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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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ハンジ流夜会のススメ

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  1. 1 : : 2015/01/05(月) 21:57:43
    ハンジ流夜会のススメ

    http://www.ssnote.net/groups/1069
    こちらの企画に参加している作品です

    シチュ固定SS企画です!

    夜会、リヴァハンというお題で書いています

    よろしくお願いいたしますm(__)m
  2. 2 : : 2015/01/05(月) 21:59:55
    モブリット「ちょっと!これは一体どういう事ですか!?分隊長!」

    ハンジ「似合うだろ?モブリット」

    私は副官であるモブリットに、初めてそでを通した調査兵団のエンブレムを配した白いスーツ姿を、どや顔で披露する

    自慢じゃないけど、私は女性のわりにはすらっとした体型だ

    こういうスーツが似合わないはずがない

    だけど、モブリットはなんだか怒っているようだ

    いつも怒られているから慣れたけどね

    モブリット「似合う似合わないの問題ではありません!確か、今夜の夜会の衣装は二揃え届けられたはずです。一着は白いスーツ。そう、あなたが着ていらっしゃるそれですね」

    ハンジ「うん、だから着てみた。似合うだろ?」

    私は胸をそらせてみた

    少し肩幅には余裕があるが、きっちり着こなせてる自信がある

    モブリット「いやいや、待って下さい。もう一着はエメラルドグリーンのドレスだったはずです」

    ハンジ「あったよ。緑のドレス」

    私は頷いた

    モブリット「それがあなたの衣装ですよ?!何をボケているんですか?!」

    ハンジ「違うよ。これが私の衣装だって!」

    私は白いスーツのえりをつんと指でつまみながら、頬を脹らませた

    モブリットはいつも小言が多い

    こんなに似合うのに文句をつけるなんて、訳がわからない

    まあ、彼は何をするにも口うるさいから仕方ないけど
  3. 3 : : 2015/01/05(月) 22:01:13
    モブリット「あなたが今着ている白いスーツは、俺のサイズに合わせたオーダーメイドですよ!袖が長いですし、肩幅も合ってないじゃないですか!」

    ハンジ「えーっ!そうなのぉ?そういえばスラックスが短いなあと思ってたんだ」

    モブリット「何なんですか!まるで俺が足が短いみたいに言わないで下さいよ!」

    ハンジ「だってズボン短いもん。私の方が足が長い証拠だね。背丈は少し私の方が低いけどね?」

    モブリット「失礼ですよ、分隊長!とにかくそれ、返してください!俺が着るんですから!」

    ハンジ「やだ。私は今日、これで夜会に出る。ひらひらしたのを着て、うろちょろできないしね」

    私はぷいっと顔を背けた
  4. 11 : : 2015/01/06(火) 08:58:52
    モブリット「あなたはいつも俺の言うことを聞いてくれない……兵長にいいつけますからね」

    モブリットの聞き捨てならない言葉に、私は首を振った

    ハンジ「ま、ま、待ってくれ!それはやばい」

    モブリット「なんでです?」

    ハンジ「だってリヴァイは怖いし!」

    モブリット「兵長は怖くないですよ。だいたいあなたをエスコートするのは兵長の役目ですよ?夜会には同伴者が必要ですから。それなのにあなたが男装では困るじゃないですか」

    私は顔にかあっと熱を帯びたのをはっきり感じた

    だからそれが恥ずかしいんだってば!

    ……というのは心の声に留めた

    ハンジ「困らないさ!だってリヴァイは私よりちびだ。それなのに私がドレスアップして、ヒールなんかはいてみろ…ますますリヴァイのちびが際立つだろ?!」

    私は大声でそう叫んだ
  5. 12 : : 2015/01/06(火) 09:13:07
    「誰の何が際立つんだ……?」

    突如背後からかかる、底冷えする様な低く冷たい声

    この声の主を知らぬ者は調査兵団にはいない

    モブリット「リヴァイ兵長!」

    ハンジ「わ、私は何も知らない!」

    リヴァイ「俺の背丈について議論していたようだが」

    モブリット「ハンジさんがドレスを嫌がって、その言い訳に兵長の背丈を使っていました!」

    ハンジ「わあああ!モブリットの裏切り者!」

    リヴァイ「ハンジ、てめえ……………」

    リヴァイの声に、更に怒気が加わった

    怖い、怖すぎる………

    ハンジ「リヴァイ……だってさ、私はドレス嫌なんだよ。夜会には立食が用意されてる。私は死ぬほど食べたいんだよ!そのためにはひらひらのドレスでしゃなりしゃなりなんてしてられないんだよ!腹をしめるようなコルセットをつけなきゃいけないドレスなんか着てたら、食えないじゃないか……」

