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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

苗木「僕は…喰種だ」

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  1. 1 : : 2016/09/24(土) 20:00:11
    どうも!如月誠です!

    ダンガンロンパ3が終わりになる前にあと一作品書いておきたいと思ってこんな形になりました。

    戦闘描写もストーリーも素人並ですが、最後まで頑張ります!

    (原作にわかですwww)
  2. 2 : : 2016/09/24(土) 20:16:57
    2016年 東京

    p.m10:00


    この日はこれからの夏を盛り上げるため、花火大会が盛大に開催された。


    そしてそれが終わると、大体の人は帰路につく。


    が、そうならない者も少なからずいる。



    ここは大会会場からそんなに遠くない公園。
    そこには大学生くらいの二人の男女が座っていた。



    女「ねぇ、ーーー君」

    男「ん?どうした」

    女「私達って付き合ってどのくらいだっけ?」

    男「そうだな。大体2ヶ月位か」

    女「そっか、そんなに経つんだね。今日みたいに楽しい日が続くから時間が早く感じられるね」

    男「あ、あぁそうだな」///


    仲も慎ましい雰囲気になるが、そんな二人を憎悪の籠った眼で見るものがいた。


    ???「チッ!」ギリッ
  3. 3 : : 2016/09/24(土) 20:26:28
    二人の邪魔をするかのように、その人物は公園にいる彼女達に近づいた。


    ???「ねぇねぇ君達」


    男「はい?」クルッ


    そこに立っていたのは、40を過ぎたであろうOLの女だった。


    OL「こんな時間まで出歩いてたら誰かに襲われるわよ? 例えば…」

     
    OLは一瞬だけ俯く。

    そして次に顔を上げたとき


    OL「OL風の喰種とかにね!?」グワッ!


    彼女の両眼は赤と黒に色分けされていた。
  4. 4 : : 2016/09/24(土) 20:34:26
    File1 『喰種』

    人間を喰らう人間。
    姿形が普通の人とは見分けがつかないため、人間社会にとけ込んでいる。
    人肉を除けば水とコーヒー以外摂取できない。
    体の皮膚が硬いので、包丁等では一切の傷がつかない。
  5. 5 : : 2016/09/24(土) 21:07:11
    OL「ぐわっ!」ガッ


    OLの女は近くの男にではなく、その横にいる女に喰いかかった。


    しかし後ろから誰かに押さえられ、結果的に女は無事だった。


    OL「くっ! 誰だ!」バッ


    押さえつけてる者の正体を知ろうと、後ろを見て確認する。


    桑田「アン、俺か? 俺は桑田怜恩だ!」


    桑田と名乗った男は私を抑え込んだまま、涼しげに自己紹介をしてきた。


    OL(くっ、何だこの力は!?喰種である私が只の人間に抑えられるなど!)ジタバタ


    先程よりも力を入れるが、一向に弱まる気配はない。


    それどころか襲われた女に話をかけ始めた。


    桑田「大丈夫舞園ちゃん!? どっか怪我とかしてない!?」


    舞園「えぇ、大丈夫です」


    桑田「そっか。俺が来たからにはもう安心だからな!」


    どこに会話をする余裕があるのか、何故女と知り合いなのかは、捕まっている焦りからかマトモに思い付かない。

    すると男の方もヤレヤレといった様子でゆっくり立ち上がった。

    そして


    日向「おーし、もう出て来ても良いぞ―、豚神~?」


    豚神「ふん、この俺をこんな所で待機させておきながら随分と悠長なことだな?日向」


    茂みの中からまた新たに1人が姿を表した。
  6. 6 : : 2016/09/24(土) 21:47:56
    豚神「おい桑田!舞園に夢中になってその女を逃がすなよ!?」


    桑田「ハァッ!?俺がそんなヘマするワケねーだろ!」


    日向「そう言って前に何度も逃がしたから注意してんだろ」


    舞園「大丈夫です。その時は私が捕まえますから!」


    桑田「さっすが舞園ちゃん!頼りになる~!」


    舞園「それに…桑田君には元々期待なんて寄せてませんし」ニコッ


    桑田「アポ?」



    何なんだコイツ等のこの緊張感の無さは!?
    普通もっと慌てるだろ!


    そこでようやく気付いた。

    これは罠…つまり喰種(私)を誘き出すための演技だったという事に。



    日向「お前に聞きたい事がある」


    いつの間にか前に立っていた彼氏役の男が話し掛けてきた。


    日向「お前が『赤服』か?」


    赤服。それは巷で噂されている私が喰種である時の呼称だ。

    喰った奴らの返り血が服を赤くする事からそう呼ばれている。


    OL「だったら何だっていうのよ?」


    豚神「お前を排除する」


    排除、要は死か。


    赤服「くく、アハ!アハハハハ!!」


    桑田「ウオ!何だこいつ。急に笑いだしやがった!」


    日向「! 桑田、離れろ!!」


    桑田「あ? ウオッ!」バッ!

    桑田「…ッと危ねー!」


    チッ、間一髪で避けたか。 
    …まぁ良い。


    腰に力を込めて『鱗』を展開させる!

    赤服「殺れるモンなら殺ってみろよ!」ズァァ!



    豚神「…赫子か」
  7. 7 : : 2016/09/24(土) 21:54:33
    File2 『赫子』

    喰種が捕食や戦闘の際に用いる、彼らにのみ存在する器官。 
    『Rc細胞』と呼ばれる喰種の体内に存在する細胞によって構成され、その性質から喰種捜査官からは液状の筋肉と称される。
  8. 8 : : 2016/09/24(土) 22:31:03
    如月さんの新作だーーー!!
    期待しかない!
  9. 9 : : 2016/09/24(土) 23:27:13
    日向「よし、行け桑田!」


    桑田「ハァ! 何で俺が!?」


    豚神「愚民め。そんな事も分からないのか?
    よく見ろ、奴の赫子は鱗赫だ」


    桑田「だからって何で俺1人で!?全員でかかれば良いじゃんかよ!」


    舞園「桑田君、私ちょっと怖くって…」

    桑田「見てろよ舞園ちゃーん!俺がカッコよく決めてくっから!」


    舞園「ワー桑田君こころ強いですー(棒)」


    桑田「へへ! だろ!?」


    日豚舞(チョロッ)


    そんな訳で使えない男どもは放っといて、舞園ちゃんのために俺は1人で立ち向かう。


    赤服「ふん、あんな見え透いたお世辞に惑わされるなんて、アンタ見た目通りのアホだね」


    桑田「何だ?それは自分がモテないからって舞園ちゃんに対する嫉妬か?」


    赤服「…何だと?」ピクッ


    桑田「お前の事は(日向達が)調べておいたぜ」

    桑田「最近この辺を喰い回る中年の女喰種、赤服。被害者は全員彼氏、又は夫がいる女性」


    桑田「以上の事から、赤服は独身女性である事が(日向達によって)結論付けられた!」ビシッ

    桑田(決まった…)ドヤッ


    日豚舞(ダサい)


    赤服「んぐっ!」ギリッ


    桑田「おおかた結婚期逃した腹いせにってやつだろ?」

    桑田「そんなんじゃ何時まで経っても結婚できないぜ、『オバサン』」


    赤服「ッ! ぶっ殺す!!!」ダッ!


    有らん限りの力で地面を蹴りあげ、こちらに突進してきた。
  10. 10 : : 2016/09/24(土) 23:31:31
    File3 『鱗赫』

    赫子の形態の一つで、腰の辺りから出現する。
    鱗の触手を連想させる外見であり、強力な再生力とパワーが強み。
    ただし防御面には劣るため、ほかの赫子よりも脆い。
  11. 11 : : 2016/09/24(土) 23:34:59
    >>8

    期待ありがとうございます!

    とりあえず喰種初見の人でも解るように進めていくので、原作知ってる人にはぬるく思われるかもしれないですね(苦笑い)
  12. 12 : : 2016/09/25(日) 00:34:18
    【vs赤服】 B+レート

    赤服「ぅおらっ!!」ヒュッ,ドスン!


    大きく振りかぶった踵落としを避け、その後に襲ってくる赫子もかわしながら相手の出方を見る。


    赤服「ハハッ!良いのは威勢だけか!?さっきから避けてばかりで全然反撃して来ねーしよ!」シュッ


    桑田「うっせーな!今考えてんだよ!」スッ


    鱗赫は羽赫の様な放出系を除けば、赫子の数が多いので手数も多くなる事が可能性として高い。


    だから迂闊に近づかば串刺しは目に見えてる。


    赤服「ただ力が強いだけじゃ喰種には勝てないんだ…よっ!」

          ズドドドドド!

    容赦ない攻撃が俺の頬を掠め、そのまま近くに置いてあった遊具を破壊していく。



    桑田「ッぶねぇ! ここは一旦距離を取んねーとッ」ドサッ



    しまった行き止まりっ!


    赤服「ふっ、最後に教えといてやるよ。喰種を殺すには『箱』を使うか、赫子を持つしか無いって事をな」ニヤッ

    赤服「死ねぇぇーーー!!」バッ!



    全ての赫子が俺へと向けられ、そのまま何も出来ずに貫かれる…



    ドスッ



    ・・・・・・ぐっ!?


    赤服「ッ!!? ガハッ!!」


    事もなく、逆に赤服の腹には大きな穴が開いていた。


    赤服「グッ、ナ,何故…」ドサッ


    あまりの痛みに耐えられず、膝から崩れ落ちる。



    桑田「どうしてもこうしてもねーよ。今自分で言ったんじゃねーか」

    桑田「【喰種を殺すには『箱』を使うか、赫子を持つしか無い】ってな」


    赤服「そんな…それ、は…」


    桑田「俺の赫子は尾赫だ。残念だったな、甲赫や羽赫じゃなくて」


    赤服「その力は我らの…!」


    桑田「俺達はQs(クインクス)
    喰種(お前ら)の力を使ってお前らを倒す集団だ」

  13. 13 : : 2016/09/25(日) 00:39:03
    File4 『尾赫』

    尾てい骨の辺りから尻尾のように出現する赫子。
    赫子の中で総合的な能力が最も高く、中距離で最も力を発揮る。
    弱点らしい弱点はないが決定力に欠ける。
  14. 14 : : 2016/09/25(日) 00:44:21
    File5 『甲赫』

    肩甲骨の下あたりに出現する赫子。
    金属質で、赫子の中では一番頑丈だが、その分重量があることが欠点。
    羽赫なんかと比べて武器感が強いのも特徴。
  15. 15 : : 2016/09/25(日) 00:46:26
    期待しています
  16. 16 : : 2016/09/25(日) 00:49:54
    File6 『羽赫』

    肩周辺からRc細胞が放出される赫子。
    赫子自体が軽く、遠距離からの攻撃が可能なため距離をとったり速さを生かした戦いが特徴。
    Rc細胞を常時に放出する形になるため、ガス欠に陥りやすいのが欠点。
  17. 17 : : 2016/09/25(日) 00:51:38
    >>15

    期待ありがとうございます!

    こうして誰かに支持されると嬉しいっすね~
    (*´ω`*)
  18. 18 : : 2016/09/25(日) 01:03:37
    File7 『Qs』

    これから追々説明。

    とりあえず今は喰種の力を得た人間とだけ。
  19. 19 : : 2016/09/25(日) 01:20:01
    2年前、アカデミー生の頃


    講師「このように、喰種は赫子の出現場所によってタイプがまるっきり別のものになる」


    生徒「先生」


    講師「ん、何だ?」


    生徒「赫子にはそれぞれ苦手なタイプと得意なタイプが有ると聞いたのですが…」


    講師「うむ、良い質問だ。
    その通り。これら4つの赫子には得意、苦手とするタイプがある」

    講師「いわばじゃんけんのような感じだ」



    講師「羽赫は尾赫に強く、甲赫に弱い。
       甲赫は羽赫に強く、鱗赫に弱い。
       鱗赫は甲赫に強く、尾赫に弱い。
       尾赫は鱗赫に強く、羽赫に弱い」



    講師「闘いの際には相性を見極めてやるのも重要になってくるから覚えておくように!」

           ハーイ,ウース,オース!

           ~回想終了~


    桑田(つってもやっぱ1人でやるのはキツイな)

    桑田(赫子って便利だけど扱いがムズいから出すの躊躇うし)
  20. 20 : : 2016/09/25(日) 06:24:58
    ガンバ!(*`・ω・)ゞ
  21. 21 : : 2016/09/25(日) 12:50:18
    赤服「うぅ」ガク


    最後に赤服にトドメをさし、そのまま動かなくなった。


    桑田「うっし、任務完了っと!」


    豚神「ふん、やっと終わったか。チマチマとした戦い方をしてるからあの程度の相手にも手こずるんだ」


    桑田「アァ!?それが1人で頑張った仲間にかける言葉かよ!」

    桑田「しかもいくら相性が良いからってRc値は俺が一番低いんだぞ!?そんなホイホイ出せるもんかって!!」


    豚神「ならば努力すれば良いだろう!それをせずにいつもダラダラと…」


    桑田「あー!もう、聞き飽きたってのその言葉!」ウガー


    日向「まぁまぁ。とにかくコレで問題解決したからそろそろ帰るか!」


    舞園「じゃあ報告送っときますね」

    舞園「コードネーム『赤服』、レートB+の鱗赫っと!」ピッ

    【討伐確認】



    桑田「あ! ところで舞園ちゃん、どうだった俺の活躍?」


    舞園「そう云えば…明日から新たにアカデミーから新人が来るんでしたよね?」


    豚神「あぁ、今回は3人だったな。だから暫くはソイツ等の面倒を視る事になるだろう」


    舞園「そうですか!楽しみですね♪」


    桑田「ねぇ舞園ちゃん、俺の活躍は…」


    日向「だけどその中から内に来るのが居るかどうか。
    俺等みたいに特殊のヤツはそう簡単には見つからないだろうし」


    舞園「…そうですよね。最後に入ってきたのは私と桑田君でしたけど、それでももう1年半前くらいですか」


    桑田「活躍…」


    豚神「チッ、何をしょぼくれた顔をしてる。
    おい日向!お前はこの班のリーダーだろう」

    豚神「そのお前がこの様子では例え新しく入った者がいたとしても困惑するだけだ」

    豚神「リーダーならばもっと堂々と構えていろ!」ドンッ


    舞園「豚神君…」


    日向「ハハッ、悪い豚神。迷惑かけて」

    日向「でもそうだな!俺がしっかりしてないと後輩にも申し訳が立たないよな!」


    豚神「フッ、それでこそ俺たちのリーダーだ」


    日向「うっし、取り合えず新人が入ってきたら俺がまとめて奢ってやるよ!」


    舞園「わぁ、良いですね♪」


    豚神「その言葉、忘れるなよ?」ゴゴゴゴゴ


    日向「お前らの胃を満たしてやるぜ」ズズズズズ


    舞園「あれ?桑田君何か言いました?」


    桑田「・・・カツサンド食いたい」
  22. 22 : : 2016/09/25(日) 13:55:42
    No.148 桑田怜恩(19) タイプ:尾赫


    日向班所属(Qs)
    2014年入社、現在の階級は二等。

    尾赫の特徴をよく体現しており、中・近距離を得意とするオールラウンダー。
    しかし肝心の質の方が並大抵であるため、今までの戦果も平均的である。

    たまに協調性を欠くところもあり、それを踏まえると未だ未だ発展途上的だ。
  23. 23 : : 2016/09/25(日) 15:53:14

    CCG(喰種対策局)

    喰種の殲滅、捕獲、研究など、喰種に関して様々な対策を立てる国の行政機関。
    1区に本部を置き、現在ではこの局だけで述べ2000人を越える人々が働いている。

    その存在を恐れられてか、喰種の間では白鳩(ハト)と呼ばれるらしい。



    人類の存続を担っている組織。
    なんて言ったらちょっと大袈裟だけど、それでもそれだけ重要な施設の前に、僕達3人は並んでいた。


    では何故僕達がそんな組織の前に居るのか。
    それはいたって単純。そう、僕等もここで働くからだ。


    苗木「ここがCCG本部か…。なんだかいざこうして見ると緊張がヤバイよ」


    朝日奈「何言ってんの!ここに入るために今まで頑張ってきたんでしょ!?」

    朝日奈「今さら怖じけ付いたってダメだからね!」


    不二咲「でも、僕もやっぱり怖いかな。だって人々の命を救う重要な組織だから、僕のせいで…ってなったら嫌だし…」


    アカデミーを他よりも一足早く卒業し、今日は入社1日目を迎える。


    ずっと目標にしてきたCCGでの活動。

    罪もない人々が理不尽な捕食に怯える事もなく、安心して暮らせる世の中を創るのが僕の夢だった。


    しかし不安は拭いても拭いきれない。

    毎年多くの捜査官が入社し、それと同じくらいの命が戦場で散っていく。

    ここで働くということは、常に死が隣にある状態だと云えるだろう。


    そんな期待と不安が込み上げる中、1人の男性がこちらに近づき声をかけてきた。


    ???「苗木誠君、朝日奈葵君、不二咲千尋君だね?」


    朝日奈「えっ? あっハイそうですけど…」


    霧切「私はCCG本部第一支部所属、及び副局長を務める霧切仁、階級は特等だ」


    苗朝不「「「ふ、副局長!?」」」


    実質のナンバー2じゃないか!
    そんな人がどうして…!


    霧切「君達をこれから案内する。
    それと、これはあくまで個人的な感想だが、」


    そこで霧切副局長は僕等全員を見回した後、小さく笑ってそっと告げる。


    霧切「期待している。
    くれぐれも死なないように。 以上だ」


    苗朝不「「「!!」」」パアァァ!


    その言葉は。僕等に向けられたその言葉は、僕等を奮い立たせるためのお世辞だったのだろう。

    それでも、緊張状態にあった新米捜査官達には充分過ぎるくらいに効果てきてんだったのだ。


    決意を固め直し、深呼吸をしてからゆっくり、歩を進めていく。



    ここから僕の闘いが始まっていくんだ!
  24. 24 : : 2016/09/25(日) 17:34:31
    入社セレモニーが終了し、お次は待ちに待った新人の所属発表だ。


    この発表が終わるまでは、在籍している捜査官達には誰が何処に入るのかは伝えられていない。

    事前に見た限りだと、男1人と女2人だった。


    日向(なぁ、どう思う)ヒソヒソ


    舞園(何とも言えませんね。時期外れの入社だけあって人が少ないですし)ヒソヒソ


    豚神(俺が思うに、小さい方の女子は松田のところを希望するだろう。体格的に見て)ヒソヒソ


    日向(だとすると可能性があるのはあの2人か)ヒソヒソ


    桑田(だったら俺はあの褐色の娘が良いな♪
    おっぱいもでけーし!)ヒソヒソ


    舞園(あっ!私あの苗木君って人が気になります!背も小っちゃくて可愛いし優しそうですし♪)ヒソヒソ


    桑田(…アポ?)


    日向(皆静かに!発表が始まるぞ)


    霧切「今回は人数が少ないので本人達の希望通りの班へ配属になりました」

    霧切「では、発表します」

            シーン

    日向()ドキドキ
    舞園()ワクワク
    豚神()ソワソワ
    桑田()ホジホジ
  25. 25 : : 2016/09/25(日) 17:39:18
    期待です
  26. 26 : : 2016/09/25(日) 19:45:47
    それから四日後

    【vsアジリピー】 Bレート


    豚神「こちら豚神。目標の喰種『アジリピー』がそちらに向かって逃走した」


    日向「了解。作戦通りだな。桑田、そっちはどうだ?」


    桑田「まだ誰も来ねぇ…っと、現れたぜ。交戦を開始する!」ダッ


    アジリピー「チィッ! 何だテメー等、喰種の癖に何で俺達を攻撃する!?」ズァァ


    桑田「残念だったな。俺等はQsだ!」ズァァ


    ドガッ!
    ズガガガガ!

    尾赫同士の激しい打ち合い。


    Qsが出来たばかりの頃は、人間であり続けるためにRc値を低くしなければならなかった。

    その為本物の喰種と打ち合いになった際にはQsでは歯が立たなかった。


    しかしCCGの技術はその問題を克服。

    今では人間のまま喰種と同等以上の力を付けるまでに進化したのだ。



    ズガッ、ガガガガガガ!

    右に左に、上に下にと様々な角度からの攻防が繰り広げられ、持久戦となる。


    アジリピー「うおぉっ!」ドドド


    桑田「へへッ、やるじゃねーか」ドドド


    アジリピー「紛い物の赫子などにヤられては面目が立たぬわ!」ズドドドド


    桑田「うぐっ!ヤベェ!!」






    桑田「なーんてな!」ヒュッ


    アジリピー「ガフッ!?」ザクザクッ


    突如打ち合いを止めた桑田の後ろから無数の針の様なものが飛んで、アジリピーの体に突き刺さる。


    アジリピー「ぐっ!誰だ!?」


    舞園「私です」


    アジリピー「くっ、貴様…羽赫か!」ギリッ


    建物の陰に隠れていた舞園が怯えた様子もなく出てきた。


    桑田「尾赫の喰種には羽赫を当てにくるのが常識だろ?」


    アジリピー「卑怯だと思わないか!?多勢に無勢とは!」


    桑田「ハァッ!こっちも命がかかってんだぞ!んな正々堂々とやってられッか!」


    舞園「桑田君の言う通りです。私たちはこの仕事に命をかけています」

    舞園「だから人間を殺して自分が強いと錯覚している貴方のような喰種を許しはしません」ザッ


    舞園がアジリピーとの距離を縮め、また『羽』を展開する。


    舞園「終わりです」バサッ


    アジリピー「テメーがな!!!」ダッ

    舞園「ッ!」


    傷を負っていた筈のアジリピーが突如として舞園に襲い掛かって来た。


    アジリピー「そんなまち針みてーな攻撃が通用するワケねーだろ!?」グワッ


    舞園との距離があと3m

    2m

    …1m






    舞園「私達の勝ちです」ニコッ

    ズドン!!


    アジリピー「ゴがァッ!!」



    首を噛みちぎる寸前、誰かに羽赫の攻撃を撃ち込まれた。

    舞園ではない。
    もっと破壊的な威力をもった別の誰かにだ。


    舞園「攻撃、ちょっと遅れましたよ苗木君」


    苗木「ゴメン、まだ扱いきれなくって」




    そこには、先日入ったばかりの苗木が『クインケ』を構えて立っていた。
  27. 27 : : 2016/09/25(日) 20:00:06
    File8 『クインケ』


    喰種に対抗するために喰種対策局(CCG)が開発した武器。
    喰種の赫子を加工した武器。
    赫子と同様に、喰種の身体にダメージを与えることができる。

    形状や機能は素材となった赫包に従ったものになるため、強力な喰種の赫包は強力なクインケの素材となる。

    また、種類によっても様々な使い道がある。


    『羽赫』
    主に射撃武器として加工されているものが多く、エネルギーの消費は激しいが遠隔攻撃が可能なため俊敏性に優れた捜査官に好まれている。

    『甲赫』
    重く硬い特性から剣や金棒のような近接武器に加工されるのが一般的で、肉体派の捜査官に好まれている。

    『鱗赫』
    ギミックの組み込まれた特殊な武器が多く、操作に熟練を求められることから技巧派の捜査官に好まれている。

    『尾赫』
    特に欠点もない代わりに優れた点もないが、扱いやすいために主に新人捜査官に支給される。
  28. 28 : : 2016/09/25(日) 20:16:09
    File9 『Rc値』

    Rc細胞を保有する人間および“喰種”に
    どれだけのRc細胞が含まれるのかを示す値。

    人間のRc値が200~300なのに対し、
    喰種のRc値は1000~8000という数値になる。

    因みに『Rc値が大きいほど、喰種として強い位置にいる』とわかる。


    (Qsの値は700~5000ほど)
          ↑
    此方の都合により、原作とでは設定が違います。間違ったこと書いててスミマセンm(_ _)m
  29. 29 : : 2016/09/25(日) 20:27:44
    更新!
    No.148 桑田怜恩(19)  

    Rc値:1900~2600
    タイプ:尾赫 赫子:2本

    日向班所属(Qs)
    2014年入社、現在の階級は二等。


    アカデミー81期生。
    尾赫の特徴をよく体現しており、中・近距離を得意とするオールラウンダー。
    しかし肝心の質の方が並大抵であるため、今までの戦果も平均的である。
    たまに協調性を欠くところもあり、それを踏まえると未だ未だ発展途上的だ。

    戦闘スタイル
    2つの赫子を使っての打ち合いを得意とし、時間稼ぎや注意力低下など、意外とサポートタイプである。
    なので彼にはもっとチームプレイを意識して欲しいというのが率直な願いだ。
  30. 30 : : 2016/09/25(日) 20:46:20
    No.1137 舞園さやか(18)

    Rc値:1260~2340
    タイプ:羽赫 赫子:2本

    日向班所属(Qs)
    2014年入社、現在の階級は一等。

    アカデミー81期生。
    Qs内でRc値が最も変化する人物で、針のような細い形状のモノから氷柱のような太さのモノまで自由自在である。
    羽赫の特徴でもある美しい赫子は、彼女によって更に磨きがかかっている。

    戦闘スタイル
    起伏が激しいタイプのため相手を油断させてからの撃退や仲間を使ったコンビプレイ等、作戦の要となる事も多々ある。
    しかし羽赫の特徴である俊敏な動きが欠落、及び筋力もQs内で一番低いため、単独での近接戦は避けておきたい。
  31. 31 : : 2016/09/25(日) 21:21:25
    面白いです!
    続きに期待です!
  32. 32 : : 2016/09/25(日) 22:27:03
    日向と豚神のかぐねも気になるな。
    とにかく期待です!
  33. 33 : : 2016/09/25(日) 23:00:40
    いつ苗木君が喰種になるか楽しみです
  34. 34 : : 2016/09/26(月) 00:51:14
         ~発表の日の夜~

    舞園「えぇ!?苗木君、赫子出せないんですか!」


    苗木「ぅ、うん。クインクス施術を受けたのは確かなんだけど赫子を出せたことは無いんだ」

    苗木「というより自分がどのタイプの赫子なのかも知らないし」

    苗木「その…ごめんね。期待させちゃって」シュン


    時刻はまもなく23:00

    所属発表の結果、3人いた新人捜査官はそれぞれバラバラに配属となった。  


    不二咲君(苗木君に彼が男だと教えてもらった)は豚神君の読み通り松田特等の支部に。

    朝日奈さんはゴズ特等の支部に。

    そして苗木君はここ、カムクラ特等が統治するQs班に配属された。


    久しぶりの新人が嬉しかったのか、日向君が得意の料理を存分に振る舞ってくれた。


    最初は皆でどんちゃん騒ぎだったけど、今は私と苗木君以外は疲れて寝てしまった。


    折角の機会なので色々と話している内に、彼が赫子を出せない、という衝撃の事実を知った。


    舞園「ち、違います!そういうことじゃなくって…!」アタフタ

    舞園「ごめんなさい。言いたくない事を言わせてしまって…」


    苗木「き、気にしないでよ!ここに居たら普通赫子くらい使えるって思っちゃうし!」

    苗木「それに、未だ出せないのは僕の実力と努力不足だと思うからソコさえ頑張れば!…って思うようにしてるんだ!」


    舞園「ふふ。前向きですね」


    苗木「まあね。それくらいが僕の取り柄だし」


    舞園「素敵な取り柄ですよ。私も見習わなくちゃですね!」


    苗木「アハハ。ありがとう」///テレッ


          ~回想終了~
  35. 35 : : 2016/09/26(月) 07:41:55
    前方に苗木舞園桑田を確認。
    近くにはアジリピーが倒れていて、全員が無事のようだ。


    日向「作戦通り、だな」



    豚神「あぁ、苗木も最後に決められたようだから一先ずは上々、といったところか」


    日向「そうか」


    今回の作戦は初心者である苗木に戦場での雰囲気を馴れさせる事も兼ねており、そう言った意味では成功となるだろう。


    日向「苗木、よくやったな。それでどうだった?クインケの方は」


    クインケ:ガンランス
         羽赫の銃タイプ  AA+


    苗木「う~ん、威力は凄いんだけど、僕的にはもっと軽くて連射できるほうが良いかな」


    日向「そっか、そうなるとレートが低くなるけど良いか?」


    苗木「うん、大丈夫だよ」


    成程。苗木の体格からするとガンランスは重たいのか。


    舞園「それでも、一発で仕留められたんですから上手だと思いますよ?」


    苗木「あはは、ありがとう。これでもアカデミーの頃はクインケ操術に関してそこそこ出来た方だったから」


    桑田「おい日向、コイツもうトドメさしたほうが良いんじゃねーか?」


    日向「あぁそうだったな。桑田、頼めるか」


    桑田「おう良いぜ」ズァァ

    赫子を出し、アジリピーの上から突き刺すかたちとなる。


    桑田「Bレート喰種『アジリピー』討伐っと」グオッ


    ???「ちょっと待ったーーー!!」


  36. 36 : : 2016/09/26(月) 21:49:44
    桑田「ッ! 誰だ!?」


    舞園「あ、あそこに…」


    舞園が指差した建物の屋根。そこに1人の男性と思われるのが立っていた。
    (マスクを付けているので詳しくは分からないが)

    ヨレヨレの服を羽織い、特徴的なドレッドをあてている。


    苗木「え~と、喰種…ですよね?」


    日向「あぁ。それにあの特徴的なシルエット、ファイルで見たことがある」


    舞園「ありました!『ドレッドホームレス』。AAレートの尾赫です」


    苗木「え! あれでAAレートなの!?
    てっきりもっと雑魚かと…」


    ドレッド「コラー! 人を…じゃなくて喰種を見かけで判断するなって!」


    苗木「ご、ごめんなさい」


    何で喰種に頭下げてんだ、アイツ?


    豚神「おい貴様、何故止める?コイツ(アジリピー)はお前の仲間か?」


    ドレッド「いんや、全く知らないべ。てか何て云うのソイツ?」


    豚神「『アジリピー』、Bレートの喰種だ。
    次は此方の質問に答えろ」

    豚神「何故名前も知らない喰種を助ける?少なくともこうして俺達の前に現れた事は、お前にとって損しかないだろう」


    ドレッド「助ける理由ならあるべ!
    お前等、ソイツの着ているコートをよく見てみろ!」


    コート?
    見た感じ普通のコートだ。


    その時、隣にいた舞園が何かに気付いた。


    舞園「あ!これって、【アオギリの樹】のコートじゃないですか!?」


    桑田「え!!アオギリってあのアオギリ!?」


    豚神「それ以外に何がある?」


    日向「そういうことか…」


    苗木「アオギリの…樹?」


    『アオギリ』という言葉が聞こえた途端、苗木以外の全員が顔色を変えた。


    成程、コレは厄介な事になりそうだ。
  37. 37 : : 2016/09/26(月) 22:01:55
    File10 『マスク』

    喰種が捕食を行う際、素顔を見せない為に付ける。
    動物を模したモノから模様が全くないモノまで、案外ユーモアに溢れている。
  38. 38 : : 2016/09/26(月) 22:38:40
    ドレッドホームレスは摸擬刀の先制攻撃ですね!
    わかります!
  39. 39 : : 2016/09/27(火) 00:05:54
    苗木「あの~、」


    ドレッド「ん?何か質問か、アンテナ少年」


    苗木「ア,アンテナ少年? まぁ良いや。質問なんだけど、【アオギリの樹】って何なの?」


    ドレッド「なぬっ!?お前さん、捜査官のくせに【アオギリの樹】を知らないでいたのか!?」


    苗木「えっと、ごめんなさい?」


    最近のアカデミーではアオギリについて教えてないのか?

    一般人には秘密モンだけど…


    豚神「【アオギリの樹】とは、日本で一番でかい喰種組織の事だ」


    苗木「組織? 喰種の?」


    豚神「そうだ。創設年、構成人数、拠点、正体、目的、様々な事が未だに不明のままだ」


    桑田「なのにこっちは正体知られてっからCCGも手を焼いてんだ」


    苗木「それって、結構ヤバイんじゃないかな?」


    舞園「えぇ、かなり」


    日向「特にそれを組織している側、つまり今の【アオギリ】を担う喰種は、どれも一筋縄じゃいけない奴らばかりだ」


    豚神「今確認できているだけで、Sレート以上は10体もいる」


    苗木「Sレートが10体も!?」


    豚神「あくまで『以上』だ。
    SSやSS+レート以上も含めると事態はより深刻だろう」
  40. 40 : : 2016/09/27(火) 00:18:21
    File11 『アオギリの樹』

    構成員数もリーダーの正体も何もかもが不明な組織。

    下っ端は『アジリピー』の様に専用のコートを着用しているが、幹部達は自分のマスクを身に付けて正体を隠す。

    CCGに対抗する為に組織を立ち上げたと云うのが最有力説である。
  41. 41 : : 2016/09/27(火) 07:45:16
    豚神「話が脱線したな。質問に戻るぞ」


    苗木「あぁ、ごめんね」


    舞園「気にしなくても良いですよ?最初は皆無知の状態から始まるんですから」


    桑田「ちっ」


    豚神「だから?コイツが【アオギリの樹】のメンバーだったとして、それを止める理由とは…」


    ドレッド「怖いからに決まってんだろ!?」

    ドレッド「もしソイツを駆逐して彼方さんが怒ったりなんかしたら、ここに住んでる俺まで巻き添えを食らっちゃうべ!」


    豚神「ほう。お前も被害を被るのか」


    ドレッド「そうだべ! 前はもっと大人しかったのに、最近は活動がバイオレンスなんだべ!」


    日向「日本語がおかしいぞお前」


    ドレッド「だから、頼むからソイツを殺して【アオギリ】を怒らせる事はしないでくれって!!」


    豚神「成程、お前の言い分はよくわかった。参考にさせてもらうぞ」


    ドレッド「おお!分かってくれたか!?
    イヤー、やっぱ話をつけるのは大切だべ」ウンウン


    豚神「…何か勘違いしてないか?」


    ドレッド「うん?何がだべ?」


    豚神「俺はあくまで『参考にする』としか言ってない」

    豚神「予定通り、コイツの駆逐を実行する」


    ドレッド「ハアァッ!!?」


    豚神「俺達はCCGだ。元より【アオギリ】の殲滅は目的の内にある」


    日向「それに、敵の脅威が大きいからって手を出さずにいるんじゃ、いつまで経っても進展なんか得られないしな」


    豚神「ここでコイツを殺すのは俺達。いや、CCG全体の総意だ」


    ドレッド「おおおおかしいべ!人がこんだけ頼んでんのを無下にするのか!?」


    豚神「喰種だろ?お前は元から守衛の対象には入っていない。 だから…」


    舞園「貴方もここで排除します♪」


    ドレッド「ひいぃ!」ガタガタ


    日向「逃げても良いんだぞ?」

    日向「『ここに住んでる』という情報が手に入ったから、探せばすぐにでも見つけられるしな」


    ドレッド「…」

    ドレッド「し、しまったーーー!?」ガビーン


    日向(アホだコイツ)

    苗木(馬鹿だ)

    豚神(愚民め)
  42. 42 : : 2016/09/27(火) 18:17:25
    ドレッド「こ、こうなりゃ徹底抗戦だべ!」


    腰を下とし、戦闘体勢に入る。
    しかし、


    日向「全員、目標変更。対象 AAレート喰種、『ドレッドホームレス』!」


    『了解!』


    ドレッド「なッ!?ちょっと待つべ!普通に一対一で闘えって!」


    桑田「何だ?喰種にはタイマンでないと闘えない病気でもあんのか?」


    豚神「下らん。戦闘においてアドバンテージを生かさないのは馬鹿のやることだ」


    舞園「という訳なので♪」ズァァ


    ドレッド「ひいぃ!勘弁してくれー!」ダッ


    苗木「あっ、逃げた!」


    桑田「どうする、追うか?」


    日向「いや、追っても追いつけないだろうな」


    苗木「え、逃げ足でも速いの?」


    豚神「あぁ、前に12区を歩いていた捜査官が、偶然ヤツに遭遇したらしい」


    苗木「12区か…随分と遠いね」


    豚神「借金取りに追われいた状況でな」


    苗木「あぁ」察し


    豚神「なんでも羽赫なみの逃げ足らしい。そうなると捕まえるのは面倒だ。」


    日向「それに、今はこっちの件で忙しくなりそうだからな」チラッ


    目線の先には、血を流し意識を失った『アジリピー』の姿が。


    日向「それじゃ、宣戦布告だ。桑田」


    桑田「あぁ、今度は邪魔されねーよな?」スッ


    赫子を標的のすぐ上へと構え、制止する。


    苗木「…ッ!」サッ


    たまらず視線を他に移す。


    喰種とはいえ、生物を殺すことに変わりはない。
    僕は今、『人殺し』に手を染めようとしているのだ。


          (( …あ ))


    眼視線を移した先、そこで舞園さんと眼が合った。


    苗木(そうか。彼女も、いや、日向くん達だって怖い筈だ。誰かの命を奪う事を)


    好きで殺しを行う人なんているわけがない。
    喩えそれが喰種捜査官だったとしても。


    苗木(なら、眼を背けて良いわけがない。
    僕は今も、これからも。奪っていく喰種たちの命を引きずっていく!)


    苗木(引きずったまま、前に進むんだ!)




    桑田くんが彼にトドメをさしたのを、この眼に焼き付けた。






    【コードネーム『アジリピー』 討伐確認】
  43. 43 : : 2016/09/27(火) 20:29:54
    A.M0:00  都内郊外某所


    ???「何故、我々は迫害を受けねばならないのだ!?」バンッ


    そこはコンサートホールほどの大きな建物。

    窓には鉄板を打ち付け、外界とを隔てたその空間には『アオギリのコート』を着た集団で埋め尽くされていた。


    そんな彼等・彼女等が見つめる先には、ステージに上がりこの場のスポットを独り占めしているド派手なギャルがいた。



    ギャル「先月から昨日までにかけて、白鳩(CCG)の手により殺された同士は31にものぼる」

    ギャル「こんなの理不尽だ!我々が何をした!?」

    ギャル「人間が牛や豚や鶏を食って生きるのと同じように、我々も人を喰らわねば生きてはいけないというのに!」

    ギャル「ただ喰うものが違うというだけで、我々喰種は世界から抹消されようとしている!」

    ギャル「これを理不尽と呼ばず何と言うか!?」ダンッ



    彼女の演説を、周りの喰種達は静かに。且つ真剣に聞いていた。


    ギャル「…この中には人間から裏切りを受けたり、殺されかけた者も大勢いるだろう」

    ギャル「私も同じだ。共に支えあい、磨きあってきた仲間を、目の前でゴミのように『処理』された事がある」グスッ


    ギャル「だがそれは私が招いた結果だ。私が弱かったばっかりに、私は友を救えなかった」


    ギャル《この世の不条理は全て当人の能力不足》


    ギャル「これはその亡き友がよく口にしていた言葉だ」



    ギャル「私達は…強くあらねばならない。」


    ギャル「強くなって、誰かのせいで、大切な誰かを失わないくらいに…!」

    ギャル「もう二度と!私のような犠牲者を出さない為に!!」


    ギャル「我々喰種は変わらなければならない!この間違いだらけの世界を正すために!」



    ギャル「『王』が目指す、【人と喰種が共存できる世界】を実現するために!!!」
  44. 44 : : 2016/09/27(火) 21:20:48
    苗木の幸運は果たして発動するのか
  45. 45 : : 2016/09/27(火) 23:13:54
    喰種とダンガンロンパ最高
    すごく嬉しい感激もうニヤニヤが止まらん
    如月 誠さんのすごく面白いです
    他の続きも楽しみに待ってます
  46. 46 : : 2016/09/28(水) 07:54:43
    その頃、時同じくしてCCG本部。

          ―特等会議室―

    ???「これだけ、集まるのも久しぶりだな」


    最初に言葉を発したのは、数々の伝説を残してきたCCGの現局長、天願和夫だった。


    霧切「全員が出席したのは『あの騒事件』以来か。もうそんなに経つんだな」


    宗方「止めろ。あの時の事は思い出すのも忌々しい」


    ゴズ「ですが、こうして全員が集まっているという事はつまり…」


    全員の視線が天願に向けられ、当の本人は疲れと困惑が混じったような厳しい表情を見せた。


    天願「察しの通りじゃ。【アオギリ】との交戦準備がついに整った」


    その言葉を待っていたかのように松田が口を挟む。


    松田「じゃあ、ようやく研究室(ラボ)に貯まったクインケを試せるって事だよな?」


    ゴズ「嬉しそうですね。これから人が沢山死ぬと云うのに…」


    松田「あぁ嬉しいぜ。何てたって作っても使われないないんじゃ努力もクソもねーからな」

    松田「それと…」


    言葉を発する前に、松田は全員の顔を見回した。


    松田「死ぬのはソイツが無能だからだ。俺がせっかく作ってやったクインケを活かせない奴らが悪い」


    ゴズ「…! 松田くん、それ以上仲間を侮辱するような事を言うのなら…」

    ゴズ「このグレート・ゴズが相手になるぞおぉー!」



    カムクラ「二人とも、落ち着いてください」


    一触即発。

    そんな空気をものともしないカムクラの一言は、確かに二人を『黙らせた』。


    松田「ちっ」

    ゴズ「…」



    天願「話を元に戻すぞ?」


    落ち着きを取り戻した室内から、天願が呆れぎみに言葉を発した。


    霧切「ゴズさんの言ったように、今回はかなりの死傷者を伴うだろう」


    天願「じゃが、今を逃すと次は無いかもしれぬ。皆、協力してくれ」


    各々が頷く中、カムクラは難しい顔をしていた。

    それに気づいたのは、意外にも宗方だけだった。

    カムクラ「…」


    宗方「どうした、カムクラ?」


    カムクラ「おかしいんです」


    宗方「おかしい?」


    カムクラ「タイミングが悪すぎる。何故今になって【アオギリ】が行動を起こすのかワカラナイ」


    宗方「…驚いたな。お前でも分からない事なんてあるのか」


    カムクラ「それくらいあります」

    カムクラ「だから、『あの事件』が起こったんですから」


    宗方「…」
  47. 47 : : 2016/09/28(水) 07:59:08
    ねあさん、いつもコメント頂きありがとうございます!
    期待を裏切らないように頑張りますね(^_^;)

    >>44
    これからにお楽しみということで♪
  48. 48 : : 2016/09/28(水) 08:24:27
    ギャル「『王』に代わって宣言する!我々【アオギリの樹】は世界の安寧を手に入れるため、CCGとの交戦を実行する!」



    天願「皆の者、武器を取れ!敵は【アオギリの樹】!」

    天願「どれだけ犠牲を払おうと、奴らに地を歩かせるな!」


    ギャル「オマエラ!、気を引き締めろ!敵はCCG本部!」

    ギャル「『あの惨劇』を繰り返さないためにも、ここで奴らを討ち滅ぼすのだ!!」


    天願「喰種との因縁に決着をつける…!」

    ギャル「この戦争に勝つのは私達だ…!」


    天願・ギャル
    「「ここに、『CCG対アオギリの戦争』を宣言する!!!」」

  49. 54 : : 2016/09/28(水) 14:12:46
    如月誠さんの邪魔してる人うざい
    こんな書き込みするんなら見るな(*`へ´*)
  50. 59 : : 2016/09/28(水) 15:53:29
    >>49>>53
    >>55 ~ >>58さんのコメントは削除させていただきました。

    僕の作品が気に入らないのはわかりましたが、他の読者さんの迷惑になるので今後はお控えください。
  51. 60 : : 2016/09/28(水) 17:49:47

    ???「ついに始まるんだね」


    ???「こうなるのは『あなた』が死んだ時から決まっていた事。」


    ???「でも皮肉だよね」


    ???「誰よりも平和を望んでいた『あなた』が原因で、戦争が起こっちゃうなんてさ」


    ???「でも大丈夫!最後には希望が勝つんだから!」



    ???「…それでも、その希望が万が一にでも道を失いそうになるのなら」


    ???「僕が…」

    ???「いや、」



    ???「僕達が助ける!!」
  52. 61 : : 2016/09/28(水) 18:07:21

    ・・・


    ・・・・・・どこだここ?





