このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
エレン「最後の」 グリシャ「聖戦」 ※進撃×インディ・ジョーンズ
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- 1 : 2016/06/08(水) 13:25:20 :
- いつか書くと言っていた進撃の巨人とインディ・ジョーンズのコラボSSになります(∩´∀`)∩
相変わらずの見切り発車ですが、精一杯書いていきますのでよろしくお願いします<m(__)m>
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- 2 : 2016/06/08(水) 13:26:29 :
1912年 ユタ州
ボーイスカウトの一隊は、ユタ州にある岩石砂漠を横切り、巨大な岩陰で休息を取っていた。
https://pixabay.com/static/uploads/photo/2012/09/01/20/16/monument-valley-55473_960_720.jpg
隊長「全隊、止まれ!! 馬から降りて休憩とする!!」
隊長の合図でボーイスカウトの子供たちが次々と馬から降りていく。
と、子供達のうちの一人が馬から転げ落ち、エレンは声を上げた。
エレン「隊長! どうやら、マルコは馬酔いしてるみたいです。」
教官「仕方ないな。エレン、お前がしっかりと面倒を見てやれ。」
エレン「了解です。」
エレンは気持ち悪そうなマルコを引っ張り、少し離れた洞窟の中へと入っていく。
隊長のあんまり遠くに行くと、迷って戻れなくなるぞという声もどこ吹く風。
エレンはマルコを伴って、こっそりとボーイスカウトの一隊から抜け出した。
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- 3 : 2016/06/08(水) 13:27:08 :
マルコ「エレン! どこ行くんだよ!」
エレン「ビビってんのか!? 冒険に決まってんだろ!」
マルコ「ばれたらマズいって!」
幼い頃から、エレンは冒険家気取りの生意気な子供であった。
探検家気分でエレンは洞窟の中を進んでいく。
マルコもおっかなびっくり、エレンの後を進んでいく。
すると、洞窟の奥から人間の声が聞こえてきた。
エレン「どうやら複数いるみたいだ。俺たち以外にも探検家がいるなんてな・・・・・・・・・・・・行くぞ!」
コニー「行くってどこに!?」
エレン「奥に決まってんだろ!? ついて来いよ!!」
エレンはそっと息を殺し、洞窟の奥へと進んだ。
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- 4 : 2016/06/08(水) 13:27:47 :
洞窟の最奥、果たして、3人の男女が何やら盗掘を行っていた。
そのうちのリーダー格と思しき男は、テンガロンハットを被り、いかにも探検家といった空気を醸し出していた。
http://item.shopping.c.yimg.jp/i/l/youngwestern_930185_1
と、盗掘を進めていた二人の男が歓声を上げ、テンガロンハットを被った男に掘り当てた十字架を見せた。
イザベル「兄貴!! 見つけたぜ!」
ファーラン「お前が探していたのはこの十字架だろ?」
すると、その男―――――リヴァイ・アッカーマンは十字架を手に取り、にやりとした表情を浮かべた。
リヴァイ「よくやったぞ、お前ら。」
イザベルとファーランは大喜びで撤収の支度を始めた。
マルコ「ねえエレン、これって――――・・・・・・。」
エレン「静かにしろ、あれは・・・・・・・・・・・・1952年にコルテスがコロナドに与えた十字架だ。」
エレン「あれは・・・・・・・・・・・・博物館に収められるべき文化財だぞ? クソ、俺が取り返してやる。」
リヴァイはテーブルの上にゆっくりと十字架を置くと、撤収の手伝いを始めた。
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- 5 : 2016/06/08(水) 13:28:57 :
マルコ「エレン?」
エレン「マルコ・・・・・・・・・・・・お前は隊長に盗掘者を見つけたって報告して、保安官を呼べ。」
マルコ「!! ダメだよ! ってうわぁ!」
エレンはマルコの膝の上に這い登っていたヘビを捕まえてマルコに詰め寄った。
エレン「早く行け!」
マルコ「わ、分かったよ!」
渋々マルコが出口へと走っていく。
そうこうしている間にエレンは洞窟の最奥へローブを降ろし、ゆっくりと降りていった。
リヴァイにファーラン、イザベルたち三人の盗賊は、お片付けに夢中で忍び寄っているエレンに気が付いていないようであった。
エレンは息を呑み、そっとテーブルの上へと近づき・・・・・・・・・・・・
コッソリ十字架をくすねると、服の中へとしまい込んだ。
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- 6 : 2016/06/08(水) 13:29:51 :
エレン(へへ、上出来だな。)
心の中でほくそ笑みながら、エレンはロープを登っていく。
と、その時・・・・・・・・・・・・
バキッ!
