ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

この作品は執筆を終了しています。

ジャン「殺った」

    • Good
    • 1

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2019/05/31(金) 00:34:55
    ジャン「おらあああああぁっっっ!」

    ガキンッッッッ────

    エレン「・・・・。」

    ジャン「皮肉だよな、エレン。俺達はお前を追う調査兵でお前は俺らから追われる敵だ。あの時とは、逆の立場じゃねぇか、死に急ぎッッッッ────野郎ォォォォォッ!!!」

    ガキンッッッッ────

    エレン「やめとけ、無駄だよ、ジャン。お前らは俺の硬質化に傷一つ付けられない。」

    余裕しゃくしゃくじゃねえか、エレン。
    てめえに挑んでんのは俺だけじゃねえ。

    ミカサ「たぁぁぁぁぁっ!!!」

    ザクッッッッッ─────!


    エレン「────ッ!?」

    ミカサはエレンの巨人、「進撃の巨人」、だったか。奴のアキレス腱を深々と裂く。
    硬質化が間に合わない程のスピードで切り裂くには、ミカサの力が必要だと判断した兵長の策はハマりにハマった。

    ミカサ「ッ──。エレン、ごめんね。ごめんね。」

    ジャン「謝る必要なんかねえよ!!!あいつはお前を裏切ったんだぞ!!アニと祖国に帰るだの抜かしてよ!!!」

    ミカサ「エレンはあの女狐に洗脳されているだけ!!!!!私の姿を見れば、エレンは正気に戻る!!!」

    エレンの元へ駆け寄ろうとするミカサの肩を掴みこちらを向かせる。

    ジャン「いい加減目を醒ませよ、ミカサ!!!!俺達が知ってる死に急ぎ野郎はもういねえんだよ!!!あそこで伸びてるのはクソ野郎だ!!!エレンじゃねえよ!!!ミカサも見ただろ!?あの眼を見ただろ!!!」

    ミカサ「あなただって見てきたはず!!!何度だって私たちを救ってくれたエレンの姿を!!!なぜ信じてあげないの!?」

    リヴァイ「今は口喧嘩してる場合じゃねえぞ。あの巨人からエレンを引っ張り出してこい。」

    リヴァイ兵長は目線でミカサに合図を出す。
    しかし、ミカサはそれを拒否した。

    ミカサ「でき、ません・・・。」

    リヴァイ「あ?」

    ミカサ「家族を傷付ける事なんてできません!!!」

    ジャン「俺がやります。俺があいつを引きずり出してやりますよ。」

    なぁ、エレン。
    お前の事はバカだと思ってたけど、どっかで、心の、頭の片隅で、お前を信じてたんだよ。
    今回ばかりは違うんだよな?クソ野郎。
    お前は正真正銘、クソ野郎に成り下がったんだよな?

    ジャン「なぁッッッッ!?エレン!!!!!」


    ザクザクザクザクザクザクッッッ───
    ザクザクッッッッ──────
    ザクザクザクザク────────

    俺は膝をついて倒れるエレンのうなじを執拗に切り刻む。硬質化で刃がダメになっても構わずに切り刻もうとする。刃が砕け、音をたてて地面に落ちる。構うもんか。

    進撃の巨人(エレン)「オオオオオオオオオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

    ジャン「うぉぉぉぉぉおらぁぁぁぁぁっっっ!!!」

    ズシュッッッッッ─────
    ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ───

    最後の一太刀で巨人の中のエレンを目視できた。頭を掴み、巨人の中から引きずり出す。

    ブチッッッッッ────


    エレン「離せよ、ジャン。痛てぇ、だろうが。」

    ジャン「身体は痛んでも、心は痛まねえんだもんな?『進撃の巨人』。」

    ────────
    ─────
  2. 2 : : 2019/05/31(金) 00:52:14
    ───────
    ────


    あれは今から数年前の出来事だった。
    エレンは地下室に居た、いや、あったの方がただしいか・・・。なんにせよ、地下室のアニを、俺達から奪い去った。
    すぐさま俺達はエレンの説得に向かったが、エレンの眼は、いつもとは別人みたいだった。


    リヴァイ「てめぇ。自分が何をしてるかわかってるのか?」

    エレン「近付かないでください!!!」

    エレンはナイフで手のひらに傷をつける。
    「それ以上近付いてみろ。まとめて吹き飛ばしてやるぞ」、そういう意思表示だ。

    ミカサ「一体、どうしたの・・・?エレン・・・!不安なことがあるなら、私に言って!!!相談にのるから・・・!」

    エレン「近付くなって言ってんだろ!!!」

    エレンはミカサの足元にブレードを投げつける。
    ブレードは床に突き刺さる。あと少し距離が違っていればミカサの足を貫いていただろう。
    頭にきた。ミカサを傷つけやがって、この野郎・・・!

    ジャン「エレン、この野郎ッッッッ!」

    アルミン「ジャン!!!近付いちゃダメだ!!!」

    ジャン「あ!?なんでだよ!あの単細胞には一発かましてやらなきゃわかんねえんだよ!」

    アルミン「殺すつもりだ」

    ジャン「は・・・?」

    アルミン「自分の意思にそぐわない動きをすれば文字通り、僕らを「消し飛ばす」つもりだ。エレンとは長い付き合いだから、わかる・・・!」

    ジャン「っち・・・!」

    エレン「そうだ、下がれよ、ジャン。兵長も!!!近寄らないでください!!!」

    リヴァイ「クソガキが・・・。」

    エレン「そう、それでいい。それで。」

    ビュュュュ────

    エレンは水晶体のアニを奪い去った。律儀にも馬車まで盗んでやがったらしい。

    アルミン「エレン・・・。一体、何があったんだ・・・。」

    ──────
    ───





  3. 3 : : 2019/05/31(金) 01:11:26
    ───────
    ────


    リヴァイ「エレンは?」

    ハンジ「なにも喋る気は無いそうだ。」

    リヴァイ「レオンハートの水晶体はどうした?」

    ミカサ「あの女狐は確保しました。」

    リヴァイ「そうか、でかした。ハンジ、クソガキに会ってくる。ここは任せた。」

    ハンジ「了解。あ、リヴァイ?」

    リヴァイ「なんだ?」

    ハンジ「痛め付けちゃってかまわないよ。死なない程度にね。」

    リヴァイ「お前がそんな事言うなんて珍しいな。」

    ハンジ「許せないんだ。彼の裏切りによって、どれ程の人が傷ついたのか。わかってないエレンが許せない。」

    リヴァイ「・・・・。」

    ───────
    ─────
    ───



    リヴァイ「なんだ?その面は?あ?」

    ────バキッッッッ!

    エレン「ぐ────ッ!」

    腹に蹴りを入れ、髪を掴みあげる。


    リヴァイ「なぜいきなり裏切るような動きをした?話さなくてもいいが、お前の歯は全て折れて無くなるだろうな。」

    エレン「問題ないですよ。すぐに再生しますから。」

    リヴァイ「ほう、面白れぇ。いい度胸じゃねえか。」

    ───バキッッッッ!

    顔面を渾身の力で蹴り上げる。
    歯が数本宙に舞ったが、こいつから許可は得ているため、ありがたくサンドバッグにさせてもらう。

    数時間殴る蹴るの尋問を繰り返したが、なにも話そうとしない。意思はそれなりに固そうだ。

    リヴァイ「ッチ。なにも喋らねぇんなら蹴り損じゃねえかよ。」

    エレン「いつ、か・・・。気付く、時、が、くる。」

    リヴァイ「あ?」

    エレン「人類は気、付く事に、なる。自分は、囚、われて、いた、んだと。壁に、囚われていたんだ、と、気付く事に、なる。」

    リヴァイ「何を、言ってんだ?てめえは?」

    ──────
    ───






  4. 4 : : 2019/05/31(金) 17:19:57
    ──────
    ────


    ────カッッッッ

    ジャン「!!!!」

    ハンジ「今の閃光は・・・!」

    ありゃ、巨人化の閃光、か・・・?
    いや、待て、でも何でだ!?
    身体を損傷していれば、巨人化までに時間がかかるはずだ・・・。
    リヴァイ兵長はあいつを痛めつけていたはず、、、

    閃光が迸った方向から、リヴァイ兵長が飛んでくる

    ハンジ「リヴァイ!!!!エレンが巨人化したの?」

    リヴァイ「話は後だ!お前ら、逃げろ!!!エレンがこっちに向かってる!!!レオンハートの水晶体はどこに保管してる!?」

    ハンジ「コニー達が地下室へ運ぶ予定だったんだ。今はコニー達のところに。」

    リヴァイ「やつに水晶体の動向を悟られるな。ジャン、ミカサ!」

    ジャン「は、はい!」

    リヴァイ「お前らはコニー達の援護に向かえ。」

    ジャン「で、でも・・・」

    リヴァイ「いいから行け!!!!」

    ジャン「り、了解です!!!いくぞ、ミカサ!」

    ミカサ「エレン・・・・。本当に、裏切ったの、私たちの事・・・?」

    ミカサは目が虚ろなまま、明後日の方向を見つめている。
    ったく、しっかりしてくれ!!!兵長とお前は戦力なんだぞ!?

    ジャン「ミカサ!立てよ!お前の家族はエレンだけじゃねえだろ。」

    ミカサ「・・・・。」

    ジャン「向こうにはアルミンもいる。助けに行くぞ!」

    ミカサ「・・・・。」

    ジャン「ミカサ!!!!」

    ミカサ「わかった、、、」


    ───────
    ────


    アルミン「っく────!」

    アニ「動くんじゃないよ、アルミン。」

    アルミン「アニ・・・・!どうやって水晶の中から出てきたの・・・?」

    アニ「・・・・さぁ。どうやってだろうね。エレンが私に声をかけてたのは覚えてるけど、その先はわからない。あいつもどういう風の吹き回しなんだろうね。突然「壁の外に出よう」だなんて。」

    コニー「壁の外・・・?」

    アニ「私の故郷があるんだ。私は父さんと約束したんだ。「帰ってくる」って。だから、帰らなきゃならない。」

    サシャ「無責任ですよ!!!多くの人を殺めておいて自分だけ逃げるんですか!?」

    アニ「そうだね、無責任だ。でも、父さんに会うだけ、会うだけなんだよ。会ったらまた、ここに戻って処罰を受ける。だから、かえ───」

    アニが言い切る前にアニの背後に人影が見えた。
    ブレードを構えたミカサだ。

    ミカサ「この女狐ッッッッッッッッッッ!」

    ブレードをアニに向かって降りおろす。アニは間一髪回避したのだが、体勢が整わない状態だ。


    アニ「ッ!?」

    左のブレードが避けられ、荷馬車の支柱に突き刺さるが、ミカサはすぐさま右からブレードで切りつける。

    ミカサ「今ここで殺す!!!女型の巨人!!!!」

    アニ「やってみなよ、この怪物・・・!」

    ミカサ「たああああああっ!!!」

    アニの前髪を掠める斬撃。アニは身体を引くだけで回避し、今度はミカサのみぞおちに回し蹴りを放つ。

    ミカサ「ぐっ─────!!」

    アルミン「ミカサ!!!!」

    その反動でミカサは馬車の外に放り出される。
    強く身体を打ち付け、満足に動けないようだったが、重傷ではなさそうで、ひとまず安心した。

    アニ「はぁ、はぁ。本当に、化け物じみてるね。ミカサは。」

    コニー「その化け物、まだ諦めてないみたいだぞ。」

    アニ「!!!!!」

    屋根の上からミカサは馬車に飛びかかろうとしていた。まずい、ミカサの目には、アニしか見えていない。

    ジャン「ちょっと待てよ、ミカサ!!!その馬車にはアルミン達も乗ってんだぞ!?」

    ミカサ「わかってる!けど、仕方がない!壁の外に出ることが目的なら、足を潰す!!!アルミン達には・・・・許容してもらわなければならない!!!」

    ジャン「おいおい、待て待て待て待て!!!!ミカサ!!!!」

    ミカサ「覚悟しろッッッッッッッッッッ!女型ァァァァッッッッ!!!!」

    ─────ドドドドドドドドッ


    ジャン「本当に、馬車もろともぶっ壊しやがった・・・・!」







  5. 5 : : 2019/05/31(金) 17:36:51
    ジャン「・・・・!いねえ・・・。アニが、どこにも・・・。」

    ミカサ「くっ・・・。逃した・・・。一体どこに・・・!?」

    アルミン「待って!!!」

    ジャン「・・・?どうしたんだよ、一体。」

    アルミン「木片に、血が付いてる」

    アルミンが指摘する通り、衝撃で粉々になった馬車の破片の一部に血液が付着していた。

    さらに、点々と血痕が続いている。

    ミカサ「この血痕を、たどれば・・・・!」

    ─────
    ──


    リヴァイ「・・・・。どういうことだ。」

    なぜ、うなじにヤツがいねえ───。

    俺達を追いかけてきたクソガキを無力化はしたが、うなじに肝心のそいつがいない。

    素早く脱出なんて不可能だ。

    リヴァイ「ハンジ。念のため辺りを散策する。協力してくれ。」

    ハンジ「了解。エレンは手負いだ。そう遠くにはいけない。」

    ───────
    ────


    アニ「あんた、一体何のつもりさ?」

    以前とは目付きが違う。見てすぐにわかった。

    エレン「何のつもりって?」

    アニ「突然仲間を裏切ってさ。私に協力してくれるそうじゃないか?」

    エレン「タダで協力するわけがねぇだろ。交換条件がある。」

    アニ「なに?条件って。」

    エレン「俺をマーレに連れていけ。そこで、親父の秘密を探る。」

    アニ「・・・・。構わないけど、簡単じゃないよ。」

    エレン「わかってる。だからお前に協力するんだろ。」

    アニ「仲間を捨てて?」

    エレン「捨ててねえよ。真実に迫るための、演技だ。」

    へぇ、随分と演技がうまいもんだ。
    それなら、あんたにぴったりの潜入方法がある。

    アニ「あんた、「新兵」からやり直してみない?」

    エレン「は?」






  6. 6 : : 2019/05/31(金) 17:54:31
    アニ「マーレ軍隊の新兵になるんだよ。志願者の振りをして潜入するんだ。」

    エレン「なるほど、名案だな。そこで俺の素性がバレて、作戦は失敗。」

    アニ「あんたさ、偽名を使おうとか思わないわけ?」

    アニが立ち上がった時、アニの脚に切り傷があるのが見えた。血─────。

    エレン「アニ。お前誰かに追われてただろ?」

    アニ「ああ、追いかけ回されたよ。あんたの熱狂的なファンにね。」

    エレン「血痕、たどられてんじゃねえのか?」

    アニ「・・・・・。だろうね。」

    話している俺達に影が落ちる。人影。それも複数。

    リヴァイ「見つけたぞ、手間かけさせやがって」

    アニ「ねぇ、なんで数が増えてるわけ?」

    エレン「さすが兵長だ。あれだけ激しい交戦だったのに、息の一つもきれてねえ。」

    アニ「感心してる場合じゃないよ。まったく。」

    ミカサ「女狐、エレンに触るな」

    アニ「私はまだ、触れてない」

    ジャン「てめぇ、ミカサというものがありながら、アニに・・・!そんなやつに!」

    アニ「ちょっと、好き勝手言わないでくれる?傷付くんだけど?」

    すまねえな。ジャン。
    ちょっとだけ、もうちょっとだけ。
    茶番につき合ってくれ。

    エレン「そんな所からピーピー喚いてるだけか?ジャン。」

    ジャン「なんだと、こら・・・!」

    エレン「かかってこいよ。そこから降りて、俺を殴ってみろ。できるもんならな。」

    ジャン「てめええええええええええ!!このクソ野郎がああああああ!!!」

    ジャンは俺めがけて立体機動で飛んでくる。
    このまま殴られるしか、今は償えない。
    そう思った。

  7. 7 : : 2019/06/01(土) 05:37:33
    おぉ!!!!
  8. 8 : : 2019/06/01(土) 16:42:21
    リヴァイ「・・・ッチ。」

    アニは手を噛むような仕草を見せ、牽制する。

    ミカサ「兵長、アニが巨人化しようとしています!!!このままじゃ、エレンとジャンが・・・!」

    リヴァイ「下がるぞ!ジャン、早く上がってこい!」

    ジャン「・・・ッ!了解!!!」

    飛び去るジャンの後ろ姿をみて、俺は思った。
    こいつになら、「教えられる」。俺の、作戦を。こいつなら信用できる。

    エレン「ジャン!!!」

    ジャン「・・・・あ?なんだよ。」

    エレン「伝えたい事がある。降りてきてくれ。」

    アニ「あんた、何言ってんだい?」

    エレン「ジャン!!!降りてこい!!!」

    ─────
    ──


    なぜか俺には、エレンが嘘を言っている様に見えなかった。あれだけ裏切られ続けたのに、俺はまだ、こいつを、仲間と思っていた。

    ジャン「そっちには行けねえな。巨人化されたらひとたまりもねえんだよ。」

    エレン「なら、そこで聞け。」

    今なら、俺だけに声が届く。
    そのタイミングを狙ったのも、俺に本心を伝えるためだと、信じていた。

    エレン「俺は、海を見に行く。」

    ジャン「は?」

    エレン「アルミンに、「先に行っちまうけど、許してくれ」って伝えといてくれ。俺は多分、もう帰ってこられない。」

    海─────?
    壁外に行くつもりか・・・?

    ジャン「だけどどうやって?どうやって?壁を越えるんだ!?」

    聞くとエレンは顎でアニを指す。

    ジャン「・・・・!本気、なのか?」

    エレン「本気だ。」

    ジャン「もう、帰ってこないつもりかよ・・・?」

    エレン「真実を持ち帰りたい気持ちも山々だが、そんなの無理だ。俺はそこで真実を見て、なにを感じて、なにが起こるのか。見てみたいんだ。」

    ジャン「だれが、決めた!?」

    エレン「?」

    ジャン「真実を持ち帰れねぇ?誰が決めたんだそんなこと!!!」

    俺は、お前をもう一度だけ信じる。

    ジャン「協力してやる。お前らを、壁外に出すのに協力してやるよ!!!」

    だからもう、裏切ってくれるなよ。

    ─────
    ───


    アルミン「・・・。エレンが、そう言ったの?」

    ジャン「そうだ。」

    皆が寝静まった頃。アルミンにエレンから伝えられた伝言を伝える。

    エレンとアニは、俺たちが監視の元、捕らえられた。利便性はそうなった。

    アルミン「そうか。壁を越える口実を「僕らから逃げること」にすれば、自然に壁外に出ることができる。その為に、僕らとわざと敵対してたのか・・・。」

    ジャン「今から、エレンとアニを壁外に出そうと思う。アルミン。力を貸してくれ。」

    アルミン「・・・。わかった。」


  9. 9 : : 2019/06/01(土) 18:03:49
    エレン「本当に大丈夫なのか?お前ら。」

    ジャン「任せとけ。こっちで言い訳考えとくからよ。」

    アルミン「エレン。」

    エレン「なんだ?」

    アルミン「「またね」。」

    エレン「・・・・・!」

    アルミン「きっと、エレンは帰ってくる。自分だけ海を独り占めなんてずるいじゃないか。そうだろ?」

    そうだ、俺は、必ず帰ってくる。
    ここに。俺の故郷に、必ず帰ってくるんだ。

    さよなら、じゃない。


    エレン「あぁ。またな。アルミン、ジャン」

    アニ「そろそろ夜が明けるよ。出発しよう、エレン。」

    エレン「わかった。」

    カッッッッ──────!!!


    ───────
    ──


    エレン「アニ。今度は俺がお前になる番だな。」

    女型の巨人「・・・・。」

    エレン「俺はお前らの故郷に入って、自分の故郷に戻ることを夢見ながら、マーレ軍隊の一員になる」

    女型の巨人「・・・・。」

    耳に心地のよい音が聞こえる。

    エレン「・・・・!う、みだ・・・!」

    どこまでも無限につながる青い海。
    ザザザッと静かに音をたて、アニ、女型の巨人の足に水かかる。

    朝日が海の背後から現れ、青の海を照らして行く。

    俺は、夢をひとつ叶えた。アルミン。お前にも、見せてやりたいよ。

    ───────
    ──


  10. 10 : : 2019/06/01(土) 20:50:19
    ─────
    ──


    エレン「ここが、マーレ、か・・・?」

    空を飛ぶ飛行船にまず呆気をとられる。
    次に目に飛び込んで来たのは軍人。
    その軍人が背負う武器だ。

    エレン「あれ、なんだ?」

    アニ「あぁ。散弾銃のこと?」

    エレン「さんだん、じゅう?」

    アニ「弾が複数発発射される銃さ。しらないのも─────」

    エレン「どうした?」

    アニ「あんた、記憶喪失のふりをしなよ。」

    そりゃいい。それなら何も知らない事にも説明がつく。

    エレン「・・・。だけどよ、記憶喪失の流れ者を軍が引き取ってくれんのか?」

    アニ「バカだね。私が協力するって言っただろ?」

    ───────
    ──


    ジーク「・・・・アニちゃんが?帰ってきたって?どうやって?」

    ピーク「女型でパラディ島から走ってきたって。」

    ジーク「そうか、そうか!迎えに行こう。あっ、ピークちゃんそれ、取って。」

    ピーク「何ですか?これは?」

    ジーク「アニちゃんに渡そうと思ってた物さ。あああっ、気を付けて、割れ物だから。」

    ──────
    ───


    ジーク「アニちゃん!!!よく戻ってきた!!」

    アニ「戦士長、紹介したい人が。」

    ジーク「誰?彼氏?」

    アニ「・・・・・・。」

    ジーク「悪い悪い。睨むなよ、冗談だって。紹介したい人というのは、そちらの方?」

    アニ「はい。どうやら記憶喪失みたいで、名前も、どこから来たかもわからないみたいです。」

    ジークと呼ばれたその人物は、その言葉に表情を変える。

    ジーク「記憶喪失?それはパラディ島からこちらへ向かうときに?」

    アニ「いえ。会った時からです。」

    ジーク「あぁ、そう。で、紹介してどうしようと思ったんだ?」

    アニ「マーレ軍隊で引き取って貰えないでしょうか?」

    ジーク「マーレ、軍隊で?またどうして?他に拠り所は沢山あったろう。どこかの店で雇ってもらっても、兵器開発に勤しんでもらってもかまわないのに、なぜ軍隊に?」

    エレン「俺の希望です。」

    ジーク「・・・。アニ、少し考えさせてくれ。そうすぐには許可できないよ。」

    アニ「わかりました。では、私達はこれで」

    ジーク「あああっ、待って、待って!これ、アニちゃんにお父さんから。「帰ってきたら渡して貰えますか」って。」

    アニ「・・・・なんですか?」

    ジーク「わかるわけないじゃないか。まさか人のプレゼントの中身をみるわけにはいかないだろう。」

    アニ「ありがとうございます。」

    ジーク「会っていかないのか?ピークとライナーに。」

    アニ「・・・・!」

    ライナーに会うのはまずい。
    アニ、頼むなんとかしてくれ。

    エレン「・・・・。」

    アニ「あいつの事、嫌いなんで遠慮しておきます。ピークにはまた後で。」

    ジーク「そうか。さっきの件、前向きに検討しておくよ。君、街を見て回ったらどうだ?なにか思い出すかもよ。」

    エレン「はい。ありがとうございます。」
  11. 11 : : 2019/06/01(土) 21:00:55
    記憶喪失の志願者、か。
    困ったもんだ。体はがっちりしていて、眼にも秘めるなにかがあったから、見込みはあるんだろうけどなぁ。

