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比翼連理【エレミカ】

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  1. 1 : : 2018/05/01(火) 23:41:40
    タイトルは決して、男女や夫婦仲の例えというわけべはありません!(多少はそうですが…)
    亀更新になるかもしれませんが、完結はさせます!


    注意事項

    ・エレミカです。苦手な方は見ないことをオススメします。

    ・キャラ崩壊や、独自の設定なども多く含みます。

    ・一部原作のネタバレとなり得る場面があります。

    ・不快となるコメや、迷惑となる行為などはご遠慮ください。


    以上を理解した上でご覧になってください!
  2. 2 : : 2018/05/02(水) 00:05:03
    1コメ
    期待しております!
  3. 3 : : 2018/05/02(水) 00:24:27



    855年




    憲兵団に配属されてから早5年、20歳を迎えた私はとある噂を耳にした。


    「憲兵殺し」


    今や王政に逆らう者などほとんどいないこの壁の中でそんな所業を行う輩がいると、そんな噂で憲兵団は持ちきりだった。


    今までも数人の憲兵団がその周辺に送り込まれたが、帰ってきた者はいなかった…らしい。


    ヒッチ「ミカサ」


    ミカサ「ヒッチ…」


    彼女は訓練兵時代からの同期、ヒッチ。


    私が憲兵団に入団するキッカケとなった人でもある。


    ヒッチ「やっぱりアンタも聞いたんだね、憲兵殺しの噂」


    ミカサ「うん」


    ヒッチ「なんでも憲兵にしか手を出さないって、未だに捕まってないみたいだし私たちもいずれ…」


    ミカサ「その前に、私が捕まえる」


    ヒッチ「え…」


    珍しくヒッチが素っ頓狂な顔をする。



    それもそうだ、私は今まで真面目に任務をこなしたことがない。


    なにせ、街の小さな事件になんぞ全く興味が無かったのだから。


    でも今回は違う。


    その「憲兵殺し」は…







    私の両親の命を奪った犯人かもしれないから。



    ヒッチ「でも捕まえるったって……今はそいつの捕獲任務を与えられてるのは中央憲兵の奴らだけなんだよ?私たちにはどうにも…」


    ミカサ「だからヒッチ、あなたに協力して欲しい」


    ヒッチ「協力って……まさか!」


    ミカサ「…うん」


    ヒッチ「………分かったよ、この礼は高くつくからね」


    ミカサ「覚悟しておこう」


    ヒッチ「んじゃ、交渉成立ってことで!」


    ヒッチ(それにミカサの実力は本物……ミカサがそいつを捕まえてくれれば私の安全も…)


    ミカサ「決行日は明日の巡回にて」


    ヒッチ「了解っ」


    そいつが果たして、私の両親の仇なのかは分からない。


    けど、何の罪もない人たちを何人も殺してきた悪党ということに変わりはない。


    ミカサ(私が…必ず!)

































    ストヘス区 とある路地




    ???「中央憲兵……か、ここまで来るとやっぱり王政も黙ってないか」


    サネス「お前は……やはり」


    ???「ああ…」


    噂の「憲兵殺し」の正体、それが…


    エレン「エレン・イェーガーだ……って言っても意味ないか」


    そう言い、サネスの頭を掴む。


    サネス「な、何を…!」


    エレン「じゃあな…」


    __________



    先程までサネスという男が身につけていた兵団服と立体起動装置を身につける。


    エレン(少しデカイな…)


    一刻も早くここから立ち去るため、階段を上がる。


    するともう一人の憲兵団の姿が見えた。


    ラルフ「ん?お前…サネスじゃないな、誰だ」


    慌てて、咄嗟に思いついた言葉を発する。


    エレン「あなたと同じく、中央から派遣された者です」


    握手を求め、手を伸ばす。


    ラルフは不審そうに見つめ、やがて手に触れた。


    __________


    エレン「目標はトロスト区へ逃走、お前もすぐにトロスト区へと向かえ」


    ラルフ「了解」


    そのままラルフは指示通り、トロスト区の方へと姿を消した。


    それを見送り、その場から去った。


    エレン(なんとかなったな…)
  4. 4 : : 2018/05/02(水) 00:25:06
    >>2
    嬉しいです!
    ありがとうございます!
  5. 5 : : 2018/05/02(水) 20:09:43
    期待です!
  6. 6 : : 2018/05/02(水) 22:04:42
    期待です!
  7. 7 : : 2018/05/02(水) 23:29:44
    期待!!
  8. 8 : : 2018/05/03(木) 00:49:32
    >>5
    >>6
    >>7

    ありがとうございます!



    今更ですが、今作はチート系作品とは大分異なっています。
    勘違いさせてしまった方がいるのならば申し訳ありません。
  9. 9 : : 2018/05/03(木) 01:26:07



    ミカサ「ベン・ワーグナー…?」


    ヒッチ「そう」


    ヒッチに渡された肖像画を眺めながら、その名前を口にする。


    ヒッチ「西区の憲兵団所属だったみたい」


    ミカサ「だった…?」


    ヒッチ「約一ヶ月前、噂の憲兵殺し捕獲任務に当たった後、行方不明…」


    ミカサ「つまり…殺されたってこと?それなら調査の必要は…」


    ヒッチ「その依頼主はその人の親だから、まだ生きていると信じてるみたいなんだよね…」


    ミカサ「そう…」


    ヒッチ「受けてくれるよね?」


    今日の巡回の任務の際、私の不在を上手くはぐらかしてくれるその礼だ。


    ミカサ「分かった」


    ヒッチ「さすが!ありがとね」


















    本来なら、巡回の任務が始まって既に一時間。


    私はそれとは別に、最近の情報を頼りに憲兵殺しを捜索している。


    特に問題なく捜索できていることから、ヒッチが上手く誤魔化してくれたことがわかる。


    ミカサ(ヒッチがこういうのが上手いことは噂で知っていた、頼んで正解だった…)


    そのせいで仕事は増えたが、それはまた今度じっくりやればいい。


    だが、憲兵殺しはいなくなってしまうかもしれない。


    ウォール・ローゼまで逃げたとなれば、いくら憲兵団の私でも捜索は困難になる。


    ミカサ(この地区から出る前に…必ず)


    ???「………」


    人気のない路地を歩いていたその時、頭上から物音とともに何かが落ちてくる。


    それはやがて私に覆いかぶさり、腕の動きを封じる。


    ミカサ(しまった…!)


    その正体が人だと気づいた時には既にゼロ距離。


    ミカサ(殺される…!)


    ???「………」


    ミカサ「……?」


    だが相手は何もせず、ただ私の腕を掴んでいる。


    その隙をつき、蹴りを入れ距離を取る。


    ???「な…!」


    ミカサ「あなたは……誰?」


    ???「あんたの方こそ、何者だよ…」


    ミカサ「私はミカサ・アッカーマン、南区所属の憲兵団」


    ???「ミカ…サ?お前まさか……あのミカサか?」


    ミカサ「え…?」


    エレン「俺だ…エレンだ」


    フードを外し、露わになった顔には確かに見覚えがあった。


    ミカサ「エレン…?」


    エレン「やっぱりミカサか、どうりで…な」


    ミカサ「どうしてエレンがここに…まさか!」


    エレン「憲兵団ってことはやっぱり……俺のこと知っているのか?」


    ミカサ「エレンが……憲兵殺しなの?」


    エレン「そう呼ばれてるらしいな…」


    ミカサ「嘘……」





    私とエレンの出会いは8年前。


    訓練兵団入団式のことだった。


  10. 10 : : 2018/05/04(金) 22:44:45
    期待!
  11. 11 : : 2018/05/06(日) 03:32:48
    >>10
    期待ありがとうございます!
    更新遅くなりますが頑張ります…
  12. 12 : : 2018/05/06(日) 09:26:38
    ミカサが憲兵のssは珍しいですね!
    期待!
  13. 13 : : 2018/05/07(月) 00:27:23
    >>12
    ありがとうございます!
    確かにそうですね!
  14. 14 : : 2018/05/07(月) 01:14:44



    8年前


    訓練兵団入団式


    エレンには特に突出した能力もなく、訓練兵の中でもあまり目立ってはいなかった。


    しかし、私はどこか彼に惹かれるところがあったのかもしれない。


    キース「貴様は何者だ!何しにここへ来た!」


    エレン「エレン・イェーガーです、奴らと戦うための力を身につけるためです」


    ミカサ(奴ら…?)

    キース「それは結構なことだ、精々死なないよう頑張るんだな」


    エレン「………」


    彼の瞳の奥には憎しみがあり、それが私と似ていたのかもしれない。












    入団式の後、知り合いもいない私はエレンの元へすぐに駆け寄った。


    ミカサ「あの……イェーガー、君?」


    エレン「…エレンでいい」


    ミカサ「分かった、エレン…私は…」


    エレン「ミカサ・アッカーマンだろ?」


    ミカサ「よく覚えてるね」


    エレン「その名前には少し覚えがあってな…」


    ミカサ(私の名前に他の覚えが…?)


    エレン「それより何か用か?」


    ミカサ「そうだった、エレンが入団式に言っていた奴らって…何?」


    エレン「は…?」


    ミカサ「あ…えーと、普通は巨人だと思うけど…エレンが言ったのは巨人ではないような……その…」


    エレン「………」


    ミカサ「…ごめんなさい」


    エレン「あ、いや……何でバレたのかって驚いてさ」


    ミカサ「!じゃあやっぱり…」


    エレン「ああ、俺は探しているんだ……両親を殺した奴らをな」


    ミカサ「両親って……エレンもなの!?」


    エレン「え…」


    ミカサ「私も幼い頃に両親を殺されて、その仇を取りたいって…」


    エレン「…じゃあ俺とお前は一緒だな」


    ミカサ「一緒…」


    それがどんな理由であれ、私はその言葉が嬉しかった。


    ずっと孤独に生きてきた私の中に、初めて生まれた希望だった。
















    訓練兵団に入団してから一年半、私とエレンの仲は友人でも親友でもなく、恋人にまでなっていた。


    エレン「ミカサ、今度の休日にでも隣町まで買い物に行かないか?もちろん二人で」


    ミカサ「!うん、行く」


    エレン「これから寒くなってくるし…マフラーでも買ってやるよ」


    ミカサ「嬉しい…私も何かエレンに買いたい」


    エレン「楽しみにしておく」


    こんなにも人と触れ合うのは楽しいことなのだと、復讐なんかも忘れて私はエレンとの楽しい日々を過ごした。


    しかし、そんな日々は続かなかった。










    エレンにマフラーを貰ったその日の夜、私は外で鳴り響いた爆発音のようなもので目を覚ました。


    慌てて外に飛び出すと、目の前には巨大な影が見えた。


    ミカサ(あれは……巨人!?)


    サシャ「何で巨人がこんなところにいるんですか!?」


    クリスタ「あの巨人がこっちへ来る前に皆逃げよう!」


    巨人「アアアァァァァアッ!!」


    ミカサ「!!」


    頭の中が痛む程の巨人の叫び声に思わず足が止まる。


    周囲にはサシャやクリスタが倒れている姿が見えた。


    ミカサ「サ…サシャ!クリスタ!」


    ミカサ(うう…頭が…!)


    遂には自分も立っていられなくなり、その場に倒れこんだ。





















    サシャ「ミカサ!ミカサ!」


    ミカサ「う…」


    サシャ「!良かった…目が覚めたんですね」


    ミカサ「!巨人は…!?」


    サシャ「巨人…?何言っているんですか?」


    ミカサ「え…?だってさっき巨人が…」


    サシャ「ミカサ寝ぼけてるんですか?ここは壁の中なんですから巨人なんて現れるわけないじゃないですか」


    ミカサ「え…」


    ミカサ(さっきからサシャと話が噛み合わない)


    目の前の兵舎は半壊した状態だった。


    しかし、その原因はサシャ曰く、何らかの故障による爆発だそうだ。


    誰一人として、巨人の姿を見た者も、そして…



    エレンの姿を見た者もいなかった。



    ミカサ「エレンは……どこ?」


    クリスタ「エレンは…もう…」


    ミカサ「嘘……嘘だ」


    目の前が真っ暗になった。


    そして、再び私の中にあの日からの復讐心が蘇った。


    ミカサ(私が仇を……あの巨人を、殺す!!)


    その日からの私は、「調査兵団」を目指し、日々鍛錬を積み重ね続けた。


  15. 15 : : 2018/05/07(月) 12:48:09
    期待デーす
  16. 16 : : 2018/05/07(月) 15:26:41
    期待です!
    憲兵団なのに調査兵団目指してたの!?
  17. 17 : : 2018/05/07(月) 22:51:41
    >>15
    ありがとうございます!

    >>16
    ありがとうございます!
    そうなんです!
  18. 18 : : 2018/05/08(火) 19:23:26
    頑張ってください!期待してます!
  19. 19 : : 2018/05/08(火) 20:43:08
    期待!
  20. 21 : : 2018/05/08(火) 22:03:41
    >>18
    ありがとうございます!
    頑張ります!