    辺り一面何もない空間。


    いや違う、

    僕が立っているこの地面には、地平の彼方まで【白い彼岸花】が咲いている…。



    あぁそうか、これは夢だ。



    確か昨夜は初めて捜査官として働いて、心身ともに疲れたからすぐ寝ちゃったんだ。


    だとしたら早く覚めないとな~。

    今日は別の班との合同ミッションだから遅れるわけにいかないし。


    でも、夢が夢と分かる夢なんて初めて見るよ。
    なんだか不思議な感覚だよ。



    なんて、呑気な気分でいると誰かの視線を感じた。


    誰?



    ???「…」



    そこには、僕と同い年くらいの少女が立っていた。






    パチッ




    苗木(・・・)


    苗木(・・・・・・僕の部屋か)


    仰向けの姿勢で寝ていたから、起きたら自分の部屋の天井が最初に眼に入ってきた。


    苗木(あぁ。現実だ)


    起床後の間抜けな一言にクッと笑いそうになった。


    苗木「そうだ、時間!」バッ


    08:10


    苗木「やばっ!遅刻ギリギリだ!」


    すぐに布団を飛び出し、顔と寝癖を整えて大急ぎで集合場所に向かう。


    苗木(そういえば、夢に出てきたあの子…結局誰だったんだろう)タッタッ 


    額にうっすらと汗を浮かべながらも、その事だけは頭から離れなかった。
  53. 62 : : 2016/09/28(水) 20:07:29
    これは…苗木に覚醒フラグが立っている!
  54. 63 : : 2016/09/29(木) 07:59:31
    A.M8:45  12区駅前


    日向「集合15分前か」

    日向「よし、時間通り!後はすでに着いているであろうアイツ等を見つけてっ、と…」キョロキョロ

    日向「お、いたいた!」


    日向「おーい九頭龍ー!辺古山―!こっちだ―!」


    この声で彼方も俺に気付き、すぐに近くまで駆け寄る。


    九頭龍「おう日向。15分前行動か、相変わらず速いな」

     
    日向「それはお前らだろだろ。いつ来たんだよ」


    九頭龍「大体15分くらい前だったな」


    辺古山「この区に坊っちゃんの実家の組があるから割りと早く着けたんだ」


    九頭龍「…おいペコ、何時になったらその呼び方直すんだ?」

     
    辺古山「はっ!すいません」


    九頭龍「だから敬語も要らねーって。俺らは対等な関係だって何度言えば分かるんだよお前は…」ハァ


    辺古山「はっ!改めます!」


    九頭龍「直す気ねーだろお前」


    日向「ははっ!相変わらずだな」


    ポンッ


    後ろから誰かに肩に手を置かれたので見てみると、


    左右田「おーす日向!」


    日向「左右田!久しぶりだな」


    左右田「オメーも相変わらず元気そうだな。まっ、今日の任務はお前等と一緒だから簡単だな!」ヘヘッ


    日向「・・・あぁそうか。お前達はまだ任務の内容を知らないのか」ボソッ


    左右田「ん?なんか言ったか?」


    日向「イヤ別に」


    そうこうしている内に舞園、桑田、豚神も合流した。


    しかし残りのメンバーが集合時刻を過ぎても一向に現れない。


    豚神「おい!何故苗木達はまだ来ない!?
    愚民は俺の時間を割くのがどれだけの事か知らないのか!?」


    九頭龍「しかもその内の一人が俺らの班長って…」ピロリン


    左右田「お?何か来たな」


    ピッ

    [ゴメン、昨日ちょっと飲み過ぎちゃってさ。
    二日酔いが酷いから今日は休むわ!(‐人‐)
    任務の事は日向君が知ってるからそっちに聞いて!]


    九頭龍「」

    辺古山「」

    左右田「」


    日向「え~ッと…」

    日向「あの人も元気そうでなによりだな!」

    アハハ…


    ・・・


    微妙な空気のまま残りの2人の到着を待つ。
  55. 64 : : 2016/09/29(木) 09:49:02
    二日酔い誰だろう?
    気になった事があるんですけど……
    日向とカムクラって=?それとも別々?どっちだろう?
  56. 65 : : 2016/09/29(木) 17:23:00

    12区を電車で降りてすぐの所が集合場所になっていたが、そこにはすでに皆の姿は無い。


    途中で電車が止まるというアクシデントが重なり、時計を見るとすでに09:40。


    40分ものタイムオーバーにため息をつかざるをえない。


    苗木(ハァ。人々の命を守るCCGの一員としてあるまじき失態だよ)


    なんて後ろ向きになっても仕方ない。とにかく今は1分でも早く皆と合流するのが最適だ。




    苗木(駅を降りたところにある珍妙なオブジェ)

    苗木(そこを右に曲がって直進)タッタッ


    苗木(しばらく行くと左手に大きなデパートがあるから、そこを右に曲がって直進)クルッ


    苗木(今度は右手に川が流れる公園…)キョロキョロ

    苗木(あ、あった!そこを左に曲がってと…)


    日向から送られた現場への道順を辿って行くと、次第に人気が無くなってきた。


    苗木(やっぱり喰種はこういった所を好むのかな?)

    苗木(だとしたら僕も行き帰りは気を付けないと。あそここそ喰種が徘徊してそうだし)タッタッ



    遠くの敵より前の敵。


    捜査官としてはまだ素人同然の苗木がそれを思い知るのはその直後だった。




    ???「今だべーー!!」ビシッ


    ズガガガガ! ビュビュン、ヒュオォ!






    苗木「ガハァッ!!?」ズズンッ,ザクッ







    静寂をかき消す攻撃の合図。


    咄嗟の出来事に、苗木は為す術もなくその『雨』を体に受けた。
  57. 66 : : 2016/09/29(木) 22:41:46

    ???「…やった」

    ???「やったべぇ!まずは一人撃破!」


    俺の名前は葉隠康比呂。

    こう見えてAAレートの喰種だ!


    CCGにはドレッドホームレスなんて名で恐れられているが、正直言ってその二つ名は威厳に欠けるから止めて欲しいべ!



    そんな俺は昨日、そのCCGの連中と一悶着起こして住んでいた家(ダンボールハウス)を泣く泣く後にしたんだ。



    そん時誓ったんだべ!俺の癒しを奪ったあの憎きCCGの喰種もどき共を全員やっつけたると!



    そう思った俺はとりあえず得意の占いをしてみることにした。



    するとどうだべ!なんとあの【アオギリの樹】と組むのが良いと出た!


    最初は怖かったけど、少なくとも白鳩よりは話が通じる相手だと思ってここへ来た。


    この12区には、【アオギリ】の幹部が2人も居るという話を聞いてたからな。 

    (というかそれ以外の幹部がどこに居るのか知らないだけなんだが)



    そしたらなんと!昨日会ったばっかのあの連中が、駅で他の仲間を連れて居るのを発見した!


    慌ててその場から離れようとしたんだけども、その時に奴らがこの区にいる幹部達を一掃しようと企んでるのを聞いた。


    しかも一人が休みで、2人が遅れるという事まで知ることができた。

    おまけにその内の1人が、あのアンテナ少年だと云うことも!



    占いの結果通りだったべ!

    千載一遇のチャンスを得た俺は、連中が呟いてた道筋を辿ってその幹部達の元へと先回りした。


    後は事情を話してソイツらと共同戦線を張るだけ。

    これは案外素直にいった。



    その後は罠とも知らずにノコノコと入ってくる連中を幹部達の元へと誘い、

    アンテナ少年と残りの1人をここで迎え撃つため(アオギリの雑魚たちと)隠れて待っていた。



    そして今!まさに!
    憎き偽喰種の1人を倒すのに成功した!


    俺が合図し、俺が殺した…!



    全てが思い通りに。

    イヤ、


    占い通りに事が進んだ!



    葉隠「アッハッハッ、ざまー見ろだべ!所詮偽者じゃあ俺には勝てないんよ!」


    葉隠「何てったって、俺の占いは3割当たるからな!」


    精一杯の皮肉を込めて言った筈だが、アンテナ少年は倒れた体勢からピクリとも動かない。



    葉隠「お?死んだべか?」


    先程の攻撃を考えれば即死もあり得る。
    だったらやることは一つ。



    葉隠「肉を頂くとするべ」ジュル

  58. 67 : : 2016/09/29(木) 23:57:29
    スタスタ

    一歩。また一歩と歩を進める。


    食事は10日前に済ませたばかりだが、これからを考えるとまだ足りない気がしてきた。



    葉隠が苗木に近づいて行くが、その間にも標的は動かない。



    葉隠「安心してくれ、頭だけは残してやっから」

    葉隠「最後の挨拶もできないんじゃ、仲間も可愛そうだからな!」


    ケタケタと笑いながら、その眼は苗木を離さない。



    そして首に狙いを定めたところで…


    葉隠「いただきまーす!!」グワッ




    目にも止まらぬ早さで捕食を行う。









    が、

    ドガガガガガガガ!!


    葉隠「!!?」バッ

    葉隠「ッ! 何だ!誰だべ!?」



    間一髪で銃撃を避け、音のあった方向へと目を向けた。



    ???「あら、かわしたのね。見かけによらないとは聞いていたけど、流石ね」



    そこに居たのは長い銀髪に黒い手袋をはめ、
    私服でありながらクインケを持つ少女だった。


    ???「だけど良いのかしら?貴方に当たる筈だった弾が、後ろのお仲間に流れちゃったけど」



    葉隠「! しまったべ!?」バッ


    後ろを確認すると、確かに大勢いた【アオギリ】の下っ端が2/3ぐらいまで減っていた。


    ドガガガガガガガガガ!!!


    葉隠「チィッ!邪魔くさいべ!!」ガギギギギン!


    足りない尾を上手に使い、放たれた弾丸を全て叩き落とした。


    ???「あら中々ね。これはちょっと時間がかかるかも」


    葉隠「…お前は一体何者だべ」



    ???「私? 私は…」ガチャ

    霧切「霧切響子。 喰種捜査官よ」ジャキッ


    【vsドレッドホームレス】 AAレート
  59. 68 : : 2016/09/30(金) 00:38:43
    No.836 霧切響子(19)

    黄桜班所属
    2011年入社、現在の階級は上等捜査官。

    クインケ:輝夜(羽赫) Sレート
     

    アカデミー77期卒業生の主席。
    高い洞察力と判断能力を持つためデスクワークにも優れているが、身体能力は捜査官として平均以下なので前に出過ぎない事が望ましい。
    しかし周りが見えなくなる事もしばしば。
    時には非情とも云うべき判断を下すため、自分の班以外からの評判は悪い。

    戦闘スタイル
    真っ向から立ち向かうことはせず、普段は後方から的確なサポート射撃を行う。
    仲間に指示を出したり、隙を見て攻撃するなど抜け目のないスタイルが特徴で、単独での活躍も期待できる。
  60. 69 : : 2016/09/30(金) 04:45:32
    霧切さんが出てきた٩(>ω<*)و
    苗木は、いったいどうなるか気になる
  61. 70 : : 2016/09/30(金) 21:57:42
    時間にルーズな私は何時も集合時間ギリギリ。

    今日はQs班との合同ミッションが有ったが、そんなのお構いなしに自分の時間を貫く。



    電車に乗ると、1人の男の子が目に入る。


    特殊な制服を着込み、一般人とは違った雰囲気を醸し出すその人は一瞬でCCGの人間だと分かった。


    霧切(馬鹿ね。あれじゃあ喰種から標的の的よ)
     

    捜査官が単独で敵地に赴く際は、普通制服の上から何かを着込むのが定石。


    そんな彼の胸にはQsの文字が。


    霧切(あぁ、新しく入った人ね)


    Qs班所属、見知らぬ顔、そして素人丸出しの立ち振舞い。

    これらが意味するのはその一択だった。



    キキィ!



    しばらくすると列車が止まった。


    原因は知らされなかったが、少しの間だけ列車を停めるというアナウンスがかかった。

    車内がざわつく中、ある考えが頭の中に浮かぶ。



    ー罠。



    このままいけば集合時刻を大幅に過ぎ、先に着いているであろう皆とは行動を別々にしなければならない。



    その証拠に、私と同じ立場にあるQsの新人君には、さっきから『死神の足音』が聞こえてくるのだ…。






    苗木「や、やっと着いたー」ハァ



    電車が動き出したのはその1時間後。

    かなりの時間足止めをくらい、集合場所にはすでに誰も居なかった。


    霧切(ヤられたわね)クッ



    そんな事など知る由もなく、アホ毛の新人君は急いで現場に行ってしまった。



    霧切は敢えて彼に何も伝えなかった。

    敵の作戦を知るためには、道を開ける人間が必要だ。



    霧切(ごめんね。貴方を囮に使わせて貰うわ) 




    その数十分後、人気の無い路地を歩いていた彼が、降りしきる攻撃の『雨』に教われた。
  62. 71 : : 2016/09/30(金) 23:30:40
    霧切「お喋りはここまで」スッ

    霧切「ここからが本番よ」


    ドガガガガガガガガガ!!


    葉隠「あっぶねぇ!」バッ


    下っ端1「うがっ!」ザシュッ

    下っ端2「ぐほぉ!!」ザグ



    霧切「尾赫の癖にこの逃げ足、生意気ね」ドガガガ


    葉隠「何がだべ!?」ババッ



    葉隠(コイツ、おかしいべ!)


    逃げ回る最中、葉隠は凶器を振り回すこの女の思考を測れずにいた。



    葉隠(さっきと今のあの態度。あれは仲間の死を怒ったり悲しんだりする時の反応じゃない!)

    葉隠(アイツはこっちの作戦に気付きつつ、わざとアンテナ少年にここを通らせたんだ!)



    霧切「あまり手間を取らせないで。次も待ってるんだから」タタタッ



    冷酷非道。

    正にそんな感じの捜査官に捕まったとして、そこからの明るい未来が想像出来ない。


    つまり、負けた時点でジ・エンド。




    霧切「捕らえた、これで終わりよ」ガチッ

    霧切「【亜螺旋モード】!」ズアァ


    ズガゴゴゴゴゴゴゴ!
    ドゴゴゴゴゴゴゴ!!



    そんなこと…


    葉隠「そんな事になんかなりたくないべーー!」ビキビキガチッ


    ガギギギギギン!



    霧切「ッ…! 弾かれた?!」



    舞散る花びらのように相手を囲んだ銃弾は、そのまま標的を貫くかに思えた。

    が,それは相手を貫く前に何かの妨害を受け、力を失った弾は床へと突き刺さる。



    霧切「一体何が……ッ!?」

     
    その姿を見て、冷静な霧切も動揺を表に出した。








    葉隠「ヴヴゥヴ~!」ガチカヂ


    獣に似た唸り声。元々無かった知的な部分が更に失われ、四足歩行に退化している。


    それだけならまだ良い。



    問題なのは頑丈な赫子が増え、サイズもでかくなった事だ。





    霧切「あれは…赫者!?」
  63. 72 : : 2016/10/01(土) 00:18:51
    おぉー霧切vs葉隠かどっちが勝つのかな?待ち遠しい
  64. 73 : : 2016/10/01(土) 19:46:05
    File12 『赫者』

    「共食い」を繰り返した喰種の中から稀に発生する変態種。
    一般的な喰種に発生する捕食器官としての赫子とは別に、体を鎧のように覆う特殊な赫子が生じる。
    捕食した喰種から人肉とは比べ物にならない大量の『Rc細胞』を取り込み、濃度が上がることで発生するといわれている。



    ※本作に出てくるRc値の最大の値は、殆どが赫者、半赫者の状態だとお考えください。
  65. 74 : : 2016/10/01(土) 21:38:45
    コードネーム「ドレッドホームレス」

    AAレートの尾赫 赫子:1→3本
    Rc値2500~3210

    尾赫ながら素早いのが特徴の喰種。
    赫子の数が少ないので動きが読みやすいが、
    『半』赫者化すると数も強度も変化する。
    速いことを除けば至って平均的なタイプなので、焦らず討伐しよう。
  66. 75 : : 2016/10/02(日) 17:07:54
    一方その頃、苗木達よりも早く現場に来た隊―


    日向「チィッ!」ササッ

    豚神「ウオォ!」

    舞園「うぅ」
     
    桑田「ガハッ…!」

    九頭龍「どけえぇぇーー!」

    辺古山「ハアァァァーー!!」

    左右田「ヒイィーー!」


    それぞれが自分の役割を果たそうとしていた。


  67. 76 : : 2016/10/02(日) 20:11:44
    ―30分前―

    日向「よし出来た。さぁ、任務に向かうか!」


    遅れてくる苗木と霧切に現場までの道順を教えたところで、ようやく日向からGoサインが出た。


    が…



    左右田「オイちょっと待て日向ァ!」


    日向「何だよ左右田」


    左右田「『何だ』じゃねーだろ!オマッ、さっきの話マジで言ってんのか!?」


    日向「さっき?」


    左右田「これから【アオギリ】と戦うって話だよ!忘れてんじゃねーぞ!」


    日向「あぁそうだ。昨日の全体集会でも言ってたろ。聞いてなかったのか?」


    左右田「ちゃんと聞いてたわ!そっちじゃなくて、今回の任務が【アオギリ】の幹部を殺りに行くって方だよ!」


    九頭龍「それがなんか問題有んのか?」


    左右田「あるわ!有りまくりだわ!!」


    左右田「何でこんなに早くに行動を起こすんだよ!?心の準備が出来てねーっつーの!」


    豚神「ふん、臆病な奴め。よくそんな調子で喰種捜査官になろうと思ったな」


    日向「左右田。確かにお前が言った通り、CCGには戦いをするための準備が必要だ」

    日向「でもそれは【アオギリ】だって同じだ。今こうしている間にも、ヤツらも準備を進めている」


    辺古山「だからこそ私たちが先頭を走らされたのだろう?こちらは機動性に優れた者が集まった部隊だ」

    辺古山「敵に先を越されないためにも、早い段階で動くのが作戦と云うものだ」



    左右田「…」

    左右田「あー!もう、解ったよ!」

    左右田「やれば良いんだろ!やれば!」


    豚神「覚悟は決まったな?では行くとしよう」


    全員『おう!!!』



    決意を堅め、いざ敵陣へと赴く。
  68. 77 : : 2016/10/02(日) 22:32:06
    のは良いが…

    舞園「分かれ道…ですね」


    豚神「あぁ、そうだな」


    九頭龍「クソッ、誘ってんなぁ」


    日向「…」



    行動開始から20分が過ぎた頃、一行は先が4つに分れた道に遭遇していた。



    ここは目的としていた建物の中。

    怪しげな店が立ち並ぶ通りの、一番主張が激しい店に【アオギリ】の幹部は居るのだという。



    日向(左右田にあんな事言ったけど、俺も帰りたくなってきた)頭ズキズキ



    勿論、正面から堂々と入るわけにもいかないので、裏口から忍んで入った。

    (こんな所に入ったのを知人に見られたら、取り返しがつかなくなりそうだ)



    中を調べてみると人は誰も居なかった。

    しかし地下へと続く階段があり、そこを進んでいくと今の状況になった…と云うことだ。



    左右田「ど、どうすんだよ?1つずつしらみ潰しに行ってみるのか?」


    左右田はビビりながらも、しっかりと付いてきてくれる。


    豚神「イヤ。仮に全員で同じ道に入ったとしても、残りのどれかに標的がいた場合逃げられるリスクが高い」


    日向「それに俺が見た限り、地下への入り口はここだけだ。となると…」


    九頭龍「4つに分かれて捜査…だな?」


    左右田「え、ちょっ待った!それって誰かが一人になるって事だよな!?」

    左右田「頼むからそれだけは止してくれよ!?」


    豚神「なら左右田は俺と一緒に来い。」

    豚神「安心しろ。俺と共にいる限りお前は死なせん。豚神の名に懸けて…だ」


    九頭龍「なら俺とペコで組ませてもらうぞ」



    桑田「なら舞園ちゃんは俺とな!」


    舞園「え?でも…」


    日向君を横目で見る。

    1番危険な役目であるにも関わらず、落ち着きはらった声でこう言った。


    日向「よし全員決まったな?良いか、遠慮は要らない。おもいっきり暴れてこい」



    日向「その代わり… 誰も死ぬなよ!」


    「「了解!」」


    そうして全員が散り散りに進む。



    進んでいく中でも日向の事が頭をよぎる。

    しかしその不安は心に閉まっておく事にした。


    舞園(日向君なら大丈夫です。それよりも自分に集中しないと!)

    舞園(それに…)



    思い出すのは最初の合同ミッションの時。

    目に浮かぶのは50以上の敵を前に圧倒する日向の姿。



    舞園(彼なら大丈夫だから!)


    まだ見ぬ敵に緊張を募らせながらも、脚だけは前に進み続ける。 
  69. 78 : : 2016/10/03(月) 20:09:38
    そして今現在


    九頭龍・辺古山サイド

    そこにはフードを被った【アオギリ】の下っ端共が、まるで河のように押し寄せてくる。


    九頭龍「チッ、この道は外れだ。
    ペコ!さっさと片付けて引き返すぞ!」スチャ


    辺古山「承知しました!」チャキ





    九頭龍 クインケ:灯楼 羽赫のAA+レート

    辺古山 クインケ:彗葬 鱗赫のS+レート
  70. 79 : : 2016/10/03(月) 20:25:38
    豚神・左右田サイド


    豚神「おっと。どうやらこの道は当たりのようだな」



    従豚「当たり?確かにその通りですな」

    従豚「どうせ殺されるにしても、【全ての始まりにして終わりなる者】に殺られたのであれば多少の言い訳が効きますからな~(笑)」




    豚神「戯れ事を。俺は【アオギリ】の幹部を『仕留めた』という箔が付く事を当たりと言ったのだ」


    従豚「何をー!?やれるもんなら殺ってみろよブター!!」


    豚神「ブタは貴様だろう!!」


    左右田「イヤ、オメーら両方だよ!?」スチャ



    【vs従豚】 AA+レート



    左右田 クインケ:テントビー 羽赫のAレート
  71. 80 : : 2016/10/03(月) 20:41:07
    日向サイド


    日向「・・・」コツコツ


    長い廊下をひたすら進み続けても、一向に『大物は』現れない。



    日向「やっぱりこの道じゃないのか。だったら早く戻らないと」


    そう言った日向の目の前に、図ったようなタイミングで雑兵が押し寄せて来た。



    日向「はぁ。足止め食らってばっかだ」


    ジッと敵を見つめ、数を数え始めた。



    日向「大体40前後ってところか。だったら…」


    バキバキバキッ!


    赫子を展開したとは思えない音が狭い廊下で反響する。


    日向「3分で終わらせる…!」ズガアッ



    彼の足元には、花が咲き誇るかのように多くの命が転がっていた。
  72. 81 : : 2016/10/03(月) 21:15:46
    桑田「そんでさー、俺はその渾身の一撃をサッと躱してグルッと翻ってズバーンとカウンター決めたわけよー!」
     

    舞園「へー、凄いですね」


    桑田「だろ!?その後もさ…!」ペラペラ



    さっきからずっとこの調子だ。


    桑田君が一方的に話し立て、私がそれに適当な相槌をうつ。


    そしたらまた調子づいて話を続ける。



    彼とはアカデミー時代からの同期だが、私は昔から彼を苦手としていた。
    (なお本人はその事にまったく気付いていない)


    軽い口調に見栄を張った服装。
    仕事に対する熱意が感じられないからだ。

    (現に今もこうして死と隣り合わせの状況なのに、注意力が微塵も無い)



    舞園(あ~あ。苗木君が遅れなければ一緒に行動出来たのに…)


    密かな願いを心に閉まっておく。







    すると突然前から何かが襲ってくる!


    舞園「ッ!? 避けて!!」ササッ


    舞園「え? わっ!!?」バッ



    間一髪!

    攻撃は私の脇、桑田君の頭上を通りすぎていった。



    舞園「大丈夫ですか!?」

    桑田「ナ,何とか」ヘナヘナ



    ???「あら。意外とやりますのね」フフッ


    舞園「!」

    桑田「だ、誰だ!?」バッ


    ???「誰だとは失礼ですわね。私の城に忍び込んだのは貴殿達の方ではなくって?」


    舞園「! わ、私の城ってことはつまり…」


    ???「貴殿方は私を討伐するためにここへやって来たのではなくって?」





    桑田「テメーがSレートの『ゴスロリ』か!?」



    ゴスロリ「フフ。ご名答」



    【vsゴスロリ】 Sレート
  73. 82 : : 2016/10/03(月) 22:06:41
    ストーリー最高です!
    勿論アクションも!
  74. 83 : : 2016/10/04(火) 11:19:43
    スゲー事になってた
    ゴスロリってあの人しか居ないよね
  75. 84 : : 2016/10/04(火) 20:09:17
    その人・・・だと思うよ?
  76. 85 : : 2016/10/04(火) 23:00:21
    No.1776 九頭龍冬彦(20)

    黄桜班所属
    2009年入社、現在の階級は上等捜査官。

    クインケ:灯楼(羽赫) AA+レート
     

    アカデミー75期生次席。
    アカデミーの頃に学んだやり方をアレンジし、小柄(本人は気にしているが)を活かした独特な歩法を身に付けるまでに至った。
    小柄ゆえに狭い所の捜査にも向き(こんな事言えば殺されるが)、その威勢ゆえにどんな相手にも怯まず立ち向かえるため、班では特攻要員として重宝されている。


    戦闘スタイル
    同期であり幼馴染みでもある辺古山ペコとの連係プレーは凄まじく隙が無い。
    九頭龍は小刀の扱いにも馴れているので、自身も前線へと赴くのもしばしばだ。
    羽赫の使用者が多いこの班では、銃と刀を使い分けられる彼の存在は大きい。
  77. 86 : : 2016/10/04(火) 23:47:38
    No.1777 辺古山ペコ(20)

    黄桜班所属
    2009年入社、現在の階級は上等捜査官。

    クインケ:彗葬(鱗赫) S+レート
     

    アカデミー75期生主席。
    休み(サボり)が多い班長に変わり、この班をまとめる実質の班長。責任感が強く宗方特等とも互角に渡り合える腕前も持つため、上からの信頼も厚い。
    また、彼女の臨機応変と霧切の推理力を駆使しての作戦のお陰か、殉職者が少ないのも特徴だ。


    戦闘スタイル
    同期であり幼馴染みでもある九頭龍冬彦との連係プレーは凄まじく隙が無い。
    前線に彼女、後方に九頭龍というパターンと、ダブル前衛の2種類のやり方があるため戦況に応じた戦い方が出来る。
  78. 87 : : 2016/10/05(水) 00:25:02
    No.1965 左右田和一(20)

    黄桜班所属
    2013年入社、現在の階級は二等。

    クインケ:テントビー(羽赫) Aレート
     

    アカデミー80期生。
    アカデミー生の頃から特質した才能は無かったものの、クインケに対する愛と知識は並々のモノではない。
    見かけによらずビビりで、任務の前はよく脚が震えている。その分危機察知能力には優れているので、殉職者が少ないという点では彼も一役買っていたりする。


    戦闘スタイル
    前述にある通り極度のビビりなので、任務の時はいつも二人以上となる。
    銃の扱いは可もなく不可もなく。要は平均的。
    周りに置いていかれるという焦りもあるみたいで、最近は色々な人の動きを見て真似ている。
  79. 88 : : 2016/10/05(水) 21:20:22
    九頭龍とペコと左右田の紹介だ!20歳に驚いた
  80. 89 : : 2016/10/06(木) 22:29:32
    これ未来機関支部長達はCCG上層部?
  81. 90 : : 2016/10/07(金) 21:13:15
    更新少ししたら再開します

    ちょっと大会の関係で留守にしてまして(^^;


    これから11月まで予定が一杯なので、途切れ途切れになると思いますが、これからも応援お願いします!
  82. 91 : : 2016/10/08(土) 06:18:12
    コードネーム「従豚」

    【アオギリ】幹部
    AA+レートの甲赫 赫子:1→3本
    Rc値3000~3520

    甲赫の中でも特に動きが緩慢で、攻撃力も野良喰種よりは少し強いくらいの実力。
    しかしタフさにおいてはSSレートにも引けを取らないほどに頑丈で、『ゴスロリ』と戦う際は赫子を使い彼女の盾として我々の攻撃を阻む。
  83. 92 : : 2016/10/08(土) 06:25:50
    コードネーム「ゴスロリ」

    【アオギリ】幹部
    Sレートの鱗赫 赫子:2→5本
    Rc値3090~3990

    鱗赫の長所である手数を活かした戦いを好む。
    攻撃力は申し分ないが、攻撃範囲が狭く防御が脆いため『従豚』を従えていると考えられる。
    そのため一人でいるのを発見した際は、羽赫のクインケをもって大勢で討伐にあたるべし。
  84. 93 : : 2016/10/08(土) 07:28:43
    S級討伐対象喰種『ゴスロリ』は、その名の通りゴスロリを着用している事から名付けられた。


    そして目の前には、その特徴と一致し自らも『ゴスロリ』と名乗る喰種。


    舞園「まさか、こんな簡単に見つかるとは思ってもみませんでした」


    ゴスロリ「あら。私別に隠れる気なんて塵にもありませんでしたよ?」


    舞園「その割には別れ道なんて用意して私達を分断しましたよね?」


    ゴスロリ「当然♪戦力分散は勝利への手段ですわ」

    ゴスロリ「私、敗けや逃亡は大嫌いですが、勝利に関してはどこまでも貪欲ですのよ?」


    桑田「えっ!あの別れ道って罠だったのか!?」


    舞園「・・・」

    ここにアホが一人。





    ゴスロリ「では早速闘いを始めると致しましょう」

    ゴスロリ「退屈なんてモノはそれらの次に嫌いですから」ザッ


    桑田「…ッ!」ザリッ


    舞園「落ち着いてください桑田君」ボソッ


    桑田「舞園ちゃん?」


    舞園「『ゴスロリ』はSレート。実力でみればあっちの方が全然上です」


    舞園「でも彼女は鱗赫の喰種。貴方としては相性が良い筈です」

    舞園「それにファイルの通りだとすると、遠距離からの攻撃も有効なんだとか」


    桑田「それって…!」


    舞園「勝てない相手ではないです。『従豚』も近くには居ないみたいですし、マニュアル通りの戦い方をすれば討伐できます」


    桑田「オッケー。希望が見えてきた!」


    舞園「先ずは桑田君が先陣を切って彼女に詰め寄ってください」

    舞園「隙あらば私が彼女に弾を浴びせますから」


    桑田「了解!見てろよ舞園ちゃん!俺がビシッと決めてくっから!」


    舞園「期待してます」ニコッ


    桑田「ッ!!」ダッシュ



    その言葉が嬉しくって、つい脚が前に出てしまった。

    それが速くって早くって早喰って。

    まるで羽赫になったような気分だった。


    彼女の目の前で。彼女と2人だけで大物を討伐するのが夢だった。


    その夢が叶う!そしたら舞園ちゃんは俺に惚れるだろう。

    もう、他の男なんか見る気も失せるくらいに…!




    桑田「うおぉぉぉ!!」ズアァ


    横目でチラリと彼女を見る。

    必死な顔で何かを叫んでいる。



    大丈夫!俺なら行ける!

    俺は強いかrズザザザザザザザ!!




    桑田「ガフぅッ!!?」ゴバァッ





    無数に繰り出された赫子が、俺の胴を貫く。




    ゴスロリ「ふふ。つくづくアホですわね♪
    たった2本で私に勝負を挑んだ時点で負けは決まっていましたわ」ニコッ


    脚で自重を支えきれず、自分で作った血の溜まりに堕ちた。
  85. 94 : : 2016/10/08(土) 07:45:07
    桑田がやられた( ´•̥ v •̥` )
  86. 95 : : 2016/10/08(土) 15:02:07
    桑田君が相手に詰め寄った直後、『ゴスロリ』が赫子を展開させた。

    その数は3本


    そこで桑田君も赫子を出し応戦しようとする。


    ここまでは予想通り。


    問題は次からだった。



    標的に向け直進した桑田君が『曲がらない』事だった。



    そしてそのまま数と実力で勝る相手に引けを取らなかった。

    それが失敗だった。



    今回の場合、桑田君は走り出すと同時に私の攻撃の軌道を確保するため、一度その場から離れる必要がある。

    そうしなければ狙撃者のサポートどころか視界さえ邪魔する恐れがあるからだ。



    事実、桑田君が私と標的との間にずっと居続けた事で、私はサポートのタイミングを完全に失い、唯一の近接攻撃者も失った。



    『ゴスロリ』と正面からぶつかる場合、私の勝率はー

    3%だ。
  87. 96 : : 2016/10/08(土) 16:20:03
    桑田は自業自得なわけか。
  88. 97 : : 2016/10/08(土) 20:36:48
    ―四年前―

     
    スッ

    ドドドド!

    講師「桑田伶恩、75点!」


    桑田「まっ、こんなところか」


    友達A「おっ桑田。また平均点ギリギリじゃーん!」


    桑田「うっせーな!お前みてーに下回んねーだけ良いだろ!?」


    友達B「おっ、それ言えてる」


    友達A「こ、これからだよ。これから!」


    アカデミーに入学してもう一ヶ月ちょいになる。

    ダチも増えて成績もそこそこ。

    まぁそれなりの学校生活をおくっている。



    友達A「お!見ろよ舞園ちゃんだ!」

    桑田「えっ?」


    前方には確かに彼女の姿が。



    舞園さやか

    容姿端麗で成績優秀。
    その美貌から学校中で注目の的だ。


    実際のところ俺も―
    一目見て惚れてしまった。


    といってもここ(アカデミー)で恋なんてしても無駄。

    講議も実習も男女別々で、おまけにクラスも別れている。


    喰種から一般人を守るなんてカッコいいから女の子にモテる!


    そう思ってこの道に進もうと思ったのに、実態がこんなんだから道半ばで何度か辞めようとも思った。


    それでも彼女が見れるのが嬉しかったから中退もせず最後まで残っていられた。



    そして3年の後期。

    そろそろ所属先を決めなければならないこの頃。
    俺と愛しの舞園ちゃんは何故か先公に二人で講議室に呼び出された。



    そこであった事をまとめるとだな、要は

    『補償金は出すからお前ら二人喰種になって喰種を駆逐しろ』

    という身勝手な要求だった。


    どうやら俺たち二人は赫包を移植するのに適した肉体だったらしい。





    冗談じゃない!

    捜査官になるつもりで来たのに何で化け物なんかに身を堕とさなくちゃならねーんだ!


    こんな選択NOに決まってんだろ!


    舞園「私・・・やります…!」

    舞園「だって、私がやらないと他の誰かがまた同じ思いをするんですよね?」

    舞園「だったら、私がやらないと…!」


    桑田「だったら俺もやります!嫌だって言ってもやるからな!?」バッ



    ラッキー!まさか憧れの舞園ちゃんとおんなじ班になれるなんて…!


    しかも同期では他に居ない。
    おまけに特殊な班だから班員も少ないんだとか。


    こんな好条件、見逃す訳ねーじゃん!

    ありがとう先生、そして俺の体!



    こうして俺たちはQsに入隊し、今までを順風満帆に暮らしていた。(デブの先輩が俺に五月蝿いが)


    ところが先日、そんな俺と舞園ちゃんの仲を分かつような後輩が現れた。


    舞園ちゃんは何故かアイツに気を寄せているが俺としては面白くない。


    大体Qsの癖に赫子を出せないってどういう事よ?才能無いんじゃね?


    それくらいの文句ぐらい言ってやりたかったがそんな事をすれば舞園ちゃんから嫌われるのでモヤモヤしたまま普段を装った。



    桑田(けど舞園ちゃんは渡さねー!何としてももう一度こっちに気を戻させてやる!)


    そう思って張り切った結果がこれだ。

    ダッセーな…俺、このまま死ぬのかな?


    そう思いせめて最後に彼女を一目見ようと重い瞼を再び開く。



    するとそこには肩から血を流しながら必死に応戦する愛しの彼女が。



    どうして!?
    そこまでいってやっと気付いた。俺がここでこうしてくたばっているからだと。



    そんな事…させねー!


    俺のミスで彼女まで危険に晒されてるんじゃ、マジでダセーってんだよ!!





    桑田「」ググっ…

    ドサッ


    ダメだ・・・力がはいんねー。


    頭も段々ぼやけてきた。これやベーな…



    それでも、体に入れる力は寸分も緩めようとはしなかった。

     

    桑田(頼む…あとちょっと、彼女を逃すだけの時間だけでいいから…動いてくれ・・・!!!)
    ビキビキガキッ




    桑田「ヴオォォォォー!」ズダッ




    ズバン!!





    舞園「えっ…?」

    ゴスロリ「なっ!!?」グッ



    二人の応酬に割って入って、不意の一撃を喰らわす…!



    オれは…Qsダヮァ!
  89. 98 : : 2016/10/08(土) 21:46:51
    舞園に大しての下心は知ってたけど桑田凄く?
    カッコイイと思ったのかな?
  90. 99 : : 2016/10/08(土) 22:44:14
    所は戻って霧切サイド―

    そこでは霧切が力を解放した『ドレッドホームレス』(葉隠)と、それを取り囲む【アオギリ】の下っ端との戦闘に苦戦を強いられていた。



    霧切(『ドレッドホームレス』は赫者でないわ。
    素質のあるごく一部の喰種が共喰いを行ってできるのが赫者)

    霧切(奴にはその素質が無い。つまりアレは『半赫者』でしかない…!)



    分かっていてもこの状況を打破する手段はまだ見当もつかない。


    ズトドドド!

    霧切「くっ!」シュバッ
     

    下っ端の銃撃をギリギリで躱すが、バランスを崩した一瞬の隙を逃さず葉隠が襲い掛かる。


    葉隠「ウガアァァー!」ズバッ


    霧切「うっ…」クラ


    スチャッ

    ダダダダダ!


