねぇ!」
    「今日のトーナメントがメインですよ。外出を控えるよう伝えられた昨日とは違って、本当のお祭り騒ぎなのです」
    「魔物の悪魔の鏡を使って、闘技場に入りきれない人々にも闘技場内部の様子が伝わるように映してるんです。この王都中の人々が、試合を観戦できます」
    「こんな中で試合するなんて‥ミーナ、大丈夫かな?緊張しやすい性格だし‥」
    「それよりも‥いー‥じゃなかった、エレンだッキーね。全力全開ではっちゃける可能性があるッキーよ」
    「‥不安だね、それは」
  344. 345 : : 2020/06/19(金) 12:35:44
    闘技場脇控え室にて。

    「ここでオレたちは待機か」
    「トーナメントって聞いてましたけど‥」
    「組み合わせは試合までわからないんだ。その直前、選手が呼ばれるまではね‥。毎年のことだけど、上位勢と下位勢がいきなり当たることはないよ」
    「上位と下位?」

    勇者の説明を聞くと、予選時の順位で上位下位が分かれ、上位勢から一組、下位勢から一組と分けられて試合が組まれるらしい。

    「じゃあ、身内でいきなり戦うってことはないってことか」
    「そして相手は‥下位のチームから選ばれる。だからこんな控え室の分けられ方をしてるんですね‥」

    同じ控え室の中に、下位のパーティはいない。
    残りのパーティは全て別の控え室にいるのだろう。
  345. 346 : : 2020/06/19(金) 13:06:17
    「ふん‥‥だが、試合内容はある程度予想できる。恐らく私たちの相手はあのキモ王子だ」
    「あ?なんでそんなことわかるんだお前」
    「奴は私に固執している。不正はしないと言っていたが、それは単なる実力の話だろう。私と当たるようにくじを細工し、私を屈服させるつもりなのさ」
    「‥お前、アイツに何したんだ?」
    「幼少の頃、初対面で侍従にしてやるなどと言われてな‥王族に向かってなんたる口だ、と殴り飛ばした」

    レイチェルの言葉に、ジャンは殴ったらお互い様じゃねえか?と思ったが口には出さない。
    出したところでシメられるのが見えている。

    「あの王子は‥強い?」
    「いや、武芸の鍛錬などしておらんはずだ。道具の持ち込みも禁止故、完全に部下頼みで戦う筈」
    「結局木の武具を使うことになったからな‥。ベルトルトの判断は正解だったわけだ」
  346. 347 : : 2020/06/19(金) 13:41:52
    『ただいまより、武闘大会本戦一回戦一戦目を始めます!!』
    「お」
    「うわわわ、始まっちゃうよ!」

    『そして、組み合わせは!勇者レオ率いる勇者パーティVS!』
    「いきなり私たちね!」
    『古戦士ランガルフ率いる古戦士パーティ!!両者、前へ!!』
    「ランガルフだと!?」
    「いきなり強敵だ‥!ルナ、ガラマ!気を引き締めていくぞ!!」

    「‥えーと、誰かわからない‥」
    「古戦士ランガルフ・サムナル・ダット。全員戦士ながら、職歴が多彩故に様々な技・呪文を使う異能の戦士といったところだ。戦歴も長い。戦いの場に出てから30年といったところか」
    「ええ!?異能の戦士って‥ど、どういうことですか?」
    「言うなれば、勇者ではない勇者といったところだ。前衛・後衛・支援。三人ともどれもこなせるんだ」
    「‥なるほど。そりゃやべえな」
  347. 348 : : 2020/06/19(金) 13:49:25
    「ランガルフさん‥」
    「まさかいきなりお前さんと当たるとは思ってなかったぜ。こりゃ観客の楽しみが減っちまうなぁ」

    『いきなり優勝候補同士の激突!そして師弟対決!!これは事実上の決勝戦かぁ!!?』

    「師弟対決!?」
    「レオとランガルフは弟子と師匠なのさ。お互い手の内を知り尽くしてる。レオがどれだけ成長できているか、ランガルフたちが老練な手管を見せるか」
    「‥エレン、ミリア。他の奴らも、よく見とけよ。一回戦勝ち上がったら、アイツらとも戦うかも知れねえんだからな」
    「‥優勝候補だぁ?」
    「へっ、優勝候補ならここにいるってんだよ!」
    「そこに噛みつくな黙ってみてろ」
  348. 349 : : 2020/06/19(金) 14:06:20
    一回戦第一試合。
    両者ともに、人類の中で一、二を争うほどの戦力を持っているそうだ。
    勇者レオ・戦士ガラマ・魔法使いルナ。
    古戦士ランガルフ・サムナル・ダット。

    他の人間が戦っているのをあまり見たことがないアルミンだったが、元の世界‥その中でも主に前線に立ちやすい調査兵団の人間程度は、軽く超えていたのがわかった。
    まずなにより打たれ強い。
    そして一つ一つの攻撃が明らかに威力が高い。
    元の世界の榴弾以上の爆発を起こしたイオナズン。
    それを食らって防いでいるランガルフ。
    連れていた魔物たちをお互いものともしない。
    天を裂くような一撃が、勇者レオから放たれる。

    「ギガスラッシュ!!」
    「蒼天魔斬!!」
  349. 350 : : 2020/06/19(金) 14:26:59
    「‥そこまで!」

    「‥強くなったもんだ、本当に」
    「貴方には‥僕の強さを、お見せしたかったんです」
    「望み通りに‥なったわけだ」

    「勝者!勇者パーティ!!」
    『決着!決着です!!今大会初戦が、素晴らしい試合となりました!!両者に盛大な拍手をお送りください!!』

    観客たちの歓声と拍手の喝采が響く。
    ちらりと横を見ると、ミーナが固まっていた。
    こんな激しい試合をするとは思ってなかったんだろう。
    木の武器を渡されはしたものの、技や呪文のせいで闘技台はところどころヒビが入り、砕けてしまっている。

    「‥闘技台の交換作業が入った。あと10分程度は時間がかかるだろう‥」
    「‥‥」
    「ミーナ」
    「は、はい!?何アルミン!」
    「‥棄権するなら、早いほうがいいよ」
    「ええ!?」
    「勇者さんたちとはいずれ当たる。いや、その前に‥他のパーティも、勇者さんたちほどじゃないとしても、強い筈だ。僕らは経験が少ないし、特にミーナは戦いなんてしたことないんだろう?」
    「‥うん」
  350. 351 : : 2020/06/19(金) 14:46:57
    「なら」
    「ううん、でもやる」
    「え?」
    「私から言い出したんだもん。‥やるよ、誰が相手でも勝ちに行く」

    ミーナの顔が、先ほどとは違っていた。
    アルミンの肩にライナーの手が置かれる。
    ライナーも覚悟を決めているらしく、ニッと笑っていた。

    「‥ライナー、頼りにしてるよ」
    「任せろ。ミーナの支援ありなら、一人で前線を張れる筈だ」
    「援護は任せて!」
    「その隙に、僕が呪文を打ち込む!」
    「よし!」
    「れんちゃん、じっとしててね‥」

    『‥お待たせしました!闘技台の修復が完了いたしました!ただいまより、一回戦第二試合を始めます!出場者の発表です!』

    「へっ、早く頼むぜ‥」
    「エレン、逸んなよお前」

    『まずは、アルミンパーティ!うら若き少年少女たちが、予選を逆転一位で通りぬけた奇跡のパーティです!!』
    「き、きた!」
    「緊張するなよ、ミーナ‥」
    『そして、予選8位の女傑パーティ!今大会唯一の女性のみで組み合わされたパーティです!!』
  351. 352 : : 2020/06/19(金) 14:53:49
    『両者入場!!』

    「‥‥いくよ、二人とも!れんちゃんも、ね!」
    「よし!」
    「勝ちに行こう!」
    「‥」

    アルミンたちが三人で走りながら出口へ向かっていった。
    ミカサはアルミンの後ろ姿を見る。
    昨日はイーにアルミンは大丈夫、などと言ったものの、やはり不安ではある。
    主に怪我をしないかだが。
    その様子を、少し後ろでジャンも眺めていた。
    きっとこれから先、エレンとアルミンを越えるようなミカサの大事な人間は、出ないのだろうと。

    エレンとアルミンは、ミカサにとって家族のような人間なのだ。
    友誼・恋慕などとは違う。
    その愚直ともいえる感情を、ジャンは少し羨んでいた。
  352. 353 : : 2020/06/19(金) 15:04:39
    『まずは選手紹介と参りましょう!女傑パーティのノエル・サマンサ・カルデラ!この三人は今大会4回目の出場ですが、全て予選を通過している本戦常連です!女戦士ノエル・女盗賊サマンサ・踊り子カルデラ!三人に魅了されている観客たちも多いでしょう、三人の活躍にご期待ください!連れてきた魔物は浮遊樹です!』
    『対して、アルミンパーティですが‥‥なんと三人とも初出場!女傑パーティや勇者パーティと同様となります!中でも僧侶アルミンは15歳!今大会でも2番目の若さ!戦士ライナー・吟遊詩人ミーナも16歳と、全パーティの中でもとても若いパーティです!連れてきた魔物はかくれんぼうという世にも珍しき魔物ですが‥‥その姿を見せてくれるのか!?』

    「若い!しか言われてないぞ‥」
    「うーん‥甘くみられてるのかな‥」
    「だだだだ大丈夫大丈夫やることやるだけやることやるだけ」
    「おい、落ち着け‥」
  353. 354 : : 2020/06/19(金) 15:13:35
    「‥初出場か。若いねえ‥」
    「ああ、お手柔らかに頼もう」
    「ふふ、あんたが前衛みたいだね。私はノエル。見ての通り‥戦士だ」
    「俺も戦士だ。名をライナー」
    「‥あとは僧侶と‥吟遊詩人?僧侶はともかく、吟遊詩人だとねえ‥戦いになるかい?」
    「ム!で、でも‥そっちだって踊り子が!」
    「あらあら、踊り子をなめない方がいいわよ?魔物には効果覿面だもの」
    「‥」
    「‥無口な、人?だな‥この盗賊の人」

