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東京喰種parallel「喰種」
- 東京喰種トーキョーグール
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- 1 : 2016/02/19(金) 21:53:30 :
- 題名は仮です。
こんな感じのトーキョーグールもありなのかな~って感じで書いていきます。
コメントとかもらえたらリアルに跳ねます喜びます。
更新は亀だったりもするかもですです。
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- 2 : 2016/02/19(金) 21:55:23 :
お父さん、この人誰?
『いやぁ、まさかあなたにこんな隠し子がいたなんてね』
放して、お父さんの所へ行かせて
『……その子をどうする』
お父さん、助けて
『ん~、あなたの出方次第、と言ったところだね』クックック
『……もし、その子に何かしてみろ』
お父さん、お父さん!
『生きていられると思うな……人間!』
金木「う……ぅ、!」バッ
ドックドックと、心臓がうるさく鳴っている。
……また、あの夢。
どうしてまた、あんな夢なんて。
金木「……父さん」
ベッドから起き上がり、ぐっしょりと汗ばんだ体をシャワーで洗い流す。
金木「(……僕、大学生になったよ、父さん)」
……僕の育ての親である父は、CCGに殺された。
父さんは、喰種だった……。
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- 3 : 2016/02/19(金) 23:09:07 :
ヒデ「金木ぃ~、朝のニュース見たか?」
上井大学、そこの広い食堂で、僕とヒデは昼食をとっている。
金木「ニュース?」
ヒデ「何だ、見てねーのか?……また出たらしいぜ」
金木「幽霊でも出たって?」
ヒデ「バァーッカ」
少し顔を近づけ、声を抑えて……、
ヒデ「喰種に決まってんだろ」ヒソヒソ
金木「……へぇ」
ヒデ「何でも、高田ビルであったらしいぜ。体液が残ってたって言ってたっけな」
喰種……ヒトを食べて、生を繋ぐ、僕ら人間の天敵。
ヒデ「最近物騒だよなぁ……確か一週間前にもあっただろ」
金木「そうだね」
当然、僕ら人類にとって喰種は、忌むべき存在。
CCGは、その存在を絶対悪とし、喰種を狩るための人材を日々養成している。
ヒデ「……ったく、何で喰種ってのが居んのかね」
ズズズ‥と、僕はカップに入ったコーラを啜る。
金木「……何で人間なんて、存在してるんだろう」
ヒデ「はぁん?」
金木「植物や動物に知能があったなら、そう思うのかな」
ヒデ「……何の話?」
金木「独り言」ガタッ
ヒデ「ちょ、待てよ俺まだ食ってんだから!」ガツガツ
金木「食事はよく噛んで、味わって食べましょう。さもないと……」
ヒデ「ガツガツ……ヴッ!??」
金木「喉に詰まります」
そうして僕の親友は、テーブルに置いてあった水を一気に飲み干すのであった。
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- 4 : 2016/02/20(土) 00:14:53 :
「えー、ですからして、この時はDの公式を用いて……」
ヒデ「なぁ、今日暇?」
金木「暇」カキカキ
ヒデ「じゃあ俺につき合え」
金木「えー……何に?」カキカキ
ヒデ「あんていくって喫茶店行こうぜ」
金木「理由は?」カキカキ
ヒデ「可愛い店員が居るらしい!」
金木「却下」カキカキ
ヒデ「そこを何とか!」
金木「何ともなりません……あと前見て」カキカキ
ヒデ「へっ?」チラッ
「」ジーッ
数学教授と周りの生徒皆の視線が集まっている……主にヒデに。
僕はノートに向かって例文を解いているので関係ありません悪しからず。
ヒデ「……す、すみません」シュン
ヒデ「なぁ、あんていく行ってみよーぜ?」
講義終了後。
ヒデもしつこいな。
金木「だから行かないって」
ヒデ「何でだよ!金木は気になんねーのか?」
金木「気にならないよ。ヒデ一人で行ってきなって」
ヒデ「この薄情者!」
金木「はいはい」
ヒデ「連絡先ゲットできても教えてやんねーからな!」
金木「いらないよそんなの」
ヒデ「金木はそんなだから彼女出来ねーんだよ!」
金木「大きなお世話」
なんてブツブツ言ったあと、ヒデは一人であんていくに向かった……と思われる。
金木「……」
別に、行ってあげても良かったかな……。
ま、いいか。
高槻泉の小説でも読んでよう。
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- 5 : 2016/02/21(日) 12:59:40 :
