このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
苗木「2月5日って何かあったっけ?」
-
- 1 : 2014/02/05(水) 00:03:55 :
- うわあああ苗木クンおめでとおおおおおお!!!!
*ナエギリちゃんです
*エロ有…多分
-
- 2 : 2014/02/05(水) 00:05:43 :
- =未来機関:特別支部=
コロシアイ学園を生き抜いて脱出した6人は『人類史上最大最悪の絶望的事件』の収束を目指す未来機関へ入り、日夜あわただしい日々を送っている。
ーAM 01:30ー
苗木「うー、眠い…それに寒い」ガチャ
霧切「あら、苗木君」
十神「今日はまだ起きていたのか。いつもなら今頃寝ているのに」
寝ぼけ眼を擦りながら出てきたのは【超高校級の幸運】兼【超高校級の希望】の苗木誠
それを出迎えたのが【超高校級の探偵】霧切響子と【超高校級の御曹司】十神白夜
生き残りのうち、この3人は特に頭脳明晰であるが故に仕事も忙しかった。
苗木「あ、霧切さんに十神クンおはよう。…希望育成プログラムの書類がまとめ終わってなくてさ」
『絶望の残党』希望ヶ峰学園77期生の16人。
世界において決して存在を許される者達ではない。が、苗木は彼らの内に眠る希望を見捨てたくなかったのだ。
その意志に心打たれた2人が協力を申し出る。(もしかしたら十神はただ、苗木の行動に興味があっただけかもしれないが)
結果、本部に逆らってまで彼らを『新世界プロジェクト』なる仮想空間へ送り込み、更正の為の50日間の修学旅行カリキュラムを組んだ。
もちろん本部からはこっぴどく叱られたものの、霧切と十神の弁解おかげにより、どうにか上手く計画は進んでいる。
霧切「お疲れ様。座ってなさい、何か持ってきてあげるから」ガタッ
苗木「ん…、ありがとう」
霧切は簡易キッチンへと足を運び、苗木は机にぷっつぷした。
-
- 3 : 2014/02/05(水) 00:15:24 :
- 早速ですか。さすが時雨氏は格が違った。
期待&支援です。
-
- 4 : 2014/02/05(水) 00:17:36 :
- 早いですね!流石です(笑)
楽しみです!
-
- 5 : 2014/02/05(水) 00:22:42 :
- マジ早アンチョベリバマックスですね!
とても期待です!頑張ってください!
-
- 7 : 2014/02/05(水) 00:34:50 :
- 十神「77期生の監視に時間を裂きすぎだ愚民め。貸せ、少し手伝ってやる」
苗木「十神クン…ありがとう!」パアッ
ぶっきらぼうながらも親切な十神に、苗木は人懐っこい笑みを浮かべる。
その様子を横目で伺いながら、十神はふと、苗木にこんな質問を浴びせた。
十神「…苗木。今日は何月何日だ」
苗木「2月5日だけど…。十神クンが日付を聞くなんて珍しいね、どうしたの?」
十神「いや……」
苗木のセリフに、ほんの少し眉根を寄せる十神。
霧切「お待たせ。苗木君にはココア、ついでだから私と十神君はコーヒーね」
そこにトレイを手にした霧切が帰ってきた。
苗木「ゴメンね霧切さん。本当にありがとう」ニコッ
十神「珍しく気が利くな」
カップを受け取り、2人は一口すする。
コーヒーとココアの香りは決して相性は良くないが、苗木がコーヒーを飲めないので、この香りは3人のティータイムの定番なのだ。
霧切「…どうも」
霧切は席につき、チョコレートを口に運ぶ。
十神「………………」パラパラ
苗木「………………」カリカリ
霧切「………………」ズズッ
沈黙。
資料をめくる音、書類に書き込む音、コーヒーを飲む音。…これらがそれをより一層際立たせていた。
-
- 8 : 2014/02/05(水) 02:17:56 :
- 仕事が早いですねwww
期待&支援です!
-
- 9 : 2014/02/05(水) 13:13:07 :
- >>8
待ちに待った苗木クンのBirthdayですから!
ありがとうございます!
