ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

この作品は執筆を終了しています。

最強の2人(リヴァミカ)

    • Good
    • 3

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2014/01/06(月) 15:47:13
    #プロローグ#

    場所は、巨大樹の森。時は、エレンが連れ去られた時。








    リヴァイ「………………………」


    …俺がエレンの叫び声を聞いてからリヴァイ班の精鋭達の死体を発見するまでに、さほど時間はかからなかった。


    今は、戦場だ。そして仲間の亡骸のそばにいるよりも、やらなければならねぇことがある。むしろすぐにでもエレンのもとに向かわなきゃ、こいつらには申し訳が立たない。


    それでも全員の顔をきちんと見るまでは、この場を去りたくはなかった。

    もっと飛ばさなければならない速度をできるだけ落とし、一人一人の顔を見る。

    そして、初めて会った時からずっと愛しさを感じていた女の死に顔に、目を向けた。


    リヴァイ「………………………」







    激しい怒りを胸の奥に感じながらも、それを表に出すような真似はしない。

    落ち着いて状況を見ろ。


    今、俺がしなければならないことはなんだ。


  2. 2 : : 2014/01/06(月) 15:48:28
    最強のコンビwww

    キタイしてますww
  3. 3 : : 2014/01/06(月) 15:49:59
    一気に速度を上げて、先程声がした方向へ向かう。








    冷静を保て。感情を制御しろ。


    自分に言い聞かせながらも俺は、女型の巨人を殺したくて殺したくて…ウズウズしている。

    早く追いついてエレンを奪還して…

    そしたら綺麗に削いで、グチャグチャにしてやる。


    いや、違う。エレンの奪還が最優先だ。落ち着け。


    心の中で何度も何度も自分を抑圧する。溢れ出る感情をセーブする。


    リヴァイ「…ちっ、俺としたことが…かっこわりぃ。頭を冷やせ」


    エレンのもとへ早く着こう。
    そしてその後の判断は生死に関わる重要なものになる。一旦冷静になれ。


    ドォォォ!!!!ドォォォ!!!



    リヴァイ「…………女型…」


    リヴァイ「………と、あれは……」


    リヴァイ「…………………」



    女型の姿が見えたかと思ったら、やつは相当疲弊しているようだ。そして全身に切り傷がある。



    ミカサ「待て!!!」




    鬼の形相で女型を追いかける女。理性もなにもあったもんじゃねぇ、感情に身を任せているだけのただのガキだ。




    俺も、少しでも感情を表に出してたら、あんな風に取り乱していただろう…。そこには自分の感じていた狂気と同じものが確かにあって、自分をみているかのようだった。
  4. 4 : : 2014/01/06(月) 15:52:48
    まぁ、俺はあそこまでぶっとんでねぇだろうがな。





    リヴァイ「同じだ。一旦離れろ」



    女を担ぎ、距離を離させる。
    自分よりも取り乱したやつを見ると、一気に頭の温度が下がるってのはよくあることだが、まさかこんなガキのおかげで冷静になれるなんてな…。




    リヴァイ「この距離を保て。ヤツも疲弊したかそれほど速力はないように見える。」

    リヴァイ「うなじごとかじり取られていたようだが、エレンは死んだのか?」


    ミカサ「…。エレンは生きてます。目標には知性があるようですが、その目的はエレンを連れ去ることです。殺したいのなら潰すはず…目標はわざわざ口に含んで戦いながら逃げています。」.



    リヴァイ「エレンを食うことが目的かもしれん。そうなればエレンは胃袋だ…普通に考えれば死んでるが…」


    ミカサ「生きてます」




    リヴァイ「…だといいな」


    ギラリとこちらを見る目は、まるで獣のそれだ。



    ミカサ「そもそもはあなたがちゃんとエレンを守っていれば、こんなことにはならなかった…」

    リヴァイ「……………………」





    …エレンに限った話じゃねぇ。俺がもっと早く戻っていれば、あいつらだって死なずに済んだかもしれない。だが、今となってはもうどうしようもねぇ。



    俺たちは結果がわからないからこそ、なにかを信じたりして自分を納得させながら進む。



    今回俺は、エルヴィンを信じた。そしてエルヴィンの判断が間違っていたとは思っていない。あくまでもこの葛藤は、それを信じた俺の問題だ。
  5. 5 : : 2014/01/06(月) 15:55:57
    そしてこいつは、俺を信じた。エレンに関することは俺に一任されていたから、仕方なく信じたんだろうがな。



    …悔しいだろう。


    リヴァイ「…お前は、あの時のエレンのなじみか」


    ミカサ「………………」



    リヴァイ「そうか…」


    俺が今できることは、こいつの信頼に応えることだ。こいつが俺を信じたことを、間違っていたと思わせねぇためにも…。


    リヴァイ「目的を一つに絞るぞ。まず…女型を仕留めることは諦める」


    リヴァイ「俺がヤツを削る。お前はヤツの注意を引け」





    できうる限りの速さで、女型を削りにいく。硬化の能力で、防ぐ暇など与えない。



    痛そうな顔してんなぁ。てめぇ、さっさと口の中のもん出せよ。きったねぇ顔しやがって…。




    目を潰す。


    全身の筋肉を一気に削ぐ。


    ほら、もう立てねぇだろう。




    腕が落ちた。もう少しだ。


    相手が抵抗できないうちに、さっさとあごの筋肉を切ってやる。


    速度を上げていく。






    リヴァイ「…ーーーーー?!」


    あの、クソガキ…………ッ!!!!



    一瞥すると、ガキがうなじを狙うためにアンカーを飛ばしていた。


    ピク、と女型が反応する。

    まずい………ッ!!!!!!!




    リヴァイ「ーーーよせっ!!!!」ドォッ

    一気にスピードをあげたものの…




    リヴァイ「…ッ(間に合わねぇ…!)」





    大きな衝撃を感じたと共に、


    俺の意識はぶっ飛んだ。
  6. 6 : : 2014/01/06(月) 16:02:26
    >>2

    ありがとうございます!最強コンビのいい感じのラブが書けるように頑張ります!


    プロローグだけ先に書きました!続きはまた本日の22時頃に投下しようと思います…(^O^)
  7. 7 : : 2014/01/06(月) 16:24:19
    がんば
  8. 8 : : 2014/01/06(月) 20:50:46
    応援&支援×99999999999999999999999999999 超期待 頑張って! もっとリヴァミカ増えろ!
  9. 9 : : 2014/01/06(月) 22:28:22
    期待!
  10. 10 : : 2014/01/07(火) 00:03:32
    遅くなりました…ごめんなさい…。


    えと、ここから本編です!


    基本的にはリヴァイ中心ですが、視点はころころ変わったりラジバンダリなのでよろしくお願いします。

    とりあえず書き終わった分だけ載せます…色々と整合性が取れていないところもありますが、本当すみません…。
  11. 11 : : 2014/01/07(火) 00:06:00
    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    ペトラ「いちょ…兵長!!!」




    リヴァイ「………?!」




    ペトラ「…こんな時間まで寝てるなんて、珍しいですね?」


    リヴァイ「…あぁ、もう朝なのか…」



    ペトラ「壁外遠征は明日ですけど、大丈夫ですか?体調が悪いならキチンと報告した方が…」


    リヴァイ「…いや、体調は悪くない。エレンはどうしてる?」


    ペトラ「エレンなら、ハンジ分隊長につかまってますよ。今は外にいると思います。」


    リヴァイ「そうか…悪かったな。すぐに支度をする。お前はすぐにエレンのもとへ向かえ。」




    ペトラ「……………………」




    リヴァイ「…………?おい、なんだ…」




    ペトラ「私は、リヴァイ兵長に一生を捧げる覚悟です。」



    リヴァイ「……………………」



    ペトラ「体調が優れないのなら、言って下さい。何か引っかかることがあるなら、教えて下さい」




    リヴァイ「……ペトラ、俺は別段気分が悪い訳でも悩み事でウジウジしてる訳でもねぇ。わかったらさっさと行け。」




    ペトラ「……………。はっ。」バッ


    ペトラは俺に対して、よくこの敬礼をする。胸に握りこぶしを突き立てる、俺たち兵士の敬礼だ。




    私はあなたに、心臓を捧げる。




    おそらく、そんなような意味のつもりなのだろう。




    リヴァイ「…ペトラ。ちょっと待て」



    俺は、なんだか納得のいかない気持ちを抱えながらペトラを呼び止めた。



    ペトラ「…はい、なんでしょう?」



    ドン!!!!!!!!!!


