このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
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異世界に新たなる夢を
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- 1 : 2017/04/01(土) 07:27:12 :
- ・グロが苦手な方
・キチガイ主人公が嫌いな方
・異世界ものが嫌いな方
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化け物。
俺がこの糞みたいに退屈な世界に命を受け、一番多く呼称された名。
勿論、化け物が名前であるわけではない。
正確な名前は退屈な世界を生温く過ごす日々から脱し、新しい名を受け取った際に捨て、そして何時しか忘れていた。
化け物。
何時しか呼ばれた呼称。
蔑称の類いの呼称ではあったが、退屈を脱した者を羨む敬称にしか思えなかった。
人間が次のステップへと化けた生物。それが化け物だと俺は思っている。
化け物。
そう呼ばれる度に感じる快感。
快感は人間だった頃を忘却の彼方へと誘い、麻薬のように化け物である事実に依存させ、深い闇へと沈ませた。
元々戻る気は無い人間世界。
化け物と変貌し、快感に溺れ、欲求のままに暴虐の限りを尽くした。
快楽に溺れているのは思った以上に楽しく、人間として生を受けた際に得た多くの物を失った。
しかし、失った物は化け物に変貌を遂げた俺にとってはどうでもいいものばかり。
良心、罪悪感、思い。
数えればキリがないほど捨てた俺は、いつしか世界から疎まれる存在となった。
人間を脱した存在。世界の法を容易に破り、自制する機能も破棄した存在は世界から疎まれ、そしてーー
「全員構えろ」
世界の何よりも恐怖を煽る存在と成り上がっていたようだ。
それがこの状況だろう。
周りを見渡せば、全身を武装した人間が囲む。爽快な眺め、実に滾る展開。
「アハッ♪」
興奮声が漏れる。
周りを玩具が囲む。それも全てが高価な物ばかり、興奮しない方が無理な話。
早く、速く早く、早く速く早く速く早く速く早く速く早く速くハヤク速く早く速くハヤクーー
「ハヤク、コワシタイナァ」
ニコリ、と近くにいた男に笑顔を向ける。
化け物の笑顔。人間から見たら歪に見える笑顔に、恐怖を浮かべる男。
恐怖に歪んだ表情は美しく、破壊欲求に拍車をかける。
「壊そっ」
まずは一人。恐怖に歪んだ男との距離を数歩で縮め、顔面を抉る。
壊すのに躊躇のない一撃に、骨が砕ける嫌な不協和音を奏でながら男は吹き飛ぶ。
圧倒的物量の前に、化け物であろうと動かないと踏んでいた人間達は突然の展開に固まる。
目の前で見せつけられた同種の死。平和ボケした人間共にはさぞや凄惨な光景に見えただろう。
「うわぁぁああああああ」
目の前で起きた事実に恐怖した人間が、手に持つ銃で反撃に打って出る。
しかし遅い。彼が銃口を俺がいた場所に向けるが、既にその場にはいない。
恐怖に固まる近くにいた人間を片っ端から、頭を掴み地面に叩きつける。
叩きつける度に鳴る心地良い音。
散り際に魅せる死を悟った美しい表情。
心地良い音を聞く度に、美しき表情を見る度に心が高ぶる。
もっと、もっと壊せと脳が急かす。
「全員、目標に向けて撃てぇー!」
人の縦の後ろで偉そうにふんぞり返る小太りの男が命令を下す。
声に反応して鳴り響く連続した発砲音。
近くに転がる命を宿さない傀儡を盾にするが、傀儡を貫通した銃撃が、腕、太股、脇腹、肩と次々に容赦なく貫く。
「痛いなぁ」
久しく感じた人間としての感覚。
化け物に変貌しても、捨て切れなかった感覚。
捨てられなかった感覚と、多くの死を与えてきたからこそ聞こえる。
俺に死を与えるべく近付く死神の足音。
俺の命は持って数刻である事が分かる。
「最後にあれ壊そ」
最後に周りを囲む高価な玩具の中でも、特別高価な玩具に目を向ける。
化け物が最後の獲物に自分を選んだとは、玩具は夢にも思っていないだろう。
先程まで盾に使っていた傀儡を目の前の玩具達に投げる。
元々仲間だった人間達の元に戻るように飛来する死体が、玩具達に激突する。
死体によって開けた特別高価な玩具への道。
開けた道を駆け、特別高価な玩具ーー小太りの男を殴打する。
一発に留まらず、二発三発と絶え間なく殴打する。
太陽の光を反射する鮮血、自分が奏でる打音楽。
美しい光景と、心地良い音楽を最後に俺の命は散った。
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- 2 : 2017/04/06(木) 17:11:44 :
- 死後の世界。
それは予想よりも案外人間世界と変わり映えしないものだった。
自分が腰掛ける椅子も、目の前に置かれたコップも、コップに注がれた飲み物ーーお茶も、コップが鎮座した机も全てが見慣れた物。
一点見慣れた物を挙げるとしたら、煎餅を咥えながら空に寝そべる青年だろう。
空に寝そべる青年は中肉中背、顔は中の下、もやし体型。
人間世界ではゴロゴロ存在する、俺の食手が動かない部類に入る人間だった。
殺しても達成感を得られない、逆に殺しても嫌悪感だけを得られる存在が食手が動かない部類だった。
俺は殺人鬼ではなく化け物。
空腹を満たす目的を達成する獣の如く、ただ快楽を求めて殺すだけの殺人鬼とは違い、自分より何かしら上に立つ人間を屠る快感と達成感、どれだけ芸術的に、それでいて遊戯性を持って殺せるかを楽しむのが化け物。
だから、俺の殺意は青年には向かず、俺はただ暇を持て余していた。
「なぁ、人間の言葉は理解出来るか?」
青年が問う。
こいつは何を言ってるのだろうか?
「おいおい、怖い顔すんなよ。長い間殺戮の快楽に浸った奴の中には、元々使っていた言語を忘れる人間もいるんだよ。お前は理解出来るようだがな」
余程怖い表情をしてしまったのか、彼は少し恐怖を顔に映す。
「なぁ、お前はなんで殺戮を好む?」
「分からない」
分からない。
何故、人を殺すのを好むのか、一度も考えた事ないもの。
楽しいから、達成感があるから、快楽を得られるから、全てが好む理由であるようで違うような気がする。
何故なのだろう、考えた事もなかったな。
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