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リヴァイ「駆逐依存症」(進撃×キュゥべえ)

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  1. 1 : : 2014/01/06(月) 14:52:00
    エルヴィン「駆逐」リヴァイ「依存症?」
    http://t.co/HvDDA8tG8k

    の続編です。

    元ネタ
    【図】駆逐依存の悪循環 http://t.co/o1FFbxTrVt
  2. 2 : : 2014/01/06(月) 14:58:24
    暖かい陽の光が降り注ぐ、草原の真ん中で、男は寝そべっていた。
    風が男の髪を掻き乱す。
    傷だらけの体に、どこからか運ばれてきた花弁がふわりと舞い降りる。
    もう2度と目覚めたくない、とでもいうように、苦しそうに、しかしどこか気持ち良さそうに目を堅く閉じている。
    ふいに、男は重い瞼を開く。
    こちらに向かってくる、重い足音に気づいたのだ。普通なら、誰もが恐怖に怯え死を覚悟するであろう状況で、男は笑みを浮かべる。
    8メートル級の巨人がこちらに向かってきている。

    リヴァイ
    「やっとだ……やっと、終わる……これで…」
  3. 3 : : 2014/01/06(月) 15:00:18

    キュゥべえ
    「そうはいかないよ」

    リヴァイ
    「………ここまで来て、お前か……どこから湧いて来やがった……」

    キュゥべえ
    「いやあ、見事だったよ、リヴァイ。君は、恐らく、最も多くの人間を絶望に突き落とした人間の一人だ……特に、巨人から逃げ惑う人々の目の前で、自分の正体を明かした時は最高だったね…殉死したはずの人類最強の英雄が、人類最悪の敵として現れた時の、人々の絶望への転落が産み落としたエネルギーは莫大なものだった…おかげで、とても効率良くエネルギーを回収できたよ」

    リヴァイ「そんな話、聞きたくもねぇ……大体、俺を看取りに来るような奴じゃねえよな?お前は………何の用だ…?」

    キュゥべえ
    「君に、提案があるんだ」

    リヴァイ「断る……お前の『提案』は、お前だけが得をするようにできている…いや、得するような提案しかしない……お前に利用されるのはもう懲り懲りだ…!!」

    キュゥべえ
    「この世界はもう終わる。もう、この世界はエネルギーを産み出すことも、消費することもない。エネルギーの移動のない世界とは、すなわち死んだ世界のことだ」

    リヴァイ
    「…俺はそこの巨人に食われて死ぬ。その後この世界が終わっても、知ったことじゃない」

    キュゥべえ
    「そうだろうね…君もまた、誰よりも深い絶望を味わった一人だからね」

    リヴァイ
    「そこまでわかってんならさっさと失せろ…」

    キュゥべえ
    「…リヴァイ、君は、『奇跡』を信じるかい?」
  4. 4 : : 2014/01/06(月) 17:10:30
    期待
  5. 5 : : 2014/01/07(火) 22:41:16
    今回も期待、
  6. 6 : : 2014/01/08(水) 22:03:43
    リヴァイ
    「…信じるわけねえだろ……今まで、何度も何度も願ってきて、一度も叶ったことなんか無いんだからな」

    キュゥべえ
    「…リヴァイ、もう一度、人生をやり直してみたいとは思わないかい?」

    リヴァイ
    「何なんだよさっきから…!『奇跡』を信じるだの、人生をやり直すだの…」

    キュゥべえ
    「この世界の寿命が尽きようとしている今、僕が次に向かう世界は、この世界から派生した平行世界だ。そこに、君を連れていこうと思

    うんだ」

    リヴァイ
    「平行世界…?」

    キュゥべえ
    「この世界は、過去のある1点で2つに分かれた。その片方の世界が、今僕達がいる方の世界だ。もう片方の世界には、ちゃんと『そちら

    の世界の君』が居て、そちらの世界なりの生き方をしている。それは君だけじゃない。エレンも、エルヴィンも、ハンジも、モブリット

    も…皆、そうやって暮らしている。そんな世界が、確かに存在するんだ。そういった関係にある世界を、『平行世界』と言うのさ」

    リヴァイ
    「…」

    キュゥべえ
    「『平行世界』は、その分岐点で、この世界と繋がっている。だから、君があちらの世界に行くということは、その分岐点の時点に、タ

    イムリープするということに他ならない。君は、あちらの世界に行き、こちらの世界ではしなかった『選択』を試すことができる。それ

    は、あちらの世界の未来を変えることになるだろう。そういった意味で、君は人生をやり直すことができるんだ…あちらの世界で」

    リヴァイ
    「…つまり……もし俺が行かなければ…」

    キュゥべえ
    「あちらの世界はこちらの世界と同じ未来を辿るだろうね。駆逐依存症という精神疾患が生まれ、王政が君達を見棄て、君は僕と出会い

    、…人類を滅ぼす。あちらの世界で、エルヴィンは『また』処刑されて野晒しにされる。ミカサやアルミンも、『また』壁外に追放され

    、死ぬだろう。ハンジやモブリットも…君の知る通り、『また』2度も深い絶望に沈むことになる」

    リヴァイ
    「…俺が行けば…」

    キュゥべえ
    「運命を変えられる。君だけじゃない。世界そのものの運命を変えられるんだ」
  7. 7 : : 2014/01/08(水) 22:06:17
    リヴァイ
    「……何故だ」

    キュゥべえ
    「何だい?」

    リヴァイ
    「さっき、お前は言ったな……この世界でたくさんエネルギーを回収できたと」

    キュゥべえ
    「その通りだね」

    リヴァイ
    「なら、あちらの世界をそのまま、同じように導けば、この世界で得られたのと同じだけの莫大なエネルギーとやらが得られるはずだ。

    何で、わざわざ運命を変えようとしてるんだ…?」

    キュゥべえ
    「…よく気づいたね。その通りなんだ…理論上はね。でも、実際にはそううまくいかない。元は全く同じ世界でも、同じタイミングで同

    じように働きかけても、同じ道を歩むことはまずないんだ」

    リヴァイ
    「なるほどな…で?その『過去のある時点』ってのは、具体的にはいつなんだ?」

    キュゥべえ
    「それはね…」


    答えを聞いたリヴァイの目が見開かれる。

    キュゥべえ
    「後悔してるんじゃないかい?あの時の、『選択』を……」

    巨人がキュゥべえの背後にまで迫っている。
    リヴァイは、目を閉じると、静かに頷いた。

    キュゥべえ
    「じゃあ、契約成立だ…」

    次の瞬間、2人はその世界から姿を消した。
    巨人は何事もなかったように、リヴァイが倒れていた場所を通り過ぎた。
  8. 8 : : 2014/01/10(金) 16:39:27
    きたいっ!
  9. 9 : : 2014/01/12(日) 15:48:38
    期待((((((*'ω'*≡*'ω'*≡*'ω'*)))))
  10. 10 : : 2014/01/12(日) 23:45:30


    壁外 巨大樹


    マントを目深に被り、木の上に立つ男が居た。

    リヴァイ
    「なつかしいな…」

    巨大樹の森の中は空気が冷たい。数十メートルの樹のせいで、未知の敵の接近には気づけないが、こうして、何の不安もなく、樹上で佇んでいる分には、心地よく感じる。

    リヴァイ
    「こんな時代もあったんだな…忘れて…いたが……」

    何頭もの馬の駆けてくる音がする。

    リヴァイ
    「それにしても、まさかここに、戻ってくるとはな…」

    腰のブレードを抜き放つ。

    リヴァイ
    「後悔か……」

    今まで、救えなかった人々の顔が、奪われた仲間の顔が、奪った民衆の顔がフラッシュバックする。

    リヴァイ
    「行くぞ……!!」


  11. 11 : : 2014/01/12(日) 23:45:46



    巨大樹の森 女型捕獲作戦 対特定目標拘束兵器 設置位置より奥





    リヴァイ
    「来た……」

    ガスの音が5つ。1ヶ月間、ずっと一緒に訓練していたのだ。音でわかる。

    リヴァイ
    「(エルド……きちんと班を率いているな)」

    エルド
    「 二人とも初陣でションベン漏らして泣いてたくせに…立派になったもんだな… 」

    リヴァイ
    「(あいつら…こんな話してたのか…!?)」

    オルオ
    「俺のが討伐数の実績は上なんだが!?上なんだが!?馬鹿か!?バーカ!!」

    リヴァイ
    「(オルオ…)」

    ペトラ
    「余計なこと言うなよ!威厳とか無くなったらさぁ!!どうするんだよ!!」

    リヴァイ
    「(ペト…ラ…?本当なんだな…)」

  12. 12 : : 2014/01/12(日) 23:46:18

    グンタ
    「おいお前ら!ピクニックに来てんのか!?壁外なんだぞ!ここは!…ちなみに俺も漏らしてねぇからな」

    リヴァイ
    「(真面目なグンタらしいな………そうか、お前達…あの時、死ぬ前にちゃんと笑ったり、ふざけたり出来てたんだな……女型に追われていた時みたいな、あんな厳しい顔ばかりしていたわけじゃなかったんだな…)」

    シュゥウウ

    リヴァイ
    「お前達!」

    5人
    「「「「「兵長!?」」」」」

    リヴァイ
    「来い。撤退だ」

    エルド
    「兵長!女型は…!!」

    リヴァイ
    「…逃した」

    5人
    「「「「「……」」」」」

    リヴァイ
    「だが、俺達の班の作戦はこれからだ…」

    エルド
    「…それは…どういうことでしょうか…!!」

  13. 13 : : 2014/01/12(日) 23:46:41
    リヴァイ
    「恐らく、『中身』はこちらに向かってくる…エレンを狙ってな」

    エレン
    「なっ……」

    リヴァイ
    「移動しながら話す……全員、フードを被れ…」

    ペトラ
    「そうか…誰がエレンかわからなくすれば…」

    パシュゥウウウ

    グンタ
    「…!!兵長!緑の煙弾です!」

    リヴァイ
    「恐らく、『中身』が撃ったものだ……こちらの場所を知ろうとしているんだろう…俺のふりをしてな」

    そうだ。あの時、ガスの補給をしろと言ったエルヴィンの考えは、正しかった。例え、優秀で若い部下が無残に死ぬことになっても。
    確かに、補給をしていなければ、女型より速く班員と合流できただろう。だが、そのまま女型との戦闘になった場合、自分はガス切れを起こして死んでいたかもしれない。そうなれば、結局は特別作戦班全滅という未来が待っている。
    ならば…

    リヴァイは緑色の煙弾を撃ち上げる。

    パシュウウウ

    エルド
    「なっ…!!兵長!?」

  14. 14 : : 2014/01/12(日) 23:46:56
    ペトラ
    「そんなことしたら、場所がばれてしまいますよ!!」

    リヴァイ
    「…今から、この班は2手に分かれる。エレンを本部まで連れていく班と、俺と共に女型を迎え撃つ班だ」

    オルオ
    「わざと…ってことだな…」

    エレン
    「そんな!俺も戦います!」

    リヴァイ
    「ダメだ」

    エレン
    「どうして!…俺は…後悔したくないんです…!!」

    リヴァイ
    「…いいか、エレン…お前達もよく聞け…女型は、俺達の中にエレンがいないと分かればどのみちエレンを探す。その時、お前が本部と合流していれば、調査兵団組織全体で女型と戦うことが出来る。お前の力はそこで発揮してもらう…お前が戦うことを選ぶならな」

    エレン
    「…わかりました…!!」

    リヴァイ
    「オルオ、ペトラ…お前達はエレンを本部まで守れ。余計な戦闘は避けろ」

    2人
    「「はい!」」

    リヴァイ
    「エルド、グンタ…お前達は俺と共に来い…」

  15. 15 : : 2014/01/12(日) 23:47:25
    2人
    「「了解です!」」

    リヴァイ
    「エレン…俺の部下達と…調査兵団を頼むぞ…!!」

    エレン
    「は……はい!!」

    リヴァイ
    「…よし…作戦行動に移れ!」

  16. 16 : : 2014/01/14(火) 02:08:27


    巨大樹の森 女型捕獲作戦 対特定目標拘束兵器 設置位置より奥

    リヴァイ
    「お前達、耳を澄ませろ……向こうもこちらの音を頼りに来るだろうが、それはこちらも同じだ…一瞬でも早くこちらが先手を取る」

    2人
    「「はい…!!」」

    シュウウゥゥゥ

    3人
    「(来た…!!)」

    女型の中身
    「……」

    リヴァイ
    「(…あの感じだと…よりにもよって、俺をエレンだと思ってんのか…?…だったら…!!)」

    リヴァイが、2人にだけ見えるようにハンドシグナルで作戦変更を伝える。
    女型が接近するギリギリまで、気づかないふりをする。

    リヴァイ
    「よぅ……女型の中身……いや、…アニ・レオンハート!!」

    アニ
    「…!!」

    リヴァイをエレンと思い込み、剣を振りかざして突っ込んで来たアニの両腕を、リヴァイは思いきり斬りつける。温かい赤い飛沫が散り、斬られた腕が落ちていく。

  17. 17 : : 2014/01/14(火) 02:08:57

    女型の中身
    「…!!」

    リヴァイ
    「よし……お前ら!!作戦通り、先に本部に戻れ!!」

    2人
    「「はい…!!兵長、ご武運を!!」」

    シュタッ

    リヴァイ
    「アニ・レオンハート…エレンじゃなくて残念だったな…」

    アニ
    「(落ちる…巨人化を…しなきゃ…!!)」

    リヴァイ
    「させねえよ」

    ガシッ

    アニ
    「(…!!)」

    リヴァイ
    「落ち着けよ……お前に聞きたいことがあんだよ…」

    アニ
    「…」

    リヴァイ
    「お前…白い猫みてえな姿の、子どもっぽい声で喋る奴、知ってるか…?」

  18. 18 : : 2014/01/14(火) 02:09:18

    アニ
    「なっ…!!」

    リヴァイ
    「やっぱりな……」

    アニ
    「…あんた……やけに詳しいね……どうやって知った…?」

    リヴァイ
    「簡単だ。俺もお前…いや、お前達と同じように、巨人化能力を得た…そして、壁の中の人類の罪深さ、この世界の行く末を知った」

    アニ
    「何を…言ってるんだい?……人類最強の兵士長が……」

    リヴァイ
    「詳しく話してる時間は無え……決めろ。俺を信じるか、ここで死ぬか」

    アニ
    「…誰がっ…信じるか…!!どうせ、そう言って私を捕まえて、拷問するんだろう?大体、さっきまで私を捕まえようとしてご執心だったじゃないか…!!」

    リヴァイ
    「勘違いしてるようだな…俺は巨人化や壁の外について既に知っている。だから、お前を捕まえたところで、これ以上得られる新しい情報は無ぇ……言い方を変える……俺に従え…俺に協力しろ…」

