このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
ボクは、また硬い机で目を覚ます。
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- 1 : 2018/02/20(火) 19:56:12 :
- 「---え?」
ボクは、硬い机で目を覚ました。
見覚えのある、異様な雰囲気を醸し出す教室---ヨダレの跡が残った机。
…そう。絶望はまだ終わっていなかった。
---
※これはダンガンロンパ2などの公式設定を無視した物語です。パラレルワールドの話だと思って読んでいただけると嬉しいです。
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- 2 : 2018/02/20(火) 20:26:44 :
- 「………うっ……頭が。」
鈍い痛みがボクを襲う。
(ここは……教室?)
見覚えのある光景だった。
目の前にはヨダレの垂れた机、そして安っぽいパンフレット。
(……7時55分。)
ボクは壁掛け時計から目を逸らし、扉を見る。
(まず……外に出てみよう。)
ボクはガラリと扉を開き、相変わらず不気味な廊下を歩く。
そしてボクは、微かに話し声の聞こえる玄関ホールを覗き込んだ。
そこには、
「オメーも⋯ここの新入生か⋯?」
「あ……うん………ぇ。」
信じられない光景を見て、ボクの思考はフリーズする。
「これで全員……なのかな?」
「これで15人ですか⋯キリがいいし、これで揃いましたかね⋯」
嘘だ、キミ達は殴られて殺された筈。
(---ぁ)
舞園さんが、居た。
ボクの心にずっと残っていた「コウカイ」。その原因である彼女。
そして、辺りを見渡すと殺された筈の皆が居た。もう、会えないと思っていたのに………
「……うぅ。」
「ちょ、ちょっとキミ!大丈夫か?!」
泣き崩れるボクを石丸クンは支えてくれる。
涙が、止まらなかった。
ボクのパーカー越しに伝わる彼の体温が、熱量が、生命のエネルギーが。
彼が生きている事を、証明してくれていたから。
-
- 3 : 2018/02/20(火) 21:07:07 :
- 「うーむ……集合時間ギリギリに来たので注意をしておこうと思っていたが……その様子だと、体調が悪かったのだな。」
腕を組む石丸くんに江ノ島さ……戦刃さんは口を開く。
「はぁ?ギリギリなら良いでしょ⋯遅刻した訳じゃないし。」
「何を言っているのだねッ!5分前に集合するべきだろう!」
「まぁまぁ、それより自己紹介しようよ!私もまだ全員の名前知らないし、遅れてきたクラスメイトくんの為にもさ!」
ムードメーカーの朝比奈さんは元気よく言い放つ。
「⋯自己紹介だぁ?んな事してる場合じゃねーだろ!!」
「ですが、問題について話し合う前に、お互いの素性はわかっていた方がよろしいでしょう。」
聞き覚えのあるやり取りをする2人。
「なんてお呼びしていいのかわからないままでは、話し合いも出来ないじゃありませんか⋯」
「それも、そうだよねぇ⋯⋯」
「じゃあ、まず最初に自己紹介って事でいいですか?話し合いは、その後という事で⋯」
その言葉を合図に、みんな自己紹介し始めた。
聞き覚えのある紹介文。
若干名との会話中に少し泣いてしまったが……本当に、嬉しかった。
---しかし、これはどういう状況なのだろうか。
確かボクは江ノ島盾子を倒し……そう。
脱出スイッチを押した時、全てを思い出した。希望ヶ峰学園での生活を。楽しかった思い出を。
急に蘇った記憶にボクは驚いてしまったけど…その後の光景の方がより鮮明に記憶に残っている。
そうだ。
あの重厚な扉が開いた先に見えた光景は---
銃口を僕達に向けた、沢山の絶望達だったんだ。
……そう。その後、虐殺が始まったんだ。
(……いや、もう思い出すのはやめよう。)
ボクは、相変わらずクールな霧切さんを……見つめた。
-
- 4 : 2018/02/20(火) 21:47:20 :
- 面白そう…期待
-
- 5 : 2018/02/20(火) 23:04:58 :
- 〘キーン、コーン⋯ カーン、コーン⋯〙
チャイムが鳴り響き---画面にクマのシルエットが浮き上がる。
『あー、あー⋯! マイクテスッ、マイクテスッ! 校内放送、校内放送⋯!』
聞き覚えのある声。
『大丈夫? 聞こえてるよね? えーっ、ではでは⋯』
大嫌いな、あの声。
でも……あの画面の向こうには……
「………」
『えー、新入生のみなさん⋯今から、入学式を執り行いたいと思いますので⋯至急、体育館までお集まりくださ〜い。
⋯って事で、ヨロシク!』
行きたくない。
もう、とっくに気付いている。
ボクは今、コロシアイが始まる前に戻っている。そして、理解している。
『前回のように行動したら、10人死ぬ。』
16人の友達のうち、10人だ。
絶対に嫌だ。
……けれど、今ボクに出来る事は無い。
既に数人は体育館に向かっている。
(・・・仕方、無い・・・・・・のか?)
