この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
この作品は執筆を終了しています。
モブ戦記〜それぞれのトロスト区攻防戦〜
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- 1 : 2016/04/27(水) 18:45:44 :
- 新しく立てました
この作品は普段光の当たらないモブ達に焦点を当てた短編集となります
主要キャラ(エレン、ミカサ、アルミン等)はでないと思いますのでそういうのが見たい方はブラウザバックしてください
また自分もリアルで忙しいので週末に一作を一気に書き上げという形で進めさせていただきます
週末書いている時は見やすさを考慮してコメントを制限しますのでコメントは平日にお願いします!
またモブ主役ということもありオリキャラがたくさん登場致しますので名前を募集します!
是非気軽にご提案ください!
それではよろしくお願いします!
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- 2 : 2016/04/27(水) 18:48:45 :
- http://www.ssnote.net/groups/2036
↑こちらのグループも是非ご参加ください!
http://www.ssnote.net/archives/44279#top
http://www.ssnote.net/series/2856
↑こちらの作品もよろしくお願いします!
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- 24 : 2016/04/30(土) 08:30:11 :
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プロローグ 〜I'm just a man〜
俺は佇んでいた...
破壊された場所
ずっと前から住んでいた場所
そう...俺の街で...
住んでいた人は誰もいなくなり
まだ微かに漂う血の匂いに俺は呆然とする
ここはもう...絶望しか残ってない...
余りにも...多くの血が流れすぎた...
それを作り出そうとしていた自分を嗤う
果たして...何人の人が...死んだのだろう...?
何を想い...その命を燃やしていったのだろう...?
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- 25 : 2016/04/30(土) 08:41:25 :
- 第一章 〜心臓を捧げよ 先遣班ハント・キャンベル〜
この日が来ちまった...
おそらく俺の人生で...最悪な日...
壁の上から下を見下ろす
壁外から次々と向かってくる巨人を確認した
俺は...奴らと戦うのが仕事...
だから戦わなくてはならない...
そうわかってはいるものの...
恐怖で足が竦む
俺は......
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- 26 : 2016/04/30(土) 09:05:46 :
- 数時間前...
「お父さん!!起きて!!」
俺は幼い声に起こされた
「もう!早く起きないとお仕事遅れちゃうよ!」
その言葉にゆっくりと体を起こす
「おはよう!お父さん!」
そう言う娘に
「おはよう...クリス...」
そう声をかけてベッドからでた
下の階に行くと俺の愛する妻が朝食を作っていた
「おはよう...サラ...」
彼女に声をかける
サラ「おはよう!ハント!」
いつも通り元気で返す妻
これが俺達の日常だ...
俺はテーブルにつく
サラ「今日は何時に帰れるの?」
ハント「うーん...まぁ六時くらいには帰れてるかな...?」
サラ「そう...」
ハント「大丈夫だ...今日は結婚記念日だからな...早く帰るよ...」
サラ「ふふふ...ちゃんと覚えててくれたのね...」
ハント「ああ...」
クリス「お父さん!今日はおごちそうだよ!早く帰ってきてね!」
ハント「勿論!」
俺は朝食を済ませ制服に身を包む
クリス「お父さんのその背中の模様...かっこいいね!」
出掛けに娘が呟く
ハント「だろ?これはお前達を守る...そんな紋章だからな...」
クリス「ふふふ...かっこつけちゃって...行ってらっしゃい!」
ハント「おう...行ってくる...いい子にしてろよ...クリスティナ...」
クリス「もう!それで呼ばないでって言ったでしょ!」
その声を聞きつつ俺は家を出た
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- 27 : 2016/04/30(土) 11:37:12 :
- 「ハントさんおはようございます」
駐屯兵団のトロスト区の拠点に出勤したとき俺は声をかけられる
ハント「おはようルーク」
俺の班の後輩...ルーク・スタッカートだ
ルーク「今日の仕事は?」
ハント「今日は書類関連だな...早めに終わらせよう...」
ルーク「あ...今日は結婚記念日でしたっけ?おめでとうございます!」
ハント「ああ...ありがとう」
ルーク「仲のいいご家族で素敵ですね」
ハント「ははは...お前はどうなんだ?彼女いるんだろ?」
ルーク「ええ...来月結婚します!」
ハント「そうか!それはおめでとう!」
ルーク「ありがとうございます!結婚式にはご招待させていただきますので!」
ハント「ありがとう」
ルーク「では仕事しますか!」
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- 28 : 2016/04/30(土) 15:46:08 :
- 俺達は午前中の仕事を終え食堂で昼食をしていた
ルーク「そういえば調査兵団はもう出発したんですかね?」
ハント「ああ...そうだろうな...」
ルーク「本当...良くやりますよね...?」
ハント「どういう事だ?」
ルーク「外行って...何人も死んで...それでもよくまた外に行けますよね?って...」
ハント「まぁ...そうだな...」
ルーク「あんな命を無駄にするようなところ...僕は無理です...」
俺はその言葉に少し眉をつりあげる
ハント「それは違うぞ...」
ルーク「はい?」
ハント「俺達は公に心臓を捧げた身だ...彼らはその為に...人類の為に命を捧げている...」
ハント「だから彼らの命は無駄じゃない...」
ルーク「そうは言いますけど...ハントさんも結局は駐屯兵団じゃないですか?自分の命が惜しいんでしょ?」
ハント「......俺は...家族を守るためにここ に入った...その為なら...命なんか惜しくはないさ...」
ルーク「そうですか...」
ハント「だから...俺は本当の意味で...''人類に''心臓を捧げてないのかもな...」
ドン!!!!!
突如大きな地響きが起こる
ハント「なんだ!?」
ルーク「外!?」
俺達は走り出す
外に出ると...
巨人がいた
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- 29 : 2016/04/30(土) 16:54:04 :
- ルーク「な......あれは......超大型巨人!!!」
ハント「あ......く.....」
あまりの事に体が数秒固まる
周りの兵も同じ様子で超大型巨人を凝視している
しかし...
ハント「駐屯兵に告ぐ!俺は駐屯兵団分団長...先遣班班長!ハント・キャンベルだ!これより超大型巨人出現時の作戦を開始する!各自...己の為すべきことをなせ!心臓を捧げよ!」
俺は指示を出し走り出す
ルーク「ハントさん!」
ルークが後ろから追いかけてくる
ドッッッカァァァァァァァァァァン!!!!!
前方の壁が破られ破片が降ってくる
ハント「ルーク!気をつけろ!」
俺達は避けつつ壁に向かう
先遣班としての任務を果たすために
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- 30 : 2016/04/30(土) 21:28:12 :
- 壁についた時既に超大型巨人は消えていた
何か話している訓練兵に声をかける
ハント「何をしているんだ訓練兵!!超大型巨人出現時の作戦は既に開始している!ただちにお前らの持ち場につけ!」
その言葉に訓練兵は思い出したような表情をする
ハント「そして''ヤツ''と接触したものがいれば本部に報告しろ!」
訓練兵「ハッ!先遣班の健闘を祈ります!」
お互いに敬礼を交わした後俺は壁の外側に降りて穴を確認する
再び壁上に戻るとルークが話しかけてきた
ルーク「どうです...?」
ハント「ああ...完全にダメだ...また巨人が入ってくる...」
ルーク「クソ......なんで......」
ルークは項垂れる
無理もない...
実戦経験の豊かな調査兵団は調査に出かけていてこの街には駐屯兵団と訓練兵団のみ
壁から見下ろすと無数の巨人が近寄ってくるのが見える
その...屈託のない顔に...
俺も恐怖を覚える
最悪だ......
あんなのと戦うなんて...
だが......
俺は..........
兵士だ...!
戦わなくちゃならない...!
出掛けに見送ってくれた娘の顔を...食卓での妻の顔を思い出す...
サラ...クリスティナ...
俺は...
お前達を守るために...
心臓を捧げよう......!
ハント「ルーク...」
俺は今だ項垂れている部下に話しかける
ハント「今こそ...お前の心臓を捧げる時だ...!お前の婚約者に...!」
ルーク「え...?」
ハント「守り抜いて...来月の結婚式...ちゃんとやろうぜ...?」
ルーク「!!......はい!」
俺はその返事を聞いて少し安心する
そして壁外の巨人を見据える
お前らには...殺らせてたまるか...!
俺は声を張り上げる
ハント「人類の為に...!各々の大切なもの為に...!心臓を捧げよ!!!先遣班!戦闘開始!!!」
俺は壁の上から巨人めがけて翔んだ!
その日...駐屯兵団先遣班は全滅した...
第一章 fin
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- 40 : 2016/05/07(土) 20:21:30 :
- 第二章 〜後少し... 前衛班ラーカス・アヴェイン〜
俺は......
何をしているんだ......?
失った右腕を見る
この状況で......
何をしようとしたんだ......?
血が足りず思考がまとまらない.....
綺麗だな...
のんびりと空を眺めた...
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- 41 : 2016/05/07(土) 22:46:36 :
- 数時間前...
