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僕の失恋と君の失恋と僕の誕生日 【12.30】※ベルミカ
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- 1 : 2014/12/13(土) 22:00:45 :
- ベルトルトの誕生日が12月30日ときき、この作品を書こうと思いました。今回の話はベルミカということで新鮮な感じに読んでいただけたら何よりです。お気に入り登録していただけると励みになります。
▼ 短編集
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▼合作
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▼感想
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- 2 : 2014/12/14(日) 06:13:50 :
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月夜の明かりが僕達を照らす。
アニ「…私、エレンと付き合うことになった」
そう言ったアニの顔は、頬が朱色にそまり、恋をしている女性そのものの顔であった。
僕はその言葉に、思考が停止しそうなのを慌てて回転させる。
空を見上げるも、月はまるで僕を滑稽と笑っているようにしか見えない。
アニに夕方「話したいことがある」と言われ、僕とライナーは消灯後、兵舎からコッソリ抜け出してきた。
そして、人目のつかぬ兵舎裏に来ると、アニが驚きの発言をしたのだ。
横目でライナーの表情を見るが、ライナーの表情は対して変わっていない。
動揺の色も見られない。
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- 3 : 2014/12/14(日) 06:23:43 :
- 僕は震える声で言った。
ベルトルト「だけど、作戦に支障が出ないかい?」
僕らは戦士だ。
自分の意思よりも任務が大切である。
故郷に帰る為ならば、この手さえ血に染まろうが構わない。
それと同時に本当の兵士ではない。
僕達は戦士で、本当の兵士になってはならない。
偽らなくてはならない。
自分の気持ちにも、仲間にも。
僕達は幸せになってはいけないのだ。罪という重りを背負わなくてはならないのだ。
アニ「いや、支障はきたさない、絶対に。あと二年間だけ、アイツといさせてくれ」
アニの青く綺麗な瞳には、揺るぎない意思が見えた気がした。
生半可な気持ちではなく、心からエレンのことを愛しく思っているのだろう。
ライナー「付き合う分には問題ない。けれど、別れる時にお前が切り出せるのか?」
アニ「…ああ、愛しい人よりも大事なものはあるからね」
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- 4 : 2014/12/14(日) 06:32:46 :
- ライナーはアニを真っ直ぐ見つめて口を開いた。
ライナー「俺はお前が幸せで、戦士でもあるということを忘れないなら、別にいい。ベルトルトはどうなんだ?」
ベルトルト「…えっ?あ、うん。僕もアニが幸せならいいよ」
曖昧な発言になる。それは、僕が現実を受け入れるのに時間がかかったから。
アニ「二人とも、ありがとう」
アニはそう言って、故郷を去った時以来に僕が見た一番の笑顔になる。
まるで、月が微笑んでいるかのようだった。
ライナー「お前のことは妹のように思っている。それは昔からこの先も変わらん。それだけは覚えておいてくれよな」
ライナーは本当の兄のような、全てを託せるような笑顔をした。
アニはコクリと頷き、
「ありがとう、ライナー」
アニ「二人のこと、本当に大好き…」
アニはそう言って、僕ら二人の首に抱きついてきた。
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- 5 : 2014/12/14(日) 06:38:46 :
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しばらくしてからアニが去っていき、僕達も戻ることにした。
隣に歩いているライナーは嬉しそうな表情をしている。
ライナー「まるで、妹が嫁にも出る気分だな。そう思わないか?ベルトルト」
ベルトルト「…そうだね」
本当は喜ばしいことなのに、どこか喜べない自分がいる。
ライナー「…残念、だったな……」
ベルトルト「え?」
ライナーは苦い表情を浮かべた。先ほどまでは歓喜の表情を浮かべていたのに。
ライナー「お前、アニのこと好きだったろ?」
ベルトルト「…何でそれを?」
ライナー「見すぎだ。コニーとエレン以外なら、多分皆知ってるぞ」
ライナーは何とも言えぬ表情でこちらを見た。
僕はきっと苦虫でも踏み潰したような顔をしているのだろう。
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- 6 : 2014/12/14(日) 06:45:43 :
- ライナー「お前は本当に良かったのか?自分に嘘をついていないか?」
ベルトルト「…これでいいんだよ、僕は幸せになんかなっちゃいけないと、神様も言っているんだよ。僕はこの結果であることに満足しているわけだし」
そう言うと、ライナーは「そうか…」と含みのある言い方をした。
この結果はきっと、神様の導きなのだろう。
僕はそう解釈をした。
この手は汚れている。汚れている手で綺麗なものを触ってはならない。
ライナー「お前がそう思っているのなら、俺は何も言わん。ただ、辛い時は我慢せず言うんだぞ?」
ライナーはこんな時も、親切にしてくれる。
確かに兄貴のような存在と同期から言われるのもあながち間違ってはいない。
だが、それだからこそ、君はさらに僕を苦しめて、相談できない状態にしていることを気付いてはいない。
別に誰が悪いとかそういう問題ではない。
ただ、たまたまそういう結果になっただけ。
仕方のないこと。
ベルトルト「ありがとう」
そう言って僕は愛想笑いの薄っぺらい笑みを浮かべるのだった。
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- 7 : 2014/12/14(日) 06:51:10 :
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兵舎へと戻ると、ライナーはすぐ眠ってしまったが、僕は眠れないでいた。
僕はアニのことが好きだった。
それは妹や友人に対しての感情ではなく、恋心。
だけど、僕は臆病だから思いを伝えたら、今の関係が壊れてしまうのではないかと思った。
だから、アニに思いを伝えることはできなかった。
そうしたら、アニはいつの間にかあんなに遠い所へ行ってしまった。