僕は上井大学の中庭にあるベンチに座って、時間を潰した。
気がつけば日も傾いて、辺りも暗くなってきていた。
ヴヴヴヴ‥
携帯のバイブ音。
ポッケからだして、画面を見てみると……ヒデだった。
『連絡先ゲット!霧島トーカちゃんって言うらしいぜ!』
金木「(……ホントに一人で行ってたんだね)」
若干あきれつつ、『良かったね』とだけ返信。
返事はすぐに来て、『今度合わせてやるよ!』。
……はぁ。
めんどくさくなったので、これには返信しない。
持っていた本を鞄にしまって、帰ることにした。
その帰る途中だった。
「きゃっ!??」
薄暗いこともあって、女の人とぶつかってしまった。
金木「す、すいません!」
言って、道に落ちた、彼女の持っていた袋を拾ってあげる。
「い、いえ、私の方こそごめんなさい」
金木「はい、これ……」
「ありがとうございます」
ペコリ、とお辞儀をして、そそくさと去っていった。
金木「(髪が長くて、めがねをしていたけど、綺麗な人だったなぁ……)」
なんて、ヒデみたいな事を考えてしまった。
さっさと帰って寝よ。
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- 6 : 2016/02/22(月) 13:47:01 :
次の日、僕のカリキュラムでは講義のない日だった。
対してヒデはあるみたいで、僕は一人で上井大学近くの公園に座って、昨日と同じように読書。
今読み進めてるコレ、ものすごく面白いんだよな~。
「あ、あの……」
金木「……へ?」
声をかけられた。
女性に。
まさか……逆ナン?
金木「……あ、もしかして昨日の……?」
「はい、昨日はぶつかってしまってすみません」
よく見たら、家に帰る途中にぶつかった人だった。
「えっと……隣、良いですか?」
金木「あ、良いですよ」
言って、僕の隣に彼女が座った。
「あの、高槻泉さんの作品、よく読まれるんですか?」
金木「……そうですね。だいたい全部読ませてもらってます」
「!……実は、私もよく読ませてもらってて」ゴソゴソ
そう言って、小さい鞄から一冊の本を取りだした。
金木「あ、それ……」
「『黒山羊の卵』……今読まれてるものと、一緒です」ニコッ
金木「そうみたいですね……何処まで読んだんですか?」
「えっと、私は今128ページまで読んでて……」
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- 7 : 2016/02/23(火) 10:44:05 :
彼女の名前は、神代リゼ。
僕が同じ本を読んでるところを見て、声をかけたようだった。
僕たちは小一時間、その小説について語ったあと、また後日食事でも一緒に行こうって言う話になって別れた。
って言う話をヒデにしたところ……、
ヒデ「金木ぃ~、抜け駆けしやがったな~?」
金木「抜け駆けって……ヒデはトーカちゃんがいるんでしょ?」
ヒデ「それがさぁ、電話しても繋がんねーんだよ~」
金木「何それ」
ヒデ「くっそー、何で金木だけ……」
金木「ヒデはがっつき過ぎなんだよ。それじゃ、もう時間だから」
ヒデ「ちょ、どこ行くんだよ!」
金木「リゼさんとの待ち合わせ、このあとなんだ。はい1000円、おつりはあとで返してね」
「この裏切り者!!」なんて言うヒデをよそに、僕はビックガールというレストランを後にした。
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- 8 : 2016/02/24(水) 08:37:30 :
場所は変わって、おしゃれなカフェ。
向かいにはリゼさん。
しっかりと化粧もされていて、この前見たときよりも数段華やいで見えた。
服装も前より露出があって、少し目のやり場に困ってしまう。
金木「リゼさんは、高槻泉の作品で、お気に入りとかありますか?」
リゼ「そうですね……今読んでいる、コレが今のお気に入りかしら」
金木「『黒山羊の卵』ですか……確かに、コレの心理描写はとても惹かれますよね」
リゼ「はい。ホントに、高槻さんの作品は面白いものばかりですよね」
金木「ですね。……あれ、そういえば、リゼさんはサンドイッチしか食べないんですか?」
リゼ「あ……ちょっと、ダイエットしてて、、、ごめんなさい、お手洗いに」
金木「あ、どうぞ」
……全然太ってないんだけどなぁ。
やっぱり、女の子の感覚って男とズレてるんだなぁ。
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- 9 : 2016/02/24(水) 16:30:07 :
- 期待
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- 10 : 2016/02/25(木) 14:18:09 :
- 佐々木さん、期待感謝です!!
