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夜空に溶ける

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  1. 1 : : 2014/06/17(火) 10:01:27
    「お前…マルコ…か…?」













  2. 2 : : 2014/06/17(火) 10:08:29
    友人が、死んだ。

    親友だった。

    その親友は見るも無残な姿になっていた。

    そして…彼の最後を見たやつもいない…


    何でだよ…約束しただろ。一緒に憲兵団入るんだって…嘘…ついたのかよ…

    悪い夢だろ…
  3. 3 : : 2014/06/17(火) 10:12:47

    その日、沢山の兵の骨が焼かれた。

    勿論、その中には俺たちの同期もいた。

    ふと足元を見ると、骨の燃えかすが落ちていた。

    誰のとも知れない、小さな燃えかすだった。
  4. 4 : : 2014/06/17(火) 10:16:29
    俺はその骨を拾い上げ、静かに呟いた。

    「お前ら…配属先は決めたか………?」

    皆、少し驚いたような表情を見せ、また俯いた。

    俺は骨を握りしめ、震える拳を支えながら振り絞るような声で言った。

    「俺は…俺は…!調査兵団に入る…っ!」
  5. 5 : : 2014/06/17(火) 23:34:13
    充実した毎日。
    何事も無かったように過ぎて行く毎日。
    俺は、その日々に恐怖を感じた。
    いつしか親友のことも忘れてしまいそうで、何も思い出せなくなりそうで……
  6. 6 : : 2014/06/17(火) 23:37:16
    調査兵団に入団してから数週間が過ぎ、制服が届いた。真新しいジャケットに、自由の翼のマント。
    いつから俺は自由を求めるようになったんだろう。
    こうやって戦友の死を忘れ、また戦友を失い、忘れていくのだろうか…
  7. 7 : : 2014/06/17(火) 23:40:11
    今日は先輩方が直接指導してくれるそうだ。もっとも俺の得意な立体起動なので、なんら心配はない…筈だった。

    森に差し掛かり、立体起動も操りやすくなった。そこでふと、戦友達と過ごした訓練兵時代を思い出した。
  8. 8 : : 2014/06/17(火) 23:44:30
    ________________________
    ________________
    _________

    「またジャンの遠回しな愛情表現が始まりましたよ。」

    サシャが少しからかうような口調で言う。
    それにコニーやライナー達も乗ってケラケラと笑う。

    「なんだとコラ。」

    「な?!馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ!」

    俺も少しふざけて拳を振って見せる。

    エレンは少々本気にしてるみたいだ。

    「本気になんなって。」

    そうやって最後には皆で笑ってた。
  9. 9 : : 2014/06/17(火) 23:45:55
    そんな事を考えていると、突然グラリと目眩が襲い、たちまちのうちに俺の視界は闇に包まれた。
  10. 10 : : 2014/06/17(火) 23:55:27
    __________________
    ___________
    _____

    ん…?

    目を開けると目の前で皆が楽しそうに笑っていた。

    どうしたんだ?

    と言いながら俺は皆に近づく。

    「あぁ!ジャンも早く来いよ!制服。届いたんだぜ!」

    嬉しげにコニーやライナー達が言う。
    俺の同期だ。


    ミカサ、ライナー、ベルトルト、アニ、エレン、コニー、サシャ、クリスタ、アルミン、トーマス、ミーナ、ハンナ、フランツ…
    中にはこの場に居なかったり、先日の奇襲で死んだ奴もいる…

    ここまで考えて俺は少し胸につっかえるものがあった。

    ……誰か……忘れてないっけ……?
  11. 11 : : 2014/06/17(火) 23:56:29
    何か…大切な、大切な人を忘れているような気がした。だけど、思い出せない….
    ………誰だっけ?
  12. 17 : : 2014/06/22(日) 21:44:10
    「ジャン…」