僕の長い手でも届くことはない、遠い所へとアニは行ってしまったのだ。
僕は自分の臆病な所が嫌いだ。
大嫌いだ。
臆病な自分が嫌いだ。
今さら未練がましく思ってる自分が大嫌いだ。
憎たらしいほどに。
だけど、それが僕であるがゆえに、それを許してしまう僕がいるのだ。
その甘さも僕は嫌いだ。
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- 8 : 2014/12/14(日) 08:29:27 :
- 自分の気持ちに嘘はついていないか、とライナーに聞かれたが、僕は常に嘘だらけ。
僕は嘘でできている、と言ってもいいほどだ。
自分の気持ちに素直になってはいけない。何故なら、幸せになったらいけないから。
ライナーやアニが、戦士を放棄し、兵士になりきるのなら、僕が戦士でなくてはならない。
君たちがその重りに耐えることができないのらば、僕が耐えなくてはならない。
僕らは苦しまなくてはならないんだ。
大勢の人々を地獄につき落とし、この手で殺したのだから。
どんな理由があったにしろ、正当化はできない。してはならないのだ。
僕らは苦しんで、生きていく。
そしてやっと死んだ時には地獄の底にいるのだろう。
僕は深い眠りについた。
暗い闇へと。
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- 9 : 2014/12/14(日) 16:55:13 :
『ベルトルト、俺たちのこと騙したんだな…』
『何で隠していたんだよ?』
『…私たちの仲間を返して…!』
『俺の…母さんを返せよ!』
『『『『この、化け物が…っ!!』』』』
僕の同期が次々と僕に罵声を浴びせる。少し辛いが、これぐらいなら我慢できる。
僕には同期よりももっと大切な仲間がいるから。
僕はその二人を探した。二人は暗闇の中立っていた。優しい微笑みを僕に向けている。
僕はその二人のもとへと歩いていく。
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- 10 : 2014/12/14(日) 17:00:52 :
- ベルトルト『二人とも、ここにいたんだね…』
僕がそう言うと、二人は悲しそうな顔をした。
何故、悲しそうな顔をするの?
ベルトルト『アニ、ライナー…?』
そう言うと、二人は何も喋らない。僕を見て、にっこりと微笑んだ。
そして、僕の頬に触れようとする。
しかし、僕をすり抜けた。
ベルトルト『え…』
二人は微笑みながら涙を流していた。二人は光輝きだした。
アニ『…ベルトルト……』
アニが振り絞ったような声を出した。
嫌だ、嫌だ。
その先は言わないで。
僕を…置いてかないでくれ。
お願いだから。
本当に…頼むから。
言わないでくれ…!
ライナー『…じゃあな……』
二人はそう言って、歩き出した。僕のもとから遠退いていく。
行かないでくれ。
僕を…
ベルトルト『僕を独りにしないでくれっ!!』
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- 11 : 2014/12/14(日) 17:12:13 :
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僕は目が覚めた。
ものすごい汗と、頬には涙が伝っている。きっとあれは夢だったのだろう。
嫌な夢を見た。二人が僕を置いてどこかへと行ってしまう夢。
僕は体を起こした。まだ皆は眠っている。まだ、起床時間ではないのだろう。
汗を拭かなくてはいけないと思い、僕はベッドの脇にある梯子から降りる。
コニーが布団をかけずに眠っていたから、布団をかけ直してやると、コニーは
コニー「よぉし、サシャぁ…。芋虫を懸けて勝負だ。いくぞぉぉ……むにゃ…」
などと寝言を言っている。僕はフッと笑ってしまう。
すると横から、「ベルトルト…?」と少し高めの声がする。
僕は横を見ると、アルミンが上からこちらを覗いていた。
ベルトルト「アルミンか」
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- 12 : 2014/12/14(日) 17:59:35 :
- アルミン「目が覚めちゃってね」
アルミンはそう言って笑った。金髪の髪を揺らして。
ベルトルト「僕もだよ」
僕はそう言って、タオルで汗を拭う。元々、汗っかきなのだが、すごい汗の量なことには変わらない。
アルミン「僕もう目が冴えてしまったんだけど、一緒に話さないかい?」
ベルトルト「別にいいけれど」
アルミン「そう、良かった」
アルミンとは気が合う方ではある。
おとなしくて控えめで争い事を好まないところや、読書が好きなところ、それが僕と似ていた。
そして、頼りになり力強く、時には無茶をする友人を持っていることも。
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- 13 : 2014/12/14(日) 19:01:17 :
- アルミンは「よいしょ」と言って、梯子から降りた。
立ち話もなんだった為、僕達は椅子に座り話すことにした。
アルミン「こうやって改めて話そうとすると、話しづらいね」
ベルトルト「そうだね」
アルミン「共通の話題といったら、うーんと」
アルミンは親切に話す話題を考えてくれる。何故そこまで親切なのか、それはアルミンの根本的な性格からだろう。
それと、幼なじみのあの二人の影響もあるのだろう。
アルミン「そういえば、ベルトルトは憲兵団に入るつもり、なんだよね?」
ベルトルト「まあ、そうなんだけど。僕がまだ入れるかわからないし…」
アルミン「ベルトルトなら入れるよ。だって今の成績でも十番以内じゃないか」
ベルトルト「そうなんだけど、いつ落ちてしまうかわからないだろ?」
アルミン「ベルトルトなら大丈夫だよ」
アルミンはそう言って笑った。僕は「ありがとう、頑張るよ」と言った。
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- 14 : 2014/12/14(日) 19:07:57 :
- ベルトルト「しかし、ミカサはすごいね。昔からあんなすごかったの?」
アルミン「まあね。僕がいじめられている時とかよく助けてくれたよ。エレンも助けてくれたんだけど、どちらかというと物理的な面で言うと助けてくれたのはミカサなんだよね」
アルミンはそう言って苦笑いをした。
アルミン、ミカサ、エレンの三人組は昔からの仲である。
中でもミカサとエレンは血は繋がってはいないが、家族の関係でもある。
そして、ミカサはエレンを恋愛対象としても見ている。
エレンは恋愛対象に見ていないにしろ、きっとミカサのことを大切に思っている。
今の状況にミカサはどう感じているのだろうか。僕と同じ気持ちでいるのだろうか。
あんなにも健気にエレンに尽くすミカサのことを僕は憐れだと思った。
僕みたいに臆病に気持ちを伝えない奴なんかよりもよっぽどすごいのに、振り向いてもらえない。