ボクは少し疑問を抱きつつ1人、
重い足取りで体育館へと向かった。
---
飛び出してきた「ソレ」は、耳障りな音を鳴り響かせる。
「え⋯? ヌイグルミ⋯?」
「ヌイグルミじゃないよ!ボクはモノクマだよ! キミたちの⋯この学園の⋯学園長なのだッ!!
ヨロシクねッッ!」
モノクマを視認したボクが最初に抱いたものは不快感でも、恐怖でも無く……不安だった。
前回、ボク達に銃を突きつけた「絶望達」は、みんな決まってモノクマのマスクを付けていた。
怖い。
モノクマ⋯彼女の行動が予想できないから。
前回、何度も奇想天外な事をしてボク達を絶望させてきたモノクマの正体、江ノ島盾子。
冷酷で、残忍で……絶望に溺れた彼女。
ボクなんかより何倍も頭が良くて、運動神経も高い。
そんな江ノ島盾子に勝っても、待っているのは無慈悲な死だなんて……絶望的だ。
「殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺呪殺⋯殺し方は問いません。『誰かを殺した生徒だけがここから出られる⋯』それだけの簡単なルールだよ。」
いつの間にか、話は進んでいたようだ。
本当に、よく考えられている。
この状況に追い込む事で友達同士で殺し合いをさせ---後で「実はクラスメイト」でした。
と、カミングアウト。
それは最悪なエンドだ。
だからボクは---
(希望を捨てないよ、江ノ島さん。)
-
- 6 : 2018/02/20(火) 23:13:39 :
- 少しお聞きしたいのですが---
他の方々の小説でよくある
苗木「ボクは苗木誠。」
舞園「私、エスパーですから!」
という形式の方が読みやすいですか?
読みにくいのでしたら、そちらの方に変えようと思うのですが……ご意見、お聞かせください。
宜しくお願いします。
PS,取り敢えず今日の投稿は終わりです。
読んでいただき、ありがとうございました。
-
- 7 : 2018/02/21(水) 00:23:01 :
- どちらでもいいんじゃないでしょうか
基本的にみんなしゃべり方に癖があるので無くても判別は容易かと
なので作者さんが書きやすい方でいいと思います
-
- 8 : 2018/02/21(水) 18:52:47 :
- ご意見、ありがとうございます!
------
ボクが決意を固めていた時⋯丁度、トラブルが発生していた。
「キャー! 学園長への暴力は校則違反だよ~ッ?!」
「るせぇ!! 今すぐ俺らをここから出せッ!でなきゃ力ずくでも⋯!」
覚えのある光景、そして確かこの後---
モノクマから機械音が鳴り始める。
「おい⋯今更シカトかぁ⋯!?」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「妙な機械音出してねぇで、なんとか言いやがれッ!!」
機械音の間隔が早まる。
(⋯そうだ。この後霧切さんが---)
「危ない、投げて⋯ッ!」
「あ⋯?」
「いいから早く⋯ッ!」
彼女の言葉に気圧された大和田クンはモノクマを放り投げる。
〘ドゴォオォォオン⋯⋯⋯⋯〙
痛みを伴う激しい耳鳴り⋯
むせ返る火薬の匂い⋯
実際 音に驚きはしたが最初ほど驚きはしなかった。
まぁ、ボクも「おしおき」されかけたりしたからね⋯⋯
その後、青ざめているクラスメイト達に電子生徒手帳が渡される。
モノクマが姿を消し---残されたクラスメイト達は困惑の声を上げる。
みんなで話し合い、現状を把握した時---クラスメイト達は向け合う。
⋯⋯疑心と、敵意を。
(⋯嫌だよ。)
ボクは静かに目を伏せる。
(コロシアイだなんて⋯やってはいけない。)
殺した所で意味は無い、結局外で絶望達に蹂躙されるだけだ。
疑心暗鬼だらけの体育館で---ボク達はただ、押し黙ってお互いを観察していた。
「⋯⋯⋯」
1人だけ、苗木「だけ」を静かに観察するクラスメイトが居たのだが⋯⋯ボクは、気付けなかった。
-
- 23 : 2018/02/21(水) 19:16:14 :
渋い表情を浮かべた彼らは校則について話し合う。
⋯この後の展開を知っているボクは、静かに十神クンの近くに立った。