-
- 10 : 2014/02/05(水) 13:13:34 :
ー1時間後ー
苗木「終わった!これでゆっくり寝れるよ……」コテン
苗木は嬉しそうに声を上げ、直後倒れ込む。
霧切「苗木君、ベッドで寝ないと風邪を…はぁ」
苗木「…すぅ」Zzz
十神「爆睡だな」
3秒という驚異的な寝付きに2人は溜め息をついた。
…まあ苗木という男は何もかも背負い込んでしまうので、こうやって安心して眠っていることはとても良いことではあるのだが。
霧切「………………」スッ
霧切は目を細めると、苗木の前髪をそっと掻き上げる。そして額に軽く触れる程度のキスをする。
十神「貴様達の初々しさは見ていてもどかしい。もう付き合い始めて3ヶ月は過ぎただろう」
霧切「そうだけど…やっぱりまだ、どこか照れ臭いわ」
十神「ほう、貴様にそんな感情があったとはな」
霧切「…茶化さないで」
顔を逸らした霧切の頬はほんのりと赤かった。
-
- 11 : 2014/02/05(水) 17:04:17 :
- 十神「相変わらず理解不能だ…。まあいい」ヒョイ
十神は霧切を一瞥し、苗木を軽く背負う。
十神「こいつも世話が焼ける……」
そう言いながらも別段気を悪くしている訳ではないようだ。
霧切「あなたはずいぶん変わったけどね」
十神「全くだ。おかげで無駄な労力を貴様達に裂いているのだからな」
霧切「あら。それは腐川さんのこと?」
十神「…あの女と付き合うならこいつと結婚した方がまだマシだ」
霧切「………………」
十神「…なんだその目は、冗談に決まってるだろう。恋人同士の貴様達の仲を壊す意味もない……」
十神は大袈裟に溜め息をつくと、苗木の部屋へと足早に歩いて行ってしまう。
霧切「『恋人同士の』って…。別に私と苗木君が恋人じゃなかったらどうするつもりなのかしら」クスクス
───こんな冗談を言うなんて、あなたは本当に変わったわね。
霧切はそう呟くと、十神の背を追った。
-
- 12 : 2014/02/05(水) 20:38:29 :
苗木「んぅ……」Zzz
ギシ、と重さでベッドが軋むが、それでも苗木は穏やかに寝息を立てている。
十神「呑気な奴だ……」
十神は適当に布団を被せると、霧切へ向き直った。
十神「どうやらこいつはすっかり忘れているみたいだぞ」
霧切「そんな事だろうと思った。だって彼、ここ最近働き詰めだもの」
十神「しかし呑気なうえに間抜けとは…。こいつはどうして生き延びたんだろうな」
霧切「呑気で間抜けで…それでいて優しくて、一緒にいると楽しいし安心する。…あなたもそうでしょう?」
十神「俺が知るか」
自分の事なのに知らないと一蹴する十神。
十神「ただ、苗木は人を惹きつける。それだけだ」
霧切「ええ、そうね」
-
- 13 : 2014/02/05(水) 22:14:55 :
- 十神「…で、これからどうするんだ」
霧切「起こすのは可哀想だし…取りあえず朝まで待つわ。それに明日は休暇だから、焦る必要もないしね」
十神「そうか。ならもうやることはない。…寝るか」
霧切「ええ。お休みなさい、十神君」
十神「…フン」スタスタ
自分と苗木の話をした後の十神はどこか不機嫌そうだ。
そう思いながら、霧切は再び苗木へと視線を移した。
苗木「…んん」Zzz
霧切「………………」
苗木と付き合いだしたのは3ヶ月と1週間前。(十神は間違えていたが、訂正したところで皮肉を言われるだけなので黙っていることにした)
元よりあの学園に監禁されていたときから彼のことは気になっていた。…ただし、恋愛感情ではなくあくまで人格にだが。
『…えっと、キミの名前を教えてくれないかな』
第一印象は「頼りなさげ」だった。…あの頃が懐かしい。
-
- 14 : 2014/02/06(木) 13:12:09 :
- (パーカーの上にジャケット…無難なファッションね。あまり目立ちたがりじゃない。つまり地味。平凡。中庸。髪型はともかく。語勢も弱々しい)
(…でもこちらの目をきちんと見ている。語勢も弱いだけで、決して下手に出ている訳じゃない。きちんと自分の意志を伝えられる強い人……)
あのときの自分は自分が探偵であることを忘れているものの、他人を分析するのはもはや体に染み付いた癖だった。
今思えばそれほど低評価だった訳でもない。
霧切「本当に、懐かしいわ……」
霧切「…苗木君。お休み」
霧切は柔らかい笑みを浮かべると、もう一度苗木にキスをした。
-
- 15 : 2014/02/06(木) 20:37:11 :
ー翌日ー
苗木「ふわ…。よく寝た」ググッ
霧切「おはよう。苗木君」
苗木「うわああああああ!?霧切さん!?」
霧切「…何よ。人を幽霊みたいに」
苗木「ご、ゴメン…だっていきなり部屋にいるんだもん」
ベッドの上で肩をすくめる苗木。
ふわふわとした栗毛は寝癖で跳ね、緑色の目はあくびをしたために涙で潤んでいる。
霧切「苗木君」
苗木「…何?霧切さ……」
すべて言い終わる前に、霧切は苗木の唇を奪った。
苗木「んっ…!く……」
いつもなら寝覚めは軽いキスなのだが、今朝は妙に粘っこい。絡まる舌も、行き交う唾液も。
苗木「ーーっ!!ーーーっ!!」トントン
「息が保たない」と苗木は霧切の肩を叩く。
霧切は名残惜しそうにもう一度だけ舌をかき回すと、それをずるりと抜いた。
苗木「ぷはっ…。き、霧切さんどうしたの…?」
足りない酸素を取り込もうと肩を上下させている。潤んでいた瞳はますます涙目で、困惑を持ってこちらをじっと見つめている。
そして口の端から垂れる銀の糸。
霧切「…だって、今日は特別な日だもの」
口元を拭い、沸き起こる感情を抑えながら、あくまで冷静に霧切は言った。
-
- 16 : 2014/02/06(木) 22:20:04 :
- 苗木「…特別な日?」
こてんと脱力したように首を傾げる苗木。
霧切「…分からないならいいわ」
苗木「えっ、ちょっと霧切さん!?」
出て行こうとする彼女の手首を掴む。
苗木「ねえ教えてよ。ボクが何を忘れてるの?」
そんなことを真顔で聞いてくるものだから、思わず吹き出してしまう。
霧切「ふふっ…。馬鹿みたい」
苗木「ええ~……」
もはやデフォルトとなっている苦笑いを顔に貼り付けながら、彼は頬を掻く。
霧切「分からないなら自分で確かめなさい」
そう言って、顎で扉へと促す。
苗木「うーん…。…うん」
苗木はやや複雑そうな表情ながらも考えても思い出せないと諦めたのか、ドアノブに手をかけ、押し開ける。
ガチャッ
扉を開けた直後
パン
発砲音。そして火薬の臭い。
苗木「えっ…?」
-
- 17 : 2014/02/07(金) 16:42:49 :
まず目に入ったのは、降りかかった紙吹雪やらテープ。
十神「お似合いの間抜け面だな」
そして煙を吐くクラッカーを手にする十神。
苗木「あっ……」
クラッカーというポピュラーなパーティーグッズを出されれば、さすがに思い出す。
苗木「そっか、2月5日。…ボクの誕生日か」
霧切「思い出した?」
苗木「ばっちり。…あはは、本当にバカみたいだ」
後ろから声をかけてくる霧切を顧みて、苗木ははにかんだ。
-
- 18 : 2014/02/07(金) 17:39:12 :
- 面白い!期待!