ミカサの方が多分、アニよりもずっと思ってる。
きっと…
ベルトルト「エレンはミカサに強がっているけど、結局は頭上がらないもんね」
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- 15 : 2014/12/14(日) 19:39:36 :
- 僕はそう言って微笑すると、アルミンは何とも言えない笑みを浮かべた。
ベルトルト「ミカサとエレンが喧嘩することって度々あるよね」
アルミン「まあね…、基本はエレンが原因というかエレンが勝手に苛々しているだけなんだけど」
ベルトルト「そうなの?だけど、すぐ仲直りするからすごいなって思うんだよね」
これは本心ではある。速い時で三日、遅くても一週間ぐらいで二人は仲直りをしている。
アルミン「あー、それはね、僕も思うんだけど、大体は周りからのフォローでね」
ベルトルト「そうなんだ。だけど、大事にはならないからいいんじゃないの」
アルミン「確かにそうだね。酷い時は僕がエレンのことを殴ったことぐらいしかないものね」
アルミンはそう言ってにこやかに笑った。久しぶりに見た笑顔。
場面が違えば良かったのに、僕はそう思った。
笑顔でさらっと答えるべきではないことを、アルミンはさらっと言ったのだ。
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- 16 : 2014/12/14(日) 19:45:43 :
- ベルトルト「ちょっと待って。アルミンがエレンを殴ったってどういうこと?」
アルミン「あれ?知らなかった?」
アルミンはケロッとそう聞いてくる。僕はそんなところを見たことがない。
人一倍に温厚で争い事を好まないアルミンが、幼なじみであり親友でもあるエレンを殴るということがあるというのだ。
アルミン「エレンがねミカサに鬱陶しいって言ったのがきっかけでね。あまりにもミカサが可哀想でこのままだとミカサが壊れてしまいそうだったから、エレンを殴ったんだ」
エレンがちょっとしたキツい言葉をミカサに言うことがたまにある。
ミカサはそれを普通以上に深刻に受け入れてしまうため、喧嘩になってしまう。
周りからのフォローでどうにかなるものがほとんど。
しかし、アルミンが出てきてさらに〝暴力〟をするということは、相当ミカサは傷ついていたのだろうか。
ベルトルト「そんなことがあったのか…、アルミンが人を殴るなんて、ね。珍しい」
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- 17 : 2014/12/14(日) 19:57:42 :
- アルミン「そうかな。でも、間違いを訂正しないまま終わってしまうのは駄目だと思うんだ」
間違いを訂正しない、それは認めると同じ行為である。
ベルトルト「…アルミンはすごいね」
アルミン「そんなことはないよ。暴力を行使せずとも解決法はあったと思う。だけどエレンには暴力での解決が手っ取り早いからね」
アルミンはそう言って窓の方を向いた。窓の外はやっと少し明るくなってきた。
地面が太陽の真っ赤な色に染まり、誠に美しい。
ベルトルト「そろそろ、起床時間になるかな」
アルミン「そうだね…」
すると、ゴォーン、ゴォーンと鐘の音が鳴る。起床を知らせる鐘だ。
コニー「ふぁぁぁ…。ん?お前らもう起きていたのか?」
コニーが起きてくるなり、僕らに向かって言った。
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- 18 : 2014/12/14(日) 21:34:04 :
- アルミン「おはよう、コニー」
ベルトルト「おはよう」
僕らが挨拶をすると、コニーは眠たそうな目をこすって「ああ、おはよう」と挨拶をしてきた。
それから、次々と同室の同期達が起きてくる。
一番最後に起きたのは、エレンだった。起きたというよりは、起こされたという表現の方が近い。
アルミンがエレンを起こそうとゆすったが、中々起きないので、コニーがエレンの布団を剥いだ。
すると、エレンは縮こまり、
エレン「何するんだ、寒いじゃねえか」
と文句を溢した。アルミンは優しく「朝だよ、起きて」と声をかけた。
すると、エレンはゆっくりと身体を起こし起きたのだ。
冬に起きるのは一番辛いものだが、こうも人間は冬の朝に弱いのだろうか。
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- 19 : 2014/12/15(月) 19:26:47 :
- 僕ら同期は起きるなり、着替えをする。着替えと言っても簡素なものではあるが。
そして、ゾロゾロと食堂へと向かう。
僕はライナーと食堂へと向かった。食堂にはまだほんの数名しかいなかった。
その中で、僕はある人物を見つけた。
窓際の席でひとりポツンと座っていて、首には赤いマフラーを巻いている。
ベルトルト「…ミカサ」
僕はそう呟いた。すると聞こえていたようで、ミカサが僕の方を向いた。
ミカサ「ベルトルト……?何か用でもあるの?」
振り返った時に黒くしなやかな髪が舞う。
ミカサの顔は綺麗であった。自然に、夜のように綺麗だなと僕は思った。
ミカサの顔には哀愁が漂う。目は少し腫れていて、泣き腫らしたような腫れ具合。
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- 20 : 2014/12/15(月) 19:32:46 :
- ミカサは不思議そうに訪ねる。
僕は慌てる。自然と呟いたものだったのに、聞かれていたから、どう返事をしたら良いか。
ベルトルト「…お、おはよう」
僕はとりあえず、挨拶をした。すると、ミカサは戸惑ったように「おはよう」と挨拶を返してきた。
僕は逃げるように、朝食を取りに行く。
慌ててライナーもこちらに来て、耳打ちを僕にした。
ライナー「どうしたんだ、お前が自分から挨拶するなんて珍しいじゃないか」
ベルトルト「そ、そうかな。僕だって挨拶ぐらいはするよ、心外だな」
少し怒ったように言うと、ライナーは一瞬不思議そうな顔をした。
そして、慌てて「すまん」と謝ってきた。
ベルトルト「大丈夫だよ、気にしないで」
僕はそう言って、スープを取り、ミカサがいるテーブルがよく見える席に移動した。
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- 22 : 2014/12/15(月) 22:35:35 :
- ゾロゾロと訓練兵等が食堂へとやって来た。その中にはエレンやアニの姿がある。
ミカサはエレンに気付き近付こうとしている、しかし、近づけないでいた。
ミカサはエレンに近付くことを諦め、アルミンのもとへと行った。
肝心のエレンはアニと話している。楽しそうに、僕の心はズキリと痛む。
ミカサはいつも通りに振るまっているのだろう。いつも通りにアルミンと話している。
しかし、エレンとは会話をしていない。
言葉を交わしたと言ったら、挨拶ぐらい。それ以外は会話をしていない。