    アニ
    「一応聞いてから選ばせてもらうけど……何をしろと?」

    リヴァイ
    「それは……」


    リヴァイの提案に、アニも驚きを隠せない。
    リヴァイの口元が歪む。

    狂気じみた、笑顔。

  19. 19 : : 2014/01/14(火) 02:09:43


    巨大樹の森 女型捕獲作戦 対特定目標拘束兵器 設置位置付近 通過中


    グンタ
    「兵長……女型と単独で戦うなんて…いくら兵長でも、危険すぎるんじゃないか……」

    エルド
    「ああ…だが、兵長は女型捕獲にも携わっていた……エルヴィン団長が勝算がある、と判断した結果なんだろう……俺達は団長と兵長を信じよう…」

    グンタ
    「ああ……とにかく本部に戻るぞ……っ!!……オルオ!ペトラ!エレン!」

    エレン
    「エルドさん!グンタさん!」

    ペトラ
    「は、早くない!?……あれ?兵長は……?」

    グンタ
    「現在女型と戦闘中だ…」

    オルオ
    「はぁ!?じゃあ何でお前らここにいるんだよ…?兵長一人で残してきたってのか…!!」

    エルド
    「兵長は何か考えがあるようだった…これも、極秘作戦の一部なのかもしれない……」

    エレン
    「でも…そんなっ……」

    エルド
    「とにかく、俺達は早く本部に合流して、このことをエルヴィン団長に伝えるぞ…!!」

    3人&エレン
    「「「ああ!!」」」「はい!」


    兵長……どうかご無事で……
  20. 20 : : 2014/01/14(火) 02:10:04



    巨大樹の森 女型捕獲作戦 対特定目標拘束兵器 設置位置より奥



    リヴァイ
    「ちっ…あいつら……どこまで行ったんだ……女型がエレンを狙ってるってのに…」

    リヴァイは、自分の居場所を知らせるため緑の煙弾を撃つ。

    リヴァイ
    「(…いや……俺が奴を取り逃がしたからこんなことになっている…のか……まさか、女型があんな手を使うとは…予想もしなかった……)」

    緑の煙弾 パシュウウウ

    リヴァイ
    「応答の煙弾……あそこか…!!……クソ…あいつらなんでまだあんな所にいる…!?…急いで本部と合流するよう言ったはずだが……これじゃ女型が先に着いちまう…急がねえと…」

    シュウゥウウウ



    巨大樹の森 緑の煙弾 応答位置



    アニ
    「(応答の煙弾……来る……!!)」

    シャキン



    巨大樹の森 出口から離れた所 本部



    エルヴィン
    「各班、点呼を行え!!」

    ナナバ
    「樹上待機組は点呼取れたよ」

    エルヴィン
    「了解した…遺体の回収の準備を進めてくれ」

    ハンジ
    「…リヴァイ班、遅いね……」

    ミケ
    「いや、戻ってきたみたいだ」

    ハンジ
    「あっホントだ!!……あれ?馬が…5頭…?」

    エルヴィン
    「黒い駿馬…リヴァイの馬がない…!!」

    ナナバ
    「…!!」

    スンスン…

    ミケ
    「リヴァイの匂いがしないぞ…」

    ハンジ
    「…って、紫の煙弾を撃ったぞ!!やっぱり何かあったんだ…!!」

    エルヴィン
    「…リヴァイ…?」
  21. 21 : : 2014/01/14(火) 02:10:23



    巨大樹の森 女型捕獲作戦 対特定目標拘束兵器 設置位置より奥



    ……シュウウウウ

    リヴァイ
    「(…!!あそこに誰かいる…ガスの音が聞こえないが…1人…ということは…)」

    シャキン

    アニ
    「リヴァイ兵士長…待ってたよ……」

    出血は止まっているようだが、両腕は肘より先が無い。その傷口からは、蒸気が絶え間なく出ている。

    リヴァイ
    「…さっきはよくもやってくれたな……だが、今度こそ確実に捕まえる…!!」

    アニ
    「…やってみなよ……」

    リヴァイ
    「…その前に…俺の班の連中はどこだ…?」

    アニ
    「さあ……どこだろうね……」

    リヴァイ
    「…この様子じゃ、エレンは無事なようだが……」

    アニ
    「ふっ……そうだね……今、私が狙ってるのは……リヴァイ兵士長…あんたの命だよ……」

    シャキン

    リヴァイ
    「…危ない奴は潰せるうちに潰しておこうって算段か……まぁ…それはお互い様だがな…」

    シャキン

  22. 22 : : 2014/01/14(火) 02:10:40


    巨大樹の森 入口付近


    エルド
    「ではっ……この作戦は……兵長の独断ということですか…!?」

    エルヴィン
    「ああ…私は撤退の指示しか出していない…確かに、女型とのやむを得ない戦闘に備えてガスの補給はさせたが……」

    ハンジ
    「リヴァイの奴っ……撤退命令後の単独行動なんて、新兵だってしないのに……」

    ミケ
    「リヴァイらしくないな……何か…よほど重要な情報を掴んだのか…?」

    ピカッ
    バチバチバチ!!!

    ミケ
    「あれは!!」

    ハンジ
    「きょ…巨人が発生する時の閃光…!!」

    エルヴィン
    「あそこに…女型が…!!……急ぐぞ…!!」

    ミケ
    「…!!エルヴィン!巨人だ!」

    全方位から、突然、無知性巨人の群れが襲ってきた。


  23. 23 : : 2014/01/14(火) 02:11:49

    巨大樹の森 女型捕獲作戦 対特定目標拘束兵器 設置位置より奥


    キィィィン!!

    リヴァイ
    「っ……ちっ……刃が……」

    女型
    ニヤリ

    リヴァイ
    「(あと少しでうなじが削げたんだが……相変わらず硬ぇな……)」

    女型の、手でうなじを直接覆う防御と、硬化能力による防御の、2重の守りの前に、リヴァイは苦戦していた。
    予備の剣はあと1組しかない。
    少なくとも、女型捕獲作戦開始後にエルド達に預けた自分の馬が繋がれている場所までは、立体機動で戻らなければならないことを思えば、ガスもあまり余裕が無い。

    リヴァイ
    「(クソ……潮時か…)」

    女型
    「…」

    リヴァイ
    「(……眼を潰して……脚の腱を斬ってから、全速力で本部まで退却する…よし…行くぞ…ッ!)」

    タンッ

    リヴァイ
    「うらぁっ!!!」

  24. 24 : : 2014/01/14(火) 02:12:07

    リヴァイは、女型の攻撃に合わせて動く。
    リヴァイの体を捕えようとして伸ばされた手を躱し、腕の上を回転斬りしながら接近し、女型の眼球に刃を突き立てる。
    目に刃を残したままいったん離れ、鞘に残っていた最後の刃を装着し、落下しながら女型の脚の腱を深々と削ぐ。
    バランスを失った女型が、うなじを手で守りながら尻餅をつく。

    リヴァイ
    「(よし……退くか……)」

    ギィアアアアアアアアアア!!!

    女型が、咆哮する。

    リヴァイ
    「(あれは…巨人を呼んでる……?いや、だが、さっきとは叫び方が違う気がする……別の意味があるのか……?とにかく早く逃げねぇと……)」

    タンッ シュウウウウ

    リヴァイ
    「(クソ、エレンが無事なら、班員も無事、と考えていいのか……いや、それよりも…問題は、女型が執念深く本部まで俺を追ってきた場合だ………計画通りなら、今頃本部は巨大樹の森を抜けた先まで進んでいるはずだが……女型が平地まで追ってきた場合は…逃げ切ることすらも難しい…ましてや平地での戦闘など論外だ……しかも、エレンが狙われる………だったら、刺し違えてでも、ここで女型を仕留める方が優先か……?…チッ…どうする…?)」

    ヒュウウウウウン

    リヴァイ
    「(風を切る音…!!!)」

  25. 25 : : 2014/01/14(火) 02:15:42

    振り向くと、折られた巨大樹の枝が自分に向かって飛んできていた。
    ぎりぎりのところで何とか躱す。
    リヴァイに当たり損なった枝は、近くの樹に当たり、その樹を薙ぎ倒した。

    リヴァイ
    「はっ……危ねぇ……!!…逃がす気は無えってわけだ……」

    女型は片目だけを優先して早く治し、リヴァイを睨みつけて走って来る。
    リヴァイは目を閉じる。

    悪いな……エルヴィン…ミケ…ハンジ…
    …兵団に入ったのは俺が一番遅いが、一足先に逝かせてもらう……
    それに……エルド、グンタ、オルオ、ペトラ…お前達は生き残ってエレンを守れよ……

    だが、こいつは必ず殺す。
    俺は、無駄死には嫌いだからな。

    近くの樹の上に着地し、ジャケットの紋章の付いていない方の胸ポケットからメモを取り出すと、リヴァイは急いで何かを書きつけた。
    数行書いたものを、紋章の付いている方の胸ポケットに押し込む。

    意を決して女型を正面から見据えたその目に、迷いはなかった。
    全速力で女型に向かう。
    女型が口を大きく開けてリヴァイの体を食い千切ろうとした。

    今だ。

    残りのガスを全て使い切るつもりで加速して接近する。
    しかし、リヴァイの体は、突然素早く動いた女型の口の中に入ってしまった。
    女型は口を閉じ、リヴァイの体をゴクン、と、飲みこもうとする。

    地下街で育ち、調査兵団に入った、数奇な運命を負った人類最強の兵士が喰われた瞬間だった。

    それは、あまりにもあっけなく、一瞬の出来事だった。
  26. 26 : : 2014/01/14(火) 02:15:51

    次の瞬間。
    女型のうなじが吹き飛んだ。

    紅い液体を纏ってうなじの肉を内側から斬り裂いて飛び出してくる、一人の男。
    肉が無くなり、姿を現したアニが、うなじに体を半分埋めたまま、信じられない、という顔でリヴァイを見ている。

    空中で大きく旋回し、リヴァイの剣は一人の少女の細い首を裂く。

    アニ
    「ぐああっ」

    リヴァイ
    「クソ…狙いがずれたか……っ!!」

    血がドクドクと溢れ出す首筋を押さえながら、アニは、硬化させた巨人体の手を操る。
    渾身の力を込め、背中から地面へと落ちていくリヴァイに拳を振り降ろす。

    剣の柄のレバーを引いても、プシュプシュという軽い音しかしない。
    ガス切れ……ここまでだな……。
    リヴァイは、自分に降って来る女型の拳を睨みながら、両手の剣を頭の上に振り上げる。
    思い切り剣を振り抜いた瞬間、リヴァイの体の中心に女型の拳が命中する。
    体中の骨が折れる嫌な音がして、リヴァイは血を吐く。

    リヴァイの体を潰した手応えに、ほっと安堵のため息をついたアニの目に、銀色の煌めきが映る。
    リヴァイが、死の瞬間に放った2本の刃は、翼を羽ばたかせる2羽の鳥のように、空気を鋭く斬り裂き、アニの両腕を深々と裂いた。
    そのまま、アニの血で赤く染まった2本の刃は、紅蓮の炎を帯びた火矢のような光を残して、どこかへと飛んでいく。


  27. 27 : : 2014/01/14(火) 02:16:47

    リヴァイは、もう殆ど消えかけの意識の中で、自分の最後の攻撃が命中したことを知り、微かに微笑みを浮かべる。

    後は、エルヴィン達に任せる。
    恐らく、いや、絶対に、俺を探しに戻ってきてくれる。
    そして、重傷の姿で巨大樹の森を逃げ惑うアニを捕え、壁内に連れ帰り、エルヴィン達は憲兵団の連中に一泡吹かせるのだ。
    エレンの処分の話もこれで無くなるだろう。
    エレンの監視役の俺の不在は指摘されるかもしれないが、特別作戦班の仲間たちとの絆や、エルヴィン達への信頼があれば、きっとエレンは己を見失わない。
    そうして、人類は進撃する。
    壁の中の敵を、1匹残らず全て倒し、本当の「自由」を手にする日まで、その歩みを止めることはないだろう。

    事切れる寸前のリヴァイは、走馬灯を見た。
    地下街に現れたエルヴィンとミケ。
    死んでいく仲間達。生き残るたび強まる絆。
    エレンとの出会い。
    104期の兵団選択の夜。
    エレンの、調査兵団を信じる選択をした時の表情。
    女型を捕獲した時の、特別作戦班の面々の喜びの表情。
    そして、見事に逃げられた時の、エルヴィンの、ミケの、ハンジの、皆の憔悴した表情。
    その後に浮かんだのは、人生で最強にして最期の敵の姿。
    最期の敵は、俺よりも背の小さい、しかも女だった。笑える話だ。
    巨大樹の上で自分を待っていた、腕を無くした姿のアニ・レオンハート。


    樹の、上?
    手が無いあの状態では、立体機動は使えないはずだ。
    どうやって、あそこに辿り着いたんだ?

