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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

エレン「シャドーモセス事件」 ⑥ 進撃×MGS

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  1. 1 : : 2016/03/21(月) 13:47:39
    進撃×MGS1のコラボも、いよいよ最終話になります。


    ここまでご愛読いただいた皆様に感謝しつつ、最後まで書ききっていきたいと思いますのでよろしくお願い致します<m(__)m>
  2. 2 : : 2016/03/21(月) 14:47:39










    狭くて暗い通路を抜けていくエレン。



    真っ直ぐ真っ直ぐ、先へ先へと進んでいき、
    そして・・・・・・・・・・・・








    遂に広い地下整備所へと出た。









    エレンは足を止め、上を見上げる。
    そこには勿論・・・・・・・・・・・・あれがあった。








    アルミンがその持てる知力を注ぎ尽くして開発した、核搭載二足歩行戦車。
    17メートル級の鋼鉄の巨人。








    「あれが・・・・・・・・・・・・メタルギア、REX・・・・・・。」








    http://vignette1.wikia.nocookie.net/metalgear/images/0/08/MGS1_Metal_Gear_REX_%26_Solid_Snake.jpg/revision/latest?cb=20131102144255









    そのあまりの巨大さ故に、
    そのあまりの威圧感故に、



    エレンは完全に気圧されて、一瞬呆然と立ち尽くした。







  3. 3 : : 2016/03/21(月) 15:25:31








    ややあって、エレンはアルミンに通信を入れた。








    「アルミン・・・・・・聞こえるか?」

    『うん、聞こえるよ。』

    「お前・・・・・・・・・・・・とんでもないものを創りだしたな。」

    『REXのところまで辿り着いたんだね・・・・・・一応、褒め言葉として受け取っておくよ。』







    どこか暗い調子で、アルミンは答えた。
    騙されていたとはいえ、人類最悪の兵器を創りだしてしまったのは、他ならぬ僕だ。



    だから、僕にはメタルギアREXを破壊する義務がある。







    「それと、不審な点がある――――――――見張りが誰もいないんだ。」

    『恐らく、核の発射準備を完了させたんだね。急がないと。』






    地下整備所の中は、しんと静まり返って兵士の気配さえしなかった。
    不気味に思いながらも、エレンはアルミンと通信を続けた。






    「ところで、お前は今何をしてるんだ?」

    『実はね、僕は今サーバールームにいるんだ。サネス社長のパソコンへのアクセスを試みてる。』

    「お前、社長のパソコンのパスワードを知ってるのか?」

    『いや、知らないよ。でもアクセスすることは出来る。』

    「!! まさかお前、ハッカーだったのか!?」







    エレンが呆れたように言うと、アルミンは無線の向こうでクスリと笑った。







    『最も僕らしい呼び方だね。今社長のパソコンのセキュリティーの解除に取り掛かってるところさ。』

    「頼むぞ、アルミン。俺はどうすればいい?」







    最初の時点においてエレンは、アルミンの知識だけを必要としていた。
    アルミン本人はどうでもよく、メタルギア破壊のためのガイド程度にしか考えていなかった。



    だが、この時点では既に、エレンはアルミンのことを、信頼のおける仲間として頼り切っていた。








    『メタルギアに足場がかかっているのが見えるだろう?』

    「ああ、見えるぞ。」

    『そこを登ってくれ。核の発射を阻止できるPALコードを入力できる場所は地下整備所の3階――――――地下整備司令室にあるはずだ。』







  4. 4 : : 2016/03/21(月) 15:29:07
    期待です!
  5. 5 : : 2016/03/21(月) 15:34:24
    >>4
    期待ありがとうございます!
  6. 6 : : 2016/03/21(月) 16:49:57








    上を見上げると、確かに、メタルギアREXの正面、整備所全体を見下ろせる位置に地下整備司令室があった。








    アルミンに言われるまま、梯子を登り、メタルギアの脇にかけられた足場を移動していくエレン。
    そんな中、アルミンはパソコンを駆使して、サネス社長のパソコンにかけられたセキュリティーを突破していく。



    そして・・・・・・・・・・・・








    『やったよ、エレン! サネス社長のパソコンのハッキングに成功したッ!』

    「はは、大した奴だな! で、何か分かったのか!?」

    『サネス社長のメタルギア極秘ファイルにアクセスした。それで、新型核弾頭の正体が分かったんだ!』

    「新型核弾頭の正体だと!?」

    『うん・・・・・・・・・・・・新型核弾頭は、“ステルス”なんだ。』

    「ステルス!?」






    何かとんでもない単語が聞こえた気がする。
    気のせいであってほしかったが、そうはいかないだろう。






    「レーダーに表示されない、という意味で言ってるのか?」

    『うん。開発されていた新型核弾頭は、レールガンによって撃ち出される。よって、ジェットエンジンによって噴出する熱は出ないし、既存のレーダーには映らないってことなんだ。
    それでいて核弾頭自体はミサイルじゃないから戦略兵器削減条約やその他もろもろの条約の網の目を潜り抜けることが出来る。』

    「ふん、そんなもん詭弁にすぎねえだろ。」

    『有効な主張だよ・・・・・・・・・・・・ともかく、これが世間に明るみに出れば大変なことになる。』

    「どこから撃たれたかもわからない、見えない核弾頭か・・・・・・。おい、リヴァイ、聞いてるか!?」







    不機嫌そうな声でリヴァイを呼び出すエレン。
    これ程重大な情報をずっと黙っていたリヴァイに対して、エレンの怒りは頂点に達していた。







  7. 7 : : 2016/03/21(月) 16:52:27







    『ああ、聞こえてるぞ。』

    第三次戦略兵器削減条約(STARTⅢ)調印のこの時期にこんなものが明るみに出て大変だな?」

    『・・・・・・・・・・・・言い訳はしない。』







    皮肉の籠ったエレンの言いぐさに、リヴァイは肩を落として答えた。







    「ちっ、この繊細な時期にこんなものを作ってたことが世間に知られりゃ。」

    『勿論、交渉は決裂だね。合衆国の権威は失墜して大統領は落選。』

    「だからそうなる前に俺に止めて欲しかったって訳か・・・・・・・・・・・・反吐が出るな、アルミン。」






    ここでREXを止めなければ、いつどこで核が撃たれるか分からない――――――冷戦時代の恐怖が蘇ることは確実だ。
    最悪は、核戦争にまで発展する可能性すらある。







    「何とか核発射は食い止めなくちゃならねえな・・・・・・・・・・・・アルミン。PALキーのことについてなんだが。」

    『今調べてる・・・・・・・・・・・・もう少し待って!』






    アルミンはそう言って、今度はPALキーのことについて書かれたファイルを検索し始めた。
    その間にもエレンは足場を移動していき、遂に地下整備司令室の入り口わきにまで到着した。






  8. 8 : : 2016/03/21(月) 19:39:36








    息を殺し、司令室をそっと覗き込むエレン。





    そこには、二人の男が話し込んでいるのが見えた。
    一人は右腕を失った男で、もう一人は、髪の毛を七三に分けた男だ。








    (オセロットに、エルヴィンか・・・・・・。)



    オセロットは残された左手でパソコンに何か入力をしているようだったが、それを終えるとエルヴィンに話しかけた。








    「核発射暗号PALを入力。起爆コードを解除しました。」

    「ワシントンからの連絡はない・・・・・・・・・・・・俺たちが腰抜けでないことを教えてやらねばな。」







    どうやら、エルヴィンはもう発射準備を済ませて、核を発射する気でいたらしい。
    くそ、狂気の沙汰だ。







    「目標は、ロシアのチェルノートンで?」

    「いや、変更だ。目標は中国、ロプノール。お前もザックレー大佐もロシアが核の炎に包まれるのを見たくはあるまい。」

    「ですが、あそこには何もありません。」

    「いや、あそこには核実験場がある。いきなり都市に撃ちこんでしまっては全てが終わってしまう。核実験場ならば事実の隠蔽も不可能ではない。
    中国政府も黙ってはいまい。ワシントンも報復攻撃を避けようと事実のもみ消しに躍起になる。」

    「両政府の首脳のトップ会談ですね?」

    「その過程で新型核弾頭の存在も明らかになる。包括的核実験禁止条約(CTBT)の手前、アメリカの立場はどうなる? 大統領の立場は?
    そうなってしまえば今回のように冷静を装ってはいられまい。それに、新型核弾頭の存在が明らかになればインドや中国も我々に接触を測ってくるだろう。
    アメリカも自国の技術が外部に漏れるとなれば我々の要求をのまざるを得まい。大統領は必ず折れる。」







  9. 9 : : 2016/03/21(月) 19:52:47








    エルヴィンは笑みを浮かべ、オセロットも相槌を打つ。
    エルヴィンは政府に要求したものを再び確認し始めた。



    「ビックボスのDNA情報に、現金5000万ドル。それに・・・・・・・・・・・・“FOXDIE(フォックスダイ)”の血清も上乗せした。」








    __________FOXDIE?



    それが何なのか、エレンにはよく分からなかったが、今回の事件に深くかかわっていることだけは察することが出来た。
    それを裏付けるように、オセロットがエルヴィンの後を受けてこんなことを言い出した。









    「ベルトルトにサネス・・・・・・・・・・・・老人ほど早く発症するという情報は事実でしたね。ナイルは発症しませんでした――――――ガスマスクが感染を防いだせいかもしれません。」

    「アニも発症しなかった―――――普段飲んでいた精神安定剤のせいか? まあいい。」

    「開発されてからいきなりの実戦投入――――――やはり確実性に欠けますね。それほど奴らも切羽詰まっていたということでしょうか。」








    ライナーの言っていた死神とはこのことだったのか。
    FOXDIEとは、ウィルスか何かなのか?







  10. 10 : : 2016/03/21(月) 20:10:11









    「ところでオセロット・・・・・・・・・お前の元上官、元GRUのダリス・ザックレー大佐からの連絡は?」

    「大佐はメタルギアの性能に疑問を持っています。部隊との合流は核の発射を確認した後にしたいと。」

    「随分と用心深い男だな。」

    「なに、心配はいりません。迎撃不能のステルス核弾頭――――――大佐はのどから手が出るほど欲しいはずです。
    ロシアがかつての軍事的優位を取り戻すには、核先制権を振りかざしていくしかありません。
    このメタルギアさえあれば、かつての核戦争の恐怖を現代によみがえらせることができます。」

    「弱体化した通常戦力を核戦力で補う、か――――――――ザックレーは戦士ではなく政治屋だな。」

    「ですが、大佐からはハインドDを始め、多くのロシア製重火器を預かっています。」







    どうやら、エルヴィンはザックレー大佐とかいうロシア人と繋がっていたらしい。








    「奴の部隊は千人を超える――――――合流できればかなりの間持ちこたえるな。ナイルが死んでゲノム兵の洗脳が解除されつつある。士気の低下が心配だ。合流して兵士の士気を高める。」

    「ボス、脱出をするのでは?」

    「ビッグボスのDNA情報と金さえあればなんとでもなる。ゲノム兵の奇病にも対処する。それに、ここには核兵器が無尽蔵にある――――――撃墜はおろか、迎撃すら不可能な核弾頭がな。」