    『では、一回戦第二試合を開始します!!』
  354. 355 : : 2020/06/19(金) 15:54:08
    『試合‥‥開始ぃ!!!』

    「ミーナ、頼んだ!!」
    「うん!」

    ミーナが支援の為の歌を歌い始める。
    ライナーが構え、前に立つ。
    対して、女傑パーティは。

    「はっはーはぁ!!」
    「ん!?」

    ライナーにノエルが迫る。
    いきなり突っ込んできたノエルに、慌てて棍棒を構えるライナー。
    ひのきのぼうと棍棒が合わさり、二人は鍔迫り合いにかかる。

    「くっ‥」
    「ふふふ!私が押し切れないとは、良い力をしてるねぇあんた!」
    「これは‥互角と見ても、良さそうだな‥!」
    『開始早々戦士ノエルが魅せる!しかしなんと‥若干16歳戦士ライナー受け止めた!』

    だが、ノエルの腕からかくんと力が抜ける。
    手応えが軽くなったライナーが一気に押し切り、ノエルはその場を離脱して下がってしまう。

    「これは‥なんだい!?」
    「ミーナ!」

    ミーナの歌声が暗く細く変わっていく。
    アルミンやライナーにはなんとも無さそうだが、女傑パーティの三人は気分が悪そうだ。

    「呪いの歌かい!?サマンサ!」
    「‥!」

    盗賊のサマンサがミーナに迫る。
    木製の爪でミーナに迫るサマンサだが、目の前を炎が煌めいて通った。

    『今度はなんだぁー!?』
  355. 356 : : 2020/06/20(土) 00:05:56
    >>352
    恋慕じゃないなら別に羨む必要無くね?エレンもアルミンもミカサの恋愛対象に入ってないならジャンにチャンスあるってことじゃん
  356. 357 : : 2020/06/20(土) 00:26:03
    ミカサアルミンに対して恋愛感情ないのかあ残念
    アルミカエンド楽しみにしてたのに
  357. 358 : : 2020/06/20(土) 08:39:25
    エレンとアルミンの線が消えたら最有力は一方通行とはいえ矢印が存在するジャンってことになるからな
    よかったジャン
  358. 359 : : 2020/06/20(土) 16:28:39
    >>356 ちょっと解釈違いますね。ジャンはミカサの感情を羨んでます。エレンとアルミンを羨んでるわけではありません。
    ジャンは訓練兵時代はとても軽薄で現実主義な人間で、どちらかというと正常な方です。エレンとかは頭おかしい方。
    そのジャンは、マルコの死と巨人との極限状態、そして調査兵団の入団を以って兵士として覚悟を決めたと解釈しています。
    つまり、このssのジャンはまだ軽薄な人間‥でした。
    ここは実はミカサを庇って‥という二人のシーンで少し改善されてるのですがその話はまた今度。
  359. 360 : : 2020/06/20(土) 16:57:16
    「‥」

    サマンサがアルミンの方を向く。
    アルミンの翳した手は魔法による煙が燻っている。

    「ミーナには手を出させません」
    「‥?‥僧侶‥?」
    「へ?」
    「貴方本当に僧侶なの?って聞かれてるのよ♡」
    「うわっ!」

    アルミンの元に今度はカルデラが下から斬り込んでくる。
    通常ありえない角度からの斬り込みに、剣の鋒からかなり離れたところまで下がるアルミン。
    カルデラの体制を見るに、地面を這うように滑りながら斬り込んできたようだ。

    『おおっと、吟遊詩人ミーナを助けた僧侶アルミン!1対2になってしまったぞー!?』
    「な、なんだ!?」
    「剣の舞‥‥ふふ、これが真剣なら敵は嵐に巻き込まれたように斬り刻まれる。貴方の場合は‥滅多打ちだけどね?」
  360. 361 : : 2020/06/20(土) 17:15:37
    「くっ‥」
    「ちょっと‥ミーナちゃんと言ったかしら?貴女は戦いに加わらなくて良いの?歌だけでは‥」
    「甘く見ましたね」
    「!?」

    アルミンがサマンサから逃げながら、ベギラマをカルデラに放つ。
    サマンサに対するメラミまで撃ちながら、同時にである。
    二人は慌てて交わすが、驚きを隠せずにアルミンに問う。

    『え!?今のはなんだ!?』
    「ちょっと‥‥え?見間違い?」
    『僧侶アルミン!まさか‥ベギラマとメラミを同時に使ったぞ!!?』
    「‥‥賢者‥!」
    「やはり呪文を複数同時と言うのは珍しいんですね‥。けど、僕はまだ賢者じゃない。ただ貴女たちを二人‥!僕が留め置くというだけですよ!」
    「あらあら‥これは、良い出会いになったわね‥♡」
    「‥‥‥はい?」
    「男日照り‥‥」
    「坊や、10コ上のお姉さんはどう?」
    「‥‥はいぃ?」
    『‥どうやら妙な戦いが始まりそうですが‥』
  361. 362 : : 2020/06/20(土) 18:30:33
    「はははは、賢者の卵様がいるとは‥恐れ入るねぇあんたたち!」
    「余裕があるようだな」
    「ふふふ、ベテランパーティは一つや二つ‥奥の手を持っているものさ!‥浮遊樹!」
    「‥メダパニ」
    「ん!?‥‥‥ら、ららぁ!?」

    浮遊樹がぽつりと言葉を呟き、ライナーの目と呂律が回る。

    『おおっと、ここで女傑パーティ魔物の浮遊樹が参戦!戦士ライナー、状態異常呪文は相性が悪いかー!?』
    「な‥‥なぁん!?」
    「ははは、隙だらけだね!」
    「キアラル!」
    「あっ‥‥よし!!」

    アルミンがすかさず呪文を唱え、メダパニにかかったライナーを治す。
    それを見たミーナはさらに歌を調整し、場をアルミンたちに有利な方へと導いていく。

    「ちっ、浮遊樹!あの賢者くんからだ!」
    「‥!」
    「‥‥浮遊樹!?」
    「‥?‥‥!?」

    浮遊樹が大きな一つ目をパチパチとしているが、呪文は唱えられない。
    マホトーンにかかっているのだ。

    「今度は‥‥魔封じの歌かい!?だが、私には関係ないね‥!」
    『なんと多彩!!吟遊詩人ミーナ、呪いの歌から魔封じの歌にシフトチェンジ!』

    「そろそろ御退場願おうか!!」
    「!?」
  362. 363 : : 2020/06/22(月) 13:27:14
    「ミーナ、アルミン!仕上げの用意だ!」
    「了解!」

    サマンサとカルデラから逃げながらアルミンが返事をする。
    ミーナも返事はせずとも、歌を変化させることによりライナーに意を応える。
    ミーナの歌を聞くことにより、ライナーの闘志が更に燃え上がり、棍棒を掴む腕の筋肉が盛り上がる。

    「戦いの歌‥!」
    「さあ‥‥いくぞぉ!!」

    ライナーが棍棒を大きく一振りし、ノエルを弾き飛ばした。
    仕切り直しかと離れるノエルは、ライナーの次の動きに目を大きく開く。

    「ぬぅん!!」
    「もう1回転‥!?」
    『戦士ライナー、回転を続けていくぞぉ!!何をするつもりだぁ!?』
    「まだまだぁ!!!」

    その場で棍棒を両手で振り回し、大きく回転し続けるライナー。
    次第に小さな棍棒から風が生まれ、ライナーの周りに竜巻が生じ始めた。
  363. 364 : : 2020/06/22(月) 13:33:16
    「斧無双!?あんた、オノ使いかい!?」
    「残念ながら木の斧はなかったものでな!!」
    「くっ!!踏ん張りが効かない!!引き込まれる‥!!」

    アルミンに迫っていたサマンサも、剣の舞でライナーを止めようとしていたカルデラも引き込まれ始める。
    浮遊樹はすでにライナーの斧無双をまともにもらって吹き飛んでいた。


    「なんて強力な‥!?」
    「くうっ‥!」
    『女傑パーティ!戦いの歌で強化された斧無双に苦戦必至!これは、もしかしてしまうのかー!!』
    「‥ノエル!」
    「! ‥そうさね、やるしかないねぇ!!」

    サマンサの声に、ノエルがその場に蹲ってひのきの棒を構える。
    ノエルとライナーよりも更に後方からサマンサがノエルへと飛び込み、サマンサはノエルの腕の振りとともに大きく、大きく跳ね上がった。

    『サマンサ、飛び上がったー!!戦士ノエルの腕力と盗賊サマンサの脚力による合わせ技だー!!』
    「!?」
    「竜巻の上‥!」
    「斧無双は外側には強いけどねぇ‥!風の勢いがない竜巻の中心‥!真上からは弱い!!」
  364. 365 : : 2020/06/22(月) 13:40:48
    「とった」
    「くっ!!」