    まさか……協力…者…が…………


    リヴァイの体が地面に着くのと、息絶えるのは同時だった。
  28. 28 : : 2014/01/14(火) 02:17:21

    そんなリヴァイの遺体を遠目で見ながら、アニは巨人体から脱出する。

    アニ
    「ぐっ………やられた…」

    巨人体になり、せっかく再生した腕が、再び使い物にならなくなってしまった。
    これでは、立体機動を使えないばかりか、樹に登ることすらも出来ない。
    しかも、巨人化が解けて間もない今は、巨人化も出来ない。
    それに加え、首の傷のせいで大量に失血してしまった。
    傷は塞がったが、体が普段通りに動かない。

    さすがは人類最強の兵士だ。ただでは転ばない。
    こうなったら、巨人にも、調査兵団にも遭遇しないことを祈りながら、自分の脚で走るしかない。

    唇を噛み締め、走り出した時、目の前に一人の男が降り立つ。
    調査兵団のフードを目深に被っている。
    しかし、アニの表情は明るくなり、安心感に包まれた。

  29. 29 : : 2014/01/14(火) 02:17:46

    アニ
    「あんた……ったく…来るのが遅いよ……」


    「…作戦は全うしたようだな」

    アニ
    「ああ……お蔭でこっちは満身創痍だ……でもちゃんと殺した……巨人もちゃんと呼んでおいたから、調査兵団も足止めを食らってるはずだし………さぁ、あんたの要求は果たしたよ。今度はあんたが私達に協力する番だ」


    「そうだな……感謝している……お前にも、そこで死んでいる男にも…」

    アニ
    「なっ……どういうこと……」


    「…お蔭で手間が省けた」

    そう言うと、男はアニのうなじを一瞬で削いだ。
    死へと沈みゆくアニの目には、フードの下の、男の躊躇いのない鋭い三白眼が映っていた。
    アニは自身を騙した、その男の名を叫び息絶える。

    アニ
    「リヴァイ…!!!」

  30. 30 : : 2014/01/14(火) 02:21:37
    一旦切ります。

    続きが、またキリの良い所まで進んだら投下します。

    しばし、お待ちを。
  31. 31 : : 2014/01/14(火) 02:22:03
    兵長…(;_;)
  32. 32 : : 2014/01/14(火) 02:41:22
    >>31

    兵長…><
    うぅ…ごめんなさい……
  33. 33 : : 2014/01/14(火) 02:44:21
    たびたびすいません。

    ご意見、ご感想、ご質問、お待ちしております。

    Twitterの方で、進捗情報・更新情報呟いております。

    https://twitter.com/tearscandy

    個人的に何かご連絡などありましたら、お気軽にこちらにご一報ください。
    なるべく迅速に対応いたします。
  34. 34 : : 2014/01/16(木) 22:43:35
    wktk
  35. 35 : : 2014/01/19(日) 23:28:46
    更新が大変遅くなってしまいました!

    続き、行きます。
  36. 36 : : 2014/01/19(日) 23:28:49

    リヴァイは、アニの殺害に使用した血塗れの刀身を見つめる。
    手元にまで返り血が飛んでいる。

    リヴァイ
    「ちっ……汚えな……」

    懐からハンカチを取り出そうとして、持っていないのを思い出す。
    この装備は、全て、巨大樹の森で見つけた兵士の遺体から借りたものだ。
    やはり、マントとジャケット、装置は「この世界」の「自分」のものでなければ、怪しまれるだろう。

    リヴァイは、自身の遺体の傍に歩み寄る。
    ジャケットを脱がせようとして、胸の紋章の部分が不自然に膨らんでいるのに気付いた。
    「自分」の遺体の胸ポケットから紙を取り出す。

    「女型の正体はアニ・レオンハート。
    硬化以外に、特定の部分だけ優先して早く治すことが可能。
    物体の投擲による攻撃も行ってきた」

    乱れた自分の字を見て、薄く見開かれたまま光を喪った遺体の眼を見て、自分の最期とはこんなものか、と虚しさを感じる。

    何となく紙を裏返してみて、リヴァイは目を瞠る。

    必ず勝て。

    表とは違う、強くはっきりとした字。
    この世界の「俺」は、死ぬまで、己が望んだ通りに、そして人々から望まれた通りに「兵士」として、「英雄」として生き、散った。
    この男は「自分」なのに。
    この男を殺したのは「自分」なのに。

    少し羨ましい。


  37. 37 : : 2014/01/19(日) 23:29:04
    「あちら」の世界から「こちら」の世界へやって来たリヴァイは、自分を特定するに至る痕跡の残ったものを、「こちら」の世界を去ったリヴァイの遺体から回収し、身に付けた。

    今のリヴァイは、誰が見ても、「この世界のリヴァイ」だった。
    リヴァイは自分の遺体を脱いだ衣服を使って丁寧に包んだ。

    リヴァイは、緑の煙弾を空高く撃ち上げた。


  38. 38 : : 2014/01/19(日) 23:29:20


    巨大樹の森


    エルヴィン
    「全員…無事だな…!?」

    ミケ
    「ああ、全員樹上にいる…巨人も、全て倒した」

    ハンジ
    「何だったんださっきのは……また女型の仕業か…」

    エルド
    「これが…兵長の仰っていた…女型の、『巨人』を操る能力…」

    ペトラ
    「巨人に私達を襲わせるなんて……」

    オルオ
    「ちっ…一体何だってんだ……」

    グンタ
    「足止め…」

    エルヴィン
    「…それ以外に、考えられないな」

    オルオ
    「…そうですね」

    ペトラ
    「アンタ分かってなかったでしょ」

  39. 39 : : 2014/01/19(日) 23:29:36

    ミケ
    「巨人との戦闘中、また女型の咆哮のような音が聞こえたな」

    ハンジ
    「ああ……何だろ、リヴァイに逃げられたか負けそうになったかで、悔し鳴き、みたいな…」

    エルヴィン
    「だといいが……ん!?」

    パシュウウウウウウウウウ

    ハンジ
    「煙弾だ!!リヴァイか…!?」

    エルヴィン
    「いや……」

    エルド
    「女型は、我々と同じ装備を身に付けています。煙弾の発信者が敵か兵長か、わかりません…」

    エルヴィン
    「だが、リヴァイだった場合、見過ごすわけにはいかない……全員、注意しながら向かうぞ」

  40. 40 : : 2014/01/19(日) 23:29:49


    巨大樹の森


    ああ、懐かしい音がする。
    長年聞いて、耳に慣れたガスの音。
    一緒に、ずっと戦って来た、お前達。
    やっと、会える。
    また話せる。
    それだけでも、こちらの世界に来てよかったと思う。

    ミケ
    「リヴァイだ!」

    エルヴィン
    「リヴァイ!」

    ハンジ
    「リヴァーイ!」

    4人
    「兵長ー!!」

    樹上のリヴァイを見つけ、全員が名を呼ぶ。
    全てがあの時のままだ。
    笑って、手を思い切り振りたいくらい、嬉しかった。
    それを圧し殺して、仏頂面のまま合流する。

    シュタッ

    リヴァイ
    「…うるせえぞ…」

  41. 41 : : 2014/01/19(日) 23:30:10

    ハンジ
    「リヴァイ!!リヴァイだああ!!…うぅ、よかったぁあ」

    リヴァイ
    「ハンジ…静かにしていろ……お前達、心配を掛けてすまなかったな…俺は無事だ」

    オルオ
    「兵長~!!!」

    リヴァイ
    「泣くなオルオ…無事だと言っただろう」

    エルヴィン
    「リヴァイ…女型は……?」

    リヴァイ
    「倒した。生け捕りは出来なかった…だが、中身の遺体はある。これを持ち帰れば、憲兵団も文句は言えないはずだ……」

    ハンジ
    「リヴァイ……あんた……すっげぇよ!すげえ!うおおお!やったぞ!!」

    ミケ
    「じゃあ…これで……俺達調査兵団の首は…繋がった…のか…!?」

    エルヴィン
    「ああ、そうだ…でかしたぞ、リヴァイ。本当に、…本当によくやってくれた」

    リヴァイ
    「犠牲になった沢山の部下達のお陰だ……遺体は下にある……あと、兵士の遺体を1体発見した……これも回収したい……それから…」

    そう言うリヴァイの眼は、暗い、深い闇を湛えていた。
    いつもと違うリヴァイの様子に、皆、凍りつく。

    リヴァイ
    「大切な、話がある……」
  42. 42 : : 2014/01/19(日) 23:30:23
    一旦切ります…!!
  43. 43 : : 2014/01/21(火) 15:31:46
    にゃああああんリヴァイ兵長さいっこーーー!!
  44. 44 : : 2014/01/21(火) 23:03:44
    ありがとうございます!!
    続き、キリのよいところまで書き上がり次第載せますね♪
  45. 45 : : 2014/01/25(土) 11:26:34
    更新待ってます!
  46. 46 : : 2014/01/25(土) 15:35:34
    早く更新を…………………………

    し………………て……バタッ
  47. 47 : : 2014/01/25(土) 18:55:08
    ありがとうございます…
    ただいま、バイトから戻りました…!!

    先の展開に悩んでいるところがあるのと、地味に試験近いのとで更新滞っております…
    とりま、行きます!!!
  48. 48 : : 2014/01/25(土) 18:56:35


    本部


    ミケが女型…アニ・レオンハートの遺体を、リヴァイがもう1つの遺体を抱え、エルヴィンを先頭に馬を駆り、本部へ戻る。
    本部で幹部達を待っていた調査兵団員は、リヴァイの生還に歓喜の雄叫びを上げた。
    リヴァイ達は、兵士達に囲まれながら、簡単に言葉を交わすと、そのままスタスタと歩き、104期で固まって待機しているところに近づいていった。

    エレン
    「兵長!!」

    エレンの顔が明るくなる。

    リヴァイ
    「エレン、無事でよかった」

    そう言ってから、104期の一人一人を静かな目で見る。
    あちらの世界で、俺はお前達の誰一人として救えなかった。

    おい、ミカサ。そんなに睨むな。
    …そうか、審議所でのことをまだ怒っているのか。
    エレンが女型に奪われず、俺が脚を怪我しなかった分、お前はまだ未熟なままというわけだ。
    いつか機会を探して、教育しなければ。

    アルミン。今の俺は、お前とはまだ話したことが殆ど無いはずなんだな。
    そんなに緊張しなくても平気だぞ。

    ミカサ、アルミン。
    …あちらの世界で、お前達はきっと、エルヴィンの元に辿り着いてくれたのだろう。
    しかし、結局は壁外で…。

  49. 49 : : 2014/01/25(土) 18:57:07

    ジャン。
    お前の仲間思いなところと、立体機動の技術には何度も助けられた。
    エレンの身代わりも様になっていたしな。
    …目を見開いたまま死んでいたお前の手が、強く握られていたのを思い出す。

    サシャ、コニー。
    お前達が心を壊してしまったのに気づけなくて、本当にすまなかった。
    お前達の故郷に、巨人は出現させない。何があっても。
    必ず、生きて、家族と会わせてやる。

    クリスタ…いや、ヒストリア。
    お前を狂わせてしまったのは、俺達の最大の失敗だった。
    お前の遺体は、結局最後まで見つけることができなかった。
    申し訳ない。

    ユミル。
    お前は大切な鍵だ。今度こそ逃がさない。
    きちんと、ヒストリアと壁の中で生きろ。

    そして。

    ライナー・ブラウン、ベルトルト・フーバー。
    お前達をどうするべきか、俺なりに、真剣に考えたよ。
    その答えがこれだ。受け取れ。



  50. 50 : : 2014/01/25(土) 18:57:30
    リヴァイは、凄まじい速さで抜刀し、ライナーの首筋に剣の背を叩きつけた。

    「ぐぁっ!!」

    不意に受けた衝撃に、ライナーの体が崩れ落ちる。ミケとモブリットが素早く動いて、ライナーを拘束する。猿轡を噛ませ、手足を固定する。指先までしっかりと動かせないように縛り、地面に押しつける。


