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密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの贖罪』
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- 1 : 2015/12/15(火) 11:35:55 :
- 密めき隠れる恋の翼たち~『エルヴィン・スミス暗殺計画』
(http://www.ssnote.net/archives/2247)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスとの1週間』
(http://www.ssnote.net/archives/4960)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの苦悩』
(http://www.ssnote.net/archives/6022)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの審判』
(http://www.ssnote.net/archives/7972)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの否応』
(http://www.ssnote.net/archives/10210)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの溜飲』
(http://www.ssnote.net/archives/11948)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの流転』
(http://www.ssnote.net/archives/14678)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの渇望』
(http://www.ssnote.net/archives/16657)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの血涙』
(http://www.ssnote.net/archives/18334)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの証明』
(http://www.ssnote.net/archives/19889)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの慕情』
(http://www.ssnote.net/archives/21842)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの天命』
(http://www.ssnote.net/archives/23673)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの微睡』
(http://www.ssnote.net/archives/25857)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの再陣』
(http://www.ssnote.net/archives/27154)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの謀反』
(http://www.ssnote.net/archives/29066)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの杞憂』
(http://www.ssnote.net/archives/30692)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの勇敢』
(http://www.ssnote.net/archives/31646)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの挽回』
(http://www.ssnote.net/archives/32962)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの慈愛』
(http://www.ssnote.net/archives/34179)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの青天』
(http://www.ssnote.net/archives/35208)
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- 2 : 2015/12/15(火) 11:36:53 :
- 密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの夢想』
(http://www.ssnote.net/archives/36277)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの愛念』
(http://www.ssnote.net/archives/37309)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの咆哮』
(http://www.ssnote.net/archives/38556)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの大望』
(http://www.ssnote.net/archives/39459)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの死闘』
