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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

ぬいぐるみ強盗団

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  1. 1 : : 2016/07/18(月) 03:23:52
    ヤァヤァ! 遠からん者は音にも聞け!近くば寄って目にも見よ!!

    我こそは! チームカマボコが中堅!

    「風に立つザクⅡ」である!!

    このチムコ祭りにて勝鬨を上げんと欲さば、まずは我が首討ってご覧に入れよ!


    (ふつつか者ですがよろしくお願いします!

    チムコ祭りお互いがんばりませう。)
  2. 2 : : 2016/07/18(月) 03:27:14
    梅雨の雲が入道雲に様変わりし、セミの声が聞こえる頃。

    九頭龍「………………。」


    一人の男が窓の外を眺めていた。


    教室の前で教授が何か言っていた気がするが気にも止めない。

    気だるい授業がさらに煩わしい。


    雪染「九頭龍くん!ちゃんと 聞いてるの!?」

    九頭龍(げ……っ)


    雪染「ここの答はなんでしょう?」

    九頭龍「………分からね…ないです」



    余計な恥をかいた。

    授業後…



    辺古山「どうしたのですか… ぼんやりなされて……」

    九頭龍「ん? あぁ~悪かったな…」


    辺古山「旦那様がおっしゃられた事を気にしていられるのですか?」

    九頭龍「……まぁ、な」




    ~数日前~


    九頭龍父「冬彦。辺古山。ちょっと聞け。」

    九頭龍「んだよ? オヤジ」

    辺古山「はっ。」

    九頭龍父「ここんとこウチのシマで暴れてるふざけた連中の事は知っとるな?」

    辺古山「存じ上げております。」

    九頭龍「……今朝のニュースもそれか?」

    九頭龍父「あぁ。聞けば海外のマフィアくずれらしいが……」

    九頭龍の父は煙草を深く吸い、燻らせる。

    九頭龍父「たかがマフィアくずれにここまでやりたい放題されるたぁ…ヤクザもナメられたもんよ。」

    九頭龍父「いいか。奴らは見境がねぇ。お前もいつかはこの九頭龍組を背負って立つ男……」

    九頭龍父「ナメられんじゃねぇぞ。」

    九頭龍「あぁ。分かってる。」

    九頭龍父「辺古山も頼むぞ。」

    辺古山「はい。承知いたしました。」
  3. 3 : : 2016/07/18(月) 03:29:25
    九頭龍父「それから……」

    辺古山の方を向いて手招きをする。

    九頭龍父「おい。お前はもう行っていい」

    九頭龍「はいはい。」

    辺古山「なんでしょうか……」



    そして、そっと耳打ちをした。

    九頭龍父「ウチの情報屋の話だと… 件の連中は『アレ』を扱っているらしい。」

    辺古山「アレ…… と申しますと……」

    九頭龍父「ヤクさ……」

    辺古山「なるほど…… 厄介ですね。」


    九頭龍父「そうさ。ここいらの『連中』の間じゃ御法度のヤクを奴らはさばいてるらしい……」

    九頭龍父「それに…厄介なのはここからさ。」

    九頭龍父「まだ不確かではあるが… お前らが通ってる……何つった?」

    辺古山「希望ヶ峰学園ですか?」

    九頭龍父「そう、それだ。」

    九頭龍父「どうやら…… ヤクの購入者か… 密売人にそこの関係者が混じってるとの事だ……」

    辺古山「な……っ!?」

    九頭龍父「声が高い。抑えろ!」

    辺古山「失礼いたしました……」


    九頭龍父「…………とにかく、あいつにはくれぐれも用心するように伝えといてくれ…」

    九頭龍父「あいつは俺が言ったくらいじゃなかなか聞かんからな…」


    辺古山「…………かしこまりました。」


  4. 4 : : 2016/07/18(月) 03:31:23
    そして話は現在に至る。

    九頭龍(この学校にマフィアの関係者ねぇ…)

    正直なところ、暴走族やら噂では詐欺師まで「才能」として招き入れるらしいこの学校。

    「超高校級のマフィア」がいても何ら不思議ではない。というより実際、自分が「超高校級の極道」である。

    辺古山「坊っちゃん 気がかりなのは分かりますが今は普通に過ごしましょう。」

    九頭龍「まぁ そうだな。今俺らが動いたところで…」

    帰りのHRも済み、チャイムが鳴った。

    特に部活に参加しているわけでもないし、そんな気分にもなれない。

    まっすぐ家路に着くことにした。

    家路に着くとは言うものの…

    「いかにも」すぎて逆に疑われるような真っ黒なクラウンが校門に横付けされる。

    運転手「お待ちしておりました。さぁ、どうぞ。」

    九頭龍「またかよ! いつも来なくていいって言ってんだろーが!!」

    九頭龍「俺は組の力に頼らなくても…」

    運転手「なるほど。若もご学友と下校なさりたいわけですな!」

    九頭龍「なんでそうな…!!」

    辺古山「…! 坊っちゃん!」
  5. 5 : : 2016/07/18(月) 03:33:53
    生徒「…………」

    フラフラと覚束ない足取りでクラウンの側を抜けていく。

    しかし、九頭龍と辺古山が息を飲んだ理由はそこにはない。

    辺古山「あれは……」

    九頭龍「あぁ、間違いねぇな」

    運転手「…………」

    初老の運転手は少しため息をついた。

    運転手「嫌なモノですなぁ… 未来ある若者があのような物に…」


    運転手「あれ?若??」

    言い終わる頃には既に影はなかった。

    九頭龍「気づいたか!ペコも!」

    辺古山「えぇ。はっきりと…!」

    先ほどクラウンの横を通り抜けていった人影。


    素人目に見ればただ、顔色が悪いようにしか見えない。

    しかし、「その筋」の人間である九頭龍と辺古山にはすぐに見分けがつく。


    九頭龍(あの野郎… 一体何をどんだけ使ったらあんな事に…!)

    辺古山(あれは確か…希望ヶ峰の予備学科の制服…! やはり情報は……っ!)


    はやる気持ちを抑えつつ、息を殺し、その人物を追う。
  6. 6 : : 2016/07/18(月) 03:37:04
    生徒「………………」

    特にこちらに気づく様子もなくフラフラ、フラフラと足を進める。

    そして、その生徒が足を止めると、奥から「何か」が現れた。


    九頭龍「あのバカが……」

    物陰に隠れつつ、様子を伺う。

    ??「………………」

    裏路地の奥から影のようにゆらりと現れた「それ」

    辺古山「…………!?」

    その余りの異様さに思わず声を上げそうになる。


    「それ」はリスの着ぐるみを着てのそのそとその生徒の前で足を止めた。


    九頭龍( 何だアイツは……?ふざけてるのか…?)

    生徒「も… 持ってきました……」

    ガタガタと震える手で札を数枚差し出した。

    握りしめられてぐしゃぐしゃになっている。

    札の金額がまちまちなところを見ると大方親の財布からくすねたのだろう。

    リス「…………」

    リス……の着ぐるみを着たそれは懐から小分けにされた粉末をいくつか取り出した。


    辺古山(あの粉…やはり……!)