    サマンサの木製のナイフが、ライナーの頭上に迫った、その時。

    「ミーナ!!」
    「任せて!!」
    『え!?』
    「!?」

    すでに戦いの歌を終えたミーナが、いつのまにかライナー、サマンサの更に上から二人目掛けて落ちていた。

    「痺れ打ち!!」
    「がっ!?」

    革の鞭を振るい、ミーナがサマンサを麻痺させる。
    そして、空中には身動きが取れなくなったサマンサとミーナ。

    「ライナーキャーーッチ!!!」
    「お!?おおう!!!」

    勢いそのまま棍棒を投げ捨て、落ちるサマンサとミーナを受け止めるライナー。
    回転の勢いと二人を受け止めた衝撃で、その場で3人もろとも倒れ込む。

    『なななななんと!!吟遊詩人ミーナ、戦士ライナーの窮地を救った!!さりげなく二人分の体重を受け止めた戦士ライナーもおかしいぞー!?どうなってるんだこの二人は!!?』
    「‥何て奴らだい」
    「ていうかあの吟遊詩人の子‥いつの間にあんな上空に!?」
    「えへへ‥うちの僧侶くんは、優秀なんだよ!」
    「はっ!?」
  365. 366 : : 2020/06/22(月) 13:48:42
    そして、ミーナをトベルーラで竜巻の上に送り込んだアルミンは、既に準備を終えていた。
    アルミンの両手に光る、青と緑の光。
    両腕をまとうように魔法陣が回転し、呪文が光る。

    「この舞台の大きさで‥避けてみますか?この合成呪文を」
    「‥ウソでしょ?」
    「なにこの魔力‥」
    「ライナーの時間稼ぎのおかげですよ。‥斧無双の竜巻で、僕とミーナは見えなかったでしょう?」
    「‥‥これは、やられたわ‥」

    「右手にバギ‥左手にヒャダルコ!!バギャルコ!!」

    アルミンの両手から螺旋状に広がっていく氷結の嵐が解き放たれる。
    闘技場の舞台をまるまると覆い、通り過ぎ去った嵐。
    ライナーたちはアルミンの機転で嵐には巻き込まれず、その威力の程をよく観察できていた。

    嵐が過ぎ去った後は、凍てつき傷ついた二人の女。

    「‥まだやります?」
    「‥‥」
    「‥気絶してますね」
  366. 367 : : 2020/06/22(月) 14:18:32
    『こ、これは‥‥。戦士ノエル・踊り子カルデラ‥気絶!盗賊サマンサも麻痺で動けない!‥よって‥‥』

    「ライナー、ミーナ!」
    「おう!」
    「うん!」

    3人が駆け寄り、ガッと拳を合わせる。

    『勝者‥アルミンパーティ!!!』

    わっと湧き上がる観客。
    アルミンたちと同じようにガッツポーズを上げるジャンたち。
    観客席のサシャたちも歓声を挙げる。
    試合を見ていた王族・魔法騎士団団員たちも拍手を送る。

    『本選常連、女傑パーティがまさかの一回戦負け!しかもアルミンパーティ、かくれんぼうの力を使用せずに勝ち上がった!!これは‥まさか優勝候補クラスかー!?』
    「いや、力を貸してくれるかわかんないんだけど‥この子」
    「れんちゃん、大丈夫だった?ライナーの胸板で潰れてない?」
    「どういう意味だ‥?」
  367. 368 : : 2020/06/22(月) 14:22:59
    「‥」
    「なんだ?急に冷静になりおって。もっと騒げ、仲間が勝ったのだぞ」
    「へっ、よく考えたら‥アイツらが勝つのなんて当然なんだよ。役割ってのはそれだけ強いってことだろ」
    「捻くれるな。役割を持っていても、使いこなせなければ宝の持ち腐れだ。少なくとも、お前たちは使いこなせてるよ‥ジャン」
    「‥ふん」
    「!‥二人とも」
    「ん?」

    『では、興奮冷めやまぬまま‥一回戦第三試合を始めます!!片や‥西の王女パーティ!!そして、対戦相手は‥東の王子パーティ!!王族対決です!!!』
    「‥本当にレイチェルさんの言う通りになった」
    「そらみろ、やはりくじを不正してるのさ」
    「‥本当はお前が弄ってんじゃねえか?」
    「馬鹿なことを口走るのはこの口か?」
    「いでぇ!!」
  368. 369 : : 2020/06/22(月) 14:28:21
    『さあ!!両者、舞台上へ!!』
    「いこう、二人とも」
    「ちっ‥やるなら勝つぜ」
    「当然だ」
    「問題ない」

    控室から出口へ向かう途中、アルミンたちとすれ違うミカサたち。

    「お疲れ様、アルミン」
    「うん!ミカサたちも、頑張ってね!」
    「俺は負けねーよ。あのバカにしかな‥」
    「あれー、ジャンってアニやミカサにも負けたことなかったっけ?」
    「だぁぁ、黙ってろミーナ!!」
    「レイチェル王女も、お気をつけて」
    「ああ。ライナーらは休んでいろ。次は誰と当たっても強敵だらけだろうからな」

    ここでミカサたちが勝てば、アルミンたちと当たる可能性がある。
    そのことを暗に示唆するレイチェル。
    そんなことは、ミカサもアルミンも分かっていた。
    それでも。

    「‥勝ってね、ミカサ!」
    「勝つ。大丈夫」
  369. 370 : : 2020/06/22(月) 16:44:09
    『さあ、再び選手紹介の時間です!まずは西の王国より、レイチェル・イェーガー王女!幼少の頃よりお転婆とされてきましたが、かくも美しくあらせられる武闘家!さらに、残りの二人はアルミンチームの仲間だとか!そして二人とも上級職です!バトルマスターミカサ、魔法戦士ジャン!魔法戦士ジャンはレイチェル王女の騎士となったばかりですが‥‥実力は如何に!?』
    「‥公認事実なのかよこれ」
    「当然だ」
    『そして魔物はプラチナキング‥‥なんですが‥‥』
    「ん?」
    『‥あの、レイチェル王女‥プラチナキングはどこに‥‥』
    「‥は?」
    「‥いない」

    ミカサが後ろを向いて確認するが、確かにいない。
    初めからいなかった気がする。
  370. 371 : : 2020/06/22(月) 16:51:11
    「あの野郎‥!逃げやがったか!?」

    「おい、こっちだ!」
    「ぷぎ、ぷぎ!ええい離せ!」
    「アホかおめーは、観念しろ」

    「ユミル!いー‥じゃなかったエレン!」

    闘技場の入り口を見ると、ユミルとイーに挟まれたプラチナキング。
    イーにがしりと身体を掴まれ、逃げるに逃げられないようだ。
    ユミルがほねつき肉をポイと投げると、パクリと加えて大人しくなるプラチナキング。

    「投げるぞー」
    「な、投げる!?投げるなぷぎ‥!ってぷぎぃぃぃぃ!!?」

    ふわりと浮かんだプラチナキングの巨体は、ミカサたちの元に飛ぶ。
    ジャンたちはさらりと避けて、ジャンだけがプラチナキングの上に飛び乗る。

    「ぷ、ぷぎぃ‥」
    「もう逃さねーぞお前。観念して協力しやがれ!」
    「な、なんでこんな面倒なことを‥」
    「へっ、最初にモンマスに捕まった自分を恨むんだな!」
    「‥おのれ‥!ぷぎ、ぷぎ!」
    「‥‥こいつ、凄んでも全然怖くねーな」
    「‥かわいい」
  371. 372 : : 2020/06/22(月) 18:08:47
    『さて、続いて東の王子パーティの登場です!!』

    ジャンとプラチナキングが揉めてる中、ミカサとレイチェルは闘技場のもう一つの入場口を見る。

    先頭は東の王子、パッセン・ロイヤル 。
    自信ありげにふふんとレイチェルの方を見ている。
    パッセンが従える形で引き連れている二人は、昨日と同様にフードを被っている。
    二人とも魔法のローブを着て、同じ服を着ている。
    そういえば、とミカサは観客席の魔法騎士団団員たちを見る。
    彼ら二人は、魔法騎士団と同じ服装なのだ。
    二人とも魔法騎士団団員だということなのだろう。
    背が低い方のガナックという老人は先先代魔法騎士団団長と言っていたため、現役ではないだろうが。
  372. 373 : : 2020/06/22(月) 18:14:41
    『まずはパッセン王子!彼は武芸・魔法ともに鍛錬を行わず、一兵士にも勝てないようなお人ですが‥何かレイチェル王女に勝てるような秘策があるのでしょうか?さらにガナック翁!皆様ご存知、先先代魔法騎士団団長!先代魔法騎士団団長が失踪した当時も、魔法騎士団の信頼回復に尽力した立役者!彼の実力はおそらく今大会最強クラスです!!そして今年就任したばかりの、魔法騎士団副団長の登場です!!』

    パッセンが解説をジロリと睨み、ガナックがフードを取ってニヤリと笑う。
    最後に一人、魔法騎士団副団長と紹介されたフードの者。
    彼はフードを取らず、ツカツカとレイチェルたちの方に歩み寄る。

    「?」
    「‥‥なんだ貴様。握手でもしようと言うのか?」
    「‥僕の目的は、貴女じゃありません」
    「なにぃ?」
    「! ‥この声」
    「‥‥‥嘘、だろ」

    「‥‥久しぶり。ジャン、ミカサ」
  373. 374 : : 2020/06/22(月) 18:20:49
    フードを取った、その顔に。
    ジャンは思わず声が出る。

    「‥マルコ」
    「‥お互い出世したな、ジャン」

    『魔法騎士団副団長マルコ!!ガナック翁の直弟子であり、エリート魔法使い!!わずか16歳と言う若年、魔法騎士団入団からわずか半年という異例の新人が、その実力を発揮して魔法騎士団副団長に就任しました!!その実力はガナック翁お墨付き!!果たして、どのような活躍を見せてくれるのか!!?』

    「マルコ‥」
    「ミカサも、久しぶりだね。元気そうでよかったよ、肩の荷が降りる」
    「‥そりゃ‥‥!こっちのセリフだってんだよ馬鹿野郎!!」
    「ははっ、ごめんごめん。君の方が‥うまくやってたようだな」