    振り返ったペトラの左胸に、握りこぶしを突き立てる。


    ペトラの顔が驚きで赤くなっているのが見えた。



    リヴァイ「お前の心臓は、俺のもんじゃねぇ。お前は敬礼の意味を、少し勘違いしてやがる。」



    ペトラ「……兵長……………」



    リヴァイ「……でも、敬礼をすること自体はいいことだ…。続けろ。いつかお前にも、敬礼のもう一つの意味がわかる時が来る。」


    ペトラ「兵長…………?」



    リヴァイ「…俺の行動の、意味もな…」



    ーーーーーーーーーーーーーーー

  12. 12 : : 2014/01/07(火) 00:08:03
    頭が痛ぇ。なんだ、これは…。




    目をあけると、木々の間から太陽の光が差し込んでいて、それはキラキラとした幻想的な世界にも見えた。



    背中の感触からして、おそらく俺は巨大樹の木の枝の上に寝っ転がっている体制なのだろう。頭はキチンと、固定してあるみたいだな…。



    いッッ…………………

    立ち上がろうと力を込めると、全身がびりっと痛む。なんだこの痛みは…頭がものすごくガンガンする…。



    リヴァイ「…俺は、いったい…?」


    ぬっと、目の前に光を遮る何かが見えた。



    エレン「…兵長、目が覚めたんですね」


    リヴァイ「?!?!」
  13. 13 : : 2014/01/07(火) 00:10:57
    な…なぜこいつが、ここに…。



    しかも…顔が逆さま…??俺の目の先にこいつの口があって…俺の口の先にこいつの目がある…。



    この体制は、まさか…



    エレン「良かった…兵長、頭を強く打って気絶していたそうなんです。俺も巨人化の影響でさっき目が覚めたんですけど…。ミカサが今応援を呼びに言ってるんで、まだ動かないで、頭を高くして寝ていてください」




    リヴァイ「………………………」


    おい…ふざけるな…………………。





    エレン「…兵長…やっぱり、怒ってますか?」


    当たり前だろう…。何が悲しくてこんなクソガキしかも男に膝枕なんてされなきゃいけねぇんだよ…。これはお前が思っている以上に重大な問題だ…。



    エレン「…俺は、兵長に言われたように、自分で決断しました。その結果でリヴァイ班は…。俺が選んだんです。…ごめんなさい……」


    リヴァイ「…………………………」




    そっちか………。

    男のくせに目に涙をため、拳を握りしめるエレンをみて、自分の胸の何かがざわついた。


    リヴァイ「…こればっかりは、仕方ねぇ。結果は誰にも、わからねぇんだから。」


    リヴァイ「………おい、泣きやめ。状況を説明しろ。なぜお前はここにいるんだ」


    エレン「……いや、俺も実はよくわからなくて…。グズッ……………………ハァァ~~~。…………とりあえず、俺の目が覚めた時の兵長はまだ頭から血を流していて、グッタリしていたんです。」

    リヴァイ「…………ほう」



    エレン「ミカサがじんこ…、えと、心肺蘇生法を繰り返していて…俺が頭部の止血をしました。」


    エレン「今は、ミカサが荷馬車の手配をしに行ってくれています。」



    リヴァイ「…………つまり、ミカサはお前を結局女型の巨人から奪い返し、安全なところへ避難したうえで俺たちの看病をしていたということか。」


    エレン「…で、兵長は今しがた一命を取り留めたばかりの人間なんです。なぜ意識が戻ったのか…ちょっと意味がわからないです。」


    リヴァイ「なんだその言い方は…お前、喧嘩売ってるだろう…。」



    エレン「…………………………」




    リヴァイ「…てめぇ、シカトか…いい度胸だな……」

  14. 14 : : 2014/01/07(火) 00:21:16

    …ということは、あいつは女型の巨人と1人で戦ったのか…。

    あの場面で…冷静さを欠いている状態のあいつが…。運が良かったとしか思えねぇ。


    しかし、自分の馴染みのためとはいえ、そこまで危ない真似をできるものなのか…?





    『私は、リヴァイ兵長に一生を捧げる覚悟です』


    ッ…………………………




    女ってやつは…なんでこうも人のために動いちまうんだ…。

    想い人の強い目とミカサの目が、俺の中で重なった。

    …まさかな。ペトラはあのガキより、ずっといい目をしていた。

    あの透き通った強い眼差しには、もう二度と出会えない…………。








    パカラッパカラッパカラッ…




    エレン「お、ミカサ!!!!!」




    ミカサ「エレン、……兵長」



    ハンジ「リヴァイ………!!………………なんだ、平気そうだね。ってブハハハハ!ひざまくら!あっ、ごめっここ壁外なのに…っっ!でも面白い!!!!!」


    リヴァイ「…ハンジてめぇ……」



    ハンジ「はいはい、睨まないで!荷馬車まで運んであげるんだから、レディにそんな目するなよー」



    ハンジ「よいしょっ…と!いやーしかしこんなリヴァイ初めて見たかも。しかもエレンのひざまく…ブハハハハ!!!最高に滾る!!!!ブハハハハ!!!!」




    エレン「………しかも兵長、途中で意識ないのに、俺の左胸触ってきたんですよ」



    ハンリヴァミカ「………?!?!????!????!!!」




    ハンジ「…………いやそれはだいぶ引くなぁ……」




    ミカサ「……………チビ…やりすぎだ…」ゴゴゴゴゴゴ






    リヴァイ「…とんだ濡れ衣だな…」




  15. 15 : : 2014/01/07(火) 00:25:04
    俺達は荷馬車に揺られ一先ずトロスト区へ帰還することになった。


    ここまで満身創痍な状態になったのは、実際初めてだった。参ったことに、全くといっていいほど体が動かねぇ。



    エレンと仲良しこよしで一緒に寝ているのも気に食わねぇ。


    なんだか、気が遠くなってきた。なんだか思考能力も鈍ってきてる気がしやがる。、それに眠気が半端じゃねぇ。せっかくここで横にならせてもらえるわけだし、どうせ戦力になんてならねぇし。寝させてもらうか…。



    ミカサ「……………兵長」



    ミカサ「……………兵長??」



    ミカサ「………ッ、兵長!?」


    ミカサが馬にのりながら、荷馬車の上で寝ている兵長に呼びかけている。…不思議だ。俺じゃなくて、俺の隣にいる兵長に………。いつも俺の周りをグルグルとついてくるのに、俺のために命を投げ打つようなやつなのに…



    ミカサ『兵長……!!!!!』

    ミカサ『エレンは奪還しました!!帰りましょう、兵長!』


    ミカサ『………………ッ。呼吸が、………!!!??』


    ミカサ『ーーーー!!ーーーーー!!!……………息を吹き返して下さい!』


    エレン『…ミ、ミカサ?!なにしてんだよお前!!!』



    恥ずかしいなんて言葉じゃ、言い表せない。兵長に人工呼吸をしてるミカサに、全力で嫉妬するなんて。

    本当、最低だよな、俺。





    エレン「…見る限り、ただ寝てるだけみたいだ。心臓も動いてるし、息もしてる。心配すんな。」




    ミカサ「エレン……………ありがとう。」


    エレン「……俺の方こそ、ありがとな。またお前に守られちまって」


    ミカサ「………家族なんだからあなたを守るのは当然。」


    ミカサ「…………………でも」


    エレン「……………………?」


    ミカサ「……………なんで兵長は、私を助けたのかな」


    ミカサ「……………なんで私は、兵長を助けたのかな」



    エレン「………………………。」


    ミカサ「……罪悪、感…?」



    エレン「………さぁな、知らねぇよ。そんなこと。」


    早く壁に着いてくれ。早くミカサを、普段の生活に…。



  16. 16 : : 2014/01/07(火) 00:31:57


    トロスト区帰還後ーーーーーーーー






    …私は、あまり人に興味があるわけではない。

    もちろん、104期の皆のことは大切に思っている。しかし、こういってはなんだが…人の恋愛話だったりとか、噂話だったりとか、そういったことには訓練兵の頃からあまり敏感ではなかった。

    なので、トロスト区に帰還したあたりから巷を賑わせているホットなニュースとして、私自身が噂されているという事実が私の耳に入ったのは、アニが水晶体に覆われた状態で地下室に幽閉されたあと、少しだけ落ち着いた時期だった。



    「ミカサとエレン、ようやく恋人同士になったんだってね!」


    ……なんのことだろうか。

    エレンは家族だし、アルミンは幼馴染。私はそれでいいと思っていても、私たちに関する噂は、結構ひろがっているそうだ。

    恋人同士………………………。




    別に噂をされる分には構わないのだけれど…。具体的に、恋人同士になると、何をするのだろう。

    いつも一緒にいて、私は彼を守る。これからもずっと、私は彼のそばにいたい。…私たちの絆は、それ以上でもそれ以下でもない…。



    コンコン!