ミカサには相当辛いものではあるはずだ。しかし、ミカサはそれを隠そうとしている。
エレンへの思いからだろう。ミカサは優しくて誰よりもエレンのことを思っているからこそ、エレンの幸せの為にああやって健気にやっているのだろう。
アニが巨人になれることをミカサは知ったらどういう反応をするのだろうか。
そう思ったりもした。
ライナー「おい、ベルトルト。大丈夫か?」
ベルトルト「あ、うん」
ライナー「そうじゃない、パン。サシャに取られてるぞ」
ベルトルト「えっ…本当だ…」
サシャが僕のパンを幸せそうに食べている。まあ、いいのだけれど。
食欲が湧かない。
先ほどまでは、お腹も空いていたのに。何故だろうか。
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- 23 : 2014/12/16(火) 19:39:09 :
- エレンと仲良く話しているアニを見ると、少しズキリとする。
僕がアニを笑顔にさせたかった。僕の隣にいて欲しかった。
しかし、自分が臆病だから、仕方のないことと思い諦めるしかない。
諦めているのに、心のどこかで諦めきれていない自分がいるのだ。
ライナー「俺は食べ終わったが、ベルトルト、どうする?」
ベルトルト「…あ、ちょっと待って。スープ飲むから…」
そう言ってスープを一気に飲んだ。そして、カウンターに食器を片付け、僕とライナーは自分たちの部屋へと戻った。
ミカサ達はまだ食堂にいた。
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- 24 : 2014/12/16(火) 19:45:04 :
ライナー「今日のお前…ッ、速くないか?」
ライナーが後ろから叫んだ。僕はそれを無視する。自分では速いつもりはない。
いや、いつも手を抜いているから、かもしれない。
しかし、僕なんかよりももっと速い人物がいる。それは僕と同じ心境の人物。
そう、ミカサだ。
ミカサはいつもよりも速かった。気が動転しているのだろう。
立体機動の訓練中、よく見たミカサの背中。いつもは凛々しく力強いものだった。
しかし、今日は哀愁を漂わせ、どこか不安と動揺を思わせた。
ミカサの艶やかな黒髪が舞っている。そして、首にはいつもの赤いマフラー。
僕はその背中を追いかけながら、空を駆けて行った。
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- 25 : 2014/12/16(火) 19:52:20 :
- 結果的にはミカサの成績はいつもと変わりはなかった。
周りの者はミカサを追うことができなかった為、ミカサがいつもより速いことや、動転していることを知らない。
教官が淡々と上位十人を発表する。
僕が二番だったことに周りがざわめいた。それは、きっとジャンが二番ではなかったからだろう。
いつもなら、ミカサとジャンが一番を争っていた。そして、僕やライナー、アニは四番、五番に甘んじていた。
しかし、今日は違う。いつも控えめに目立たぬようにやっている僕が、二番だったのだ。
「…以上だ。午前の訓練は終わりとする!解散!」
教官はそう言って、重々しい背中をこちらに向け、立ち去って行った。
僕は自分の立体機動装置を片付けていた。すると背後から声をかけられる。
ジャン「ベルトルト」
ベルトルト「…ジャン、どうしたの?」
ジャン「お前、どうしたんだよ?」
ベルトルト「え?別に…」
ジャン「…そうか、すまないな。何でもない…」
ジャンは要件も話さずに、どこかへと行った。何だったのだろうと思いつつも、僕は立体機動装置を片付けた。
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- 26 : 2014/12/17(水) 18:18:58 :
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一日の訓練が終わり、訓練兵達は顔に疲れを出していた。
今日の訓練はこれといって辛いものではなかったのだけれども。
着替えてライナーと食堂に行くと朝と同じようにミカサがいた。
ミカサの顔は疲れきっていた。
やはりそう簡単に立ち直れるものではないのだろう。
僕がアニのことを引きずっているように、きっとミカサもエレンのことを引きずっているのだ。
それはきっと、耐え難いものではある。
ましてや、幼い頃から好きで片想いをしていたのに、たった一、二年一緒にいた者に抜かされてしまったのだ。
共に過ごした数年間は何だったのだろうと思ったりもするだろう。
思い続けた数年間は一体相手には何だったのだろうと思ったりもするだろう。
ミカサは、アニのことを憎んでいるのだろうか。
少なくとも嫉妬ぐらいはしているかもしれない。
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- 27 : 2014/12/17(水) 18:25:32 :
- ライナー「またパンとスープだぜ?ベルトルト」
ベルトルト「…そうだね、だけどいつもそうじゃない?」
ライナー「まあな…」
そう言ってスープを啜る。
味がよくわからないスープには人参とじゃがいもや芋類がはいっているいることが多い。
芋というのは多少土地が荒れていても栽培することができるので、人類にとっては欠かすことのできない作物でもある。
昔通過儀礼の時、サシャが蒸かした芋を食べていたが、あれが芋ではなく肉だったら、もっと酷い罰を受けていたのだろうと、僕はしみじみと思う。
まあ、それ以来、サシャには〝芋女〟というあだ名がついたのだけれど。
ジャン「ここ、座ってもいいか?」
ふいにジャンにそう言われ、僕は反動的に頷いた。ライナーはいつもの楽しそうな、信頼のできる笑みを浮かべた。
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- 28 : 2014/12/17(水) 18:31:51 :
- ライナー「ああ、いいぞ。マルコの奴はどうしたんだ?お前といないところ見ると、喧嘩でもしたのか?」
ライナーはふざけたように言った。僕がそれを睨むと、ライナーは「まあ、大丈夫さ、問題ない」とでもいうかのように自信ありげの顔でこちらを見た。
ジャン「いや、そういうわけじゃねえ。マルコは今教官の手伝いでな…」
ベルトルト「へえ、流石マルコと言ったところだね」
ジャン「ああ、アイツは模範兵のようなもんだからな」
ジャンはそう言って硬いパンをちぎり、口にほおりこんだ。
ほおりこむなり、軽い悲鳴をあげる。
ジャン「…ッ!かてえ、なんだよこのパン。いつもより硬いんじゃねえか??!」
ベルトルト「そんなわけないはずだよ、いつものパンだろ?」
僕はそう言ってパンをちぎり、口にほおりこむ。すごく硬いといえるほど硬くはなかった。
僕はライナーと顔を見合せ、首をかしげた。