    「ですが、大佐との約束は!?」

    「ロシアの再建など興味はない。我々はどこにもいかない―――――――ここに腰を下ろす。」








    計画の変更に驚いたオセロットは、畳みかけるようにエルヴィンに尋ねた。







    「世界を敵に回すつもりですか!?」

    「いけないか!? 世界を敵にまわして!?」

    「では、ビッグボスの遺志を!?」






    その言葉を聞いたエルヴィンは再び笑みを浮かべ、それから、力強く宣言した。













    「そうだ、今日からここを―――――――・・・・・・・・・・・・アウターヘブンと呼ぶ!!」







  11. 11 : : 2016/03/22(火) 06:17:52








    「なっ!? アウター・・・・・・ヘブンだと!?」








    忘れもしない。
    あれは、1995年―――――――FOXHOUNDとしての初任務。






    オペレーション イントルード N313
    テキヨウサイ アウターヘブン ニ センニュウ
    サイシュウヘイキ メタルギア ヲ ハカイセヨ






    当時のFOXHOUNDの司令官、ビッグボスの命令で、俺は独立武装国家アウターヘブンに潜入した。
    目的はメタルギアの破壊。



    だが、メタルギアの破壊を成し遂げた俺の目の前に現れたのは、他ならぬ。







    「良くここまで来たな。私はFOXHOUNDの司令官、並びにアウターヘブン総司令官のビッグボスだ。
    エレン・イェーガー。貴様はやり過ぎた・・・・・・やり過ぎたのだ!」







    そう言ってビッグボスは俺に戦いを挑んできた。
    20世紀最高の戦士が、人類最悪の敵となった瞬間だった。



    結局俺はビッグボスを退け、アウターヘブンは崩壊した。







  12. 12 : : 2016/03/22(火) 06:18:46









    それから4年後の1999年。
    俺のトラウマになった、ザンジバーランド騒乱。







    「エレン・・・・・・私がお前の父親だ。」







    そこで俺はグレイ・フォックス、
    さらに、生き残っていたビッグボスと死闘を繰り広げた。


    そして遂に、俺は親殺しを・・・・・・・・・・・・成し遂げたのだ。








    国同士の争いの外に立つ、兵士たちの天国の外側(アウターヘブン)を創る―――――――それがビッグボスの目的だった。
    エルヴィンは、その脅威を再びよみがえらせようとしている。



    いつの間にか、俺は冷や汗をかいていた。
    あそこにいるのは、エルヴィンというより、最早・・・・・・・・・・・・ビッグボスの亡霊だ









    「それで、あの女はどうします・・・・・・ボス? 殺りますか?」

    「いや、生かしておけ・・・・・・・・・・・・リヴァイの姪だ。最後の手段に使える――――――エレンに対してもな。」








    最後に、二人はミカサの処遇について話していた。
    どうやら、ミカサはまだ生きているらしい。



    エレンがほっとしていると、通信機がなった―――――――アルミンからだ。






  13. 13 : : 2016/03/22(火) 06:39:25








    『エレン、やったよ! PALキーの仕組みが分かったんだ!』

    「!! さすがだな、アルミン! で、残りの二つの鍵はどこにあるんだ!?」

    『ふふ、君はもう既に三つの鍵をその手に持ってるよ。』

    「もったいぶらないで教えれくれよ。」






    相変わらず急かしてくるエレンにクスリとしつつ、アルミンはPALキーの説明を始めた。






    『いいかい、この鍵は形状記憶合金で出来ている。温度変化によって形が変わるんだ。つまり常温、低温、高温で異なる形の鍵になるというわけだよ。』

    「!! このPALキーに、そんな仕掛けが・・・・・・・・・・・・。」







    エレンは驚いて、PALキーを手に取った。
    この小さなカードキーのようなものに、こんな仕掛けを組み込むとは・・・・・・。








    『PALキーは起爆コードの入力にも、解除にも使える―――――――起爆コードが入力されていれば解除に使えるし、されていなければ入力にも使えるってわけ。』

    「成程な・・・・・・。」

    『そして、この鍵はあくまでも緊急用の鍵、三回使えば使用不能になる。司令室の中に三台のパソコンがあるだろう?』

    「ああ、ここから見える。」

    『鍵はそこに差し込むだけでOKだ。』

    「そうすれば・・・・・・・・・・・・起爆コードを解除できるって訳だな。よし!」








    通信を切ったエレンはPALキーを握りしめ、司令室へと侵入の機会を窺う。
    と、その時だった。







  14. 14 : : 2016/03/22(火) 15:00:49








    「誰だッ!!」



    オセロットの鋭い声が響く。
    と同時に銃声がなって、エレンの手元目がけて跳弾が飛んできた。








    「!! し、しまっ!?」



    オセロットの銃弾にPALキーを弾き飛ばされ、鍵が足場からはるか下へと落ちていく。
    それから響いてくるエルヴィンの高笑い。







    「はははははははっ!! いいだろう兄弟、お前の死にざまを見届けてやる! ここからなぁッ!!」



    そう言った途端に司令室のドアがバタンと閉まり、警報が鳴り響く。
    すると、何処に身を隠していたのか、ゲノム兵が銃を放ちながら追いかけてきた。







    「くそっ!」



    不覚だ・・・・・・・・・・・・オセロットに気付かれた挙句、PALキーを弾き飛ばされてしまうなんて。






  15. 15 : : 2016/03/22(火) 17:03:52






    「いたぞ!」
    「撃て撃て撃てッ!!」





    ふと振り返るとFAMASを持った兵士たちが銃を撃ちながらこちらに近づいてくる。
    考えてる暇なんかないってか・・・・・・・・・・・・上等だ。







    もう考えることを止め、エレンはFAMASを持って走り出した。



    とにかく、核の発射だけは絶対に食い止めなくてはならない。
    その為にも、落としてしまったPALキーを回収しなければ。








    敵の追撃から逃れ、隙を見て銃撃してゲノム兵を倒していくエレン。
    やがて、敵の追跡を振り切り、エレンは足場を降りてメタルギアの足元にまで降りてきた。








    「!! あったぞ・・・・・・・・・・・・PALキーだ。」



    何とかPALキーを再び回収することが出来、ホッとするエレン。
    と、そこへ、何者からか通信が入ってきた。







  16. 16 : : 2016/03/22(火) 17:04:27








    『エレン・・・・・・・・・・・・聞こえる?』

    「!! ペトラか!?」






    通信をかけてきたのは、仮眠をとっているはずのペトラだった。







    『今、リヴァイの目を盗んで別の無線機から話をしているの、エレン。』

    「聞きたいことがある・・・・・・・・・・・・マスターの話はホントなのか!?」

    『ええ・・・・・・でも、全てが嘘というわけではないわ。』

    「お前・・・・・・・・・・・・ホントはいったい何者なんだ?」






    エレンの声は怒りに震え、努めて冷静さを保っている風だった。
    対してペトラは、胸のうちの複雑な思いを告げるかのように、暗い口調で答えた。






    『私にも分からない。今の名前と戸籍(ペトラ・ハンター)はお金で買ったもの。私が遺伝子研究に固執した理由は本当よ。』

    「自分を知りたい・・・・・・・・・・・・お前はそう言ってたな?」

    『ええ、私は自分が分からない・・・・・・・・・・・・年齢も、人種さえも・・・・・・・・・・・・。』

    「ペトラ・・・・・・・・・・・・お前・・・・・・。」






    それからペトラは暗い口調のまま、誰にも語ったことの無い本当の素性を話し始めた。






    『私はローデシアで拾われた・・・・・・・・・・・・戦争孤児だったの―――――80年代のことよ。』

    「ローデシア? ローデシア独立戦争の頃か・・・・・・・・・・・・ペトラ、どうして自分の過去にこだわるんだ? 今の自分を理解できりゃそれでいいじゃないか?」

    『今の私を理解? 誰も私を理解してくれなかったッ!』

    「!!」

    『・・・・・・私はずっと自分を探してた。兄とあの人に逢うまではね。』

    「兄?」








    『そうよ・・・・・・・・・・・・フランク・イェーガー。』







  17. 17 : : 2016/03/22(火) 17:06:34








    告げられた事実の重さに、エレンは一瞬めまいがしたような気がした。







    「な!? そんな・・・・・・。」

    『兄も少年兵だった・・・・・・・・・・・・ザンベジ川で餓死寸前の私を拾って、食べ物を割いてくれた。そう、あなたが廃人にしたフランク・イェーガーは私の兄。』

    「あり得ない・・・・・・・・・・・・グレイ・フォックスが・・・・・・。」

    『私たちはあの地獄を生き延びた。兄が守ってくれた。兄は私のすべてだった。私という存在を証明する・・・・・・・・・・・・唯一の、よりどころだった。』







    ペトラは声を震わせながら、胸に秘めてきた想いを打ち明けた。
    無線越しにも、ペトラが嗚咽を上げていることが、伝わってきた。







    「それで、フォックスがお前を守ってアメリカに・・・・・・。」

    『いいえ、違うわ・・・・・・。』

    「!? どういうことだ?」

    『私と兄は、モザンビークであの人に助けられた。』

    「あの人・・・・・・・・・・・・まさか!?」









    『そう、ビッグボスよ。』







  18. 18 : : 2016/03/22(火) 17:07:46









    『ビッグボスは私たちをこの自由の国へと導いてくれた。でも兄はあの人とまた戦場へと戻っていったわ。そして戻って来た時には・・・・・・。』

    「・・・・・・・・・・・・。」

    『私は復讐を誓った――――――――兄を廃人とし、あの人を殺したあなたに。FOXHOUNDに入ったのもそのため。いずれあなたに逢える・・・・・・・・・・・・そう思ったから。』

    「・・・・・・・・・・・・思いは、果たせたな。」

    『ええ、二年も待ったわ。』

    「俺を殺す――――――――ただそれだけのために?」

    『ずっと、この二年間ずっとあなたを待ってきた・・・・・・・・・・・・まるで恋い焦がれるようにね。』







    エレンへの憎悪を口にするペトラ。
    その口調からは、しかし、湧き上がるような憎悪を感じ取れなかった。


    不思議といえば不思議だが、エレンはむしろ、ペトラの口調からは、沈んでいく悲しみのほうを強く感じ取っていた。







    「今も、憎いか?」

    『・・・・・・・・・・・・少し違う。あなたのこと、誤解していたところもある。』

    「エルヴィンたちとは?」

    『彼等も兄の仇よ。』

    「まさか、グレイ・フォックスを実験台にした君の前任者を殺したのも?」

    『ハンジ博士のこと? いいえ、彼を殺したのは兄よ。私は事件を隠ぺいし、兄をかくまった・・・・・・。』







    今のペトラには、自らの復讐の念よりも、因縁に囚われる兄を見ていられない悲しみのほうが強くなっていた。
    ややあって、エレンは静かに尋ねた。






    「・・・・・・・・・・・・サイボーグ忍者、グレイ・フォックスは、俺を殺すためだけに?」

    『・・・・・・・・・・・・違う、と思う。兄はあなたと戦うためだけに・・・・・・。初めは分からなかったけど、今なら分かる、気がする。
    あなたとの戦い――――――兄はそれだけのために生きているのよ。きっとね・・・・・・・・・・・・。』






  19. 19 : : 2016/03/22(火) 19:06:21
    おおおおおお
    期待です!
    頑張ってください!
  20. 20 : : 2016/03/23(水) 08:51:16
    >>19
    頑張ります(∩´∀`)∩
  21. 21 : : 2016/03/23(水) 08:52:04








    「・・・・・・・・・・・・もう一つ、聞きたいことがある。」

    『・・・・・・・・・・・・FOXDIEのことね?』

    「やっぱり・・・・・・・・・・・・お前だったのか。」







    エレンは出発前に、ペトラからナノマシンや不凍糖ペプチドの注射を受けていた。
    ペトラはそこに、FOXDIE―――――――この恐るべき殺人ウィルスを混入させていたのである。