    >>19
    ありがとうございます!
  21. 22 : : 2018/05/08(火) 22:22:54



    エレン「そう…確かにお前は調査兵団にいたはずなんだ、それなのになんで憲兵に…」


    ミカサ「?」


    エレンが何やら呟いているようだが、あまりに小さい声で上手く聞き取れなかった。


    ミカサ「それより教えて、なぜエレンが生きているのか、憲兵を殺しているのか…」


    エレン「なぜ生きてるかって…死んでないからだよ」


    ミカサ「じゃあどうして私に何も言ってくれなかったの!?」


    エレン「お前を……助けるためだ」


    ミカサ「私を助ける…?」


    エレン「だけどそれはどうやら叶わなかったみたいだ、やはりアッカーマンの血が…」


    さっきからブツブツと呟くエレンの姿に不信感を覚える。


    ミカサ(何か……違う)


    あれから時も経ち、20歳になったであろうエレンはもちろん顔も身長もやや変わっているのは確かだ。


    だけど…


    ミカサ「あなたは……本当にエレンなの?」


    エレン「………」


    ミカサ「あなたが憲兵団のみんなを殺して…」


    エレン「ミカサ」


    ミカサ「え…?」


    エレン「そのマフラー、まだ大事にしてくれてたんだな」


    ミカサ「!!」


    エレン「最後に、俺がお前に渡したプレゼントだったよな」


    首に巻いているマフラーを握りしめる。


    このマフラーがエレンからの贈り物だということは、私とエレンしか知らない。


    ミカサ(エレンかもしれない……だけど…)


    力の抜けた身体から、一通の手紙が落ちる。


    エレン「ん?なんか落としたぞ」


    ミカサ「!それは…」


    手紙を拾ったエレンが、すかさず中身を広げる。


    エレン「こいつは……ベン?」


    ミカサ「!エレン、何か知っているの?」


    エレン「…まぁな」


    ミカサ「どうして?」


    エレン「どうしてって、そりゃ俺が……」


    ミカサ「俺が…?」


    エレン「………」


    エレンは何やら言いかけ、口を閉ざす。


    そして薄らと笑みを浮かべた。


    エレン「知りたいか?」


    ミカサ「え…?」


    知りたいに決まっている。


    この任務を達成できなければ、後からヒッチに何をされるか分かったものではない。


    ミカサ(それに、エレンの真相にも近づけるものがあるかもしれない…)


    まだ信じたくはない、エレンが人を殺しているなんて。


    だから私は、知らなくてはならない。


    今のエレン・イェーガーという男を。


    エレン「ただし条件つきな」


    ミカサ「条件?」


    エレン「俺と久し振りに、デートしてくれ」


    ミカサ「デート…?」



  22. 23 : : 2018/05/09(水) 07:41:59
    調査兵団にいたの!?
    期待です!
  23. 24 : : 2018/05/12(土) 00:45:03
    久しぶりにってことは、以前もしていたってことですね!
    期待です!
  24. 25 : : 2018/05/12(土) 00:47:45
    >>23
    >>24
    ありがとうございます!
    少し分かりにくいですが調査兵団にはいませんでした。デートは訓練兵時代に何度かしている設定です。
    明日には更新できるようにします!
  25. 26 : : 2018/05/12(土) 09:04:51
    はい!
    楽しみにしてます!
  26. 27 : : 2018/05/12(土) 11:18:46
    期待してます!頑張ってください!
  27. 29 : : 2018/05/12(土) 23:32:23
    >>26
    >>27
    ありがとうございます!
  28. 30 : : 2018/05/13(日) 00:06:27

    今日は久々の休日。


    私は鏡の前に立ち、自らの服装を眺める。


    ミカサ(私服なんて何年振りだろう…)


    男の人と出かけることなど、訓練兵時代にエレンと一緒に行った時だけ。


    憲兵団になってからも誘ってくるような男性は何人もいたが、私の性格を知って自然と離れていった。


    この服も何年も前に購入したものだ。


    ヒッチ「あんた、どうしたの…?」


    普段と違う私の姿に、ヒッチは驚きの表情を見せる。


    ヒッチ「ミカサがそんなにオシャレするなんて、もしかして男ができたの!?」


    ミカサ「………」


    ヒッチ「やっとねぇ…でも、あんたを選ぶなんて物好きもいるものなんだね」


    ミカサ「ねぇ、ヒッチ」


    ヒッチ「な、何よ…急に改まって」


    ミカサ「お願いがあるのだけど…」
























    約束をしていた広場に、エレンの姿はあった。


    エレン「よっ」


    ミカサ「………」


    ずっと会いたかった人。


    こんな日がまた来ればいいと、ずっと求めていた。


    けど、私は素直に喜ぶことができない。


    エレン「てかお前、その服訓練兵の時に着てたやつじゃねぇか!」


    ミカサ「え…うん、そんなに服を持っていても仕方ないし」


    エレン「もう少し身だしなみにも気を遣えよ、綺麗なんだからさ」


    ミカサ「………」


    エレン「ほら早く行こうぜ、今日はミカサの新しい服を買おう」


    ミカサ「……うん」


    嬉しい、本当は嬉しくて仕方がない。


    エレンの言葉一つにこんなにも鼓動が早まって、手を繋ぐだけで顔が熱くなって。


    ミカサ(私はやっぱりエレンが好き……でも)


    エレン「今日はミカサの好きな所、全部行こうな」


    ミカサ「…エレン」


    エレン「ん…?」


    ミカサ「どうして…」


    ミカサ(どうして皆、殺したの?)


    あなたは、こんなにも変わっていないのに。














    ミカサ「デート…?」


    エレン「ああ」


    あの日、エレンと一緒に出かける約束をした時のこと。


    エレンはベン・ワーグナーを知っている。


    そして、消息した原因も。


    エレン「一日だけでいい、そしたらベンのことを教える」


    ミカサ「本当…?」


    エレン「俺がお前に嘘ついたことがあるか?」


    ミカサ「………」


    エレンが憲兵殺しなのは多分間違いない。


    憲兵殺しは身元不明者(少なくとも兵団には属していない)であり、何よりの特徴は兵士でないにもかかわらず"立体起動装置"を装備していること。


    あの日、私と再会したエレンの腰には確かに立体起動装置があった。


    そしてあの場所は、あの日憲兵団が憲兵殺しが位置する場所として限定していた場所。


    ミカサ「…分かった、今度の休日に」


    エレン「!…おう!」


    ミカサ(私は知りたい…本当にエレンが殺したのか、もしそうだとすればエレンを捕らえるのは私でなくてはならない…)


    だから私は、エレンの提案を受けることにした。


    このチャンスのために。


  29. 31 : : 2018/05/13(日) 01:54:41
    期待です!
    ベン・ワグナーってトーマスの…?
    ミカサはなんで探してる?の?
  30. 32 : : 2018/05/13(日) 22:23:51
    期待です!!!
  31. 33 : : 2018/05/14(月) 23:04:14
    >>31
    ありがとうございます!
    またもややこしいですが、オリキャラなので関係ありません笑
    なぜ探しているかは>>9辺りをご覧下さい!

    >>32
    ありがとうございます!
  32. 34 : : 2018/05/14(月) 23:32:39


    エレンとの約束のデート。


    この日のエレンは不自然なほどに、前のエレンそのものだった。


    エレン「昼飯、何食いたい?」


    ミカサ「エレンが好きなものでいい…」


    エレン「ミカサの答えは変わらないな……よし、肉にしよう!金は全部俺が出すから」


    ミカサ「え…!さすがにそんな高いものをエレンだけに…」


    エレン「遠慮するなって」


    この時間が始まってから、エレンはずっとこんな調子だ。


    「好きな服買ってやる」とか、「食いたい物があったらいつでも言え」とか…。


    ミカサ「そもそも、どこからそんなお金が…」


    今まで殺してきた人から奪った、そんな考えが浮かぶ。


    ミカサ「兵士もやめたみたいだし…」


    エレン「そんなの普通に働いてるに決まってるだろ?」


    ミカサ「でもエレンは憲兵に…」


    エレン「俺は憲兵に顔も見られてないし、身元を知られることもない…それに、色んな人に助けられてる」


    ミカサ「………」


    かつて私とエレンは似た者同士だった。


    それ故、唯一互いの考えを理解し合える仲であり、救いでもあった。


    でも今のエレンは私ではない、多くの人によって支えられている。


    ミカサ(私は、何がしたいのだろう…)


    エレンを捕らえて、償わせたい?


    それとも以前のように、恋人に戻りたい?


    ミカサ「エレン」


    エレン「どうした?」


    ミカサ「手……繋いで」


    エレン「え…?」


    エレンの驚いた顔を見つめる。


    再会してから一度も見せなかった顔。


    エレン「……わかった」


    エレンが私の手を握る。


    その瞬間、素早くその手を引き、エレンの身を自らの身体に寄せる。


    そして、そっと口づけをする。


    エレン「!!ミカサ…何やって…」


    ミカサ「エレン、私……やっぱりあなたが好き」


    エレン「!!」


    ミカサ「だから一緒に逃げよう……憲兵団にも、誰にも見つからないような場所へ…」


    エレン「………」




























    二人の視界の外、その物陰に私はいた。


    ヒッチ(何やってるのよ…あの二人)


    人通りの多い道のど真ん中で唇を重ねる二人を眺めながら、本当にミカサに彼氏がいることに驚く。


    それと同時に、ここへ来る前にミカサに言われた言葉を思い出す。




    数時間前


    ミカサ「お願いがあるのだけど…」


    ヒッチ「あんたがお願いなんて珍しいね、聞くだけ聞いてあげる」


    ミカサ「今日…私はここを去るかもしれない、そしたら私を殺されたことにして欲しい」


    去る…?殺されたことに…?


    ミカサの言っていることは冗談にしか聞こえない、しかしその表情は真実を表しているも同然だった。


    ヒッチ「何言ってんのあんた…それにまだベンも見つかってないじゃない、見つけなかったらあんたのお願いも…」


    ミカサ「ベンについてはアテがある」


    ヒッチ「え…?」


    ミカサ「だから…お願い…」


    ヒッチ「………」







    ミカサが一体何をするつもりかは分からない。


    ヒッチ(けど、あんなこと言われたら気になるに決まってるでしょ!)
  33. 35 : : 2018/05/15(火) 16:03:47
    ちゃんと見てなかった…!
    ありがとうございます!
    期待です!
  34. 36 : : 2018/05/16(水) 22:15:36
    きたぃー
  35. 37 : : 2018/05/16(水) 22:51:47
    >>35
    >>36

    ありがとうございます!
    明日には更新します!
  36. 38 : : 2018/05/17(木) 23:51:42



    私の言葉にエレンは一瞬迷いを見せたが、すぐに澄ました表情に戻ってしまう。


    エレン「ダメだ」


    ミカサ「どうして?なぜエレンはそんなことをしなければならないの…?」


    エレン「俺には、やらなきゃならないことがあるんだ…」


    ミカサ「それって?」


    エレン「……言えない」


    ミカサ「どうして!?」


    エレン「前にも言ったけど、これはお前を守るためでもあるんだ!」


    真剣な眼差し。


    厳しい表情。


    全て、エレンと出会ってから一度も見たことがない。


    ミカサ(なんで……私ではエレンの力になれないの…?)


    ミカサ「私が……憲兵団だから?」


    エレン「違う」


    ミカサ「エレンはきっと憲兵団を恨んでいる…だから憲兵団に入った私を許せない…」


    エレン「そんなことない!俺はずっと前からお前のことを…」


    何かを言いかけ、口を閉ざす。


    そして、悲しげな眼で私を見つめる。


    エレン「お前じゃなかったら…」


    ミカサ「え…?」


    エレン「ちょっと手洗い行ってくる…」


    ミカサ(私じゃなかったら…?)


    なぜそんなことを言ったかは分からない。


    ただ、私とエレンが共に生きていくという選択肢はもうないのかもしれない。


    ミカサ「どうして…」


    周りに気づかれないよう、私はそっと涙を流した。


    ミカサ(あの頃に戻れたら…)































    ミカサを尾行して約3時間。


    連れの男が姿を消した。


    男が去っていくと同時に、ミカサが泣いているのが分かる。


    ヒッチ(さっきも言い争いしてたみたいだし、別れでも言われたところかな…)


    尾行にも満足し、立ち去ろうとしたその時、背後から腕を強い力で掴まれ、動きを封じられる。


    ヒッチ「だ…誰!?」


    エレン「あんたは…憲兵団のヒッチ・ドリスだな」


    ヒッチ「何で私のことを…」


    辛うじて相手の姿を見ると、それは先程までミカサの隣にいた男だった。


    エレン「そんなことはどうでもいいだろ」


    ヒッチ「なんでここに…!」


    エレン「君に少し頼みごとがあるだけだ」


    ヒッチ「頼みごと…?」


    エレン「ミカサと同じ班、部屋の君にしか頼めないことだ」


    目的のためには手段を選ばないといったような冷たい視線。


    その視線には、決して抗うことができなかった。


    __________

















    エレンを待っていた。


    だが彼の姿は一向に見えない。


    ミカサ(エレン……もしかして、私があんなことを言ったから…)


    やがて、エレンの代わりに一人…


    ミカサ「ヒッチ!?どうしてここに…」


    ヒッチ「これ…」


    ミカサ「手紙…?」


    ヒッチが差し出してきたのは一通の手紙。


    中にはメッセージと共に、地図とある者の情報が書かれていた。


    ミカサ(ベン・ワーグナー…!)


  37. 39 : : 2018/05/18(金) 22:57:47
    期待です!!
  38. 40 : : 2018/05/21(月) 07:30:28
    >>39
    いつもありがとうございます!
    更新ゆっくりですが、これからも見ていただけると幸いです^ - ^
  39. 41 : : 2018/05/22(火) 23:49:43



    ミカサ(この手紙…差出人はエレン!)


    ミカサ「どうしてヒッチがこれを持っているの?」


    ヒッチ「ミカサに渡してって頼まれたから」


    ミカサ「エレンが?」


    ヒッチ「そう」


    ミカサ(どうして…)


    手紙を開き、その中の文に目を通す。





    ミカサ



    お前を巻き込むわけにはいかない


    最後にお前に会えて良かった



    エレン





    文はたったこれだけ。


    ミカサ(巻き込むわけにはいかないって……エレンは一体何をしているの?)