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- 29 : 2014/12/18(木) 19:05:56 :
- ジャン「ミカサの奴さ、いつもと違くないか?」
ライナー「そうか?いつも通りに見えるんだが。まあ、ミカサ一筋のジャン君にはわかるものがあるんだろうな」
ライナーはそう言ってからかった。ジャンは頬を軽く赤く染めた。
ジャン「うるせえな……!お前らから見ていつも通りに見えるのなら、いつも通りなんだろうけど…」
ジャンはその後、ボソボソと何かを言ったが、あまりよく聞き取れなかった。
ミカサのテーブルを見ると、そこにはエレンはいなかった。
ミカサの隣にはアルミンがいて、同じテーブルにはミーナとコニーとサシャの五人が座っていた。
ミカサの瞳は虚ろで、俯きながら食べている。
コニーとサシャはいつもの馬鹿さ加減で騒がしく、ミーナとアルミンもそれにつられて笑った。
エレンの姿を探すと、エレンは一番奥のテーブルにアニと座っていた。
まるで、恋人のように。いや、恋人なのだけれども。楽しそうに食事をしているのが、ここから見えた。
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- 30 : 2014/12/18(木) 19:11:44 :
- 僕にはアニをあんな笑顔にすることはきっとできないだろう。
なんとなく、アニがエレンのことを好きになった気持ちはわかる。
しかし、まだ諦めきれない気持ちが心の片隅にある。
夕食を食べ終えると、僕らは湯浴みをして、部屋へと戻った。
部屋にはあまり人がおらず、僕は読書を、ライナーとジャンは楽しそうに会話をしていた。
ライナー「ジャンはミカサ以外に好きな女子はいねえのか?」
ジャン「あん?ミカサ一筋だっての。まあ、強いて言うなら、サシャだろ?黙ってりゃ、可愛いからな」
ライナー「サシャか、まあ悪くないな…」
そう言うライナーの顔を横目でチラリと見ると、ライナーの顔は少しにやけていた。
同期としても、幼馴染みとしても、戦士としてもそのにやけている顔をどうにかして欲しいと思った。
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- 31 : 2014/12/18(木) 19:16:22 :
- 次第に同室の同期達が部屋へと戻ってきた。一番最後だったのはエレン。
その後すぐに消灯時間となり、僕達は布団へと潜りこんだ。
僕は端の梯子側なので、寝返りを気にせずうてる。
まあ、端になった理由に、「寝相が悪いから」というのもあるのだが。
隣で寝ているライナーはもう、眠ってしまったのだろう。
グゥ、グゥとライナーのいびきがよく聞こえる。
僕は何度か寝返りをうつが、一向に眠れる様子はなく、しばらく悩んだ。
その末に僕は梯子をそーっと降り、外へと向かった。
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- 32 : 2014/12/22(月) 17:52:36 :
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外へと出ると冬のはずなのに、生暖かく感じられた。
それはあの日の夜の冬の寒さとは比べものにならないほど暖かい。
あの日の夜はどこか寒かった。
どの日と比べても格段に寒く、そしてどこか心に穴が空いた気分であった。
あの日の夜の気温はまるで僕の心を写し出す鏡のよう。
アニへの感情は果たして恋愛感情なのだろうか。
もしかしたら、違うのかもしれない。
少なくとも今の僕にはわからない。
適当に歩き始める。
生暖かい風が枯れ葉を踊らせ、カサカサと音がする。
吐いた息は白くはなく、生暖かい空気にかき消される。
月は三日月でどこか足りない僕の心模様を写し出している気がする。
兵舎の裏を通ると広場のようにできている芝生の所がある。
そこは訓練でほんのたまに使うことがあるがほとんどは使わない。
だいたいは訓練兵の寛ぎの場となっている。
そこからは、見晴らしがよく、月がよく見える。
僕は芝生に足を踏み込んだ。
なんとも言えぬ感触がし、芝生のちょっぴり青臭い匂いがする。
しばらく月を見ていると、とある人物がいることに気付いた。
黒い髪を風に撒き散らしなびかせ、舞わせている。
そして赤いマフラーを首に巻いていて、なびかせている。
その後ろ姿は美しく凛々しく見えた。
ベルトルト「…ミカサ」
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- 33 : 2014/12/22(月) 18:01:47 :
- 僕がそう呼んだ。
いや、呼んだというよりは呟いたと、表現するのが正しい。
ミカサは黒く綺麗な髪を宙になびかせ、クルリと振り返った。
ミカサ「ベルトルト…?どうしてあなたがここにいるの?」
ベルトルト「それはミカサも同じだろう?」
ミカサ「…そうね。中々寝付けずにいた、のでここに来た」
ミカサは乏しい語学力で僕に説明した。
ベルトルト「へえ、僕もミカサと同じ理由だよ」
ミカサ「そう…ベルトルトは何故寝付けないの?」
ベルトルト「…僕は失恋してしまったからと、もうすぐで僕の誕生日だから、かな?」
あと五分もすれば、僕の誕生日になる。
しかし、それは寝付けなかった理由ではないのだけれども。
ミカサは少し驚いたような顔をした。
ミカサ「あなたの誕生日、なの?」
ベルトルト「ああ、僕の誕生日だ。僕の生まれた日、僕がこの名前をつけられた日だ」
僕がそう言うとミカサは納得したように頷いた。
そして悩んだように俯く。
何を考えているのだろうか。
ミカサの考えることはエレンやアルミンにもわからないのだから当然僕なんかにはわからない。
ミカサ「…おめでとう」
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- 35 : 2014/12/25(木) 06:22:20 :
-
その言葉を聞いた瞬間、僕は驚いた。
少し戸惑いながら、僕は「…ありがとう」と言うと、ミカサは僕に微笑む。
その微笑んだ表情が何とも儚くて美しい。
その微笑みが元に戻ると、ミカサは口を開いた。開いた口が微かに震えている。
ミカサ「…私も、ベルトルトと同じように失恋した」
ベルトルト「……知ってる」
そう言うと、ミカサは驚いたような表情をする。
ベルトルト「ミカサの好きな人と僕の好きな人が両想いなんだ…」
ミカサ「………そう」
ベルトルト「僕の方が彼よりもずっと長くいたのに…」
言葉が、僕の黒く汚い部分がこぼれた。
それを初めとしてボロボロと黒く汚い言葉が、感情が溢れてく。
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- 36 : 2014/12/25(木) 06:30:39 :
-
ベルトルト「それなのに、彼女は彼を選んだ」
ベルトルト「何で……、何で、僕じゃ駄目なの…?そう聞きたかった、だけど僕は臆病だから、聞くことすらできなかった」