    暫く沈黙した後に、ペトラはゆっくりと、この殺人ウィルスについて話し始めた。








    『・・・・・・・・・・・・FOXDIEは特定人物だけを死に至らしめる殺人ウィルスよ。まずFOXDIEは体内のマクロファージに感染する。
    FOXDIEにはタンパク質工学で生み出された認識酵素、特定の遺伝子配列に反応するようプログラムされた酵素が導入されているの。』

    「成程、その酵素で暗殺ターゲットのDNAを認識してるって訳か。」

    『認識酵素が反応して活性を示すとFOXDIEはマクロファージの組織を使って、TNFイプシロン―――――――サイトカインの一種で細胞死を誘発するペプチドを作り始める。
    TNFイプシロンは血流に乗って心臓に達し、心筋細胞のTNFレセプターに結合する。』

    「それで、心臓発作を起こすのか・・・・・・。」

    『刺激を受けた心筋細胞は急激なアポトーシスを起こすわ。そして、その人物は・・・・・・・・・・・・死ぬ。』

    「アポトーシス・・・・・・・・・・・・細胞が自殺するための遺伝プログラムか・・・・・・。」








    この恐るべきFOXDIEは、ペトラがその遺伝子工学の技術を応用して創りだした、暗殺用の殺人ウィルス。
    このウィルスによって、オルオの血液を体内に入れていたベルトルト、そして、ジェル・サネスは闇へと葬り去られたのだった。






  22. 22 : : 2016/03/23(水) 09:21:07








    「・・・・・・・・・・・・ペトラ。」

    『・・・・・・なに?』

    「・・・・・・・・・・・・俺には後、どれくらい時間が遺されてるんだ? 当然俺も殺すようプログラムしたんだろ?」

    『・・・・・・・・・・・・。』

    「俺は・・・・・・・・・・・・お前に殺されても仕方のない男だ。だがな、俺にはまだやることがあるんだ。」







    当然の流れだった。



    ペトラがエレンを恨んでいた以上、暗殺のターゲットにエレンが入っているのも道理。
    ペトラの話は、エレンにとって死刑宣告にも等しい話のはずである。







    それを聞いたエレンは、しかし、死の恐怖に取り乱すどころか、残された時間で何ができるかを考えていた。
    だが、そんなエレンに、さらなる残酷な現実が付きつけられる。







    『エレン・・・・・・聞いて、FOXDIEの使用を決定したのは私じゃない。』

    「!? どういうことだよ!?」

    『私があなたにFOXDIEを注入したのは、作戦の一部なの。
    ・・・・・・・・・・・・私、自分に素直じゃない。』

    「ペトラ?」

    『私があなたに本当に伝えたかったのは・・・・・・・・・・・・きゃっ! 放してッ! いやッ!!』

    「!! 何があった、ペトラッ!!」







    少しの間、途切れる無線。
    ややあって、通信に出たのは。







    『エレン・・・・・・これ以上ペトラと接触するのは許されない。』

    「!? リヴァイ大佐、これはどういうことなんだ!?」

    『ペトラは作戦から外された。』

    「ペトラをどうしたんだ!? FOXDIEが作戦の一部とはどういうことだ!? ペトラを出せッ!!」

    『駄目だ。ペトラは監禁した。』







    漸く分かった作戦の一端、徹底的に自分を手ごまとして利用するリヴァイに対して、遂にエレンはブチ切れた。








    「テメエ・・・・・・・・・・・・俺を裏切ったなッ!?」

    『今はメタルギアを食い止めることだけを考えろ! いいな、エレン?』









    リヴァイは厳しくエレンに命じ、一方的に通信を切った。







  23. 23 : : 2016/03/23(水) 09:45:11








    「くそ、このうらぎりもんがあぁあぁぁッ!!」



    やり場のない怒りに駆られ、敵地であるにもかかわらず、エレンは大声で叫んだ。
    フーッ、フーッ、と肩で息をし、拳を強く握りしめる。








    『・・・・・・・・・・・・エレン。』



    それでも、エレンは孤独ではなかった。
    無線のやり取りを聞いていたアルミンが、心配そうに声をかける。








    「・・・・・・・・・・・・大丈夫だ、PALコードを、解除する。」

    『うん。』

    「・・・・・・・・・・・・残された時間は少ないからな。」








    一度は知識だけでいいと言ったアルミンに、エレンは心の底から感謝していた。
    こんな地獄の鬼さえ涙しそうな状況の中でも、俺を助けてくれる・・・・・・。



    それに、俺はミカサを助けなくてはならない。
    誰かのためではなく、自分自身のために。









    エレンは梯子に手をかけ、再び司令室へと向かい始めた。







  24. 24 : : 2016/03/23(水) 10:41:21








    漸く司令室へと到達し、再び中を覗き込むエレン。
    部屋の扉は開けられており、中はもぬけの殻となっていた。


    エルヴィンは既に発射準備を終えている・・・・・・・・・・・・急いで起爆コードを解除しなければ。








    監視カメラに見つからないようにそっと中に入り込む。



    正面がガラス張りになっている司令室の外には、メタルギアREXがまるでこちらを睨みつけるかのごとくに鎮座している。
    そして、ガラス張りのすぐ下には、パソコンが三台、置いてあった。







    「よし、まずは常温の鍵だ。」



    エレンは懐からRALキーを取り出し、一番左のパソコンに差し込んだ。
    パソコンから電子音が聞こえてくる。








    “第一の、PALコードが、入力されました。現在、第二のPALコード、入力待機中”








    「よし、次は鍵を冷やす・・・・・・んだが、どうすれば・・・・・・・・・・・・ん?」



    ふとエレンが部屋を見渡すと、隅にある配管に目が留まった。
    配管にはそれぞれ“蒸気注意”“液体窒素注意”という文字が書き込まれている。








    「成程、サネス社長はどうやらこの部屋にギミックを仕込んだらしいな。」



    エレンは少しにやけて、液体窒素注意と書かれた配管にPALキーを押し当てる。
    暫く押し当てていると、鍵の色が黄色から青色に変わった。






  25. 25 : : 2016/03/23(水) 10:42:13







    「よし!」



    すぐにエレンは中央のパソコンにカードキーを差し込む。








    “第二のPALコードが、入力されました。現在、第三のPALコード、入力待機中”








    よし、ここまでは順調だ。



    同じようにエレンは、今度は蒸気注意と書かれた配管に鍵を押し当てる。
    青色の鍵が今度は赤色に変わり、右のパソコンへとPALキーを差し込んだ。








    “第三のPALコードが、入力されました。PALコードの入力を確認”








    「ふぅ、終わった・・・・・・。」



    漸くエレンは起爆コードを解除し終え、深くため息をついて肩を落とした。







    これで奴らは、最早核を撃てなくなった。
    後は、エルヴィンの野郎をぶっ飛ばしてミカサを救出するだけだ。























    “起爆コードが入力されました。発射準備、完了しました”







  26. 26 : : 2016/03/23(水) 10:43:19









    エレンは耳を疑った。



    「な、何でだ!? 俺は解除したはずだぞ!?」








    プルルルッ! プルルルッ!


    すると、タイミングを見計らったかのように、無線機が鳴った。
    通信をかけてきた相手は。













    『ありがとう、エレン。これで起爆コードの入力が完了した。もう誰もメタルギアを止められない。』

    「マスター!? いったいどういう!?」







    エルドだった。
    うすら笑いを浮かべながら、エルドは話を続けた。








    『わざわざPALキーを見つけてくれた上、起爆コードの入力までしてくれて、本当に恩に着る。形状記憶合金だとはお粗末な話しだったが・・・・・・。』

    「一体何がどうなってるんだよ!?」

    『オルオ局長の起爆コードは入手できなかったんだよ。ナイルの能力をもってしても読む事はできなかった。オセロットは起爆コードを聞き出す前に殺してしまった。
    つまり、俺達は核を撃つことはできなかった。威嚇発射さえもな・・・・・・・・・・・・まさに八方塞がりだった。核が撃てなければ我々の要求は叶えられない。』

    「何を言ってるんだ!?」

    『起爆コードを入手できなくなった以上、別の方法を探すしかない。そこでエレン、貴様に賭けてみることにした。』

    「なっ!?」

    『ベルトルト・フーバーをオルオ局長に変装させたのもその一つだ。貴様から情報を得ようとしたのだが・・・・・・・・・・・・FOXDIEとはな。』







    あまりにも唐突な出来事に、頭の整理が追い付かない。
    だが、これだけは分かった。






  27. 27 : : 2016/03/23(水) 10:44:46









    「全て最初から仕組まれてたってことか・・・・・・俺に起爆コードを入力させるために!」

    『ん? もしやここまで来れたのは自分一人の才能だとでも思っているのか?』

    「ぐ・・・・・・・・・・・・マスター、お前はスパイだったのか!?」

    『とにかくこれで核発射準備は整った。新型核弾頭を撃ち込んで見せれば、政府(ホワイトハウス)の連中もFOXDIEの血清を渡さざるを得まい。奴らの切り札も無効になる。』

    「!? どういうことだ!?」

    『お前を使った国防総省(ペンタゴン)の目論みは既に達成されているんだよ――――――あの拷問部屋でな。フフフ、惨めだな、エレン・・・・・・・・・・・・知らないのはお前だけだ。』










    すると突然、リヴァイが通信に割って入ってきた。








    『エレン! そいつはマスターエルドじゃないッ!!』

    『リヴァイ・・・・・・今更気付いても遅い。』

    「!? どういうことなんだ・・・・・・大佐!?」

    『マスターエルドの遺体が自宅で発見された。死後三日経ってる・・・・・・マスターからの無線がオフにされていて分からなかった。
    ミーナによると、そいつの無線の発信源は、基地の中からだッ!』

    「ぐっ、お前は・・・・・・・・・・・・いったい誰だ!?」















    『俺だよ・・・・・・・・・・・・兄弟。』








  28. 28 : : 2016/03/23(水) 10:55:11









    男はそう言うと、精巧に作られた変装マスクを剥ぎ取る。
    中から現れたのは、金髪を七三に分けた、あの男。









    「まさか・・・・・・・・・・・・エルヴィンか!?」

    『貴様の役割は済んだ。あの世へ行けッ!!』







    エルヴィンはそう叫ぶと、ブチッと乱暴に通信を切った。
    その瞬間、司令室の扉がバタンと閉まった。








    「!? い、息が・・・・・・・・・・・・。」



    閉じられた司令室の中には、すぐにガスが充満した。
    慌ててガスマスクを装着し、なんとかその場を凌ぐ。








    __________迂闊だった。



    俺はエルヴィンをマスターと信じ込み、スパイ活動を許し、挙句に起爆コードまで入力してしまった。









    息が次第に苦しくなる中、俺はアルミンに連絡を取った。







  29. 29 : : 2016/03/23(水) 15:46:30
    アルミン「エレン!さくせんいのちだいじにだ!」



    頑張ってください(^▽^)/
  30. 30 : : 2016/03/23(水) 15:48:24
    >>30
    一生懸命頑張ります(^^ゞ
  31. 31 : : 2016/03/23(水) 16:22:43
    期待!
  32. 32 : : 2016/03/23(水) 16:31:14
    >>31
    ありがとうございます!
  33. 33 : : 2016/03/24(木) 08:51:35








