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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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僕のためだけの学級裁判

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  1. 1 : : 2017/07/06(木) 00:07:46
    チームコトダ祭り遅刻です。
    「コメディ」
    「因果応報」で書かせていただきました。
    不備などあればご報告ください
  2. 2 : : 2017/07/06(木) 00:08:16
    僕が赤松さんの首を絞めている。

    「さい、はら…く」

    彼女の苦しそうな喘ぎ声が耳を侵す。
    僕が赤松さんの首を絞めている。
    如何してか僕はひどく落ち着いていて、ただひたすらに両手に力を込めていた。

    「……私、は」

    魂が抜け落ちていくかのように彼女の身体が崩れ行く。
    僕が赤松さんの首を、
  3. 4 : : 2017/07/06(木) 00:09:25


    「最原!」

    「うわ、びっくりした…百田くん」

    変わらずいつもの調子で肩を叩いてきた百田くんは、

    「おう!朝飯か?」

    「うん」

    「なら一緒に行くか!」

    そう言って眩しく笑う。
    ここにコロシアイなんかはない。
    もう何もない。
    それは絶対に動かない、
    この世界の定理で常識で律格で規律。




    食堂に着くと賑やかで、テーブルには朝食とは思えないような豪勢な食事が並べられている。

    「やっと来たねー!」「何をしておったんじゃ…だるいのぅ」「これだから男死は…」
    など、入ってきた僕達に様々な声が降りかかった。苦笑いしながら席につき、「いただきます」と共に食事に手をつける。

    「それで、最原クンは何をしていたんですか?」

    「い、いや、何もしてないって…」

    「いいえ、ボクには分かります!百田クンと何かあったんじゃないですか!」

    「えっ…!?そうなの最原君!?」

    ひたすらキーボと白銀が捲し立てて食堂内がざわつく。別に決してそんな関係ではない。

    「そ、それは違うぞ…!ちょっと話しながら来ただけで」

    「その話しながらというの、怪しいですねぇ…」

    「終一はそういう趣味なのー?そうなのー?」

    ダメだ、どんどん誤解が広まり行く…!

    「う、宇宙に轟くオレでもさすがにそこまで手は出さねーよ!」

    「えー!?百田ちゃん、全宇宙を知るためにはそういう事も必要だよ!?ね、白銀ちゃん!」

    「そうだよ!何をしたのか詳しく教えてよ!!」

    収まりのつきようがないので、僕は黙って茹で卵に塩を振った。
  4. 5 : : 2017/07/06(木) 00:10:20

    「…そういえば、春川さんが来ていませんね」

    茶柱さんがパンを齧りながら言う。

    「確かに言われてみれば…」

    「…そこまでしなくても、食べる時に来るでしょう。依頼をしてくれるのなら行くけれど」

    「うーん…そうですかね」

    今度はスープを口に含み不服そうな顔をしている。確かに彼女は「私には関わらないで」と他人から遠ざかってしまっているけれど、それには深い事情があって──

    「ねぇ、最原くん!」

    と、赤松さん。

    「うわぁっ……び、びっくりしたよ」

    「あ、ごめんね。この後図書館に行かない?」

    「う、うん…いいけど…何で?」

    「特に理由はないんだけど…それって答えなきゃダメかな?」

    「……ううん、行こうか」

    「うん!」


    ──ここにコロシアイなんかはない。
    もう何もない。
    それは絶対に動かない、
    この世界の定理で常識で律格で規律。
    …そうだよな。
  5. 6 : : 2017/07/06(木) 00:11:03
    図書館。