    モブリット「あなたは子どもですか?!立食目的で夜会にでないで下さいよ!調査兵団のパトロンへのご機嫌うかがいなんですから、そそうは許されませんよ!」

    ハンジ「だって……嫌なもんは嫌だ」

    リヴァイ「まあ、確かにハンジがドレスで大人しくしているのは想像できん。大方裾を踏んで転げるのがおちだろうな」

    モブリット「で、ですが兵長!」

    リヴァイ「仕方ねえ、お前が代わりにドレス着ろよ、モブリット」

    ハンジ「え?」

    モブリット「へ?!」

    リヴァイの言葉に、私とモブリットは目を丸くした
  6. 13 : : 2015/01/06(火) 10:12:29
    リヴァイ「間抜け面並べやがって…夜会は同伴者必須だ。ハンジが男装なら、誰かがドレスアップしなきゃいけねえだろうが」

    ハンジ「確かにそうだね。モブリットに着てもらおう、そうだそうしよう!」

    モブリット「ちょっ、ちょっと待って下さいよ!なんで俺が!俺は男ですよ?!」

    リヴァイ「んなことはわかってる。だが男にしては華奢な方だろ、お前」

    ハンジ「そうだね!私のドレスだって着れる着れる!顔だってふっくら可愛いし!私より絶対に似合う!」

    私はリヴァイに畳み掛ける様に言葉を発した

    これでドレスを着なくて済む!

    夜会で思う存分飯を食える!

    心が踊った
  7. 14 : : 2015/01/06(火) 10:16:47
    モブリット「嫌ですよ!断固拒否です!胸だってないですし!肩幅は人並みなんです!がっちりです!ドレスなんか似合いません!」

    リヴァイ「心配するなモブリット。ハンジにも胸はないぞ。申し訳程度にあるくらいだ」

    ハンジ「申し訳程度って!君はいつもそんな事思ってるのかい?!アレの最中でも!」

    リヴァイ「ああ」

    モブリット「追い討ちをかけるようなリア充会話止めてくださいよ!」

    モブリットの悲鳴が辺りに響き渡った
  8. 15 : : 2015/01/06(火) 10:23:12
    ハンジ「モブリット……お願い。ドレス着て?」

    私は尚もごねるモブリットに、上目使いでおねだりをする

    これは最終手段

    こうすれば彼は、Noとは言えないのだ

    リヴァイ「まて、ハンジ!」

    すると、リヴァイが私の肩をガシッと掴んだ

    怒っているようだ

    もしかして、嫉妬?

    私がモブリットに色っぽくせまったから!

    滅多に見せないお色気を、モブリットに見せたから?!

    リヴァイ、そんなに私の事が……

    顔に血がのぼって火照ってきた
  9. 16 : : 2015/01/06(火) 10:36:49
    リヴァイ「違うだろうが。おまえはなってない。折角スーツを着てるんだ。ねだり方が、違う!」

    そう言うや否や、リヴァイはひらりと身を翻してモブリットを壁にどん、と押し付けた

    モブリット「わっ!へいちょ……」

    ハンジ「そっか!なるほど!今から男らしくなる練習しなくちゃね!貴族のお姉ちゃん方から資金を巻き上げるために!」

    私は勘違いしていたのを頭の片隅に追いやって、握りこぶしをつくった

    リヴァイ「ああそうだ。やってみろハンジ」

    モブリット「や、止めてくださいよ!俺で遊ばないで……ってうわ!」

    私はおもむろに、モブリットの肩を掴んで壁に押さえつけた

    鼻先と鼻先がぎりぎり触れるか触れないか、まで顔を近づけて一言

    ハンジ「いい子で言うことを聞け、モブリット」

    モブリットの顔がみるみるうちに朱に染まる

    その変化を楽しむ様に私は彼の頬を撫でて、ぽかんと空いたままの唇を塞…………

    リヴァイ「おっとそこまで」

    ちっ、良いところで止められた!

    モブリットが膝から崩折れるのを、私は辛うじて受け止めてやった

    しっかし、男って楽しいな!

    いつもは退屈な夜会も、男装なら楽しめそうだ!