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- 11 : 2016/02/25(木) 17:34:29 :
- 期待
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- 12 : 2016/02/26(金) 12:17:19 :
- たいしさんも、期待ありがとう!
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- 13 : 2016/02/26(金) 16:40:17 :
金木「すっかり暗くなっちゃいましたね」
リゼ「そう、ですね」
僕たちはカフェでの話に夢中になって時間を忘れてしまい、日が完全に暮れてしまった。
金木「リゼさんの家って、どの辺りなんですか?」
リゼ「……この先です」
彼女が指さしたのは、僕の家とは逆の方向だった。
金木「あ、じゃあ、ここでお別れですね」
リゼ「あ、あの……」
金木「どうしました?」
リゼ「いえ、その……この先の高田ビルの事件、知ってますか?」
金木「ああ……確か喰種の……」
リゼ「……ずっと、そのことが頭から離れなくって、夜も寝れなくって」
そう言う彼女の手は、震えていた。
リゼ「帰宅するのも、一人じゃ不安で……」
金木「……それじゃあ、僕が送ります」
リゼ「!……ありがとう」ニコッ
彼女は……とてもとても、嬉しそうな笑みを浮かべた。
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- 14 : 2016/02/27(土) 14:01:16 :
リゼ「……」ピタッ
人気のない道で、彼女は足を止めた。
金木「リゼさん……?」
リゼ「……不思議、ですよね」
金木「不思議、ですか?」
リゼ「はい……高槻さんの作品がきっかけで、たまたま同じ所を読んでて……今こうして、一緒に歩いてるなんて」
僕をみる彼女の目は、熱を帯びているように潤んでいた。
リゼ「……」スッ
金木「り、リゼさん!??」ビクッ
リゼさんはいきなり、僕の胸へ体を寄せてきた。
リゼ「私、気になってたんです」
彼女の手が、ゆっくりと僕の背の方へ伸びていく。
金木「(や、ヤバい……理性が!!)」
リゼ「あなたのこと……」
そして、彼女の手がしっかりと僕の背まで回ってきたとき……、
リゼ「……一体、どんな味がするのか」
首から肩にかけて、激痛が走った。
金木「え、な……?」
ドサッと、僕は後ろにしりもちをついた。
リゼ「ん……はぁぁぁ、美味し」ニコォ
あぁ、そう言うことか。
リゼ「どうして、人間の肉はこんなにも美味しいのかしら?」
喰種だったのか……。
金木「う……(とにかく、逃げなきゃ!)」ダッ!
リゼ「うふふ……待ってぇぇ?」
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- 15 : 2016/02/28(日) 14:12:29 :
工事中の看板が立つ、鉄骨がむき出しの現場へ走る。
金木「はぁ……はぁ、」
必死で、必死で走った。
でも、わかっていた。
逃げきれないだろうって事は。
リゼ「金木くぅん、逃げちゃダメよ?」ヒュッ!
彼女の腰から出ているもの……赫子に、足を取られる。
金木「いっ、、、この!」
こけた拍子に鞄から出てきたシャーペンを突き立てるが、呆気なくペキッと折れた。
その隙に、また逃げようとするが……ブオン!!
金木「う……ぁ」ガッシャァァァン
横凪に、彼女の赫子に吹き飛ばされる。
リゼ「あらぁぁ?金木くぅん、大丈夫?」ウフフフ
金木「……」
ダメだ。
もう、意識が飛びそうだ。
金木「(……僕は、この人に喰われるのか)」
喰種は、僕たち人間を喰べなければ生きていけない。
喰種も人も、命の重さは同じ。
生きていくためにはしかたないことだと思ってる。
金木「(でもやっぱり……嫌だな)」
どうしても、思ってしまう……生きたいと。
リゼ「あら、もう死んじゃったかしら?まぁいいわ。先週の二人とどっちが美味しい……あら?」
ドガアァァァン!!!!!