    「本当にたくさん本があるんだね…」

    赤松さんはぽかんと口を開けて、膨大な本の数に吃驚している。

    「そ、そうだね」

    「私、こういう所来るのって結構久し振りかも。なんかわくわくするね!」

    「あ、それにこの本!見たことあるよ!超高校級の文学少女の人が書いた本だよね!超大ヒットセラーだよ!」

    彼女はころころと表情を変えて、最後には笑っている。
    ──ここには、何も。
    ──ここには、何もない。

    「ね、ねぇ、最原くん…」

    「え、な、何?」

    「こ、こここの本って……」

    彼女が持っているのはピンク色を基調とした女性のやわらかな主線が艶めかし……

    「…あ、赤松さん!?その本はダメだよ!?」

    「待って最原くん!私これちょっと見たい…かも……」

    「と、とにかくダメだって!」

    赤松さんの腕からその本を奪い取って適当な本棚へ詰め込んだ。
    …2人とも顔が真っ赤でどうしようもない。

    「な、なんかごめんね?最原くん…」

    「いや、僕も…ごめん」

    「と、とりあえず…折角来たんだし、探索しよっか!」

    「…うん」
  6. 7 : : 2017/07/06(木) 00:11:27
    僕は早速過去に見つけた例のものに手を掛けた。すると、大袈裟な音を立て開き例のものは姿を現す。

    「…最原くん?」

    大きな音に慌てて駆け寄ってきた赤松さんが僕を呼ぶ。

    「…そ、それって…」

    そう、現れた扉の色を見る限りそれは僕達を閉じ込めた張本人──モノクマを連想させるようなものだった。
    つまり、この部屋に首謀者がいる可能性がかなり高い、という事だ。

    「ね、ねぇ、これって…首謀者の部屋、だよね……」

    青くなった顔を顰めながら赤松さんが俯く。
    ここに首謀者がいるのだ。僕達を閉じ込めた首謀者が。

    「うん…そうだね。カードキーが無くちゃ開かないみたいだけど」

    「じゃあ、これで首謀者を捕まえられるの?」

    「え?あ、うん…仕掛けをすればね」

    「…ならその仕掛け、作ってみようよ!誰がこんなにひどいことをさせてるのか…本当に、許せないし」

    赤松さんは口を一文字に結び、決意を固めた様子だ。

    「……うん」

    僕は、頷くしかなかった。
    ──ここにコロシアイなんかはない。
    もう何もない。
    それは絶対に動かない、
    この世界の定理で常識で律格で規律。
    ────そう、絶対、だよな。

    入間さんになんとか頼んで──

    「な、なんだよぉ…土下座なんか…すんなよぉぉ……」

    「お願いなんだよ。私は本気なんだ」

    「…僕からも、お願いするよ」

    「……わ、わーったよぉ…作ればいいんだろ……」

    「ありがとう、入間さん!」

    「…良かった……」

    「ど、童貞野郎とおっぱいドラゴンのくせにぃ……」

    「童貞野郎って……」

    「お、おっぱいドラゴン…」

    ───・・・なんとか頼んで、カメラなどを色々改造してもらった。

    ──ここにコロシアイなんかはない。
    もう何もない。
    それは絶対に動かない、
    この世界の定理で常識で律格で規律。
    ──それは絶対なんだから。
    ──それが崩されることなんてない。
    ──きっと、そうに違いない。
    だからもう、あんなことは起こさせない。
  7. 8 : : 2017/07/06(木) 00:11:54
    翌日、昼の図書館。
    僕達は早速、分かれて仕掛けに取り掛かった。赤松さんが、

    「本、ごちゃごちゃだね…私、整理してくる!」

    …二人で脚立を倉庫から持ってきて、赤松さんが言葉のままごちゃごちゃしている棚の上の本を片付けた。
    その途中に脚立を僕が支えたけど──

    「…さ、最原くん…見えてない?」

    「……え、何が?」

    「あ、あのー……」

    赤松さんが恥ずかしそうに頬を掻く。
    ……その瞬間僕は察した。

    「みっ、みみみみ見えてないよ!!」

    「そ、そそそうだよね!良かった!」

    …顔から火が出るくらいに照れてしまって、恥ずかしい。

    「じゃ、じゃあカメラの取り付けしよっか!」

    少し気まずい雰囲気のまま、また分担して作業を再開した…
  8. 9 : : 2017/07/06(木) 00:12:19
    ここまでの彼女の行動は予測済、いや知っていた。
    ──ここからどう阻止するか。
    彼女の行動はハッキリと覚えている。
    この手で、僕の手で暴いたから。

    ──赤松さんの手が躊躇しながらも動く。
    僕の心音が耳に響いている。

    「…赤松さん。何してるの?」

    「……え?」

    赤松さん。
    シャッター、どうしてつけたままにしてるの?