やがて⋯予想通りの展開になる。
「⋯どけよ、プランクトン。」
「ああッ!? どういう意味だッ!?」
「大海に漂う1匹のプランクトン⋯」
彼は腕を組み、嘲りの目を向ける。
「何をしようが、広い海に影響を及ぼす事のないちっぽけな存在だ⋯」
「⋯ころがされてぇみてーだな!」
効果音を付けるなら「ビキィッ」か「プッツーン」な顔をして拳を鳴らす彼。
ボクは大和田クンの行く手を遮るように立つ。
「け、喧嘩はダメだよ、やめとこうよ⋯?」
(⋯で、出来るだけ痛くないといいなぁ⋯⋯)
語尾が弱めな注意をすると彼は拳をふり被る⋯⋯
「っるせぇ!」
そしてボクの頬目掛けて⋯⋯ッ!
〘ガンッ!〙
また、殴られた。
しかし、殴られる事は知っていたので両腕で防ぐ事が出来たが---
〘ガッシャァァアァン!!〙
流石は『超高校級の暴走族』
ボクのちっぽけな防御など全く意味を成さず⋯結局吹っ飛んだ。
全身の痛みとともに、ボクは思いつく。
(そうだ⋯彼だ。彼に助けてもらえれば---)
それと、大神さん。
大和田クンと大神さん⋯できれば戦刃さんも仲間にして脱出できれば⋯⋯
もしかしたら、絶望を撃退できるかもしれない。
薄れゆく意識の中、ボクは結論を出し---
意識を手放した。
-
- 24 : 2018/02/21(水) 19:22:45 :
- 先程。荒らしの方が出たので、そのスレを消してみたのですが---どうですか?ちゃんと消せてますか?
ご報告して頂けると助かります。
-
- 25 : 2018/02/21(水) 22:39:54 :
-
「ん………うぅ。」
目を覚ましたボクは全身と、主に後頭部の痛みに顔を顰める。
袖を捲って確認してみると、腕に湿布が貼られてあった。誰かが治療してくれたのだろう。
ボクはベットから足を下ろし、少し考える。
(⋯まず、優先すべきは舞園さんについてだ。)
彼女の事件、それを回避するんだ。
舞園さんはモノクマに「動機」を見せられ、桑田クンの殺害を企ててしまう。
⋯⋯その結果、彼女は反撃を受け死亡してしまうのだが⋯それは避けたい。
だから、まずボクがすべき事は---
〘ピン、ポーン⋯⋯〙
(⋯舞園さんと仲良くなる事だ。)
ボクは扉を開け、彼女に微笑んだ。
---
「苗木くん⋯本当に、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だって、痛みも引いてきたし⋯⋯」
彼女は「でも⋯」と言いながらボクの顔をのぞき込む。
「⋯やっぱり、少しまだ腫れてます。」
「ちょ、舞園さん顔近いって⋯⋯!!」
ボクが赤面しながら後ずさると、舞園さんも赤面する。
「---ぁ、ごめんなさい苗木くん⋯⋯嫌、ですよね⋯⋯」
「い、嫌じゃないよ?!むしろボクなんかに気を使ってくれて、感謝の気持ちしか無いというか⋯⋯」
彼女の泣きそうな表情を見て、ボクは焦ってしまう。
そんなボクの様子を見て彼女は楽しそうに笑った。
「ふふっ、何ですかそれ。」
「あ、あはは⋯は。」
彼女の笑顔。
それを見ていると不思議と癒され---
『ああ、ボクは彼女の大ファンだったんだな』と思い出させてくれる。
「大ファンだなんて⋯嬉しいです。」
「⋯えっ! ボク、声に出してた?!」
慌てるボクに彼女は真顔で応える。
「⋯エスパーですから」
「⋯冗談です---って、 え?何で泣いてるんですか?」
「⋯え? 泣いて、る?」
指先で頬に触れて確かめてみると湿った感触が帰ってきた。
(ああ⋯そうか。嬉しいんだ。)
クラスメイトとして、ファンとして。
彼女とこのやり取りを出来る、その事が---
「ごめん、目にゴミが入ったみたい。」
「そう、ですか。」
一瞬、彼女は腑に落ちなそうな顔をしたが⋯直ぐにいつも通りの顔になる。
「そう言えば、苗木くん⋯少し、聞きたい事があって---」
「うん?」
彼女は思案顔で口を開いた。
「苗木くんって、ひょっとすると六中じゃないですか?」
-
- 26 : 2018/02/28(水) 18:53:59 :
- ちゃんと消えてますよ~
面白いです、期待!