    葉隠「」スッ


    その状態からでも攻撃を試みるが難なく避けられ、次を装填する時間も与えられる事は無い。


    葉隠「アガガガガ!」ドドォ


    霧切「がはぁ!」ドン!



    増えた赫子の対応に追い付かず、背中を叩かれ壁にぶち当たった。


    霧切「うぅ…」フラフラ

    霧切「…!」


    頭も打ったせいか、視界が安定せず敵の位置を正確に認識できない。


    ズダダダダ!


    当然それを見逃す訳もなく、容赦ない銃弾が霧切を襲う。


    霧切「【螺旋モード】!」ガチャッ

    ドダダダダダダダダダダダダダダダダダ!



    この身を襲う全ての銃弾を撃ち落とそうとする。

    が、ぼやけた視界ではその事も叶わず、何発かの弾が銃弾のカーテンから漏れた。


    霧切「…ッ!」ヨロヨロ

    グサッ


    霧切「あぁッ!!」グッ

    ドサッ



    何とか避けようとするが、脚に一発当たり遂に倒れこんでしまった…





    霧切「ハァ…ハァ…」


    手足の感覚が薄れていく。本当に終わりのようだ。


    周りは【アオギリ】に堅められ、『ドレッドホームレス』は四足歩行のままゆっくりとこちらに近づく。

    ザッ、ザッ



    霧切(せめて…致命傷だけでも・・・)ハァ、ハァ


    ゼロ距離なら当てられる。 

    それでもクインケを握る手は震え、肩も上がらない。



    霧切(ダメね、もう抵抗すら出来ない。このまま黙って喰われるしか道は無いみたい)ハァ,ハァ


    死を覚悟した時、霧切の脳裏には自分が犠牲にした新米捜査官の顔が浮かんだ。



    名前は確か・・・そう、苗木誠。



    霧切(ごめんね苗木君。貴方を囮に使っておきながらコイツを倒すことさえ出来なかった)

    霧切(これからに期待し、期待されていたであろう貴方を『私』が殺してしまった。その報いを今から受けるのね)



    葉隠「イマ、トドメヲ差シ手挙げルべ」スッ


    鋭く尖った赫子の先が、私に向けられる。




    霧切(死後の世界と云うものが有るのなら、どうか私を許さないで)


    次に今まで一緒に頑張ってきた班員の顔が走馬灯となり甦る

    霧切(そして班の皆…こんな私を受け入れてくれてありがとう。最後に何も果たせなかったけど、貴方達はこれからも無事でいて…!)


    瞳には、彼女を知る者なら驚くであろう水が貯まっている。





    葉隠「死ネぇェェーーー!!!」ブンッ


    霧切「皆、ありがとう」
    霧切「ごめんなさい」ツゥ

     



    巨大な赫子が、彼女の腹を真っ二つに引き裂く…















    前にその赫子が跡形もなく消えていた・・・





    葉隠「ヱ?」

    霧切「……え?」



    ズブシュッ!


    葉隠「…ッ!?ヱヴアァァァァ!!?」


    突然、彼が痛みの叫びをあげた。



    よく見ると、四足歩行の左前足
    つまり左腕も二の腕の先から無くなっていた…!


          ザワザワ、ガヤガヤ

     
    それと周りを囲んでいた【アオギリ】達も、様子が落ち着かない。


    見ると、何人かの下っ端が胴やら頭やらを失って、その場に血を溜めている!



    霧切「い、一体何が?」




    ガツガツ



    『『『?!!?』』』バッ!



    何かを咀嚼する音。

    それが聞こえたのはビルの陰。


    全員が眼を凝らしてその正体を確かめる。

    そこに在ったのは暗闇でもよく光る紅い眼がひとつ。



    霧切「え…!?あれって!」


    その人物には見覚えがあった。
    いや、ありすぎるぐらいに。


    だって、それは今さっきまで心の中にいた人だったから。

    私のせいで殺したと思っていた人だったから!



    サアァァ


    風が吹き抜け、日差しもその人物を表に引きずり出す…




     




    霧切「苗木…君?」


    下っ端1「せ、隻眼の喰種!!?」ヒイィ!




    苗木?「・・・」

  91. 100 : : 2016/10/09(日) 00:02:25
    な、苗木どうしちゃったの?gkbr
  92. 101 : : 2016/10/09(日) 06:07:04
    ついにキター
  93. 102 : : 2016/10/09(日) 06:39:40
    苗木と桑田が比較できるのはお上手だと思います
  94. 103 : : 2016/10/09(日) 12:36:32
    File13 『隻眼の喰種』

    人と喰種が結ばれた際に極めて低確率で生まれる喰種の亜種。
    本来なら人と喰種の摂取物の違いから産まれることは無いのだが、そういった事を含め無事に生まれた個体は雑種強勢により高い戦闘能力を持つ。

    普通の喰種は両目が赫眼だが、隻眼の喰種は名の通り片目だけが赫眼であるのも特徴。
  95. 104 : : 2016/10/09(日) 15:14:58
    File14 『赫眼』

    喰種が特殊能力を使う際に眼球を赤く変化させた状態の呼称。
  96. 105 : : 2016/10/09(日) 16:01:56
    こちらの都合により、Qsの面々も両眼となっています。

    原作と違った箇所が多くありますが、それも含めご理解くださいm(__)m
  97. 106 : : 2016/10/09(日) 20:44:36
    散らばっていた意識の欠片が集束し、やがて覚醒する。



    ・・・・・・・・・



    真っ白い空間には、地平線の彼方まで咲き誇る【白い彼岸花】が…


    苗木(あ、なんかデジャヴ)



    今朝見ていた夢と全く一緒の光景が目の前に広がっている。

    ということはそう、これは夢だ。



    苗木(僕どうして寝てるんだっけ?任務に遅刻して急いで現場に向かってそれから・・・)


    ―歩行中に銃弾の雨が襲ってきた。


    苗木「!?」ゾクッ


    苗木(そうだ…僕は確か全身を無数の攻撃で貫かれた筈)

    苗木(だとしたら、僕はもう死んでるのか…!?)


    考えたくは無いが、それが今考えられる最大の可能性。



    苗木(くそっ!僕がもっと周りに気を使っていれば…!)ギリッ


    後悔先に立たずとは正にこの事である。




    そんな自責の念に駈られていると、不意に背後から気配を感じる。


    苗木「!?」バッ


    咄嗟に間合いを空け、気配の正体を確認する。



    苗木(あ…)


    そこに立っていたのは今朝見た女の子。


    背は僕と同じくらいで、髪に変わったヘアピンを付けている。
    僕が取った咄嗟の行動に驚いたのか、ちょっとビックリしている。


    そしてパッと見た感じ…かなり可愛い。

     
    舞園さんとはまた違った美しさがあり、彼女を見ていると何故だか心が癒される。



    苗木「あ、あの…ここはどこ?」


    取り合えず状況確認。まずはオーソドックスに現在地確認。


    女の子「・・・」トントン,スッ


    自分の胸を指し、それからその指を僕に向けた。


    苗木(心の中→僕)

    苗木(つまり僕の心の中か)


    この辺は予想した通り。お次は今気になった事から。


    苗木「喋れないの?」


    女の子「」フルフル


    違ったみたいだ。何か事情があるのか?



    苗木「君は…誰?」


    女の子「・・・」


    ここに来ての無反応。教えられないって事かな?



    そう思っていたら、途端に落ち込んだ顔になった。


    哀しみと悲しみが織り混じった、泣きそうな顔で…


    苗木「わわっ!ご、ごめん!何か変なこと聞いちゃったね?!」アセアセ


    何故そんな顔をするのか解らないが、こちらに落ち度があるみたいなので謝った。


    女の子「」クスッ

    苗木「!」ドキツ


    そんな必死な様子を見て、笑顔を取り戻してくれた。

    笑顔に内心ドキッとしたのは誰にも内緒だけど。



    最後は一番気になっていた質問を聞いてみた。



    苗木「僕はもう・・・死んだのかな?」


    気にはなるが聞きたくはなかった質問。
    これを聞いてもしダメだったら…なんて事が頭をよぎるからだ。


    女の子「・・・」フルフル


    答えはNO。
    つまり生きてる!


    苗木「じゃ、じゃあこれはただの夢って事!」


    女の子「」コクッ


    苗木「・・・!!」パアァ


    凝り固まっていた不安が熱いお湯に溶かされるように、心に元気がみなぎってきた!
  98. 107 : : 2016/10/09(日) 22:41:34

    ズシン!


    苗木「わっ!」ガクッ

    女の子「…!」


    それと同時に体が一気に重くなる!

    自分の生存を確認できたことで、どうやら先ほどのダメージが重さと化して襲ってくるようだ。


    苗木「参ったな。これじゃあなんの役にもたてないよ」


    折角生きているのに…!

    自分の非力さを味わっているところで、女の子が僕との間を詰めてくる。



    女の子「」スッ


    苗木「えっ、何?」


    女の子「」ススッ


    苗木「寝っ転がれってこと?」


    女の子「」コクコク

     
    苗木「でもどうしていきなり…」


    女の子「」プクー


    苗木「わ、分かったよ!ちゃんと寝るから怒んないで!」アセアセ


    言われた通り寝てみる。

    といっても下は彼岸花だらけなのであまり快適とは言えないが。


    苗木(もっと別の植物だったら良かったのに)



    そんな文句を人知れず思ってたら、頭の方で華が擦れてガサガサと音をたてる。


    女の子「」スッ


    次に訪れたのは柔らかくて温かい何か。


    その何かが女の子の膝の温もりであることを知るのはすぐの事。


    膝に頭を乗せ寝っ転がる。


    世間で云うところの膝枕をされている事に気付いた時は羞恥心で頭を真っ赤にした。


    苗木「まま待って!?何がおかしな事になってるんだけど!!?」


    女の子「」トン


    苗木「!?」ビクッ


    女の子「」ナデナデ


    苗木「あ、う~んと気持ちい良い…かな」///


    女の子「」ニッコリ


    言い知れぬ幸福感に、抵抗を拒否した。



    苗木「」ハァ~///


    何だろう?
    彼女の抱擁を受けているうちに体の重さとか、倦怠感までも抜けてる感じがする。


    苗木(あ、段々ねむく…)ウトウト



    夢の世界でも眠たくなるなんておかしな話だ。

    それでも、苗木の意識は再び欠片となりつつあった。



    苗木「ねぇ、また会える?」


    女の子「」コクッ


    苗木「そっか、じゃあ『またね』で良いんだよね」


    女の子「」コク


    苗木「最後にさ、君の名前が知りたいな。教えてもらえる?」


    女の子「・・・」



    しばらく考えるような仕草をした後で、口をパクパクさせる。









    苗木「ななみ…」

    苗木「七海さんで良いかな?」


    七海「!」コクコク


    七海と名乗った少女は、今までで一番嬉しそうな表情で頷いた。


    苗木(七海さんか。こんどは声もききたい…な・・・)



    グー


    ・・・



    苗木(お腹へった…)










     



    苗木の意識が完全に霧状となった後も、七海はその空間に居続けた。



    七海「・・・」


    七海「頑張って…生きて」





















    苗木「ガァッ!」グワッ

     
    ダダッ

    バツン!!



    葉隠「…ッ!?ヱヴアァァァァ!!?」

    霧切「い、一体何が!?」
  99. 108 : : 2016/10/09(日) 22:57:48
    七海と苗木に何の繋がりが!?
    いやー楽しみだ
  100. 109 : : 2016/10/09(日) 23:57:11
    パチリ


    目の前に広がる光景。


    それは彼岸花が咲き乱れたモノでも、七海さんの膝の上でもない。


    見知らぬ少女と【アオギリ】、そして体を赫子で覆ったあの喰種は…


    苗木「『ドレッドホームレス』。赫者…いや、半赫者だったのか」


    僕を待ち伏せで襲撃したのはコイツらか。



    霧切「気を付けて。あの身体には並みの攻撃が効かない」

    霧切「それに【アオギリ】の下っ端も従えているから囲まれないようにね」


    苗木「…君は?」


    霧切「霧切響子、上等捜査官。今回の任務で貴方と一緒の班のメンバーの一人よ」


    苗木「霧切さんか、よろしくね」


    霧切「え?えぇよろしく」


    そこで霧切から葉隠へと視線を移す。
     

    苗木「成程。あのスピードで硬いのか」


    霧切「どうする気?」


    苗木「そうだね。とりあえず」


    ガチャッ、ジャキン!


    苗木「先に【アオギリ】(雑魚)を駆逐する」


     
    下っ端「なっ!? 2丁拳銃!!」



    苗木 クインケ:穂幸 羽赫のB+レート
           靄慈 羽赫のA+レート
  101. 110 : : 2016/10/10(月) 14:11:33
    霧切視点


    苗木?「・・・」


    捕食を終え皆が注目する中、彼は黙ったまま動かない。


    霧切(確かに隻眼。だけど赫子が出ていないから今の一撃は補食したって事?)


    動けないながらも普段からの癖で推理してしまう。逃げることも忘れて―



    とその時、彼の指が微かに動く。



    苗木「カハッ!」プハー


    『『『!?』』』


    苗木「あー」キョロキョロ

    苗木「戻ってきたのか」


    意味不明な言葉を口にし、顔を上げた彼の眼からはすでに赤と黒の色彩が抜け落ちていた。



    霧切「…気を付けて。あの身体には並みの攻撃が効かない」


    苗木「…君は?」


    霧切「霧切響子、上等捜査官。今回の任務で貴方と一緒の班のメンバーの一人よ」


    罪悪感は有るものの、この危機的状況を打破できるのは彼しかいないと思い望みを託す。


    苗木「霧切さんか、よろしくね」


    霧切「え?えぇよろしく」


    先程のからでは想像できないくらいに優しそうな声だった。


    苗木「成程。あのスピードで硬いのか」


    霧切「どうする気?」


    苗木「そうだね。とりあえず」


    ガチャッ、ジャキン!


    苗木「先に【アオギリ】(雑魚共)を駆逐する」
  102. 111 : : 2016/10/10(月) 16:46:15
    パキッ

    親指と人差し指を折り曲げ、骨から音を出す。

    これが僕のルーティン。
     

    アカデミーの頃からこれが戦闘開始の合図だった。



    ドガガガガガガ!
    ガンッ!ガンッ!ガンッ!


    下っ端1「ガァッ!」
    下っ端2「グホォッ!?」



    苗木「・・・」ダダダダダ


    適材適手。

    縦横無尽に襲い掛かる【アオギリ】どもを冷静に、且つ正確に狙い撃つ。



    また、無駄が一切無いその動きを見ている内にあることに気付く。


    霧切(あの2つの銃、形状が違う)


    右手(穂幸)は警察官が所持するモノに似ているが、左手(靄慈)は銃口の部分がそれよりも少し長い。


    霧切(成程。ああやって違うタイプのモノを扱うことで、相手に『ズレ』を起こしているのね)


    勿論それでは自分も感覚が違ってくるのだが、彼に限ってはそんな事も無いのだろう。


    霧切(流石、歴代高得点で『主席』を取るだけあるわね)



    ドガガガガガガ!
    ガンッ!ガンッ!ガンッ!


    多対一の状況でも苗木は澄んだ顔を続けていた。

    装填と発砲を同時進行出来るため、弾が途切れることはなく【アオギリ】もその数をみるみると減らしていく。



    下っ端3「調子に乗ってんじゃ・・・ねーぞ!」グワッ


    苗木「…」ガチャッ


    下っ端3「なっ!?」


    ズドン!


    下っ端3「」バタン



    ノ、ノールック!?


    死角から攻めてくる相手もどこ吹く風。

    銃口を背後に向けたかと思うと、次の瞬間にはまた死体が出来上がった。



    苗木「そろそろ終わらせるか」ガシャッ


    攻撃を一時中断。


    まるで職人のような素早い手つきで両銃に弾を詰め込んでいく。


    下っ端4「さ、させるかー!」グオッ

    ババッ!


    当然その隙を見逃す筈もなく、残った【アオギリ】が四方八方から畳み掛ける。


    その距離3M

    …1M


    ・・・10cm




    苗木「よし」ガチャ!


    ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ夕ダダダダダ!!!



    下っ端「がっ!?」
    下っ端「ぐッ!!」
    下っ端「グワァーー!」



    形勢を逆転しようと散らばっていた残党が固まった瞬間を逃さなかった。


    最後は今詰めた弾丸を最高火力で走らせ、残った【アオギリ】を一人残らず殲滅した。



    シュゥゥゥゥ~



    砂埃が舞い、それが薄くなる。


    そこに立つのは苗木と葉隠だけだった。



    苗木「」スッ


    ガチャン!

  103. 112 : : 2016/10/10(月) 18:14:28
    期待です。
    いつも見てます。

    誤字報告です。
    補食ではなく捕食です。
  104. 113 : : 2016/10/10(月) 18:59:42
    双剣さん、期待とご指摘ありがとうございます。

    これからも頑張って書きますね!
  105. 114 : : 2016/10/10(月) 19:37:22
    葉隠「!!?」


    その惨状を、素直に受け入れられない。


    だってそうだろう?

    数と戦略で相手を上回ったと思ったのにこの有り様だ。



    葉隠(のコルは俺ダけ!)ダラッ


    身体中から嫌な汗が吹き出る。


    苗木「さてと…」クルッ


    葉隠「!?」ビクッ!


    苗木「今度は逃がさないから」ザッ,ザッ


    こちらへとゆっくり間合いを詰める。

    その立ち振舞いに隙は無い。
    確かに今回は逃げられなさそうだ。



    だったら・・・




    葉隠「変エリ討ちにシテ乎ルベ?!」



    【vs葉隠】 AAレート『半赫者』
  106. 115 : : 2016/10/10(月) 20:15:48
    ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!
    ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!


    葉隠「」ババッ

    ガキキキキキキン!


    苗木の銃弾を全て避ける事は不可能だと感じた葉隠は、3本あるうちの1つを残して、あとの2つを身体に覆って身を護った。


    念には念を入れて髪や眼などもスッポリ隠した。

     
    当然そんなことをすれば敵の位置を把握できない。


    しかし度重なる逃亡生活のお陰で、葉隠の五感は通常の喰種よりも発達したモノとなった。


    故に発砲音で相手の細かい位置なども把握できるため、この形態でも不自由はない。



    葉隠(アィチの攻撃ヶとおらナイなら,負ケル事はネーベ!)


    本来のスピードは失われてしまったが、その作戦は意外にも苗木を苦しめた。


    苗木(参ったな。攻撃が通らないんじゃ埒が明かない)


    苗木のクインケ、穂幸と靄慈はスピードと手数重視の軽量型だ。

    ああやって盾を張られたのでは勝負にならない。


    しかしここで諦める苗木ではない。


    苗木(・・・)チラッ


    霧切「?」


    苗木(それなら…)



    攻撃手段ならまだ残っているのだから。

  107. 116 : : 2016/10/10(月) 20:49:53
    ダダダダダダダダダ!

    ガチャッ
     

    ダダダダダダダダダ!

    ガチャッ


    葉隠「・・・」


    ダダダダダダダダダ!

    ガチャッ



    殻にこもってしばらくが経った。

    ここまできて葉隠は相手の攻撃が単調になっている事に気付き始める。


    およそ20秒間の連射の後、6秒ほどの間が空いているのだ。


    そこに、葉隠はこの現状を脱する突破口を見出だす。



    葉隠(連射ヶ終ワった直ゴ,盾ヲ解ヰてイッキにタタクべ?!)


    チャンスは一度きり。


    失敗すればこの作戦は二度と使えない。

    持久戦になれば赫子を出すことも叶わなくなり、そうなれば俺は殺される。


    葉隠(ゼッ対成功シテ見セル!)




    ダダダダダダダダダ


    始まった!


    ダダダダダダダダダ


    全神経を耳に集中させ、隙を伺う。


    ダダダダダダダダダ


    焦りは禁物。ゆっくりとチャンスを待つ。


    ダダダダダダダダダ
     

    そろそろ20秒が経つ。


    ダダダダダダダダダ


    未だか? マダカ?






    葉隠「今だべ!!!」バッ
    霧切「【貫桜モード】!」ドン!

    葉隠「なっ??!?」



    葉隠(一点)に集められた銃弾は旋を描きながら、もうすぐそこまで迫ってきている。


    それはさながら、竜巻が桜の花びらによって色付けされた感じだった。



    予期していなかった攻撃に、赫子の盾が間に合わない…










    葉隠「うが亜ァァァーーーーー!!」ズドン!
  108. 117 : : 2016/10/10(月) 22:03:53
    おぉー見事なチームプレーだ。
    ってか霧切さんのクインケ万能過ぎじゃねwww
  109. 118 : : 2016/10/11(火) 03:49:52
    苗木と霧切のチームプレー凄い
  110. 119 : : 2016/10/11(火) 21:00:56
    ズザァァァァ

    先程よりも大きな砂埃が立ち上ぼり、標的の姿が確認できなくなってしまった。


    霧切「この砂埃の中ではあっちの方が有利だわ」

    霧切「あの傷ではどのみち逃げられないでしょうから、これが晴れるまで待ちましょう」


    苗木「うん、そうだね」



    霧切(それにしても…)チラッ


    そっと苗木を盗み見る。


    霧切(あの操術テクニック、はっきり言って私よりも巧い)

     
    先の闘いぶりから、内心驚いている。


    霧切(アカデミーから優秀な人材が配属されるとは聞いていたけれど、まさかアレほどまでとはね)


    この短期間で上等まで登り詰めた事を自慢するわけではない。


    しかしその自分を上回る才能を持った彼に、興味が湧いてきた。




    苗木「そうだ霧切さん、怪我してたよね?大丈夫!?」


    霧切「え? 怪我?」


    言われてから自分が立てない程の重症だった事に気が付いた。


    霧切「大丈夫よ。痛み止めと麻酔を打っておいたから…」



    霧切「それよりも、どうして貴方は無事なの?彼らの罠にはまって瀕死に近い重症を負った筈でしょう?」


    苗木「あぁ、それはね、」

    苗木「・・・」


    霧切「どうしたの?」


    苗木(ど、どうしよう!頭撫でられたからとか真実味が無くて言えない!)ダラダラ



    苗木「キ…」


    霧切「き?」


    苗木「気合いで…」


    霧切「・・・」





    苗木(わーーー!!どうしよう!何も思い付かなかったから朝日奈さんが言いそうな事を口に出してしまった!!)

    苗木(これ絶対怪しまれてるヤツだよ!軽蔑されちゃうって!!)


    次に彼女の口から何が飛び出すのか恐くて想像したくない。

    ってか想像したらそれだけで精神が壊されそうだ。




    霧切「ふふっ」プッ


    苗木「ヒイッ! ってアレ?」


    返ってきたのは嘲笑でも罵倒でもなく純粋な笑い。


    霧切「そう、気合いね。中々に面白い答えじゃない」


    苗木「えーと、アレ?何かおかしくない?」


    霧切「可笑しいわよ。だから笑ったんでしょ」


    苗木「いやそういう事じゃなくてさ、
    ・・・まぁいっか」


    霧切「あまり言いたく無い事ってのは分かったわ。だからそれ以上は追及しない」

    霧切「それとも、もっと笑って欲しかった?」


    苗木「イヤイヤ大丈夫!お心遣い感謝します!」


    霧切「ふふっ、良いのよ?」

    霧切「・・・」


    霧切「貴方が思っているほど、私は素敵な人間じゃないから…」



    苗木「霧切…さん?」
  111. 120 : : 2016/10/11(火) 22:29:23
    苗木咄嗟の言い訳がすごくわかりやすいなぁーww
  112. 121 : : 2016/10/11(火) 23:36:41
    苦いモノを噛んだみたいに、霧切の顔は辛そうだった。


    霧切「苗木君。実は私、貴方が狙撃された瞬間に居合わせていたのよ」


    苗木「えっ!?そうだったの!」


    霧切「正確には電車に乗ってからだけどね。変装をしてない貴方は遠くからでも捜査官だと分かったわ」


    苗木「あっ。だから霧切さんは私服なんだね」


    霧切「そう。単独行動を行う時は一般人に紛れるのが生き残る術なんだけど…」

    霧切「それはまた今度にでも教えるわ」


    霧切「とにかく、電車を降りてから私はずっと貴方の後ろにくっついていたの」


    苗木「? 何で声をかけてくれなかったの?二人でいた方が安全でしょ?」


    霧切「貴方を囮にしようとしたからよ」


    苗木「ォ、囮!?」


    霧切「電車が途中で止まったのは【アオギリ】の仕業だと思った。実際その通りだったけど」

    霧切「目的は私と貴方を班と合流させない為でしょうね」


    霧切「そしてその目的は見事達成し、私達は大幅に遅れることとなった」


    霧切「そしてこうも考えたわ。『ただ遅らせるのではなく、始末するつもりで分断したんだ』、とね」



    苗木「だから、僕を囮に?」


    霧切「えぇ。罠があるとは思っていたけど何処にあるかは分からない」

    霧切「だから丁度良く目立ってた貴方に先を行かせ、私『だけ』が危険を回避する。それが私の狙いだったのよ」


    苗木「・・・」


    衝撃のカミングアウト。

    自分は襲われる事が前提でこの現場に居合わせたのだ。


    霧切「今になって後悔してる。初めから貴方と行動を共にしておけばこんな怪我もしなくてすんだのに」


    霧切「勿論、許されることだとは思ってない。直接ではないとはいえ、貴方に手を掛けたのは事実だし」


    霧切「自業自得ね。こんな性格だからCCGでも厄介者にされるんだわ」






    苗木「それは…違う」


    霧切「え?」

     
    苗木「それは違うよ!」論破
  113. 122 : : 2016/10/11(火) 23:38:41
    明日から一週間ほど出掛けてて居ないので、更新が止まります。

    何卒ご了承くださいm(__)m
  114. 123 : : 2016/10/12(水) 00:47:37
    気長に待ってます。
  115. 124 : : 2016/10/12(水) 06:21:24
    空き時間見つけて少しずつは書けるかもしれないですが。
  116. 125 : : 2016/10/12(水) 22:46:40
    最近物騒ですからお気を付けて
  117. 126 : : 2016/10/14(金) 12:08:09
    霧切「…何が違うの?」


    苗木「自分がCCGで厄介者にされてるって話だよ。僕はそう思わない」


    霧切「どうしてそう言いきれるの?入隊して日が浅い貴方が…」

    霧切「それに、私に殺されかけたっていうのに」


    苗木「それも違うよ。僕が襲われたのは僕自信の不注意が原因なんだし」

    苗木「あと、これは班の皆に聞いた話なんだけど、」

  118. 127 : : 2016/10/17(月) 20:50:58
    ~前日~


    舞園「~♪」


    苗木「舞園さん、楽しそうだね」


    舞園「ぁ、ごめんなさい。任務前だっていうのに浮かれちゃって」


    苗木「イヤそういう意味じゃなくってさ、何でそんなに嬉しそうなのかが気になって…」


    舞園「そうですね、親友に会えるから。って言った方が良いですか」


    日向「苗木は初めてだもんな、アイツらと会うのは」


    苗木「アイツらって、明日一緒になる人達の事?」


    豚神「あぁ、サボり魔の黄桜が班長だから連携はイマイチだが、個々の力はそれなりだ」


    桑田「まっ、俺の足元にも及ばねえ連中ばっかだけどな!」


    日向「それは違うぞ」
    舞園「傲りが過ぎませんか?」
    豚神「愚民め」
    苗木「面白い冗談だね」


    桑田「っておい!いくらなんでも言い過ぎだろ!?」


    苗木「それよりさ、さっき言ってた親友って…」


    桑田「それより、ってお前!」


    舞園「霧切さんっていうんですよ」

    舞園「物静で冷静な方なんですけど、そのせいでCCGの人達からの評判はあまり良くはないんです」

    舞園「でも!本当は優しくて感情豊かで、人一倍寂しがり屋なんです!」


    舞園「だから苗木君も、彼女と仲良くしてあげてくださいね?」


    苗木「うん、勿論だよ!」


    ~回想修了~
  119. 128 : : 2016/10/17(月) 20:51:22
    苗木「という訳なんだ」

    苗木「君が人々を救うため敢えて非情を演じているのも。本当は誰かが死ぬのを恐れているのも聞いた」


    霧切「舞園さん、貴女って人は」ハァ 


    苗木「それに君が死んじゃったら僕や班の皆、舞園さんまで悲しみに堕ちる。そんな事にはなりたくないんだ」


    霧切「だから、私を許すと?」


    苗木「あのね、そもそも僕は霧切さんを恨んじゃいないって。僕の不注意が原因なんだしっ、てのはさっき言ったよね?」


    ・・・


    霧切(変わった人…)


    あの状況で自分に非がある、なんて先ず思い付きもしないだろう。

    霧切の推測でも計り知れない。

    普段は人と関わるのを苦手とする彼女だが、この時ばかりは苗木に少なからず興味を持ち初めていた。





    葉隠「ヴヴ~~」ガラッ

    苗木霧切「「!!?」」バッ!


    音がした先

    そこには左手と赫子1本が失われながらも立ち上がる『ドレッドホームレス』がいた。



    苗木「あれだけの傷でまだ動けるなんてね」


    霧切「ゴキブリ並みの生命力の強さだわ」


    苗木「霧切さん、いける?」


    霧切「当然よ。貴方だけに任せるなんて上官の面目が立たないじゃない」


    苗木「ふふっ」


    霧切「何かしら?」

     
    苗木「ごめん。やっと君の本当が見えた気がしたから」


    霧切「軽口叩いてるとまた死ぬわよ」




    静寂



    依然ピンチには変わりない立場だが、不思議と死ぬ気がしない。


    心と体を塞いでいた重い何かがどかされた…
    感じがした。




    苗木「行ってくる!」ダッ!


    私の仕事はチャンスを伺って打ち込むだけ。


    サポートはしない。それが私だから。


    それに・・・彼(苗木君)にはそんなもの不要だから。
  120. 129 : : 2016/10/17(月) 23:33:03
    うわぁぁぁーーー!更新されてたーーー!楽しみーーー!
  121. 130 : : 2016/10/18(火) 11:42:58
    帰ってきたので更新再開しまーす!
  122. 131 : : 2016/10/18(火) 12:15:29
    ガチャッ

    ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
    ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ!


    葉隠「ヴがぁ!」ズアァ


    ババババババババババババババ!


    苗木「! 全て打ち緒とした?」


    葉隠「ガァ!」バッ


    苗木「ぃよっ 、と」スタッ,ガチャン

    向けられた攻撃を華麗に躱して次弾を装填。


    ズドドドドドドドドドドド!

    ヒュ,ヒュバッ


    しかし葉隠はその動きをも予測し、当たることはない。



    苗木(参ったな。さっきよりも赫子と動きにキレが増している)

    苗木(おまけにあの生命力。ほとんど意識を失っているのに闘い続けてるとはね)


    資料では『ドレッドホームレス』はAAレートと記してあった。

    だが苗木は、彼をSレートに匹敵するものだと感じた。


    借金取りに追われていた彼は、無意識の内に喰種としての力を付けていたのだった。



    苗木(…銃撃じゃダメだ。あのスピードと赫子を前には意味がない)



    苗木「だったら…」ガチャッ


    銃を手放し、もう1つの箱に手を掛ける。
  123. 132 : : 2016/10/18(火) 23:40:26
    更新待ってました。
    誤字報告です
    打ち落とし⭕️ 打ち緒とし❌
  124. 133 : : 2016/10/19(水) 16:03:08
    双剣さん、また指摘頂きありがとうございます
    (^_^;)


    急いでるとどうも見落としが(言い訳)
  125. 134 : : 2016/10/19(水) 21:54:06

    勝負は一瞬だった。



    苗木が箱に手を掛けるタイミングを見逃さず、葉隠が攻撃に出る。


    相手を引き付けてからの乱射

    それはさっき見た。



    一度披露した技では俺を倒せないのは承知しているはず。


    だとしたら考えられるのは銃の強化。

    昨日の【アオギリ】戦で、こいつが一回り大きな武器を使っているのを見た。


    そして今のモノでは俺にまで当たらない。


    葉隠「ダッたら、距リを詰めル!!」ダダッ!


    装填から発射まで、チャージの時間があるのも知っている。


    臆す事はせず、溜まる前に勝負をつける!

















    苗木「終わりだよ」ジャッ!  


    ヒュオォォォ!


    葉隠「?!!?」



    !ガキィィィ…ン

    ザザッ


    ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!!



    迅速とも云える苗木の「刃」は、縦横無尽

    いや、 


    空前絶後から葉隠に襲い掛かる。


    葉隠「アガガガガガ!!!」ズダダダダ



    その斬撃は、肉を裂き、骨を沈め、赫子を削っていく。




    苗木 クインケ:浅月 尾赫のAAレート
           深月 尾赫のAAレート
  126. 135 : : 2016/10/20(木) 21:18:38
    掠れゆく意識の中、赫子を必死に動かして応戦しようとする。

    相手は所詮二刀、こちらも1つ失ったとはいえ赫子はまだ2本残っている。

    赫子で防ぎ、殴るや蹴るで勝敗が付く。


    ―そう、思っていた。



    苗木「」ズザザザザザザザザ



    葉隠「ガッぐ! アイェェエ!!」ザザザザザザ

    葉隠(ボ,防御!いや再生…?回ヒ・・・は無理あれ地面どっちダッ?血肉が足りな…あれ赫子どこしまった)

    葉隠(そぅだ逃げなきャ…どうやって?てか出口ってどっち?いやここ外かあれムリ思考が)



    身体を痛め付けられ思考も働かない。
    最早翼をもがれた雀のような存在だった。


    葉隠「かっフ?!ニギ,ダダダ!」ザザザザザ


    衝撃で後ろへ飛ばされる。
    それに合わせて苗木も空中で追い討ちをかける。


    雀なんてモノじゃなかった。これではまるでカレーに入れられた挽き肉か何かだ。



    つまりもうアレだ…


    終わりだ。


    ズガッ!

    ドゴオオォォ…ォン!


    勢いそのままに、挽き肉が壁に叩きつけられた。


    スッ,ジャキィィ……ン


    苗木はゆっくりと…刀を鞘に収めた。




    勝者、苗木
  127. 136 : : 2016/10/20(木) 21:19:38
    No.999 苗木誠(18)

    Rc値:700?
    タイプ:?? 赫子:?本

    クインケ:穂幸 羽赫のB+レート
        靄慈 羽赫のA+レート
        浅月 尾赫のAAレート
        深月 尾赫のAAレート


    日向班所属(Qs)
    2016年入社、現在の階級は三等。

    アカデミー83期生の主席。
    Qs内で唯一赫子を出せない人物。その原因が何であるかの特定は未だにできていない。
    が、アカデミーでは歴代屈指と云われる成績を修め、クインケ操術に関しては第二のカムクライズルとまで云われるほどの実力者。と共に、誰とも隔てない高いコミュニケーション力も兼ね備えており、他の班からの信頼が厚い。


    戦闘スタイル
    2丁拳銃に二刀流。二本の腕を巧みに扱い、状況に応じた戦いを得意とする。
    神速とも云われるその長所を殺さないために比較的軽いクインケを装備しているが、元々非力な上にその組み合わせだとパワーに関して色々心配される点もある。
    なお、アカデミーではこのスタイルに敬意を込めて「弐式二刀流」なんていったそうだ。
  128. 137 : : 2016/10/20(木) 22:54:56
    苗木君つえー
  129. 138 : : 2016/10/21(金) 02:24:14
    でも非力なんでしょ?そこが心配だな。
  130. 139 : : 2016/10/22(土) 13:34:32
    苗木くん凄い!(*゚Д゚艸)
  131. 140 : : 2016/10/23(日) 00:24:23
    所変わって舞園サイド―

    ゴスロリ「ぅ…くっ!」バッ!


    ゴスロリ(迂闊でしたわ。完全に仕留めたと思って警戒を怠るなんて)

    ゴスロリ(普通の人間を相手にしているようではダメ。彼らは喰種の力を取り込んでいるのですから!)


    シュウゥゥゥ


    喰われた箇所の再生が始まったが、傷が深い。


    ゴスロリ(私は他の喰種よりも防御が乏しい。だから今まで山田君[従豚]を盾替わりにしてきたというのに)クッ


    ここに来て自分の打たれ弱さに嫌気が差してくる。

    だけど…


    ゴスロリ「ここで」ボソッ

    ゴスロリ「ここで負けるわけにはいきませんわ!」ズアァ 


    再び「鱗」を展開させて、臨戦態勢に入る。








    舞園「桑田君!大丈夫なんですか!?」

     
    桑田「アァ、問題ねェ!それから…」

    桑田「ごめん舞園ちゃん、俺のせイで怖イ思イさせちまって」


    聞いてから桑田の表情が浮かばない事に気がついた。

    どうやら先程の行動が的外れだったのを気にしているらしい。


    舞園「問題ありません。それよりも…」チラッ


    桑田「?」 


    舞園「フレーム解放ですか。一体いつ頃から…」


    桑田「そウだな、もウ一年ぐらイか」


    舞園「そんなに前から!」


    桑田「俺、こウ見エても結構努力してたんだぜ?」ヘヘッ

    桑田「ッ!?がはッ!!」


    舞園「桑田君!?」



    突如大量の血を吐き出した桑田。


    あれだけの傷を負い、フレームまで解放したのだ。喰種の再生力では命を繋ぎとめておくことしかできない。

    だから鎮静剤と痛み止めをガンガン使って、無理矢理身体を動かしていた。

    が、受けた傷が治ったわけじゃない。
    むしろ悪化させているのだ。

    そんな事をすれば当然、後々もっと厳しい状態になる。



    舞園(でも、ここで負けたら後なんて無い。桑田君もそれを分かっていて無茶をしてるんだ)

    舞園(だったら、その思いを無駄にするわけにもいかない!優先すべきは「今」じゃなくて「これから」なんだから!)ズアァ



    覚悟は決まった。

    コイツ(ゴスロリ)を倒す覚悟が!



    舞園「桑田君!避けてくださいね!?」


    桑田「了解!」


    ダダッ!


    言い終わるとすぐ、同時に走り出した。
  132. 141 : : 2016/10/23(日) 00:53:14
    File15 『フレーム解放』

    簡単に言えばリミッターを解除するという事。
    Qsのメンバーは全員、クインクス旋術を受ける際に(フレーム)F1~5までのストッパーの役割をしたモノを埋め込まれる。
    これにより、Qsは人間と同じような生活を送れる。

    ただし、局長(天願)の合意の元、ちゃんとしたメンテナンスを受けてからでないといけないので、突発的な解放は無理。

    ちなみにフレーム解放には下記のような段階がある。

    F1で20%
    F2で40%
    F3で60%
    F4で80%
    F5で100%

    (ただし100%になると、もはや喰種と同じ存在になるのでご注意)
  133. 142 : : 2016/10/23(日) 01:05:54
    更新!
    No.148 桑田怜恩(19)  

    Rc値:1900~2600 → 3000(F1解放の場合)
    タイプ:尾赫 赫子:2本

    日向班所属(Qs)
    2014年入社、現在の階級は二等。


    アカデミー81期生。
    尾赫の特徴をよく体現しており、中・近距離を得意とするオールラウンダー。
    しかし肝心の質の方が並大抵であるため、今までの戦果も平均的である。
    たまに協調性を欠くところもあり、それを踏まえると未だ未だ発展途上的だ。

    一年程前から日向准特等と共に、松田特等の元でフレーム解放旋術を受けていたようだ。
    今現在で二人がどこまでのFを解放出来るのかは不明だが、これからの働きに益々期待が高まる。


    戦闘スタイル
    2つの赫子を使っての打ち合いを得意とし、時間稼ぎや注意力低下など、意外とサポートタイプである。
    なので彼にはもっとチームプレイを意識して欲しいというのが率直な願いだ。
  134. 143 : : 2016/10/23(日) 02:41:03
    ゴッ! ズバッ!

    と、それまた同時に赫子が二人の身体を裂いた!


    桑田「ゴガァッ!?」

    舞園「ぇ?…なッ!?」フラッ


    ドサッ


    ゴスロリ「フフッ、なーんて」

    ゴスロリ「ちょっとは「勝てる」、なーんて希望を与えるのも宜しいモノですわね♪」


    そこには、焦りの表情が消え余裕に佇む姿が。


    舞園「な、何…で? ゲホッ!」フラフラ


    ゴスロリ「ですから、今説明した通りです」

    ゴスロリ「貴女方は私の演技にまんまと騙されたのです」


    舞園「なっ!!」

    桑田「嘘だろ!」ドンッ


    ゴスロリ「嘘ではありません。現にこうして元気なのが証拠ですわ」ニコッ



    騙された。

    その衝撃を受け入れるのは無理だった。



    だけど、身体はまだ動く!

    ならば希望は捨てず、奴を倒せば良いだけだ!



    桑田「ウオオオオーーー!!!」ダッシュ!


    舞園「桑田君!?」 


    ゴスロリ「まぁ…!無駄な足掻きだこと」フッ


    桑田「アぐっ!!」ザグッ!