(http://www.ssnote.net/archives/40165)
密めき隠れる恋の翼たち~『番外編・エルヴィン・スミスの火蓋』
(http://www.ssnote.net/archives/41081)
★巨人に右腕を喰われたエルヴィンと最愛のミケを失うが、エルヴィンに仕えることになった隠密のイブキとの新たなる関係の続編。
『進撃の巨人』の最新話に私の想像(妄想)を書き足したオリジナルストーリー(短編)です。
オリジナル・キャラクター
*イブキ
かつてイヴと名乗りエルヴィンの命を狙っていた隠密の調査兵 。
生前のミケ・ザカリアスと深く愛し合っていた。
ミカサ・アッカーマンの年の近い叔母。
*ミランダ・シーファー
かつての壁外調査で死亡し、エルヴィンが愛した同期の調査兵。
『若き自由の翼たち』の主役(http://www.ssnote.net/archives/414)
※SSnoteのルールに則り感想等を書いていただくグループコミュニティを作りました。
お手数ですが、コメントがございましたら、こちらまで
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- 3 : 2015/12/15(火) 11:38:14 :
- シガンシナの壁上でイブキは調査兵団団長のエルヴィン・スミスに抱きしめられていた。その背後では巨人化したエレン・イェーガーとライナー・ブラウンが互いの拳を交えていた。大地を揺らすような地響きがイブキが立つ壁上まで感じられると、そっとエルヴィンの胸元から抜け出した。イブキはシガンシナ区内で活動する姪のミカサ・アッカーマンが気掛かりで、エルヴィンに背を向けながら、その視線をあちらこちらに彷徨わせていた。またエレンとライナーが轟音を上げ、互いの身体をぶつけ合って破壊する家屋敷だけでなく、5年前から人々の気配を打ち消した街並みを改めて眺めていた。
「ミカサの故郷か……」
イブキは悲壮感を漂わせるようにつぶやいた。調査兵に生まれ変わる以前、暗殺者だったイブキはウォール・シーナでも秘密裏の施設に陰の如く暮らしていた。人目を忍ぶ生活でも、王政の密やかな援助もあり、ウォール・マリアやローゼの木造住宅よりも比較的頑丈で石造りの建物に住んでいた。シガンシナ区の寂れた住宅を眺める眼差しにやや影を落とす。
「あの場所でさえ……私の故郷はもうない」
朽ち果てた住宅街を眺め、自分が暮らしていた住まいの姿と違えど、旧王政が解体された現在、その施設も取り壊されただろうと想像していた。かつての仲間達は中央憲兵団に属し、またそのほとんどが命を落としていた。帰る故郷が消滅したのだと自覚するほど、寂しさが付きまとう。しかし、エルヴィンに仕えて以来、危うい状況にいるほど、彼への愛情を感じる。肩越しのエルヴィンの広い背中を眺め、自分の故郷を失ってもなお、彼に夢を見させてあげたいという、湧き上がる感情の奇妙さにイブキは鼻を鳴らして笑っていた。
「私も変わったな」
共に過ごした時間はごく僅かでも、ミケ・ザカリアスから一心に注がれた愛情がイブキに変化をもたらした。愛を知らないイブキがミケの優しさや温もりを通して、彼女の中に潜んでいた人としての慈しみが開花した。エルヴィンの傍にいても、ミケを大切に想う気持ちに偽りはなかった。
(ミケ、お願い。みんなを見守っていて……)
イブキはその心に宿るミケに願うため、手のひらをその胸に宛がった。心臓の鼓動が温かくなるにつれ、ミケの返事をもらった気がする。イブキは改めてミカサや戦う兵士達の故郷が無事に取り戻せるよう、切に願うだけだった――。
彷徨っていたイブキの視線が定まった。筒状の新たなる武器、『雷槍』を両腕に装着し、鎧の巨人に変貌を遂げたライナーに見つからぬよう、分隊長であるハンジ・ゾエと共に屋根に隠れては移動するミカサをようやく探し当てた。
「ハンジが一緒なら、まぁ、大丈夫だろうけど――」
本作戦に参加する前、イブキの主な任務はヒストリア・レイス女王の護衛のため、『雷槍』の実験には立ち会えなかった。強大な破壊力ゆえ、撃った本人にさえ危険が及ぶ武器だと聞いて不安は募る。新王政が管轄する牧場でミカサと一緒に牛の世話をする最中、いつもの落ち着き払った表情で新たな武器の実験結果を初めてイブキは聞かされた。木の幹を真っ二つにへし折るというその強度を知り、作業する手を止めるほどだった。ハンジについて行くミカサを眺め、胸に宛がっていたイブキの手のひらは少し汗ばんでいた。
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- 4 : 2015/12/15(火) 11:39:20 :
- 立体起動で屋根から屋根へ飛び立つミカサを眺めやり、イブキはエルヴィンの背中に身体を預けるように少しだけ寄りかかった。エルヴィンはイブキの体温を感じつつ、正面から視線を逸らさない。吹き荒れる壁上でその頬に駆けゆく冷ややかな風にも動じないはずだった。しかしながら、住宅街と丘陵の合間で大型巨人たちと半円状の隊列を組み、その中心で腰を屈めて股を開いて座る最大級の敵、『獣の巨人』を眺める視線は少しずつ下がっていった。また次第に憂いさを滲ませていく。
イブキに近づけば、身体を落ち着きなく揺らす気配で『獣の巨人』が彼女を気に入っているとエルヴィンは感じる。若かりし日々から現在を思い返せば、自分のつま先しか眺められなくなっていた。
訓練兵時代、仲間達と語り合うとき、率先して自分と父親が考えた仮説を披露しては、隣に座るナイル・ドークからはまた妄想劇が始まった、と両手を広げ呆れられていた。それでも、話すことを止めないでいた。しかし、いざ調査兵団に属すれば、誰にも話さなかった。仲間達は死の直前でさえ、その命を人類のために捧げても、自分だけが自分の夢を見ているのだと確信していたからだ。多くの仲間達を犠牲にし、その頂点には年齢が近く、また調査兵として付き合いも長い、ミケが存在する気がしてならない。
ミケを始め皆を踏み台にしていると感じるほど、背後のイブキにも罪悪感を覚える――。
(俺が死に追いやったミケが愛した女を……俺が奪った)