    ヒッチ「それよりこれ…」


    ミカサ「うん」


    手紙と共に同封されていたベンの情報を取り出し、目を通す。


    ミカサ「この地図……至る所に印がついている」


    ヒッチ「見るからに全部普通の家みたいだけど…」


    ミカサ「それにこの地図……」


    見覚えのある地形。


    この地図は今私たちがいる土地ではなく、ここから遥か離れた私のもう一つの故郷、シガンシナを表す地図だった。


    ミカサ(シガンシナに一体何が…)


    ヒッチ「もしかしたらここにベンの手がかりがあるのかも」


    ミカサ「うん…行こう」


    早速馬を調達し、私たちはシガンシナ区へと向かった。

























    シガンシナに着いた頃には既に日が落ち、辺りは真っ暗になっていた。


    ヒッチ「取り敢えずどこか宿を貸してもらわないと…」


    ミカサ「待って」


    ヒッチ「何よ……既にクタクタなんだけど…」


    ミカサ「この印、ここから近い」


    ヒッチ「もしかして今から行く気?」


    ミカサ「………」


    ヒッチ「………行くなら一人で行ってちょうだい、私はちょっと休憩…」


    ミカサ「…分かった」


    腰をかけるヒッチを置いて、私は印のついている家まで馬を走らせた。




    数分で目的地に到着した。


    だがそこは見るからに普通の一軒家。


    ミカサ(ここに一体何が…)


    恐る恐る家のドアをノックする。


    ミカサ「憲兵団の者ですが、お話よろしいでしょうか?」


    そう言うと慌ててこちらに向かってくる足音が響き、すぐに扉が開く。


    ???「は、はい…何かご用でも…」


    ミカサ「!!」


    家の住人と思われる男。


    私はその男とはもちろん初対面だ。


    だが私にはすぐにその男が誰なのか分かった。


    ミカサ「ベン…ワーグナーさん…?」


    ベン「え…?」


  40. 42 : : 2018/05/23(水) 16:10:56
    期待です!
    いつでも見ます!
  41. 43 : : 2018/05/25(金) 08:04:41
    >>42
    ありがとうございます!



    更新できるだけ早くします
  42. 44 : : 2018/05/25(金) 09:01:20


    ミカサ「どうしてあなたがここに!?」


    ベン「どうしてって……ここは私の家ですよ?」


    ミカサ(どういうこと…?)


    資料ではベンの自宅はウォール・シーナ内に存在する。もちろん実家もだ。


    シガンシナに家を持っているなど、どこにも記載されていなかった。


    それに行方不明と言われていたのに、ここで当たり前のように過ごしている。


    ベン「あの…立ち話もなんですし、中に入ってください」


    ミカサ「……あ、ありがとうございます」


    ベンに招かれ家の中に入る。


    リビングは広く、二階に続く階段も見え、とても一人で暮らしているとは思えないほどの広さだ。


    ミカサ「こんな広いのに…一人で住んでいるのですか?」


    ベン「いえ、妻と娘と三人で暮らしています」


    ミカサ「家族がいるのですか!?」


    ベン「え、ええ…」


    ミカサ「………」


    もう訳が分からなかった。


    行方不明となっていた男は、シガンシナで普通に暮らし、家族を作り平凡に暮らしていた。


    ミカサ(どうして見つからなかったのだろう…)


    確かに、憲兵団がこのウォール・マリアまで捜索に来ることは少ない。


    さらに、こちらの民家となれば全て駐屯兵団に任せてしまうだろう。


    ミカサ(でも今回のような捜索依頼だったら駐屯兵団にも回っているはずなのに…)


    ベン「あの…何か難しい顔をしていますが、私に何か聞きたいことがあったのではないですか?」


    ミカサ「!」


    ベン「私が何かしたのであれば……今は妻も娘もいないですし」


    ミカサ「……そうではないのですが…」


    ベン「では…何が」


    ミカサ「あなたは……西区に所属していた憲兵団、ベン・ワーグナーさんですよね?」


    ベン「私が憲兵団?そんなわけが…」


    ミカサ「一ヶ月前、あなたは行方不明となり、家族から捜索依頼が来たのです」


    ベン「その…私が憲兵団と言ったり、行方不明になったとか……何も身に覚えがないのですが…」


    さっきから話の辻褄が合わない。


    似たような感覚を、訓練兵の時にも感じたことがある。


    あの巨人が現れた時に。


    ミカサ(ベンさんは……記憶を失っている!)



























    ヒッチが待っているであろう場所まで馬を引っ張りながら歩く。


    ミカサ(………)


    あの後、ベンさんを連行しようと思ったが、連れて行くことはできなかった。






    ベン「前の私にどんな事情があろうと、今の私にももう大事な家族がいるんです…」


    ベン「妻には前夫がいます、しかしあまりにも酒癖が悪く、娘を連れて出て行ったそうです」


    ベン「私は……妻にもう悲しい想いはさせたくないんです」


    ミカサ「……分かりました、しかしいずれは…」


    ベン「はい……必ず、そちらの家族にもお会いします」




    不可解な点はいくらでもある。


    ベンは、今の妻とはもう長い付き合いをしていると言っていた。


    しかし、ベンが行方不明となったのは僅か一ヶ月前。


    とても長いとは思えない。


    ミカサ(まさか…他の人の記憶までもが…!?)


    今回の情報を頭で整理しながらも、"後ろをついてくる奴"を警戒する。


    ミカサ「………」


    足音がだんだんと早くなり、やがて相手は私に襲いかかってくる。


    ミカサ「………」


    ???「は…?」


    それを華麗に避けた私に、相手は間抜けな声を上げる。


    そのまま床に倒れこむが、すぐに立ち上がる。


    ???「お前…気づいてやがったのか!?」


    ミカサ「………」


    ミカサ(分かりやすかったし…)


    ???「クソ……お前憲兵団だろ?どうしてあいつの家が分かった!」


    ミカサ「……あなたには関係ない」


    ???「じゃあ……このまま帰すわけにはいかねーな」


    相手は私を殺しにくるような気迫を見せる。


    しかし、私はただそこに突っ立っているだけだった。


    ???「おいおい、いいのか?そんな突っ立ってるだけで」


    ミカサ「あなたは……エレンの仲間でしょ?」


    ???「え…?」


    出会ってから二度目の間抜けな声。

  43. 45 : : 2018/05/25(金) 18:03:33
    期待です!
  44. 46 : : 2018/05/28(月) 01:20:18
    >>45
    中々顔を出さずに本当に申し訳ないです…
    明日更新します!
  45. 47 : : 2018/05/28(月) 23:02:38



    ???「お前……エレンを知っているのか?」


    ミカサ「元訓練兵同期、それとエレンが今憲兵団と何かしようとしていること…」


    ミカサ(元恋人だったことは言っても仕方ない…)


    ???「憲兵団のお前がそれを…?」


    ミカサ「私はエレンの力になりたい!エレンの場所を知っているなら教えてほしい」


    ???「いいや信用できない、取り敢えず拘束して…」


    ミカサ「手紙」


    ???「え…?」


    ミカサ「この手紙、見て」


    男は手紙を受け取り、その文に目を通す。


    ???「エレンの字だ、それにこの地図…」


    ミカサ「わかってもらえた?」


    ???「お前、ミカサっていうのか?」


    ミカサ「?ええ」


    ???「エレンがよく話してたよ……まぁいい、案内してやるよ」


    ジャン「俺はジャン、一応エレンの仲間だ…よろしくな」


    ミカサ「よろしく、ジャンさん」


    ジャンと名乗るその男は、先程とは全く別人のように快く接してくれた。


    拠点は意外にもこの近くにあるらしい。


    ジャン曰く、「灯台下暗しってよ」らしい。


    ミカサ(それにしても…エレンが私のことを話していたって、一体どんな話をしていたのだろう)




    拠点まではまだ時間がかかるとのことだったので、私は早速聞いてみることにした。


    ミカサ「あの、ジャンさん」


    ジャン「ジャンでいいって」


    ミカサ「ジャン、さっきエレンが私の話をしていたと言っていたけれど…一体どんなことを言っていたの?」


    ジャン「そうだな、まずエレンとお前が恋人だったことは聞いている」


    ミカサ(まずでそれなのか…)


    ジャン「まぁ惚気話しばっかだったよ、俺の元恋人は世界で一番可愛いとか平気で言ってよ」


    ミカサ「ええ!?」


    私の前ではそんな雰囲気を見せたことなど一度もない。


    そんなことを思っていたことも初耳だ。


    ミカサ(でも嬉しい…)


    ジャン「でも確かに、実物見てみると可愛い…ってか綺麗…だな」


    ミカサ「ありがとう」


    ジャン「平然としてるな…」


    ジャン(それもそうか…)


    ミカサ「あとはどんなことを言っていたの?」


    ジャン「あとは……ミカサが凄く強いって言ってたな」


    ミカサ「もちろん、私にはやらなくてはならないことがある」


    ジャン「エレンと似ているな…」


    ミカサ「そう……だといいけれど…」


    ジャン(…?)


    ジャン「とにかく、エレンはミカサよりも強くなって、いつかお前を守れるようになりたいんだとさ」


    ミカサ「エレン…」


    正直、エレンが私のことをここまで想っていてくれていたことは予想外だった。


    恋人だった頃も、私ばかりエレンにくっついて、エレンから寄ってきてくれることは少なかった。


    ミカサ(照れ隠し、だったのかな…)


    何よりも嬉しかったのは、


    離れていても、私たちの心は繋がっていた。


    ミカサ(私たちは、互いを守るためにここにいる…!)
  46. 48 : : 2018/05/30(水) 19:25:42
    期待です!!
  47. 50 : : 2018/05/30(水) 23:59:58
    >>48
    いつもありがとうございます!
  48. 51 : : 2018/06/02(土) 00:41:27


    ジャン「ここだ」


    ミカサ「ここは…?」


    ミカサ(店?)


    ジャンが指差すのは一見して普通の店。


    ここが例の「憲兵殺し」の拠点だと言われても信じがたい。


    ジャン「この辺じゃ少し有名な喫茶店なんだ、こんなんじゃ例え余所者が俺たちのことを口外したって到底信じられないだろ?」


    ミカサ「確かに…」


    今の労力の少ない憲兵団では、ここを隅々まで調査するには至らないだろう。


    ミカサ(ベン・ワーグナーだって…)


    ジャンが店の扉を開く。


    私はやや警戒しながらその背後に隠れる。


    ジャン「よぉ」


    エレン「いらっしゃい……ってジャンかよ」


    ジャン「なんだ、ちゃんと仕事してたんか」


    エレン「邪魔しに来ただけなら帰れよ…」


    ジャン「まぁまぁ、今日はお前に客を連れて来たんだ」


    エレン「客?」


    ミカサ「エレン!!」


    エレンの声が聞こえてくると、私はすぐに彼の身体に飛びついた。


    そして強く抱きしめる。


    エレン「なっ…!ミカサがどうしてここに!?」


    ジャン「俺が連れて来た」


    エレン「はぁ!?お前…!」


    エレンの表情が一気に怒りへと変わる。


    するとエレンはすぐに私を引き剥がし、扉の外へと追いやる。


    ミカサ「エレン…?」


    エレン「お前は今すぐ帰れ」


    ミカサ「ど、どうして!?」


    エレン「お前はここにはいちゃいけないんだ!」


    ジャン「いいやエレン、ミカサにはここにいてもらうぞ」


    エレン「っ…!」


    ジャン「ミカサは……アッカーマンなんだろ?」


    ミカサ(どういう…こと?)


    エレンが帰れと言ったり、ジャンがここに残すと言ったり。


    アッカーマンだからなど。


    ミカサ「エレン、どういうこと?アッカーマンと…何の関係があるの?」


    エレン「………」


    ジャン「お前……何も話してないんだな」


    エレン「…話せるわけないだろ」


    ジャン「はぁ…、それでもお前が一番愛した女なんかよ」


    エレン「だから、だ」


    ミカサ「………」


    二人の言っていることが何一つ理解できないまま、私はただ二人の口論を聞いているだけだった。


    やがて、エレンの方が諦めたように深いため息をつき、私に向き直った。


    エレン「ミカサ…すまない、お前を巻き込むことになってしまうかもしれない…」


    ミカサ「大丈夫、元より私はそのつもり」


    エレン「そうだったな、けどずっとここにいたら兵団にも怪しまれるだろうし今日は本当に帰ってくれ、細かいことはまた今度」


    ミカサ「うん」
























    ミカサ(また今度…)


    兵舎に戻ると、部屋ではヒッチが心配したように私のことを待っていてくれた。


    人を心配するような人ではなかったが、最近はやけに私のことを気にかけてくれているようだ。


    ベッドに横になりながら、私は今日の帰り際のことを思い起こしていた。




    エレン「ミカサ」


    帰ろうとする私をエレンが呼び止めた。


    エレン「ありがとう」


    そう言うエレンの顔は嬉しそうで、どこか哀しそうで、私はもう一度エレンの体を抱きしめた。


    ミカサ「大丈夫…」


    エレン「……ああ」


    ミカサ(今の私では、これが精一杯…)


    冷酷にこの残酷な世界を生きていくことしか考えていなかった私が、今はエレンのことばかりになってしまっている。


    平和に溺れた私は、影に潜む視線に気づくことなどできなかった。

  49. 52 : : 2018/06/04(月) 20:40:58
    期待です!!
    ミカサに危険が!?
    エレン!守ってあげるんだ!
  50. 53 : : 2018/06/04(月) 23:10:03
    >>52
    ありがとうございます!
    果たしてどうでしょう
  51. 54 : : 2018/06/04(月) 23:50:30


    コンコン


    部屋の扉を叩く音がする。


    就寝時間はとっくに過ぎ、皆寝ているであろうと思えるこの時間に訪問してくる人など普通はいるはずがない。


    幸い、私は寝付くことができなかったので対応することができた。


    ミカサ「はい…」


    重い身体を起こし、開いた扉の先には憲兵の上官デニスの姿があった。



    デニス「おお、悪い……起こしちまったか?」


    ミカサ「いえ…それより何か」


    デニス「いやちょっと…お前に用があってな」


    ミカサ「私に?」


    デニス「ちょっといいか?」


    そう言って部屋から出るように催促してくる。


    後ろ目でヒッチを確認すると、起きる様子はなく、私は一人でついて行くことにした。




    デニス「お前は確か、104期の訓練兵だったな?」


    ミカサ「はい」


    デニス「同期にエレン・イェーガーという男がいたと思うが、随分親しかったようじゃないか」


    ミカサ「はい…」


    上官が私と何について語りたいのか分からないまま、私はただ相槌をうつ。


    だが、ふとあることに気がついた。


    ミカサ「……上官は、なぜ私が彼と親しかったことをご存知なのですか?」


    デニス「なぜって……お前の他の同期に聞けば分かることさ、訓練兵で恋人同士になるってのも珍しい話だからな」


    ミカサ「……なぜ嘘をつくのですか?」


    デニス「嘘…だと?」


    ミカサ「はい、なぜなら同期で私とエレンが親しかったということを知っている人はいないからです」


    デニス「は…?何を言っているんだ?そんなわけないだろう…」


    知っているはずがないのだ。


    あの時、私の目の前で巨人が現れた日から、私と周りの人間との記憶の辻褄が合わなくなっていった。


    最初は巨人の姿を見たか見ていないか、それだけだった。


    だが、次第に訓練兵全ての人間から"エレンに関する記憶"が全てが消え去り、私だけがエレンを覚えていた。


    まるで、エレンが夢の中の人だったかのように。


    ミカサ(…とにかく、彼が私とエレンの関係を知る術はないはずだ…それなのに…)


    ミカサ「どうしてあなたはエレンを知っているのですか?」


    デニス「………」


    ミカサ「もしかして、エレンを…!」


    デニス「……残念だが、君を生かしておくことはできないんだ…」


    デニスは隠し持っていた刃物を取り出し、瞬時に私に斬りかかってきた。


    咄嗟のことに対応が遅れた私は、ただ刃が向かってくるのを待つのみだった。


    デニス「君はとても優秀な奴だったよ!だがとても残念だ!」


    ミカサ「っ…!!」




    瞬間、刃物が身体を切り裂く音が響く。


    視界が赤く染まっていく。


    だが、私は痛みも何も感じていない。


    ミカサ(…!!)


