このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
v3裏ルート???
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- 1 : 2017/03/23(木) 00:53:44 :
- ・このssはダンガンロンパv3のifストーリーです。
・キャラ崩壊があると思います。
・物語の独自解釈があります。
・ダンガンロンパv3のネタバレがたくさん入ります。6章までクリアしていない人は見ない方がいいです。
・作者の趣味が入るので、不快に感じる人は見るのを止めた方がいいです。ごめんなさい。
・ゆっくり更新です。特に裁判のトリックに悩むことがあるかも。
・修正が多いと思います。
・それでも良いという方は楽しんで下さると嬉しいです。
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- 2 : 2017/03/23(木) 00:57:52 :
…存在を確認するためには何が必要だろうか?
答えは光だ。一番重要な情報源で、一番身近に存在する。全ての存在は光を浴びることで初めてそこにあることが明らかになる。
今、自分の存在を掴むために真っ暗な空間から光へと手を伸ばす…
―ガチャ
「えっ?」
自分が今まで入っていたのがロッカーだったことに驚いたが、段々と冷静に周りを見ることができるようになってきた。
どうやら見覚えのない教室のような部屋にいるらしい…机や黒板、モニターなどが周りに見られる。
「どうしてこんな所に?」
ここにやって来た経緯を思い出そうとすると…
頭が痛くなり、何も思い出せないことに気が付いた。
「…うっ、頭が…」
…とにかくここはどこなのかを知ることが必要だ。そのためには、
「まずはここから外に出ないと…」
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- 3 : 2017/03/23(木) 01:01:26 :
ドアまで歩いていき、開くとそこには雑草が生い茂った廊下が見えた。
「…ますます訳がわからない建物っすね。」
この建物はいつから建っていたのだろうか?こんな風に雑草が無造作に生えるにはかなりの年月がかかるはずだ。とりあえず、廊下と教室があることから古い学校なのだろうか?
「まぁ、とにかく歩き回ってみるしか…」
そのとき、突然クマのヌイグルミ?のようなものが飛び出してきた。さらに驚いたことに、こちらに話しかけてきた。
「おはっくまー!」
「は?」
「あれ、よく聞こえなかったのかな?天海クンだよね?」
どうやらこのヌイグルミ?は俺の名前を知っているらしい。ということは…
「…俺をここに連れてきたのはあんたっすか?」
「えっ、オイラそんなことは知らないな~。そんなことよりも天海クンは自分の才能は思い出せる?」
才能?確かに自分はギフテッド制度に選ばれた超高校級の才能があったような気がする。しかし、それについて思い出すことはできなかった。
「…いや、思い出せないっすね。」
「まぁ、そんなこともあるよね。オイラなんて昨日の晩御飯が何だったのかも忘れるくらいだから天海クンの気持ちはよくわかるよ。」
「晩御飯と同等の扱いはちょっと…それよりもあんたは誰なんすか?」
「オイラ?オイラの名前はモノタロウだよ。モノクマ―ズのリーダーなんだ。これはちゃんと覚えてるよ。」
「モノクマ―ズ?」
「そうだよ。この学園の管理と整備をしているんだよ。」
「はぁ…じゃあ、ここはどこなのか聞いてもいいっすか?」
「ここは才囚学園だよ。選ばれた16人の超高校級の生徒のための学園なんだ。」
俺以外にも15人の超高校級の生徒が?ギフテッド制度に選ばれた超高校級の生徒は全国に散らばっている。それを一度に16人も集めるとは…
「どういう目的があるんすか?こんな大掛かりなことをして…」
「それはまだ言えないんだよ。後で全員集まったときに言うことになってるんだ。」
「それよりもこの学園について調べるのと、ついでに他の超高校級の生徒に会いに行ってきてよ。これから、ここで一緒に過ごすんだからさ。」
ここで一緒に過ごす?とにかく、他の生徒は俺と違ってここに来た経緯を覚えているかもしれない。
「まぁ、いいっすけど。」
「じゃあ、オイラは準備のためにもう行かなくちゃ…ば~いくま。」
そう言って、モノタロウはどこかに行ってしまった。
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- 4 : 2017/03/23(木) 01:08:39 :
さっきは気が付かなかったが、ポケットに重みを感じるので中を確かめてみると2つの外見が同じ電子パッドがあった。モノパッドと書いてあり、中央から白と黒に塗り分けられているシンプルなデザインだった。
試しに片方を起動すると、自分の名前が映し出された。自分専用の電子パッドらしい。項目にはマップ、コトダマ、プレゼント、ツウシンボ、コウソク、システムといったものがあった。
「生徒手帳みたいなものっすかね?よくわからない項目が多いけど…」
後で詳しく見ることにして、もう片方を起動すると…
「生存者特典?」
生存者特典にはこのようなことが書いてあった。
『コロシアイを終わらせるヒント
この学園の中に、コロシアイを企んだ首謀者が隠れている。見つけ出すチャンスは、モノクマのスペアが必要となるタイミングだ。その時、首謀者は必ず図書室の奥にある隠し部屋に向かう。このヒントが真実である事の証明として予言しておく。キミが最初に思い出す記憶は“超高校級狩り”についてだ。この情報は信じられる人間とだけ共有しろ。その見極めがキミの生死を分かつ。天海蘭太郎より。』
「は?」
俺はこんなものを残した覚えはなかった。そして『コロシアイ』という単語から何やらただ事では済まないことに巻き込まれていることだけはわかった。
「…とにかく他の生徒に会いに行ってみるしかないっすね。」
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- 5 : 2017/03/23(木) 11:36:04 :
- 期待です!