    私は不敵な笑みを浮かべた
  10. 19 : : 2015/01/06(火) 15:27:39
    モブリット「なんて日だ…!こんな姿、親が見たら泣くだろうな……」

    モブリットは私とリヴァイ二人がかりでドレスアップさせた

    彼はもうずっと涙目

    それがまた男心をそそるのだ…っと私は女だけどね

    しかし、思ったよりずいぶん可愛らしくなった

    うん、これなら絶対に女に見える!

    私はリヴァイと見合わせて頷いた

    ハンジ「モブリット、良く似合ってるよ。その格好であほでエロい金持ちの男をたぶらかしてくれよ?」

    リヴァイ「資金はいくらあっても足りねえからな」

    モブリット「そ、そんな!声だって低いのに、ばれますってば!」

    モブリットは目に涙を浮かべながら、いやいやと首を振った

    確かに声は低い

    だけど……

    ハンジ「モブリット、声なんか出さなくても、目線と態度で誘惑しなよ」

    そうだ、男を誘うのに言葉なんかいらない

    かわいらしいしぐさで誘惑すればいいんだから

    モブリット「そんなの、無理ですってば!俺は女性にすら積極的になれない質なのに、男相手なんてなおさら…!」

    リヴァイ「ハンジよりはお前の方が見込みがある。女としてな。それに万が一男とばれてもかまわねえ」

    リヴァイは腕を組み、ふんと鼻をならした
  11. 20 : : 2015/01/06(火) 15:43:41
    ハンジ「なんでばれてもいいの?」

    リヴァイ「男が好きなおっさんもいるかもしれねえしな」

    ハンジ「そっか、そっち方面もいけちゃうよね!この格好なら!」

    モブリット「そっち方面てなんですか!俺は男に興味ないですよ!」

    リヴァイ「お前の興味なんざ聞いてねえ。金持ちのおっさんの興味がすべてだ」

    モブリット「兵長、ひどいです…!」

    モブリットはますます涙目になった
  12. 21 : : 2015/01/06(火) 15:48:01
    ハンジ「しかし、やっぱり肩幅が広いな。どう見ても男だ」

    リヴァイ「心配するな。こうすりゃあいい」

    リヴァイはそう言うと、白いふかふかのファーのストールをモブリットの肩にかけた

    するとあら不思議、広い肩幅が隠れて逆に乙女らしさを醸し出した

    ハンジ「モブリット、かわいいよ」

    私は思わず彼のふくよかな頬に頬擦りする

    モブリット「や、止めてくださいよ!かわいいだなんて…」

    モブリットはそう言いながらも顔を赤らめている

    リヴァイ「まんざらでもなさそうだな、モブリット」

    ハンジ「さ、そろそろ夜会に向かおうか!お腹空いたなあ!」

    リヴァイ「ほらよ、モブリット」

    リヴァイはモブリットに、そっと手を差し出した

    モブリット「イヤです、行きません」

    モブリットは首を振った

    ハンジ「嫌がる顔もそそるなあ…これが男心か」

    モブリット「あんた女じゃないですかぁぁ!そそるとか言わないで下さいよ!」

    モブリットの悲痛な叫びは、だが私たちの心に響く事はなかった
  13. 22 : : 2015/01/07(水) 07:49:47
    きらびやかな衣装に身を包んだ、見た目は立派な紳士淑女達