「おっすラーカス!」
朝...駐屯兵団の寮からでた俺に話しかけてくる一人の男
ラーカス「おはようセクス」
名前はセクス・クリーガー
訓練兵時代からの親友
そして訓練兵時代から今もなお同じ班に所属している
すべての仕事が班ごとに振り分けられるこの駐屯兵団の組織において
この結びつきはものすごく硬いものと言って良いだろう
セクス「なんだよ!朝からテンション低いなーそんなんじゃあの子にモテねぇぞ!」
ラーカス「わ!馬鹿!こんなとこで言うなよ!」
セクス「はははわりーわりー」ケラケラ
適当さ丸出しで謝る
ラーカス「はぁ...」
いつもながら疲れる朝に俺はため息をついた
セクス「まぁまぁため息つくなって!幸せ逃げちまうぞ!」
ラーカス「それは困るな...」トコトコ
俺も適当に返しながら食堂へ向かう
セクス「そうだぞ!女を落とすには幸運も必要だからな!愛しのs...」ニヤニヤ
ラーカス「だから聞かれたらどうすんだよ!馬鹿!」
最後まで言わさずセクスの言葉を遮る
俺達はそのまま喋りながら朝食を食べに向かった
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- 42 : 2016/05/08(日) 08:59:03 :
- 「おはよう!二人とも!」
食堂につくとまた声をかけられる
セクス「おっはよー!セーザちゃん♪」
かけてきたのはセーザ・グレース
俺達と同じ班に所属している
ラーカス「お、おはよう!」
そして...俺が密かに想いを寄せている女性だ
セーザ「二人ともこれから?一緒に食べようよ!」
セクス「いいねぇ!そうしようぜ!」ニヤニヤ
ラーカス「あ、ああ!いいよっ!」
俺達は席についた
セーザ「今日は1日非番だよね?」モグモグ
セクス「そーだねー久々の休暇だ」モグモグ
ラーカス「働き詰めだったからね」モグモグ
セーザ「そうだ!今日さ!久しぶりに三人で遊びに行かない?」
思わぬ誘いを受けた
ラーカス「あ、い、いいよ!」ゴクン
勿論速攻でOKをだす
セクス「あー俺今日用事あるんだった!悪いね!」
セーザ「そう...残念ね」
セクス「二人で楽しんでこいよ!」
そう言って向かいのセーザに気づかれないように俺を小突く
そんな親友に俺は感謝した
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- 43 : 2016/05/08(日) 16:48:13 :
- セーザ「どうするラーカス?」
街に来た俺達はどこへ行くか迷っていた
ラーカス「んーそうだね...お芝居なんてどう?セーザ好きだって前言ってたろ?」
セーザ「!!覚えてくれてたんだ」
ラーカス「ま、まぁね...」
そりゃ...好きだから...
そんな事は勿論言えない
セーザ「ありがとう!それじゃあ行こ?」
そう言って彼女は俺の腕を掴んで走り出した
ラーカス「ちょ!走らなくってもお芝居は逃げてかないよ!」
俺達は仲良く芝居小屋に入っていった
お芝居を見たあとも俺達は様々な店や娯楽施設を回った
久しぶりに遊んだことと...
そして隣にセーザがいるからか...
心做しか時間が早く過ぎていった
そして昼...
俺達は一旦本部に戻り食堂で昼食にしていた
セーザが買ったものを部屋に置きたいと言ったからだ
別に外で食べても...
そういった俺に...
セーザ「だって午後遊ぶのに邪魔になるじゃん?」
と笑顔で午後も一緒に居ると言うご褒美を口にされたら断る理由はない
ラーカス「午後どうする?」モグモグ
セーザ「うーん午前中私のわがままばっか聞いてもらったから...午後はラーカスの好きな所でいいよ!」モグモグ
そういう彼女に......
俺は...お前が居れば...それだけでいい...
なんて言えるはずもなく
ラーカス「うーん...」
考える
セーザ「そう言えば...セクスは午後どうなんだろう...?」
その一言で俺の気持ちは少し冷めた
そう...だよな......
俺は...ただの同期...
ただの...同じ班なだけの...同期だからな......
ラーカス「うーん...わかんないな...」
セーザ「そうかー...」
残念そうな表情を浮かべる
それを見て...
俺は今朝出掛けにセクスに言われた言葉を思い出した
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「少しは勇気出せよ...」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ラーカス「あのさ...セーザ...」
セーザ「うん?」
ラーカス「ちょっと...話があって...そn...」
ドン!!!!!!
俺の言葉を遮るかのように地響きが起こった
セーザ「何!?」
ラーカス「地震!?」
周りの人達に付いて外に出る
セーザ「あれって...」
そこには...
ラーカス「超大型巨人...!」
超大型巨人が...立っていた...
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- 44 : 2016/05/08(日) 20:09:42 :
- ラーカス「あ...あ...」
俺は絶句した
その巨体...それはまさしく人類の破滅を表すようだった
セーザ「な...んで.....」
その時
「駐屯兵に告ぐ!俺は駐屯兵団分隊長...先遣班班長!ハント・キャンベルだ!これより超大型巨人出現時の作戦を開始する!各自...己の為すべきことをなせ!心臓を捧げよ!」
その声に我に戻る
そうだ...俺は...兵士なんだ...
ラーカス「俺の...為すべきこと.....セーザ...行くよ...」
セーザ「......うん」
俺達は着替えに寮に戻る
部屋でセクスと会った
セクス「........作戦通りだな...?」
いつもとは違い怖いぐらいに落ち着いている
ラーカス「ああ...俺達は前衛班...行くぞ...」
数分も経たないうちに立体機動をつけ寮から出る
立体機動で壁に向かって進む
セーザ「二人とも!!」
セーザが俺達と並ぶ
セクス「中衛は...訓練兵か...食い止めるしかねぇぞ...」
ラーカス「ああ...やるしかない...」
避難のために逃げ惑う人々の上空を俺達は急いだ
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- 45 : 2016/05/08(日) 21:52:26 :
- パシュッ!シューー!
ラーカス「巨人が...もうこんなに...」
進行方向に巨大な''もの''が蠢いているのがわかる
セクス「先遣班が食い止められなかったのか...」
セーザ「まさか...全滅...?」
ラーカス「いや...まだだ...まだ戦ってる人たちがいる...」
俺は立体機動で立ち回ってる人のところへ行く
俺達は屋根の上に降り立った
ラーカス「大丈夫ですか!?」
「ああ...でも......ハントさんが......」
その人が息も絶え絶えに呟く
紡がれたその名前に
俺は聞き覚えがあった
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「各自...己の為すべきことをなせ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの人が...?
ラーカス「あなたは...?」
ルーク「ルーク...ルーク・スタッカート...先遣班所属だ...もう...先遣班は...ない...」
セクス「な...」
その事実に驚愕した
ルーク「お前達は前衛班か...ここで奴らを食い止めるぞ!」
セーザ「で...でも...!」
ルーク「ここで食い止めなきゃ...ハントさんの想いが...浮かばれない...やらないと...」
そう言ってルークさんは一番近い位置にいる巨人に向かって走り出す
ラーカス「行こう!二人とも!」
俺も走り出した
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- 46 : 2016/05/08(日) 22:29:31 :
- パシュッ!
13m級に四人いっせいにアンカーを撃つ
ラーカス「誰でもいい!うなじを!」
俺はそう言って腕を狙う
セーザとセクスもそれぞれ腕や足と部位を狙って攻撃する
ルーク「この......糞やろぉぉぉぉぉ!」
ルークさんのブレードがザクッ!と音を立て
肉が宙を舞った
ラーカス「やった!」
歓喜したのも束の間...
ルーク「あぁ!!!」
巨人の手にルークさんが収まる
セクス「ルークさん!!!」
セクスが救出に向かう
セクス「このやr(パックン!!!
その瞬間セクスの姿が消える
ラーカス「セクス!!」
巨人がジャンプしてセクスを食らった
セーザ「そんな...セクス!!」
ルークさんは既に食われセクスも食われた...
なんで......
セーザを見た時
その背後に巨人が見える
ラーカス「セーザ!!」
俺はアンカーを即座に撃ちセーザの後ろの巨人に突っ込む
右手はブレードを突き刺すように伸ばし左手で上手くセーザをはねのける
次の瞬間右腕に激痛が走る
セーザ「ラーカス!!!」
惚れた女の声が頭いっぱいに響いた
守れた......
このまま...死ぬのか...?
そう思って最後にセーザの方を見る
そこには...
巨大な顔があった
ラーカス「あ...あぁ...あ...」
一拍遅れて理解する
セーザが...食われた...?
ラーカス「ああ...あぁ......!ああ!」
腕よりも胸の痛みの方が強くなる
なんで......
周りには三体の巨人
俺は...何を...?
何をしようとしたんだ...?
そんな考えが頭に浮かんだ
この状況で...?
視界が急にクリアになり景色がよく見える
ああ...綺麗だな...
柄にもなくそう思った
パシュッ!!
俺の方に向かってくる立体機動の音...
俺は巨人に捕まったままそれを見た
何人かの兵士が向かってくるところを...
後少し...
突如そんな考えが頭に浮かぶ
後少し...俺に勇気があれば...
後少し...ちゃんと告白してれば...
後少し...ここで耐えられたら...
後少し...あの人達が速かったら...