    「やだなぁ最原くん、私何も」

    「何をしようとしてるの?」

    「……最原くん…?や、やめてよ…」


    止めなきゃ。
    僕が止めなきゃ。

    二回目。やりなおし。
    "赤松さんの罪"を、
    止めなきゃ。

    止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ。




    止めなきゃ。
  9. 10 : : 2017/07/06(木) 00:12:41



    僕だ。
    僕が赤松さんの首を絞めている。

    「さい、はら…く」

    彼女の苦しそうな喘ぎ声が耳を侵す。
    僕が赤松さんの首を絞めている。
    如何してか僕はひどく落ち着いていて、ただひたすらに両手に力を込めていた。

    「……私、は」

    「最後ま、で……信じ、るよ」

    魂が抜け落ちていくかのように彼女の身体が崩れ行く。
    僕が赤松さんを、

    殺した。




  10. 11 : : 2017/07/06(木) 00:13:11
    『ピンポンパンポーン…』

    『死体が発見されました!』

    「……で、第一発見者は最原か!」

    百田くんは死体が発見されているという状況にも関わらず陽気だ。
    いや、百田くんだけじゃない。

    「楓が死んだのかー!なんとー!」

    「クックック…犯人は誰だろうネ」

    「死人か…めんどいのぅ……」

    「夢野さんはどんな時も可愛いですね!」

    「別におっぱいドラゴンが死んだって天才様には関係ねーだろ」

    まるで、
    赤松さんの死に、興味さえないような。

    無関心?

    「……」

    "超高校級の探偵"らしく、──僕が殺した赤松さんの死体を調べる。
    "やったこと"は帰ってくる。
    それがこの世の原則だ。
    学園内だけではなくて、この世の。
    だから僕は元から──

    「おい最原、何やってんだ?」

    百田くんがまた陽気に肩を叩いてきた。

    「…何って、赤松さんの死体を調べて」

    「そんなん必要ねーだろ!飯食おうぜ!」

    「……は?」

    必要ない。その言葉が僕の耳の奥でぐるぐるとリピートされる。必要ない。必要ない。
    赤松さんは必要ない?

    「百田くん、何言って…」

    「おう、オレなんかおかしい事言ったか?」

    太陽のように眩しい笑顔が僕に刺さる。
    『月光』。
    そのピアノの音が頭に蘇るとともに──
    僕の意識が失われていって、

    『ピンポンパンポーン…』

    『これより、学級裁判を───』
  11. 12 : : 2017/07/06(木) 00:14:07









    「…最原」

    「いい加減起きなよ……」

    ──揺られている。
    なんだか心地いい。

    「……春川、さん?」

    どうやら僕は春川さんに背負われているようで、彼女の足は裁判場へ向かっている。

    「これ以上起きなかったら殴ってた」

    体勢的に顔は見れないけれど、ちょっと怒っているような気がした。

    「…ごめん」

    「……あのさ、最原」

    「ど、どうしたの?」

    「…あの気が狂ったヤツらのこと、信じないで」

    「気が狂ったって……」

    「そのせいであんたは気絶したんだよ。…どうとも思わないの?」

    「……ううん。異常だと思ってるよ」

    春川さんが僕を降ろす。
    降り立った場所は、これから僕が戦う場所。
    裁判場だった。

    「……アイツらはこれを──なんかと思い込んでる」

    「だから最原。あんたが」


    「──を──に変えて───」
  12. 13 : : 2017/07/06(木) 00:14:34
    学級裁判開廷。

    戦闘、開始。

    赤松さんの遺影が視界の隅に映る。春川さんの目はじっと僕を見据えている。
    "無関心"なみんな。

    ──ここにコロシアイなんかはない。
    もう何もない。
    それは絶対に動かない、
    この世界の定理で常識で律格で規律。
    ──それは簡単に崩れ落ちた。