    ベルトルト
    「ライナー!!」

    すかさず、リヴァイが剣をベルトルトの喉元に突きつける。
    エレン達は、何が起きているのかわからないまま、エルド達に引き離される。

    エレン
    「兵長!?一体何をしてるんですかっ!?」

    ペトラ
    「エレン!下がって!!」

    エレン
    「あいつらは俺の友達ですよ!!誇り高き調査兵団の兵士だ!!なんでっ……」

    エルド
    「女型から兵長が情報を引き出したんだ……彼らは、お前と同じ、巨人になる能力を持っている」

    オルオ
    「それも、ただの巨人じゃねえ…あの、『鎧の巨人』と、『超大型巨人』だ……!!」

    エレン
    「う、嘘でしょう……そんなっ……」

    グンタ
    「俺達も信じられなかったが…兵長が命懸けで得た情報だ…信じてくれ…」

    エレン
    「でも…」

    ペトラ
    「大丈夫、抵抗しなければ危害を加えるつもりはないわ……私達も責任を持って彼らを調べる。だから、彼らが無実かどうかをはっきりさせるためにも、今は耐えて…お願い、信じて…!!」
  51. 51 : : 2014/01/25(土) 18:57:54
    エレン
    「………」

    ペトラ
    「エレン!」

    エレン
    「…………はい……」



    リヴァイ
    「動くなよ……アニ・レオンハートのことが大切ならな。無論、気に食わないならここで力を使ってもいい…だがその場合は、女型捕獲用の装置で拘束し、俺が高速で削いでやる…それが出来なくても……いくらでも手はある」

    ベルトルト
    「くそっ……何なんだ……悪魔…めっ……アニに…何を…!!」

    ライナー
    「むぐっ……ぐぅう!!」

    ライナーが猿轡越しに何かを叫ぶ。

    クリスタ
    「きゃっ!!」

    ハンジ
    「おっと!ごめんよ、クリスタ!…大人しくしててね…ユミル…あなたもね……この子、大切なんでしょ?」

    静かにクリスタの後ろに回ったハンジが、クリスタの細い喉に刃を押し当てながら、ユミルを牽制する。

    ユミル
    「なっ……てめぇら……!!」
  52. 52 : : 2014/01/25(土) 18:58:27

    エルヴィン
    「まさか、104期に、そして調査兵団に、これだけの巨人化能力者が紛れ込んでいるとは思わなかった……灯台もと暗しとはこのことだな」

    ユミル
    「てめぇら…私が何だって??巨人?ふざけないでくれないか?」

    リヴァイ
    「じゃあ、試しにどこか斬らせてもらっていいか?その傷が治らなければ、真人間だということの証明になる」

    クリスタ
    「やめて!!ユミルに酷いことしないで!!」

    ユミル
    「クリスタの言う通りだ…人類最強の兵士長様は随分と平気でか弱い女に手を出すんだな…見損なったぜ……」

    リヴァイ
    「……女どころか赤ん坊から年寄りに至るまで平気で食い潰す、巨人に比べりゃかなり良心的なつもりだ……」

    ユミル
    「…ちっ……」

    ハンジ
    「ベルベルト君、君もだ……」

    ベルトルト
    「…ベルトルトです……!!」

    ハンジ
    「ごめん、ベルベルト。私達は君に話さないといけないことがある。『契約』について…君達には、それが何のことか、わかるだろう?」

  53. 53 : : 2014/01/25(土) 18:58:48
    モブリット
    「ベルトルト君、気を落とさないでほしい、彼女に悪気はないんだ」

    ベルトルト
    「………どうしてお前達がそんなことを知っているんだ……?アニが言うわけない……アニはどこにいる!?」

    エルヴィン
    「当然、そう思うだろうな…これで、我々は対等だ、ライナー・ブラウン、ベルトルト・フーバー、それから、ユミル。我々は、互いに互いが知りたいことを抱えている。ゆっくりと話し合うべきだ、違うか?」

    ベルトルト
    「くそ……」

    ユミル
    「ちっ…」

    エルヴィン
    「……2人を拘束しろ」

    2人は、ライナーと同じように、何も出来ないように拘束され、荷馬車に乗せられた。
    エルヴィンは、クリスタの耳元で、誰にも聞こえないように語りかける。

    エルヴィン
    「クリスタ・レンズ……申し訳ないが、君にも簡単な拘束をさせてもらうよ」

    クリスタ
    「……」

    ハンジ
    「ごめんよ…でも、私達も、この作戦に自分達と、人類全員の命が懸かっているんだ……わかってくれ…」

    クリスタ
    「ユミルは…巨人じゃない……もしそうでも、人類の敵じゃない……」
  54. 54 : : 2014/01/25(土) 18:59:03

    エルヴィン
    「私達も、そうであることを信じている」

    エルヴィンは生き残った兵士達を率いて、死亡した英雄達の亡骸を載せて帰還していく。
    リヴァイ班の傍を走るハンジが、リヴァイに話しかける。

    ハンジ
    「ねぇリヴァイ……詳しく聞くのは、本部に帰ってからにするけど…さっき、聞けなかったことでどうしても気になることがあるんだけど……」

    リヴァイ
    「……何だ…?」

    ハンジ
    「『契約』って、その意味するものは何なんだろう?ライナー達はその意味が分かるみたいだった…もちろん、彼らに尋問すれば情報は引き出せるかもしれないけど……アニは、『契約』という言葉以外に、何か言ってた?」

    リヴァイは、何か考えるような表情を見せる。

    どうする?

    リヴァイは、ここに来て、大きな選択を迫られていた。
    エルヴィン達に正体を明かすか、否か。

    もともとは明かすつもりだった。
    隠し通すことは無理だと考えたからだ。
    だが、リヴァイの生還を皆が疑わず、喜んでいたのを見て、わざわざ正体を明かして、エルヴィン達を悲しませる必要があるのかどうか、迷いが生じてきていたのだ。

    ハンジの問いに、何と答えるべきだろう。
    リヴァイはハンジに目を合わせることなく、答えを口にする。
    知らない。
    短く、ただそう答えたリヴァイを、ハンジは黙って見つめていた。

  55. 55 : : 2014/01/25(土) 19:04:57



    ウォール・ローゼ



    民衆
    「調査兵団が帰ってきたぞー!!」

    「行きより数が減ってないか…」

    「また壁外に、俺らの税金を棄ててきた癖に…やけに明るい顔してやがる…」

    「気が狂ったんじゃねえか…巨人に喰われすぎて…」

    「はっ…だったら、金のない俺達にも金を回して欲しいくらいだな……」


    エレン
    「くそ…あいつら……」

    ペトラ
    「仕方がないわ……女型捕獲作戦が実行されるまでに、右翼索敵は壊滅してしまった…どんなに大きな成果を挙げようとも、兵団が今回の壁外調査で、多くの兵士を失ったことは確かよ…」

    エルド
    「それに、今回の成果は、公には出来ない……入団したばかりの新兵とはいえ、調査兵団内に敵が居たという事実は、一般市民を混乱させてしまう可能性が高いし、何より憲兵団に対する重要な切り札になる事実だ…慎重に扱う必要があるだろう」

    ???
    「…すまない!どいてくれ!…通してくれ…!!」

  56. 56 : : 2014/01/25(土) 19:05:12
    リヴァイ
    「…!?」

    ペトラ父
    「ペトラ!!」

    ペトラ
    「お…お父さん!?」

    ペトラ父
    「怪我はないか…?手紙読んだぞ……あれは一体…」

    ペトラ
    「ちょ、ちょっと……!!恥ずかしいから……」

    ペトラ父
    「……」

    ペトラ
    「……今度は何?どうしたの?」

    ペトラ父
    「……無事に帰ってきて…よかった…!!」

    ペトラ
    「何よ……そりゃ…壁外調査に行く時は、毎回それなりの覚悟をして行くけど……急に、どうしたの?」

    ペトラ父
    「………嫌な夢を見たんだ……お前が、巨人に踏み潰されて……死ぬ夢を……」

    ペトラ
    「何だ…ただの『夢』でそんな大騒ぎして……大体、お父さんは本当の巨人を見たこともないでしょう?」

    リヴァイは背中でペトラ親子の会話を聞いていた。
  57. 57 : : 2014/01/25(土) 19:05:49



    ああ、夢のようだ。
    あの日、見れなかった風景が、今、目の前にある。
    ペトラ達を死なせ、その遺体すらも持ち帰れず、何の成果も得られず、脚に傷を負い、自分の無力さを噛みしめた…そして、鈍く重い、脚の痛みを感じなくなるほどの胸の痛みを覚えた、あの夕暮れと、同じ夕暮れとは思えない。

    ペトラの父親が、そんなリヴァイに気付き、傍に駆け寄って来る。

    ペトラ父
    「リヴァイ兵士長…!!ペトラの父です……娘がいつもお世話になってます……」

    リヴァイ
    「ああ……いや…世話になっているのは俺の方だ………ペトラは何でも完璧にこなす…飯も上手いし、洗濯や掃除も問題ない……大切に育てられたのがわかる…それに何より、兵士として優秀だ……」

    ペトラ
    「へっ……兵長……!!」

    ペトラが顔を真っ赤にしている。
    ペトラの父親は、大きく満足げに頷いて、娘を頼みます、とだけ言い残すと、列から離れた。

    ペトラとエルド達が騒がしく何かを話している。大方、からかい合っているのだろう。

    やはり、これでいい。
    この未来が、俺の居場所だ。

    ……本当に?

    それは、俺自身の幸せを追っているだけなのではないか?

    調査兵団の行進は続いていく。

  58. 58 : : 2014/01/25(土) 19:09:58
    一度切ります……
    リヴァイさん、まどマギでいうところのほむらちゃん状態ですが…笑
    幸せになれるのでしょうか…??

    進み次第、また載せます!

    正直、もう誰も見ていないかと思っていたのですが、コメ戴けてとても嬉しいです。
    励みになります!
  59. 59 : : 2014/01/26(日) 00:31:33
    見てますよーー!!!
  60. 60 : : 2014/01/26(日) 12:03:00
    ありがとうございます!!!
    一気に、載せます!!
  61. 61 : : 2014/01/26(日) 12:04:20


    本部 第57回壁外調査帰還後 夜


    エルヴィン
    「3人は現在、地下牢に幽閉されている。本格的な尋問は明日から始める。それと並行して、ザックレー総統に、アニ・レオンハートに関する報告書を提出し、憲兵団内にも巨人化能力者がいたことを伝えねばならない」

    ハンジ
    「アニが殺される前に、ぺらぺら大切なことを喋ってくれたお陰で、話が一気に進んだね……彼らから更に新しい情報が得られれば、人類の勝利の日は近づく」

    リヴァイ
    「エレンが能力をどうやって手に入れたのかも、明らかになるかもしれない」

    エルヴィン
    「そうなれば、エレンはますます力を制御できるようになるだろう…話すべきことは尽きないが……明日からが忙しくなる…お前達も……特にリヴァイは疲れているだろう……よし、今日はこの辺りで切り上げよう」

    ハンジ
    「ふぁあああ……お疲れ様」

    ミケ
    「おやすみ」

    リヴァイ
    「…おやすみ」

    リヴァイは会議室を出ると、自室ではなく、遺体の安置された部屋へ向かおうとした。
    背後で軽い足音がする。
    誰か居る。

    ハンジ
    「あれ、リヴァイ…寝ないの?そっちは…」

    一番まずい奴に見られた。
  62. 62 : : 2014/01/26(日) 12:04:49

    リヴァイ
    「少し気になることがあってな…何、個人的な興味だ。寝ろ」

    エルヴィンとミケも、リヴァイ達に気付いて歩いてくる。

    ミケ
    「2人ともどうした?」

    ハンジ
    「うん、何かね、リヴァイが、気になることがあるんだってさ」

    エルヴィン
    「リヴァイ、教えろ…今はどんなに些細な気づきでも重要だ」

    参った。遺体の処理を少しでも早く行おうとしたのが裏目に出たか。
    この切れ者達を納得させ、この場を切り抜けられそうな適当な嘘も見つからない。
    仕方がない。今晩は諦めるか。

    リヴァイ
    「…気になることっていうのは…そういう意味じゃない……遺体の遺品の整理を…少しでも早くしてやりたかった……特に、俺の班を後方から援護してくれた連中を……」

    ハンジ
    「そうだったのか……」

    エルヴィン
    「そうだな……私の判断が、彼らを殺した。彼らが、我々を生かした」

    リヴァイ
    「ああ……だがやっぱり今日は……」

    ガシィッ

    ハンジ
    「私達も手伝うよ…!!行こう、リヴァイ」
  63. 63 : : 2014/01/26(日) 12:05:00

    ……まぁ、そうなるよな。
    人の話を聞けクソメガネ。
    こうなったら、とにかく怪しまれないように、3人を自分の遺体から遠ざけなければ。
    ドアの冷たいノブを握り、部屋に足を踏み入れる。
    遺体は目立たない所に置いてある。
    さっき、咄嗟に名前を挙げた、援護班の連中の遺体が置かれているところとちょうど逆の位置だ。
    さて……と思った時。