俺は......
パクンッ!!!!!!!!!
第二章 fin
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- 55 : 2016/05/21(土) 08:19:50 :
- 第三章 〜臆病者 中衛班ダズ~
「いってらっしゃい...」
「元気でな...しっかりやれよ...」
送り出してくれる二人の男女
ダズ「あぁ...行ってくるよ...父さん...母さん...」
俺は荷物を背負って歩き出す...
本当は行きたくない...
辛い訓練なんか受けたくない...
ここで...静かに暮らしてたい...
そう思いながら...
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- 56 : 2016/05/21(土) 08:41:26 :
- 俺は目を覚ました
窓から差し込む光で朝だと気づく
また...見ちまった...
俺は体を起こした
ダズ「こんな所...来たくなかったんだけどな......」
そう呟く
故郷を出た時の夢...
俺が出会った中で一番最悪の日...
他のやつならマリアが破られた日を最悪って言うんだろうが...
俺はあの日が最悪だと思う...
人が訓練中に死ぬような...こんな所...
来たくなかった...
でも...
臆病者って村で蔑まれるのも怖くて...
結局ここに来た...
そして...何とか過ごせた...
もう訓練兵団を卒団して...
駐屯兵団へ行く...
そうすれば...もう...大丈夫だろう...
いつ死ぬかもしれない恐怖に...脅かされることはないだろう...
ガチャン!
ドアが開き人が入ってくる
「おはよう!ダズ!」
俺に気づき挨拶する
ダズ「ルヴァス...おはよう」
ルヴァス・ヴァグナス...俺の仲間だ...
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- 57 : 2016/05/22(日) 22:53:35 :
- ルヴァス「今日は午前中の壁上だけだっけ?」
ダズ「ああ...だと思うよ...」
ルヴァス「そうか...」
ルヴァスは再び部屋から出ていってしまった
俺は...ルヴァスとはそれほど親密ではない
いや.....俺と親密な人間なんて...無いに等しい...
俺は...憲兵になるためにここへ来てるわけじゃない...
ただ...臆病な気持ちで...
そんな俺の考えが行動に出たかのように...
周りの人間はさほど俺に関心を持たなかった
俺も...その日を生き残るために必死だったから...たいして気にもしていなかったが...
それに...アホらしく見えた...
どんなに頑張っても...死んでしまえば意味なんてないのに...
俺は着替え始める
今日も...何事もなく終わればいい...
平和で...安全な一日になればいい...
そう思いながら
-
- 58 : 2016/05/23(月) 19:49:21 :
- ダズ「こっちは異常ないぞ!そっちは!?」
ルヴァス「こっちも異常ねぇ!」
俺達は壁の上で大声で報告し合う
今日の任務はそれだけ
ただ...今日は調査兵団の遠征があるらしく壁の上が慌ただしい
ルヴァス「もういいってさ!降りるぞ!」
後は調査兵団がやるらしい
俺達は壁を降りる
これで今日も無事に終わった...
俺はホッとする
そのまま寮に戻ろうとした時
ルヴァス「ダズ!これからなんか用事あるのか?」
声をかけられた
ダズ「いや...特にないけど...」
ルヴァス「なら班のみんなでどっか行こうぜ!今日でこの班は解散だしな!」
周りの班員も頷く
ダズ「いいのか...?俺なんかでも...?」
ルヴァス「勿論だ!仲間だろ?」
仲間......
その言葉がやけに俺の心に響く
今まで...何も考えずに使ってきた言葉だけど...
こんなに重い言葉だとは思わなかった...
こんなに...嬉しい言葉だったなんて...
ダズ「ああ...そうだな...」
俺は先を行く班の人達を追って...
初めて...人と街に出た
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- 59 : 2016/05/24(火) 22:01:54 :
- ルヴァス「どこに行こうか?」
俺達は調査兵団が出払って少し落ち着いた街を歩く
「とりあえずご飯食べない?」
同じ班の兵士...イーナ・トレイルが提案した
他の人も賛成する
ルヴァス「お前はどうだ?ダズ」
ダズ「ああ...い、いいんじゃない?」
急に話を振られびっくりしつつも答える
ルヴァス「そうか...じゃあ適当に入るか...」
俺達は近くの食堂に入った
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- 60 : 2016/05/24(火) 22:23:23 :
- イーナ「こうやって皆でどっか行くのも最初で最後かー」
席についた俺達はしばし雑談を始める
ルヴァス「そうだな...明日はもう別々だもんな...」
みんながそれぞれの想いを話している
俺は...そんな皆を横目に黙っていた...
喋ることがないわけじゃない...
でも...どうやって会話に参加していいのかわからなかった...
変なこと喋って...煙たがれるのが怖いから...
もう最後なのに...
ここで何を思われてもいいはずなのに...
なんでだろう...?
仲間だって言われたから...?
ルヴァス「ダズ?大丈夫か?」
気づくと周りが俺の事を見ていた
ダズ「あ...ごめん大丈夫...」
イーナ「そう...ダズはなんか思い出とかある...?」
思い出...
必死でその日を過ごした俺に...そんなもの...
ルヴァス「あれか?雪山で死にかけたことか?」
そういえば...そんなこともあったな...
イーナ「そう!あれすっごい心配したんだからね!」
周りも賛成するように頷く
ダズ「心配...?」
思わず...疑問形で言ってしまった
ルヴァス「ああ...仲間が欠けるのは嫌だからな...」
今まで死んでしまった仲間達を思い出しているのだろうか皆神妙な顔つきだ...
ダズ「そうだね...ありgドン!!!!!!!
地面が揺れた
ルヴァス「何!?」
イーナ「地震?」
並々ならない違和感に
俺は...恐怖を感じる
ダズ「外にでよう!中は危ない!」
そう言って走り出す
そして見た...
日常が崩れ去る景色を.....
超大型巨人を...
-
- 61 : 2016/05/25(水) 19:05:24 :
- 「それでは訓練通りに...」
超大型巨人出現時の作戦が開始された
前に立つ上官の指示を...俺はうわの空で聞いていた
ここまでの記憶がない...
呆然と...仲間の後についてここまで来た
最悪だ...
ただそう思いながら...
間違いなく...人生で最悪な日が更新された...
「解散!!」
掛け声とともに人が動く
ダズ「う...うぅ......」ビチャビチャ
これから始まるであろう地獄を思い描き俺は吐く
「大丈夫!?」
背中を擦ってくれる人の声も届かず俺は恐怖に震える
死にたくない...
死にたくない......
ただそれだけを願って...
-
- 62 : 2016/05/25(水) 22:16:41 :
- 「23班!前進!」
ルヴァス「......行こう」
俺達に出撃命令が下される
俺には...それが死刑宣告のように聞こえた
いや.....訓練所に来た時点で...もう死刑台に送られていたのかも...
そんなどうしようもない考えが浮かぶ
イーナ「ダズ?大丈夫...?」
不安げなイーナの顔が見えた
ダズ「あ......ああ...」
そんなわけないのに言葉がつく
イーナ「そう......」
俺達は誰もいなくなった街を立体機動で飛んでいく
ルヴァス「あそこに人が!!」
俺達が目指す先...
そこには...
巨人に握られた人がいた...
ダズ「ひっ!!」
思わずそんな声がでる
イーナ「助けないと!!」
他の班員がガスを蒸す中...
俺は見た...
その兵士が...
こっちを...恨めしそうに見ながら...
巨人の口に...消えていくところを...
ルヴァス「みんなでかかろう!訓練通りに!」パシュッ
イーナ「行くよ!」パシュッ
俺も...刃を抜いたが...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
パクン!!!!!!!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さっきの光景で...切りかかれずにいた...
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- 63 : 2016/05/26(木) 19:39:58 :
- 嫌だ...嫌だ...嫌だ...嫌だ...
死にたくない...死にたくない...死にたくない...
怖い...怖い...怖い...怖い...怖い...
俺は巨人たちの間を逃げ回る
横目で班の仲間が巨人に攻撃を仕掛けているのが見えたが俺にはそんな余裕はなかった
イーナ「クロト!!フィナ!!」ポロポロ パシュッ
仲間が次々と喰われていく
ルヴァス「クソッ!!クソッ!!」ポロポロ パシュッ
仲間の為に流す涙も...
彼らが喰われる邪魔なんかしない...
イーナ「キャァッ!!!」
ルヴァス「イーナッ!!」パシュッ
俺は......わかっている......
こんな所で...生き残れるはずがない...
なら...
ダズ「イーナ!!!」パシュッ
自ら...死にに行こう...
パクン!!!!
イーナが喰われる
ルヴァス「あぁぁぁぁぁぁ!!」
ダズ「く.....」
周りには絶叫が響き渡る
屋根の上におりた俺達は迫る目の前の巨人に集中した
ダズ「俺達は...もう...おしまいだ...」
膝が震え立っているのもやっとだ
ルヴァス「もう...やだ...やだ...」
生き残った仲間は俺達2人
ここで喰われるんだろう...
怖いけど...その運命を半ば受け入れる
ルヴァス「うあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
背後からいきなり巨人が現れにルヴァスの下半身を喰らう
ルヴァス「やだぁぁぁぁ!!!助けてくれぇ!!!!!!!!!」
助けを求めるかのように手を伸ばす
でも俺は...
