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ハツコイソウの花が香る頃に クリスタ生誕祭
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- 1 : 2014/12/30(火) 16:19:06 :
- ジャンクリに初挑戦!
ジャンクリが苦手な人は読まないほうがいいです。
一応忠告はしました、それでいて文句を言うのはやめてくださいね、カップリングについて
クリスタ生誕祭に参加してくださると嬉しいです。
http://www.ssnote.net/groups/257/archives/26
ハツコイソウの花言葉は…
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- 2 : 2014/12/30(火) 16:33:31 :
明日は卒団式で、明日になったらほとんどの人と別れることになる。
そう思うとどこか悲しくなる。
ユミルとも…もしかしたら、別れてしまうのかもしれない。
私に対して本音をぶつけてくれたあなたと別れるのは正直辛い。
そして、もうひとり。
私に本音をぶつけてきてくれた彼とも別れるのかもしれない。
一年間ぐらい彼のことを思い続けてきた。
しかし、彼の瞳には私はうつっていなくて、彼の瞳にうつるのは、
私なんかよりも綺麗で真っ直ぐな彼女。
諦めたいけど、諦めない。
きっと、そのまま別れてしまうのだろうな。
神様、最後に彼と話すチャンスをください。
あまり夜に寝付けずにいた私は、風にでも当たろうかと思い、兵舎を出た。
もうすぐ春が近づいてくる為、少し生暖かい風が頬をかすめ、こそばゆい。
食堂のテラスのようになっている部分なら、教官もいないし、きっと誰もいないはず。
私はそう思ってそこへと向かった。
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- 3 : 2014/12/30(火) 16:42:55 :
- 夜の為、月明かりを元にして目的地に向かう。
夜空には綺麗な星が散りばめられており、その美しさに吸い込まれそうになる。
生暖かな風の音以外の物音は一つとせず、しーんと静まりかえっている。
目的地が見えると、そこには黒い人影が見えた。
教官だろうか、とドキドキしながら私は目的地へと一歩一歩近づいていく。
幸いなことに教官ではないらしい。
そーっと近づくと、不意にその人影に声をかけられた。
「クリスタ?」
私は驚きのあまり、尻餅をついてしまった。
この声は、もしかしたらあなたかもしれない。
いや、あなただ。
クリスタ「ジャン…?」
ジャン「悪いな、驚かせるつもりはなかったんだ、大丈夫か?」
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- 4 : 2014/12/30(火) 16:48:37 :
- ジャンは私に手を差し出して、これに掴まれと言わんばかりの態度だ。
私は「ありがとう」と言って、ジャンの手を掴んだ。
温かくて、少しゴツゴツした手。
私みたいな弱そうな手ではなく、強そうな、凛々しい手。
クリスタ「ジャンは何故ここにいるの?」
ジャン「何か寝付けなくてな…」
クリスタ「フフッ…私も同じ」
あなたと同じ、それだけで自然に笑いがこぼれた。
ジャンは胡座をかき、座る。
私が座らないでいると気になったのか、
ジャン「座らねえのか?」
と聞いてきた。
私は少し戸惑いながらも、ジャンの隣に足を曲げて座った。
高鳴る鼓動。
もしかしたら、ジャンには聞こえてしまうのではないかと思うぐらいにドキドキしている。
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- 5 : 2014/12/30(火) 16:54:32 :
- ジャン「なあ、クリスタ。お前は所属兵科、決めたか?」
ジャンが不意に聞いてきて、少し驚く。
ジャンの顔をチラリと盗み見ると、ジャンは夜空を見ていた。
クリスタ「私は駐屯兵団に入ると思うよ」
ジャン「駐屯兵団か、憲兵団に行くつもりはないのか?」
クリスタ「私の成績じゃ、無理だろうし…」
ジャン「いや、わからないぜ。最近、10位の奴が調子が悪いのか手を抜いてるのかわからねえが、落ちてきている。お前は11位だろ?最近までは」
クリスタ「そうだけど…、わからないし」
ジャン「…まあ、確かな証拠なんてねえけどな」
ジャンはぶっきらぼうに言った。
クリスタ「ジャンは、私が憲兵団に入ったほうがいいと思うの?」
そう聞くと、ジャンは驚いたような顔をし、いつものキツイ目を大きく見開いた。
ジャン「──さあな、お前の人生なんだから、お前が決めりゃいいんだよ」
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- 6 : 2014/12/30(火) 17:04:21 :
私の〝人生〟か。
ジャンでも、誰のでもない私の人生。
きっとジャンと出会う前だったら、誰かの役に立つのなら死んでもいいって思ってた。
だけど、今は自分の為に生きたい、そう強く思う。
クリスタ「そっか、そうだよね」
