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異世界での絆と匣の魔法

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  1. 1 : : 2019/08/05(月) 13:16:36
     私は所謂(いわゆる)「神の視点」と名乗ったら良いのでしょうか。いや、流石に不敬だと思いますね。ここは「三人称」と改め、物語を始めさせて(いただ)きます。


     この物語の主人公は、幼くして両親を喪っておりました。彼は齢八にして実父実母から与えられる愛情を、感じることは無くなったのです。そして正直に申し上げますと、彼以外に親族は全く居ませんでした。簡単に言えば、彼を引き取ってくれる親族は誰一人居ないのです。


     彼の名を御堂在間(ミドウアルマ)と言います。


     そのような孤独の彼を救済する者は、隣家の楸田(ヒサギダ)家でした。

  2. 2 : : 2019/08/05(月) 13:55:39
    なろうで投降すればいいのに
  3. 3 : : 2019/08/05(月) 13:59:27
     楸田家は彼を家族として、温かく歓迎してくれたのです。抑々(そもそも)、楸田家には彼の幼馴染みとして一人の少女が住んでいました。


     その少女は二人目の主人公、名を(キル)と言います。


     彼女も無論快諾し、在間の新たな生活が幕を開きました。新しい家族と共生し、ご飯を咀嚼(そしゃく)し、斬と遊び、彼女と就眠し、掃除を手伝い、血縁関係など無くとも彼等は家族のよう、いえ、正真正銘の家族でした。
     義父からだろうと義母からだろうと、そして幼馴染みからだろうと、彼は沢山の愛情を感じていました。


     ······さて。


     在間の両親が亡くなり、新しき家族を得た運命の日から、既に数年が、詳しく言えば八年が経過しておりました。


     楸田家一同は、毎年同日に御堂家を掃除しに行きます。その日とは、彼の両親が亡くなった日。
     在間含む楸田家がいざ御堂家に入ると、無論埃や塵など汚れが募り、呼吸するのも苦痛な状態なのです。


     在間は毎年の事ながら、清掃しながら過去を(しの)んでいました。今、両親が生きていたらどうなったのか、などと多大な空想を広げて。(かつて)耽溺(たんでき)していた玩具(おもちゃ)などが幾度となく出てき、彼は思いを反芻(はんすう)しておりました。


    閑話休題(かんわきゅうだい)、物語はその晩から始まっていたのです。

  4. 4 : : 2019/08/05(月) 14:00:56
    >>2 なろう......?
  5. 5 : : 2019/08/05(月) 14:55:29
     その晩は黒雲が月を覆い隠し、豪雨が降っていました。雨滴が楸田家の屋根を伝って下へ下へと落ちていきます。雷鳴が轟々と鳴り、一瞬の稲光が辺りを照らすこともありました。


    「······神の涙、かぁ」


     在間は妙に感心した声で呟きました。その声に斬も反応します。


    「これが神の涙だったら、神様はどれだけ涙脆いの? 涙腺弱すぎる」


     黒髪を(なび)かせ、笑いを(こぼ)した彼女に、彼も笑顔を向けました。


    「明日、学校か······」


    「ねえ、そう言えば······いや、やっぱり良いや」


     ふと斬が思い出したように呟きます。窓の外の黒々とした景色を見ながら。


    「どうしたの?」


    「言わないよ。だって、悲しむでしょ」


     彼女は忌憚していましたが、彼は首を横に振りました。彼は既に覚悟が出来ていたのです。いいえ、もしかしたら既に彼女が言うことを理解していたのかもしれません。


    「······確か、在間が楸田家(ここ)に来たのも───こんな雨じゃなかった?」


     頷く在間の顔を恐る恐る斬は凝視します。その顔には微笑がありましたが、哀愁の笑みでした。


    「まあ、僕も僕で駄目なんだ。過去に囚われないようにしないとね」





     それから数時間が経過し、就寝準備が完了していました。部屋には二枚の布団が敷かれ、それぞれ床に就きます。


    「それじゃあ、お休み」


     在間が布団を被って目を瞑ると、何やらもごもごと音がします。


    「······あれ、斬?」


    「······こうやって一緒に寝るって、何年振りかな」


     彼の背後でくっつきながら、小さな声で呟きました。


    「ごめん、勝手に布団に入って───(まず)かった?」


     一時唖然としていた彼でしたが、(やが)て屈託の無い笑顔を見せました。


    「良いよ、うん───お休み」


    「お休み」





     彼等はこの先、何が起こるかなど微塵も思ってなどおりません。ただしかし共に寝たのは正解だったようです。


     (いささ)か話が長くなりましたが、彼等の生い立ちと、「そこ」に行くまでの顛末(てんまつ)です。


     そして物語(はなし)は始まります。最強でも、覇者でもない、決して強くはない少年少女と、まだ見ぬ仲間の冒険譚が───


  6. 6 : : 2019/08/05(月) 15:16:40
    なろう知らんのか?
  7. 7 : : 2019/08/05(月) 17:06:57
    >>6 '`ィ(´∀`∩
       でも説明はしなくて結構です。レス消費したくないので......
  8. 21 : : 2019/08/05(月) 19:37:30
    「·······ねぇ」