俺の身体は...
ルヴァスを咥えている巨人から離れる
パシュッ!
半ば反射的に...俺は逃げ出した
やだぁぁぁぁぁ!!!あぁぁぁぁぁぁ!!!
背後から聞こえる声も...聞こえないふりをする...
やがてその声も聞こえなくなる
俺はある程度退いて巨人のいない屋根の上でへたりこんだ
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- 64 : 2016/05/26(木) 22:09:14 :
- はぁ...はぁ...はぁ...
息が切れる
ここまで必死に逃げたからだろうか
生き残れてよかった
''あれ''が俺じゃなくてよかった...
突如現れた思考にゾッとする
俺...今なんて...?
ダズ「はぁ......はぁ......はぁ......はぁ......」
息切れが酷くなる
本当に立体機動で逃げてきたせいだけなのだろうか?
そんな考えを振り払うかのように頭を振る
胸が苦しい
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
パクン!!!!!
イーナ「キャァッ!!!」
ルヴァス「やだぁぁぁぁぁ!!!あぁぁぁぁぁぁ!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺も...ああなるのか...?
''仲間''がそうなったように...?
''仲間''?
誰のことだ...?
俺が見捨てて...死んでいったやつのことか...?
''仲間''ってなんだ...?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ルヴァス「勿論だ!仲間だろ?」
イーナ「すっごい心配したんだからね!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は......何を......したんだ......?
大事な仲間を失って...のうのうと生き延びて...
それでよかった...?
ダズ「..........こんなの...望んじゃいなかった」
ただ...のんびりと平和に暮らしたかったのに...
俺達の仕事は...
死ぬまで戦い続けること...
思考がそこまでたどり着いた時...
俺の意識はそこで途絶えた
-
- 65 : 2016/05/27(金) 07:27:19 :
- うぅ...
俺が目を覚ますとそこは
救護班のテントだった
「起きたか訓練兵」
医者らしき人物が声をかけてくる
ダズ「はい...あの...ここは...?」
「ウォールローゼ内部の本部だ...君は屋根の上で倒れているのを発見されここに...」
そうか...俺は.....
「特に目立った外傷はないな...ベッドを譲ってくれ」
発せられたその言葉に驚く
ダズ「え...そんな...」
「今は怪我人が大勢いるんだ...治療する必要の無い者には退いてもらわにゃならん...」
「それとも...そんな人は知ったこっちゃないと...?」
俺は言葉に詰まった
まだ耳の奥にこびりついている悲鳴
思い出されたあの光景...
ダズ「いえ...わかりました...」
そういって俺は外に出た
-
- 66 : 2016/05/27(金) 21:06:50 :
- テントを出た俺は見慣れた人達が集まっている場所へ行く
誰も俺に注意を払うこともなく...
俺は建物の入口付近...階段部分に座る
ダズ「うぅぅ...」
頭を抱えた
仲間の悲鳴が頭から離れない
全滅した...
俺だけ生き残った...
その事実が重くのしかかる
「ダズ!!」
誰かが俺に声をかけた
ダズ「マルコ...」
マルコ「大丈夫か...?みんなは...?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
パクン!!!!!!!!!!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ダズ「.........」
マルコ「......そうか...でも...お前をだけでも助かってよかったよ...」
その言葉に...
俺の想いがあふれだした...
ダズ「マルコ...俺...もうだめだ...もう巨人と戦えない...」
ダズ「仲間が目の前で食われた...仲間が食い殺されたのに...」
ダズ「俺は悲しみも憎しみも感じなかった...」
ただ...心底俺じゃなくて良かったって思った...
ダズ「でも...次は俺の番だ...気づいたんだ...俺達の仕事ってのは...つまりは...」
ダズ「巨人に食われるまで戦わされ続けることなんだろ?」
そう...あの地獄の光景に飛び込んでその光景の一端を担う...
そして..殺されるべく殺される...
ダズ「食い殺されるくらいなら...!!いっそ今!!」
刃を抜こうとする
マルコ「やめろ!!!」
それをマルコが止めにかかった
マルコ「しっかりしろよ!!お前だけじゃないんだぞ!?みんな恐怖と戦っているんだ...」
マルコ「サシャを見ろ!!あんな目に遭ってもなお気高き兵士のままだ!」
俺は隣に座るサシャを見た
こんな中で...そんなこと...
サシャ「ぐああああ!あの...お腹...!!痛いんで...負傷者に...してもらって...いいですか!?」
案の定...そんなわけなかった...
ダズ「もうダメだ!!」
マルコ「よせ!!」
俺達が揉み合ったその時
ドォォォォォン!!!
巨大な砲声が聞こえる
ダズ「ひっ!!!」
マルコ「なんだ...?」
俺達は動きを止める
周りがざわつき...
ある者は怯え...ある者は原因を確かめに向かう...
そんな中で俺は
何もすることが出来ず...ただ立ち尽くしていた...
-
- 67 : 2016/05/27(金) 23:19:33 :
- 暫くして俺達に集合の指示が下った
生き残りで部隊を編成するらしい
まだ戦うのか...?
また死にに行くのか...?
吐き気が込み上げてくる
ダズ「また...あの地獄に?」
恐怖に息切れがする
ダズ「......嫌だ!死にたくねぇ!!家族に会わせてくれ!!」
マルコが俺を止める声がするが構わず喚く
「そこのお前!聞こえたぞ!任務を放棄する気か!?お前...」
駐屯兵が俺に詰め寄る
ダズ「ええそうです!!この無意味な集団自殺には何の価値も成果もありません」
負けじと言い返す
「貴様...人類を...規律をなんだと思っている...私にはこの場で死刑を下す権限があるのだぞ!」
刃を抜こうとしているがその顔の恐怖の色は抜けていない
ダズ「...いいですよ......巨人に食い殺されるよりは100倍いい...」
俺も刃を抜く
その時...
「注もおおおおおおおおく!!!」
壁の上から声が飛んだ
「これよりトロスト区奪還作戦について......」
ピクシス司令...その人が作戦のあらましを伝達する
だが...訳の分からない...嘘ばっかりの説明...
ダズ「嘘だ!!!!!」
声が裏返る
ダズ「そんな訳の分からない理由で命を預けてたまるか!!俺達をなんだと思っているんだ!?俺達は...使い捨ての刃じゃないぞ!!」
そう言って俺は歩き出す
「おい!!待て!!死罪だぞ!?」
ダズ「人類最後の時を家族と過ごします!!」
あの日以来会っていない...家族と...
ここで死んで...もう会えなくなるのなら...
「ワシが命ずる!!今ここから去るものの罪を免除する!!」
待望の一言が辺りを駆け抜けた
これで...地獄から抜け出せる
俺は進める足を速める
だが...
「その巨人の恐ろしさを自分の親や兄弟愛する者にも味わわせたい者も!!ここから去るがいい!!!」
その言葉に...
俺の足は止まった
また...人に迷惑をかけて...?人を死なせて...?
そんな想いが体中を駆け抜ける...
ダメだ...俺は...
戦わなくちゃならない...
俺が臆病者でも...
それだけは譲れない...
俺は...恐怖に震えながらも...引き返した...
-
- 68 : 2016/05/28(土) 18:22:10 :
- 戦闘を避け立体機動で巨人たちをトロスト区の端っこまで集める
俺達の新しい命令...
もう一度戦う...
そう決めた覚悟も壁の上に登った時には早くも揺らいでいた
マルコ「ダズ...大丈夫かい...?」
俺の震える足を見たのだろうか...そう尋ねる
ダズ「大丈夫なわけないだろ...でも...もうやるしかないんだよ...!!」
もう...嫌なんだ...俺のせいで誰かが死ぬのは...
それだったら...自分で死ぬよ...!
でも...俺にはそれが出来ないから......!!
もう...やるしかないんだ...!
すべての気持ちを吐露する
マルコ「そう...」
その時...俺達に出発の命令がかかった
立体機動で街の真ん中を飛んでいき端までたどり着く...
大丈夫...これだけだ...
生き残れる...誰も犠牲にしないで...
パシュッ!!!
周りが壁から飛び降りるのに俺も続く
俺は......臆病者だ......
誰かのために戦うことなんてできない...
自分の命が惜しい...
死ぬのが怖い...
ドシンドシン!
巨人の足音が迫る
ダズ「!!!」シュー!!
驚きのあまりトリガーを強く引きガスを蒸す
ダズ「......死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」ボソボソ
今まで...こんなに速く立体機動を使ったことがあったんだろうか...?
それほどまでに俺は目標に一直線に進む
背後から続く巨人の足音がだんだん増え...
それにつれて恐怖も増えていく
ダズ「嫌だ...嫌だ...死にたくない...父さん...母さん...」パシュッ
やがて...目標の壁が見えてきた
これで...!!!
そう思ってアンカーを壁に刺す
トリガーをありったけの握力で握りそれと同時にワイヤーが巻き取られていくのを感じる
次の瞬間...全てが闇に包まれた
最後に見えたのは...