ベルトルト「…それなのに、彼女の側にいたいなんておこがましい…」
ベルトルト「だけど!僕が君の隣にいたかった」
ミカサ「ベルトルトは臆病ではない…」
ミカサはこちらを見て、僕の目を真っ直ぐ見て言った。
僕は驚いたような顔をすると、少し笑った。
その表情に僕は心臓が高鳴った気がする。
ベルトルト「僕は…臆病だよ、ライナーの腰巾着で、彼女に想いも伝えられない…」
そう言うと、ミカサは首をゆっくり横に振る。僕は戸惑いを感じた。
ミカサ「彼女に想いを伝えなかったのは、ベルトルトの優しさでしょう?両想いな彼と彼女の幸せな雰囲気を壊したくなかったのでしょう?」
ミカサ「それはとても立派なことだと思う」
ミカサはそう言って僕の手を掴んだ。ミカサの手は寒さのせいか、とても冷たい。
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- 37 : 2014/12/25(木) 20:43:00 :
- 僕を見上げるミカサと、ミカサを覗く僕。
この状況は一体何なのかと戸惑いながら彼女の顔を覗く。
ベルトルト「僕は…そんないい奴じゃあない…」
ミカサ「…ねえ、ベルトルト。人に嘘をつくのは良いけれど、自分に嘘をついては駄目」
そう言ってミカサはニッコリと笑った。
その笑顔が僕の心の隙間の一部を埋めてくれたような気がした。
ベルトルト「ミカサは…辛くないの?」
ミカサ「…ええ、とても辛い。私はベルトルトよりも臆病で、エレンがいないと何にもできない…」
そう言ってミカサは俯いた。
そしてハッとしたかのように顔をあげた。
ミカサ「…ベルトルトにそんなことを言っても意味はない、ベルトルトの迷惑になるだけ。すまない…」
ミカサはそう言って、僕の手を握ったミカサ自身の手を放した。
その時の表情は悲しみなんてものなんかじゃない、苦しそうであった。
ミカサ「私はそろそろ寝なくては、ベルトルトも早く寝た方がいい…」
そう言ってミカサは僕に背を向けた。
このままミカサを行かせたら駄目な気がする。
それは、僕自身にも、ミカサにとっても。
ここで僕が一歩踏み出せば、この先が変わるかもしれない。
踏み出すべきなのかもしれない。
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- 38 : 2014/12/25(木) 20:51:32 :
-
ベルトルト「待って、ミカサ」
僕はそう言ってミカサの手を掴んだ。
その手は先ほどと同じでひんやりとしていた。そして思ったよりも細くしなやかであった。
ミカサは綺麗な黒い髪をなびかせながら、振り返った。
ミカサ「…何か用でもあるの?ベルトルト」
ミカサはめんどくさそうに聞いた。
ベルトルト「…ミカサ、君は僕の黒い部分を黙って聞いてくれた。そしてそれら全てを否定してくれた…」
ミカサ「…違う、ベルトルトの為に否定したわけではない」
ベルトルト「そうかもしれない、けど君は否定してくれた…」
ミカサ「…何が言いたいの?ベルトルト」
ミカサは迷惑そうな顔で聞く。
ベルトルト「ミカサも辛いんだろ?本当はエレンに抱きついたり側にいて笑っていたかったんだろ?」
我慢はしなくていい。
ベルトルト「全部…、全部!」
僕が吐き出して心にゆとりができたように。
君も、全部
ベルトルト「全部吐き出しなよ…!」
僕はミカサにそう言った。
ミカサの目には涙が浮かんでいた。
ミカサは僕の腕にしがみついた。
僕はミカサを抱きしめた。
-
- 39 : 2014/12/25(木) 20:57:10 :
-
ミカサ「…エレンの隣にいたかった!エレンの笑顔を見たかった、エレンの側で笑っていたかった!」
ベルトルト「…うん」
ミカサ「…エレンに見て欲しかった、ひとりの女性として見て欲しかった!」
ベルトルト「…うん」
ミカサ「…エレンとずっといたかった…エレンに気持ちを伝えたかった…!」
ベルトルト「…うん」
ミカサ「…エレンに………エレンと、エレンと!!!」
ミカサはそう泣き叫んだ。
普段の今までのミカサからは考えられない今の状況。
僕はアニが好きな筈なのに、何故かミカサを抱きしめていた。
アニのことすら抱きしめられないのに、僕はミカサを抱きしめた。
何でかな。
君を愛しいと思えてくるのは。
きっと理屈なんてものじゃ、説明しきれないのだろう。
だけど…、
今は、君を抱きしめていたい…。
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- 40 : 2014/12/25(木) 21:03:44 :
生暖かな風が僕の頬を掠めた。
月がゆらゆらと輝いている。
ベルトルト「落ち着いた?」
隣に座っているミカサに僕がそう聞くとミカサはコクリと小さく頷いた。
マフラーに顎を埋めている。
ミカサ「…その、ベルトルト……」
少し照れくさそうにするミカサはすごく新鮮なものだと思った。
ミカサ「…ありがとう」
ミカサがそう言ってミカサは少し微笑んだ。
ベルトルト「ううん、僕こそありがとう」
僕がそう言うとミカサは驚いたような顔をしたが、すぐに元の表情になった。
そして躊躇いがちに言った。
ミカサ「何でベルトルトはあの時、私の手を掴んでくれたの?」
僕はその問に答えるのに躊躇した。
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- 41 : 2014/12/25(木) 21:53:19 :
- 僕は何故、ミカサの手を掴んだのか。
あれは半分以上が衝動的なものであった。
ミカサのあの苦しそうな表情がまるで……
ベルトルト「僕に似ていたから、かな」
ミカサ「私がベルトルトに似ていたの?別にベルトルトみたいに背が高いわけでも、優しいわけでもないのに?」
ベルトルト「そういう意味じゃないよ」
そう言って僕は笑った。ミカサがあんまりにも不思議そうな顔でこちらを見てくるから。
ベルトルト「すごく、苦しそうな表情をしていたんだ…」
ミカサ「苦し…そう…。確かに、ベルトルトはいつも苦しそうなや悲しそう、我慢しているかのような表情をしている……」
ベルトルト「それね、アニからも言われたんだ」
ミカサ「そう……」
ミカサとはたったこの数十分の中でいろんなことをした。
ミカサといた時間の倍以上長くいたアニとは出来なかったこと。
やることのできなかったこと。
ミカサを抱きしめたり、初めて人に本音を口にしたり、誕生日を祝ってもらったり。
たった数十分なのに、何年も前から一緒にいたような、そんな感じだった。
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- 42 : 2014/12/25(木) 21:59:38 :
-
ミカサ「ねえ、ベルトルト」
ミカサはそう言って遠くを見つめた。ミカサの見つめた先には綺麗な月。
ミカサ「私は、きっとベルトルトが好きなんだと、そう思う」
〝ベルトルトのことが好きなんだと、そう思う〟
その言葉に心臓が弾むのを感じた。
ミカサはこちらを見ずにずっと月を見ている。