    ミカサ「そんな…」


    目の前には、刃物で突き刺されてもなお、相手を取り押さえ続けるヒッチの姿があった。


    ミカサ「ヒッチ!!」


    ヒッチ「ミカサ……逃げて、私は…この身に変えてもミカサを守らなくちゃならない…」


    ミカサ「な…何を言って…」


    ミカサ(この身に変えても、私を守る?)


    デニス「この女…!」


    ヒッチ「早く…!!」


    ミカサ「……ごめんなさい」


    私はそのまま逃げ、ることはなく男に摑みかかる。


    ヒッチ「な…!」


    ミカサ「二人でなら!」


    思い切り投げ飛ばすと、デニスは気絶したのかそのまま動かなくなった。


    私は倒れたヒッチを抱え、離れた場所で話を聞くことにした。





    ヒッチ「痛い…」


    ミカサ「………」


    正直言ってしまえば、彼女はもうダメだ。


    でも彼女には聞かなくてはならないことがある。


    ミカサ「どうして、私を守らなくてはいけないの?」


    ヒッチ「……私の、やらなくちゃいけないことだから」


    ミカサ「どうして!?そんなにまでなって…」


    ヒッチ「………彼」


    ミカサ「え…?」


    ヒッチ「ミカサの彼に……そんなこと言われた、かも…」


    ミカサ「エレンが!?どうして……」


    質問を聞く前に、ヒッチの呼吸は既に止まっていた。


    ミカサ「………」


    聞かなくてはならない。


    どうしてエレンが何をしたのか、どうしてヒッチが死ななくてはならなかったのか。




    ヒッチを抱え、私はもう一度歩き出した。

  52. 55 : : 2018/06/08(金) 12:48:59



    ドアをノックするとエレンはすぐに出てきた。


    だが、エレンは真っ赤に染まったヒッチの姿を見ても眉一つ動かさなかった。


    エレン「…まぁ入れ」


    しかし私は一歩も足を踏み入れない。


    今の私には、この人を信用していいのか分からなかったから。


    ミカサ「どうして…」


    エレン「え…?」


    ミカサ「ヒッチに何をしたの?」


    エレン「………」


    エレンは私と目を合わせず、遠くを見つめる。


    何か隠したい時の、いつもの癖だ。


    ミカサ(やっぱり…)


    ミカサ「私を守れって……そう言ったんでしょ?」


    エレン「…そうだ」


    ミカサ「どうやって?何よりも自分が大事だったヒッチがどうしてあんなに…!」


    エレン「分からないか?」


    ミカサ「………」


    分かっている。


    訓練兵の時、ベン・ワーグナー、そしてヒッチ、彼らの言葉一つ一つがその答えを示している。


    ミカサ(信じられない…信じたくない、でも…)


    ミカサ「あなた自身で、答えて」


    エレン「………」


    エレンは覚悟したように息をそっと吐き、口を開く。


    エレン「記憶を……改竄させてもらった」


    ミカサ「記憶の…改竄、本当にそんなことが…」


    エレン「ミカサもそう思っていたんだろ?」


    ミカサ「………」




    訓練兵同期の皆から消えた巨人とエレンの記憶。


    ベン・ワーグナーから消えた憲兵の記憶と、新たなに生まれた家族との記憶。


    そしてヒッチの、私を守らなくてはいけないという記憶。


    ミカサ「どうしてそんなことができたの?こんな……人の意志を、人生を狂わせるようなことが…」


    エレン「…俺には、やらなくではならないことがある」


    ミカサ「その為なら他の人がどうなってもいいの…?」


    エレン「……そうだ」


    ミカサ「っ!」


    エレンの頬を思い切り叩く。


    ミカサ「あなたは……最低だ」


    そのまま私はエレンの元から走り去っていく。


    行くあてなどない。


    けど、あんなエレンはもう二度と見たくはなかった。




    ジャン「いいのか?追わなくて」


    エレン「………」


    ジャン「…たく、お前はもう少し自分のために生きてもいいと思うだけどな」


    エレン「……もう俺は、自分のために生きるのはやめたんだ」


    エレン(何人もの人生を……俺は奪ってきたのだから)




  53. 56 : : 2018/06/08(金) 23:19:15
    期待です!
  54. 57 : : 2018/06/10(日) 21:58:13
    >>56
    ありがとうございます!
  55. 58 : : 2018/06/14(木) 22:49:40



    ジャン「おい!」


    ミカサ「………」


    ジャン「待てって!」


    ミカサ「っ!」


    ジャンに腕を思い切り掴まれ足を止められる。


    ただ涙は見せまいと顔を懸命に背ける。


    ミカサ(悔しい……どうして、こんなに悲しいの…)


    エレンに裏切られて、私から見限ってやろうとしたのに。


    追ってきてくれたのがエレンでは無かったことに私はショックを受けている。


    ジャン「なぁ、少し話を聞いてくれないか?」


    ミカサ「……嫌」


    ジャン「お前はこのままでいいのかよ」


    ミカサ「いいわけがない!」


    ジャン「!」


    私の人生の全ては、復讐とエレンのためにあった。


    それが無くなればそれは死と同等とも言える。


    ミカサ「でも……エレンはそうじゃない、皆の…私たちの記憶を…」


    ジャン「私たち…?」


    ミカサ「私は…エレンにとってただの駒、思い通りに操る人形のよう…」


    ジャン「じゃあ何でお前はエレンのことを覚えているんだ?」


    ミカサ「え…?」


    ジャン「答えは一つ、エレンはお前の記憶を改竄できない」


    ミカサ(改竄…できない?)


    ミカサ「それじゃあ私は…」


    ジャン「お前はエレンの駒じゃない、それにエレンのしたことは全てお前のためにやっていることと言っても過言じゃない」


    ミカサ「私のため…?じゃあ、私のためにエレンは人を殺してきたって言うの!?」


    ジャン「人を殺した…?お前……本気で言ってるのか?」


    ミカサ「どういう…こと?」





























    本当は彼女を追って全てを理解して欲しかった。


    でもそんなことは許されないことだ。


    彼女に否定されること、それこそが俺の罪に対する罰。



    ミカサ「エレン」


    ここには居ないはずの彼女の声が聞こえる。


    エレン(ついに幻聴まで…)


    そう思っていた時、


    ミカサ「エレン」


    もう一度呼ばれてから、それが本物のミカサであることを理解するまでには時間がかかった。


    エレン「ミカサ……どうしてここに?」


    ミカサ「ジャンから全て聞いた」


    エレン「!」


    ミカサ「ずっと一人で、苦しかったでしょ?」


    エレン「苦しくなんて…ない」


    ミカサ「嘘」


    エレン「今まで俺が苦しめてきた人たちに比べれば…」


    ミカサ「これ以上、私に嘘はつかないで」


    エレン「………」


    君はいつもそうなんだ。


    だから、好きで堪らないんだ。

  56. 59 : : 2018/06/15(金) 16:41:26
    期待です!
  57. 60 : : 2018/06/18(月) 23:03:18
    >>59
    ありがとうございます!
  58. 61 : : 2018/06/18(月) 23:39:05



    それから俺は今までのこと全てをミカサに話した。


    最初は抵抗があった、けど…




    ジャン「お前だけカッコつけんなよ、罪を背負ってんのはお前だけじゃねぇ」


    エレン「でも…」


    ジャン「グダグダうるせぇな、とにかくこれは俺からの一生の頼みってやつだ」


    エレン「お前が俺に頼みごとをするなんてな…」


    ジャン「まぁ…な、どうだ?」


    エレン「…仕方ない、一生の頼みだからな」







    俺はミカサに話し始めた。


    全てが始まった、あの日のことを…



    10年前


    突然父は俺を森の奥へと連れ出した。


    そこからはあまり覚えてはいないが、目が覚めた時には俺は独りきりだった。


    怠い身体を引きずり、家に戻ってみればそこは炎の海となっていた。


    俺はただただ眺めることしかできなかった。


    父親は見つからず、持ち運ばれた母親の死体を、俺は憎しみと共に焼き付けた。









    月日が経ち、記憶を改竄する能力を知った俺は、その力で両親の事故を隠蔽したのが憲兵団だということを知った。


    そして片っ端から資料を漁り、もう一つの隠された事実を知った。


    エレン(アッカーマン…?)


    憲兵団から重要監視人物と指定されている人物。


    その人物が今期に訓練兵に志願するという情報を得た俺は、それを追うように訓練兵に志願した。











    ミカサ「あの……イェーガー、君?」


    エレン「…エレンでいい」


    エレン(まさか…そっちから来るとはな…)


    ミカサ「分かった、エレン…私は…」


    エレン「ミカサ・アッカーマンだろ?」


    ミカサ「よく覚えてるね」


    エレン「その名前には少し覚えがあってな…」


    彼女自身に何か特別な何かがあるようには思えなかった。


    エレン(なぜこんな子が重要監視人物に…?)


    エレン「それより何か用か?」


    ミカサ「そうだった、エレンが入団式に言っていた奴らって…何?」


    エレン「は…?」


    ミカサ「あ…えーと、普通は巨人だと思うけど…エレンが言ったのは巨人ではないような……その…」


    エレン(何が…言いたいんだ!?)


    俺の考えを悟られたのかと、内心焦りを感じた俺は声を発することもできなかった。


    エレン「………」


    ミカサ「…ごめんなさい」


    エレン「あ、いや……何でバレたのかって驚いてさ」


    やっと出たのはこんな言葉だった。


    ミカサ「!じゃあやっぱり…」


    エレン「ああ、俺は探しているんだ……両親を殺した奴らをな」


    挑発だった。


    ここまで言って、何かしら反応を見せれば記憶を書き変える。


    そんな軽い気持ちだった。


    しかし…


    ミカサ「両親って……エレンもなの!?」


    エレン「え…」


    ミカサ「私も幼い頃に両親を殺されて、その仇を取りたいって…」


    何でお前が…と、そう思った。


    だが俺の中で彼女と何かが繋がった。


    彼女は憲兵団に所属する者でもなんでもない、俺と同じ。





    エレン「…じゃあ俺とお前は一緒だな」


    ミカサ「一緒…」

  59. 62 : : 2018/06/19(火) 15:57:15
    期待ですます!
  60. 63 : : 2018/06/25(月) 00:14:57
    >>62
    ありがとうございます!