    マルコがチラリと観客席、それから闘技場の入場口を見る。
    サシャやユミル・アルミンたちと目があった。

    「‥マルコ!なあマルコ!生きてたなら‥!」
    「ごめん、でも今はナシだ」
    「‥‥なに!?」
  374. 375 : : 2020/06/22(月) 18:27:53
    「‥ジャン。いい機会だと‥思わないか?」
    「あぁ!?何の話をしてんだお前は!!わかりやすく言えよ!」
    「ジャン。君は、エレンに嫉妬してたよね」
    「‥‥」
    「‥いつも、総合順位ではエレンの方がわずかに上だった。立体機動術でエレンに勝ったらオーバーな風にわざと喜んで、対人格闘ではエレンに負けじと訓練してた。おかげで、それに付き合った僕の成績も上がったよ」
    「‥ああ、なんだ?対人格闘やら座学やらに付き合わせて悪かったって話か?なら謝るからよ、だから‥」
    「‥‥でもね、ジャン。僕は‥君が目標なんだ。君にとっての、エレンと同じ」
    「‥!」
    「そんなジャンと、直接勝負する機会が巡ってきた。そんなチャンスを、逃すと思うかい?」

    マルコの目が、鋭く光る。
    元の世界では一度も見たことがない顔だった。
    それを間近で見てしまったジャンは、息を飲む。
    マルコは、本気だ。
    本気で自分に勝つ気なんだ。

    「だからジャン。僕と勝負してくれ」
    「‥」
    「手加減はいらない。君がどのくらい強くなったのか、そして‥‥僕は君に勝てるのか、試させてくれ」
    「‥‥後悔すんなよ。いらねー意地を出していらねー恥をかくのは、お前だぜ」
  375. 376 : : 2020/06/22(月) 18:32:17
    望むところだ、と手を出すマルコ。
    ジャンも同じように右手を出す。

    二人は軽く握手して、すぐに二人とも踵を返す。
    ジャンの顔を見たミカサは、マルコと同じ顔をしている、と頷く。
    レイチェルも嬉しそうに頷く。

    「男と男が‥勝負か。その勝負に、私も加われる。女として‥これ以上ない名誉だ。そうは思わんか?ミカサよ」
    「‥‥ちょっとだけ、複雑」
    「ふっ、今回はマルコとやらは敵になってしまっただけだ。‥そういえば東の国王が‥マルコという名を口にしていたな。期待の新人だと」
    「‥レイチェルさん、もっと早く欲しかった‥その情報」
  376. 377 : : 2020/06/22(月) 18:39:16
    「おいマルコ!お前の知り合いか?」
    「はい、パッセン王子。僕の親友と友達です」
    「なんでもいいが手加減はするなよ!絶対にレイチェルには勝つ!!その為にくじを細工したんだからな!!」
    「‥はい」
    「ホッホッホ、心配は要らんわい、ダメ王子。それよりもお主が早々に倒れないか不安じゃの」
    「相変わらず失礼な物言いだが‥まあいい!今回はその為にサージタウスを狙ったんだ‥!」

    サージタウスの目が赤く光る。
    起動した証だ。
    下半身が馬、上半身が人型とまさしく人馬一体のようなデザインのサージタウス。
    だが、その身体は機械であり、巨体。
    プラチナキングの優に10倍は体積がある。
    本線通過の魔物たちの中では一番の巨躯だ。
  377. 378 : : 2020/06/22(月) 18:41:48
    「‥マルコで忘れてたけど‥あれ、どうする?」
    「改めて下から見上げると相当にデカいな。4本足で安定感もある。あれを崩すのは手強いぞ」
    「‥あのサージタウスとかいうのは任せるぜ」
    「ん?」
    「俺はマルコをやる」
    「‥ジャン」
    「文句はねーよな?」
    「勿論だ。存分に働け、我が騎士よ」
    「‥言っとくけど、まだ認めてねーからなそれ」
  378. 379 : : 2020/06/24(水) 03:45:05
    ミーナがいるのにトーマスとダズがいないのはなんで?
  379. 380 : : 2020/07/09(木) 14:13:52
    スレ主大丈夫?
  380. 381 : : 2020/07/16(木) 03:54:33
    また失踪か
    いやもうこの程度じゃ失踪とは言えないかw
  381. 382 : : 2020/07/16(木) 22:34:01
    あまりに忙しすぎて書けてませんがもうしばらくお待ち下さい
    展開は考えてあるので大丈夫です多分
    >>379 ミーナは数合わせのつもりでした
    その理由もそのうちわかります
  382. 383 : : 2020/07/20(月) 16:06:21
    『ではただいまより、一回戦第三試合を開始します!』

    ジャンがレイピアを腰から抜く。
    マルコもジャンに呼応するように、背負っていた樫の棍を手に持った。

    二人の目線が、重なる。

    「‥」
    「‥」

    『試合‥‥開始!!』

    「おおおおお!!!」
    「イオラ!!」

    声が届いたか否かギリギリのタイミングで、ジャンもマルコも同時に動く。
    武闘家であるレイチェルよりもスタートが早い。
    その事実に目を見張る一同。

    イオラの爆炎がジャンを覆わんとした時、ジャンの手元が煌めく。

    「マホターン!!」
  383. 384 : : 2020/07/20(月) 16:12:25
    「!!」

    マルコたちのもとへイオラが跳ね返る。
    ひっ、と頭を抱えて身を縮こませるパッセン。
    だが、マルコは冷静に対処できていた。

    「ベギラマ!!」

    光が閃いて爆炎を貫き、誘爆をその場で起こすマルコ。
    だが、爆発の煙から突如ジャンが飛び出てくる。
    これにはマルコも驚愕する。

    「なめんなぁぁぁ!!」
    「くっ!」

    専用の木の蓋が先端につけられ、殺傷力を落としたレイピアでマルコに迫るジャン。
    傷はつけられないようなレイピアでも、目や喉を突かれたらそれだけで一気に戦闘不能になってしまう。
    そのことをわかっているマルコは、棍の中心を手に持って回転させる。
    レイピアの刺突を防ぐつもりなのだ。
  384. 385 : : 2020/07/20(月) 16:27:10
    「ブリザー‥!」
    「ボミエ!!」
    「は!?」

    ジャンが無理矢理マルコの防御を突破しようとするも、ボミエにかかってその剣速が遅くなる。
    対してマルコは、遅くなったとはいえそれでもなお速いジャンの剣速に危険を感じつつ後方へ下がっていた。
    レイピアは武器そのものが軽く、使い手は速さを重んじる戦い方をすることが多い。
    ジャンも例に漏れずということなのだろう。

    「‥ジャン。君は卑怯に思うかもしれないが‥遠くから魔法を撃ちつつ距離を取った方が良さそうだな」
    「チッ‥‥面倒な試合になりそうだ」

    一方、西の王子パッセン。
    マルコとジャンの応酬に紛れつつ、彼は試合の第一段階を既に終えていた。

    『はーはっはっはっは!!レイチェル、こっちを見ろぉ!!!』
    「ん?あぁ、忘れてた」
    『‥グググ、余裕ぶっていられるのも今のうちだ!!』
    「レイチェルさん‥あれ‥」
    「‥浅知恵を身につけてきたようだな、愚か者め」

    レイチェルとミカサが向く方。
    パッセンは、サージタウスの目にあたる部分に搭乗していた。

    『こ、これは!!?パッセン王子、まさかのサージタウスに乗り込みましたぁ!!これでは‥レイチェル王女チームはサージタウスを倒さねばパッセン王子に手出しが出来ません!!』
    「ふん、的が一つになっただけだ」
  385. 386 : : 2020/07/20(月) 16:38:06
    「うちのバカ王子のレイチェル王女に対する執着心は知っておったが‥そこまでして勝ちたいというのは見張るべきものがあるかもしれんのう」
    「! ‥確か、ガナック‥団長?さん?」
    「今は引退した小間使いのジジイじゃ。敬称などは要らん。若いのがおるでのう」
    「‥マルコのこと?」

    ミカサと向き合うのはフードをとったガナックだ。
    顔のシワや白髪の頭に削ぐわぬ鋭い目がミカサを貫く。

    「うむ。それにレオんとこのルナじゃのう。彼奴らが先のこの国を守りゆく」
    「‥マルコは、この国に残るの?」
    「儂としてはそうあってほしいが‥‥それはあの小僧が決めること」
    「よかった。なら大丈夫」
    「む?」

    ミカサが木の双剣を抜く。

    「彼は、自分の為すべきことをよくわかっている一番の兵士」
    「ふぉ?ほほう、言いよる。では、お主は何かね?」
    「わたしは‥‥ただ、エレンから目を離せないだけ。ただの家族」
    「ホッホッホッ、それはあの小僧かの?確かに‥それも良い。一人の人間を守り抜くのも、ただ一つの道。じゃが‥‥」

    ミカサの顔を見るガナック。
    その目に浮かんでいたのはガナックの姿と‥もう一つ。

    「ふむ。お主には‥まだ足りないものがあるのう。一手指そうか」
    「足りないもの‥?」
    「そう‥‥お主、今‥‥いや。今まで、かの。長いこと不安に駆られておるな?ここ一年どころではない話じゃの」
    「え?」
  386. 387 : : 2020/07/20(月) 16:49:09
    『さあ動けサージタウス!!レイチェルを踏み潰してしまえ!!』
    「命令ヲ確認。ターゲット:レイチェル・イェーガー。攻撃ヲ開始シマス」
    「‥プラチナキングは‥」

    相手が魔物の力を全開で使って来るなら、こちらもとプラチナキングを見るレイチェル。
    レイチェルと目が合ったプラチナキングは、ぶんぶんと身体全体を左右に動かす。
    無理。と言いたいのだろう。

