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永遠の呪い
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- 1 : 2017/08/23(水) 22:10:27 :
- ここは魔族と人間が敵対し合う世界。
互いに自然といがみ合うような、そんな世の中。
だが、魔族と人間には明らかな数の違いがあった。
多勢の人に対して魔族は100にも満たないほどだった。
しかし、魔族は順調に村を占領して行った。
なぜそんなことができたのか、魔族は、死なないからだ。
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- 2 : 2017/08/23(水) 22:11:15 :
- 期待です
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- 3 : 2017/08/23(水) 22:11:16 :
- ここは人間の住む街だ。見渡せば敵である人間がいっぱい場所である。今日は魔族総出で人間の村を攻めに来たはずなのだが、そんな敵だらけ場所でマリアは味方とはぐれてしまった。
普通であればかなり危険であるが、魔族に死はない。落ち着いて合流すればいい。
そう思っていると、人間の同い年ぐらいの青年が一人で立ち止まっていた。
「なにをしてるの?」
マリアが青年に声をかける。すると、青年は慌てる様子もなく口を開いた。
「みんな逃げて、僕だけが逃げ遅れたんだ。もう死ぬ覚悟も出来てる。さあ殺してくれ」
マリアは何を言っているのかわからなかった。
死ぬ覚悟、という言葉がまずマリアにとって縁遠い言葉で、ピンと来ないのだが他の人間は皆自分に出会えばその場で怯えふためき、命乞いをしてきたのにこの男は殺してくれと言うのだ。
「……なぜ逃げないの?」
思わずマリアは尋ねた。
「僕にはもう、生きる意味がないんだ。」
青年は吐き捨てるように呟く
「いつも辛い仕事ばかり、満足に食事も取れない。もう、死んだ方がマシなんだ」
うつむきながら話す青年を見て、マリアは今まで体験したことのない感情を抱いていた。今まで人を殺すことになんの抵抗もなかったし、何か思うこともなかった。
しかし今、殺してくれと言う青年を前にマリアは戸惑っていたのだ。
「殺してくれって言われると、なんか殺す感じじゃなくなっちゃった。満足に食べれてないなら私の持ってる食べ物一緒に食べない?」
「……え?」
なんとマリアは大胆にも食事に誘ったのだ。
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- 4 : 2017/08/23(水) 22:11:52 :
- それから二人は徐々に仲良くなっていった。青年は名前をメレクといい、村が占領されて青年が別の村へと逃げ移った後も二人は密会を重ねた。そんなある日、マリアの体調に変化が起こった。
「……うっっ」
突然胸に痛みが走った。そのまま倒れこむ。
「どうした!?」
家族が近寄るが、大量に汗をかいて倒れこむマリアにどうすることもできない。
「魔王様を呼ぶんだ!!」
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- 5 : 2017/08/23(水) 22:13:14 :
- 「不死の魔法がもうほとんど解けかかっている。一体なにをしたんだ?」
魔族が死なない、それは魔王が一人一人に不死の魔法をかけているが故だった。
「なにも……」
「……まさか、人間と会っているのではないだろうな?」
魔王がマリアを睨みつける。
「そ、それは……」
マリアは視線を避けながら言う。
「私の魔法が解けかかった事は何度かあった。明確な理由はわからないが皆人間と密会していた。恐らくは人間の何かが魔法の解除を助長するのだろう」
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- 6 : 2017/08/23(水) 22:13:46 :
- 「今すぐ会うのをやめなさい。でなければ魔法は解けてしまい、死ぬんだぞ」
「でも…」
マリアには引っかかっている事があった。
自分たちは死なない、それが当たり前だと思っていた。だが人間達は生きるために労働に励み、生きるために食べ、生きるために眠る。
そして僅かな時間を懸命に生きている。
そんな姿を見てマリアは、おかしいのは自分達なのではないかと思うようになっていた。
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- 7 : 2017/08/23(水) 22:14:21 :
- ーー私は、ここを抜け出す。
決意は固まった。例え死んだって構わない。なぜなら……。
「おい、どこへ行く」
魔王様が私に尋ねる。
「私は、ここを出る」
「人間の元へ行くというのか……、本当にそれでいいと思っているのか?」
「……もう決めたんだ」
「行けば死ぬと言っているんだ!!」
魔王様が声を荒げる。普段見せる事のない姿だった。
「私は!もういやだ!!死の恐怖に怯える事もなく、大した目的もなくただいたずらに過ぎて行く時間を淡々と過ごして終わる、そんなのは生きてるんじゃない!死んでいるのは私達だ!」
「私は、僅かでも、精一杯生きてやる」
マリアは駆け出した。後ろは振り返らなかった。
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- 8 : 2017/08/23(水) 22:15:07 :
- 「今日も疲れたな……」
メレクが一日を振り返りため息をついていると、目に驚くべき人物の姿が飛び込んで来た。
「……マリア?」
「メレク!!」
二人は抱きしめあった。その時、マリアは自分がメレクに、この人間に恋という感情を抱いている事を自覚した。そして、人間へのその感情こそが不死の魔法を解く唯一のものだったのだ。
「私と、遊ばない?」
「……うん」
二人はそれから色んなところへ行った。隣街に行ってご飯を食べた。草原を駆け回った。
先の事を考える必要はなかった。二人とも、今が楽しければそれでよかった。
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- 9 : 2017/08/23(水) 22:15:46 :
- 「今日は楽しかった。今までで、一番楽しい1日だった。」
草原に寝転がり、夜空を見上げながら呟く。
「はは、言い過ぎだろ」
「本当よ、こんなにも今を楽しもうとしたのは生まれて初めて。今がこんなに大切なものだったなんて知らなかった。」
その時、夜空に一筋の流れ星が光った。
「人は死んでしまうけれど、本当に死んでいるのは私達だったんだよ。だって寿命があれば、こんなに今を大切に生きられるんですもの。」
「マリア……君は……」
「ごめんメレク……もう……眠いんだ……」
「マリア!死んだらダメだ!そしたら僕は……」
メレクは涙を流して呼びかける。
「きっと魔法が解けちゃったんだ……。もう……生きられない……。」
「メレク……ありがと……」
「私は……幸せだったよ」
マリアは静かに息を引き取った。
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