エレンは洞窟を支える横木に足を引っかけ、木を割ってしまった。
リヴァイ「!!」
イザベル「!! 兄貴!!」
ファーラン「あいつ・・・・・・盗んだな!!」
エレン「!! ヤバいッ!!」
遂に盗賊たちに気付かれ、エレンは洞窟の中を全速力で走った。
リヴァイ「俺を出し抜くなんざ、ただのガキじゃねえな、追え!!」
イザベル「おう!!」
ファーラン「了解!!」
洞窟を抜け出し、エレンはボーイスカウトの一隊を大声で呼んだ。
エレン「隊長! 皆! 早く来てくれ!! クソ、皆迷子かよ!!」
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- 7 : 2016/06/08(水) 13:30:35 :
置いていかれてしまったことに漸く気が付いた時、背後の洞窟から、リヴァイたちが走って出てきた。
エレンが口笛を吹くと、ここまで一緒に乗ってきた馬が崖の下に走ってきた。
エレン「よしっ!」
エレンは華麗に飛び乗ろうとして、馬に躱されて尻餅をついた。
エレン「って~! 覚えてろよ!!」
恨み言を呟きながらもエレンは馬によじ登り、手綱を取って走り始めた。
イザベル「あ~! あいつ、馬に乗って逃げやがった!」
ファーラン「俺たちも追うぞ!」
リヴァイ「落ち着け。俺たちには車とトラックがある。」
エレンの後を追って崖のそばまで来たリヴァイたちの足元に、トラックと車が一台ずつ止まった。
車のほうには、今回の盗掘の依頼人であるマフィア――――ドット・ピクシスが乗っていた。
ピクシス「早う乗らんか!!」
リヴァイ、イザベル、ファーランはトラックに飛び乗り、車とトラックは馬に乗って逃げるエレンを追いかけ始めた。
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- 8 : 2016/06/08(水) 17:21:14 :
- あ・・え・・い、インディ・・・・
インディイイイイイイイイイイイイイイイイ!?
期待!
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- 9 : 2016/06/08(水) 17:49:57 :
- 期待!!
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- 11 : 2016/06/08(水) 20:36:35 :
エレン「やぁッ! はぁッ! くそぉ、まだ追ってきやがる!!」
息を切らせながら、エレンは馬の手綱を引き続けた。
砂漠のど真ん中を突っ切って逃げていると、行く手に鉄道を走る機関車が見えてきた。
咄嗟にエレンは機関車に飛び乗り、後続の車両の上を走って逃げ始めた。
リヴァイ「すばしっこい奴だ!」
イザベル「待て! ドロボ~!!」
エレン「待つ奴があるか! つ~かドロボ~はお前らだろ~がッ!!」
リヴァイたちも汽車に飛び乗り、車両の上を走って逃げるエレンを追いかける。
盗賊たちに追われ、エレンは車両の中に飛び込んだ。
エレン「なんだこの車両? サーカス団かよ!?」
車両の中にはワニやらヘビやらが沢山ゲージの中に入れられていた。
ゲージの上に架けられている足場を走って逃げるエレン。
すると・・・・・・・・・・・・
バキバキッ
エレン「え!? うわああぁあぁッ!!」
足場が崩れてエレンはゲージの中に真っ逆さまに落ち、ヘビの大軍の中に転げ落ちてしまった。
エレン「あああぁあぁ、うわああぁあぁ、いやああぁああぁッ!!!」
服の中にまでヘビが入り込み、散々な目に遭ったエレンは筋金入りのヘビ嫌いとなった。
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- 12 : 2016/06/08(水) 20:37:15 :
イザベル「あいつ、すばしっこいな!」
ファーラン「ゲージに突っ込むなよ!」
後を追うファーランとイザベルを車両の中に閉じ込め、エレンはさらに後ろの車両へと飛び乗る。
ドアを蹴り破って車両から出てきたファーランを蹴飛ばし、イザベルを蹴飛ばして逃れるエレン。
とそこへ、リヴァイが車両の上へと飛び乗り、ゆっくりとエレンに近づいてきた。
リヴァイ「随分とやるじゃねえか、ガキ? だが、ここで終わりだ。」
威嚇するように近づくリヴァイに、思わず後ずさるエレン。
と、ここでアクシデント。
バキバキッ
エレン「!? おわあぁあぁッ!!」
車両の天井が崩れ、中のゲージへエレンは真っ逆さまに落ちてしまった。
エレン「いてて・・・・・・・・・・・・今度は何だよ?」
ふてくされた様子で立ち上がるエレンの目の前に。
グルルルルル・・・・・・・・・・・・ガアァアァウッ!!