ジャン「ああ…死に急ぎ野郎は多分、調査兵団に入るだろうけどな」
死に急ぎ野郎とは、エレンのことだろう。
ジャンと犬猿の仲でいつも張り合っていて、どちらかが喧嘩を売るとすぐ買ってしまうような、そんな仲。
エレンは調査兵団に入ると、訓練兵になっての初日に宣言していた。
クリスタ「エレンのお母さんって五年前に巨人に殺されたんだよね」
ジャン「ああ、気の毒にな、エレンとミカサの命との引き換えに犠牲になったらしい」
エレンとミカサの命との引き換え。
親が子を死ぬほど愛すのが親子だろう。
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- 7 : 2014/12/30(火) 17:10:41 :
- 愛する我が子の為に死んでもいいと思う。
きっと、エレンのお母さんも、エレンに生きて欲しいから、自分を犠牲にしたんだろうな。
クリスタ「エレンが調査兵団に入ることを、エレンのお母さんは望んでいないだろうな…」
私がポツリと呟くと、ジャンは「そうだろうな…」と返事をした。
クリスタ「ジャンは、何でいつもエレンに構うの?ミカサの為?エレンが気に食わないから?」
そう聞くとジャンは黙った。
いつもなら、すぐ問には答をすぐ返すジャンなのに。
ジャン「きっと気に食わないんだろうな、俺は。アイツの目はいつもキラキラと輝いていて、常に目標がある、そんなアイツが俺は羨ましいんだろうな…」
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- 8 : 2014/12/30(火) 18:19:18 :
クリスタ「輝いている、エレンか…、ジャンって真っ直ぐだね」
ジャン「は?俺が真っ直ぐか?」
ジャンは驚いたように私を見る。
隣に座っている為、顔が近くなりまた、私の鼓動が速くなる。
クリスタ「うん、それに優しいし」
ジャンは少し呆れたような表情をする。
きっと、お世辞とかと思っているんだろうけど、それでも言いたかったから。
ジャン「まあ、ありがとよ。それよりよ、お前、俺のこと嫌いじゃなかったのか?」
クリスタ「えっ?」
ジャン「最初の頃とかお前俺にしょっちゅう突っ掛かってきたじゃねえか。今はあんまりなくなったけど」
クリスタ「あ…、そうだったね」
つい笑うとジャンは少し文句言いたげの顔をしたが、文句は言わなかった。
ジャンが嫌いだった頃。
ジャンのことが好きになった頃。
訓練兵になって、ジャンと出会い、そして関わりが増えた。
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- 9 : 2014/12/30(火) 18:34:16 :
その日の訓練はかなりの体力を消耗する訓練であった。
立体機動術はかなりの体力を消耗するうえに、ぶっ続けに飛ばなくてはならなかった。
班での行動。
ガスをある程度の距離までは持ちこたえさせ、ガスを補給。
そしてまた飛ぶ。
その繰り返しであった。
しかも、班での競争な為、点数がかなり高く評価される。
ダズ「オエッ…も、もう無理だ…!リタイアさせてくれ……!」
吐くダズの背をさする。
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- 10 : 2014/12/30(火) 19:42:35 :
- ダズがリタイアすると、この班は失格になってしまい、点数がつかない。
速さを競うものである、ということは速すぎるのかもしれない。
そう考えた私は先頭をきって飛ぶジャンの元へと向かう。
ジャンは疲れがあまり見えない。
クリスタ「ジャン!もう少しスピードを落としましょう?これじゃあこの班が失格になってしまうわ」
私がそう言うと、ジャンは呆れたような表情をした。
ジャン「は?これでもスピードをかなり落としているんだぞ?後ろから数えた方が早いぐらいなんだぞ?俺らは!今こうしている時間がもったいねえ」
ジャンはそう言って深く溜め息をついた。
そして、ダズの元へツカツカと歩みよる。
ジャン「シャキッとしろ!あと、三回もあるんだぞ?これぐらいができねえならやめちまえ!」
そう言うと、ダズは怒ったように顔をしかめたが、反論しなかった。
ジャン「いくぞ」
ジャンは合図する。すると、班員は次々と飛んでいく。
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- 11 : 2014/12/30(火) 19:46:32 :
- 私はダズが心配になり、ダズを見るとトリガーをギュッと握ってダズは飛んでいった。
私は驚いた。
そして遅れをとらぬよう、トリガーをギュッと握り飛ぶ。
ダズは先ほどよりもスピードが速くなっている。
先頭はジャンである。
そして、残る二回も何とか持ちこたえ、失格というのを免れた。
結果的、良い結果にはなった。
しかし、私はジャンの言動が許せなかった。
他に言葉はなかったのだろうか、罵声にも近い言葉の数々。
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- 12 : 2014/12/31(水) 06:33:32 :
- クリスタ「ジャン!」