-
- 19 : 2014/02/08(土) 00:34:47 :
- >>18
ありがとうございます!
-
- 20 : 2014/02/08(土) 00:34:53 :
苗木「わっ、凄い!チョコケーキだ!」
人類史上最大最悪の絶望的事件の影響で、このようなお菓子は随分と高級品になってしまっていた。(復旧につれ値段も元に戻りつつはあるが)
ワンホールのチョコケーキを、目を輝かせて苗木は見つめる。
十神「はしゃぐな。その年で」
苗木「えっと、今日で18…かな」
あの学園で過ごしたのが1ヶ月あるかないか
それ以前に学園で2年を過ごしているとすれば、自分は18歳ということで間違いないだろう。
───まあ、記憶がないせいで自分でも信じられない年齢だけど。
苗木は無意識にまた、苦笑いを浮かべていた。
十神「フン、まあいい。勝手に食え」
苗木「いいの?…十神クン、ありがとう!」
苦笑いが一変、口元を綻ばせる。
近くに置いてあったフォークを手に取り、ホールケーキから直接切り出して一口頬張った。
苗木「♪」モグモグ
甘いもの好きの苗木は、たいそうご満悦な様子で味わっている。
霧切「喜んでもらえたみたいで良かった」
苗木「霧切さんもありがとう!…すっごく嬉しいよ」
霧切「そう言ってもらえて良かったわ。遠慮しないで全部食べてちょうだい」
苗木「えっ、霧切さんや十神クンは食べないの?」
十神「そのケーキは甘すぎる。俺は結構だ」
霧切「私もいいわ。だって苗木君のためのケーキだもの」
苗木「そう?…それなら遠慮しないでいただいちゃうけど……」チラッ
3秒だけ待って2人が何も言わないのを確認すると、苗木は再びケーキに手を伸ばした。
-
- 21 : 2014/02/08(土) 00:48:05 :
- 今更ですけど『絶望の残党』って2のメンバーから監視役(ネタバレ自重)を抜いた15人ですねすいません(土下座)
-
- 22 : 2014/02/08(土) 01:17:24 :
- 苗木「あー、おいしかった!」
ケーキを平らげると、苗木は椅子の背もたれに体重を預けた。
霧切「満足してもらえたかしら?」
苗木「もちろんだよ!本当にありがとう。霧切さん、十神クン」
十神「フン、お前に礼を言われる覚えはないな」
十神は新聞に目を通しながら素っ気ない返事をする。
「そういうことを言われると何だかボクが悪いことしたみたいだよ」と、苗木はまた苦笑いを見せた。
霧切「…本当に仲が良いわね。兄弟みたい」
十神「どこがだ」
苗木「どっちかって言えば上司と部下って感じだよ……」
霧切「良いじゃない。似合ってるわよ…あっ」
苗木「どうしたの?」
霧切「…あなたに渡そうと思っていたプレゼントがあったんだけど、部屋に忘れてしまったわ。悪いけど一緒に取りに行ってくれるかしら」
苗木「さらにプレゼント!?…もう満足だよボクは……」
霧切「良い・から・来て」グイッ
苗木「ええっ!?ちょっ…、霧切さん!?」
バタン
十神「全く…強引な奴め。はたしてこれがどれほど効くのか見物だな」
十神の視線の先にあったのは『Love portion』と表記された箱に収められた薬。
『Love portion』───直訳は『愛の秘薬』
意訳は『媚薬』…簡単に言えば、人を欲情させる薬だ。
-
- 23 : 2014/02/08(土) 02:11:28 :
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
苗木「お邪魔しまーす」
何度か招き入れられた事のある霧切の部屋。
最初は随分と簡素で無機質だったものの、彼女の私物が持ち込まれ、彼女自身が過ごすうちにすっかり馴染んだ部屋だ。
苗木(…霧切さんの匂いだ)ソワソワ
…ここに来ると落ち着かない。
霧切「適当に座ってちょうだい」
苗木「うん、分かった」ギシッ
「座って」と言われても椅子などない。腰かけられる物なんてベッドぐらいだ。
霧切「ふう」ギシッ
苗木「あれっ、プレゼントは?」
霧切「…プレゼントの前に、聞いてくれないかしら」
苗木のすぐ隣に腰かけた霧切は、じっと愛人を見つめる。
霧切「私はあなたに本当に感謝してる。今の私があるのはあなたのおかげだから。…ありがとう」
苗木「急に改めて言われると…何だか照れちゃうよ」アハハ
自分に視線を注ぐ彼女の頬は、チークを入れたようにほんのり紅い。
だけど、自分の頬はもっと紅潮しているだろう。…どうも身体が火照っている。
胸のドキドキ以上に……熱くて熱くて堪らない。
霧切「ねえ苗木君。私達が付き合い始めて、今日で何日目かしら」
苗木「3ヶ月と1週間。…だよね」
───何で自分の誕生日は忘れていて、こういうことはきちんと覚えているのかしら。
苗木「だって霧切さんは大切な人だもん」
霧切「えっ…?」
苗木「エスパーだから。…はは、冗談冗談。ただの勘だよ」
霧切「そのセリフ……」
【超高校級のアイドル】舞園さやか
あのコロシアイ学園生活での最初の犠牲者
そして何より───苗木の初恋の相手。
-
- 24 : 2014/02/08(土) 03:22:42 :
- 苗木「あのとき…舞園さんが殺されて、ボクが絶望していたとき、ボクに救いの手を差し伸べてくれたのがキミだったね」
霧切「救いだなんて…大袈裟よ」
霧切「ただ、あなたは舞園さんを大切に想っていたみたいだから。…だから、あなた自身に真実にたどり着いてほしかっただけ」
『舞園さんの裏切りを…ボクに気付かせてくれたんだよね?』『まんまと信じて容疑者になった、バカなボク自身にさ……』
1回目の学級裁判の後、瞳に自虐的な色を湛えながら、苗木はこう言った。
信じた彼女の裏切り。その事実はあまりに辛いものだった。…温厚な苗木が激昂して、ギリギリまで認めないほどに。
苗木「でもあのとき霧切さんが助けてくれなかったら…それこそ今のボクはない」
自分は誓った。「決して乗り越えない。すべて引きずって前に進む」と。
だからこそ、舞園への想いも今日まで引きずって生きてきた。
でも、それは今の恋人───霧切に申し訳ないとも思う。「未練がましい男」なんて思われているかも知れない。
苗木「ありがとう、霧切さん」ニコッ
───偽善者!偽善者!偽善者!