    ジーク「お、ピークちゃん。聞いてたの?盗み聞きは勘弁してくれよ~!」

    ピーク「なんで嘘付いたんですか?」

    ジーク「ん?何の事?」

    ピーク「アニへの贈り物の中身、みたことないだなんて。私に「割れ物だから気を付けて」なんて、中を確認してないのにわかるはずがない。」

    ジーク「・・・だって、恥ずかしいじゃんか?」

    ピーク「はい?」

    ジーク「「中身確認しちゃったよ、ごめんな」なんて言った日には、「人の贈り物を勝手に見ちまう変態おやじ」ってレッテル貼られちゃうよ、若い衆からさ。ピークちゃん、ゆっくり休みなよ。まだ二足歩行に慣れ始めた頃だろ?」

    ピークの肩をポンと叩き、その場を過ぎ去ろうと隣を通る時、過ぎ去り際にピークに言われた。

    ピーク「記憶喪失のあの男。気を付けてくださいよ。」

    ジーク「え?気を付けろって?なんでまた?感じの良さそうな青年だったじゃないか?」

    ピーク「「ライナー」の名前を聞いたとき、目が明らかに泳いでいたのを、私は見ました。」

    ジーク「記憶喪失だぜ?そりゃ、目くらい泳ぐでしょ~!考えすぎだよ、ピークちゃんは。」

    ピーク「だと、いいんですが。」

    ジーク「じゃ、俺はこれで。身体に気を付けなよ。」

    ピーク「はい。」

    ───────
    ───


  12. 12 : : 2019/06/01(土) 22:00:35
    ────
    ───


    ミカサ「のが、し、た・・・?」

    アルミン「ごめん。」

    ミカサ「エレンは・・・?あの女狐と、壁の外に・・・?」

    アルミン「本当に、ごめん。」

    リヴァイ「仕方ねえよ。夜間の出来事だ。迅速な対応が出来なかったのは俺たちの責任でもある。」

    ミカサ「アルミン・・・・ッ!!!エレンは、親友、でしょ・・・!!!なんで、とめなかったのッッッッ!なんで、なんで、アルミン!!!」

    ミカサは取り乱してアルミンを殴り付けようとする。俺が止めに入るより先に、兵長が止めにはいった。

    リヴァイ「やめろ、ミカサ。」

    ミカサ「どうしてっ・・・!どうしてっ・・・!」

    リヴァイ「殴りてえなら俺を殴れ。」

    ミカサ「・・・・!」

    リヴァイ「上司である俺の責任だ。殴れ。俺は甘んじて受け入れる。」

    ミカサ「・・・・、もう、いいです・・・。」

    リヴァイ「そうか。」

    ──────
    ───


    伝えちゃいけない。
    それはわかっていた。だけど、エレンを失ったミカサがあまりに痛々しくて見てられなかったんだ。

    ジャン「ミカサ。前の席、いいか?」

    ミカサ「ええ・・・。」

    ジャン「あのな、ミカサ。あの、ほら。エレンはアニと───」

    ミカサ「そんなことを伝えに来たの?なら帰って。」

    ジャン「違う、違うんだよ、よく聞けミカサ!単刀直入に言うぞ。あいつは裏切ってない。」

    ミカサ「・・・・!一体、どういう、こと?」

    ジャン「これを見てくれ。」

    俺は胸ポケットから鍵を出し、ミカサに見せる。

    ミカサ「それは、何の鍵?」

    ジャン「地下室の鍵だ。エレンの家の、地下室の鍵。」

    ミカサ「なんでジャンがそれを持ってるの?」

    ジャン「エレンから託された。「世界」についての真実が、そこにあるらしい。」

    ミカサ「世界の、真実・・・?」

    ジャン「わかるか?エレンはこんなに大切な物を俺に託くした。仲間を捨てて裏切るような奴のすることか?」

    ミカサ「・・・・。」

    俺は机に鍵を置き、ミカサに差し出す。

    ジャン「お前が持ってろ。」

    ミカサ「・・・・!」

    ジャン「それがエレンだ。エレンだと思え。」

    ミカサ「エレンはこんなに、鉄臭くない」

    ジャン「ミカサ、お前な・・・。そういうことじゃなくてよ!?気持ちの問題なんだよ、気持ちの!!!ったく。いいか、ミカサ。エレンは、親父の残した「世界の全て」から、この世の全容を暴こうとしてんだ。その為に、アニの協力が不可欠だった。」

    ミカサ「うん」

    ジャン「必要なら、俺達も「世界の全て」を知る必要がある。そのときは、ミカサ。お前の判断に任せるからな?」

    ミカサ「・・・・わかった。」

    ジャン「エレンも辛かっただろうよ。騙し続ける者の痛みってのは、そりゃ激しいもんだよ。わかってやってくれよ、ミカサ。」

    ミカサ「───かった。」

    ジャン「ん?」

    ミカサ「エレンを信じていて、よかった。」

    ミカサは鍵を胸の前でぎゅっと握りしめ呟く。
    複雑な感情なのは、相変わらずだが、いつものミカサに戻ってくれてほっとした。

    ジャン「それを伝えに来たんだよ。アニのことじゃねぇぞ!?」

    ミカサ「・・・ごめん。」

    ジャン「時間とらせて悪かったな。じゃ、俺、戻るわ」

    ミカサ「あ、待って。」

    ジャン「なんだ?」

    ミカサ「ありがとう、ジャン。」

    ジャン「あー・・・。なんか、恥ずかしいなぁ?ははは。どういたしまして。」

    ミカサ「おやすみなさい」

    ジャン「おう。おやすみ!!」


  13. 13 : : 2019/06/02(日) 15:19:02
    ─────
    ────


    ジーク「おかえり、えーと、君。君じゃちょっとしまりがないな・・・。名前とかつけちゃってよ。」

    エレン「名前、ですか?」

    ジーク「嫌なら構わない。「君」と呼ぶようにするし。利便性の観点から名前もあったほうがいいだろうと思ってさ。」

    エレン「君で大丈夫です。」

    ジーク「オーケーオーケー。どうだった?街を見て回って、何か思い出した?」

    エレン「いえ。何も。」

    ここにきて、騙しているのが忍びなくなってくる。それほどにこの人は物腰がやわらかい。

    ジーク「アニちゃんから提案された件なんだけど、試験をクリアする事を条件に、許可する。」

    エレン「ありがとうございます」

    話ながら、腕に着けた何かに目を落とす。

    ジーク「試験の日程は別にいつでもいいんだけど、あー、こんな時間か・・・。今日はパスだな。明日以降ならいつでも大丈夫だけど、空いてる日あるかな?」

    エレン「俺もいつでも構いません。」

    ジーク「そうか。なら、明後日にしようか。そこなら用事にも被らないし、一番具合がいい。」

    エレン「わかりました。」

    ─────
    ───


    アニ「贈り物、か。」

    私は戦士長から渡された父からの贈り物の包みをあける。

    アニ「なに、これ?」

    綺麗な水晶。以前に私がいた物より、ずっと透明度が高い。

    アニ「・・・?何か、文字が彫ってある?」

    「レ・・・ル・・・ミ・・・」。文字が掠れて読むことが困難だった。

    ピーク「なぁに?それ、ルーペ?」

    ピークは私の背後からひょこっと顔をだし問う。びっくりした。

    アニ「あんたね、気配を消して近付くのやめてくれる?心臓に悪いんだけど」

    ピーク「ごめんごめん。」

    ピークは唐突に抱き付いてくる。と、いうより、抱き締められている。

    アニ「くるしい。」

    ピーク「アニっ・・・。無事でよかった。本当によかった。」

    アニ「・・・・。」

    ─────
    ───


    俺達はここからエレンの助けになりそうな情報を集め、動けるなら動き出そうとしていた。ひとまず博識なアルミンの祖父からアルミンが貰った物のなかに、手掛かりがないか探していたが・・・。

    ジャン「手掛かりも何もあったもんじゃねえな。」

    新聞紙に絵本、数冊の小説。やっぱり、書物が多いな。半ば諦めかけながら引き続き捜索を続けていると、アルミンは「そうだ!」と言って、机の引き出しを開ける。

    アルミン「ジャン、これさ、おじいちゃんが保管してたものみたいなんだけど何だと思う?」

    明らかにただの石ではない。透明度が以上に高く、透けて見える景色は肉眼でとらえたそれとさほど違いが無いほどだ。

    ジャン「さぁな。心なしか、アニが入ってた水晶体に似てるような気もしなくもない、ん?なんか彫ってあるぞ。」

    「ト・・・・ア・・・ミ・・・・」

    ジャン「と、あ、み・・・?後は、なんだ?」

    アルミン「それ、割れているような気がしない?」

    確かに。もう片方に同じような形の水晶をはめ込めばちょうど円形になりそうだ。

    ジャン「片割れがどこにあるか探してみるか。」

    アルミン「うん!」

  14. 14 : : 2019/06/02(日) 23:15:56
    ─────
    ───


    ジーク「さぁ、試験を始めようか。そこに袋が見えるね?」

    ジークが指差す先に、3つの袋が置かれているのが見える。

    エレン「はい。」

    ジーク「あの袋は順に、5キロ、10キロ、15キログラムの重さがある。それを背負って、1つの袋につき3週、このグラウンドを回ってもらう。」

    エレン「それだけ、ですか?」

    軍に入隊する為の試験にしては、やけに温い。
    もちろん試験は1つだけとは限らないが。

    ジーク「もちろん特別なルールがある。そのルールっていうのがね、「どの重さの袋でも、走るペースを同じにすること」。」

    エレン「・・・・なるほど。」

    軽いからと言って思いきってダッシュしてしまえば、後々の重い袋でつまずく。かといって、最初からトロトロ走ったんじゃ、記録が伸びない。このジレンマを克服しなければ、軍には入隊できない、そういうことか。

    エレン「わかりました」

    ジーク「ウォーミングアップは?試しに袋を持ってみたりすることも大事だぞ」

    エレン「大丈夫です・・・。」

    ジーク「ほう。じゃあいくよ。よーい、始め!」

    ──────
    ───


    ジーク「(顔色こそ変わって来たが、ほとんど一定のペースを保ってるな。それに、走る姿勢も申し分ない。お、最後の袋に差し掛かったな。さぁ、どうなる・・・・?)」

    エレン「ハッ───、ハッァ──、ハッァ────」

    ジーク「今のところいいタイムだ!そのままペースを一定に保って!」

    エレン「はいっ!」

    まずいな、久々の試験でこんな逸材にであってしまったもんだから、ついつい気合いがはいってしまう。

    ジーク「あと、1周!ラストスパートだ!」

    エレン「くっ・・・!」

    ジーク「(流石に足が堪える───!!!)


    エレン「うぉぉぉぉぉっ!!!」

    ジーク「(持ち直した・・・。なんてやつだ・・・。)よし、やめ!!!」

    彼はその場に大の字に倒れる。
    息は荒く、相当疲れているようだ。

    ジーク「合格だ。」

    エレン「・・・・!」

    私は彼に手を差しのべ、軍に迎え入れる。

    ジーク「ようこそ、マーレ軍隊へ」


  15. 15 : : 2019/06/02(日) 23:32:10
    ──────
    ────


    父さんを待つ間、ピークと少し雑談をする。
    昔話に花が咲いて、瞬く間にあの頃に戻って行く。

    アニ「・・・・」

    ピーク「懐かしいでしょう?」

    アニ「とっても。」

    ピーク「あの噴水覚えてる?アニと私がまだ戦士候補生だった頃だよ。」

    アニ「あぁ、覚えてるよ。」

    ピーク「ライナーったら、ボッコに押されて噴水に落っこちちゃってさ」

    アニ「その後はいつもの口喧嘩。ライナーはポルコにつかみかかったけど、返り討ちにあってたね」

    ピーク「そうそう!!はぁ、本当に懐かしい。あ、アニ。お父さんが!」

    アニ「・・・・!」

    「アニ・・・・!アニ、なのか・・・!」

    アニ「お父さん・・・・ッ!」

    私は自然とお父さんに歩みよって抱きついていた。

    「アニ、ありがとう。ありがとう。帰ってきてくれて。ありがとう・・・。」

    アニ「ッ・・・・。ぅっ・・・・。」

    ──────
    ───


    私達はお父さんの家に招いて貰った。
    久しぶりすぎて、椅子に座るのすら躊躇ってしまう。

    「アニ。座っておくれ。ここはお前の家なんだ。そうだ、紅茶でも飲むかい?ピークちゃんは?」

    ピーク「い、いえ!!!おきになさらず!!!」

    「何を言うんだ。アニの帰りを一緒に待ってくれていたじゃないか、お礼をさせてくれ。」








  16. 16 : : 2019/06/03(月) 15:17:50
    ピーク「では、お言葉に甘えて・・・。」

    アニ「・・・・。」

    懐かしい。格闘術で掴みとった数多のトロフィーと表彰状。
    その中に紛れて、父さんと私の写真を見つけた。

    アニ「・・・・笑ってないね、私。」

    「無理もないさ・・・。連日格闘術の稽古なんてさせられていたんじゃ・・・・。年頃の女の子の大事な時間を・・・。あんなふうに使うなんて。」

    アニ「・・・・!私は、後悔してない。」

    「・・・・アニ・・・・!」

    アニ「お父さんに愛されてるって感じられる時間だったと、今なら思うから。これのおかげで、出会いもあった。それになにより、「戦士になって、お父さんを見返してやる」とも思えたしさ。」

    「・・・・・。ありがとう。」

    アニ「感謝される覚えなんてないよ。私こそ、ありがとう。お父さん。私、お父さんの娘で、よかったよ。」

    ピーク「ぅぅぅうっ、うっ、ううぅ!」

    アニ「って、なんであんたが泣いてんのさ・・・?」

    ピーク「だって・・・・!アニがこんなに立派になって帰ってきて・・・。私、うれしいよ!!!」

    思わず顔が綻ぶ。
    こんなに暖かい気持ちは、久しぶりだ。

    「アニ、贈り物、届いたかな?ジークさんに渡したんだが・・・。」

    アニ「ああ、届いたよ。あれ、水晶、だよね?」

    「そうだ。父さんがまだ戦士候補生だった頃に、先輩から貰ったお守りなんだ。「アルレルト」さんって言うんだがね」

    アニ「・・・・えっ?」

    「アルレルト」・・・・。
    アルミンと同じ姓・・・・。

    「どうしたんだ、アニ?」

    アニ「パラディ島に居たとき、同じ姓の同僚がいたんだ。「アルミン・アルレルト」っていうんだけど。」

    「アルミン・・・・!?アルミンという名前なのか・・・その子は!?」

    アニ「え、うん・・・。」

    「そうか、そうか。アルレルトさんは、パラディ島に渡って、家庭を築き、さらには孫まで、、、そうか・・・。」

    アニ「お父さん、その人とどういう関係?」

    「あれは私が、戦士候補生だったころだ。アルレルトさんは、「破壊神」と目される巨人を宿すことはほぼ約束されていた。だけどね、アルレルトさんは、「パラディ島を救う事」を選び、マーレに反旗を翻したんだ。」

    ─────
    ──


    アルレルト「かの島には、悪魔だなんだと呼ばれ、迫害された民がいる!!!」

    男「巨人の力を奪ったんだぞ?悪魔と言わずなんと言う!」

    アルレルト「人を見ろ!人種ではなく、人を見るんだ!!!お前の胸には何が宿っている!?お前の体には何が巡っている!!!彼らも同じだ!胸に「魂」を宿し、血が流れ、生きている!私たちと何が違う!!!」

    私は、心が揺れた。同時に自分は哀れだと思った。
    人を人として認識するという簡単なことを、名誉や地位に侵された私達は、できていなかったんだ。
    その夜、私はアルレルトさんの所へ向かったよ。
    アルレルトさんの手伝いをするためだ。

    「アルレルト隊長。レオンハートです。よろしいでしょうか。」

    アルレルト「入りなさい。」

    「夜分遅くに申し訳ございません。」

    アルレルト「はは、構わないよ。僕だって丁度暇をもてあましていたところだ。」

    「・・・・。そうは、見えませんが・・・。」

    アルレルトさんは書類の整理に明け暮れていた。しかし、私の訪問を快く引き受けてくれたんだ。「また、楽しい話を聞かせてくれるんだろう?」ってね。

    アルレルト「書類のことか?気にしなくていい。それより、どうしたんだ?改まって。」

    「パラディ島を救うために、パラディ島に入る為に、アルレルト隊長は、自ら「楽園送り」にされるおつもりでしょう?」

    アルレルト「・・・・そうだ。」

    「私も協力させてください!!!」

    その時ばかりは、アルレルトさんも黙ってはいなかった。

    アルレルト「バカな事を言うんじゃない!!!君はまだ若い。これからの未来がある。道がある。命の危険を伴う作戦に同行することは許可しない。」

    「人を見よと。人を見よと仰ったのは隊長です!!!!私は、あなたに希望を見た!!!」

    自分でも驚いたよ。
    すくむ足に震える手、心臓の鼓動もはやくなっていた。だが、それとは反して、言葉が口を突いてでた。

    「マーレ軍隊所属、戦士候補生レオンハートは、今この場で命を差し出してもかまわない所存です!!!」

    軍隊の敬礼をしながらそう叫んだ時、アルレルトさんは少しばかり笑った。

    アルレルト「捨てたものじゃない。君のような人が、まだいたなんて。」

    アルレルトさんは立ち上がり、私に何かを私に持たせた。
    それこそが、半分に割れた水晶だったんだ。







  17. 17 : : 2019/06/03(月) 15:39:37
    アルレルトさんは立ち上がり、私に何かを私に持たせた。
    それこそが、半分に割れた水晶だったんだ。

    アルレルト「君がそれを持つ限り、僕と君は一心同体だ。私は君と共にあり、君は私と共にある。」

    アルレルトさんは私の前で敬礼をしてみせた。
    私もそれに続いて敬礼をする。

    アルレルト「君の勇敢なる意思に、敬意を表する」

    「・・・・!」

    それから一夜あけて、サイレンと放送の音で目が覚めたよ。

    <<非常事態!非常事態!楽園送りの人員がひとり足りない!!!脱走者は馬を使い壁外へ逃亡した模様!繰り返す、楽園送りの人員がひとり足りない!!!脱走者は馬を使い壁外へ逃亡した模様!>>

    私は、悟ったよ。作戦は成功したんだと。
    そのサイレンを聞きながら、水晶を明かりにてらした。そこには、「アルミン・アルレルト」、そう刻印されていたんだ。

    ──────
    ───


    アニ「アルミンの・・・・祖父が、マーレ軍隊の隊長・・・、だったの?」

    「そう。名前はそのお孫さんと同じ、「アルミン・アルレルト」だった。」

    アニ「パラディ島の人間を救う・・・・。迫害の歴史を覆す・・・か。お父さん。」


    「ん?」

    アニ「今度は私が、お父さんの夢を叶える番だ。」

    ピーク「アニ・・・?」

    アニ「私、パラディ島に戻って、迫害の歴史を覆すよ。お父さんが出来なかった事、私が、私がしてくる。」

    「アニ・・・・。」

    ピーク「本気で言ってるの!?私達を裏切るって事なんだよ!?アニ!!!」

    アニ「ピーク、私と敵になるのか、私に味方してくれるのか、あんたが決めてくれて構わない。」

    ピーク「アニ・・・!!!」

    アニ「早く決めなよ。私は気が長い方じゃないんだ。」

    ───────
    ────


    アルミン「見つからない、ね。」

    ジャン「だな・・・。手掛かりも無さそうだし、今日は一旦やめにするか。」

    アルミン「そうだね、そうしようか。」

    ジャン「あー、腹減ったー!」

    ジャンが扉を閉め、先に出ていく。
    ドアノブに手をかけた僕はふとおじいちゃんのある言葉を思い出していた。

    『戦士になるには、夢や希望を捨てない事だ。いいか、アルミン。命を懸けると決めた時、男は止まっちゃいけないんだ。』

    おじいちゃんは「兵士」ではなく「戦士」と言った。ライナーやベルトルトもそうだったよな。

    アルミン「・・・!まさか・・・!」

    ジャン「アルミン、なにしてんだよ?」

    アルミン「あ、うん、すぐ行くよ!」


    おじいちゃんが壁外の出身だったとしたら、どうやってここにたどり着いたんだ・・・。
    どうやって、ここの存在を知ったんだ・・・。
    一体、どうやって・・・・?
  18. 18 : : 2019/06/03(月) 21:55:42
    ──────
    ────


    ピーク「わがまま。」

    アニ「なに?」

    ピーク「あなた、わがまま言わなかったもんね。ちょっとくらい、アニのわがまま聞いてあげる。」

    アニ「ピーク、ありがとう。」

    ピーク「ジーク戦士長は手強いよ。」

    アニ「わかってる。一筋縄に行かない人って事くらい。」

    ─────
    ──


    エレン「アニ、どうだった?親父さん、元気そうだったか?」

    アニ「ああ。元気だった。」

    エレン「そりゃよかった。」

    窓を見つめながら、声だけ私に向けるエレンの背中に、候補生時代の私達がかさなる。
    使命に燃えた、あの日の私達が。

    アニ「あんた、軍服、なかなか様になってるじゃないか。」

    エレン「あぁ、俺は意外となんでも似合うしな。」

    アニ「冗談言える体力は残ってんだね。」

    私はエレンの隣に立ち、エレンと同じように窓の外を見る。風に吹かれて、決意を伝えなければと思った。

    アニ「私、パラディ島側に協力するよ。」

    その言葉で、先程までピクリとも動かなかったエレンがこちらを向く。

    エレン「は?」

    アニ「なにが「は?」なわけ?」

    エレン「お前、スパイになるって言ってるんだぞ?」

    アニ「わかってるよ。」

    エレン「故郷を裏切るって言ってるんだぞ?」

    アニ「わかってるさ。なんでだろうね、あんた達が悪魔には見えなくなった。」

    エレン「なんだよ、それ?」

    アニ「わからないよ。それから、お父さんの夢、叶えたいってのもある。」

    エレン「夢?」

    アニ「あんた、アルミンの祖父がマーレ軍隊の隊長だったって、知ってた?」

    エレン「・・・・!」

    アニ「知らなかったんだ。」

    エレン「知るわけねえだろ!!!なんだよ、つまり、どういう事だ・・・?」

    アニ「つまりはアルミンのルーツを辿れば名誉マーレ人の隊長にたどり着くってこと。で、そのアルミンの祖父は、私のお父さんの戦士候補生時代の上司だったんだってさ。」

    エレン「だから、壁外の事を書いた書物を、アルミンは持ってたのか・・・・!」

    アニ「あんたの方は?「世界の全て」ってやつ、見つけたの?」

    エレン「そう簡単に見つからねえよ。父さんの手記によれば、知識を蓄える場所にそれはあるって書いてあるんだが。」

    アニ「図書館とか?」

    エレン「見たよ。資料室も。でもなかった。」

    アニ「・・・・。八方塞がり、ってこと」

    エレン「簡単に言えばな。」


    ─────
    ───


  19. 19 : : 2019/06/03(月) 22:16:00
    ────
    ───

    上官から一枚の紙を渡され、それに目を通す。
    マーレから抜け出した、不届きものの手配書だ。


    ジーク「アルミン・アルレルト、ですか?マーレ軍隊の隊長だった?」

    上官「そうだ。」

    ジーク「ここから馬を駈り、パラディ島へ向かうなんて不可能でしょう。道中巨人に食われて死ぬか、飢え死にするか、とちらにせよ死んでますよ。」

    上官「それが、ジーク裏を見てくれ。」

    ジーク「裏?」

    俺は紙の裏を見る。
    なんだこれは、暗号?

    ジーク「なるほど。上官、書くものありますか?」

    上官「解けるのか?ジーク。」

    ジーク「日頃頭は鍛えてますからね。丁度いい頭の体操だ。」

    どれどれ?