    「アルミン・・・・・・すまねぇ・・・・・・。」

    『聞こえてるよッ! 今すぐ司令室の扉を開けるから少し待ってくれッ!!』







    アルミンは手短に応答すると、すぐにキーボードをものすごいスピードで撃ち込み始めた。
    一流のハッカー、アルミン・アルレルトの腕の見せ所だ。


    エレンはひたすら、ガスマスクの中で念じるように待ち続けた。








    そして・・・・・・・・・・・・







    ガスの噴出が止まり、司令室の扉が開いた。








    「悪いな、アルミンッ!!」



    エレンは通信機に向かって叫び、司令室を飛び出した。
    飛び出した先で、エレンの視界の中に、あの男が入ってきた。










    「ふはははははは、はっはははははッ!!」

    「!! 待てッ!!」






    司令室の外で様子を眺めていたエルヴィンは、嘲るような笑い声を立てながら、メタルギアのコクピットへと向けて走り出した。







  34. 34 : : 2016/03/24(木) 08:55:49









    ライナーと同じく、上半身裸の格好になって、エルヴィンはコクピットの脇まで走っていくとこちらを振り返った。
    悪意に満ちた笑顔を見せ、嘲るような口調で。







    「どうだ? 俺の変装もなかなかいかすだろうッ!?」

    「エルヴィン! どうしてマスターに化けやがったッ!?」







    銃を構え、怒りに駆られて怒鳴るエレンに対して、エルヴィンは傲岸不遜な態度を崩さない。








    「無論、貴様を上手く操るためだ。実際お前はよく働いてくれた。」

    「ッ! クソッ!」







    痛いところを突かれ、舌打ちをするように毒づくエレン。
    そんなエレンにますます得意になって、エルヴィンは話を続けた。







    国防総省(ペンタゴン)の連中もそう思ってるだろうよ。与えられた命令を疑いもしないとはな。」

    「なに!?」

    「核発射の阻止、人質の救出、全て偽りの任務だ。」

    「偽り!? どういうことだ!?」

    国防総省(ペンタゴン)としては、貴様が俺たちと接触するだけでよかったんだ。サネス社長とベルトルトはそれで始末された。」

    「まさか・・・・・・。」

    「そうとも・・・・・・・・・・・・俺たちだけを暗殺し、莫大な予算を投じたゲノム兵の遺体と、メタルギアを無傷で回収するため。貴様は初めからFOXDIEの運び屋(ベクター)として国防総省(ペンタゴン)に送り込まれていたんだ!」






  35. 35 : : 2016/03/24(木) 08:56:45









    吐き捨てるように言うエルヴィンに対し、エレンは信じられないと言った口調で答える。









    「FOXDIE・・・・・・・・・・・・じゃあ、ペトラは国防総省(ペンタゴン)と組んでいたのか!?」

    「連中はそのつもりでいたようだが、あの女・・・・・・・・・・・・ただ利用されるような甘い女ではなかった。」

    「なっ!?」

    国防総省(ペンタゴン)に潜り込ませたスパイが突き止めた。あの女、作戦の直前にFOXDIEのプログラムを改竄していたらしい。だが、その理由も目的も不明だ。」

    「まさか・・・・・・・・・・・・ペトラを逮捕させたのはその目的を掴むため!?」

    「その通りだ。下らない恨みだとは思わなかったがな。しかし、ペトラがFOXDIEにどのような改変を加えたか、今もわからずじまいだ。
    まあそれもいい・・・・・・・・・・・・俺は既に政府(ホワイトハウス)への要求にFOXDIEの血清を上乗せしてある。」

    「血清があるのか!?」

    「あるはずだ、あの女にしかわからんがな・・・・・・まあ、でもそれももう必要ないかもしれんな。」







    エレンを露骨に見下すエルヴィン。


    その口調には、どす黒い憎悪が籠っていた。
    その目の中には、黒い憎悪の炎が燃えているかのようだった。







  36. 36 : : 2016/03/24(木) 14:17:06







    「必要ない? どういうことだ、エルヴィン?」

    「貴様は潜入に成功、奴らが処分したかった俺たちはウィルスに感染した―――――ベルトルトやオルオの死因は確かにウィルスだ。
    しかし、オセロットも俺も・・・・・・・・・・・・そして運び屋(ベクター)である貴様にもその兆候が現れていない。」

    「FOXDIEの標的プログラムがバグったとでも言いたいのか!?」

    「さあな、だが、貴様に効果がない以上、俺も安全だ。俺とお前の遺伝コードは同じなのだからな!」








    その瞬間、エレンの頭の中でモヤモヤとしていた疑惑が確信へと変わった。








    「やっぱり、俺とお前は・・・・・・。」

    「そうとも、だが、ただの双子ではない。」

    「!?」

    「遺伝子に呪いを込められた双子―――――――恐るべき子供達(ル・アンファン・テリブル)

    「ル・アンファン・・・・・・テリブル?」

    「貴様はいい! 親父の優性遺伝子を全て貰った! 俺は劣性遺伝子ばかりを受け継いだ。全ては貴様という優性種を創りだすための仕掛けだ!
    俺という存在は、お前の創造のためだけにあったッ!」

    「俺が・・・・・・・・・・・・優性!?」

    「そうだ! 俺はその絞りカスだッ!! 貴様にわかるか!? 生まれ落ちてきた時からクズとみなされ続けてきた惨めさがなッ!!」







    燃え盛る炎の如くにエルヴィンは吼えた。
    その憎悪の炎が核の炎となって、世界を焼き尽くそうとしている。


    エルヴィンの激しい憎しみは、まさに世界を滅ぼさんとするばかりの勢いであった。






  37. 37 : : 2016/03/24(木) 14:18:36








    「だが・・・・・・・・・・・・親父は俺を選んだ。」

    「だからビッグボスにこだわってたのか・・・・・・・・・・・・歪んだ愛情だな?」

    「はっ、愛情だと!? 憎しみだよ・・・・・・劣っていると知って俺を選んだ事への復讐だッ! これも貴様には分かるまい――――――その手で親父を殺すことが出来た貴様にはなッ!!」

    「!!」

    「俺は復讐の機会すら貴様に奪われた。だから俺は、親父の遺志を実現してみせるッ! 親父を超え、親父を殺すッ!!」









    エルヴィン・・・・・・・・・・・・お前も、ペトラと同じだな。


    俺はそう呟いた。
    生まれた時からクズとみなされ、居場所を求めて、世の中を憎んだ男。








    「俺は貴様とは違うッ! 自分の遺伝子に刻まれた運命を誇りに思っているッ!!」



    エルヴィン・イェーガーは溢れんばかりの憎悪を吐き出すように叫び、一瞬の隙をついてメタルギアに乗り込んだ。
    叫び声のような轟音が響き渡り、コクピットのハッチが閉まる。











    それから、エルヴィンは再び、獣のように吼えた。



    「エレンッ! この歴史的な兵器を拝みながら死んでいけ! 兄弟へのせめてもの気遣いだ。今から貴様に見せてやる―――――21世紀を導く、悪魔の兵器をなッ!!」






  38. 38 : : 2016/03/25(金) 09:33:58









    遂に起動してしまった・・・・・・・・・・・・。









    迎撃も撃墜も不可能なステルス核弾頭を放つ、悪魔の兵器。
    17メートル級の鋼鉄の巨人。



    メタルギアREXを乗せた巨大なリフトは上昇を始め、周りにかかっていた足場が崩れていく。
    そして、巨大な運搬口へと上昇した核搭載二足歩行戦車は、不気味な軋み音をまるで唸り声のように上げた。











    一緒にリフトに乗っていたエレンは、その鋼鉄の巨人を見上げ、アルミンに通信を入れた。









    「悪い、アルミン・・・・・・・・・・・・しくじった。」

    『どういうこと!?』

    「メタルギアREXの起動を、俺は・・・・・・・・・・・・止められなかったっ!」







    エレンの口調には、悔しさが滲んでいた。






    __________くそ、気付けたはずだった。




    オルオとサネスの怪死、
    見張りの少ない格納庫、



    今思えば不自然な点はたくさんあったのに!








    思わず口走るエレンに対し、アルミンは厳しい口調で諭した。



    『反省は後だ、エレン! 後でこうだったというのは簡単だよ! でも、今は目の前の現実に対処するしかないッ!』







  39. 39 : : 2016/03/25(金) 09:34:33











    広い広い地下格納庫の運搬口の中で、エレンは遂にメタルギアと対峙した。










    「死ねえぇえぇぇッ!!」



    エルヴィンの叫び声と共に、機銃が掃射される。
    巨人の咆哮のような機銃の銃声と、ドシン、ドシンと床を踏みしめる巨大な足音から逃れようと、エレンは全力疾走で運搬口の中を走り回った。








    とにかく、機銃の届かないところへと逃げなければ・・・・・・・・・・・・。







    運搬口の中には、身を隠せそうなコンテナがいくつか積まれていた。
    一旦敵から身を隠し、体勢を立て直す。


    そう考えていた俺は、甘かったということを思い知らされた。







    俺が機銃の射程外へと逃れると、膝のハッチが開き、中からミサイルが飛び出してきた。
    発射されたミサイルはきれいな弧を描き、エレンめがけて飛んできた。





    「!! くそッ!!」



    咄嗟にアサルト・ライフルを撃ちまくって何とかミサイルを撃墜するエレン。
    だが、その間にもREXは、天井にまで響きそうな足音を立てて近づいてくる。








    接近すれば機銃掃射、
    逃げればミサイルで追尾、


    全く、隙のない兵器だ・・・・・・・・・・・・。






    こんなものをよくアルミンは開発出来たなと感心半分、不満半分に思っていると、当の本人から通信が入ってきた。







  40. 40 : : 2016/03/25(金) 10:07:50









    『エレンッ!』

    「大丈夫だ! ったく、お前よくもこんなもの創ったなッ!?」

    『誉め言葉として受け取っておくよ!?』

    「大した化けもんだ・・・・・・・・・・・・俺はどうすればいい!!」







    機銃やミサイルの嵐から逃げ回りながら、アルミンと交信するエレン。







    『いいかい、エレン!? REXの装甲は相当に堅い! それこそ核でも生き残れるくらいにね!』

    「はぁ!? 何言ってんだお前!? それじゃ勝ち目ねえじゃねえかよ!?」

    『でも、内側からなら話は別だッ!』

    「内側から!? どうやって!?」







    すると、アルミンは少しにやけてREXの性能を語りだした。







    『REXのコクピットは密閉式だ。つまり、外の情報は全て計器を通して行われる。』

    「つまりどうすりゃいいんだよッ!?」

    『REXの左肩についている丸い計器―――――あのレドームに計器が詰まってるんだ。あれを破壊すれば・・・・・・』

    「あの野郎はコクピットを開けざるを得なくなるってことか!?」

    『その通りさッ!!』






    アルミンは得意げに語っているが、それって明らかな欠陥だよな。
    不思議に思ったエレンは尋ねた。






    「よくそんな欠陥を放置してたな、アルミン!?」

    『欠陥じゃない・・・・・・・・・・・・弱みだよ。』

    「弱み!?」

    『人もロボットも完璧すぎちゃ可愛げがないでしょ?』

    「今は感謝したいぐらいだな!」





    どうやらアルミンはわざと欠陥を残していたらしい。
    その気になれば完全な形で隙のない機体も作れたってところが恐ろしいが・・・・・・・・・・・・とにかく今は破壊に集中しなければ。