お腹を空かせたライオンが現れて、エレンはパニックに陥った。
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- 13 : 2016/06/08(水) 20:37:57 :
エレン「!? ま、待ってくれ!!」
気が動転しつつ、エレンは壁にかかっていた鞭に手を伸ばすと、あてずっぽうに鞭を振り回した。
バシンッ!
エレン「あでッ!!」
鞭は見事にエレンの顎に直撃し、エレンの顎に傷を作った。
とは言え、流石に鞭を恐れたのか、ライオンは後ずさった。
リヴァイ「鞭をよこせ、引っ張り上げる。」
すると、リヴァイは天井に空いた穴から手を伸ばした。
鞭をしっかりとその手に掴むと、リヴァイはエレンをライオンのゲージから引っ張り上げた。
リヴァイ「さて、探検家ごっこもここまでだ。その十字架を渡してもらうぞ?」
エレン「ふざけんな! これは、博物館に収める!」
イザベル「お前! その十字架は俺たちが見つけたんだぞ! 返せってうわああぁあぁ!!」
イザベルがエレンの袖をつかんだ瞬間、エレンの服の中からヘビが飛び出してイザベルはパニックに陥った。
その一瞬の隙をついて、エレンは再び後ろの車両へと逃げ出した。
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- 14 : 2016/06/08(水) 20:38:28 :
リヴァイ「お前たちは来るな。俺がやる。」
リヴァイはそういうと、逃げていくエレンを再び追い始めた。
エレンは一番後ろの車両へと逃げていき、最早逃げ場がなかった。
エレン「くそ、どうしたら・・・・・・。」
最後の車両へと追い詰められて、エレンは冷静になろうと努めた。
エレンが逃げ込んだ車両、それは、手品のための小道具が積まれた車両だった。
リヴァイ「そこにいるのは分かってる。さっさと出てくるんだな。」
ややあってリヴァイが車両の中に入ってくる。
と、その時、車両の中央にあったマジックボックスが揺れた。
リヴァイ「この中に隠れているな。」
そう思ってリヴァイが箱を開けた瞬間、箱は空っぽになっていた。
リヴァイ「!? 何だと!?」
慌てて車両から飛び出し、外を見ると、馬に乗って汽車から遠ざかるエレンの姿が見えた。
リヴァイ「してやられたな。二度も俺を出し抜きやがって。」
エレンが遠ざかっていくのを眺めるリヴァイは、どこか嬉しそうにつぶやいた。
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- 15 : 2016/06/08(水) 20:42:03 :
- 進撃×インディ・ジョーンズss期待してますぞw
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- 16 : 2016/06/08(水) 21:17:42 :
- 期待ありがとうございます(∩´∀`)∩
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- 17 : 2016/06/08(水) 21:49:44 :
エレンはそのまま、自分の家へと走った。
エレン「父さん! 父さん!! 大変なんだ!!」
嵐のように部屋へと飛び込むエレンに対し、厳格なグリシャはエレンを叱りつけた。