-
- 27 : 2018/02/28(水) 21:01:31 :
- ご報告ありがとうございます!
丁度テストが全て終わったので更新再開します!少々お待ち下さい⋯
-
- 28 : 2018/02/28(水) 21:48:41 :
- 「⋯うん、そうだよ。」
「⋯やっぱり!」
彼女は心底嬉しそうに笑う。
「私も同じ根黒6中だったんです!
四組にいたんですけど、知ってます?」
「うん、知ってるも何も⋯ボクは舞園さんのファンだからね。」
⋯そこまで言い、これだと話がそこで途切れてしまう事に気付く。
僕は慌てて言葉を紡いだ。
「ま、舞園さんがボクの事を覚えていてくれたなんて⋯感激だなぁ!」
「もちろん覚えてるに決まってるじゃないですか!だって、同じ中学校だったんですよ?」
「で、でも、同級生なら沢山居たし⋯⋯それに、ボクなんか目立たないヤツで⋯⋯⋯」
そう、そこで確かボクは---
「何事にも平均的で大抵の趣味がランキング1位だし、王道って言葉すら裸足で逃げ出す普通中の普通で⋯」
「もーうっ、何言ってんですかぁ?」
このボクの台詞はスラスラと出た。
⋯まあ、常日頃から思っていた事だし。
「苗木くんって変わってますね。」
「か、変わってるって⋯⋯」
「アハハ⋯!」
彼女はケタケタと声を上げて笑った。
それは、見ていたら心が安らぐような⋯
そんな不思議な、最高の笑顔だった。
------
この後、調査の結果を報告し合う会議が始まった。
みんなが手に入れた情報を交換し合う。
ボクは少し、真実を皆に教えようか迷ったが---止めた。
まだ、この時のボク達は ただの「名前を知ってるだけの赤の他人」。
しかも、この疑心暗鬼な状況でそんな事を口走ったら「変なヤツ」って思われて終わるだけだ。
なのでボクはこの会議中、目立たない様に口を閉じて、ただ皆の話に耳を傾けていた---
その後、セレスさんの提案でルールを追加し---
ボク達は、自室へと戻った⋯
「⋯⋯あ、そうだ。シャワールーム⋯」
ボクは小声で呟き、ドアノブを捻る。
〘ガチャリ〙
「ブブーっ!鍵じゃな---え?」
モノクマが飛び出たポーズのまま固まる。
「⋯苗木くんっ!なんで知ってるの?!」
「⋯⋯あ。」
(しまった⋯!江ノ島さんに怪しまれてしまう⋯⋯!)
痛恨のミス。
やってしまった。
「え、っとね。ボクの実家のドアも建て付け悪くてさ、同じ感じでやったら開くかな⋯⋯って思ってやってみたんだ!」
(幾ら江ノ島さんでも、この情報は知らないはず⋯!)
「⋯ふぅーん。」
モノクマはつまらなそうに嘆息をつく。
「ちぇー!つまんないのー!そんなんだから建て付けの悪い部屋を引くんだよ〜!バカばーっか!」
「⋯⋯はぁ。」
彼女が居なくなったのを見て、僕は静かに肩の力を抜いた。
-
- 29 : 2018/04/05(木) 10:34:55 :
- 凄い面白いです!
期待してます!
-
- 30 : 2018/04/10(火) 13:13:04 :
- 期待ありがとうございます!