誰のものかわからない血
そして意識が途絶えた
第三章 fin
-
- 69 : 2016/05/28(土) 18:24:55 :
- 第三章終了!大会の関係で一週間かけて執筆しました
続けて第四章を書かせていただくので第三章の感想は始めの方に載せたグループまでお願いします
参加申請はいつでも受け付けていますので気軽にお願いします!
また見やすい作品にするためにコメントは全て非表示にさせていただきます!
皆様から頂いたコメントは全て読ませていただいて本当に心苦しいのですがより良い作品のためにご理解をお願いします
名前の提案なども全てメモらせて頂きましたので使わせていただきたいと思います!
-
- 70 : 2016/05/28(土) 22:06:36 :
- 第四章 〜貴方が守ってくれるから... 中衛班ハンナ・ディアマント〜
ハンナ「フランツ...話って何...?」
私はある日...一番仲の良い男友達のフランツ・ケフカに呼び出された
場所は誰もいないと思われる倉庫の裏
嫌でも''それ''かなと思ってしまう
私の勘違いなのかな...?
仲のいい友達...ミルク・カラードはそんなことないんじゃないって言ってたけど...
もし''そう''だったら...
飛び上がっちゃうほど嬉しい
私も''そう''だから...
フランツ「あのさ...僕...君の事が好きだ...」
待ち望んだ言葉に心が踊る
フランツ「だから...僕と付き合ってくれないか...?僕が...君を守る...だからさ...」
ハンナ「うん!」ポロポロ
喜びのあまり目から大きな雫が流れ落ちる
フランツ「ハ、ハンナ!?」
ハンナ「ううん...ごめん...嬉しくて...」ポロポロ
そんな私を彼は抱きしめてくれる
フランツ「ありがとう...これからも...よろしくね...」
ハンナ「うん..うん...」ポロポロ
私は彼の胸の中でただ泣いていた
-
- 71 : 2016/05/29(日) 08:13:13 :
ハンナ「ふぁぁぁぁ...」
私は寮で目を覚ました
ミルク「おはようハンナ」
声をかけてきてくれたのは私の親友...
ハンナ「おはようミル...」
私はそういってだるい体を起こす
ミルク「ほら!今日は愛しの彼とデートでしょ!早く準備しなさい!」
少しにやつく彼女にももう慣れた
ハンナ「はいはい...」
そう言って着替え始める
今日はどこへ行こうかな...そう思いながら...
ミルク「そういえば...今日は確か璧外調査があるんじゃなかったっけ?」
ハンナ「ええ...そうね」
ミルク「まぁ私達には関係ないけど...明日にはもう駐屯兵団なんだし...」
ハンナ「そうね...」
ミルク「まぁ楽しんでね!」
そういって出ていこうとするミルク
ハンナ「ありがとね!ミルク!」
そう声をかけると
ミルク「だーかーらー!ミルクって呼ぶな!!」
いつも通り怒鳴り返してくる
彼女は名前を呼ばれることを極端に嫌がる
曰く私は牛乳じゃないってことらしい...
でもその白い肌は牛乳そのものなんだけどなぁ...
そう思いつつも私は準備を終えて待ち合わせの場所に向かった
-
- 72 : 2016/05/29(日) 18:00:21 :
- ハンナ「フランツー!!待ったー?」
私が待ち合わせ場所の門に着くとそこには既に長身の男がいた
フランツ「ううん今来たとこ!行こう!」
私達は自然に手を繋ぐ
付き合い始めた時はこれだけでドキドキしてたのに
今はもうすっかり慣れた
街に出るとそこには人だかりができていた
フランツ「なんだろう...?」
ハンナ「調査兵団じゃない?今日壁外調査らしいし...」
フランツ「そうか...見に行く?」
ハンナ「そうね!」
私達は列に割り込む
目の前を見ると今期の成績上位者のエレンがいた
エレン「すげぇな...」
そう呟くと彼の目線の先には
馬に乗って通り過ぎていく調査兵と歓声を上げて見送る市民
確かに...
ここしばらくは何事も無く平和で...
そんな時勢だから...多くの人が期待してるんだ...
そう...
ハンナ「もう5年も何も無いんだもん」
その言葉にエレンが振り返る
フランツ「この5年で壁もずいぶん強固になったしね」
ハンナ「もう大型巨人なんか来ないんじゃないかな?」
そんな私たちの会話に
エレン「何腑抜けたこと言ってんだこの馬鹿夫婦!」
その言葉に一気に顔の温度が上がるのがわかった
ハンナ「そ、そんなお似合い夫婦だなんて...」
フランツ「気が早いよエレン!」
確かに長い間付き合ってるけど...まだそんなこと言われると照れちゃう
いつの間にかエレン達はいなくなっていた
フランツ「はぁー恥ずかしかったね...」
まだ少し赤い顔をして彼が呟く
ハンナ「そうね...」
私もそんな顔なのかな...?
そう思いつつ私達はデートを始めた
-
- 73 : 2016/05/29(日) 20:47:41 :
- 色々な所を周り昼時になって私達はレストランに入る
でてくる料理は訓練所と同じであまり美味しくないがこの時代はどこでもそうだろう
でもこのお店は私達が初めてのデートで使った店で...とても思い入れがあった
フランツ「ここはいつ来てもいいね!」モグモグ
ハンナ「うん!おいしい!」モグモグ
ちょっとした会話の後...さっきの会話をふと思い出して聞いてみる
ハンナ「そういえば...さっき超大型巨人なんか来ないんじゃないかなって言ったけど...もし来たらフランツはどうする...?」
こんな時代で...もしかしたら不謹慎かもしれないけど...
確かめたかった...
あの日の彼の台詞を...
フランツ「勿論君を守るよ!」
そう言って彼は微笑む
フランツ「告白した時にも言ったでしょ?」
ハンナ「覚えててくれたんだ...」
フランツ「当たり前だよ!男に二言はないからね!」
そんな彼を頼もしく思う
やっぱり...私にはこの人 しかいない...
感謝を言おうと口を開けた時...
ドン!!!!!!!!!
突然地響きが起きる
フランツ「ハンナ!!」
そう言って彼は私の手をとって外へ出る
並々ならぬ不安...
壁の方を見ると...長い煙が空へと続いていた
そして...煙と壁の境目には...
赤い顔の巨人がいた...
「あれが...超大型巨人なのか...?」「うわぁぁ!!逃げろ!!」
周りの人が騒ぎ始めた
フランツ「まずい...壁が...」
ドォォォォォォン!!!!!!!!!
いくつもの扉の破片が中を飛び
そして街へと降り注ぐ
ハンナ「フ、フランツ...」
心配のあまり一番安心する名を呼ぶ
フランツ「大丈夫だよ...早く訓練所に戻ろう...」
私達は駆け出した
-
- 74 : 2016/05/30(月) 18:36:02 :
- 「お前達訓練兵も卒業演習を合格した立派な兵士だ!今回の作戦でも活躍を期待する!」
駐屯兵のお偉いさんが慌ただしい本部で指示を出している
まさか...本当に...来るなんて...
事実となったさっきの出来事に怯える
そんな私に気づいたのか...
フランツ「大丈夫だよハンナ...僕が必ず君を守るから」
フランツが私の肩に手を置いて真っ直ぐ目を見てきた
ハンナ「フランツ...」
その真っ直ぐな瞳に私は少し落ち着きを取り戻す
フランツ「約束は守るよ...君を...絶対に...ね...?」
ハンナ「うん...」
「訓練兵集まれ!!!」
私達は外へ向かう
私はその間ずっと彼の手を握りしめていた
-
- 75 : 2016/05/30(月) 22:07:26 :
- ミルク「もう...あと1日ズレてれば...」
配置についた私たちの班...
その全員が絶望的な顔をしていた
ハンナ「ミル...」
ミルク「でも...こうなっちゃったら...戦うしかない...だよね?ハンナ」
ハンナ「うん...」
そういうと少し悪戯っぽくミルクが笑った
ミルク「あーあ...私にもハンナみたいに守ってくれる人がいたらなー...」
それが虚勢だってわかっていても...
ハンナ「そう...だね...」
そんなことしか私は言えなかった
「出撃しろ!」
命令が下る
私達は中衛班の中でも後方に位置する班
巨人に遭遇するなんてそうそうない...
心のどこかでそんな慢心があった...
ミルク「巨人だ!!!」
命令が下って数分も経たないうちに巨人を発見した
フランツ「もうこんなところまで...」
ハンナ「そんな...早い...」
ミルク「皆で倒そう...私達ならやれるよ!」パシュッ
おう!!!!!
皆で声を出していっせいに目の前の巨人に迫る
ハンナ「フランツ...」パシュッ
私も...皆にならう
その時
ブンッ!!!!!
目標の巨人が急に腕を回す
パァァァァァァン!!!
その拳の餌食になった人...そして腕にアンカーを刺していた人が吹っ飛ぶ
ハンナ「!!!」
驚きのあまり声を失った
それは皆も同じで誰もが一瞬動きを止める
その一瞬が...生死を分けた...
その巨人が両手にそれぞれ班員を掴む
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」「やめて!!!助けてー!!!」
よく見ると...
その右手には...
ミルクが握られていた...
