このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
いつもの場所
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- 1 : 2016/11/23(水) 23:10:43 :
- ヒッチ目線の話です。
しばしの間お付き合い下さいm(_ _)m
※単行本20巻までのネタバレを含みます
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- 2 : 2016/11/23(水) 23:11:39 :
- 憲兵団に入団して半年
憲兵ってのは楽なもんで、風邪とか言っときゃズル休みし放題
まあ、そんなわけで楽しい憲兵ライフを送ってるわけなんだけど、仲間と毎週行ってるいいお店があるんだよね
シーナの街のど真ん中にある雑貨屋で、まず外観からいい
お洒落なカフェって感じでさ、浮いてるわけじゃないのに他の店よりなんでか目立ってんの
何より品数が多くて、来る度に何かしら新商品入ってるから、つい通っちゃうんだよね〜
だから私らの定番の場所
いつもの場所ねって言えば通じるから
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- 3 : 2016/11/23(水) 23:35:13 :
- ああ、そうだ
いつもの場所って言ったらあいつ、マルロのやつ
あいつ朝食食べる時はいっつも同じ席に座ってんの
ほら、今は誰も座ってない窓際の一番端っこ
前に何でそこで食べるのかって聞いたんだけど、
「朝日は重要だからな。ここなら朝一で日の光を浴びながら食事ができる」
だってさ
なんかその理論はズレてると思うんだけど、まああいつなりにこだわりがあるんだろうね
体温上昇がどうのとか、生活リズムがこうだとか、訳わかんないけど
そのこだわりの席で、一口一口パンをちぎって食べてんの
おじいちゃんかよ!
ってか食べる時までバカ真面目ってヤバすぎ
マジで朝食の度に腹抱えさせられるこっちの身にもなってほしいわ
しかもそれを笑ってやったら憲兵の心得だの人間としてどうだの語り始めちゃうし
あいつの脳みそ解剖して見てみたいもんだわ
あ、でもどっかの偉いおっさんがルーティンがいいとかなんとか言ってたような気もする
ま、どーでもいいけど
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- 4 : 2016/11/24(木) 06:21:05 :
- そういや、アニも大体同じ席で食べてたっけ
マルロと同じ窓際の端っこなんだけど、壁の影になっててそこだけ異様に暗いんだよね
まあ、アニの場合はこだわりがあるわけじゃないんだろうけど
その席で食べることが多いってだけで、空いてる時は適当に空いてるところに座るし
…アニ、まだ水晶の中にいるのかな
あーあー、なんかこんなこと考えてると芋づる式に考え事浮かんできちゃうわ
アニがいなくなってもう五ヶ月かぁ…
まさか女型の巨人の正体がアニだったなんてね
考えただけで怖いけど、でもアニのことは嫌いになれない…
別に面白いやつじゃなかった
むしろつまんないやつだったのに、何でか愛着みたいなの湧いてんの
だけど、本当にショックだった
マルロと一緒に探し回ったんだからね
私がガラにもなく心配してたからって、あいつが上官に直訴してさ
こんな腐った組織だし、上官は酔っ払ってたもんだから
「じゃあお前らで勝手に探しとけ。病欠扱いにしといてやるからよ」
なんて言われたけど、まあそっちの方が都合もいいし
二人でいろんな所に聞き込みして回ったんだっけ
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- 5 : 2016/11/24(木) 19:17:02 :
- アニのよく行く場所なんか知らないし、好きな食べ物とかも全然分からなかった
私はアニのこと何も知らないんだって痛感しちゃったよね
そりゃまだ会って二ヶ月程度だったんだから当然っちゃ当然だけど
結局見つかるはずもなく、散々悪態つきながら帰ってた気がする
多分焦ってたんだと思う
そんな時でもあいつはいつもと変わらなかったな〜
「アニのことだ、きっとそのうち帰ってくるだろう」
な〜んて、そんな心配そうな顔で言われたって信用できるかっての!
でもまあ、その時はあいつのブッサイクな不安顔のおかげで笑えたわ
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- 6 : 2016/11/24(木) 21:35:22 :
- そんなあいつが調査兵団へ行ったからって、私の生活が変わるわけでもないし、今日もいつもの場所へ行く
髪を巻いて化粧もして、我ながら完璧
同期と雑談しながら兵舎を出た
…んだけど、ヤバイかも
向こうから上官が来てる
しかもなんかスッゴイ怖い顔してるし…
でもなんかフラフラしてる
また酔ってんの?