    生徒「こ… これだけ……??」

    生徒「な…なな……なんで… これだけじゃぜんぜん……」


    リスはそそくさと粉末を仕舞い込もうとする。

    生徒「あっ……!!あぁ! いります!いりますからっ!」

    リス「…………」


    生徒は粉末をひったくるように受け取ると…

    なんと、その場で中味を改め始めた。

    いや、「楽しみ」始めた。
  7. 7 : : 2016/07/18(月) 03:45:50
    粉の小袋に口を突っ込み、地球上全ての酸素を吸い付くしそうな勢いで吸い込む。


    もはや人間のする表情とは言えなかった。

    生徒「へ……へへ…ホヒ…」


    リス「………………」

    「ハイになってる」生徒に対し、リスの着ぐるみがのっそりと掴みかかる。

    キャラクターの可愛らしさも相まってその様相はかなり不気味なものであった。

    生徒「あ…あがっ! ぐっ…… な…にを…………」



    リスは掴んでいた生徒を放り出すと……

    自らの懐をまさぐった。

    そして次の瞬間…!


    恐らくはここにいる人間以外には聞き取れない
    銃声が響き渡る。

    九頭龍(なっ……!)

    辺古山(あれは……!!)


    隠れていたコンクリに弾痕が残された。

    九頭龍「野郎! いきなりブッ放しやがった……!」

    辺古山「どうやら… 事態はよほど厄介な状況に進んでいるようですね…」

    辺古山(しかもサイレンサー付き… これでは……)

    銃口をこちらに向けたままゆっくりと歩み寄ってくる。

    九頭龍「こうなりゃ… 仕方ねぇ……」



    辺古山(くっ……!)

    背中に差した竹刀に思わず手を伸ばす。

    自分の腕に覚えが無いわけではない。が、しかし「着ぐるみ」という防具で全身を守られている上、拳銃を所持していては分が悪い。

  8. 8 : : 2016/07/18(月) 15:03:32
    「おい! お巡りさん!! こっちだこっち!!」


    辺古山「…!?」

    リスは明らかに慌てたようだった。


    リス「………!」

    大急ぎで路地の奥まで消えていった。


    辺古山「ぼっちゃん…今のは」

    九頭龍「あぁ、まさかドラマでやってたあんなハッタリが上手くいくとはな…」

    辺古山「それより……」


    生徒「………………」

    「薬」を買ったその生徒はガチガチと震えながら、血走った目でこちらを睨み付けている。

    生徒「よ…よよ…よくも……」

    生徒「どうしてくれるんだよ… こここれじゃ… アレ買えないじゃないか……」

    生徒「おおお前たちが俺をつけたせいで……」

    九頭龍「……チッ バカが…」

    辺古山「あの粉は麻薬だ馬鹿者。」

    辺古山はその生徒の元へ歩み寄ると…

    辺古山「こんな毒薬に魂を売って何になる!!」

    大事そうに握りしめていた粉袋をはたきおとした。

    生徒「ああああああああッ!!」


    白い粉がコンクリートの地面に積もっていく。



    生徒「お前らなんかに……」

    生徒「『本科』のお前ら何かに何が分かるってんだ……ッ!」

    生徒「もう許さねぇええええええええええッ!!」

    逆恨みの上、逆上したその生徒はこちらへ襲い掛かってきた。

    どこからともなく、カッターナイフまで取り出して。

    その顔はもはや正気な人間のするそれではなかった。


    辺古山「この大馬鹿者…ッ!!」

    だが、錯乱した一般生徒の動きなど数多の試合、そして死線をくぐった辺古山にとっては止まっている蠅も同然。


    目にも止まらぬ突きが炸裂し、生徒は向かってきた方向とは反対の方へ吹っ飛んだ!

    生徒「こ… このや…ロぉ…」


  9. 9 : : 2016/07/18(月) 15:04:36
    するとその時。


    どこからともなくサイレンの音が聞こえてきた。

    九頭龍「警察…? お前が呼んだのか?」

    辺古山「いえ…わたしは……」


    サイレンに気をとられた隙をついて、その生徒は逃げ出していた。

    九頭龍「チッ… まぁいい。どのみちアイツが捕まるのも時間の問題だろうからなぁ」

    九頭龍「ズラかるぞ。」

    辺古山「はい…」

  10. 10 : : 2016/07/18(月) 15:08:17
    ~翌日~

    キャスター「続いてはスポーツです」


    窓側の席にてワンセグを見る人の影があった。

    辺古山「おはようございます。坊っちゃん。」

    九頭龍「ん?あぁ…」


    辺古山「ニュースですか?」

    九頭龍「あぁ、だがどの局に回しても昨日のニュースは全然やってねぇ。」


    九頭龍(やっぱ隠蔽されたか…)