    いつもながら遅い更新です…
  61. 64 : : 2018/06/25(月) 00:49:55




    それからというもの、ミカサは常に俺の隣を歩くようになっていた。


    俺も自然とミカサのそばにいた。


    単に、互いに仲の良い人がいなかっただけかもしれないが。


    ミカサ「今日の訓練どうだった?」


    夕食の時間に二人で話すことがいつの間にか日課になっていた。


    エレン「空中での姿勢制御がまだまだだな…」


    ミカサ「そう…なんだ」


    エレン「訓練用の巨人すらまともに斬れねぇ…」


    ミカサ「あれは難しい、まだ初心者の私たちには早い気がする…」


    エレン「お前はどうなんだ?」


    ミカサ「私は……エレンと同じ、姿勢制御が難しい」


    エレン「そっ…か」


    本当は知っている、ミカサの本当の力を。


    互いの訓練は見たことなくても、ミカサのことはこちらまで噂で流れてきた。


    「10年に一人の逸材」「104期最有力主席候補」


    まるで身体の一部のように立体機動装置を操ると、教官の中でも囁かれていた。


    だがミカサはそれを俺には一切話さなかった。


    エレン(なんでだよ…)







    月日はさらに流れ、それと共にミカサの俺に対する依存性も増していった。


    ミカサ「エレン!今日の訓練で怪我したって本当!?」


    エレン「こんなの大したことねぇよ…」


    ミカサ「ダメ、私が救急箱取ってくる」


    エレン「おい…」


    ただの立体機動での移動訓練だった。


    それでも訓練兵の大半が怪我をしたハードな訓練だった。


    だが訓練直後にも関わらず、ミカサは相変わらず澄ました表情をしている。


    ミカサ「取ってきた、怪我したところ出して」


    エレン「いいって…」


    ミカサ「いいから」


    エレン「お前は俺の親かよ…」


    ミカサ「………」


    エレン(なんでそこで黙るんだよ…)


    記憶を改竄する力を持ちながら、俺にはミカサが何を考えているのか全く分からなかった。


    いっそ記憶を全部開示させて、考えていること全部吐かせてやりたい。


    そう思ったこともあった。


    けど、俺にはできなかった。





    その怒りが蓄積されてのことなのか。


    俺は次第にミカサを避けるようになっていた。


    ミカサ「エレン、今日の訓練は…」


    エレン「………」


    ミカサ「ねぇ、エレン」


    エレン「……うるさいんだよ」


    ミカサ「エレン…?」


    エレン「俺に勝ててそんなに嬉しいか?」


    ミカサ「何言って…」


    エレン「お前と俺が同じだと思ってるなら、それは大間違いだ」


    エレン「お前と俺は違う……俺には、やらなくてはならないことがある」


    次の日、ミカサは俺の前には現れなかった。

  62. 65 : : 2018/06/25(月) 07:42:31
    な、なにが!?
    期待です✨
  63. 66 : : 2018/06/25(月) 16:50:32
    更新きたー!頑張ってください!期待してます!
  64. 67 : : 2018/06/28(木) 21:49:05
    >>65
    >>66

    ありがとうございます!!
  65. 68 : : 2018/06/28(木) 22:39:52



    ミカサ自身が何を考えてているのか、俺にはどうしても分からない。


    その本心を暴くために距離を置いた、そう自分に言い聞かせるように俺は何度も資料を漁った。


    この力さえあれば、どんな厳重な倉庫にも容易く入ることができる。



    エレン(なぜミカサは監視されているのか、ミカサの両親について調べる必要があるな…)


    特に念入りに調べていたのは、ミカサの両親が殺されたという事件について。


    彼女は俺を騙している可能性がある。


    だが、彼女からはそれを感じなかった。


    ミカサは、本当のことを言っている…


    エレン(…気がする、そう思いたいだけかもしれないけどな…)












    エレン「ない…」


    いくら探しても、ミカサの両親に関する資料は一切出てこなかった。


    事件のことも、戸籍も、不気味なくらいに何も出てこない。


    ミカサはやはり俺を騙したのか、そう考えもした。


    しかし、同じようなことが前にもあったことを思い出した。


    エレン(まさか…)






























    エレン「ミカサ」


    ミカサ「!…エレン」


    訓練兵になる前、ミカサが住んでいた家。


    そこにミカサはいた。


    ミカサ「どうしてここが…」


    エレン「少し調べてな…」


    ミカサ「………」


    情報が何もない中、唯一見つけたもの。


    それがこの家の存在だった。


    ミカサ「……私の両親は、ここで殺された」


    ミカサ「私が友だちと出かけて、帰ってきたら家の中は血で真っ赤に染まっていた…」


    エレン「………」


    ミカサ「その後はわけが分からなくて…住む場所もなかった私は訓練兵に志願した」


    ミカサ「ねぇエレン、どうして私のお父さんとお母さんは殺されなければならなかったのだろう…」


    ミカサは涙を流し、その場にうずくまってしまう。


    俺は彼女の弱った姿を初めて見た。


    けど、俺にはどうすることもできなかった。


    エレン「ミカサの両親は……憲兵団に殺されたんだ」


    出たのはそんな言葉。


    昨夜、見つけ出した答えだった。


    ミカサ「憲兵団…?」


    エレン「俺の両親も憲兵団に殺されている」


    ミカサ「なんで憲兵団が…」


    エレン「憲兵は俺とミカサの力を狙っている」


    ミカサ「力…?」


    エレン「奴らは刃向かう者なら躊躇うことなく殺す、例え憲兵同士でも…」


    エレン「ミカサ!お前にどんな力があるんだ、教えてくれ!」


    ミカサ「わ、分からない…力なんて…」


    ミカサの表情からも、それが事実であることは分かる。


    だが、ミカサには何かしらの力があり、それを憲兵が狙って監視しているのは確かだ。


    それに、この訓練場ではミカサが自らの意思で憲兵団に入団するよう誘導されている。


    エレン「憲兵団はミカサの力を利用しようとしている」


    ミカサ「私はどうすれば…」


    エレン「………」


    彼女を救う方法がある。


    しかし、それは俺とミカサが今後一切干渉しないこととなる。


    記憶操作。


    ミカサが絶対に他の兵団に入団するように仕向ける。


    ミカサ「エレン!?何を…」


    ミカサの頭を思い切り掴む。


    ミカサ「エレン…?」


    エレン「………」


    今まで俺はずっと一人だった。


    けど、ミカサだけは俺のそばにいてくれた。


    疑いもせず、怖がりもせず、真っ直ぐに俺と向き合ってくれた。


    エレン「俺は……お前を守る、絶対に」


    ミカサ「え…」


    エレン「好きだ…ミカサ」


    ミカサ「!!」


    __________


    力を発動し、ミカサの記憶から俺の何もかもを消した。


    これで俺とミカサがもう話すことはないだろう。



























    ミカサ「……?」


    エレン「……ん?」


    ミカサ「え、エレン?」


    エレン「なっ…!なんで覚えて…」


    ミカサ「何か私にした…?」


    エレン(まさか……ミカサの力って…!)


    ミカサ「そ、それよりさっきの言葉は…」


    エレン「!!あれは……その…」


    ミカサ「私もその…エレンのことが好きです」


    エレン「!!!」


    こうして俺とミカサは、晴れて恋人となった。


  66. 69 : : 2018/06/30(土) 13:31:50
    期待なうなう!!
  67. 70 : : 2018/07/01(日) 00:35:01
    >>69
    ありがとうございます!
  68. 71 : : 2018/07/01(日) 01:05:08




    ミカサの記憶を消すことができなかった。


    それは大きなミスだが、アッカーマンの力とやらは明確になった。


    エレン(記憶改竄の干渉を受けない力…か)




















    ミカサ「エレン」


    エレン「ん?」


    ミカサが話しかけてくれる、前と同じ風景。


    記憶を変えればこんな光景は見れなかった。


    だが、ミカサの未来を考えると何としても記憶を変える方法を見つけ出さなければとも思う。


    エレン(でも今だけは…)


    ミカサ「今夜……二人きりになりたい」


    エレン「……………はぁ!?」


    ミカサ「ダメ…?」


    エレン「いや……お前いきなりそんな…」


    ミカサ「何をそんなに慌てているの?」


    エレン「だって俺ら恋人になって一日…」


    ミカサ「昨日の…私の両親の事件について詳しく聞きたい」


    エレン「………」


    この幸せに自惚れて、俺の頭の中はどうやらお花畑になってしまったようだ。


    エレン(こういう時こそ記憶を消したい…)

























    宣言通り、ミカサは上官の監視をくぐり抜け俺の部屋へとやってきた。


    ミカサ「おまたせ」


    エレン「本当に来たのか…」


    ミカサ「約束したから当たり前」


    窓から音を立てないように入れるため、ミカサを抱き抱える。


    エレン(細い…)


    内心動揺しているが、ミカサは澄ました顔でこちらを見つめている。


    俺も負けじと澄ました顔をしてみせる。


    エレン「この部屋だけでも10人はいるからな…バレたら大騒ぎだ」


    ミカサ「分かってる」


    寝床についてから、ミカサは正座で目の前に座り、話が始まるのを今か今かと待っているようだった。


    エレン「…何で正座なんだ?」


    ミカサ「なんとなく……気合いが入ってしまって」


    エレン「そ、そうか…」


    ミカサ「そんなことより早く」


    エレン「お、おう…」


    今のミカサは、夜の読み聞かせを楽しみにしている子供のように見える。


    だがその体からは微かに緊張が見えた。




    エレン「正直言うと両親を殺した犯人は分からない、だがそいつは憲兵に所属していたのは確かだ」


    ミカサ「していた…?」


    エレン「もう殺されている可能性があるってことだ」


    ミカサ「!」


    エレン「恐らく本体はもっと上の奴らだ、だが使ったのは恐らく下っ端のような奴らに違いない」


    ミカサ「何で私のお母さんとお父さんが狙われたの?」


    エレン「俺の両親とミカサの両親は……この世界の真実を知っていたのかもしれない」


    ミカサ「この世界の…真実?」


    エレン「推測だが……何万何十万という人々の人生を狂わせてしまう、そんな力の存在を」


    憲兵が狙っているのも恐らく俺のこの力。


    効果範囲は分からないが、少なくともこの世界の一端を変えてしまうほどの力があるのは確かだ。


    幸いミカサにバレていないようなので、一応は隠している。


    ミカサ「私にも力があるってエレンは言っていたけれど、それは?」


    エレン「さ、さぁ…?」


    ミカサ「エレンでも分からないのか…」


    エレン「………」


    なぜ憲兵がミカサを狙っているのかずっと考えていた。


    エレン(ミカサは……俺を殺すための武器だ)

  69. 72 : : 2018/07/05(木) 20:30:27
    期待です!
  70. 73 : : 2018/07/06(金) 15:07:57
    >>72
    ありがとうございます!


    更新がいつにも増して遅くなります…
  71. 74 : : 2018/07/07(土) 00:06:05












    「駆逐してやる…」


    「この世から…一匹残らず…!」










    エレン「あ…?」


    目を覚ます。


    久しぶりに夢を見た気がする。


    懐かしい記憶の夢を…


    エレン「…まぁいいか」
















    食堂でミカサを見つけては声をかける。


    エレン「おはよ」


    ミカサ「おはよう………どうしたの?」


    エレン「なにが?」


    ミカサ「いつにも増してその…眠そうだけど」


    エレン「ああ……ちょっと嫌な夢をな」


    ミカサ「嫌な夢…?」


    エレン「まぁ気にすんなって」


    ミカサ「………」


    ミカサ(そう言われたら余計に気になる…)


    エレン(…って顔してんな)


    ミカサは俺の夢を知りたいと言わんばかりの顔をしている。


    ミカサはなぜか、いつも俺のことを知りたがる。


    エレン「…なんで俺のことがそんなに気になるんだ?」


    ミカサ「なんでと言われても…」


    エレン「初対面の時もそうだったよな、見ず知らずの俺にいきなり話しかけて来て」


    ミカサ「あれはエレンの言ったことが気になって…」


    エレン「そういうことにしといてやるよ」


    ミカサ「どこか納得がいかない…」


    俺は別に、人に知られたがるような人間ではないのに。


    ミカサ「それより、エレンの夢のことを教えてほしい」


    なんで、お前はそんなに俺のことを知りたい?


    ミカサ「エレン…?」


    エレン「………」


    なんで、お前の記憶は見れないのだろう。


    エレン「俺もお前のことを……もっと知りたい」


    ミカサ「え…?」


    エレン「よし、今度デートに行くぞ」


    ミカサ「で、デート???」


    エレン「そうだ、デートだ」


    ミカサ「そ、そんな…だって私たちまだ…」


    エレン「お前は行きたくないか?」


    ミカサ「そんなことはない!」


    エレン「じゃあ今度の休日な、予定空けとけよ」


    ミカサ「う、うん…」


    ミカサ(今日のエレンはなんだか…強引だ)


    ミカサ「あ…夢のこと聞くの忘れた」


    ミカサ(まぁいい…)


    今度のデートで、十分に話す時間がある。
















    エレン「………」


    ???「なに怒ってんのさ」


    エレン「俺は反対だったんだ…」


    ???「あのさぁ…そりゃミカサちゃんが大事なのも分かるけど、それよりもやらなくちゃいけないことがあるだろ」


    エレン「けど……ミカサをこんな、囮みたいに使うなんて…」


    ???「エレンも知っているだろう?世界は残酷なんだよ」

  72. 75 : : 2018/07/07(土) 13:01:29
    期待です!!
  73. 76 : : 2018/07/08(日) 23:44:27
    >>75
    いつもありがとうございます!
  74. 77 : : 2018/07/13(金) 01:59:34









    ミカサ「エレン!」


    エレン「ミカサ、さすが時間ピッタリ…」


    ミカサ「エレンは早く来てくれた」


    エレン「まぁ、楽しみだったからな」


    デート約束の当日、俺たちはここで落ち合ってから街を周ることにしていた。


    それにこの街に来たのは目的があるからだ。


    一つは…


    エレン「この前言ったよな、あれ…」


    ミカサ「もしかしてマフラーのこと?」


    エレン「ああ」


    ミカサ「本当にいいの?マフラーなら支給品にもあるのに…」


    エレン「俺が買ってやりたいんだ、支給品のはほら…ダサいからな」


    ミカサ「そう…?」


    エレン(正直に言えば、マフラーなら目立つから…なんて)


    エレン「せっかく街まで来たしな、少しは甘えてくれてもいい」


    ミカサ「じゃあ私も何かエレンに買っていこう」


    エレン「俺も甘えさせてもらうか」


    これが普通のデートなら、心の底から楽しめたはずだ。


    でも、今はそんなわけにはいかない。


    エレン(絶対上手くやってくれよな…ジーク)























    ジーク「うーん…」


    ジャン「どうしたんですか?ジークさん」


    ジーク「いや、まさか弟の彼女があんな綺麗な子だったとはね…少し勿体無いことしたな」


    ジャン「はあ…」


    ジーク「ほらジャン君も見てみなよ!」


    ジャン「あいにく、今手が空かないんで」


    ジャン(どうせジークさんのことだからお世辞なんだろ…)


    ジーク「君好みの黒髪少女だよ??」


    ジャン「なんでそれを…!と言うかいい加減集中してくれませんか!?」


    ジーク「ごめんごめん、そうだね…あの子を殺すわけにはいかないからね」




















    エレン「………」


    ミカサ「エレン?」


    エレン「………ん?」


    ミカサ「どうしたの?さっきから怖い顔して…」


    エレン「あ、いや…」


    エレン(やべぇ、顔に出てたか…)