そうやって微笑めば赦されるのか!なんて卑怯な奴だ!最低だ!最悪だ!
そんな風に他の女に焦がれたまま、恋していいと思っているのか!?だとしたらなんてバカな奴!!
苗木「霧切さん、ゴメン……」
前向きだけが取り柄だと思っていた自分も、随分弱くなったもんだ。
自分自身の糾弾で、押しつぶされそうになるなんて。
-
- 25 : 2014/02/08(土) 09:43:50 :
- 霧切「…何を謝ることがあるの?」
苗木「だって…見損なったでしょ?いつまでも過去の恋を引きずってさ」
霧切「…馬鹿ね」
苗木「ええ!?」
霧切「そんな事知ってるわよ。だってあなた、言ってたじゃない。『引きずって生きていく』って」
苗木「あは…、覚えてたんだ」
霧切「あえて茨の道を進むような決断だもの。衝撃的すぎて忘れられないわよ」
苗木「えっとそれ…褒め言葉?」
霧切「もちろん」
あっさりと返ってきた言葉にずっこける苗木。…笑顔が戻ってくれたみたいだ。
霧切「私の方こそ申し訳ないわ。そんなあなたを裏切ってしまって」
苗木「もう、それは言わない約束」
戦刃むくろ殺しの学級裁判の件。
裏切り、見捨てた自分を、彼は許した。
怒ることも責めることも、恨むことも怯える事もなく。
そのとき気付いた。「ああ、自分はなんて優しい人を見殺しにしようとしていたのか」と。
自分だって裏切りは怖いのに。…それは焼け焦げた両手が示している。
苗木「霧切さん、こっち見て」
霧切「?」
俯いてぐっと唇を噛んでいたのを、再び彼に視線を戻す。
と、同時にぐいっと引き寄せられ、ベッドへ押し倒された。
被さるような体勢で、苗木はキスを落とす。
苗木「んっ…は、ぅ……」
霧切「く…んんっ……」
苗木のキスは優しい。
舌の動きも緩慢で、完全に唇を塞いだりしない。(それ故音がよく漏れ出すので、イヤらしさが増しているのを本人は気付いているのだろうか)
とにかくいつまでも味わっていたくなる。
-
- 26 : 2014/02/08(土) 09:56:54 :
- 苗木「霧切さんにその事で悩まれちゃうと、ボクの悩みなんてちっぽけに見えちゃう」
ふわっと微笑んで、霧切を見つめる苗木。
想いを引きずったまま、進む自分を肯定してくれる彼女…。なんてイイ人なのだろう。
霧切「私こそ…何だか下らないことみたいに感じちゃうじゃない」
つられるように、霧切の表情も和らぐ。
自分はとっくの昔に許されているのか。それにしてもお人好しすぎる。
苗木「そうだなぁ…。じゃあボクは今から約束する」
霧切「…何を?」
苗木「キミが舞園さんとは違う『好き』な人であることを示すために、これからはキミを名前で呼ぶよ」
霧切「もう…遅いのよ」
苗木「えっ!?」
霧切「ふふっ。いいんじゃない、苗木君らしくて」
霧切「じゃあ私はあなたを信頼する証に…あなたを名前で呼ぶわ」
それを聞いた苗木の顔がぱっと明るくなる。
そのままぽてんと横に転がり、嬉しそうに声を上げた。
苗木「あはっ!…よろしくね、響子さん」
霧切「こちらこそ…誠君」
2人はしばらくベッドに転がりながら、笑い合っていた。
-
- 27 : 2014/02/09(日) 00:45:12 :
霧切「…ねえ、誠君」
苗木「ん。何?響子さん」
霧切「私達って付き合い始めて3ヶ月と1週間…そうよね」
苗木「そうだけど…どうしたの?」
きょとんと聞き返すと、霧切は顔を伏せ、上ずった声でこう言った。
霧切「えっと…ね、私達…そろそろ良いと思うのよ」
苗木「へっ!?」ビクッ
「何が?」というのは愚問だろう。年頃の男子高校生である苗木は十分承知だ。
苗木「えっと…随分、急…だ、ね?」
見開いた目に真っ赤な顔を流れる汗。なぜか笑顔で苗木は頬を掻く。
霧切「そんな事無いわ。3ヶ月と1週間よ」キリッ
苗木「…はい、滅相もございません」
相変わらず彼女にはリードされてばかりだ。
霧切「3ヶ月と1週間よ。計算して」
苗木「えぇ!?えーと31+30+…」
霧切「遅い。99日」
苗木「いやいや電卓でもそんなに早く計算出来ないからね!?…それにしても99日か」
お得意のロンパを披露し、改めて日の早さを噛み締める。
と、その直後気付く。
苗木「もしかして100日目記念とか言うつもり…?」
霧切「それ以外何があるのよ」
苗木「今日99日目!100日目は明日だよ!!」
霧切「一晩越せば良いじゃない」キリッ
苗木「霧切さん今3時!午後3時だよ!!」
せっかく変えた呼称も1分で元に戻ってしまった。
-
- 28 : 2014/02/09(日) 15:25:38 :
- 苗木「お、落ち着こう。落ち着こうよ霧切さん」
霧切「…呼び方」
苗木「響子さん落ち着こう」
霧切「何よ、落ち着いてないのはあなたじゃない。そんなに顔真っ赤で」
苗木「…いや、さっきから身体が熱いんだよ。風邪かなぁ」