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- 6 : 2017/03/23(木) 17:18:33 :
- >>5さん期待ありがとうございます。文章力のない作者ですが、とにかく頑張ります。
廊下を歩いて上に上がる階段の下についたあたりで、マスクで顔が半分隠れている強烈な見た目のノッポな男子に出くわした。
「やぁ、どうもっす。キミも超高校級の生徒なんすか?」
「その質問には『そうだ』と答えさせてもらうヨ。僕は“超高校級の民俗学者”なんだ。」
民俗学者の才能…パッとは思いつかないけれど、俺とは違って自分の才能のことを覚えているらしい。
「クックックッ…何やら浮かない顔をしているネ。まぁ、僕も突然こんな所にいるせいで少しだけ混乱している所はあるけどね…」
「ああ、名前を教えていなかったネ。僕の名前は真宮寺是清だヨ。どうやら、しばらくの間ここにいることになりそうだからよろしくネ。君の名前と才能のことを聞いてもいいかな?」
「…俺の名前は天海蘭太郎っす。実は才能のことについては思い出せないんすけど、まぁ怪しいヤツではないんでよろしくっす。」
「ヘェ、君は自分の才能を思い出せないんだネ。それはまた興味深いね。君は一体どんな美しい人間の姿を見せてくれるのか…観察させてもらうことにするよ。」
「えぇ、観察って…俺怪しまれてるんすか?」
「あぁ、誤解を招いたなら訂正する必要があるネ…僕の癖であり職業病な所があるかもしれないんだけどさ。」
「民俗学っていうのは人の観察が基本なんだヨ。そこから、その人の持つ美しさ、醜さを含めて研究の対象にしているのさ。だから、まぁ、単純に言うと君に興味を持ったということだネ。」
「…あぁ、そういうことっすか。俺が才能を思い出せないから怪しいと思われてるんじゃないかと…そういうことではないんすね。」
「クックックッ…僕はホラ、こんなに怪しそうな見た目をしているでしょ?人を観察するときはちょっとしたことだけで偏った見方をしないよ。」
「あはは、なるほど。」
「天海君だったね。僕はこれから他の生徒にも会いに行くからこれで失礼するよ。」
そう言って、俺が通ってきた廊下を歩いていってしまった。
(もう少し話を聞きたかったところだけど、まぁ他の生徒にも会っておきたいのは俺も同じっすね。)
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- 7 : 2017/03/23(木) 18:18:40 :
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廊下を右に曲がって、突き当りまで進むと左手側にはCafeteriaとあり、その場所は食堂であることがわかった。
(ここにも誰かいるかもしれないっすね…)
食堂の中に入ると、
ピンクのカチューシャと黄緑色のバンダナを髪に付けた女子が元気よく叫んでいるのと、三角帽子を被った女子がだるそうに椅子に座っているのが目に入った。
見事に対照的なテンションの二人だが、とにかく話しかけることにしてみた。
「どうもっす。お二人とも初めまして。」
そう言うと、叫びを上げていた女子はとてつもない変顔になった。
「また男死ですか?それに、チャラチャラピアスを付けている男死なんて遊び歩いてるようなろくでもないのに決まっています!」
どうやら相当な男嫌いな性格らしい。どうすれば、あんな顔芸ができるのだろうと気になったが、さすがに尋ねるのは失礼なので聞かないことにした。
「まぁ、そういう風に見られるのは慣れっこなんすけどね…チャラくはないんで安心して欲しいっす。」
「男死は言い訳ばかりする生き物ですからねぇ…信じられませんね!」
「転子や夢野さんをここに連れてきた仲間の1人ですか!?それなら容赦しませんよ!」
こちらに対して攻撃体勢を取っているので、誤解を解くことにした。
「実は俺もここに連れて来られた1人なんすよ。いやー、参ったすね…気が付いたらこんなよくわからない所にいるなんて…」
「あっ、俺の名前は天海蘭太郎っす。キミ達の名前を聞いてもいいっすかね?」
男嫌いな女子は少し嫌そうな顔をしたが答えてくれた。
「茶柱転子です。“超高校級の合気道家”です!ネオ合気道を広めるのが私の目標なんです!」
ネオ合気道?聞いたことがない武術であり、突っ込んで聞いてみたかったのはあるが、もう1人の女子は答えてくれなかったのでそちらを優先することにした。
「えーっと、椅子に座っているキミも答えてくれないっすかね?」
「…めんどい。」
そう一言いって、顔を背けられてしまった。
「えぇ…名前を聞いてるだけっすよ?」
「話すのがめんどいんじゃ…よくわからない所に閉じ込められて…これ以上めんどいことはないわい。」
彼女はめんどくさがりな性格らしい。しかし、話すことすらめんどくさい人は見たことがない。
「…仕方ない…自己紹介するかの。ウチこそは“超高校級の魔法使い”夢野秘密子じゃ。」
「…えっ?魔法使い?マジシャンじゃないんすか?」
そう言うと、夢野さんはすごく不機嫌な顔になった。
「…お主も魔法を信じないんじゃな?ウチは本当の魔法使いだというのに。」
「あ~そうっすね…別に信じなくもないんすけど、魔法を見たことがないもんで…夢野さんはどんな魔法が使えるんすか?」
「うむ、観客の選んだコインやトランプを当てたり、帽子からハトを出したり…んあー本気を出せば水中脱出なんかもできるぞ。」
…聞けば聞くほどマジックに思えるけれども、これ以上それについて言及するとふて腐れて話を聞いてくれないかもしれないと思い、聞きたいことを尋ねることにした。
「突然なんすけど、キミ達はここに来た経緯とかって思い出せたりします?俺はさっぱりなもんで」
「それがですね…転子も夢野さんも全く思い出せないんですよ。気が付いたらこの学校にいたんです。」
「そうっすか…」
どうやらここまでで会った3人ともどうしてここにいるのか思い出せないらしい。しかし才能のことははっきり思い出せるようだ。
「ですから転子は襲ってくる男死をいつでも撃退できるようにここで気合を入れているのです! キエェエエエエエエエエエエエエ」
「な、なるほど…とにかく、ありがとうございます。俺は他の人にも話を聞きに行ってみるんで」
お礼を言ってから、食堂を離れた。
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- 8 : 2017/03/23(木) 18:31:48 :
…他の生徒と違って才能のことについて思い出せないのも謎だが、『生存者』とはどういう意味だろうか?
もしかすると、覚えていないが前に『コロシアイ』とやらに巻き込まれて生き延びた者ということなのだろうか?
そうだとすると自分の才能とは一体…危ないものなのだろうか?殺人に優れた才能とか…前はそれを使って『コロシアイ』に勝ったのかもしれない。
そう仮定すると自分はなぜ才能の記憶を持っていないのか、少し理屈が通った解釈ができるが…。
そうだとするなら、自分の才能を思い出せないのを不審がられてはまずいだろう。そんな才能を持っている可能性があるとしたら『コロシアイ』では全員に狙われて当然だからだ。
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- 9 : 2017/03/24(金) 00:03:13 :
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食堂の向かいにあるのは倉庫らしい。中から音が聞こえるので誰かが居るのがわかった。
本当に『コロシアイ』が始まるのかはわからないが、他の生徒のことを知っておいた方が良いので、中に入ることにした。
倉庫の中には、ゴーグルを頭の上に乗せた金髪の女子が何かを探しているのが見えた。
「あの~。ちょっと、話しをしたいんすけど、いいっすかね?」
すると、その女子は振り返るなり暴言を浴びせてきた。
「オレ様に気安く話しかけんじゃねーよ!ピアス変態男!」
…急なことで戸惑ったが、とにかく聞きたいことを尋ねることにした。
「え~と、他の人にも会って自己紹介してるんすけどね…キミの名前を聞いてもいいっすかね?あっ、俺の名前は天海蘭太郎っす。よろしくっす。」
「はは~ん…さてはお前あれだな。この状況ならオレ様みたいな美人ともお近づきになれるとか勘違いしている口だな?だが答えはノーだ!」
と、指でブーイングされる。
「あはは、そういう訳ではなくてっすね。どんな人なのか一応知りたいなーと思っただけで…答えたくないなら答えなくてもいいっす。」
すると、目をそらしながら、
「…チッ仕方ねーな。オレ様は心が広いから、テメーみたいな尻穴も開発済みの変態ピアス男にも答えてやるぜ。オレ様は美人過ぎる天才発明家、入間美兎さまだぞ!」