ハンナ「ミル!!!」
その白い肌がゆっくり巨人の口まで運ばれ...
真っ赤に染まった...
ハンナ「ミルクー!!!!!!!!!」
先程の強がった...悪戯のような笑顔が脳裏に蘇る
なんで...
私は屋根の上に降り立つ
フランツ「ハンナ!!!」
フランツが寄って来たが私はそんなことも気にかけなかった
頭の中は巨人の口に吸い込まれるミルクの映像がひたすら繰り返し流れる
ハンナ「ミル...ク......」
お願い...
いつもみたいに言ってよ...
ミルクって呼ぶなって...
言ってよ...!!!
ドン!!!!!!!!!
私は...突き飛ばされた
ハンナ「嫌!!!」
立っていた屋根からその家のベランダまで転げ落ちた
誰!?
そういって見ると
フランツが巨人の口から上半身を出していた...
-
- 76 : 2016/05/31(火) 21:13:08 :
- ハンナ「あ...あ......フ...フランツ.....?」
私の思考が停止する
巨人の口にいるフランツは生気を失ったかのようにグッタリとしていた
そんなはずない...
そんなわけがない...
ただ...気を失ってるだけだ...
助けないと......!
ハンナ「返...して.....」
ハンナ「フランツを...返して...!」
私は先程の涙を振り払いブレードを持ち直す
その時
ザシュッ!!!
誰かがその巨人のうなじを削いだ
反動でフランツが飛んでいく
ハンナ「フランツ!!!」
私は立体機動で追いかける
ドサッ!
間に合わずフランツは道に落ちた
-
- 77 : 2016/06/01(水) 21:56:58 :
- ハンナ「フランツ!!」
駆け寄って呼吸を確かめる
全く...呼吸を感じない
ハンナ「嘘よ...」
訓練で教わった通り心臓の音を聞く
...がまたも何も感じない
ハンナ「そんな.....フランツ......」
私は蘇生術を始めた
これなら...フランツは戻ってくる...
約束したんだから...守ってくれるって...
ハンナ「はぁ...はぁ...はぁ...フー...フー...」
お願い...お願い...
戻ってきてよ...フランツ がいないと...
私は何も出来ない...フランツ が傍にいてくれたから...
私はここまで頑張れたのに...
ねぇ......
返事をしてよ...
ハンナ「お願い...フランツ...」ポロポロ
いつもみたいににっこり笑って...
大丈夫って...
そう言ってよ...
お願い...
独りにしないで...
お願い......
-
- 78 : 2016/06/02(木) 22:05:06 :
- 「ハンナ?一体何を...」
突然かけられた声に私は驚く
ハンナ「あ...!!アルミン!?」
よかった...!二人ならフランツを助けられる...!
ハンナ「助けて!フランツが息をしてないの!!」
アルミン「ハンナ...」
ハンナ「さっきから何度も...何度も蘇生術を繰り返しているのに!」
アルミン「ハンナ...ここは危険だから早く屋根の上に...」
なんで...?
そんなことしたら...
ハンナ「フランツをこのままにできないでしょ!!!」
アルミンは何を言っているの......?
アルミン「違うんだ...フランツは...」
もういい...アルミンの助けなんて...
私は必死に何度も蘇生術を行う
繰り返し繰り返し...
「何をやっているんだ訓練兵!!」
どれだけ時がたったかわからないけど
既にアルミンがいなくなった道路で駐屯兵に声をかけられる
ハンナ「!!お願いします!フランツを...フランツを助けてください!!」
「!?」
ハンナ「さっきから何度も蘇生術を繰り返しているのに!全然ダメで...」
「.......ここから離れよう」
そういってその人は私の肩を掴む
ああ...この人もか...
ハンナ「やめてください!!フランツをこのままにはできないです!!死んじゃうかもしれないのに!」
「君の恋人はとっくに死んでいる!!!!!」
は......?
何を言ってるの......?
フランツが死んでいる......?
「下半身が......もうない......恐らくは出血多量で......とっくに......」
は......?
言われたところに目をやる
確かにあるべきものがない...
けど...それがどうしたっていうの...?
フランツは...まだ生きてる...ただ 下半身がないだけ...
まだ生きてるのに...
生きてる...はずなのに......
なんで...そんな目で私を見るの...?
そんな哀れむような目で...
なんで...
なんで......
なんで.........
さっきから...私の目から...こんなに涙が出ているの......?
-
- 79 : 2016/06/02(木) 22:34:29 :
- ハンナ「うう...」
「!?目を覚ましたか...」
私が気がつくとさっきの人が私を見ていた
ハンナ「ここは...?」
「救護班のテントだ...君が気絶して...連れてきた...」
ハンナ「そうですか...あの...あなたは...?」
「アイリス・ヴァートリー...駐屯兵団精鋭班だ...」
ハンナ「そうですか...ありがとうございます...」
そういって私は辺りを見渡す
そしているはずの人影を探す...
ハンナ「あの...すいません...フランツは...?」
アイリス「.......」
ハンナ「?」
アイリス「死亡した......」
ハンナ「!?」
その言葉を聞いた時
全てを思い出す
『フランツ!!!』パシュッ
『お願い...フランツ...』ポロポロ
『君の恋人はとっくに死んでいる!!!!!』
ハンナ「」ツー
わかっていた...
こんなことになるのは...
フランツが死んでいたことも...
心のどこかで...
わかってた...
でも...
信じたくなかった...
あなたの約束に...縋っていたかった...
守ってくれるって...約束に...
ハンナ「フランツ...フランツ!」
ギュッと握りしめた手に痛みが走る
手を広げてみてみると爪で切れて血が出ていた
そんな手に大粒の雫が落ちる
しばらく視界が曇り
あちこちで聞こえるような泣き声が私の口からこぼれた
-
- 80 : 2016/06/02(木) 23:30:17 :
- アイリス「......大丈夫だ」
しばらくして隣に立っていたアイリスさんが喋り出す
アイリス「フランツは...まだ生きてる...」
ハンナ「!?」
アイリス「君が生き続ける限り...彼がいた記憶は君の中に残る...」
アイリス「彼は......君の中で生きているんだ...」
アイリス「だから...君は生き続けないといけない...」
アイリス「戦い続けないと...」
ハンナ「......私は...フランツがいないと...」
アイリス「だからさ......君の中にいるんだよ...いつでも...どこでも...」
ハンナ「.......」
『あのさ...僕...君のことが好きだ...』
『僕が...君を守る...』
『男に二言はないからね』
『ハンナ...』
戦う...
アイリス「彼のためにも...ね...?」
フランツのために...
私を...今まで守ってくれたフランツのために...
私の中のフランツを...守る...?
アイリス「集合がかかったみたいだ...私は行くよ...君はどうする?」
私は......
ハンナ「行きます...!」
フランツ のために...
私は生きる...
フランツだけじゃない...
ミルクや...散っていった仲間のために...
私に出来ることはそれだけだから...
それに...何があっても...貴方が守ってくれるから...
私は立ち上がって歩き出した
第四章 fin
-
- 81 : 2016/06/02(木) 23:32:14 :
- 第四章終了!
おそらく次の第五章で最後になると思います!
最後まで宜しくお願いします!
-
- 82 : 2016/06/03(金) 08:09:02 :
- 最高です先生!
-
- 83 : 2016/06/03(金) 08:44:54 :
- アイリスさん良い人!!(2度目の採用感謝!!)
-
- 85 : 2016/06/04(土) 21:15:59 :
- 第五章 〜何のために生き残るのか 後衛班アイリス・ヴァートリー〜
夢を見た
長い道をひたすら歩いている夢
時々急に足場が悪くなるが気にするほどでもなく歩き続ける
でも...
何故かある境から足場の悪い道が続く
やがて道は坂道となり...
足場が悪いのはそのままに私は登り続ける
グシャ
何かを潰したような音が足からする
疑問に思ってみると...
そこには...
血だらけの骸があった
そして...
その骸には見覚えがあった
急に背筋が寒くなり私は坂を駆け上がる
何度も何度も足をつるませながらも
その原因に目もくれず走った
そして...坂のてっぺん...道が切れているところまでたどり着く
足元にある最後の骸は全く知らない人のもの...
ふとその先を見ると
そこには闇が広がっていた
いや...
正確には...
それは...
巨人の口だった...
-
- 86 : 2016/06/04(土) 21:32:27 :
その知らせが届いたのは大きな衝撃がして少しした後だった
その時私は部屋にいて...書類の整理をしていた
バタン!!!
「アイリス!」
アイリス「さっきの衝撃か...?まさか...」
「ああ...壁が...破られた...!」
知らせとともに飛び込んできたのはリグル・テンペスト
私の同期で同じ精鋭班のメンバー
アイリス「では超大型巨人出現時の作戦は...」
リグル「さっきハントの命令で始まった...持ち場に行くぞ...!」
私達は作戦通り住民の避難のため部屋を出た
-
- 87 : 2016/06/05(日) 17:06:05 :
- 逃げ惑う市民
それらを正しく落ち着かせながら避難させるのが私の仕事...
そして...
「巨人だ!!!!!」「うわぁぁぁぁぁ!!!」
パシュッ
ザシュッ!!!