ぐったりと身を投げ出す苗木。布団の白に暖かな血の気の色が鮮やかだ。
霧切「…ねえ、誠君。いい加減に素直になったら?」
苗木「え…?」
霧切「焦れったいのよ」
そう言って霧切は遠慮もなしに苗木のスーツのボタンに手をかける。
苗木「えええっ!?ちょっ…響子さん!!」
霧切「あら、今度は間違えないのね」
苗木「そうじゃなくて!!」
-
- 29 : 2014/02/10(月) 01:33:06 :
- 苗木「あ、あのね響子さん…えっと……」
霧切「何?…それは大事なことかしら?」
苗木「………………」
とうとう何も言わなくなってしまった。
羞恥で真っ赤な顔を伏せ、ふるふると小刻みに震えている。
霧切「誠君。私はきちんと考えて、あなたなら良いって判断したの。だから後はあなた次第」
霧切「ふつう逆よ。そこは分かってるの?」
苗木「………………」
霧切「ねえ」
苗木「……ん、分かったよ。ちょっと待ってて……」
しぶしぶと苗木は顔を上げ、起き上がった。
霧切「待ちなさい。どこに行くの」
苗木「ボクの部屋」
霧切「どうして」
苗木「だってコンドーム……」
霧切「…馬鹿」グイッ
苗木「おわっ!?」ボスン
霧切は苗木のネクタイを思いっきり引っ張って、ベッドに押し戻す。
霧切「そんなの要らないわ。…ち、直接欲しいの」フイッ
苗木「!!」ドキッ
途中で恥ずかしくなったのか、顔を背けながら霧切は言い、苗木の手を掴む。
苗木「響子さん…?」
-
- 30 : 2014/02/11(火) 02:09:54 :
そして、その手を自らの秘部へと運んだ。
苗木「~~~っ!?」ビクッ
霧切「ひっ……!」
驚いた苗木の指先が跳ね、霧切を刺激した。その指先に感じるぬるりとした感触に、苗木も動悸が収まらない。
霧切「ほら…ね。あなたと喋るだけで…こんなに感じてしまうの……」
あの霧切さんを…自分が?こんなに感じさせている?
バクバクと耳の奥がうるさい。
霧切「あなたは…私と居ても何も思わないのかしら」
苗木「…それは違うよ」
もう意固地になるのは止めた。
苗木「ボクだって霧切さんと居るとすごくドキドキする。キミを見てるだけでも幸せだけど…もっと触れたいって思うよ」
認める。…さっきから身体が熱いのは、自分が彼女に欲情しているからだと。
するりと腕を抜くと、擦れたのか甘い声を上げる霧切。
指先の愛液がイヤらしく糸を引いている。
苗木「シよう…か」
霧切「…ええ」
ぎこちない会話。
暗黙の了解を得た2人は、服を脱ぎ始めた。
-
- 31 : 2014/02/11(火) 02:11:43 :
苗木「響子さん……」
霧切「誠君……」
ベッドに転がり、お互いの顔を見合わせる。
霧切「こういうのはまず前戯ってのをしないといけないのかしら」
苗木「…うん。ローションもないし」
霧切「そうね…じゃあ」
苗木「ボクからするよ。…なんか霧切さんにリードされてばっかりだからさ」
霧切「…そう。じゃあお願いしようかしら」
苗木「うん、任せて」
そう言って苗木は霧切の上に陣取る。
始めはちゅっちゅっと音を立てる啄むようなキス。
苗木「ん…」
霧切「っは…ん……」
そして食らい合うような激しいキス。
これだけでもお互いに発火するんじゃないかというぐらいには緊張する。
…ただ、今は違った。
苗木「はむっ…んく……」
あの苗木が積極的にむしゃぶりついてくる。咀嚼するようにもごもごと口を動かし、逃がさないように頭を押さえつけて。
霧切「んっ…んっ……!」
今度は逆。霧切の方が息が保たずに顔を離す。
-
- 32 : 2014/02/11(火) 02:13:15 :
苗木「響子さん……」
肩口に顔を埋め、猫撫で声で誘惑してくる苗木。
霧切「驚いた。…あなたがそんなことするなんて」
苗木「…イヤだった?」
じっと不安げな視線を注がれては、首を横に振るしかない。
霧切「そんなことはないわ。ただ、あなたの新しい一面が見れたと思ってね」
苗木「そっか、良かった」ニコッ
安堵の緩み顔。これがまたあどけなくて愛らしい。
苗木は霧切の浮き上がった鎖骨をぺろりと舐めあげた。
霧切「ひゃ…!?」ビクッ
苗木「あはっ、響子さん可愛い」
そして首筋に噛みつく。
痛いぐらいにキツく、跡を残すようにしつこく…
いつになく貪欲で、飢えたところに持ち出された餌に食らいつく勢いで苗木は霧切の柔らかい肌を堪能していた。
苗木「んっ♪」
ぐるる…と喉が鳴る。
ふと覗き込むように霧切の顔を見れば、自分をバカにできないぐらいに耳まで真っ赤で、襲い来る快楽に意識がトばないようにきゅっと目を瞑っている。
自分があの霧切を感じさせているという優越感。
ぞくぞくと高ぶる気持ちを押さえつけるように一度胸を撫で下ろし、その手を自分の胸から霧切の乳房へと移した。
-
- 33 : 2014/02/16(日) 17:06:37 :
- 更新しないのかな?