    豪華な食事に優雅な室内楽

    出席者は皆思い思いのスタイルで夜会を楽しんでいる

    酒を嗜みながら会話に興じる者、優雅な音色に合わせて踊る者、目当ての異性を誘う者

    豪華な邸宅に、ゆったりとした時間が流れている

    ハンジ「しっかし退屈だなあ」

    リヴァイ「食うだけ食って、酷い言い種だな、ハンジ」

    リヴァイが眉をひそめている

    彼も私とお揃いの白いスーツ姿

    調査兵団の紋が入った特別な衣装

    ジャケットの下には彼のトレードマークといえる、よだれ掛け…もといスカーフをまいた、これまた白いシャツ

    なかなかにいい男

    背が低いのが珠に瑕だけど、存在感は郡を抜いている

    だから、さっきから女が私たちに寄ってくるんだ

    ハンジ「リヴァイは女の子にきゃあきゃあ言われて、鼻の下を伸ばしていたねえ…ふふ」

    リヴァイ「伸ばしてねえ。黙っていただけだ。何せ大事なパトロン様……なんだろ?あのタヌキが言うに」

    ハンジ「そうだよ。そういえばタヌキは何処に行ったのかな?私たちをここに引きずり出した張本人は」

    リヴァイ「あいつならどうせ、どこぞの姫さんとベッドだろ。気持ちわりい」

    ハンジ「仕方がないよ。背に腹は変えられないもん。私だって、やらなきゃ…」

    リヴァイ「お前はしなくていい」

    ハンジ「どうして?私だって幹部だ。エルヴィンにだけいい思いはさせないよ?私もかわいこちゃんをゲットして、いい仕事しなきゃ!」

    リヴァイ「いい思いっておまえな…」

    ハンジ「リヴァイ、やきもちやいてくれてんの?ありがと。でも大丈夫、一線越えたりなんかしないって‼」

    リヴァイ「………当たり前だろうが」

    「ほう、相変わらず仲がいい事だな」

    そう言いながら会話に入ってきたのは……




  14. 23 : : 2015/01/07(水) 07:58:53
    ハンジ「エルヴィン!」

    エルヴィン「ハンジ、君はなんて格好なんだ。ドレスを言付けたはずだが」

    リヴァイ「ハンジは立食をたらふく食いたいから、モブリットのスーツを奪った」

    ハンジ「いやいや、ドレスで男を誘惑するよりは、スーツで女の子をたらしこむ方に自信があったからさ!」

    エルヴィン「と言うことは、リヴァイ、お前は誰と同伴で…」

    リヴァイ「モブリット」

    エルヴィン「ん?」

    ハンジ「モブリット」

    エルヴィン「……どういう意味だ?」

    リヴァイ「あれだ」

    リヴァイが指差す視線の先には……

    広い会場の片隅で、誰かと酒を飲んでいるモブリットの姿があった
  15. 24 : : 2015/01/07(水) 08:08:03
    エルヴィン「お前達………モブリットに何をさせているんだ」

    エルヴィンはこめかみを指で押さえて、呻くように言葉を発した

    リヴァイ「女装だ」

    ハンジ「ドレスアップさ」

    エルヴィン「モブリットにはスーツを配したはずなのに…そうか、ハンジ、お前か」

    ハンジ「えへっ!似合うだろ?」

    リヴァイ「こいつがわがままなのがいけねえんだよ」

    エルヴィン「お前達に振り回されて、モブリットが気の毒だ。直ぐに着替えさせて……ん?いや、待て」

    エルヴィンはそう言うと、モブリットと酒を飲んでいる…もといモブリットに酒を飲ませている人物を凝視した

    リヴァイ「モブリットはさっきからあの女に付きまとわれている」

    ハンジ「金持ちのおっさんをたぶらかせと言ってるのにねー」

    エルヴィン「いや、あれは………そうか、だからか」

    エルヴィンは何かに納得したように頷いた
  16. 25 : : 2015/01/07(水) 08:12:53
    リヴァイ「何一人で納得してやがる、タヌキ」

    エルヴィン「あの女は、今一番こねを作っておきたい有力貴族のバルト侯の一人娘。なんど俺が誘ってもなびかないからおかしいと思っていた所だ」

    ハンジ「エルヴィンが振られるってあるんだねえ」

    リヴァイ「確かに珍しいな」

    エルヴィン「ちょっと、様子を側で伺ってみるか…」

    ハンジ「うん、そうしよう!」

    私達はそっと、モブリットと女の会話が聞こえる位置に移動した
  17. 26 : : 2015/01/07(水) 08:20:28
    「お姉様、おかげんは如何です?喉に良いお酒です、少し潤うかと思いますけれど…」

    モブリット「は、は、はい……マリーカ様」

    モブリットはバルト侯の一人娘、マリーカ姫と談笑?中だった

    声の低さを風邪のせいにしているらしい

    機転のきく彼らしい応対だ

    マリーカ「お姉様、まだお名前は教えて下さらないの?」

    マリーカはそう言いながら、モブリットの首筋から耳をそっと撫で上げる

    モブリット「わっ……」

    マリーカ「可愛らしい反応ですこと、お姉様…ふふ」

    マリーカはモブリットの反応を楽しんでいる様子だった
  18. 27 : : 2015/01/07(水) 08:26:07
    リヴァイ「要するに、あれか。同性愛…」