    ミカサ「その…やはり私と一緒じゃあまり楽しくないだろうか?」


    エレン「!いやそんなことはない!断じて!」


    ミカサ「そう…良かった」


    微笑むミカサの姿に、顔が耳の先まで熱くなっていくのが分かる。


    気づかないうちに、ミカサは俺の中でどんどん大きな存在になっていく。


    エレン(もう終わりにしよう…)


    今回の作戦がうまくいけば、奴らの黒幕までたどり着くことができるかもしれない。


    エレン(そいつを俺の手で殺して、そして…この力を封印しよう)


    この力はこの世にあってはならないものだ。


    ミカサも解放できる。


    そしたら俺たちは普通に…


    エレン「この赤いマフラーなんてどうだ?」


    ミカサ「…!とてもいいと思う」


    普通の人生を歩めるだろうか…


  75. 78 : : 2018/07/14(土) 23:41:12
    期待期待期待期待しかない!
  76. 79 : : 2018/07/15(日) 23:41:54
    >>78
    たくさんの期待、頑張れます!
  77. 80 : : 2018/07/21(土) 17:10:38


    「ありがとうございました!」










    エレン「ほら」


    購入したマフラーをミカサに手渡す。


    だが、ミカサはそれを拒む。


    エレン「どうした?」


    ミカサ「エレンに…巻いてほしい」


    エレン「何だよ…断られたのかと思ったじゃねぇか」


    ミカサ「ご、ごめんなさい…」


    エレン「別にいいよ、ほらもっと寄れよ…巻いてやるから」


    ミカサ「うん」


    ミカサが体を密着させる。


    マフラーを巻くならこれ程やる必要はないが、


    エレン(まぁいっか)


    マフラーを身につけたミカサは、それを愛おしそうに触れる。


    ミカサ「ありがとう、エレン」


    エレン「ああ」


    とても幸せな瞬間だった。


    けど、俺の心の中は不安だらけだった。


    エレン(なぜ、さっきから動きがない…ジークは何やってんだ)













    ジーク「おかしい…」


    ジャン「どうしたんですか?」


    ジーク「ジャン、エレンが洗脳した憲兵のみんなはどうしてる?」


    ジャン「しっかりエレンとミカサを監視してるみたいですが」


    ジーク「………」


    この作戦には大きなリスクが伴う。


    これだけ憲兵を使っている、奴らにエレンの存在を教えているようなものだ。


    だが、これで奴らに直接繋がる人物に動きがあることは間違いない。


    ジーク(それなのに、一つも動きがない…まるでどこか遠くで見守っているような…)


    ジーク「まさか!」


    ジークが気づいた頃には、背後に立体機動装置を身につけた兵士が回り込んでいるところだった。


    ジャン「中央憲兵…!なんでだ!」


    ジーク「作戦は全て筒抜けになっていた、奴らは僕たちの配置を全て把握した上で行動している」


    ジャン「なんで今回の作戦がバレたんだ!」


    ジーク「考えが甘かった……まさか憲兵にアッカーマンがいるとは…!」
















    頭上で銃声が鳴り響く。


    それに住民も反応し目の前を逃げ回る。


    ミカサ「な…何が起きているの?」


    エレン「わかんねぇよ…」


    エレン(何で銃声が……ジークたちは無事なのか!?)


    上を見上げると微かに立体機動で動く兵士の姿が見える。


    エレン(まさか…中央憲兵が、とにかくミカサだけでも…)


    エレン「ミカサ、逃げるぞ!!」


    ミカサ「う、うん!」


    ミカサの手を引き走り出す。


    逃げ惑う住民を掻き分け、とにかく逃げる。


    頭上で数回銃声が響き、それと共に何かが目の前へと落ちてきた。


    エレン(こいつは……俺が記憶を改竄した…)


    散弾で胴体を吹き飛ばされた死体、それは俺がこの作戦のために洗脳した憲兵団のものだった。


    ミカサ「ひ、人が…落ちて…」


    エレン「ミカサ、止まるな!走れ!」


    ミカサ「つ!」


    ただひたすらに走った。


    気づいたら俺たちは、訓練兵団の兵舎にいた。

  78. 81 : : 2018/07/21(土) 21:59:19
    やばいことになったので、名前を変えました。
    元、ミカ・アッカーマンです。
    期待です!春風さんの作品は本当に面白いです!
  79. 82 : : 2018/07/22(日) 23:07:59
    >>81
    ありがとうございます!
    何があったのですか!?
  80. 83 : : 2018/07/26(木) 01:30:10




    エレン「取り敢えずここまで来れば…」


    ミカサ「エレン、正直に話して」


    エレン「え…?」


    ミカサ「さっきの…あれは憲兵団だった」


    エレン「………」


    ミカサ「私とエレンに何か関係があるの?」


    ミカサを囮に敵を誘き寄せる作戦だったことは、口が裂けても言えない。


    エレン「とにかく今日は寝よう…」


    ミカサ「エレン!」


    ミカサを女子兵舎まで戻し、扉を閉ざす。


    本当はミカサのそばにいてやりたい、だが今は記憶を改変した見張りの兵士に託すしか無さそうだ。


    エレン(でも、さっきの作戦で死んだ憲兵は俺のせいで…)


    今回の作戦で使った兵士は、なんの罪もない末端の兵士達だ。


    俺が記憶を変えることがなければ、死ぬこともなかっただろう。


    エレン(どうしてこんなことになった…)


    しかし、今は反省よりもジークやジャンの安否も心配になり、先程の街まで引き返す。



















    ジーク「痛ぇ…」


    ジャン「大丈夫ですか?」


    ジーク「まぁ掠っただけだからね」


    先程の襲撃の際、瞬時に身を隠しやり過ごすことができた。


    他の憲兵が身代わりになってくれたこともあるが。


    ジーク「とにかくヤバイことになった」


    ジャン「はい…」


    今回、敵が襲撃してきたのは、俺たちがアッカーマンの存在について知っているということがキーとなった。


    そのアッカーマンであるミカサを、俺たちが"拉致するように見せかける"ことで敵を誘き寄せることに成功した。


    しかし、俺たちの誤算は敵にもアッカーマンがいたこと。


    記憶の干渉を受けないアッカーマンの存在が、俺たちの作戦を筒抜けにしてしまった。


    ジーク「しかも、今回の失態は俺たちがアッカーマンの存在を確実に認知しているということをあっちに教えてしまったということだ」


    ジャン「敵を捉えることができてればこんなことにならなかったってことか……クソッ!」


    ジーク「それより急ごう……このままじゃ」




    ジーク「エレンが殺される」
























    パァン、と銃声が後ろの方で鳴り響く。


    エレン「!!」


    エレン(まさか…もう兵舎の方まで!)


    再び関連兵舎に足を向け、全速力で走る。


    エレン(まずい…このままじゃ、ミカサが攫われる!)


    エレン「うおっ!!」


    何かに足を引っ掛け、そのまま地面に倒れ込む。


    地面についた手に何かがこびりつく感触があった。


    エレン(血…)


    足元を見てみれば、そこには訓練兵団の見張りの兵士と思われるものがいくつもあった。


    それはもう、原型を留めていないほどだった。


    エレン(また俺のせいで…なんの罪もない人達が大勢…)


    エレン「!ミカサ……早くミカサを…」


    ???「お?どこ行くんだよボウヤ」


    エレン「!!」


    暗闇の中、帽子に隠れ顔は確認できないが、僅かな月明かりがそいつの身につけている鉄を輝かせる。


    エレン(立体起動……まさかこいつ、中央憲兵!)


    ???「ん?お前もしかして……あの女と一緒にいた奴だな」


    エレン「お前は…誰だ」


    ???「おいおい、大人に向かってその口の聞き方は良くねぇと思うぞ?」


    ケニー「いいや、俺はケニー・アッカーマンってんだ…」


    エレン(ケニー……アッカーマン!?)


    その名前から、俺たちの作戦がなぜ失敗したのかを理解した。


    エレン「何で…」


    ケニー「まぁ名乗ったところで意味ないんだけどな、どうせもう……死ぬんだからな」


    エレン「!!」


    瞬時に距離を詰められ、銃口を心臓部に突きつけられる。


    初めて味わう恐怖感に背筋が凍っていくのを感じる。


    エレン(…こいつらにとって俺の力は必要不可欠なものだ、話せば生かしてくれるかもしれない…)


    だが、俺にはその先どうすればいいのか分からなかった。


    話して、その力を中央に委ねたとして、俺たちの望む未来は訪れるのか。


    そんなことを考えているうちに、トリガーは引かれた。


    ケニー「あばよ」


    銃弾が心臓を貫く。


    エレン(俺は……死ぬのか)


    朦朧とした意識の中、ふと思い浮かんだのはミカサの顔だった。


    笑った顔、怒った顔、泣いた顔。


    思い出すたびに、気持ちが湧き上がる。


    エレン(生きたい…!!)




    戦え!




    戦え!




    戦え!!











    「アアアアァァァァァアッ!!」


    力の限り叫んだ。


    どうしてか月が、いつもより近く感じた。


  81. 84 : : 2018/07/27(金) 01:25:16



















    エレン「ミカサ…」


    ミカサ「ん…」


    エレン「ミカサ、起きろ」


    ミカサに掛かっていた毛布を勢いよくどけてやると、ミカサは驚いたように目を覚ます。


    ミカサ「え、エレン?」


    エレン「やっと起きたか、もう昼になっちまうぞ」


    ミカサ「昼…」


    エレン「寝ぼけてるのか?まぁ仕方ないか…夜遅くまで話してたからな」


    ミカサ「あ…」


    やっと今私がどこにいるのかを思い出す。


    ここはエレンたちのアジトで、私は昨晩ずっとエレンの過去の出来事についての話を聞いていた。


    ミカサ「エレンは……巨人なの?」


    エレン「………昨日答えたろ?」


    ミカサ「嘘…」


    エレン「嘘じゃない」


    そこで近くにあったナイフを手に取り、腕を軽く切りつける。


    ミカサ「な…何を!」


    その腕の傷が一瞬で修復されていくのを見て、エレンの話が事実であったことを痛感する。


    エレン「どうだ、信じたか?」


    ミカサ「………」


    エレン「あの時、俺の巨人化した姿を見たミカサは調査兵団に入ると思っていたんだ……なのに、なぜ憲兵団に入った?」


    ミカサ「…ヒッチが教えてくれた、あの巨人は巨人じゃない…人間だって」


    エレン「あいつがそれを知る術はない…俺のことを知るやつの記憶は消したはずだからな」


    ミカサ「つまり、ヒッチもエレンの言うもう一人のアッカーマンの部下だったってこと?」


    エレン「そうとしか考えられない」


    ミカサ「………」


    私の頭の中は既に限界だった。


    過去のことだけじゃない、あの憎むべき巨人の正体がエレンだったことも。


    私には受け止めきれない現実だった。


    ミカサ「でもエレン、奴らにとって私は必要な存在のはずなのに…私は殺されかけた」


    ミカサ「それはどうして?」


    エレン「簡単な話だ、奴らはもうアッカーマンを必要としていない」


    ミカサ「!」


    エレン「むしろ…邪魔な存在になったというべきだ」


    元々、中央の目的はエレンの持つ力を使い、絶対的な支配をすることであった。


    そのエレンの力を奪うために必要だったのが、記憶の干渉を受けないアッカーマンだった。


    エレン「だが、今の中央はその作戦を既に放棄している」


    ミカサ「どうして?」


    エレン「元中央憲兵……ケニー・アッカーマンが裏切ったからだ」


    その言葉と同時に、部屋の扉をノックする音が響く。


    開かれた扉の向こうには、妙に歳食った長身の髭面の男が立っていた。


    私には、その男が誰なのかすぐに分かった。


    ケニー「よぉ嬢ちゃん、目覚めたのか」


    ミカサ「ケニー…アッカーマン」


    エレン「ケニーは今、俺たちと一緒に戦ってくれている……仲間だ」


    エレン「そして10年前、俺とミカサの両親を殺した…仇だ」


    ミカサ「…!」

  82. 85 : : 2018/07/30(月) 02:19:51


    ミカサはベッドから跳ね起き、ケニーに殴りかかろうとする。


    エレン「やめろ!」


    ミカサ「どうして?エレンはこいつが憎くないの!?」


    エレン「憎いさ、でも今は…」


    ミカサ「だったら…!」


    ケニーに向けている拳が、エレンの手によってビクともしないことに気づく。


    ミカサ(前は私の方が強かったのに…)


    これ以上は無駄だと悟り、手を下ろす。


    ミカサ「私は、この時のためにずっと……なのに私には何もできない…」


    エレン「……ケニーにも前に」


    ケニー「エレン、それは俺から話そう」


    ミカサ「………」


    ケニー「嬢ちゃん、小さい頃に俺に会ったのを覚えてるか?」


    ミカサ「え…?」


    ケニー「あの二人を、俺が殺した日…」



















    10年前


    ケニー「アッカーマン…だって?」


    サネス「ああ、シガンシナ近郊の山に夫婦が二人で住んでるらしい」


    ケニー「へぇ…で、どうすんのさ?俺みたいに利用するのか?」


    サネス「いや、殺すのさ」


    ケニー「あぁ?」


    サネス「アッカーマンは多いほど厄介だ、こっちにはお前がいるしな…」


    ケニー「………」


    王家に仕えていないアッカーマンは、過去のように王に反する可能性があると判断された。


    作戦に参加した俺は、事前にその夫婦の家を探り、山へ訪れた。




    ケニー(街から離れすぎじゃねぇか…?この歳じゃ身が持たねぇ…)


    重い身体を引きずり、やっとのことで一軒の家を見つけることができた。


    ケニー(ここか…!)


    しばらくの間監視をすると、夫婦の他にもう一人家族がいるという事実を知った。


    ミカサ母「ミカサ、今日は街まで行くんだから早く準備しなさい」


    ミカサ「うん!」


    ケニー(子供…!?)