    『レドームをまず破壊するんだ、エレンッ! スティンガーミサイルを使うんだッ!!』






  41. 41 : : 2016/03/25(金) 11:43:45








    「よしっ!!」



    自らを鼓舞するようにエレンは声を発すると、真っ直ぐREXの前へと突っ込んでいく。









    「!! 突っ込んできただとッ!? 血迷ったか!?」



    驚きながらも、エルヴィンはエレンめがけて二連装の機銃を放つ。
    エレンは構わず突っ込み、機銃の丁度間を抜けて真っ直ぐに進んできた。









    「ぐっ! これでも喰らえッ!!」



    機銃を躱され、接近を許したREX。
    だが、接近された時のために、REXはもう一つ、股のところに兵器を装備していた。









    次の瞬間、甲高い音と共に、青色のレーザーが放たれた。










    「地獄へ落ちろ、エレェンッ!!」



    レーザーは真っ直ぐ、エレンに向かって飛んでいく。










    地面を焼き切りながら真っ直ぐ飛んでいくレーザー。
    猶もまっすぐ進むのを止めないエレン。


    と、急にエレンは足に力を入れ、左斜め後ろへと飛びのいた。








    「なにぃ!?」



    レーザーはすれすれのところでエレンに当たらずに脇を通っていく。
    レーザーを躱され、REXの動きに一瞬、隙が出来た。







    その隙を、エレンは逃さない。
    エレンはレドーム目がけ、スティンガーミサイルを構え、そして・・・・・・・・・・・・








    「喰らいやがれッ!!」



    叫び声と共に、エレンはミサイルのトリガーを力いっぱい引いた。






  42. 42 : : 2016/03/25(金) 11:45:45








    放たれたミサイルがレドームに直撃。
    大きな爆音が上がった。



    ミサイルの直撃を喰らったレドームから黒煙が上がり、漏電して電流が迸る。
    この計器さえ壊してしまえば・・・・・・・・・・・・








    「甘いぞッ! エレンッ!!」



    と思っていた束の間に、REXはその巨大な足底を上げた。
    レドームは想像以上に堅く、ミサイルの直撃だけでは壊すまでには至らなかったのだ。







    「し、しま――――・・・・・・・・・・・・「死ねえぇえぇぇッ!!」





    レドームを壊したと思いこみ、十分な距離を取っていなかったことが仇になった。
    その巨大な足底が、唸り声を上げてエレンへと振り下ろされる。







    ダメだ、俺は・・・・・・・・・・・・踏みつぶされるッ!!






    回避しようにも、もう間に合わない。
    その最後の瞬間、REXの動きが、エレンの目にはまるでスローモーションのように見えていた。


    振り下ろされる、鋼鉄の巨人の一撃――――・・・・・・・・・・・・




















    その一撃は、しかし、エレンを押し潰さなかった。








  43. 43 : : 2016/03/25(金) 11:46:38









    __________一体、何が起こった!?






    気が付くと、エレンは後ろへと押し飛ばされ、尻餅をついていた。
    見上げると、そこには・・・・・・・・・・・・








    右腕を銃に換装し、両腕でREXの巨大な足底を支える男――――――――サイボーグ忍者の姿があった。







    「見ていられないな! エレン!!」

    「フォックス!? お前・・・・・・・・・・・・。」

    「ふん、懐かしい名だ・・・・・・・・・・・・ディープ・スロートよりは聞こえがいい!」







    やっぱりお前だったのかとエレンが叫ぶと、サイボーグ忍者―――――――グレイ・フォックスは渾身の力を込めてメタルギアの足を押し返した。
    バランスを崩したREXが後ろへ後退すると、フォックスは銃をレドームへと向けた。






    バシュウッ!
    バシュバシュウッ!!



    目も眩むばかりの閃光がフォックスの右腕から発射され、放たれたレーザーがレドームに直撃。
    一瞬、REXの視界が閉ざされた。








    「ぐう、小癪な・・・・・・・・・・・・この死にぞこないがぁッ!!」







  44. 44 : : 2016/03/25(金) 13:27:39
    PALコードでパルコアラを連想した俺氏勝ち組( ・´ー・`)

    フレーっ
    フレーっ
    M・G・S・氏!
  45. 45 : : 2016/03/25(金) 15:29:49
    >>44
    頑張りますw
  46. 46 : : 2016/03/25(金) 15:30:17








    エレンとフォックスを見失い、エルヴィンは怒り心頭になって機銃をさんざんに撃ちまくる。
    その間、エレンとフォックスはコンテナの影に隠れていた。






    「フォックス! なんで俺にそこまでして拘るんだ!?」

    「俺は死の囚人だ―――――――お前だけが、俺を解放してくれる。」

    「もう、こんなことには関わらないでくれ・・・・・・。ペトラは、お前のために復讐を誓ったんだぞ!?」






    コンテナの影で、エレンはフォックスの両肩をガシッと掴んだ。
    かつて憧れた先輩隊員、そして今はこんな姿になってしまったフォックスを、何としても止めたかったのだ。


    すると、彼の鉄のマスクが開き、中からは、まだ生身の彼の顔が覗き出た。
    残された数少ない、フォックスの生身の部分。







    「ペトラ・・・・・・。」



    ぼそりと呟くその顔は、悲しみと後悔とに曇っていた。







  47. 47 : : 2016/03/25(金) 15:31:02








    「ダメだ、俺にはできない。」

    「何でだ!? ペトラを止められるのは、お前だけなんだぞ!?」

    「ペトラの両親を殺したのは・・・・・・・・・・・・俺なんだ。」












    コンテナの向こうでは、エルヴィンが俺たちを探し回って機銃を掃射している。
    その轟音さえ、暫時は耳に入ってこなかった。


    フォックスは俯きがちに話を続ける。







    「まだ若かった俺は、あいつまでは殺せなかった・・・・・・。


    あいつを拾ったのは、後ろめたさに耐えきれなかったから。
    あいつの世話をしたのは、痩せこけた両親を満足させるため。


    それでも・・・・・・・・・・・・ペトラは俺を兄と慕ってくれた。」








    「フォックス・・・・・・・・・・・・。」

    「傍から見れば、俺たちは仲の良い兄妹に見えたかもしれん。だが、あいつに瞳を覗かれるたび、俺はいつも怯えていた。」








    その時のフォックスの苦痛に満ちた顔を、俺は忘れることが出来ない。
    やがて、決意を固めたように、フォックスは俺に告げた。







    「エレン、頼みがある。あいつに伝えてくれ・・・・・・・・・・・・本当の仇はこの俺だとッ!」

    「ふざけんなよッ!!」






    俺がそう言い終わらないうちに、フォックスはコンテナの影から飛び出した。
    フォックスの影を捉えたエルヴィンが怒号を上げて機銃を掃射する中、フォックスは叫びながら突っ込んでいった。








    「ディープ・スロートからの最後のプレゼントだッ! 俺が奴の動きを止めるッ!!」






  48. 48 : : 2016/03/28(月) 02:31:38








    弾丸の中を、フォックスは影のように駆け抜けていく。


    一陣の風のように、
    その魂を、燃やし尽くすように。







    飛びあがり、レドームにレーザー銃を向けて。
    と、その時、REXのレーザーが、真っ直ぐに火を噴いた。









    ブシャアアッ!!


    「ぐああぁあぁッ!!」







    宙に浮いたフォックスの、左腕が飛んでいく。
    切断された傷口から、赤い血が噴き出していく。



    それでもフォックスはレーザーを放ち、レドームへと攻撃を加えていく。
    魂を削り取って、それを光弾へと変えて、放つ。








    一旦着地し、フォックスはもう一度飛びあがる。
    壁の縁へと着地し、再びレドームを狙って――――――・・・・・・・・・・・・








    「甘いぞッ! フォックスッ!!」






    聞こえてきたのは、エルヴィンの咆哮。
    それから、メタルギアの巨体が、縁へと降り立ったフォックスを、体当たりで押しつぶす音だった。







  49. 49 : : 2016/03/28(月) 02:32:35








    「フォックスッ!!」



    悲鳴に近い叫び声をエレンが上げる中、エルヴィンは嘲笑ってフォックスの体を押し潰していく。








    「中東では狐の代わりにジャッカルを狩るという―――――――FOXHOUNDならぬ、ロイヤル・ハリヒア。その強化骨格がいつまでもつかな!?」

    「アあぁあァッ!! ぐォあぁァァッ!!」







    潰された体から電流が走り、金属の潰れていく音が響く。
    それでも、フォックスは震える右腕を上げて。







    「追い詰められた狐は、ジャッカルより凶暴だッ!!」







    魂の咆哮がレーザーとなって、レドームに直撃。
    爆炎を上げてセンサーは遂に大破した。









    「レドームが壊れたッ!?」



    驚いたエルヴィンはREXの巨体を後退させる。
    身体を潰されたフォックスは、ぐったりと壁の淵に倒れた。







    レドームを潰され、コクピットの中からものが見えなくなったエルヴィンは、やむなくコクピットを開いた。
    その表情には、激しい憎しみの中に・・・・・・。







    「流石はフォックスの称号を持つ男だ。」



    ある種の敬意が、現れていた。
    するとフォックスは、震える声で叫んだ。








    「今だ、エレンッ! スティンガーを撃ち込めッ!!」







  50. 50 : : 2016/03/28(月) 02:49:20








    叱りつけるようなフォックスの声に促されるように、エレンはエルヴィンの座るコクピットに向けてスティンガーミサイルを向ける。
    スティンガーミサイルを向ける。









    「お前に撃てるか!? エレンッ!! こいつも死ぬぞッ!?」



    エルヴィンの罵声に反抗するようにスティンガーミサイルを向ける。
    だが、エルヴィンとフォックスの距離は余りにも近かった。


















    「撃てない、俺には・・・・・・・・・・・・撃てない・・・・・・。」



    エレンの手から力が抜けて、スティンガーミサイルがゆっくりと下を向いた。
    それを見たエルヴィンは憎悪の中で満足そうににやけ、の頭部をフREXォックスの体に押し付け、彼を壁の縁から地面へと落とした。











    ドゴオォオンッ!!



    それから容赦なく、REXの巨人のような足を振り下ろし、フォックスの下半身を粉砕する。
    最早悲鳴すら上げられないフォックスは、弱々しい声で呟いた。









    「エレン・・・・・・俺たちは、戦うことでしか、自分を表現できなかったが、いつも、自分の意志で、戦ってきた・・・・・・。」



    再び巨大な足底が振り上げられる。
    エルヴィンが死ねえぇえぇぇッと叫ぶ中、フォックスは最後に、笑みを浮かべて。












    「さらばだ・・・・・・・・・・・・エレン・・・・・・・・・・・・。」



    巨大な鉄の足に、踏みつぶされた。







  51. 51 : : 2016/03/31(木) 16:37:38
    kitai!
  52. 52 : : 2016/04/02(土) 19:36:28
    >>51
    遅くなって申し訳ないです。
    頑張ります!
  53. 53 : : 2016/04/02(土) 19:36:34