    ハンジ「リヴァイ、しっ、黙って。聞こえない!」

    リヴァイ「何を真剣に食いついてんだよお前、悪趣味だな」

    ハンジ「マリーカに翻弄されるモブリット、おもしろいじゃないか」

    エルヴィン「モブリットは何だかんだで役得だしな」

    リヴァイ「タヌキ、お前まで便乗して楽しむな」

    ハンジ「リヴァイの相手は後でじっくりしてあげるからさ」

    私はそう言ってリヴァイに投げキッスをくれてやると、眼前で繰り広げられているマリーカとモブリットの逢瀬を盗み見る事に集中した
  19. 28 : : 2015/01/07(水) 09:14:33
    マリーカ「お姉様は、調査兵団なんですよね…その、怖くは無いんですの?」

    モブリット「こ…怖い、です」

    マリーカ「何故調査兵団ですの?マリーカ、お姉様に死んでほしくはありません。お父様がいつも言うんです。調査兵団は死ぬために壁の外に行く変人の集団だって……」

    モブリット「………」

    マリーカ「団長様とはお話したことがありますわ。立派なお方、ですけど怖いです…調査兵団は、皆さん怖い方というイメージです」

    モブリット「………」

    マリーカ「あっ、ごめんなさい…お姉様の働いていらっしゃる職場に対して、マリーカは失礼を言ってしまいました…お気を悪くなさいましたか…?」

    モブリット「いいえ」

    モブリットはゆっくり首を振った

    マリーカ「それなら良かったですわ。お姉様に嫌われたら、私」

    マリーカはそう言うと、モブリットの手をぎゅっと握りしめた

    モブリットの体がびくっとはね上がったのが、傍目からも見てとれた
  20. 29 : : 2015/01/07(水) 11:37:44
    ハンジ「モブリットがやばそうだ」

    リヴァイ「そろそろ助けてやった方がいいんじゃねえか?」

    ハンジ「助ける?ここで邪魔をするのは無粋だよ」

    エルヴィン「そうだな。どうなるか見守ろう」

    ハンジ「エルヴィンが見守れというから、見守る」

    リヴァイ「モブリット、気の毒にな。こんな上司を持ったが為に」

    ハンジ「そう言いながら聞き耳たててる君も、私たちと同じ『こんな上司』さ」

    エルヴィン「そうだな」

    リヴァイ「………ちっ」

    そんなやり取りを小声で交わす中、マリーカは更にモブリットとの距離を縮めつつあった
  21. 30 : : 2015/01/07(水) 11:53:23
    マリーカ「お姉様…」

    マリーカはモブリットの耳元でささやきかける

    モブリット「う……はい…」

    耳を微かに撫でる吐息に反応して、モブリットの体はまたびくっと震えた

    マリーカ「私は男が苦手ですの…だって怖いでしょう?女を見ると獣の様になると言いますし。私何度か、嫌な目にあったことがあるのです……変な目で見られたり…」

    モブリット「………」

    マリーカ「お父様の建前、私は嫌でも夜会には出なければなりません。本当は嫌でしたけど……でも、今日は……」

    マリーカはそこまで言うと言葉を止めて、モブリットの頬に手を当てた

    そして、かちんと凍りついた様に動かないモブリットに、自分の顔を近づけた

    マリーカ「今日は、お姉様と出会えたから、嬉しかったですわ。きっと、神様がお姉様に会わせてくれたんです…」

    モブリット「…………」

    言葉を失うモブリットの半開きの口元に、マリーカは顔を傾けてそっと唇を寄せた
  22. 31 : : 2015/01/07(水) 14:34:52
    モブリット「ちょっと、ちょっと待って下さい!」

    モブリットが我に返った様に、パッと体をよじった

    マリーカ「お姉様……やっぱりお姉様も、男が好きなんですのね」

    モブリット「いや、自分は女が好きです」

    マリーカ「ではなぜ、私の口付けを拒絶なさるの…?」

    マリーカの今にも泣き出しそうな表情に、モブリットは狼狽えながらも首を振る

    モブリット「違うんです、根本的に…その、自分は……えっと……」

    マリーカ「お姉様、言いにくい事なのですか?マリーカは何を聞いても驚きませんし、お父様にも内緒にしますから、教えて下さいまし」

    マリーカの真剣そのものの表情と力強い言葉に引かれる様に、モブリットは意を決して口を開いた
  23. 32 : : 2015/01/07(水) 14:46:36
    モブリット「すみません、マリーカ様……自分は、いや、俺は…男なんです。訳あってこんな成りをしていますが…」