    辺古山「やはり希望ヶ峰の名を出すわけには……」

    狛枝「やぁ、九頭龍クン。辺古山さん。」


    後ろから突然声をかけられた。

    九頭龍「な…っ! なんだテメェは! 何の用だ!!」

    狛枝「まぁまぁ、そんなに怒らないでボクの話も聞いてよ」

    狛枝「いやぁ、二人ともよく無事だったね…」


    九頭龍「『よく無事だった』だと…?」

    辺古山「まさか… あの時警察を呼んだのも……」

    狛枝「あ、いやいや 立ち聞きするつもりはなかったんだけどさぁ…」

    狛枝「幸運にも二人… と、予備学科が1人事件に巻き込まれてるのを見かけたもんだから…」

    九頭龍「幸運にもだと…??」

    狛枝「あぁ…ごめんごめん。そんなに気を悪くしないで…」

    狛枝「それに… ボクが通報したおかげであの怪しいヤツも逃げていったわけだし……」

    辺古山「そんな話をしにわざわざ来たわけではないだろう?」

    狛枝「ははっ… やっぱり鋭いね。辺古山さん。」

    狛枝「まぁ話しと言ってもそう大した事じゃないんだけど…」


    狛枝「まずはひとつ目、九頭龍クンたちがつけてたあの生徒だけど…」

    狛枝「彼、死んだらしいよ。」

    九頭龍「…だろーな。俺らが行った時にはもう発作を起こしかけてたからな…」

    狛枝「まぁ、予備学科が1人どうなろうがボクはどうでもいいんだけど…」

    辺古山「そういえばこの学園にはその『予備学科』という物があったな。」

    辺古山「教師たちは頑なにそこについては語ろうとしないがな。」

    狛枝「そうなるだろうね。あんなところキミたちには伏せておきたいハズだからね。」

    九頭龍「確かこの学園は『才能』ってヤツを持った高校生が集められてんだろ?」

    狛枝「基本的にはそうだね。」

    狛枝「あそこにいるのは『希望ヶ峰学園』のブランドを金で買おうとする連中…」

    狛枝「こんなクズみたいなボクがこんなこと言うのも何なんだけどさ…」

    狛枝「金ヅルの吹き溜まりだよ……」

    狛枝の表情を見るに、彼はその「予備学科」とやらが余程気に食わないようだ。

  11. 11 : : 2016/07/18(月) 15:26:03
    狛枝「ついでだからこれも話しておこうか。」

    狛枝「あの着ぐるみが売り付けてた麻薬は今、予備学科の間で流行しててこの学園が重く見ている事態なんだよね…」

    狛枝「なんでも『才能が手に入る』っていう触れ込みでけっこうな人数があの麻薬に手を出したらしいね。」

    狛枝「まったく… どこまでも卑しい連中だよ……」


    九頭龍「あぁ… 役に立つ情報どうもありがとうございました!」

    わざとらしく九頭龍は答えた。

    辺古山「すまかったな。狛枝。」

    狛枝「ところで… なんで二人はあの強盗団を追ってるの?」

    狛枝「まさか… あの予備学科の為?」

    九頭龍「バーカ。あんなマフィア崩れのヤツらに俺らがシマを荒らされちゃこっちのメンツが立たねぇんだよ!」

    狛枝「あ、なるほど。そういう事か… 」

    九頭龍「とにかく… コレは俺たちの組の問題なんだよ!」

    九頭龍「分かったらさっさと向こう行けやァ!!」

    狛枝「分かったからそんなに怒らないでよ九頭龍クン。」

    辺古山「狛枝…悪いが席を外してもらえぬか?」

    狛枝「うん。 ならボクはこのへんでおいとまするよ。」

    狛枝の細くも高い背中を見送った後。

    九頭龍「……ペコ。」

    九頭龍「『明日はフケる』ぞ。いいな?」

    辺古山「かしこまりました… 坊っちゃん。」

  12. 12 : : 2016/07/18(月) 15:28:21
    ~同時刻 都内某所~

    ??「ヤクをサバくところを見られただと……?」

    リス「す… すいやせん… ボス……」

    ??「すいませんで済むと思ってんのかテメェは!!」

    クマの着ぐるみが机を蹴り飛ばした。

    リス「申し訳ございません! 平にお許しを… い…命ばかりは… 命ばかりは……っ!」

    クマ「クッソが…」

    ??「ボス… 如何いたしましょう…? 我々と『彼ら』の関与はくれぐれも内密にと…」

    クマ「分かってる… とにかく『あの方』の前でヘマは許されねぇ…」

    クマ(ただでさえ気まぐれでこっちも手ェ焼いてんだ…)

    ???「ボス。このような件はスピードが肝心です。」

    ???「すぐさま計画を立案し、此度の埋め合わせをいたしましょう。」

    クマ「それはいいとしてネズミ(Rat)。何か案があるのか?」

    ネズミ「リスが言っていたあの希望ヶ峰学園の生徒ですよ。」

    ネズミ「どうやら面白い人物が我々の事を嗅ぎ回ってる組織がいることは前にお話しましたね?」

    クマ「あぁ。日本(japan)で一二を争うってギャング(ヤクザ)のことか。」

  13. 13 : : 2016/07/18(月) 15:32:03
    ネズミ「先ほどのリス(squirrel)の証言をまとめると…どうやら希望ヶ峰学園にはあの九頭龍組の関係者が入学しているとかで…」

    ネズミ「彼らも我々を追っているようです。」

    ネズミ「ですからここは敢えて我々からうごきましょう。そうすれば彼らは自ら尻尾を出すはず…」

    クマ「よし…分かった。 計画を練るぞ。」
  14. 14 : : 2016/07/18(月) 15:37:41
    ~翌日~

    この日、九頭龍と辺古山は学校には行かず、各地で調査をおこなっていた。

    例の着ぐるみの男について分かった事をひととおりまとめると……

    ・元は世界を又にかけて活動していたマフィアの強盗特化チーム。いわばマフィアの「特殊部隊」。

    ・最近では日本での活動が目立つ。

    ・噂のレベルに過ぎないが希望ヶ峰学園との関係が示唆されている。


    九頭龍(ざっとこんなもんか…)