巨人「」シュゥゥゥゥ
リグル「流石」
アイリス「どうも」
市民を守るのが私の仕事であった
精鋭班第3班班長として...
全うしないといけない仕事...
アイリス「リグル!周りを警戒!ホルス!ワイヴ!住民の誘導を!」
一同「はっ!」
訓練通り私は部下に指示を出す
そして速やかに誘導を始めた
-
- 88 : 2016/06/05(日) 20:07:00 :
- アイリス「これで全員!?ホルス!ワイヴ!確認してきて!リグルは索敵続行!」
こちらへ避難してくる人数が段々と減って遂に0になる
全員逃げれたのか?
作戦通りに事が進み少し安心した
アイリス「このあとは...」
撤退の鐘がなるまで中衛の援護...だっけ...
私達は門より前で東からくる住民を誘導していたためおそらく避難が完了するまではまだ少し時間がかかる...
ホルス「班長!もう人はいません!」
確認に行かせた部下の報告を受け
アイリス「では中衛の援護だ!」パシュッ
命令を下した
少し前進すると
そこは...想像していた以上に地獄だった
リグル「ひでぇな...」
ワイヴ「どうしますか...?」
アイリス「......」
正直言葉を失った
先程の後衛の任務で巨人を見なかったわけじゃない...
実際何体か手にかけた...
それでも...恐怖を覚えるほどに
戦場は血にまみれていた
「うわぁぁぁぁぁぁ!」「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
叫び声が絶え間なく響き渡る
暴れる巨人に建物が次々と倒壊していき
それによりまた新たな叫び声が生まれる
ホルス「班長...」
アイリス「あ...ああ...援護に向かう!」
リグル「どこからだ?この混乱した状況下で...どこから援護する?」
アイリス「あ......」
リグル「闇雲に向かう気か?死ぬぞ?」
アイリス「う...うるさい!まず手前の11m級!そのあと奥の6m級を殺る!」パシュッ
私はアンカーを刺す
とにかく何かをしないと気が狂いそうだった
アイリス「はぁぁぁぁ!」
ザシュッ!!
腕を狙って筋肉を削ぐ
続けてリグル、ワイヴ、ホルスも腕、足などそれぞれの部位を削いでいく
ズバッ!!!
最後にうなじを削いだ
11m級「」シュゥゥゥゥ
ホルス「よし!」
アイリス「次!」
そして...その時気付いた...
リグル「......三体もいるのか?」
-
- 89 : 2016/06/05(日) 20:40:01 :
- 小型の巨人は三体...
狭い区域に固まっていた
リグル「どうする?アイリス?」
アイリス「......」
その場で戦っている人はもう1人しかいない...
けど...助けに行けば...おそらくこの班も壊滅する...
少なくとも...あそこで戦えば...
アイリス「......先を急ぐ」
ワイヴ「え...?」
ホルス「た...助けないんですか!?」
アイリス「1人...たった1人のためにあんな立地条件で戦うなんて馬鹿げている...意味がない...」
ワイヴ「は...?」
ホルス「でも!」
リグル「......いいのか?」
アイリス「............仕方ない」
ホルス「班chリグル「わかった...従うぞ!」
そういってリグルは前進する
ホルス「......くっ」
ワイヴ「......」チラッ
アイリス「........」
パシュッ
-
- 90 : 2016/06/05(日) 22:25:20 :
- リグル「右手前方!3m級1体!更に左手前方に10m級1体!いずれも交戦中!」
先行するリグルが叫ぶ
アイリス「ワイヴとホルスで右を!私とリグルで左をやる!」パシュッ
ワイヴ「はい...」
ホルス「......」
さっきの事を根に持っているのか...返事もそこそこに二人は3m級に向かった
リグル「行くぞ...」
アイリス「ああ...」
パシュッ!!
10m級には既に3人ほどかかっていた
アイリス「足をお願い!うなじは私が!」
リグル「わかった!」パシュッ
シュゥゥゥゥザクッ!!!
巨人がバランスを崩して倒れる
アイリス「はぁぁぁぁ!!!」パシュッ
私は突っ込んだ
狙うはうなじのみ
剣を持つ手に力がこもる
ワイヤーを巻きとり大きく振りかぶる
その時...
ドン!!!!!!
誰かとぶつかる
アイリス「あ...」
私は空中でバランスを崩し落ちていった
リグル「アイリス!」
リグルの叫ぶ声を聞きながら地面に落ちる
幸い柔らかい土の上に落ちた
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
次の瞬間断末魔の叫びが広がる
アイリス「え...?」
「ラフト!!!」
その場にいる人...先に戦っていた人が叫ぶ
食われている人の名前...?
そう思った時...
一つの考えに行き着いた
空中でぶつかったのって...?
アイリス「あ...ああ......ああ.....」
言葉にならないうめき声を上げる
リグル「クソッ!」
ザクッ!
リグルがその巨人に止めを指した
糸が切れた操り人形のように倒れてくる巨人
私はそれが私に向かって落ちてくるのをただ見ていることしか出来なかった
ドン!!!!!
先程と同じ衝撃
アイリス「キャァ!!!」
私は吹っ飛ばされる
今度は...
リグルだった...
-
- 91 : 2016/06/06(月) 22:41:04 :
- アイリス「リグル!!!」
舞い上がった砂埃が落ち着き私は巨人の体の下から上半身をのぞかせているリグルに駆け寄る
リグル「ドジった...」
してやられたような顔でペッと吐き捨てるように言う
アイリス「助けるから...待ってて...」
剣を振り上げる
その時
リグル「やめろ」
リグルが呟いた
リグル「出られたところで...俺は足でまといだ...」
アイリス「でも...!」
リグル「たった1人のために...だっけ?」
ハッとした
リグル「ふっ...そんな顔すんな...足でまといのたった1人のためにお前を危険に晒せない...」
リグル「この後お前が助ける予定の人に申し訳ねぇよ...」
アイリス「......でも」
涙声になったのに気づいたが構わず続ける
アイリス「このままにはできない...」
リグル「お前の強さは...捨てることが出来ることだ...」
遠くを見つめるような目でリグルが言った
リグル「訓練兵の時からそう...いざとなったらお前は捨てられる...どんなにそれが重くても...大切でも...」
リグル「覚えてるか...?訓練兵のとき...立体機動中ミスった俺を助けて...お前は...親父さんの形見を...」
お父さんが私に遺してくれたブローチ...
その訓練中になくして...どこいったかわからずじまい...
リグル「俺がちぎっちまってよ...お前あの時本当はブローチ取れたよな?でもお前は...あなたの方が大事って...ブローチに目もくれずに...」
リグル「強いなって...そう思った...」
リグル「さっきも...1人と班員の命を比べて...より人の死なない道をとった...」
リグル「お前の選択は正しい...だから...今回も...聡くあってくれ...」
アイリス「リグル...」
既に訓練兵はどこかへ行ったのか2人だけの空間でしばし時が止まる
リグルを見捨てたくない...
でも...リグルを見捨てることで助かる命は沢山あるだろう...
汗が私の首筋を伝う
理性と感情の戦いは...拮抗していたが
遂に理性が勝った......
アイリス「.........わかった」
私はリグルの頭を撫でる
アイリス「お願いだから...生きてて...すぐ迎えに行く...」
立ち上がって背中を向けた時...
「お前が好きだった...」
そんな言葉が聞こえた気がした
決意を鈍らせないように...
私は一度も振り返らず立体機動で跳んだ
-
- 92 : 2016/06/07(火) 22:21:52 :
- 涙で濡れていた顔を拭い二人を向かわせた3m級の方を向く
きっと大丈夫...あの2人なら...
わかっていながらも先程の光景...
私のせいで起こってしまった光景が頭をチラつく
お願い...
必死の思いで立体機動を操り先程の場所まで戻る
見渡すと...
建物の影で何かがうごめいているのが見える
その正体に気づいた時
私は足から崩れ落ちた
3m級...
あの既に倒されているはずのものが...そこにはいた...
絶望?
後悔?
憤怒?
私の中でどれだかわからない...いや...入り交じったような感情が広がる
私のせいで...
私のせいで...
パシュッ!!ズバッ!!
何も考えず...考えられずその感情のまま巨人を倒す
ドサッ!
虚しく音が響きやがて静まった
近くに...もう巨人はいない...
そんなことをボンヤリと感じて私は一旦リグルのところまで戻ることにした
-
- 93 : 2016/06/09(木) 18:45:00 :
- アイリス「リグル......」
私が戻った時リグルは...
リグル「なんで...戻ってきた...」
まだ...生きていた
まだ...
おびただしいほどの血が辺りを黒く染めている
アイリス「な......これは...?」
リグルは気まずそうに手を隠す
そこから血が出ていることにやっと気がついた私はすべてを悟った
アイリス「まさか...」
既に巨人は蒸発しているがリグルの体勢は下敷きになった時のまま
リグル「軽くはなったけどな...下半身が動かねぇ...」
アイリス「でも...だからってなんで...?」
リグル「........」
それには答えずリグルは仰向けになって空を見上げる
アイリス「.....行こう...今ならまだ...」
リグル「他の奴らは?」
私は首を振る
リグル「そうか...なら...怖くねぇな...」
アイリス「リグル!!!」
リグル「ごめんな...けど...これ以上はだめだ...」
アイリス「え...?」
リグル「迷惑かけたくねぇんだ...あの時から...お前に助けてもらってばっかりだったから...」
アイリス「そんなの...!」
リグル「ごめんな...」
そういってリグルは目を閉じる
アイリス「ダメ.....ダメだ...!死んじゃダメだ!!起きなさい!リグル!!」
リグルを揺さぶるが...彼は二度と目を覚まさなかった...