    1.1/2.2/3.4/4.7/5.7/6.5/7.1


    1 ハ ナ ビ タ シ ヤ タ
    2 カ カ マ ア レ ノ シ
    3 ナ ミ キ イ キ ニ ト
    4 タ ヤ タ シ ミ ル ノ
    5 カ ス ニ ム キ ノ チ
    6 ナ タ ミ ハ カ ナ サ
    7 ラ キ ヤ ミ カ サ タ
    8 ク リ シ ア イ エ ガ

    ジーク「なるほどね、脊髄液を使ったか。」

    上官「・・・わかったのか?」

    ジーク「楽勝ですよ。子供遊びみたいなもんです。」
  20. 20 : : 2019/06/03(月) 22:21:42
    暗号の答え合わせはもう少し後の話になりますが、こうじゃないかなど、書いてもらっても大丈夫です。
  21. 21 : : 2019/06/03(月) 23:43:38
    破壊の力
  22. 22 : : 2019/06/03(月) 23:44:15
    答えあってたら削除って形にすればいいかと
  23. 23 : : 2019/06/03(月) 23:48:45
    >>22
    答え書いて頂くのは全然大丈夫ですよ!
    後々の答え合わせの時に、「おー、合ってた!」、「間違ってたかー!」って思ってもらいたいので!
  24. 24 : : 2019/06/04(火) 13:50:16
    ──────
    ────


    ジーク「やぁ、おはよう。ピークちゃん。」

    ピーク「戦士長、顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?」

    ジーク「大丈夫なわけがないだろ。記憶喪失くんの試験の後、その足で会議に出て、会議は夜中に終了。ようやく眠れると思ったら上官からのお呼び出しをくらって、睡眠時間は0時間さ。」

    ピーク「上官から呼び出しなんてめったにないのに、きっと何かしたんでしょうね。」

    ジーク「ピークちゃんさぁ?俺の事、悪ガキか何かだと思ってない?」

    ピーク「思ってますよ。」

    真顔で言うなよな、こんな髭面の内面が悪ガキなんて気持ち悪いじゃないか。

    ジーク「何かしたとかじゃなくて、ある手配書についての話だよ。今から数十年前にマーレから馬で抜け出した、「アルミン・アルレルト元隊長」の手配書なんだけどね?」

    俺は小さく折り畳んだ手配書を広げつつピークに話す。

    ジーク「妙なんだよなぁ。これって、手配書のはずでしょ?でも、ほら。裏に暗号が書いてあるんだよ。」

    ピーク「本当・・・・。」

    ジーク「自分が行動を起こしてから手配書が出回って、貼り出されるのをわかってたみたいだと思わないか?」

    ピーク「それに、手配書が発行されたと言うことは、少なくとも脱走した後。その時、もちろんアルレルト元隊長は既に国にはいない筈だから・・・」

    ジーク「さすが、ピークちゃん!鋭い!そうなんだよ。当時のマーレ国内にこの暗号を読みとく意味のある者、つまり、「裏切り者」がいた、ってことだ。」

    ピーク「・・・・。」

    ジーク「なに?その苦虫を噛み潰したみたいな顔?どういう感情?」

    ピーク「まさに「灯台もと暗し」だと思いまして。」

    ジーク「あぁ、そういう。それから、この暗号を読み解けば、不可解な事がわかる。」

    ピーク「不可解な、事?」

    ──────
    ───


    ジャン「なぁ、ミカサ。アルミン見なかったか?」

    ミカサ「見てないけど。いないの?」

    ジャン「あ、あぁ。飯食ってた時にはいたんだけどよ。」

    アルミンのやつ、自分の部屋を調べた後あたりから様子がおかしかったしな・・・。一体どうしたってんだ?

    コニー「アルミンならさっき、自分の部屋に戻るって言ってたぞ。」

    ジャン「それがよ、いねえんだよ。部屋にも。」

    ─────
    ──


    アルミン「おじいちゃんは、「必要な時だけ開けろ」って言ってた。まさに、今がその時、じゃないのか・・・?」

    それは小さい頃におじいちゃんから貰った小さな木箱だった。貰った時から、「必要な時だけ開けろ」という言葉を信じてずっとずっと開けてこなかった。

    アルミン「・・・・!」

    意を決して僕は木箱を開ける。
    そこに入っていたのは液体が入った瓶だった。
    ラベルが下向きになって納められ、内容物の確認ができない。
    僕はラベルが上になるように、瓶を回す。

    アルミン「・・・・・これは・・・!!!」

    ラベルには「チョウオオガタ ハカイノカミ」と書かれている。僕は思わずその瓶を木箱に戻してしまう。

    アルミン「超・・・・大・・・・型・・・?」

    全て辻褄が合う。
    ライナーやアニ、ベルトルトが巨人になれるのは、彼らの故郷で「巨人に関するなんらかの秘密があったから」、そう考えてきた。
    おじいちゃんがライナー達と同じ壁外国出身ならば、おじいちゃんも「巨人に関するなんらかの秘密」を知っていてもおかしくはない。

    ジャン「おい、大丈夫か?アルミン?」

    アルミン「ジャン、皆を集めて・・・。話したいことがあるんだ・・・。」

    ジャン「・・・・?」

    ──────
    ──


    ハンジ「「チョウオオガタ ハカイノカミ」・・・。エレンが硬質化を得る為に摂取したのが「ヨロイ ブラウン」の瓶だと聞いたけど、そうだったんだよね。リヴァイ。」

    リヴァイ「ああ。それを摂取した直後、エレンは硬質化を習得できた。あれだけ必死こいて習得しようとしても無理だったのに、だ。」

    ハンジ「ならこの、「チョウオオガタ ハカイノカミ」の瓶も「超大型巨人」の特性を得るためのもの。それを、アルミンのおじいちゃんが持っていた・・・。」

    ジャン「ちょっ、ちょっと待ってください!!!それじゃ、アルミンのじいちゃんはライナーの野郎と同じ壁外出身って事になるじゃないですか!?」

    アルミン「心当たりはあるんだ。」

    ミカサ「話して。アルミン。」

    アルミン「・・・・。」

    アルミンはなかなか口を開こうとしない。
    ああ、もうっ。じれってぇ・・・。

    ジャン「この期に及んで誰も笑いやしねぇよ。言ってみろ。アルミン。」

    アルミン「・・・・。あれは、僕が小さい頃の話だ」






  25. 25 : : 2019/06/04(火) 14:03:43
    ─────
    ───


    アルミン「うーん、うーん!」

    アルレルト「ほら、アルミンが読みたかった本はこれかい?」

    アルミン「ありがとう、おじいちゃん!」

    僕は本棚の一番上にあった本を取りたくて、手を伸ばしたんだ。でも届かなくて。
    何度も何度も繰り返している内、おじいちゃんがやってきて、その本を取ってくれたんだ。

    僕はそこで、本の表紙を見たおじいちゃんの顔が明らかに驚きの表情に変わったのが見えた。

    アルレルト「壁の外を、知りたいのか・・・?アルミン。」

    アルミン「うん!だってね!沢山の水があるんだよ!!!すごいでしょ!!!見てみたいんだぁ、僕・・・!」

    アルレルト「「海」だな。」

    アルミン「「うみ」・・・?って言うの?」

    アルレルト「・・・・!?あ、あぁ、今のは忘れてくれ。」

    本には「うみ」という言葉は書かれてなかった。「塩を含んだ水」。それだけの記述で、それを「うみ」だと理解するなんて不可能だ。

    僕は、おじいちゃんが「うみ」を見たことがあるんだと確信した。そうだとすれば、おじいちゃんは壁の外に出たことがあるんじゃないかって。

    ─────
    ──


    リヴァイ「その祖父はご存命か?」

    アルミン「いいえ。恐らくは亡くなっているかと。」

    リヴァイ「そう、か。」
  26. 26 : : 2019/06/04(火) 14:30:15
    ─────
    ──


    ジーク「おいおい。どうした?新入りに出し抜かれてるようじゃ先が思いやられるぞ。」

    この青年、本当に見込みがある。
    アニちゃんが連れてきただけあるなぁ、本当に。

    ジーク「やめだやめだ。新入りくんの完勝。彼に指一本触れられて無かったじゃないか。」

    エレン「ハァッ──、ハァッ──(指一本触れられて無い・・・?冗談じゃねえ、避けるだけで精一杯だ・・・。軍隊ってだけあって、精鋭揃いってことか・・・!)」

    ジーク「なに?不満げな顔だ。」

    エレン「今ので、俺の、完勝、ですか、、、?」

    ジーク「訓練の要点は「攻撃されないこと」。見ての通り君は一度も攻撃を受けていない。完勝と見ていいだろう。」

    エレン「・・・・。」

    「どわああああっ!!」

    おいおい。一体なんだよ。
    叫び声の方を見れば、見事に腕を極められている兵士と、腕をへし折る勢いのアニ。
    命知らずな奴もいるもんだな・・・、まったく。

    アニ「・・・私に気安く触んじゃないよ。」

    「すまん!!!!!すいません、すいません!!!!」

    アニ「まったく、男はバカばっかりだね。」

    ジーク「アニちゃん美人だから、男がほっとかないんだろ?」

    アニ「・・・・髭、もぎ取りますよ?戦士長。」

    ジーク「よ、よせよ、ははは。(アニならやりかねないな、こわいこわい)」

    ──────
    ────


    アニ「あんた、息切れすぎ。」

    エレン「仕方ねえよ、ハードな訓練だったんだしよ。」

    アニ「それより、何?「会いに来い」なんてさ。応援でもされたかったの?」

    エレン「んなわけねえだろ・・・。「世界の全て」。見つかったぞ。」

    アニ「・・・・!」

    エレン「これを見てくれ。」

    「シソノキョジント ソノコウリョク セカイヲシバル キオクカイヘンノサヨウ」

    アニ「記憶、改変・・・?だって?」





  27. 27 : : 2019/06/04(火) 20:37:53
    エレン「「世界の全て」とは言うが、厳密には、「始祖の巨人洗脳によって、歴史のなにを書き換えたか」を記した書物だ。」

    アニ「ちょっと待ちなよ。それを書いた奴は、記憶の改変を受けてないってことじゃないか?」

    エレン「ああ。そうなるな。普通に考えりゃ、これを記した人物は、初代始祖の巨人継承者だったか、始祖の歴史改変を受けない人物だろう。」

    アニ「・・・・。」

    エレン「始祖の力は、「現象を意のままに操る事」。なら、こいつの力で─────」


    ────俺達の巨人を含めて、世界中の巨人を無かった事にできる。

    ───────
    ────
    ──


    ジーク「・・・・・。どうやって・・・!どうやって<<禁書>>を持ち出したああああぁっ!!!!」

    クソっ!!!!!
    ここは「座標」を持つ者と、俺を除いて侵入出来ないはず・・・!

    ・・・・・。

    ・・・・・侵入できた・・・・人物。

    訓練に、俺が訓練に出ていると知って、ここに侵入できた人物───。

    ジーク「・・・・記憶喪失の、あの男か・・・・・!!!!」

    ─────
    ───


    ピーク「アニ!!!逃げるよ!!!」

    アニ「は?なんだい急に?」

    ピーク「ジークにバレた!!!<<禁書>>を持ち出した事・・・!」

    エレン「ピークさん、どういう事ですか・・・。訓練からまだ帰って来ないって・・・」

    ピーク「そんな事いっても仕方ないでしょ!!!私が巨人化したらすぐに背中に乗って!!!パラディ島へ走る!!!」

    アニ「なんであんた、ピークの事を?」

    エレン「あれを盗み出す計画はピークさんが提案してくれたんだ。最初は半信半疑だったけど、なんか、悪い人じゃなさそうだったし。」

    アニ「なに、それ。」

    ピーク「行くよ、掴まって!!!」


    カッ─────!!!

  28. 28 : : 2019/06/05(水) 20:11:03
    アニ「ったく。どうなってんだい?」

    車力の巨人「コノイッタイニハ、ムクノキョジンハヒカクテキスクナカッタハズ・・・」

    エレン「・・・!止まってください!ピークさん!!!」

    車力の巨人「!?」

    エレン「あれ、なんですか・・・?」

    巨大な足跡が、側の方へ向かっていくつも並ぶ。

    車力の巨人「ハカイノチカラ────。ソウイウコトダッタノネ。」

    アニ「!?「破壊の力」?なんのこと?ピーク。」

    車力の巨人「イマハパラディトウヲメザスノガサキ!」


    ───────
    ───
    ──


    サシャ「あの、さっきから、音、しませんか?こう、スドドドドッていう音。」

    コニー「さぁ?聞こえねえけどなぁ。お前はどうだ、ジャン!!!?聞いてんのか!!!」

    ジャン「巨人だ・・・・!」

    コニー「は?」

    ジャン「兵長!!!!猛スピードで走ってくる巨人を確認!!!!!直ちに壁から降りましょう!!」

    リヴァイ「────!?総員撤退!!一旦壁の補強はやめにするぞ!!!」

    アルミン「待ってください!」

    ジャン「あ!?なんで待つんだよ、食われてえのか!?」

    アルミン「人が乗ってる!!!巨人の背中に!!!」

    確かによく見りゃ人が─────エレン・・・?

    ジャン「あれ、エレンじゃねえか!?」

    ミカサ「・・・・!エレン!!!エレン!!!!!」

    リヴァイ「おい、よせ!!!ミカサ!!!戻れ!!!」

    ミカサは兵長の制止を振り切り、巨人にアンカーを突き刺し、エレンの元へ飛んで行く。

    ミカサ「エレン!!!よかった、生きていて、よかった!!!」

    エレン「おわっ!!ミカサ、離せ、よ!苦しいって!!!」

    アニ「あのさ、私の目の前で抱きついてイチャイチャしないでよ。暑苦しいったらないよ、本当。」

    ミカサ「───!!なぜ、女狐がいるの───?エレン、どういう事?」

    エレン「話したい事がある。中に入れてくれ。」

    ─────
    ────


  29. 29 : : 2019/06/05(水) 20:43:48
    ────
    ──


    ハンジ「じゃあ、ミカサ、アルミン、ジャンは一緒になって私達を騙してたんだ?2年間にも渡って。」

    ミカサ「すいません」

    ジャン「ほんとうに、申し訳ございません。」

    リヴァイ「アルミン。てめえはどうなんだ。」

    アルミン「返す言葉も、ありません。」

    リヴァイ「まぁ、あれだ。強大な何かに立ち向かおうとする時、犠牲は付き物だろ。お前らは自分の「信頼」を犠牲にした。並の覚悟じゃ、出来ねぇ事だ。お前らの覚悟に免じて、俺は許す。クソメガネがどうするかは知ったこっちゃねえが」

    ハンジ「ねえ?リヴァイ。私って、そんな心が狭いように見えるかい?」

    リヴァイ「知るか。」

    ハンジ「許すに決まってるさ。こんなに興味深い書物を持ち帰ってくる手助けをしたんだからさ。」

    ─────
    ──


    リヴァイ「・・・・全て、洗脳によるものだった、ってことか?」

    ハンジ「洗脳と呼ぶのが正しいのかはわからない。でも、私たちはいずれ忘れるだろう。「始祖」を持つものが一声あげれば、全て、忘れる。」

    アニ「今、「始祖」はエレンの中にいます。エレンの意思によって、「世界を塗り替えられる」なら、この力で、私達に眠る巨人も含め、全ての巨人を消し去れる。」

    ハンジ「理論上は可能だろうね。だが、そうなると、エレンの中にいる「始祖」さえも消滅する事になる。」

    エレン「これからは「始祖」に頼らない、俺たちの世界が始めるんです。壁に囚われた世界を俺たちが解放するんですよ、ハンジさん・・・!」

    リヴァイ「なるほどな。てめえが朦朧としながら俺に伝えたかったのはそれだったのか。」

    エレン「・・・・。」

    リヴァイ「なぜ、その<<禁書>>の内容を一部理解していた?あのとき、あの場所で。なぜだ?」

    エレン「地下室に、理由があります。」

    ミカサ「・・・・・!」

    ──────
    ────






  30. 30 : : 2019/06/06(木) 08:03:55
    期待っす
  31. 31 : : 2019/06/06(木) 14:15:44
    ──────
    ───

    ジャン「ミカサ、鍵を」

    ミカサ「えぇ。」

    エレン「・・・ジャンが?」

    ミカサ「えっ・・・・?」

    エレン「ジャンが、お前に鍵を?」

    ミカサ「うん。これをエレンだと思って、持っておけって。」

    ジャン「おいっ、ミカサ、バカ!!!お前、恥ずかしいだろうがああああ!!!」

    コニー「へぇ~?ジャン、男前だなぁー?」

    サシャ「ただの馬面じゃなかったんですね!!!」

    ジャン「ちょっと待て、芋女。聞き捨てならねえぞ?「ただの馬面」はあだ名じゃないだろ、もはや!暴言だ暴言!」

    サシャ「芋女発言も暴言ですよー!!!」

    アニ「ふふふっ。」

    笑った・・・・?アニが・・・・。
    訓練生時代から、アニの笑顔なんて見たことなかったな・・・、そういや。

    アニ「なにさ?」

    ジャン「ああぁ?いや、アニも笑うんだなーってさ!!!」

    アニ「あんた、失礼なこと言ってるって、自覚してる?」

    ジャン「すいません、、、。」

    ─────
    ───


    アルミン「ピークさん、でよかった、ですよね?」

    ピーク「ええ。そうだよ。」

    アルミン「僕の祖父について、なにかご存知なんですよね・・・?」

    ピーク「かたいかたい。もっと気を楽にして。それに、エレンくんもそうだったけど、私は同年代だよ?敬語使わなくていいのに。」

    アルミン「ご、ごめん。ピークさん。」

    ピーク「「さん」もいらない。」

    アルミン「気を付けるよ・・・。」

    ピーク「まぁ、それはそうと。あなたに見てもらいたいのは、これ。」

    僕は手渡された紙を見る。
    メガネをかけた金髪の男性。やや口髭を蓄えており、柔らかな表情をしている。とても邪悪な様には見えなかった。

    ただ、大きな文字で「テハイショ」と書かれている事に引っ掛かった。

    アルミン「「手配書」・・・・。」

    ピーク「その人物が、あなたの祖父。」

    アルミン「・・・・えっ」

    ピーク「数十年前、「超大型巨人」を継ぐ事が確約された戦士だった。後にマーレ軍隊の隊長にまでなり、マーレに大きく貢献するはず、だった。」

    アルミン「「はずだった」・・・?」

    ピーク「アルレルト元隊長は、マーレが行っていた「パラディ島迫害」を知ってしまった。アルレルト元隊長は、なにより祖国を大切にしていたけど、それがきっかけとなって、パラディ島勢力として、パラディ島に入った。」

    アルミン「結果的に「裏切り者」として、マーレに指名手配された、ってこと・・・か。でも、祖父の年齢からするともう30年は経過してる。なんでいまさら、祖父の手配書が注目されたの・・・?」

    ピーク「裏、見てくれる?」

    ・・・・裏?

    これは・・・、暗号だ・・・。

    ・・・・・・!

    「ハカイノチカラ」・・・・・・?


    アルミン「「破壊の力」・・・・?」


    ピーク「そう。「マーレの破壊神たる、「超大型巨人」の力でパラディ島に向かった」と言うことを暗号化したものよ。」






  32. 32 : : 2019/06/06(木) 19:51:50
    アルミン「でも、「超大型巨人」を宿しているのはベルトルトだ。もし、祖父が「超大型巨人」の継承者だったなら、祖父を食った誰かをベルトルトか、後にベルトルトへ継承させる為の人物が食っていなきゃ辻褄が合わない。なのに、祖父は生きてた・・・。」

    ピーク「恐らくは「巨人脊椎液二次摂取」によるものだと思う。」

    アルミン「「巨人脊椎液二次摂取」・・・?」

    ピーク「無垢の巨人を介さずに、直接知性巨人になるための方法の一つだよ。本来、無垢の巨人になってから、なんらかの方法で脊椎液を摂取する必要がある。だけどこの方法は、その必要がない。」

    アルミン「なぜ、ですか?」

    ピーク「敬語、やめてってば。」

    アルミン「ごめん・・・。それはなんでなの?」

    ピーク「「巨人そのもの」になるからよ。脊椎と巨人体がほぼ完全に癒着した状態にするの。」

    アルミン「巨人・・・そのもの・・・?」

    ピーク「この方法には激しい副作用が伴う。」

    アルミン「・・・・。」

    ピーク「正規の段階をすっとばしてしまっているから、最終的に体が耐えきれずに「規律のとれない無垢の巨人」になってしまう。いずれ、必ずね。こうなってしまったら後がない。もとには戻れない。」

    規律の取れない、巨人・・・?「奇行種」、か・・・・。

    アルミン「だから、祖父は僕の前から姿を消したのか・・・・。そ、そうだ。これを見て、ピーク。」

    ピーク「これは・・・・!「超大型巨人」の脊椎液、、、?」

    やっぱり、そうか。
    おじいちゃんは、壁外国出身で、巨人にまつわる秘密を、知ってた。

    アルミン「ははっ!はははは!!やっぱり、やっぱりそうだったんだ!!!僕の推測は間違えじゃなかった!!!」

    ピーク「・・・・、どうしたの、いきなり?」

    アルミン「・・・・、、、あ、いや。なにも。」

    どうしてだ。世界が揺るぎかねない事態なのに、ドキドキしてる。怖いからじゃない。
    楽しんでる、この状況を・・・。

    アルミン「ピーク、僕にも「巨人脊椎液二次摂取」、できるよね?」

    ピーク「・・・・・!」




  33. 33 : : 2019/06/07(金) 23:01:04
    ピーク「ええ。できるでしょうけど、アルレルト元隊長の行方がわからないんじゃ・・・。」

    アルミン「これを見て。」

    例の「チョウオオガタ ハカイノカミ」の瓶だ。ピークの前にそれを置く。

    アルミン「祖父が僕に遺したものです。それを摂取すれば、一時的に「超大型巨人」に、なれるんだよね・・・?」

    ピーク「確かになれる。ただ、私の忠告、忘れた訳じゃないでしょ?」

    アルミン「もちろん。だけど、マーレ国の戦士長がピークさん達を追ってきているなら、そう遠くない未来に交戦することも考えられる。」

    ─────
    ───


    エレン「兵長、どうぞ。」

    リヴァイ「待て、まずその薄汚ねえ本を拭え。」

    兵長はハンカチを差し出す。
    そりゃそうだよ、かなり汚ねえしな。
    俺は本を隅々まで拭き、再び兵長に手渡す。

    エレン「どうぞ」

    リヴァイ「・・・・。こりゃ、さっきの<<禁書>>の写しか?」

    エレン「はい。」

    リヴァイ「・・・・。一部しか写せてないみてえだが・・・、この本を見て、お前は「壁の外」に何かがあると確信したんだな?」

    エレン「そうです。」

    ハンジ「<<禁書>>を写そうと試みたのは、なにもグリシャ氏だけではなかっただろう。恐らく、何十、何百、何千という単位の人達が、<<禁書>>を写し、後世に「世界の真実」を伝えてきたはずだ。けれどもその度に「始祖」によって記憶は塗り替えられ、結局は誰も「世界の真実」にはたどり着けなかった。」

    リヴァイ「そうだろうな。」

    ハンジ「だが、「始祖」はグリシャ氏からエレンに渡り、今、エレンの中にいる。我々壁内人類が、「始祖」による歴史改変を塞き止め、ようやく「世界の真実」に追い付いた。人類は今まさに、「負の連鎖」を絶ち切ろうとしてる。」