    「フォックスッ!!」



    エレンの悲鳴をかき消すように、REXが部品同士を軋み合わせて雄叫びを上げた。













    「これで分かったろう!? 貴様は誰も守れやしない! 自分の身さえなぁッ!!」



    エルヴィンが大声で罵り、レバーを引いてREXを動かして突進してくる。
    戦いは、最終局面に入った。







    「くそぉ・・・・・・・・・・・・エルヴィイィィイィンッ!!」


    叫び声を上げ、エレンはスティンガーミサイルを構える。







    「無駄だッ! 兄弟ッ!!」

    「うおおおぉぉおおぉぉッ!!」






    REXが巨大な足音を立てながら近づき、エレンは叫び声を上げながらスティンガーミサイルを撃ち放つ。








    そして、
    真っ直ぐ飛んでいったミサイルは・・・・・・・・・・・・



    エルヴィンの乗るコクピットへと飛び込んでいった。






  54. 54 : : 2016/04/02(土) 19:37:58








    「ぐおおぉおぉああぁぁッ!!」



    コクピットが炎に包まれ、次に、REXの全身から火花が散っていく。








    「ぐおおぉおぉ・・・・・・・・・・・・エレェエェェンッ!!」



    怒号と共に足底を上げ、エレンを踏み潰そうとするエルヴィン。
    だが、その瞬間に、全身がまるで燃え上がったかのように、REXが炎に包まれた。







    大爆発を引き起こし、壁にもたれかかるように倒れ掛かるREX。
    その爆発に巻き込まれ、エレンは勢いよく吹き飛ばされてしまった。







    「ぐああッ!!」



    吹き飛ばされたエレンは壁に打ち付けられ、そのまま視界が、暗転した・・・・・・・・・・・・











    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・











  55. 55 : : 2016/04/02(土) 20:22:38










    「う・・・・・・・・・・・・うぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」





    気が付くと俺は、上半身が裸で、しかも両手を背中の後ろで縛られていた。
    次第に視界がはっきりしてくると、エルヴィンが背を向けて、俺の目の前に立っていた。


    どうやら、さっき俺が破壊したREXの上にいるようだった。







    「相変わらず寝ざめは悪いようだな。」

    「く、お前・・・・・・生きていたのかよ・・・・・・。」

    「俺は死なん・・・・・・お前が生きている限りな。」







    憎しみに染まり切ったエルヴィンのとげとげしい言葉に対し、エレンは持ち前の皮肉で応じる。







    「残念だったな・・・・・・お前の蹶起は失敗だ。」

    「ふん、俺はメタルギアを失った程度で戦いを終わらせるつもりはない。」

    「戦い? お前、本当の目的は一体何なんだよ!?」






    すると、エルヴィンはこちらに振り向き、憎しみの中に笑みを浮かべた。






  56. 56 : : 2016/04/02(土) 20:23:02








    「俺たちのような戦士が再び生かされる世界を作り上げることだ!」

    「それはビッグボスの妄想だ!」

    「遺志だッ! 親父の・・・・・・。」






    エルヴィンは嚇怒した後、落ち着きを取り戻して語り始める。






    「冷戦の時、混沌の時、世の中が俺達を欲した、俺達を評価した、俺達は必要とされた。
    だが今は違う、偽善と欺瞞が横行し、争いがこの世から消えていく・・・・・・。

    自分を生かす場が失われる空しさ、時代から必要とされなくなる恐怖。おまえにはよくわかるだろう?



    俺は新型核を利用して当面の運動資金を得る、そして世界的なテロを行い、このふやけた世の中を再び混沌の世界へと誘う。
    紛争が紛争を呼び、新たな憎しみを生む。そして、俺達の生態圏は拡大していく。」






    「世界のどこかで紛争は起こってる! 人の支配が続く限りはな!」

    「バランスが問題なんだ! 親父の目指したバランスが!」

    「ぐ・・・・・・・・・・・・それだけの理由で・・・・・・。」

    「充分な理由だろう!? 俺や貴様にとってはな・・・・・・。」







  57. 57 : : 2016/04/03(日) 22:01:36







    エルヴィンはエレンを見下し続ける。
    自分が上に立つ―――――――その意志を強烈なまでに現し続ける。








    「俺はお前と違う! そんなもんは望まない!」

    「はっ! 嘘をつけ!
    仲間に裏切られながらもなぜここに来た!?
    俺が代わりに答えてやろう・・・・・・殺戮を楽しんでるんだよ! 貴様はな!!」

    「なっ!?」

    「違うとでもいうのか!? 貴様は俺の仲間を大勢殺したじゃないか?」

    「そ、それは・・・・・・。」

    「兵士を殺すときの顔、実に生き生きとしていたぞ?」







    エルヴィンは笑みを浮かべ、エレンを見下ろす。
    お前のことは何でも知っている――――――そう言わんばかりに。








    「生まれ持った本能を誤魔化す必要はない、エレン・・・・・・・・・・・・俺たちはそう造られたのだからな。」







  58. 58 : : 2016/04/03(日) 22:05:18
    頑張るのじぇ!


    期待
  59. 59 : : 2016/04/03(日) 22:22:50
    >>58
    ありがとうございます!
  60. 60 : : 2016/04/03(日) 22:23:01








    思わず、エレンは聞き返した。







    「俺たちが・・・・・・・・・・・・作られた?」

    「そうとも。恐るべき子供達計画(ル・アンファン・テルブル)―――――――その計画はそう呼ばれた。」






    そう言えば、オセロットからもそんなことを言われた気がする。
    あいつ、俺の出自を知っていたのか・・・・・・。






    「1970年代に、最強の兵士を人為的に生産しようとする計画。ひな形として選ばれたのは、当時生きながらにして伝説と名を馳せた男・・・・・・。」

    「・・・・・・・・・・・・ビッグボスか・・・・・・。」

    「俺達は親父の体細胞から造られた――――――前世紀のアナログクローン技術とスーパーベイビー法によってな。」







    この時、俺は初めて・・・・・・・・・・・・自分の出自を知った。
    俺は、ビッグボスの体細胞から造られた人間。


    つまり・・・・・・・・・・・・クローン人間だったのだ。








    「細胞核を使って造られた受精卵を分割、8人のクローンベイビーを子宮に移す。
    その後 ある時期で6つの胎児を意図的に間引き、犠牲にすることで成長能力を増大させる手法だ。俺達はもともと8つ子だったんだよ。」

    「!! 八つ子・・・・・・。」

    「そう、俺達を造るために6人の兄弟が殺された。俺達は生まれ落ちる前から人の死に関与していたんだ。そして俺と貴様、同じDNAを持つ2つの受精卵が生き残った。」

    「・・・・・・。」






    しかも、多くの命を犠牲にして。
    俺は・・・・・・・・・・・・どうして。







  61. 61 : : 2016/04/03(日) 22:41:58







    「だが・・・それで終わりじゃない、俺は生贄にされた! 優性遺伝子だけど発現された表現型、
    貴様を造るために劣勢遺伝子ばかりを発現させられた。貴様は兄弟の命を奪って生まれたんだ!

    だが・・・生き残った兄弟は俺と貴様だけではないぞ。」

    「!! どういう・・・・・・。」




    「ゲノム兵達だよ。彼等も親父の遺伝子を受け継いでいる。俺達と違ってデジタルな方法で。

    前世紀にヒトゲノム計画が完了し、遺伝子の動きが調査された。親父の遺伝子情報のおかげで、すでにソルジャー遺伝子はキラー・インスティンクトと言われるものも含めて60以上発見されている。
    判明したソルジャー遺伝子は、その都度 遺伝子治療を経て次世代特殊部隊隊員に組み込まれる。それがゲノム兵だ。」




    「!! まさか・・・・・・。」

    「そうとも、お前がこの基地で殺してきたゲノム兵は、俺達と同じDNAを持つ兄弟なんだよ。」








    「・・・・・・。」







    俺は、完全に打ちのめされていた。
    俺の遺伝子には、ペトラの言う通り、殺人を助長する遺伝子が書き込まれていた。


    俺は、遺伝子の奴隷なのだろうか・・・・・・。
    ここまでたくさんの人間を殺めてきたのは、遺伝子の命令だとでもいうのだろうか・・・・・・。






  62. 62 : : 2016/04/04(月) 10:47:26








    「誰も遺伝子に逆らう事はできない、それは運命だ。まして俺達は・・・・・・親父の遺伝子を再現する為にだけ生み出された存在だ。
    だから・・・・・・俺は自分の遺伝子に従う。そしてそれを乗り越える。呪われた運命を打ち破るために。


    そのために・・・・・・まず貴様を殺す。」






    エルヴィンは後ろを見てみろと呟き、俺は後ろを見た。
    そこには・・・・・・・・・・・・








    「!! ミカサッ!!」



    両手を背中の後ろで縛られ、背を向けて横たわるミカサの姿が見えた。
    感情的になるエレンを見下し、エルヴィンは二人を罵る。







    「馬鹿な女だ。名前もない男に惚れるとはな。」

    「俺にも名前はあるッ!」

    「無いッ!! 俺たちには過去も未来も無い。あるとすれば・・・・・・親父から受け継いだ遺伝子が全てだッ!!」

    「ミカサを放せッ!!」

    「お前との決着をつけたらな。俺たちにはもう時間がない。」

    「FOXDIEのことか?」

    「いや・・・・・・メタルギアの破壊を知った国防総省(ペンタゴン)はある決定を下したそうだ。もはや目標破壊評価(ボンダー・レポート)の必要も無い。
    詳しくは聞き耳を立てているご立派なリヴァイに聞いてみるがいい。」






  63. 63 : : 2016/04/04(月) 11:01:47







    プルルルッ! プルルルッ!


    丁度、タイミングを見計らったかのように通信がかかってくる。
    リヴァイ大佐からだ。






    『エレン、聞こえるか?』

    「ああ。それで、国防総省(ペンタゴン)の決定とはいったい何なんだよ?」






    通信機の向こうで、リヴァイが一息つくのが聞こえる。
    ややあって、覚悟を固めたように、リヴァイは話し始めた。






    『・・・・・・国防省長官が自ら指揮に乗り出した。早期警報管制機でお前らのところに向かってる。』

    「!? 何でだ?」

    『長官はペトラの裏切りを知って、FOXDIEの効果に疑問を持った。だからB2爆撃機を伴い、地表貫通式戦術核爆弾B61-13で、全てを隠蔽するつもりだ。』

    「なっ・・・・・・。」







    俺は呆然とした。
    間もなく、この基地は核によって吹き飛ばされる。



    しかも、ミカサも一緒に・・・・・・。







    『エレン、だが心配するな。核攻撃は俺が中止させる!』

    「!! 何を言って!?」

    『たとえ形式だけでも、指揮権は俺にもある。』

    「そんなことしたら、ただじゃ済まねえぞ!? 分かってるのか!?」







    するとリヴァイは、通信機の向こうで笑みを浮かべた。






    『今更だ、エレン。・・・・・・・・・・・・実は極秘裏にFOXHOUNDの内偵捜査は行われていた。
    そしてミカサは蜂起当日に、この作戦に編入された――――――俺を脅迫する材料としてな。』

    「・・・・・・・・・・・・大佐。」

    『済まない・・・・・・・・・・・・ミカサの命と引き換えに、協力を強いられていた。早くミカサを連れて逃げろ。』

    「いいのか・・・・・・・・・・・・すべてを失うぞ?」









    『大切なものを守り切る事が出来る――――――俺にはそれで十分だ。』






  64. 64 : : 2016/04/04(月) 19:54:50








    ゴッ・・・・・・







    突然、通信機の向こうから、鈍い音が聞こえてきた。
    一体何があったんだと俺が叫んでいると、大佐とは別の人間が通信に出てきた。






    『リヴァイ・アッカーマンはたったいま解任した。私は国防庁長官、キッツ・ヴェールマンだ。』

    「大佐を出せッ!!」

    『機密漏洩と国家反逆罪の容疑で逮捕監禁した。』

    「なっ、そんな馬鹿な。」

    『そう、馬鹿な男だ。本気で指揮権があると思っていたとはな。』

    「!! テメエ・・・・・・ッ!!」







    キッツ国防長官はどこまでも冷酷な口調で話し続ける。







    『全てを海に沈める。大統領もそれを望んでおられるだろう。』

    「!! 大統領命令なのか!?」

    『大統領は忙しい・・・・・・私が全責任を負う。』

    「全部ふっ飛ばして、マスコミにどう説明する気だッ!?」

    『安心しろ。隠蔽用のカバーストーリーはある――――――テロリストたちが核を暴発させたという事にする。』







  65. 65 : : 2016/04/04(月) 20:08:24







    冷血なキッツに対し、エレンは怒りを爆発させた。






    「ふざけんな!! ここにいる奴ら――――――ゲノム兵や研究員も全員殺すつもりか!?」

    『オルオ・・・・・・・・・・・・DARPA局長は死んでしまった。』

    「!! あいつは・・・・・・・・・・・・殺すつもりはなかったのか!?」

    『奴は親友だった・・・・・・・・・・・・。』

    「他の奴らはどうでも良いってのかよ!?」

    『そうだな・・・・・・・・・・・・光ディスクを渡せば考えてやろう。』







    ヴェールマンは冷酷にも、光ディスクをエレンに要求してきた。
    そう、今回の模擬核弾頭発射演習のデータを収めたディスクである。






    「何の話だ?」



    そうとぼけるエレンに対し、ヴェールマンは敵意を剥き出しにした。







    『貴様ら二人は、70年代の恥部だ。誰もが蒸し返したくない暗部だ。このまま生かしておくわけにはいかない・・・・・・。
    爆撃の間まで、せいぜい仲良くな・・・・・・。