    モブリットはそう言うと、肩から首の付け根を隠していたファーの襟巻きをちらりと外す

    その首もとには、女性にはない特有の突起がはっきり見てとれた

    マリーカ「お姉様…は男、だったのですか…」

    モブリット「はい、すみません……結果的にあなたを騙すような形になってしまいました」

    モブリットは今にも消え入りそうな声でそう言うと、すらりと立ち上がって頭を下げた

    マリーカ「お姉様……いいえ、お兄様、お座りになって。あなたは女装が趣味ですの…?」

    モブリット「いいえ、実は上司に言いつけられまして…一種の娯楽といった所でしょうか」

    モブリットはマリーカの隣に腰を下ろすと、肩をすくめてそう言った

    マリーカ「娯楽…上司のお遊びのために趣味でもない女装を?上司も上司です。お兄様が断れないのを知っているのでしょう?兵は上の命令には逆らえませんもの」

    モブリット「確かに、そうなんです。酷いですよね……」

    マリーカ「はい、お兄様が気の毒です…」

    マリーカはそう言うと、モブリットの頭をよしよしと撫でた
  24. 33 : : 2015/01/07(水) 15:41:40
    モブリット「ですが……俺の尊敬する上司です」

    モブリットの口から、淀みなく発せられたその言葉に、聞き耳をたてていた私はびくりと体を震わせた

    マリーカ「お兄様……」

    モブリット「こんな事はまだましな方です。いつももっと無茶をさせられますし、それ以上に無茶をします。そんな上司です」

    マリーカ「女装をして夜会に出る事がましだなんて…それでも尊敬しているのですか?そんなに無茶をさせられているのに…」

    モブリット「はい。調査兵団は…特に上司達は、娯楽など殆ど興じる暇もありません。壁外から帰ったら直ぐに事後処理と、次の遠征の作戦立案、資金調達…様々な仕事があるからです」

    マリーカ「はい」

    モブリット「そんな上司達ですから、羽目を外すなんて事をしません。いつもまるで追い込まれているように、邁進しています。そんな上司に少しでも楽しんでもらえるなら…こんな格好くらいはします」

    マリーカ「お兄様……きっとお兄様を部下に持った上司の方は幸せですわね。そして、お兄様にそこまでさせる上司は、きっと素晴らしい方なのですわ」

    モブリット「俺は…大したことは出来ていません」

    モブリットは首を振った
  25. 34 : : 2015/01/07(水) 15:43:44
    マリーカ「いいえ、お兄様はいつも上司の方を案じていらっしゃって…趣味でもない女装まで引き受けて…きっと上司の方にも愛されているはずですわ。どんな方なんですの?お兄様の上司様は」

    モブリット「俺の直属の上司は女性なんです。とても頭がよくて強い人です。巨人が大好きな変人です。いつも駆け足で…ついていくのに必死です。待って下さいなんて言えませんから、ただひたすら後を追っています」

    マリーカ「お兄様はその方の事を?」

    モブリット「いえ、その上司には決まった人がいまして…そちらは有名な方です。マリーカ様もご存知かと」

    マリーカ「調査兵団で知っている方は、スミス団長と……人類最強の…」

    モブリット「そうです、その人類最強と呼ばれているリヴァイ兵士長です」

    マリーカ「お兄様の上司と、リヴァイ兵士長が…」

    モブリット「そうです。兵士長はとてもきれい好きで、見た目は怖いですが実は凄く部下思いなんです。強いのはもう、ご存知の通りです。俺が尊敬する上司の1人です」

    マリーカ「リヴァイ兵士長はいつもにらんでいるみたいで怖いですけど…そうでもないのですか?」

    モブリット「はい。厳しくも優しい方です。結構冗談もおっしゃいますし、第一女装しろと言い出したのは兵士長でしたからね」

    マリーカ「リヴァイ兵士長は、結構お茶目ですのね……ふふっ」

    マリーカは笑顔でそう言った
  26. 35 : : 2015/01/07(水) 15:59:36
    モブリット「そして、マリーカ様が先ほど怖いとおっしゃったエルヴィン・スミス団長ですが…確かに怖いです」

    マリーカ「やっぱり、そうですか……」

    モブリット「ですが、その怖さは何を考えているのかわからない怖さなんです。あの方は決して力に任せて服従させようとはしませんから。いつも人が及びもつかないほど遠くを見据えていらっしゃいます」