    まだ幼い、9歳頃の子供がいたのだ。


    ケニー「………」




















    ケニー「本当にやるのか?」


    中央の作戦に対し、俺は何度も家族を生かす意見を出した。


    ケニー「あの家族にも利用価値はあるはずだ、捕虜にすべきだ」


    サネス「なら…お前が代わりに死ぬか?」


    ケニー「!」


    サネス「何度も言ってるだろ?危険思想を持っているアッカーマンは直ちに処分しなければならない……それとも」


    サネス「お前まさか、あの家族に情でも湧いたか?」


    ケニー「………」


    サネス「証明する方法は一つしかない……お前がやるんだ」


    この時の俺には分からなかった、何が正しいか、誰を信じればいいかなんて。


    王政についていけば、俺の地位は安泰。


    だが、犠牲から得た地位とはなんだ?


    綺麗事だけで生きていけたらどれ程良かっただろうか。


    ケニー(俺らはみんな…自分が大事だからさ)





    ミカサ母「ミカサ!逃げて!」


    ミカサ「え…?」


    身を呈してまで、母は娘を守ろうとした。


    その母の首を俺は切った。


    でも、その時気付いちまったんだ。


    俺は、弱い人間だったんだなって。





    ミカサ「お母…さん?」


    ケニー「………」


    ミカサ「!」


    彼女の涙に溢れた瞳が、俺を一途に見つめる。


    ミカサ「私も……殺すの?」


    ケニー「………いいや、もういいや」


    ミカサ「え…?」


    ケニー「嬢ちゃんは12歳になったら訓練兵団に入るんだ、俺の言うことなんて聞ききたくないかもしれねぇけど…」


    ケニー「そこならきっと生きていける…」


    ミカサ「訓練兵団…?」


    俺は少女を殺さなかった。


    のちに彼女を施設に入れ、訓練兵団に入団するまでを見張った。

















    報告書には、「彼女に危険思想は見られなかった。洗脳猶予あり。重要監視人物とする。」とした。


    俺にできることはただ、彼女を見守ることだけだった。


  83. 86 : : 2018/07/31(火) 23:59:38
    期待です!
    春風さんの作品大好きです!
  84. 87 : : 2018/08/02(木) 00:33:10
    >>86
    ありがとうございます!
    orangeさんもまた次回作を書いてくださるのを期待しております!
  85. 88 : : 2018/08/02(木) 00:59:05





    ミカサ「………」


    彼の話を聞いていると分からなくなってしまった。


    彼を恨むべきなのか。


    自分が今まで目指してきたことは正しくなかったのだろうか。


    エレン「ミカサ?」


    ミカサ「やはりあなたは許せない…」


    ケニー「……ああ、分かってる」


    ミカサ「けど、あなたがエレンに必要と言うのならば力を貸して、命を捧げるつもりで」


    ケニー「………フッ、元よりそのつもりだけどな」


    エレン(良かった…)


    俺も最初はケニーのことを許すことができなかった。


    人を犠牲にしてまで自分を守るなど、その時の自分には考えられなかったからだ。


    けど、今なら分かる。


    誰かを犠牲にしてでも選ばなければならない時がある。




    「何も捨てることのできない人に、何かを変えることはできないだろう」



    エレン「…!」


    遠いどこかでそんな言葉を聞いたことがあったような気がした。


    ミカサ「エレン、どうしたの?」


    エレン「………いや、なんでもない」


    ケニー「おいおい、これから決着をつけに行くって時にそんなボケてて大丈夫か?」


    ミカサ「決着…?」


    エレン「ああ、これから俺たちは王政に攻撃を仕掛ける」


    ミカサ「!!」


    あまりに唐突なことに言葉を失う。


    私は事前にこの作戦についての話を聞いていない。


    つまり、私は作戦に参加できないということだ。


    ミカサ(それではまた、私はエレンに…)


    ミカサ「エレン、私も…」


    エレン「ミカサ………お前もついてきてくれるか?」


    ミカサ「え!」


    エレン「まぁ、どうせダメだって言ってもついてくるんだろ?」


    ミカサ「うん」


    私たちが今までに、互いを救うにはどうすればいいか考えたことなど数え切れないほどある。


    だが今だけは初めて、私たちは救うだけでなく、共に戦いたいと思っている。


    エレン「行くぞミカサ!」


    ミカサ「うん!」














    ケニー(たく…若い奴らは元気だけは一丁前だぜ)


    ケニー「なぁ、ジーク?」


    ジーク「………」


    ケニー「今まで好戦的だったお前が、どうして今回の作戦には参加しねぇんだ?最終局面だってのによ」


    ジーク「…エレンはまだ知らないんだ、世界ってやつを」


    ケニー「そりゃ世界はだだっ広いからな、全てを知るやつなんか存在しねぇ」


    ジーク「……だといいね」


    ケニー「?」


    気づけばジークの姿は消えていた。


    あいつだけは何を考えているのかさっぱり分からなかった。


    ケニー(世界……ねぇ)


    それより今は決戦へと備えるべきだ。


    俺の役目は、ただあの二人を守ることだけだ。


    ジャン「あ、ケニー、あのミカサがどこ行ったか知らないか?」


    ケニー「また呼び捨てかよ……二人なら向こうの武器倉庫の方へ行ったぞ」


    ジャン「どもー」


    ケニー「たく…」


    ケニー(二人、ってちゃんと聞いてたか?)


  86. 89 : : 2018/08/02(木) 11:07:26
    なんか面白い展開になってる!
    期待です!
    次回作も書きますよ!(^^)
  87. 90 : : 2018/08/02(木) 14:09:04
    期待です!
  88. 91 : : 2018/08/05(日) 00:46:28
    >>89
    ありがとうございます!
    期待しています!

    >>90
    ありがとうございます!






    更新遅くなります。
    すいません…
  89. 92 : : 2018/08/05(日) 22:35:43
    気にしなくていいですよ!
    自分のペースで大丈夫です!でも完結はさせてください…
  90. 93 : : 2018/08/06(月) 01:03:52
    >>92
    そう言っていただけると助かります…
    完結は必ずさせますので!
  91. 94 : : 2018/08/06(月) 02:29:26



    武器倉庫。


    横目にミカサが立体起動装置を身につけるのを見る。


    エレン(本当はこんなことにならなかったんだけどな…)


    ミカサと再会したあの日、俺がミカサをデートなんかに誘わなければここにはいなかっただろうか。


    いや、きっと来ていただろう。


    ミカサは俺が去った後、自分で俺の住む場所を見つけてみせた。


    エレン(いや、そもそも俺がヒントを与えたからか…)


    ミカサを巻き込みたくないと口では言っていても、俺はずっとミカサにそばにいて欲しかったのかもしれない。


    エレン「ミカサ」


    ミカサ「なに?」


    エレン「この戦いが終わったら、俺のことは忘れろ」


    ミカサ「!」


    エレン「そして頼れるやつを見つけるんだ、そばにいてくれる誰かを…」


    ミカサ「エレン!私は、あなたを殺したりしない…私があなたを守る」


    エレン「………」


    ミカサ「そばにいてくれるのは、エレンじゃないと嫌だ…」


    エレン(守るとかそういうものじゃない…)


    ミカサには伝えていない、最後の作戦。


    その時、俺はいなくなってしまう。


    エレン「俺は…お前のそばには…」


    ミカサ「エレン、あなたの考えは間違っている」


    エレン「確かに決戦前にこんなこと言うのは…」


    ミカサ「そうじゃない、私とエレンは二人で一つでしょ?」


    エレン「!」


    思えば、今の俺たちに関係などなかった。


    恋人だったのも訓練兵時代の話、今の俺たちはただの仲間。


    エレン(二人で…一つ)


    ミカサ「私はあなた無しでは飛べない…」


    ミカサ「エレンは?」


    エレン「俺も……お前無しじゃ、この世界で息を吸うこともできない」


    ミカサ「だから私とエレンは一緒、二人でしか飛ぶことのできない翼…」


    エレン「翼…か」


    そうかもしれない。


    ミカサがいない5年間、俺は満たされない心でまるで死人のように生活をしていた。


    ただ目的のために人を操り、殺して。


    でもそんな時、ミカサに再会した。


    ミカサに会えたことで、俺のしてきたことは無意味ではなかったのだと思えるようになった。


    俺はずっと、お前のために戦ってきたんだって。


    エレン(そしてそれは、ミカサも同じなんだ)


    エレン「ミカサ、お願いがある」


    ミカサ「…うん」






















    ジャン(たく…二人、か)


    俺もこの決戦、死ぬ覚悟で挑まなくてはならない。


    悔いの残らないように、想いを伝えたい気持ちは山々だ。


    ジャン(たく、これじゃ死ねないな…)


    死ぬ覚悟はある、けど死ねない。


    想いを伝えることだけじゃない。


    俺には、約束がある。








    エレン「俺がいなくなった後、ミカサを守れるのはお前だけだ」


    ジャン「やっぱりお前、この作戦で…」


    エレン「ああ、だから…頼む」


    ジャン「………」








    ジャン(あの後、ふざけるなと思って殴ったんだっけ)


    愛する人を置いて、他の男に任せるなんてどう考えてもふざけている。


    でも、エレンの目は本気だった。


    ジャン「だから俺は生き延びるぞ…」



























    俺の願いを受け取ったミカサは、安心したように優しく微笑む。


    エレン「ありがとう、ミカサ…」


    ミカサ「ううん…」


    エレン「装備つけてたのに、ごめんな」


    ミカサ「そんなこといい」


    エレン「………」


    エレン(大丈夫、ミカサは一番安全な場所に配置してる)


    余程のことがない限り、ミカサが戦線に出ることはないだろう。


    配置とはいえ、ミカサが単騎行動をすることを恐れていたが、これならきっとミカサも迂闊に戦線に出るような真似はしないだろう。


    エレン「行こう、ミカサ」


    ミカサ「…エレン」


    エレン「ん?」


    ミカサ「愛してる」


    エレン「……俺もだ」


    互いにキスを交わす。


    エレン(俺たちは一つ…)


    例えるなら、比翼連理。
  92. 95 : : 2018/08/07(火) 00:28:19












    薄暗い地下道をひたすら歩く。


    ここは王家が元々計画していた地下都市建設の際にできた廃道で、私たちが身を隠しながら中央に近づくには持ってこいだった。


    ここの警備も既にエレンの手中にある。


    エレン「王政の武力はもはや無いに等しい」


    ミカサ「この時のためにエレンはずっと…」


    エレン「それも、もう終わる」


    前にエレンに渡された地図の印の数々。


    それらは全て、エレンが記憶を改変した憲兵が現在住む場所だった。


    エレンが今まで人々の記憶を書き変えてきたのは、憲兵やその他の人々を救うためだった。


    互いに殺し合うこともなく、これから私たちが実行する作戦に巻き込むこともなく助けるにはどうすればいいか。


    エレンは選んだのだ。


    命を奪うか、人生を奪うか。


    エレン「この作戦で、中央は大きな被害を受ける」


    ミカサ「だからエレンは王政につく憲兵の記憶を改竄し、外側へと逃した」


    エレン「命を助けるためとはいえ、彼らの人生を奪ってしまったことに変わりはない…」


    ミカサ「でも、そうするしかなかったんでしょ?」


    エレン「………」


    愛する人だけでなく、この壁の中全ての人を救いたいなど、欲張りすぎただろうか。



    ジャン「けどよ、相手の武力を封じたんなら堂々と戦えばいいのになんで俺らはこうしてコソコソ歩いてんだ?」


    ケニー「相手は憲兵だけじゃねぇってことだ、少しは頭使え」


    ジャン「それってどういう意味だ?」


    ジャンの問いに答える前に、俺たちは目的の場所へと到着する。


    エレン「着いたぞ、ここから班でそれぞれの配置につく」


    ミカサ「エレン」


    エレン「ミカサ、お前も今すぐここから離れるんだ」


    ミカサ「一つだけお願いがある、どうか…死なないで」


    エレン「……ああ」


    ミカサに向け、必死に笑顔を作ってみせる。


    エレン(俺は死なないさ、こんなところで)


    ミカサが配置へ向かっていったのを見て、息を整える。


    エレン(これで、ようやく俺たちの戦いは終わるんだ)


    手に持つナイフで、自らの手を切りつける。


























    貴族「フリッツ王よ、どうするのですか!?このままでは我らの体制が崩れてしまう…!」


    フリッツ「案ずるでない、既に手は打った」


    フリッツ「また、力は我が元に…」


    その時、大きな揺れを感じる。


    足元がぐらつき、まともに立たなくなる。


    貴族「この揺れは…一体!」


    フリッツ「まさか…!」


    その揺れの正体が巨人であると分かった時には、既にフリッツの身体は原型を留めないほどになっていた。


    貴族「フリッツ王が…!なぜここに巨人が!」


    エレン「アアアァァァァアッ!!」


    貴族「うわぁぁぁあ!?」


    足元で蟻のように逃げ回る貴族を摘み上げ、握りつぶす。


    こいつらだ。


    自分の地位や領土のために、俺の母さんやミカサの両親、多くの人々を犠牲にしてきた。


    今までとは違う、不思議と罪は感じなかった。
















    ミカサ「あれが巨人化したエレン…」


    ケニー「ん?前に一度見たことあるんじゃないのか?」


    ミカサ「あの時は訳が分からなくて…」


    ケニー「まぁいい、それよりそろそろ来るはずだ、嬢ちゃんは下がってな」


    ミカサ「来る?」


    ケニーの来ると言った意味は分からず、再びエレンの方を見上げる。


    すると、その巨人の身体にいくつものワイヤーが刺さっていくのが見える。


    ミカサ(あれは、立体起動装置の…!)


    ケニー「来やがったぜ、調査兵団だ」


  93. 96 : : 2018/08/07(火) 00:33:46
    春風さんの新しいプロフィール画像のミカサ可愛いですね!

    期待です!
  94. 97 : : 2018/08/07(火) 01:00:26
    春風さんアイコン変えましたか?
    ミカサ可愛いです!大学生なんですね!
    期待です!
  95. 98 : : 2018/08/07(火) 10:26:09
    >>96
    ありがとうございます!
    自分で描いたものなので、そう言っていただけるととても嬉しいです!