ーーー
次の日の朝、ボクは舞園さんと一緒に行動していた。
目的は勿論、「コロシアイ」を防ぐ為。
武器探しの後に、他愛ない会話をし続けるボク達。
とても、楽しい時間だった---
が、ここで話の流れが変わる。
「⋯苗木君に【夢】とか⋯ありますか?」
「⋯⋯うーん、特に無いかな⋯舞園さんは?」
ボクは、言葉を選びながら聞き返した。
「私は⋯私の夢は⋯⋯」
「幼い頃から、ずっとアイドルに憧れていました。」
彼女は、どこか寂しげな表情で話し続ける。
舞園さんは⋯いったい、何を思って話してくれたのだろう?
「不安を打ち明けたかった?」
「誰かに自分を理解して欲しかった?」
「それとも、同情した僕を利用する為?」
これらの疑問は、前回知る事は不可能だった。
---だが、今 彼女は生きている。
また、やり直せる。
例え、世界が絶望に満ちていようとも⋯
みんなが居るなら、もう1度再生できる。
そう、信じている---
「みんなと一緒に夢を叶えて、一緒に仕事出来て、今はすっごく幸せです。」
「でも⋯だから⋯⋯
時々、怖くなるんです。」
少女は、不安な将来に怯える。
「いつか世間に飽きられて⋯そうしたら⋯私達どうなっちゃうのかなって⋯」
「夢を失って、楽しい日々も終わって⋯みんな⋯バラバラになっちゃうのかなって⋯⋯」
震えながら、振り絞った声で話し続ける彼女。
---僕は知っている。
彼女が裏でかなりの努力をしていた事を。
休みは殆どない。
誕生日の日も、クリスマスも、年明けも⋯みんなと一緒に過ごす事は叶わなかった。
勿論、次の日に祝ったけど⋯
きっと、寂しさは感じていたと思う。
「きっと⋯仲間も待ってるのに⋯⋯」
「こうしている間にも⋯忘れられていく⋯」
「どんどん⋯私達が⋯消えていく⋯⋯」
ボクは、乾燥して張り付いた唇を開く。
「⋯舞園さん。」
ボクは、一歩前に出た。
「⋯⋯ボクは知ってるよ。舞園さんが、僕なんかが想像もつかないほどの努力をしてきた事を。」
ボクは、続ける。
「⋯ボクは、信じてるよ。舞園さんが⋯いや、舞園さん達が積み上げてきたモノは、そう簡単に崩れない事を。」
「⋯⋯でも、私以外のライバルが---」
「舞園さん。」
「キミ達は、そう簡単に忘れ去られる存在じゃない。
キミ達は、遅れを取ったとしてもやり直せる。」
「⋯⋯なにを⋯⋯⋯⋯
何を根拠に、そんな事っ!!!」
「ボクが舞園さんのファンだからだよ。」
息を呑む彼女に、教えてあげる。
「ボクが、舞園さんのファンだから、確実に言える。
たった数日、たった数ヶ月で皆に忘れられるほど キミ達は小さな存在じゃない。」
「---もう、キミ達は僕達にとって大きい⋯いや、あまりに大き過ぎる存在なんだよ。」
⋯1人のファンは、包み隠さずに舞園達への思いを告げた。
-
- 31 : 2018/04/10(火) 14:39:54 :
「⋯⋯そろそろ、昼ごはんを食べに行かない?ほら、気分転換にさ。」
「⋯そう、ですね⋯⋯⋯」
舞園さんは静かに目を伏せる。
まだ、困惑しているのだろうか?
⋯心に届いてくれている事を祈ろう。
「⋯苗木くん⋯⋯」
「⋯⋯⋯ありがとうございます⋯⋯」
⋯きっと、届いているだろう。
ーーー
「ちょ、ちょちょちょちょーーーーっとぉ!!!!!
な、なにしてんの苗木クン?!?!?!」
ボクは更に数回踏みつける。
ディスクが割れたのを確認したボクは、振り返った。
「⋯いや、別に⋯⋯普通の行動だろ?」
「どっ、どこが普通なんだよ?!学校の備品を無言でぶっ壊す事の「どこが」普通なんだよっ?!?!」
騒ぎを聞きつけた皆が視聴覚室に集まってくる。
「この映像の「中身」⋯⋯僕の映像を見て分かった。これは見る必要が無い物だよ。」
(⋯これで、舞園さんが「動機」を見る事は無くなったけど⋯⋯江ノ島さんなら⋯⋯)
「⋯まぁ、いいけどね!データは残ってるし⋯⋯ほら、もう一つあるから、みんな安心して見ていいよ!