今にでも戻ろうとして、背を向けていたジャンを呼び止めた。
ジャンは驚いたように振り向いた。
そして、マルコに何かを言うと、こちらを真っ直ぐ見てくる。
ジャン「何だ?」
面倒くさそうに言うジャンに少し腹が立つ。
クリスタ「あれは、言い過ぎじゃないの?!」
そう言うと、ジャンは「あれのことか…」と呟いた。
ジャンに対して、どんどんと怒りがこみ上げてくる。
ジャン「言い過ぎ?んなわけねえだろ!あんぐらい言わねえとアイツはリタイアする。例えしなくとも、班の成績はガタ落ちだ」
クリスタ「そうかもしれないけど、もうちょっと他に言い方があったんじゃないの?!」
ジャン「あのな、ここの訓練兵の約八割は、憲兵団に入りたいんだぜ?ひとりの為にそれを逃すことなんてできるもんか…!」
ジャンは正論を言う。
自分は確かに間違っている、そう思っているけれど、それでもジャンみたいな言い方はしては駄目だと思う。
そうしてはいけないと思う。
個より多を優先すべきというジャンの考えは正しい。
だけど、それじゃあ、きっとそのうちガタがくる。
それでいて、反論できない自分が、憎い……。
違うと感じているのに、それなのに反論できない。
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- 13 : 2014/12/31(水) 06:40:02 :
- ジャン「もういいか…?」
そう私にたずねるジャンに、私はただコクリと頷くことしかできなかった。
悔しくて、悔しくて。
俯くことしか、私はできないの?
ジャンが去ったあと、どうしても足が踏み出せなかった。
何故かはわからないけれど、一歩が踏み出せないでいた。
「泣くなよ、女神様」
ポンと私の頭に手が置かれた。
誰だろうと思い、その人物を見ると…
ユミル「珍しいな、お前が反論するなんて」
そう言ってユミルは明るく、楽しそうに笑った。
クリスタ「だって…」
ユミル「まあ、泣くなよ。みんなの太陽のクリスタが泣いたら、みんな不安になるだろ?」
ユミルは私の頭をクシャクシャっと雑に撫でる。
クリスタ「ふふっ、みんなの太陽って何よ?」
自然と笑い声が口から漏れる。
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- 14 : 2014/12/31(水) 06:47:19 :
- ユミル「クリスタはみんなの太陽だろ?クリスタが笑えばみんなも笑う。太陽が輝けば、人間は喜ぶ。違うか?」
ユミルは冗談まじりに笑いながら言う。ユミルが少し輝いて見えたのは気のせいだろうか?
クリスタ「そんなことないよ、私はすごくひねくれてるもの」
ユミル「そりゃ、誰だってこんな世界じゃひねくれるだろ?お前は〝頑固〟なんだよ」
クリスタ「頑固…?」
ユミル「ああ、お前は頑固さ。曲がった正義感をもってるしな。さっきだって、ダズの為だろ?」
クリスタ「ダズの為…、か」
実際、ダズの為に言った気もするし、自分の為にも言った気もする。
ただ、言わなくちゃならない、そう強く思ったからな気もする。
ユミル「お前は道を間違えるなよ…?」
クリスタ「え?」
ユミル「何でもねえ…」
ユミルはそう言って歩き出した。
〝お前は道を間違えるなよ〟
どういう意味なのだろうか。
私はユミルのあとについて、兵舎へと戻った。
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- 16 : 2014/12/31(水) 10:31:08 :
どこかモヤモヤとした気持ちに襲われる。
あの時のことを、まだ私は根に持っているのかもしれない。
ジャンが何かを発言する度に反論しようとしてしまう。
はあと食堂で溜め息をついていると、
「どうしたの?クリスタ」
と話しかけられた。
話しかけた人物は、よくジャンと行動しているマルコ。
クリスタ「マルコか」
マルコ「溜め息をつくと幸せが逃げるっていうよ。この頃、クリスタはよくジャンと口論になるよね」
温かな表情を浮かべるマルコは、ついつい気を許してしまう。
クリスタ「…うん。マルコは何でジャンと一緒にいるの?」
そう言うと、マルコは笑った。
何故笑ったのか、私にはよくわからない。きっと面白くて笑ったわけではないんだろうけど。
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- 17 : 2014/12/31(水) 10:37:16 :
- マルコ「ジャンはクリスタが思ってる程、冷酷な性格じゃないよ」
クリスタ「えっ…?」
マルコ「ふふ、ジャンは不器用だからね。例えるなら、アニみたいに不器用だから」
ジャンが不器用で、アニみたいに不器用。
その言葉だけでもよくわからない。例えてもわからない。
マルコ「本当はジャンは優しいんだけど、上手く言葉に伝えることができないんだよ、行動にもね」
クリスタ「優しい…?」
マルコ「だから、ジャンの本質をわかってくれる奴は少ないんだ。だから、僕はジャンと一緒にいるんだと思う」
ジャンは優しい、マルコはそう言うけれど、私にはわからない。
罵声に近いものをよく口から出すし、
行動も荒い、
短気で妥協をしないし、
喧嘩っ早い。
そんなジャンのどこが優しいのだろうか?