    マリーカ「遠く……壁の向こう側でしょうか」

    モブリット「わかりません。団長が何処を向いているのか、はたまた全ての方向に目を凝らしているのか……俺の想像なんか及びつかないですから、着いていくだけです」

    マリーカ「そうなんですね……」

    マリーカはなにかを考えるように俯いた
  27. 36 : : 2015/01/07(水) 16:09:53
    モブリット「マリーカ様、本当に失礼いたしました。あなたを謀った罪は全て俺に…」

    モブリットはもう一度立ち上がり、今度はドレスが床につくのも構わず、マリーカの前に跪き頭を垂れた

    マリーカ「いいえ、先ほども言いましたけど、マリーカはこの事をだれにも言いませんし、咎めようとも思っていません。むしろ……」

    マリーカはそう言うと、頭を下げているモブリットの顎に指を当て、くいっと顔を上向けた

    モブリット「マリーカ様?」

    モブリットが彼女の名前を呼んだその瞬間

    彼女の唇が、まるで花びらが舞うようにふわりと、モブリットの唇に落とされた

    マリーカ「お父様には、私からお話します。調査兵団に悪いようにはしませんわ、お兄様」

    マリーカはそう言うとひらりと立ち上がり、呆然とするモブリットに会釈をすると、その場を後にした
  28. 37 : : 2015/01/07(水) 16:26:42
    ハンジ「やっちまったな!モブリット」

    いまだに焦点の定まらないモブリットの前に躍り出た私たち

    リヴァイ「おい、モブリット、大丈夫か?」

    リヴァイがぺちぺちとモブリットの頬を叩くと、やがてモブリットがまばたきをした

    モブリット「兵長…ハンジさん…?それに団長」

    エルヴィン「桜色の口紅がついているぞ、モブリット」

    モブリット「へっ?うわ、あの………」

    ハンジ「大丈夫、全部見てたし聞いてたから知ってるよ。マリーカとの会話」

    リヴァイ「おまえがたらしこんだ女は、バルト侯爵の一人娘だとよ」

    エルヴィン「でかしたモブリット。これでしばらくは資金は安定だ」

    モブリット「バルト侯…………?まさか、そうだったんですか……?いや、でかしたも何も、俺は彼女を騙して…」

    ハンジ「でも、ちゃんと正直に話したじゃないか。結果的にマリーカは君にキスをしたわけだしね。男嫌いの彼女が、男である君に…もしや、お輿入れとかあるかも?」

    リヴァイ「モブリットが逆玉の輿か」

    エルヴィン「資金は頼んだ、モブリット」

    モブリット「ちょっとあんたたち!俺の一大事をなんて扱いしてくれてんですか?!」

    ハンジ「一大事じゃなくて、ラッキースケベだろ?マリーカみたいな可愛い子にちゅうされてさぁ!!」

    モブリット「っていうか、まさかずっと覗いてたんじゃ!」

    リヴァイ「エルヴィンが側で聞こうと言った」

    エルヴィン「そうだったかな?」

    モブリット「エルヴィン団長?!なんて事だ!全部聞かれていただなんて!」

    ハンジ「モブリットは私たちを大事に思ってくれてるんだよね。だからこれからも無茶させちゃうからね!」

    リヴァイ「モブリット、がんばれよ」

    モブリット「兵長他人事やめて下さいよ!」

    エルヴィン「ま、モブリットの上司への愛はわかったし、夜会らしく踊るか」

    エルヴィンはそう言うと、床にへたりこんでいるモブリットの手を取り立たせた

    モブリット「ちょ、団長?!」

    エルヴィン「ほら、ワルツだ。足を踏むなよ?」

    エルヴィンは女装のモブリット相手に優雅に踊り始めた

  29. 38 : : 2015/01/07(水) 16:37:14
    リヴァイ「何だかんだ、一番楽しんでるのは奴だよな、ハンジ…っておいなんだその顔」

    ハンジ「リヴァイ……ムラムラしてきた!」

    私は何だか顔に血がのぼって、いてもたってもいられなくなった

    リヴァイ「あほぬかせ。気持ち悪い顔しやがって。モブリットの方がそそるな」

    ハンジ「なんだって?!そんなわけない!私にはちゃんと胸があるし!」

    リヴァイ「次はちゃんとドレスを着ろよ?じゃなければ公衆の面前で脱がす」

    ハンジ「えっ?!公開セック……」

    リヴァイ「ばかか!そんなわけあるか!」

    ハンジ「リヴァイ、我慢できない!ちゅうしてくれ!」

    リヴァイ「モブリットのキスを目撃して発情したか……迷惑な奴だ。だが断る」

    リヴァイはそう言うと、ひらりと身を翻した

    ハンジ「リヴァイ、逃げんなよ!」

    私は逃げるリヴァイを必死で追いかける

    捕まえたら、覚悟しろよー!リヴァイ!



