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雪と雪希

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  1. 1 : : 2018/02/04(日) 16:31:31
    ちょくちょくやってきます。
  2. 2 : : 2018/02/04(日) 16:47:56
    昨日の夜に雪が降るだろうと予報されていたが、結局雪は降っていない。
    学校が休みになるかと淡い期待を抱いた自分を笑いながら車を降りた。

    履き替え損ねた上履きに転ばされながらも階段をのぼる。



    階段をのぼった突き当たり。

    「おい」
    肩をつつかれる
    「雪。」

    「……はい?」

    それだけ言うと彼は教室へ向かった。


    名前を呼ばれたのかと思ったが違うらしい。
    彼は外の雪をさして雪。と言ったと気づいたのは教室についてからだった。

    よく考えれば話したこともない彼が私の名前を呼ぶはずがない。
    こんなことに気づかなかったのは少しでも動揺してしまったからであり、話したこともない彼が私に雪が降っていることを伝えたという矛盾があったからである。
  3. 3 : : 2018/02/04(日) 17:12:14
    彼はよく自分の頭をなでる。

    もちろんこのことに気づいたのはユキ事件(雪と自分の名前の雪希をかけた事件なのだが大して上手くもない)の後なのだが。

    彼は別に誰にも褒められない訳では無いし、別に寂しがり屋にも見えない。
    どういう心情で頭撫でているのだろうか。自分も真似してやってみるがよく分からなかったし。

    他にもそれが気になる女の子がいたらしく「どうして頭撫でるのー?」と聞いたのを見たが返答はなかった。軽く微笑みを返しただけらしい。
  4. 4 : : 2018/02/04(日) 21:51:27
    大事なことを記述しなければならない。
    今は12/25ということだ。
    そして、彼は違うクラスの同じ学年ということ。

    …そうだ、これは私の観察日記なのかもしれない。
  5. 5 : : 2018/02/05(月) 23:28:03
    12/26

    二日目。よく三日坊主とは言われるがこの日記はなかなかに続きそうな気がしている。というのも彼はユキ事件からある程度の頻度で私に関わっているからだ。

    彼は英語の時間私の右隣であった。(自分が英語の授業を睡眠して過ごしていることがバレてしまう、なかなかに恥ずかしいものだ)
    「今日のテストの範囲どこだっけ?」
    と聞かれて、曖昧なページ数を答えたことで今日の交流は終了した。

    これだけのことではあるが、私からすれば大きなことである。彼は英語が得意で、席が右隣。
  6. 6 : : 2018/02/09(金) 00:20:50
    12/27

    数学の授業は違うクラスらしい。私はBクラス(上から2番目)なのだが、もちろん彼はAなのだろう。

    ところで私は数学が好きではない。答えがひとつに終着するから。「国語と違って何通りもの解き方が…」なんて言われるが、結局答えはひとつだ。

    答えなんて、ひとつに決めなきゃいけないんだろうか。
    多くのものをつめこみ、曖昧なまま半分の点をもらえる人生では、だめなんだろうか。
  7. 7 : : 2018/02/14(水) 21:17:34
    12/30


    自称進学校のうちも流石に休みらしく、家でまったり出来ている。

    しかしこれは彼の観察日記であり、彼と合わない日は書かないことになっているのだが、今日くらい大丈夫だろう。なんせもうすぐ年が終わる。

    来年もどうぞ、よろしくお願いします。神様。
    雪の神様も、そろそろどういう意図なのか教えてくれてもいいですよ。
  8. 8 : : 2018/02/15(木) 19:33:30
    1/5

    ユキ事件の現場にて、彼と会合した。
    犯人は現場に戻るんだよと言わんばかりのすました顔で奴は
    「あけましておめでとう」
    と言った。

    私は周りを見渡したが自分以外は誰もいなく
    「あけましておめでとうございます」
    と自信なさげに言う。

    それだけ言い、私と彼は教室へ向かった。
  9. 9 : : 2018/02/18(日) 13:05:51
    1/6

    ユキ事件現場は廊下なのだが、私と彼はあまりにも朝早いために誰も通らない時間帯に会話をすることになる。

    それはそれでプレッシャーだが

    それはそれで好都合でもあった。


    「あの」
    声をかける
    振り向く彼。
    「お、はようございます」
    彼はふっと笑うと「おはよう」と声を語った。


    別に彼はいい声をしてるわけでもないが、なんだが彼の声は「語る」ように私には聞こえている。
    どこか私を救ってくれそうな、曖昧な響き。
  10. 10 : : 2018/02/22(木) 05:50:46
    1/9

    文系理系選択申請書が配られた。
    以前先生に「どっちが向いてますかね」と問うたところ「数学にやる気出せばどっちでも行ける」と言われた。

    自慢ではないがある程度なんでも、そつなくこなせる私にとって文系理系かは究極の選択であった。
    出来ることならどっちにも行きたくないのだが。
  11. 11 : : 2018/03/05(月) 00:23:06
    1/10