---あ、苗木くんには気を付けてよね!勝手に人のディスク壊すぐらいだから。
何をするかわかったもんじゃないよ!」
⋯やっぱりか。
(これは避けられない⋯どうしようもない、のか。)
ボクは嘆息をつき、座席に腰を落とした。
「⋯一応、聞いてもいいかしら。」
霧切さんが話しかけてくる。
「⋯⋯僕のDVDの中には、「半壊した自分の家」が映っていたよ。」
それを聞き、何人かは息を呑む。
「⋯なるほどね⋯⋯」
彼女はそう呟き、自分のDVDを確認し始めた。
最初の方はみんな戸惑っていたが---やはり好奇心には勝てないのか、結局全員見てしまった。
⋯そして、舞園さんが取り乱し、走り出してしまう。
(⋯⋯舞園さん⋯⋯⋯)
ーーーーー
『ピンポーン⋯⋯』
ボクは、扉を開ける。
(⋯⋯舞園さん⋯⋯⋯⋯)
結局、駄目だったという訳か。
ボクの説得、慰め。
全て⋯⋯意味が無かったのか。
「ごめんなさい、こんな夜遅くに⋯」
「⋯⋯⋯なんで。」
「⋯え?」
彼女は、困惑する。
「⋯⋯なんで、信じてくれないんだよ?」
⋯悔しい。
悔しくて堪らない。
「⋯な、何のこと---」
「⋯⋯舞園さんが包丁を取るところを見た。」
「っ!」
「⋯殺すつもりなんでしょ?誰かを。」
「⋯⋯違いますよー!護身用にと思って---」
「良いよ、嘘をつかなくても。ボクと部屋を交換するつもりだったんでしょ?」
すっかり頭に血が上ってしまった苗木は続ける。
「ボクに⋯罪を擦り付けるために。」
「⋯⋯そこまで言うなら、今夜 私の部屋に泊まりますか?」
「へ?」
「私、殺人なんてしないので⋯その証明に。」
「え、あ、いや。それはマズイんじゃ⋯」
「苗木くんになら⋯⋯良いですよ?」
⋯そう言い、彼女は照れた表情を魅せた。
ーーーーー
「お、おやすみ⋯⋯」
「おやすみなさーい。」
ボクは、シーツを敷いた床に横になる。
流石に同じベッドでは寝ない。けれど⋯同じ部屋で寝るというのは、凄く緊張する。
(⋯でも。)
これで、きっと事件は起きないだろう。
部屋も交換してないし⋯⋯今夜は大丈夫な筈だ。
明日以降どうするかも考えておかないとな⋯⋯
「⋯⋯ふぁ⋯ぁ⋯⋯」
寝る前にアイスコーヒーを1杯飲んだというのに、凄く眠くなってきた。
やっぱり⋯舞園さんの匂いを嗅いでいると落ち着く⋯⋯の、かな⋯⋯⋯
「⋯⋯おい、起きろ。この変態。」
ボクは、飛び起きた。
-
- 32 : 2018/04/10(火) 15:51:19 :
-
飛び起き、視界に入った光景は大和田くんと大神さんの姿。
ベッドには舞園さんの姿は無い。
「オラァ!早く起きろ、このクズが!」
「は?え、な、なに?」
「てめぇがこんなクソ野郎だったとはなぁ⋯⋯覚悟しとけよ⋯⋯⋯?」
何故かご立腹の様子の大和田くんに大神さんが語りかける。
「待て⋯⋯大和田。まだ苗木が犯人とは決まった訳では無いだろう。」
「るっせぇ!コイツが舞園の鍵を取ったのは確定してんだろ?!」
「⋯⋯まだ、確定ではない。現時点で1番怪しいのが苗木というだけだ。」
大神さんは僕に視線を投げかけてくる。
「⋯苗木よ。何故、こんな状況になっているのか分かるな?」
「いや、見当もつかないんだけど⋯⋯」
「嘘吐くんじゃねぇ!!!」
まって、本当に怖い。
「⋯⋯苗木。よく聞け---
⋯⋯桑田が殺された。」
ーーー
「⋯⋯⋯なんだよ、これ。」
ボクの部屋に倒れ込んでいたのは、変わり果てた桑田くんだった。
僕の部屋の床には大きな血溜りが出来てしまっている。
「苗木、お前の居た「舞園の部屋」で2つの証拠品が見つかっている。
『凶器の包丁』
『返り血の付着したジャージ』
⋯そして、事件現場はお前の部屋だ。」
(⋯⋯⋯やられた。)
