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ホワイト・クリスマス
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- 1 : 2016/12/25(日) 19:41:57 :
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家の明かりがポツポツとつきはじめた夕暮れ時
私は道の中をひっそりと歩いていた
街はどことなく活気があり
家へ帰ろうと走っていく子供たちの顔も明るい
でも
私の心はそんな明るさとは対照的に
頭の上の曇り空のようにどんよりとしている
今日は特別な日だというのにこんな曇りじゃあ綺麗な星も見えないな
私はそう思いながら目的地へと歩を進めた
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- 2 : 2016/12/25(日) 19:42:57 :
『ホワイト・クリスマス』
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- 3 : 2016/12/25(日) 19:51:49 :
クリスマス
今夜はそう呼ばれる日だ
どうしてだかは知らないけど
人類が壁の中に住むようになる前から祝われていたらしい
クリスマス
私にとって特別な日だ
あの人が想いを告げてくれた日
私たちにとっての記念日
いい思い出ばっかりの日だ
本当なら......
今日...
最高の日になるはずだったのに...
「いけない...」
一人呟いて手に持ってるランプを強く握る
最高の日にするんだ...
これから...
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- 4 : 2016/12/25(日) 20:04:17 :
- そのまま黙って道を歩く
なるべくあの人のことを考えないように
でもそう思えば思うほど
楽しかった記憶が蘇って
目元に溜まっていく
それを拭いながら
明るくなった街中を歩く
「おい!急げアルミン!」
「ちょっと待ってよエレン!」
「エレン!アルミンを待つべき」
「でもご馳走だぜ?早くしないとなくなっちゃうかも!」
「ちょっとー!」
楽しそうな声に思わずそっちを見てしまう
小さな子供たちが満面の笑みを浮かべて道を走っていた
その笑顔に心臓を鷲掴みにされる
それは...
どことなく
昔のあの人を思い起こさせたから...
『早く来いよ!なくなっちゃうぞ!!』
『待ってよ!そんなに早く走れないよ!』
『遅いなぁ!ほら早く!』
ズッと鼻をすすって足を速める
あの人が待っているから...
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- 5 : 2016/12/25(日) 20:05:33 :
- 期待!頑張ってくださいね!刹那さん!(笑)
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- 6 : 2016/12/25(日) 20:23:29 :
- 「こんばんは」
私は一つの墓標の前にたどり着く
あの人の墓標に
愛する人の墓標に
「約束したよね...?」
持ってきた袋の中からナイフを取り出す
「今日...結婚してくれるって...」
辺りに明るいものはなくただ持ってきたランプだけが小さく光っている
みんな家で聖夜を祝っているのだろうか...
まぁ私には関係の無いことだが...
墓石
そこに刻まれている文字をじっと見つめる
「リーク・スメマリス...彼の者、自由を愛しその翼の元で安らかに眠りたり...彼に永久の安らぎが訪れんことを」
その文字を読み上げる
途端に堰切ったように涙がこぼれ落ちた
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- 7 : 2016/12/25(日) 20:40:34 :
- 「こんばんは」
突然背後から声をかけられ私は振り向く
そこには
死んだはずのあの人が立っていた
「リーク?」
涙をゴシゴシと拭い恋人を見つめる
「久しぶりだね...」
彼はそう言って私の頭に手を乗っけた
柔らくて暖かい感触が彼が本物であることを示していた
「リーク...なんで...」
私はただそう問いかけることしか出来ない
死んだはずのリークが...