グリシャ「ジュニア・・・・・・・・・・・・部屋に入ってくる時は数を数えるんだ。」
エレン「またそのしきたりかよ・・・・・・・・・・・・1、2、3・・・・・・。」
グリシャ「ギリシャ語でだ。」
エレン「1・・・・・・2・・・・・・・・・・・・3・・・・・・。」
訳も分からずギリシャ語の数を数えされられる事に、エレンは大いに不満であった。
ややあって、こっそりとエレンは父親の部屋を抜け出した。
抜け出したことにグリシャはもちろん気付いていたが、気にも留めずに手帳に絵を写し取っていた。
その絵は、キリストが血を流し、その血を杯が受けている絵であった。
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- 18 : 2016/06/08(水) 21:50:20 :
エレン「くそ、何の役にも立ちやしねぇ。」
腹立ちまぎれに呟くエレン。
すると外が俄かに騒がしくなった。
エレンが外を覗くと、保安官が車に乗ってエレンの家へと向かって来ていた。
マルコ「エレン! 保安官を呼んできたよ!」
エレン「待ちくたびれたぞ!」
漸くやってきた保安官にほっと胸を撫で下ろすエレン。
エレン「保安官さん、盗掘があったんです。」
保安官「話は聞いているよ。君が盗んだという事に、目をつぶってくださるそうだ。」
エレン「・・・・・・・・・・・・はっ?」
保安官「ここにたくさんの証人がいるからね。」
保安官がそういうと、リヴァイ、イザベル、ファーランが部屋の中へと入ってきた。
リヴァイ「残念だったな。」
リヴァイはそういうと、エレンの手から十字架を取り上げ、イザベルの手に渡した。
イザベルは飛び跳ねるように外に出ていき、外で待機していたピクシスに十字架を渡すと、ピクシスはイザベルに金を渡していた。
保安官はそれ以上何も言わず、外へと出ていった。
すると、リヴァイが悔しそうにしているエレンの前に出た。
リヴァイ「今回は俺の勝ちだ。だが、これでめげるな。」
そういうとリヴァイは被っていたテンガロンハットを脱ぎ、エレンに被せた。
探検家、エレン・イェーガーの誕生である。
それからずっと、エレンはリヴァイのテンガロンハットを被り続けている。
それは今もずっと、エレン・イェーガーのトレードマークであり続けている。
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- 19 : 2016/06/09(木) 08:15:57 :
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バキッ!!
エレン「へぶッ!!」
1938年 ポルトガル沖
二人の男に腕を掴まれ、もう一人の男に思いっ切り顔面を殴られるエレン。
とそこへ、白いスーツに身を包んだ年輩の男が近づいてきた。
ピクシス「世界は狭いのう、イェーガー博士?」
エレン「俺とお前にとってはな!」
嵐の夜、雨が降りしきり、大波が打ち付ける貨物船――――コロラド号の上で、宿敵同士、再び相まみえた。
ピクシス「わしが貴様からこれを取り戻すのも二度目じゃのう。」
そういうとピクシスは、テンガロンハットを被ったエレンの服の中をまさぐり、
再びコロラドの十字架を取り上げた。
エレン「博物館に収めるべき品だ!」
ピクシス「博士になっても相変わらずの馬鹿じゃのう、貴様は。」
ドゴッ!