私にはよくわからない。
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- 18 : 2014/12/31(水) 10:42:57 :
- クリスタ「わからない、ジャンのどこが優しいのか」
そういうとマルコは曖昧な笑みを浮かべ、困ったような顔をする。
マルコ「うーん、そのうちわかるよ」
投げやりな感じでマルコは言った。
マルコ「クリスタは真っ直ぐだね」
クリスタ「えっ?」
マルコ「だって、気に食わない奴なんかの話題を普通はしないだろ?ましてや、ソイツのことを理解する為に必死に考えてる」
クリスタ「…うーん、そうかな?」
マルコ「うん、クリスタは真っ直ぐだよ」
確かにマルコの言う通り。
ほっとけばいいのに、何故私はジャンのことを理解しようとしているのだろう。
ジャンのぶれているところ、直そうとしているのだろう。
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- 19 : 2014/12/31(水) 16:41:55 :
ユミル「おーい、クリスタ」
ユミルに呼ばれ、私はマルコに別れを告げて、ユミルのもとへと行った。
クリスタ「何?ユミル」
ユミル「水汲み当番だろ?私ら」
クリスタ「あ!そうだった」
つい忘れて、食堂で呑気にマルコと話していた私。
ユミルは鼻でフンと笑い、「行くぞ」と言って歩き出した。
私はその背を追うかのようにして、ユミルのあとについていく。
クリスタ「おいしょ…」
ユミル「おいおい、お前は小柄なんだから、もうちょい水を少なめにしろよ」
クリスタ「あ、そうだね」
少しよろけ気味に水を運ぶと、ユミルが呆れたような表情をする。
まるで、「ほら、言ったこっちゃない」と言っているようだ。
ユミルは優しい。
私が間違ってたら、率直に「間違ってる」と伝えてくれる。
私が困ってたら、何だかんだ言って助けてくれる。
私が悩んでいたら、ぶっきらぼうで口が悪いけれど助言してくれる。
私はそんなユミルが好きだ。
ユミル「何私の顔ジロジロ見てるんだよ?転ぶぞ」
クリスタ「へ?…うわ!」
ユミル「そら、言わんこっちゃない」
転ばなかったが、バケツにはいっていた水を派手にぶちまけてしまった。
ユミルは呆れたような表情をしている。
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- 21 : 2015/01/01(木) 09:06:13 :
クリスタ「はあ、やっと終わった」
ユミル「お前がこぼしたせいでな……」
怒っているのかとユミルを見るが、別に怒ってはいなそう。
ユミルが帰るぞ、と歩き出した。月明かりがユミルと私を照らす。
マルコとの会話を思い出す。
クリスタ「ユミル、アニって優しいと思う…?」
ユミルは驚いたような表情をし、そして口を開いた。
ユミル「さあな、アイツが不器用ってことはわかるけどな…」
クリスタ「不器用…か、マルコと同じこと言ってるね」
ユミル「ふーん、まあマルコが優しいっていうなら、アニは優しいんじゃねえか?」
クリスタ「そっか」
ユミル「アニは確かに、言葉足りないけどやってることやってることが…」
クリスタ「ん?」
ユミル「何でもねえ…」
クリスタ「そう」
〝アイツが不器用ってことはわかるけどな〟
〝マルコが優しいっていうなら〟
〝アニは優しいんじゃねえか?〟
〝言葉足りないけど〟
まるでその言葉が頭の中に反響するかのように、残る。
そして兵舎へと戻った。
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- 22 : 2015/01/01(木) 09:13:24 :
その次の日の朝、私は早く目が覚めたため、食堂へと向かった。
こんな早い時間には、誰もいないだろうな、そう思っていた。
お茶でも飲みながら、のんびりしようかな、そう思っていた。
けれど、人がひとり食堂の日の当たる席に座っていた。
私は息をつまらせる…。
クリスタ「ジャン、何でいるの?」
ジャン「ん?クリスタか、何でって目が覚めたからに決まってんだろ?」
ジャンはまるで文句があんのか?とでも言うかのように私を見た。
〝ジャンは不器用だからね〟
マルコの言葉が脳裏を横切る。
クリスタ「お、おはよう」
ジャン「ああ、おはよう」
ジャンはそう言って、お茶をすすった。
私は自然とジャンの目の前に、背を伸ばして座った。
そして自分がジャンに対して言いたいことをはっきり言おう、そう思った。
思ったというよりは、決断した。
クリスタ「ジャン、あなたは間違ってます!」
