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あなたの大きさ

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  1. 1 : : 2018/11/07(水) 22:48:10
    ※原作最新話までのネタバレを含みます
  2. 2 : : 2018/11/07(水) 22:49:28
    あなたをこの手に初めて抱いた時

    両腕にすっぽりと収まる小さな命

    けれどその産声は力強くて、心が震えた

    まだ赤みの強い体
    ぷっくりとした手足
    しわくちゃな顔

    すべてが愛おしく輝いて見えた

    きっとこの子に私の全てを捧げていくんだと思った
















    初めてママと呼ばれた

    嬉しくて、幸せで、何度も何度も

    「もう一回」

    とせがんだ

    けれどあなたはキャッキャと楽しそうに笑って、ときおりぶぅっと口を尖らせるだけで

    次に呼んでくれる時を心待ちにする日々だった




















    あなたは自分の足で立って、好きな所へ行けるようになった

    隙あらば高い所へ登ろうとするあなた

    少しも目が離せなくて、何度心臓が止まる思いをしただろう

    たくさん動いて、体もあっという間に大きくなった

    でもまだまだ私の腕の中
  3. 3 : : 2018/11/08(木) 00:06:46
    気が強く、すぐ熱くなるあんたに初めてできた友達

    気弱に見えて、頑として譲らない芯を持った優しくて賢い子

    いい友達と出会えたね

    怪我をして帰ってくる日がほとんどで、私の心配なんてどこ吹く風

    いったい何度ため息を吐いたかわからない

    でもね、あんたが真っ直ぐに育ってくれていることは、私にとって大きな誇りだったんだ















    あんたが強盗を刺殺したと聞いた時、目の前が真っ暗になった

    人を殺したからじゃない

    一歩間違えば、この世にいないのはあんただったかもしれない

    自分が助けてやらないとって、そう思ったんだろう

    私が体ごと全部抱きしめられるくらいにあんたは小さいんだ

    「痛いよ、なんともないって!離してよ」

    絶対に離すもんか

    子どもなんだから無理するんじゃない

    あんたが母さんにとってどれだけ大切か、少しは自覚しなさい
  4. 4 : : 2018/11/08(木) 18:20:56

















  5. 5 : : 2018/11/08(木) 18:21:05
    調査兵団を目指すと言ったあんた

    母さんは反対だった

    調査兵団を馬鹿にしたり、嫌っていたりしたわけじゃない

    あんたに危険なことをしてほしくなかった

    ただ生きていてくれる

    それだけでよかったんだ

    特別になんかならなくていい

    誰からも認められるような人間にならなくていい

    だってあんたは、生きているだけでもう充分偉大なんだから

    何よりも価値のある、私の命以上に大切な存在

    たとえあんたに嫌われても、絶対に守ってみせる
  6. 6 : : 2018/11/08(木) 18:21:33

















  7. 7 : : 2018/11/08(木) 18:22:43
    もう助からない

    瓦礫の下敷きで、脚も潰された

    せめてあんたたちだけでも生き延びて

    子どもの力でこんなに大きな瓦礫を動かせるわけない

    早く逃げな

    巨人はもうすぐそこまで来てる

    私のことはどうでもいい

    あんたたちが無事でいてくれたらそれでいい

















    ハンネスに担がれて、どんどん遠ざかっていく

    ごめんねエレン

    母さんはあんたが大きくなるところ見られなかった

    まだあんなに小さなあんたを一人にしてごめんね

    ミカサとアルミン、三人で支え合って生きていくんだよ

    もう涙で何も見えなくなった

    幸せだった日々が頭の中を駆け巡る

    エレン、私のエレン

    逃げて、逃げて

    でも、ーーーーー…











  8. 8 : : 2018/11/08(木) 18:23:31

















  9. 9 : : 2018/11/08(木) 18:23:45
    調査兵団に入団して、もう何年も経ったんだね

    エレン、あんたーーーーー