    「‥‥仕方のない奴だ」
    「Laser arms , on」
    「!」

    サージタウスの目の部分から赤いレーザービームが発射される。
    レーザーは舞台を薙ぐように振り撒かれ、舞台に赤い爪痕を残していく。

    『ははっ、見ろガナック!!レイチェルが黒焦げに‥‥!?』
    『れ、レイチェル王女が!!‥‥あれ』

    パッセンと解説者にはレイチェルを赤い光が貫く様に見えていた。
    だが、レーザーがレイチェルに当たる瞬間、レイチェルの姿が掻き消える。
  387. 388 : : 2020/07/20(月) 22:05:20
    >>386
    アルミンいるから正確には二人の人間を守り抜くじゃね?
  388. 389 : : 2020/07/27(月) 12:08:34
    >>388 ガナックの台詞なので合ってます

    「対象ヲ確認。頭部ヘノ着地ヲ予想」
    『は!!?』

    頭部と言われてパッセンが上を向く前に、機体全体に衝撃が伝わる。
    レイチェルは高速でレーザーを躱した勢いそのまま、サージタウスに飛び乗っていた。

    「正・拳・突き!!」

    立て続けに上から下へ向けて凄まじい衝撃が伝わる。
    パッセンは慌てて機体内部にしがみつく。
    対してレイチェルは、正拳突きを以ってしても傷一つ入らないサージタウスの装甲に舌を巻いていた。

    「面倒なやつを連れてきおって!」
    『は、ははは‥!どうだレイチェル!?今回の大会では木の武器しか使えないのは知っていたからな‥!普段の爪の武器があれば話は別だろうが、素手ではサージタウスの防御は崩せないだろう!?』
    「チッ、どうするか‥‥」

    他の二人はとレイチェルがジャンとミカサを見る。
    ミカサはガナックとようやく攻防を始めた。
    ミカサの攻撃をガナックが余裕綽々といった顔ですべていなしている。
    ジャンは逆にマルコの攻勢に怯んでいるようだが、ジャンとマルコの戦いに手を出したくはない。
    ならば、ミカサと協力してガナックを倒すか?
    だが、今サージタウスから離れればサージタウスはジャンかミカサの方へ行ってしまう。
    それは避けた方が良い。

    「くっ‥‥このようなタイマンの状況が出来上がってしまうとは‥!どちらかが勝ってくれるのを信じて待つしかないのか!」
  389. 390 : : 2020/07/27(月) 12:15:01
    「ベギラマ!」
    「うおっ!!」

    身を捩って閃光を躱すジャン。
    近づこうにも遠距離から放たれる呪文を捌けない。
    今、二人の優劣はどちらに傾いているかなどは誰の目にも明らかだった。

    「‥まずいな。ジャンは攻撃呪文を使えないんだ」
    「え?」
    「そうなのか?ライナー」
    「アルミンと練習はしたんだが、どうにもできなかった。どちらかというと弱体呪文が得意なんだよ、アイツは」
    「得手不得手があるのはわかるが、あのヤローが苦手な分野があるのは驚きだな。器用貧乏って感じでとりあえず大抵のことはある程度できると思ってたぜ」
    「ユミルの言葉もわからんでもないがな‥」
    「マルコは攻撃呪文が得意みたいだ。近接戦はさっきはジャンが押してた。なんとか近づければ‥」
    「‥‥あのジャンってのが、こんなとこで負けるとは思えねーけどな」
    「なんで?エレン」
    「なんでって‥アイツ、お前らの中で一、二を争うくらい強いぜ?たぶん」
    「へ?」
  390. 391 : : 2020/07/27(月) 12:25:46
    「‥拉致があかないね。これで決めよう」
    「おいおい、大した自信じゃねえかマルコ!見ねえ間に随分とまあ‥」
    「君こそ大した虚勢だね、ジャン。その慢心が君を地面に伏させる」

    マルコが棍を回し始める。
    今度はなんだとジャンが観察していると、棍から薄透明の球体がふわりと出てくる。
    球体はふわふわと動き、ゆっくりジャンの方へ向かい始める。
    それが二つ、三つと出てくるうちに、数十の球体がジャンへと向かう。

    「なんだこりゃ!?」
    「マジカルボール。僕の奥の手だ。‥‥ああ、触れない方が良いよ」

    レイピアを翳して球体を切ろうとしたジャンに、マルコが忠告する。

    「それは呪文が含まれた魔力の塊だ。衝撃・生体感知で破裂する」
    「‥‥破裂すると中の呪文が生まれるわけだ」
    「そういうことだね。そして、君を囲ってそれで終わりさ」

    球体の速度は遅いものの、数が多い。
    瞬く間にジャンの周囲を球体が覆う。

    「そこから少しでも進めば球体はジャンを感知し、破裂する。含まれている呪文はイオ系だ」
    「誘爆狙いか‥!」
    「ああ。もう遅いし、何をしても無駄だ。リングアウトをお勧めするよ」
  391. 392 : : 2020/07/27(月) 14:57:33
    「‥」

    『よしよしよーし!!どうやら部下も僕の方が優秀そうだなぁ!!』
    「黙れ」
    『ひぎぃ!!!い、いくら殴ってもダメージはここまでこないんだぞレイチェル!!無駄なことはやめて‥!!』
    「ジャン‥‥本当にここまでか‥?」
    『無視するなぁ!!』

    「‥‥腑に落ちねえ点がある。それに対する答えも‥考えられるのは二つ」
    「なに?」
    「なんでそのまま攻撃しねえ?リングアウトを待っても良いが、何かしらの手を俺が持ってるかもしれないだろ」
    「‥僕が慎重なのは知ってるだろ?ジャン」
    「そうだな。けど、確実に取れる手があったら即決できたのもお前の魅力だった」
    「‥」

    「‥ジャン?」
    「まだ諦めよらんか?あの小僧は」

    ミカサもレイチェルもガナックもパッセンも、勝負は決まったと思っていた。
    観客たちも同様に、特にアルミンたちがそうだった。
    ジャンの仲間だからこそ、ジャンにできることとできないことは理解してるつもりなのだ。
  392. 393 : : 2020/07/27(月) 14:57:39

    「なぜ攻撃してこないか?一つ目の答えは、マルコやパッセンといった味方も巻き込んでしまう可能性があること」
    『ひぇっ!?』
    「だが、流石にそれはなさそうだな。俺とボールとの距離の倍以上、お前らは距離を取ってる」
    『ほっ‥‥』

    「だからこそ、二つ目。そもそも威力が低い可能性だ」
    「!」

    マルコの目が見開かれる。

    「奥の手だ、とか。リングアウトを勧める、とか。強そうな言葉を使って俺を周囲の雰囲気ごとだまくらかそうとしてる」
    「‥‥一つ一つがイオ系の呪文が篭ってる魔力の塊だ。それは事実だぞ、ジャン」
    「それだ」
    「?」
    「なんで“イオ系”なんだ?なんで呪文を言わねえ」
    「‥」
    「これだけの数だ。ざっと30といったところか‥。確かにこれが全部イオナズンだったら流石にやべえ。イオラでも十分致命傷になる。だが、実際にはそうじゃない。これ、全部イオだろ」

    確信を持った言葉がジャンの口から出た。
    ジャンの揺るぎない口調に、マルコは既に“奥の手”が読まれていることを悟った。

    「イオラを30も撃つなんてことができるなら、イオナズンを普通に連発するくらいの魔力があるはずだ。だが、お前が撃ったのはイオラ、ボミエ、ベギラマ。いずれも中位下位の呪文。お前はまだ、上位呪文を連発できるほど魔力がない」
  393. 394 : : 2020/07/27(月) 15:15:09
    「見事、と言わざるを得ないね。‥だとしても、生身でこのイオの群れを突っ切るなんて真似ができるわけがない!君は魔法戦士だ、ジャン。攻めはともかく守りは苦手だろう!?」
    「‥‥確かに、攻撃呪文すら持たない俺には‥誘爆をわざと起こして全ての球体を消してやり過ごすって手は使えねえ」

    だが。
    皮の盾に頭を隠し、レイピアを引いて突きの構えをとるジャン。

    「無理矢理突っ切る気か!?無茶だ!!皮の盾なんかじゃあ‥!」
    「ずっと思ってたことがある」
    「!?」
    「勇者や、魔王軍の三将たち‥魔神や、それと紛いなりにも戦っていたエレンやミカサを見て、思っていたことがある。俺たちには、決定的に足りない何かがあるってな」
    「‥なんのことだい?」
    「マルコ。お前も、アイツらのところに片足を突っ込んでる状態だと見た。俺もそこへ行く」

    レイピアの先に紫電が走る。
    紫電はパチパチと音を立ててレイピア全体に伝わり始め、次第に音が厚くなっていく。

    「なんだ‥それは‥!」
    「強くなるためにはどうする?腕力を鍛える?反射神経を鍛える?搦手を覚える?いなし方覚える?どれも違う。兵士の時はそんなことを考える必要もなかった。教官から下される評価が全てで、工夫の必要がなかったからだ」

    けれど、今は違う。
    好きな女の為に体を張る。
    勝手に課された役に対して悪く思っていない自分がいる。
    死んでいったかもしれない友を探しにいく為に‥。

    「強くなる必要がある!今!!それを見せてやる!!!」

    レイピアが大きな雷を吐く。
    ジャンの手に伝わり、ジャンの前面に雷のオーラが纏われる。

    「それは‥ギガスラッシュか!?」
  394. 395 : : 2020/07/27(月) 15:40:57
    ジャンが前方へ跳ぶ。
    遠くの観客席から見た彼は、地面を這う雷のようだった。
    雷がマジカルボールに触れ、球体が爆発と誘爆を起こす。
    だが、ジャンは止まらない。