     ・・・
     アルマは体を揺らされます。微睡(まどろ)んでいた彼の目を覚ましたのは、そこに蔓延(はびこ)る物でした。


    ───草木が繁茂し、(そよ)風が吹く。心地好い程の静穏を感じる、和やかな草原。
     そして、その草の上に敷かれた一枚の布団。


    「どういう······こと」

     ・・
     キルに尋ねますが、彼女も首を横に振るだけでありました。


    「私も、目が覚めたら───こんな、変な所に」


    「······ねぇ、僕達、どうするべきなの?」


     アルマが困惑を表しながら尋ねます。彼等は気付いておりませんが、もしこの場に居たのがどちらか一人であったなら、ここまでの落ち着きは無かったことでしょう。両者共にこの謎の場へ連れてこられた事は僥倖(ぎょうこう)としか言いようがありません。


    「······でも、このままボーッとしている訳にはいかないよね」


    「······ここは何処なんだろう。いや抑々(そもそも)朝目覚めたらこんな場所に居たって事が可笑しいんだけど。それは良いとして、僕等の家の近所にこんな草原あったかな?」


    「無いよ、絶対」


    「······」


    「······」


     暫しの沈黙が空間を支配します。


     刹那。


    「おおおぉぉぉぉいっ!!」


     そんな沈黙も気にせず、快活とした声が響き渡りました。


    「ん······? あれは僕等に向かって言っているのかな」


    「多分、そうじゃない?」


    「おおぉぉぉいっ! 聞こえてるかぁぁぁぁぁっ!?」


     再度あの声が聞こえます。間違いなくアルマとキルに向かって叫んでいる声でした。


    「聞、こ、え、て、まああすっ!!」


     返事に大声で応えてみせたアルマに、一人の男がやって来ました。しかし彼等はその威容さに驚きます。


     近付いてきたのは百八十センチはあるであろう、巨大な体躯を持つ大男。そして、目は青く、髪色はやや金色。


    「お前ら、さっさとここ離れちまえ!」


     不思議な事に、日本語が通じるのです。


    「あの、ここは何処なんですか?」


     アルマが尋ねますが、男は首を傾げて言いました。


    「何処って······お前ら知ってて入ったんじゃねぇのか?」


    「いえ、目が覚めたらここに居て」


     男は二人を隅から隅まで見渡します。すると再び首を傾げ、考えながら言いました。


    「確かにお前ら、不思議な目ェしてるなぁ。黒髪に黒目なんて、俺ゃ見たことねぇぞ」


    「······あの、貴方は何処の国の方ですか?」


     男は訝しげにキルを見詰め、言いました。


    「······んん? 俺は正真正銘、この『ガイア王国』生まれだ」

  9. 22 : : 2019/08/05(月) 20:27:00
    「······ガイア、王国?」


     おう、と応える男を余所に、アルマは只管(ひたすら)考え続けておりました。


    (グレートブリテン及び北アイルランド連合王国······要するにイギリスだけど、代表的な王国はそれだ。ガイア王国なんて聞いたことがない。直訳で大地王国じゃないか)


    「······ってお前ら、何だその格好はぁ?」


    「······あっ」


     キルが思わず声を挙げました。思えば、彼等はずっとパジャマ姿で、裸足の状態なのです。服はこれしかありませんでしたし、何より靴が無いのは辛いです。


    ───お前らって、何か修行でもしてたんじゃねぇのかぁ?


     男がそう言おうと思って口を開きます。


     刹那、黒い影が彼等の目前に現れました。


    「っ!? おいっ、離れろっ!!」


     アルマとキルは裸足にも(かかわ)らず飛び退きました。そうさせた理由は、目の前の闖入者共にありました。


    「グゥゥゥゥゥ······」


     その獣逹は鋭利な牙を所持しています。身長はアルマやキル逹と然程変わってはいませんが、敵意を露にし、今にもその牙で襲撃して来そうな視線です。
     それが二匹。


    「おいお前ら、気ぃ付けろよ。こいつに噛まれちまうと、あっと言う間にあの世行きさ! ······って、本当に噛まれんなよ!? そんな装備で!」


     あれっ、と、アルマは疑問に思いました。


    ───今、装備って言わなかったっけ?


    「ねぇキル」


    「アルマ?」


     恐怖諸々を混濁している彼女の瞳を、アルマは見詰めます。そして若干怯えを含ませながら告げました。


    「変な事を嘯くけど、よく聴いていてね。僕等が今居るこの世界は、地球じゃない。少なくとも、僕は思う。何も確信や証拠も存在せず、根も葉も無いことなんだけど、そんな気がするんだ」

  10. 23 : : 2019/08/13(火) 18:16:14
     二匹の獰猛な視線を向けてくる獣達は、目の前の男目掛け襲い掛かります。


    「うおおおおおっ!! 【風斬波】!」


     男が片手に握る大剣に、風が徐々に(まと)っていき、剣の周囲の物は次々と吹き飛ばされていきます。
     男は片手から両手に持ち替え、全力で横に凪ぎ払いました。


     獣達は大剣が纏っていた風に巻き込まれ、竜巻のように回転しながら飛ばされ、最終的には姿すら見えぬ距離まで飛んでいきました。


    「うわあぁ······!」


     思わずアルマが感嘆の声を挙げます。キルも声は挙げていませんでしたが、驚愕の視線を宿していました。


    「えっ、い、今のは······一体?」


     当然の質問でしたが、男は再び変な物を見るような視線を彼等に浴びせます。しかし質問には明瞭に答えてくれました。


    「今のは『魔法』だな。魔法を剣に纏わせただけだ」


     当然、常識だろと言った表情をしていた男でしたが、無論アルマとキルの顔には唖然、困惑といった表情が見られました。

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