    辺古山「坊っちゃん。あの強盗団についてさらに分かった事が…」

    九頭龍「おう。 サンキューな」

    辺古山「どうやら… 彼らが身に纏っている着ぐるみはただの着ぐるみではないようです。」

    辺古山「防弾、防爆、防刃、さらにはガス兵器にまで対応した着ぐるみとは名ばかりの高性能な『鎧』です。」

    辺古山「そのせいもあってか警察はおろか…海外では軍隊すら退けて事件を起こしているそうです。」

    九頭龍「防弾、防爆… 厄介だな…」

    辺古山「そ… それと… もうひとつ…」

    九頭龍「なんだ?」

    辺古山「え… えと… いえ、やはりなんでもありません…」

    九頭龍「あぁ? なんだよ気になるだろーが…」

    辺古山「……………」

    辺古山は何やら困り顔である。

    辺古山「かしこまりました…」

    辺古山「あの強盗団は先ほどの着ぐるみのような鎧を身に纏って犯行を行う他…」

    辺古山「犯行現場にクマ(ベ ア)ネズミ(ラ ッ ト)リス(スクウェル)ネコ(キャット)イヌ(ドッグ)と… 自らを象ったぬいぐるみを犯行現場に残していく事から…」

    辺古山「ぬ…『ぬいぐるみ強盗団』と……」

    九頭龍「ハァ??」

    九頭龍「ぬいぐるみ強盗団…?」

    辺古山が言葉を渋った理由が何となく分かった。
  15. 15 : : 2016/07/18(月) 15:40:54
    辺古山「………」

    九頭龍「その… なんか… 悪かった…」

    辺古山「いえ…! 坊っちゃんが謝ることでは…」


    ~同時刻 希望ヶ峰学園 1-B~

    雪染「う~~~ん……」

    雪染はぐったりとうなだれた。

    雪染「わたしが学校に来ない生徒を確保できないなんて…」

    この日はしばらくぶりに全員で「来ない生徒」の捜索になった。

    小泉「ま、まぁ… こういうときもありますよ先生。」

    西園寺「辺古山おねぇはいいとして九頭龍のヤツといいどこまでほっつき歩いてんだか…」

    既に自宅と心当たりのある場所は探したが影すら見当たらない。

    花村「むっふっふっふ… 九頭龍クンと辺古山さんが二人揃ってサボりだなんて…」

    西園寺「オメーはいちいち下に持ってかねぇと話できねぇのかよ!」

    花村「ええっ! ちょっ! せめて最後まで言わせてよ!」



    ~同時刻 某所~

    イヌ「どうです? あの方との交渉は…」

    クマ「ハァーーー…」

    開口一番にため息が返ってきた。

    クマ「あっさりOKだったよ。」

    クマ「『学校がジャックされるってのもなかなか面白そう』ってだけでもう了解済みだ… ホントにあの方の気まぐれにはこっちも参るぜ…」

    ネズミ「では、作戦を開始しますか。」

    クマ「あぁ…」

    ネコ「なーんかドンパチも何もなさそうで退屈な仕事だねぇ…」

    ネコ「日本の警察なんてビビって撃ってこねぇんじゃねぇの?」

    クマ「そう、色めき立つんじゃねぇよ。その時になったら撃たせてやるよ。」

    クマ「それはそうと…」

    クマ「おい!! リス!!テメェ、本当にその二人組の顔と名前覚えてんだろうなァ!?」

    リス「ま… 間違いありません… 九頭龍組の倅とその用心棒でさ…」

    クマ「この仕事でヘマしやがったら次こそ始末するから覚悟しろよ…」

    リス「は… はい!」

    イヌ「では、参りますか…」


    クマ「あぁ。」



    クマ「全員配置に着けェ!!!!」

  16. 16 : : 2016/07/18(月) 15:43:06
    クマ「いいか。予定通りに侵入しろ! イヌは例のブツを取りに行け! 1時間後に合流だ!」


    イヌ「了解ッ!」


    イヌ(Dog)と呼ばれたその男は本隊とは別にある物を取りに車を飛ばした。

    そして、ものの数分も経たぬ内に計画は進行していく。

    ネコ「監視カメラのハッキングに成功! これで暫くは監視カメラの映像はループしたまんまだよ!」

    ネズミ「こちらも全ての防犯システムの無力化に成功しました。」

    ネコ「退屈過ぎてアクビが出るね。」

    クマ「あぁ。これで第一段階は難なく成功だな。」

    クマ(あの野郎め… 自分の通う学校の防犯システムの弱点をわざわざ教えるとは…)


    クマ(食えねーヤツだぜ…)

    その時、リスから無線が入った。

    リス『ボス、学園全体の電話線を遮断しました…!』

    リス『電磁パルスを発射後にそちらと合流します!』

    クマ「ご苦労。予定通りお前は裏口からだ。」

    クマ「パルス発射後は無線以外は使えねぇ。頭に入れておけよ。」

    強盗団メンバー「了解ッ!」

    クマ「さぁ、おっぱじめようじゃねぇか…」

    クマ「『安全装置(セーフティ)解除』だ!」

    ネコ「待~ってました~!」
  17. 17 : : 2016/07/18(月) 15:47:22
    その頃…


    七海「……………」

    うなだれる雪染を皆がなだめる傍らで真剣な眼差しでスマホに向かい合う少女がいる。

    澪田「ち~あ~きちゃんっ!またゲームっすか?」

    七海「うん… ちょうど… イベント走り終わるとこなんだ……」

    澪田「そうなんすか! なんだ唯吹も走りたくなってきたっす!」

    七海「…………………」

    するとその時、七海の顔がとてつもなく不機嫌な顔つきに変わった。


    普段はそうそう見せない表情である。

    澪田「あ… あれ? 唯吹ったら何か……」

    七海は静かに首を振る。

    七海「通信エラー…………。」

    七海「この学園の設備で通信エラーだなんて……」

    仕舞いにはわなわなと震えだした。

    ところが「通信エラー」と言うにはいささか不可解である。

    携帯にはアンテナ1本すら立たない。

    澪田「あれ? そういえば唯吹のケータイも…」

    左右田「あれ…? 繋がらねぇぞ…」

    その教室にいる全員が全員同じ状況であった。

    狛枝「あれ…? おかしいな… やっぱボクってツイてないのかな…?」

    雪染「先生のもダメみたい… どうなってるんだろう…?」
  18. 18 : : 2016/07/18(月) 15:52:30
    ~警備員室~

    警備員「クソっ! 何故だ!! 防犯システムがまるで機能していない!!」

    警備員2「ダメです…! こちらも本部に連絡取れません!!」

    警備室長「警戒を厳にしろ!! これは明らかに攻撃だ!!」

    警備員3「室長… 念のため武器の使用を許可しては……」

    警備室長「バカ者ッ!!! こんな所でそんな、大騒ぎにしてどうするんだ!!」

    警備員4「室長! ダメです! やはり予備学科校舎も……」


    警備室長「そんなゴミ共はどうでもいいんだよッ!!!!」

    警備室長「分かってンのか貴様らッ!!! この本科に通う生徒達は皆この国…いや、世界の希望を担う生徒…ッ!!

    国宝級の価値もある人間だぞ!!」

    警備室長「お前ら凡人ごときの首が飛ぶぐらいじゃ済まねぇンだよ!!!」


    警備室長「それも言うに事欠いて『予備学科』とは何事かッ!!! 自覚が足りん!自覚が!!!」

    「まぁ、そうカッカするんじゃねぇよ…」


    背後からドスのある冷たい声が聞こえた。

    同時に、何かを押し付ける感覚も…

    「もう、テメェらは首が飛ぶ心配なんざする必要ねェ……」



    「永遠にな。」

    火薬の炸裂音と共に警備室長の脳漿が飛び散る。


    ネコ「お勤めご苦労さん!」

    ネズミ「ゆっくり休めよ。」


    断続的な銃声、悲鳴、怒号、断末魔で警備員室は充満された。
  19. 19 : : 2016/07/18(月) 15:54:26
    ~希望ヶ峰学園 裏口~

    警備員5「ダメだ… 本部も警備員室も応答がない…」

    警備員6「こうなったら仕方ない… 俺らだけで止めるぞ…!」


    警備員達は懐から拳銃を取り出した。


    裏口がゆっくりと開き、足音が一歩一歩近づいて来る。

    警備員7「死ねやァ!!」

    陰から飛び出すと同時に数発、その後ろに隠れていた者も続けざまに「侵入者」に弾丸を浴びせる。


    その「リス」は何事も無かったかのように佇んでいる。

    そして、こちらに向けられたこちらの物とは明らかに違う「銃口」を見つけた時。


    リス「……何かしたのか?」

    警備員7「あ…ああァ………っ!」


    空気をバリバリと引き裂くような銃声より一瞬早く、横殴りの弾雨が降り注ぐ。

    リス「へっ… 他愛もねェ……」


    巨大な「リス」が去った後には血飛沫とおびたたしい数の薬莢と死体……

    そして、「ぬいぐるみ」のみが残された。


    ~1-B教室~

    小泉「ねぇ… 今の音……」

    左右田「やっぱり聞き間違いじゃねぇ!! クソッ!どうなってんだよ!!」

    澪田「あ… あば… は…ははははははハイジャック……」

    雪染「………」

    雪染「みんな。どうか落ち着いて。絶対に教室を飛び出したりしないでね…」


    ソニア「先生…! ダメです!!」

    雪染「大丈夫。先生、そんな簡単に死なないから…」


    静かに教室の扉を閉める。


    教室の外には既に音の主()の姿があった。
  20. 20 : : 2016/07/18(月) 15:57:48
    雪染「誰ですか?あなた達は… ここは生徒が育つ場所です。
    あなた達のような方々の来る所ではありません…!」

    クマ「そう邪険にしてくれるなよ… 俺はただここの生徒にちょいと用があるんだよ…」

    雪染「どうしてもお帰りいただかないつもりですか?」

    クマ「用が済んでから帰ったっていいだろう。」

    雪染「お断りします…!」


    着ぐるみの狭い視界を利用し、だだっ広い死角から強烈な回し蹴り……ッ!!