エレン「うぐッ!!」
男に再び腹部を殴られ、ぐったりとするエレン。
ピクシス「海に投げ捨てろ!」
そのままエレンは二人の男に肩を担がれ、甲板から海のほうへと運ばれていく。
が、次の瞬間、エレンは側舷を蹴飛ばし、その勢いで男たちを振りほどくと、肩を担いでいた男たちに殴りかかった。
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- 20 : 2016/06/09(木) 08:18:17 :
エレン「はあッ!!」
男「ぐあッ!!」
男「がはッ!!」
ピクシス「!! 奴を捕まえろ!!」
学者とはとても思えない身のこなしで、男たちを殴り飛ばしていくエレン。
暫く大波のうちかかる甲板で殴り合った後、今度はピクシスに近づいて、顔面に一発パンチをお見舞いした。
ピクシス「ぐふっ!!」
一撃を喰らったピクシスは仰向けに倒れ、その拍子に十字架を落とした。
十字架は甲板を滑っていき、危うく右舷から海に落ちそうになった。
エレン「!! ヤッベ!!」
慌ててエレンは男を殴り飛ばし、そのまま右舷にダイブして十字架をキャッチすると、そのまま海へと落下。
その時、大波にあおられた積荷が燃料タンクに落下して引火。
嵐の中、船は大爆発を引き起こした。
エレン「うおっ!?」
海に飛び込んだエレンの元に丁度救助用の浮き輪が流れてきて、エレンは必死になって浮き輪に捕まった。
宿敵、ドット・ピクシスを乗せていたコロラド号が高波にあおられて轟沈していく。
漸く長年の因縁に決着をつけ、エレンは波に揺蕩いながら、ホッと胸を撫で下ろした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 21 : 2016/06/09(木) 11:07:17 :
- 期待してるぜですあとできればCPは無しがいいです
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- 22 : 2016/06/09(木) 18:01:36 :
- インディにCPはないと推定
改めて期待
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- 23 : 2016/06/09(木) 21:22:24 :
- インディシリーズにはCP要素が申し訳程度にあるんですよね(^^;
下手には書かないつもりですので、ご勘弁くださいまし<m(__)m>
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- 24 : 2016/06/09(木) 21:22:58 :
船の上の激闘から数日後、
エレンはニューヨークのバーネット大学の教壇に戻り、教鞭をとっていた。
エレン「考古学というのは、“真実”を追い求める。ここでは真理などといったものは扱わない。
真理を追い求めたければ、哲学科を受講することをお勧めする。」
エレン・イェーガーの考古学の授業は、エレン自身の人気を反映して、女学生が多かった。
そのほとんどがエレンに色目を使っているという有様であったが、エレン自身はシビアな授業を行い、必ずしも履修率は高くないと言った有様であった。
と、そこへ、学長を務めているキース・シャーディスが静かに講義室に入ってきた。
エレンも訪問者に目配せをしながら、こう授業を締めくくった。
エレン「歴史上の重大な発見は、得てして文献の中にある。決してフィールドワークで見つかるもんじゃない。
×印を掘り当てて宝が見つかったためしなんかない。
質問は授業の後で受け付ける。今日の授業は以上だ。」
エレンが授業を締めくくると、終了を告げるベルが鳴った。
ざわざわと生徒たちが出ていくと、キースは教壇の上にいるエレンへと近寄った。
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- 25 : 2016/06/09(木) 21:24:21 :
教壇の上のエレンは嬉しそうにキースへと話しかけた。
エレン「やったぞ、キース。遂に取り戻した!」
キース「あのコロラドの十字架をか?」
エレン「ああ、これを見てくれよ!」
興奮した様にエレンが教壇の引き出しを開けると、布に包まれたものが出てきた。
それを取り出し、丁寧に布を取り払うと、中から十字架が現れた。
キースは十字架を手に取り、しばらく見渡すと、ため息をついた。
キース「本物だな、間違いない。」
エレン「取り戻すまでに26年もかかったんだ。」
キース「そうだな・・・・・・・・・・・・よし、これは早速博物館に寄付するとしよう。」
キースがそういうと、エレンはにやけた表情で指さした。
エレン「後で一杯おごれよ? キース?」
キース「ふん、いいだろう、また後で・・・・・・だ。」
キースもにやけた表情をとると、エレンより先に教室を出ていった。