    右のスネを細い赫子が貫く。


    そしてそのまま、まるで玩具で遊ぶかのように脚ごと桑田を持ち上げ、それを振り回す。


    桑田「アッ、ウアァァァァァ!!」ブンッ,ブンッ!


    ゴスロリ「フフッ、童心に帰ってみるのも悪くないですわ」ヒュッ


    桑田「ガハッ!」ビターン


    ズガガガガガ!


    ゴスロリ「あら危ない」ガキキキキン!


    舞園「ぅ、嘘 私の…全力を…」

    ―全て叩き落とされた。


    ゴスロリ「今のが全力ですって?面白い冗談を」


    桑田「面白い冗談が何だって!?」ババッ


    舞園「桑田君!?」


    ゴスロリ「あら?まだ動けるのですか?」


    脚はかなり限界だ。
    それでも痛み止めの効果が続く限り、何度でも立ち上がる!


    ゴスロリ「では、もっと痛い目をみて貰いましょおぉう」ニタァ


    ヒュンッ


    桑田「オガアァァァ!!!」ザクザクザクッ!


    すぐそこまで迫っていた桑田を、刺した勢いでまた遠ざけられる。

    桑田に眼を向けると、四肢に1本ずつ赫子が刺さっている。


    桑田「ぁ、がっ…」ピクピク


    ゴスロリ「おっと…まだ意識を失うには早くってよ?」ズアァ


    そう言うと、また赫子を出現させてきた。


    舞園(まだあるの!? だけど迷ってられない!)

    ダッ!


    気付かれぬよう慎重に駆け込み、背後に迫った。


    舞園(もらっ!)
    ゴスロリ「見えていますわよ?」ドンッ


    舞園「ぁ…ハ・・・!」



    振り返った『ゴスロリ』に反撃され、今度は腹を貫かれた…



    桑田「!、!?」

    舞園「ぁ・・・」ドサッ


    意識はある。この身体(喰種)のお陰で

    だけどもう立てない。完全に臥せられた。




    ゴスロリ「まさかこれで終わるとは思ってませんよね?」ゴリッ

    舞園「フグッ!」



    桑田「や、ヤメローーー!!」ダッ!

    桑田(第2フレーム、解放!!)バキバキ!


    動きを封じていた赫子を退かし、舞園の元へと一気に詰め寄る。



    ゴスロリ「大した打たれ強さですわね。貴方、私の盾になるつもりはなくって?」


    桑田「ふおぉぉぉーーー!!!」ダダダッ


    ゴスロリ「そう、残念」ヒュッ


    斬ッ!


    桑田「ぁ、あぁ…」

    桑田「ぁァあマァぁアアーーあぁーー~―!!!!」


    舞園を刺していた赫子を抜き、それで桑田の一物を本体と分離させた…!


    ゴスロリ「私、『ナッツクラッカー』の異名も持ち合わせておりますの」フフッ


    桑田「ぁ…アポ……」ピクピク


    舞園「っ!?」




    勝てない!


    気付くのが遅かった。
    コイツは今までの喰種とは一味も二味も違う!
    対峙した瞬間、敗けが決まっていたのだ。


    舞園(AAレートとSレートでこれだけ差があるなんて…)


    舞園の眼は死んでいた。

    もう死ぬことは抗えないと察知したのだろう。

    静かに、瞳を閉じた。



    ゴスロリ「あら、諦めが宜しいですわね。
    良いでしょう!先に貴方からあの世へ送って差し上げますわ♪」



    舞園(ごめんなさい皆さん、私達はもうダメみたいです。最後にら班全員でカラオケやりたかったな…)


    そして閉じた眼に浮かんでくるのは、苗木だった。


    舞園(えっ、何で苗木君が?)

    舞園(・・・あぁそっか。私、彼の事が)


    ゴスロリ「死になさい!!」ヒュバッ!


    桑田「ま…ィぞノ・・・チャ」




    舞園「さよなら…」ツゥ



    舞園(皆)










    ガッキイィィ……ィン



    舞園「・・・え?」


    ゴスロリ「何!!?」

    桑田「!?」



    突如、何者かの赫子によって舞園への攻撃が防がれた。






    豚神「全く、世話が焼けるな。お前達は」
  135. 144 : : 2016/10/23(日) 03:17:42
    流石にこれ以上は自分もダメージを受けかねないので、桑田のアソコはこのままにしておきますね。

    ※本物の「ナッツクラッカー」を知りたい人は『東京喰種:re』をお買い求め下さいm(_ _)m
  136. 145 : : 2016/10/23(日) 09:44:35
    豚神くんイケメン!
  137. 146 : : 2016/10/23(日) 13:02:29
    舞園「と、豚神…クン」ググッ

    桑田「ぁ…ぁぁ…」ピクピク


    豚神「…いや、済まない。謝るのは俺の方だ。俺がもっと早くに来ていれば…!」チッ


    惨状を目の当たりにし、口から出るのは謝罪の言葉。
    自分の判断を、甘く見積もった結果がこれだ。


    この二人にSレートは早すぎた。

    そう思うのが遅すぎたのだ。



    豚神(俺がもっと、しっかりしていれば…)

    豚神(いや、考えるのは後だ。今優先すべきは二人の、特に桑田の応急処置!)



    豚神「左右田!受け取れ!」グイ,バッ

    舞園「ぅ、」


    赫子に貫かれる間近だった舞園を引っ張りだし、左右田に投げ渡す。


    左右田「わっ!? とと! ぁ、危ねーなテメェ!女の子はもっと大切に扱え!」


    豚神「お前はそこで二人を護りながら桑田の処置だ!急げ!」


    左右田「ハ,ハァッ!? ぉぉ俺、治療なんかした事ねーぞ!」


    豚神「応急処置で構わない!」

    豚神「俺達は喰種の再生力を継いでいる!赫包さえ直せば、後の大概は自然治癒で何とかなる!」

    豚神「クインケいじりが得意なんだろ!?それと同じだ!」


    左右田「ク,クインケとお前ら(Qs)を一緒にすんなって!」


    豚神「良いからさっさと取りかかれ!!」


    左右田「ハ!ハイィィーー!!」シュババッ


    豚神「それから、そこに転がっている汚物も回収しとけよ!」

     
    左右田「オ,汚物ってお前コレ…」

    左右田「桑田のアレじゃねーかよーー!」


    豚神「回収するだけで良いんだ!頼む!」


    左右田「わ、分かったよー!」ギュムッ

    左右田「ッヒィ! キモチワルッ!」ササッ


    豚神(これで良い。左右田の実力ではこっちでの仕事は無理だ)



    左右田が渋々治療に取り掛かったのを見て、目の前で余裕をかましている女を睨む。


    ゴスロリ「あらヤダ。私何かされるのかしら?」


    豚神「そうだな。取り合えずお前をコクリアに送ってアイツらがされた事の数十倍の痛みと苦痛を与えてやる」


    ゴスロリ「おぉ怖い。ところで1つ聞きたいことがあるのですが…」


    豚神「何だ?手短に頼むぞ、俺には時間がない」


    ゴスロリ「では早速・・・」

    ゴスロリ「あそこで巻かれている豚…いえ、チャーシューがここを教えたんですの?」


    従豚「!」ビクッ


    そこには、縄でしっかりと縛られて身動きも取れない従豚(山田)の姿が。

    (本来なら左右田が見張るのだが、今は治療中なので一人になっている)



    豚神「あぁそうだ。お陰で簡単にお前の居場所を突き止める事ができた」


    ゴスロリ「そうですか。して、従豚?」


    従豚「」( ̄ω ̄;)汗ダラダラ


    ゴスロリ「な~に敵に負けて捕まってオマケにこっちの居場所伝えてやがんだコラーー!!」


    従豚「ヒィィィィーーー!!!
    お許しを、セレス殿ーー!!」Σ(゜Д゜)デブテブデブ


    豚神「ほう、貴様はセレスと云うのか」


    セレス「な・ん・で敵に名前教えてンだ山田ーー!!」


    山田「セ,セレス殿も隠しておりませんぞー!」


         ワンヤコンヤ,アーデナイ,コーデナイ


    豚神「・・・」

    豚神「行くか」ズアァ
  138. 147 : : 2016/10/23(日) 16:07:29
    フッ

    セレス「!」ガキィィン!
      

    豚神「チッ、先手必勝とはならなかったか」


    セレス「あらあら、レディ―の会話を遮るなんて、とんだ世間知らずがいたものですわね」
      

    豚神「喰種の会話を最後まで聞く義務がどこにある。それに…レディ―と言っても片方はブタ…」
     

    セレス「テメーも対して変わんね―ダローが!」ブンッ


    左右田(やっぱり言われたよ)


    豚神「チッ、…まぁ良い。時間が無いんだ」

    豚神「こんな事で時間を割くのは無意味だ」


    セレス「あら、それに関しては同意見ですわ」


    豚神「…何に対しては意見が違うんだ?」ゴゴゴ


    セレス「さぁ?なんでしょう」フフフ
     

    バチバチ!


    何でコイツらこんな仲悪いんだよ!
  139. 148 : : 2016/10/23(日) 20:10:52
    セレス「ほらッ、そこォ!」ビュン


    豚神「ぅ、ぐぅ!」ザザ,ガン!


    ドダダダダ!


    セレスが放つ攻撃を豚神が辛うじて防ぐ。
    端から見ている分には豚神が押されている。


    セレス「ふふふ。確かに、大口を叩くだけの事はありますわね。この私がこれだけ打ち込んだというのに未だ無傷とは」

    セレス「貴方、私の盾になる気はなくって?」


    豚神「ほう、光栄だな。だが貴様とは反りが合わん。それも盾だなんてまっぴら御免だ」


    セレス「あら残念。まぁ確かに豚がもう一匹増えるのは私の衛生上避けるべきなのやもしれませんね」


    豚神「何を言うか。豚は綺麗好きだぞ!」ビシッ


    山田(えっ?今拙者、何気にディスられた?)



    セレス「ですが、そろそろ貴方も理解してきた筈ですよね?」


    豚神「何をだ?」


    セレス「貴方と私の力の差です」


    豚神「…」


    セレス「私の赫子は鱗赫、対して貴方は甲赫。相性としては(貴方にとって)最悪」

    セレス「攻撃面で優れた鱗赫は云わば矛のようなモノ。防御面で優れた甲赫は云わば盾のようなモノ」

    セレス「矛が盾に勝つのは当然としても、盾が矛に勝つのは有り得ませんわ」


    豚神「フン。見た目を取り繕って綺麗にしても、所詮中身は喰種か」


    セレス「…何ですって?」ピクッ


    豚神「韓非子の故事成語に、矛盾ということわざが有るのを知らないのか?」


    セレス「舐めないでくれます?そのくらいの一般常識、馬鹿喰種でも知ってますわ」

     
    山田(えっ?拙者知らねぇ!)カビーン

    左右田(何だ今の説明、日本語か!?)


    セレス「成程。つまり貴方はこう言いたいんですね?」

    セレス『あの話では商人が自慢の盾と矛を持ち上げすぎて説明に食い違いが起きた。』

    セレス『困った商人はその盾と矛をぶつけ、どちらがより優れているかを図ってみた』


    セレス「『つまりこの話では、矛が勝つ可能性、そして盾が勝つ可能性が等しく存在する』、と仰りたいのですね」


    豚神「そうだ」


    セレス「アホらしい。馬鹿は貴方ではなくって?」

    セレス「それは互いの優劣を付けるための勝負に過ぎない」


    セレス「実戦では防ぐことしか出来ない盾に勝機なんか存在しなくってよ。何度阻まれようと、攻撃が当たるまで続ければ良いのです」

    セレス「こんな風に、ネッ!」シュゴォ!


    豚神「ッ!」ババッ


    ガンッ!


    セレス「あら?」


    左右に広げていた赫子を自分の前方に持ってくる。その状態で赫子を絡ませて密の高い「盾」を作り出す。


    セレス「あらあらあら。わざわざ体現してくださったの?」


    セレス「では、盾しか持たない敗残兵が矛を持った后妃に負ける様を、その身をもって知りなさい!」ヒュババババッ



    セレスが持てる5本全ての赫子を豚神の盾に向かって突き立てる。

     


    『ゴスロリ』の赫子はただの鱗赫ではない。

    本来の喰種の赫子であれば、「切断」 「防御」 「貫通」 と云う3つかそれ以上の役割が備わっている。

    しかし彼女の鱗赫は切断と防御の機能が弱い、
    特に防御に関しては無きに等しいレベルだ。

    それなのに彼女がSレート級の喰種であり、【アオギリ】の幹部となれる理由


    それは他でもない、貫通が異常なまでの破壊力を有するからである。


    彼女の「突き」の前では、赫子も発泡スチロールも等しく脆い。




    セレス「私の攻撃を受けるということは、死んで構わない、と同義だと思いなさい♪」



    豚神を護っていた盾は、あっさりとぶち破られた
  140. 149 : : 2016/10/24(月) 19:28:34
    えっ?何これ。たまたま見つけたやつがとてつもなく面白いんだけど。
    とりあえずメッチャ期待だーーーーーーーー!
  141. 150 : : 2016/10/26(水) 21:43:35
    >>149

    期待有り難いっす( ´∀`)

    そして読者が一人でも増えてくれたら、書いてる身としてこれ以上嬉しい事はないですね。
  142. 151 : : 2016/10/26(水) 21:43:41
    左右田「ト,豚神!」

    舞園「豚神…クン」


    セレスの赫子は、豚神のソレを突き破って深々と刺さっている。


    セレス「うふふ。串豚の出来上がりっと、」グイッ

    セレス「…あら?」ググイッ


    セレス「ぬ、抜けない!何で!?」グイー!


    舞園・左右田「「??」」


    刺した赫子が何かにつっかえたみたいに取り出せない。



    豚神「当然だ。そういう風にしてあるのだからな」


    セレス「なっ!?」

    舞園・左右田「「豚神(君)!!」」


    豚神「五月蝿いぞ、喚くな」


    セレス「貴方、何故…」

    豚神「生きているのかだと?」


    盾の後ろにあの巨体が無事でいられるだけの空間は存在しないはず。


    セレス(一体どうやって逃げた!?)


    豚神「答えは簡単、穴を掘ったからだ!」


    セレス「は?」


    豚神「お前が貫通系の攻撃が得意なのは知っている。だからわざとそういう状況に持ち込ませ、俺を視界から外させたんだ」


    豚神「その時に赫子で穴を掘り、その中に身を隠しただけだ」


    セレス「そうですか、では赫子が抜けないこの状況については…」


    豚神「大方検討はついているだろう。貴様のに俺のを絡ませて抜けないようにしたんだ」


    セレス「やはりそうでしたか」


    左右田(なんかエロい!)

    山田(俺のを…絡ませて、か・・・悪くない!)イケボ


    舞園(考えてる事が大体分かるんですよね、エスパーだから)ハァ,ハァ




    セレス「では、私の敗けですわね」


    左右田(え?)

    山田(え?)


    セレス「どうぞ、一思いにやってください」


    豚神「ほぅ。随分と潔ぎが良いな」


    セレス「敗けを宣告されて足掻くほど、惨めな性格ではなくってよ?」


    山田「ちょちょちょ!ちょっと待たれよセレス殿ーー!!諦めが良すぎますって!!」

    山田「それじゃあ拙者どうすれば!ってかCCGに復讐するのでしょうー!?それはどうなさるんですかー!」


    セレス「お黙りなさい!」


    山田「」シーン


    左右田「ってマジで黙るんかい!?」


    セレス「これ以上やっても敵いませんわ。どれだけやっても結果は同じ…」

    セレス「なら、最後は美しく散りたいものです。貴方もそう思うでしょう?」


    山田(いえ全く!)


    セレス「そうでしょう。ならばここは黙って立ち去るのが本当の美!」

    セレス「ならば!望んでこの仕打ちを受けましょう!」




    豚神「話は済んだか?」


    いつの間にやら、豚神が絡ませている以外の赫子を肩甲骨から生やしていた。


    セレス「えぇ、構いませんわよ?」



    豚神「なら、ここで終わりだ!」ダッ



    標的に向け、止めをさしに掛かる。
  143. 152 : : 2016/10/27(木) 01:56:36


    セレス(かかった!)


    豚神が疑いもなく襲い掛かる。が、セレスは表情に出さないながらも内心は当たりくじを引き当てた時のような喜びがあった。



    セレス(残念でしたわね。私にはまだ一本残されていますわ!)ググッ


    それはただの強がりではない、ホントに動くのだ。



    あの時。
    赫子を使って攻撃した時、セレスは敢えて1つだけ残しておいた。

    そして今はソレを、あたかも抜けないように偽装している。


    当然、こういった想定外を想定しての事だ。


    セレス(貴方が油断して攻撃したが最後。手元に武器が無くなったところで奇襲をかけますわ!)





    そうこうしている間に、豚神の赫子は徐々に距離を詰めてくる。


    セレス(まだですわ。手の届く範囲になってから…)




    行動開始まで残り・・・





    1M



    セレス(今ですわ!!)バッ‼


    動くのに邪魔であろうトレードマークのゴスロリをものともしない華麗な動きで、直前まで迫っていた凶器を躱した!



    セレス「ここからは私のターンですわ!」
    豚神「悪いがそれはない」


    セレス「!? なっ?!!?」


    ズドン!


    セレス「カハッ!」


    フラッ,

    ドサッ


    力を失ったセレスは、自分が作った紅い水溜まりに崩れ落ちた。


    豚神「残念だが、嘘を造るのは俺の方が一枚上手だったな」


    勝者、豚神
  144. 153 : : 2016/10/28(金) 22:53:40
    No.1683 豚神白夜(20)  

    Rc値:3410~4550
    タイプ:甲赫 赫子:4本

    日向班所属(Qs)
    2008年入社、現在の階級は上等。


    アカデミー74期生の次席。
    日向と同じく班の最年長者としてチームを引っ張る大黒柱。見た目に反して俊敏なので、(左右田二等からは)「動けるデブ」等と云われている。口が悪い割りに頭の回転が速く責任感も強いのでチームメイトからは意外と信頼されている


    戦闘スタイル
    高いRc値を記録しているが、頭を使った闘いも得意とするためチームプレイにも向いている。
    赫子は攻撃的だが、範囲が狭いために防御して隙を伺うか、近くまで詰めるといった事をしなければならないので本人からは不満の声が上がっている。
  145. 154 : : 2016/10/28(金) 23:18:11
    豚神「…終わったぞ」ガシャ


    標的の撃破を確認し、左右田 舞園 桑田がいる隅っこに声をかけた。


    左右田「ス,スゲーな豚神。Sレート相手に圧勝じゃねーかよ!」


    豚神「フン、当然だ」

    豚神「それより、桑田の容態はどうだ?」


    左右田「あー、微妙だな。…悪くはねぇ。ただ、良くもねぇ」


    豚神「やはりダメージがでかすぎたか」


    この時ばかりは流石の豚神にも悔しさの色を隠せない。

    だが、それでも己の役目を忘れない。
    今度は舞園に向き直る。


    豚神「舞園、お前はどうだ?」


    舞園「ダ,大丈夫…デス」ハァ,ハァ


    豚神「済まない、喋れる状態じゃなかったな。ゆっくりしていてくれ」


    舞園「ハァ,ハァ」コク


    豚神「左右田、二人を頼む」

    豚神「俺は『ゴスロリ』を縛ってから救急班を要請する」


    左右田「オッケ、任せろ!」





    ???「悪いけど、それはダメだから」


    舞園・左右田「「!!?」」

    豚神「誰だ!?」バッ!



    振り返った先、そこには軍服姿の少女と思われるのがマスクを付けて佇んでいた。



    ???「ぁ、えっと…名前を言えば良いのかな?こういう場合って」


    戦刃「戦刃むくろ。【アオギリの樹】の幹部です」
  146. 155 : : 2016/10/29(土) 17:21:44
    ー日向サイドー

    向かって来る敵は全部倒した。

    それはもう追加されて来ない雑兵と、足場に転がる幾百もの屍体が物語っている。


    日向「クソッ、だいぶ時間を喰ったな。速く皆のところに行かないと!」


    ここに突入してから一時間半が経過した。
    この時間なら、既に誰かが『ゴスロリ』と衝突している筈。

    今になって自分の選択ミスに気が付き、日向は焦っていた。


    日向(左右田には豚神が付いてるから良いとして、問題は舞園と桑田だ)

    日向(アイツ等の実力じゃ未だ『ゴスロリ』には勝てない!あそこはこの二人を別々にして九頭龍とペコ山のどちらかと組ませるべきだったんだ!)クッ


    後悔先に立たず、転ばぬ先の杖
    とは正にこの事だ。

    二人はもう重症を負っているのを日向は知らない。


    それでも、望みをかけて脚を一歩前に踏み出すー




    ブンッ!



    ーかに思えたが、その前に再び攻撃が襲い掛かる。



    日向「またかよ!?」サッ


    バキバキバキッ!


    それを難なく躱し、反撃を加える。


    日向「オラァ!」ビュン



    Qsの班長とだけあって、日向創は他の誰よりも赫子に対する対処が巧い。

    この一撃も闇雲に放ったのではなく、攻撃してきた時の角度、勢い、それに赫子の種類までを見切った上での反撃だった。


    当然、それだけ分析した上で彼の強力な一撃ならば、多少強くても生き残れはしない。



    ???「お!中々良い反応だね~」ブン


    バチィィ!


    日向「何!?」


    しかしそれは、いとも容易く弾かれたのだ。



    ???「ふ~ん、アンタが噂に聞く『黒狼』ね…」


    日向「…それがどうした?」

    日向(何だコイツ、全身に包帯を結んでやがる。コレで顔を隠してるのか?)


    ???「アハッ!思ったよりも楽しめそうだな、と思って!」

     
    日向「そうかよ」ザリッ


    日向は腰を落とし、相手を睨み付ける。


    日向(コイツが何者なのかは知らねーけど、大物ってのは間違いなさそうだ)

    日向(邪魔になる前に、ここで消す!)
  147. 156 : : 2016/10/29(土) 19:29:09
    ー苗木・霧切サイドー

    葉隠「ぁ、うぅ…」


    事も終わりを迎え、苗木は未だ意識が回復しない『ドレッドホームレス』に銃を突きつけていた。

    無論、トドメをさすためである。


    苗木(大丈夫だ。怖くなんかない。僕がこの人を殺めることで、この先大勢の人が助かるんだ!) 


    その行為を前に、苗木は心を落ち着かせようとしていた。

    昨日の今日で初めて喰種討伐を目撃したと言うのに、一日も経たない内に今度は自分で討伐するのだ。

    普通の人間ならまず無理だろう。


    しかし苗木は違った。

    この状況の中で、自分の意思を強く持ち続けている。



    苗木(僕は逃げないと誓った!
    誰が何と言おうと、これが正しい答えだって僕自身が見出だしたんだ!)


    苗木に迷いは無い。

    その事は近くで見ていた霧切にも分かった。


    霧切(強いわね。彼の性格なら殺すという行為には強い抵抗が有る筈なのに)


    苗木が撃てない場合に限って、自分が代わりに殺ろうと思っていた彼女だったが、どうやら心配無さそうだ。






    苗木「じゃあ、いくよ」ガシャ


    覚悟を決め、眼をしっかりと開き、銃を握っている手に神経を集中させる。


    苗木「コードネーム『ドレッドホームレス』、討伐かn 」

    苗木「うっ!?」ズキィ!


    霧切「苗木君!?」


    突如、脳に激しい痛みが生じる。

    それは今まで体験してきた頭痛を一度に受けたかのようなモノだった。


    霧切「苗木君、大丈夫!」


    苗木「ぅ、うん、問題ないよ。立ち眩みみたいなやつだからすぐ直るさ」


    そうは言っても苗木の顔は青ざめ、うっすらとだが汗も滲んでいる。

    やせ我慢してるのは一目瞭然だ。


    だが苗木がそこまで言うのだから、霧切も深くは聞かないようにしておいた。


    苗木「これぐらいで音を上げてたら立派な捜査官にはなれないし」スッ



    そして立ち上がり、再び銃口葉隠に向けた。

    今度は痛みが生じる前に決めるようだ。



    苗木「僕は…強くならなくちゃいけないんだ!」ガシャッ



    ドンッ!



    態勢を立て直したと同時に発砲。

    狙いは甘くなるが、苗木の腕とこの距離なら問題ない。

     


    放たれた1発は、葉隠の頭を見事に撃ち抜くー



    事は出来なかった。




    ???「させんぞおおおおお!!」グオッ



    ドドォン!



    苗木「うわっ!?」


    霧切「クッ! 今度は何!?」



    隕石が落ちたかのような強い衝撃。

    上から降ってきた『ソレ』は、コンクリートの地面を跡形もなく潰し、小さなクレーターまで出来ていた。


    銃弾はその衝撃の壁にぶつかり、葉隠に届く事はなかった。



    もうもうと立ち上がる粉塵の中から、一人の大男が姿を現した。


    苗木「っ!?」ダラッ


    まるで野獣。


    粉塵と共に、今まで感じたことのない嫌なオーラが苗木の背中をぐっしょりと濡らした。




    ???「済まんのお!お主らに恨みはないが、CCGにはでっけぇ恨みが有るんじゃ!」


    ???「ここは儂に免じて…大人しく殺されろやぁぁぁーーー!!!」グオォォォ!




    苗木「うっ!」クラ


    霧切「あれは…まさか、『虎䝞』!!?」



    【vs虎䝞】 SS+レート
  148. 157 : : 2016/10/29(土) 20:06:27
    コードネーム「虎䝞」


    【アオギリの樹】幹部
    第一級戦闘禁忌喰種

    SS+レートの甲赫 赫子:3→2本
    Rc値7000~9120

    【アオギリの樹】を構成する幹部の中で、最も危険視されている喰種。
    普通の甲赫の何十倍もの強度を誇るため、通常のクインケでは余程の事でない限り突破するのは不可能とされている。
    また、その体躯に似合わずスピードもある。
    攻撃面に関しても油断は大敵だ。硬さと速さを活かし、尚且つ太いので避けづらい

    討伐には上等以下の捜査官を除き、最低でも2人以上の特等捜査官を含めるべし。

    ※この喰種が赫者化したのであれば、近くにいる捜査官は速やかにその場から撤退するのを望む。
  149. 158 : : 2016/10/29(土) 22:14:20
    苗木「っ!」ダァン


    虎䝞「ぬ?」


    ガッキイィィィン!


    霧切「苗木君!?」


    苗木(かっったぁぁぁぁ!!何だコレ、凄く硬い!!)ビリビリ


    虎䝞「…ほう?儂に単独で挑んで来るとは。命知らずが居たもんじゃな」

    虎䝞(二刀流か。それにこの迅さ。・・・まさかな)


    虎䝞「お主、名をなんと申す」


    苗木「苗木。苗木誠だ!」ググッ


    虎䝞「苗木か、良い名だな」


    苗木「そりゃどーも」ギリギリ

    苗木(コイツ、全く動じてない)



    虎䝞「して苗木、儂が誰だか分かって刀を向けておるのか?」


    苗木「さぁね、先日入ったばかりだし。だから教えてくれると助かるな~なんて」ギリギリ


    虎䝞「ガッハッハ!そうか、儂を知らなんだ!」

    虎䝞「じゃあ耳の穴かっぽじってよく聞け苗木誠!儂は『虎䝞』!【アオギリの樹】で幹部を務める漢じゃーーー!!!」グオッ!

    ブオンッ


    ただのなぎ払い。それだけで剥き出しの岩盤は捲れ、苗木は吹っ飛ばされる。


    苗木「クッ!」スタッ


    苗木(何て力だ。それにあの余裕…自信無くすな~)ハハッ



    霧切「止めなさい、苗木君!」


    虎䝞「ぬ?」

    苗木「霧切さん?」


    霧切「虎䝞はSS+レートの第一級戦闘禁忌喰種!」

    霧切「『隻眼の王』に従う幹部の中でも群を抜いている!戦っちゃダメ!」


    苗木「SS+…!」


    虎䝞「その女の言う通りじゃ。儂の討伐には特等クラスの人間が複数人当てられてきた。新入りのひよっ子なんぞ幾百来ようが負ける気がせん」


    苗木「…じゃあ、どうしろと?」


    霧切「逃げて!君のスピードならコイツは追い付けないだろうから!」


    虎䝞「確かにのー。迅さに限ったことなら、儂よりもお主の方が全然上じゃろう、悔しいが」


    霧切「だから!ここは討伐を諦めて!逃げるのよ!」

    霧切(貴方はここで死んでいい人間じゃない!)




    虎䝞「ふむ、理にかなっておる。確かに、お主はここで逃げた方が得策だな」



    苗木「は?どこが」ズズ



    霧切「っ!?」


    虎䝞「ぬ!」(言葉、いや、空気が変わった?)


    一瞬だけ、苗木が苗木でなくなった…気がした。


    苗木「霧切さん、悪いけど僕は逃げないよ」


    霧切「ど、どうして!?」


    苗木「後悔するからだ!」


    霧切「!」


    苗木「霧切さん、まだ走れないんでしょ?」


    霧切「ぇ、えぇ」


    苗木「だったら僕は逃げないよ。誰かを見殺しにする後悔なんてもうしたくないっ、て言ってたのは君じゃないか!」


    霧切「!?」


    苗木「僕だってそんな事したくない。
    後悔なんてしたくない!
    恐怖に屈したりなんかしたくない!」


    苗木「だから、君も連れて戻るんだ!皆の元へ!」


    霧切「・・・」

    霧切「…そうね。貴方にあんな思いはしてほしくない」


    苗木「霧切さん!」


    霧切「ごめんなさい苗木君。逃げていたのは私の方だったのね」


    霧切「私は待ってる。だから…勝つのよ!」


    苗木「ハハッ、了解!」ズッ,ダアァァーン!


    苗木「ハアァッ!」ブンッ


    ドガッ、ギイィィィィン!
  150. 159 : : 2016/10/30(日) 09:22:04
    虎?って多分2のあの人だよね?名前カッコイイなwww
    とにかくこの2人の戦いは想像してなかったから楽しみだわ
  151. 160 : : 2016/10/30(日) 18:44:23
    虎䝞「ぬぅっ!」バッ!

    苗木「ヴァッ!」ジャァッ

    ドンッ!
    ガギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ!


    苗木「グアァ!」

    ドンッ!バンッ、ドドン!ドガガギガ!


    虎䝞が盾を展開。そこを苗木の刃が容赦なく襲い掛かる。


    苗木「ヴァァァ!」


    虎䝞(此奴!なんという迅さ!先程のは全力でなかったということか!?)

    虎䝞(…いよいよ、『繋がり』が出てきたぞ)



    苗木「ッ…」バッ


    キィィ……ッ



    虎䝞「ぬ? 音が止んだ?」


    それまでやかましかった音が突然消え、赫子に伝わる衝撃も無くなった。

     

    虎䝞(成程の。儂のスタミナ切れを待っとるんじゃな?まだ余裕があるとは言え、ずっとこうしておったらいずれ底がつく)

    虎䝞(かといって、展開しようもんなら目ん前で構えとる彼奴の格好の餌食…)





    虎䝞「あー!もうやめだやめだ!闘いに頭を使うなんざ儂らしくもない!」

    虎䝞「もとい殻に篭っているだけなんざ漢でもないわい!」


    虎䝞「ここは正々堂々勝負じゃ!」ズアァ


    ドンッ! ブワアァァ


    体を覆っていた赫子を更に太く、大きくし、その状態で展開、そして押し潰す。


    相手に反撃の隙を与えない攻守切り返しの業。



    ・・・なのだが、



    苗木「やっと開いたね」サッ


    虎䝞「何ッ!!?」


    上から苗木が降り立った。

    どうやら思考を先回りし、展開と同時に高くジャンプしたようだ。


    そしてそのままがら空きになっている本体に追撃を加える。


    苗木「ヴァァァ!!」ガギギガギギ!

    虎䝞「ヌ、オォアオオ!」


    斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬


    ようやく懐に入った。

    今度は遮るものは何もない。焦らず討伐にかかる。 

    ・・・が、


    苗木(ッ! コイツ、体まで硬い!)


    傷がどれも浅い。これでは喰種の再生力だとすぐに完治してしまう。


    虎䝞「ヌッ、オォ」ググッ


    苗木「!」



    ただの喰種なら、苗木が連打を繰り返している間に反撃など出来ない。

    それこそ先の闘いに敗れた葉隠のように身体をズタズタにされるか、或いは死ぬかしかない。

    要するに、連打を繰り出すと云うこと自体が苗木の勝ちパターン。

    一度この「波」に呑み込まれた喰種には敗北の二文字しか与えられてこなかった。


    しかしSS+相手では、そのパターンも必勝とはならないのだ。


    虎䝞「なんのこれしきッ!」ブオンッ!


    苗木「ふっ、と」ビュッ,ストッ


    虎䝞「何ッ! 儂の腕に!?」


    しかしそれは苗木も承知していた事。虎䝞の腕に飛び乗り、すぐさま次の攻撃へと繋げる。


    苗木(いつもの連撃型じゃダメだ!もっと。もっと一撃一撃に力を込めないと!)


    苗木「オォア!」グン

    苗木(先ずはこの腕を斬り落とす!)


    ザン!ザザン!


    苗木「よし!貫いた!」


    虎䝞「ぐぅっ!ちょこまかと…」ブシュッ


    虎䝞「めんどくさいわーー!」ブンッ!


    苗木「おっと」ヒョイ


    また振り落とされる。

    が、手応えは感じた。


    苗木(今のを更に強く、速く出来ればコイツを倒せる筈だ)


    虎䝞(此奴、先日入ったばかりだと言うがこの動きは最早特等クラスじゃな)

    虎䝞(だとすれば…)


    苗木(・・・やっぱりだ。連撃で攻めたところの傷は殆ど治ってる…。だけど今付けたところのは再生出来ていない。)

    苗木(なら次も今ので行こう。けど攻撃のみに専念してたら負ける。あの威力だ、かすっただけで意識を持っていかれそうだし)


    虎䝞(何にせよ、先ずは此奴を仕留めてからじゃ!)グッ


    苗木(なんとしても、コイツに勝つ!)グッ


    苗木・虎䝞「「ウオォォォ!」」ダッ


    ドオォン!
  152. 161 : : 2016/10/30(日) 22:51:18
    虎䝞「憤!」

    苗木「」バッ,タタッ


    虎䝞「砕!」

    苗木「」ヒュッ,トトッ


    右に、左に、縦に上に下に斜めに。

    建物の壁を利用しながら立体的に戦う苗木に虎䝞は苦戦を強いられていた。


    虎䝞(ぬぅ。なんとも猪口才!)

    虎䝞(迅いだけでなく身体が柔らかいのもまた猪口才!)


    事実、虎䝞の攻撃はまだ一度として当たっておらず、(ダメージが少ないとはいえ)押されている立場にある。


    虎䝞(もしもの事を考え温存しておきたかったが、そうも言っておられんか…)


    時は金なり。 思い立ったが吉日。

    たった今思い付いたのを行動に移す。


    虎䝞「怒オオオオオオオ!」ブワッ


    苗木「!」


    背中に力を込め、もう1本赫子を出現させた。

    しかもそれだけでなく、体の部位の所々に今あるモノとは違った赫子も巻き付いている。




    苗木(赫者…いや、半赫者か)


    虎䝞はそこらにいる雑魚とは異なり完全な赫者になることが出来る。

    にも関わらず、標的は半赫者の姿で留まっている。
    という事は…


    苗木「舐めてるよね、完全に」


    虎䝞「ガッハッハ!特等クラスでも一対一の状況ならばこの姿を見せるのは限られるのじゃぞ?」

    虎䝞「新兵に見せるのは癪だが、こうでもせんとお前さんには届かんからの」


    苗木「そうかい、そりゃどーも」

    苗木(ま、赫者になられるよりはマシか)


    強がってはいるが、こうなると不利なのは苗木の方だ。


    苗木(やっぱりあの赫子の防御力は厄介だ。あの姿になってから数は増えるし太さも増した)


    目測だが、虎䝞の赫子の直径は苗木の腹の長さと同じくらい太い。

    つまりマトモに喰らえば一撃で体を2分割されるわけだ。


    苗木(加えて身体を覆う赫子の盾。あそこに撃っても攻撃は通らない)

    苗木(スピードも絶対増してるだろうし)ハァ


    攻撃箇所の限られた身体に範囲とスピードとパワーが上がった赫子。

    近接戦で勝つ確率が一気に下がった。


    苗木(だったらこっちも出し惜しみなんかしてられないよね)スッ


    腰に隠してあった穂幸と靄慈、それに霧切から借りている輝夜に手を伸ばした。


    苗木(カムクラ特等から出来る限り弐式二刀流は見せるなって言われてるけど…)

    苗木(こんな事態だし、全力でやっても良いよね?)



    ~回想~ 

    入隊してすぐのお昼休みの食堂


    日向「おっ、いたいた。苗木ー!」


    苗木「ん?どうしたの日向くん」


    日向「これからの任務についてなんだけどさ、悪いんだけど銃と刀は一緒に使わないでくれるか」


    苗木「えぇ!何で!?」


    日向「シー! 声がでかい!」ヒソヒソ


    苗木「あ、ごめんね」


    日向「伝え方が悪かったな。一人の相手に両方いっぺんに使うなってだけで、別に封じたりする訳じゃないから安心しろ」ヒソヒソ


    苗木「それにしても何だってそんな事…」ヒソヒソ


    日向「上からの命令、つってもイズルの奴がそうしろって言ってきたんだけどさ」ヒソヒソ


    苗木(イズルって云ったら確か…)

    苗木「えっ!?カムクラ特等!日向くんそんな呼び方で大丈夫!?」ヒソヒソ


    日向「あぁ、言ってなかったけ?俺とイズルは血を分けた兄弟なんだ」ヒソヒソ

    日向「ちなみに俺が弟な」ヒソヒソ


    苗木(えっ!マジで!)ガビーン


    日向「まぁそれは良いとして、さっきの話なんだけど」


    苗木(日向くんは怒らせないようにしないと)


    日向「『これからお前はこのCCGを支える上で重要な存在になる。
    最初の内から切り札を見せると、それが噂になって後々面倒な事になるから慎め』ってさ!」


    苗木「ぅ、う~んそっか。確かに慣れないうちから対策立てられるのはちょっね…」

    苗木(それに、カムクラ特等から期待されてると思うと何だか嬉しいな~♪)


    日向「まぁどっちを使うかはお前の自由だけど、基本なんでも無い相手に弐式二刀流は見せるなって」 


    苗木「うん、分かった」コク


    日向「あ、だけどもし万が一ヤバイ状況に出くわしたら使って良いとさ」

    日向「ついでに100%倒せるって分かった相手にもだってよ」


    苗木「そっか。良かったよ、そう言ってくれて」


    日向「ま!何にせよ、アイツはお前に期待しているみたいだから頑張れよ!」トン


    苗木「うん!有難うね、日向くん!」


    ~回想終了~



    苗木(弐式二刀流も、『全速力』での戦闘も、まだ実戦で試していない)

    苗木(だけど…)


    苗木(ああでもしないと、コイツには勝てない)チャキ


    次なんてない、目の前にいる喰種に勝たなければ。


    苗木(迎え撃つ!今出来る、僕の全てを持って!)グググッ


    ドダアァァァーン!!!


    【vs虎䝞】 SS+レート『半赫者』
  153. 162 : : 2016/10/31(月) 21:34:56
    葉隠のとき両方使ってなかったっけ?
    あれはノ―カンなの?
  154. 163 : : 2016/10/31(月) 22:08:58
    あの時は必ず仕留められるって分かっていたから両方見せたという事になってます。

    解りづらくてスミマセン。
  155. 164 : : 2016/11/01(火) 15:58:39
    久々に読めた
    弐大と苗木のバトル面白い続き楽しみ
  156. 165 : : 2016/11/01(火) 20:59:57
    ま、まだ弐大ときまったわけじゃ・・・(汗)
  157. 166 : : 2016/11/01(火) 22:55:18
    156↑
    そうですよね 誤ったしまったガーΣ(`・ω・Ⅲ)ーン
  158. 167 : : 2016/11/02(水) 02:45:23
    つか弍○相手にこれって、苗木君普通にSSランクくらいあるってことでしょ?
    つよすぎじゃね(笑)
  159. 168 : : 2016/11/04(金) 07:55:07
    ー霧切視点ー

    苗木が膝をくの字に曲げ、腰を落とした。

    銃は(まだ)使わず、あくまで近距離で勝負を仕掛けるようだ。
      
    しかし霧切はその行為が危険だと判断した。


    霧切(ダメッ!今の虎䝞に当たりに入るなんて無謀すぎる!ここは距離を取って様子を見ながら…)


    ドダアァァァーン!!!


    霧切(・・・え?)