と自己紹介をした。
…下ネタは気になるが、彼女は初対面の人全員にこのような態度を取ることで自分の土俵に引き込もうとする人なんだろう。
「へぇ、随分有名な人までいるんすね。入間さんもこんな所にさらわれてきたんすか?というか、ここにどうやって来たのか覚えてます?あと、俺は同性愛者ではないっす。」
「あ~?そんなの知らねーよ。気が付いたときにゃこんなクソみたいな場所にいるんだからよ…。こんなの強めな薬を探して一発キメるしかねーだろ!」
「やめた方がいいっすよ?誰が置いたかもわからない薬を使おうとするなんて。」
「オレ様を常識に当てはめようとするんじゃねーよ。とっとと失せやがれ!このホモピアスが!」
なぜか、ホモ扱いされてしまっているので否定した。
「だから俺は同性愛者ではないっすよ…」
「あっ?違うのか?オレ様に興味を持たないし、顔が女みてーだから絶対にそうだと思ったぜ。」
「…あぁ、そういうことっすか。いや、俺は妹以外の異性には特に興味がないもんで。」
「えっ?な…なんだそりゃ…ホモより気持ちわりーじゃねぇか!お前シスコンかよ!」
とものすごく怖がられてしまったので、こう付け加える。
「いや、別に人の勝手じゃないっすか?誰に好意を抱くかなんて…俺は別にシスコンで恥ずかしいなんて思ったことはないっす。」
「は、早く出てけよ!なんか悪寒がするからよ!」
そう強く言われてしまったので、倉庫から出て行った。
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- 10 : 2017/03/26(日) 00:26:28 :
倉庫から出ると、メタルっぽい服を着た男子?がこちらに走って来て、呼びかけてきた。
「あっ!ちょうどいい所に!ちょっと匿ってください!」
「えっ?」
その男子?は声を小さくしてこう言った。
「追われてるんです。ある男子にボクがロボットだと話したらやたらに付きまとわれてるんですよ…」
「はぁ…その追いかけてくる男子はどんな人なんすか?」
「よくわからない嘘のようなことばかり言ってくる人なんです。それだけじゃなくてボクのことをロボットだというだけで差別的なことをたくさん言ってきて…あっ、こっちに来ました!じゃあボクは倉庫に隠れるんで、こっちには来なかったと言ってください!」
そう言って、倉庫へ入って行った。
その後すぐに、黒と白のチェック柄のストールを巻いている男子が走ってやって来た。
「ねぇねぇ、ここでロボット見なかった?」
「…あぁ、それならあっちにあるフェンスの付いた扉を通って走っていくのを見たっすね。」
「ふ~ん、そっか…ありがとう。ところで聞きたいんだけどさ。」
「なんすか?」
「遠目でロボットだってなんでわかったの?」
「えっ?」
「にしし…だってさ、オレが追いかけてるロボットは人間っぽい見た目だったからさ…どうしてここから見て、走っていくのがロボットだってわかったのかな~ってさ。」
「…いや、まぁ、メタルっぽい見た目だったんで、キミが言うロボットってあっちに走って行った人なのかな~って思っただけっすよ。」
「…なるほどね。じゃあ言われた通りあっちを探してみるね。」
そう言って、フェンスの付いた扉の方へ走って行ってしまった。
…何だか見透かされてるような嫌な感じがしたので、さっきのロボットに一応注意しようと思い、倉庫に入った。
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- 11 : 2017/03/26(日) 01:34:23 :
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「多分、キミが言う男子はフェンスの付いた扉の向こうに行ったんで…とりあえずは大丈夫なんじゃないっすか?いや、もしかするとこっちに来る可能性もあるんで長くはいない方がいいかもしれないっす。」
「えっ、そうなんですか?じゃあ、自己紹介だけしてここから出ていくことにします。ボクの名前はキーボ、“超高校級のロボット”なんですよ。」
「ロボットというと…ひょっとしてモノクマ―ズの一員とかなんすか?」
すると、こちらを指さしながら、
「ちょっと!あんなオモチャと一緒にしないで下さい!ボクはただのロボットではないんです!皆さんと同じように、ちゃんとした高校生なんですよ!」
と強く言ってきた。
(…それはロボット内差別なんじゃないっすかね)
という突っ込みが出かかったが、胸の中にとどめておくことにした。
「ボクは産みの親である飯田橋博士に積んでもらった成長する学習AIによって、皆さんと同じように何もわからない状態から成長し、学校に通い、高校生にまでなったというエピソードがあるんです。」
キーボ君の言っていることが本当なら、確かに存在だけで超高校級と言えるだろう。
「えっ、それが本当なら確かに凄いっすけど…そう言えば、さっきの男子って誰なんすか?」
「あぁ、彼は王馬小吉君と言ってましたね。才能は確か“超高校級の総統”だとか…じゃあまた後で、ボクは逃げることにしますから。」
一緒に倉庫から出ると、キーボ君は王馬君とは反対の方へ走って行った。
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- 12 : 2017/03/27(月) 22:46:03 :
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さっきのキーボ君と王馬君には聞けなかったが、『どうやってここに来たのか』については恐らく全員覚えてないらしい。
ということは、全員何らかの方法で記憶を奪われたのだろう…集団催眠とか、洗脳とか、普通では考えられない方法が使われた可能性まである。全員がそこの部分の記憶だけないなんて不自然だからだ。
そんなことを考えていると、先ほどの王馬君がこっちに戻ってくるのが見える。さらに、大声で、
「あのさぁ…あっちにキー坊いないじゃん!何嘘ついてるんだよ!」
と言ってきた。
「ははっ、それはすみません。…でも、追い回すのはやめた方がいいんじゃないっすか?キーボ君本気で嫌がってたっすよ?」
「そんなことないよ!オレとキー坊は大の仲良しだからね!」
と嘘丸出しのことを言ってくる。
「…そんな嘘に騙される人はいないっすよ。」
とため息交じりに言うと、
「まぁね。さっき、そっちが言った嘘と同じくらいだと思うけどね~」
とニコニコしながら返してきた。
「わかっていたなら、どうして騙されたフリなんてしたんすか?」
王馬君は手を頭の後ろで組み、屈託のない笑顔で、
「だって、その方が面白そうだったからさ!そんなわかりやすい嘘をつくのはどんなヤツなのかな~って思ってさ!」
「だって、キー坊ったら、ロボットのくせにロケットパンチもジェットで飛ぶこともできないんだもん。何だか飽きてきちゃってさ…人間の真似事は上手いけどね。」
「あっ、オレの名前は王馬小吉だよ。構成員が1万人以上いる秘密組織の総統なんだ。」
と、嘘っぽいことを言ってきた。
「それって嘘っすよね。」
「嘘じゃないって。俺は嘘が嫌いだからね!」
「さっき、思い切り嘘をついてたじゃないっすか…」
そう言うと、『あれそうだっけ?』と言わんばかりのとぼけた表情になった。
「まぁ、それはいいや。そっちの名前と才能を教えてくれない?」
と急に表情が変わり、すごく冷めた顔で言ってきた。
「…天海蘭太郎っす。実は才能のことは思い出せないんすけど、よろしくっす。」
そう言うと、おおげさに大きな声でこう言ってきた。
「え~!また嘘じゃないの!自分の才能を思い出せないなんてさ!」
「あはは、でもそれは本当のことっすよ。信じて欲しいっす。」
「…ふ~ん。そっか、天海ちゃんは自分の才能を思い出せないんだね。」
「実はオレは知ってるんだよね。その記憶を奪った張本人だからさ。教えてあげよっか?」
と言ってきた。
ひょっとして、王馬君は俺の才能について知っているのだろうか、と少しだけ期待したがどうせ嘘に違いない。
「それも嘘っすよね。」
「あれ?ばれちゃった。つまんないなぁ、少しは引っかかってくれると思ったのに。」
「まぁ、いっか。もう少しいじりがいがありそうなヤツを探して見ようかな…じゃあね、天海ちゃん!」
そう言って、王馬君は食堂の中に入って行く。
俺は他の生徒に会うのと、ついでに学園内の探索をするために、生存者特典にあった図書室の方に行ってみることにした。
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- 13 : 2017/03/28(火) 10:26:35 :
- なんで図書室なんかに行ったんすかね?