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- 26 : 2016/06/09(木) 21:48:11 :
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さて、エレンが教室を出ると、沢山の生徒でごった返していた。
エレンが教室から出た瞬間、廊下は大騒ぎになった。
「エレン教授!!」
「すみません! 質問なんですが!!」
エレン「順番だ! 順番に聞くから少し待ってろ!!」
人ごみに囲まれてめんどくさそうに対応するエレン。
とそこへ大学の職員の女性がエレンに近づいてきた。
職員「エレン教授! お荷物が机の上に届いています!」
エレン「ああ、分かった!」
職員「それと! 期末テストの採点もお願いします!!」
人でごった返す廊下を逃れるように通り過ぎて、エレンは自分の研究室へ逃げるように閉じこもった。
エレン「全く、今日は何て日だよ・・・・・・。」
研究室に閉じこもったエレンは、やれやれといった様子でため息をつき、机の上の荷物を確認した。
それは、小さな小包であった。
エレン「差出人は・・・・・・・・・・・・親父? ヴェニスから送ってくるなんて今更何を考えてんだよ!」
ますます不機嫌になったエレンは扉をどんどんと叩く生徒たちに我慢がならなくなった。
質問に受け答えするなんてまっぴらだし、ましてやテストの採点なんてめんどくさくてやってられん。
ややあってエレンはトレードマークのテンガロンハットを被り、研究室の窓からこっそり大学の外へと抜け出した。
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- 27 : 2016/06/09(木) 23:05:21 :
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エレン「ったく、今日はキースから一杯おごってもらわなくちゃならねぇからな。」
大学を抜け出し、エレンは途端に上機嫌になった。
すると、エレンが出てくるのを見計らったかのように、車が一台、近づいてきた。
エレン(・・・・・・誰だ?)
連れ去られるのは、これが初めてではない。
むしろ、何度も厄介ごとに巻き込まれて、連れ去られるのは毎度のことだと、妙な諦めさえつくようになっていた。
もっとも、悪運が強いために、その都度エレンは無事に逃げおおせるのであるが。
というわけで今回も、車の中からロングコートを着た男たちが降りてきた。
男「エレン・イェーガー博士ですかな?」
エレン「ええ、それで、この俺に何か用ですか?」
男「手荒な真似をして申し訳ありません。実は、私たちの主人、エルヴィン・スミス様があなたをご招待しているんです。」
男たちにエスコートされ、エレンは車の中へと乗り込んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 28 : 2016/06/10(金) 09:49:44 :
エレンはそのまま、ニューヨークの大都会にあるエルヴィンの大豪邸へと案内された。
エルヴィンは骨董品の熱心なコレクターでもあり、客室に飾ってある骨董品を、エレンは驚嘆の眼差しで見つめていた。
と、そこへ、隣のパーティ・ルームから正装をしたエルヴィンが現れた。
エルヴィン「急にお呼びたてしてしまって申し訳ない。さぞ驚かれただろう。私がエルヴィン・スミスです。」
エレン「いえ、かねがね噂は聞いています。いつも博物館に多額の寄付、ありがとうございます。」
エレンは差し出された手を握って握手に応じた。
エレン「それにしても、見事なコレクションですね。」
エルヴィン「私も君に負けないくらいに、古代のものに興味があってね。」
成程、そう豪語するだけあって、知的な印象を与える男だ。
エレンがそう思っていると、エルヴィンはテーブルの上に架けてある布を取り払った。
エルヴィン「さて、エレン・イェーガー教授。あなたはこれをなんだと思う? あなたには何が見える?」
布の下から現れたのは、砂岩板であった。
中央に十字架が刻まれており、その周りに横文字がびっしりと刻まれている。
エレンは眼鏡を取り出し、砂岩板をじっくりと眺め出した。
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- 29 : 2016/06/10(金) 09:50:32 :
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エレン「砂岩板、十字架、キリスト教のシンボル・・・・・・・・・・・・古代ラテン語。12世紀中ごろのものだ。」
エルヴィン「私もそう思うよ。」
エレン「これを・・・・・・どこで?」
エルヴィン「うちの鉱山技術者がアンカラの北の山でね。翻訳できますかな?」
エレン「どれどれ・・・・・・・・・・・・“主いわく、この水を飲むものは、その身の内より聖なる泉が湧き出で、永遠の命を得る。”