    エレン「そして、その「負の連鎖」を絶ち切るのは、俺達です。「始祖」の力によって、俺が巨人を「一匹残らず駆逐」すれば、俺達の時代が始まる。」

    リヴァイ「なら今すぐ行動に移せばいい話だ。そうできねえ理由が何かあるんだろ?」

    エレン「・・・・はい。」

    ジャン「おい、その理由って、なんだよ?」

    ミカサ「・・・・。」

    ジャン「てめえ!!!今さら黙りかよ!?教えろ!!!知ってるんだろ!!!」

    ジャンは俺の胸ぐらを掴み怒鳴り散らす。
    仕方がないよな。そうだ、仕方がない。

    エレン「死ぬことだ、俺が」

    ジャン「は?」

    ミカサ「な、なにを言ってるの!?エレン!!!」

    アニ「「始祖」が能力を行使するのは、死ぬときだ。死んで能力を使い果たした始祖は「赤子継承」の形で、別の人物に継がれる。」

    ミカサ「ふざけないで!!!!エレンは死なない!死んではいけない!」

    エレン「どちらか選べって言われたら、どうだ?ミカサ。「俺が死ぬか」?「巨人を滅ぼすか」?選べって言われたら?」

    ミカサ「選ばないっっっっ!選びたくないっっっっ!」

    ジャン「お前はどうなんだよ・・・?エレン。」

    エレン「・・・・。」

    ジャン「言っちまえば104期の同期は誰もお前が死ぬなんて未来に希望なんざ感じてねえよ。エレン、それなりに、楽しかったんだよ、俺も・・・・。」

    エレン「・・・ジャン・・・お前・・・!」

    ジャン「お前をぶっ飛ばしてぶっ飛ばされて・・・・!死にそうなときも、「また生きて帰って来やがったな、この野郎」と思いながらも、俺にとってお前は、大切な親友だ。だれが、死んでほしいと思うんだよ・・・!?「世界の真実」だ?巨人を滅ぼすだ?誰かの命を犠牲にするのはもううんざりなんだよ!!!」

    エレン「ジャン、だから俺で「最後」にしよう。」

    俺は涙ぐむジャンの肩に手を置き、覚悟を伝える。

    エレン「誰かが何かのために死ぬのは俺で最後だ。もう、誰も死ななくていい世界をお前らで作ってくれ。ミカサも。な?」

    ミカサ「ぅぅぅうっ・・・・!いや、私は、嫌!!!!」

    ピークさんと話をしていたアルミンが遅れて地下室にやってくる。

    アルミン「エレン・・・死ぬって?なに?何の話さ・・・?」






  34. 34 : : 2019/06/07(金) 23:24:57
    エレン「アルミン・・・・。」

    アルミン「「何かのために、エレンが死ぬ」って聞こえたんだけど、聞き間違え、だよ、ね?」

    エレン「いいや。聞き間違えじゃねえよ。「世界の為に俺が死ぬ」。」

    アルミン「・・・・!本気か・・・?エレン。」

    エレン「ああ。」

    アルミン「ははは、笑えないよ。ひどいなぁ、エレン。結局、海を見たのは君だけじゃないか・・・。一緒に海を見るんじゃなかったの・・・・!エレン!」

    エレン「悪いな。決めてたんだよ、もう、決めてた事だ。」

    アルミン「・・・・わかったよ。死んでくれ、エレン。僕らのために。」

    ジャン「アルミン・・・!!!ふざけんな、てめえっ!!!今何つった!?「死んでくれ」つったのかてめえっ!!!」

    アルミン「なら、何ができるんだ!?ジャン!!!君は何が出来る?「始祖」の力を行使する以外に、この状況を打破できる策があるなら教えてくれよ!!!」

    ジャン「・・・・!!!」

    アルミン「僕だって、死んでほしくないさ!誰にも、死んでほしくない!!!!だけど仕方がないんだ!!!こうするしか、方法がない!!!綺麗事じゃ解決できない!そうだろ!?ジャン!!!ミカサ!!!」

    ミカサ「エレンっ・・・!私、あなたがいたから、強くあれたっ・・・・!あなたの意見には逆らわないと、あなたに付いていくと決めた。だからっ、あなたの意見を、尊重する、しなければならないと思う。」

    エレン「ミカサ、ありがとう。」

    ジャン「・・・・勝手に、しろ。ちくしょう・・・。」

    ハンジ「・・・・。」

    リヴァイ「エレン。ここにいる奴等は、お前が死ぬのを止めたかった。当然の感情だ。てめえはその儚い想いを降りきって、人類に勝利をもたらそうとしている。後悔はねえんだな?」

    エレン「はい。」

    リヴァイ「わかった。許可しよう。エレン、「始祖」によってせかい─────」

    ───ドォォォォォォォオオオオオン───

    ハンジ「なっ!?何の音だ・・・!?」

    音を聞いて慌てて外へ出る。
    奴が、いた。超大型巨人、奴がいた。

    エレン「・・・ベルトルトォォォォォオ!!!」

    ベルトルト「「座標」を返してもらうよ、エレン。それは、僕らの物だ。」

    エレン「俺の故郷を、踏むんじゃねえよ、ノッポが・・・!」

    ───ビリリッッッッ───
    ────────
    ───
    ─カッ─────

    進撃の巨人「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!



  35. 35 : : 2019/06/07(金) 23:38:00
    ぽいえー!!!
  36. 36 : : 2019/06/09(日) 18:45:30
    ベルトルト「(エレン、わかるよ。君の目論みは。「始祖」によって「巨人を滅ぼす」事。そうだろ?エレン。)」

    つくづくムカつく面だよ、ベルトルト。
    「戦士」か「兵士」かなんて関係ねえ。
    俺はお前を、お前らをぶっ倒さねえと気が済まねえよ。

    進撃の巨人「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

    超大型巨人の足めがけて突進して行く。
    普通にやったんじゃ敵わないのは百も承知だ。

    俺は超大型巨人の足に組付き、アキレス腱に噛みつく。

    進撃の巨人「ガアアアアアアアアアアア!」

    ベルトルト「(っ────!?)」

    超大型巨人は足を左右に振り、俺を振り落とそうとする。
    大きく足を振り上げた時、噛みついていた歯がそれに耐えきれずに砕けちり、民家に叩きつけられる。
    ─────
    ───


    ミカサ「エレン!!!!」

    ジャン「待て!ミカサ!!!下がれって!」

    エレン目掛けて行われる投石。
    あぶねえところだ、あと一歩止めるのが遅かったら投石をまともに喰らってた。

    獣の巨人「うーん。惜しいなぁ。もう少し上を狙わなきゃ、ね!!!」

    ミカサ「─────!!!」

    ミカサは立体機動で投石に真正面から向かっていく。おいおい、正気か・・・!?

    ミカサ「たあああああああああああああああああああああああああああっ!」

    投石を掻い潜りながら獣に接近して行く。
    獣の巨人は投石の直後で体勢が整っていない。

    獣の巨人「────なっ────」

    ズシュュュュュュュュュッ────

    獣の巨人の目、肩、腕、足、と螺旋状に切り刻んで行くミカサ。

    ジャン「おおおっ!!!」

    獣の巨人「(速い・・・!?硬質化が追い付かないとは・・・・!まさかこいつは、)」


    ────アッカーマンか・・・・?





  37. 37 : : 2019/06/10(月) 18:16:56
    超大型巨人(ベルトルト)「(どうしたんだよ、エレン。さっきの威勢はどこへ行った?)」

    進撃の巨人「グオオオオオォッッッッ・・・・!?」

    なんだ、身体、動かねえ・・・!
    ちくしょう、視界がうねって、クソ、立てねえぞ・・・!

    ─────
    ──


    ミカサ「(エレンが危ないっ!はやくこいつを仕留めて、エレンの所へ向かわないとっ・・・・!間に合わない!────!?)」

    ─────いない・・・?


    ミカサ「・・・・!!獣はどこに・・・!?」

    アルミン「ミカサ!!!後ろだ!!!」

    アルミンの声で後ろを振り向く。
    鬼の形相でブレードを振りかざすライナーの姿が見えた。それとほぼ同時に、ライナーの体は宙に舞う。

    ライナー「がっっっっ!?」

    リヴァイ「この・・・・クソガキが────!!!」

    兵長の蹴りはライナーの顎を捉える。
    続けざまにライナーのこめかみにブレードを突き刺し、屋根に張り付けの状態にし、さらに、うなじに向かってブレードを降り下ろす。

    ライナー「ああああああっっっっっ!!!」

    リヴァイ「うるせえよ、「鎧」。てめえにはずいぶんしてやられてきたからな。ここで死んでもらうしか────」

    ライナー「あがっ・・・・!」

    ───バチバチチチッッッッ
    ─バチバチチチッッッッ

    あの稲妻は・・・・!巨人化の・・・・!?

    リヴァイ「─────ッ!?」

    ミカサ「兵長!!!!」

    ─────カッッッッッッ!!!!

    ─────
    ───



    アルミン「ぅぁっ・・・・・!!」

    目映い閃光と稲光に目が眩み、兵長とミカサの安否を確認することができない。

    アルミン「(ライナーは初めから、兵長の接近に気がついていたのか・・・!?兵長とミカサには勝てないと踏んで、自身が爆弾となって二人を吹き飛ばそうと・・・・!?)」

    やがて、閃光はやみ、現場を見ることができた。
    周囲の家屋は消し飛び、中心には「鎧の巨人」が鎮座している。

    アルミン「(ミカサと────兵長は・・・!?)」

    二人の姿が見えない。
    周囲を見回すと、車力の巨人がかろうじて残った家にもたれ掛かるように倒れていた。
    損傷はひどく、体の半分が消し飛んでいる。

    車力の口にはミカサがくわえられており、ミカサは何ともないようだった。
    兵長は車力の肩に立っており、こちらも軽いけがのようで安心した。

    アルミン「はぁっ・・・。よかった・・・!」

    残る問題は「鎧の巨人」と「超大型巨人」だ・・・・。

    ─────
    ───


    ライナー「(仕留め損ねた・・・・!あんな絶好のチャンス、二度とねえってのに・・・!にしても、ピーク。どういうことだ?なぜ、お前がそっち側にいる?)」

    アニ「ライナー。」

    鎧の巨人「─────!?」

    アニ「あんた、本当にパラディ島が悪魔の島だなんて思ってるのかい?」

    ライナー「(何を、言ってる?アニ。なぜ、ここに・・・?)」

    アニ「私たちは見たはずだよ。悪魔なんかいなかったのを。いたのは、私達と同じ人間だってことを。もうやめにしようよ。巨人なんて、名誉なんてどうでもいいだろ!?人の命に比べたらなにさ?」

    鎧の巨人「グアアアアアッアアアアアッ!!!」

    ライナー「(アニ・・・・!裏切ったな・・・?)」




  38. 38 : : 2019/06/10(月) 21:38:39
    アニ「(そう。それでいい。こっちにきなよ、ライナー)」

    ─────
    ───


    アルミン「そうだ。君はライナーに語りかけるだけでいい。」

    アニ「・・・・。どうするつもりさ?」

    アルミン「とにかく、今はライナーを、兵長とミカサから引きはなさきゃ。その先は・・・。わからない」

    アニ「やま勘、って事かい?」

    アルミン「そうなる、ね。」

    ──────
    ──


    鎧の巨人「アガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

    ドッドッドッド──────

    アルミン「(アニに向かって鎧が突っ込もうとしてる・・・・!まずい、予想以上に早く事にとりかかったな───。)」

    僕はふと、「チョウオオガタ ハカイノカミ」の瓶をみやる。

    ドクンッ─────

    アルミン「(もし、僕が超大型になる過程で、ベルトルトのような爆発を起こせたら、この状況は、変わるかもしれない)」

    ドクンッ────

    アルミン「(でも、そうしたら僕は、いずれ「奇行種」になって、皆を、皆と会えなくなる。)」

    ドクンッ───

    『いいか、アルミン。命を懸けると決めた時、男は止まっちゃいけないんだ。』

    アルミン「(エレン、君が「始祖」を行使したなら、僕らから「巨人」は消える。だから、僕は、本当に命を犠牲には、できない。)」

    ドクンッドクンッ───

    アルミン「(エレン、君を信じていいか?エレン、君は本当に死んでしまう。君からすれば、「命を懸けるフリ」に見えるだろうけど)」

    僕は、「チョウオオガタ ハカイノカミ」の瓶を持ち、ながら壁の上に立つ。そして大声で叫んだ。

    アルミン「みんなああああっ!!!!ここから離れろぉっっ!!!!!!!!!!」

    ジャン「!!!」

    ミカサ「あ、アルミン・・・?」

    エレン「(アルミン、お前、一体、何を・・・?)」

    アルミン「早く離れるんだ!!!早く!!!」

    ピーク「(覚悟を、決めたのね・・・。アルミン。)」

    車力の巨人「ノッテ。」

    ミカサ「あなたは重傷。その体じゃ、満足に動け、」

    車力の巨人「ノッテ!!!!」

    リヴァイ「ミカサ。あいつに懸けるぞ。他のやつらをこいつにのせろ。」

    ミカサ「でも、」

    リヴァイ「時間がねえ、さっさとしろ!!!」

    ──────
    ──


    ライナー「(逃がすか────!)」

    車力を追いかけようとする鎧を呼び止める。これも賭けだ。呼び掛けを無視されたら────

    アルミン「動くな!!!ライナー!!!」

    ライナー「(・・・・・!)」

    鎧の動きが止まり、こちらを振り返った。

    アルミン「そこを、動くな。」

    ライナー「(・・・・お前に、なにができる?アルミン。)」

    アルミン「(エレン。僕は、君に頼ってばかりだったね。僕の夢に付いてきてくれた。今度は、)」

    僕は鎧の巨人に向かって、壁から落下して行く。

    ────今度は僕が、君の夢に付いていく番だ

    落下しながら、「チョウオオガタ ハカイノカミ」の瓶を口にくわえ、思いっきり噛み砕く。


    アルミン「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!」

    ──ビリリリッ
    ─バチバチチチッッッッ

    ライナー「(・・・・!!!!巨人化の、いなづ────)」

    ─────カッッッッッッッッッッッッ!

  39. 39 : : 2019/06/10(月) 22:10:42
    ライナー「(っっっっっっ・・・・!)」

    アルミンの体から、とてつもない規模の爆発が起こる。爆風は「ゴォォォォォォォ」と音を立て、衝撃で砕けた家屋、鎧の巨人の破片を撒き散らしながら、こちらに迫ってくる。

    エレン「おい、一体、何が起こったんだよ・・・。あれじゃ、まるで・・・。」

    進撃から出て、初めて見た光景がそれだった。
    親友が、「あの忌々しい爆弾」のごとく、爆発する瞬間。

    エレン「超、大型巨人、見たいじゃねえかよ・・・?」

    ミカサ「みたい、じゃない。」

    エレン「・・・・は?」

    ミカサ「アルミンは、「超大型巨人」になったんだと思う。」

    エレン「なんだよ、それ・・・?超大型巨人はあそこにいるじゃねえか!?あのクソ野郎だよ、見えるだろ、ミカサ!!!アルミンが!?超大型巨人だ!?笑えねえよ!」

    ミカサ「・・・・みて。エレン。」

    ミカサは爆風吹き出すその方向を指差す。

    エレン「・・・・・・あ・・・・」

    煙は風で流れ、その巨体が徐々に姿を現す。
    筋肉の繊維が剥き出しになったような風貌。
    所々、肉の形成が追い付いていないが、その姿は超大型巨人そのものだった。

    アルミン「(─────マーレ軍服、久しぶり、だな。・・・・!?僕は今、何を・・・・?)」


    ベルトルト「(どうして・・・・!?どうして、アルミンが、超大型、巨人に・・・・!!)」

    ──────
    ───


    ジーク「・・・・くっ」

    なんだ・・・!?
    吹き飛ばされた、のか・・・・!?
    あの爆風はなんだ、いったい、なに、が・・・・!!!

    超大型巨人(アルミン)「・・・・。」

    超大型巨人・・・・・!!!
    なるほどな、「アルミン・アルレルト元隊長」の亡霊が俺達に復讐しようってのか。

    ジーク「笑えねえ、ジョークだな。」

    ──────
    ──


    超大型巨人「・・・・・。」

    ベルトルト。いつから超大型から出てきていたんだ?
    君が見るのは初めてだろう。これが僕らの味わった、圧倒的な恐怖だ・・・・。

    ────ガシャッ

    ベルトルト「よ、よせ!アルミン!瓦礫を離せ!!!離すんだ!!!」

    息もつかせぬ、絶望だッッッッッ!屈辱だァッッッッッッ!!!!

    超大型巨人「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!」


    ババババババババッッッッッ────
    ズドドドドドドッッッッ────

    ベルトルト「うわああああああっ!!!ライナー、逃げるんだ!!!!早く!!!殺される!!!ライナァッッッッッッ!!!」

    僕は、ベルトルト達目掛けて瓦礫を投げつける。
    鎧に瓦礫が被弾し、身体を覆う装甲が粉々に砕けちり、肉が千切れるのが見えた。

    ベルトルト「ああぁっ!?ライナー!!!!」

    ライナー「(く、そ、、、。アルミ、ンが、「二次摂取」を、す、る、とは。やべえ、な、こりゃ、いしき、が、うすれ、る)」

    ジーク「ベルトルト逃げるぞ。」

    ベルトルト「どうやって!?どうやって逃げるんだ!!!!壁を越えられもしない!!!ライナーは瀕死。僕と戦士長は巨人化できるまでに時間がかかる!!!どうやってにげるんだ!!!」

    ジーク「落ち着け!!!超大型はうすのろだ。お前が一番知ってるだろう。あのガタイじゃ、立体機動には追い付けない。そうだろ!?」

    ベルトルト「・・・・・!!!」

    ──────
    ───


    リヴァイ「・・・・・。誰か、立体機動を使ったか?」

    ハンジ「いいや?誰にも許可してないけど。」

    リヴァイ「誰にも・・・・?─────!」

    ちっ。遅かった・・・・!

    リヴァイ「獣とガキに逃げられた。」

    ハンジ「・・・・!一体、どうやって立体機動を・・・・!」

    リヴァイ「恐らくは獣がミケから奪ったものだろう。あの野郎、もしもの時に温存してやがったみてえだ。」

    ハンジ「・・・・。さて、どうする?アルミン、もう、限界みたいだけど。」

    アルミンの超大型は膝をつくように倒れ、消滅しかけていた。

    リヴァイ「ひとまず、中からアルミンを引っ張り出すぞ。」

    ハンジ「了解。」

    ─────
    ──

  40. 40 : : 2019/06/12(水) 12:16:01
    ───────
    ─────


    アルミン「─────っ」

    エレン「アルミン!おいっ!大丈夫か!!!兵長!アルミンが目を覚ましました!」

    リヴァイ「・・・・!!」

    僕は、あれから、どうなった・・・・?
    超大型巨人になって、怒りに任せて瓦礫をベルトルト達に投げつけた。
    それからの、記憶が、ない。

    アルミン「・・・・!エレン!!!ベルトルト達は!?ベルトルト達はどうしたんだ!?」

    エレン「それが・・・」

    ジャン「逃げられたんだ。やつら立体機動で壁を越えて、逃げやがった。悪い。アルミン。決死の覚悟で、超大型巨人に、なってくれたのによ。情けねぇ。俺はいつもそうだよな。皆のお膳立てを無下にしちまう。」

    アルミン「ジャンのせいじゃないよ。戦況を掻き乱したのは紛れもなく僕だ。責任は僕にある。」

    ・・・・ピークさんは?

    アルミン「ピークさ、じゃなくて・・・。ピークは・・・?みたところ酷いケガみたいだったけど・・・。」

    アニ「後ろ。」

    アルミン「・・・・・・!」

    ピークさんは右足と右腕から煙を吹き出し横たわっていた。頭からは出血しており、痛々しい。

    アニ「確かに重傷。だけど、死ぬほどじゃないよ。安心しな。」

    アルミン「そうか、よかった。」

    ────ズキッ

    アルミン「あぅっ────!!!」

    ミカサ「大丈夫!?アルミン!?」

    ────『悪魔とは、どういう意味ですか?上官?』
    ────『しらばっくれないでください!この書物には「パラディ諸島の悪魔」とはっきり書かれている!!!』
    ───『人間を悪魔と呼び迫害しているなら、これは重大な人権問題だ!!!』


    アルミン「パラディ・・・・諸・・・・島の、悪・・・・魔・・・?」

    ジャン「・・・・アルミン・・・?おい、大丈夫か?」

    アルミン「・・・・え?」

    ジャン「今、「パラディ諸島の悪魔」って・・・・」

    アルミン「そんなこと、言った・・・?」

    ミカサ「アルミン・・・。本当に、大丈夫なの・・・?」

    アルミン「大丈夫さ。僕は『戦士』だから。」

    アニ「・・・・!!!」

    ───────
    ────


    その日の内に兵舎に引き返し、負傷したピークさんと、記憶の混濁がみられるアルミンを休ませる。

    エレン「『戦士』か。」

    アニ「「アルレルト元隊長」の記憶を引き継いだんだ。記憶が混濁するのも仕方無いさ。」

    エレン「なぁ、「超大型巨人」は何体もいるのかよ?ベルトルトのやつだけじゃねえのか?」

    アニ「理論上はね。「脊椎液」で何体でも複製できる。ただ、それに適合できる人材は限られていて、適合できたとしても、私達みたいに完全適合できなければ、「奇行種」になる運命さ。そして、適合できる人材は1度に2人は出てこない。」

    エレン「アルミンを「奇行種」になんかさせてたまるか・・・。早く、「始祖」の力を行使しねえと・・・。」

    ──────
    ───


    ハンジ「アルミン。どう?体調は?」

    アルミン「ハンジさ────」

    ───ズキッ

    アルミン「うぁっ────」

    ハンジ「いいの、いいの!!!寝てて大丈夫、無理は禁物だよ。」

    アルミン「あ、すいません。体調は良好です。ただ、」

    ハンジ「ただ?どうしたの?」

    アルミン「祖父の記憶が、見える度、思考のすべてが、祖父のものになってしまって行くようで、すこし、怖いです。」

    ハンジ「そうか。でも、アルミンはアルミンさ。アルミンがそこにいる、それが証拠!君はアルミン。誰がなんと言おうが揺るがないよ。」

    アルミン「はい・・・。」





  41. 41 : : 2019/06/12(水) 16:37:59
    文章力と、投稿頻度の早さがすごい!

    ので期待
  42. 42 : : 2019/06/13(木) 00:49:49
    エレン「はい・・・?」

    ハンジ「獣の巨人になれる人物、彼は「ジーク」というらしいけど。ジークと君には、共通点があまりにも多い。例えば、君が演技をし、リヴァイと戦ったあのときとジークがミカサに追い詰められ、「取ったときの行動」だ。」

    エレン「取ったときの、行動・・・?」

    ハンジ「覚えてない?エレン、君は、姿を消したんだ。巨人の中から忽然と。リヴァイが見逃すはずない。あれは最早、「高速」だとか、そういう次元の話じゃない。まるで、「消えた」みたいじゃないか。」

    ミカサ「勝手な────」

    アルミン「勝手な憶測で物を語らないで下さい!!!」

    ハンジ「・・・・。なぜ、勝手な憶測だと思うんだ?」

    アルミン「ジーク戦士長が巨人から「消えた」ように脱出できるのは、獣の特有のもので、進撃・始祖のどちらにもそのような特性は────」

    エレン「・・・・!」

    ミカサ「・・・アルミン?」

    ジャン「お前、なんでそんなこと、知ってるんだよ・・・・?」

    待て、僕は、なんでこんなにも巨人を知ってるんだ・・・・?
    巨人の特徴を、さも、見てきたかのように・・・・。

    ハンジ「いいよ。アルミン。続けて。」

    アルミン「すい、ません。大丈夫です・・・。」


    ハンジ「そう。じゃあ話を戻すよ?私は、エレンとジークに何らかの接点があると見ている。」

    ジャン「接点って、なんですか・・・?」

    ハンジ「血縁関係だ。」

    エレン「・・・・・!!!」

    ───────
    ─────


    ベルトルト「ライナー!!!くそっ、目を開けろよ、ライナー!!!」

    僕はマーレに戻る荷馬車の上で、瀕死のライナーに心臓マッサージを施していた。
    アルミンの投石によって右肩、左脇腹を損傷しているが、巨人の再生能力によってそれらは修復されつつあった。
    だが、心肺が完全に停止している。
    このままでは、ライナーは────

    ベルトルト「クソッッッッ!ライナー!!!マルセルの所に行くのはまだ早いだろッ!!!「始祖」を取り返すまで、僕らは行けないんだ。そうだろ、ライナー!?」

    心臓マッサージを繰り返す僕の手を戦士長が止める。

    ジーク「心肺が停止してから、もう9分近く経つ。蘇生は、できない。絶望的だよ。」

    ベルトルト「ッッッッッ────。嘘だ!こんなの、嘘だ!ライナー!?目を覚ますよな!!!?死んでも死にきれないよなぁッ!!!?こんなんじゃ、ライナァッッッッ!!!目を、覚ませ・・・・!目を開けろよぉっ!!!ライナァッッッッ!!!」

    ─────ピクッ

    ベルトルト「・・・・・!ライナー!!!?ライナーが動いた!!!」

    それを見て僕は再び心臓マッサージを試みる。いいぞ、がんばれ!!!ライナー!!!