    クマ「…………」

    雪染(かっっったい…! ただの着ぐるみじゃない…!)


    ネコ「おとなしく寝てな」

    クマ以外の3人が何かを教室と廊下へ投げ込んだ。



    雪染(煙…? しまった…!)



    当然、教室内はパニック陥った。

    罪木「み… なさん…っ! 吸っちゃ…ダメ……です…」

    西園寺「やれるもんなら… やってる…っつの……! ゲロ…ぶた……」


    その時、もうもうとする煙を引き裂いて巨大な人影が現れた!

    弐大「ぬォオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

    リス「な…っ!?」


    完全に油断していた着ぐるみの影にコークスクリューが炸裂する。


    リス「ぐぉア……ッ!」

    こめかみにクリーンヒットした一撃でリスは廊下の向こうまでフッ飛んだッ!!

    リス「野郎……ッ!!」

    激昂したリスは思わず銃を取り出すが…

    クマ「落ち着け! このガスの中だ! 長くはもたん!!」

    ネコ「人間の致死量ギリギリだからねェ…」

    弐大「ぐッ……」


    7月15日13時51分12秒 。

    希望ヶ峰学園1-B、及び警備施設は完全にぬいぐるみ強盗団によって掌握された。
  21. 21 : : 2016/07/18(月) 15:59:16
    1時間後…

    ネズミ「超高校級と言えども案外簡単なものだな。」

    雪染「…………」

    雪染(全員、拘束されてしまった……)

    雪染(しかも… この見るからに怪しい首輪…)

    雪染を含め、生徒全員に重厚な首輪が仕掛けられた。


    雪染(重さや形状からいって… 恐らくわたし達がヘタな動きを見せればその本人か… もしくは誰かの首輪を爆破させる仕組み……)

    雪染「どうすれば……」
  22. 22 : : 2016/07/18(月) 16:04:24
    一方、その頃…

    家電量販店に並ぶテレビを前に顔を真っ青にした二人組の姿があった。


    キャスター『臨時ニュースです! たった今入りました情報によりますと… 希望ヶ峰学園に数人の人物が入り込み、銃を乱射し、立て籠っているとのことです…! 警察では現在…』


    辺古山「そんな…! 一体なぜ……!?」

    九頭龍「探してるんだろーよ… 俺たちを…」

    九頭龍(いや、誘き出すって言った方が近いか…)

    辺古山「それにしても早すぎます! わたし達が彼らを見かけたのは昨日今日の話じゃないですか…!」

    九頭龍「早いとか遅いとかの問題じゃねぇ!ペコ!! 一旦帰って『仕度』するぞ!!」


    辺古山「かしこまりました…!」


    すると、その時…

    九頭龍の携帯が鳴った。

    九頭龍「誰だ…! こんな時に!」


    運転手『大丈夫ですか!? 若!』

    九頭龍「大丈夫じゃねぇ! 今から向かうところだ!! どっかにいるならすぐに拾ってくれ!」

    運転手『もう、すぐそこまで来ていますよ。』

    九頭龍の後ろにトレーラーが止まった。

    運転手『本当によろしいのですね? 若。』


    九頭龍「あぁ… 当たりめぇだろ……」



    九頭龍「テメェの学舎(シ マ)も守れねぇで何が極道だ!!」

    辺古山「坊っちゃん……」

    運転手(…頭領……。 ご子息様は貴方が思っているより… 逞しく育っていますぞ。 )

    運転手「『必要なもの』は全て荷台に詰め込んであります。それと…」

    運転手「もうひとり… 坊っちゃんのご学友が…」


    ~同時刻 希望ヶ峰学園~

    ネコ「マスコミのヘリがうっとおしくなってきたね…」

    ネコ「持ってきた『アレ』で吹き飛ばしてもいいかい?」

    ネズミ「抑えろ。 『アレ』は弾数が少ない。」


    希望ヶ峰学園1-Bは完全に掌握された。

    その他の生徒はSATの救助を得る、自ら避難するなどしてどうにか避難が完了していた。

    しかし、ここへ来て計画に綻びが生まれ始める。

    クマ「なんだと!? 例のガキ共がいねぇだと…ッ!!?」

    クマ「ちゃんと探したンだろうなァ!! リスッ!!」

    リス「ま…間違いありません! ここにはあのガキ二人はいません…!」

    雪染(二人…まさか… 九頭龍くんと辺古山さんの事…?)

    ネズミ「まぁ、落ち着きなさって… 今、ここにいなくとも彼らとて所詮は高校生…… こんな事態になっては出て来ざるを得ないでしょう。」

    ネズミ「我々の要求を通し、組織の『資金』を確保出来る上、我々は九頭龍組を相手に『九頭龍家の息子』というカードが切れるようになるわけです…!」

    ネズミ「そうすれば日本からヤクザ共を一掃して… 我々が代頭を務める…」

    クマ「喋り過ぎだ! 計画が終わるまで気を抜くんじゃねェ…ッ!!」


    雪染「なんだ… ある意味拍子抜けしちゃった…」

    ネコ「あぁ? オメー自分がどういう状況か分かってないの?」

    雪染「あんたらが手にしようとしてるそのカードは…」



    雪染「とびっきりのババ(Joker)よ…」

    ネズミ「わざわざご心配頂きどうもありがとうございます。」
  23. 23 : : 2016/07/18(月) 16:11:57
    クマ「静かにしてろ。計画もいよいよ大詰めだぞ…」

    クマ(ヤツは… 本当に来るのか…?)