耳を突く、その音を聞いて、僕の意識は途切れた。
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- 16 : 2016/02/29(月) 13:19:39 :
肋骨の骨折と、全身打撲。
目が覚めた時に、看護師の人から聞いた。
何でも、鉄骨の落下事故があったらしく、その下敷きになった女性は即死。
僕はすぐに救急搬送されて、一命を取り留めた。
金木「(喰種……三年ぶり、かな)」
高校の時に出会ったのも、女の子の喰種だったっけ。
もう、元気になったかな……?
「金木さーん、お加減はいかが?」
金木「……まだちょっと、気持ち悪いです」
「あらら……でも、ご飯はしっかり食べないと退院できませんよ?」
看護師さんは、テーブルの上に残された鮭の切り身や味噌汁を見て、そう言った。
金木「……ハンバーグとか、出ないんですか?」
「ダメよ?ハンバーグなんて脂っこいもの。体に負担のかからないものにしなくちゃ」
金木「ですよね……」
置かれた一膳の箸を持ち、いわゆる病院食を口に運ぶのだった。
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- 17 : 2016/02/29(月) 15:18:46 :
三年前……僕が高校ー年生の時だった。
学校帰りにヒデとゲームセンターに行ったり、バッティングセンターにいったりと、ブラブラしてたら日が暮れていた。
ヒデとは、家の方向が逆だからすぐに別れた。
その途端、急に雨が降り始めた。
僕は鞄を雨除けにしながら、走った。
日が完全に沈んでしまってたから、近道のつもりでいつもと違う道……裏路地を通った。
ザアアアア‥‥
金木『(確か、ここを抜ければ……!?)』ガッ!!
ベシャア!
僕は、何かに躓いたようだった。
金木『いっつ……!!?』
目を向けると……人だった。
それも、血まみれだった。
『……グ、アァ』
傷が痛むのか、呻くような声だった。
金木『だ、大丈夫ですか?』
『あ……ガハッ、ゲハッ!!』ドババ!!
その人……少女は、せき込むように血を吐いた。
金木『ちょ、!?』
その肩を持ったときだった。
目があった。
その、赫眼と……。
金木『ぐ、喰種……!』
『!……にん、げ……くそ、、れ』
僕に気づいたらしい、その喰種は、這うように、遠ざかろうとした。
金木『う、動いちゃダメだ!』
『ぅ……せ、ぇ』
気を失ったのか、ガクッと、力が抜けたみたいだ。
金木『……』
よく見ると、左わき腹の肉がごっそり抉れていた。
治癒能力の高い喰種でも治ってないところを見るに、衰弱しているんだろう。
金木『(このまま放っておけば、喰種だとしても……)』
……僕は雨の降る中、人のいない道を選んで、その喰種を背負って家に向かった。
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- 18 : 2016/02/29(月) 16:40:44 :
ヒデ「にしても、ホントに鉄骨に巻き込まれなくって良かったな!」
僕は無事退院して、ビックガールのハンバーグを食べに来ている。
退院祝いらしく、ヒデの奢りで。
金木「……僕も生きてたことにびっくりだよ」
彼女……神代リゼが喰種だって事は誰にも話してない。
話したところで、なにがどうなるってわけでもないから。
ヒデ「死んでたらシャレになんねぇって」
金木「確かに」パクッ
うん、やっぱりここのハンバーグは美味しい。
ヒデ「ところで金木、今日は暇だろ?」
金木「ん?」モグモグ‥‥
ヒデ「ひ・ま・だ・ろ!!!」
金木「お、、おう」
ヒデ「あんていく、今日こそ一緒に行くぞ」
金木「却下」
ヒデ「拒否権は無い。何故ならこいつは俺の奢りだからだ」
金木「ぅ……待ってて、今吐き出すから」
ヒデ「なぁ、行こーぜーあんていく~」
金木「……っていうか、トーカちゃんって子はもうダメなんでしょ?電話も繋がんないって言ってたじゃん」
ヒデ「いや、それがさ!この前あんていくに行ってトーカちゃんと話したわけ!で、お前の話したら、会ってみたいってさ!」
金木「僕の話?」
ヒデ「おう!で、電話番号が間違ってたらしくって新しいのゲットしたんだぜ!」
金木「ふ~ん」
ヒデ「今日連れてくって言っちまってんだ。頼む!」
金木「……はいはい」
ヒデ「よっし!じゃあ早速」「あ、すいません」
金木「ビックハンバーグ、を一つ追加で」
ヒデ「な!??」
金木「ヒデの奢りに感謝」
こうして僕は、あんていくへ連れて行かれる代償としてヒデの財布へダメージを与えた。
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- 19 : 2016/02/29(月) 17:34:54 :
からんからん。
僕は、あんていくと言う喫茶店にやってきた。
もちろんヒデと一緒に。
鐘のついたドアを開け、店内へ。
金木「へぇ……オシャレな所だね」
ヒデ「だろぉ?」ニヤニヤ
アンティーク調の内装、落ち着いた雰囲気……読書をするのにぴったりかもしれない。
ヒデ「ここ、座ろうぜ」
窓際のテーブル席だった。
ヒデ「あれ……?」キョロキョロ
金木「何してるの?」
ヒデ「いや……トーカちゃんが見当たらなくてさ。今日来るって伝えてたんだけど」キョロキョロ
ヒデのヤツ、実は避けられてるんじゃないのかな?