    霧切が制止を呼び掛けようとする。



    が、一歩を踏み出したと同時に苗木の姿が視界から消えた。


    否、消えたのではなく、苗木が眼で捉えれない迅さにまでスピードを上げたためである。

    彼が『神速』と呼ばれる由縁は、単純なものである。



    それからちょっと遅れて地面を蹴りあげた衝撃音、それに激しく打ち合う音と風を切る音が辺りに響く。
     
    (ここでようやく霧切が苗木の行方を知った)


    霧切の思いは届かず真っ正面からぶつかりに行った苗木だが、その光景は彼女が思い描いていたのとは違った。


    力を(半分)解放した虎䝞に、ここでも苗木が圧倒しているのだった。


    いや、「多分」圧倒していると言った方が良いのだろう。


    何しろ、霧切の瞳には虎䝞が理由も無しに血を流しているようにしか見えないのだから―
  160. 169 : : 2016/11/04(金) 22:07:14
    ダンッダンッダダンッダンッダダンッ

    再び繰り広げられる苗木の六面高速展開。

    全力を出した苗木は、先程のとは比べ物にならない迅さと機動力で敵を圧倒していた。


    長年数々の猛者を潰してきた虎䝞ですら、眼で追うのがやっとだった。



    虎䝞「ぬ、ぅぅうおおおーーー!!!」スカッ

    ドダダダダ!


    またハズレ(手応えなし)


    飛び回ってる苗木を撃ち落とそうとするも甲斐なく、逆にそれが終わる前に攻撃されてしまう。



    虎䝞(ぬうぅぅぅ!!捉えられんじゃと!)



    今の苗木は加速するスーパーボールのようなもの。

    おまけに体が小さく柔軟性もあるので、赫子の盾に出来た僅かな隙間から侵入、脱出してしまう。 


    圧倒的な破壊力と防御力で戦いのリズムを作る虎䝞にとって、苗木は最悪とも云える組み合わせだろう。



    虎䝞(じゃが、これで的を絞る事が出来たわ!)


    それでも虎䝞はそこに勝機を見出だしていた。

    事実、苗木は攻めには入ってるものの決定打は何一つ決めていない。


    だがそれは虎䝞も同じ。
    彼の場合(全力でないとはいえ)、決定打どころかまだ一撃も加えられて無いが。



    虎䝞(クッ!流石の儂にも再生力に限界が見えてきたか!)ハァ、ハァ

    虎䝞(ここで赫者化しても、彼奴の迅さの前では無意味!それどころか、先程のように隙を見せて返り討ちにも会うだろうから迂闊には出来んじゃろう)ハァ、ハァ

    虎䝞(しかし、『あのタイミング』で仕掛ければ儂にもまだ勝機はある…!)


    虎䝞(・・・)


    虎䝞(…逃した時の事なんぞ、考えたくも無いけどの)


    いくら頑丈と云っても、生身の肉体に攻撃を浴び続けた虎䝞に心身の余裕は…殆ど無い。


    だが虎䝞は待ち続けた。

    『一発逆転』の可能性を秘めたその『瞬間』を。


    虎䝞(さぁ、来るなら来い!!
    お主の勢いが勝つか、儂の粘りが勝つか、いざ勝負じゃあぁーー!!!)







    ー苗木の心の中?ー

    七海「・・・」

    七海「!」ピクッ


    七海「…来た」
  161. 170 : : 2016/11/05(土) 09:59:08
    七海出た!何が来たのかが気になる~!
  162. 171 : : 2016/11/10(木) 16:55:37
    期待
  163. 172 : : 2016/11/16(水) 20:06:06
    クインケから伝う手応えを感じて、苗木は虎䝞の再生力が落ち始めているのに気付いた。


    苗木(そろそろか…)

    苗木(流石と言うべきか。これほどの硬度とパワーを併せ持つ喰種が居るなんて)


    両刀とも刃こぼれを起こし、見ただけで殺傷能力が落ちているとわかる程だった。


    苗木(でもこれで終わりだ。僕にはまだ銃がある)ガシャ

    苗木(刀が無事でいられる今こそが攻め時)



    弐式二刀流は苗木が独自に編み出したクインケ操法。

    常人離れした迅さとテクニック、それに機動力で喰種を圧倒する。

        銃×2  銃&刀  刀×2

    この3パターンと六面展開を状況に合わせて瞬時に使い分ける。

    それによって相手のテンポと間合いを狂わせるのだ。


    苗木(とは言っても、実戦で使うのは初めてだな。大丈夫だろうか、只でさえ経験も浅くて緊張する…)


    相手はSS+の化物だ。


    苗木(・・・弱気になるなんて僕らしくもない。)


    問題ない、勝つのは僕だ。

    自分にそう言い聞かせ、跳ねながらタイミングを伺う。


    苗木(空いた隙間から銃を向けて一気に撃ち込む!)ガシャッ


    先ずは両手に銃のパターンから。


    近距離で銃×2はリスクが高いのでアカデミーでは滅多に使わなかった。


    苗木(でも虎䝞には両手銃は見せていない)

    苗木(だからこの攻撃に奴は反応が遅れる筈だ!)


    虎䝞相手に苗木は終始落ち着いていた。

    迅さで差をつけ余裕があった、という一因もあるが、それ以上に初の戦闘でいつも通りを実現できる彼の精神力は中々のものだ。


    この選択だって、SS+を前にしてもリスクを負うだけの覚悟がなければ出来ない事だ。



    本来であれば苗木の予想通り、虎䝞は為す術もなかっただろう。


    ―そう、『本来であれば』 だが―




    苗木「ふうぅっ!」ズバッ


    一太刀を浴びせて距離を取る。

    垂直にそびえる壁に着地し、まるで重力なんて関係無いかのように高速で走り、跳び回る。


    その間に刀を手放したかと思うと、

    ―次の瞬間には銃に切り替わっていた。




    苗木(今だ!)ダンッ‼

    そして間髪入れず再び間合いを詰める。


    そして、臆す事無く両手に持った銃を隙間から突っ込んだ!




    苗木「これで終わり…!」

    虎䝞「『この時』を待っとったぞおぉぉぉーーーーー!!!」

    苗木「!??」



    メキバキゴキッ!  
     


    苗木「…ぅッ、あっ・・・」


    苗木「アアアアああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!」




    赫子の間に手を入れた。

    その瞬間、来る筈もない反撃が苗木の右腕を可笑しな方向へと捻じ曲げた。



    苗木(何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で楠で南で難で喃で軟ンデナンデナンナンデナナンデナンデンデ!??)ガチガチガチガチ




    苗木は訳が分からず混乱するばかりであった。



    苗木(どうして奴が…虎䝞があのタイミングで攻撃してこられる!?奴には死への恐怖心が無いのか!?)グググ


    苗木の作戦に間違いは無い。


    今まで圧倒していた相手にリスクの高い新手を魅せる事で心と体に余裕を無くす。

    苗木にはそれを可能にするだけの余裕も、技術もある。


    それを踏まえた上で、この作戦は間違いでは無い。



    しかし、それは同時に『正解でもない』と云う事なのだ。


    無理もない。

    この時の彼は、それを知るための手段を知らなかったのだから。


    虎䝞「やはり迅いな。本当なら両腕を沈めるつもりじゃったが」


    赫子の鎧を解いて、虎䝞がこちらに歩を進めてきた。


    虎䝞「お前さんの戦闘スタイルがどことなく『奴』に似ておるから、まさかとは思っとったが…」

    虎䝞「どうやら合っとったようじゃのぉ」

    虎䝞「ま!勘が外れんで良かったわい!」ガッハッハ!


    高笑いする虎䝞とは反対に、苗木は疑問の方が強かった。


    苗木「どう…して……銃でくると……分かった…」ハァ、ハァ

    苗木(熱い…腕がまるで内側から焼かれているみたいな…そんな感覚だ)ハァ、ハァ



    虎䝞「どうしても何も…弐式二刀流については何度も報告で受けておるからのぉ」



    苗木「ぇ…!?」ハァ、ハァ


    その言葉を聞いて、脳が一瞬だけ停止した。


    苗木(何…で、その言葉がここで)



    苗木の誤算。

    それは、相手が自分を知っていて、自分は何も知らなかった…という事だ。



    虎䝞「苗木…と言ったなお前さん」

    虎䝞「苗木、お主は…『珀豹』か?

    それとも奴の弟子か何かか?」
  164. 173 : : 2016/11/17(木) 18:09:06
    更新待ってました(∩´∀`)∩ワーイ

    珀豹って誰だろう?
    苗木が喰種のときの名前かな?
  165. 174 : : 2016/11/18(金) 20:40:25
    苗木(『珀豹』? 誰だ?)


    初めて聞いたその名には聞き覚えがない。
    赤の他人だ。


    苗木(それよりも気になるのは奴の言葉だ)

    苗木(『弐式二刀流』は僕自身が編み出した戦法。アカデミーでは勿論、CCG内でも僕以外で扱える人間なんてのは聞いたことも無い)


    気付かれぬよう霧切を横目で見入る。

    こちらに気付いてはくれたが、首を横に振るだけだった。



    苗木(ハッタリ?) 

    苗木(…いや違う。事前に知っとかない限り銃で来るとは予想できない筈)

    苗木(アイツは確信が有って言ってる。という事は、最初っから読まれていた!?)クッ


    疑問と後悔と焦りが同時に込み上がり、一段と険しい顔つきになる。



    虎䝞「でぇ!? どうなんじゃ!」

    虎䝞「知っとるのか!? 知らんのか!?」


    痺れを切らした虎䝞が待ちきれない様子でこちらを睨んでくる。
     

    苗木「・・・」


    苗木「仮に知っていたとして、僕をどうするつもりなのさ」


    虎䝞「…連れてゆく。奴には聞きたい事があるのでな」


    苗木「あっそ。 でも残念、僕はその人の事を何一つ知らないぃッ…」ググ

    苗木「ッよ!」ダァン


    脚に力を集中させ、左手だけで立ち向かう。


    苗木(誰が喰種になんか!)

    苗木(幸いやられたのは片腕だけ。脚さえ動けば僕に敗けはない!)
     

    虎䝞の体力も残り僅か。

    本来のやり方はではないが、このままでも勝てると思っていた



    ―だが、事態は苗木が思った以上に深刻だった。
     


    パキッ


    苗木「ぁ……!」グラ


    足を踏み出した刹那、振動で怪我した右腕に押し潰されるような激痛が走り、バランスを崩した。


    苗木(~~~~~~ッ!)ギリッ

    苗木(ただのパンチでなんて威力だッ! おそらく肩まで逝ってる!)クッ


    傷みがひどく、片膝をつく。


    が、その隙を見逃す筈もなく、気づいた時には虎䝞は目の前まで迫っていた。


    苗木(しまッ!)バッ


    虎䝞「憤!」


    赫子での凪ぎ払い。


    崩れた膝を立て直すも間に合わず、左手(深月)で防ごうとする。



    が、


    虎䝞「脆イ!!」グォン!


    SS+相手にパワーで勝てる筈もなく、棒切れを折るかのようにソレは容易く壊れた。


    苗木「うっ!グッゥ!!」


    防御手段を失った苗木は為す術もなく、鉄球の如き破壊力を持った一撃を受け、そのまま一直線に壁へと放り出された。


    苗木「ぅガッ!!」ドゴオォン!


    けたましい音と共に、壁に叩きつけられた。


    今ので腕の怪我に加え、あばら骨も何本かやられてしまった。



    虎䝞「さっきはほぼ賭けみたいなモンじゃったのぉ」


    決して警戒は緩めず、ゆっくり近づきながら自身の戦いを振り返る。


    虎䝞「お主が【始めの頃の『珀豹』】と被っておったから、近距離で銃を発射してくるのは予想がついておった」

    虎䝞(確信は無かったけどの)
      

    虎䝞「普通に弐式二刀流決められとったら、負けていたのは儂の方じゃった」

    虎䝞「チャンスは一回きり。中々にヒヤヒヤしたぞ!」ガッハッハ!



    絶体絶命のピンチ。

    それでも瓦礫から這い上がり、意識を保ち続けていた。 



    苗木「~~~~ァッ、ゥヱ!ッゲナヰ!」グギギギギ


    器官のどこかを負傷したのか、おぼつかない喋りでありながらも、眼は爛々と輝いていた。




    左目が朱々しく染まっていたが―



    虎䝞「ぬっ!?」

    霧切「ぁ、あれは…」


    虎䝞『隻眼!!』



    思い出されるのは先程の戦い。


    彼の中にある喰種としての本能が暴走し、【アオギリ】の下っ端を喰い散らかしていた姿―
  166. 175 : : 2016/11/20(日) 20:54:52
    更新待ってました(∩´∀`)∩ワーイ
    苗木くんまたもや喰種に?
  167. 176 : : 2016/11/22(火) 21:32:15
     
    身体が悲鳴を上げている。

    なのに上半身の感覚が鈍い。



    意識が朦朧とする。

    なのに僕の心が、とてつもなく大きくてどす黒い【何か】に侵されている感覚はハッキリとわかる。


    とても…嫌な気分だ。



    …けど



    苗木「お願い、あと少し。 もう少しだけ、僕に任せてほしい」ニコ


    僕は【それ】を、優しく制する。


    せめて『最後くらい』、自分の意思で―




    苗木「~~~~~~ァ"ァ"!」



    激痛を堪え、走る。


    通常のと比べたら止まって見えるくらいのスピード。

    だけど諦めず、臆す事無く虎䝞に立ち向かった。


    斬!


    虎䝞「ぬっ!?グオォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!」



    その一撃は見事ヤツを貫いた。


    腹に深々と突き刺さったクインケがその証拠だ。



    が、



    虎䝞「儂の勝ちじゃあぁぁぁ!!」



    代わりに、脚をやられた。


    折られたのか、砕かれたか。

    はたまた切断されたのかは分からないが、何にせよ、これで僕に打つ手は無くなった。
     


    枯れた枝を折ったみたいな音が、耳に届く。



    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    その瞬間、苗木に抑えられていた【何か】が何処からともなく溢れ出す。



    ドクドクと溢れでるそれは白い花を黒く染め、まるで苗木に吸い寄せられるかように波をうつ。


    やがてその波は苗木が寝ているすぐ側まで近付いてきていた。



    その数秒後、苗木はその【何か】に覆われていた。


    意識の無い苗木には為す術がなく、かと言って苦しんでる様子でもない。

    ただ静かに、深く寝入ってるだけだ。



    かと思えば、端の方が黒→赤に変化した。

    そしてどんどん色を濃くし、苗木に迫る―





















    七海「《ソレ》は、ダメ」グイ


    ザパァ


    赤い【何か】が苗木に触れる寸前、七海がそこから引き上げた。


    その【何か】は苗木を追おうとするが、


    七海「ダメだから」プイ


    という七海の注意を受け、それはまた何処からともなく消えていった。



    跡には最初と同じ様に、白い彼岸花が視界を埋め尽くしていた。









    七海「・・・」

    七海「…行ったみたいだね」ヨッコイセ


    辺りを確認し、苗木を寝かせる。

    例によって膝枕だ―



    七海「まさか一日で2回もこっちの世界に来るなんてね」

    七海「でもまぁ、0の状態であそこまで弐大くんと渡り合ってたなら、一先ず安心…なのかなぁ?」コテン


    苗木「ぅ…ん」ガサ


    七海「!」ビクッ


    苗木「Zzz」ムニャムニャ


    七海「」ホッ


    七海「・・・・・・」



    七海「…ねぇ。君は、私の事忘れているけど、私はいつまでも覚えてるからね?」


    七海「そりゃあ、忘れられるのは辛いよ?でもね、君が幸せなら私も幸せだから」


    七海「…けどたまに、どうしようもなく寂しい時もあるんだ」


    七海「だからさ!君はその【怒り】を鎮めて、また前みたいに遊ぼうよ!」


    七海「ゲームしたりお喋りしたり、一緒に昼寝したりしてさ!」


    七海「あー、だけどここでできる事っていったら限られちゃうね」


    七海「私…死んじゃったし」アハハ


    七海「・・・」


    苗木「な……なみ………さん」


    七海「・・・・・・」



    七海「ごめんね、やっぱり今の無し」


    七海「幸せな今の君を壊したくない」

    七海「苦しんでほしくない」

    七海「笑ったままの君でいてほしい」


    七海「それが、私からの願い」


    七海「・・・」


    そこに、一陣の風が吹き抜ける。


    七海「あ…! どうやら着いちゃったみたい」


    七海「ごめんね、ちょっと行ってくる」スッ


    膝枕を解き、起こさないようそっとその場を離れる。


    グイッ


    七海「?」


    しかし、苗木は無意識のうちに七海が離れることを拒んだ。


    それに気付いた七海は丁寧に手をほどき、苗木を抱き抱えて額に軽いキスをした。



    七海「おやすみなさい、誠くん」チュ

    七海「ゆっくり休んで」



    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



    虎䝞「クッ!」ゼェ,ハァ


    ??「苗木誠にだいぶやられたみたいですね」

    ??「どうしました?貴女方が最も殺したい相手が目の前に居ると云うのに」


    虎䝞「喧しい!!!」グオン


    その一撃を難なく避け、反撃を加える。


    ??「所詮はこの程度ですか」サッ

    ??「ツマラナイ」


    ドス!


    虎䝞「ウ"‼」グラッ


    ??「そんなツマラナイ復讐なんかのために、僕の時間を割かないでください」


    虎䝞「ッ! 貴様…今何と言った!
    のぅ、 カムクライヅルーーー‼」



    カムクラ「ですから、ツマラナイ…と」
  168. 177 : : 2016/11/22(火) 21:52:46
    >>173 >>175

    「黒さん」スミマセン! お待たせしてしまって

    テスト前で(まぁ、今もなんですか(笑))時間が見つからず更新遅れました。


    来週辺りからまた通常運転に戻すつもりです。  




    >>164 ~ >>166

    何と見抜かれるとは! 
    オドロ木モモノ木20世紀です(笑)


    ※追伸
    ここから先は僕の趣味全開でいきます。

    苦手な方がいましたら先にお詫びします。




    それと少しばかり報告を。

    えー、この「12区討伐作戦篇」を終えたら、暫く書かないで溜まっていたもうひとつのスレを再会します。


    なので今までこちらに割いていた時間を削ってしまい、また更新が遅くなると思います。


    同時進行を掲げておきながら実現できず迷惑をかけてしまった事をお詫び申し上げますm(__)m
  169. 178 : : 2016/11/23(水) 02:08:45
    カムクラキタ━(゚∀゚)━!
    そして七海が切ない、気がする
  170. 179 : : 2016/11/23(水) 17:46:30
    如月 誠さん
    ゆっくりで良いですよ
    楽しみに待っていますので余り焦らないで下さい
    テスト頑張って下さい
  171. 180 : : 2016/11/23(水) 18:02:30
    アレ?
    カムクラって日向と兄弟関係ですよね?
    そしたら苗木の中に居る珀豹って誰だろう?
  172. 181 : : 2016/11/25(金) 15:42:09
    ↑苗木のなかにハクヒョウがいるんじゃなくってハクヒョウに似た奴が苗木なんじゃないの?
  173. 182 : : 2016/11/25(金) 18:09:02
    No.11 カムクライヅル(22)  


    日向班(Qs班)、黄桜班 所有
    2005年入社、階級は特等。

    クインケ:SIXA(甲赫) SS+レート
        天照(羽赫+尾赫) SSレート


    彗星の如く現れ、次々と功績を挙げてきた百戦錬磨の凄腕捜査官達である。
    実はアカデミー出身ではないので、意外と常識に疎かったりする。
    「スピード」 「パワー」 「テクニック」
    どれをとっても他と頭一つ抜けており、喰種たちの間では『死神』と呼ばれ恐れられている。
    クインケは扱いが難しいとされる《混血赫包(キメラクインケ)》を使っている。


    戦闘スタイル
    本人曰く、全てが上手くいくため決まったスタイルは無いそう。
  174. 183 : : 2016/11/25(金) 18:11:03

    赫子を鞭のようにしならせて攻撃。

    その隙に距離を詰めての右足蹴り。


    全てがお見通し



    カムクラ「あぁ、ツマラナイ」バチッ



    虎䝞「ぬぅぐ…!?」


    虎䝞「グオ"オ"ォォォーーー!」ブオン!


    カムクラ「今度は力に任せた攻撃ですか」

    カムクラ「自棄になった相手ほど、ツマラナイものはないです」



    喰種が持つ赫子の中でも、虎䝞の赫子は群を抜いて硬い。

    それ故、他の赫子は勿論のこと赫子から作られたクインケすら「ソレ」の前では意味をなさない。



    カムクラ「貰いますね、その赫子」



    斬ッ!!!


    だが、カムクラはそれを意に返さない様子で斬り落としたのだ。


    虎䝞「なっ!グッ!」


    元々体力も底をついた状態。

    その状況でカムクラと渡り合える筈もなく、あっという間に蹂躙される。


    パリッ


    虎䝞「ぬぅあ£$фхэтэ~~~~~~ッ!!!」バリバリバリッ


    カムクラ「残念です。貴方とやるならせめて幹部が揃った状態で殺りたかった…」

    カムクラ「その方がまぁ…暇潰し程度にはなったでしょうに」



    虎䝞「~~~~~~~~~~~~ッ」

    虎䝞(こんな……ところで~~~~~ッ!)ギリッ


    カムクラ「それでは、残りの赫子も貰っていきますね」スッ


    虎䝞「~~~~ッ!!!」バリバリバリッ



    その攻撃が

    虎䝞を貫く直前

    何者かによって遮られた―





    ガアァァァ……ン!


    カムクラ「…!」




    それは

    再起不能の筈の



    苗木誠…























    …の身体を借りた七海だった。



    苗木(ごめん誠くん。少しの間身体借りるよ)
    (七海)



    ピシッ

  175. 184 : : 2016/11/25(金) 18:15:49
    テスト終わったので更新戻しまーす!


  176. 185 : : 2016/11/25(金) 20:10:21
    原作で主人公のなかにいたのはCVざーさんの人だったけど、七海も花澤さんだよね
  177. 186 : : 2016/11/26(土) 23:19:21
    テストお疲れ様です
    何で七海庇ったんだろう?
    展開が楽しみだな
  178. 187 : : 2016/11/27(日) 21:04:29

    霧切(戦いは…終わったの?)


    苗木が連れ去られそうになった時、応援として駆けつけて来てくれたカムクラ特等が後を追った。


    何故こんな所に…とも思ったが、相手が相手なのでワザワザ助けに来てくれたのだろう。


    辺りは連戦の跡を物語っており、建物や地面が砕かれたり折られたりしている。


    近くにいる葉隠が死んでいるようにも見えるが、胸が上下に動いているので生きてはいる。


    霧切(不味いわね。クインケは苗木君に預けたままだったし、もし起きたら今の私には為す術がない)


    そう思い、痛む脚を何とか堪えその場から遠ざかる。


    霧切「…ハァ,ハァ」ズルズル

    霧切「ぅっ、クッ!」ズルズル


    敵に背を向け、だらしなく離れる事しか出来ない自分に腹が立った。


    思い出されるのは、やはり彼の顔。


    霧切(苗木君を利用してまで討ち取ろうとした相手…)

    霧切(それなのに破れ、苗木君に助けられ、励まされ、)

    霧切(挙げ句の果てには彼の退路を私が塞ぎ、そして連れていかれそうになった)

    霧切(しかも最後には何もできず、虫の息の相手にただオメオメと敵前逃亡…か)


    我ながら惨めな結末だと、責めることしか出来なかった。


    霧切(これでカムクラ特等が間に合わなかったら…) 

    自分のせいで苗木君が!


    霧切(いえ、何を言ってるの? あの人は敵を逃がしたりなんかしない!)


    必死に否定しようとも、今の自分では祈ることしか出来ない。


    霧切「無力だわ…何もかもが」クッ!



    カムクラ「僕もそう思います」


    霧切「え!?」


    振り替えると、そこには苗木を背負ったカムクラがいた。

    特等は服の乱れが一切なく、息も切れていない。


    カムクラ「終わりました霧切響子。至急医療班の準備を」クルッ


    霧切「ぁ、あの… 苗木君は!」


    カムクラ「大丈夫です。傷は深いですが已に修復にかかっている」

    カムクラ「命に別状はありません」


    背中に背負った苗木を見ると安堵し、同時に心配も増した。


    その言葉を聞いて、全身の筋肉が解きほぐれるような感じがした。


    カムクラ「おっと、立てますか?」トッ


    霧切「は、はい。大丈夫です」


    崩れかけた身体を、優しく受け止めてくれた。


    カムクラ「貴女も酷い怪我です。医療班が来たらすぐに治療を受けてください」
     

    霧切「わ、分かりました」


    カムクラ「それと虎䝞は此処に。取り合えず23区へ送るので上にそう伝えてください」


    霧切「え? ア,ハイ分かりました」


    カムクラ「それでは」ペコ


    そう言うと、カムクラはその場から去っていった。


    跡には苗木君と私―


    霧切「…」

    (僕もそう思います)

    霧切「っ!」ギリッ


    それと一言の置き言葉だけ。




    ~舞園サイド~

    戦刃「どうも。戦刃むくろです」ペコリ


    左右田「・・・」

    左右田「ハァ!?」


    戦刃「ぇ、何!?」ビクッ


    「誰だ」と名を聞き、本当に答える奴は初めて見た。


    左右田「ぃ、いやー、そのマスクってさ、顔を隠すためにあるんだよな?」

    左右田「なのに名前なんて名乗って大丈夫なのか?」


    戦刃「・・・アァ!!」


    いや素かよ!? 

     
    喰種は人と同じ生活が出来ないだけに、学校などの教育施設に入りたがらない。


    だからほとんどの喰種は知性が低く、騙されやすい。


    左右田(けどコイツはそん中でもとりわけ悪いな)


    横を見ると、豚神も呆れたような顔でソイツを睨んでいた。



    戦刃「と、とにかく邪魔しないで!私の目的はそっちの2人なんだから!」///


    左右田(あ、話反らした)


    山田「おぉ、そうであった!助けてくだされ~、戦刃むくろ殿!」


    セレス「クッ!こんな事を頼むのは恥ですが…」

    セレス「助けて…ください」


    豚神左右田「っ!!?」バッ


    そうだ、コイツらは敵。

    味方の救助と俺達の殺害が目的なんだ!


    今動けるのは俺と豚神だけ。

    だけど俺は2人の回復に回っているため、実際は豚神と戦刃の一騎討ちだ。


    そう思い、豚神は赫子を展開させる。


    が、



    戦刃「ごめん、それは無理」

    戦刃「私は…貴女達を始末しに来たんだから」チャキ
  179. 188 : : 2016/11/29(火) 17:10:59
    期待
  180. 189 : : 2016/11/30(水) 13:38:33
    戦刃は、誰に頼まれたのかな?
    楽しみが増えた
  181. 190 : : 2016/12/01(木) 20:58:15

    山田「…え?」

    セレス「…悪い冗談はよしてくださる?」


    戦刃「私は本気だよ。だって、あの子がそうしろって言ったんだし」


    舞園(あの子?)ゼイ,ゼイ


    戦刃「それに、私からしても戦場で捕まった兵士はなるべく死んでほしい」

     
    セレス「私達が敵に情報を流すとでも!?」ギリッ


    戦刃「無いとは言い切れない。だから私がここに来たの」


    セレス「ふざけた事言ってんじゃねーぞ!良いから助けろや!」


    豚神(仲間割れか?)

    豚神「おい戦刃」

     
    戦刃「何?」


    豚神「お前、コイツ等を始末しに来たと言ってるが、俺達は渡す気は無いぞ?」


    戦刃「当然、殺して奪う」


    戦刃「貴方一人なら楽勝だよ」


    豚神「ほう、凄い自信だな。 だが…」


    戦刃「!?」ビュッ


    突然銃弾が飛んできて、それをギリギリで躱す。


    九頭龍「へっ、調子乗ってんじゃねーぞ喰種が」

    辺古山「どうにか、間に合ったようだな」


    いつの間にか部屋に九頭龍と辺古山が入ってきていた。


    戦刃「! …そう、彼らではろくに時間も稼げなかったみたいだね」


    辺古山「あの程度は造作もない」


    九頭龍と辺古山が合流し、形勢はCCG側に傾こうとしていた。


    …が、



    ???「ちょーっとストーップ‼


    ((( !!? )))


    場に合わないやたら高い声が部屋に響いた。


    戦刃「わわっ!?」

    戦刃「アレ?盾k」


    ???「うっせー!何私様の名までバラそうとしてんだこの残姉‼」ボコッ


    戦刃「あぅっ」


    豚神「クッ! 新手か!?」

    九頭龍「この野郎、どっから入って来やがった!?」

    辺古山「いつの間に!」


    そこに現れたのは全身に包帯を巻いた人物。
    声からして女性だ。


    姿と共に、その得たいの知れない雰囲気がただ者ではないと感じられる。


    戦刃「もう終わったの?早いね…」

    戦刃「もしかして…私が心配で!?」


    包帯「んな訳ねーだろ!撤退すんだよ」ボカッ


    戦刃「アイタ! え、何で?早くない?」


    包帯「さあね。カムクライヅルの考えなんて私様でも意味不明だし」


    戦刃「‼ カムクラ…」


    カムクライヅルが来ている。

    ここで逃げるのは本当に癪だが、この子が言うのなら仕方ない。


    セレス「おい待てコラ!だったら私達も連れていけ!」


    包帯「はぁ?嫌だよメンドクサイ。自分で何とかすれば~?」


    セレス「テメー等も【アオギリ】だっつーんなら倒れてる仲間くらい助けろや新入りー!」


    包帯「キャーこわーい! 【アオギリ】って喰種の組織なのに上下関係とかあってメンドくさーwww」


    左右田「な、何だよアイツ等。仲間じゃねーのか?」


    九頭龍「関係ねぇ。アイツ等が争ってる隙に左右田を除いた全員で行くぞ」ボソボソ

    豚神辺古山「あぁ(はい)。」


    包帯「聞こえてるよー?」


    九頭龍「んな!?」

    九頭龍(この距離で聞こえんのかよ!?)


    包帯「確かに。ここで時間過ごしてる場合じゃなかったわ」アブネーアブネー


    包帯「と、云う訳で…」




    包帯「さっさと死んじゃってー♪」バサァ



    辺古山「! 羽赫!?」



    「ドンッ!」

    と一発大きい音が聞こえたと思ったら、長い槍状の赫子が幾十に分かれ、まるで花火のように辺りに散っていった。



    それらが情け容赦なく辺りの壁や床に深々と突き刺さる。


    だが、

    辺古山「見切った!」

    九頭龍「へっ、遅ーよっ、と!」シュタ


    日々多種多様な喰種と相対し、その性質を知り尽くした彼等に避けられないモノではなかった。


    豚神「だが、どうやら逃げられたようだ」

    九頭龍「チッ,逃げ足は速いな」


    しかし、不幸なのはそこではない。



    辺古山「! 桑田ァ‼」



    突然、普段寡黙な少女が声を荒げた。


    二人は自分達以外に怪我人が居るのを忘れていた。


    それ故、気付くのに遅れた。


    桑田「ご……ガァ…!」


    見ると、桑田は已にボロボロである自らの肉体を盾に、舞園と左右田を守っていた。

    彼の身体には、先程の赫子が突き刺さっていた。


    否、


    『貫いていた』。



    豚九「「 桑田ァ!! 」」


    素人が一目見ても致命傷と感じられた傷に、豚神と九頭龍も声を上げた。



    それ以外にセレスも弾丸が命中し倒れていたのと、いつの間にか山田の姿が消えていたのだが…



    左右田「オ、おい桑田!?」

    舞園「桑田君!」


    今の彼等には仲間の危機以外の事は見えていなかった。
  182. 191 : : 2016/12/02(金) 09:10:10
    桑田どうなるんだ?
    そして日向のどうこうが気になるカムクラも同じく(`・-・´)/
  183. 192 : : 2016/12/08(木) 23:26:16
    ―声が聞こえた、気がする。


    (せわ)しく、そして焦ったような響きの声で―



    舞園「んっ」 


    体が重い。

    いつの間にか気を失っていたものの、突如として意識の世界から現実へと引き戻される。


    舞園「?」


    何故か体が重たい。


    舞園(あぁそうか。私、傷を…)


    目を開けてる事も辛く、(とは云えさっきと比べると痛みは和らいだが)意識が覚醒した後も寝たふりをする。



    「…ァ‼」

    「…‼」



    しかし、先程の声が耳に掛かったままだ。

    いや、今も続いている、といった感じだろう。


    味覚触覚視覚で考えるのを放棄した私だったが、残りの聴覚

    そして嗅覚はそれを許さなかった。


    最初は微かに。

    だけど徐々に大きくなっていくその匂いに集中した。


    何度も嗅いだ、
    錆びた鉄を削り取ったかのような刺激臭。


    捜査官になってからは嫌々、それでいて飽々とした香りの正体。



    舞園「んぅっ」


    開けることを拒んでた眼をゆっくり開け、視覚的情報でその場を知ろうとした。



    でも、その必要はなかった。



    探ろうとしなくても、目の前に答えがあったから。



    その匂いは、紅く太い『ナニカ』を身体から突きだし、顔をうつ伏せている同期の人間から発せられたものだったから。



    舞園「…あ……アァ…………!」



    クワタァ!!



    怒りを込めた叫びが、聞こえた気がする―


  184. 193 : : 2016/12/09(金) 04:41:35
    どうゆう事だ?
  185. 195 : : 2016/12/12(月) 22:31:50
    如月誠さん、お疲れ様です。
    今確認したところ、『苗木「超高校級の文化人」』にも↑と同じような書き込みがされていました。
    どちらとも非表示にしてくださると嬉しいです。
  186. 196 : : 2016/12/13(火) 17:43:11
    じゃまだ
  187. 197 : : 2016/12/13(火) 18:20:08
    >>195
    報告ありがとうございます。

    それとお待たせしてすみませんでした!
    最近他のアニメに浮気してて(笑)



    物語が動き始めるってのに何してんだか(意味深)


    というわけで更新再開です!

    ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
  188. 198 : : 2016/12/13(火) 18:20:28
    何もない、ただ今にも廃れそうな建物が密集する地帯にカムクライヅルはいた。


    苗木を霧切に送り届け、先程連絡があった豚神達の応援には行かず、そこを意味なく周回していた。



    自分が駆け付けたところで、そこにいた敵が逃げてしまう事など用意に想像がつく。


    ただ、彼が何もせずに周回しているところを見れば、局の人間(特に日向)からすると驚きモノである。



    それには訳があった。


    彼が考えていることがこの先、遠くない未来に影響を及ぼすからだ。


    カムクラ(………)






    ~一時間ほど前~


    キ……イィン



    カムクラ「…」

    苗木「…」
    (以下七海)


    バッ


    交差していたモノを離し、互いに手の届かない所まで素早く移動した。



    この時、カムクラには珍しく表情というものがあった。

    自らの攻撃を防がれたからではない。


    苗木の持っていた双刀型クインケは虎䝞に破壊され、今は無惨にも辺りに散っている。


    であるならば、彼(女)は一体何で応戦したのか。



    それは『赫子』だった。



    七海「んしょ…っと」ザリ


    そう、苗木は 七海の力を借りている(無意識の状態である)とはいえ、自らの赫子を発動させたのだ―



    その事実に、カムクラは若干の驚きと焦りを見せる。
    (もう一度言う。普段の彼では絶対にあり得ない)



    だが、七海はそんな彼の様子などお構い無しといった感じだ。



    パキパキパキ!


    七海「…ふぅ!」


    カムクラ「…流石の回復速度ですね。あの傷でまだ立てるとは」


    七海「脚が動かないんじゃ、助けにも行けないでしょ?」

    七海「それと…久しぶりだね、カムクラくん」オッス


    カムクラ「はい、お久しぶりです。七海千秋」



    この時、カムクラは苗木ではなくその体を使っている七海に話しかけた。

    そして七海も、それを当然の事として返事を返す。



    カムクラ「まさかとは思いましたが、やはり苗木誠の中で生きていたんですね」


    七海「うん。どうしても離れられなくって…」

    七海「ほとんどを失った彼の助けがしたくって…」



    その眼は―

    朱に染まったその眼は…遥か遠くを見ているようで、哀しみに揺れていた。



    だがそれも一瞬で、次に顔を上げた時にはおっとりとした雰囲気に戻っていた。



    七海「とは言っても、今の私の力じゃ脚に負ったケガくらいしか治せないけど」



    七海は、脚に意識を集中して部分的に再生したに過ぎない。

    今日一日で受けたダメージがでかすぎるため、両腕の再生は行えないのだ。



    七海「私の身体だったら、遠慮なく再生出来るんだけどなー」プクー


    カムクラ「…色々と言いたい事はありますけど、取り合えず一言だけ…」


    カムクラ「苗木誠の身体で喰種の力を出さないでください」

    カムクラ「『記憶』が戻って困るのは貴女でしょう」


    七海「それは君『にも』当てはまる事でしょ?」


    カムクラ「…」


    黙って彼女を睨み付ける。
    普段の雰囲気も相まってかなり怖い。


    何を言いたいか察したようで、途端に申し訳なさそうな態度をとる。



    七海「うん…ごめんね。かなり軽率だったかも」


    七海「けど、弐大くんが殺されそうになるって思ったら、居ても立ってもいられなくなって…」



    カムクラ「…」

    カムクラ「ひとつ、疑問に思っていることを聞いて良いですか?」


    七海「 何?」


    カムクラ「貴女は一体、どっちの味方ですか」

    カムクラ「苗木誠(我々)か、アオギリ(喰種)の」



    七海「…」



    この質問が、彼女にとって残酷な事は分かる。

    だから、敢えてこの場で、このタイミングで、この問いを突きだした。


    七海「…」



    案の定彼女は俯いて、少し見える顔からは苦痛の表情が有々と滲み出ている。


    が、カムクラは追求をやめない。


    そして、次に彼が放つ一言こそが、この問いの前に置かれる大前提だった。



    カムクラ「お答えください、七海千秋…」

    カムクラ「いや、」

















    カムクラ「()代【アオギリの樹】リーダー、『凰王(におう)』」




    七海「……………」


  189. 199 : : 2016/12/13(火) 18:21:02
    コードネーム『凰王(におう)

    【アオギリの樹】リーダー
    第S級接触禁忌喰種

    SSS~レート
    赫子:羽赫?
    Rc値???


    隻眼である事と、その容姿、強さに関して以外は全てが謎に包まれていた喰種。
    突然日常の中に表れ、そして【アオギリの樹】を組織したかと思うと、また突然姿を消した。

    出現回数こそ少ないが、現れた際は絶大な被害を巻き起こす。
    特等クラスが複数人いなければ、戦闘すら認められない程の危険性を持つ。
  190. 200 : : 2016/12/15(木) 12:04:42
    七海がアオギリの樹初代リーダー!
    カムクラが日向の方に行ったなら戦刃の行動も後に分かるわけだ
  191. 201 : : 2016/12/16(金) 17:21:38
    七海が死んでるなら今のアオギリリーダーって誰だ?
  192. 202 : : 2016/12/20(火) 22:32:25

    七海「…その質問には、答えたくない」


    十分に間をとってから、ゆっくりと言葉を発した。


    カムクラ「『答えたくない』…ですか。『答えられない』ではなくて」


    七海「」コク


    カムクラ「それは何故?」


    七海「それを言ってしまえば、目指していたものが意味なく感じられるから…」

    七海「私が生きて、闘って、必死に守ろうとしたものを否定したくなんかない」

    七海「私は証明しなくちゃいけない。喰種も人間も互いを認め合えるんだって…!」

    七海「【人と喰種が分かつ世界】のために…!」


    カムクラ「詭弁が過ぎますね」


    七海の言葉が終わって直ぐ、バッサリと斬り返す。


    カムクラ「貴女の目指す『空想』には矛盾が有りすぎる」


    七海「そうかなぁ?」


    挑発したつもりだったのに、先程の強い覚悟が籠った顔とは打って変わって何時もの眠たげな表情に切り替わる。

    カムクラに(つくづくワカラナイ)、と思わせる人は彼女の他にあと何人居るだろうか。


    ともあれ、コテンと傾げた姿は元の(・・)体の面影が残っている。

    声に出さないが、やはりこの2人は何処となく似ていると感じた。



    カムクラ「えぇ。心意気は十分に伝わりました。やはり貴女はオモシロイ」

    カムクラ「ですが、その『共生の世界』を目指そうとした貴女が死んでしまったのでは戯れ言も良いところです」


    七海「ムッ、何か言い方にトゲがある」


    カムクラ「事実でしょう」


    七海「それはそうだけど…」


    痛いところを突かれてつい顔が渋ってしまう。


    七海「でも、それを引き継いでくれる人は眼の前に居るでしょ?」


    カムクラ「苗木誠が…?」


    七海「ついでに君も」


    カムクラ「私も…ですか?まぁ良いでしょう。貴女が望む世界には興味がある」


    七海「やっぱり!?」フンス!