    ────
    ──


    ミカサ「・・・・!アニ・・・!」

    アニ「身構えないでいいよ。私はもう、敵じゃない」

    ミカサ「信じられない」

    アニ「信じられなくてもなんでもいいさ。私が敵じゃないのは揺るぎない真実だ。」

    ミカサ「なんの用?わざわざ部屋まで訪ねてきて。」

    アニ「ミカサ。もしもの時は、私があんたの身代わりになるから。」

    ミカサ「何を、言ってるの?」

    私だって馬鹿らしいと思う。
    だけど、今ならはっきりとわかる。
    「始祖」を行使して、巨人が居なくなって、それからの世界に必要なのは、私じゃない。ミカサだ。

    アニ「あんたが死にそうなとき、私を呼んで。私があんたの盾に、なるから。」

    ミカサ「・・・・。」

    アニ「私は、生きてちゃ、いけないんだ。」

    ミカサ「・・・・。生きていちゃいけない人は、この世には居ないなんて、そんなこと言えない。」

    アニ「あぁ。」

    ミカサ「実際、死ねばいいと、死んでしまえばいいのにと思った人は、沢山いる。」

    アニ「あぁ。」

    ミカサ「でも、エレンに誓った。約束をした。「何のために誰かが死ぬのはエレンで最後」。私は、あなたがたまらなく憎い。」

    アニ「だろう、ね。」

    ミカサ「だけど、死んではいけない。生きて、アニ。」

    アニ「・・・・・!」

    ミカサ「生きて、償うんだ。これまで、やって来たこと。生きて。」

    アニ「ミカサ、あんた・・・・。」

    ─────
    ───


  43. 43 : : 2019/06/13(木) 14:21:00
    ──────
    ────

    リヴァイ「あの髭面とエレンの血が繋がってるだと?」

    ハンジ「ピークに聞いたところ、彼の姓は「イェーガー」と言うらしい。もちろん姓が同じだけのまったくの赤の他人とも考えられる。だけど、あまりにも揃った証拠の信憑性が高すぎるし、偶然だとも思えない。」

    エレン「・・・・父さんと、似てました。」

    リヴァイ「なんだと?」

    エレン「顔つきだけじゃない。仕草だって、そうだ。マーレに潜伏していたとき、妙に波長があったというか・・・。それに、何より、父さんはマーレ出身だ・・・。そこに家庭があったって、何も不思議じゃない。」

    ハンジ「君に血縁の可能性を示したのには理由があるんだ。<<禁書>>に記されている、ここをみてほしい。」

    <<禁書>>のあるページを、ハンジさんは指でさす。そこに書かれていたのは「始祖の巨人」が受け継がれる様子だ。さらには、「始祖の力」を行使する条件も書かれていた。

    エレン「「継承者は王族、もしくは自身と血縁関係がある人物と接触することにより、始祖の叫びの力を行使できる」・・・・。」

    ハンジ「そう。簡単に言えば、始祖の力の行使には、段階を踏む必要がある。第一段階に、「王族、もしくは自身と血縁関係がある人物との接触」。第二段階に、「継承者の死亡」。この2つを達成してはじめて、「始祖」は力を発揮する。」

    リヴァイ「じゃあなにか?あの髭面に握手でも求めなきゃならねえってわけか?」

    ハンジ「握手ならまだいいよ。この「接触」がなにを指すのか、私達にはわからない。」

    エレン「また、行き止まり、ですか。」

    ハンジ「はぁ。私達はいつも世界に置いていかれるね。走っても走っても、その背中は遠くなるばかりだ・・・。」

    エレン「・・・・。」

    ハンジ「それに、君らが使える「瞬間的に消滅する能力」も気になるし、個人的に。」

    リヴァイ「奇行種がなりを潜めていたと思ったが、正体を表しやがったな。クソメガネ、うなじをよこせ。削いでやる。」

    ハンジ「やめろってチビ!!!バーカバーカ!!!かよわい乙女に何てことすんだよバーカバーカ!!!」

    リヴァイ「うるせえよ。同じ事を2回繰り返さなきゃ死ぬのかてめえは。」

    エレン「(ここには「血縁関係がある人物との接触」とだけ記載されている。その人物が生きているか死んでいるかは指定していない。つまり────)」

    エレン「ジークの死体に触れても、力を発動できる、のか・・・?」

    ハンジ「・・・・え?」

    エレン「ここには、その人物の生死は書かれていません。推測ですが、その人物が死んでいても、力の発動は出来るのではないか、と。」

    リヴァイ「あの髭面を、殺るのか?」

    エレン「できます、か・・・?」

    ハンジ「・・・・。」

    ───────
    ────


    アルミン「マーレに、侵攻・・・?」

    リヴァイ「そうだ。」

    コニー「待ってください!向こうにいる人達にはなんの罪もないじゃないですか!ライナーやベルトルトをぶん殴るだけじゃダメなんですか!?」

    サシャ「そうですよ!私達が味わった恐怖を、同じように与えようって言うんですか!!!?」

    リヴァイ「言いたいことはわかる。全うな意見だ。だが、俺たちは今、切羽詰まった状況だ。「始祖」の行使は出来ず、マーレには軍事力において圧倒的に差を付けられている。事は「殺すか、殺されるか」のところまで来ている。」

    ハンジ「間違えないでほしいのは、「侵攻」であって「侵略」ではない。あくまでも目的は「ジーク・イェーガー」ただひとり。他は一切傷つけない。もちろん、自己防衛の為に、刃を振るわなきゃならなくなることも否定できない。」

    ミカサ「覚悟は出来ています。」

    アニ「・・・・私に拒否権は無いんでしょ?」

    ハンジ「察しがよくて助かるよ。」

    アルミン「・・・・マーレ、か・・・。おじいちゃんの故郷・・・・。憧れていた、壁外・・・。」

    ハンジ「戦火の中に身を投じて、焦がれる痛みを味わうかもしれない。あるいは昔の戦友を相手に、苦しい判断を迫られるかもしれない。それでも、皆、」

    ハンジさんは心臓に拳をあて、敬礼のポーズをとる。

    ハンジ「心臓を捧げてくれ。」

    リヴァイ「ッチ。締まらねえな。」

    兵長はすたすたとハンジさんの目の前に歩いて行く。そして前を向き直ると、同じように話始めた。

    ハンジ「ちょっ、リヴァイ!?私の役目、」

    リヴァイ「人類の今後はここにいるお前らに委ねられている!!!」

    ハンジ「リヴァイ・・・・!」

    リヴァイ「心臓を捧げよ!!!!」

    一同「はっ!!!」

    ハンジ「えぇっ・・・!?皆、ひどくない・・・?」
    ──────
    ──

  44. 44 : : 2019/06/13(木) 14:21:10
    ──────
    ───


    ピーク「ふああ、よく寝た。」

    サシャ「あんな大ケガだったのにもう大丈夫なんですか!?」

    ピーク「大ケガ、かなぁ?」

    コニー「身体の半分ぶっとんでたんだぜ!?あれば大ケガだろ・・・。」

    サシャ「やっぱり軍人さんは、日頃鍛えてるからケガの治りも早いんですかね!?」

    ピーク「ははは。かもね。」

    ─────
    ──


    ピーク「そう。マーレに侵攻・・・。」

    サシャ「はい・・・。」

    コニー「そんなこと、したくねえよ。」

    ピーク「どうして?」

    コニー「どうしてって・・・。当たり前だろ!?辛かったし、苦しかったからだ。地獄の方がましだと思った。だからこそ、同じようなことはしたくねえんだよ。」

    ピーク「・・・・悪魔、だなんて。誰が言ったんだろうね。パラディ島に来て、島に住む人達とふれあう度、思うんだ。どっちが悪魔なんだって。訳もしらない人の命を奪い、不毛な争いを続ける私達を、悪魔と言わず、なんと言うんだろうって。」

    サシャ「きっと、どちらも悪魔なんかじゃありません。ただ、まともでもない。それは、人間の本質なんじゃないでしょうか?古来より人間は滅ぼし、滅ぼされ、歴史を繰り返してきました。だけど、それをしたのは「人間」です。悪魔なんて、歴史のどこを見たっていない。いるのは、「正しいと思った信念に基づいて行動した人間」だけです。」

    ピーク「そう、だね。」

    コニー「サシャ・・・?なんでそんな歴史をしってんだ?」

    サシャ「これでも村にいたときは読書好きだったんですよ!」

    コニー「見損なったぞサシャ!!!」

    サシャ「えぇっ!?」

    コニー「お前はバカ芋女じゃなかったのかよ!!!裏切り者ー!」

    サシャ「聞き捨てなりませんねー!?」

    ピーク「こらこら、喉つめるよ。食べてからにしなさい。もう・・・。」

    ─────
    ───






  45. 45 : : 2019/06/14(金) 12:26:42
    ─────
    ──

    ジャン「本当にまぁ、皮肉ってのは続くもんだな・・・。」

    エレン「は?」

    ジャン「考えてみろよ。お前は「座標」、結局のところ「座標」は「始祖」を指すんだろうが。なんにせよ「座標」を狙って向こう側はエレンを狙ってたわけだろ?今回俺たちは座標の為に、「ジーク」を狙う。」

    エレン「イェーガー家は追われる方が好きみてえだな」

    ジャン「お前が言うと笑えなくなるだろ・・・。」

    アルミン「・・・・。」

    ジャン「どうした?アルミン。喰わねえのか?」

    アルミン「うん・・・。食欲がなくて。」

    ミカサ「ちゃんと食べなければだめ。ほら、アルミン。これ、食べて。」

    ミカサは自分のパンをアルミンに差し出す。
    ちくしょう、羨ましいなクソ。

    アルミン「ありがとう。あのさ、みんな。」

    エレン「どうしたんだよ、いきなり神妙な顔して。」

    アルミン「僕の判断は、正解だったと思う・・・?」

    ミカサ「・・・自信がないの?」

    アルミン「ううん。自信がないわけじゃないんだ。あのときあの場所で僕が「超大型巨人」にならなければ、状況は好転しないだろうと思う。」

    エレン「ならお前は正しかったんだよ。」

    アルミン「でもね、エレン。本質はそんな単純なものじゃないと思うんだ。成果は常に変動していく。その時に良い成果をあげられても、後々に悪い成果になることもある。実際僕は、自分自身を見失って、おじいちゃんの人格と僕の人格とで解離が生じてる。結果として、悪い成果なんじゃないのかな。」

    エレン「本質が単純じゃねえなら、成果だってそんな単純なもんじゃねえよ。「正しかったか」、「正しくなかったか」、そんな単純かものじゃねえはずだろ。」

    アルミン「ライナーを殺したかもしれないんだ、怒りに任せて。一体、ライナーやベルトルト達と何が違うんだろうって。僕は、僕が恨んでいた彼らと同じ行いをした。」

    アルミンは震える自分の手のひらをみながら呟く。

    アルミン「今でも思い出すんだ。瓦礫に飲まれて砕け散る「鎧の巨人」の姿、そして、ベルトルトの悲鳴、蒸気の音。おじいちゃんの記憶が僅かに見える度、僕はおじいちゃんのように、人のために何かできる人間じゃないと、痛感させられるんだよ。」

    リヴァイ「お前はアルレルト隊長ではねえだろ。」

    ジャン「兵長!?」

    エレン「なぜここに!!?」

    リヴァイ「一緒に飯でも食おうと思ってな。悪いか?」

    エレン「いえっ!!!」

    リヴァイ「アルミン、隣、失礼する。」

    アルミン「あ、はい。どうぞ。」

    リヴァイ「話を戻すが、お前はアルレルト隊長じゃない。彼と同じになろうと思っても、無理な話だ。ピークに聞けば、彼はパラディ島迫害を完全に消し去ろうとしてたらしいじゃねえか。祖国を裏切ってまで、他国の問題の解決に乗り出すのは、ただのお人好しが出来たことじゃねえ。」

    アルミン「はい。」

    リヴァイ「はっきり言えば、彼は偉大だ。たかだか18やそこらのお前が彼と同じになろうなんておこがましいんじゃねえのか。」

    アルミン「・・・・。」

    リヴァイ「お前にはお前にしか出来ないことがある。方法はひとつじゃないと、アルレルト隊長が教えてくれている筈だ。」

    アルミン「・・・・奇襲。」

    リヴァイ「あ?」

    アルミン「マーレに侵攻するためには奇襲が最適ではないでしょうか。」

    ジャン「いつもの調子になってきたじゃねえか!!アルミン!!」

    リヴァイ「ほう。詳しく話せ。」

    ──────
    ───







  46. 46 : : 2019/06/14(金) 12:56:05
    ─────
    ───


    ハンジ「これは、また・・・。大胆な奇襲だね・・・?「女型」に隠れながら、マーレに侵入するって?」

    アルミン「はい。マーレに向かうまではまっさらな平地です。立体物がどこにもなく、立体機動で飛び回る僕らには、不利な地形だ。だからこそ、「女型の巨人」に、立体物の役割を果たしてもらうんです。」

    アニ「神出鬼没に現れる立体物。さらにそれを使って攻撃してくるんじゃ、向こうからしてみたら迷惑この上ないね。」

    アルミン「さらに言えば、アニは格闘センスが突出してる。硬質化も行えて、スピードもある。攻防一体の、いわば兵器になってくれるのではないでしょうか。」

    ハンジ「悪くない作戦だけど、向こうは手慣れだ。さらには巨人を数体保有してる。戦力ではこちらが負けてるよ?勝算はあるの?」

    アルミン「あります。」

    ハンジ「根拠は?」

    アルミン「僕の中には「マーレ軍隊の元隊長」の記憶がある。マーレのことは、よく知ってる。勝てます。必ず、ジークを捕獲できます。」

    ハンジ「・・・・。いいだろう。マーレには「女型」で侵入する方法を取る。」

    ピーク「アニ、いきなり大役だね。」

    アニ「私、緊張すると力発揮できないんだけど。勘弁してほしいよ。」

    ピーク「またまたぁ!わかりやすい冗談言って!」

    ─────
    ───


    ジーク「奇襲?」

    ポルコ「はい。過去にアルレルト元隊長は、マーレに奇襲攻撃を仕掛けているとの記述がここに。」

    ポルコから手渡された資料には確かに「アルレルト元隊長による奇襲」の全容が記されていた。

    ジーク「・・・・パラディ勢力が、再び奇襲を仕掛けてくると?」

    ポルコ「可能性はなくもないでしょう。なによりむこ────」

    ライナー「戦士長!!!!」

    ポルコ「ライナーお前な。空気を読めよ?今は俺がジーク戦士長に話をしてんだ。」

    ライナー「急を要することだ」

    ポルコ「手負いは寝てろよ。足手まといなんだ。俺を兄貴の二の舞にさせてえのか?」

    ベルトルト「ポルコ!!!」

    ベルトルトはポルコの肩を掴み、ライナーと引き離す。
    するとポルコはベルトルトの胸ぐらを掴み寄せ、今度はベルトルトに食って掛かる。

    ポルコ「元はと言えばお前らのヘマのせいだろうが!!!!俺たちは何を失ったよ!?言ってみろ!ライナー、ベルトルト!!!」

    ベルトルト「・・・・。」

    ライナー「それは・・・。」

    ポルコ「1回目は兄貴と「顎(あぎと)」だよな?忘れたとは言わせねえぞ!!!2回目は今回だ!!!!「車力」、「女型」を継承者ごと奪われ、「二次摂取」による「超大型巨人の複製」まで現れやがった・・・・!どうすんだよ?あ?どうすんだ!!!向こうが俺達の戦力に迫って来てんだ!!!お前らがヘマやらかしたせいでよ!!!そのツケを俺たちが払わされてんだよ、わかってんのか!?」

    ライナー「お前はどうなんだよ、ボルコ。」

    ボルコ「は?」

    ライナー「「顎」を帰してもらって、さぞ嬉しいだろう?なんの力もねえのに、「顎」を楽に継承できてよ!!!」

    ボルコ「ふざけんな、ウスノロ!!!てめえが「鈍足戦車の鎧」を継げたのは、兄貴の印象操作があったからだろ!!!力がねえのはてめえの方だろ、ライナー!!!」

    ジーク「いい加減黙れ!!!」

    ボルコ「・・・・!すいません。」

    ジーク「奪われたものは取り返すまで。奇襲?上等だ。返り討ちにしてやろうぜ、なぁ?ライナー、ベルトルト、ボルコ。」

    ────
    ──
  47. 47 : : 2019/06/15(土) 12:53:26
    ──────
    ───

    俺たちは各自、車力の巨人の背中、女型の巨人の肩に乗り、マーレを目指す。
    目標は「ジーク・イェーガー」。その生死は問わない。


    ミカサ「アニ、もう少しペースを上げて。」

    エレン「奇襲するってのに、足音でバレたら意味ねえだろ・・・。」

    女型の巨人「・・・・・。」

    俺とミカサ、アルミンは女型に潜む。
    兵長ら他のメンバーは車力が運ぶ積み荷の中だ。
    もし、奇襲に感付かれた時、どちらか一方に的を絞らせないようにとハンジさんが考案した陣形。

    エレン「気を付けろよ、ミカサ。相手は精鋭の集団だ。俺じゃ、歯が立たねえかもしれねえ。」

    ミカサ「私は強い。ので、心配はいらない。」

    アルミン「エレン、もう少しで、マーレだ。」

    巨大な城壁。マーレだ。

    ハンジ「近付いてきたね。」

    ジャン「・・・・!ハンジさん!!!」

    ハンジ「どうした!?ジャン!?」

    ジャン「様子がおかしい。城壁の上に、兵士が・・・・!」

    ────ガゴォッッッッッッ!

    その時だった。
    積み荷ごと噛み砕かれる車力。

    車力の巨人「────ッッッッ!!!?」

    エレン「ピークさん!!!!」

    リヴァイ「ッチ────!!!新手か・・・!」

    顎の巨人「グアアアアアアア!!!」

    ボルコ「(てめえらの動きなんざ見え見えだぜ、パラディ勢力よぉっ!)」

    ミカサ「あの巨人・・・・!全く気配が感じれなかった・・・!!!」

    アルミン「城壁の兵士だ。」

    エレン「は?」

    アルミン「城壁にいる兵士に気をとられて、背後に迫る巨人に気が付かなかった・・・。いや、正しくは「気付かせなかった」。」

    エレン「奇襲をしかけるつもりが、逆に奇襲を受けちまったってことか・・・!」

    ──────
    ────


    兵士「戦士長。「顎」が不意討ちに成功しました。」

    ジーク「でかしたぞ、ボルコ。行くぞ、ライナー。「顎」との交戦の頃合いを見て、俺たちも戦闘に加わる。」

    ライナー「了解。」

    ベルトルトは女型を青ざめた顔で見つめていた。
    「奪われ」ても、「裏切られた」とまでは思ってなかったんだろう。

    ベルトルト「(アニ・・・!君は、「戦士」・・・だろ・・・?)」

    ────
    ──


    顎の巨人「ウオアアアアアアアアアアアアッ!」

    顎は女型の肩に乗るエレンめがけて飛びかかる。

    エレン「(こいつっ・・・!?俺が「始祖」だと知って───)」

    女型の巨人「・・・・!!!」

    ────ピキピキピキッッッッッ!

    女型の巨人は硬質化させた手のひらでエレンを覆い、防御の体勢をとる。
    しかし、「顎」の顎は硬質化した手を易々と噛み砕いてしまう。

    顎の巨人「ウウウウゥウウ・・・!」

    アニ「(くそっ・・・!やはり、「顎」には、硬質化は通用しない・・・!)」

    ミカサ「アニ。エレンをつれて、マーレに向かって。」

    アルミン「ミカサ!?無茶だ!一人で戦うなんて、自殺行為だぞ!?」

    ミカサ「一人じゃない。兵長達も、いる!!!」

    女型の巨人「・・・・!」

    ミカサ「私を、信じてくれるんじゃなかったの!?アニ!」

    アニ「(わかったよ・・・。)」

    女型の巨人は僕とエレンを肩に乗せ、一直線にマーレへと走る。
    ミカサは車力に飛び移ったのがかろうじて見えたが、後はもう見えない。

    アニ「(・・・・。)」

    ─────
    ────
    ──
  48. 48 : : 2019/06/15(土) 13:12:53
    ────
    ──


    顎の巨人/ボルコ「イガゼルガアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!(行かせるかああああっっっ!)」

    巨人は女型を追いかけようと走り出す。
    お前の相手は、

    ミカサ「私だああああっ!!!」

    ───ザクッッッッッ

    ボルコ「(は・・・・?なぜ、目が見えねえ・・・・!)」

    顎の巨人「アアアアゥッッッッ!アアアアアッ!!!」

    視界を失った巨人はうなじ付近を手で防御したまま、動きが止まる。

    ボルコ「(あの一瞬で、目を潰されたのか・・・?いいや、ありえねえ。人影のひとつも見えなかったぞ・・・!)」

    ミカサ「(うなじを覆う手が、邪魔だ・・・!)」

    リヴァイ「俺が奴の腕を落とす。」

    ミカサ「兵長・・・!」

    リヴァイ「隙が見えてもすぐにはうなじを狙うな。可能な限り、苦戦を装え。」

    ミカサ「・・・・!どうしてですか!?私なら出来るッ!!!奴を殺せる!!!」

    リヴァイ「敵の増援が来たらひとたまりもねえ!!!!ジークが姿を表すまで、奴を殺すな。いいな。」

    ミカサ「・・・・!」

    ─────
    ──

    ボルコ「(なぜだ、なぜ攻撃してこない?目が潰れた巨人相手になにもできねえのか・・・?)」

    ────ガクンッ

    ボルコ「(・・・・・!?腕に力が、入らねえ・・・!?)」

    リヴァイ「ずいぶん大人しいじゃねえか。お前も意外と恥ずかしがり屋みてえだな。」

    ボルコ「(こいつか・・・!?さっきから異常なスピードで俺を切り刻んでやがるのはッ・・・!)」

    顎の巨人「グアアアアアアアアッッッッッ!」

    顎は首だけをこちらに向け、俺を喰らおうとする。

    リヴァイ「うるせえ。」

    ────ザシュッッッッッ

    顎の巨人「アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」

    ボルコ「(目に、ブレードを、突き刺しやがったの、か・・・・!!!)」

    リヴァイ「耳元で喚くな。」

    ボルコ「(っっっってぇっ・・・!目が、開かねえっ・・・!ちくしょう・・・!)」

    リヴァイ「いいのか?お前が俺達を手こずらせる程、ジークの寿命が縮んでいくが?」

    ボルコ「(やはり狙いは、戦士長か・・・・!)」

    リヴァイ「もっとも俺には関係のねえことだ。むしろ、お前をズタズタに引き裂ける時間が延びるなら好都合だしな。」

    ボルコ「(悪魔め・・・・!)」


  49. 49 : : 2019/06/16(日) 13:47:07
    ボルコ「(くそっ、戦士長は・・・!!今どこに・・・!)」

    ハンジ「(何かがおかしい。自分の仲間が痛め付けられているのに、助けに入らないとは・・・。ジークは近くにいるはず、恐らく、ライナーたちも・・・・)」

    ────ジュオオオオッッッ

    ハンジ「えっ───?」

    リヴァイ「ハンジ!!!下だ!!!」

    遅かった──────!!!