-
- 34 : 2014/02/16(日) 18:47:18 :
- >>33
もう更新速度がゴミクズレベルですいません…
もう苗木クンの誕生日オーバーどころの話では無いですが最後まで付き合っていただけると幸いです。
-
- 35 : 2014/02/16(日) 18:47:42 :
陶器のような色白の柔らかい肌。
その中に浮かび上がる胸の突起は一際存在感を放っている。
苗木「あむ」
霧切「っ…」ピクッ
そこに苗木は吸い付く。チュパチュパと音を立て、舌で舐めまわし、空いているもう片方は指で抓みながら刺激していく。
霧切「あ…!あっ…ん」
か細い喘ぎ声。熱っぽくて、普段の彼女から聞くことは絶対出来ない。
苗木(ボクが…ボクだけが知ってる。こんな響子さん。ボクだけの……)
そう思うと加速に加速が重なる。
愛玩に似た独占欲が沸き起こる。
苗木「欲しい。キミのがもっと……」
薬の後押しもあって、今や苗木は完全に色欲の奴隷。
顔の位置を胸からすでにぐしょ濡れの秘部へ移し、遠慮なしに舐め回す。
霧切「きゃふ…んっ!なえ、ぎ、くん……」
苗木「響子さん。呼び方」
霧切「ひっ…!ま、こと、君っ……!!」
敏感な部分を刺激されるたびにビクンと身をよじらせ、息を荒げている。
-
- 36 : 2014/02/17(月) 01:37:08 :
- 苗木(舌だとやっぱり入りが甘いなぁ)
散々ナカを引っ掻き回した舌を抜くと、今度は人差し指と中指を挿し込む。
親指はクリトリスを、余ったもう片方の腕は乳首を…苗木はひたすら敏感な所を攻め続けた。
霧切「ひゃっ…まこ、と君っ…私もう……むりっ」
苗木「…我慢しちゃイヤだよ?響子さん」
霧切「あああっ……」
その言葉が引き金になったように、霧切はオーガニズムに達した。
じゅぶぶと耳を塞ぎたくなるような水音を立てながら潮を噴き、それが苗木の手を濡らす。
苗木「響子さんえっろい……」
霧切「うるさい……」
苗木は意地悪に口元を歪め、霧切は涙目でそれをきりりと睨み付ける。
苗木(…そろそろ、イイかな……)
霧切に色々言いつつも、苗木自身も結構限界だった。
ぼんやりと、それが決まりきった所作であるかのように霧切の足を開かせようと息を吸い込んだとき
霧切「苗木君のクセに生意気よ…!」ガッ
苗木「うわ!?」ボスン
力の緩んだ片腕を払われ、布団の中に倒れ込む。
ワケの分からない間に上下が逆転していた。
苗木「…あの、響子さんこれは」
霧切「柔道と同じよ。力が抜けたところを狙って倒しただけ」
さっきまでの涙はどこへやら。
苗木を見下す霧切は表にこそ顕著に表しはしないが、勝負に勝った子供のようにはしゃいでいるように見えた。
-
- 37 : 2014/02/17(月) 13:10:03 :
- またしても名作の予感…。
時雨さんの作品は読んでると本当に時間を忘れます!
-
- 38 : 2014/02/17(月) 13:15:54 :
- >>37
うわもう…自分にはもったいないお言葉ですありがとうございます本当に(震え声)
-
- 39 : 2014/02/17(月) 18:09:31 :
- が ん ば れ
-
- 40 : 2014/02/17(月) 18:10:37 :
- が ん ば れ
-
- 42 : 2014/02/18(火) 21:17:46 :
- 霧切「何よ。自分だってこんなに濡れてるクセに」ギュッ
苗木「つあっ…!痛いよ響子さん!!」
霧切は仕返しの意を込めて、とろとろとカウパーが漏れ出している苗木のソレを握る。
霧切の両手は爛れ、潤いのないカサカサとした感触だ。
苗木「~~~~~っ!」ビクッ
ただそれ故、彼女の手コキは自慰の時とは全く違う刺激を感じる。
擦れる度にこそばゆく、それが堪らなく気持ちいい。
苗木「ふわっ……!!」
弄られて1分もしないうちに苗木はイってしまった。
霧切「早漏ね。挿れるまでイかせてあげないつもりだったのに」
苗木「…だって…ハァ、結構溜まってたし……」
精液まみれで勝ち誇る霧切にぶつくさと言い訳をすれば「ほら、やっぱり生意気」と反論される。
それがどこか可笑しくて
苗木「あははっ……」
霧切「何よ…ふふっ」
2人はお互いつられて笑い合う。
苗木「…ふぅ」
散々笑った。前戯も終わった。
顔を見合わせる。やるべき事は言わずとも分かっている。
霧切「誠君…来て」
すらりと綺麗な脚を広げて、霧切が誘う。
-
- 43 : 2014/02/18(火) 21:49:52 :
ぬぷっ…ちゅ
霧切「はっ…あああ!」
苗木「き、響子さんっ、入ったよ…!」
苗木(ううぁ…締め付けがすごいっ)
初めてだから分からないが、これぐらいが普通なんだろうか。
苗木「い、痛くない?」
霧切「痛いわよ…でも」
霧切「やっとあなたと繋がれた…。その悦びの方が上かしら」
激痛を必死に堪えながら霧切が答えてくれた。…それが嬉しくて、苗木の頬がへにゃりと緩む。
苗木「動かす…ね?」
そう尋ねると、今度は返事がなかった。
霧切「………………」コクコク
無言で目尻に涙を浮かべ、首を縦に何度も振る。
そして消え入りそうな声で
霧切「…早…く……」ポソッ
とてもあの霧切とは思えないぐらいの、とろけるようなおねだり。
苗木(ああ……)
苗木の体から力が抜ける。