    ミカサ「……失礼します。」


    ハンジ「…あぁ、ミカサ。今日も来てくれたんだね。」


    ミカサ「…あの、兵長は…」


    ハンジ「…まだ、目が覚めないんだよね。」



    リヴァイ兵長。


    …アニにエレンを奪われかけた時に、取り乱した私の冷静さを欠いた行動のせいで、頭に傷を負わせてしまった。


    何故か、巨大樹の森では意識が戻っていたのに、その帰り道に目を閉じてから今まで、この治療室のベッドの上で寝たきり。意識はずっと戻っていない。



    …ズキン…。



    胸が、痛い。


    申し訳が、立たない…



    ズキン………ズキン………


  17. 17 : : 2014/01/07(火) 21:04:22
    上手い、支援です!!
  18. 18 : : 2014/01/08(水) 23:07:45
    >>17
    ありがとうございます!


    それと、アニと戦ったあとはトロスト区じゃなくてカラネス区に帰還するんでしたね、間違えました(^^;;
    ごめんなさい!!!!!
  19. 19 : : 2014/01/08(水) 23:11:06

    ミカサ「…ハンジ分隊長、寝れていますか?」


    ハンジ「…ん、まぁ、平気だよ…。あそうだ、よかったらしばらく、ここにいてあげてくれる?私ちょっとまとめなきゃいけない資料があってさ…」



    ミカサ「もちろんです。」



    ハンジ「悪いね!じゃあよろしく!」



    …フラフラとした後ろ姿には、いつもの活気は感じられない。ハンジさんは相当疲れている。

    私は、ハンジさんが部屋から出ていくまで、その儚げな姿から目が離せなかった。





    …こんなリヴァイ、初めて見たかも。

    不意にポツリ…と、ハンジさんの言葉が頭を反芻する。


    この人は、本来こんな場所で寝ているような人ではない。私があの時焦った行動を取らなければ、いつも通り調査兵団のトップとして動き回っているだろう。

    私が訓練兵に入った頃、すでに実力者として名を上げていた兵長が…私の、せいで…



    ミカサ「……………ごめん、なさい」


    気づけば、私は兵長の左手を両手で握りしめていた。
    謝罪の気持ちと、早く目を覚まして欲しいという願望をこめて。
  20. 20 : : 2014/01/08(水) 23:12:18





    「おい、お前とミカサ、付き合い始めたんだってな」


    最初、なんの冗談かと思った。

    エレン「…なんですかそれ。俺そんなの知りませんよ。変な噂流さないで下さい…」



    いったいいつから俺とミカサが恋人同士になったんだよ。それどころじゃねぇだろう、今の俺たちは。



    「でもお前さ、ミカサのこと好きなんだろう?その、女として!」



    エレン「はぁ…そりゃずっと一緒にいたいですけど家族ですからね…。しばらく会わなければ会いたくなりますし…でもそれが女としてなのか家族としてなのか、そんなのわかりませんよ…」


    「へぇ…そんなんで愛しのミカサちゃん、とられちゃっても知らねーぞ!」


    エレン「…ははっ、愛しのミカサちゃんて柄じゃないでしょ…。じゃあ俺、寄るとこあるんでここで失礼します」バッ

  21. 21 : : 2014/01/08(水) 23:15:45
    愛しのミカサちゃん、ねぇ…。俺がいくら守りたいと思ってもあいつは俺の何倍も強い首席サマだし…いくら男らしくしたいと思ってもあいつはいつまでも俺を子ども扱いだし…


    腹立つよなぁ…。普通恋人同士って、男がリードするもんだろ…。あいつが男みたいだから、仮に俺達が付き合っても性別が逆になりそうでこえーよ。


    まぁ、それは俺に限ったことじゃないし。あいつも今はそういうことにはどうせ関心ないだろ。



    おっと、兵長の治療室はここか。




    コンコン!

    エレン「失礼します、エレンです」


    返事がない…。ハンジさんも誰もいないのか…?

    とりあえず俺は治療室のドアを開けて中を見た。


    エレン「……………………っ」





    エレン「……………ミカサ…?」




    俺がそこで見たものは、兵長の手を両手で握りしめながら、その手に寄り添うように顔をベッドに擦りつけて寝ているミカサと、


    リヴァイ「………………………」


    それを怪訝そうに見つめるリヴァイ兵長だった。




    ドキン……っ


    エレン「……………………(な、なんだよこれ…)」





    …初めてみる幼馴染の女の顔に、俺はただただ困惑した。

    この時は、まだわからなかった。

    なぜこんなにも胸が痛むのか、なぜこんなにも体がこわばるのか、
    今すぐミカサに俺の方を向いて欲しいと、なぜこんなにも切に願うのかを。









  22. 22 : : 2014/01/08(水) 23:17:40




    夢を見た。体中になにかが巻きついているような感覚を感じながら、ひたすら暗闇から脱出するために、走り続けるというものだ。



    どれだけ走っただろうか。とにかく、死ぬ寸前まで走った。これまででこんなに走ったことはないと思うほどだ。

    ようやく暗闇から抜け出すと、そこには見たことのないほど広大な運河のようなものが広がっていて、その水面は波立ち、そして鏡のように空を映していた。

    そこに自分を映してみると、



    リヴァイ「………………!!」


    そこには、かつての仲間達が俺にしがみついている姿が映ったのだった。




    リヴァイ「…お前らは……………」


    話しかけても、やつらは何の反応も見せない。

    ただただ、全員泣きそうな顔でこっちを見るだけだ。



    リヴァイ「……お前らは、悔いが残っているのか…???」




    やつらは表情を変えない。肯定も、否定もしない。



    リヴァイ「…そうだな、悔しいに決まってるだろうな…」



    リヴァイ「……俺は、俺は………」



    リヴァイ「……俺はお前らのことを、一生…最期の時まで、絶対に忘れねぇ。約束する…」


    やつらの険しい泣きそうな顔をなんとか和らげたい。微笑みでも、勇み顔でもなんでもいい、泣くのだけはやめさせたくて…




    リヴァイ「…おい、頼むからなんとか言ってくれ…」





    『…………ごめん、なさい』



    突然聞こえた、女の声。


    しがみついている仲間の声か?いや、こんな声のやつは、同期にも後輩にも、いなかったはずだが…


    だれだろうと、どうでもいい。



    無性に、腹が立ってきた。





    リヴァイ「…おい、何謝ってんだよ」



    リヴァイ「…謝るくらいなら、生き返れよ…」




    リヴァイ「俺にしがみついてねぇで自分でなんとかしてみろ!」




    怒鳴り声を上げて、いてもたってもいられなくなった俺は、思わず目の前に広がる運河のようなものに飛び込んだ。






  23. 23 : : 2014/01/08(水) 23:19:33







    リヴァイ「………………」


    そこで、俺の目は覚めたのだった。





    …なんて長い夢だ。柄にもなく汗かいちまった。むさ苦しいったらありゃしねぇ。


    ガチャリ………



    扉が開く音が聞こえる。一体俺はどれだけ眠っていたんだ。今入ってきたやつは一体誰なんだ。いまだに全身に残る痛みを感じながら、様々な疑問の答えを確認するために体を起こしてみると…