もう無理だ...
私は自分の手を見つめる
リグルの血で真っ赤に染まった手
私は...今日何人殺したんだろう?
ふとそんな考えが浮かぶ
独りで戦っていた兵士...自分の班員...私とぶつかった兵士...
アイリス「もう...さっきからずっと真っ赤か...」
私は立ち上がる
死にたい...けど許されない...
私が殺した人たちに...
だったら...せめて戦わないと...
戦って死なないと...
漠然とした意識の中でそれだけが...唯一はっきりとしていた
-
- 94 : 2016/06/10(金) 11:17:49 :
- パシュッズバッ
私は飛び回って巨人を倒していく
傍から見れば優秀な兵士なんだろうか?
でも...ただ死に急いでるだけ...
自分じゃ死ねないから...
自ら死を選んだ戦友の顔がチラつく
なんとも言えない思いのまま視界に入った最後の巨人を倒す
アイリス「もう...いない...」
仲間も...部下も...
新たな巨人を求めてアンカーを撃った
ここら辺はもういないのか?
先程から巨人は見えない
倒したのか?
というか...まだ撤退の鐘はならないのか?
いくら後衛の中でも前方に展開していたとはいえ...遅すぎる...
その時...宙を舞う私の視界に何かが入った
カチッ
トリガーを引いて何か確かめる
それは...
予想していたものではなかった...
いや...むしろ...予想をはるかに超えていた...
-
- 95 : 2016/06/10(金) 16:35:01 :
- 「はぁ...はぁ...はぁ...」
背中に訓練兵団の紋章をつけた人が必死に蘇生術を行っていた
アイリス「何をやっているんだ訓練兵!!」
私は声をかけよる
「!!お願いします!フランツを...フランツを助けてください!!」
手を休めずその訓練兵は叫んだ
アイリス「!?」
私は驚く
蘇生術を受けている兵士は...
下半身がなかった...
「さっきから何度も蘇生術を繰り返しているのに!全然ダメで...」
その兵士は...彼氏なのだろうか...
涙ながらに必死に動いている
でも...
その程度は関係ない...
もう...既に...
アイリス「......ここから離れよう」
私は彼女の肩を掴んで立ち上がらせようとする
「やめてください!!フランツをこのままにはできないです!!死んじゃうかもしれないのに!」
アイリス「君の恋人はとっくに死んでいる!!!!!」
思わず怒鳴ってしまった
誰にとっても受け入れ難い事実...
それでも受け入れてしまった私にできることは...
ただ事実を告げることだけだった...
アイリス「下半身が......もうない.....恐らく出血多量で......とっくに......」
その少女は虚ろな目で下半身の方に目をやる
そして再び私を見る
何が起きているのか理解出来ていないようで...
ボーッとしている
......かわいそうだな
そう思った
突然その少女は足から崩れ落ちる
アイリス「っと!」
慌てて抱きとめた彼女はどうやら気絶しているみたいだった
ふとリグルを思い出す
このままほっとけば...またあんな事に...
それは...ダメだ...
そう思う一方で
今更?どうせ助けた所でいつか死ぬんだから意味が無い...
そう囁く私もいた
その時...
ふと...既に死んでいるその彼氏が目に入る
アイリス「ダメ...か...」
パシュッ!
-
- 96 : 2016/06/10(金) 18:39:28 :
- アイリス「すみません!この子を...」
ウォールローゼ内部まで撤退した私は救護テントに彼女を運んだ
医者「怪我か?」
アイリス「いえ...心理的なショックによる気絶です...彼氏を...亡くしたみたいで...」
医者「ちっ...とりあえずそこに寝かせておけ!後で診る!」
私は空いてるベッドに彼女を寝かせた
そして壁に寄りかかる
撤退の鐘は既になり今のところ何の指示も受けていない
どうしよう...
私はボーッと気を失っている彼女の顔を見つめる
そしてその目尻に涙の痕を見つけ息を吐いた
この子も同じなのだろう...
自分の力のなさに泣いた者...
そのせいで大切な人を喪った...
いや...殺した...
そして逃れることは許されない...
この...地獄では...
私はいつか見た夢を思い出した
みんなの上を走って...
最後は......どうなったんだっけ...?
「うう...」
アイリス「!?目を覚ましたか訓練兵...」
-
- 97 : 2016/06/11(土) 13:52:18 :
- 「ここは...?」
状況が飲み込めない様子で彼女は呟く
アイリス「救護班のテントだ...君が気絶して...連れてきた...」
「そうですか...あの...あなたは...?」
アイリス「アイリス・ヴァートリー...駐屯兵団精鋭班だ...」
「そうですか...ありがとうございます...」
少し寝ぼけたような顔で彼女は辺りを見渡す
受け入れて...落ち着いたのか...?
そんな私の予想はあっという間に打ち砕かれた
「あの...すいません...フランツは...?」
フランツ...
助けられなかった彼氏の名前...
アイリス「......」
なんて言えばいいのか...
わからない...
アイリス「死亡した...」
迷った末に出たのはそんな飾り気のないただの事実だった
「!?」
ハッとしたような彼女の目から涙が伝う
その痛々しい顔を...私は直視できなかった
「フランツ...フランツ!」
その痛々しい少女の痛々しい叫びが辺りに響いていた...
-
- 98 : 2016/06/11(土) 21:41:12 :
- アイリス「.....大丈夫だ」
何故だかわからない...
アイリス「フランツは...まだ生きている...」
何でだろう...
アイリス「君が行き続ける限り...彼がいた記憶は君の中に行き続ける...」
何でこんな...
アイリス「彼は.....君の中で生き続けるんだ...」
思ってもいない言葉を...
アイリス「だから君は生き続けないといけない...」
私は紡いでいるのだろう...?
アイリス「戦い続けないと...」
「......私は...フランツがいないと...」
アイリス「だからさ...君の中にいるんだよ...いつでも...どこでも...」
そうか...
これは...
私自身に言っているんだ...
自分自身に...死ぬために戦うなんて言っといて...
ただ...生きたいだけだったんだ...
自分が亡くした人たちの分まで...
生きる義務があるんだ...
アイリス「彼のためにも...ね...?」
みんなの為に...
ホルス、ワイヴ...そして...
リグルのために...
「残存兵!!全員集合だ!!」
テントの外から指示が出る
私は...戦わなくてはいけない...
生き残るために...
アイリス「集合がかかったみたいだ...私は行くよ...君はどうする?」
「行きます...!」
固く握りしめていたシーツを離し彼女は立ち上がる
私はそれを見てテントから出た
-
- 99 : 2016/06/11(土) 21:46:53 :
- ''その''
瞬間 私は思い出した...
夢の結末を......
最後の骸は...彼女......
そして...
私は...
その深い闇に...
囚われたのだった...
第五章 fin
-
- 100 : 2016/06/11(土) 22:32:08 :
エピローグ〜I'm just a man〜
そんな事はわからない...
でも...ただ一つだけ...わかることがある...
俺達を助けるために...
誰かが命を落とした...
そう...
彼らの尊い命が...俺達大勢の命を救ったんだ...
俺は...ただの男でしかない...
けど...
「きっと理解してもらえるだろう...あなたという一人の尊い命が多くの命を救うことがあることも」
そう...
俺という一人の存在でも...
誰かを助けることが出来る...
俺はただの男だ
でも...だからこそ...
この街を作り直そう...
この俺......ディモ・リーブスが...!
俺は瓦礫だらけの街に足を踏み出した
fin
-
- 101 : 2016/06/11(土) 22:42:07 :
- これにて短編集「モブ戦記〜それぞれのトロスト区攻防戦〜」を終了とします!
最後の方結構グダってしまって思ったように書けませんでしたが前半は割と思ったようにかけて良かったです!
プロローグ、エピローグはセットで一つの物語となっているので是非見返してください!
最後にここまで読んでくださった読者の皆様!応援や名前を考えてくださった皆様!ありがとうございました!
よろしければお気に入り登録よろしくお願いします!
それではまた別の作品もよろしくお願いします!
-
- 102 : 2016/06/11(土) 22:49:28 :
- 流石先生ですねw
素晴らしいです、お疲れ様でした(^^)
(ああ、ネーミングふざけ過ぎたな...)
-
- 103 : 2016/06/11(土) 22:51:40 :
- >>102
ありがとうございました!
-
- 104 : 2016/06/11(土) 22:58:12 :
- お疲れさまでした!流石の一言ですね!!
刹那さんと兵士達に…敬礼!!
-
- 105 : 2016/06/12(日) 22:10:02 :
- >>104
ありがとうございました!
ではこちらからも(`・ω・´)ゝ
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