    顔だけ近づけて嬉しそうにする七海を手で抑え、「ですが、」と前置きする。


    カムクラ「苗木誠はどうでしょう?此方は一筋縄ではいきませんよ?」


    七海「…うん、わかってる」

    また僅かに顔が渋る。


    カムクラ「それに、《現状で》1番の問題は貴女自身が創った組織の方だ」

    カムクラ「今の【アオギリ】は、貴女が務めていた頃と違って武力による支配が増えている…」

    カムクラ「これでは人と喰種、双方の間の溝は深まるばかりだ」


    七海「それも分かっている。簡単に解決しないのなんて」


    静かに頷いたその表情には、自信無いのが手に取るように分かる。


    七海「それでも……」

    七海「それでも、皆に知ってほしい。私が目指した世界を。」

    七海「不可能だと告げられても、馬鹿だと罵られても、私は『何とかなるって信じてる』から…」ニコ


    結局、肉体を失った彼女が出来るのは『信じる』という事なのだろう。

    そこに根拠はない。

    あるのは吹けば飛んでいきそうなほど軽い願いと、重くて深い現実だけ…



    なのに彼女の言葉には力がある。

    かつて【アオギリ】の王として振る舞ってきた力が―


    落ち着いた。それでいて強い決意の表れに、カムクラは僅かに口角を上げた。

    何度も言うが、それはカムクラ自身が望むものであった。

    七海は見逃したが、彼の表情は何処と無く嬉しそうだ。


    カムクラ「なら、今の【アオギリ】の情勢について、もう少しだか丁寧に説明します」


    七海「え、良いの?」


    カムクラ「言ったでしょう?貴女の意思を引き継ぐ…と。」

    カムクラ「ならばそれに叶うだけの働きをするだけです」


    七海「!」パアァァァ


    カムクラ「その代わり、貴女の情報が知っている情報もこちらに提示してください」


    七海「うん、勿論だよ!」





    元【アオギリの樹】リーダーと百戦無敗の特等の協力。

    二人しかいないその行為は、間違いなく彼女が目指した世界への大きな一歩になる…





    筈だった。






    彼らはまだ知らない。


    再び動き出した歯車が、『最悪』の方へと廻り始めた事を―

  193. 204 : : 2016/12/22(木) 18:24:05

    カムクラ「戦刃むくろ、という名をご存知ですか?」


    開口一番に出たのがソレだった。

    ここで名が上がるのだから、その人物がこの話に大きく関わっているのだろう。


    そしてその名に、私は覚えがある。



    七海「黒の髪にオカッパの形をした女の子のこと?」


    カムクラ「へぇ、知っていましたか」


    七海「私が死ぬ少し前に【アオギリ】に攻め込もうとした内の一人だよ」

    七海「負かした後に『仲間にならないか』って誘ったんだけど断られちゃった」


    カムクラ「…ちなみにもう一人の名前は分かりますか?」


    七海「うん。包帯してたから顔は分かんなかったけど、戦刃さんが『盾子ちゃん』って呼んでた」


    カムクラ「…随分とマヌケな方ですね」


    七海「うん…後でメッチャ怒られてたし」


    七海「で? その二人がどうしたの?」


    カムクラ「実は、貴女が亡くなった後の【アオギリ】を纏めているのがその『盾子』です」

    カムクラ「【アオギリ】にいる大勢の構成員は、彼女の息が掛かっています」


    七海「あ、ちょっと良いかな?」ハイ


    カムクラが言い終わってから、七海が手を上げて疑問を口にする。


    七海「その構成員って元々、『盾子』さんが用意したものだよね?」

    七海「私が務めていた頃は50人にも満たなかったけど…」


    カムクラ「えぇまぁ。話に聞く限りだと二千は越えてますね」


    七海「うわっ、そんなにか」


    その多さに普通であればビビるか臆するだろう。

    が、流石はSSS~レート。そんな事では動じない。


    七海(ということはあれかな?)

    七海(今の私って大手企業の創設者みたいなもの?)

    七海(ヤバ、何かちょっとテレる)///


    そう、彼女は非常にポジティブ、もとい楽観的だ。
     


    そんな彼女をいつもの事と横に流しつつ、話を進めるカムクラ。


    カムクラ「ついでに、今のアオギリの実権は彼女が握っています」

    カムクラ「狙いは貴女が持っていた【アオギリ】の情報、」

    カムクラ「それと虎䝞のような、元から【アオギリ】に仕えていたメンバーを支配下に置くことでしょう」


    七海「ほぉ~。 それまた何故?」


    カムクラ「さぁ?ボクにしてみれば彼女はツマラナイ。調べたのはここまでです」


    七海「ふ~ん? まぁ良いや、私が誘った人達は普通の喰種相手じゃ束になっても勝てはしないしね!」フンス!



    得意気にドヤる七海だったが、「それに…」と続きを発する。

    どうやら本人はそれ以外で何か理由があるようだ。



    七海「私『達』が調べていたものの在りかはわからないだろうけどね」

    七海「弐大くん達だって大人しく従ったりしないだろうし」


    カムクラ「そうですね。おまけに彼らがいることで逆に組織としてまとまりが無いように思われます」



    以前、葉隠が言っていた。
    「最近の【アオギリ】は前に比べて攻撃的だ」、と。


    これについては様々な理由がある。

    単純に戦力が大幅強化されたことや、『盾子』が攻撃的な性格であるから等だ。


    だが、それらを成す大きな原因に、元からいたメンバーが『盾子』に見向きもしない事に対する手下達の苛立ちがある。


    要するに、今の【アオギリ】は元からのメンバーである『穏便派』、
    そして『盾子』を長として敬う『過激派』とに分かれている。


    勿論、「最近攻撃的になった」と云われる原因は殆どが『過激派』によるものだ。


    『穏便派』は捕食以外での殺人は行わないし、大概は人間に紛れて生活している。


    全く対極の考えを持つ両者が分かり合える筈もなく、だから今の【アオギリ】は一枚岩に成りきれていないのだ。


    カムクラ「『過激派』の人達はかなり苛立っているでしょうね」

    カムクラ「彼ら(穏便派)の態度と未だ何も解っていない焦りから」


    七海「ま、そうだろうね」



    カムクラ「…さて、これが今ボクが持っている情報の全てです」

    カムクラ「次は貴女が持っている情報を提示してもらいますよ?」


    そう言って喰種のモノではない朱い瞳が七海に向けられる。


    七海は知っている。
    この男が聞きたい事は1つだけだと。


    正確に言えば《ソレ》が何処に有るかで為す意味を知りたいのだろう。

    何しろ《ソレ》は、下手をすれば【アオギリの樹】という組織よりも厄介なモノに成りかねないからだ。


    だから包み隠さず、正直に伝える。



    七海「…《私の赫子》の半分(・・)は、『CCG』にある」




    一瞬だけ、静寂が辺りを支配した。


    それを破ったのは、何かを思い詰めたかのようなカムクラだった。



    カムクラ「そうですか… ではやはり、『CCG』に【裏切り者】が居るんですね」

  194. 205 : : 2016/12/23(金) 21:16:50
    応援してます
  195. 206 : : 2016/12/23(金) 23:05:30
    裏切り者が気になるなぁー
  196. 207 : : 2016/12/24(土) 21:11:53

    七海「私から斬り取られたモノだからね」

    七海「CCG本局にあるのは分かっても正確な位置はどうにも…」


    情報が嘘でないと信じてもらうため、言い訳のようになるが、そもそもカムクラは七海を疑っていない。

    利害関係が一致している相手ほど信用に足る者はいないからだ。


    カムクラ「…いえ、十分です。むしろ喰種である貴女が此方の正確な位置を把握できてたら怖いくらいです」


    七海「あぁ…それもそうだね」クスッ


    屈託のない笑顔を浮かべていると、本当にこんな少女が【アオギリの樹】のリーダーだったのかと思いたくなる。

    残念ながら、マジなのだ。


    七海「残りの半分(・・)は…言わなくても分かるよね?」


    カムクラ「…はい」



    ~現在~

    カムクラ(現時点で1番可能性があるのは松田夜助)

    カムクラ(『凰王』の赫子を他のどこよりも欲するであろう科学班で、特に執着しそうなのが彼ですから)

    カムクラ(そう思って彼の研究所に忍び込んだけれどそれらしきモノは見受けられなかった)

    カムクラ(だから【裏切り者】はいない…)

    カムクラ(そう結論付けた結果があのザマですか…)


    仲間を疑いたくない、なんて以前のカムクラでは有り得なかった。

    カムクラを変えた人間の一人に、実の弟である日向が関わっているのを彼は薄々気付いていた。


    カムクラ(念のため、他の科学班の人達も調べておきましょうか…)


    カムクラ「まぁ、何も出ないと思いますが」ボソッ



    ~再び七海との会話シーン~

    七海「あぁそうだ、弐大くんはこれからどうするの?」


    カムクラ「そうですね…コクリアにでも閉じ込めておきましょうか」


    七海「…珍しいね、君が喰種を生かそうとするなんて」

    七海「私は弐大くんが助かるなら文句ないけど」


    カムクラ「別に。ただここで貴女と()り合うのがイヤなだけです」


    七海「あっ、バレてた?」


    カムクラ「大方、私が認めない場合は力ずくで逃がすつもりなのでしょう?」


    七海「…正解。まぁ、闘い合うのは私じゃなくて誠くん(の体)だけどね?」


    カムクラ「尚更イヤですよ」ハァ


    カムクラ「…」

    カムクラ「七海千秋…いや、『凰王』」


    七海「七海でいいよぉ…」


    七海の言葉を無視して続ける。


    カムクラ「虎䝞をコクリアに送る、ということの意味をキチンと理解した方が良いですよ」


    七海「…? どういう事?」


    カムクラ「ボクの予想では、彼をコクリアに収容することで大規模な戦闘が起こります」


    七海「ぁ…!」

    それだけで彼が何を言おうとしてるのか理解した。

    そうだ、よく考えなくても分かることだ。


    カムクラ「あと、それに便乗して『過激派』の連中も攻め入って来るでしょう」


    七海「…」


    カムクラ「そこをちゃんとわかった上で行動してくださいね?」


    それは暗に、彼女の行動がこれから起こる戦争の引き金になると言っている。


    平和を目指す彼女にとって、これは耐え難い事実だろう。

    こういう時、何も出来ない自分に腹が立つ。



    カムクラ「あぁそれと…」


    こっちの都合なんて関係ない、と言わんばかりに話を続けてくる。


    カムクラ「創には何て説明するつもりですか? いづれはアレも真実に辿り着くでしょう」


    七海「日向くん…」グッ


    カムクラ「貴女に考える暇さえ無かったのは重々承知ですが、何時までも問題を後回しになんて出来ませんよ?」

    カムクラ「今の貴女は力を失った生き霊みたいなものですから」


    言い方はキツいが、言ってることは大体が的を射ている。


    七海(でも…)

    七海「勿論だよ。これは私の問題だから」


    迷いのない、火を宿したような強い眼差しを向けてくる。


    七海「自分で蒔いた種は、自分で摘み取らないとね?」


    カムクラ(…ボクに協力を頼むことだって出来るのに、あくまで自分で解決しますか)


    カムクラ「それがどんな結果を招くのか、興味はあります」

    カムクラ「ただ、その選択が最悪を迎えるかもという事だけは頭に入れといてくださいね?」


    七海「うん、分かった。そうならないよう努力するよ!」コク


    七海「じゃあ、話も区切りが付いたから私は戻るから。誠くんの体運んでね?」



    カムクラ「…最後に忠告です」

    カムクラ「近々苗木誠の身に危機が迫るでしょうけど、くれぐれも怪我が完治してない時だけは遭遇させないでください」

    カムクラ「貴女の力には制限が課せられているんでから」


    七海「…それもお得意の超分析力?」


    カムクラ「まさか。データも何もない状態では使えませんよ」


    カムクラ「ただの『勘』です」フッ


    ~回想終了~
  197. 208 : : 2016/12/24(土) 21:46:27
    File15 『コクリア』

    23区に築いている大型の喰種収容所。
    監獄されている喰種の数も多く、C層 B層 A層 S層 SS層 とに分かれている。

    クインケの材料になる者や情報を聞き出すためにいる者等、利用価値がある喰種を収容している。
    CCG側からも食料は提供され、喰種捜査官は出入りが可能となっている。
  198. 209 : : 2016/12/25(日) 22:25:10
    これからの動きが楽しみだなぁー
    七海は、大丈夫なのかな?
  199. 210 : : 2016/12/26(月) 18:01:44

    暗く湿った廊下の中に、一人の青年が何をするでもなく立ち尽くしていた。


    青年の名前は日向創。

    彼は先程から、得体の知れない女の言葉を心の中で反芻していた。



    包帯「『七海千秋』ちゃんに会いたい?」



    日向「ッ!?」


    暗い海の底から放たれたようなその一言は、何度も何度も日向を『あの頃』へと呼び込もうとする。


    それだけ言い残すと、女は自分に何を話すでもなくその場から消えてしまった。


    日向(…七海)


    叶わぬと知っていながらも追い求めた日々は、彼にとってそれほど大事なものだったのだろう。



    ピリリリリ



    懐にしまった無線が鳴り響きハッとする。


    どうやら10分近くそこにいたようだ。



    日向(マ、マズイ!敵のアジトで何をしているんだ俺は!?)


    慌てて応答した俺の耳に、九頭龍の声が届いた。


    九頭龍「おぅ、日向か」


    だが何時もとどこか様子が違う。


    多少ドスが入っているが落ち着いた声は、迫力など微塵もない、悲壮感が漂うモノになっていた。


    日向(何だ?九頭龍らしくもない…)


    そこまでいって俺の耳に、感情の無い無機質な『音』が入ってきた。




    日向(………え?)




    頭が空っぽになった。


    だが口は、今言われた事をなぞるようにパクパクと動いた。


    そしていつの間にやら、それは『声』として辺りに放たれる。










    日向「桑田が……死ん、だ……………?」





  200. 211 : : 2016/12/27(火) 15:53:18

    目の前で貫かれた彼を、私は眼でなぞる事しか出来なかった。


    その光景を見たくなくて、ギュッと眼を瞑る。


    すると怪我と逃避で、私の意識は何処かへ行ってしまった。


    彼に「ありがとう」の一言も言えずに―



    舞園「桑田……くん………」ポロポロ



    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    九頭龍「桑田ァ!!」


    九頭龍が駆け寄るも、当の桑田はピクリとも動かない。
    ただジッと、舞園と左右田を庇うようにして座っていた。


    豚神「ッ!?」


    豚神が沈痛な面持ちで彼から眼をそらした。


    豚神(桑田は、もう……!)ギリ


    桑田「なぁ」


    「「「 !!? 」」」


    桑田「最後に、お願いを聞いてくれねーか?」


    肺をやられ、上手く呼吸が出来ない彼から、『最後』、なんて今最も聞きたくない言葉が漏れた。


    豚神「馬鹿な事を言うな!最後なんて迎えさせんぞ!?」
    豚神(落ち着け落ち着け落ち着け桑田は大丈夫…本当に大丈夫なのか!?)


    豚神が必死になって励ますも(心はご覧の有り様だが)、桑田は意に返さない様子で続ける。


    桑田「俺が捜査官になった後にさ、俺の従兄弟が襲われたんだ」


    その話なら知っている。確か名は…


    桑田豚神「「 花音 」」


    桑田「俺、駄目な奴だけど、ソイツのために金を稼いでたんだ」


    豚神「駄目な奴なんかじゃない!お前は立派な…!」
    (そうだ花音のために生きろ、行き続けろ!)


    またもや豚神の言葉が遮られる。


    桑田「俺が居なくなったら、ソイツもう病院に居られねーんだ」

    桑田「だから…」


    豚神「分かったぞ!その子とお前の分まで俺が稼いでやる!」
    (俺はもう失いたくない!)

    だから死のうとするな、生きろ!


    そう言おうとする俺の耳に、有り得ない言葉が発せられた。




    桑田「殺してくれ、花音を」



    ・ ・ ・ え?


    意味を理解できない。
    いや、『したくない』と逡巡する俺達は、桑田の次の一言で絶望の淵へと叩きつけられた。


    桑田「なぁ…」



    桑田「何で誰もなんにも言ってくれねーんだ?」


    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    包帯女の一言で何を仕出かすのか悟った俺は、傷だらけでまともに機能しない筈の(五感がイカれてしまった)身体に鞭打ち、彼女の前に出た。


    俺の失態で彼女も死ぬのなんてあり得ねぇ。
    それはマジでダセェ。




    幾数の『槍』が俺の身体を貫く。

    最早痛みさえ感じないこの身体だ。死ぬのは怖くねぇ。


    ただ…


    未だ晒していない彼女の泣き顔と、あそこで眠っているアイツの苦しそうな顔を見るのだけは怖くて堪らなかった。



    ほら、笑ってくれよ。
    俺、笑ってる方が好きなんだから…さ……



    怖いのがイヤだった。

    だから周りから放たれているであろう声は「聞こえなかった」と言い訳して無視した。


    そこで俺は、ほぼ強制的に俺の人生に終わりを告げさせた。



    桑田(舞園ちゃん、花音…)




    桑田「ゴメン…な……」



    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    桑田「」


    それっきり、桑田は喋らなくなった。

    その意味を、此処にいる全員が理解した。


    九頭龍「ぇ…ぁ……桑田?」

    辺古山「 ッ!?」ギリッ

    豚神「……桑、田?」

    豚神「……ぉぃ……桑田……!」


    桑田「」


    シ……ン


    豚神「!!!!??」ポロポロ


    豚神「…し」


    豚神「死んでんじゃねぇ(俺を置いてくな)バカヤローーーーー!!?!!」


    左右田「クッ、桑田ァァァ!!??」オォォォォ!!

    舞園「桑田……君………」ポロポロ












    ―12区討伐作戦報告―

    【戦果】
    最重要目標
    Sレート『ゴスロリ』 駆逐
    AA+レート『従豚』 逃走

    その他
    AAレート『ドレッドホームレス』 駆逐
    SS+レート『虎䝞』 拘束

    その他C~A+レート喰種 計268体駆逐

    ※SS+『虎䝞』は、カムクラ特等の要望でコクリア収監となった。



    【戦死者】
    『日向班』 桑田怜恩上等 二階級特進

    他3名重症

  201. 212 : : 2016/12/27(火) 15:53:30
    はい、というわけで12区討伐編終わりました。
    (長かった、うん、長かった…)

    というか原作がルビとか心の声バンバン入れてくるから普通に書くよりもメンドクサイ(笑)



    桑田は…うん。

    たまには原作真似てやってみようかとも思ったんですけどもボクの表現力が追い付かなかったアレです。
    あと中々話が進まなかったので(笑)

    (ぶっちゃけ花音ちゃんのとか原作もじっただけで意味は無いんですが)


    地味にセレスや葉隠も○ってしまわれたけど、そもそも原作自体死者が付き物なのでコレばかりはどうしようにもありませんね。
            ↑
            |
            |
    この編はわりと死者少ない感じです。
    次からは容赦なくドンドン○っちゃいます♪(勿論ロンパキャラを)



    如月「『ヒロインは生き残るんだろう?』、だって?」

    如月「バカヤロー! この作品のヒロインは七海だ!」
    訳) 誰であろうと死ぬ可能性は等しく同じ。




    ※ここから下は多少のネタバレ(・・・・)を含みます。
    見たくない人はどうぞ次章へとスルー決め込んじゃってください。

    見たい人はコレをもとに考察でもしてくれると嬉しいです。

    たくさんの疑問&コメント待ってます!

    ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

































    『CCG』秘蔵ファイル
    【アオギリの樹】レート分け表


    SSS~
    『凰王』赫子:羽赫? Rc値??

    SS+
    『???』
    『虎䝞』赫子:甲赫 Rc値:7000~9120
    『???』

    SS
    『???』
    『???』
    『???』

    S
    『???』
    『???』
    『???』
    【DEAD】『ゴスロリ』
    赫子:鱗赫 Rc値:3090~3990

    AA+
    『???』
    『従豚』赫子:甲赫 Rc値:3000~3520

    AA
    『???』

    A+
    『???』

    A
    『???』

    B
    『???』



    その他(【アオギリの樹】非所属)

    SS
    『???』

    S+
    『???』

    AA
    【DEAD】『ドレッドホームレス』
    赫子:尾赫 Rc値:2500~3210
























    次章から【アオギリ】&CCGメンバー足していきます(文才が追い付けば)。
  202. 213 : : 2016/12/27(火) 21:38:48
    アオギリの戦力が思ったより強くてワロタ(笑)
    てかまだ登場人物全然出てなくて色々謎だわ
  203. 214 : : 2016/12/28(水) 01:03:44
    アオギリ強すぎ
    結構 桑田良かったのに悲しいなぁー
  204. 215 : : 2016/12/30(金) 17:09:39
    七海のところにdeadってないのはフラグかなにかですかね~
  205. 216 : : 2017/01/03(火) 08:25:37
    明けましておめでとうございます!
    新年に新章って何か知らないけど感慨深いものがあります。何か知らないけど(笑)

    というわけで、今年も頑張って書いてくぞー!(^o^)/




    四日後―

    豚神&左右田
     【vsテールナー】 Bレート
     【vsミロ】    AA+レート

    辺古山&九頭龍
     【vs小武】   AAレート
     【vs山ウツボ】 B+レート


    豚神&左右田side―

    豚神「左右田!銃口をもう少し上にあげろ!俺に当たる!」


    左右田「ワ,悪い!」


    テールナー「チッ!羽赫の箱持ちかよ、やり辛ーな!」

    ミロ「焦るな!使い方が素人のそれだ。この分だとマトモな援護は出来ねエッ!?」ズドン 


    ミロ「カハッ!」

    テールナー「ミロ!?」


    冷静に場を分析していた『ミロ』の身体に別の羽赫が撃ち込まれた。
     
    テールナー「ングッ!?」ズドン


    それは『テールナー』も同様で、突然の攻撃に殺られはしなかったが体勢を崩した。

    勿論その隙を逃す筈もなく、豚神が重い赫子を特に苦もなく振り回す。


    ミロ「うっ!」

    テールナー「ガッ!?」


    それぞれ心臓の上から一撃ずつお見舞いし、以降二体は動かなくなった。


    勝者、豚神&左右田




    九頭龍「ったく、あの程度の相手に何チンタラやってんだ。こっちはもうとっくに終わっちてんぞ?」


    先程決定的となった援護射撃は九頭龍によるものだった。
    彼の射撃の腕はこの班の班長と並ぶほどの実力だろう。


    左右田「悪い九頭龍。さっきは助かったよマジで!」


    豚神「そうだな。お前が来てくれなければ俺が撃たれていたかもしれん」


    左右田「イ,イヤ~、ッかしーな、何で当たらねぇんだよ?」


    左右田はさっきも言われた通り、クインケの扱い方が未だ未熟だ。

    その分をクインケの強化で補ってはいるが、やはり技術不足はどうしようもない。


    黄桜「それは恐れだね。自分が傷付く、もしくは傷付けるのが恐いから手元が一瞬だけ狂っちゃうんだ」

    黄桜「もっと躊躇する暇も無いくらい速く引き金を引いちゃえば良いんだよ」


    左右田「へぇ~そうなのか…」

    左右田「…ってアレ!! 黄桜!?」


    黄桜「よっ!お前達久しぶり~」


    九頭龍「おい黄桜テメェ!連絡も出ねーで今まで何やってんだゴラァ!?」


    黄桜「ア,アレ?ちゃんと二日酔いって伝えた筈だけど?」


    辺古山「二日酔い如きで仲間の葬別式にも来ない程の情けない班長を持った覚えは無いが…?」


    黄桜「…」

    黄桜「アッハッハ、バレてた?」


    豚神「…」

    左右田「おい」

    九頭龍「黄桜ァ!!!」


    黄桜「わ、わかった!分かったからそんなに起こらないでくれよ!傷付くなぁ」

    黄桜「っとでもその前に…」


    豚神「…」


    黄桜「え~っと…何て言えば言えば良いのか分からないけど、取り合えず済まなかった」

    黄桜「俺が同行出来てたらこんな事にはならなかったのに」


    豚神「同情など要らん。桑田が死んだのは俺の力不足が責任だ。俺がもっと早く、助けに言っていれば……‼」クッ


    黄桜「そうやって自分を責めるもんじゃないよ?自分を責めたりしてたら勘が鈍る。もっと自分に自信を持ちなさい」


    豚神「………はぃ」


    黄桜「うん、今はそれで良いからさ、前に進んでこうや」

    黄桜(相当参ってるな、こりゃあ)


    豚神が心配だが、一先ず自分が何をしていたかの説明をすることにした。
  206. 217 : : 2017/01/04(水) 00:58:01
    へぇー
    豚神と左右田と九頭龍と辺古山のリーダーが黄桜何だ!
    驚きだよ
  207. 218 : : 2017/01/04(水) 09:13:51
    ちゃ、ちゃいます(汗)

    九頭龍達のリーダーは黄桜ですが、豚神のリーダーは日向です。

    何故こんな風になってるのかは追々説明するとして、先ずは分かり辛くてゴメンナサイm(._.)m
  208. 219 : : 2017/01/04(水) 23:50:59
    こちらこそわざわざすいません
    ストーリ内容で豚神のリーダーは、日向と理解していたのに……
    黄桜が出てきて少し驚いてください
  209. 220 : : 2017/01/20(金) 11:47:39
    舞園と苗木の絡みを…
  210. 221 : : 2017/01/22(日) 00:24:02
    日向と七海の関係いつ出るのか楽しみです
  211. 222 : : 2017/01/23(月) 16:58:10
    黄桜「お前らが12区に向かう前日の話だ。そこで急に任務が与えられてな」


    辺古山「…任務?」


    黄桜はこう見えても准特等だ。
    そんな彼が呼ばれる程なのだから話は良くないだろう。


    黄桜「あぁ、何でも近い内に多数の区を襲撃しようとする大型の喰種組織があるらしい、っな」

    黄桜「俺はその調査に向かったのさ」


    九頭龍「大型の喰種組織…?」

    九頭龍「ッ! 『正体不明(ピエロ)』か!?」


    黄桜「おっ、流石だな九頭龍。偉いぞぉ~」ハハッ


    九頭龍「笑ってる場合かよ!ったくこんな時に!」


    黄桜「…こんな時、だからこそかもしれないぞ?」


    左右田「え?」


    黄桜「【アオギリ】とCCG(俺達)が本格的な戦闘に入る。そんな時に敵対している方を攻めるのは定石だろ?」


    九頭龍「チッ」

    豚神「…」


    左右田「あのー、ちょっと良いか?」ハイ


    黄桜「ん? あぁ『正体不明(ピエロ)』について知りたいんだね?左右田は遭遇したことないんだっけ」


    左右田「ぉ、おう」


    豚神「さっき言った通り『ピエロ』は日本で【アオギリ】に次ぐ大型の喰種組織だ」

    豚神「ただ、【アオギリ】に比べて構成員の平均値は低い」


    九頭龍「オマケにS認定されてんのはリーダーの『烏』だけだから、今まで討伐は後回しにされてたんだ」


    辺古山「しかし、奴等も動くとなると今回は上も無視できんだろう。住民に被害が及ぶ事を放っておくと思えんしな」


    ※原作と若干の相違点があります。



    黄桜「まぁその辺含めて後で聞いてくれ」


    九頭龍「ん? 後?」


    黄桜「舞園君と響子ちゃんが目を覚ました。話は二人が揃ってからだ」


    九頭龍「なっ! マジか!?」

    左右田「ぃよッッッしゃあーーー!!!」

    辺古山「良かった、本当に…」ホッ


    各々が喜びを爆発させる。
    今まで何でもなく振る舞ってはいたが、皆心の中では不安でいっぱいだったのだ。


    黄桜「舞園君はまだ面会謝絶だけどね」


    だが、そんな中で一人、苦い顔を浮かべた仲間がいる。


    豚神「……苗木は?」


    黄桜「」ピクッ

    左右田「ぁ…」
    九頭龍「…」
    辺古山「…」

    黄桜「…『まだ』、目覚めていない」

    豚神「そうか…」




    暫しの沈黙。

    そして…


    豚神「行くぞ」


    たった一言だけを言って歩き出す。

    だが、いつもは大きいその背は、何故だが見るに耐えないくらい寂しかった。








    そして、その光景を遠くから眺める陰があった。

    ???「ほう…アレがQsか。」

    ???「ならば案内して貰おう、【奴】の所まで」

    ???「…」

    ???「俺から全てを奪った事、脳の髄まで後悔させてやる」


    ???「なぁ…?

















    『珀豹』」








    どうもお久しぶりです!
    いやー、スミマセン_(^^;)ゞ
    V3とテストが被っちゃって中々更新できませんでした(汗)

    取り合えず今週で全て解決する(つもりな)のでもう暫くのお待ちを…



    『超高校級の文化人』の方も2月上旬頃には再会させます(多分)
  212. 223 : : 2017/01/23(月) 22:44:55
    テストお疲れ様です
    あぁーv3をオールナイトしていたので……眠い
    苗木は、まだ起きないのか……
    ピエロが出てきてこの後同なるか気になります
  213. 224 : : 2017/01/23(月) 23:21:57
    とりあえず珀豹とは誰か、烏とは誰か、苗木と七海の関係について知りたい。
    それと出てきていないキャラがどっち側なのかも
  214. 225 : : 2017/01/24(火) 21:55:56
    ピエロとかアオギリの木とか、本当の東京グール見てる身としては嬉しいです!
  215. 226 : : 2017/01/25(水) 18:21:25
    期待
  216. 227 : : 2017/01/28(土) 08:45:13
    暫く開けてなかった目に映ったのは、見覚えのない真っ白な天井だった。


    (身体が…重い)

    オマケに息もしづらい。


    自分の口に当てられたマスクを見て思い出す。


    (あぁそうか、私、重症を負って…)

    それから…と思う前に隣から声をかけられた。

    「大丈夫? ボーとしてるけど」

    舞園「!??」


    バッと声のした方を見る…
    事は出来ないので、顔だけ傾けた。

    考え事のところを見られたのはちょっと恥ずかしい///


    霧切「安心して。目を覚ましたばかりの相手をからかうなんてしないから」
     
    舞園「ぁ…ぅん」


    声をかけてきたのは同じカムクラ特等直属部隊の黄桜班所属、霧切さんだった。

    何かと接点が多く気が合う相手だけに、さっきの緊張も無くなった。


    ふと、彼女の脚や頭に巻かれた包帯に眼がいく。
    自分ほどでないとは言え、彼女も怪我を負っている。

    私の視線に気が付いた霧切さんは、視線を少し下げて包帯にソッと手を当てる。


    霧切「あぁこれ…?お察しの通よ。無様に負けたわ」

    舞園「ぶ、無様だなんてそんな事…」

    霧切「良いのよ別に。無様でも何でも、彼に救って貰ったこの命を無駄にしなくて良かったと思ってるし」

    霧切「それに…私は貴女よりよっぽど無事だったしね」


    自傷染みた言葉ではあったが、その表情は何時もの彼女よりも柔らかくてホッとした。


    舞園「あの、彼って…」

    霧切「おたくの新人君よ。彼、とても良い動きをしてたわね」

    舞園「あぁ、苗木君ですか。霧切さんに誉めれるなんて、やっぱり彼はスゴイですね」


    ……心なしか、何時もより迫力がないように見える。

    いや、そもそも喋る事ですら苦しいのだから声に力が無いのは当然だろう。


    しかし霧切が思うにそうではない。

    彼女はもう分かっているのだろう、自分を守ってくれた彼の事を――


    だが、その事を霧切に言わないのは余計な詮索をしてほしくないからだ。

    だから何も言わないし何も聞かない。

    彼女が痛みを分かちたいのは自分ではなく、彼らだと知っているから。
  217. 228 : : 2017/01/28(土) 08:45:18
    ??区

    ???「ふッッざけんな!コノ野郎ー!!!
    テメェがセレスを殺ったんだろーが!?」


    江ノ島「ふざけてんのはソッチじゃん~!(σ>д<)σ
    セレスちゃんがそう簡単に死ぬわけないでしょ~?」


    ???「テ,テメェ~~!」ビキビキ


    ???「ぉぉ落ち着くんだ兄弟!彼女の言う通りだ!あのセレス君が死ぬわけないだろう!?」


    戦刃「」ポツーン



    ここは【アオギリの樹】の拠点の一つ。

    今は使われていない工場の跡地を、そのままの形で利用しているこの空間は無駄に広い。
    故にリーゼントヘアーの彼の怒声が良く響く。

    (そしてその彼を白い軍人服姿の男が宥める)


    ???「何だ、騒々しいぞ。今しがた我が眷獣共を鎮めたところなのだ。静かにせんか」


    ???「あっ!田中さん、大変なんです!」


    田中「貴様…我が封印せし名をまた呼ぶとは。余程地獄を見たいようだな、ソニアよ」


    ソニア「あっ、スミマセン!失言でしたわ」


    田中「ふん、まぁ良い。それよりあの雑種共は一体何を騒いでおるのだ」


    ソニア「あ!そうでした、アレは……!」

    田中「アレは…?」

    ソニア「…」


    田中「おい、どうしたソニアよ」


    ソニア「…」

    ソニア「……うぅッ……!」ジワッ


    田中「えっ!?チョッ…!」o(T△T=T△T)o

    田中「ドドドどうしたのだ、俺様が認めた数少ない相手である貴様が泣いて取り乱すなど!」 ←精一杯の慰め



    ソニア「も、申し訳ありません。現実を…受け止められなくて…ッ!」ヒグッ!


    田中「…して、どうしたのだ」


    ソニア「ハイ。実は…この間CCGが12区に詰め掛けて行かれまして」


    田中「12区といえば…確か、『盤上の女王(セレス)』が統治していたな」

    田中「…まさかッ!!?」


    ???「いや、違ーぞ。アイツを殺ったのはそこのイカれヤローだ」

    戦刃「…は?」ピクッ

    ???「だから違うぞ兄弟!セレス君は死んでなどいない!」


    ソニア「オ,大和田さん、石丸さん…」ヒクッ


    先程まで沸騰(寸前)していたリーゼントと軍人服が近くまでやって来た。(どうやら女の涙には敏感らしい)


    大和田「けど!山田はアイツ(江ノ島)がセレスを殺したって…!」


    石丸「江ノ島君は攻撃を放っただけで、殺したかは見ていないと話していただろう!?」


    大和田「どっちでも一緒だ!仲間に手をかける奴なんて許せるかよ!?」


    石丸「し、しかし兄ダ…戦刃「ねぇ。誰がイカれヤローだって?」ユラァ

    石丸「い、戦刃君!?」


    大和田「ア"ァ"?んなのテメェんとこのクソ包帯以外何処に居んだよ?」ギロ


    戦刃「ッ! お、お前ェ~~~!」ギリギリ

    大和田「んだテメー、殺んのかァ?!」ボキボキ

    石丸「け、喧嘩は止めないか兄弟!」

    江ノ島「うぷぷ」



    田中「静まれ」ズズズ

    「「「 !? 」」」バッ


    流石は【アオギリの樹】の幹部達だ。

    田中の殺気にも怯えず一瞬で臨戦態勢をとってきた。


    田中「事情は何となくだが分かった。
    だが全員が自分の主張をするのは非効率だ」


    そう言って顔をソニアの方に向ける。

    未だに泣いた跡が残っているが少し落ち着いたらしい。


    田中「ソニアよ。辛いとは思うが事の詳細を頼む」 


    ソニア「!」グシグシ

    ソニア「ハイ!」


    先程まで争っていた他のメンバーも、それについては異論が無いので黙っていることにした。

    田中もそれを確認してか、今出した殺気(赫子)をしまう。



    大和田(ったく、何て哀しい殺気だよ。テメーだって辛いんじゃねーか)



    『仲間内で争いが起きたら必ず間に仲介を立てること。』

    これは穏便派(彼ら)唯一(・・)の主である隻眼の王が、彼らのために幾つか設けてくれたルールの内の一つだ。


    争いを好まない王の意志が形に残っていたからこそ、穏便派は今まで過激派に手をあげなかった。


    江ノ島「ッチ」
    江ノ島(あ~~ヤダヤダ、絆なんてさ。滅んじゃえ)


    過激派(彼女達)にとったらそんなものに従う義理は無いのだが、これ以上突っかかっても無意味な事だと判断した。

    なので江ノ島と戦刃は、全く面白く無さそうにその光景を眺めていた。
  218. 229 : : 2017/01/28(土) 23:12:20
    確かに江ノ島にとっては、面白くない光景だね
    でもさすがは、七海と思う所があるww
    これからの穏便派と過激派の行方が気になるなぁ
  219. 230 : : 2017/02/01(水) 06:40:27

    田中「成程。つまり江ノ島は倒れているセレスを気にかけず、辺り構わないで攻撃した…ということだな」


    ソニア「ハイ…助けたのは山田さんだけです」


    大和田「やっぱテメー等みてーなのは生かしておけねーな!」ビキビキ


    戦刃「何?殺る気?」ズアァ


    石丸「待つんだ兄弟!それでは話し合った意味が無いだろう!?」


    ソニアから話を聞き終わった時、田中は静かに目を閉じた。


    怒ってない訳ではない。
    むしろ標準語(厨二病)を扱えない程の(いか)りに達している。


    だが、感情に身を任せるような事はしない。
    ここで自分まで己を見失うようでは、この先で生きていけないと分かっているからだ。



    田中「落ち着け雑種共。下等生物は騒ぐことしか出来んのか?」


    大和田「ア"ァ"!?オイ、今なんつったゴラァ!?」


    ソニア「た、田中さん?」


    田中「先ず山田をここに召喚せよ。奴には話の真偽を聞く必要がありそうだ」






    そして数分後――

    そこには生気が薄れ、この数日見なくても分かるくらいにまで体重は落ちていた。


    山田「……拙者に…何用ですか?」


    その姿を見て、全員の息が詰まった。


    が、覚悟を決め、改めて口を開いた。


    田中「セレスを殺ったのは、コイツ等か?」


    とても短く、それでいて核心を突く質問をした。


    山田「…」

    山田「違います」


    ソニア「えっ!?」


    山田「僕が…悪いんですッ」

    山田「側に居ながら……ヒグッ…黙って見ることッしか…出来なかったボグがッ…!ニげたン"です!」


    石丸「山田君…!!」ヒグッ


    山田「『盾』としでッ!守ル"と
    ぢがッだ(誓った)のにッ!…でぎないボガァ…!」 



    ふと、誰かが山田の肩に優しく手を添える。


    田中「もう良い。貴様がどれだけ己に悔いてあるのかだけでも知れただけで、セレスは報われたと思うぞ」


    山田「ワ"ナガガンダム"ドゥノ(田中眼蛇夢殿)!」ドバー


    石丸「そうだぞ山田君!君一人が背負う必要なんてないんだ!」


    山田「ф*эЬТдФ(石丸清多夏殿)ー!」ザバァー









    江ノ島「あのー、それについてちょっと良いかな?」(´・ω・)∩


    大和田「テメーは出てくんな、ミイラ女」ギロッ

    戦刃「…殺す」チャキ


    江ノ島「あー、ハイハイ。怒ってくれてあんがとねー(棒)」


    適当に戦刃を制すると、視線を此方に向けてきた。
    それは有無を言わさない、挑発的なモノである。


    江ノ島「で、喋っても良いかな?」








    ――黄桜サイド――

    黄桜「お、着いたぞここだ」


    黄桜に教えられて辿り着いたのは4区にある大病院。

    1~3階までは一般人のためのものであり、4階と5階が喰種捜査官専用となっている。

    東京には捜査官のための施設が幾つも用意されており、特に本部(1区)の近くには、こうした所が多い。


    九頭龍「4区か。ここのリーダーは確か『崩姫』だったな」


    辺古山「ハイ。複数での戦闘を得意としていますが、単体でもSレート認定されている【アオギリ】の幹部です」


    左右田「ったく、どうして【アオギリ】ってーのはこうもSレート以上がゴロゴロいんだよ」


    豚神「それだけ『隻眼の王』が奴等にとって影響を与えているんだ」

    豚神「逆に、奴を叩けば【アオギリ】も衰退していくだろう」


    左右田「ん? でも『隻眼の王』って言ったら…」ドン

    左右田「うぉっと!」グラッ
    ???「うわわっ!」ドサッ


    道を歩いてたら横から走ってきた誰かとぶつかり、その衝撃で尻餅をついた。



    黄桜「オイオイ、大丈夫か?」


    左右田「痛ッつつ……あぁ大丈夫だ。おい、気を付けろ…」

    左右田「って、お前…御手洗じゃねーか」


    御手洗「アレ、左右田君? それに豚神も」


    豚神「貴様こんな所で何をしている?」


    御手洗「え? 何ってお見舞い…」


    そこにいたのは左右田のアカデミー時代同期であり、今は松田特等直属部隊に所属している御手洗亮太だった。


    「あ、御手洗いたー!」

    「む?黄桜准特等までどうしてここに?」

    「こ、こんにちはぁ」


    そしてそれに続くように女の子(と男の娘)が姿を表した。


    黄桜「あ、君達は確か…」


    朝日奈「どうもー!朝日奈葵っすー!」

    大神「大神さくらだ」

    不二咲「フ,不二咲千尋ですぅ」



    こうして、総勢四人と出くわした。

  220. 231 : : 2017/02/01(水) 07:09:47
    No.1006 不二咲千尋(17)

    松田部隊所属
    2016年入社、現在の階級は三等捜査官。
     

    アカデミー83期生次席。
    アカデミー時代からサポート技術においては他者の追随を許さない程の力を持つ。
    特にパソコンの扱いは最早そこらのハッカー等よりも優れてるため、担当は情報収集。

    余談だが、共に入社してきた苗木三等と朝日奈三等とはプライベートでも一緒になるほど仲が良い。
  221. 232 : : 2017/02/01(水) 07:09:54
    No.291 御手洗亮太(21)

    松田部隊所属
    2013年入社、現在の階級は一等捜査官。
     

    アカデミー80期生。
    個の強いサポート(松田)部隊に所属する苦労人。最近は不二咲三等が入隊したお陰で幾分か気持ちが和らいでいる模様。

    高い想像力があるが、人とのコミュニケーション不足により部隊での担当はシュミレート再現(兼雑用)となっている。
  222. 233 : : 2017/02/01(水) 07:29:23
    戦闘用員(黄桜、朝日奈、大神)の説明は後々追加しておきます。
  223. 234 : : 2017/02/02(木) 07:28:42
    御手洗は、走る程何を急いでたのかな?
    朝日奈と大神がて出来た!
  224. 235 : : 2017/02/16(木) 23:09:03
    黄桜「えーと…」

    黄桜「あ、そうかそうか。不二咲君と朝日奈君は苗木君と同期だったね?」


    朝日奈「はい!なので様子を見に来たんですけど…」

    大神「ちなみに我は朝日奈のお付きだ」


    御手洗「ボ,僕は不二咲君が行くって言ってたから…」


    朝日奈「だけど突然居なくなるし、見つけたと思ったら急に走り出すんだもん~」

    御手洗「ゴ,ごめん…」


    不二咲「そういう訳なんですけど、今は苗木君面会謝絶みたいで退き返されました」


    辺古山「未だ昏睡状態な上に両手が使えないのだ。致し方無い」


    九頭龍「おい!ペコ!」

    豚神「…」

    辺古山「ス,スマン!」


    そうなのだ。苗木は豚神達が『ゴスロリ』と戦っている間、霧切を護りながらあの『虎䝞』と対峙していた

    結果は惜敗


    だが、救援要請を受けてからカムクラ特等が来るまでの時間を稼ぎ、尚且つ重症を与えていた事から、木犀章(もくせいしょう)白単翼賞(はくたんよくしょう)を授与されており(本人は知らないが)、階級も三等から二等へと昇進していた。

    (ちなみに豚神も単体で『ゴスロリ』を撃破したことから、白単翼賞(はくたんよくしょう)と准特等に昇進となった)


    不二咲「なのでこれから霧切上等と舞園二等の見舞いに行こうとしてたんです」


    黄桜「あの二人のかい?」


    大神「我が提案したのだ。未だ面識は無いがその内共に闘うのだ。顔を合わせた方が良い、と」


    黄桜「だったら丁度良い。俺達もこれから二人の所へ行くんだ。一緒にどうだい?」


    四人は互いの顔を見合わせた後、此方に視線を戻して

    「「「はい!ご一緒させてください!」」」






    ※補足
    ・ 木犀賞  30体/年 ←(一年間に30体駆逐)
    ・銀木犀賞  50体/年
    ・金木犀賞 100体/年

    (CCGの象徴である鳩の翼がモチーフ)
    ・白単翼賞 Sレート駆逐
    ・白双翼賞 SSレート駆逐
    ・白龍翼賞 SSSレート駆逐


    ・龍吉賞
    偉大な功績を収めた喰種捜査官に贈られる
    この勲章は捜査官にとって最高の名誉。
  225. 236 : : 2017/02/16(木) 23:17:37


    「…あそこに『奴』が居るのか?」


    「ハイー!そうなのですぅ~!」キャピルン!