    リヴァイ「…………………」



    目の前に広がる世界は、俺の想像していたものと大分異なるものだった。

    俺の手を握りしめながら熟睡しているガキが一匹…。扉を開けた状態でかたまってるガキが一匹…。

    計2匹か……………。





    リヴァイ「……おい、エレン。何固まってる。こっちへ来い。」




    ミカサを起こすわけにはいかねぇし…ひとまずエレンに話を聞くしか今のところ事情を聞く手立てはねぇ。



    エレン「…あ、はい。すみません!」




    リヴァイ「ったく、なんで固まってやがるんだ。」


    エレン「…いや、それは…」


    リヴァイ「なんでもいい。聞いたはいいが、そこに言う程興味はねぇ。」

    エレン「…」


    リヴァイ「俺は何日間寝ていたんだ。」


    エレン「兵長は、壁外遠征から帰還した日からずっと目を覚まさなかったので…。10日ほど寝ていたことになります。」


    リヴァイ「…そんなにか。」


    エレン「…その後、調査兵団は女型の巨人を割り出し拘束することに成功しました。…話を聞きだせる状態ではありませんが、ひとまず俺は憲兵団の人達に解剖されずに済むそうです。」


    …俺がぐーすか寝てる間に、そんなことが起こっていたのか。


    エレン「…とりあえず、看護班の医師を呼んできます。少し待っててもらえますか?」



    リヴァイ「…あぁ、悪いな。」




    いや、これはまずい。そんなに寝ていたうえにこの体の状態じゃあ、復帰できたところで以前と同じように動けるまでにかなり時間がかかりそうだ。



    そんなことじゃ、結局あの気待ち悪い顔の巨人どものくせぇ口の中で噛み砕かれるだけだ。


  24. 24 : : 2014/01/08(水) 23:21:58


    リヴァイ「…えらいことになったな」


    頭を触ろうと手を動かすと、左手に違和感を感じる。


    ……そういえば、こいつはなんでここで寝てるんだ。そろそろ起こしても、差し支えはねぇだろう。



    リヴァイ「…おい、ミカサ。起きろ」



    ミカサ「…んーー。…エレン?」


    リヴァイ「エレンなわけねぇだろうが。俺をあんなトカゲ男と一緒にすんな。」



    ミカサ「……………んーーー



    …………………っ兵長!!」



    ようやく顔を上げやがった。しかもヨダレなんて垂らしやがってきたねぇな、こいつ本当にガ……………





    バフッ!!!!!!!!




    リヴァイ「……………………」



  25. 25 : : 2014/01/08(水) 23:23:04
    お、おしたおされた……………


    い、いや違うか…。でもなんだか、抱きつかれているような気がしなくもないんだが…………






    なんなんだこのガキは…………













    ドキドキ、するじゃねぇか…











    ミカサ「…ごめっ………。ひくっ………。ごめんなさ………………ひっ、ひくっ……………ごめんなさい………………っ、ズッ…」




    リヴァイ「……………………」



    ミカサ「…………………私のっ、私のせいで………ごめん、なさっ……」





    ひたすら俺の上で泣きじゃくる姿は、とにかくガキにしか見えなかったが…



    しがみついているミカサを見つめるのは、悪くなかった。

  26. 26 : : 2014/01/08(水) 23:25:30
    リヴァイ「…お前に対して恨みはねぇよ。わかったらさっさとおりろ。」




    ミカサ「………っズッ……」



    リヴァイ「…降りろと言ってる。」



    ミカサ「………………ひくっ…」





    リヴァイ「………どけ、このクソガキ」





    ミカサ「…………………。(ムカッ)」



    ミカサ「…………いやです。」




    リヴァイ「………あァ?」




    ミカサ「……邪魔なら、自分でどけてください。」


    ミカサ「私はぜっったいに、おりません」


    ギュウ…………………






    リヴァイ「…………………(プチッ)」

  27. 27 : : 2014/01/08(水) 23:26:19
    リヴァイ「…てめぇ、上官の指示に逆らうのか…」


    リヴァイ「…もう一度だけ言う。どけ。クソガキのくせに、無駄に重い」





    ミカサ「…………重いわけではなくて、大きいんです。身長が。」



    ミカサ「…ので……ひがまないでください」



    リヴァイ「ひがんでねぇよ!!」





    ミカサ「………………………」







    リヴァイ「…なんだ、その目は…」



    ミカサ「………ずぼし(ボソッ)」





    リヴァイ「(カッチーーーーーン)」




    ミカサ「…。」



    リヴァイ「…よだれたらして寝てやがったくせに…」


    ミカサ「……………………」



    リヴァイ「さっきまでぐしょぐしょ泣きながら謝ってやがったが、なんでそんな急に偉くなったんだ?あァ?」



    ミカサ「………………………」



    ミカサ「……さっき、は…」


    ミカサ「……もし、このまま兵長の目が覚めなかったらどうすればいいのか、など……色々と思考を巡らせていて、」


    ミカサ「………だから……本当に、良かった…です。……ズッ…生きていてくれて…」




    リヴァイ「……………………」


  28. 28 : : 2014/01/09(木) 09:43:07

    …そうか。こいつは、本当にガキなんだ。

    自分の失態で人が死ぬかもしれない世界を、初めて経験した…ただの新兵だ。




    逸材だ、首席だ100人分の兵力だ言われているこいつは、自分の力で人を救うことはしてきても自分のせいで誰かを失いかけたことはないのだろう。



    そうだ、一回り下のこんなガキ相手に…俺もなにムキになってやがる。


    ただ、少しだけ…


    ミカサ『……私はぜっったいに、おりません』



    その眼差しが…想っていた人のような強く透き通った瞳に、似ていると思っちまった。だから、つい対抗したくなったんだろう。




    俺は先程の謝罪の気持ちを込めて、ミカサの頭に手をのせた。
  29. 29 : : 2014/01/09(木) 09:49:44


    ミカサ「………………………」



    リヴァイ「……お前、俺をあのあと看てくれたんだろう。俺の命があるのは、お前のおかげだと聞いている。……………ありがとう。」


    ミカサ「………………………」




    …?なんだ、こいつ…かたまりやがって…



    リヴァイ「……おい、返事くらいしやがれ」



    ミカサ「……………………………」



    ミカサ「…………っ、へ、いちょ…」





    ミカサ「……手、手を……………」





    コンコン!


    「「「失礼します」」」






    ジャン「へ、兵長!!!目が覚めたと聞きました、


    て、はァァァァ?!?!?!ミカサァァァァ?!?!?!?!!」


    エレン「……なっ、!?」


    医師「……こらこら、兵長はまだ病み上がりだ…そういうことはあとにしなさい。君は…アッカーマンだね…」


    ミカサ「…………………………」




    ミカサ「…………………(ボッ)」



    ミカサ「………しっ、失礼します!」



    バタバタ………………

    ガチャッ





    バン!!!!!!!!





    リヴァイ「………………………」


    ジャン「…………………………」


    エレン「…………………………」




    医師「……ふぅ…なかなか豪華なペアーですね。どんな怪物が生まれてもおかしくない。」




    医師「…さて、そんなことよりリヴァイ兵長。気分と体の具合どうですか?」












    リヴァイ「…………………悪くない。」

  30. 30 : : 2014/01/09(木) 16:48:23
    このss大好きです(・ω・)ノ
  31. 31 : : 2014/01/10(金) 08:08:35
    >>30
    本当にありがとうございます!
    亀更新でごめんなさい!(u_u)
  32. 32 : : 2014/01/10(金) 08:09:33

























    ドクン…



    ドクン…




    ドクン…




    破壊してしまってもおかしくないほどに力を込めて扉を閉めた私は、そのままの体勢のまま扉に背中を押し付け、ズルズルと座りこんだ。


    『……おい、返事くらいしやがれ』




    な、な、な、ななな、な…




    『……おい、返事くらいしやがれ』


    『……おい、返事くらいしやがれ』








    うるさい………………!!!!!











    心臓の音もっ、


    『……おい、返事くらいしやがれ』



    ~~~~~~~~~~~~~~~!




    何度も頭で再生される言葉もっ!触れられた感触もっ!


    ぜんぶぜんぶ、消えて!!