  10. 10 : : 2018/11/08(木) 21:32:10
    薄い掛け布団を跳ね飛ばして目覚めた

    「は、何で今こんな夢…」

    乾いた笑いが零れる
    辺りは薄暗く、活動を始めるにはまだ早い

    「どうした、追手か?」

    エレンのたてた物音で起きたのか、フロッグが緊張した声で周囲を見回す

    「いや、ただ目が覚めただけだ。気にするな」

    「夜明けまではまだ時間がある。もう一眠りしておけよ」

    兵団を抜け出したエレンたちは、次なる目的のため移動を続けていた
    夜明けとともに再び動き出し、さらに本格的な作戦が始まる
    しっかり休んでおけ、というフロッグの真意を汲み取りながらも、別にいいと素っ気なく返した

    「続き、見ちまいそうだから」

    「続き?」

    「お前は寝ろよ」

    ただの独り言だ、質問に答える気は無い
    表情がそう語っている
    フロッグは不服そうに眉をゆがめたが、やがて再び眠りについた
  11. 11 : : 2018/11/08(木) 23:37:50
    こんな時に何で母さんのことなんか…
    いや、こんな時だからなのかもな

    キース教官に聞いた母さんの思い
    今までずっと忘れてた

    母さんはこんな俺を見たらなんて言うだろう

    ミカサとアルミン、他の奴らも、皆を裏切って世界に戦争を仕掛けてる

    母さん、ごめん

    俺は母さんにあれだけ愛されていながら、一つも母さんの望んだ通りにはなれなかったよ

    前ジャンと殴り合った時、あいつに母ちゃん大切にしろよとか言ったっけ

    母さんの気持ちを踏み躙ってるのは俺の方だ

    でも、なんでかな

    罪悪感は少しもないんだ

    やろうとしてることの重大さも、それに振り回される皆のことも全部わかってる

    サシャが死んだ時もそうだった

    俺は何で笑ってんだろう
  12. 12 : : 2018/11/09(金) 18:55:12
    一人で考え事をしていても、なかなか夜は明けない

    でももう一度寝る気にはなれない

    そうだ、さっきの夢の続きを見るのが怖いんだ

    今の俺をどう思うかなんて、母さんの口から聞きたくない

    でも一つだけ感謝するよ

    母さんの願いを思い出しても、自分の罪を振り返っても、迷いはもうない

    意志は変わらない、それを改めて確信できた

    悪魔と呼ばれても構わない

    俺は進む
  13. 13 : : 2018/11/09(金) 18:55:43

























  14. 14 : : 2018/11/09(金) 18:56:11
    だんだんと意識が薄れていく

    俺はどうして死ぬんだっけ…

    13年の寿命か、戦闘に負けたのか、もしかしたら全く関係ないことが原因か

    それももう思い出せない

    ただ寒くて眠い

    俺の人生は何だったんだ?

    何かを残せたのか?

    俺の夢は叶ったのか?

    夢?俺が描いていた夢…なんだったっけ

    もう、どうでもいいや…
  15. 15 : : 2018/11/09(金) 22:00:35
    誰かの声がする

    水の中にいるみたいにボヤけて聞き取れない

    何も見えないけど、薄ぼんやりとした明かりみたいな何かが近づいてくるのを感じる

    さっきまであんなに寒かったのに、今は温かい

    包み込まれているみたいで安心する

    うん、俺はこんなに大きくなったよ

    もう母さんよりずっと背が伸びたんだ

    こんな親不孝な俺を迎えに来てくれてありがとう




    ーよく頑張ったね、エレンー




    ああ、そっか

    知らなかった

    気づかなかった





    母さんはこんなにも大きかったんだ















    〜END〜
  16. 16 : : 2018/11/09(金) 22:01:19
    以上で終了になります
    閲覧ありがとうございましたm(_ _)m
  17. 17 : : 2019/04/11(木) 17:07:12
    お・も・し・ろ・い おもしろい
  18. 18 : : 2019/04/12(金) 23:58:52
    名無しさん
    閲覧ありがとうございました!

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Nyuuyokuzai

ロマビム

@Nyuuyokuzai

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