    「ねぇ、学級裁判なんて必要あるのかな?」

    「ああ、そうだな。確かに必要ねぇな!」

    「にしし、バカでも分かることは分かってるじゃん!」

    「にゃははー!裁判いらなーい!」

    「めんどいし、もういいんじゃないかのぅ」

    「私も夢野さんに賛成です!」

    「ゴン太はよく分からないからみんなの意見に従うよ!」

    「それがみんなの意見なら、私も従うわ」

    「……俺は何でもいい」

    「クックック…興味深いネ」

    「ボクもお任せします。それよりメンテナンスをしてもらわなければ…」

    「おう!メンテなら任せとけ!」

    「じゃあ、もういいっすね」
  13. 14 : : 2017/07/06(木) 00:14:59
    「ま、待ってよ!!」

    声を荒げ、裁判を放棄しようとしているみんなに抗議する。

    「どうして…そんなに無関心なんだ…!?」

    ──僕の頬を静かに涙が流れていった。
    赤松さんの死が無かったことになる、そんな早とちりのようなことからの涙。

    「何言ってんだ、最原!」

    百田くんが僕にまたあの笑顔を向ける。


    「犯人なんかとっくに分かりきってるだろ?」

    「……え?」


    「だから、この事件の犯人は──」
  14. 15 : : 2017/07/06(木) 00:15:38



    「超高校級の探偵、最原終一」


    「一人しかいないんっすよ」

    動揺していた。
    捜査も、議論も、何もしていないはずの彼らがどうして分かり得ようか。

    「…なん、で」

    「最原が犯人ってどうして分かるの?」

    ───春川さんだ。
    僕を庇って?いや、それだと表現がおかしい。

    「どうしてって…それは、『しばらくそうなんだから』、今回もそうだって事だヨ。クックック……」

    「『しばらくそうなんだから』って…どういう事だ?」

    「ああ、最原は知らんのか」


  15. 16 : : 2017/07/06(木) 00:16:57
    「君達はループしてるんすよ。」

    「…………は?」

    僕はまだ二回目。
    まだ、というとおかしいけれど、"ループ"なんかはしていない。

    「ループというのも、『赤松さん』と『最原くん』を交互にやってるだけで…正直、こっちは飽き飽きなんすよ」

    「赤松さんと、最原くん……?」

    本当に意味がわからない。とっくに思考回路はショートし、許容情報量なんて無視して溢れ出る真相。ネタバレ。

    「赤松さんは、今回の事件を阻止したくて、最原くんを殺してオシオキされる。次はそのオシオキから救いたかった最原くんが、赤松さんを誤って殺害して、オシオキされる。このループっす」

    "やったこと"は帰ってくる。
    それがこの世の原則だった。
    学園内だけではなくて、この世の。

    「終一、これは"喜劇"なんだよー?」

    「にしし、最原ちゃんから見れば悲劇かもしれないけど」

    「これは立派な"喜劇"なんです」

    「結末を分かっていながらも、何度も同じ結末を辿る…クックック」

    「どっかで見たことあるような設定だな…」

    「だから余計に"喜劇"なのよ」

    「使い古された設定じゃねーか!」

    「同じことを繰り返してるんだよ!」

    「そう、あの有名なプロジェクトみたいに…」

    「アイデンティティや個性さえ失ったこの"喜劇"じゃ」

    「めちゃくちゃ面白いですね!」

    「はい、じゃあいつも通りの投票タイムっす」

    「みんな、今回は最原終一だ。間違えるなよ!」


    「それでは行ってみましょう、投票タイム!」
  16. 17 : : 2017/07/06(木) 00:17:34





    ───結果なんて分かりきってる。

    ───僕だ。

    指に残る感触。彼女の首は温かくて、細くて、


    ───僕が彼女を殺したってことを、思い知らせてくれる。


    「投票の結果は大正解!赤松さんを殺した犯人は最原くんでしたー!!」

    「それでは行ってみましょう!オッシオキターーイムッ!!」

    「未練はあるか?"終一"」


    "やったこと"は帰ってくる。
    それがこの世の原則だった。
    学園内だけではなくて、この世の。


    因果応報。


    「……今更、その名前で呼ぶなよ」

  17. 18 : : 2017/07/06(木) 00:18:25













    "やったこと"は帰ってくる。

    それがこの世の原則だった。

    学園内だけではなくて、この世の。


    そして『私』は目を覚ます。

    "二回目"の最原くんを助けに行くために。

    ──ここにコロシアイなんかはない。

    もう何もない。

    それは絶対に動かない、

    この世界の定理で常識で律格で規律。

    それを、崩れ落ちていくものにしないように。

    『私』、赤松楓は最原くんを助けに行く。

    たとえ繰り返すとしても───
    同じ結末を辿っても。

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arr

ryenel

@arr

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