    爆発しそうな感情を抑えるように頭を抱えながら、心臓の音が聞こえないように腕で耳を塞ぐ。


    そのままうずくまる形で顔を隠し、思いっきり目をつむりながら、膝に何度も頭突きを繰り返す。




    ドクン…
    ドクン…
    ドクン…
    ドクン…


    ミカサ「~~~~~~~!!!」




    うるさいと、言ってるのに…!!
    どうして止まらないの??!!



    もういい。もう聞いていられない…!



    不毛っっっっ!!!!!!!






















    ……その日私は走って寮に戻ったのだけれど





    多くの兵士達の目撃情報によると






    私は気づかないうちに、廊下の床を計8ヶ所蹴破ったらしく




    半年間の減俸という痛い仕打ちを受けたのだった。





  33. 33 : : 2014/01/10(金) 12:30:12
    支援
  34. 34 : : 2014/01/10(金) 19:18:17
    ミカサおもしろい(=゚ω゚)ノ
  35. 35 : : 2014/01/12(日) 16:00:03
    きたいなっしぃいいいいい!(○´∀`○)!(^^)!(*^▽^*)(≧▽≦)( ´艸`)(>_<)ゞ(≧∇≦*)( -_-)ジッ( -_-)ジッ
  36. 36 : : 2014/01/12(日) 16:00:25
    ミカリヴァっぽいリヴァミカ好きだ!!
  37. 37 : : 2014/01/13(月) 00:07:15
    みなさん、ありがとうございます!!(*^_^*)


    ある程度までは書けたのですが…この先は完結させてから一気に投稿しようかと思っているので、もう少し時間を下さい!

    早ければ明日か明後日までに、遅くても来週までには書き上げる予定です!!


    ちなみに、この先の展開は原作とは大幅にズレます。これまでとは比べものにならないほどズレます!!ごめんなさい←

    それから、12巻のネタバレも出てきます!

    そして、エレンの座標の能力は今回は設定にはいれずに話を進めようと思ってます!
    なので、あの時の感動的なマフラーアリガトウ!な流れは、ss内では完全になかったことになっております!!

    そんな感じです!←

    それではっ!一日でも早く公開できるよう頑張ります!!
    みなさんへ、私の溢れまくっている感謝の気持ちが伝わりますように…!!
  38. 38 : : 2014/01/13(月) 19:21:33
    超期待!頑張って!!リヴァミカI loveゥゥウ!
  39. 39 : : 2014/01/16(木) 14:33:52
    ーーーーーーーーーー










    医師から信じられないような言葉を聞いたあとで、俺は眠っている間に見た夢のことを漠然と思い出していた。




    死ぬほど走った。もう走れないと思うほど、長い距離を。そして運河に映し出される、…かつての仲間達の泣きそうな顔。やつらは、ただただ俺にしがみついていた。

    まるで、もう走らないでと言っているように。






    医師『…兵長の左足。膝から下の部位は、麻痺しています。杖をつけば生活機能は維持できますが…おそらく立体起動装置を使って兵士として戦うことは、もう…。』












    頭のなかで、もう一度医師の言葉を思い浮かべてみる。



    …にわかには、信じ難い話だ。だが……事実いくら左足首を回そうとしても、ずっしりと横たわるその足はピクリとも動かない。



    それに、そんなことをされている感覚はないが、確かに医師は俺の左足ふくらはぎを触診している。



    何も感じない。その肉塊は、確かに俺のものであるのにも関わらず。



    妙に頭の血が冷えている。不思議なくらい、俺は冷静だ。
    これが兵士長たる者の残酷なメンタリティなのか。はたまた職業病なのか。



    俺がとっさに導き出した結論は







    『用無し』








    たった3文字の、重たく、胸をえぐるような言葉だった。




    リヴァイ「…状況はわかった。おい、エレン。ジャン」






    エレジャン「「…………………」」





    リヴァイ「………エレン、ジャン!」




    エレジャン「「…………は…はぃ………」」





    リヴァイ「…至急、エルヴィンを呼んでこい。急げ。」




















    ーーそして、俺はその日のうちに調査兵団を退団した。




  40. 40 : : 2014/01/16(木) 14:41:44


    ーーーーーーーーーーーー



    エルヴィン「調査兵の諸君。本日は、各自の鍛錬の時間を削ってでも伝えなければならないことがある。その前に、緊急の招集だったにも関わらず、迅速にこの場に集まってくれた全兵士へ、団長として感謝と敬意を。」








    兵長の治療室に最後に行った日から、今日で3日がたつ。あれから何度か訪ねようとはしたものの、なんだか気恥ずかしさがあるためにどうしてもその扉を開けることができずにいる。




    ミカサ「…………/////////////(カァァァ)」




    …今日こそは、行こうと思う。

    行かないと、本当に胸痛で倒れてしまう。







    ふと目を上げると、前列の方にエレンが見える。



    …エレンは、ここ最近おかしい。顔を合わせてくれないし、なによりずっと暗い顔をしている。


    アルミンも心配していた。




    あまりにも元気がないので、一度エレンに何かあったのか聞いたのだけれど…その時には

    『…いずれ、わかるよ』

    の、一点張りで…それ以上はいくら聞いても話してもらえなかった。




    いったいあれは、どういう意味だったのだろう。


    真実は、すぐにわかるのだろうか??







    エルヴィン「…非常に遺憾なことだが、我らが誇る最強の兵士の1人であるリヴァイ兵士長は、諸事情によって本兵団を退団することとなった。」




    ザワッ!!


    「………え???????」
    「…おい、今団長がなんて言ったのかわからねぇのは、俺がバカだからじゃないよな?!」
    「どういうことだ??!!」
    「まさか、壁外遠征の時の負傷が原因?!?!」
    「いや、目は覚めたって聞いたぞ!」
    「じゃあ別の理由があるのか?!」













    いま、なんて………………………









    言った………………………???












    エルヴィン「理由は彼の意向もあって話すことはできない。故に、私から言えるのは一つだけだ。
    彼は人類の進撃を決して諦めてはいない。」









    エルヴィン「…語りたいことは多くあるだろう。様々な憶測も飛び交うだろう。だが一先ずここでは事務連絡を優先させてもらう。なので、一同、静粛に頼む。」





    エルヴィン「我らは、ミカサ・アッカーマンを次期兵士長候補として育成し、彼女がその座に相応しい兵士となるまで、壁外遠征の指揮は団長と各隊長が執ることとする。本日の話は以上だ。


    心臓を捧げよ!!!!!!!」






  41. 41 : : 2014/01/16(木) 14:45:40
    ーーーーーーーーーーーー








    ジャン「……………おい、エレン」





    エレン「……………んだよ馬野郎」




    リヴァイ兵長が退団してから、今日で一ヶ月がたつ。




    あの後、目まぐるしく俺たちを取り巻く世界が変わった。


    突然の巨人出現。


    くそライナーとくそベルトルトの裏切り。



    そして………………………





    ジャン「…いい加減、ミカサを止めてくれよ。お前じゃないと、無理だろうが…」



    ミカサの、あり得ないほどのオーバーワーク。




    新兵であるミカサが次期兵士長候補に任命されてから、あいつは周囲の注目を常に浴びる立場となった。



    『たしかに、いい筋だ』
    『…実力は誰よりもありそうだ』


    『……リヴァイ兵長ほどではないけど』





    …いくら身の回りに興味がないミカサでも、自分への評価は随時耳に入っているらしく、ましてや兵長のことに関しては本人が人一倍責任を感じているわけで…




    罪悪感と焦り、責任と重圧…とにかく色々なことが重なって、ミカサは自分に休憩する時間を与えられなくなっているみたいだ。


    『もっと強くなければならない。もっと早く動けなければならない。』



    最近は何を言っても、返ってくる言葉はいつもこれだ。



    その漆黒のような瞳に、何を映しているのか。今の俺には、想像することさえできない。



    エレン「…俺は毎日、もう休めって言ってるよ。でも聞かないんだ」



    ジャン「……嘘つくなよ。ミカサはお前が言ったことなら大抵は聞き入れるだろうが!!!」



    エレン「だからっ !!俺が何を言っても上の空なんだよ!!!」



    ジャン「ふざけんじゃねええええ!!!お前本当にちゃんっっとミカサと話せよ!!頼むから !!!!」




    エレン「うるせえな!!!!話しても聞かねぇっつってんだろうが!!消えろよこの馬野郎が!!!」





    本当に、何故クソ馬面はこうも俺の癇に障ることばかり言ってくるのだろうか。





    いつでもそばにいると思っていた。これからも俺のそばに、ずっといてくれるのだと思っていた。


    こんなにも、あいつが遠くに行っちまう感覚は、初めてだった。



    俺だって、あいつが壊れちまうのを黙って見てたいわけじゃねぇよ………………………!!