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- 14 : 2017/03/29(水) 00:43:46 :
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生存者特典に載っていたからじゃない? (適当)
モノパッドのマップで見ると、図書室は地下にあるらしい。階段を下って、地下に着いた。正面の観音開きのドアが図書室の入り口のようだ。
その扉を開けて中に入ると、身長が100 cmくらいしかない二本の角が生えたような特徴的な帽子を被った男子が図書室内を調べているのが目に入った。
「なんなんだ、ここは…どうして俺たちを閉じ込めたヤツはこんな施設まで用意してやがるんだ。」
独り言を言いながら、ポケットからシガレット菓子を取り出し口にくわえている。
「ホントっすよね。俺たちをこんな所に閉じ込めたヤツの目的が全く掴めないっす。」
「…誰だ、あんたは?」
「天海蘭太郎っす。俺もここに閉じ込められた1人なんすよ。これから仲良くして欲しいっす。」
「フン、そうかい。あんたもか。それで、この学園の中を見て回ってるってことか。」
「まぁ、そんな所っすね。今の所は、ここに集められた全員が『どうしてここにいるのか』についての記憶はないってことはわかったっす。」
「確かに俺もそこの記憶はねぇな…そこの部分を思い出そうとすると頭が痛くなって思い出せなくなっちまうみてーだな。ひょっとしてあんたもそうか?」
「そうっすね。それに加えて、厄介なことに俺は才能についても思い出せないんすよ。ははっ、このままだと俺はハブにされちまうっすね。」
「…確かに気になるな。…だが、俺にとっては少し羨ましい話だな。ついでに才能に関係している嫌な記憶も思い出せないならな。」
「才能のことを忘れたいとかそんなこともあるんすね。キミの名前を教えてくれないっすか?」
「…星竜馬だ。才能については…言いたくねーな。知ってる連中にでも聞いてくれ。あと、俺と仲良くなりたいなんて言わない方がいいぜ。あんたのためにならねーからな。」
そう言い残し、背を向けて図書室から出て行ってしまった。
星竜馬という名前は知っていた。
世界的に有名なテニスプレイヤーだったが、特注の鋼鉄製のテニスボールで脳天を打ち抜く殺人テニスにより、マフィアの組織を壊滅させた、というニュースを以前見たことがあったからである。
しかし、さっきの会話や態度からはそんなことを好んでする人には見えなかった。
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- 15 : 2017/03/31(金) 18:56:37 :
星君が出て行ったので、生存者特典にある隠し部屋の抜け道を探してみることにした。生存者特典に載っている情報が正しいかどうか確かめてみたいからだ。
図書室には、大量の本があった。本棚の中にはびっしりと本が入っていて、入りきらなかったのであろう本が山になって、床の上、本棚の上にまで無秩序に積まれている。
しかし、ある本棚の上には本が全く置かれておらず、存者特典に付いているマップによるとちょうどその裏に隠し部屋があるという一致があった。
その本棚を動かそうと色々試していると、偶然、本棚と本棚の隙間に手を入れたとき、本棚が動いた。
その裏には扉があった。モノパッドと同様に中央から白と黒に塗り分けられている。ここが恐らく隠し部屋の入り口なのだろう。
中に入って何があるのか確かめてみたかったが、扉のすぐ近くにはカードリーダーがあり、専用のカードキーがないと扉は開かないようだった。
ここまでは、生存者特典に書いてある情報は正しいようだ。しかし、この情報が正しいことを証明するために予言されている“超高校級狩り”については全く思い出せない。
…それでも、他の人に“超高校級狩り”について無闇に尋ねるのは止めた方がいいだろう。この“超高校級狩り”とやらがここに俺たちを連れてきた首謀者である可能性が高いからだ。
もちろん、この情報が全て正しければの話だが…どうしても信じきれないのは、その首謀者が自分の尻尾を掴ませるようなものを残しておくだろうか?という疑問があるからだ。
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- 16 : 2017/04/02(日) 22:25:12 :
それ以上、図書室を調べてもその扉の向こうに行くことができる方法は見つからなかった。仕方がないので、図書室を調べるのをやめ、隣にある部屋を調べて見ることにした。
そこは、ゲーム機がいくつか置いてある部屋だった。ゲーム機は長いこと使われていないのか、起動すらできない。
奥には引き戸があるが、開けようとしても開かないので、その奥を調べることはできなかった。
この場所に関する手がかりや、俺たちが記憶をなくしたことについての手がかりはないようである。一階に戻ろうと思ったとき、ちょうど扉が開いた。
その方向に目を向けると、黒い制服に黒いキャップを被った男子、その後ろには音符の髪飾りを付けている金髪の女子がいる。
彼らもここにさらわれてきた超高校級の生徒だろう。
「やぁ、どうもっす。キミたちもここにさらわれて来たんすか?」
「うん…でも、どうしてここにいるのかはわからないんだ。私も最原くんも気が付いたらここにいたんだよね。」
「まぁ、他の人も全員覚えてないみたいなんで…。本当に厄介なことに巻き込まれたみたいっすね。」
「えっ、どうして?」
「全員そのことを思い出せないのは不自然だからっすよ。ここにさらってきたヤツが俺たちに何をしたのかわからないし…ひょっとすると、記憶を奪われただけじゃないかもしれないっす。」
「お、大袈裟だよ。大したことないって、ここに連れて来られた記憶がないだけだし…こんな所早く出られるに決まってるって。」
そう話している彼女は、見た目からして、音楽関係の才能を持っているのだろうか?