黒い瞳は輝いていて、とても綺麗だと思った。
ミカサ「だけど、エレンのことを諦めきれない……。私は欲張りなのだろうか?」
ミカサの横顔はとても儚く、花のように散ってしまうかのように美しい。
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- 43 : 2014/12/25(木) 22:06:24 :
- 僕は一体アニにどんな感情を持っているのだろうか。
アニは不器用で、時々言葉が足りなくて相手に不快な思いをさせる。
暴力的で、いつも無表情で素っ気ない態度をと
る。
だけど、
アニの笑った表情は月が輝くようなほど綺麗なもの。
不器用な言葉の裏には、本当に伝えたかった言葉の優しさがある。
だから、僕はアニを好きになったんだ。
君を笑顔にさせたい、君の笑った顔を見たい、君の側にいたい。
そう強く思ったんだ。
諦めた筈の思いがどこか諦めきれないのも、きっと、君の側にいたいから。
アニが大好きなんだ
今までの思いを諦めることができないくらいに
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- 44 : 2014/12/25(木) 22:12:49 :
-
ベルトルト「ミカサ」
僕がそう呼ぶとミカサはこちらを見た。
月の光がミカサの綺麗な黒髪を照らす。とても綺麗だと思う。
ミカサ「…何?」
ベルトルト「……ミカサといた時間はアニと過ごした時間よりもすごく短い、それなのに僕はね───」
意外と思う言葉はすんなりと出た。
ベルトルト「ミカサが好きだよ」
僕がそう言うとミカサは予想外の表情をした。
告白まがいなものをした僕に、ふんわりと微笑んだのだ。
ベルトルト「だけど、アニのことは諦めきれないんだ…、本当は選ぶことなんてできないのに、選ばなくちゃならないから…」
本当はミカサともいたい。
だけど、アニともいたい。
どちらを選べばいいのかわからない。
だけども、僕は決めたんだ。
誰を好きになるか。
誰を愛すか。
誰にこの身を捧げ、思いも捧げるか。
ミカサ「私はエレンが好き…」
ベルトルト「僕はアニが好き…」
-
- 45 : 2014/12/25(木) 22:18:47 :
-
僕とミカサは諦めきれない気持ちをおさえつけ、言い聞かせるように言った。
ベルトルト「何で泣いているの?」
ミカサ「ベルトルトこそ…」
ミカサの頬を涙が伝う。それは僕も一緒だったようだ。
言い聞かせた筈なのに、ね。
選んだ筈なのに、ね。
ミカサは冷たい手で僕の頬を包んだ。僕は手の柔らかさを頬で感じる。
僕は自分のおでこをミカサのおでこにペタンとくっつけた。
そして、僕とミカサは笑った。
涙を流しながら笑った。
ベルトルト「僕達、不器用だね…」
ミカサ「…ええ、不器用だ。とっても…」
ベルトルト「ミカサ、好きだよ。世界中を敵に回してもいいくらいに」
ミカサ「ベルトルト、好きよ。貴方に私の全てをあげたいくらいに」
-
- 46 : 2014/12/26(金) 05:42:17 :
-
-
- 47 : 2014/12/26(金) 05:47:13 :
緊張で汗が伝う。
僕とミカサはにらみ合っている。
ミカサ「あなたが巨人であったことを酷く残念に思う…」
ベルトルト「ああ、僕自身も残念に思うよ」
ミカサはブレードをしっかりと構えた。僕も自傷行為がすぐできるようにする。
ベルトルト「ひとつだけ聞いてもいい?」
ミカサ「…何?」
ベルトルト「生まれかわれるとしたら、どう生きたい?」
そう聞くと、ミカサは考えたように黙ってから、口を開いた。
ミカサ「ベルトルト、貴方と一緒に生きたい」
僕は安心した。
ベルトルト「僕もだよ…」
終
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- 48 : 2014/12/26(金) 08:05:11 :
- ベルトルトの誕生日までに終わらすことができて、良かったです。
ベルミカはやはりあまり見かけないもので、私自身も書いていて新鮮なものでした。
妄想話に近いものでしたが、たくさんのコメント、お気に入り登録、ありがとうございます。
感想をコメントしていただけると嬉しいです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
2014.12.26 蘭々
-
- 49 : 2014/12/26(金) 12:02:53 :
- とても切ない物語でした
ベルトルさんの臆病で悲痛な心理描写にこちらまで切ない気分になりました。短編の方のアルミンがエレンを殴ったネタが入っていて少しだけニヤリとしてしまったり(笑)
孤独感漂うミカサに自分をみるベルトルさん
告白の互いの台詞が声となって耳元に聞こえたような錯覚に陥りました
生まれ変わったら本当に一緒に生きていけるといいなぁ…と刹那に思います
執筆お疲れ様でした!
-
- 50 : 2014/12/26(金) 12:06:10 :
- >>49
読んでくださり、ありがとうございます。
ベルトルトは少しひねくれていて、心に闇を持っているのだろうと思ったので…。良いアイデアかなと思い、短編にいれてみました(笑)
ベルミカは書いている人が少なくてとても難しいものでしたが、満足していただけたのなら何よりです。
本当にありがとうございました!
-
- 51 : 2014/12/28(日) 09:33:10 :
- ベルミカは初めてでしたが、とてもスラスラと読み進めることが出来ました。
ミカサもベルトルトも本当に優しいんだなと感じました。
それでも心に少しだけ闇がある事を書けるなんてすごいと思います。
来世で2人が幸せな恋愛を出来ることを祈ってます。
執筆お疲れ様でした。
-
- 52 : 2014/12/28(日) 09:37:56 :
- >>51
読んでくださり、ありがとうございます。
ベルミカはあまり接点がないので、なるべく違和感のないように気を遣って書いてみました。その効果が形となってあらわれているのなら、何よりです。
多分、ミカサとベルトルトは言葉にするより行動にしてしまうタイプだと思ったんです。だから、言葉にできない色々なものが闇となっているのかと思ったのです。
感想コメント、ありがとうございます。
-
- 53 : 2015/01/08(木) 20:08:53 :
- とてもいい!!!!!!!
また、このような作品を期待しています。
-
- 55 : 2015/01/08(木) 20:46:53 :
- ありがとうございます‼️
-
- 56 : 2015/01/15(木) 22:09:56 :
- お互いに失恋をしたベルトルトとミカサが、不器用ながらもお互いを慰める場面が、悲しくて美しくて、胸を打ちました。
不器用な二人が、本音を吐き出せて良かったです。
執筆お疲れさまでした!
-
- 57 : 2015/01/16(金) 05:43:31 :
- >>56
感想コメント、ありがとうございます。