    俺は胸の中に言いようのない焦りと怒りを抱えながら、なんだかんだ気づけばミカサのいる訓練所まで足を運んでいた。





    ミカサ「……ハァ、ハァ…………….、フッ.............!!」






    もう、時刻は21時をまわろうとしていた。兵士の朝は早い。こんな時間まで訓練をしているようなやつは、当然ミカサ以外誰一人いなかった。




    ミカサ「……ハァ、ハァ、ハァッ!!!!!」



    終わる気配のないトレーニングを見ながら、ふと兵長の言葉が頭をよぎる。



    リヴァイ『…おい、そんな目をするんじゃねぇよ。俺は何一つ諦めてねぇ。
    いいか。俺がどこに行きこれから何をするのかは、一切漏洩禁止だ。一言でも他言してみろ、最高の最期を味あわせてやる。』





    …今の状態のミカサを見ると、兵長のことをミカサに話した方がいい気がする。

    いや、話した方がいいのだろう。それぐらいは、俺にもわかる。しかし俺は、そうだとわかっていてもミカサにそれを伝える事を躊躇していた。

    それは兵長に言うなと言われたからなのか、それとも…


    …だめだ。考えるな。



    考えたら負けだ。忘れろ忘れろ忘れろ…!

  42. 42 : : 2014/01/16(木) 14:48:44
    エレン「…ッ、ミカサ!!!!!」



    ミカサ「……?!ハァ、ハァ…エレン………?!」



    ミカサがこちらに気付き、走って近寄ってくる。まだその速度で走れるのかと心底呆れながら、俺もミカサに近づくために小走りをする。



    エレン「今日はもう、終わりだ。最近この辺で物盗りが増えてるらしくてな…早めに機材室のカギを閉めてくるように言われてきたんだ。」


    心配だから来たと、言えばいいのに…。なんでいつもつまらない嘘で自分の気持ちを隠してしまうのか。結局お前は、昔から変わらない。精神的なダメージを受けることに対して臆病なだけの、ただの弱虫だ。…暗い気分になるだけだとわかっているのに、心のなかで自分に悪態をつく。





    ミカサ「ハァ…ハァ…、そうなの………?ごめんなさい……すぐに機材室の鍵、閉めてくる…」


    エレン「…ハァ~~。お前は、少し座ってろ。俺が行ってくるから。」


    ミカサ「…エレン、それはいけない。訓練機材を使用したのは私。なので私には鍵を閉める義務がある。」


    エレン「ぶはっ。わかったよ、一緒に行こう。これでいいか?」



    ミカサ「………(コクリ)」





    夏から秋になったことを、俺達に教えてくれるかのように…冷たい風がビュオっと吹いた。



    エレン「…少し寒くなってきたな。



    ミカサ「…うん。」



    ミカサ「…なんだか、エレン。この感じ、すごく久しぶりな気がする。」



    エレン「…ちょこちょこ、話しかけたんだけど…お前常に顔がこわばってたから、まともに会話なんてできなかったっつーの。」


    ミカサ「ごめんなさい…。でも、訓練後は、なんだか安心する…体の力が、抜けるから…。」



    いつも、体のどこかに力が入ってしまうのだろうか。

    ミカサの発言に、ズキンと胸が痛む。



    彼女は、どれだけの責任と重圧を感じているのだろう。




    …別に、強くなんかならなくたっていいんだ。俺がいなければ生きていけない、俺のためだけに動く…そんなミカサのままでいることが、ミカサのためになったあの頃に戻れるなら、どれだけいいか。

    強くなくていい。弱いお前でいいんだ。


    俺は自分の思考が歪み始めていることにさえ気づけないほど、この時言いようのない焦燥感に駆られていた。















    ミカサ「ありがとう、エレン」


    唐突に、ミカサが空気をさく。お礼の言葉を言われたと気づくのに、少し時間がかかった。




    エレン「あぁ、何が?」


    ミカサ「…心配、してくれた」


    ズキン、と胸が痛む。この胸の痛みがなぜ起こるのか…今の俺はもう、わかっている。



    エレン「…だから俺は鍵を閉めに」




    ミカサ「…うそ。耳が真っ赤。」









    ビュオォォォ……と、もう一度風が吹く。今度は少しだけ蒸し暑さの混じった、夏の夜の風だった。


    ふと、思った。今、この時は夏でも秋でもないのか…と。

    もしかすると今この時は、すべてのものの境目が、曖昧になっているのかもしれない。汚い俺でも、綺麗な俺でもない…強いミカサでも、弱いミカサでもない。


    そう思うと、今いる時間がまるで、とても特別な瞬間ように感じた。





    エレン「…ミカサ。」




    ミカサ「…?」










    エレン「…俺は、お前が好きだ。」
















  43. 43 : : 2014/01/16(木) 14:51:55
    ーーーーーーーーーーーーー


    秋も深まっていく今日この頃。夏らしさはすっかり抜け落ち、風だけはもう冬支度をし始めているようだ。


    2日後に壁外遠征を控える俺達調査兵団は、今日明日は自主訓練をすることを禁止されている。作戦や陣形を頭に入れることが最優先であるということもあるが、とにかく体を休ませることが目的だ。

    壁外遠征を前に緊張した兵士が、過度なトレーニングを直前まで行ってしまったがために、戦地で疲労してしまうことがこれまでに多くあったかららしい。




    そして…今回は、ミカサが兵士長候補になってから初めての壁外遠征となる。

    1ヶ月ほど前に、俺が死に急ぎ野郎と話(怒鳴り合い?)をしたあとどうやらあいつらは和解したらしく…。そのあと、ミカサのオーバートレーニングも少しはマシになったみたいだ。


    あの時俺はどうせ、ミカサの視界にさえ入らない数多い男達の1人だったに過ぎない。ミカサを動かせるのは、昔も今もあいつだけだ……癪だが、エレンとミカサの絆の深さを感じてしまった、ジャンなのでした。


    ………はぁ~。俺、なにやってんだ。ちくしょう…。



    今日はもう、大人しく部屋へ戻ってさっさと寝てやる。























    部屋の扉を開けると、最悪なことにそこでは例のごとく死に急ぎ野郎がモクモクと寝る作業を進めていた。


    心の中で舌打ちをしながらも、何も話さないのはおかしいかと思って俺はさりげなくやつに話題をふる。




    ジャン「…なぁ、ミカサ、元に戻ったみたいで良かったな。」




    ミカサの苦しむ姿を見ることほど、俺にとって辛いことはおそらくないだろう。その意味で言えば…俺はあいつに感謝の気持ちも多少はあるわけだ。



    ジャン「まぁ、あれだ…お前のその立ち位置、羨ましい限りだけどな…。て何言ってんだ俺…。」





    エレン「…なぁ、聞いてくれるか」



    ジャン「おぉ、どうした。」



    エレン「ミカサ、あいつさ…俺が初恋なんだって」



    ジャン「…………………」



    な、何を言ってやがるこいつ…。
    俺を怒らせたいのか?純愛自慢なのか??

    逆に何も考えてないのか???



    いずれにしても俺のこの殺意は、多くの人に理解してもらえるはずだ。



    ジャン「…………………(泣きそう)」



    ジャン「だからどーしたんだよ。そんなの見てりゃーわかんだろこのリア充野郎が…」




    エレン「…うん、でも振られたよ。」


    ジャン「は?」








    ……………ハァ?!?!




    ジャン「何言ってんだお前!!!」




    エレン「…振られた男に、かける言葉がそれか…?お前って、ほんと性格わりぃな。」





    ジャン「ちょっと待て!おかしいだろ!!!ミカサが、お前をか?!」



    エレン「は?だからそう言ってるだろ。」



    ジャン「……………意味がわからねぇ。」




    エレン「…わかってたんだよ。俺は。でも、言わずにはいられなかったんだ。」




    …言わずには、いられなかった??