    ジーク「はぁっ!!!」

    ハンジ「うぐっ・・・・!!!」


    車力の真下から蒸気が吹き出したと同時に、その蒸気の中からジークが姿を現す。
    ジークはハンジの首を掴んで離さない。
    早かった。いや、見えなかった・・・。

    リヴァイ「それもてめえの・・・能力か?髭面・・・。」

    ジーク「さぁ?どうだろう?それよりどうする?奇襲は失敗だな、パラディ勢力。エレン達はみなマーレに向かった。当分こちらには戻って来られない。ここにいるのは君らだけ、さらには頼みの綱の巨人体は戦闘に不向きな「車力」のみときたら、もう八方塞がりじゃないのかな?」

    ハンジ「ぐっ・・・・はなして、くれる・・・?一応、わ、たし、女、なんだけど・・・?」

    ジーク「少しだけ辛抱してくれよ、お嬢。君らの軍勢には要注意人物がいるし、人質が必要なんだよ。」

    ハンジ「要注、意、人、物・・・?」

    ジーク「ほら、あの黒髪の、そうそう君だ、君。」

    ミカサ「・・・・!!」

    ジーク「君、アッカーマン、だろ?いや、トラウマだよ、本当に。いやぁ、怖いと思ったのは何年ぶりかな、いやいや。」

    ハンジ「トラウマ、蒸し返すよう、で、わるい、んだけど、後ろ、も注意した方が、いいんじゃ、ないかな、?」

    ジーク「うし──────」

    ────ザシュッッッッッッッッ

    ジーク「ろ──────?」

    ─────
    ──


    な・・・・?
    ブレードが、首に、突き刺さって、俺、の!?

    ジーク「ぐはぁっ、ああああああっ、ぐっ、あっあっあああああ!!!」

    ハンジ「ゴホッ、ゴホッ。もう!苦しいよじじじい!!!」

    リヴァイ「随分と長ぇ話だったが、要点はなんだ?おい、自分から話はじめて無視はねえだろ。」

    ───ガコッッッッッ

    ジーク「あがっっっっ!?」

    まるでサッカーボールでも蹴るかのように、横たわる俺の顔面を蹴り飛ばす。
    こいつ、人間じゃない・・・!

    リヴァイ「俺は話が苦手だからな。簡潔にしか言わねえぞ。「ここで死ね、髭面」。もしくは、壁に来い。」

    ジーク「ごはっ・・・!ま、ず、ブレード、をぬけ、よ。はなしが、がはっ、でき、ない、だろうが」

    リヴァイ「いいだろう。無駄な抵抗はすんじゃねえぞ。」

    ボルコ「(・・・・?戦士長はどうなっている!?ちくしょう、なにも見えねえっ!)」

    ─────
    ───


    兵士「め、女型接近!!!撃て!!撃てぇっ!!」

    ──ドンドンッッッ

    女型の巨人「・・・・・!」

    アニは砲撃を避けると、そのまま城壁を掠めるように回し蹴りを放つ。
    砲台はバラバラに壊れ、兵士は腰を抜かしている。

    兵士「あああああっ、やめろぉっ!!!殺さないでくれぇっ!!!」

    アルミン「アニ、もういい。城壁は無力化した。あとは、ライナーとベルトルトだ。」

    エレン「・・・・。車力が、こっちに来るぞ・・・!」

    アルミン「なんだって?」

    遠くからジーク戦士長を迎え撃つはずだった車力の巨人と兵長達がこっちに向かってきている。
    兵長は血みどろだ。

    アルミン「兵長!!!!なにがあったんですか!!!?」

    リヴァイ「ジークを確保した!!!ベルトルト、ライナーを討伐したのち、壁内に戻る!!!」

    アルミン「・・・・!!!了解しました!!!」

    エレン「ピークさん、ひでえ怪我だな・・・。せっかく治ったばかりなのに・・・。」

    アルミン「(「顎」はどうなったんだ・・・?すでに討伐済みか・・・?)」

    ─────
    ───









  50. 50 : : 2019/06/16(日) 14:06:45
    ────
    ───

    女型の巨人「・・・・アアア!」

    女型が唸る。不思議に思い、城壁を見ると、城壁の上に、大きく手を広げる人影が見えた。
    ────ベルトルト・・・!

    ベルトルト「アニ!?裏切ったのか!?僕を!?僕らを!!!?」

    エレン「裏切ったのはどっちだクソ野郎が!!!「仲間」だなんだって言いながら、殺しをするような化け物が、人間らしく涙流してんじゃねえよ!!!!!」

    ベルトルト「なら、君は僕らとどこが違う!?何が違うんだ!?マーレを騙し、<<禁書>>を奪い、僕らを窮地に陥れた君たちだって、人間の感情を持たない化け物じゃないのか!!!?」

    エレン「詭弁抜かしてんじゃねえぞデカブツ!!!元はと言えば巨人は「エルディア」のものだ!!!てめえらマーレの野郎が、巨人を奪い取ったんだろうが!!!それを取り返してなにが「化け物」だ!!!ふざけんじゃねえ!!!!」

    ベルトルト「アニだってそうだ!!!もし、アニが君達側に行かなかったら!?アニの事だって「化け物」と罵ったのか!?それとも、僕だからか、エレン!?僕だから、怒りをぶつけるんだろ!?」

    アルミン「結果だ、ベルトルト。」

    ベルトルト「・・・・!」

    アルミン「結果として、アニは「味方」に、君は「敵」になった。それが事実なんだ。」

    ベルトルト「アルミン・・・・!」

    アルミン「君は、」

    ───ピキピキピキッッッッッ
    アルミンの頬に巨人化の兆しが見え始める。

    アルミン「────敵だ。」

    ベルトルト「・・・・は!!!」

    アルミン「アニ、エレンを連れて、皆の元に戻るんだ。」

    エレン「・・・・!」

    アルミン「早く!!!!!爆風に巻き込まれたいのか!!!!」

    女型の巨人「・・・・!!!!」

    ─────
    ───


    女型から立体機動で僕のいる城壁に飛び移ってくるアルミン。
    体からバチバチと雷を発しながら、こちらににじりよってくる。

    その迫力に、思わず後ずさる。

    ベルトルト「やめろぉっ!!!止せよ、アルミン!!!?」

    アルミン「ねえ、ベルトルト。未来の話をしようか。」

    ベルトルト「・・・・は?」

    アルミン「僕らが「始祖」を行使すれば、未来永劫、巨人という概念が消え去る。僕らは、自由になれる。」

    ベルトルト「よせ・・・!」

    アルミン「でも、どうしてだと思う?ベルトルト。その未来に、君とライナーが見えないんだ。」

    ベルトルト「・・・・!!!やめて、くれ・・・・!!」

    アルミン「僕にはわかる、それがなぜか、わかる。」

    ────バチッ・・・!
    ───バチッ・・・!

    アルミン「君がここで、死ぬからだ」


    ベルトルト「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

    ───カッッッッッッッッッッッッ!


    ────
    ──



  51. 51 : : 2019/06/16(日) 20:15:55
    ─────
    ───

    やっと、追い付いた・・・・!
    俺は女型から車力に飛び移る。

    エレン「兵長!!!」

    車力の積み荷の上に、喉元から煙を吹き出し、虚ろな目をしたジークがもたれ掛かっている。

    ジーク「お前、だったか。やっぱりな。」

    エレン「すいません・・・戦士長・・・。」

    アニ「戦士長、あんた、そんなに軟弱だったっけ?」

    女型から出てきたアニも、俺に続いて車力の背中に飛び乗る。

    ジーク「アニ、彼が異常なんだよ、そこにいる、えーっと・・・・?」

    リヴァイ「リヴァイだ。リヴァイ・アッカーマン。」

    ジーク「───そうそう、リヴァイ────、アッカーマン・・・・?お前も、アッカーマン一族かよ・・・?」

    リヴァイ「悪いか髭面」

    ジーク「おいおい待てよ!!!抵抗するつもりはないんだから暴力はよせよ、リヴァイ!」

    リヴァイ「馴れ馴れしく呼ぶな」

    ───ガゴッッッッッッ

    ジーク「ヴッッッッ────」

    抵抗むなしく結局は腹に蹴りを入れられ、饒舌だったのが嘘のように静かになる。


    ────ドゴォォォォォォォン

    ハンジ「────!!?」

    ジャン「なんだ・・・・!?今の音・・・・!」

    アルミンの超大型巨人はベルトルトを左手で掴んでいた。右手から肩、脇腹にかけては形成が追い付いていない。

    ハンジ「あれは、アルミンのだね。」

    リヴァイ「ああ。」

    ハンジ「「ああ。」って、いいの?リヴァイ。」

    リヴァイ「「鎧」と「超大型」を無力化しろ、としか言ってねえ。殺そうが殺さなかろうが、判断はアルミンに委ねる。」

    エレン「(・・・・!アルミン、お前はどうする・・・・?)」

    ─────
    ──


    ベルトルト「降参だアルミン。僕の、負けだ。」

    アルミン「(・・・・・!)」

    ベルトルト「僕を、喰えよ。そうしたいんだろ?」

    アルミン「(・・・・ライナー)」

    城壁の上に、ライナーが現れる。
    恐らくジークを捕獲されたことを、ベルトルトに伝えに来たのだろう。

    ライナー「なんの、マネだ・・・?アルミン!!!」

    アルミン「(ここで、ベルトルトを補食するのは、得策じゃない。)」

    僕はベルトルトを超大型に掴ませたまま、超大型から出る。

    アルミン「ライナー・・・。選んでくれ。」

    ライナー「なに?」

    アルミン「君達が死ぬか、僕らに付いてくるか。もちろん付いてくるなら、巨人化は僕らのために使ってもらう。」

    ライナー「第三の選択肢もある。」

    アルミン「・・・・!」

    ギギギギギ────
    ライナーの背後に隠れた小型の兵器。
    その銃口が僕に向けられたと同時にライナーは叫ぶ。

    ライナー「ベルトルト!!!!そこから出ろ!!!」

    ベルトルト「ぐっっっっぉぉぉぉっ(対巨人榴弾・・・!)」

    ───ドドドドドドドドドッ
    ─ドドドドドドドドドッ

    アルミン「っ────!!」

    銃口から放たれた弾の雨が僕とベルトルトを襲う。

    弾の一発が顔面の左側を直撃。
    それから、意識を完全に手放した。

    ─────
    ──






  52. 52 : : 2019/06/16(日) 20:35:37
    ────
    ──


    エレン「アルミン!!!!」

    城壁から血を流しながらアルミンが落下して行く。
    進撃じゃ、間に合わねえか・・・?

    エレン「(んなこと言ってる場合じゃ、ねえっっっっ!!!)」

    ────カッッッッッッッッッッッッ!

    進撃の巨人「オオオオオオオオオオオ!!!」

    ジーク「(進撃の、巨人・・・・!?なぜ、彼が・・・?)」

    リヴァイ「そういや、てめえは初見だったか、エレンの巨人体は?そうだよな、どこほっつき歩いてたのか知らねえが、超大型とやりあってたのを見てねえもんな。」

    ジーク「(<<禁書>>を盗めたということは、座標・・・・、を持つ者。「始祖」と「進撃」を宿している、のか!?なら、彼は、)」

    ジーク「イェーガー・・・・?」

    リヴァイ「あ・・・?」

    ─────
    ───



    進撃の巨人「ぐっっっっぉぉぉぉっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!」

    エレン「(間に合えっっっっ!)」

    間一髪。
    城壁から落下していたアルミンを受け止めることができた。

    エレン「(アルミン・・・・!)」

    アルミンの左目は修復しつつある。
    だが、やつらは・・・・!?

    エレン「(くそ、どこに、行きやがった・・・・!!!)」


    ─────
    ───


    ボルコ「・・・・。あ・・・?ここは、?」

    鎧の、肩、か・・・・?

    ベルトルト「ボルコ、眼が覚めたか・・・。」

    ボルコ「・・・・戦士長は?ジーク戦士長はどこだ・・・・?」

    ベルトルト「奪われた・・・。」

    ボルコ「はっ────?」

    ───バキッッッッ

    俺はたまらずベルトルトの顔面を殴る。
    一度や二度に留まらず、三度までも失態を犯しやがった・・・・!

    ボルコ「わかってんのか!!!!お前らがなにをしでかしたか!!?残ってんのは俺らだけだ、マーレはパラディ勢力に半ば占領され、戦士長を、失ったんだ・・・!お前らのせいだ!!!」

    ベルトルト「ボルコ!!!!君は何をしてたんだよ!?目を潰されて満身創痍のままいたぶられただけだろ!!!!結果として、戦士長を戦禍に引きずり出して、捕らえられる要因を作ったんじゃないか!!!」

    ボルコ「ふざけんな!!!!囮にもならねえ、でくの坊共がッ・・・!!!!」

    ベルトルト「ボルコ!!!!何処に行く!!!」

    ボルコ「マーレを取り返さねえと・・・!」

    ベルトルト「もう、マーレにはいない。パラディ島に引き返したよ。」

    ボルコ「ッ・・・!ああああああっ、最悪だ、最悪だ、最悪だ!!!!パラディ勢力をナメてた、ちくしょうが・・・!!」

    ベルトルト「とにかく僕らはどこかで作戦を練らなきゃ、これからどうするのか・・・。」

    ─────
    ───





  53. 53 : : 2019/06/19(水) 11:58:12
    ──────
    ───


    リヴァイ「は?」

    ハンジ「だから、お伽噺だと思って聞いてくれって言ったろ?何も、確証はないよ。」

    兵長とハンジさんの話し声が聞こえる。
    ジークの今後について、だろうか?

    エレン「なんの話を・・・?」

    ハンジ「ん?ああ、何でもないよ!」

    リヴァイ「隠す必要はねえだろ。こいつらにも知る権利がある。」

    ハンジ「そう、だね・・・。エレン、これは、あくまで<<禁書>>で言い伝えられてきたことなんだ。根拠はないし、言わば、「お伽噺」と思ってもらっていい。」

    エレン「はい・・・。」

    ハンジ「これを書いた時代に生きた学者たちは、パラディ島の壁建築について、全てを知っていた。「始祖」の人智を超越した、その能力のことも。まぁ、同じように、記憶を消されるさだめにあっただろうけどね。そこで学者達がある説を唱えた。それが「二重壁内説」だ。」

    エレン「にじゅうへきないせつ・・・?」


    ハンジ「そう。パラディ島を覆う三重の壁のさらに外側、つまり、私達が「世界」と認識する範囲を覆う壁が、もうひとつ存在するという説だ。」

    エレン「・・・・、すいません、いまいち話が飲み込めない、です。」

    ハンジ「分かりやすく言えば、「マーレも所詮は壁内の中にあるひとつの地域でしかない」ってことさ。」

    エレン「・・・・!」

    ハンジ「これが「始祖」の異常性を端的に表した比喩とすることも、根拠に基づく、真実なのかはわからない。だからこそ「お伽噺」だと思ってくれと前置きしたんだ。」

    リヴァイ「もしもそれが「お伽噺」じゃねえとしたら、壁外のさらに外には、正真正銘人類未踏の地があるってことだ。」

    ハンジ「私達は、それを知るすべも、確認するすべも持ち合わせていない。結局は、それが真実なのか、わからないよ。」

    ─────
    ──


  54. 54 : : 2019/06/19(水) 19:11:22
    ────
    ──

    アルミン「二重壁内説、か。面白い仮説だね。」

    コニー「でも、ありえねえだろ・・・?マーレもパラディ島もその周辺の国も全部覆う壁なんて、どうやって作るんだよ!?」

    ジャン「普通に考えればあり得ないと笑い飛ばせるだろうな。だが、今まで起きた事を考えれば、ありえない話でもないと思うぜ。なんせ俺達は「壁外人類」なんていないと思ってたんだからよ。」

    アニ「戦士長、あんたは知ってたの?」

    柱に縛り付けられたジークに、椅子に座ったままのアニが問う。
    ジークは目を見開き、驚いているようだった。

    ジーク「知らない、知るわけがないだろう・・・?<<禁書>>を読んだ事なんてないし、俺だって、この世界の全てを知っている訳じゃない。」

    エレン「ジークさん。確証はありません。ただ、「始祖」は俺の中にいる。今、俺たちを妨害する者はいない。」

    ジーク「だから・・・?」

    エレン「行ってみませんか?世界の果てに。本当に、俺達は大きな壁の中のひとりなのか、確認、しませんか?」

    ミカサ「エレン。こいつは敵。何をしでかすかわからない。一緒になんて行ってはだめ。」

    ジャン「ミカサの言うとおりだ。そいつを信用するにはまだ判断材料が少ねえよ。」

    エレン「これは俺と、ジークさんの話だ!!!お前らは黙ってろ!!!」


    ─────
    ───


    ジーク「・・・・!」

    この青年は確かに俺を騙した。
    だが、そこまでして<<禁書>>を持ち出した理由はなんだ?
    世界を、知りたかったからじゃないのか。
    「始祖」、レイス王に奪われた記憶をまさに自分達の手で手繰り寄せようとしているのではないか?

    ジーク「・・・・いいのか?エレン。俺は、敵だぞ?」

    エレン「お互い様です。ジークさんにとって、俺も敵だ。」

    ジーク「手を貸そう。兵士長に伝えてくれ。俺はここで待ってる。」

    エレン「ありがとうございます。」

    ─────
    ───
  55. 55 : : 2019/06/19(水) 19:29:37
    ────
    ──


    リヴァイ「どういう風の吹き回しだ。髭面。」

    ジーク「相変わらず目付きが悪いよ、兵士長。威圧されちゃかなわん。そっちのお嬢と話がしたい。」

    ジークはハンジを顎でさす。
    どうやら見る目はあるようだな。

    リヴァイ「ご指名だぞ、ハンジ。」

    ハンジ「・・・・・。」

    ジーク「君ならゆっくりと話ができそうだ」

    ハンジ「残念だけど、ゆっくり話はできないよ。私はあなたの結論を待たずに、殺すことだってできる。あなたとエレンを接触させればいいだけだからね。」

    ジーク「わかってるよ、そんなことくらい。むしろ、それを互いに認識してるなら話は速いじゃないか」

    ハンジ「と、いうと?」

    ジーク「君らは何を根拠に、俺が巨人化して、逃げ仰せると思う?」

    ハンジ「忘れた訳じゃないだろ?私の首を絞め、人質に取ったのはあなただ。同じように私を人質に取れば、また状況は傾くね。」

    ジーク「兵士長がいるのに?力でねじ伏せられ、今ここにいるんだ。相当なバカでない限り、「敵わない」とわかるはずだ。」

    ハンジ「・・・・。」

    ジーク「縄を、解いてくれ。」

    ハンジ「・・・・。」

    ジーク「頼むよ。俺も、ただの一人だ。世界の真実を知る権利は、俺にはないのか?」

    ハンジ「・・・・。世界の事実を渇望してるのは、私だけじゃ、ないもんな。いいよ、わかった。縄を解こう。」

    リヴァイ「ただし、これだけは覚えておけ、髭面。てめえがなにかよからぬ動きを見せた段階で、俺はお前を殺す。容赦なくな。」

    ジーク「肝に命じておこう。」

    ──────
    ───


  56. 56 : : 2019/06/21(金) 11:17:45
    ─────
    ───


    僕らは壁の前にいた。
    パラディ島。もう、失敗は許されない。

    ベルトルト「行こう」

    ライナー「・・・。」

    ボルコ「戦士長を取り戻す・・・!」

    ────
    ──


    壁の上に立つ僕らを見つめる3人の影。
    ジークが言っていた通り、このタイミングでベルトルト達は襲撃に乗り出してきた。


    アルミン「ベルトルト・・・!」

    ハンジ「・・・・。確かに。あなたの言うとおり、ベルトルト達が襲撃してきた。」

    ジーク「どうだ、リヴァイ。信用してくれたか?」

    リヴァイ「・・・・。」

    ジーク「・・・・。ならば、」

    ジークは立ち上がり3人に向かって叫ぶ。


    ジーク「よすんだ!!!彼らは敵じゃない!!!」

    ボルコ「は・・・・?」

    ジーク「彼らは世界の真実を<<禁書>>から読みとこうとしている!!!!お前たちにも聞いてほしいことがあるんだ!!!壁に上がってきてくれないか!!!!」

    ベルトルト「・・・・どうする?ライナー。」

    ライナー「・・・。まだ戦士長が脅されている可能性も捨てきれない!!!そうではないと示して下さい!!!!戦士長!!!」

    ジーク「(口で説明は無理、か。)」

    ジークは自分の両手をベルトルト達に見えるように掲げる。

    ジーク「見ろ!!!彼らは俺を拘束していない!!!脅しの為なら、俺が抵抗できないようにすべきだろ、ライナー!!!」

    ライナー「・・・・!!」

    ボルコ「ライナー!!!騙されんじゃねえぞ!!!奴らの口車にのせられるな!」

    ピーク「ポッコ!」

    ボルコ「あ!?そのあだ名で呼ぶな!!!」

    ピーク「<<禁書>>の内容を、私たちは知ってる。でも、あなた達は知らないじゃない?」

    ボルコ「・・・。」

    ピーク「思い出して。候補生時代に、私たちは、何を目指したの?」

    ボルコ「・・・・!!!」

    ピーク「「この外の世界は本当に偽りじゃないんだろうか?この外には、何があるんだろうか?」。見たかったんじゃないの?私達は、皆、人間として産まれたその時から、自由を欲していた。」

    ボルコ「・・・・。」

    ピーク「夢の続きを、また、始めよう?ボルコ。」

    ボルコ「─────!!!」

    ジャン「ライナー!!!ベルトルト!!!」

    ライナー「・・・・。」

    ベルトルト「ジャン・・・!」

    ジャン「初めは憎たらしかったよ。のうのうと仲間を装いやがって、クソ野郎がってな。でも、お前らは、仕方なかったんだろ?」

    ベルトルト「・・・・!」

    ジャン「抗えなかったんだろ!?」

    ベルトルト「仕方なかった訳があるかっ!!!どんな理由があったって、命をっ、奪って良いはずがないだろっ!?」

    ジャン「わかってたってどうしようもなかった・・・、そうだろ?そうなんだよな!?どうしたって、選択肢がそれしかなかったんだよ。」

    ジャンは壁から降り、3人に近寄る。

    ジャン「ベルトルト!!!もう一度、「兵士」になってくれないか!!!」

    ベルトルト「やめてくれ、ジャン!!!!近寄らないでくれ!!!」

    ジャン「ベルトルト!!!」

    ベルトルト「それ以上近寄られたら、君を殺さなきゃならない・・・・」

    ジャン「やってみろよ!?」

    ライナー「ジャン、離れろ!」






  57. 57 : : 2019/06/22(土) 23:14:13
    ジャン「ベルトルト!!!やれよ!!!殺すんだろ!?俺を!!!」

    ベルトルト「・・・・!」

    アニ「あんた、いつからそんな奴になったのさ。ベルトルト。」

    ベルトルト「ア・・・・ニ・・・!」

    アニ「あんたは、人を殺したいだなんて、思ってなかったんだろ?誰かがやらなきゃいけない。だから行動を起こした。ただ、それだけだ。」

    ベルトルト「・・・・!」

    アニ「私達は、許されない行為をしてきた。だから、正当化したかったんじゃないかって、今は思うんだ。」

    ライナー「いいや、違うな。」

    アニ「何が、違うって言うの?」

    ライナー「正当化したいのは、お前ら、つまりは、パラディ側だ・・・!」

    エレン「は・・・?」

    ライナー「お前らは俺達から何を奪った?わからないなら言ってやろうか?よく聞いてろよ、ジャン!!!そこでよく聞いてろ!!」

    ライナーは間近に迫るジャンに指を指しながら話し出す。
    ジャンがそれ以上近寄らないようにするための、牽制の意味もあるのだろう。

    ライナー「まずは、「進撃の巨人」だ。正しくはグリシャ・イェーガーによって何者かから継承される形で、パラディに渡った。第二に「女型の巨人」!!!アニごと幽閉し、どんな手段を使ったのかわからないが、お前らは仲間に引き込んだ!!そして、「車力の巨人」!!!これに関しては、自分からそっちに行ったんだろうが、奪われたも同じだ。そして、最後は「獣の巨人」。これだけの巨人が奪われた!!「世界の真実」だの「壁の外」だの、結局は、これらを正当化するための口実に過ぎない!違うか!?」

    エレン「ふざけんじゃねぇよ!!!巨人の力はもともと俺らのもんだろうが!!!てめえらな奪い取っておいて、被害者ヅラしてんじゃねえ!!!」

    ライナー「ならお前はなんだ!?正義か!?俺達は悪か!?そんな簡単な事じゃない!!エレン、俺達はもうガキじゃない。」

    エレン「ジャン、そこから離れろ。」

    ジャン「はっ!?何をするつもりだよ!?」

    エレン「話が通じねえみたいだからよ、そこの脳筋には。」

    ────バチチチッッッ、バチチチッッッ!