しっかし、いくら手柄立てたからって堂々と仮病で出かけるのはマズかったかな〜…
取り敢えず全員敬礼
それにしてもこんな人見たことない
制服着てるし、半端じゃない威厳っての?そういうのがあるから、先輩ってことに間違いはないだろうけど
「ヒッチ・ドリス二等兵はどこにいるか知らないか?」
「はっ!私がドリスです!」
私に用?
せっかくお出かけだったのについてな……
「調査、兵…?」
憲兵の上官だと思ってたその人の紋章は、角が生えた馬じゃなくて、二枚の羽だった
「ここでは何だ…移動しよう」
「わ、わかりました。あ、みんなは先行っといて〜」
ヘラヘラと笑って見送ったのに…
ああもう何これ…凄く嫌な感じ
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- 7 : 2016/11/25(金) 06:23:28 :
- 近場のカフェに入った
始めてくるけど、なかなかお洒落でいい感じかも
ただこの人、辛気臭すぎて全っ然雰囲気にあってない
「調査兵団の方が私に何のご用でしょう?あ、もしかして、スカウトってやつですか?いや〜、それは嬉しいんですけど憲兵にもやり甲斐はあるっていうかぁ〜」
本当にスカウトだったらこんなテンションで来られるのすっごいヤなんだけど…
「マルロ・フローー」
「マ、マルロですか?あいつが昇進したとかだったりします?あいつ年寄り臭いけどやる時はやりますよね〜!憲兵にいる時からずっとああなんですけどね、あいつ本当におじいちゃんみたいで」
「マルロ・フロイデンベルク二等兵は戦死した」
「………え?」
何、言ってんの?この人…
意味わかんない…
「マルロが戦死って、だって…」
「フロイデンベルクと交流のあった兵士達から君の名を聞いた。どうか伝えてやってくれと」
パッとアルミンたちの顔が浮かんだ
「そんなの…」
「辛いだろうが、これが現実だ」
目も合わせず、ずっと同じ口調でズケズケ言ってくる
無性にイラついて、つい立ち上がった
「あんたねぇ!なんでそんな淡々と…!」
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- 8 : 2016/11/25(金) 18:14:46 :
- 紅茶の入ったカップを見た時、その水面が揺れているのがわかった
よく見たらこの人は腕や顔に沢山傷があって、意識してみると薬の匂いがした
「すまない…。酷なことだが、事実を告げるのも兵士の役目だ…」
きっとこの人も大切な人を失ったんだ
今生きてる調査兵全員が、誰かを失ってる
唇を噛み締めて俯くこの人を見てると、あいつが死んだってことを嘘だと思えない
冗談だって、笑い飛ばさせてもらえない
笑えない…
「…取り乱してすみませんでした」
その後、あいつの死体はバラバラになってて、回収できる状態じゃなかったことを聞いた
ほかの兵士達もほとんどがそうらしい
危険だってことは百も承知だったけど、こんな終わり方だれが想像するかっての
「年寄り臭いって言われたからって、本当に死に急いでんじゃないよ…バカ」
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- 9 : 2016/11/25(金) 22:29:17 :
調査兵団の兵士は帰った
私はその後、いつもの場所へは行かなかった
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- 10 : 2016/11/25(金) 22:30:04 :
- いつもの場所
あいつが毎朝決まって朝食を食べてた窓際の一番端っこ
いつもの場所
あいつが読書する時必ず座ってた図書室で一番奥の席
いつもの場所
任務終わりに日課のジョギングをしてた道
いつもの場所
仕事を溜め込む私に呆れながら、毎回手伝ってくれてた私の目の前の席
誰も座らないような席
誰も通らないような道
だから余計に穴が開く
どこを見たって、あいつのいた場所は空白なんだから
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- 11 : 2016/11/26(土) 20:40:55 :
- その日から、私の週一回のいつもの場所はあのお店じゃなくなった
土臭くてダサくて何も無い
だけどあいつに一番近い
ウォール・マリアの壁の上
そこが私のいつもの場所
〜END〜
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- 12 : 2016/11/26(土) 20:41:15 :
- 以上で終了になります
閲覧ありがとうございましたm(_ _)m
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- 13 : 2016/11/27(日) 15:37:18 :
- 才能あるよ!
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- 14 : 2016/11/27(日) 21:18:21 :
- >>13
そう言って頂けてとても嬉しいです。
まだまだ未熟者ですが、精進していきます。
閲覧ありがとうございました!
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