それでも、エレンの父親であるグリシャ・イェーガーが残した『世界の真相』に繋がるという地下室に足を踏み入れたい情熱はもう止められないと自覚する。自分の気持ちに正直になるほど、エルヴィンはイブキの顔がまともに見られない。壁下では2~3メートル級の小型巨人に苦戦する新兵の代わりに兵士長であるリヴァイのブレードが誰よりも機敏な動きで巨人のうなじを削いだ。部下達に指示を与え、リヴァイは団長の命令通りに巨人に挑んでいく。自分が見たい世界のため、また新たな負傷者を出していると実感するほど、エルヴィンの憂いさも膨れ上がるようだった。
エルヴィンがゴクッ、と唾を飲み込む音を感じ、イブキは振り向いて彼が失った右腕の傍らに立った。その横顔を見上げイブキは目を見開いた――。
「エルヴィン、私がイヴだった頃……」
イブキは自ら口をついたことで、咄嗟にエルヴィンから視線を逸らすが、戸惑いは一瞬だけで、意を決する。
「かつての私の殺しの的で、ようやく捕まえた詐欺師がいた……。王政の監視を欺いて商売するだけじゃない。自分の欲のため、普通の商売人の一家を離散させるだけでなく、心中させてまで儲けを独り占めするヤツで」
「結局、君が?」
「そう、私がこの手で……」
エルヴィンの乾いた声音を聞いて、視線を落とし、眺めやる手のひらをぎゅっと握った。
「私が追い詰めたとき、『そんなつもりじゃなかった、仕方なかった! 俺にはこれしか出来なかった』って最後の最後に自分がしたことを後悔しながら、私に命乞いをする……怯えるそいつの目と……今のあなたの目が似ている、エルヴィン――」
自分の心情を見抜かれたようで、更なる苦痛が押し寄せた。ただエルヴィンは平常心を取り戻そうと、正面の『獣の巨人』を睨むだけだった。
「でも、あはなたは私利私欲だけで、ここまでこれなかったよね……」
言いながらイブキの視線は失った右腕に向かった。その声は和らいでいて、エルヴィンを責めるつもりはない。向けられた視線を感じ、エルヴィンの右腕に力が入った。微かな動作もイブキは見逃さない。
「それにあなただって……ここに立つまで愛する人を失った」
イブキは続いてエルヴィンのフードに隠れた制服のジャケットの胸ポケットを見つめる。心から愛し、同期だったミランダ・シーファーにエルヴィンは久しぶりに想いを寄せる。傍らのイブキは妖しく美しい笑みを湛えたままだ。エルヴィンに抱きしめられても、その制服の胸ポケットの感触で、イブキはミランダの思い出が詰まった手帳を忍ばせていると気づいていた。
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- 5 : 2015/12/15(火) 11:39:49 :
- 「ようやく辿り着いたこの場所で、今さら贖罪だなんて、ズルいわ、エルヴィン」
イブキの柔らかく落ち着いた口調にエルヴィンは目を大きく見開く。
「あなたが皆を騙すなら、最後まで騙して。まぁ、それがバレちゃったら、そのときはそのときで、私もあなたと一緒に逝くから――」
最後まで言い終えないイブキをエルヴィンは強く抱きしめ、咄嗟に口付けを交わす。濡れた唇は重なり合う。エルヴィンはイブキを手放したくない一心で柔らかく潤んだ感触を味わう。ちょうどそのとき、雷槍がライナーの両眼に突き刺さり、雷鳴のような地響きが辺り一帯に轟かせた。その音を感じ、イブキはエルヴィンの唇から離れた。
「――ハンジの新たな武器の威力が……発揮されたようね……」
口付けを交わし、息を少し乱しながら囁いても、再びエルヴィンはイブキを強く抱きしめた。またそのとき、イブキの胸を通し、二人の元に温かくても力強いミケ声が沁みてゆく――。
(エルヴィン、俺たちは無駄死にしたと微塵も思っちゃいない……)
更に雷槍の地響きが増すようで、少し前に比べて成長したような空気の振動がその身体に伝わった。兵士達が骨身を削って雷槍と共に挑んでいると確信するエルヴィンは不敵な笑みを唇に宿らせ、憂いの瞳をようやく払拭させた。
「来るなら、いつでもかかって来い……」
眉根を寄せるエルヴィンの眼差しは左手で握るブレードの刃先より鋭くなるようだ。
「やっと心まで強靭な団長さんに戻った――」
強く抱きしめられる胸元でイブキは少しだけイタズラっぽく言い、頬を寄せた。エルヴィンの背中に回す腕にも力が込められた。
二人が壁上で口付けを交わす姿を遠くから眺めていた『獣の中身の男』は相変わらず苛立っていた。壁の向こうで何かが爆発する地響きを感じ、腰を沈めて座る膝を何度も揺らしては、その上に重なる手のひらの指先は忙しく動いていた。
(あの男! 俺を挑発しやがっている!! いい女といちゃつきやがって、羨ましい!! この接吻野郎――)
鼻息荒くても男が噛み続ける苦虫は続く。しかし、調査兵団に挑む姿勢は当初と少しも変わらない。
ライナーを案じつつ、傍らの『四足の巨人』が背中に抱えるいくつもの木箱や樽を眺め、次なる作戦をその脳裏に浮かべていた。
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- 6 : 2015/12/15(火) 11:40:03 :
- ★あとがき★
皆様、いつもありがとうございます。今月は久しぶりにとても短い内容になりました…。
最新話もまたバトルが中心でしたが、それだけでなくエルヴィンの心情が初めて露呈されたのでは
ないのでしょうか。人としての葛藤が渦巻くとき、イブキだったらどう励ましていただろうか?
って妄想して仕上げました。実際には壁上では一人しかいないエルヴィンだけど、イブキがいて、
そしてこれまで失わせた仲間達の魂を抱えているのではないでしょうかね。妄想は止みませんが…。
だけど、久しぶりに見たミケの絵が…。やっぱり死んでしまっていたのでしょうか…どこかで
実は囚われていて、って妄想も…なさそうです。また来月号に期待です。
今後もよろしくお願いいたします!
お手数ですが、コメントがございましたら、こちらまでお願いいたします!
⇒http://www.ssnote.net/groups/542/archives/2
★Special thanks to 泪飴ちゃん(•ㅂ•)/♡love*
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