金木「……とにかく、何か注文しようよ。すいませーん」
カウンターにいた、女性の店員さんに声をかける。
「はい、ご注文は……あら、ヒデ君じゃない?」
ヒデ「入見さーん、トーカちゃんは今日居ないの?」
どうやら知り合いらしい。
ヒデは一体、僕の居ない間にどれだけここに通ってたんだろ?
入見「今ちょうどお客さんが来ててね、奥に入っちゃってるのよね」
ヒデ「マジか~」グデー
入見「でも、もうすぐ終わると思うから、そろそろ出てくるんじゃないかしら?」
ヒデ「だといいんですけどー。あ、ブレンドコーヒー二つで」
入見「はいはい……少々お待ちください」ニコッ
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- 20 : 2016/02/29(月) 22:03:41 :
待つ事五分……。
入見「はい、ブレンド二つです」
ヒデ「ありがとうございます!まぁ、ゆっくり待とうぜ、金木!」
金木「……はいはい」ズズズ‥‥
……苦いな、やっぱり。
父さんはよく作って飲んでた……まぁこれしか味が解らないんだけど、僕の口には合わなかった味。
昔と変わらず、苦手なものは苦手です。
ヒデ「んー、やっぱここのコーヒーはいいな!」
金木「(……ヒデは何でこの味がわかるのかな)」
いやまぁ、その場の空気を読んで言ってるだけかもだけど。
ヒナミチャン、マタネ
サ、サヨウナラ
金木「(ん……?)」
さっきの店員……入見さんの声がしたので目をやると、カウンターの奥にある扉が開いて、二人の親子が出て来た所だった。
金木「(……さすがにあの二人のどっちかがヒデの言う子なんて事はないよね)」
人妻だし……子供だし。
なんて思ってるともう一人、今度は店員の制服を着た女の子が出てきた。
ヒデ「あ、トーカちゃーん!」フリフリ
手を振るヒデに、苦笑いを返している。
金木「(あの子がヒデが言ってたトーカちゃんか。でも、何処かで見たような……!!)」
思い出した。
あの時の……!
金木「(そっか……頑張ってるんだね)」
ヒデ「な?可愛いだろ?」ニヤニヤ
金木「うん、そうだね。……じゃ、僕はもう帰るよ」ガタッ
彼女……トーカちゃんはまだ気づいてないみたいだし、その前に居なくなった方がいい。
もちろんヒデに「ちょ、待てって!」って言われたけど、無視させてもらった。
今度、謝っとこう。
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- 21 : 2016/03/01(火) 13:25:03 :
三年前、何故か重傷を負ってて、僕が助けた少女の喰種。
たぶん、彼女がそう。
その彼女が、喫茶店で働いていた。
つまり、人間と関わりながら生きていこうと頑張ってる。
そんなところに僕が居ちゃ、きっと邪魔になる。
彼女はもちろん僕の顔を覚えてるだろうし、何より僕が彼女……霧島トーカが喰種である事を知ってるんだから。
金木「(……だからヒデをおいて出て行ったんだけどなぁ)」ニガワライ
「はじめまして、霧島トーカです」ペコッ
こちらこそはじめましてと、ヒデが連れてきた彼女……霧島トーカに挨拶を返す。
ヒデ「な、可愛い子だろ?」ヒソヒソ
金木「まぁそうだけどさ……この子、どうして上井大学にいるの?」ヒソヒソ
ヒデ「この子、来年受験らしくってさ、大学の見学したいって」ヒソヒソ
金木「あー、なるほど」ヒソヒソ
この子、大学にまで通う気なのか……。
すごいな。
父さんにだって、人間の世界に溶け込むのは苦労してたみたいなのに。
ヒデ「よし、じゃあ早速行ってみよー!!」
トーカ「あ、はい……」チラッ
金木「!……えっと、行こっか」ニコッ
トーカ「……はい」
んー、僕は一体どう接したらいいんだろうか。
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- 22 : 2016/03/01(火) 14:33:30 :
ヒデ「ここに図書館があって、あっちの校舎が科学棟、あっちが食堂で……」
っていう具合に、ヒデが大学内を案内して回った。
僕と、この霧島さんはそのヒデの後を追って歩いた。
ヒデ「……っと、だいたいこんなもんかな」
トーカ「ありがとうございました。参考にします」
ヒデ「いいっていいって!」
トーカ「金木さんも、ありがとうございました」ペコッ
金木「あ、いや、僕何もしてないし」
トーカ「……また、会えたらいいですね」
金木「そ、そうだね」
また会えたらいいって……?