隣の男子の方は、見た目からはどんな才能を持っているのか想像できないが…
「そういえば自己紹介してなかったね。私は赤松楓、“超高校級のピアニスト”なんだ。」
「僕は最原終一、一応“超高校級の探偵”なんだ。君の名前と才能について聞いてもいいかな?」
最原君は探偵の才能の持ち主らしい。
超高校級に選ばれるほどの探偵だ。才能について思い出せないのを不審に思われたらどこまで追及されるかわからない。とにかく、穏便に済ませよう。
「天海蘭太郎っす。才能のことは思い出せないんすけど、これから仲良くしてほしいっす。」
「えっ、それ本当?」
「あはは、もちろん本当っすよ。まぁ、信じられないかもしれないっすけど。」
それでも疑われているように感じたので、こう付け加えた。
「変すか?自分の才能を忘れた割に、気にしてなくて。」
「えっ?」
「いや、逆に楽しみなんすよ。俺ってどんな超高校級なのかなぁって。ここにいる生徒は色んな才能を持ってるっすからね…まぁ、皆の才能よりも凄くショボかったりしなければいいっすね。」
「確かに色んな才能を持った人がいるね。さっき会ったキーボ君なんて人間ですらなかったし…」
と最原君が相槌を打つ。確かに、キーボ君は俺たちの中で最も変わった才能の持ち主と言っていいだろう。なにせロボットである。
「う~ん、そうだね。でも、モノクマ―ズなんていうのもいたし、ここでは喋るロボットも不思議じゃないのかも。」
「そう言えば、モノクマ―ズの中では、モノタロウにしか会ったことがないんすけど、他にもいるんすか?」
「えっ、そうなの?僕らが2人でロッカーから出てきたときは、5体いたよ。全員クマのヌイグルミのような見た目だったね。」
「勝手に話し始めるから、会話に付いていくのが大変だったよね…。あっ、そう言えば!」
「どうかしたんすか?」
「私が『モノクマ―ズについて知らない』って言ったら、あっちは大成功だって言ってたんだ!天海くんが言ってる記憶に関することに何か関係あるかも!」
それは気になる事実だった。さっきはモノタロウにとぼけられてしまったが、どうやらモノクマ―ズが俺たちの記憶を奪ったことに一枚噛んでいるに違いない。
それどころか、前に俺たちはモノクマ―ズについて知っていた可能性が高い。“超高校級狩り”と“モノクマ―ズ”…この2つには繋がりがあるのかもしれない。
「ところで、天海くんはここで何をしてたの?」
深く考えていたせいで、最原君に質問されたことに気が付くのが遅れて、ハッとした。
「あっ、いや、このままだと皆からハブられちまうんで、俺は自分の才能についての手がかりを探してたんすよ。」
「そうなんだ。この部屋に何かあったの?」
「見た限りでは、気に留まるものはなかったっすね。じゃあ、俺は違う場所を探してみるんで。」
ゲームルームから、移動して階段を上がり、一階に戻った。
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- 17 : 2017/04/05(水) 20:43:38 :
まだ会っていない生徒が6人もいる。モノパッドのツウシンボの機能は、この学園に集められた16人の情報を確認するためのものらしい。
試しに起動させると、さきほどの会話から得られた情報や、前からその生徒について知っていた情報が勝手に書き込まれていた。他にも、身長・体重・胸囲などのデータも入っている。
驚いたがそういう仕組みなのだろう。ここでは何があっても不思議じゃないのかもしれない。
「おっ、オメーもここに集められた生徒か?」
モノパッドを見ていると、声を掛けられたので顔を上げると…
後ろ髪を上に立てている特徴的な髪型の男子がこちらを見ている。着ている服も特徴的で、ジャケットの内側に宇宙が描いてある。
「おっと、初めまして。俺は天海蘭太郎っす。」
「おう。俺は百田解斗、“超高校級の宇宙飛行士”だ!カッケーだろ!」
宇宙飛行士…そんな才能もあるのかと驚いた。高校生で宇宙飛行士なんて夢がある話である。
「すごいっすね。高校生で宇宙飛行士なんて…百田君って超エリートなんじゃないっすか?」
「へへっ、まぁな。…まぁ、厳密には訓練生だけどな。天海はどんな超高校級なんだ?」
「実は思い出せないんすよね。何かの超高校級だったとは思うんすけど。」
「そうなのか…そんなこともあるんだな。よーし、じゃあ俺が一緒に考えてやるぜ!」
「えっ?」
「そうだな…超高校級の軽音楽部とかじゃねぇのか?」
「う~ん、そういう感じはしないっすね。」
「そうか…じゃあ超高校級のモデルとかか?」
「そんな感じもしないっすね…」
「マジかよ…宇宙に轟く俺の勘がことごとく外れるとはな。じゃあ、見た目からじゃ想像しにくい才能なのか?…そうだ!天海は追っかけてる夢とかはねーのか?」
「…夢というより、やらなきゃならないことならあるっすね。」
「おっ!それに関わることじゃねーか!?それって何だよ?」
「まぁ、他の人には言いにくいことなんで…勘弁してほしいっす。」
「それじゃあ、俺にもわかんねーぞ?大丈夫だ、それを聞いてとやかく言おうって訳じゃないんだからよ!」
「…いや、やっぱ言えないっすね。でも、ありがとうございます。俺の才能について考えてくれて。」
「なんだ、いいのか?まぁ、俺も何か思いついたら教えてやるぜ!」
「…そういや、玄関ホールから外に出られるようになったみてーだから他の奴らに声を掛けてる最中だったんだ。またな、天海。」
「えっ、そうなんすか?わざわざありがとうございます、百田君。じゃあ、また。」
百田君が言っていた玄関ホールに行ってみることにした。
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- 18 : 2017/04/08(土) 14:32:02 :
確かに、玄関ホールの扉から外に出られるようになっていた。
扉を開けて、玄関ホールから外に出ると…
さっきまでいた校舎がすっぽり入るように、周りが高い壁に囲まれていた。壁の上には檻がある。
俺たちをここに連れてきた黒幕は、超高校級の生徒を16人も集めるような大掛かりなことをやっている。そんな簡単に逃げられたりしないだろう。
壁で囲われているので、ここは外ではなくて中庭ということになるのだろうか?
壁に囲われている敷地はもの凄く広大であり、『どこにこの場所は存在しているのか?』という疑問が出てきた。
こんなに大きな施設で、外の人が見つけられない場所にあるとしたら、ここはどこなのだろうか?
無人島とか?いや、人工衛星が地表のどの位置も監視できる今、こんな施設を建てていると見つかってしまうだろう。
突飛な発想かもしれないが、地下にあるとか?もしかしたら、あそこに見えている空と太陽はただの映像かもしれない。
…一番現実的なのは、ここは外の人にも見つけられる場所だが、黒幕の権力が強大で、周りが助けに来ることができないとか?
考えても、この施設の外に出て確認できない以上、ここがどこにあるのかわからなかった。
校舎を出て真っ直ぐ進むと、藤の花が見事に咲いている公園のようなスペースがあった。
そこにも人がいたので、声を掛けることにした。
「どうもっす。初めまして。」
「…何か用?」
「あいさつして回ってるんすよ。俺は天海蘭太郎っす。よろしくっす。」
「私は春川魔姫、“超高校級の保育士”だよ。」
保育士…失礼かもしれないが、春川さんは目つきが鋭く、他の人を寄せ付けない雰囲気があり、超高校級の保育士には見えなかった。
「保育士には見えないと思ったでしょ?」
「えっ?あ、いや、そんなことないっすよ。」
「私はなりたくて保育士になった訳じゃないから、そのせいかもね。」
「保育士にならなきゃいけない何かとかがあったんすか?」
「…ただ孤児院育ちだから、手伝わされて保育士になった…他に選択肢がなかっただけだよ。」
よくわからないが、それで超高校級と呼ばれるまでの保育士になれるのだろうか?