    旧態政府の亡霊ども・・・・・・。』







  66. 66 : : 2016/04/05(火) 01:48:54
    きーたーい!
  67. 67 : : 2016/04/05(火) 10:41:12
    >>67
    期待&お気に入り登録ありがとうございます!
  68. 68 : : 2016/04/05(火) 10:41:40








    それっきり、ヴェールマンからの通信は途絶えてしまった。
    俺たちは文字通り、巨大な鉄の棺桶の中に閉じ込められてしまったのだ・・・・・・。






    「お互い退路を断たれたな。」



    通信が終わるまで静かに腕を組んでいたエルヴィンが呟いてくる。
    俺の腕を縛っていた縄をほどき、それから、ミカサを見下ろしながら。







    「空爆が始まる前に決着をつけよう。俺たちの戦いには美しすぎる生贄だ。」



    呟きながらエルヴィンは目線を移していき、ミカサの後ろにある箱のようなものを見つめた。








    「見えるか、この時限爆弾が?」

    「!! 時限、爆弾!?」





    そこにあったのは、光が行ったり来たりしながら時を刻む時限爆弾であった。
    エルヴィンは手に持ったスイッチを押し、カウントダウンが始まった。


    爆発まで、後3分。






    「これは俺たちの決着を刻む砂時計――――――この女を死へ誘うと同時に、この核モジュールも吹き飛ぶ。


    貴様が勝てば女は助かるかもしれない。
    空爆までの一時を女と愛し合うこともできる。








    さあ、行くぞ! エレンッ!!」







  69. 69 : : 2016/04/05(火) 10:42:22










    「!! 来やがれッ! エルヴィンッ!!」



    破壊されたメタルギアREXの頭頂部において、男同士の決闘が始まった。






    「うおおおぉぉっ!!」
    「甘いぞ! 兄弟!!」





    エレンが拳を繰り出すと、エルヴィンは腕を巧みに使ってエレンの攻撃を捌いていく。
    エルヴィンが回し蹴りを繰り出すと、エレンはとっさにしゃがんでさっと躱す。


    それからお互いに拳を繰り出し、腹を殴り、顔面を殴り、血が飛び散っていく。








    爆発まで、2分3秒。







    と、ここでエルヴィンが姿勢を低くし、エレンの腹部へ向けてタックルを喰らわせた。
    それは、鉛で腹を打ち付けられたかのような衝撃だった。








    「が、はッ・・・・・・。」



    エレンは吹き飛ばされ、仰向けに倒れた。








    「あはははははははははッ!! これで終わりだ! 兄弟ッ!!」






  70. 70 : : 2016/04/05(火) 11:02:20









    身体に、力が、入らない・・・・・・・・・・・・。
    文字通り、精根使い果たしてしまったのか?


    あいつが何か高笑いして叫んでるのが聞こえる。








    「う、うぐ・・・・・・あが・・・・・・。」



    腹部に鈍い痛みが走り、体が鉛のように重い。








    ・・・・・・・・・・・・ん?






    その時、エレンの目に、僅かに肩を動かすミカサの姿が映った。





    俺は
    俺は





    負けられない・・・・・・
    こんな所で、負けるわけには、いかない!!








    力を振り絞り、
    文字通りなけなしの精神力を振り絞って、エレンは立ち上がった。








    「うおおおぉぉっ!!」
    「おおおああぁぁッ!!」




    エレンとエルヴィンがお互いに拳を繰り出し、
    そして・・・・・・・・・・・・











    エレンの拳が、エルヴィンの頬を振り抜いた。







    「エレエェエェェンッ!!」






    そのままエルヴィンの体は空中で弧を描き、
    メタルギアREXの機体の上から、真っ逆さまに地面へと落ちていった・・・・・・・・・・・・







  71. 71 : : 2016/04/05(火) 11:29:19









    「ミカサッ!!」



    時限爆弾のスイッチを止め、エレンはミカサへと駆け寄る。
    両手を縛っている縄をほどき、エレンはミカサの体を揺さぶった。






    「・・・・・・・・・・・・ん、んん・・・・・・。」

    「!! ミカサッ!!」

    「え、エレン・・・・・・痛い。」

    「!! わ、悪かったな・・・・・・。」






    思わず強い力で抱きしめすぎて、エレンはパッとミカサを放した。
    ミカサはくすっと笑い、ややあって慈しむような目でエレンを見つめて語り始めた。






    「私、奴らに拷問された。それ以上の、酷いことも・・・・・・・・・・・・でも、あなたがいると思うと、耐え切れた。」

    「ミカサ・・・・・・・・・・・・お前。」






    確かに、よく見ると、タングトップから見えるミカサの体のあちこちにあざがあるのが見える。
    俺は無言で、ミカサを抱きしめた。


    ミカサは、俺の腕の中で、うずくまった。
    身体が小刻みに震えている。







    きっと、奴らから、酷い仕打ちを受けたに違いない・・・・・・・・・・・・。







  72. 72 : : 2016/04/05(火) 11:29:47








    「エレン!! ミカサ!!」



    と、ここで、アルミンの声が聞こえてきた。
    ステルス迷彩を解除したアルミンが、REXの足元に現れる。






    「よし、降りるぞ、ミカサ。」

    「え? あ、ちょっと・・・・・・。」





    エレンはミカサを両腕で抱えた。
    何だかミカサは恥ずかしそうに両手で顔を覆う。


    ミカサを抱えてREXから降りてきたエレンに対し、アルミンは急かすように言った。







    「ここはもうすぐ空爆される! 地下貫通用の核爆弾で!!」

    「分かってる! 俺は最後まで諦めねぇよ!!」

    「!! うん! 地下運搬口のロックを解除した! 急いで脱出を・・・・・・・・・・・・うわっ!!」







    と、ここで、背後からゲノム兵が銃を撃って近づいてきた。
    銃弾がアルミンの足元に着弾し、後から後から兵士たちがエレン達目がけて走ってくる。







    「!! ちっ、走れるか!? ミカサ!?」

    「勿論!!」

    「急ごう、エレン! ミカサ! あっちに車があるんだ!!」







    三人は息をそろえて、決死の脱出を試みる。
    もう少しで空爆される――――――シャドーモセス島からの脱出劇が始まった。







  73. 73 : : 2016/04/05(火) 11:50:32








    「あっちへ行ったぞ!!」
    「逃がすな!!」




    ゲノム兵たちが銃を撃って追ってくる中、エレンとミカサが銃を撃ちながらアルミンを守る。
    二人の援護を受けながらアルミンも必死に走り、車庫を目指して走っていく。






    「アルミン! お前、運転できるか!」

    「うん!!」






    アルミンは一目散に車に飛び込み、車を調べ始める。
    すると・・・・・・・・・・・・







    「やった!! 鍵が付いてる!!」



    何という幸運。
    アルミンはすぐさま鍵を回し、エンジンを起動させる。








    「エレン! ミカサ! 乗ってッ!!」



    アルミンが大声で叫ぶ中、エレンとミカサは銃を携えて車へと飛び乗った。








    「しっかり掴まってッ!!」



    アクセルをべた踏みして勢いよく運搬口を飛び出していく。
    後ろに飛び乗ったエレンとミカサが銃を撃って兵士たちを蹴散らしていく。










    「よし、ここまで来ればもう・・・・・・・・・・・・ん?」



    安心しかけたアルミンの耳に、後方から別のエンジン音が聞こえてくる。
    すると、後方からあの怒鳴り声が聞こえてきた。









    「エレエエェエェェンッ!! まだだッ! まだ終わってなぁいッ!!」







  74. 74 : : 2016/04/05(火) 12:46:02








    「エルヴィイィィイィンッ!!」



    怒鳴り返したエレンは銃を構え、背後から車で追ってくるエルヴィン目がけて銃を放つ。
    狭い通路の中が、たちまちのうちにエンジン音と銃声に満たされる。







    「飛ばせ!! アルミン、追いつかれるぞ!!」

    「分かってるよ!!」





    エルヴィンの車が、アルミンの運転する車に並んだ。
    と、エルヴィンの車がアルミンにタックルしてくる。







    「うわあ!! このおッ!!」

    「ぐう!! 小癪なぁッ!!」






    アルミンがエルヴィンの車にタックルし返して、エルヴィンの車が後退。
    その隙にアルミンは一気にアクセルを踏み込んだ。



    そして・・・・・・・・・・・・








    「見えてきたよ! 出口だ!!」



    目の前から差し込む光、
    運搬口からの出口が遂に見えてきた。







    その瞬間、エルヴィンの車が目の前に飛び出してきた。
    慌ててハンドルを切るアルミン。

    だが・・・・・・・・・・・・








    「ダメだ! 間に合わ・・・・・・・・・・・・うわああぁあぁぁッ!!」














    その瞬間、エルヴィンとアルミンの車が、クラッシュした――――――・・・・・・・・・・・・







  75. 75 : : 2016/04/05(火) 15:26:45















    「うぐ・・・・・・・・・・・・ミカサ・・・・・・アルミン・・・・・・・・・・・・。」








    エレンが気が付くと、横転した2台の車。


    傍らには、気を失ったミカサ。
    そして、向こうのほうには同じく気を失って、頭から血を流して倒れているアルミン。







    「しっかり・・・・・・するんだ・・・・・・。」



    エレンはまず、手の届くミカサに声をかける。
    エレンに起こされ、ミカサは何とか意識を取り戻した。






    「エレン・・・・・・・・・・・・けが、は?」

    「この期に及んで俺の心配かよ・・・・・・・・・・・・お前と同じだ。足が車に挟まって、動けない。」

    「そう・・・・・・アル、ミンは?」

    「向こうのほうで倒れている・・・・・・恐らく、まだ息はある。」

    「・・・・・・・・・・・・良かった。」






    ホッとしたようにため息をつくミカサ。
    つられてエレンも安心したように、ミカサの頬に手を伸ばす。





    「エ、エレン?」

    「お前が無事で・・・・・・・・・・・・本当に―――――・・・・・・・・・・・・!?







  76. 76 : : 2016/04/05(火) 15:27:26







    言い終わらないうちに、エレンは言葉を切った。
    もう一台の車の影から、あの男が姿を現したからだ。






    「え、エレエェエェェン・・・・・・。」



    エルヴィンは、フラフラになりながらも、FAMASアサルト・ライフルをエレン達へと向けてきた。









    「し、しまった!!」

    「う、動けない・・・・・・。」





    車に足を挟まれ、動けないエレンとミカサ。
    復讐を果たそうと、エルヴィンは憎しみに染まり切った表情で引き金を引こうとした。












    ドクンッ!!