プツン───と何かが千切れたような音が脳にこだました。
-
- 44 : 2014/02/19(水) 00:46:01 :
霧切「あんっ、やっ…いたっい…!!」
霧切が痛いと啼いても決して止めない。
苗木「はぁっ、響子さんのナカ…くうぅっ!気持ちいいよ…!!」
ただただ欲求を満たすために、渦巻くムラムラをぶちまけたいがために腰を打ちつけ、ピストンを続ける。
そもそも痛いのは当たり前だ。処女なんだから。
…ツンと鼻につく鉄の匂いがその証拠だ。
などと誰も求めてない弁解を苗木は勝手にしていた。
霧切「くふっ、あ、ふっ……んんっ…!!」ビクビク
霧切(激しい…壊れそうっ……)
薬のせいか、そもそも苗木にサディストの気があったのか。
自らの内側を弄る苗木の肉棒はとにかく熱くて痛い。ギュッとシーツを握り、唇を噛んで耐えている。
苗木「はぁ…響子さん…。は…ん…」
それなのに向こうは貪るようにキスを求めてくる。正直苦しい。
霧切「誠く…んっ、んん…!はっ……」
だけど、それ以上に自分がそれを求めている。
もっともっと突き上げて、溺れさせて欲しいと願っている。
-
- 45 : 2014/02/21(金) 22:19:16 :
ぬぷっぐちゅ、ぬぷっぐちゅっ
激しく、ただ高みを目指して腰を動かす。
苗木「あっぐ…!響子さ…イきそ……!!」
霧切「私…も!!」
「一緒にイこう」なんてベタなセリフを言うヒマなんてなかった。
二人は同時に絶頂を迎える。
苗木「はぁ…はぁ……」
じゅぼっと音を立てて、苗木は自分自身を引き抜く。
精液はとめどめなく溢れ、ナカを満たしていく。
霧切「はうっ!!…う…ふうぅ……!」ビクンッ
不意打ちの快楽に身をのぞける霧切。腰砕けになってガクガクと震え続ける彼女をそっと撫で
苗木「最高だったよ」チュッ
軽く頬にキスをした。
-
- 46 : 2014/02/22(土) 15:46:38 :
事後の後始末として汚れたシーツを取り替え、一緒に備え付けのシャワーで体を流す。
やたら用意が良いので「多分初めからこうする予定だったんだろうなぁ…」と苗木は思ったが、取りあえずそこには触れないで大人しくしていた。
霧切「そうだわ。プレゼント」
苗木「忘れてたの!?ボクがここに来たのそのためじゃん!!」
思いっきりツッコミを入れれば「悪かったわね」と不機嫌な顔をしながらリボンが巻かれた小さな箱を手渡す。
受け取ると少し重い。大きさの割に密度があるものなんだろうか。
苗木「開けてもいい?」
霧切「もちろん」
丁寧に包装をはがし、蓋を開けると
苗木「わあ、キレイ……」
柔らかな布に包まれた手のひらサイズの宝石の塊───タンブル。
宝石は綺麗な薄紫色で吸い込まれそうになる。
その正体はすぐに思い当たった。
苗木「アメジスト…だよね」
2月の誕生石であるアメジスト。光に透かすと輝きが拡散して眩しい。
苗木(響子さん色だ……)
その様子にうっとりと見惚れる。
霧切「アメジスト。別名【愛の守護石】…高ぶった心を落ち着ける効果があるそうよ」
苗木「!!」
霧切「誠君意外にもがっついてくるから…それで少しは収まるといいわね」
苗木「もう…あはっ!…ありがとう、響子さん」ニコッ
霧切「どういたしまして」
-
- 47 : 2014/02/24(月) 22:14:18 :
- 苗木「えへへ。はあ、幸せだな~」
枕に顔をうずめ、言葉通り幸せそうに苗木は頬を緩ませる。
霧切「そうね。私もよ」
くたびれた彼の髪を撫でると、何だかくすぐったそうにピョコピョコ揺れた。
苗木「何だか信じられないや。こんなボクが霧切さんと結ばれたなんて」
霧切「呼び方」
苗木「ゴメンゴメン。響子さんと結ばれた…だね」
霧切「………………」
苗木「…響子さん?」
霧切「いえ、ごめんなさい。少し考え事をしていただけ」
自分は幸せだ。
あの人1人置いて…自分は幸せになった。
苗木の真っ直ぐさとあの人はよく重なる。
だからこそ、最初は信用するのが怖かった。
裏切られるのが…怖かった。
『キミを責めたりなんてしないよ。ボク達は仲間なんだから』
彼と接するうちに、凍った心が解ける。
…そんな感覚が霧切にとって、安らかで些細で慎ましい幸せだった。
-
- 48 : 2014/02/24(月) 22:31:46 :
霧切「ねえ誠君。お願いがあるの」
苗木「何?」
霧切は苗木にぴたりとすり寄る。ピクッと苗木の肩が跳ねた。
霧切「これからも…あなたをこうやって感じさせて。私の傍に居て」
苗木「…もう響子さん!」
真っ赤な顔で声を張り上げて、苗木は霧切を押し倒す。
霧切「えっ?」
苗木「そ、そういう無自覚なセリフ…ボク以外に言っちゃダメだよ?そ、それって…いつでも襲ってオッケーって意味に聞こえちゃうから……」ボソッ
霧切「…誠君って淫乱よね」
苗木「だって響子さんあざといし誘ってくるし…!っていうかキミだってボクのこと言えないよ!」
上ずった声で反論しながら顔を覆う苗木。
その様子にクスリと微笑み、霧切は苗木のネクタイを引っ張った。
霧切「ここまでしておいて何もしないつもり?」
苗木「ほらそういうのだってば!」
ギャンギャンと吠えながらも霧切の肩を掴む。そのまま唇を塞ぐ。
苗木「…今日はお終い。もし続きがしたいならまた明日ね」
