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君は最高
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- 1 : 2018/01/23(火) 09:43:23 :
- 箸休めに。
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- 2 : 2018/01/23(火) 09:43:46 :
- 「君の絵、とても綺麗だね。」
「そうかな。僕は、暇潰しに描いた程度だけど。」
コンクールに描いた絵。私が誘って、君は暇潰しって言って参加した。今は作品が貼り出されている市役所に来ている。
館内は暖房が炊かれて案外に暖かい。君は厚ぼったいコートを脱いでいて。いつもなら、その筋張った腕にドギマギしていたけど。今の私に、そんな余裕は無かった。
「うーん、まぁまぁだったかな。」
君はそう言うけど、最優秀賞までもらっている。およそ素人が描いたとは思えないほど、緻密で綺麗に書き込まれた、美しい作品だ。描かれているのは、何か綺麗な女の人が、小さな赤ん坊の腕を噛んでいる絵だ。肌色が、柔らかな布が、美しい目が。全て生き生きしているんだ。
私が描いたものは、君と比べると明らかに劣っているけど。運が良かったのか、何か特別な賞だった。市長賞?君の描いた女性の青い目。どこか憂いているような表情は君にそっくりだ。
「さ、帰ろっか。」
一通り批評文を読み終わって、君はそう言ってコートを羽織った。
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- 3 : 2018/01/23(火) 09:44:06 :
- 市役所を退出して、暫く歩いたけど。歩道に出たところで、不意に進むことが出来なくなってしまった。さっきの君の絵の女性の瞳が忘れられない。青みがかった目だ。
「ん?どうした?」
君はゆっくりと振り返って、私を見るんだ。さっきの。さっきの批評文、見たよ。でも、君はどうしてそんな目で見ていたの?
君は最も優秀な賞だったでしょ?これ以上に無いくらいの傑作だって。
私の描いたもの、全力で。全力で臨んで描いたんだよ。私の全力だったんだ。でも、君はそれよりも上手に、美しく、綺麗に描いてしまうんだ。
「君は、最高だよ。」
「そうかな」
「そうだよ、羨ましいくらいに。」
君は何とも思わないような、そんな顔をしていた。私のお腹に、お腹の奥に。鉛のような重いものが沈んでいった。
君の全て、私が食べてしまえたら。どれだけいいだろうか。君の描いた、女性みたいに。君を食べてしまえたら。どれだけいいだろうか。
「でも。」
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- 4 : 2018/01/23(火) 09:44:58 :
- 「君は最高なわけじゃん、これ以上。何を望むってのさ」
コートの裾を掴む手に力が入る。君はあっけらかんとしているけど、私の心臓はバクバクしている。声が震えて、何だか涙が出てきそうだ。
「僕は、ただ退屈だっただけだよ。全部、暇潰しさ。」
私のことなんか目もくれないような、そんな冷たい言葉だった。君の才能に、君の優秀さに、君の飛び出た能力に。一体どれだけの人が泣きたくなっただろうか。目が熱い。
「今回、描いてみたけど…だけどやっぱり、退屈は埋まらなかったよ。」
あぁ、あぁ。本当に、本当に。君は私のことなんて見ていないんだな。ただ、自分の。自分の中にある退屈を噛み潰す為だけの、絵だったんだ。冷たい木枯らしが私と君の髪を乱していく。
「…最高な君の、君の。全てを食べてしまいたい。食べて、私の中で君の細胞を取り込んで。君の才能を、能力を、優秀さを。私の中で受け継ぎたい。」
「…何それ。」
「私でも、何言ってるか分かんないよ。…でも、君は。君は私の中で、君は生き永らえて。君は私の中でひっそりと生きるんだ。やがて、私が忘れた頃に、大きくなって。私を食い破って出てきてしまうだろう。」
君は気色悪そうに私を見て、手を差し出した。私はその手を握って一緒に歩くんだ。最高な君を、食べてしまえたら。私も最高になれるだろうか。
季節は冬。君はくしゃみをした。
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- 5 : 2018/01/26(金) 23:36:42 :
- とても期待です。
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- 6 : 2018/01/26(金) 23:44:22 :
- まちがえた。執筆お疲れ様でした。
君は最高、すごく面白かったです(作文)
こんなssが書けるようになりたぁい!
キイさんの作品ほんとうに好きなのでこれからもたくさんss書いて欲しいです…
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- 7 : 2018/01/28(日) 16:03:35 :
- >>6
たまご、ありがとう!
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