「⋯⋯舞園さんは⋯?」
「舞園ちゃんなら、私と同じ部屋に居たよ。『部屋の鍵を落としたから泊めてくれないか』って言われて⋯⋯」
朝比奈さんは悲しげな目でボクを見てくる。
「⋯⋯苗木。なんで、こんな事したの⋯?」
「⋯⋯⋯違う。ボクは、殺してなんか⋯」
油断した。
そりゃあそうだ。
至って簡単。
寝ているボクから鍵を抜き取り、桑田くんをボクの部屋に呼び出す。そして⋯後は前回と同じだ。
少し違うとしたら、「ボクが舞園さんの部屋の鍵を拾い、勝手に舞園さんの部屋で寝た」という冤罪もプラスされた事ぐらいだ。
⋯これは、無理だ。
ーーー
背後から、死が近付く音が聞こえてくる。今回はアルターエゴも居ないので無理だろう。
学級裁判の結果は、ハズレだった。
霧切さん、そして他何名かは違和感を感じ、粘っていたが⋯結局 駄目だった。
それはそうだろう。
多少の違和感があったとしても、ボクの反論は皆からすれば証拠のない「憶測」。
対して舞園さんの方は証拠もあり、演技力も高い。
詰み⋯⋯だ。
「苗木くんっ!!!私⋯⋯私っ!!!」
黒が決まった時、舞園さんは泣きながら謝っていた。やはり、罪悪感は感じてくれているようだ。
ボクは、プレス機から鳴り響く騒音に負けないように声を張り上げる。
「舞園さんっ!!!」
「っ⋯⋯」
ボクは、泣きじゃくる彼女を安心させるように微笑む。
⋯何故だろう。
これからボクはお仕置きされて死ぬのに⋯⋯怖くない。
⋯多分、だけど。
ボクは「希望」しているんだと思う。
ボクなら、きっとやり直せると。
「今度は、守ってみせるよ!!!」
最後にボクは、そう言い放った---
次の瞬間、衝撃。
そして⋯
⋯⋯ボクはまた、硬い机で目を覚ました。
-
- 33 : 2018/04/10(火) 16:03:39 :
- すみません、初めてのシリウス展開なので物語の構成に穴があるかもしれません。
時系列とかに違和感を発見したら教えて頂けると嬉しいです!それと、今日の更新はここまでです。
ありがとうございました。
-
- 34 : 2018/05/05(土) 21:49:22 :
「---ボクの名前は苗木誠。
一応 超高校級の幸運って事になってるけど⋯⋯実際は平凡で普通な高校生なんだよね⋯⋯」
「そんな事は無いぞ!!!
人は誰しも無限の可能性を持っている!違いがあるとしたら、やる気があるか無いかだけだ!!!
苗木誠、いい名前だな!
自分の親に感謝したまえ!」
ボクは今、また自己紹介をしていた。
口では何度も同じような自己紹介を繰り返しているが、頭では必死に打開策を考えていた。
前回、ボクは舞園さんに説得をし---
結果、駄目だった。
僕の力無い言葉は彼女の心には響かなかった。
⋯じゃあ、彼女が犯行準備を終えて部屋で待機してる間に部屋のネームプレートを元に戻しておく⋯?
それなら、桑田くんは舞園さんの部屋のノックをして⋯⋯
舞園さんと出会う事は無くなるだろう。
⋯いや、駄目だ。
事件が起きるのを先延ばしにするだけだ。その次の日にでも、彼女は再び決行するだろう。
なら、犯行が失敗する事を知らせられば⋯事を起こすのは止めるだろうけど⋯⋯
それをどうやって伝えるか⋯だよね。
(⋯⋯⋯ぁ。)
ふと、思い付く。
成功する可能性の高い方法。
だが---
(⋯幾らなんでも、それは⋯⋯)
この方法では彼女が傷付いてしまう。
だが⋯⋯死ぬよりはマシか。
⋯いや、でも⋯⋯⋯
(⋯まだ決める事じゃ無いだろ、まだ時間はある。もう少し考えてれば、きっと良い考えが思い付くさ。)
取り敢えずボクは、そう結論付けた。
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