子供の前だともの凄く態度が変わるとか?それは見てみたいような…
「そう言えばあんたの才能は?」
「いや、それが参ったことに全然思い出せないんすよね。」
「そんなのおかしくない?自分の才能でしょ…忘れるなんてないと思うけど。」
「う~ん、そうなんすけどね。これは本当のことっすよ。自分の才能について嘘を言っても仕方ないし…」
「……まぁ、確かにそうだね。じゃあ、私は一応ここから出られる場所があるかどうか探しに行くから。」
そう言って、春川さんは下に降りる階段がある方へ行った。
俺は、Dormitory(寄宿舎)と大きく書かれている建物が気になったので、そちらを調べることにした。
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- 19 : 2017/04/08(土) 22:34:15 :
-
中に入ると、円形のロビーがあり、一階と二階にそれぞれ8部屋ずつあった。ここに集められた生徒の数と同じである。
『ここで一緒に暮らす』と言っていたモノタロウの言葉から察するに、ここに閉じ込められている間に寝泊りをする施設なのだろう。
各部屋のドアのすぐ上には、ネームプレートの代わりに俺たち16人のドット絵が掛けられている。俺の部屋は一階で最原君の隣の部屋だった。
部屋の中がどうなっているのか調べようと思い、俺の部屋?のドアを開けた。
中には、ベッド、ソファー、テーブル、クローゼット、シャワー室、トイレなどなど。ここで生活するのに必要なものが揃っていた。
…特に変わった所はないようだ。寄宿舎の中を調べるのはやめにしていいだろう。
自分の部屋から出ると、さっきはいなかった生徒がいた。
「やっはー!元気ー?」
ニコニコしながら、両手を上に上げている。歩き方も変わっていて、見ていて面白い?人だった。
「こちらは夜長アンジーだよ~。超高校級の美術部なのだ~!」
イントネーションも独特で面白かった。
「こっちは天海蘭太郎っす。夜長さんは元気みたいっすね。よかったっす。」
「まぁね~。明るく楽しく生きればいいことがあるって、神様も言ってるからね~。」
夜長さんは信仰心が高い国から来た人のようだ。世界から見れば日本の方が特殊だからふつうのことだろう。
「まぁ、明るく生きるのは大切っすよね。…夜長さんはどこの出身なんすか?」
「アンジーはね。日本よりももっと南にある島から来たんだよ~。神様に守られてる神った島なんだー。」
「へー、なるほど…地図で見るとどの辺にある島なんすか?」
「う~ん、それは言えないけどね~。イケニエを手に入れるためにもね~。」
「えっ?イケニエ?」
「そうだよ~。毎週月曜日と水曜日にイケニエを収集することになってるんだ。」
「そうだ。蘭太郎も神様のイケニエになってくれない?大丈夫だよ~大量の血を貰うだけだから。」
「えぇ…ちょ、ちょっと待ってほしいっす。」
「ほらほら~。痛くしないから~。」
「えっ、マジっすか?ちょっと…手に持ってる釘とハンマーは何に使うつもりなんすかね?」
「それはこれから教えるよ~。主は言いました、蘭太郎はアンジーにおとなしく従うべきだと…」
「…ははっ、随分具体的なお告げをする神様なんすね。あ、俺もう行かなきゃいけない場所があるんで!」
早く逃げないと本当にスプラッタなことになる!全速力で寄宿舎の扉を目指して駆け出した。
「にゃはははは~。待て待て~。」
そんな声が後ろから聞こえる!寄宿舎から出て、さっき春川さんが向かっていた階段の方へ走った。
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- 20 : 2017/04/15(土) 09:52:20 :
…………とりあえず撒けた?ようで、夜長さんの姿は見えなくなっていた。
さっきのイケニエっていうのは冗談なのか、本気なのか…咄嗟のことで逃げてしまったが、ひょっとすると夜長さんの島でよく使われる冗談なのかも?
気を取り直して、探索を続けることにした。
階段を下りた先には円形の広場があった。奥には赤い扉が目立っている建物がある。右手の道の先にも建物があるが、岩でふさがれていた。
変わったものと言えば忍者のオブジェがあるくらいだろうか?
そのオブジェの側に考え込んでいる青髪のロングヘアーで、眼鏡をかけた女子がいた。どこか遠くを見ているような様子で目の前に立っても気が付いてくれなかった。
「あの、ちょっといいっすかね?」
「………」
「えっと、キミもここにさらわれて来たんすか?」
「………」
全く反応がない。ただの屍のようだ。…というわけではなく、完全に無視されている。
話してみたかったけれど仕方ない…奥に見える赤い扉も気になるからそっちの中を調べに…
「あ~ここにいたのか蘭太郎!逃げちゃダメだよ~!」
!!…まずい、いつの間にか夜長さんがこっちに来ていた!
「よ、夜長さん、イケニエってのは冗談っすよね?」
「え~なんで~?冗談じゃないよ~。」
そう言いながらニコニコした表情を崩さずに距離を詰めてくる。
「初めての経験だから蘭太郎も怖いんだね?大丈夫だよ~神様が温かく見守ってるから…」
夜長さんは、とにかくこちらの血を奪いたいらしい。
さっき言われたことから察するに、一回イケニエになってしまった人が無事だとは思えないのだが…
「あ、あはは、何が大丈夫なんすかね?それって初めてで最後の経験になっちまうっすよね?」
「主は言いました、信じる者は救われると…」
その神様のお告げというのは夜長さんの意思なんじゃ…夜長さんにとって都合の良いことばかり告げているような…
「えっ、地味に何やってるの?私が考え込んでる間に?」
さっきは全く反応してくれなかったが、こちらの言い争いに気が付いてくれたようだ。
「アンジ―は蘭太郎の初めてを貰いたいだけなんだけど、蘭太郎が逃げちゃってさ~。つむぎも蘭太郎を捕まえるのを手伝ってよ。」
「えっ、なんすか?その誤解を招く言い方!?」
「う~ん、地味に引くかも…ここに連れて来られたばっかりなのにそんなことをしようとしてるなんて。」
とんでもない勘違いをされている。
「あはは、勘違いっすよ…夜長さんの言い方が誤解を生みやすいだけで…初めてっていうのは俺がイケニエになることに対してっす。」
「えっ、なにそれこわい。ちょっと何言ってるかわからないんだけど。」
つむぎさんは酷く驚いていた。それも当然だ、急にイケニエなんて単語を聞いたら…さっきの俺もそうだったように。
「イケニエは誰でもオーケーだからね。蘭太郎がダメなら~、つむぎがイケニエにならない?」
と、夜長さんは献血に誘うようなノリで、イケニエになることを勧めていた。
「えっ、何で私も!?」
その驚きの声を気にする様子はなく、夜長さんは『どちらにしようかな?神様の言う通り』をし始めていた。
「ま、まぁまぁ夜長さん、イケニエってのはもう無しにしないっすか?俺たちは一緒にここに連れて来られた仲だし…協力して脱出する方法を探した方がいいと思うんすよ。」
「そ、そうだよ。皆で協力して出口を見つけようよ。」
「…ほうほう、そうだね~。アンジーもできればここから出たかったし…じゃあ、アンジーはあの扉の向こうを探してくるから、蘭太郎とつむぎは他の場所をお願いね~。」
夜長さんはそう言って、軽い足取りで扉の方へ向かっていった。
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- 21 : 2017/04/16(日) 23:36:54 :
「ふぅ、夜長さんって変わってるんすね。急にイケニエとか言うからどうしようかと思ったんすけど、話しは通じるみたいで良かったっす。」
「う~ん、そうだね。ここに集められた生徒は、地味な私からすれば結構変わってるから。」
正直助かった。変わっている人が多かったので、普通そうな人がいると思うと少し安心した。
「あはは、そうかもしれないっすね。俺は天海蘭太郎っす。才能については思い出せないんすけど、よろしくっす。キミの名前はつむぎさんでいいんすかね?」
「そうだよ、私は白銀つむぎ、超高校級のコスプレイヤーなんだ。」
コスプレイヤーというのは、アニメや漫画のキャラクターに扮装する人のことだったはず。
「へぇ、じゃあ白銀さんはアニメとか漫画が好きなんすね。」
「うん大好きさ☆、知識はかなりある方だと思うよ。」
漫画は俺も好きな方だった。…そう言えば、今置かれている状況はまるで漫画やゲームとかではありそうな設定だ。
閉ざされた空間でのコロシアイ(まだ確定ではないが)…
俺たち16人はそんな狂った舞台の登場人物になってしまったのだろうか?