    外には既に警察を始め、特殊部隊、マスコミがごった返していた。


    警察「犯行グループに告ぐ! 要求した物を用意したぞ!!」

    現金輸送車がゆっくりと校門をくぐり、入り込んで来た。

    警察「要求の物は用意したぞ!!生徒は開放したらどうだ!!」

    クマ「お前が輸送車の中身を開けろ。」

    警察「……分かった。」

    現金輸送車の中にあったもの、それは札束ではなく…


    クマ「なんだそれは…? どういう事だ!」

    警察「さすがに… 三十億円ともなるとそう易々と集まらんさ…」

    警察「だが… ここにある金塊を売れば…どんなに安く見積もっても20億円になるはずだ… 現金と合わせて要求通り30億円… どうかね?」

    クマ「…………」

    クマ「よし、いいだろう。 その現金輸送車を校庭の中央に着けろ。 そのあと運転手は降りるんだ!」


    外へ向けて喋りながらも教室の中のメンバーへ合図を送る。


    ネコ「了解! やっぱおいでなすったねぇ」

    リス「迎え入れてやるとするか。」



    ~某所 屋上~

    スナイパー「こちら狙撃班! 射点に到着済! 」

    スナイパー「情報通り、1-B教室窓に主犯の姿を確認! 射撃許可を請う!!」


    無線から返事が返る。

    「狙撃班へ。既に射殺許可が出ている。そちらの狙撃に合わせてSATを突入させ、人質を開放する!」

    「狙撃のタイミングはそちらに任せる! 」

    スナイパー「了解!」

    「分かっていると思うがあの着ぐるみは防弾だ。だが、必ず弱点があるはずだ。」

    「主犯が射殺された混乱に乗じて一気に教室を制圧する! 貴官の狙撃が最も重要なポイントと言える…」

    「頼む…! 成功させてくれ…!」

    スナイパー(相手の着ぐるみは防弾… だが、全部が全部弾を弾けるようにはなっていないはず…)

    スナイパー(着ぐるみの目だ… 着ぐるみの中から外を確認するそのポイントなら… コイツでも貫通するはずだ…)

    スナイパー(そのまま動くなよ… 好き勝手にやりやがって…!)


    スナイパー(死ね……ッ!!)
  24. 24 : : 2016/07/18(月) 16:15:51
    銃口から音速を超えて弾丸が飛翔する。


    ガラスが砕ける音より一瞬遅れて銃声が響き渡る…!

    SAT「突入ッ!!」

    スタングレネードが投げ込まれ、激しい閃光と鼓膜を突き破る音が教室を突き抜ける!

    階段の奥から雪崩のように特殊部隊が突っ込む!


    だが、この時点で「違和感」に気がついたのは……


    スナイパーだけであった。

    スナイパー「狙撃失敗だ!! 本隊は戻れ! 繰り返す! 狙撃失敗!! 弾が貫通(と お)らない!!」

    スコープの先に見据える着ぐるみが、少し笑った気がした。



    クマ「おい。『アレ』の使用許可を出す。」

    リス「待ってました…!」

    ネズミ「やれやれ。派手になりますね。」




    スナイパー「やられた… 完全にしてやられた……」

    スナイパー(せめて… 対物ライフルでもありゃ………)


    スローモーションに写る視界。

    動かない身体。

    そして、これまたスローモーションで自らに近づく弾体。


    スナイパーは最期、そんなことを思った。


    爆音と共に焔と破片が飛び散った!

    SAT2「なんだ!? 今の爆音は…!?」

    その答えはすぐに出た。


    リス「コイツをお探しかい?」

    肩に担いだ「ソレ」が火を吹いた。

    SAT1(バカな…! こんな建物の中であんなもの……!!)


  25. 25 : : 2016/07/18(月) 16:18:47
    SAT3「RPGーーーーーッ!!!」

    今度は学園の内部で爆発が起きる。

    SAT4「突入部隊から本部へ!!犯行グループは軽機関銃(マシンガン)の他、ロケットランチャーで武装している模様!!我々だけではとても対処できない…ッ!!
    自衛隊に協力を……」

    言い終わる前に激しい爆音と、爆炎に包まれた。

    ネコ「ヒューーーッ!! たまんないね!!」


    クマ「あまりハデに暴れ過ぎるなよ? 陸自を呼ばれちゃ面倒だ。」

    クマ「まぁ、ゴミ掃除ぐらいなら構わんだろう。」

    クマ「先に屋上へ移動しろ! イヌがもうすぐこちらと合流する!!」

    クマ(なんだ…? 来ねぇのか? 奴らは…)

    クマ「さて、あんなところで旋回されていては邪魔だな…」

    クマは更にバックから何かを取り出した。

    クマ「目障りなんだよッ!!」

    上空に向け、何が放たれた。


    ~上空 警察ヘリ~

    パイロット「なッ!!」


    空中で警察ヘリは木っ端微塵となった。


    SAT5「アイツら…!携行地対空ミサイル(スティンガー)まで持ち歩いてるのか…!」

    ついでと言わんばかりに地上で待機している警官隊にも銃弾をバラ蒔く。

    クマ「人質を連れて屋上まで移動しろ!!」

    今、まさに学舎は悲鳴と鮮血、そして銃弾で埋めつくされている。
  26. 26 : : 2016/07/18(月) 16:21:26
    ~同時刻 某所~

    辺古山「坊っちゃん…! 行かないのですか…!?」

    ??「そうだろ!オメェ何の為にあんなもんまで用意したんだよ!!」

    九頭龍「まだだ…! 今突っ込んでも何にもならねぇ!!」

    九頭龍「だから作戦を立てたんだろ…!」

    辺古山「ですが…!」


    運転手「若。そろそろ『例の奴』が戻って来ますぞ。」

    九頭龍「わかってる。 悪いな。これ借りてくぞ。」

    かなり大きめのガンケースを荷台から下ろした。

    九頭龍「作戦の第一段階はしっかり上手くいった…」

    九頭龍「ペコ!頼むぞ!」

    辺古山「分かりました。坊っちゃん… 坊っちゃんこそお気をつけて…」

    辺古山「すまない。頼むぞ…」

    ??「ったく…センパイと学園を救う作戦って聞いたから協力することにしたけどよォ… 」

    ??「俺でもムチャクチャだって分かるぜ…」

    辺古山「すまない… だが登校していた78期生は全員行動がとれなくなってしまったからな…
    お前しか頼れる人物がいなかったのだ…」

    ??「あーもう分かった。分かった。 振り落とされんなよッ!!」

    辺古山を後ろに乗せたバイクが走り出す。
  27. 27 : : 2016/07/18(月) 16:26:19
    ~希望ヶ峰学園 屋上~

    西園寺「放しなさいよ! このゴミ屑ブタ野郎!! ささむけ拗らせて死ね!!」

    クマは黙って空を仰ぎ見る。

    クマ「ずいぶん遅かったな…」

    無線から返答が入る。

    イヌ「えぇ。空自のレーダーサイトの間を縫うのに手間がかかりましてね…」



    何かが空を飛翔する音が聞こえる。

    ヘリコプターとはまた違うような…

    警察2「な…何だよアレ…!」

    警察3「オ… オスプレイ……??」

    回転翼を備え、なおかつ水平ではヘリコプターを遥かに凌ぐ速度で飛行可能な輸送機である。

    クマ「ブツは校庭の中央にあるぞ。さっさと引き上げてくれ。」

    イヌ「了解!」

    機体の底部から円形の金属板が下ろされる。

    機体はゆっくりと現金輸送車の真上に着けると…

    現金輸送車が金属板に引き寄せらせて浮かび上がった!

