もしもシンデレラが行ったのが舞踏会じゃなく武闘会だったら
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- 1 : 2019/08/24(土) 21:00:48 :
- これは、ifの世界線。
むかしむかし、あるところにシンデレラと呼ばれる、召使いの娘がいました。
シンデレラは、3人の意地悪な姉妹にいつも虐められていました。
「シンデレラ、髪を梳かしてちょうだい」
「はい、只今」
「シンデレラ、なにグズグズしてるの。私の服の手入れをさっさとなさい」
毎日毎日、こんな具合でこき使われました。女の子だからって、力仕事をさせられないなんてこともありません。
重い荷物運びや、毎日の掃除、洗濯、皿洗い……シンデレラは姉妹たちにいじめられ、涙で袖を濡らしながらも、しっかりこなしました。
働き始めた頃は、重い荷物を運ぶことは大変な苦労でした。手のひらにいくつもできたマメを潰しながらも、持ち上げては1歩進んで降ろし、持ち上げて進んで降ろし、ようやっとの思いで運び終え、また次の荷物を運ぶのです。
不幸中の幸いで、シンデレラの雇われている家は、端くれではありますが貴族の一家でありました。なのでシンデレラは、毎日の食事はしっかり摂ることができました。普段の食事はパンやサラダ、スープなど。週末の休日には肉がつくこともありました。もちろん調理するのは彼女ですが。
シンデレラは好き嫌いしません。している余裕もありません。毎日しっかり食べないと、仕事に影響が出て、また姉妹たちにいじめられてしまいます。
シンデレラにとって、姉妹達の好き嫌いが多いのは正直好都合でした。特に、一番上の姉は肉が嫌いで必ず口をつけません。でも食材の仕入れは毎週量が決まっていて、必ず余ります。シンデレラはそういう時、いつも余り物を食べてお腹を満たしました。
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- 2 : 2019/08/24(土) 21:03:03 :
- ちょwwwww
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- 3 : 2019/08/24(土) 21:03:07 :
- 最高
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- 4 : 2019/08/24(土) 21:12:13 :
- 毎日の食事と、様々な家事、雑務による身体への負荷。
シンデレラが召使いとして雇われて3年経つ頃には、彼女の肉体は生まれ変わっていました。
いまや3年前のヒョロっちい少女の面影はありません。男性ボディビルダーもかくや、というほどの圧倒的肉体美。圧倒的筋肉量。圧倒。圧倒。
重い荷物が持てなかった彼女はいずこへか、逞しく山を作る上腕二頭筋。むかしマメを潰しながら運んだ荷物も、今では片手に3つずつ、計6つを一気に運べるようになりました。
どの部位の筋肉を見ても完璧な仕上がりです。全ての筋肉について説明するのはいくら時間があっても足りないので割愛です。
最近ではあまり姉妹もシンデレラをいじめなくなりました。むしろシンデレラに怯えているようにも見えますが、気にしません。シンデレラは毎日仕事をする。それだけです。
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ある日のこと、姉妹の一番上の……肉嫌いの彼女が言いました。
「シンデレラ、私達は今晩、お城である舞踏会に行ってくるわ。でもシンデレラは留守番しててちょうだい」
「はい、承知致しました」
シンデレラはブトウカイが何なのか知りません。そんな世界とは無縁の世界でずっと生きてきたのですから、無理もないでしょう。
彼女は内心で、ブトウカイというものがどんなものなんだろうと興味を感じつつも、姉妹たちのドレスの世話や、靴磨きなどをせっせとやって、姉妹がはしゃいでお城に向かうのを見送りました。
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- 5 : 2019/08/24(土) 21:29:15 :
- 家に1人取り残されたシンデレラは、残った家事やら雑務を終わらせて、ぼんやりと夜空を見上げました。
「お城でブトウカイかあ……」
この国の王子はとてもイケメンだといいます。姉妹が話しているのを聞いて、なんとなくは知っていました。
でもシンデレラにとっては、もはや仕方の無いことです。ブトウカイには行けないし、ブトウカイに行くための衣装も靴もありません。ただ星を見上げて姉妹の帰りを待つのみです。
「私も、ブトウカイに行ってみたかったな…」
その時でした。
急に部屋の中が光に包まれました。眩しくてシンデレラが目を思わず閉じて、ゆっくりと開けると……
そこには1人のやせ細った老婆が、今にも崩れ落ちそうな様子で立っていました。
「もし…屈強なお嬢さん。もしよければ、わしになにか食べ物を恵んではくれませんか……」