    エレン「殺るしか、ねえみたいだ。」

    ライナー「臨むところだ・・・!」

    ───カッッッッッッッッッ!

    エレン「(殺るか、)」
    ライナー「(殺られるか、)」

    エレン/ライナー「((最悪の事態だが、仕方がねえ・・・・!))」







  58. 58 : : 2019/06/23(日) 00:03:17
    アルミン「アニ、大丈夫?」

    エレンの近くにいたアニは、爆風に吹き飛ばされはしたようだが、目立った怪我はなく、無事のようだ。

    アニ「私は大丈夫。けど、最悪、だね。」

    対峙する鎧と進撃を見ながら、アニが呟く。
    確かに、最悪の結果だ。
    僕らは「ライナーもベルトルトもジークも生存させた上で、「二重壁内説」の真偽の確認や、「始祖」の行使」を行いたかった。

    アルミン「だけど、この様子じゃ、どちらかが、喰われるのは目に見えてる。」

    アニ「で?なにか、打開策はあるわけ?」

    アルミン「無いよ。」

    アニ「は?」

    アルミン「言ったじゃないか。「最悪の結果」だって。僕らは「過程」のリカバリーはできても、「結果」を変えることはできない。いや、僕らでなくたって無理だ。」

    アニ「あんた、諦め早すぎるよ。前はそんなじゃなかったのにね。」

    アルミン「おじいちゃんの記憶を継いだのも、関係あるの・・・・かな。」

    アニ「・・・。あんた、」

    アルミン「え?」

    アニ「鼻血・・・。」

    鼻を手で触ってみると、確かに血が付着している。
    全く、気付かなかったな────。

    アニ「顔色も悪いみたいだよ?あんたこそ大丈夫かい?」

    アルミン「うん、体調は全く問題ないよ。ない、はずだ。」

    ─────
    ───


    エレン「(どうした、ライナー?)」

    いつもは間合いを詰めてくるじゃねえか?
    やけに、消極的な戦い方だな・・・?

    鎧の巨人「オオオオオオオオオォォオオオッ!!!」

    来た。低い姿勢でタックルしつつ、足を取りに来るいつものスタイル。

    エレン「(何度も同じ手が、通用するかァッ────!!!)」


    俺は全速力の鎧の顔面に硬質化した膝をたたきつける。
    鎧の顔面と膝との摩擦で「ギギギギギギッ」と音を響かせながら火花を散らし、続いて顔面を覆う鎧がひび割れ始めたところで、鎧はまたしても距離を開ける。

    鎧の巨人「ガ・・・・アアア・・・・・!」

    ライナー「(くっ・・・・!ここ数年で、エレンは間違いなく力を付けている・・・!進撃の練度も初めとは比べ物にならねえ・・・!)」

    エレン「(今度は、)」

    進撃の巨人/エレン「グアアアアアアアア!!!(俺の番だ!!!)」

    硬質化を脚に発現させ、鎧の脚を払うように蹴る。

    ─ガクンッ!

    ライナー「(ッ────!?)」

    鎧の脚は砕け、体勢を崩す。
    手をつき動けない鎧の首を締め上げ、うなじからライナーを引きずり出そうと試みた。
    死んでいないなら好都合だが、死んでいたら、仕方がねぇ。

    エレン「(うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっ!)」

    鎧の首を締め上げたまま、可動域とは逆に折り曲げる。
    ミシミシと首が音を鳴らす。


    鎧の巨人「ウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


    ベルトルト「ラ、ライナー!!!」


    進撃の巨人「オオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」

    ミシミシッッッッ─────


    エレン「(やれる!!!!もう少し────だ─────)」

    ────プシュッッッッッ

    進撃の巨人「オオオオオオオ!?」

    なんだ・・・!?突然、腕に、力が・・・!?

    腕は力なくぶら下がるのみだ。力は全く、入らない。

    それを見た鎧は、すかさず肘で俺を退ける。
    腕に力が入らずに、受け身が取れない。
    地面に叩きつけられると、全身に痺れるような痛みが走る。

    エレン「(ッァッッッッ!何が、起きた・・・・!?は?歯形・・・?)」

    肩に食いちぎられた様な跡。
    そのやや下に、歯形。

    エレン「(あの時、奇襲してきた、あの巨人か・・・・!?)」

    ライナー「(ボルコ・・・!?お前・・・!)」

    ボルコ「(俺達は、間違えて無かった・・・!俺らの生き方を間違えているとは、言わせねぇぞ!!!)」
  59. 59 : : 2019/06/29(土) 13:31:18
    長らく更新が滞っていますが、放置しているわけではありません。ご安心ください!
  60. 60 : : 2019/07/02(火) 23:37:47
    ボルコ「(俺はっ、何も─────、間違えてねえっ!!!)」

    エレン「(・・・・・・!)」

    あの髭の巨人は、項垂れたまま動かない。
    泣いてる、のか・・・・?

    ボルコ「(お前らが悪魔じゃなかったら、俺は、俺達は、何とッ、何と戦ってたってんだよ!!!!)」

    顎の巨人「オオオオオオオオオッ!!!」

    髭の巨人は地面を払うように抉る。
    それに攻撃の意図はなく、自分の境遇へのやるせなさから来るものだとわかる。

    ────
    ──


    ミカサ「エレンが、危ない・・・!」

    アルミン「大丈夫だ、ミカサ。「顎」に、戦う意思は、もうない。」

    地面に拳を叩きつけ、叫び声を上げる「顎」を見て思う。
    ────「敵」は、いなかった。
    この世には、「敵」はいなかったんだ。

    誰かが自分の信念を、誰かに無遠慮に叩きつける。誰もが犯す過ちの果てに、「敵」を作りたかったんだ。

    アルミン「・・・・。」

    アニ「アルミン、また。」

    アルミン「あ・・・。」

    また、鼻血だ・・・。

    ミカサ「アルミン、休んだ方が良い。今が休める最後の機会。あの巨人に戦う意志がないなら、私たちは歩みを進めることになる。」

    アルミン「そうさせてもらうよ。」

    ─────
    ───


    「鎧」、「超大型」、「顎」の継承者3名は、自らの意思でパラディに拘束されることを選んだ。

    ボルコ「なぁ、ライナー。俺、間違ってたのかな。」

    ライナー「・・・なに?」

    ボルコ「「悪魔」なんて、嘘見てえだよ。壁内に入ってから、かけてもらった言葉はなんだ?「大丈夫ですか?」、「水を飲んで」、「長旅だったでしょう」。」

    ボルコは壁内を走る馬車から見える景色を見ながら俺に問う。

    ボルコ「なんで、自分の命に繋がるような水を、俺にくれてやれる。どうして巨人の姿を晒した俺に、労いの言葉をかけられる。」

    ライナー「・・・。」

    ボルコ「なぁ、ライナー。悪魔なんて、どこにいるんだよ?」

    ─────
    ──
  61. 61 : : 2019/07/03(水) 00:08:43
    ─────
    ──


    ボルコ「・・・、なんだよ、こりゃ?」

    ハンジ「<<禁書>>だ。戦士長、詳しくはあなたの方がよく知ってる。」

    ジーク「よく聞け、ライナー、ベルトルト、ボルコ。」

    ハンジさん達が解読した<<禁書>>の内容を、3人に伝える。

    ライナー「それは・・・、一体・・・?」

    ジーク「人智が及ばない領域に、「人類」がいる。それを知る術を、今俺達は探してる。」

    ボルコ「そこに、「巨人を消し去る方法」がある、ってことですか?」

    ジーク「兵士長。頼む。」

    リヴァイ「ああ。」

    リヴァイ兵長は3人の前に立ち、親父が写した<<禁書>>から導き出された答えを話始める。


    リヴァイ「早ぇ話が、俺達を含めた「人類」は、巨人の実験の為にここに人為的に集められたネズミだ。」

    ベルトルト「・・・・!」

    リヴァイ「巨人という巨大な敵を前に、人間はどうなるのか、調べるために野に放たれたネズミだ。当初放ったネズミを、巨人によって追い詰め、どう窮地を脱するのかを試す予定だった。だが、ネズミは意に反して「巨人」に対抗する術を編みだし、「巨人」という巨大な敵を逆用するようになる者まで現れ、やがてそれらは綺麗にふたつに別れた。その分裂した「ネズミの集団」こそ、「マーレ」と「パラディ勢力」、つまり、俺達だ。」

    ボルコ「は・・・・・・?」

    ハンジ「つまるところ、巨人を消し去ろうが、我々が殺し合おうが意味がない。世界の果てにたどり着いた所で、答えは見つからない。」

    リヴァイ「だが、絶望する必要はねえぞ。俺達は宣戦布告するつもりだ。」

    ボルコ「宣戦・・・布告・・・?一体だれに?」


    リヴァイ「「世界」を裏で牛耳る奴等だ。」

    ────
    ──










  62. 62 : : 2019/07/06(土) 21:00:35
    ──────
    ────
    ───

    それから僕らは、人類未踏の地を目指して歩みを進めた。
    時には巨人で、時には歩いて、時には馬で、世界の果てを探した。

    そんな日々を繰り返し、数年経った頃だ。

    ハンジ「みんな、止まって。」

    リヴァイ「どうした、クソメガネ・・・。」

    ハンジ「そこ、地面が隆起してる。一部じゃない。端から端にかけてだ。」

    アルミン「・・・違う。隆起してるんじゃない・・・。」

    エレン「どういうことだよ、アルミン?」

    アルミン「陥没してるんだ。僕らが今いるこの場所が。僕らは今、巨大な窪みの中にいる・・・。」

    ハンジ「なら、この窪みは、なんの、跡?」

    ────
    ───


    サシャ「知ってますか?アニ。」

    アニ「なにを?」

    私たちは、アルミン達やジーク戦士長達と別れて行動していた。コニーとジャンとサシャと私。ハンジさんがジャンをリーダーに指名して作られた即席の部隊だ。

    サシャ「「カク」って、巨大な爆発を起こす爆弾があるんですよ。昔は戦争に用いられたみたいですが・・・。」

    アニ「・・・。なんで、そんな事聞くのさ?」

    サシャ「いや、あの・・・。バランスがよすぎると、思いませんか?」

    アニ「なんのバランス?」

    サシャ「えっと、うまくは言えませんが、知性巨人の力が、人間に有益すぎるって思って・・・。」

    ジャン「まどろっこしいな、結論から言えよ。一体何が言いたいんだ?」

    サシャ「「巨人は戦争の道具として」産み出されたんじゃないでしょうか?それこそ、巨大な爆発を起こす「カク」に次ぐ兵器として。」

    コニー「前々から思ってたんだけどよ、お前、なんでそんな事知ってんだよ?「カク」とかさ、アニも初耳なんだろ?」

    アニ「あぁ。聞いたことないね。」

    コニー「俺たちより圧倒的に多くを知ってるアニでさえ知らないことを、なんでサシャが知ってるんだよ?」

    サシャ「・・・私も、ずっと、疑問でした。なんで、村にあんな書物があったのか。」

    ─────
    ───

  63. 63 : : 2019/07/06(土) 21:19:50
    ────
    ──

    壁外を駆けに駆け、各々の部隊が、一ヶ所に集まり、成果を話し会う。

    僕たち以外の部隊は、壁内未踏の地の人間の痕跡を掴むことができなかったらしい。

    一方僕らは、「ある仮説」を立てるに十分な材料を見つけた。あの「窪み」だ。

    ライナー「・・・・窪み・・・?巨大な?」

    アルミン「うん。僕らが見つけた巨大な窪みは、何らかの爆発物によって作られた物だ。「超大型巨人」が起こす爆発なんてかわいいと思えるほど、とてつもない規模の、爆発。家屋は燃える間もなく消滅し、辺りはまるで更地のようだったけど、人の痕跡を、見つける事ができたよ。」

    僕は、箱のような物体をライナー達に見せる。

    ジャン「これは?」

    アルミン「驚く事に、音が入ってる。何者かの、声が。」

    ジャン「・・・・」

    側面のスイッチを押し、少し待つと、「ザッー!」とノイズの音が聞こえ、その後に、声が聞こえた。

    ─あー、今日は?何月何日?早くしてくれ!
    何日?4日?OK、わかった、何月だ?7月、よし、ありがとう。
    えー、2019年7月4日、軍基地前にいる。
    巨人数体を放ち実験を行っていた一連の事柄であるが、「超大型巨人」の発する爆風はとてつもない規模である事がわかった。
    ブラウス家の一部が我々に伝えたことだが、この爆風は「核」のそれに匹敵するらしい。
    我々はこの研究結果をふま─────

    アルミン「ここで音声は途切れている。爆音にかき消されて、ね。」

    ハンジ「私達を監視していたそいつらは、「カク」と呼ばれる強大な力を有してしまった。有してしまったが故に、力を制御できず、自爆する形で、周囲を巻き込みながら、あの窪みを作った。早い話が、もうすでに私達以外に、人類はいないんじゃないだろうか。」

    リヴァイ「・・・宣戦布告する相手も・・・もう、いねえらしい。」

    ベルトルト「そ、そんな・・・!」

    アニ「ブラウス家・・・・。サシャ、あんた。」

    サシャ「・・・・知りませんよ、私は!!!何も!!!」


    ハンジ「知らないはずさ。サシャは、代々監視者の内通者だったブラウス家の末裔なんだろう。サシャは無関係だ。」

    サシャ「・・・・・。」


  64. 64 : : 2019/07/08(月) 17:29:11
    ハンジ「サシャ。村にある本で、戦争を繰り返してきた歴史や、その後の繁栄を知ったんだよね?」

    サシャ「はい・・・。そうです。」

    ハンジ「壁内の<<禁書>>が私たちの持つものだとすると、サシャが見た本は監視者が持つ秘密を記したもう1つの<<禁書>>と呼べるものだろう。」

    ジーク「で?どうするんだ?「始祖の行使」は?」

    リヴァイ「ずいぶんあっさりした表情だなジーク。」

    ジーク「勘弁しろよ兵士長。わかるだろ。もう、驚く気力もないことくらいは。」

    リヴァイ「あぁ。それに関しては同感だ。全く訳がわからねえ。俺達の存在は一体、何だ?」

    ハンジ「「始祖の行使」の必要性はより増した。今この瞬間から、歴史を始められる。事は早く済ませるべきだけど、今はサシャの村にある第二の<<禁書>>を見つけるのが先だろう。」

    ジーク「了解した。俺は?何をすればいいかな?」

    ハンジ「壁内に戻ってから考えよう。ピーク!すまないね、またお願いするよ。」

    ピーク「構いませんよ。乗ってください。」

    ─────
    ───


    アルミン「ねえ、エレン。」

    エレン「なんだ?」

    車力に揺られながら、僕はエレン達に話す。

    アルミン「この世には、3つの「海」があったね。」

    エレン「3つの・・・海?」

    アルミン「うん。1つはおじいちゃんを通して見た「マーレの海」。2つ目は僕がこの目で見た「海」、最後は「最果ての海」だ。」

    外を眺めれば、大きな海が広がっていた。
    夕焼けに飲み込まれそうな海は、なつかしい思い出と、悲しい現実を突きつけてくる。

    アルミン「僕は、命を賭けようとするエレンに嫉妬してたのかもしれないなぁ。「エレンにだけいい格好はさせない」。最後の最後で、下らない対抗心を燃やして、「超大型」になった。」

    エレン「なに言ってんのかわかんねえよ?アルミン」

    アルミン「エレン、ジャンに、伝えてほしいんだ。「最期はジャンの手で葬れたい」って。」

    ミカサ「!!!アルミン、何を言ってるの!?」

    アルミン「ミカサもわかってるはずだ。「巨人脊椎液二次摂取」の影響で、僕はもう長くない。」

    エレン「だから俺が「始祖」を使って、お前からも巨人を消してやるって言ったじゃねえか!?」

    アルミン「ジャンなら、分かってくれるよ。」

    エレン「俺じゃ、お前の心の中はわからないってことかよ?」

    アルミン「今は、まだ。」

    エレン「・・・・。わかったよ、伝えておく。だけど、俺は、お前を必ず救うからな。アルミン。」

    アルミン「ははっ。ありがとう。」

    ────
    ───




  65. 65 : : 2019/07/09(火) 15:02:05
    ────
    ──


    リヴァイ「ダウパー村までには長い移動になるな。」

    壁内に戻った俺達はサシャの村にある第二の<<禁書>>についての会議を行っていた。

    リヴァイ「ここまでぶっ通しで移動出来るほどの余力は残って・・・・」

    兵長は僕らを見回す。
    アルミンは体調が優れず、ハンジさんと共に地下で休んでおり、不在。サシャとコニーは疲れて眠りに落ち、ジャンは白目でも剥きそうな表情で限界が近いことがわかる。ベルトルトやライナー達も徹夜で数十時間の車力での移動はさすがに堪えるようだ。
    ミカサとアニ、それから戦士長、兵長はピンピンしているが、当の俺はさぞ酷い顔をしているのだろう。

    リヴァイ「ねぇ、みたいだな。」

    ジーク「なら、今日は休憩か?俺は徹夜に慣れてるが、他はそうじゃないだろ。」

    リヴァイ「仕方ねえ。各々睡眠を取れ。さっきも言った通り、長旅になる。」

    エレン「はい。」

    ジャン「ようやく、ねむ、れ、る・・・。」

    エレン「お前、大丈夫かよ・・・。」

    ─────
    ──


    ハンジ「おっと、まだ寝てなきゃ。急に体動かしちゃだめだってば。」

    アルミン「ハンジさん。これ、」

    ハンジ「・・・・これは!」

    アルミンの鼻からしたたる血は、ベッドに落ちると蒸気と共に消える。それは間違いなく、「巨人の特徴」だった。

    アルミン「時間は、もう、あまり残されていないみたいです。」

    ハンジ「その様、だね。」

    アルミン「とは言え、僕の体調を考慮して、全ての予定を無かったことにすることはできない、そうですよね?ハンジさん。」

    ハンジ「その通りだ。予定通りダウパー村に向かう。ただね、アルミン。私は君に無理をしろなんて無責任な事は言えないし、言わない。辛いなら、遠慮なく私達を頼るんだ。君が足手まといになることはない。いいね?」

    アルミン「はい、そうさせて、もらいます。」

    ─────
    ──


    リヴァイ「起きろ、コニー」

    勢いよくひっぺがされる布団。
    コニーは眠いのか目が開いていない。

    珍しく一番に起きたのはサシャだった。
    神妙な面持ちのまま、無言でダウパー村の地図を見つめている。

    エレン「大丈夫か?サシャ。」

    サシャ「エレン・・・!だ、大丈夫ですよ!私は!ピンピンしてます!あー、よく寝たー!!!」

    元気を装っているのがすぐにわかった。
    隣に立った俺が話しかけるまで、俺の存在に気付かなかった事からも、それが伺える。

    エレン「本当に、何だったんだって思うよな。俺達の夢は、俺達の信念は、俺達が信じてきたものは、俺達の敵は、なんだったんだ、ってな。だけどよ、むしろチャンスじゃねえか。」

    サシャ「チャンス・・・ですか?」

    エレン「おう。監視者がいなくなった今、世界に要るのは俺達だけだ。なら、ここから、俺達が思い描くように世界を変えていける。サシャ、お前の村に向かうのも、そのための一歩だ。俺達が、自由を手にするための、一歩だ。」

    サシャ「そう、ですよね。きっと、そうですよね!!!」

    ──────
    ───



  66. 66 : : 2019/07/09(火) 15:40:06
    ─────
    ──


    ハンジ「思った通り、巨人はほとんどいないね。」

    ここ数年で、知性巨人以外の巨人はめっきりと減った。ダウパー村周辺も例外ではなく、道中動けない巨人を除いては、巨人の姿が見えなかった。

    リヴァイ「だが、やけに静かだ。」

    ハンジ「これを「平穏」と取るか、「嵐の前の静けさ」と取るのか、だね。」

    リヴァイ「頭の痛てぇ方を選んだ方が、最悪の事態に備えられる。」

    ハンジ「じゃ、私も「嵐の前の静けさ」だと思っておこう。」

    ────
    ──


    ジャン「は?」

    エレン「だから、もしアルミンが「奇行種」になったら、お前に仕留めて欲しいって言ってるんだよ。」

    ジャン「お前、正気かよ!?アルミンを殺せって?出来るわけねえだろ!」

    エレン「俺に文句垂れてんじゃねえよ!!!アルミンがそう伝えてくれって言ったんだ、アルミンにそう伝えろよ!アルミンの願いを無下にしますってな!!!!」

    ジャン「てめぇ、このっ、死に急ぎ!!!」

    エレン「どわぁっ!?て、てめえ!!!馬の上だぞ、こっから落とす気かよ!!!」

    アニ「まったく、男ってなんであんなに野蛮なんだろうね。」

    ミカサ「男と言うより、エレンとジャンが特殊なだけ。アルミンはとてもおとなしい。」

    アニ「言えてるね。まぁ、私からしてみれば、あんたもかなり特殊だけど。」

    ミカサ「私には「殺してくれ」と言ったように聞こえる」

    アニ「そう聞こえたんならそうしなよ。兵長が許してくれないだろうけどね。」

    ミカサ「このっ、女狐っ・・・!」

    ─────
    ───


    アルミン「後ろ、騒がしいね、サシャ」

    サシャ「え?ああ、そうですね。」

    アルミン「聞こえて無かったでしょ?後ろの騒ぎ。」

    サシャ「・・・・はい。アルミンには、全てお見通しですね・・・。」

    アルミン「サシャ、大それた事は言えない。だけど、「大丈夫だ」。君は、何も背負わなくていい。君は────」

    ─────ドクンッ!

    アルミン「────ぐッ!?」

    サシャ「アルミン!?」

    ─────
    ───


    ズザザザザザッ────

    ミカサ「アルミン!!!!!」

    リヴァイ「お前ら、馬を止めろ!!!アルミンが落馬した!!!」

    ハンジ「ッ────!!!アルミン!!!無事か!?」

    くっ───。どうしたんだ・・・?急に心臓が・・・。それと同時に、体に力が入らなく・・・、なった・・・?