    チャキン シャキン シャキッ

    部屋に入ったリヴァイの首筋に、背後から一斉に刃が突きつけられる。
    リヴァイは首だけ捻って、抜刀した3人を見る。

    3人は、まるで巨人でも見るかのような、冷たい表情をしていた。

    リヴァイの中で、やっと掴みかけた何かが落ちて、砕ける音がした。

  64. 64 : : 2014/01/26(日) 12:05:18

    ハンジ
    「リヴァイ…動かないでね」

    エルヴィン
    「窮地だった調査兵団を救い、人類に有益な情報を命懸けで手に入れてくれたお前に、こんなことをしたくはないのだが…」

    ミケ
    「……」

    リヴァイ
    「…建物の中に入っても装置を着けたままで重くねぇのかと思ってたら……そういうことか。…お前らに刃を向けられるとは…いつだったかを思い出すな…」

    ミケ
    「……地下街にいた頃か……」

    エルヴィン
    「そうだな……まさか、またこうしてお前に剣を向ける日が来るとは思わなかったよ…」

    リヴァイ
    「…で、殺さないってことは、生きてる俺に用があるんだろ……?何が聞きてぇんだ?」

    ハンジ
    「…リヴァイ…どうして…ユミルが巨人だということを…いえ、それ以前に、ユミルという兵士のことを覚えてたの…?」

    リヴァイ
    「…」

    ハンジ
    「私はあの子の名前は知らなかった……いや、あんな新兵が調査兵団に居たこと自体、認識していなかった……よく覚えてたね……」

    エルヴィン
    「お前は、ユミルの正体についてはアニから聞いた、と言ったが、ユミルが巨人化能力者だと告げた時、ライナーもベルトルトも驚いた顔をしていた……勿論演技の可能性も否定できないが、今更そんなことをしたところで、既に正体がばれてしまっている彼らにメリットがあるとは思えない…」

    ハンジ
    「…ユミルと言えば、かつてイルゼが手帳に書き残した、『ユミルの民』に関係している可能性が高い…巨人の存在そのものに関わる、重要な情報だ…わかるだろう?リヴァイ…」
  65. 65 : : 2014/01/26(日) 12:05:36

    リヴァイ
    「…同じことを言わせんな……アニから聞いたことだ……ユミルの名前は、たまたま名簿で見掛けて覚えていた。それだけだ」

    エルヴィン
    「…っ!!リヴァイ!!」

    リヴァイ
    「何だよ。本当のことを言ったまでだ……それより…その面は、他にまだ聞きてえことがあんだろ?ハンジ」

    ハンジ
    「ああ………リヴァイ……あなたさ、リヴァイ班と合流するとき、どんなルートを通った?」

    リヴァイ
    「ガスの補給場所から、そのまま直線距離で向かったが…最速でな」

    ハンジ
    「あんたは音速くらいまで加速できるのかい?……速すぎるでしょう…あのポイントで合流できるわけないんだ…エルド達から報告を受けてすぐに、何度も計算したさ…でも、おかしい」

    リヴァイは目を閉じる。
    ああ、この世界のお前も、本当に頭がよく切れる奴だ。
    人を本当によく見ている。
    いつかは疑問を持たれるかもしれないとは思っていたが、エルドから報告を受けてすぐに気づくとは。
    俺は覚えているぞ…その鋭い頭脳の矛先が人類に向けられた時の凄まじさを。

  66. 66 : : 2014/01/26(日) 12:05:55
    ハンジ
    「何とか言ってくれ……ねぇ!!」

    ああ、もう芝居は終わりだ。

    リヴァイ
    「……調査兵団第13代団長エルヴィン・スミス」

    エルヴィン
    「……な……リヴァイ…何だ、急に?」

    リヴァイ
    「お前は俺の知ってるエルヴィンだ…ミケも…ハンジも……」

    エルヴィン
    「……話が見えないな」

    リヴァイ
    「俺は……どうだ?…お前らの…知ってる俺か?」

    ハンジ
    「……私達の知ってるあなただと…信じたいよ…!!…でもッ!!!」

    リヴァイ
    「俺が、お前らの疑問を全て解決する証拠を突き出して、無実を完璧に証明できたら……俺は元の俺になれるのか?」

    ミケ
    「当然そうだ……お前は以前と変わらない…同じ匂いだぞ」

    リヴァイは乾いた笑い声を上げる。
    匂いか。下手な慰めよりも、余程信頼できるから恐ろしい。

    ハンジ
    「そう言うなら…証拠を出して……」

    リヴァイ
    「…証拠はない……が…聞いてほしいことがある……言わなくて済むなら、言わずにおきたいと…思っていたことだ……」

    エルヴィン
    「何だ…?」

    リヴァイ
    「まず、これを…落ち着いて見てくれ」

  67. 67 : : 2014/01/26(日) 12:06:14

    リヴァイは、目立たない所に安置してあった、例の遺体の顔を覆っていた布を取り去り、エルヴィン達に見せる。

    3人は、言葉を失う。
    当然だった。
    その遺体は、今まさに目の前にいる男と同じ姿をしているのだから。

    エルヴィン
    「リヴァイ……これは……一体………お前は……何者…なんだ…!?」

    リヴァイは話した。
    一度言葉にしたら、止まらなかった。
    ずっと、ずっと誰かに言いたかった。

    「今日」本当なら何が起こるはずだったのかを。
    その後、何が起こるはずだったのかを。
    それから、自分が見届けた、前の世界の末路を。
    そして、この世界に来たことを。

    話し終えても、エルヴィン達は驚きに満ちた表情を崩さなかった。
    ハンジは、目を背けている。変わり果てたリヴァイの遺体を直視できないらしい。
    エルヴィンは剣を鞘に収めると、身を屈め、微かに開いていた遺体の瞼を優しく閉じ、小さな頭を抱いた。
    ミケも遺体の側に行き、冷たく硬直した手を両手で包むように握っている。
    ハンジも駆け寄り、遺体の胸に顔を埋めて咽び泣く。

    やっぱり、「お前」は幸せだ。
    「この世界の自分」に向かって、内心呟く。
    死んでも、皆に愛されて。
    「俺」が死んだら、こいつらは同じようにしてくれるのだろうか?

  68. 68 : : 2014/01/26(日) 12:06:32



    …………くだらない。
    「この世界の俺」なんて、この世で最も、比べても仕方のない存在じゃないか。
    リヴァイがぼんやりとそんなことを考えていると、エルヴィンが静かに口を開く。

    エルヴィン
    「………このリヴァイは…『お前』が殺したのか?」

    怖い。
    エルヴィンの眼が、凄まじいまでの殺気を湛えているのが分かる。

    リヴァイ
    「いや……女型との戦闘中、ガス切れを起こして…命と引き換えに、女型に重傷を負わせた……俺はそれを黙って見ていた……手は下していないが、俺が殺したようなものだ……」

    エルヴィン
    「……そうか……」

    エルヴィンが、納得したような表情を見せた。

    リヴァイ
    「これが…『この世界』の俺からお前達への、最後の言葉だ……お前達に、渡す」

    リヴァイは、遺体から抜き取っていたメモをエルヴィンに渡す。

    リヴァイ
    「信じてもらえるとは思わん…気が触れたと思われる方が普通だ…この遺体だって、何かの間違いだと…よく出来た偽物だと思われるかもしれない。…でも聞いてもらわなきゃならない…そのために、俺は俺を殺してまでこの世界の『リヴァイ兵士長』になったんだ…」

    エルヴィン
    「……もう、言わなくていい。わかった」

  69. 69 : : 2014/01/26(日) 12:06:48

    突き放されたような気がした。
    信じてもらえないばかりでなく、信じようという気持ちすらも捨てられたように感じた。
    リヴァイは縋るような気持ちになる。

    リヴァイ
    「信じてくれ……頼む。俺は、もう自分がどうなったっていいんだ…死に場所を何度も逃してここまで来ちまったんだからな…。でも、お前達がまたあんな…あんな死に方をするのは嫌だ。許せねぇ……だから…もし…信じられないなら、……今ここで俺を殺してくれ……!!」

    自然と、自分の胸に手が当てられる。
    エルヴィン達の顔が見れない。
    怖い。
    どんな風に思われているのか。
    どんな顔で見られているのか。

    エルヴィン
    「リヴァイ」

    リヴァイは必死だった。
    俯いたまま、言葉を絞り出す。

    リヴァイ
    「……お前達の力が無ければ、この世界の運命は変えられない。この世界が、あちらの世界と同じ未来を繰り返すのなら、俺がここに来た意味はない。むしろ、それなら俺はここにいない方がいい…!!」

    エルヴィン
    「リヴァイ…もう言わなくていいと言っただろう」

    エルヴィンがリヴァイの肩に手を置く。
    普段ですらも見せないような、優しい表情が、こちらを見下ろしている。

  70. 70 : : 2014/01/26(日) 12:07:06

    リヴァイ
    「エル…」

    エルヴィン
    「わかった…表現を変える……『お前を信じよう』…………リヴァイ…お前の口癖だろう?」

    リヴァイ
    「………………本当……か…?」

    エルヴィン
    「ああ……」

    リヴァイ
    「………」

    エルヴィン
    「何だ、私のことは信じられないか?」

    リヴァイ
    「違う。…違う……だが………まさか……そんなにすんなりと信じてもらえるとは…思わなかった…から…」

    エルヴィン
    「お前がそんなに取り乱すのは初めて見たし、話の内容もあまりに突拍子のないものだったから、確かに驚いているよ…なぁ、ミケ」

    ミケ
    「ああ…だが、お前はお前だ。匂いが同じなだけじゃなく、な」

    ハンジ
    「そうそう。潔癖性で、口が悪くて、何もかもが忌々しそうな顔して…でもホントは凄く熱くて、仲間思いだ。そうだろう?」

    赤い目を擦りながらハンジが微笑む。
    それだけで、ありがとう、と言いたい気分だった。

  71. 71 : : 2014/01/26(日) 12:07:27

    リヴァイ
    「…ああ」

    エルヴィン
    「それに、あくまでも人類を救いたい、という目的は変わっていない…いや、むしろ、私の知るリヴァイよりもその気持ちは強くなっているように思える」

    リヴァイ
    「そうかも…しれない……」

    エルヴィン
    「……………たくさん、『人』を殺したんだな…」

    リヴァイ
    「ああ…たくさん殺した……あんなに、人から恐れられて、呪われて……宇宙のため、世界のため、一緒に生き残ってしまったハンジ達のため…死んでしまったお前達のため…そう思って、たくさん……だが…………そんなのは言い訳だったと…全て終わって気づいた……俺自身が…一番深刻な『駆逐依存症』だったのかもしれない……」

    リヴァイの震える手が額を押さえる。
    痛みに耐えるかのように目を堅く閉じ、震えている。
    エルヴィンが、遺体に対してしたのと同じように、リヴァイの頭を優しく抱く。

    エルヴィン
    「そうか、苦しかったな…………もっと聞かせてくれ、リヴァイ。お前の話をもっと聞きたい。お前は、前の世界では破壊に狂う悪魔だったのかもしれないが、こちらの世界では、世界を救う誇り高き兵士になれる……」

    リヴァイ
    「エル……ヴィン…」

    ミケとハンジも、リヴァイに触れる。
    潔癖症だから触られるのは苦手だ、なんて思わなかった。

    ミケ
    「前の世界とは違うはずだ…この世界の俺は…ちゃんと生きて、お前の助けになってやれるしな…」

    リヴァイ
    「ミケ……すまない……俺は……今度は…お前を1人で戦わせないから……」

    ハンジ
    「私も……もう、見失わない…」

  72. 72 : : 2014/01/26(日) 12:07:47

    そこから、3人はリヴァイを質問攻めにした。
    リヴァイは、その全てに答えた。
    話し疲れた頃、ハンジが唐突に聞く。

    ハンジ
    「……ねぇ、リヴァイ」

    リヴァイ
    「何だ…」

    ハンジ
    「アニ達の『故郷』が、あなたの言った通りなら…あなたの『故郷』はどこにあるの?」

    リヴァイ
    「俺の『故郷』は……前の世界の…調査兵団本部…だろうな……あそこで………エルヴィン……お前は俺達の帰りを…待っていたはずだから……」

    ハンジ
    「……そっか……リヴァイ、私達、ここがあなたの『故郷』になるように努力する!!」

    リヴァイ
    「…ハンジ………」

    ハンジ
    「……だからさ、信じて…?私達のことも、この世界に希望があるってことも…」


    ザザザッ

    ペトラ
    「エレン……信じて……!!」

    リヴァイ
    「エレン遅い!!早く決めろ!!」

    エレン
    「…進みます!!」

    ザザザッ


    リヴァイ
    「(……俺もあの時のエレンと同じか……俺は…『仲間』から『人類の希望』になった…同時に、何をしでかすかわからない『化け物』にも…)」

    エレンの腕が勝手に巨人化して、エルド達がエレンに剣を向けた時を思い出す。
    どちらの気持ちもわかる。
    仲間を疑うのも、疑われるのも辛い。
  73. 73 : : 2014/01/26(日) 12:10:10