    >>97
    ありがとうございます!
    変えました!可愛いと言ってもらえて嬉しいです!
    大学生やってます!ssとは全く無関係ですが(笑)
  96. 99 : : 2018/08/07(火) 18:23:40
    自分で描いたんですか!?
    すごいですね…!
  97. 100 : : 2018/08/08(水) 19:58:17
    >>99
    そこまで反応もらえるとは思わなくて…
    ありがとうございます!
  98. 101 : : 2018/08/08(水) 20:43:37






    ミカサ「調査兵団がどうして!?」


    ケニー「少し前に噂にはなってたんだがな…」


    ミカサ「噂?」


    ケニー「ああ、調査兵団団長のエルヴィン・スミス、奴が壁の中に潜む巨人に化ける人間の存在を突き止めたとな」


    ミカサ「それって…エレン」


    ケニー「だから俺たちは一刻も早く行動しなくちゃならなかったんだが……王政め、先手を打ってやがったな」


    普通なら調査兵団がこんなにも早く中央に到着できるはずがない。


    恐らく、事前に憲兵の誰かが調査兵団に報告したに違いない。


    ケニー(自分らが力を独占するために隠してた情報を、助かるためならすぐに手放すってか…)


    ケニー「ミカサ、お前はここで待機だ」


    ミカサ「そんな!私も…」


    ケニー「ここからは俺の役目なんだよ」


    ミカサ「え…」


    帽子で表情はよく見えなかったが、明らかにケニーは動揺していた。


    死ぬ覚悟で戦うつもりなのだ。


    ミカサ(それに、私のことを初めて名前で呼んだ…)



























    エレン(クソ…!調査兵団がもうここまで…)


    幸い、知性を持つ巨人に慣れていない調査兵団は相手をしやすい。


    だが一人、厄介な相手がいる。


    リヴァイ「随分ハデにやってくれたみたいじゃないか、このクソ野郎」


    エレン(リヴァイ…兵士長!)


    一人で一個旅団並みの強さがあると言われている、調査兵団のトップ。


    素早い立体起動で、その動きは目で追っていくこともままならない。


    エレン(このままじゃ…!)


    ケニー「よぉリヴァイ、大きくなったな」


    リヴァイ「!!」


    ケニー「ん?大して変わってないか」


    リヴァイ「ケニー!!」


    ケニーがリヴァイの注意を引きつける。


    だが、リヴァイの圧倒的な力に瞬時にケニーは追い込まれる。


    ケニー「おいおいそんな慌てんなって、昔話でもしようぜ」


    リヴァイ「残念だがこっちにはそんな暇はない…」


    ケニー「悲しいねぇ…お前はこの壁の中の真実も知らないまま俺たちを殺すのか?」


    リヴァイ「!」


    ケニー「俺たちがなぜこんなことをしているのかも知らないままな…」


    リヴァイ「俺は…エルヴィンを信じる」


    ケニー「そりゃ残念だ」


























    ミカサ(私は…このまま眺めていることしかできないのだろうか?)


    エレンも、ケニーも、見えないところではジャンだって、みんな戦っている。


    なぜ、私だけがそれを眺めている。


    ミカサ(そんなこと…できない!)


    剣を握りしめ、立ち上がる。


    ミカサ「エレン…!」


























    エレン(遂に、この時が来た…)


    巨人の体内から出た俺は外の空気を思い切り吸い込む。


    巨人化の影響で、すぐには力を使うことができない。


    だが、俺の体力が戻ったと同時にそれは果たされる。


    エルヴィン「壁の中の人間の、記憶改変」


    エレン「!!」


    エレン(いつのまに、エルヴィン自ら…!)


    エルヴィン「100年前と同じ、また民を騙すのか?」


    エレン「…騙しているのは今の体制じゃないか?」


    エルヴィン「新たな支配者にでもなるつもりか?この世界を変えるのに必要なのは騙すことではない、真実だ」


    エレン「真実だっていくらでも捻じ曲げることはできる、俺の両親の死もそうだった…」


    エレン「だから、圧倒的な力にすがるしかないんだ」


    不意を突かれたが、会話をしてくれたお陰で俺の体力は回復した。


    エレン(もう…終わりだ)


    エルヴィン「リヴァイ!」


    エレン「!!」


    エルヴィンの声と共に、背後をリヴァイに捉えられる。


    リヴァイ「…じゃあな」


    エレン(陽動作戦…!)


    刃はうなじを目掛けて斬りつけられた。



  99. 102 : : 2018/08/08(水) 21:49:45
    ミカサ!早く!
    と言いたいところです(^^)
    期待です!
  100. 103 : : 2018/08/09(木) 22:42:17
    >>102
    果たしてどうなるか
    明日更新します!
  101. 104 : : 2018/08/10(金) 00:27:36
    待ってます!
    期待です!
  102. 105 : : 2018/08/10(金) 21:53:43








    ミカサ「エ…レン…?」


    私は見ていることしかできなかった。


    エレンが、無残に斬りつけられる姿を。


    ミカサ「どうして……どうして止めるの?」


    ミカサ「ケニー!!」


    エレンを助けに行こうとした私を止めたのはケニーだった。


    私は構わず、ケニーを斬りつけてでもエレンの元へ向かおうとした。


    けど、私にはできなかった。


    ミカサ(右腕が…)


    ケニー「…悪いな、こうするしかなかったんだよ」


    ミカサ「どうして!?あなたは約束したんでしょ?一緒に…戦うって…」


    ケニー「ああ、約束した」


    ケニー「けど、ミカサが知らない約束を俺らはしてるんだ」


    ミカサ「私の知らない…約束?」


    ケニー「ああ、男と男の約束だ…」


















    決戦前、エレンに俺は一つだけお願いをされた。


    エレン「例えどんな状況になったとしても、ケニーがミカサを守ってくれ…」


    ケニー「…お前、本当にやるのか?」


    エレン「ああ、俺はこの世にいてはいけない存在だからな…」


    これしか方法はないと分かっていた。


    エレンが、死ぬしかないと。


    今の王政を崩すことができれば、王政に対する不満を解消することはできる。


    だが、エレンへの不満はどうすることもできない。


    巨人化できる人間、ましてやそいつが王政を破壊したなどと知れたら、民の不満を余計に膨らますことになる。


    だが、王政が崩れた後にエレンが殺されたとなれば、そのどちらもクリアできる。


    ケニー「ミカサはどうすんだ?」


    エレン「信頼できるやつがそばにいてやればいい、例えば…ジャンとか」


    ケニー「ジャン?あいつは頼りにならねぇ」


    エレン「…そうかもな」


    エレン(ミカサ、お前との約束は守れそうにない…)


    それでもどうか…



    幸せに…






















    既に息を失った彼を、二人は見つめる。


    よく見ると、彼は微笑んでいるようにも見えた。


    エルヴィン「リヴァイ、お前にはこいつが生きようとしているように見えたか?」


    リヴァイ「…何が言いたい」


    エルヴィン「私たちも彼にとってはただの駒にすぎなかった…というわけか」


    リヴァイ「………」


    リヴァイ(こいつは最後に言った…)




    「ミカサ……幸せに、生きて…」




    リヴァイ「ミカサ…か」
















    その日、突如壁の中に現れた巨人によって王政は破壊された。


    権力者は死亡。


    後に調査兵団の調査で、過去の王政の隠蔽記録が発見された。


    それにより新たな体制が築かれ、民によって選ばれた者たちが国を作っていくようになった。


    王政を破壊した巨人は無事殺害されたと調査兵団は発表。


    再び壁内に平和が戻った。






    そして、現在。


    860年


    あれから五年の月日が流れた。



  103. 106 : : 2018/08/11(土) 02:00:18








    買い物のために商店街に来ている私は、人を掻き分けながら進む。


    なんでも、巨人を全て駆逐して一年が経ったと町中の人たちが盛り上がっている。


    ジャン「おい、ミカサ」


    ミカサ「なに?」


    ジャン「子供押し付けてお前だけ突っ走っていくなよ…」


    ミカサ「ご、ごめんなさい…」


    やっと追いついたジャンは子供の手を引く。


    この子は私の子供、名はアルミン。


    ミカサ(エレンが最後に教えてくれた名前…)


    それがどういう意味を持つのか、私にはまだ分からない。


    ジャン「で、今日の夕飯は?」


    ミカサ「今日はカレーにしようと思う」


    アルミン「!カレー!」


    好物のカレーという言葉に反応し、アルミンは満面の笑みを見せる。


    ジャン「いいな、美味そうだ」


    ミカサ「楽しみだね」


    アルミン「うん!」




    五年前。


    あの惨劇の後、私は何ヶ月もの間顔を上げることができなかった。


    最も愛するあなたを、失ったから。


    私にとって、あなたは全てだった。


    ミカサ(そばにいるって…約束したのに…)




    だが、そんな私を立ち直らせてくれたのがジャンやケニー、そして調査兵団の皆だった。


    特にジャンは私を一番気にかけてくれた。


    ジャン「お前を支えられるのは俺だけだ」


    そう言って最初に外へ連れ出してくれた。


    あと、調査兵団のリヴァイ兵士長。


    最初は彼のことを警戒していた。


    エレンを殺したのは彼だから。


    けど、エレンの最後の言葉を私に伝えてくれた。


    リヴァイ「幸せに生きろ、それがあいつの願いだ」












    私は今もその言葉を胸に生きている。


    ミカサ(エレン…今、私は幸せだよ)


    あなたがいないのはとても辛い。


    けど、私にはアルミンがいて、支えてくれるたくさんの人がいる。


    これ以上の幸せなんて、望んではいけない。


    ミカサ(けど最後に……もう一つ願うことができるのならば…)


    ミカサ「エレン…」








































    「ミカサ」




    ミカサ「!!」


    ジャン「おい!テメェ…!」


    突如、何者かに手を引かれる。


    でも、私はそれに身を委ねる。


    忘れるはずがない。


    この声は…


    ミカサ「エレン…?」


    フードを外し、中から覗いたのは愛しき人の顔。


    エレン「ごめんミカサ、遅くなった」


    ミカサ「ううん、今回こそは絶対許さない…!」


    エレン「え、ええ!?」


    ミカサ「5年…いや、10年待ってた…」


    エレン「ごめん」


    ミカサ「…いいよ」







    私はどうすればいいだろうか。


    この幸せを…





    ミカサ「おかえりなさい…エレン」


    エレン「ああ、ただいま」


  104. 107 : : 2018/08/11(土) 02:26:17




    エレン「俺が外へ出れたのは4年前、これまでのことを全て話した」


    それからエレンは、今までのことを私に語りかけた。


    エレン「そこから3年間は調査兵団と一緒に壁外調査に参加していた、俺の力は大きな戦力だからな」


    ミカサ「じゃあ、エレンはこの5年間…」


    エレン「ああ、人類に敵じゃないってことを証明してきた……まぁ公には顔出せねぇが」


    ミカサ「そっか……良かった…」


    自然と涙が溢れでる。


    ずっと世界に恨まれてきたエレンがやっと認められたのだと、そう思うと嬉しくて仕方なかった。


    エレン「…そういや、ジャンとは上手くやってるのか?」


    ミカサ「え?」


    エレン「子供もいるみたいだし……俺はお前が幸せだったらいいよ」


    ミカサ「?あれはエレンの子供」


    エレン「……は?」


    ミカサ「5年前、エレンが私に…」












    エレン「ミカサ、お願いがある」


    ミカサ「…うん」


    エレン「俺の……子供を産んでくれないか?」


    ミカサ「え…え?」


    決戦前、エレンの最後のお願い。


    それは、せめて私とエレンの形を残したいというエレンの願いだった。


    エレン「…ダメか?」


    ミカサ「もちろんいい!けど…今ここで?」


    今いるのは武器倉庫。


    とても、行えるような場所ではない。


    エレン「ムードとかその…考えられなくてごめんな」


    ミカサ「エレンは謝ってばかり…」


    エレン「ありがとな」


    ミカサ「ううん、私も嬉しい…」


    その後、ミカサは身につけた装備を外してまで俺を受け入れてくれた。


    初めて見るミカサの姿に、俺は必死にしがみついた。












    エレン「まさか、あの一回で本当にできたのか!?」


    ミカサ「うん、できると思ってなかったの?」


    エレン「まぁ…確率は低いと、でもそうか…あの子が俺とミカサの…」


    ミカサ「うん、今はアルミンと二人で暮らしている」


    エレン「アルミン……本当に付けてくれたんだな」


    ミカサ「もちろん、他は考えていなかった」


    エレンの最後の願いが、あの子だったから。


















    私たちはいつだって二人で一つだった。


    身体は離れていても、心が離れたことはない。


    ミカサ(でもこれからは…)


    エレン「アルミン、はじめまして」


    アルミン「はじめ…まして」


    エレン「これから新しい家族になるんだ、よろしく」


    アルミン「…うん、よろしくお願いします」


    エレン「よしよし、いい子だな」




    これからは、私たち三人で…




    この幸せな世界を生きていく
























    ミカサ「こらアルミン!走らない」


    エレン「そんな心配しなくても大丈夫だって」


    アルミン「じゃあお母さん、お父さん…行ってきます!」

















    比翼連理 fin
  105. 108 : : 2018/08/11(土) 02:32:13
    最後まで見てくださった方々、ありがとうございました!!
    この作品は「離れていても、心は繋がっている」を描きたいと思って進めてきました。
    それが、「身も心も一つ」になった時、世界をも変えてしまうことができるのではないでしょうか!大いなる力なんて過程に過ぎないのです。

    まだ書きたいことがあったというのが正直ですが、これで終わりになります。

    今まで期待コメなどくださった方々にもとても感謝しています。
    本当にありがとうございました!
  106. 109 : : 2018/08/11(土) 19:16:14
    おぉぉぉ!
    これはすごい作品でした!
    次回作も期待してます!
    お疲れ様です!

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harukaze

春風

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