    ジャン「……ちょっと待て。お前らは付き合ってたんだよな?」



    俺は、お前らが付き合い始めたという話を聞いてから三日三晩泣き続けたんだぞ。忘れるはずがない。


    エレン「…ああ、そういえばそんな噂もあったな…。カラネス区に帰ってきたあとすぐの時だろ??」


    ジャン「はぁ、噂ァァ????!」


    エレン「……お前ほんとうるせえな」



    ジャン「てことは、お前ら別にミカサが頭なでられながら兵長の上に乗ってた一件で喧嘩してたわけじゃねえってことか?!」



    エレン「………………………」ギロリ


    ジャン「…………あ、わりい」




    エレン「…………いいよ。別に。」



    エレン「…そうか、あの噂が流れた時にいっそ言っておけば…違ったんだろうな」







    …………ん??でもそうなるとつまり、ミカサの好きな人は兵長ってことになるよな??そうだよな??



    だとしたら…



    兵長が俺達の三角関係に割り込んできやがったってことかぁ?!

    それはけしからん!!!!!








  44. 44 : : 2014/01/16(木) 14:54:20


    アルミン「ねぇ、じゃあ噂が上がった時になんでミカサへ気持ちを伝えなかったの?」


    ……突然、中性的な声が部屋に響く。





    エレジャン「?!?!?!?!?!」


    エレン「アルミン、お前っ…?!」


    ジャン「いつから聞いてたんだ?!」




    アルミン「え…エレンが振られたって言ったところから、かな。」



    ほぼ全部じゃねえか。



    アルミン「…ごめん。実は僕、エレンに謝らなきゃいけないことがあるんだ。」



    エレン「な、なんだよ?」


    アルミン「…ひとつ目は、悪気がなかったとはいえ、立ち聞きなんてマネしてごめん。」


    逆になんでこのタイミングで入ってきたのかが疑問だ。アルミンは一体何を考えてんだ??




    アルミン「…二つ目は…2人が付き合ってるって噂、流したの僕なんだ」



    は………………………????



    エレン「…は??アルミン、てめぇ」



    アルミン「エレンが怒る気持ちもわかるよ。だから本当にごめん。でも殴る前に、僕の話をとりあえず聞いてくれないか」


    エレン「……………………」


    アルミン「僕が君とミカサの噂を流そうと思ったのは、壁外遠征から帰って来た日。エレンと兵長、それぞれ別々の治療室に運ばれただろう?その時、ミカサはエレンの部屋じゃなくて兵長の方にまず行ったんだ。」


    アルミン「あのミカサが、エレンより兵長を優先するなんてただことじゃないと思った。僕の気持ちとしては、幼馴染で想い合ってる2人同士には、2人で幸せになって欲しいと思うのは当然だ。君に直接話して、恋を自覚してもらうことも考えたんだけど…今まで何度けしかけても効果がなかったことを考慮して、別の形で君たちの関係に変化をつけたいと思ったんだ。」


    エレン「…………だから、噂を流したっていうのか???だとしてもなぁ、お前がこんな下世話なことをするやつだなんて思わなかったぞアルミン!!」


  45. 45 : : 2014/01/16(木) 14:55:30
    アルミン「…でも、あの時噂はたしかに君の耳に入ったんでしょ??そして、ミカサの耳にも入ったんだ。2人とも考えたはずだよ、恋人ってなんだろうって。」



    エレン「…で?お前は何を言いたいんだ???」



    アルミン「…まだわからないの?君は気づくのが遅すぎた…タイミングを間違えたんだよ、エレン。さっき自分でも言ってだろう??別にこれは勝負でもなんでもないけど…今回は、君の完敗なんだよ。」



    エレン「…あー、わからねぇ。お前のそのムカつく顔面をグチャグチャにするまでは、何もわからねぇよ。」



    ジャン「…アルミン、お前の言わんとすることがわからねぇわけではないが…振られたばかりのこいつに、それはちと言い過ぎなんじゃねぇか…」



    アルミン「…ジャン。エレンが振られてから、もう1ヶ月以上も経つんだよ。そうでしょ、エレン??………それくらい、ミカサとエレンを見ればわかるよ。つまり、別に振られたばかりってわけじゃないんだ。」




    エレン「………………………………」


    こ…こいつは一体どこまで知ってるんだ?!?!頭がいいしよく人を見ているとは思っていたが、まさかここまでとは……


    でも、2人を見てればわかるってどういうことだ…???1ヶ月以上も前に、そんなことがわかるような大きい変化が、あの2人の間で起こったか?????

    …もしかして、ミカサのオーバートレーニングが落ち着いた事を言っているのか、アルミンは…?でもそれだと、ミカサはエレンを振ったあとに落ち着いたってことになるが…それだとなんだか辻褄が合わないよな。
  46. 46 : : 2014/01/16(木) 14:56:48

    アルミン「…あぁそう、兵長って今どこで何しているの?知ってるんだろ、エレン。」


    エレン「……………………?!」



    ジャン「お、おいアルミン!!変な事聞いてんなよ!知ってるわけねでだろ!!なぁ、エレン??!!」



    アルミン「…。まぁ、もしエレンが本当に知らないなら、エレンもビックリした顔しないだろうし、君もそうやって助け舟出す必要もないと思うよ。」


    ジャン「…………………?!?!」


    ア…………アルミン……もしかして、ものすごく怒ってらっしゃる…!?!?!だめだ、こいつと口喧嘩しても、勝てる気がしない!!!!






    エレン「…今なんでそれを聞いたのか俺は全く意味がわかんねぇし理解もできねぇけど…、知ってるよ。でも、俺達には守秘義務がかせられている。悪いけどこれ以上はお前には話せない。」



    アルミン「………君は、ミカサの気持ちを知ってるんだろう??ミカサにも言わないつもりなのか??」







    エレン「………………ミカサがオーバーワークを続けるようなら、話そうと思ってたよ、いずれは………。でもあいつは克服したんだ。今話しても変に惑わすだけだろ。」



    アルミン「……。エレンにとって、私は悪い人。…私は、これ以上エレンにとっての悪い人になりたくない。」


    アルミン「…これは、僕がミカサにどうしてオーバーワークが悪化したのか聞いた時の、ミカサの返答だよ。」


    エレン「?!?!?!?!」


    ジャン「?!?!ちょっ、ちょっと待てアルミン!!俺にはミカサのオーバーワークは落ち着いたように見えたぞ?!?!」




    アルミン「エレンに心配かけたくないから、隠れてやってたんだよ。実際、ミカサの顔はエレンのいない場所では常に強張ってたし、女子寮では何回か倒れたんだって。エレンには言わないで、って女性陣は口止めされてたらしいから、君は知らなくて当然なんだけど。それにしても、エレンは自分のことで一杯一杯で、ミカサの残念な演技にも気づかないし。」






    エレン「………う、うそだろ………………。」



    アルミン「…………君は、失いそうになってから自分の気持ちに気づいた。そして、告白した時にはもう遅かった。悲しいだろうし悔しいだろうし…どうにもならない痛みで一杯だろうし…その気持ちは人間的で、十分すぎるくらい理解できるよ、エレン。」


    アルミン「…でも君は、これまで自分の気持ちともミカサの気持ちとも向き合ってこなかった。
    そしてミカサを泣かせた。ミカサの精神と肉体をすり減らさせた。ミカサに、悲しい演技をさせた。


    そのうえミカサが今本当に会いたがっている人さえも、ミカサから隠してしまうの???」
  47. 47 : : 2014/01/16(木) 14:58:57

    エレン「…………………………」





    長い沈黙が流れた。

    俺はとにかく、アルミンのことを心底尊敬し直した。こんなに友達想いで、熱い男はきっと他にいない。


    拍手をおくりたいくらいだ。


    俺なんて、ミカサのことが好きだとはいえ、ちゃんと見てたわけじゃなかったんだな…………………………。









    エレン「………………………………………………アルミン。」




    ガシッ




    バキィィィィ!!!!!!!