    ああ、すまない、お前達。まだ、まだ1つだけ言ってないことがあるんだ。
    壁の中の人間を1人残らず殺しても、わからなかった「謎」が1つだけ残っている。
    本当は、そのことも話して楽になりてぇんだ。
    お前達の知恵を借りれば解けるかもしれないから。

    でも、それはできない。
    少なくとも今はできない。
    もう少し待っててくれ。

    リヴァイの胸の奥に、小さな焔が灯る。

    そうだ。俺は「戦士」だ。
    この世界に来たのは、あちらで会えなかった人間と話すためなんかじゃない。
    この世界を救うためだ。
    今ここにある笑顔を、守る。

    そのために、するべきことをする。
    今度こそ、皆が望む通りの「英雄」になれるように。



  74. 74 : : 2014/01/26(日) 12:10:31




    ………違う。
    それでは勝てない。
    いや、それだから、勝てないんだ。

    いいじゃないか……あちらで会えなかった人間と話したくても。
    いいじゃないか……頼ったって。
    あいつらは、俺というリスクの塊を殺さなかった。
    俺が、裏切らないことに、人類の運命全てを賭けたんだ。

    -何かを変える事が出来るのは何かを捨てる事が出来るもの-

    それがあいつらの信念だからだろう。
    ならば、それに応えよう。
    俺は、前の世界の「俺」を、捨てる。

    仲間を1人で戦わせるな、という教えは、1人で戦うなという意味でもある。
    昔、エルヴィンに諭されたことがあった。

    俺は、「兵士」だろう?
    後悔しない選択をしようとする自分を捨てろ。
    どんな結果を迎えても、後悔しない決意をするんだ。


    リヴァイ
    「お前達……」

    エルヴィン
    「何だ?」

    ハンジ
    「まさか、また『まだ言ってなかったことがある…』とか言わないよね?」

    リヴァイ
    「悪いが、その通りだ……だが、永遠に隠すつもりで言わなかったわけじゃない……これは、これからの話……俺なりに考えた、『作戦』に関する話だから言わなかった…失敗した時、お前達を巻き込まないようにと………でも、それじゃ勝てない………そうだよな……?」

    エルヴィン達は黙って頷く。

    エルヴィン
    「……聞かせてくれ」

    リヴァイ
    「ああ……」



  75. 75 : : 2014/01/26(日) 12:12:09
    すいません……一気に最後まであげようと思ったら、オカンが部屋に乱入してきまして暫くパソコン使えなくなりそうです

    家事やったら解放されると思うんで、終わったらまた戻ってきて続き載せます
  76. 76 : : 2014/01/26(日) 13:06:54
    期待!!
  77. 77 : : 2014/01/26(日) 14:09:00

    第57回壁外調査 翌日 地下牢


    ベルトルト
    「アニを殺したお前達を僕は決して赦さない…だから、何も話すつもりはない。殺すなら殺せ…」

    ライナー
    「ベルトルト……」

    巨人化出来ないよう拘束された上で、うなじに剣を押し当てられたライナー、ベルトルト、ユミルは、エルヴィン達と向き合っていた。

    ハンジ
    「………だが……アニは……沢山の調査兵団の兵士達を殺した……死ななくてもいい兵士だって殺した!!お前達がそう思うように…私達もまた、お前達を赦さない…っ!!」

    モブリット
    「分隊長!抑えてください!!」

    思わず感情的になるハンジを片手で制しながら、リヴァイは冷静に語り掛ける。

    リヴァイ
    「…そうだ……そうやって、憎み合い、奪い合いを繰り返して、そうして俺達は、いつまで経っても同じ檻の中から出られねぇんだよ……」

    ベルトルト
    「…他人事みたいに…!!お前が、お前がアニを殺したりなんかするから…!!だから、こんなことになっているんじゃないか…!!」

    リヴァイ
    「…その通りだ……そうしなければ、俺は死んでいたからな……」

    ユミル
    「……リヴァイ兵士長……あんた、何を考えてる?あたし達巨人化能力者を捕まえて、殺さないでどうするんだ?」

  78. 78 : : 2014/01/26(日) 14:09:15

    リヴァイ
    「……壁の中の『敵』を倒す」

    ライナー
    「…それは……一体…何だ?」

    エルヴィン
    「……王政だ」

    ユミル
    「はぁ!?お前らはその王政の下で兵士やってんだろ?何で…」

    リヴァイ
    「この馬鹿げた戦いを影で操っている豚野郎を…一匹残らず殺るんだよ…………お前らだって、それを望んでいたはずだ…違うか?」

    リヴァイの最高級に物騒な発言に、さすがのライナー達も押し黙る。

    ユミル
    「……で?まさか、エレンみたいに、巨人能力を人類の為に使え…とか言うんじゃないよな?」

    ハンジ
    「…………そのまさかだ、ユミル」

    ベルトルト
    「ふざけるな!!!誰が…ッ!!!誰がお前らなんかに味方するか…ッ!!」


    そうだろうな。

    それでも…お前達が必要だ…何としてでも協力して貰う。

    リヴァイは、前の晩にエルヴィン達を驚愕させた事実を伝える。
    予想通り、3人も、完全に硬直することになった。
    3人は顔を見合わせる。

    エレンへの処遇を最終決定する審議は、その翌日に行なわれた。

  79. 79 : : 2014/01/26(日) 14:09:38


    審議所併設兵舎 審議後 夜


    ベッドに仰向けに横たわり、ぼんやりと天井を見つめる。
    窓の外に浮かぶ月は薄く雲を被り、目を凝らせば微かに物が見える程度だ。

    審議所での疲れがどっと出てきた。

    憲兵団の、あの度胆を抜かれたような顔が痛快だった。

    だが、あいつらは何も悪くない。
    確かに腹立たしい所も多いが、やはり兵士であることに変わりはない。

    問題は、やはり、王政に関わっている人間だ。
    連中は蝋人形のように、表情一つ変えずにこちらを見ていた。
    あの顔の奥に、あの腹の底に何が渦巻いているのか。

    改めて思うが、自分はこうした駆引きが大嫌いだ。
    自分で思っているよりも、自分は単純なのかもしれない。
    エルヴィンが居なければ、ハンジが居なければ、ミケが居なければ。
    すぅ、と細く息を吸って、吐いて、リヴァイは沈むように眠りについた。

  80. 80 : : 2014/01/26(日) 14:09:51

    カタリ、と音がした気がした。
    眼を薄く見開くと、扉が細く開いて、静かに閉まったのが見えた。

    誰かが入ってきた。
    こんな深夜に侵入してくるとは、あまり歓迎できる人間ではなさそうだ。
    とはいえ、護身用の武器はドアの側に掛けた制服の中だ。
    様子を見るため寝たふりをしていると、侵入者は静かに歩み寄ってくる。
    その手が握っているものを、そしてそれが高く振り上げられたのを見た瞬間、リヴァイの体は大きく跳ねた。
    横っ飛びに斬撃をかわして着地すると、目の前に短剣が迫ってきていた。
    リヴァイの脚がベッドを強く蹴る。

    目の前を、蒼白い光を放つ刃が掠める。
    危ない。あと少し前に出ていたら、眼を抉られていただろう。
    先に眼を潰そうとするなんて、まるで巨人狩りだ。
    一撃目を外してから、次の攻撃に移る時の躊躇いのなさを見るに、この人間はかなり戦い慣れているように感じる。
    壁に掛かった制服の中からナイフを急いで取り出して構える。
    敵は、片手にナイフを握ったまま動かない。

    誰だ?

    誰だ?
    王政の連中が雇った人間か?

    それにしてもなかなか手強い。
    …兵士か。
    どこの所属か気になるが、とりあえずこいつを取り押さえなければ。

    雲が晴れて、月の光が部屋に射し込む。
    足元まで覆う丈の長いマントを羽織り、深く被ったフードの下は覆面で隠されている。
    性別はわからない。
    身長は俺より高い…ハンジと同じくらいか……残念なことに該当者が多すぎて、それは犯人を絞り込むのに有効な情報とはなり得ないのだが…だが、エルヴィンやミケよりは小さいのは確実だ。 
  81. 81 : : 2014/01/26(日) 14:10:07
    それにしても。
    審議所で女型から情報を得た、と言った日の夜に暗殺されそうになるとは、やはり敵は「人間」のようだ。
    俺達とは違った思想、目的を持った、人間。
    王政の中に紛れた、黒幕。
    壁の中の人間を100年間に渡って弄んできた、本当の敵。

    そして、同時に。

    それは、それこそが、俺がこの世界で探していたものへの手がかりだ。
    これからじっくりと探りを入れていこうと思っていたら、いきなり向こうから来やがった。

    こちらがナイフを持っても全く動かない所を見ると、侵入者の方も逃げる気はないらしい。
    ならば、生け捕りにして、洗いざらい吐いてもらう。

    何故こんなことをするのか。
    誰に命令されたのか。

    暫く睨み合っていると、向こうが痺れを切らしたように動き出した。床を鋭く蹴り、体重を乗せて突いてくる。身を捻ってかわすと、ナイフを叩き落とした。
    そのまま、渾身の力を込めて覆面の上から顔面を殴りつける。侵入者は吹っ飛び、壁に背中から叩きつけられる。そのままベッドに倒れ、起き上がろうとしたところにすかさず近づき、胸を踏みつけて覆面に手を掛ける。

    足裏の、柔らかい感覚。
    これは、…女?

    アニといい、女の方が怖いってのは本当かもしれない、などと余計なことを考えながら、覆面を勢いよく剥ぎ取る。

    だが、その下から現れたのは、リヴァイが想像もしていなかった人物だった。

    暗闇の中でも光る黒目、美しい黒髪。
    頬を腫らしているものの、毅然とした表情を崩さない。

  82. 82 : : 2014/01/26(日) 14:10:33






    「ミカサ………ッ!!!」






    リヴァイは驚愕する。
    何でお前が。思考が停止する。
  83. 83 : : 2014/01/26(日) 14:10:56

    こうなることを想定していたのだろう。
    俺が、襲ってきたのがお前だと知って、動揺するということを。
    マントの下に隠れていた脚に巻き付けてあった2本目のナイフをミカサの手が握ったのが見えた。
    殺すのは簡単だが、それは避けなければ。
    刺されるのを覚悟で、ミカサの腕を押さえつける。

    ミカサ
    「……!!くぅっ……放せ!!!くそっ!!」

    その刃先は、もはやリヴァイではなく、自分自身の喉元に向いている。
    追い詰められた暗殺者が取る行動は決まっている。
    理由もわからないまま自決なんてさせてたまるか。

    リヴァイ
    「ダメだ!!」

    激しく揉み合いながらも、何とかナイフを奪い取り、捨てる。
    ミカサは泣きながら抵抗している。
    舌を噛み切るかもしれない。
    そう思って自分の手をミカサの口に挟み込む。
    憎しみに燃えた瞳を見開いて、手の骨が軋むほど強く噛んでくる。
    そんなミカサを、リヴァイはただ、何も言えずに押さえ続けた。

    どういうことだ。
    王政の寄越した暗殺者かと思ったら…何でこいつなんだ…?
    ミカサが誰かを襲うとしたら、そしてそれが誰かからの命令ではなく自分の意志による行為だとしたら、その原因は十中八九エレンだ。

    だが、俺達はエレンに何かしたか……?
    いや、むしろ、逆の筈だ。
    俺達は、エレンが人類にとって有益な存在であることを、調査兵団の誇り高き兵士であることを、公の場で証明した。
    総統は、これからはエレンの巨人化能力を検証し、ウォール・マリア奪還を目指す、という方針を選んだ。
    それは、エレンが人類の敵ではない、正真正銘の希望になったことを意味する。
    このことはその場にいた104期の面々もよく分かっているはずだ。
    なのに、何故。

  84. 84 : : 2014/01/26(日) 14:11:40

    リヴァイ
    「何があったか知らないが…こんなことしてもエレンを苦しませるだけだってのが…わかんねえのか…っ!?」

    ミカサ
    「そんなのどうだっていい…!!!殺してやる…!!」

    この、目。
    見たことがある。
    エレンのことをどうでもいいというなんて、正気ではない。
    これは…

    リヴァイ
    「ミカサ…!!お前まさかっ…『駆逐依存症』になりかけて………!?」

    何で、急に。
    壁外調査から帰ってきた後も、何の兆候も表れていないように思えた。
    何故…。

    その瞬間。
    リヴァイの脳裏に、何の感情も含まない、赤いガラス玉のような目が2つ浮かぶ。

    こちらの世界に来てから、全くといっていいほど気配を消していた「あいつ」。

    その存在が、急に意識された。
    まさか。
    だが、だとしたら辻褄が合う…。
    しかし…。

    リヴァイの心拍数がどんどん上がる。
    突然、立て続けに起きた予想外の出来事に、珍しく我を忘れ、困惑していた。

    それが失敗だった。

    背後に気配を感じた時には遅かった。
    ミカサと揉み合っている間に部屋に、音も立てず侵入してきた黒服の男達が、リヴァイを一斉に襲う。

  85. 85 : : 2014/01/26(日) 14:14:07

    体中が痛い。
    気絶してからも、長時間殴られ、蹴られ続けたのだろう。
    肘、手首、膝、足首が縛られているのはこういう流れではお決まりだろう。
    手の指を動かせないようにされているのも納得だ。
    だが、足の指まで縛るのはなかなか斬新だ。
    そんなに俺が怖いのか。