「さぁ...僕にもわからないよ」
彼はそう言って笑った
あの屈託のない笑顔で
「多分...今日が聖夜だからじゃないかな?」
聖なる夜の小さな奇跡
だから...時間はそんなにあるわけじゃない
私はそう感じた
だから余計な詮索はよそう
彼がいる
それだけで十分だから
「約束...守れなくてごめんね」
彼は悲しそうに呟いた
「結婚式あげたかったんだけど...運がなかったなー」
微笑を浮かべる彼に私は抱きつく
「いい...また会えたから...ずっと...ずっと...会いたかったから」
顔を埋めて私はむせび泣いた
そんな私の背中を彼は優しく撫でてくれた
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- 8 : 2016/12/25(日) 20:49:40 :
- 「そういえば僕が告白した時もこうして泣いてたよね?」
私に泣かれて困ったのか目を背けて彼は言った
「あの日もクリスマスの夜で...君もまだ調査兵団にいて...」
覚えている
この上なくはっきりと
『僕と...付き合ってほしい...いや結婚してほしい』
一年前の今日
彼に呼び出されて言われた
ついでに調査兵団をやめてほしいと
わかっていた
小さい頃からずっと一緒だったから
彼が私のことを好きだったことなんて
私も彼のことが好きだって
だから
嬉しくって
彼に抱きついて喜びの涙を流した
本当だ...
あの時から何も変わってない......
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- 9 : 2016/12/25(日) 21:08:47 :
- 「好き」
言葉が口からこぼれ落ちる
「好きなの...ずっとずっと...」
「わかってるよ」
「だから...私も...」
「それは駄目だ」
やんわりとした拒絶
その言葉は...今まで聞いてきた彼の...
どの言葉よりも強かった
「君には生きていてほしいよ...そのために調査兵団を辞めさせたんだから」
「でも...」
「幸せになってほしいんだ...」
彼は微笑む
「僕が自由の翼を求めたのは...それが理由」
巨人の脅威をなくして...安心して暮らせるように
幸せになれるように...
照れ笑いする彼の胸を叩く
「私は...リークがいれば十分幸せだったのに...」
「そう?......なら失敗したな」
微笑む彼を見てると
思い詰めていた気持ちがフッと軽くなるのを感じた
「時間かな...?」
彼は私を離すと一歩後ろに下がった
私も自分が思っていたより冷静にそれを受け入れられた
「じゃあ...またね」
彼がまた微笑む
もう会えない
でも...また会える
私は精一杯笑顔を作る
「メリークリスマス」
私の言葉に一度キョトンとして...
満面の笑みで返してくれた
「メリークリスマス」
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- 10 : 2016/12/25(日) 21:11:59 :
リークの姿がどんどん薄くなっていって...
そして消えた
カラン
私の手からナイフが落ちる
ふと我に返ると目の前の墓石に
白いものがついていた
空を見上げると
雪がひらひらと舞っていた
fin
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- 11 : 2016/12/25(日) 21:19:30 :
- こんにちは!こんばんは!初めての方ははじめまして!刹那と申します!
今日はクリスマスという事でこの作品を書かせていただきました!いかがだったでしょうか?
時はマリア崩壊よりも前
進撃の世界にクリスマスがあるという設定でシガンシナ区でのお話を書かせていただきました!
クリスマスに恋っていいですよね!(注意。作者は今年もクリぼ...ゲフンゲフン笑)
綺麗な作品に仕上がったのではと個人的には思ってます!
>>5
ありがとうございました!
最後に
もし気に入っていただけたのならスターいただけると幸いです!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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- 12 : 2016/12/26(月) 15:12:46 :
- 壁の中のクリスマスの日に、本当にあったかもしれない素敵なお話ですね。
お疲れさまでした。
ささやかながら、お気に入り登録させていただきました。^^
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- 13 : 2016/12/26(月) 22:43:37 :
- >>12
ありがとうございます!
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- 14 : 2016/12/27(火) 20:47:17 :
- なんか、悲しくなってきた
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- 15 : 2016/12/28(水) 18:51:57 :
- >>14
感動していただけたのなら幸いです!
読んでいただきありがとうございました!
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- 16 : 2016/12/29(木) 00:35:42 :
- 相変わらず感動させてくれますね〜このこの!
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- 17 : 2016/12/30(金) 14:34:12 :
- >>16
ありがとうございます!
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