このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
極東の紋章使い
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- 1 : 2019/03/29(金) 12:03:04 :
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紋章術──それは体内に内蔵された魔力を左手の甲に刻まれた幾何学的な紋章を通じて発現させる魔術。
紋章術を学び、研鑽する最高学府であるアルカディア王立紋章術学院、通称〈Aアカデミー〉では、十年に一度行われる血で血を、魔術を魔術で洗う戦競宴「ラグナロク」の幕が上がろうとしていた。
そんな最中、極東の日本からの留学生、月村凛 が世界最高峰の学府の門を叩く。
これは己に刻まれた紋章が織り成す血と涙の物語──────。
#01『極東からの留学生』
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- 2 : 2019/03/31(日) 16:45:48 :
凛は死色の平原に立ち尽くしていた。
辺り一面に広がるのは真紅の色を持つ狂気のような美しい花々────ではなく、返り血を全身に浴びて鈍く光る無数の剣や刀。
大地を穿つその刀身達は所々に紅い斑点や細い糸を垂らしたかのような血筋が浮かび上がっている。
誰の血だ?
言うまでもない。『アイツ』が殺した人達の血だ。
凛は歩き出した。
足元に散らばった誰のものともしれない臓物を踏み抜くと、グチャりと生々しい音がする。腐りきったイチゴジャムみたいだ。
横目に流れる景色の中には、知った顔が幾つもあった。その全ての身体に分け隔てなく黒塗りの剣が突き刺さり、文字通り串刺しとなっている。
「なんで.......」
目尻に溜まった涙が決壊したダムのごとき勢いで頬にすじを作り流れ落ちる。
「なんで.....なんでこんなことを.........!」
どれだけ歩いたのだろう。一瞬か、それとも永遠なのか。しかし凛に時間の概念など無かった。それほどまでに悲惨な光景を目の当たりにしているからだ。
無数の死体を無数の剣が貫き、死と血が咲き誇る死色の平原の小高い丘の上に立っているのは。
「兄さん.....!!」
「んあ?」
ガタン、と大きな音を立てて凛の身体が揺れた。正確には凛が乗っている電車の車両が揺れた。目的の駅に到着したからだ。先程まで夢の中にいた凛は眠眼で車窓の外に目をやる。
「ようやく着いたか」
視界がぼやけるのは寝起きだからだろう。あくびを噛み殺しながら荷物置きに置いてある自分のトランクを引っ張り出す。
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