「アニメと言えば…今の状況ってまるでフィクションの世界みたいっすね。閉じ込められたのは16人全員高校生で、皆ここに来た記憶がないなんて…」
白銀さんはどこか遠くを見るような目になった、考え込むときの彼女の癖なのだろう。
「う~ん、そう言われればそうかも。マスコットキャラっぽいクマのヌイグルミもいたし、集められたのも個性的な生徒ばっかりだし…。この学園もそれっぽいもんね。」
確かに、この学園もフィクションの中にあるような奇妙な場所だった。
近代的な電子黒板やモニターがあるのに、校舎には雑草が生い茂っている。さらには、所々に妙なオブジェがあったり、図書室には隠し扉があったり…挙げればキリがない。
「…とりあえず夜長さんの言った通り、別の場所を調べに行かないっすか?この広場には脱出に繋がる手がかりはなさそうだし。」
「そうだね。よーしっ、じゃあ一緒に行こうか?この中庭、広くてまだ調べてない所がたくさんあるしね。」
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- 22 : 2017/04/23(日) 08:58:37 :
白銀さんと雑談しながら中庭を見て回ることにした。
やはり彼女も突然この学園にいたらしい。気付いたら食堂のテーブルに突っ伏して寝ていたとのことだ。
話してわかったことだが…白銀さんも変わっている人だった。
特に、彼女が好きな漫画の話をする際には、早口で『あの漫画のここが凝っている』とか『黒髪赤目のキャラがどうして尊いのか』とか…とにかく情報量が多くて、話についていけないことがあった。
やっぱり超高校級にもなると、自分が好きな事や得意な事にトコトンのめり込むものなのだろう。
この学園を囲っている壁から脱出する出口がないのかを探したが、そういったものが見当たらない。
俺たちはここに入ってきた訳だから、外と繋がっている場所があるはずだが…。
「見てきた感じだと、出口になりそうな所はないみたいだね…ここって本当にどこなんだろう?」
白銀さんは不安そうな声でそう言った。
「はぁ、なんでこんな事に巻き込まれちゃったんだろう。私なんて攫っても地味だから面白くないと思うんだけど。」
地味かどうかは関係ないような…
『おはっくまー。』
突然、聞いたことのある挨拶が響き渡った。学園内のどこにいても聞こえるように、きちんとした放送設備があるようだ。
『やっと準備が出来たぜ。キサマラは体育館に集合しろよな!』
『まぁ、こんな展開も使い古されておるが、これもお約束ちゅうわけやな!』
『…皆ノコト待ッテルヨ。体育館デオラ達トアクシュ。』
『そうだよね。オイラ達との握手会のために皆集まってよ。』
『そんなイベントじゃないやろ!何流されとんのや!…いや、もしかしたら金になるかもしれへんな。モノクマーズでヒーローショーをして売り出すんや!』
『そうじゃなくて入園式の連絡でしょう。もう、皆しっかりしてよね!』
『オイラはしっかりしてるよ!こんなときでも競馬放送はきちんと聞いてるんだ!』
『そんなことどうでもいいからさっさと来いよな!じゃないとミー達がキサマラをバラバラにしてやるぜ!』
『ばーいくま。』
長々と話していたが、要は体育館に集まれということだ。モノクマ―ズは俺たちに何をさせたいのか…それを確かめに行こう。
「どうやら体育館に行くしかないみたいっすね。」
「バラバラって…冗談だよね?」
冗談とは言い切れないが、俺たちをわざわざ集めておいて、いきなりバラバラにすることはないだろう。
「ま、大丈夫っすよ。殺す気ならとっくにやってるはずっすから。…でも、一応逆らわずに従った方がいいっすね。逃げ場もないみたいだし。」
「…天海君は冷静だね。私は気が気じゃないよ。」
冷静な訳ではない。正直こんな訳のわからないことは夢であって欲しい。
でも、そんな泣き言は言っていられなかった。
やらなきゃならないことに手を伸ばすためだ。俺にできる事ならどんな手でも使って、絶対に生き残ってみせる。
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- 23 : 2017/05/04(木) 02:35:26 :
- 俺たちが体育館に着くと、最原君と赤松さん以外は全員揃っていた。
「おう、白銀と天海も来たのか?あとは最原と赤松だけだな!」
俺たちが入ってきたことに気が付いて、百田君は大きな声で呼びかけた。
「そうみたいっすね。アナウンスを聞いたのが校舎から結構離れた場所だったんで…少し遅れちまったっすね。」
「中庭をグルッと回って脱出できそうな場所を探してたからね。」
「んあー。そんなめんどいことをしておったのか。それで出口は見つかったかの?」
「私も一応確認したけどそんなもの無かったよ。まぁ、最初から期待はしてなかったけどさ。」
「それよりー、これから何が始まるのかなー。」
「何事もなく帰れる…ということはなさそうだネ。ククク…僕らにどんな試練が訪れるのか…楽しみだヨ。」
「そこの男死は何で笑っているんですか!?私たちをバラバラにするとか言ってた連中に呼び出されたんですよ!」
「ま、クールになりな。相手がどう出るか分からねーからな。」
「心配すんな!モノクマーズだか何だか知らねーが…あんなオモチャ俺がぶっ壊してやるぜ!」
「だってさ、キー坊は逃げた方がいいんじゃない?百田ちゃんに壊されちゃうよ?」
「またですか!?どうしてボクがあのオモチャと同じ扱いなんですか?」
「えっ?キー坊ってあいつらの味方でしょ?モノクマーズの中には、ロボっぽいヤツもいたしさ。」
「違います!それ以上言うと訴えますよ!」
「へー、ロボに訴訟を起こす権利なんてあったんだ。知らなかったよ。」
「うぐぐ…」
「そういや、この中で初めて会ったヤツとかいるのか?だったら、自己紹介しておこうぜ。」
「仕方ねーな。テメーらみたいな童貞と処女の名前なんて興味ねーけど、一応聞いてやるぜ!ま、オレ様の名前は全員知ってるだろうけどな!」
「じゃが、ウチはお主の名前を知らんぞ?」
「転子も知りませんね。体育館に来るまでに会ったことがないのですが、どこにいたんですか?」
「は?マジかよ!?このまな板ブスども!オレ様の名前を知らねーとかよ!」
「まな板は余計じゃ…ウチは魔法にその分を使っているだけじゃ。」
「へっ!貧乳は反論も貧相だな!ま、仕方ねーか、脳に栄養がイッてなさそうなロリ女だからな!」
「あのさァ…さっきから下品な言葉を並べるのは止めてくれないかナ。」
「な、何だよ?文句あんのかよ?ウンコ製造機の癖によ…」
「…神経を抜き取るヨ?」
「ひぃぃ…」
「入間さんって、攻撃的な態度の割には打たれ弱いよね。『Sだからこそ打たれ弱いの!ガラスの剣なの!!』って感じなのかな?」
「そんな感じっすかね?」
俺も会ってなかった人と話してみよう。
間違いでなければ、虫かごを持った人は獄原ゴン太君で、メイド服を着ている人は東条斬美さんだったはずだ。
「どうも獄原君、東条さん、初めまして。」
「うん!よろしくね、天海君!」
「えぇ、よろしく。」
「俺がこの学園を探索したとき、お二人には会わなかったんすけど、どこを調べてたんすか?」
「ゴン太は裏庭に脱出する所がないか探してたんだ。」
「私は入ることのできる建物内を一通り調べていたわね。」
「そうなんだ、何か気になることとかあった?」
「うん、この学園には虫さんがいないんだよね。話し掛けても応えてくれないし…」
「えっ、虫に話し掛ける?」
「そうだよ、ゴン太は虫さんとお話しすることができるんだ!」
犬とか猫といった動物と意思疎通ができるという人は見たことがあるが、ゴン太君は昆虫と話せるらしい。
嘘っぽい話だが、彼の昆虫博士としての活躍を考えると本当かもしれない。
「東条さんは何か気になることはあったっすか?」
「そうね。気になることはたくさんあるけれど、私たちを攫った目的が全く分からないのが一番ね。」
目的…確かにそうだ。恐らくコロシアイをさせられることになるのだろうが、その目的とは何なのか?