    拳銃4「で…電磁石…ッ! クッ… どうやって現金を持ち去るつもりなのかと思えばこんな…」


    警察5「くっ…… クソぉ… クッソォオオオオオオオオ!!」

    「意地でも止める」と言わんばかりに機体に拳銃弾が逆巻く雨のように降り注ぐ。

    だが、無論。その巨大なミサゴ(Osprey)に有効な弾丸とはなり得ない。

    イヌ「地上の警察に動きアリ!」

    クマ「さっさと屋上に着けろ! 急げ!!」

    現金輸送車を宙に吊ったまま機体後部を屋上にピタリと着け、ホバリングさせる。

    しかし、その間も銃撃は加えられる。

    例え無意味だとしても。

    イヌ「チッ… IDWSで援護します! 急いで乗り込んで!!」

    銃撃のお返しとでも言いたげに機銃から弾雨が嵐のように吹き荒れる。

    警察4「うぉわ…ッ!!」

    これには警官隊も車や物影に避難するより他ない。


    リス「おら!さっさと歩け!!」

    機体後部から生徒を無理やり押し込み、強盗団も乗り込む。

    クマ「出発しろ!! さっさとしねぇとスクランブルが飛んでくるぞ!
    その前に日本から脱出して中国側へ国境を越えろ!
    レーダーに引っ掛かるなよ!!」

    イヌ「了解ッ!!」

    回転翼が少しずつ角度を変えていき、速度を上げていく。


    強盗団はビルの谷間を縫って飛び去る!
  28. 28 : : 2016/07/18(月) 16:30:44
    ~某ビル 屋上~

    九頭龍「……俺の『シマ』を好き勝手荒らしやがって…!」

    九頭龍「このまま帰すわけねェだろうが…ッ!!」


    ガンケースから取り出した対物ライフルを構え、一目散に逃げようとする「ミサゴ」に狙いを定める。

    九頭龍「ペコ! ヤツらは予想ルートに入ったぞ!!」

    バイクの後ろに乗り、同じミサゴを追いかける者の姿があった。

    辺古山「逃げられるぞ…! もっとスピードは出ないのか…!?」

    大和田「無茶言うな! 空飛ぶ相手に追い付けるかっての!!」

    大和田(けど、避難勧告が出てたのはラッキーだったな…お陰で車が全然いねぇ…)



    九頭龍(片方のエンジンに2、3発も当てりゃ… そう長くは飛んでいられねぇはずだ……)

    明鏡止水。

    まさに今、九頭龍の心は「無」となった。


    弾丸がビルの谷をすり抜け飛翔する!


    ~オスプレイ 機内~

    ガン! というような明らかな異音が機内に響き渡ると…


    けたたましい警告音が機内に鳴り渡る。

    イヌ「バカな…!攻撃…っ!?」

    ネコ「何…? どういう事なのさ!? ポリ公共は逃げたんじゃないのかい!?」

    クマ「さっさと機体を立て直せ!」

    イヌ「飛ぶだけでも精一杯ですよ…!」
  29. 29 : : 2016/07/18(月) 17:16:51
    更に撃ち続けた弾丸により、エンジンから黒煙が上がる。


    ミサゴは尾を引きながら速度と高度を落とした。

    イヌ「輸送車が重すぎます! これを投棄すれば… なんとか朝鮮半島までは…!」

    クマ「バカ野郎!! こんなとこで収入を放棄してどうすンだよ!!何とかしろ!!」

    ネコ「後ろに何かが追ってるよ!!」

    リス「後部ランプを開けろ! 俺がドアガンで応戦する!!」

    機体後部が口を開けた。

    人質を押し退けて銃座に付く。

    リス「野郎… 一体どこのどいつが…!」

    機体を追っていたのはいかにも「暴走族」といった改造が施されたアメリカンタイプのバイク。

    特徴的なリーゼントヘアの後ろに見覚えのある姿を見た。

    リス「……ッ!!」



    リス「ボス!! 例の奴らだ!!用心棒の方です!!」

    クマ「何…ッ!?」

    クマ「とうとう現れやがったのか………!!」

    リス「畜生! 死にやがれェ!!」

    機銃から放たれた曳光弾のひとつひとつが一本線を描きながらバイクに突撃する。

    その射線をすんでのところで大和田は潜り抜ける。

    大和田「一体何なんだよ! あの危なっかしい連中は!!」

    辺古山「バイクを寄せて機銃の死角に入れ!」


    リス「クソっ! 奴ら死角に……ッ!!」




    九頭龍「じいや! そっち行ったぞ!!」

    運転手「お任せを!」


    建設用クレーンが重々しく向きを変える。

    イヌ「…ッ!!?」

    気がつけば目の前にクレーンで吊るされた鉄骨が機体の目の前にあった。

    慌てて機体の高度を一気に下げる。


    その距離、地上から僅か十数メートル…!!

    辺古山「今だ!!」

    大和田「行くぞ……!」

    大和田「飛ぉ~~べェえええーーーッ!!」

    体重を前にかけ、前輪ブレーキのみを一気にかける事により、後輪を跳ね上げる……


    「ジャックナイフ」!!

    跳ね上げられた後部から、辺古山はロケットの如く飛び出す!!

    辺古山「うォおおおおおおおおおおおァアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」
  30. 30 : : 2016/07/18(月) 18:02:14
    その目に映る光景をにわかに信じる事は出来なかった。

    射角を取れない位置から、バイクから投石機(カタパルト)のように打ち出された人影が……

    今、まさに目の前に居るのだ。




    紫電一閃。

    肉眼で捉える事など到底不可能な斬撃がリスの腹部に突き刺さる!

    リス「な…っ!ガッ!!」

    しかし…


    辺古山「………………」

    リス「ククク…バカめ… 腹にチクリときただけだわ……」

    リス「防刃機能も付いてるこの着ぐるみを貫くその刀の切れ味はなかなかのもんだが……」


    リス「『殺せなきゃ』無意味なんだよッ!!!」

    腰に指したナイフを取り出そうとしたその時…

    辺古山「本当にそうかな……?」




    「カチッ」

    リス「ヌ…っ!? ぐああ!! アアアッ!! ァアアアアアアアアアアアアーーーーッ!!!」


    巨大なリスは痙攣しながら倒れた。

    辺古山「悪いな。この刀は左右田の改造のお陰で刀身に高圧電流が走っているのだ…」

    辺古山(さすがにパワーは落としたがな…)



    雪染「辺古山…さん?」

    田中「な… なんと言う…斬撃…!お前はまさか伝説の……ッ!」


    ネコ「な…なんだい!! お前は!!」

    ネズミ「クソッ!」

    二人が銃を取り出そうとしたその時…!

    目にも止まらぬ刀身が生徒達の間をすり抜ける!!

    全員の首輪は重力に身を任せ、下へ落ちた。


    ソニア「首輪が…!」

    左右田「スゲーーーッ!! まるで救世主だぜ!!!」

    ネコ「調子に乗るんじゃないよ!!」

    ネコは銃口を辺古山に向ける。

    ネズミ「やめろ!! 跳弾して首輪に当たったらどうするつもりだ!!」


    その瞬間…

    ネコ「がァああッ!!」

    手に持っていた武器が大破した。


    ネズミ「狙撃…!? バカな!!」

    風防ガラスの窓には銃弾が通った形跡が残されていた。


    ネズミ(ヘリの中にいる人物が所持する武器だけを狙い撃っただと…!?)