“お前たちの聖なる山へ我を導け。”
“砂漠を横切り、山を越え、”
“三日月の谷を渡って、”
“『聖杯』の寺院へ”――――――・・・・・・・・・・・・。」
エレン「“キリストの血を受けた杯がまつられている。”」
エレンが顔を上げるとエルヴィンは微笑みながらシャンパンをエレンに手渡した。
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- 30 : 2016/06/10(金) 09:51:14 :
エルヴィン「そう、『聖杯』だよ、イェーガー博士。
最後の晩餐でイエスがワインを飲み、
磔になった彼の血を受け、
アリマタヤのヨセフの手に渡った。」
エレン「アーサー王の伝説の中にある話だ。」
エレンはそう言いながら、シャンパンを受け取った。
エルヴィン「聖杯で飲むものには永遠の命を授ける。伝説だが、夢のような話だ。」
エレン「老人の夢ですよ。」
エルヴィン「君の父上の夢でもあったと思うが。」
エルヴィンが父親の話に触れると、エレンはピタリと動きを止めた。
エレン「・・・・・・・・・・・・聖杯伝説は趣味で、本職は中世文学の教授だ。」
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- 31 : 2016/06/10(金) 09:51:52 :
すると、隣のパーティ・ルームからゲストが一人現れた。
ゲスト「エルヴィンさん? お客様はほったらかしになさって?」
エルヴィン「失礼、マダム。すぐに参りますよ。」
エルヴィンはゲストに近づき、親しげに頬にキスをすると、ゲストはパーティ・ルームへと戻っていった。
エレンはエルヴィンから目を逸らし、再び砂岩板を見つめていた。
エルヴィン「どうだね? 聖杯のありかは分かりそうかな?」
エレン「記されてるのは、砂漠と山と谷・・・・・・・・・・・・あまりにも漠然とし過ぎている。」
この砂岩板の上半分が欠けていることに、エレンは気が付いていた。
せめて欠けた部分があれば、手掛かりとなるだろうに。
エルヴィン「その通り、お気づきかもしれないが、この石板は上半分が欠けている。私は既に調査を始めさせたのだ。」
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- 32 : 2016/06/10(金) 09:52:25 :
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それからエルヴィンは夢中になって聖杯捜索の話を始めた。
エルヴィン「アリマタヤのヨセフの手に渡った聖杯は1000年間紛失した。が、十字軍に参加した三兄弟の騎士が、それを見つけたのだ。」
エレン「その話なら知ってる。兄弟の二人はその後、150年かけて砂漠を脱出。一人だけ故郷フランスに戻ったってな。」
エレン「彼は驚くべき長寿を全うし、死ぬ前に全てを修道僧に語った。」
エルヴィン「いいかね、これは伝説ではないのだよ、イェーガー博士。これはその修道僧が書き残した本だ。」
エルヴィンが指さした先には、確かにその修道僧が書いたとされる古書が飾られていた。
古書を見つめるエレンに対し、エルヴィンは熱っぽく注釈を加えた。
エルヴィン「その本いわく、“聖杯がまつられている場所は、二つの鍵を手掛かりに探せ”とある。この石板こそはその一つで、伝説を裏付けるものなのだ。
欠けている部分は、途中で死んだ兄弟の墓の中にある。」
エレン「・・・・・・・・・・・・。」
エルヴィン「我々の調査団長の調べでは、その墓はヴェニスにある。」
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- 33 : 2016/06/10(金) 09:54:28 :
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エルヴィン「どう思うかね、イェーガー博士。2000年来の聖なる探索が、いよいよ実ろうとしている。あと一歩なんだ。」
エレン「いつもその一歩が問題なんですよ。」
エレンが皮肉っぽく答えると、エルヴィンも苦笑を浮かべた。
エルヴィン「その通り、あと一歩というところで問題が起きた。」
エレン「問題?」
エルヴィン「調査団長が資料ともども行方不明になってしまったんだ。行動を共にしていたレオンハート博士から電報があってね。
そこで、君に頼みたい。
彼の行方を捜し、聖杯の捜索をして欲しいんだ。」
エレン「残念ですが、お門違いですよ、エルヴィンさん。」
今度はエレンが苦笑を浮かべ、再び皮肉っぽい口調で答えた。
エレン「聖杯はもう一人のイェーガー博士に頼んでください。聖杯は父の専門です。」
エルヴィン「もう頼んだよ。」
エレン「?」