    「あの」
    挨拶もせずあの、で切り出したのはそりゃあもう失礼ではあったのだが
    「将来、なにしたいんですか」
    と早く聞かずにはいられなかった。

    彼は珍しく恥ずかしそうに
    『……警察官』
    と答えた

    何が恥ずかしいのか検討もつかなかったが確かに拍子抜けはした。

    そんな私の様子を見て何を思ったか、さらに恥ずかしそうに頬を膨らませ、彼は、廊下の角に消えていった。




    また、遠くなった。
  12. 12 : : 2019/11/02(土) 16:11:47
    1/11

    今日、彼の名前を初めて知った。これで「あの」と話しかける必要がなくなったわけだが、それでも私は「あの」と話しかける。

    断じて名前を呼んだ時に嫌な顔をされたら嫌だな、とかそういうわけではない。断じて。
  13. 13 : : 2019/12/15(日) 23:28:07
    日にちがあらかじめ書いてある日記帳を買えばよかった。
    なんにも書いていない白紙のノートに書き始めてしまったことを今更後悔している。自分で、日にちを書くごとに、あらゆる『ゴール』が近づいていることを意識するんだ。
  14. 14 : : 2019/12/15(日) 23:38:16
    龍角散のど飴が一番効くとわかっていても不味いものはあんまり食べたくない。風邪をひいた。
    親友(向こうが「よ!親友!」と呼んでくるのだ)はこの風邪がいつものメンタルからくるアレ、だと心配してくれているが、多分今回は違うんじゃないだろうか。
  15. 15 : : 2019/12/15(日) 23:39:15
    ここ最近彼に関係ないことを書いてしまっていた!
    不覚。

    というのも原因は分かっている。彼の進路が決まっているからだ。夢を持っている、そっち側の人間。
    端的に言うと避けていたというわけである。

    そうか。風邪はメンタルからきていたアレ、であった。
  16. 16 : : 2019/12/15(日) 23:47:25
    彼と現場で会合した。

    「具合よくないの?」
    「はい」
    「どうしたの」
    「わからないんです」
    「なにが」
    「進路」

    大抵の人は『決まってる人のほうがすくないよ!まだ決めてなくても大丈夫だよ』なんて言うのだが、彼は違っていた。

    「明日の放課後、暇?」
  17. 17 : : 2021/02/13(土) 03:22:42
    結論から言うと、放課後特に何かしたわけではなかった。

    隣駅まで連れていかれ、クレープを食べて、タピオカを飲んだだけだった。
    「何か話があったんじゃないんですか」
    その一言に彼は「あったけど、忘れた」と笑った。

    なんだそれは。私は『答え』と『ゴール』を知るために、覚悟を決めて来たというのに。



    あ、クレープ代の500円、忘れずにかえさなきゃいけない。
  18. 18 : : 2021/02/13(土) 03:29:54
    朝、500円を握りしめ「現場」で待機していたところ、彼は私を視界に収めたとたんヒュッと表情を変えたのが分かった。

    「ごめん、進路のこと話そうとしてたんだけどさ。なんか、辛そうだったから。やめたの。ごめん。」
    「でも、やっぱり、しがらみってしがらみだ。」
    「どうにかしないと、すすめない」

    私には、彼が、「私」でなくて、「彼」自身に語り掛けているように聞こえた。


    「警察官になりたいと思ったのは、小さいころからなんだ。」
  19. 19 : : 2021/02/13(土) 03:31:20
    明日は家庭科の授業だから裁縫セット忘れないようにする(赤丸で囲んである)
  20. 20 : : 2021/02/13(土) 10:02:53
    期待
  21. 21 : : 2021/10/25(月) 21:20:55
    最近バタバタして全然日記を書けていなかった。

    そうだ、彼の進路の話だった。

    「警察官になりたいと思ったのは、小さいころからなんだ。」
    その言葉に続いたのは
    「父は銀行員なんだけどね」
    という一言だった。

    私が「なんで警察官に?」と聞くと
    「銀行強盗があって、父がケガしたんだ」
    と答えた。

    私が最悪の事態を思い描いていると、「いや、本当にけがをしただけ」とフォローが入った。
    「でも、そんな父が情けなく見えた。小さい頃の俺にはね。」
    と少し苦笑いで語る彼の横顔が、私には、まだそれだけではないんだと、何かを言いたいような顔に見えた。
  22. 22 : : 2021/10/25(月) 21:22:05
    自分でも情けなくて書くか迷ったけど。日記なんだし素直に書こうと思う。

    それを問い詰めたら、自分も傷つく気がして、私は「何かを言いたいような顔」を問い詰めることが出来なかった。

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RuinaAvaren

長門るいな

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