    九頭龍「……………」

    九頭龍「状況からして機体への攻撃は狙撃しかあり得ねぇのに窓の側でじっとしてるヤツがあるかバカヤロー……」

    ネズミ「クソッ! クソッ!」

    弐大「これで思う存分暴れられるのォ…」

    終里「ボコられる覚悟は出来てんだろうな…?」

    着ぐるみの上からの攻撃でネコ、ネズミはまとめて戦闘不能となった。


    着ぐるみの上からの攻撃で十分であった。

    弐大「あん時はガスのせいで力が出んかったからのォ…」


    クマ「クッ……!!」

    辺古山「降伏しろ…… お前に勝ち目はない。」

  31. 31 : : 2016/07/18(月) 18:41:21
    辺古山「今すぐ着陸させろ!!」

    イヌ「へ…へへ…」

    イヌ「こうなったら…… 全員まとめて巻き添えにしてやるッ!!!」


    機体が激しく揺れ、めちゃくちゃな機動を始める。

    辺古山「全員後ろから飛び降りろ!!」

    左右田「ハァ!?」

    辺古山「まだ高度が低い上に下は海だ!!」

    生徒全員、我先にと機体から海に飛び降りる。


    辺古山「ハァ… ハァ…」

    辺古山(レーダーを避けるルートにこだわり過ぎた結果…そして坊っちゃんたちの誘導のお陰だな… 東京湾に出れた事は幸運だな……)



    運転手「みなさ~ん!!」

    クルーザーが一隻近づいてきた。

    辺古山「じいや…!」

    なんとかクルーザーに全員を引き上げた。



    強盗団が乗り込んでいたオスプレイはそのまま海へ突っ込み、大爆発を起こした。

    運転手「皆さま。風邪をひかれます故、どうぞ中へ…」



    クルーザーの中には彼の姿もあった。

    辺古山「ありがとうございます。 坊っちゃん… あの時… 坊っちゃんが奴の武器を撃ち抜いて下さらなかったら… わたしは死んでいました…」

    九頭龍「…さぁ? 何の話をしてんだ?」

    七海「もしかして… 二人がやっつけたの?」


    辺古山「もっと誇ってください。坊っちゃん…」

    辺古山「シマ(学舎)舎弟(クラスメート)は… あなたが護り抜いたんですよ……」

    雪染「辺古山さん!九頭龍くん!」

    雪染「ありがとう… 生徒達を守ってくれて…」

    雪染「でも、危険を犯しすぎです!!」


    雪染「自分自身のことも… 大切しなきゃダメですよ。二人とも…」


    九頭龍「フン……」

    辺古山「申し訳ありません…」



    「待ちやがれ!!! このまま『めでたしめでたし』で終わると思ってやがんのかよ!!!」


    一同「…!?」

    キャビンの入り口にはあの強盗団の頭領。
    「クマ」がナイフを持って立っていた。


    クマ「このまま無事に帰すなんて…!」

    九頭龍「思ってくれんなよ…?」


    クマ「な…!?」

    終里「なぁ、こいつボコッてもいいんだよな?」

    弐大「覚悟はえぇの?お前さん…」

    ソニア「こんな大事件の主犯を許しておくわけにはいきません!」

    左右田「さっさと警察に突き出そうぜ!!」

    西園寺「何言ってんの? 左右田おにぃ。ここはコイツを痛め付ける流れでしょ?」

    西園寺「アリンコ100%ジュースとゴキブリ100%ジュースではオジサンはどっちがいいかなぁ~?」

    クマの頭の中にあの言葉が過った。


    「とびっきりのババ(Joker)よ」


    そして、悟った。自らの完全なる敗北を…


    九頭龍「おい… いいのかよ?」

    雪染「う~ん…」

    雪染「許可します!」

    九頭龍「ってオイ!!」



    「Ahhhhhhhhh‼‼‼ Oh Noooooooooooooooooooooooo!!!!!!」

    夕日に染まる海に情けない叫びがこだまする。

    クルーザーは陸に向けて針路をとる。
  32. 32 : : 2016/07/18(月) 19:05:54

    ~翌日~

    世界中を恐怖に陥れた「ぬいぐるみ強盗団」は壊滅、リーダー含め5人全員がお縄となった。

    ひどい有り様となったリーダーとその部下たち、生徒を巻き添えにしようと機体を墜落させたものの、半端な勢いで着水したため全員生存。

    その後、警察が駆けつけ御用となった。

    「あの女のせいだ」などと全員が意味不明な供述をしており、薬物使用の疑いまでかかっている。

    半壊した希望ヶ峰学園は一時的に閉鎖され、本科の生徒は被害が少ない予備学科の校舎へ通う事となった。

    とはいっても当分は休校のようである。

    あれからというもの、警察の取り調べ、マスコミの追っかけ等で散々困惑する羽目になる。


    九頭龍と辺古山の活躍をまともに信じる者はそういなかった。
    だが、この事実だけは、何人たりとも消せはしないだろう。



    日常が戻って来るのはまだまだ先の事になりそうだ。




    辺古山「おはようございます。坊っちゃん」

    九頭龍「あぁ。はよ…」

    辺古山「学校…… いざ無いとなるとなかなか手持ちぶさたですね……」

    九頭龍「……なら、少し出掛けるか?」


    特に用もなく、ふらついていたが…

    ふと、足を止めて見上げる。

    二人は希望ヶ峰学園の校門の前に立った。


    警察の規制線が張られ、校舎は半壊。まるで戦争の後のようだ。


    九頭龍「本当… よく生きてたよな……」

    辺古山「えぇ… 坊っちゃんのお陰ですよ。」


    九頭龍「犠牲も大勢出たけどな…」


    校舎の側には献花台が設けられていた。

    九頭龍「いくら目の敵のポリ公つってもよ…」

    花束が一つ、献花台に加えられた。






    辺古山「学校… 早く復旧するといいですね」

    九頭龍「あぁ。まぁな……」




    九頭龍(終わった……)

    辺古山(これで… 終わりのはずなのに…)

    九頭龍(このいまいち解決しきれてない感じは何なんだよ…)

    辺古山(ただの強盗にしてはスキとリスクのありすぎる手段だが… それだけではない…)

    拭い切れない思いが二人の心に取り憑いて離れない。

    飲み込み切れない脂身のような違和感、不快感。







    まるで、この事件その物が何かの……



    序章(プロローグ)のような。












  33. 33 : : 2016/07/18(月) 19:07:33
    くぅ疲 これにて終了です!

    最後までお付きあいありがとうございました!


    副将、大将の皆さんあとはよろしくお願いいたします!!

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風に立つザクⅡ

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