エルヴィン「行方不明になったのは、君の父上なのだ。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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- 34 : 2016/06/10(金) 22:43:07 :
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数時間後、エレンはキースを伴い、ユタ州にある自宅へ20年ぶりに車を走らせた。
キース「私とグリシャは古い友人だ。長い間君とはそりが合わなかったのに、どうしたというのだ?」
エレン「俺が迂闊だった・・・・・・・・・・・・あの書斎の虫が書斎を出たんだぞ? 冷静に考えて見りゃ大事件だ。」
家出をしたっきり、ずっと帰ってこなかった家。
エレンは焦燥に駆られて、部屋の中に上がり込んだ。
エレン「親父!! こ、これは・・・・・・。」
キース「何という事だ・・・・・・。」
父親、グリシャ・イェーガーの書斎は、既に荒らされた後であった。
息子であるエレン、友人であるキースは愕然として、グリシャの書斎を調べ始めた。
キース「手紙が届いているな・・・・・・・・・・・・消印が今日の手紙だ。既に開封されている。」
エレン「手紙・・・・・・・・・・・・そうだ! ヴェニスから小包が!」
ふと思い出したエレンは懐から小包を取り出した。
小包を開けると、子供の頃に見慣れた父の手帳が出てきた。
キース「この手帳は?」
エレン「親父は聖杯にまつわる資料をこの手帳に書き留めていた。これはいわば親父の研究成果だ。なぜ俺に送ってきたんだ?」
キース「・・・・・・・・・・・・きっと、ヴェニスで狙われたのだろうな。」
エレンは暫く黙り込み、壁に架けられた聖杯にまつわる絵画を見つめていたが、
ややあってキースに呟いた。
エレン「なあ、キース。聖杯は本当にあると思うか?」
キース「聖杯を求めるという事は、神を求めるという事と同義だ。」
エレン「・・・・・・・・・・・・。」
キース「君の親父のことを思えば、現実であって欲しいと思うがな。」
キースの話を聞き、エレンは決意を固めたように呟いた。
エレン「・・・・・・キース。エルヴィンにヴェニス行きの便を取るように言ってくれないか?」
キース「・・・・・・・・・・・・いいだろう。二人分のチケットを用意しよう。」
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- 35 : 2016/06/11(土) 10:39:21 :
数日後
ニーヨークの空港に、一台のジェット機が離陸の準備を進めていた。
そこへ、一台の車が近づいていく。
車がジェット機の近くに停車すると、中からエレンとキースが降りてきた。
エルヴィン「キース。ヴェニスにはレオンハート博士がいるから彼女と合流してくれ。私のアパートを調査拠点として使うと良い。」
キース「ありがたく使わせてもらおう。」
エルヴィン「それと、気を付けてくれ、イェーガー博士。人を簡単に信じないようにね。」
車内まで見送りに来てくれたエルヴィンはエレンにそっと警告した。
エレン「よし、行くとするか。」
キース「そうだな・・・・・・・・・・・・。」
エレンとキースはジェット機に乗り込んだ。
アーサー王物語の中で語られる伝説。
『聖杯』をめぐる危険な冒険が今、始まろうとしている。
間もなく、エレンとキースを乗せたジェット機は、ニューヨークからヴェニスに向けて発った。
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- 36 : 2016/06/11(土) 10:40:50 :
- 長くなりそうですので、いくつかに分割して執筆していきたいと思います。
次回はヴェニス編になります。
よろしくお願いします<m(__)m>
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- 37 : 2016/06/22(水) 19:05:07 :
- 言わずと知れたシリーズ最高傑作。多いに期待!
エルヴィン、ピクシス……(汗
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- 38 : 2016/06/22(水) 20:48:47 :
- >>37
ご期待ありがとうございます。
団長と師団長は悪役でございます<m(__)m>
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- 39 : 2016/06/26(日) 12:26:30 :
- 期待!!!!!!
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- 40 : 2016/06/26(日) 12:44:34 :
- ありがとうございます(∩´∀`)∩
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