「ゴン太君って黒髪赤目だよね?ねぇ、コスプレに興味ない?ゴン太君なら絶対に似合うと思うキャラがいるんだけど。」
「コスプレ?…よく分からないけど、女性の頼みに応えるのは紳士として当然だからね。うん、ゴン太で良ければいつでも協力するよ!」
「おい、春川、こっち来いよ。お前も全員と話してねーんじゃねぇか?」
「いいよ私は。一応、全員の名前は聞いたし、覚えたから。」
「何言ってんだ?こんな時だからこそコミュニケーションが大事なんだよ。」
「はぁ…わかったよ。だから引っ張らないで。」
「よろしく夜長さん、君のことは噂で聞いているヨ。超高校級の美術部員だったね。良ければ、君の作品を後で見せてもらいたいヨ。」
「ほうほう、是清はアンジーの神様の芸術が見たいのかな?だったら、イケニエになって貰おうかなー?」
「えっ、イケニエ?」
-
- 24 : 2017/05/04(木) 02:54:49 :
そんな会話をしている中、体育館の扉が開く音が聞こえた。最原君と赤松さんが一緒に入ってくるのが目に入る。
「これで16人全員揃ったわね。」
「皆もう来てたんだ?ちょっと遅れちゃったかな?」
「ゴメン、校舎を調べたときに動かした物を元に戻してたんだ。」
「そういや、そんなこともあったな。アンタらは比較的落ち着いてるのかと思いきや、急に教室の机をどけ始めたからな…」
「あれには驚きましたね。食堂の椅子を全部張り倒してましたからね。」
「ウチは座っておったのに、立たざるを得なかったのじゃぞ?」
「最原君、赤松さん何かあったのかしら?不安になるのは分かるけど落ち着いて頂戴。」
「えっ、ゴ、ゴメン、皆を心配させちゃったみたいで。」
「いや、モノを動かすとメダルが見つかってね。集めておこうってことになってさ。」
「メダル?」
「うん、これなんだけど。」
そう言って、赤松さんがモノクマメダルというものを取り出した。
「これがあれば、購買部にあるガチャガチャが回せるんだってさ。」
「ガチャガチャ?そんなものあったんすか?」
「あーあれね!オレも気になってたんだよね。あのガチャガチャはどこかのドライヤーロボよりも役立つモノを出せそうだからさ。」
「…ドライヤーロボはボクのことではなさそうですね。ボクはそれ以外にも色んなことができますから。」
-
- 25 : 2017/05/14(日) 23:19:52 :
「あれ?何か音が聞こえない?」
ゴン太くんが言うように、機械音が聞こえた。体育館の外から段々こちらに近づいて来る。
その音の正体は、『エグイサル』とモノクマ―ズが呼んでいる人型殺人兵器であった。そいつらが体育館の外と中から現れ、俺たちを包囲した。
黒幕の狙いは、この学園からは出られないことを俺たちに確かめさせ、その上で力によってコロシアイを強制することだった。
その後、モノクマ―ズとその親を名乗るモノクマが現れ、漫才をしながら学級裁判によるコロシアイのルールを説明した。
宿泊施設などがあることから、普通のコロシアイではないことは想像していたが、随分と趣味の悪いルールである。
「と言う訳で、オマエラはワクワクでドキドキなコロシアイ学園生活をエンジョイしてね!」
「ばーいくま!」
そう言い残し、モノクマとモノクマ―ズは去っていった。
そのすぐ後に、モノパッドからアラーム音が聞こえ、新たにコウソクの項目が選べるようになっていた。
校則の内容を確認して、全員が冷静に対処するということはできないようだった。
百田くんは、『こんなふざけたゲームに付き合ってられるか!』と言って、モノパッドを破壊するという違反を犯しそうになった。
声を掛けて、止めることはできたが、入間さんは『ほっとけ、この世から馬鹿が一人減るだけだ!』と、また一言余計なことを言った。
百田くんもそれに対し、『あぁ!誰が馬鹿だ!』と言い返したときだった。
「もう…喧嘩してる場合じゃなーい!」
と赤松さんが大声で叫んだ。全員がその声の主に目を向ける。
「仲間で争っている場合じゃないでしょ!こんな時だからこそ、皆で協力しなくちゃ!ここに私たちを閉じ込めた誰かさんは私たちを争わせたいみたいだけど、そうはいかないってことを見せてやろうよ!」
決意に満ちた目で、真っ直ぐにこう言った。
全員があまりの正論に言葉を失う。彼女は会ってほんの少ししか経っていない他人のことをはっきり仲間だと言い切ったのだ。
赤松さんの発言によって場の緊張は緩み、この学園からの脱出方法について話し始めた。ゴン太くんが言うには、裏庭にマンホールがあり、その下に広い地下道があるらしい。
その地下道から脱出できるのではないか?という結論になり、ゴン太くんの後を追って全員が裏庭に移動し始めた。
「赤松さん、凄いっすね。キミの発言からムードがガラリと変わったっす。すっかり皆の中心人物っすね。」
「ちゅ、中心人物って…大袈裟だよ、私は思った通りのことを言っただけで…」
この状況で、『他人を無条件で信用する』という危うさを自覚していないようだった。だからこそ、皆の気持ちを結束させることができたのかもしれない。
しかし、そんな彼女自身が騙されて殺されたら、元も子もない。『協力しよう』なんて言い出す者はいなくなるだろう。
「意識しないでやってるんすか?なら、尚更素質があるんすね…このコロシアイを勝ち抜く素質が」
「えっ?」
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