    「江ノ島…といったか」


    江ノ島「ん~? 何々~?」


    「貴様の目的は何だ」


    江ノ島「は? 目的?」


    「『奴』は俺が長年探し続けた。
    だというのに今までその行方すら掴めてこなかった…」

    「だがお前はそれを探し当て、更には何の見返りも求めず情報を俺に寄越した」

    「そうまでしてお前は俺に何を望む?」


    そこで一瞬キョトン顔をし、包帯の上からでも分かるくらいの笑顔を見せる。


    江ノ島「ヤッダなぁ!没落貴族の君に何かを求めてもそれが叶わないくらい分かってるよぉ!」

    江ノ島「ってかもう金も権力も無いくせに今まで探せるとか思ってたのー?! マジウケるーwww」


    「‼ キッ,さまぁーーーー!!!」


    プライドを傷付けられ、元より煽り耐性が無い性格ゆえ、その一言で彼の怒りは頂点に達した。

    額に青筋を浮かべながら彼女に突っ込むその姿は些か滑稽だ




    だが2歩目を地につける前に、目が上に、背中が下にと身体が大きく反転して派手に転んでしまった


    「むぐっ!」ドッ


    結果、受け身も取れず仰向けの形になる

    戦刃「盾子ちゃんには指一本触れさせない」


    彼を倒したのは江ノ島の従者()の戦刃だった。
    踏み出した脚に自分のを絡ませ、バランスを崩したところで倒しにかかったのだ


    江ノ島「うぷぷ。見事な転びっプリだったね~。流石は()御曹司…かな?」


    「クッ!!」


    地面から起き上がる際、思ったよりも激しい痛みに両手膝をつき、四つん這いの姿勢で相手を見上げる…

    彼にはそれが酷く屈辱的なモノとして今でも脳裏から離れない



    (俺を見下すな!跪け!地に埋まれ(俺は強い凄い聡い偉い賢い鋭い気高い尊い)!)グググ



    江ノ島「アタシはただお前が持ってる兵隊で場を乱して欲しいだけ…」

    江ノ島「アンタ『自身』には砂粒程にも期待なんてしてないよ」


    忘れるなよ((落ち着け俺))!この同盟(・・)は一時的なモノだ。
    …せいぜい覚悟しておくんだな((俺に殺されてろ))俺自身(・・・)の手で『奴』を葬ったら次は貴様らだ!」


    江ノ島「アハハ! …… 」

    江ノ島「…殺ってみろよ?」ズァァ


    戦刃「負ける気…しない」


    「嘗めるなよ、『ロゼ』を!」

    「貴様等は直ぐに後悔するだろう!俺を怒らせた事を!」


    江ノ島「ついでに脚引っ掛けられて転ばされた事も?」( *´艸`)クスクス


    「ッ! 今の内に笑うがいい!俺に(・・)為す術もなく蹂躙されるのを怖れながらな!」

    「俺はやるぞ。必ずこの手でかつてを取り戻してみせる…!」


    そう…







    十神『十神の名にかけて!』
  226. 237 : : 2017/02/20(月) 15:20:15
    十神と江ノ島が手を組んだのかな……?
  227. 238 : : 2017/02/22(水) 19:56:21
    喰種捜査官と市民を共に迎えられる病院とはいえ、清潔感ある場所に仕事終わりの彼ら(捜査官)が居たのでは一般人も落ち着かないだろう。


    という訳で理由を説明し、職員用の通り道から舞園達の個室へと向かう。


    黄桜「っと… ここだな」ガラッ


    九頭龍「ってオイ!ノックも無しかよ!?」


    病室とはいえ相手は年の離れた少女達だ。
    コレで黄桜が班長という立場で無ければ変態扱いモノだが…



    …が、そこで待っていたのは少女の悲鳴とか罵詈雑言ではなかった。


    日向「あれ、黄桜さん? それに皆も」


    大神「む?日向も来てたのか」


    舞園「皆さんどうしてここに?」


    九頭龍「何でって…見舞いに来ちゃ悪いのかよ」


    霧切「まさか。とても嬉しいわ」フフッ


    仁「予定通りか…お前らしくも無いな」


    黄桜「ヤッダなぁ、こんな大事な時に遅刻なんかしませんって…」


    御手洗「き、霧切特等!?何故ここに!?」


    仁「娘の見舞いに来るのは当然だと思うが?」


    ???「どうやら黄桜さんを通して君達を集めたのは霧切特等みたいよ?」


    不二咲「あ、ハイ…?」

    朝日奈「ア,あのー、失礼ですがお名前は?」


    朝不(( 霧切さんって副局長の娘なんだ… ))


    中には舞園と霧切。
    そして日向と霧切仁の他に、二人には知らない女性がいた。


    ???「はうぅ! かぁいいよぉ!」バッ

    不二咲「えっ…?」ビクッ


    ???「あっ、ゴメンね? 気にしないで」ケロッ


    不二咲「ハ,ハイ…」
    (何だろう。一瞬だけ凄く寒気がした)


    左右田「あっ!雪染先生チーッス!」(*・∀・*)ノ


    雪染「コラ、左右田君!チーッスじゃなくて『こんにちは』でしょ!?」ウガー

    左右田「スンマセン!」バッ


    豚神「フン,変わり無いみたいで安心したぞ」


    雪染「それ私が言うべきセリフじゃないかな、豚神君?」


    自分達以外の全員がその見知らぬ女性と親しげに話していたり、「先生」と読んでたりするので彼女達(彼と彼女)は益々混乱してきた。

    (ちなみに日向とは既に交流済)


    黄桜(雪染ちさ君。宗方部隊所属の上等捜査官だよ)ヒソヒソ

    黄桜(数年前までアカデミーの講師をやっていて九頭龍君とか左右田君とかも彼女に教えられたんだ)ヒソヒソ

    朝日奈(そうなんですかー)ヒソヒソ


    雪染「そこー!コソコソ隠れて何話してるんですかー!?」


    仁「雪染君。病室では静かにしてくれたまえ」


    雪染「ハッ(゜ロ゜)! ゴメンナサイ!」バッ



    日向「あっ、御手洗も来たのか。久しぶりだな」


    御手洗「え?あ…ウ,うん。久しぶり」フイッ


    日向「…」

    御手洗「……」



    朝日奈(何か気まずい雰囲気だけどあの二人って仲悪いのかな?)ヒソヒソ

    不二咲(えぇ… どうなんだろう…)ヒソヒソ

    大神(全く…男というのはいつの世も変わらぬな)フッ



    辺古山「ところで雪染先生はどうして此方へ?」


    雪染「何でもなにも…私は皆を裏からサポートする後方支援要員よ?」

    雪染「怪我した人の治療に来るのは当たり前じゃない!」


    九頭龍「じゃあ苗木の所には行ったのか?アイツが一番重症なんじゃねーか」


    雪染「そうしたいのは山々なんだけどね…」チラッ


    仁「…」

    仁「悪いが許可できない。彼が目を覚ますまでは大人しく待っていてくれ」


    左右田「えー、何だよ良いじゃんー」ブーブー


    仁「……何か文句でもおありかな、左右田二等?」


    左右田「イ,イエ!とんでもありません!仰る通りです!」Σ(゜Д゜)ゞビシッ






    霧切「で? そろそろ本題に移さないのかしら」


    左右田「え?本題?」


    霧切「貴方達は私達の見舞いも兼ねて【アオギリ】と【ピエロ】の対策を知らせに来たのよね?」

    霧切「だったら面会時間も限られてるし、早くお願いしたいのだけれども」


    黄桜「うん、そうだね。取り敢えずは仁の説明を聞いておこっか」



    ピリッ


    (( ッ! ))


    その言葉で場の空気が一瞬にして張り詰める。

    こういう事に慣れていない新人二人はその重圧に軽い目眩こそしたが、それでも自分も役に立つんだという思いを胸に、必死に耳を傾ける。



    朝日奈(何だか変な気持ち。何時もだったら苗木がアタシ達を慰めてくれるから…)フゥ

    朝日奈(って何弱気になってるの私!もっとしっかりしなくちゃ!)

    不二咲(苗木君の分も僕達が頑張らなくちゃ!)


    御手洗(…)

    日向(御手洗、 お前やっぱり…)




    ただ、まだ誰も知らない。

    今のこの瞬間にも、日常という歯車が狂いだしている事に…








    苗木「喰種は……コロス…」パキッ

    七海(…)

  228. 239 : : 2017/02/22(水) 19:56:39
    No.243 雪染ちさ(26)

    宗方部隊所属
    2005年入社、現在の階級は上等捜査官。

    難しい任務が多い宗方特等や逆蔵准特等を裏から支える影の立役者。それ以外にも他の部隊や班を回ったり、オペレーターとして任務の指揮を任されたりとしている。
     
    その幅広く質の高い仕事ぶりから、任務の一環として2009年より何度か講師としてアカデミーに赴いて講義を行っている。
    あくまで臨時としてだが、九頭龍と辺古山
    そして左右田と御手洗も指導した事がある。
  229. 240 : : 2017/02/22(水) 21:43:41
    雪染ダァー!!*\(^o^)/*
    そして苗木は、いったいどうしたの?(°_°;)ハラハラ(; °_°)
  230. 241 : : 2017/02/22(水) 23:11:20
    苗木がグール殺したいと言ってるのを間近で聞いてる七海が報われない・・・
  231. 242 : : 2017/02/25(土) 10:17:42
    黄桜「それじゃ、まずは俺が潜入して得られた情報を伝える…」

    黄桜「んで、それが終わった後は仁の方から作戦の説明と君達の役目を教える。
    これで良いか?」


    仁「あぁ。頼む」

    黄桜「んじゃさっそく…」


    そう言って、黄桜は自分が聞いてきた事を伝える―




    ―【アオギリ】サイド―

    石丸「では良いかね!?僕達【アオギリ】はA・Bの2つの隊に別れそれぞれ行動してもらう!」ビシッ


    ソニア「Aは『烏』率いる『ピエロ』。それに半数の『過激派』と共に各区を襲撃…」

    ソニア「Bは混乱に乗じて警備が疎かになったコクリアに残りの『過激派』と襲撃し仲間を助ける…でしたよね?」


    大和田「チッ,ムカツク奴ら(「ピエロ」や「過激派」)なんかと共闘っつーのも気に食わねーが、何より『襲撃』するっつーのが俺達(穏便派)()り方に合わねーな」


    田中「それについては仕方あるまい。
    いくら俺様と言えど、魔城の要塞が堅固な防御を有したままでは無事生還するのは容易くとも、任務自体は遂行出来そうにもあるまいしな」


    ソニア「それに…私達の目標は仲間の救出ですが、彼らが無差別に民間人を殺めるのを阻止するのも徹底しなければなりませんし」


    田中「全く…難儀な事だ。何故協力を自称する奴等の監視にも気を配らねばならないのだ」


    ソニア「ですが、彼女の……七海さんが…夢見た『人と喰種が共に生きる世界』を目指すにはこうした行動も必要な事だと思います」


    石丸「…うむ」
    大和田「…あぁ」
    田中「その通りだ」

    ソニア「…」


    これまでと比べ反応が薄い―

    ソニア(やはり、皆さん未だあの時の事が…)


    そこで今までその光景を眺めているだけだった山田がスックと立ち上がり、その場にいる全員を見据えて言葉を発した。


    山田「申し訳ありませんが、今回の拙者はそんな事(・・・・)を気にしてる暇はありません」


    「「「!!!」」」

    大和田「…ア"ァ"?」ピキ


    山田「元より拙者はコクリア破り(Bの方)なので関係無いのですが…」

    山田「ただ、そういう状況になったのであれば、容赦なく殺るつもりです」


    大和田「ちょっと待てやゴラァ!!」ガタッ!

    山田「フぐッ!」ギュッ


    ソニア「オ,大和田さん!?」
    石丸「兄弟!?」


    大和田が声を上げるや否や、山田に掴みかかって胸ぐらを締め上げていた。


    山田「グッフ…!」


    大和田「テメェどういうつもりだ、言ってみろ!」ギリギリ


    山田「どういう事も何も…そのままの意味です…ッ」

    山田「喰種捜査官だろうが民間人だろうが、邪魔をする者には手加減なんてしませんぞ!」


    大和田「…自分の目的の為に無抵抗な人間を殺すのかぁ?邪魔するからって躊躇いなく殺るのかぁ?」

    大和田「んなのアイツ等(過激派)と何も変わりねーじゃねーか!」

    大和田「テメェは一体何を聞いてきたんだ!アイツは…ッ,七海は俺達を『信じる』って言ったんだぞッ!」

    大和田「それなのにテメェは…ッ!アイツの信頼と夢をぶち壊す気なのかよッ!」



    山田「信じた結果がコレじゃないかッッッッッ!!!!」ガッ!



    大和田「!!?」ビリビリ

    石丸「ヤ,山田君…?」


    山田「『人として生きていきたい』とか!
    『もう誰も殺し(喰べ)たくない』だとか!」

    山田「そんな理想を夢見て夢見て(望んで)夢見て(渇望して)…!」

    山田「それなのに七海千秋殿は!結局その人間に裏切られて殺されたんだろッッッ!?」


    大和田「けどアイツは!それを憎むような奴じゃねーよ…」


    山田「だったら赦して良いのか!?」

    山田「この恨みを、憤りを、憎しみを!ただ無いものとして無視し続けたまま人間と仲良くしろっていうのかッ!!」


    大和田「…ッ!」


    山田「今回だってそうだ…。僕とセレス殿はただ静かに暮らしていただけ…」

    山田「喰っていた人間だって、世にしたらクズ扱いの最低な奴らが殆どだったよ…」


    山田「なのにッ!人間はそんな僕らを許そうとはしなかった!」


    山田「僕達は、ただの人間に売られたんだ…ッ!」

    山田「『CCG(白鳩)』から貰えるっていう補償金なんかの為に…!」


    大和田「ッ!」


    山田「僕はもう容赦なんかしない」

    山田「邪魔する奴は殺す」

    山田「そうやって僕は…」


    山田「今度こそセレス殿を助ける(・・・・・・・・)んだ!!!」
  232. 243 : : 2017/02/25(土) 13:49:33
    山田…
    そういえばv3のメンバーって出ますか?
  233. 244 : : 2017/02/25(土) 17:58:51
    >>243
    安心してください。ちゃんと出ますよ( ^ω^)

    ただ言い訳させて貰うと、実際にv3プレイしてみてこの後の展開を多少なりとも変えてしまったので、話が巧く纏まるかは僕にも分かりません。

    ちょっとそこら辺は目を瞑ってやってくださいm(_ _)m


    少しネタバレすると、v3で消化仕切れなかった「あのネタ」を使う予定です。
    何のネタかはその内ということで。



    ここまで長々と失礼しました。
  234. 245 : : 2017/03/01(水) 23:43:46
    田中「待て。そもそもその言葉自体信じられるかどうかも疑わしい。奴の虚言かもしれんぞ?」


    ~回想~

    江ノ島「あのー、それについてちょっと良いかな?」(´・ω・)∩

    ~~~~~

    江ノ島「まず私、セレスなんて殺してないよ?」


    戦刃(あれ?そうだっけ)


    山田「え!!?」


    大和田「待てやコラァ!そんな訳無いだろ!」


    江ノ島「そんな訳無いって、どうしてそう言えんの?」


    大和田「ア"ァ"?」


    江ノ島「お前らがそう思ってる理由って、山田がそもそも山田が勘違いしてたからだよね?

    江ノ島「実際、彼女の死体を目撃したわけじゃ無いでしょ?」


    山田「た、確かに…」


    江ノ島「まぁ、確かに部屋の中をお構いなしに撃ち込んだよ?それは本当」


    大和田「やっぱテメー殺す」ボキボキ


    石丸「待つんだ兄弟!殺すのはさめて話すのを聞いてからだ!」


    ソニア「殺すことに変わりは無いんですね」アハハ


    江ノ島「でもしょーがないじゃん!
    あそこでアタシ等全員捕まったら誰が彼女を助けにいくんだっつーの!」


    山田「じゃあ!セレス殿は今も生きてるんですね!?」


    江ノ島「うんうん!セレスは弐大と一緒にコクリアに収容されてるよ!」

    江ノ島「君が助けに来てくれると信じてね」ニヤ

    ~回想終了~


    田中「そもそもあのタイミングで言うこと自体怪しい。奴は何かを企んでるとみて間違いない」


    山田「じゃあっ!セレス殿は死んだって言いたいのか!僕の思い違いかもしれないのに!」


    田中「…」

    田中「奴の言葉を全て信じるな。そうしなければ後で後悔する、必ずな」


    山田「もういいです。僕は僕のやり方で彼女を助け出します」プイ


    ソニア「山田さん!」


    山田「どうせ本番は別行動なんですよね?」


    石丸「うむ。そうだとも」


    山田「であれば、別に協力を求む必要は無さそうですな」スタスタ


    山田は背を向け、廊下を出ようとする。
    もう話すことなど無いという意思表示だ。


    大和田「オ,オイ!」
    ソニア「山田さ…田中「山田ァ!!!」

    山田「!」ビリビリ


    ソニア「田中さん…?」


    田中「…死ぬなよ」

    山田「……はい」バタン






    戦刃「ねぇ盾子ちゃん」


    江ノ島「ん~? なぁに~?」


    戦刃「どうしてセレスが生きてるなんて嘘ついたの?アイツは盾子ちゃんが殺したんだよね?」


    江ノ島「残姉には教えられないよ。なんたって頭残念だし」ウププ


    戦刃「え!そんなぁ」ガーン


    江ノ島「でも敢えて言うなら……『火付け役』ってところかな?」


    戦刃「火付け…?」


    江ノ島「アタシが準備するのはここまで」

    江ノ島「後はあっちにいる『裏切り者』が巧くやってくれれば問題ないね!」


    戦刃「ねぇ盾子ちゃん、その裏切り者って…」


    江ノ島「うぷぷ。楽しみだなぁ、あぁ楽しみだ」


    戦刃(あ、これ完全に聞こえてないやつだ)




    江ノ島「今回の作戦。なんと言っても魅力は【アオギリ(うち)】と【ピエロ】による圧倒的戦力差…」

    江ノ島「それを活かさない手はないよねぇ」ゴト

    東京24区の地図と駒を掴む。



    A隊:24区襲撃
    B隊:コクリア襲撃



    C隊:『CCG本部』襲撃

    江ノ島「うぷぷ。薄く延ばした盾なんか持ってたら一気に頭ぶち抜くよ」


    そして……




    D(十神)による『苗木誠』殺害



    江ノ島「さぁ、復讐だ」

    江ノ島「お前がアタシにくれた絶望、次は倍にして返してやる」

    江ノ島「お前の大事なモノ()完膚無きまで(ぐちゃぐちゃ)に痛めつけて殺してやるよぉ」ニッコォォォ


    江ノ島「今度こそお前を最高の地獄へ叩きつけてやる…!」





    江ノ島「ねぇ…………?  凰王ゥ」
  235. 246 : : 2017/03/02(木) 01:27:34
    江ノ島って七海に恨みでもあったのか?
  236. 247 : : 2017/03/04(土) 00:07:01
    -『CCG』サイド-

    仁「--以上が今作戦における作戦の全貌、そして君達の役割だ」

    仁「分かってると思うけど、この闘いで重要なのは『いかにして敵との戦力差を埋められるか』、これに尽きる」


    黄桜「そして本来の目的も忘れてはいけないよ~?」


    日向「コクリア防衛組はSS+レート、『虎䝞』及びその他喰種の解放阻止…」

    舞園「24区配置組は、第一に住民の避難とし、出来るのであれば『ピエロ』を率いるS+レート、『烏』の駆逐ですよね?」



    仁「あぁ。それだけでも覚えてくれれば問題ない」

    仁「今回は過去に類を見ない程の戦いになるだろう。当然、死者も出る…」

    仁「それでも闘ってくれるか?」


    豚神「…」
    日向「あぁ」チラッ
    朝日奈「」フンスーッ!
    大神「フッ」
    左右田「ォ,オウ!」ガクガク
    九頭龍「ヘッ」
    辺古山「…」スッ

      「「「 当たり前(だ)(です)!」」」



    雪染「フフッ、頼もしいわね、皆」

    仁「よし、それでは頼んだぞ」ニコッ


























    僕は喰種を許さない(殺すタヒ)




    ……ジッ……………ジジッ……………………………ジリッ…………………ッリ…………………………………ァ……………………ザッ……………………………………………………ザザッ……………………………
















    (……………)



    (・・・・・・・・・・・・・・・母さん?)






    ねぇ、違うよね?母さんじゃないよね?

    だって、コレ(・・)が母さんだったとしたら、どうして腹から上が喰われてるの(脚だけ遺して死んでるノ)



    どうして、帰ってきたら玄関で死んでるの………?


    (ねぇ、何か言えよ
    母さんは何処なんだよ、 オイ…!)


    母さん?「」




    ヒクッ



    (!)


    血の匂いだ--

    コレ(母さん)じゃない、
    別の誰かのモノがリビングから匂ってくる-






    (・・・・・・・・・違うよね?)ヒタッ


    ヒタッ ヒタッ ヒタッ ヒタッ ヒタッ ヒタッ ヒタッ ヒタッ ヒタッ

  237. 248 : : 2017/03/04(土) 00:07:19


    ……………アレ? 足が勝手に動いてる


    ヤダ……そっちにヤダッ行きたくないヤダッ!

    ……止まれ足 それ以上はダメだ!


    どうして進む(ヤダヤダヤダヤダ)真実が見たい((ヤダヤダヤダヤダ))




    …………有楽町

    日比谷 霞ヶ関 神谷町(ちょっと確認するだけ)

    六本木
       広尾
         恵比寿
            中目黒
               …恵比寿


    …駄目だ 早く着きすぎる遠回りしよう



    渋谷
      原宿
    代々木、新宿、新大久保、高田馬場、目白、池袋、大塚、巣鴨、駒込、田端、西日暮里、日暮里、鶯谷、上野、御徒町、秋葉原、神田、東京、有楽町、新橋
    (修学旅行で泊まった新橋のホテルは楽しかった)
    浜松町、田町、品川、大崎、五反田、目黒

    恵比寿…渋谷原宿代々木新宿新大久保高田馬場目白池袋大塚巣鴨駒込田端西日暮里日暮里鶯谷上野御徒町秋葉原神田東京有楽町新橋浜松町田町品川大崎五反田目黒恵比寿渋谷原宿代々木新宿新大久保高田馬場目白池袋大塚巣鴨駒込田端西日暮里日暮里鶯谷上野御徒町秋葉原札幌神田東京有楽町新橋浜松町田町品川大崎五反田目黒恵比寿渋谷原宿代々木新宿新大久保高田馬場目白池袋大塚巣鴨駒込田端西日暮里日暮里鶯谷上野御徒町秋葉原神田東京有楽町新橋浜松町田町品川大崎五反田目黒恵比寿渋谷原宿代々木新宿新大久保高田馬場目白池袋大塚巣鴨駒込田端西日暮里日暮里鶯谷上野御徒町秋葉原神田東京有楽町新橋浜松町田町品川大崎五反田目黒恵比寿渋谷原宿代々木新宿新大久保高田馬場目白池袋大塚巣鴨駒込田端西日暮里日暮里鶯谷上野御徒町秋葉原神田東京有楽町新橋浜松町田町品川大崎五反田目黒恵比寿渋谷原宿代々木


    ・・・・・・・・・






    リビングでは妹のこまるが頭だけ消えて(喰われて)死んでいた-


    (……なぁ、こまる  どうしてだよ…
    僕は妹不幸な兄だったか?最期なのに顔を見せてくれないのはお前の願いなのか?)フラフラ



    台所から…血ノ匂ヒがスル………


    ヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒ




    ソコニアッタノハ、全身滅多刺しニサレた父サンのタヒ体ダケだつた-


    (母さん(上無)父さん(タヒ体)こまる(頭無)…)


    (何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で楠で南で難で喃で軟ンデナンデナンナンデナナンデナンデンデ!??)






    そうだ、僕は…

    (ア………あぁ"…………!)

    親と妹を喰種に殺された…

    (~~~ッア"ア"ア"ァァァ………………!!!)
















    どうしようもなく惨め(こまる)で、弱くて(母さん)哀れ(父さん)な人間だ。




    (ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ッッッッッッーーーーーッッッ!!!?!!!?)







    ブツッ……ッン……












    苗木(…)ムクリ




    ・・・・・・




    あの日、僕は幸せ(家族)を全て亡くした。

    家族(幸せ)を殺した正体は喰種。
    (CCGの報告によると、)空腹に耐えられなかった野良が、たまたま家に居た皆を食べた(ふざけんな)んだとか。


    奇跡的に生き残った僕も、心のメンテナンスを受けなければならない日々…



    そしてある時気が付いた。
    "僕は喰種を許せない"んだと-



    間もなくして僕は喰種捜査官となった。


    僕から全てを奪った屑共(喰種)を、一匹残らず(千切り)殺す為--





    それなのに、『ドレッドホームレス』を殺る直前になって一瞬躊躇した。

    覚悟が足りなかった。
    甘さが出てしまった。




    だから-








    苗木「喰種は……コロス…(僕はもう迷わない)」パキッ

    七海(…)
  238. 249 : : 2017/03/04(土) 00:28:20
    疲れた~!

    東京喰種ってこういう場面でルビ使うこと多いから書いてると疲れる(でも書いてて楽しい)


    それと、今回の投稿でやりたかった苗木くんの過去と、原作の山手(宇井)特等の鉄オタ芸(?)が出来て、個人的には満足してます。
    (東京喰種:re 6巻参照)


    まぁでも、今この段階では書いてる方からしたら楽しいというのが最終的な結論。
  239. 250 : : 2017/03/04(土) 14:26:51
    苗木ぃ…(´・ω・`)

    あと、七海存命時代のアオギリの話見てみたいなあ…アニメのcパートみたいな
    七海生きてるかもだけど(中の人があの人だし)
  240. 251 : : 2017/03/04(土) 23:47:03
    >>250
    検討しておきます。

    …が、七海は存在自体がネタバレになるので、書くとしてもだいぶ先になると思います。

    まだ七海については伏せておかないといけない事が多いので!
  241. 252 : : 2017/03/08(水) 17:21:11
    テコとは、七海が鍵ナノかな?
    苗木もヤバイ感じだし……♪
  242. 253 : : 2017/03/09(木) 19:24:13
    ※248の山手線にひとつだけ札幌あるの見っけ!
  243. 254 : : 2017/03/19(日) 10:43:32
    まだかな〜…
  244. 255 : : 2017/03/19(日) 16:21:50
    病院での作戦会議を終えた後、俺の勧めで俺と何名かは20区にある喫茶店、《あんてぃく》へと赴いた。


    一緒に来たのは豚神九頭龍辺古山左右田、それに朝日奈と大神だ。

    大人組と通院組はそのまま病院に。
    残りの二人は不二咲が調べたいことがあるとかで誘いを断り、御手洗はそれに付いていく形となった…


    日向(いつか、アイツの誤解を解かないとなぁ…)


    豚神「おい、日向…」

    日向「ん?何d…澪田「喰らえっす!唯吹レインメーカーー!!」ズゴッ!

    左右田「アンギャーーーッ!」メシッΣ(゜Д゜)


    ゴトッ!…ン


    九頭龍「オ,オイ。今ヤバイ音しなかったか?」

    朝日奈「あれ、反応無いよ?おーい」ツンツン


    左右田「」シーン



    「「「 … 」」」


    小泉「大丈夫な訳無いでしょ!?明らかに意識失ってるじゃない!?」

    罪木「ふえぇぇーーー!!息をしてませ~ん!」

    辺古山「ふむ。緊急事態というやつか…」

    西園寺「アンタは何でそんなに冷静な訳?同じチームなんでしょ?」

    花村「んふふ♪ピンチは時としてチャンス…
    動けなくなった左右田君に夜這いを仕掛ける時が…ッ!」メゴッ

    大神「今の思いきりの良さ、見所がある。次はもう少し腰を下げた方がやり易いぞ」

    澪田「そうなんすか?あざーっす!」

    花村「」シュウゥ~



    ワイワイ,ガヤガヤ



    日向「ハハッ、アイツ等すっかり馴染んでるな。連れて来て正解だったな」


    豚神「全く…愚民はこういう所でのマナーも悪いのか」

    豚神「………」

    豚神「ありがとな」ボソッ


    日向「ん?何か言ったか?
    ってかさっきも何か言おうとしてなかったか?」


    豚神「何でもない、気にするな」

    日向「え、でも…」

    豚神「何だ?」

    日向「…」ジッ

    豚神「…」

    日向「いや、悪いな。確かに何でも無さそうだ」

    豚神「だからそう言ってるだろ」フンッ


    豚神のその様子を見て、日向は胸の内でホッと息をついた。


    日向(良かった。最近思い詰めた顔してたからな…)

    日向(迷惑かとは思ったんだが、やっぱりこういうのは誘っとくもんだな)



    日向(…)

    日向(豚神にこれ以上の負担はかけられない…
    【あの時】だって、俺が…)ムラッ

    俺ガ・・・救えたのに(“奴”を殺ッテれば)・・・・・・





         ~~~♪♪~~♪




    豚神「ん?」

    日向「?」



    突如として店内にピアノの音が響いた。

    しかしそれは心踊るアップテンポの音では無く、店の雰囲気に合わせたクラシック系の類いだ。

    しかも…


    小泉「あ…」

    辺古山「何だ?」

    九頭龍「あぁ…?」

    罪木「ほぇ?」

    大神「む…」



    決して大きくもないそれだが、その音色は事件発生中だったメンバーが思わず手を止め聞き入ってしまうくらいに…美しかった。


    そう、「美しい」のだ-

    音楽に疎い俺には「凄い」とか「上手い」といった稚拙な言葉しか浮かんでこなかったが、いざ声に出すとなると憚れる

    「この音色(芸術)をそんな言葉で表してはいけない」と、思う程に…






    演奏されていた約5分間の間、誰も喋らなかった

    あの澪田でさえ、無言で聞き入っていた。
    (ちなみに左右田はいつの間にか起きていた)


    最後に(ピアノで見えなかった)伴奏者が立ち上がり此方に向かって会釈する


    金髪セミロングに顔立ちは整っており、ピアニストというわりには活発的な雰囲気を纏った、俺達くらいの少女だ。
    (髪止めやスカートには彼女がピアニストだと分かる装飾はされてるが)


    日向(…? 誰かに、似ている…?
          でも、誰だ?)



    そして何事も無かったように店の出口へと進んでいく-



    日向(え、それだけ!?挨拶とかも無し!?)


    と内心驚いたが、扉の一歩手前で止まり、こっちに向き直る。

    そして何を思ってか、ジッと店内(正確には俺達を)見回した


    (((…?)))


    全員彼女の意図を理解できないが、本人はそれに満足したのか、さっきよりも明るい微笑みを浮かべ、店を出ていった…


    「…」スッ

    日向(!)

    カランカラン



    跡に残った俺達は、皆暫く呆けていたが次第に店内はいつもの喧しさに戻っていった


    豚神「何だったのだ、今のは?」

    日向「さ、さぁ?」


    偶然か必然か。

    先ほどまで日向の中で燻っていた何かが、あの演奏で本人の意識の中から消えていた-

    代わりに、ある疑問が頭に残る。


    日向(哀しい…眼をしていた)

    日向(一瞬だけ、ほんの一瞬だけ…振り返った時に見えたあの眼は一体…)


    尚、この場でその事に気付いたのは日向の他にもう一人だけいる。


    狛枝(…)
  245. 256 : : 2017/03/19(日) 16:23:03
    遅れてスミマセン!
    溜めてる分をゆっくり消化していきます!
  246. 257 : : 2017/03/19(日) 16:23:57
    赤松キター\(^o^)/
  247. 258 : : 2017/03/19(日) 16:26:32
    >>257
    読むの速いっすね!感激だす!Σ(×_×;)!
  248. 259 : : 2017/03/19(日) 16:36:35
    更新キター(≧∇≦)
    澪田小泉西園寺罪木花村はなんだ?(原作はまだ無印の二巻まで)
    赤松ちゃんはアオギリの幹部(穏便派)と予想
  249. 260 : : 2017/03/19(日) 16:41:42
    狛枝「やぁ日向くん!どうだった?彼女の演奏」

    日向「こ、狛枝!」

    豚神「誰だ?」

    日向「あぁ、コイツは…」

    狛枝「僕なんかの言葉で言い表せるなんて思っても無いけど、それでも素晴らしいと言わざるをえないよ!
    弾いていた彼女も、聞いていた皆も、とてもキラキラと輝いてたよ!あぁ!これこそが…希望なんだね」恍惚

    日向「見ての通り変態だ」

    豚神「成程」コク

    狛枝「やだなぁ~!そんな説明しないでよ。
    僕は《あんてぃく(この店)》の店長の狛枝凪斗だよ」

    豚神「何だそうか。てっきり本当に不審者かと思ったぞ」

    狛枝「アハハ。よく言われるよ」

    日向「『言われないように努力しろ』って何度言えば…! もういいや…」

    ▼日向創は諦めた



    日向(あ、そういえば…)


    日向「なぁ、今の奴って…」

    狛枝「あ、そういえば近頃大きな殲滅があるんでしょ?この辺…っていうか、この店は大丈夫かな?」

    豚神「安心しろ。誰も俺の安息の地(この店)を壊される事などしない…」
    (注)今回で初来店です。

    豚神「『十神の名にかけて』だ!」ビシッ

    狛枝「うわぁ!頼もしいよ!」希望!