老婆はそう言います。シンデレラは老婆を椅子に座らせ、大急ぎで普段の彼女が食べている食事を作って、老婆に与えました。つまり、パンとスープとサラダと、余っていたステーキ肉を3枚ほど。お肉は焼くのに時間かかっちゃいました。
老婆はパンとスープとサラダを食べて、その後出てきたステーキ肉を吐きそうになりながら食べました。完食です。
するとどうしたことでしょう。老婆の身体がみるみる伸びて、眩い光が再び部屋を照らします。その光が消えた時、さっきまでいた老婆の姿は消え、真っ黒い服に身を包んだ美しい女性が立っているではありませんか。
「たくさんの食べ物をありがとう。お嬢さん。お礼にあなたを武闘会へ連れて行ってあげましょう」
美しい女性はそう言いました。
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- 6 : 2019/08/24(土) 21:47:22 :
- 「ブトウカイへ?本当ですか?」
シンデレラは女性の言葉に耳を疑いました。なんと、私がブトウカイへ行けるのでしょうか。姉妹たちがあんなに楽しみにしていたブトウカイ、王子様もいらっしゃるかもしれないブトウカイです。
美しい女性はコクリと頷きます。そしてブトウカイへ行くための、いくつかの材料をシンデレラに集めさせました。材料はこちら。
・カボチャ
・ネズミを5匹
・プロテイン
・プロテイン
かぼちゃとプロテインは、当家の貯蔵庫にたくさんありました。ネズミも掃除中にけっこう見つかるので問題ありません。材料はすぐ揃いました。
女性はシンデレラに材料を並べさせました。そして
「ちちんぷいぷいのぷいっ」
と叫ぶと、再び目の前が光って……
カボチャは黄金の馬車に、ネズミ達は美しい白馬に変わったではありませんか。
プロテインはどこにいったのか分かりませんが、身体の内側から熱い力が湧いてくるのを感じます。
黒服の魔女はシンデレラにこう告げました。
「この馬車と馬で、あなたの行きたがっていた武闘会に行ってらっしゃい。きっと素敵な夜になるはずよ」
「でも忘れないで。あなたのうちに宿る力…プロテインパワーは、今晩の12時きっかりに効果が切れてしまうの」
「それじゃあ気をつけていってらっしゃい。服はいいのを用意してあげたから」
そう言われたシンデレラは、いつの間にか服が変わっているのに気づきました。とても動きやすく、筋肉の収縮にも耐えてくれる丈夫な素材のようです。
赤いコスチュームを身にまとったシンデレラ。イメージ的には、吉田〇保里。
「ありがとう、魔法使いさん。本当にありがとう」
私もブトウカイへ行けるんだ!嬉しくてたまらないシンデレラは、魔女に感謝を告げて、馬車に乗り込みました。
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- 7 : 2019/08/24(土) 23:02:55 :
- シンデレラが馬車に乗り込むと、馬車は勝手に進み始めました。シンデレラにとって夜の街の煌めきはとても新鮮で、絢爛に彩られた家々を楽しく見ているうち、いつの間にやらお城の前に着いたようでした。
シンデレラは馬車から降りて、お城の門を見上げます。鋼鉄製の城門、重さはゆうに100kgを越えるであろう門を、事無げに開け放ち、彼女は城へと足を踏み入れました。
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大ホール。城の中でも、イベント事をやったりするのに適している、広い場所。
この場所で、今、世紀に残る大勝負が始まろうとしていました。
屈強な男たちによる、熱い、暑い、
筋肉の、力の、拳の応酬が、
繰り広げられる。
漢の、トーナメント戦。
そこに集まる男たちは燃えていました。
この時のために鍛えた己の筋肉。ボディ。全てをこの日のために捧げた男たちが、異常なまでの熱気に包まれる……
そこへ、シンデレラが足を踏み入れたのでした。
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- 8 : 2019/08/24(土) 23:14:58 :
- 男たちは、ホールに入ってきた彼女を見てすぐに気づきます。
只者ではない、と。
そもそも、ここに入ってくるためにはあの城門を開けなければなりません。すなわち、城門は最初のふるいなのです。あの城門を開けられないものは、この武闘会の参加権すらない。このステージに立つことすら許されない。
裏を返せば、ここに彼女が立っている……それだけで、力の証明になるのです。
その上、彼らはひしひしとその筋肉で感じ取っています。
ホールに入ってきた彼女の発する、異様な雰囲気。
いわば、これは……
「殺気」
男たちの表情がいっせいに固くなったのも知らず、シンデレラはブトウカイに来れたことに大喜びです。想像してたのとは少し違いますが、別に気にしません。
姉妹たちに見つかるとまずいと思い姿を探しましたが、どうやらいないようです。というか女性自体たった1人ですが。やっぱり彼女、気にしてません。
カンカンカンカン!!