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- 25 : 2015/01/02(金) 13:27:18 :
- ジャン「あ、そう…」
予想外の受け答えをしたので、思わず拍子抜けする。
きっとジャンのことだから、怒鳴ったりするのかと思った。
クリスタ「怒らないの…?」
ジャン「怒る意味があるのか?本当のことだしな」
クリスタ「あなたは自分が正しいとか思わないの?」
ジャン「ああ、思わねえ」
クリスタ「何か、もう!」
ジャン「いきなりキレるなよ…」
クリスタ「キレてない」
そう言って私は頬に空気をためた。
予想外の反応、予想外の答え、予想外のジャンの気持ち。
予想外過ぎて怒る気も、今までジャンに対して思っていた怒りも消えてしまった。
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- 33 : 2015/01/03(土) 14:34:20 :
- クリスタ「あなたは間違っているのに、それなのに人の役に立てるのに…、何故?私はできるだけ正しくいようとしているのに…みんなの役に立てない…!」
ジャン「まあ、俺がああやって言ったあと、お前がフォローしてくれんのは正直助かるけどな…」
クリスタ「えっ…」
ジャン「ダズの件だってお前がああやってフォローしたから、俺がああ言っても平気だったんだよ」
ジャンの言葉の数々に私は驚く。
言葉は乱暴だが、言葉の数々の端には〝優しさ〟というものが感じられた。
ジャン「例え間違っていてもそれが正しいことに結びつけられりゃいいんじゃねえのか?」
〝例え間違っていても〟
〝正しいことに結びつけられりゃいいんじゃねえのか?〟
私の頭にそれらの言葉が響く。
ジャン「まあ、お前みたいな奴がいるからこそ、周りは救われるんだろうがな」
ジャンはそう言って、私の頭にジャンの手をポンと置いた。
そして撫でた、撫でてきた。
この時、私は初めてジャンに対して思った。
優しいって。
マルコの言う意味を理解した。
こういうことだったんだなって…
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- 34 : 2015/01/03(土) 14:41:12 :
- 私はその時から、ジャンのことを好きになったんだと思う。
不器用だけど、その中にこもっている優しさに、私は惹かれた。
風が吹く。
どこからか、花びらと花を運んできた。
クリスタ「綺麗…」
私はそう呟いて、その花を取る。
薄い紫がとても綺麗な、その花のことを私は知っていた。
あの頃の私に似合う…。
ジャン「絵になるじゃねえか…」
クリスタ「えっ…?」
ジャン「お前は顔立ちがいいしな…、天使と花ってか…」
ジャンはそう言って笑った。
ジャン「俺はそろそろ戻る、じゃあな…」
ジャンはそう言って私に背を向けた。
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- 35 : 2015/01/03(土) 14:47:06 :
- ここで言わなくては、一生ジャンに思いを伝える機会をなくしてしまう…。
けれど、
クリスタ「ジャン…!」
私はジャンの名前を呼んだ。
ジャンはくるりと振り返った。
言わなくては…ジャンに思いを伝えなくては…!
大好き…
そう伝えなくては、
クリスタ「ジャンなら、憲兵団に入れるよ!きっと…」
伝えたい言葉は出なかった。出たのは思っているけども、伝えたい言葉ではなかった。
私がそう言うと、ジャンは太陽のように笑って、
ジャン「おう!ありがとな!」
そう言って私に背を向けた。
私は持っている花を見た。
この花の名前はハツコイソウ…、花言葉は
クリスタ「淡い初恋…」
私の恋は伝えないまま終わってしまった。
けれど、ずっと忘れはしない…。
だって、私の初恋だから…
END
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- 36 : 2015/01/03(土) 14:48:37 :
- 感想くださった方、ありがとうございました!すごく嬉しかったです。やっぱり、ジャンクリが気に入らない方もいたようですけれどもね(汗)
これで終わりになります、読んでくださった方、本当にありがとうございました!!!
- このスレッドは書き込みが制限されています。
- スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。
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