    「うぐっ!!!!」








    と、その時、突然、エルヴィンの心臓が発作を起こした。
    くずおれていくエルヴィンの身体。


    倒れながら、エルヴィンは呟いた。









    「FOX・・・・・・・・・・・・DIE・・・・・・?」














    そのままエルヴィンはうつぶせに倒れ、遂に絶命した。








  77. 77 : : 2016/04/05(火) 16:27:34









    ややあって、エレンとミカサは、車をどかして立ち上がった。
    気を失っていたアルミンを起こし、それから、エルヴィンの亡骸を見下ろした。







    「こいつが死んだってことは、俺も・・・・・・。」

    「言わないで、エレン・・・・・・。」






    ミカサに言われ、エレンは言いかけた言葉を飲み込んだ。
    俺とエルヴィンはDNA構造が同じだ・・・・・・。


    つまり、いつFOXDIEが発症しても、おかしくはない・・・・・・。








    「あれ?」


    すると、アルミンが首をかしげながら話し始める。







    「爆撃機が向かってるって話だったけど、姿が見えないよ?」

    「!! そう言えば!?」

    「どういうことなの?」





    三人が一様に首を傾げていると、エレンの通信機が鳴り始めた。







  78. 78 : : 2016/04/05(火) 16:28:34









    『お前ら・・・・・・聞こえるか?』

    「!! リヴァイ大佐!?」







    通信をかけてきたのは、逮捕監禁されていたはずのリヴァイ大佐だった。







    「無事だったのか!?」

    『国防省長官はたった今、逮捕された。退任だ。』

    「逮捕だって?」

    『大統領と連絡が取れた。メタルギア、新型核弾頭の開発、今回の演習―――――すべてがキッツの独断だった。』

    「これが独断・・・・・・・・・・・・じゃあ空爆や核の投下は?」

    『攻撃命令は解除されて、爆撃機はガレーナ基地へと帰還した。政府(ワシントン)は秘密を守るために核を使うほど馬鹿じゃない。』

    「怪しいもんだな・・・・・・。」

    『とにかく、危機は去った・・・・・・・・・・・・ありがとう。』







    通信を聞いたエレンは微笑み、ミカサをちらりと見てから少しばかり嬉しそうな声で話を続けた。








    「大佐。ミカサは無事だ。安心してくれ・・・・・・。」

    『そうか・・・・・・・・・・・・俺はお前にいろいろ隠し事をした。済まなかった・・・・・・。』

    「大佐、いいんだ・・・・・・。」

    『エレン、俺はもう大佐じゃない。退役軍人だぞ?』

    「ふん、そうだったな。」







    通信機越しに皮肉な笑みを浮かべ合うエレンとリヴァイ。







  79. 79 : : 2016/04/05(火) 16:29:55








    『エレン。お前にプレゼントがある。ここの近くにスノーモービルがある。先ほど衛星写真で確認した。
    この時期、氷河も落ち着いている。凍結した海を渡ればいい。国防省情報局や国家安全保障局の連中が君達を無事に帰すとは思えない。』

    「そうだな。のこのこ戻るつもりはない。」

    『お前たち三人はジープでアラスカの海に沈んだってことにしてある。』

    「もう少しでそうなるところだったけどな。」

    『フォックス諸島へヘリを迎えに行かせる。もうこれでお別れだな。』

    「いや、俺から大佐のところへ遊びに行く。」

    『!!・・・・・・・・・・・・そうか。』








    通信機越しに微笑むリヴァイ。
    それからリヴァイは、ペトラに代わった。








    『エレン、聞こえる?』

    「!! ペトラか?」

    『聞いたわ・・・・・・・・・・・・兄さんのこと。まだ気持ちの整理がつかないけれど・・・・・・。』

    「そうか・・・・・・。」








    ペトラは、少し俯きがちに、兄のことを思い浮かべながら話を続けた。
    兄は漸く、戦場から解放された―――――エレンに対する深い恨みは、もう跡形もなく流されて消え去っていた。







  80. 80 : : 2016/04/05(火) 16:32:05









    「教えてくれ、ペトラ。」

    『FOXDIEのこと?』

    「ああ。」




    『ミカサやアルミンはターゲットには入っていないわ。』

    「エルヴィンはFOXDIEで死んだ。俺はいつまで持つんだ?」

    『それはあなた次第よ。』

    「!?」

    『あらゆる生命には寿命がある。限られた時間をどう使うかはあなた次第―――――でも、生きてね、エレン。私からは、それだけ・・・・・・。』

    「・・・・・・。」







    一息つくペトラ。
    ややあって、言い残すようにペトラは、エレンに語り始めた。







    『人はそれぞれ、生まれた時から運命づけられているわ。遺伝子の中に刻まれてね。でも・・・・・・人の人生はそれだけじゃない。私もようやくわかった。


    前にも言ったわね、私が遺伝子、DNAに関心を持った理由、自分は一体誰なのか? どこから来たのか知りたかったから・・・・・・。


    DNAを解析すれば、私が誰だかわかる、私の逢った事のない、両親の事がわかる・・・・・・自分が何者かわかれば、進む道がわかるかもしれない。そう思ってた。でもそれは違う、何もわからなかった、何も見つからなかった。ゲノム兵も同じ。遺伝情報をインプットするだけでは最強の戦士を創り出す事はできない。


    DNA情報は、あくまでも力や運命を秘めているという事だけしか言えないわ。
    運命に縛られてはいけない。遺伝子に支配されてはいけない。生き方を選ぶのは私達なのよ。





    エレン・・・・・・プログラムされたかどうかは問題ではないわ。重要なのは、あなたが選ぶ事。そして、生きる事。そうでしょ? エレン・・・・・・。
    心配はいらない、私も、生きていくわ。これまで生きる理由ばかり探してた。でも、これからは・・・・・・。生きる事が私の目標なの。


    遺伝子の存在意義は・・・・・・子孫を通じて願いを未来に託す事。生きる事は未来へ繋がる。あらゆる生命は、そうやって未来へ繋がっていくの。愛し合い、語り継いでいく・・・・・・。そして、世界を変えていく。









    ようやくわかったの、生きる事の意味が。エレン・・・・・・・・・・・・ありがとう。』








  81. 81 : : 2016/04/05(火) 16:47:44










    「見つけたぞ! スノーモービルだ!!」

    「エレン! 置いていかないで!」

    「待ってよ! 二人とも!!」






    さて、流氷へと降りた俺たち三人は、洞窟に隠されていたスノーモービルを発見した。
    丁度その時、水平線の彼方から、朝日が昇ってくるのが見えた。






    「夜明けか・・・・・・。」

    「そうね・・・・・・。」

    「うん・・・・・・。」






    俺たち三人は、美しい日の出を眺めた。
    すると、ミカサが何かに気が付いたのか、声を上げた。


    ミカサが指を指したのは、水平線を横切っていく動物だった。







    「ねえエレン! あの動物は何!?」

    「あれは・・・・・・・・・・・・カリブーだ。ここじゃカリブーは生のシンボルなんだ。ここももうすぐ春が来る。」







    「私たちにも、ね。」


    ミカサは囁くように、俺の耳元で呟いた。
    そっとミカサを抱きしめ、俺はミカサに囁き始めた。






    「俺は今まで、自分のために生きてきた。死にたくない―――――――その生存本能に従って。そう遺伝子に刻まれてたのかもな。」

    「エレン?」

    「でも、新しい人生を俺は見つけた――――――俺は人のために生きる。そう、お前のためにもな。」






    すると、スノーモービルのエンジン音が響いた。
    どうやらアルミンがエンジンをかけてくれたみたいだ。


    エレンはアルミンの後ろに、ミカサはエレンの後ろに座った。








    「ねえ、二人とも。これから僕たちはどこに行くんだろうね?」

    「どこまでもだ・・・・・・・・・・・・そうだろ、ミカサ?」

    「エレンの言う通り、私は・・・・・・・・・・・・どこまでも行く。」










    エレンはニタッと笑い、それから前を向いて呟いた。



    「さあ! 人生を楽しもう!」










    アルミンはエンジンをかけ、三人を乗せたスノーモービルは、水平線の彼方へと遠ざかっていった。









  82. 82 : : 2016/04/05(火) 16:48:53






    1980年代、世界には常時六万発以上の核兵器が存在した。その破壊力はヒロシマ型原爆の100万発分に相当する。
    1993年1月にSTART2が結ばれアメリカ・ロシアは西暦2000年12月31日までに戦略核弾頭の配備数をそれぞれ3000~3500発に削減する事に同意した。
    しかし1998年現在、世界にはなお二万六千発の核兵器が存在している。









  83. 83 : : 2016/04/05(火) 16:58:41



          CAST



    ソリッド・スネーク・・・・・・・・・・・・エレン・イェーガー

    メリル・シルバーバーグ・・・・・・・・・・・・ミカサ・アッカーマン

    ハル・エメリッヒ・・・・・・・・・・・・アルミン・アルレルト

    ロイ・キャンベル・・・・・・・・・・・・リヴァイ・アッカーマン

    メイ・リン・・・・・・・・・・・・ミーナ・カロライナ

    ナオミ・ハンター・・・・・・・・・・・・ペトラ・ラル(本作ではペトラ・ハンターと改名)

    ドナルド・アンダーソン・・・・・・・・・・・・オルオ・ボザド

    ケネス・ベイカー・・・・・・・・・・・・ジェル・サネス

    ジム・ハウスマン・・・・・・・・・・・・キッツ・ヴェールマン

    サイボーグ忍者・・・・・・・・・・・・塩沢兼人

    リキッド・スネーク・・・・・・・・・・・・エルヴィン・スミス(本作ではエルヴィン・イェーガーと改名)

    リボルバー・オセロット・・・・・・・・・・・・戸谷公次

    サイコ・マンティス・・・・・・・・・・・・ナイル・ドーク

    スナイパー・ウルフ・・・・・・・・・・・・アニ・レオンハート

    バルカン・レイブン・・・・・・・・・・・・ライナー・ブラウン

    デコイ・オクトパス・・・・・・・・・・・・ベルトルト・フーバー









    ※置き換えていないキャストは、担当声優の名前を記載。


  84. 84 : : 2016/04/05(火) 17:00:40








































  85. 85 : : 2016/04/05(火) 17:03:58





    はい、(オセロット)です。
    FOXHOUNDの隊員は全員死亡しました。




    あの三人は生存しています。
    運び屋の方はもうすぐFOXDIEが。




    はい・・・・・・そうです。
    はい。模擬核弾頭演習のデータは私が回収しました。









    ええ。誰も私の正体に気づいてはおりません。
    はい。正体を知るオルオ局長は始末しました。




    はい。結局は劣性が勝った事になります。
    そうです。エルヴィンは最後まで自分が劣性だと思いこんでいたようです。





    ええ、そうですね。世界を引き継ぐ者は劣性でも優性でもありません。
    ええ。あなたが3人目。ジークである事もつかんでいません。




    あの女はどうします?
    はい、監視を続けます。



    はい!
    ありがとうございます・・・・・・・・・・・・













    大統領。








  86. 86 : : 2016/04/05(火) 17:05:42
    以上で終了になります!

    結構長い執筆期間となりましたが、お気に入り登録を多くいただけて励みになりました! ありがとうございます!



    次は何を書こうかまだ考え中ですが、書き出しましたらよろしくお願い致します。
  87. 87 : : 2016/04/05(火) 17:06:47
    面白かったです!
    お疲れ様でした~!
  88. 88 : : 2016/04/05(火) 18:50:56
    ありがとうございます!
    次に執筆するときも頑張りますね!

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hymki8il

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