    冷たい床が頬に触れている。埃まみれで、カビ臭い。
    まったく、掃除が全然なってない部屋だ。

    そんな冗談を自分に言い聞かせてから、目をゆっくりと開ける。
    自分を見下ろす、見覚えのある、男。
    血の味のする、カラカラの口を開く。

    リヴァイ
    「…ああ…『司祭様』か……」

    ニック
    「…やっと起きたか……どこまで君は知っているのかな…リヴァイ兵士長…?」

    リヴァイ
    「……」

    ニック
    「ほれ、何か言ってみろ…」

    上質な皮で作られた、硬く重いニックの靴が、リヴァイのこめかみを踏みつける。
    頭を貫くような鈍い痛みと、屈辱の中で、リヴァイは必死に思考する。

    王政の方が、先に手を打ってきた。
    この口ぶりでは、俺の正体も知っているのだろう。
    そんなことを教える奴がいるとしたら、ただ1人。

    キュゥべえだ。


    全く、あちらの世界とこちらの世界で、ニックと俺の立場が逆転してしまったようだ。
    あちらでは、オドオドしたところしか見なかったが、なかなかいい性格をしている。
    だが、思い通りにさせるものか。
  86. 86 : : 2014/01/26(日) 14:14:42

    リヴァイ
    「ぐ……てめぇ……口を塞がなくていいのか?…舌を噛んで巨人化してもいいんだぞ……」

    ニック
    「な、なにっ……!!」

    ニックが怯えた表情になる。
    しかし、それはすぐに崩れ、嫌な笑みに変わる。

    ニック
    「………なんてな。…お前、こちらの世界に来た時に、巨人になる力は失ったのだろう?キュゥべえと新しい『契約』を上書きしてこちらの世界に来たのだからな…つまり、傷も治らないということだ…」

    ググッ

    リヴァイ
    「く……ぁ……」

    更に強く踏まれ、意識が飛びそうになる。
    やはり、キュゥべえか。
    くそ、巨人化出来ないことがばれているとは……。
    いよいよ、絶体絶命か。
    何をされるか、と身を強張らせていると、ニックが懐から時計を取り出した。

    ニック
    「ん……ああ、残念だ…時間だな……そろそろ行かなければ………後は、キュゥべえに任せるとしよう…」

    そう言うと、ニックは部屋を出ていこうとする。
    何もされなかった、と油断したところに、唐突に鳩尾に蹴りを入れられ、リヴァイは思わずえずく。
    くそ、あの腐れ司祭。
    去り際に、重い置き土産を残していきやがった。
    げほげほと咳き込み、体を捩らせる。
    入れ替わるように、キュゥべえが部屋に入って来るのを、涙で霞む視界に捉える。
  87. 87 : : 2014/01/26(日) 14:15:27

    キュゥべえ
    「やぁ、久しぶりだね、リヴァイ」

    リヴァイ
    「…げほっ……はぁ……はぁ……」

    キュゥべえ
    「……おや?何も言わないのかい?……随分とこっぴどくやられたみたいだね…それとも『感情』が邪魔して言葉が出てこないのかな?」

    リヴァイ
    「(クソ……)」

    キュゥべえ
    「まぁ、時間も無いから本題に入るよ…リヴァイ、君には、ずっと気になっていたことがあるだろう?しかも、その様子じゃ、君はその真相にかなり近づきつつあるようだ」

    リヴァイ
    「…ごほっ…………ああ……『駆逐依存症』のような精神異常は、いつか誰でも発症する、とお前は言っていたが…実際には起こさない奴も居た…ユミルがそのいい例だ……考えてみれば、お前は…どんな仕組みでそうした精神異常が起こるのか、いつも説明をはぐらかしてきたな……それは…恐らく…」

    キュゥべえ
    「僕が、『調節』していたからさ」

    悪びれもせず、白い悪魔は尻尾を振って応える。
    予想していた答えではあるが、ふつふつと怒りが湧き上がる。

    リヴァイ
    「……やっぱり………王政の連中も、てめぇが操ってたんだな……!?…それなら、俺達調査兵団が、前の世界で倒した…『例の巨人』も……待て………ミカサ…あいつが急に襲ってきたのもお前の仕業か!?」
  88. 88 : : 2014/01/26(日) 14:15:51

    キュゥべえ
    「ふふ…そうだよ…君達が色々頭を悩ませている間に、こちらの準備が先に整ってしまったからね……彼女を使って君を殺し、多くの人間を絶望させる、という計画は失敗したけれど、結果として君を拘束できたし、全調査兵団員をウォール・シーナ内に集中させることもできた…これでまた、この世界はより深い絶望に沈む。王政の連中も、無関係な人々も、皆一斉に精神異常を起こし……無知性巨人化する。ウォール・シーナ内は巨人で溢れ返る」

    リヴァイ
    「なん…だと……それじゃ……前の世界と同じじゃねぇか……!!」

    キュゥべえ
    「そう、あちらの世界で君が見届けた『終焉の日』は、こちらの世界では今日、これからやって来るのさ…君達調査兵団が巨人化能力者を拘束してくれたから、彼らはすぐには動けないだろうし…ああ、ミカサの症状は回復させておいたよ……彼女の場合、その方が絶望が深くなるはずからね……そうそう、言ってなかったけど、壁の中で眠る巨人達ももうすぐ寿命が尽きるよ」

    リヴァイ
    「何……!?」

    キュゥべえ
    「言ったじゃないか。『元は全く同じ世界でも、同じタイミングで同じように働きかけても、同じ道を歩むことはまずない』って。あちらの世界とこちらの世界における最も大きな変更点はこのことさ。聞かれなかったから言わなかったけどね。壁を守る者達が死ねば、壁は崩れ、『壁内』という概念は消滅する。つまり、巨人から逃れられる場所は無くなる。壁のあるうちにシーナ内の巨人を片付けないと、壁外からの巨人と、シーナの巨人に挟まれてしまうよ」

    もう既に地面に体が倒れているのに、地面に崩れ落ちるような感覚がした。

    実は、前の世界でリヴァイ達が自ら殺した人類は、かなり少なかった。
    前の世界の人間達の「死因」は、その殆どが、深い絶望による急速な精神の侵食が引き起こす「巨人化」と、そうして生まれた無知性巨人による「捕食」だった。
    それが、こちらの世界でもまた起こるというのだ。

    エルヴィン、ミケ、ハンジ。
    エレン、エルド達。
    104期の面々。

    彼らは、また死ぬ。
    俺の、せいで。

    キュゥべえは、くすりと笑うと、部屋を出て行った。
    ここで、絶望に浸っているがいい。
    そんな、呪いの言葉を残して。
  89. 89 : : 2014/01/26(日) 14:16:30

    静かになった部屋で、リヴァイは堅く目を閉じ、ぼんやりと考え事をしていた。

    絶望したら最後、人を呪い無知性巨人になるか死ぬしかない仕組み。
    「感情」をエネルギー源にすることを、「人間」を家畜のように利用することを、キュゥべえが決めた瞬間から、そのルールに全人類は囚われた。

    キュゥべえとの『契約』は、それから逃れる唯一の方法だった。

    キュゥべえから精神に干渉を受けない代わりに、様々な能力を与えられ、世界を絶望に突き落とすための「駒」にされる。
    抗おうとすればするほどに、正気を保ったまま、何度も何度も他人に絶望を与えてエネルギーを生み、そしてその罪悪感により、自身も絶望を味わいエネルギーを生み出す羽目になるのだ。

    壁の一部となった巨人達。
    彼らもまた、かつて「契約」を行った人々だった。
    自身を壁の一部に変えてまで壁の中を守ろうとしたにも関わらず、その壁の中の人類はキュゥべえの手で破滅へと向かっていく。
    しかも、壁を壊し、壁内に無知性巨人を招き入れた巨人達もまた、「契約」をした人間だった。
    それをただ見守ることしか出来ない100年に渡る苦しみも、キュゥべえにとって都合のよいエネルギーの温床だったはずだ。

    その他の巨人達も同じだ。
    皆同様に、「契約」を結び、絶望を撒き散らして絶望に沈んだ。


    それに背いたのが、「エレン」だった。
    エレンは、「契約」の対象者でありながら、人々を絶望から救う不思議な力があった。
    理論や法則を超越した、「奇跡」の少年。
    キュゥべえの操る王政が、執拗にエレンを狙っていた理由はそれだろう。



    だが、人類の絶望と希望をその身に引き受けた結果だろうか。
    結局は、キュゥべえの影響とは無関係に、誰よりも早く精神を病んでしまった。
    こちらの世界のエレンは、精神異常を引き起こすまでまだ時間がありそうだが、それもどうなるかわからない。

    前の世界で、学んだはずなのに。
    どうあがいても、誰も、救われないということを。

  90. 90 : : 2014/01/26(日) 14:16:51

    息をするだけで全身の骨が軋むような気がする。
    体中が痛い。
    何度も味わった、絶望が心の中に広がっていく。

    いつから俺達はこのクソみたいな罠に巻き込まれたのだろう。
    どうして俺は、自分からこの罠に巻き込まれることを選んだんだろう。
    時空を超えてまで、絶望をより深くして。

    巨人を殺して。
    巨人に奪われて。
    巨人が何かを知って。
    巨人を滅ぼして。
    巨人に為って。
    巨人を再び殺して。

    そうして生きてきた中でふと思ったことがある。
    巨人は壁を壊した。
    そのせいでたくさん死んだ。
    だが、巨人は、人々が心の中に築く壁も壊した。
    もちろん、巨人がいなくても愛し合えるような人もいるし、巨人がいても憎み合う関係になってしまうような人間だっているだろう。
    それでも、壁の外が絶望にまみれるほど、壁の中は平和になっていったのだ。

    矛盾。

    俺の名前も、同じ意味なのだと、エルヴィンが言っていたのを思い出す。
    俺は、元からこういう運命だったのだろう。

    それでも。
    ずっと信じてきた。
    世界は残酷でも。運命は過酷でも。

    人間は美しいと。

    でも、駄目なのだ。
    美しかろうが、愛に溢れていようが、人は必ず、誰かを傷つけてしまう。
    そして、どんな人間でも、いつかは絶望を味わうことになる。
    遅いか、早いかの問題だ。
    例外となり得るのは、絶望より早く死が迎えに来た奴くらいだ。

    だが、その死ですらも、そいつを大切に思う奴を絶望に突き落とす材料になり得る。
    そうして、絶望と希望の歯車は加速しながら回り続ける。

    残酷だ。本当に残酷だ。






  91. 91 : : 2014/01/26(日) 14:17:11






    でも。







    この世界はやはり、美しいかもしれない。

    奇跡だってあるのかもしれない。


    爆音が壁越しに聞こえる中で、複数の足音が部屋に入ってきた。
    重い瞼をこじ開けて、切り取られた視界。
    それを、よく知っている人間達の顔が埋めている。


    圧倒的に不利な状況の中、死にゆく運命を負ったはずのあいつらが、今、俺を覗き込んでいる。


    何が…起きた?
    俺も死んで、こいつらと同じところに来たのか?

