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独白 〜ペトラ・ラル〜
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- 1 : 2019/06/25(火) 00:23:01 :
- あの人に全てを捧げるつもりだった
誰より厳しく、誰より優しいあの人について行きたいと思った
公に捧げたはずの心臓も、いつしかただあの人を追うために
人類の勝利
大前提としてそれは常に心にあった
兵士として、変革を求める一翼として
命さえ賭して戦う覚悟も決めていた
それでもあの人の強さ
“人類最強”という肩書きではない本当の強さを知った時からずっと、その背を追い続けてきた
数えきれないほどの仲間を失い
理解されない理想に石を投げられ
時として共に進む仲間からも疑心や憤りをぶつけられ
一人、また一人と影が消えるたび、あなたに纒わり付く闇が濃く深くなっていく
自由を求めるほど枷に囚われ、どす黒く渦巻く呪縛に縛られる
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- 2 : 2019/06/25(火) 18:11:21 :
- それなのに何故ー
影覆うたびにあなたのヒカリは強くなる
雁字搦めにされ身動きも取れなくなるような激情の中、もっと速く、もっと力強く、あなたは先へと進んでいく
誰一人として置いていきはしない
全てを背負い、立ち上がり、またたくさんの影に囚われたままそれでも進む。飛ぶ
その背で羽ばたく羽は白か黒か…
強さ故に全てを背負ったまま飛ぶあなたの枷にはなりたくないから
せめてあなたの翼になりたい
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- 3 : 2019/06/25(火) 18:12:08 :
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- 4 : 2019/06/25(火) 18:12:44 :
- そんな大それた夢物語
結局私はあなたの重りになってしまった
どうして強くあれなかったんだろう
せめて最期くらい、あなたの瞳に映る私は勇敢な兵士でありたかった
もしかしたらあなたの中の私は他の兵士たちと同じように、人類の希望のために命を賭した誉れ高き者なのかもしれない
けれど現実はかけ離れ、恐怖に負けて逃げることすらままならなかった
悔いばかりが残る最期だったけれど、その瞬間をあなたに見られなかったことだけは幸運だと思ってしまうんです
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- 5 : 2019/06/25(火) 22:32:02 :
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こんな所であなたに会いたくはなかった
かつては私も今のあなたと同じ側
そこから見た並ぶ石碑はどれほど気高く見えたでしょう
けれどこちら側から見るそれの、なんと無意味で空虚なことか
ただ生者の弔いだけを纏った石を見下ろして
やはり涙は見せないのですね
あなたの傍で戦い、あなたとともに何度も石碑を見下ろした過去
その目に哀傷の雫を見た事は一度もなかった
もしも私たちが逝ったなら、兵長は泣いてくれるだろうか
なんて今思えばゾッとするようなあまりに幼い戯言を、胸中にぽつりと浮かべたこともあった
けれど今ここであなたを見て心から安堵する
いつもよりほんの少し細められた目
いつもよりほんの少し深く刻まれた皺
いつもよりほんの少し弱々しい息遣い
それらを見るだけで、ありもしない心臓が押し潰されそうになる
期待に応えられず無残な最期を迎え、ただただ損害だけを残して逝ってしまった身勝手であなたを穢したくはない
もしも涙なんて見せられたなら
私はきっと、自分自身を引き裂いて投げ捨てたくなるから
血と泥に塗れた私に、あなたの涙は綺麗すぎるから
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- 6 : 2019/06/25(火) 22:42:23 :
- 手向けられた花束がやけに鮮麗に輝いて、受け止めた石碑の褪せた色がそれを引き立てる
けれどその花が石碑に生かされることはない
死者など所詮そんなもの
もう私たちには何も無い
終わった者にできることなどないのです
ごめんなさい
ごめんなさい
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- 7 : 2019/06/25(火) 22:42:39 :
- 〜END〜
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- 8 : 2019/06/26(水) 06:21:40 :
- 面白い過ぎぃ!
地の文が上手すぎる
次回作にも期待
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- 9 : 2019/06/26(水) 20:22:28 :
- >>8
そういっていただけて嬉しいです。
次作がいつになるかは未定ですが、期待に応えられるよう頑張ります。
閲覧ありがとうございました!
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