    エレン「大丈夫か!?アルミン!」

    アニ「サシャ。一体何があったの?」

    サシャ「わかりません・・・!他愛もない話をしていたら、突然・・・。」

    リヴァイ「どうした、アルミン。何があった?」

    兵長が僕を抱え起こしてくれるが、兵長の支えがなければまた倒れてしまいそうだった。

    リヴァイ「・・・!!力が、入らねえのか?」

    アルミン「・・・、は、い。」

    リヴァイ「ハンジ。一度退くぞ。」

    ハンジ「それはできない。」

    リヴァイ「あ?」

    ハンジ「アルミンはここに向かう前に、私に決意を示してくれた。この作戦を必ず成功させられるようにと。」

    リヴァイ「意味がわからねえな。ハンジ、お前は知ってたのか?アルミンにもう一刻の猶予もねえことを。」

    ハンジ「知ってた。」

    兵長は僕を寝かせると、ハンジさんの胸ぐらを掴み寄せ、額を付けながら怒りを露にする。

    リヴァイ「一人の命はそんなに軽いものか?」

    ハンジ「世界を変える一歩だ、仕方がない。」

    リヴァイ「仕方がねえだと?ふざけるな、クソメガネ。てめえは変人だと思ってたが、命を粗末に扱うような奴ではなかった筈だ・・・!」

    ハンジ「「頭の痛い方を選んだ方が、最悪の事態に備えられる」。さっき、リヴァイが言ったことだよ。それにしては、余裕がないみたいだね。リヴァイ、君は最悪の事態を想定してなかったの?」

    リヴァイ「・・・・。」

    ハンジ「こりゃさすがに分が悪いでしょ。離してよ、リヴァイ?」

    兵長はまだ離さない。

    ハンジ「おい、離せって・・・!このチビッ・・・!」

    リヴァイ「退くぞ。」

    ハンジ「リヴァイ!!!!」

    リヴァイ「命令だ、エレン。アルミンを連れて引き返せ。」

    エレン「は、はい・・・!」

    ────
    ──





  67. 67 : : 2019/07/13(土) 20:47:20
    ────
    ──


    エレン「アルミン、大丈夫か!?」

    ジャン「おい、もっと飛ばせねえのかよ!?」

    アルミンは返事をする力も残っていないようだった。
    まずい、このままじゃアルミンは────

    コニー「無茶言うなよ!これが限度だっつうの!!!」


    ───バチッ

    ジャン「───!!!」

    ───バチッバチチチチッッッッ!

    ジャン「お前ら、にげ─────」

    アルミン「うぁぁあああああぁっっっっっ!!!!!!」

    ─────カッッッッ!


    ─────
    ──


    サシャ「・・・・?」

    ハンジ「どうしたの?サシャ。」

    サシャ「あの、嫌な、予感が、します。巨人が、近くに現れた時と同じ、予感です。」

    ハンジ「巨人・・・?」

    『つまり、副作用で君はいずれ、「奇行種」になってしまう、と?』

    『はい。しかも具合の悪いことに僕が宿しているのは「超大型巨人」だ。あの巨体を持つ奇行種との戦いは容易じゃない。』

    ハンジ「アル、ミン・・・。君、なのか?」

    ─────
    ───


    馬車を砕いて突如「超大型巨人」と化したアルミンは辺りの地面を手当たり次第に掌で抉ってゆく。

    超大型巨人「ウァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


    ミカサ「アルミン!!!!私が分からないの!?アルミン!!!」

    ジャン「ミカサ、離れろ!!!」

    ミカサは俺の制止を振り切ってアルミンに近付いて行く。
    くそっ─────!

    『もしアルミンが「奇行種」になったら、お前に仕留めて欲しいって言ってるんだよ。』

    ジャン「(俺が、アルミンを・・・?)」

    事態は深刻だ。
    決断が早ければ早いほど生存の確率は、上がる。
    わかってる、わかってるよ、んなこと!!!

    ブレードを握りしめた手が震え、カタカタと音を鳴らす。知るか。知るもんか。

    ジャン「エレン、力を貸せ!」

    エレン「お前、何するつもり・・・、まさか・・・?」

    ジャン「あぁ、そうだ。」

    ─────超大型巨人をここで殺す
  68. 68 : : 2019/07/13(土) 21:02:31
    エレン「だけどよ、ジャン・・・」

    ジャン「アルミンがそうしろって言ったんだろ!!!!!」

    エレン「・・・・!」

    ジャン「親友の想いを」

    ──マルコ、お前が生きてりゃ、

    ジャン「無下にできるかぁぁぁぁぁっ!!!」

    今の俺を笑うかな。
    いや、笑わねえよな?
    きっとそうさ、きっと。

    ジャン「エレン!!!!「進撃」になって、俺を出来るだけ高く上げろ!」

    エレン「は?どういうことだよ?」

    ジャン「あの分厚いうなじと蒸気じゃ、近寄ることすらできねえ。「自由落下」の力を使って、蒸気ごとうなじを切り裂く、早くしろ!!!」

    エレン「・・・・!わかった!ミカサ!!!どけ!!!!」

    ミカサ「エレン、なにを・・・・?」

    エレン「いいから、退いてろ。」

    ミカサ「・・・・、わかった。」

    ─────カッッッッ!

    進撃の巨人「グオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

    エレン「(ジャン、今だ!!!)」

    エレンが右手を突き上げた。
    そこへ俺がアンカーを突き刺し、掌に乗る。
    互いが互いを見やることはない。
    見つめる先に居るのは、アルミンだ。

    ジャン「(アルミン、お前は賢い奴だ。だからこそ、そいつの危険性と有用性を見抜いた。)」

    超大型巨人「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

    ジャン「アルミン!!!!!!俺は殺るぞ!!!!お前との約束をッッッ───」


    俺は進撃が腕を振り上げると同時にアンカーを抜く。
    体が宙に舞い、アルミンより高い位置にピタリと止まった。そのまま俺の体はアルミンのうなじへ一直線に落下していく。

    ジャン「果たすためにッッッ─────!」

    うなじ寸前で体をひねり、アルミンのうなじを刈り取る動作に移る。










    ジャン「殺った」

    ────ズシュッッッッッ!!!
    ───
    ──

  69. 69 : : 2019/07/13(土) 21:17:57
    ─────
    ────


    俺は消えかける超大型の元へ走る。
    進撃から出た後で意識ははっきりしないが、体が勝手にそうしていた。

    超大型の亡骸にアルミンを見つけると、アルミンの体を引っ張り出そうと試みるが、アルミンの体の一部は超大型に癒着しつつあり、引っ張り出すことはできない。

    エレン「くっ────!言っただろ!!!アルミン!!!!「お前を助ける」って!!!!なにが、あっても────ッ!!!助けるって!!!」

    アルミンの体は1ミリも動かない。

    リヴァイ「エレン、もう、無理だ。」

    兵長が肩に手を置き、俺をアルミンから引き離そうとする。

    エレン「無理じゃありません!!!アルミンはここにいる!!!!そこで、生きてる・・・・!」

    リヴァイ「エレン、気持ちはわかる。だが、もう無理だ。アルミンは虫の息じゃねえか、時間の問題だ。」

    エレン「アルッ・・・ミンッ・・・!!!うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!!アルミンッ!!!!!!なんでっ、お前が・・・・!!!俺が、俺が死ぬ筈だったのに、お前がいなきゃ、俺は、どうすんだよ・・・・!!!」

    ─────
    ──

    エレンが咽び泣く声だけが木霊する平原で俺は、蒸気となって消えて行くアルミンを見ていた。

    ジャン「すまん、アルミン・・・・。すまん・・・・っ・・・・。」

    ハンジ「ジャン、君は間違えてない。無駄だった死が今まであったか?皆、何かに宿って、逝ったはずだ。アルミンだって、そうさ。」


    ジャン「・・・・・。」


    アルミン、お前、本当に、根性あるよな。
    「嫉妬」なんかじゃできねえよ。
    「羨み」なんかじゃできねえよ。

    アルミン、お前は勇者だった。




    人類に希望の光をくれて、ありがとう、アルミン。

    ─────
    ───







  70. 70 : : 2019/07/14(日) 19:06:29
    ──────
    ───


    エレン「・・・・。」

    エレンは瞬き一つせず、まるで廃人にでもなったかのようだった。
    そんなエレンに俺はあるものを差し出す。

    エレン「これは・・・?」

    ジャン「アルミンと俺とで、アルミンのじいちゃんの私物から手がかりを探してた時に見つけた、水晶だ。」

    アニ「・・・・!ちょっと、それ見せて!」

    ジャン「おっ、おい!何すんだよ!アニ!」

    アニは俺からその水晶を取り上げると、胸ポケットから、同じような形の水晶をとりだし、それに合わせる。

    2つの水晶はがっちりと噛み合い、円形の1つの水晶にかった。

    アニ「これ、私の父さんに、アルレルト隊長が託した物なんだ。お守りにしろ、ってね。」

    エレン「アニ、それお前が持ってろ。」

    アニ「いいのかい?」

    エレン「いいもなにも、それはお前の父さんに渡すべきもんだろ。その時がくるまで、持ってろ。」

    アニ「ありがとう。そうするよ。」

    ボルコ「ほらよ。」

    エレンの隣にどかっと座るボルコ。
    手には水を貯めた瓶を持っており、エレンにそれを差し出す。

    ボルコ「遠慮すんな、飲めよ。その、ほら。友人については気の毒、だったな。」

    エレン「・・・・。悪いな。こんなことに、巻き込んじまって。」

    ボルコ「バカ言え。悪いのは、俺らだろうが。」

    ボルコはうつむき加減に床を見つめたまま呟く。

    エレン「お前らじゃねえよ。元を辿れば「巨人」を作った監視者が俺達を対立させたんだ。そいつら以上の悪人は居ねえよ。」

    ボルコ「だとしても、その力を使って好き勝手やってたのはマーレだ。俺達も片棒を担いでる。完全に無関係な訳じゃない。」

    エレン「誰だって、悪人になる。俺だって、そうだ。真実を知らなきゃ、全員に復讐してやると言って聞かなかっただろうよ。生き方が違ったんだよ、俺らは。どちらが正しい、どちらが悪い、そんな単純なことじゃ、ないのかもな。」

    ─────
    ───


    リヴァイ「ハンジ?何してる?」

    ハンジ「惨いよな。死体も、残らないなんて。」

    ハンジはアルミンの超大型があった場所に佇んでいた。
    直立不動のまま、その現場を見つめている。

    ハンジ「私達は、いいよ。死んでいった仲間は、変わり果てた姿、だけど、帰ってきてくれた。涙で、送り出してあげられた。だけど、アルミンはどう?みてくれよ、リヴァイ。跡形もないんだ。ただの煙になって、空を漂うだけだ。」

    返す言葉も無かった。
    ハンジは自分を責めているのだろう。
    「無茶をするな」という言葉になんの拘束力もないことを知っていながら、それをアルミンに投げ掛けるしかなかった自分を。
    俺はハンジの隣にならび、同じように現場を見つめながら言う。

    リヴァイ「ただの煙にしかならなかったのか?あいつは。」

    ハンジ「・・・。」

    リヴァイ「人類の歩みに夢を託して、散った筈だ。アルミンが煙になって風に漂うなら、俺達はその風と共に、歩いていくだけだ。そしてその風は、俺達に力を与える。忘れるな、誰の死だって、無駄じゃねえ。」

    ハンジ「・・・・。」

    リヴァイ「中、入れよ。風邪を引かれでもしたらかなわねえ。」

    ハンジ「・・・・わかった。」

    ─────
    ───


    その朝、ダウパー村に向けて馬で駆ける。
    アルミンが居なくなり、重い空気は流れるが、十分な休息を取った甲斐あり、予定よりも早くダウパー村にたどり着けそうだった。

    ジーク「兵士長。日没までには辿り着けそうだな。」

    リヴァイ「あぁ、だが、もう一つ休憩のポイントがある。そこに辿り着いた後に、その後の進路を決める。」

    ジーク「了解。」

    ────
    ──


    リヴァイ「お前ら、どうだ。まだ行けそうか?」

    コニー「大丈夫ですよ!!!まだまだ行けます!!」

    サシャ「アルミンのためにも、一刻も早く、村に向かいましょう・・・!」

    リヴァイ「エレン、お前は?」

    エレンは海を眺めていた。
    親友を失い、心身ともに疲弊していたはずだったが、こちらを振り向いたエレンの目は、活気に満ち溢れていた。

    エレン「もちろん、まだ、いけます。」

    リヴァイ「よし。お前ら馬に乗れ。今日中にダウパー村に向かうぞ。」

    「はい!」

    ────
    ──
  71. 71 : : 2019/07/14(日) 19:29:33
    ────
    ───


    サシャ「ここです!!!ここが私の家です!!」

    ダウパー村に付いてすぐに、巨人に襲撃された跡地の中から、千切れた本の表紙を見つけた。
    間違いなく、私が読んでいた、「あの本」だ。

    サシャ「この表紙の本、なんですが、」

    絶望的。そういう他無かった。
    巨人の高温によって、本棚の本は焼け焦げ、床に散らばり、どれがどれなのかさえわからない。
    記憶を頼りに焼けた本の切れ端を拾い集めるが、まともに読めるものはない。

    諦めかけ、その場に腰を下ろす。
    その目線の位置に不自然に一つだけ無傷の本がみえた。

    サシャ「あった────」

    あの時読んだ、あの、本だ。

    サシャ「ありました!!!!この本です!!!」

    表紙は無い。間違いなく、この本だ。
    ハンジさんは皆を集め、その本のページをめくり始める。
    ページはついに、読んだことのない箇所にまできた。

    ハンジ「・・・・!」


    ────我々は、戦争の渦中に居る。
    他国から攻め困れ、まさに瀕死の状態だ。
    そこで、隣国の植民地に、生物兵器の技術を与える為に、我々はそこに赴いた。

    彼らはひどく怯え、我々が手にした注射器を指指し、「それはなんだ」と問うた。

    我々は答えた。「巨人の力」だと。───

    ──時は流れた。あれから何代も世代を跨ぎ、戦争は終盤に差し掛かると同時に、植民地であったその国は、「巨人」の力を大いに利用した。やがて彼らは、始めに「巨人」の力を宿した少女を「ユミル」、彼女に力を与えた我々を「大地の悪魔」と称するようになる。───


    ──植民地の文化の発展はめざましいものだった。我々の半分に満たない化学力しかなかったかの国はいまや、巨人の力を統括し、逆に巨人の力で統括している。───


    ──事態は深刻になりつつあった。植民地内でも、戦争が起こったのだ。「ユミル」の力を羨んだ者達は反乱を起こし、「ユミル」を国から外へ追いやった。彼女は「悪魔」と見なされたのだ。──

    ──「ユミル」を追い出した植民地の住民達は、自らその地を「マーレ」と改めた。マーレでは、外に放った「ユミル」とその子孫らを「悪魔の末裔」だと徹底的に教え込んだ。──


    ──我々は、「マーレ」の観測をやめるよう指示を受けた。次は、追い出された「ユミル」を観測せよ、と。その指示に従い、我々は妻を連れて、「ユミル」を探した──

    ───驚くべきことに、高層ビル程ある「壁」が作られていた。それもマーレから離れた絶壁の孤島に。驚き声が出ない私たちの前に、馬に乗った1人の男が近付きこう言った。「どうやって壁外に出た?巨人の襲撃には遭わなかったのか」、と────


  72. 72 : : 2019/07/14(日) 19:54:42
    グリシャかな?ww
  73. 73 : : 2019/07/14(日) 19:55:18
    ──我々はその男に連れられ、壁内に避難させられた。そこで見たのは、まるで、時代が逆行したかのように古典的な暮らしをする人々の姿だった。私が「飛行機や車はないのか?」と訪ねると、男は顔をしかめ、「なにを訳のわからないことを」と呆れる。壁内では完全に違う形の文化が栄えていたのだ。───


    ──壁内の片田舎の村に秘密裏に住ませて貰えることになった。家を貸してもらい、代えの服や家具まで。これで金がかからないと言う。念のため記しておくが、この村の名前は、「ダウパー村」だ。───

    ──「ユミル」から巨人の力を奪え。そんな任務を受けたのはそれから数年後だった。なまじこの環境に馴染んでいた私は、それに従おうとはしなかった。壁内で生きると、決めた。───

    ──しかし、事件は起きた。何者かが「ユミル」から巨人の力を奪ったのだ。その力はマーレに渡ったのだとすぐに推測できた。───

    ───マーレには9つの生物兵器が、国から送り込まれた。実践投入されることのなかった、9つの生物兵器だ。それをマーレに引き渡すに辺り、こう嘘を吹き込んだ。「これは「始祖」から作られた新たな巨人だ」と。────


    ハンジ「・・・・。それから時が流れ、「核」によって、ブラウス家の先祖である筆者の祖国は滅びた。「巨人』という、負の遺産だけをのこして。」

    サシャ「「大地の悪魔」が・・・・私の・・・・先祖・・・・?」

    コニー「じゃあ、無垢の巨人は!?どう説明すんだよ!?」

    ハンジ「ここに、それが書いてある。イェーガーの一族が使うことができる「消滅する能力」もこれによるものだろう。」

    ──植民地に広める「生物兵器」とは、「揮発性細菌」の事である。この細菌は、脊髄にたどり着くと同時に、人間の細胞の構造を変化させ、体を巨大に変化させる。

    この細菌の適合率が高いレベルにまでなると、体を蒸気のように細分化し、あたかも瞬間的に消滅したかのように見せることができる。───


    ハンジ「アルミンは、「ジーク特有のもの」と言っていたが、前の記述を見る限り、監視者達はマーレにも嘘の情報を流していたんだろう。」

    リヴァイ「つまり俺達は、「細菌兵器」の実験台だった、ってことか?」

    ハンジ「そういう、ことだ。」

    リヴァイ「「始祖」の力は、マーレが独自に改良したもの、らしいな。」

    ハンジ「記憶を書き換える一見非現実的な力も、なにか科学的根拠がありそうだね。」

    ─────
    ───


  74. 74 : : 2019/07/17(水) 16:31:44
    ─────
    ───
    ──

    ハンジ「読めば読むほど、信じられない事ばかりだ」

    リヴァイ「全くだな。」

    ダウパー村の<<禁書>>が私達に伝えるものは、どれも衝撃的な物だった。

    『ヒコウキ』と呼ばれる飛行船に似た形状の機械での有人飛行、連続射撃可能な『キカンジュウ』に、ほかに類を見ない程巨大な『センカン』。

    この壁の外には、我々の人智をはるかに越えた技術が栄え、発展していた。

    リヴァイ「これほどまでに進歩した技術を有しておきならがら、最期に産み出したのが原始的な「巨人」とは皮肉なもんだな。」

    ハンジ「しかも、その原始的な「巨人」が、神に等しい力を得た。その力の源は、何によるものか、彼らにもわからないときてる。」

    私は当初、「始祖」の記憶改竄の能力にも、なにか裏があると推測していた。だが、ダウパー村の<<禁書>>から、その力は監視者にとっても想定外のものであったことが読み取れた。

    リヴァイ「これから、どうする?」

    ハンジ「・・・・。「始祖」を行使しよう。事を早く進めなければならない。」

    ────
    ───


    エレン「え・・・?」

    ハンジ「「巨人を消滅」させるのはもちろん必要だ。だけど、それからの私たちの歩みを想定すれば、その知性巨人すらも、重要な要素になってくる。だから、」

    エレン「始祖の行使を、行わないっていうんですか!?」

    ハンジ「違う。よく聞いてくれ、エレン。なにも消し去るのは、全ての巨人でなくてもいい。」

    ジャン「一体、どういうこと、ですか?」

    ハンジ「「無垢の巨人」のみをこの世から消し去る。それで、どうかな?エレン。」

    エレン「俺だけの意見では、どうにも・・・。」

    ハンジ「もちろん、知性巨人の継承者全員に賛同してもらえないなら、この計画はなしにするよ。どうかな?」

    ハンジさんはアニ達に問う。
    始めに口を開いたのはアニだった。

    アニ「いいよ、それでも。女型は父さんと一緒に掴みとった物でもある。内に宿して、自分を戒めておくよ。」

    ベルトルト「僕には、拒否する理由がないから、皆に従うよ。」

    ライナー「俺もだ。特別拒否する理由もない。」

    ボルコ「俺は恩返しをしたい。俺に優しい言葉を掛けてくれた人に、巨人の、力で。」

    ピーク「構わないよ。元からどんな結末も、覚悟してる。」

    リヴァイ「あとは、髭面。お前だ。」

    ジーク「やろう。」

    リヴァイ「ハンジ、答は出揃ったぞ。」


    ハンジ「エレン。準備は、いい?」

    エレン「はい、もちろんです。」

    ────
    ──




  75. 75 : : 2019/07/17(水) 16:41:01
    ─────
    ──


    ミカサ「うぅっ、エレンっ・・・。」

    ジャン「ミカサ、泣くなよ・・・。」

    広い平原の真ん中で、ジークさんと向かい合う。
    ジークさんは手を差し出し、俺がそれを握るのを待つ。

    ジーク「あの時みたいだな。君を、軍隊に迎え入れたあの時だ。」

    ───『ようこそ、マーレ軍隊へ』

    エレン「そうですね。」

    ジーク「長い、悪夢だった。」

    エレン「その夢が、」

    俺は、ジークさんの手を思い切り握る。

    エレン「今日、終わる」

    ────バチチチチチチッッッッ!

    ─────
    ───


    ジャン「っ────!?」

    二人が握手を交わした瞬間に、目映い閃光が発せられる。

    閃光が止んだ。
    俺は、辺りを見回してみる。


    ジャン「いない・・・・。あれだけ、いた、巨人が・・・!」

    動けない巨人がいたその場所には男性が横たわっていた。
    そこへ慌ててハンジさんが駆け寄って行く。

    ハンジ「あなた、大丈夫!?動けるか?ほら、肩を貸すから。」

    「ぅぅ・・・。」

    たが、どこを見たって、エレンはいない。
    やっぱり、あいつは─────。

  76. 76 : : 2019/07/17(水) 16:46:59
    ────
    ──


    ここは・・・?
    光、やさしい、光だ。

    『エレン!!何してるの?そんなところで。』

    アル、ミン・・・?

    『遅いじゃないか。早くこっちに来てよ。ほら、海が見える。』

    この世の物とは思えないほど、澄み渡った海。
    奥から何かが此方に来るのが見えた。

    『船だ。僕らを迎えに来たんだよ。』

    迎えに?俺たちを?

    『そうさ。エレン、』

    アルミンは俺に手を差し出す。

    『行こう』

    その手に引かれるまま、俺は、光へと消えていくのだった。

    ─────
    ──




    END
  77. 77 : : 2019/07/17(水) 16:49:48
    今回で、最終回となります。
    途中更新が滞った分も含めると、2ヶ月もの間お付き合い下さり、ありがとうございました。

    例のごとく、誤字・脱字があれば、まとめて修正しますので、ご容赦ください。

    繰り返しになりますが、2ヶ月もの間、お付き合い下さり、ありがとうございました。

▲一番上へ

名前
#

名前は最大20文字までで、記号は([]_+-)が使えます。また、トリップを使用することができます。詳しくはガイドをご確認ください。
トリップを付けておくと、あなたの書き込みのみ表示などのオプションが有効になります。
執筆者の方は、偽防止のためにトリップを付けておくことを強くおすすめします。

本文

2000文字以内で投稿できます。

0

投稿時に確認ウィンドウを表示する

著者情報
MDaidaros

344っP

@MDaidaros

「進撃の巨人」カテゴリの人気記事
「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
「進撃の巨人」SSの交流広場
進撃の巨人 交流広場