    日向(まぁ良いか…)


    狛枝(…)チラッ




    ~~~~~~


    時刻は午後8時
    日向達が帰り、普段なら店も閉めている時間。

    だが狛枝凪斗はその場に残り、一人で珈琲を作っていた。
    彼の珈琲は花村ほどで無いにしろ、味は確かだと日向が前に言っていた。


    この後に訪れるであろう『客人』の分も用意して-



    カランカラン




    狛枝「ナイスタイミング。ちょうど君の分も出来たところだよ」

    「…俺様が来ることは知っていたか」

    狛枝「知ってたんじゃなくて、分かってたんだよ」アハハ

    「フン,なお(たち)が悪いわ」

    狛枝「え?そうかな…」


    軽口を言い合いながらも、その『客人』は用意された席に座る。


    「久しぶりだな、狛枝」

    狛枝「うん。久しぶり、田中君」

    田中「花村は…小泉は、澪田は、西園寺は、罪木は…元気か?」

    狛枝「うん。皆希望を持って生きてるよ」

    田中「そうか…」


    「「……」」


    田中「セレスが…死んだ」

    狛枝「うん」

    田中「奴は生きていると言っていたが、多分嘘だろう」

    狛枝「うん、そうだろうね」

    田中「弐大もコクリアに収容されている」

    狛枝「うん」

    田中「23区全ての防衛もしなければいけない」

    狛枝「うん」

    田中「だが人が…足りない」

    狛枝「うん」

    田中「だから…その……貴様の力をだな…」


    小泉「私達(・・)の、でしょ!?」バンッ

    「「 こ、小泉(さん)!!! 」」


    STAFF専用部屋から、すでに帰ったと思っていた小泉が…
    いや、花村や西園寺、澪田に罪木までもいる。


    小泉「狛枝アンタ…私達に秘密にしておこうと考えたって無駄よ。捜査官から情報は得たんだから!?」

    狛枝(日向君達か。全く…騙し通せると思ったのに、僕はなんてツイてないんだ)

    澪田「凪斗ちゃん水くせーっす!唯吹達、コクリアの方は無理でも区の防衛くらいなら出来るっすよ!」

    花村「ハ…ハハ…そうだとも。僕達にも、手伝わせてよ…」ガクガクブルブル

    西園寺「花村おにぃ、脚が止まらないね」クスクス

    罪木「わわ私も!倒すのは無理でも…治療くらいは出来ますぅ~!」


    それから小泉が一歩前に出て、二人を睨む


    小泉「狛枝、田中。私達にも手伝わせて。
    『助け合う』のが、あんてぃくの方針でしょ?」

    狛枝「うっ…」

    田中「し、しかしそれでは研究(・・)が…」

    小泉「千秋ちゃんだって…皆を見殺しにしてまで守ろうとはしない筈よ?
    だって、あの子はそうだから」

    狛枝「…」

    狛枝「田中君」

    田中「…仕方あるまい。力を貸して貰おうではないか」

    西園寺「貸して『下さい』でしょ~?」

    田中「むぐっ!」

    狛枝「アハッ、そうだね。希望の為に、皆で力を合わせよう!」

    西園寺「ぶー!全然違うよー!」

    罪木「良いじゃありませんか、ね?」

    西園寺「うっさいゲロブタ!お前は来んな!」

    罪木「ひぃぃ~!ぞんな~~!」メソメソ

    花村「まぁまぁその辺で…」

    田中「ふっ、相変わらずだな」


    田中「…」

    田中「では、改めて言わせて貰う…」


    田中「よろしくお願いします!」バッ

    小泉「」ニコッ



    「「「 勿論(だとも)! 」」」

  250. 261 : : 2017/03/19(日) 16:43:57
    >>259
    んー!残念、違います!(笑)

    穏便派は店員´sでした!
  251. 262 : : 2017/03/19(日) 16:52:21
    違った(´・ω・`)
    あとスーダンの喰種面子が平和で泣きそう…
    大和田石丸ソニアとも仲いいんだろうなあ…シミジミセレスや山田とも…
    しかしトワイライトが死にそうだ…
    狛枝って時点で嫌な予感しかしないけど店長ポジなら安心していいよね?
    あと3v3以外で出てないのは終里と腐川かな?
    どっちなのか楽しみだ(^_^)


    あ、余談ですが菜摘とサトウは出ますか?
  252. 263 : : 2017/03/19(日) 17:18:51
    >>262
    う~ん、残念ながら出ませんね。
    何せよく分からない者達ですから(勉強不足)

    あと、原作があの(・・)東京喰種ですから、大勢死ぬor生きてても性格終わってるのどちらかになるでしょうね(ゲス顔)


    さてさて、何人生き残るのやら(;・ω・)
  253. 264 : : 2017/03/19(日) 18:15:22
    部屋の電気は点けず、デスク上の頼りない明かりだけで一心不乱に何かを探す。

    この状態が一時間ほど続いたところで、不二咲は目当てのものを見つけて一息つく。

    不二咲「あっ…た……」フゥ

    流石に疲れたのか、小さい身体をめいいっぱい伸ばして達成感に浸る。



    御手洗「お疲れさま不二咲くん。はいコレ」スッ

    不二咲「わぁ!ありがとう!」ニコッ

    御手洗「い、良いんだよ。どうせ暇だったし」テレッ///


    御手洗があげたのはミルク多めのホットコーヒー。甘さ控えめの温かさが、疲れた身体に優しく染み込む。


    御手洗「ところで、一体何を探してたの?日向君のお誘いも断ってまで」


    この時、不二咲が「日向の誘いを断る」といった部分に少しだけ優越感を感じたのは御手洗だけの秘密だ。


    不二咲「コレだよ」スッ


    不二咲が見せてくれたパソコンの画面にはCCGのマークが入ったサイトが写し出されている。


    御手洗「珀…豹?何これ、喰種?」

    不二咲「違うかな。僕も最初はそう思ってたんだけど、どうやら捜査官みたい」

    御手洗「え?じゃあこのコードネームは…」

    不二咲「僕達CCGを真似て喰種が付けたあだ名みたいなモノだよ」

    不二咲「それも喰種に怖れられてる捜査官…例えば、逆蔵准特等とかは殴者(ボクサー)って呼ばれてるみたい」

    御手洗「じゃあ、喰種からあだ名で呼ばれてるこの捜査官も凄い人なの?」

    不二咲「うん…多分」

    御手洗「それって誰なの?」

    不二咲「…分からない」

    御手洗「え?」

    不二咲「そもそもこのファイル自体厳重に保管されてて、今の僕じゃこれ以上は無理なんだ」

    御手洗「厳重に保管って…不二咲君それ、ヤバイよ!?」

    不二咲「そんなの…僕だって分かってるよ」

    不二咲「でも、この人と間違われて苗木君が襲われたんだから、僕もこの人が何者なのか知りたい!」

    御手洗「…え?」


    不二咲(苗木君…)




    ―昼のお見舞 病室で―

    霧切「ねぇ、不二咲君」

    不二咲「何、霧切さん?」

    霧切「貴方、『珀豹』って知ってる?」

    不二咲「え?いや、知らないけど」

    霧切「なら、調べてほしいの」

    不二咲「えっ!?イヤ何で!?」

    舞園「どうしたんですか?大きな声だして」

    霧切「いえ、何でもないわ」

    舞園「?」

    霧切(出来れば、早急にお願いできるかしら)コソ

    不二咲(出来れば理由を知りたいんだけど)コソ

    霧切(…良いわ教えてあげる。
    苗木君は、虎䝞にその人と間違われて襲われたの)

    不二咲(え!?)

    霧切(苗木君が弐式二刀流を使うのは知っているわね?)

    不二咲(ぅ、うん)

    霧切(だけど、どうやらその珀豹も同じことをするらしいわ)

    不二咲(じゃ、じゃあ苗木君はその人を見て真似たってこと?)

    霧切(かもしれないけど、その可能性は低いわね。彼の反応を見てると)

    不二咲(そうなんだ…)

    霧切(とにかく、珀豹について分かった事があれば私に教えて頂戴)

    不二咲(うん、分かったよ)



    ―現在―

    不二咲「苗木君の為に僕が何を出きるのか、まずはこの人が何者なのかを知るのが良いって判断したんだ」エヘヘ

    不二咲「だから、誰にも言わないでね?」

    御手洗「そ、そうだったんだ…うん、分かったよ」ズキッ

    不二咲「ありがとう!」

    御手洗「それより、珀豹ってどんな人なの((まただこの痛み…早く治まれ))?」ズキズキ

    不二咲「それが…弐式二刀流を使うってこと以外分からなくて…」

    不二咲「あっ!だけどどうやら凄い人ってのは分かるよ!ほら!」


    沸き上がる何かの痛みを必死に悟らせないようにしながら、再び向けられた画面に眼を通す。



    御手洗「え… 『凰王』を?」
  254. 265 : : 2017/03/20(月) 10:30:06
    ―病院 苗木の個室前―

    霧切響子は、夜の苗木の個室の前で、何をするでもなくずっと立っていた。


    霧切「苗木君…」

    霧切「私は、貴方を…」ズキ


    ―12区討伐戦―
    カムクラが苗木を救い、霧切が救援を待つ場面から―


    ボロボロになりながらも規則正しい寝息を立てている事に、言い知れぬ安心感が溢れる。


    霧切(良かった…貴方が死んでしまったら私は、もう…)

    苗木「ぅ…ん」

    霧切「! 苗木君!?」

    苗木「な…」

    霧切「?」

    苗木「な…なみ………さん…」

    霧切「!」

    苗木「ん…」スヤ

    霧切「…」


    ――――――――――――――――――――


    あの時、彼は間違いなくななみさん(恐らくは七海さん)と言った。

    それが何故か、あの日からずっと胸の内を燻っている。



    スッ

    胸に手をあて、深く眼を閉じる



    【…好き」





    「ー好き 好き」

    『ー相手の顔を思い浮かべ ”好きだ” と呟き、』


    「私は 苗木君が好き」

    『胸の奥で温かさや締め付けを覚えれば、』



    『ーそれは”恋”でしょう】



    霧切「ぁ………」ズキズキ



    以前何気なく読んだ、その本にはこう書かれていた。



    霧切(あぁ、そうか)

    それは当然かもしれない。



    霧切(私は彼を…)

    共に戦い、許し、救ってくれた相手に”恋”する。



    霧切(どうしようもなく好きになってしまった)

    しかし、その相手が瀕死の重症に追い込まれ、その寝込んだ状態になって呟いたのは「自分」ではなく他の”誰か”




    霧切(だから…)

    ゆえに―



















    霧切「彼が私を愛してくれるようにしないとね(障害になるモノは消さないといけないわ)


          彼女は壊れたのだ








    ―不二咲・御手洗サイド―

    御手洗「これ…『凰王』ってあの、【アオギリの樹】の王にして、SSS~レートの?」

    不二咲「うん。どうやら《蒼蓮の月》の時みたいだね」

    御手洗「蒼蓮の…月?」


    何だその厨二くさいネーミングは……


    不二咲「『凰王』討伐には、今まで5回行われたみたいなんだ」

    不二咲「そして、『蒼蓮の月』はその最後。
    珀豹はこの時に凰王と対峙して、左右両方の腕を斬り落としたみたいなんだ」

    御手洗「に!『凰王』の腕を!!?」


    名前しか聞いた事は無いが、『凰王』は何十、何百万いると云われる喰種の中で、最強と名高い個体だ。
    平捜査官が何人と対峙したところで、瞬殺されるのは目に見えている。


    御手洗「ねぇ、ちょっとそのサイト見せて」

    不二咲「良いよ!これで御手洗君も共犯だね」エヘヘ

    御手洗「う、うんそうだね」///





    ―SSS~ 凰王総ファイル―

    1.《喰乱之王》 生存228
     特等8 准特等23 上等45 下等406


    2.《不墜之羽》 生存283
     特等6 准特等21 上等36 下等374


    3.《天上之槍》 生存757
     特等1 准特等3 上等13 下等83
     カムクラ:右腕 霧切:右脚 宗方:0 逆蔵:0


    4.《輪廻終焉》 生存398
     特等2
     カムクラ:赫子(2)右脚 天願:右腕 
     霧切:0 宗方:左脚 逆蔵:0 


    5.《蒼蓮之月》 生存930
    上等10 下等60
     珀豹:左腕右腕 宗方:赫子 逆蔵:0 黄桜:赫子







    御手洗「・・・・・・・・・・・・は?」




    軽い気持ちで見た、自分の眼をまず疑った。
    (ついでにこれを名付けた人のネーミングセンスにも)

    だが、そこに記されてあったのはにわかに信じがたい報告だった。


    御手洗「ぇ…これ……ァれ? どいうこと(この階級の横に書いてある数字って、まさか…)?」

    不二咲「…うん」

    不二咲「強すぎたんだよ、『凰王』は」

  255. 266 : : 2017/03/20(月) 10:49:02
    結局、あのファイルから読み取れた事なんてあれぐらいで(殆ど分からなかった)、他も漁ってみたが有益な情報なんてこれっぽっちも無かった。


    不二咲(せいぜい、カムクラ特等と同じで、天願局長が何処からかで拾ってきたくらいしか…)


    だが、気になることはある。


    不二咲(何で討伐名が珀豹だけあだ名?)

    不二咲(それに、どうしてあんなに厳重に保管されてたんだろ?
    珀豹だけじゃなく、『凰王』まで何かから隠すように置かれてた…)


    不二咲「あれは一体…」



    プルル


    不二咲「あれ、電話?誰だろう」ヒョイ

    不二咲「**さん?何だろう」ピッ


    不二咲「はい…」























    この日から、不二咲千尋は音信不通となった。




    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


    書いてて恥ずかしくなってきた(*/□\*)
    僕のセンス大丈夫かな?


    霧切さんは…最近の東京喰種見て、急な路線変更しました。
    六月のように書けるだろうか(汗)

    こんなんでこの先まとまるか自分でも分かりません(笑)



    土台はあらかた固めておいたので戦闘開始まで残りあと少しです。

    ここまで見てくださった方々、どうかもう暫くお待ちくださいm(_ _)m
  256. 267 : : 2017/03/20(月) 11:18:24
    見た目きれいでも中身ドロドロですね。大好物です!
  257. 268 : : 2017/03/20(月) 17:24:29
    ななみん結構殺ってるなあ…
    ってか色々フラグ立ちすぎてる…
    楽しみに待ってます!
  258. 269 : : 2017/03/23(木) 08:44:10
    ―**区 とあるビルの屋上で―


    東京大都市の中でも、これほど高く、立派にそびえ立つビルはそうそう無いだろう。

    かつては大勢の人が働き勤めていた場所で、同時に大規模な戦争(・・)が起きた場所でもある。

    今や人の影は見るところなく、ここはただ解体の二文字を待つばかりだ。


    ―なのだが、今回ばかりはどういう訳か屋上に複数の人影が見える。
    それも全員、学生のようだ。


    ガチャッ


    そして最後に、一人の少女が姿を現す。



    「皆、お待たせ」



    「お、来たか赤松」

    「あ、赤松さ「赤松ちゃん、ホントだよ!俺をこんなに待たせるもんだから帰っちゃおうかと思ったよ!」ガバッ

    赤松「わっ…!」トト

    王馬「嘘だけど」ニシシ

    「ちょっとそこの男死!汚らわしい身体で赤松に抱きつかないでください!」

    「お、王馬!そうだよ離れて!」

    王馬「あれあれ~最原ちゃん、何でそんなにムキになってるの?」

    王馬「もしかして、羨ましい?」ニシシ

    最原「なっ!?そ、そんなこと…」

    茶柱「最原さん!やっぱり貴方も男死なんですね!?」カッ

    最原「やっぱりって何!?」

    夢野「んあー、止めんか転子。これ以上やったら止めるのがめんどくなる」

    アンジー「そうだよー神様も止めた方が良いって言ってるよー?」

    茶柱「ゆ、夢野さんがそう言うなら、仕方無いですね」

    赤松「ごめんね皆。遅れちゃって」

    天海「別に良いっすよ。別に遅れた訳じゃ無いんですし」

    白銀「うん、地味にセーフだったね」

    星「それじゃあさっそく作戦会議といこうか。この頃冷えてきたからな。手早く終わらそうぜ」

    入間「それじゃあ何で外なんかでやんだよ!?俺様が風邪なんか引いたらそれこそ大問題だろーが!」

    真宮寺「じゃあ入間さんは、血がこびり付いたあの室内で話そうっていうんだネ?」

    入間「えっ…?ぁ…あそこで…?」

    春川「行きたいなら一人で行けば?私達はここにいるから」

    入間「ぅ…うぅ…」

    王馬「もーう!皆、それじゃあ入間ちゃんが可哀想でしょ!?仲間外れは良くないよ!」

    入間「お、王馬ぁ…」ドキッ

    王馬「ちゃんと中にいる人達と一緒にしなくちゃ(見分けがつかないくらいに殺さないと)ね!」

    入間「ぴぐぅ!何か変な声が聞こえたぁ!」

    ゴン太「ゴン太馬鹿だからよく分からないけど、入間さんが一人じゃないって事だけはよく分かったよ!」

    夢野「止めてやれゴン太」

    東条「もうその辺にしておきましょう。話が進まないわ」

    キーボ「そうですよ!このままやっていても時間が勿体ないだけです!」

    王馬「おかしな事言うなよキー坊…お前は外に居て凍死する事はないだろ?」

    キーボ「ロボット差別は止してください!僕にだって錆びる時間くらいあります!」

    星「王馬」

    王馬「はーい…」

    百田「うっし!じゃあ始めるか!」



    ・・・・・・・・・

    ・・・・・・

    ・・・





    公園に行くと今日も同じ体勢でゲームをしている。

    同じベンチ、同じ髪型、同じ光景

    違っているものといえば、やっているソフトぐらいだろう。

    一体、帰ってから何時間やっているのだろうか



    「…あっ、日向くんおっす!ゲームやる?」

    「良いけど、出来れば対戦系じゃないやつが良いな……俺がボロ負けするし」

    「う~んそっか……じゃあ協力プレイだね!?」

    「分かった、良いぞ」



    アイツとの日々はとても楽しかった… 

    何でも出来てしまう兄と比べられ、ストレスを抱えていた俺の心を癒してくれる、そんな時間だった。

    この気持ちが「好き」と云うやつなのだろうが、その言葉を口に出す事はしなかった。


    アイツには既に恋人がいた。しかも一緒に住んでいるらしい
    所詮、同棲というモノだろう。

    仕事が忙しくて家に帰れないことも多い。だからゲームで気持ちを紛らわし、この公園でゲームするようになった。

    そこで知り合ったのが俺で、相手からすれば俺との関係はそれ以上のものは何も無い。


    前に一度今の気持ちを聞いてみたら、「寂しい」と言ってきた。

    その言葉に、胸の奥が締め付けられる思いがした。
    そしてこうも思った


    (あぁ……コイツはそれでも幸せなんだ)と…





    その日から、七海は姿を見せなくなった。


    俺の初恋は紅い林檎のように育ったが、実ることは無かった。

  259. 270 : : 2017/03/23(木) 15:17:41
    日向切ないし、七海も何があったんだ?
    2人の関係をもっと知りたい
  260. 271 : : 2017/03/24(金) 00:00:12
    最原「それじゃあ僕から話すよ。
    皆、数年前にここでCCGが大規模な殲滅を行ったのは知ってるよね?」


    当然全員が周知の事実である。

    その時に殲滅されたのが、このビルの所有社だった『十神財閥(ロゼヴァルト)』だった。


    最原「結果から言うと、『ピエロ』の正体は『ロゼヴァルト』でほぼ間違いない」

    百田「なぁ、その『ロゼヴァルト(通称【ロゼ】)』ってのはこの十神財閥の生き残りで良いんだな?」

    最原「うん。正確には十神財閥の元御曹司だった十神白夜が、残った『ロゼ』を集めて作ったのが今の『ピエロ』だよ」

    夢野「んあ?両親はどうしたんじゃ?」

    入間「んなの、ぶっ死んだに決まってんだろ!じゃなきゃ今頃ゴキブリみてーにコソコソ隠れて生きてねーって!」

    ゴン太「え?ゴキブリさんは別に隠れて動いてる訳ではないよ?ただ人の目に止まらないようにしてるだけだよ」

    夢野「それを隠れてると言うんじゃ」

    キーボ「それで、生き残った者達が復讐に燃えるなかで今回の【アオギリ】の動きを知り、それに便乗する形になったんですね?」

    東条「消耗した『ロゼ』だけではCCGを討つ事は出来ないものね」

    最原「僕からは以上だよ」





    その後も順番に各々が調べた限りを一通り報告し、それも終えると赤松が小さく息を吐いた。

    白く吐き出された息は、一瞬で空気と交わり消えていった―


    赤松(もう秋か…)

    赤松「・・・・・・」


    アンジー「それでー? 楓ー、アンジー達はどうするのー?神様は楓の好きにしていいって言ってるよー?」

    星「やれる事は全てやってきた。あとは動くだけだ、心配いらねーぞ」

    白銀「そうだよ、もう我慢する必要は無いんだよ?赤松さんの好きにして良いんだからさ!」

    春川「あんたが気を使う事なんて無いんだよ」

    王馬「『CCG』、【アオギリの樹】、
    『あんてぃく』、それに『ロゼヴァルト』か…」

    王馬「にしし!これだけ揃ってたらツマラなくないね!」

    真宮寺「標的が女性じゃないのは残念だけド、そこは一般人で補えば良いよネ?」

    茶柱「取り合えず最初にここの男死から潰さねば」

    天海「君はやりたい事をするっすよ」


    赤松「皆…」

    最原「赤松さん」

    赤松「最原くん…」


    赤松「………」


    赤松「なら……甘えちゃっても、言いかな?」


    「「「 !! 」」」


    赤松「そうだよね…いつまでも観ているだけじゃ何も変えられない」クルッ


    全員に向けていた視線を暗い空に向け、逆に自慢の耳は一時遮断する。

    その眼はまるで愛しいモノを撫でているかのような穏やかなそれだった。



    赤松「…動こう」

    赤松「変えるんだ、未来を」


    赤松「”V”(私達)の力で!」

















    そして開戦の火蓋が切って落とされる。



    江ノ島「戦闘を開始せよ!」



    ~~~~~~~~~~~~~




    今日で最初の投稿から半年が経ちましたー!
    (ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノイエーイ


    サボり癖のある僕がここまで来れたのは見てくださった皆さんのお陰です!
    ありがとうございます!

    まだまだ先は長いですが、何卒今後もお付きあいくださいm(_ _)m



    下準備も大体終え、次回から本格的に戦闘パートに入ります。

    この記念すべき日に投稿間に合うようにしといて良かった(*´ω`*)
  261. 272 : : 2017/03/24(金) 04:45:06
    半年記念おめでとです
    (ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノイエーイ
  262. 273 : : 2017/03/24(金) 07:57:32
    >>272
    お祝いありがとです(ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノイエーイ
  263. 274 : : 2017/03/26(日) 13:34:38
    半年おめでとうございます!!
  264. 275 : : 2017/03/28(火) 21:33:52
    最初から見ておいついた
    面白いです
    後、半年おめでとうございます^o^
    早く次のが気になります
  265. 276 : : 2017/04/01(土) 02:16:58
    続き楽しみにしてます!
  266. 277 : : 2017/04/08(土) 22:17:47
    へぇー半年経ったんだ(おめでとう)
    新しい希望が目覚めた証拠だね!
    立ち会えなかったことが妬ましいけど素晴らしい希望が見れただけでも良しとしようかな…
  267. 278 : : 2017/04/15(土) 00:41:12
    お待たせしました! 
    少しのお暇を頂き、更新が遅れた事をお許しくださいm(__)m

    さて…報告なのですが、今年度で僕は大学受験を控える高校生となりました。
    なのでこれからは今までのように短期間での更新が難しくなると思います。

    最低でも月1での更新を目指しますので、何卒ご理解を願います。


    そんな訳で第二章スタートです!
    (ここからは第一章よりもグロ、又は胸くそ悪い表現を含みます。それでもOKな方はどうぞ)



    ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

     ―東京都 ※※区―

    時刻は短針が10を迎えたばかりの真っ昼間。
    辺りは先進国の首都らしく人の行き来が目まぐるしく行われている…


    ガヤガヤ

    「ママー!速く~」トテトテ

    「ちょっと待って、今行くから」

    「もぉ~…って」ドンッ

    「いてて…」ヨロッ

    「?」キョロ?


    走っていた少年は、前を歩いていたピエロのお面を被った人にぶつかる。

    が、ピエロマスクは大して気にもしない様子で何処かから取り出した風船を渡してくれる。


    「えっ? くれるの!?」

    「」ニコッ

    「わあぁ~い!」

    「あらあら、良かったわね~」

    「」スッ

    「やった!ありがとね、ピエロs…」
    パァーン!


    ビシャッ


    「・・・・・・・・・ゑ?」タラー



    それは突然だった…

    風船を受け取ろうとしていた息子が、いきなり目の前で「爆発した」ピエロマスクの巻き添えとなって死んだ……


    「ぇ……は………ユウ…君……?」


    今見た事を脳が受け入れてくれない。


    だが現実は、息子を失った彼女に優しくはしてくれない。

    爆発して直ぐに、先程のピエロと同じマスクを被った者達が道の脇からゾロゾロと姿を表した―


    「な、何だお前ら…!
    ぅぐっ!!! やめろーー!!!」ザシュッ

    「ヒイィィィ―――! 来ないで…ッ」スッパァーン


    道行く人々は突然の出来事に動揺が生じていた。
    その隙を逃さんとばかりに、マスクを付けた集団、『ピエロ』は殺戮を繰り返していく。


    ある者は素手で胴を貫き、ある者は蹴りで男の頭を吹っ飛ばし、またある者は道具を使って身体を引き千切って遊んだりもしていた。

         まさに阿鼻叫喚

    東京の喧騒とした街並みは、一瞬にして血(油)と恐怖と悲鳴が支配する事となる―






    筈も無かった。



    《敵が動きまちた。行動を監視してくだちゃ~い!》


           (( 了解! ))


    「この間の御返しです。存分に食らってください…」ズアァ

    舞園「…ネっ!!!」ズガガガ



    「早く終わらせて目的を済ませましょう」

    霧切「【螺旋モード】」スッ

    ズダダダダン!!




    一方、此方では…

    「あわわ…喰種があんなに沢山…!」ビクビク


    戦力その2、【アオギリ】が攻めてきていた。


    「ごめんね~朝日奈さん。初戦闘だっていうのにいきなり戦争だなんて…」(超高音)

    朝日奈「ぁ、いえ大丈夫です。それより万代先輩!前から沢山来てますよー!?」

    万代「本当だったら君の相棒(バディ)は大神さんだったんだけど、生憎彼女はコクリア(あちら)側だかわね~」(超高音)

    朝日奈「先輩! 前!! 来てる!!!」グイグイッ

    万代「でも安心して!君はちゃんと僕が護るから!大神さんにも頼まれたしね!」(超高音)

    朝日奈「こっちに気付いてる~!!?」アワワワ


    万代「だから…」ユラ~

    朝日奈「先ぱ…ビュオッ!   ……え?」


    グシャリッ


    目の前にあった先輩の巨体が消え、横を突風が突き抜ける。

    …と思ったら、後ろからパイナップルが2つ、砕けたような音が聞こえた―



    『グールの生み出す運動エネルギーは
     ヒトの4~7倍だと言われているがー

    常人の数倍のパワーを発揮できる人間であれば 理論上生身でもグールに対抗できる

    …ただ、それが可能な人間はほんの一握り 
     全人類の0.01%にも満たないであろう』



    恐る恐る振り返ると、そこには―



    万代「敵の前でピーピー喚くな、死ぬぞ」(重厚音)


    アオギリ(喰種)】(×2)の頭を片手で握り潰す『怪物』が立っていた―



    先輩は潰したソレ(屍体)に興味を失い、ポイッと放り捨てて唖然としている彼等に眼を移す。

    そして―



    万代「さぁ、戦闘(蹂躙)の始まりだ」(重厚音)



    人と喰種の戦争が始まったのである。


    ―東京全区及びコクリア防衛戦線、開始―
  268. 279 : : 2017/04/15(土) 00:41:26
    No.2063 朝日奈葵(18)

    グレート・ゴズ班所属
    2016年入社、現在の階級は三等捜査官。

    クインケ:オルフォックス(羽赫) Bレート
     

    アカデミー83期生(三席)
    苗木、不二咲と共にアカデミーの卒業を繰り上げ通過した若き希望。
    その並外れた運動神経と身体の柔軟性 及び見た目に反した高い射撃センスは、最前線…またパワー系が多いゴズ班において貴重な存在となるだろう。
    今はまだ若干の不安は残るが、今後経験を積んでいくことで解消されるだろう。


    戦闘スタイル
    前述にある通り、前線で戦う力はあるが彼女の役目は後方援護が基本(ベース)となる。
    元々得意とした()り方が決まっておらず、パワーも若干乏しいという事で、ゴズ隊長予てよりの願いであった羽赫型捜査官として配置されることとなった。
    彼女のこれからに期待である。
  269. 280 : : 2017/04/15(土) 00:41:33
    No.707 万代大作(39)

    グレート・ゴズ班所属
    2000年入社、現在の階級は准特等捜査官。

    クインケ:康庭(ノビ)(尾赫) AA+レート

    喰種からの呼称は『怪物(モンスター)
     

    ”庭”出身の捜査官。
    (普段)はとても温厚で、しかも超高音(ソプラノ)という何とも愛らしいキャラクターだが、スイッチが入る(裏になる)と性格も声も見た目に従事した形となる。
    実はこう見えて天願に次ぐ古株で、今まで幾つもの功績を挙げてきたが、本人は目立つのを嫌うため、要望に沿って准特等止まりとなっている。


    戦闘スタイル
    ”庭”出身だけあって身体能力は異常な程に高い。ゴズ特等にはパワーでは劣るものの、スピードで言うなら彼が勝る。
    裏に入った彼なら、クインケを使わずとも素手で喰種の肉体を引き裂く事は可能。
    それでも形にこだわっただけあって、鍬に似た
    ソレ(・・)を嬉しそうに振り回す。(しかしその姿は正に『怪物』と云える)
  270. 281 : : 2017/04/20(木) 16:41:56
    受験がんばってください!
  271. 282 : : 2017/04/20(木) 23:56:08
    赤松達が言ってるVって原作だと敵側だよね?
    でも赤松の敵ってそもそもどっち側なんだろ・・・?
  272. 283 : : 2017/05/05(金) 10:25:29

    CCG最強戦力である特等の一人、宗方京助は今作戦において単独行動を許された唯一の人間だ。

    今も疲れを見せず全力で走り続け、目に見えた喰種を葬る。

    だが全部は討伐せず、ある程度減ったと思ったらそこには留まらず次の区へと走る―

    そうするには勿論理由がある。


    今までにもこうした大規模な戦争は何度か起きた。

    しかし今回と今までとでは明らかに違う事がある。


    それは『戦力差』

    数が多いとは云っても、影でコソコソ生きてきた喰種にCCG(人間)を越える戦力と、それを纏めるだけの信頼など有る筈も無かった。



    だが今回は事情が違う。

    喰種(アオギリ)は、そこにつけ込んできた。

    数で圧倒的に劣る今回の殲滅では、もし万が一にでも敗れる事が有っても救助は期待できない…

    敗北=死を意味する戦場では数が減るのは当たり前。
    いつもなら死んだ奴は弱かったのだから仕方ないと割り切っていただろう…

    だが今回はそうも言ってられない
    救助が望めないということは、即ち増援が来ないということなのだ―

    ということはつまり、何処かが崩れればもうその区は喰種に占拠されたも同然である。

    そうなれば市民は殺し尽くされ、残った喰種は次の区を目指し動き出すだろう。
    だとすると、現状でさえ苦戦を強いられている彼ら(CCG)では勝ち目など無い。

    そのまま殺し尽くされ、更に大きな脅威となってまた次の区へと攻め入ってくる…


    あとはその繰り返し

    最終的には本部である1区を総攻撃され、人間側の敗北は決定する。


    つまり今回の戦争は、アオギリ側が1区でも攻め落とせば良いのに対し、CCG側は(コクリア含め)23区全てを勝利で終えなければならない…

    喰種は情勢が悪くなっても、また影に戻って(ヒトに紛れて)生活すれば良いだけなのだから―


    宗方が単独行動を許されたのもそれが理由だ

    宗方(クソッ 人ゆえの”傲り”か…
    以前からその可能性も考慮しておくべきだったな)チッ


    単独行動なのは、その方が動きやすいから―
    全て殺さないのは、それ以上は時間の無駄だから―

    何故その役目が彼なのかで言えば…



    「見つけたぞ『夜叉』! 今日こそテメーに殺された親父の(かたき)を――「煩いぞ」ズバンッ

    オプゥ……ッ!!?」グラッ


    宗方「貴様など知らん。俺の頭は喰種(ゴミ)を覚えるためにあるのでは無いからな」


    彼が他を隔絶する程に強いからだ―


    (嘘…ダロ……? この数を…ヒトリ……デ…?)ドサッ


    宗方に立ち塞がった名も知らぬ喰種の最後は、彼が作った死の道の一つと為る事だった。

    彼により一刀両断された喰種の断面からは血が一切溢れない。
    全員が高温の何かで焼き斬られていた。


    その理由(ワケ)は彼の技量と、彼だけが持つ炎熱系クインケ、『䝞爀(こかく)』によるものだ。


    宗方「喰種め。俺が…俺()が入る限りは貴様等の好きに出来ると思うなよ」


    決して負け惜しみから来るのではない、
    そう言えるのには確した理由がある。

    そもそも宗方はこの状況を厄介だとは思いつつも、それで自分達CCGが敗れるとは微塵も思っていない。

    自分を除けば特等は3人。
    それに局長である天願と副局長の霧切を加えれば計5人。

    その内から二人(と彼が信頼を置く右腕)もコクリアに向かわせ、残り全員で東京全区を守護している。

    しかも本部には、あの(・・)二人がいる…


    市民にも多大な犠牲が出るのは避けられないだろう…
    それでも数が多いだけの喰種など、恐れる事は無いのだ。


    宗方(所詮は烏合の衆。俺達人類の敵ではない!)


    この時点で宗方は勝利を確信していた。

    まだ見えない、小さな綻びを知らずして―


    宗方「そっちは頼んだぞ、逆蔵」

    ここには居ない、旧知の友の方を見てそう呟くと、彼はまた死を重ねて行く――
  273. 284 : : 2017/05/05(金) 10:25:37
    No.111 宗方京助(26)

    S2班班長
    2004年入社、現在の階級は特等捜査官

    クインケ:䝞爀(甲赫) SS+レート

    喰種からの呼称は『夜叉』
     

    天願局長に拾われ、直接指導を受けた3人の中の最初の一人。
    目の前で親を喰種に殺され、独り身となった所を保護された為、喰種に対し並々ならぬ殺意を持っている。
    厳しい事で有名な彼だが、アカデミーからの同期である逆蔵准特等と雪染上等には信頼を置いている様子。


    戦闘スタイル
    見た目通り刀を用いた戦闘を得意としている。䝞爀は彼自身がもぎ取った喰種の赫子から作られており、数千度の熱を発する事であらゆるモノを一刀両断できる。
    通常は一本しか使わないが、本気になると二刀流になるそうで、刀を主として闘うその姿から、喰種からは『夜叉』として怖れられている。
  274. 285 : : 2017/05/17(水) 06:08:22
    今、追いつきました。面白いです!
  275. 286 : : 2017/05/17(水) 06:45:01
    あれ…?もしかして直接指導を受けた三人って…?
  276. 287 : : 2017/05/19(金) 17:00:19
    面白い!
    続き期待
  277. 288 : : 2017/08/19(土) 13:52:31
    現在の東京――

    CCG(白鳩)本部にいる捜査官の人数は、長い歴史の中でも圧倒的に少ない。

    数の利を活かした集団戦なら喰種よりも断然有利とはいえ、最大で一万人以上にも達していた全盛期の半分以下にまで減ってしまった現状では看過できる問題ではない。

    おまけに喰種は人間よりも身体能力が高く人間にも紛れてしまうため討伐数は伸び悩む一方だ。
    絶対値にアドバンテージがあるが、最近ではそれさえ覆されかねない。

    史上最凶の喰種、『凰王』に殺し尽くされた影響は今も尚彼等に深い傷痕を残している。綻びがある所を世間の情勢に目敏い喰種達に狙われたのも大きな要因だろう。


    では今の『CCG』は数の少なさを理由としてこのまま負けてしまうのか?

    答えは否

    数は多く減ってしまったが、生き残った一部の人間は恐怖(凰王)を乗り越えて強くなったのだから―――


    ??区

    地上は死屍累々だ。
    殺戮者と化した『ピエロ(ロゼヴァルト)』が女子供、捜査官一般人と関係なくその手で屠っていく。

    そしてその世紀末とでも呼ぶべき光景を愉快そうに上空で眺めている影が二人――


    江ノ島「さぁ~てと。始まったばっかだけど、早速『お楽しみ』を起動しようかな~?
    ほら!私様って飽きっぽいし~」


    モノクマを抱き抱えながら今回の首謀者――江ノ島盾子――は不適な笑みを浮かべる。

    それはこれから起こるであろう事を想像――いや、“超分析”した結果から基づくモノであるとは彼女の後ろに控える戦刃むくろ以外には知り得ない。


    戦刃「でも良いの盾子ちゃん?アイツ等って貴重な戦力なんだよね?」

    江ノ島「……はあ? 何で私様に自重でもしろって言いたいのアンタ」

    戦刃「い、いや。そういう訳じゃなくって…!」


    アタフタと焦り動く実姉を尻目に、途端詰まらなさそうな顔して口を開く。


    江ノ島「良いんだよあんなの。どうせ『生還した奴等』には手も足も出ねーんだ!
    他に手が行っている内に仕掛けちまえば御の字だっつーのっ!」

    ケタケタと不快な笑みを溢す彼女に、戦刃むくろはそうなのかとよく分からないが納得した。

  278. 289 : : 2017/08/19(土) 13:52:39
    3区

    どの区も『ピエロ』と【アオギリ】が物量勝負を仕掛けてきているが、この区は本部(1区)コクリア(23区)に次いで多い

    喰種側の勝利の最終条件は本部の陥落である。
    となると、1区の周りを喰種を固めてしまえば他からの救助は見込めなくなるので、必然的に2~7区は戦闘が危うくなる…


    忌村(って……何で私こんな最前線に出されてるんだろう…?
    確かに救護班には立候補したけど、別に医者とかじゃないし…)


    愚痴っても仕方ないとは分かってはいるのだが、治しても治しても運ばれてくる患者は後を絶たずついそう思ってしまう

    というより中にはもう死んでいる者もいて、薬を作る事しか出来ない自分がどうしてここに置かれているのか分からない。
    むしろ邪魔になってるとしか思えない


    忌村(まぁ私のお薬って用途間違えたら危ないし、それの確認係みたいなアレかな?)


    実際は包帯を巻いたり水を運んだり、凄く献身的な行為をしてるのだが、内気な彼女はその事すらも思い付かず一人そんな心配をしていた。


    すると複数人の足音がこの救急用のテントに向かって来るのが聞こえた。直後、凄い勢いで捜査官達が入ってきた

    見ると全員ボロボロで、今すぐにでも治療が必要な者も仲間に担がれている

    救急班と患者はそんな彼らに慌てて施そうとしているが、当の本人達は自分の怪我など大した問題では無いと言わんばかりの表情を浮かべている

    直ぐに治療を、と思ったが最前列の一人がフラフラとした足取りでこのテントの救護班長に迫る


    「あの、どうしましたか?」

    「……ニ…ロ」

    「…は?」

    「逃げろ。ヤツ(・・)が…ハァハァ…来る前に…!」

    「ヤツ…? すまないが私はここで患者の治療をしなけr……」


    班長の言葉は最後まで聞こえなかった

    言い終える前に迫ってきた外から轟音が聞こえた。
    それと同時に今話していた班長、逃げてきた捜査官達、そして周りに居た数名の者が膝から崩れ落ちる――
    彼(女)達の身体は、身体の部位が抉られて見るも無惨な姿になっていた



    「……ぃ…い…イヤァァァァ――――――――!!!!」


    全員がソレを眺め、そしていち速く起きたことを察した看護士が思い出したように悲鳴を上げた
    そして他の人間もやっと状況に気付いて悲鳴に似た何かを叫んだ。


    私は訳が分からずそこに立ち尽くしていた。
    今生きていた人間がまさに、今、目の前で殺されたことを脳が理解して尚、こうして何も出来ずにいた


    ―結果的にはそれが彼女と他の者との明暗を分けた―


    先程の轟音がまた聞こえたかと思うと、今度は叫んでいた彼等彼女等が撃たれて死んだ

    そう、“撃たれた”のだ

    今度はキチンと見えた
    しかも今回は複数同時に、つまり連射で。
    つまり今の轟音はこの馬鹿デカイ銃の発砲音


    テントの外から放れた弾丸は、人の柔な肉体など一撃で葬ることが出来そうな位に大きく、恐ろしいモノだった


    そして、次に聞こえてきたのは銃の轟音ではなく、聞く者を不快にさせる陽気な笑い声


    「ヘルウェーーー!
    バカが叫んだお陰で一網打尽だぜ!」


    それは人など優に殺せるであろう巨体の物体から流れ出た

    よく見ればそれはロボット。それも二足歩行で腕にはガトリングガンを備えた殺人ロボ

    「おっしゃーー!死にたい奴から前に出な!この『エグイサル(ブルー)』が肉片にchangeしてやるぜーー!」


    ………
    ……



    私は今どんな顔をしている?

    突然目の前に現れた兵器に驚いた顔をしている?
    恐怖で引き攣った顔をしている?
    何も出来なかった自分を責めて泣いている?


    ……いや違う


    この胸の内で感じられるモノ、それは……

    どうしようも無いくらいの、激しい(いか)りだった――

    ………
    ……


    人間の守護を目的としているCCGが、400年以上も前から一度も崩れることが無かったのは、一重に数で勝っていたからだけではない

    圧倒的な力を持つ『(化物)』の前では数など無意味。蟻がいくら湧こうが、象にとっては効果が無いのと同じである。

    他を隔絶する『(化物)』に対抗するには、此方も同じ『(化物)』を持たなければいけない。

    ………
    ……



    紀村「 殺す! 」

    その言葉と共に、何時取り出したかも分からない小型ケースから薬を乱雑に掴み取ると、躊躇もせず口の中へと放り投げた

    此処にCCGが誇る最強戦力の内の一人、『狂飆(きょうひょう)』がその力を奮う
  279. 290 : : 2017/08/19(土) 13:56:01
    大変長らくお待たせしましたm(_ _)m

    最近活動を再開し始めたのでボチボチ書いていきます。
    とはいってもやっぱり受験が終わらない事には満足に書けませんが(笑)

    だいぶ急ぎ足に書いたのでおかしな点もあるかもしれませんが気にしないで見てやってください。

    次の更新も何時になるか分かりませんが最後まで書こうとは思っています。
  280. 291 : : 2018/01/15(月) 14:36:11
    面白いです! 続き期待!
  281. 292 : : 2018/02/10(土) 21:04:49
    結果出て引っ越しの準備終わったら更新再開しようと思ってます。

    「僕は…喰種だ」
    http://www.ssnote.net/archives/49065

    出来れば見てやってください(ノД`)ノ
  282. 293 : : 2018/02/10(土) 21:05:16
    ↑ 上のは僕のです。

    携帯新しいのに変えて試したらデータ引き継がれていないし(´;ω;`)

    誰か上手い引き継ぎ方知りませんか?
  283. 294 : : 2018/02/10(土) 21:06:24
    因みに結果とは二次試験の事です。
    それと超高校級が付くぐらいの機械音痴です(どうでもいい補足)
  284. 295 : : 2018/02/10(土) 21:07:34
    これ解決しないと再開出来ない(´;ω;`)
  285. 296 : : 2018/02/10(土) 21:08:57
    19日までに何とかしなくちゃ!
    データ消される~!
  286. 297 : : 2018/06/30(土) 22:16:22
    とっても面白かったですw続き期待!いつまでも待ってまーす(@´∀`@)

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著者情報
1999621

如月 誠

@1999621

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