  92. 92 : : 2014/01/26(日) 14:18:09


    いや、そんなわけない。


    エルヴィン
    「リヴァイ」

    ハンジ
    「遅くなってごめんね、リヴァイ…助けに来たよ」

    ミケ
    「立てるか?」

    夢でもどちらでもいい。
    あるのは、望んだ光景だ。

    リヴァイ
    「ああ……」

    ミケに支えられ、立ち上がる。
    人間とは不思議なものだ。
    希望を持った途端、体が軽くなる。

  93. 93 : : 2014/01/26(日) 14:20:15

    ジャン
    「団長!エレン、巨人化しました!ミカサとアルミンが肩に乗って指示を出しています!」

    エルヴィン
    「よし、ベルトルトとライナーにも巨人化の指示を出せ!!」

    ベルトルト……ライナー……?
    じゃあ……

    コニー
    「アニとユミルも、準備出来ました!!」

    そうか……間違いない………
    これは………

    リヴァイ
    「……作戦、成功だな……」


    突如、脳内に、甲高い声が響く。

    キュゥべえ
    「どういうことだ……!!ライナーやユミルはともかく、ベルトルトはアニが居なければ協力しないはずだ……何より、アニ・レオンハートは、君が殺したじゃないか……生体反応が消失したのを、僕も確認した……」
  94. 94 : : 2014/01/26(日) 14:20:34

    リヴァイは心の中で返事をする。

    リヴァイ
    「…あいつの能力を忘れたのか…?……あいつは、自身を水晶体の中に閉じ込めることが出来ただろ……」

    キュゥべえ
    「…!!まさか…あの時……アニは…死んだのではなく……」

    リヴァイ
    「水晶体の中に閉じ籠ったんだよ……持ち運べるよう、可能な限り水晶を薄くしてな…つまりあいつは今まで仮死状態にあった、ということだ……そして、ついさっき、目覚めたってところだろ……この状況から考えればな」

    キュゥべえ
    「…なるほどね……アニの遺体をなるべく人の目に触れないようにしていた本当の目的は、そのことを隠すためだったということか……おかしいと思ったんだよ……『腕』だけなんて……」

    審議所で、調査兵団が証拠として提出したアニの遺体は、「腕」のみだった。
    あの「腕」は、最初にアニと接触した時に切断したものだったということか。
    水晶体に包まれた本体は、調査兵団が全力で保護していたということだろう。

    キュゥべえ
    「…アニが裏切ったり、誰かに感づかれたらその瞬間に全て終わりじゃないか…何て、何て無謀な賭けだ……まったく、わけがわからないよ…」

    リヴァイ
    「……てめぇみたいな化物相手にはこれぐらいしねぇとな………どっかの馬鹿が言ってた言葉を思い出したんだよ……」


    最善策にとどまっているようでは到底敵を上回ることはできない。
    全てを失う覚悟で挑まなければならない。
    必要なら大きなリスクも背負う。
    そうして戦わなければ…人類は勝てない。


    エルヴィン
    「総員戦闘開始!!!ウォール・シーナ内に現れた巨人を駆逐せよ!!1匹たりとも逃がすな…!!」
  95. 95 : : 2014/01/26(日) 14:21:03

    リヴァイ
    「住民の避難は……」

    ミケ
    「それは、専門家達に期待するしかない…堕落した彼らだが、能力はある。後は、覚悟の問題だ……!!」


    -祈ったところで 何も変わらない 不本意な現状を変えるのは 戦う覚悟だ-


    ナイル
    「ちくしょう何なんだ…!!…総員聞け!!生き残っている住民を救出しろ…!いいか、避難が最優先だ!…全員覚悟を決めろ…!!」

    戦うこと、それがお前らの仕事なら。
    護ること、それこそが、憲兵団だ。
    壁の外の自由より、壁の中の平和を望んだ俺達なりの『戦い』だ……
    そうだろ、エルヴィン……!!



    -屍踏み越えて進む意志を嗤う豚よ-


    キュゥべえ
    「………」

    -家畜の安寧 虚偽の繁栄 死せる餓狼の自由を!-

    キュゥべえ
    「…まったく………まぁ、他にも魅力的な世界はたくさんあるからね……ここは、諦めるよ……どうなるにせよ、後は、君達の問題だ…」

    キュゥべえは、この世界から、姿を忽然と消した。
  96. 96 : : 2014/01/26(日) 14:21:17

    -囚われた屈辱は 反撃の嚆矢だ 城壁の其の彼方 獲物を屠る狩人-

    アルミン
    「エレン、次はあっちだ…!!」

    エレン巨人体
    「ウォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

    ミカサ
    「(私の錯乱で……調査兵団の主力である兵士長が作戦の序盤に参加できなくなってしまった…!!その責任は果たす……落ち着け……私は…自分を制御できる…何でもできる!!!)」

    ザシュザシュザシュッ

    -迸る衝動に その身を灼きながら-

    鎧の巨人
    「ガァアアア!!!!」

    ドカーン

    ペール
    「いいぞ、ライナー!!」

    ライナー
    「(俺は……兵士だ……やっと……そう言える……!!!)」


    立体機動を駆使して空を飛び回る兵士達を、茜色の夕陽が照らし出す。
    その様は、まるで。

    -黄昏に緋を穿つ紅蓮の弓矢-
  97. 97 : : 2014/01/26(日) 14:21:32

    シュウウウウウウウ

    ミケ
    「右に5体!左に7体だ!!」

    トーマ
    「ミケさんと俺の班は左だ!!」

    ナナバ
    「なら…右に行く!!」

    ゲルガー
    「逃がさねぇ!!」

    ギュイイイイン

    -矢を番え追い駆ける 標的は逃がさない-

    リーネ
    「相変わらずの突進だ…」

    へリング
    「俺達も行くぞ!!」

    シュタッ

    -矢を放ち追い詰める 決して逃がさない-

    ドォオオオオオン

    ケイジ
    「奇行種か…っ!!」

    ハンジ
    「ふふ……ふふふ……来る……来る!!!!」

    モブリット
    「我慢ですよ、分隊長……」

    -限界まで引き絞る はち切れそうな弦-

  98. 98 : : 2014/01/26(日) 14:21:51

    ラシャド
    「くそっ」

    ラウダ
    「こいつら速い…!!!」

    ギュイイイイイイイン

    ???
    「ウラァッ!!!」

    ザシュウウウッ

    スタッ

    オルオ
    「フッ……汚ねっガチィッ ブシャアアアア」

    ペトラ
    「…」

    エルド・グンタ
    「(ノーコメントが一番きついな……)」

    エレン巨人体
    「グォオオオオ」

    ペトラ
    「エレン!……あっ!」

    エルド
    「お前ら!エレンの肩の上に…!!」

    グンタ
    「…兵長!!!」

  99. 99 : : 2014/01/26(日) 14:22:10

    オルオ
    「(絆創膏貼っていても素敵です兵長…!!!)」グッ ←喋れない

    シュウウウウウ

    スタッ

    エルド
    「よし…リヴァイ班が揃った…!!」

    リヴァイ
    「遅れてすまない……向こうに待機しているジャン達の班と挟み撃ちだ…」

    ペトラ
    「…っ!!兵長!その手!!」

    リヴァイ
    「ん…?」

    ペトラがリヴァイの手を指さしている。
    手の甲を見ると、くっきりと歯形が付いている。
    ああ、ミカサに噛まれた時のか。
    あの時はそれどころではなかったが、今から思えばかなり強く噛まれていた気がする。

    グンタ
    「『お揃い』ですね…」

    4人が手の甲に薄く残った歯形を見せる。

    リヴァイ
    「そうだな……」

    調査兵団のシンボルが自由の翼なら、俺達特別作戦班のそれは、この歯形だ。

    リヴァイ
    「……行くぞ!!」

    一同
    「はい!!!!!」

    ギュウウウウウウン

    -標的が息絶えるまで 何度でも放つ-
  100. 100 : : 2014/01/26(日) 14:22:26

    クリスタ
    「き、来たっ!!!」

    サシャ
    「うう…本当ならリヴァイ班と一緒のはずだったのに…!!」

    ジャン
    「お前ら、落ち着け…!巨人も来たが、エレン達も来てる!」

    …怒らずに聞いてほしいんだけど…

    マルコ
    「ジャンは強い人ではないから、弱い人の気持ちがよく理解できる。それでいて、現状を正しく認識することに長けているから」

    …今、何をすべきか、明確に分かるだろ?…

    ジャン
    「トロスト区の時とは違うだろう…俺達は…調査兵団の兵士だ…ッ!!」

    コニー
    「ああ…!!」

    調査兵団に入って学んだこと…

    -獲物を殺すのは凶器でも技術でもない-

    訓練兵団では学べなかったこと…

    -研ぎ澄まされたお前自身の殺意だ-
  101. 101 : : 2014/01/26(日) 14:22:54

    クリスタ
    「きゃっ…!!」

    ジャン
    「クリスタ!!」

    ガブッ ブチブチィイイイッ

    ガシッ

    クリスタ
    「ユミル!!」

    ユミル巨人体
    「…エイキカ」

    クリスタ
    「…うん!!!」

  102. 102 : : 2014/01/26(日) 14:23:08

    -焔のように熱く-

    超大型巨人
    「……」

    シュゥウウウウウウウウウウウ

    兵士
    「すごい…蒸気だけで…巨人が次々と…!!!」

    -氷のように冷ややかに-

    ハンジ
    「アニ!!あなたの力が必要だよ…!!」

    女型の巨人

    ズバッ ドカァアアアアン

    ハンジ
    「うん!!…冷静だね…!!」

    モブリット
    「(見習って下さい…!!)」


  103. 103 : : 2014/01/26(日) 14:23:36






    その時。ウォール・シーナが崩壊を始めた。


    ハンジ
    「嘘…まだシーナ内の巨人が片付いてないのにっ……!!」

    モブリット
    「くそっ……早く止めなければ…」

    ミケ
    「…!!!あれは!!!」









  104. 104 : : 2014/01/26(日) 14:23:53





    崩れた壁の向こうから、大量の兵士が姿を現す。
    巨人に向かっていく。

    その背中には、薔薇の紋章。

    ピクシス
    「壁が壊れてウォール・ローゼ領域が少々広くなった…そしてそこに巨人がたまたま居ただけじゃ……これだけ居れば、超絶美女の巨人にも巡り合えるやもしれん………総員、ゆけ!!」

    駐屯兵団の兵士達
    「うぉおおおお!!!」
    「掛かれぇえええ!!!」

    リコ
    「エレンの奴…巨人の体を制御できるようになったんだな…!!…行くぞ!!!」


    壁の崩壊場所から出て行こうとする巨人達を、駐屯兵団が迎撃する。
    その背後から、調査兵団が攻撃を仕掛ける。
    指揮をとっていたエルヴィンは、微笑んで敬礼をする。

    エルヴィン
    「…ピクシス司令……感謝します……」


    あちこちで、勝利の雄叫びが上がる。


  105. 105 : : 2014/01/26(日) 14:24:06


    その日。
    踏まれた花の名前も知らず、風を待ち詫びるだけだった、地に堕ちた鳥達は思い出した。
    鳥は飛ぶ為にその殻を破ってきたことを。
    無様に地を這う為ではなかったことを。

    自分達の翼は何の為にあるのか…籠の中の空は狭過ぎる…!!


    -己を矢にこめて全てを貫いていけ-


    ナイル
    「戦え!!!」

    ピクシス
    「進め!!!」

    エルヴィン
    「進撃せよ!!!!!!!!!」



    人類の進撃は、ここに始まった。



    【END – To The BEGINNING】
  106. 106 : : 2014/01/26(日) 14:27:12
    以上です!!!!!

    最後、歌に走ってすいません……笑

    皆さんの期待(?)を裏切って、いい感じのENDとなっております。

    原作もこうなるといいなあ、と思いつつも、最後の戦闘に出てきた人達半分くらいもうお亡くなりになっているんだよなあ、と悲しくなってきました。

    リヴァイ班、ミケ班の皆様の共闘が見たかっただけです。
    巨人組の共闘が見たかっただけです。
    3兵団の共闘が見たかっただけです。

    ではまた!!
  107. 107 : : 2014/01/26(日) 19:46:42
    すごいです!!!!!!
    目まぐるしい展開にハラハラさせられました。
    バッドエンド予想してたので、驚きました!
    最後のところはキャラクターたくさん出て来たしかっこいいしで、頭のなかで曲が流れました笑
    巨人達と3兵団が一緒に戦うところと、リヴァイ班のエピソードは胸アツでした!
    とにかくお疲れさまでした…
    また書いてください!
    期待しております(^^)
  108. 108 : : 2014/01/27(月) 16:42:51
    ほんとに原作もハッピーであってほしいね(ハッピーエンドは進撃中にかけるしかないな)
    あと、QBと進撃をここまできれいに合わせるとは・・・良い!
    QBは進撃でも契約中毒だねwwほんとうにわけがわからないよ

    乙でした





    QB滅べ~~~~
  109. 109 : : 2014/01/28(火) 22:27:51
    これは本当に泣きます!
    パラレルワールド説が本当だったらこんな感じなんでしょうね!
    リヴァイよくがんばった〜〜〜〜〜(泣)
  110. 110 : : 2014/01/29(水) 22:25:35
    一気読みしちゃった!
    素晴らしいの一言…文才ぱねぇ…
    泪飴さんは、ピクシブでも活動されてますよね?
    こちらは別マガで、あちらは綺麗な絵がついてて読みやすくなってるから、単行本みたいなイメージ?笑
    これからも、まってます!
  111. 111 : : 2014/01/30(木) 11:12:48
    >>107

    お返事遅れてすいません!ありがとうございます…!!

    >>108
    >>109

    原作は…本当にどうなりますかね涙
    でも、「進撃は、キャラが生きて物語が死ぬくらいなら、キャラが死んで物語に生きて欲しい」って前に誰かが仰ってたんですけど、本当にその通りだと思うんですよね……
    QBが意外に物語と相性良くて、準主人公みたいになってしまったww
    前作の最後で道を誤う人間臭さを描いた分、本作ではリヴァイさんがどこまでも男前になっております!笑
  112. 112 : : 2014/01/30(木) 11:15:45
    >>110

    はい!笑
    同じ名前でやってます。笑
    わわ、ありがとうございます!
    絵はまだまだ勉強中なんですが、一応自分なりに描いてます
    pixivに載せている方は、密かに手直しを入れてますw

    これからも、よろしくお願いします!
  113. 113 : : 2014/01/30(木) 22:55:09
    リヴァイがあしんだともった
    小学校4年が見てるし

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tearscandy

泪飴

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