    「わかってたさ。君が止まらないことも、勝負を無理矢理にでも仕掛けてくることも!」

    まさかギガスラッシュという勇者級の技を使ってくるとは思わなかったが、迎撃の準備はしていた。
    瞬く間にジャンとマルコの距離は先刻の半分以下となる。
    だからこそ、ジャンはマルコの攻撃を避けることはできない。
    確かに連発は出来ないが、一発放つくらいならどうにでもなる。

    「イオナズン!!!」

    上位爆発呪文が雷装を纏ったジャンに直撃する。
    マジカルボールの群れでギガスラッシュの威力は半減程度にはされていた筈だ。
    もう、勝負は決まった。
    ジャンは現に爆炎から出てこない。

    「‥やりすぎちゃったかな。医療班を‥‥‥」

    呼ばなきゃ。

    横を向いたマルコの視界は、何故か天地が歪んでいた。
  395. 396 : : 2020/07/27(月) 15:41:07

    「え‥」
    「ブリザーラッシュ‥」

    息も絶え絶え、全身が煤と火傷だらけ。
    だが、ジャンはマルコにレイピアを突きつけて立っていた。
    反対に、一筋の流れに沿って凍りついた身体のマルコは横たえている。

    「ど、どうして‥」
    「‥魔結界っつってな。魔法使いで使えるようになる‥技だ。俺は元々魔法戦士の、素養があった」

    それはつまり、戦士と魔法使いの両方の素養があるということ。

    「ち、違う!‥どうして、魔結界を張れた!?」
    「お前のことはよくわかってる。そう思ってたんだろ?‥‥俺もだ」

    マルコならどうする。
    慎重に、確実な手を撃つこいつなら。
    俺に勝つ為に、何をしてくる?

    「‥‥今回のお前の敗因は、あのマジカルボールとかいう奴を完成させておかなかったことだけだ。アレがイオラのマジカルボールだったら、俺は先に魔結界を使った上でギガスラッシュを使うしかなかった‥」
    「‥実は、あの技は‥‥君がこの大会に参加してるって知って、急遽作り上げた技なんだ」
    「‥俺が魔法戦士だって知っててかよ。なるほどな‥」

    ふらりとよろけながらも、マルコに背を向けるジャン。
    まだ、試合は終わっていない。

    「‥そんな身体で、よく動くよ‥」
    「お前、試合終わったら覚悟しとけよ。話すことがたくさんあるんだからな‥‥マルコ」
    「‥わかってるよ、ジャン。‥敗者として、勝者の言うことを聞こう」

    「‥君の勝ちだ」
  396. 397 : : 2020/07/27(月) 15:48:18
    『しょ、勝負あり!勝負ありぃぃぃ!!実況の言葉が出ないような刹那の勝負!!制したのは、王女の剣・魔法戦士ジャン!!!!』

    観客たちから万雷の拍手が起きる。
    マルコの味方であるはずの魔法戦士団からも拍手や歓声が起きている。
    それほどまでに見事な勝負だったのだ。

    「ジャンが‥ギガスラッシュを‥!」
    「いや、どちらかというとギガスラッシュじゃないねアレは」
    「勇者さん!」
    「ジャン君にとってはギガスラッシュのつもりかもしれないけど、ギガスラッシュを突きの形で撃って突進した。名付けるなら、ギガスラストってところかな」
    「けど、究極系の技であることには変わりないわ。やるじゃない、ジャン君」
    「おお‥勇者さんたちからの賛辞はでかいかも」
    「‥おいエレン。お前知ってたのか?」
    「んなわけねーだろ。ただ、アイツが一番強さに貪欲だった。アイツオレにまでアドバイス求めに来てんだぜ?強くなるに決まってるよ」
    「一段くらいは差をつけられたかもしれねーなこりゃ」
    「また一人有望株の戦士が生まれたわけだ。同じ戦士として、心より祝福しよう」
  397. 398 : : 2020/10/08(木) 06:57:10
    また失踪?
  398. 399 : : 2020/10/08(木) 13:42:14
    まだ断言は出来んやろ
  399. 400 : : 2020/10/20(火) 22:05:19
    もどってきてくれ
  400. 401 : : 2021/02/12(金) 21:15:37
    「ようやくか」
    「‥うっせえ、来てやったんだ‥」

    ジャンの向く先には西の王女レイチェル、サージタウス、その中に篭る東の王子パッセン。
    まだ膠着状態が続いていた。

    「まったく、みすぼらしい姿だなジャン?」
    「‥てめえな‥」
    「‥だが、貴様は来た。私のところまで、その足でな」
    「‥」
    「良い心がけだ。それでこそ我が騎士といえよう」
    「‥とっととケリつけようぜ」
    「ああ、手を貸せ」

    「‥マルコが負けた。あの、マルコが‥」

    パッセンは信じられないという表情を隠せなかった。
    負けるなよとマルコには言ってあったが、負ける可能性など1%とてないと確信もしていた。
    ガナックの直弟子で、わずか半年でこの国の歴戦の魔法使いや戦士たちを軒並み抜き去った、あのマルコが。
  401. 402 : : 2021/02/12(金) 21:16:03
    『くそ、マルコめ!普段の強さはどうしたんだ!?』
    「おいクソ王子。一応言っておくが、あの魔法使いは強かったぞ間違いなく」
    『じゃあなんで!!』
    「そんなこと決まってるだろう」

    サージタウスの上からジャンの隣に降り立ち、パッセンを見上げるレイチェル。
    口角を上げ、犬歯を覗かせて笑う。

    「貴様の魔法使いより、我が騎士の方が上だっただけだ」
    『!! ‥‥ええいっ、御託はいい!!やってしまえサージタウス!!!』
    「スナイプモードニ移行。標的ヘノ射撃開始」

    沈黙していたサージタウスが突如として起動する。
    先程まではレイチェルがサージタウスと距離が近すぎた為にうまく攻撃できなかったのだ。
    そのことはパッセンも気付いていた。

    「くるぞ」
    「おい!俺はもうほとんど動けねえぞ!?」
    「やれやれ、手間のかかる騎士だ」
    「うおっ!!」

    素早くジャンの脇に腕を通して背に手を回し、そのままジャンに肩を貸す形で二人で飛び上がる。
    ジャンとレイチェルを矢の雨が追いかけるが、基本的にレイチェルのスピードには追いつけないようだ。

    「わざわざ木の鏃の矢を用意したのか。そこまでやる必要あったのか?馬鹿なやつだ」
    「そんなこと今どうでもいいだろ!?あの鋼鉄の装甲どうすんだよ!!」
    「ジャン、貴様氷の剣技を使えるな?」
    「へ?あ、ああ。ブリザーラッシュだよな?」
    「よし、私の合図で私と同時に技を放つぞ」
    「同時に!?」
    「合体技と言うやつだ。私の得意な属性は火のメラ系と‥」

    レイチェルの拳が暗いオーラを纏う。
    パチパチと音を立てて光る魔力は、黒く艶めいていた。

    「黒い雷‥ドルマ系だ」
  402. 403 : : 2021/02/12(金) 21:16:22
    「行くぞジャン!!しっかり掴まってろ!!」
    「うおおぉぉ!?」

    ジャンを支えたまま跳ぶレイチェル。
    高く跳んだ先は、サージタウスの頭上。
    サージタウスは二人を目で終えているものの、攻撃は追いついていない。
    レイチェルとサージタウスの基礎スピードがそもそも違うのだ。
    そのことを、パッセンは理解していた。

    『サージタウス!真空波だ!!』
    「Order received」

    パッセンに戦いの才はない。
    彼にあるのは、他者を使う才能。
    他者にできること、他者にできないことを的確に把握し、引き出す力。
    捉えられないのならば全方位を攻撃するのみ。

    「しまっ‥!!」
    「任せろ!トベルーラ!!」

    ジャンの詠唱が聞こえた途端、レイチェルたちに更なる加速がかかる。
    サージタウスの頭上程度で止まるはずだった跳躍が、更に大きく飛び上がった。

    『なに!?』
    「き、貴様魔法剣士じゃなかったか!?」
    「なんかできるようになってたんだ知らねーよ!!一回見たからかもな!!」
    「つくづく貴様はやってくれるわ我が騎士よ!!」

    『ぐっ‥‥!サージタウス、ビームだ!!特大のを‥!』
    「遅い!合わせろジャン!!」
    「ぶっつけ本番でうまく行くのかよこれ!!」
    「やる!!やってみせろ!!!」
    「ああああもう知らねえぞぉ!!?」

    ジャンのレイピアに氷のオーラ、レイチェルの拳に闇のオーラがまとい始める。
    サージタウスのアイが上へと向き、レーザービームの光が膨らむ。
    氷と闇が合わさり、二つの属性が喰いあって回転を開始。
    嵐となってサージタウスに向けて吹き荒れ始める。
    合体奥義。

    「「闇獄凍滅斬」」

    遅れてレーザービームが発射されるものの、レーザー光と薄暗い氷の球体はサージタウスのアイの近くで破裂し、パッセンの視界を覆ってしまう。
    破裂音と共に弾ける氷と闇の斬撃が、レーザー光を切り裂きサージタウスの装甲を襲う。

    「「貫けぇぇぇ!!」」

    サージタウスが闇獄凍滅斬に押され、サージタウスの四本足が軋む。

    『ひいいいいぃぃぃぃ!!?』
    「これは‥!!」
    「もっとだレイチェル!!」
    「応!」
    『む、無駄だ!サージタウス!押し返‥!!?』