    俺の後ろで、少し寂しげな声が響いた。
    あぁ…この声…この笑顔。
    ……………………マルコだ……。

    「どうしたんだマルコ!早くお前も来いよ!」

    サァ…

    「………」

    風が、、、吹いた、、、

    マルコは黙ったまま、小さく首を振った。


    そこで、俺の記憶は消えた。
  13. 18 : : 2014/07/20(日) 22:35:56
    「ん…」

    ___ここは…?

    僕は…どうしてここに?……そもそもここは何処なんだ。

    ___限りなく蒼く澄み渡る空、光を浴びて、金色に輝く草原。
    その向こうには…遥か彼方まで広がる
    碧い湖_____
  14. 19 : : 2014/07/24(木) 15:45:04
    「マルコ…」

    誰かの僕を呼ぶ声にふと振り返る。

    「……あなたは…?」

    眩い光に取り巻かれた"それ"は人間ではない。しかし"それ"には確かに表情があった。"それ"はくすりと楽しげに笑うと静かに告げた。

    「さぁ…?……それはさておき私は貴方に伝えたい事があって来たのです。」

    「僕に…?」

    「えぇ。」

    「そもそもここは何処なのですか。僕はなんで…。!!ジャン!ジャンは?!」

    「マルコ…貴方は死んだのですよ。」

    「え…?」
  15. 22 : : 2014/08/05(火) 00:21:41
    「そ…んな…まだまだ話したいことあったのに…」

    「だから…もう一度だけチャンスをあげましょう。」

    「えっ?」

    「唯し…明日の夜までの間です…」

    「貴方は今この世界で生きていることになって居ますから。………そして………戻ったその時には…もう…誰も貴方のことを…」

    「………分かりました。」

    「それでも行くのですか。」

    「はい。」

    「……分かりました。」
  16. 23 : : 2014/08/28(木) 00:17:06
    気が付くと僕は何処かに立っていた。

    「おい、マルコ!」

    後ろで僕を呼ぶ声がする。
    振り向くと…

    「ジャン!!!」

    思わず目を見開き飛びつく。

    「わっ!?なんだよマルコ?」

    「あ、、ごめんごめんつい…」

    あはは、とわざとらしく笑って見せる。

    「なんだそれ?おかしな奴だ。」

    ジャンがくすりと小さく笑う。

    あぁ…この短い時間に僕は何をしてあげられるだろう。この、たまらなく愛しい友に。

    僕は彼にしてもらった事の半分も返せたのだろうか?
  17. 24 : : 2014/10/17(金) 23:20:26
    ____________________________________________________________

    あぁ…なんか懐かしいな…変な感じだ。
    何故かマルコを見ると懐かしく感じる。

    「ねぇ、ジャン」

    「ん?」

    振り向くとマルコがいた。
    月の逆光で表情は見えないが、多分笑ってる。

    「もしさ…僕が居なくなったら君は覚えててくれるかい?」

    「いきなり何言ってんだ。お前を死なせたりなんかするかよ。もしも何かあっても、お前を忘れたりなんかしねえ。」
  18. 25 : : 2014/10/17(金) 23:23:31
    「ジャン…ありがとう…」

    「いきなりなんだよ…変な奴だな」

    ほんと変な奴だ。
    ちょっと苦笑いしてみせる。
    嫌な予感がするんだ。
    こんなの、唯の予感だろ。
  19. 26 : : 2014/10/17(金) 23:43:53
    「ジャン…僕、そろそろ行くよ…」

    「は?お前何言って…」

    「ジャン….もう…うすうす気づいてたんだろ…?僕はもうこの世には存在しない。いないんだ」

    なんだよ。唯の悪い夢だ、こんなの。
  20. 27 : : 2014/10/17(金) 23:55:55
    彼の身体は少しずつ、だが、確実に薄れてゆく。

    堪らなくなって、彼を思いきり抱きしめた。

    「ジャン…君が友達でよかった…」

    「マルコ…!行かないでくれ!また俺を放って行く気かよ!」

    泣き喚きながら、必死でマルコを抱きしめる。
    頼む、もう….1人にしないでくれ…

    マルコは穏やかな表情で俺の頭を撫でながら言ったんだ。

    「ジャン…君は1人じゃない。僕はいつもそばにいるさ。どこにも行かない。」

    「皆を…頼むよ。」

    そのまま、スゥ…と薄くなって消えた。

    まるで、夜空に溶けるように…

    ーFinー
  21. 28 : : 2014/10/18(土) 00:27:06
    アレ?目から汗が…

    乙です。

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著者情報
yumiko

ぽぽろん

@yumiko

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