唐突にゴングが鳴らされます。
「己の筋肉に自信のある男ども、とお嬢さん!!」
「準備はいいかあああああああ!!!」
男たちの叫び声。咆哮。とりあえずシンデレラも1発気合い入れに叫んどきました。ドスの効いた低い声が出ました。
現在21時20分。いよいよ、『武闘会』の始まりです。
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- 9 : 2019/08/25(日) 00:47:25 :
- ダンベル何キロこのシンデレラは持てるんだろ?
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- 10 : 2019/08/25(日) 00:48:15 :
- とにかく期待!頑張ってください!
さい…さい…はい!サイドチェストー!!!
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- 11 : 2019/08/25(日) 22:05:53 :
- さきほど会場の男たちに掛け声を投じた司会の男が、簡単にルール説明をしました。
・32人のトーナメント戦。人数はどうやらちょうどのようでした。
・1VS1、完全タイマン。どちらかが倒れるまで試合は続く。
・武器は己の肉体のみ。
・ルール違反者は即刻退場。
ルールは以上。
シンデレラはなんと1戦目から出番です。ホールの中央にたった今、大きいリングが設置されました。意気揚々とリング内に進むシンデレラ。
対戦相手の男は内心恐怖です。目の前の彼女、その完璧なボディ。筋肉。圧倒的。
その上とてつもないオーラです。気を抜けば恐らく、怪我ではすまないでしょう。彼は呼吸を整え、シンデレラと向かい合います。
彼はこの日のために、この日、トップをとるためだけに、20年もの歳月を費やした男です。20年間の努力。その苦労。それを初戦で破られる訳にはいきません。彼の中に覚悟が芽生えます。
さあ舞台は整ったと言わんばかりに、リングの周りを囲む男たちが息を飲みます。
目の前で殺気をまとうシンデレラを打ち倒すため。
この20年の悲願、その最初の1歩を踏み出すため。
男は渾身の右ストレートを放ちました。
そして拳がシンデレラを捉え……
ずに、空を切りました。
外した、そう彼が気がついた時には
無慈悲なアッパーがボディを捉えていました。
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- 12 : 2019/08/25(日) 22:23:07 :
- 「な…に…が……」
そう言い残し、彼は沈みました。試合終了のゴングが鳴り響きます。
誤解のないように言いましょう。彼のストレートは完璧と言って良いものでした。目の前の女の顔面に向かって、自重を乗せて、猛スピードで打ち込んだ彼のストレート。ボクシング選手でもそうそう出すことができないであろうというほどの、完璧な一撃。
仮に避けられたとしても、左腕と右足をすぐに繰り出せるように練習してあります。相手がどう動いてもこちらが有利。そんなレベルの一撃です。
しかし今のシンデレラはもはや人間とは一線を画します。その速度は、全くもって彼の想定外でした。
シンデレラはギリギリで避けたのです。ストレートが鼻先に触れる直前。死の間際。
彼には、ストレートが彼女の顔を捉えたように見えたのです。しかし実際は、拳は虚しく空を切り、ストレートを右に捻って避けたシンデレラ、捻りを活かして右腕を彼の腹にぶち込みました。
その威力はまさに無慈悲。幾重ものマッスルに包まれる人体構造にまでその衝撃が届き、彼を再起不能にさせました。
「第1試合、勝者はシンデレラあああああああ!!!」
静まり返っていた会場が一気に興奮と熱狂のオンパレード。咆哮、歓声。
シンデレラは満足したようにリングから降りました。とりあえず彼女は優勝を狙うことに決めたようです。
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- 13 : 2019/08/25(日) 22:30:43 :
- 面白い
期待してます
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- 14 : 2019/08/27(火) 21:37:55 :
- さあ、初戦を無傷で勝ち上がったシンデレラ。快進撃は止まりません。
2回戦。スポーツジムに10年通いつめ、100mを7秒で走るほどの脚力を持つ男は、蹴りをお見舞しようとした瞬間にボディに蹴りを喰らいました。10年の努力は泡と帰しました。
3回戦。山奥に30年以上籠って岩を砕く修行をし続けてきた70は超えているであろう老人。しかしそのマッスルは若いボディビルダーを圧倒的に凌駕します。
彼の力の全てが拳に集まり、シンデレラを岩同然に砕こうとする強烈な突き。
シンデレラ、これをあっさりと片手で跳ね除け、もう片方でまたボディにアッパーを入れました。その場に倒れる老人。……死んだんじゃないかなこれ。
順調に勝ち上がるシンデレラ。彼女がリングに立つたびに、外野の男からは期待と畏怖を込めた歓声が沸き起こりました。
しかしシンデレラと同じくらい、外野が盛り上がる……そんな男が、実は1人いたのです。
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