    がくんとパッセンは身体が揺れたことに気がつく。
    パッセン自体が揺れたのではない、サージタウスが明らかに後退したのだ。
    パッセンは力押し程度でどうにかなるものか、と強気に思うが、横から見るとジャンとレイチェルの意図が分かったのだろう、実況者が驚愕の声をあげる。

    『ま、まさか!?ここ、これは無謀ですレイチェル&ジャン!!装甲を傷つけるのではなくサージタウスごと吹き飛ばす気でしょうか!?』
    「こんな無理程度ができなくて魔王討伐などできるものかぁっ!!!」
    『!?』
    「いっけぇぇぇぇぇ!!!」

    レイチェルの言葉に一瞬呆気に取られるが、すぐにハッと気を取り直すパッセン。
    サージタウスの馬足が、踏ん張りが効かずに地面を滑ったその瞬間。
    氷と闇の嵐がサージタウスの巨体を呑み込み、そのまま武舞台から吹き飛ばした。
    錐揉みしながら武舞台場外の地面に倒れ込むサージタウス。
    内部にいたパッセンも無事ではないだろう。

    「‥おい!」
    「ああ。あれでは起き上がれまい‥。‥私たちの勝ちだ、ジャン」
    「‥ハッ、もう無理だぜ‥」

    『か、勝ってしまった‥‥。魔物の力もなしに‥あの巨体のサージタウスを場外に吹き飛ばしてしまいました!!!』

    わっと観客席が湧く。
    拍手どころではない、雄叫びのような歓声が2人を讃えた。
    王女が騎士の手を取るその姿は正しく主従。
    東の民たちは、西に未来を見た。
    魔物に屈せず、強く立ち向かう確かな未来を。
  403. 404 : : 2021/02/12(金) 21:16:44
    『これで東の王子チームは残るはガナック選手ただ一人!戦力差が明確につきました!!』

    「そうだ、あとはガナック翁のみ‥!?」
    「!? み、ミカサ!」

    ジャンたちの戦いの脇で、その戦いも決着がつきかけていた。
    ただ、それは刃なき決着。
    ミカサとガナックにはそれぞれ怪我どころか土埃一つ付いていない。
    ただ、ミカサは剣をその手に持ったまま膝を着き、ガナックをそれを静かな目で見ていた。

    「‥なんだ!?」
    「おい爺さん!あんたミカサに何しやがった!?」
    「‥なんじゃ、情けないのう。負けおったかマルコ」

    パッセンについては言及しないガナック。
    そもそも勝つと思っていなかったようだ。
    質問に答えないガナックから見切りをつけ、次にミカサに声をかけるジャン。

    「おい、ミカサ、ミカサ!何やってんだよ!?」
    「‥ジャン」

    レイチェルの手を借りながらミカサに歩み寄るジャン。
    意識があることに安堵しながら、ミカサの身体に異常がないことをドギマギしながら確認する。

    「‥なんだ、あの爺さん何しやがったんだ!?」
    「いや、おそらく何もしていないな」
    「おかしいだろそれじゃ!!なんでミカサは‥」
    「おいガナック翁。貴様ミカサに何を言った!?」
    「え?」
    「戦いが始まる前の言葉は聞いていた。貴様ミカサが抱える何かしらの不安か闇かに触れたな!?」
    「儂は問うただけじゃよ。その小娘の生きる意味をの」
    「生きる‥意味!?」

    何のことだとレイチェルはわからないが、ジャンが思い当たることは一つしかない。

    ———エレン。

    「てめぇ‥‥!!」
    「ふむ‥流石にこれは分が悪いのう」
    「なに!?」
    「ほっ」

    何かする気だとレイチェルが構えるが、すぐに呆気に取られる。
    ガナックが武舞台から降りたからだ。
    つまり。

    「‥貴様、棄権する気か!?」
    「流石に怒り狂うオヌシとほぼボロ布のようなそこの男もいるとの、勝てる気がせん。大体オヌシにあれだけ勝ちたがっていた王子が負けたからの」
    「貴様!!‥くっ、王女命令だ、後でミカサに貴様なりの誠意を持って謝りに来い!!!」
    「それは王命かの?」
    「そうまでしてやらんとわからんのか!!?」
    「もういいレイチェル!ミカサ、しっかりしろ!俺がわかるか!?」
    「‥」

    『オヌシは不安なのじゃろう。その原因は一つじゃ。オヌシのそれはただの一方通行。オヌシは何もその者からもらっておらぬ。言葉の一つすらも、の』
    『オヌシのそれは‥ただの一方的な押し付けよる愛ではないかの?』

    歪んだ愛。
    物も、想いも、ハリボテの言葉すらもらったことのない。
    ただの、身勝手な気持ち。
    唯一もらったのは。

    ぎゅっと、その首に巻かれたマフラーを握る。
    赤いそれは人の熱などないかのように、冷たかった。
  404. 405 : : 2021/02/12(金) 21:17:02
    「ミカサ!」
    「‥アルミン」

    試合が終わり、武舞台の控えに戻るミカサたち。
    レイチェルがジャンに肩を貸したままのため、力無いものの、ミカサは一人で歩いて戻っていた。

    「‥お疲れ様」
    「‥うん」

    実際には自分は何もしていない、と首を振りたかったが、ミカサは捻くれた性格をしていない。
    ただ、ガナックの言葉が頭によぎる。
    ユグドラシルの言葉は、恐らく竜王ローランではなくガナックのことを指していたのだ。
    だが、ガナックの言葉で何か物事が進んだわけではなく、寧ろミカサを混沌へと突き落とす言葉。
    ミカサのエレンへの想いが突き崩れてしまいそうだ。
    言葉が欲しい、確かな言葉が。
    偽物のエレン、イーを見るが、彼は今エレンに扮しているだけでエレンではない。
    でも。

    「‥会いに行こうよ、ミカサ」
    「‥‥アルミン?」
    「ごめん、聞いてたんだ。ミカサを応援したくて‥観客席伝いに近くまで行ってたからね」

    言葉を選ばなければ。
    明確な否定など出してしまえばミカサは本当に折れてしまう、と息を吐くアルミン。

    「たしかに、エレンは何も君に言ってなかったと思う。君たちが二人で秘密の会話でもしてない限りね。ま、エレンはそこのところ不器用だしさ」

    でもね、と言葉を続けるアルミン。

    「幼少期、まだ会って間もないミカサを助けて。そこからミカサはずっとエレンについていった。そこにどんな思いがあったかまでは僕にはわからないけど。エレンは、何年も一緒にいる人間を邪険に扱えるほど、不器用じゃない」
    「まだただの想像じゃないか。エレンのことをパパって助けちゃってさ、本心を聴きに行こうよ。それでいいんだ」
    「‥」
    「君たち二人は、不幸な事故が起きて‥触れないようにしていた不安に触れてしまっただけなんだよ。いずれ確かめなきゃいけないことを確かめる時が来ただけだ」
    「‥‥うん」

    本来だったら最終成績が発表され、そこから希望の兵団を願い、そこに移る筈だった。
    エレンの希望は調査兵団。
    ミカサはそれに反対し、それ以外。
    エレンのことを考えると憲兵団に共に行こうとする筈だが、調査兵団じゃないなら駐屯兵団でも良いと考えていた。
    恐らくそのことで本来なら話し合い、難航し、そこで触れる筈だったのだろう。
    ミカサもいずれ来る未来が分かっていた筈。
    だが、その機会を失ってしまった。
    エレンは生きているならば恐らく一年以上。
    ミカサも数ヶ月。
    不安に駆られ、そこをガナックに突かれたということだ。
    そこまで考えてガナックの洞察力に舌を巻くアルミン。
    ミカサの少ない言動と様子だけで、具体的なことは特に指摘せずにミカサを不安に陥れたのだ。
    訳がわからない。
    今大会最強格と言われているそうだが確かに伊達ではない。

    でも。

    (本当の最強格が横にいるんだよなぁ‥)
    「‥? 何だよアルミン」
    「いや、別に‥」

    アルミンに問いかけるエレン———のふりを続けているイー。
    魔王軍三将という素性を隠す為か、顔を隠すサングラスとバンダナをつけているので視線がわからないが、アルミンの方を横目で見ているようだ。
    その横にユミル、ヤンガスの子孫のミリアもつく。

    「まっ‥ミカサはともかく、ジャンと王女さんがあれだけ魅せてくれたんだ。オレたちもやってやろうぜ!」
    「おい、本気出して目ぇつけられるのだけは避けろよ!?」
    「ウズウズしてきたぜ!頑張ろうなユミル姉、エレン兄!」

    『では、一回戦第四試合!エレンチーム対カンダタチームの試合を開始します!』
  405. 406 : : 2021/02/12(金) 21:17:24
    「カンダタか‥」
    「どうかしたんですか?ベルトルト。知り合い?」
    「いや、知り合いじゃない。一方的に知ってるだけだ」
    「おいらも知ってるッキーよ」

    観客席。
    ベルトルトの怪訝な顔にサシャが目敏く気がつく。
    キドラがベルトルトの表情の理由を説明し始めた。

    「カンダタは世界的に有名な盗賊だッキー」
    「盗賊?ユミルみたいな?」
    「いや、ユミルは職業だッキー?けどカンダタは生業‥つまりマジモンの悪い方の盗賊だッキーね」
    「わ、悪い人がこんな大会に出てるんですか!?」
    「うーん、不思議だッキーね」
    「人の殺生はしないらしいから、そこで何とか説得したのかもね‥何度か勇者さんたちに懲らしめられてるらしいし」
    「勇者たちの狙いは対魔王軍の徴兵‥‥カンダタは腕は確からしいから、そこも狙い目なのかもしれないッキー」
    「寧ろ協力を約束してるのかもね」
    「へー‥」