  30. 39 : : 2015/01/07(水) 16:43:54
    今回の夜会は何時もより成果が上がった

    マリーカはどうやら父親を説得したようで、調査兵団への資金援助を約束した

    その代わり彼女は、事あるごとに調査兵団に来て『お兄様』に甘えるのであった

    お兄様も満更ではない様子

    私の部下にも、一風変わった春が来たようだ

    私はあれからリヴァイをしっかり拉致に成功して、マリーカに負けないキスをリヴァイに沢山おみまいしてやった!

    調査兵団は今日も平和とは程遠い

    けど楽しむことは忘れない

    私たちだって、少しくらい楽しんでもバチは当たらないよね?

    ほんの少しくらいね


    ―完―
  31. 40 : : 2015/01/07(水) 20:57:49
    執筆お疲れ様でした!

    リヴァハンというか、モブリットの夜会、楽しかったです!
    次回はハンジさんがドレスを着てくださいね。
    そしたらリヴァイも逃げないはず…。

    企画へのご参加ありがとうございました!
  32. 41 : : 2015/01/07(水) 22:06:53
    >キミドリさん☆
    ほんまや‼リヴァハンどこ行った?!
    しゅびばしぇん、わたしが書くとリヴァイはツンデレ野郎になっちゃうんです・゜・(つД`)・゜・
    本気で逃げてないんですよw
    リヴァイが本気で逃げたら捕まりませんw

    素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございました♪
  33. 42 : : 2015/01/07(水) 23:20:10
    ハンジさんw飯を食うためにモブリットに女装させるってww最初から笑いましたよ(笑)
    そして、最後のリヴァイがぺちぺちとモブリットの頬を叩く姿が想像すると可愛くて仕方ないです(笑)

    素敵なお話をありがとうございます♪次の作品も期待してます!!
  34. 43 : : 2015/01/08(木) 08:31:45
    >EreAni師匠☆
    ハンジさんならやりかねないでしょw
    リヴァイは私の中ではクールな人なんだけど、たまにかわいいところがあると嬉しいなあとねw
    読んでくれてありがとう!(*´ω`*)
  35. 44 : : 2015/01/08(木) 15:50:51
    ロメ姉さん、ハンジさんのスーツ姿…(*´艸`*)ニュフフ
    あっ、リヴァイのドレスも見てみたい!!
    そして、モブリットにも春が…
    面白かったです!
    執筆、お疲れ様でした♪
  36. 45 : : 2015/01/08(木) 16:46:57
    88さんのSSの終わり方大好きです。
    次回作期待してます。面白かったです。
    お疲れ様でした。
  37. 46 : : 2015/01/08(木) 16:53:24
    >いんこさん☆
    ハンジさんはスーツ絶対似合うよね(*´ω`*)
    きっと惚れてしまう♪
    リヴァイのドレスww
    コメントありがとうございました♪
  38. 47 : : 2015/01/08(木) 16:55:01
    >じけいさん☆
    終わり方ですか!まとまっていますかね?♪
    嬉しいコメントありがとうございます♪
    また頑張って書きます(о´∀`о)
  39. 48 : : 2015/01/12(月) 19:28:52
    モブリットのドレス姿って...ww
    すごく気になります!
    マリーカが羨ましいわw
    モブさんをお兄様なんて...!

    マリーカの名前に吹きました!
    だって!私のリア名がですね!(察してロメ姉...)
    偶然とはいえ、目を疑いましたよw

    執筆お疲れ様です♪
  40. 49 : : 2015/01/12(月) 19:52:45
    >>妹姫☆
    戯れSS読んでくれてありがとうw
    私もモブリットのドレス姿見たいww
    マリーカかわいい名前だなあって勝手につけたらまさかのw
    察しました(*´∀`)
    コメントありがとうございます♪
  41. 50 : : 2015/02/10(火) 03:10:50
    面白かったです。こういうSS好きです。

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fransowa

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@fransowa

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