ベルトルトとミカサはという組み合わせを書けて、良かったなと思います。
不器用な二人が私大好きなんです(笑)
読んでくださり、ありがとうございました!
-
- 58 : 2018/03/24(土) 17:09:48 :
- 新鮮‼感動‼
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- 59 : 2018/09/27(木) 22:21:18 :
- やっぱりベルミカは良いですね!
涙が止まりません……
執筆お疲れさまです!
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- 60 : 2020/10/06(火) 10:03:17 :
- 高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
http://www.ssnote.net/archives/80410
恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
http://www.ssnote.net/archives/86931
害悪ユーザーカグラ
http://www.ssnote.net/archives/78041
害悪ユーザースルメ わたあめ
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害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
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害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
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害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
http://www.ssnote.net/archives/81774
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害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
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害悪ユーザー空山
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【キャロル様教団】
http://www.ssnote.net/archives/86972
何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
http://www.ssnote.net/archives/86986
http://www.ssnote.net/categories/%E9%80%B2%E6%92%83%E3%81%AE%E5%B7%A8%E4%BA%BA/populars?p=18
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- 61 : 2020/10/27(火) 10:11:18 :
- http://www.ssnote.net/users/homo
↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️
http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️
⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
今回は誠にすみませんでした。
13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
>>12
みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました
私自身の謝罪を忘れていました。すいません
改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
本当に今回はすみませんでした。
⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️
http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ごめんなさい。
58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ずっとここ見てました。
怖くて怖くてたまらないんです。
61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
お願いです、やめてください。
65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
元はといえば私の責任なんです。
お願いです、許してください
67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
アカウントは消します。サブ垢もです。
もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
どうかお許しください…
68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
これは嘘じゃないです。
本当にお願いします…
79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ホントにやめてください…お願いします…
85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
それに関しては本当に申し訳ありません。
若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
お願いですから今回だけはお慈悲をください
89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
もう二度としませんから…
お願いです、許してください…
5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
本当に申し訳ございませんでした。
元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。
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