口元を拭いながら涙の溜まったジト目で言う彼が妙に可笑しくて
霧切「こちらこそよろしくお願いするわ」クスクス
苗木「~~~~~~っ!!///」ブンブン
苗木は言葉に詰まってただ滅茶苦茶に首を振っていた。
-
- 49 : 2014/02/26(水) 00:42:14 :
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
苗木「ん…ふぁ……」
あれから色々…ふざけ合ったり、冗談を言ったり、ときにふと真面目に愛を語らったり
気がつくと夜が来て、2人は寄り添って眠った。
苗木「今…8時か……。8時!?」
時刻は午前8時15分
今日はまとめた書類を本部に提出しないといけない。それに監視役であるウサミからの経過報告の記録もすっかり忘れていた。(ちなみに本部にはあと10分で着かないと遅刻になってしまう)
苗木「響子さん起きて!!」ユサユサ
彼女が朝に弱いことは知っているので、取りあえず強めに揺さぶる。
霧切「ん…おはよう、誠君」
苗木「おはよう、響子さん」
寝ぼけた霧切の声。
そして寝覚めのキス。
苗木(急いでるんだけどなぁ……)
そうは思えど、甘えるように声を漏らす彼女を突き放す気にはなれない。
苗木(まあ、どうせ遅刻だしいいか)
苗木も舌を絡ませ、彼女を存分に味わう。
-
- 50 : 2014/02/26(水) 23:27:35 :
それから着替えをさっさと済ませてリビングのドアを開く。
そこは焦る苗木とは対照的な、柔らかいヴァイオリンの音が溢れていた。
霧切「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番 ヘ長調『春』…ね」
苗木「おはよう十神クン、遅れちゃってゴメン!」
十神「全くだ。待たされる俺の身にもなれ」
弾いていたヴァイオリンを降ろすと、十神は憮然とした表情で苗木達を顧みる。
苗木「先に行ってても良かったのに…もしかして待っててくれたの?」
十神「勘違いするな。もう今日は向こうに行かなくても良くなったからな」
苗木「えっ?」
きょとんとする苗木に十神は紙の束を手渡す。
十神「貴様のPCでデータを漁って本部に送っておいた。電子署名もあるし問題ない。…向こうからもそれでいいと連絡があった」
苗木「わあ…!ありがとう十神クン」
十神「貴様の礼は聞き飽きた…。次は無いと思えよ」
霧切「ふふっ」
十神「何が可笑しい」
霧切「だってそのやり取り、5回は聞いた覚えがあるわ」
苗木「えっ、そんなに!?」
十神「苗木……」ギロッ
苗木「十神クン本当にゴメン!でも毎回毎回ありがとう!」
苗木は苦笑いを浮かべて、取りつくろうように早口でまくし立てた。
-
- 51 : 2014/02/26(水) 23:28:53 :
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
3人で食卓を囲む。
十神「フン」
十神はさっきからツンとすましていて目も合わせてくれなかった。
霧切「ねえ誠君」
苗木「何?響子さ……」
霧切「あむ」
苗木「んっ!?///」モゴモゴ
舌が口の中を掻き回し、食べていたパンケーキをさらわれた。
苗木「き、響子さん……///」
霧切「美味しそうだったから」ペロッ
苗木「普通に欲しいって言いなよ!」
霧切「じゃあ…欲しいわ。あなたごと」ギュウ
苗木「えええっ!?きょ、響子さん!!///」
十神「いい加減にしろ」イライラ
霧切「羨ましいの?」
十神「貴様は本当に癪に障る女だ……」
買ったばかりのオモチャを自慢するような霧切と、それにぶつくさと嫌味を言うような十神。
苗木「ちょっと2人とも、ケンカしちゃダメだよ!?」
2人を釘付けにするオモチャのような彼は、慌てて声を張り上げる。
苗木「もう…あははっ!」
どうしようもなく幸せなこの時間。
誕生日の忘却も、案外この幸せにアクセントを付けてくれる幸運だったのかもしれない。
これは【超高校級の希望】と呼ばれる彼の、些細な幸せのひとかけら。
ーENDー
-
- 52 : 2014/02/26(水) 23:32:39 :
- はい>>1死ねと。苗木クンの誕生日オーバーどころの話じゃねえだろと。あと、エロ下手すぎるだろと。…はいその通りですスイマセンでした(土下座)
でも苗木クン愛してるよ!本っっっ当にスイマセンでした!
-
- 53 : 2014/02/27(木) 18:43:49 :
- 乙!面白かった
-
- 54 : 2014/02/28(金) 02:05:24 :
- こういう日の一遍てええなあ
-
- 55 : 2014/03/10(月) 23:05:23 :
- 乙です!
とても楽しく読ませていただきました!
-
- 56 : 2014/03/15(土) 01:25:44 :
- 乙です。
時雨さんの作品凄く好きです!
-
- 57 : 2014/08/02(土) 20:05:07 :
- イイハナシダナー
-
- 58 : 2014/09/12(金) 22:43:31 :
- すごくよかったです
- 著者情報
- 「ダンガンロンパ 」カテゴリの最新記事
- 「ダンガンロンパ 」SSの交流広場
- 【sn公式】ダンガンロンパ交流広場