    ちなみに二人の憶測は半分外れている。
    カンダタが殺人をしない盗賊だから大会参加は許されているが、勇者たちは単にカンダタたちの大会参加を知らなかっただけである。
    もし事前に知っていたら間違いなく勇者たちは止めていただろう。
    カンダタが関わった時は碌なことがないというのは勇者とその仲間たちの間では共通の認識である。
  406. 407 : : 2021/02/12(金) 21:18:01
    『では、選手紹介のお時間です!まずは上位からエレンチーム!剣士エレン、そして盗賊のユミルはこれまたアルミン一行、ジャンたちの仲間!なんと出場チームのうちの半分がアルミン一行が参戦しています!3人目は聖域の防人の一人、ミリア!シスターマリアの守護者が、今大会最年少として参加します!魔物はユミル選手に付き従う煉獄天馬!』

    「剣士って何だよ」
    「魔剣士なんて言えねーだろ」
    「まあそうか‥」
    「魔剣士?」
    「世間からは嫌な目される職業だよ。‥最年少って、そういやミリアは歳いくつだ?」
    「ん?12」
    「うわーガキだな」
    「ユミル姉はいくつだ?30?」
    「17だボケガキ」
    「ひゃい」
    「スライムみたいに頰が伸びるなぁお前」

    ほれほれと二人がミリアを弄ぶ中、ずんっと重い足音を鳴らしながら反対側の控え通路から出てくる大男。
    明確な敵意が籠った視線を感じ、3人はその男を見る。
    カンダタだ。

    『では下位チームより!カンダタチームの参戦です!まずは大将カンダタ!カンダタ盗賊団の頭領であり、今大会に参戦した際にはもう盗みはしないという懇願をしたそうですが‥果たして真意はいかに!?そして二人目はカンダタレディース!カンダタの2倍もある巨体を持つ女の子!最後に三人目なのですが‥秘密兵器とのことで詳細素性一切不明!匿名希望選手!』

    「は?」

    最後の選手紹介に疑問符を頭に浮かべ、カンダタたちを見る。
    カンダタチームが引き連れている魔物はトロルキングなのだが、そのトロルキングが誰かを肩に抱えている。
    カンダタでもカンダタレディースでもないため、恐らくアレが三人目なのだが‥。

    「‥何であの肩のやつ簀巻きにされて担がれてんだ?」
    「さあな。ていうかおい、あのカンダタレディースとかいうやつもなんか変だぞ?」
    「え?どこが?」
    「よく見ろよ。あの女、ずっともぞもぞ覆面が動いてるぞ?ていうかなんで覆面なんだよカンダタもあの女も」
    「トロルキングにまで覆面被せてんぞ‥」
    「オレと同じで顔バレしたくねーんだろ。そこを突いてやるなよ」

    「ほほう、お前も似合いそうだなカンダタマスクが‥。どうだ!お前も俺の子分にならねえか!?」
    「やだ」
    「即答で断んなよ!」
    「しょ、ショコラ歓迎!あの子イケメンっぽい!」
    「あ?」

    カンダタレディースの声に反応したのはユミルである。
    なに手を出そうとしてやがる。
    今度はユミルから殺気が出始めた。
    隣のイーもミリアも理由はわからずともユミルからそっと離れ始める。
    怖い。
  407. 408 : : 2021/02/12(金) 21:18:53
    『では、準備はよろしいでしょうか!?』
    「おい、あの簀巻きにされてるやつスルーかよ」
    『試合開始!!』
    「関わってると大会進行に差し障るんだろ‥ほっとけ」
    「めんどくさそうだもんな」

    イーとユミルの緊張感の無さにカンダタチームだけでなくミリアまできょとんとしてしまう。
    今試合開始って言ってた気がするけど気のせいだったかな、と首を傾げる始末。

    「な、なんだかわかんねぇ奴らだが‥!やっちまえトロルキング!!」
    「グハハハハァッ!!」
    「ぐむ!」

    肩に抱えていた簀巻き人間をポイと投げ捨て、ズンズンとイーたちに向かって進行を始めるトロルキング。
    中々カンダタマスクが似合うが、そんなことを考えてる場合じゃないと首を振るユミル。

    「当初の予定通り行くぞ!」
    「おっしゃ!」

    煉獄天馬に飛び乗るミリア、イーの真後ろに着くユミル。
    煉獄天馬はミリアを乗せたまま宙へと浮かび上がり、イーはトロルキングに向かってスタスタと歩き始めた。

    「おいおい笑わせんな!?トロルキングを正面からどうにかできるとでも‥!!」
    「ベタン!」
    「ジバリカ!!」

    イーがベタンを、ユミルがジバリカを唱えてトロルキングに呪文がかかる。
    ズンとトロルキングに体重以上の自重がかかり、ジバリカで足元の武舞台地面を砕かれてなんとトロルキングはそのまま武舞台に埋まってしまう。

    「は!!?」
    「私たちが使う呪文はお互い相性が良いな」
    「かーもな。とっとと片付けようぜ」
    「ああ」
  408. 409 : : 2021/02/12(金) 21:19:11
    「こ、このやろ〜〜!よくもうちの新戦力を!!」
    「新戦力ぅ?」
    「こいつモンスターマスターの魔物を奪う気か‥」

    ユミルがモンスターマスターのレーヌの方を見るが、勿論笑顔でダメと首を振る。
    まず無理だろう。

    「仕方ねえ、切り札だ!」
    「新戦力、切り札、秘密兵器‥好きなんだなそういうのが」
    「オレも好きだぞ」
    「だろうな、お前はそういうの好きだよな」
    「いけ、カンダタレディース!」
    「?」

    ショコラと自称したカンダタレディースがモジモジしながら前へ出る。
    ていうか何故かカンダタが出てこない。
    やる気ないのか。

    「あ、あのう‥」
    「なんだ?」
    「ご、ごめんなさい!」
    「は?」
    「なにが?」

    ショコラがその巨体をバッと動かして頭を下げる。
    何のことだ、と首を傾げると、何とショコラの覆面の下から何かが出てきた。
    ———人だ。
    しかも二人。

    「おいおいおいおい‥」
    「いやそれ反則だろ!?五人じゃねえか!」
    「へっ、元々一人の魔物ってことになってんだよ!」
    「ていうか魔物なのかコイツら!?」
    「いや、カンダタが無理矢理押し通っただけだろこれ‥」

    東の王、アシェン・ロイヤルの方を見るが、頭を抱えているものの止める気はなさそうだ。
    止めたら止めたでカンダタの次の行動が予測できるのだろう。
    どうしようもないというやつだ。

    「はーい、相手してあげるわよかわいこちゃんたち!私はカンダタレディース次女のカンダタハニーよ!」
    「あ、改めてカンダタレディース三女のカンダタショコラ!」
    「そして‥ふふふふっ!私がカンダタレディース長女カンダタシュガーよ!」
    「え?アレが一番上なの?」
    「は?」

    シュガーは三人の中で一番小さい。
    ショコラが特別大きいにしても、ハニーは一般的な女性の身長体型。
    その二人に対してシュガーはなんとハニーの膝元程度までしか身長がない。
    そんな彼女が長女と言われたら確かにイーでなくとも疑問に思うだろう。
    実際ユミルもそう思った。
    だが、そこで声に出してしまうからデリカシーがないのだ。

    「‥あんた、私が殺してあげる♡」
    「うわなんだあいつ。笑ってるんだろうが目がマジだぞ」
    「お前が悪い」
  409. 410 : : 2021/02/12(金) 21:20:05
    「ユミル姉!」
    「ミリア!おまえはあのハニーとかいう奴を天馬と協力して相手しろ!私はふざけたこと抜かしやがったあのデカブツをやる!」
    「了解!」
    「何だユミルやる気だな。オレ相手が女だから気が乗らねえんだよアレ」
    「じゃーお前、カンダタやってこい。私が二人とも‥」
    「余所見とは感心しないわね」

    イーとユミルが顔を合わせて相談している最中、シュガーが急接近してイーに襲いかかる。
    ユミルはすぐに反応して木のナイフを振りかぶるが、その二人よりも速くイーは動いていた。
    シュガーの鉄球ならぬ木の球、その柄の部分を蹴り返し、木球を手放さないシュガーごと蹴り飛ばしたのだ。

    「割り込んでくんじゃねー」
    「‥おい、やっぱり協力してやろう。アイツ強いぞ」
    「ま、仕方ねえな。ユミルに怪我されても困る」
    「‥‥そういうことサラリと言うな、頼むから」

    「お姉ちゃん!」
    「シュガーお姉ちゃん!!」
    「‥親分?」
    「おう、どうした?」
    「悪いけど、レディース総出であの二人をやるわ。その間、あのお馬さんとガキンチョを任せて良いかしら」
    「今度奢れよな!」
    「当然。交渉成立ね」

    木球を二つ、ごとりと地面に落として手を脱力して振るう。
    無理なく力を引き出すための準備だ。
    ハニーも鞭を構え、ショコラも両手を手の近くに構え臨戦態勢に入る。

    「2対3か」
    「勝てるか?」
    「当然———」

    「カンダタレディース」
    「三人のコンビネーションを」
    「お、思い知るのよ!」

    イーとユミル。
    カンダタレディース。

    両者が激突する。

    それを見てミリアも煉獄天馬を促し、カンダタに襲いかかる。
    カンダタはポリポリと頭を掻きながら、木の棍棒を構えた。

    そして、簀巻きにされた人物はもぞもぞと力なく動き、脱出できないことを悟りとりあえずなすがままで状況が動くことを待っていた。
    こんなことをしている場合じゃないのに。
    早く、仲間を助けにいかなきゃいけないのに。
  410. 411 : : 2021/06/28(月) 08:08:06
    更新マダー?

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白黒エレン

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