    …………………………驚いた。驚きすぎて、目ん玉が出そうになった。



    死に急ぎ野郎が、突然顔に笑顔を浮かべながらアルミンに近づき、胸ぐらをつかんだかと思ったら思いっきりアルミンの顔面を殴打したのだ。




    勢い良く後ろの壁に背中を打ち付けたアルミンも、驚いた顔をしている。そりゃあ、ここにきて殴られるなんて思ってなかったんだろう。



    エレン「………降参だ。俺はお前に言い返せる言葉がない。」



    アルミン「………………………!…エ、エレン…」






    エレン「…ミカサがどこにいるのか、知ってるのか?アルミン…」



    アルミン「…多分、女子寮の裏の森で、トレーニングしてると思う。」




    エレン「…わかった。ありがとな。…俺、今から行ってくるわ。殴って悪かった。ごめんなさい。」



    アルミン「…ううん、なんか、嬉しかったよ…懐かしくて」




    ジャン「??????」ポカーン



    状況がわからねぇのは俺だけか??これはアルミンがドMってことなのか??????


    エレン「…。お前は本当にすげぇよ。まるで正解を持ち歩いているみたいだ。俺はお前を本気で尊敬する。…じゃあ、行ってくる。」



    アルミン「…ありがとう。頑張って来てくれ、エレン」















    ジャン「………しかし、最後はちょっとよくわからなかったけど…。お前、本当にすげぇよ。なんで兵長の居場所を俺達が知ってるってわかったんだ??エレンが振られたこともどうやって気づいたんだ??」



    アルミン「…エレンは、ああすることで、昔の僕を肯定してくれたんだよ。ジャンに説明すると長くなるから…とりあえず僕はMじゃないとだけ言っておこうかな。

    …それに、すごくなんかない。正直な話、僕は知ってることのほうが少ないんだよ。兵長に関する何らかの情報を君達が知ってるであろうことは君達の態度を見てればわかったけど、居場所まで知ってるかどうか確信はしてなかったし。

    エレンが振られたことは、ミカサの返答と態度から僕が勝手に予想してただけだし。」



    ジャン「…でも、お前は当事者のエレンよりもミカサよりも事を把握してた。これってすごいことだと思うぞ」


    アルミン「…だから、把握してたわけじゃないんだって。ただ、知らないことが多い方が、動きやすい時もあるんだ。それだけだよ。」



  48. 48 : : 2014/01/16(木) 15:03:04
    ーーーーーーーーーー





    今日のトレーニングを始めてから、もう何時間たったかわからない。


    森独特の、フワフワとした地面に足をとられながら、私は背中に大量の石が入っている約70kg程の重りをつけながらただただひたすら走り続けていた。


    エレンをおぶって長い距離を走らなければならない事が、この先起こるかもしれない。ガスがなくなってしまい立体起動ができなくなる時は、個人の肉体技能でその場を切り抜けるしかないのだから。



    そんな思いで始めた訓練も、そのうちその意味も変容してしまった。





    ミカサ「ハァッ………ハァッ…」










    ………頭がズキズキする。

    息が苦しくて、足が重たくて、今すぐ倒れ込みたいほど体に力が入らない。


    でもまだ、まだ休んじゃだめ。


    兵長の兵士としての一生を奪った私が、…エレンを傷つけてしまった私が、ここでトレーニングをやめるなんて甘すぎる。




    もっと…もっと…もっと…


    もっと強くなるために、もっと苦しまなくちゃいけない……。




    まだまだ…。もっと、もっと…。





    ミカサ「…………………ッ!」







    ズシャッ!!!!!







    ……気がついたら、目の前に地面が見えた。 そしてその、ただボーッとする視界のなかで、不思議なほど自分の心が離れていくのがわかった。


    今この肉体に、まるで心が愛想をつかせたかのように。苦しさも、悲しさも辛さも、全部が私から消えようとしている。







    ミカサ「………………………」





    …なにを、やっているんだろう。



    力の入らない体に、立つことのできない自分に…一体何が救えるだろう。



    最悪な私、最低な私。こうなって当然な私。もっともっと、壊れればいいのに。


    ふっと、女子寮で倒れた時のような感覚が私を襲う。
    あぁ、ダメだ…………………………




    そう思った瞬間、私は気を失った。

















    エレン『………ミカサ、一日たったけど…、答え…でた?????」




    ミカサ『……………………、うん……』





    エレン『…そうか、……聞かせてくれるか?』




    ミカサ『………………エレン。』




    ミカサ『胸が苦しかったり、あたたかくなったり…。初めての気持ちをたくさん、知った。あなたと過ごしていく時間のなかで…」




    ミカサ『…それは、………………………胸が苦しくなるのもあたたかくなるのも、家族だからと…。ずっと私は勘違いをしていて…。』



    エレン『………………………うん』






    ミカサ『そんな私のエレンへの気持ちに、……名前をつけてくれた人がいる。』


    ミカサ『………………………その人といるときも、胸がとても苦しくて…あたたかくて……。』


    ミカサ『そいつは家族でもなんでもないのに、胸がしめつけられて、ばかりで…その人のことばかり、考えてしまって…』


    ミカサ『………えと、だから……エレンにも私は恋をしていたんだと、思った』



    エレン『………………………』





    ミカサ『…あなたは、私の初恋。』




    ミカサ『………………。気持ち、伝えてくれて…ありがとう。』



    ミカサ『…………………でも、その………。エレンとは、恋人にはなれません。』









    エレンに告白をされて、すっごくビックリして…。嬉しかった。

    でも、考えれば考えるほど頭に浮かぶ別の顔を、消すことはできなかった。


    会いたい。


    会いたい。





    でも、彼は私のせいで、希望を失いどこかへ行ってしまった。


    私は、いつも一歩遅い。


    もっと早くあの治療室へ行くんだった。大好きなあの人に、会いに行くんだった。




    もう、…遅い。

  49. 49 : : 2014/01/16(木) 15:04:13

    あまり自分の体を痛めつけるとエレンが心配する。
    でも痛めつけずにはいられなかった。疲労でグッタリとする自分に、ホッとせずにはいられなかった。

    訓練という名の自傷行為。
    兵長のことを、エレンのことを、考えていると止められる気はしなかった。



    アルミン『どうしてオーバーワークが悪化したのか、僕には教えてくれないか?倒れたりしているんだろう??』



    アルミンだけは、いつも真実を見る。それは知っていたけれど、この質問には正直驚かされた。



    ミカサ『…女子寮の誰かが、口を割ったの?』


    アルミン『…そうか、口止めをしていたんだね。たしかにそうすれば、エレンの耳には入らないもんね。』


    ミカサ『…………………ッアルミン!お願い、エレンには言わないで』



    アルミン『どうしてエレンに隠すの?君達は家族だろ??理由を話してよ。』


    ミカサ『…………………。……言わない、で…』


    アルミン『…………言わないよ。だから理由を話してくれ。』




    ミカサ『……………。エレンにとって、私は悪い人……なので……。これ以上、エレンにとっての悪い人にはなりなくない。』




    あれから、アルミンはエレンには私の事を黙っていてくれたようだ。そのうえ、私に自分の分の食事を分けてくれたり…無理矢理遊びに連れ出そうとしたり…たくさん気を使ってくれた。



    アルミンは、本当に強くて優しい。




    『………………………!!』



    あれ???何か、聞こえる…。


    いいや、もう少し寝る………












    『…………!!…………!!』


    いや、たしかに聞こえる。一体誰の声……………???


  50. 50 : : 2014/01/16(木) 15:56:30
    すみません!文字数が一杯になってしまったみたいで…続きはこちらに書かせていただきました。なんだかダラダラと長くなってますが…良かったら最終章もお付き合いください…m(__)m
    http://www.ssnote.net/archives/7994

▲一番上へ

名前
#

名前は最大20文字までで、記号は([]_+-)が使えます。また、トリップを使用することができます。詳しくはガイドをご確認ください。
トリップを付けておくと、あなたの書き込みのみ表示などのオプションが有効になります。
執筆者の方は、偽防止のためにトリップを付けておくことを強くおすすめします。

本文

2000文字以内で投稿できます。

0

投稿時に確認ウィンドウを表示する

著者情報
rinrinkon8

りんりんこん

@rinrinkon8

「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
「進撃の巨人」SSの交流広場
進撃の巨人 交流広場