もしかして、僕のこと覚えてないのかな?
オーイ、ナガチカー
ヒデ「ん……?あ、先輩?」
呼ばれたのに気づいたヒデは、近づいてくる上級生の方へ目を向けた。
「よっ!お前、この前言ったビデオは借りたか?」
ヒデ「あっ……すんません、まだです」
「まぁ急かすつもりはないが、今日中には目を通しといてくれよな。明日、実行委員会議があるんだから」
ヒデ「わかりました!」
「西尾にも言っといてやるから早めにな。またな」
ヒデ「ありがとうございます!」
金木「……ヒデ、今の人は?」
ヒデ「ああ、俺さ、学園祭の実行委員になったんだ。あの人はそこの先輩」
金木「そういうこと……ヒデは昔からそう言うのが好きだったね」
ヒデ「おう……ってことで悪いけど、用事が出来ちまった。ごめん、トーカちゃん!」
トーカ「あ、いえ……私もこれからバイトなので」
ヒデ「ホントごめん!また今度連絡する!じゃ、行くぞ金木!」
金木「何処に?」
ヒデ「西尾錦って先輩の所に、資料のビデオ借りに行こーぜ!」
トーカ「!」
金木「?、、霧島さん?どうかし」「ほら行くぞ!またねトーカちゃん!」グイグイ
と言いつつ、ヒデは僕を強引に引っ張っていってしまうのだった。
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- 23 : 2016/03/01(火) 15:02:13 :
ヒデ「っと、確かここだったな。西尾先輩、失礼しまーす!」ガラガラ!
「きゃっ!!?」
っと、ヒデがドアを開けた途端に女性の短い悲鳴。
そして、そのドアから顔を赤くした女の人が走って出て行った。
「永近ぁー、ノックぐらいしろよな」ポリポリ
ヒデ「あ、いやその……すんません」
つまり……そう言うこと、してたって事かな。
僕は見てませんよ、はい。
西尾「ったく、めんどくせー……ん?そいつ、永近の連れか?」
ヒデ「はい、金木って言います。ガキの頃からの腐れ縁ってやつです」
金木「はじめまして、金木です」ペコッ
西尾「ふーん……で、何の用?」
ヒデ「学園祭の資料のビデオ借りにきました!」
西尾「あー、そういや言ってたな。ちょっと待ってろ」
ヒデ「あ、俺も手伝いますよ!」
西尾「おう、じゃあそっち漁ってみてくれ」
探すこと数十分……。
西尾「永近」
ヒデ「はい?」
西尾「無ぇわ。多分家にある」
ヒデ「マジっすか……」
西尾「おう。……お前、この後俺の家に来るか?」
ヒデ「え、いいんすか?」
西尾「別に部屋に入れてやる訳じゃねーし」
ヒデ「じゃあ、ついていきます!」
って言う流れになったから、僕はそろそろ帰ろうかなって思ったところ……、
ヒデ「金木も連れてっていいっすか?」
西尾「好きにしろ」
ということらしい。
で、今僕たち三人は大学を出て西尾先輩の家に向かってる。
ヒデ「そういえば、俺らが行く前にいた女の人って彼女さんですか?」
西尾「当たり前だろ。それ以外だったらクズやろうじゃねーか」
ヒデ「そうっすよね」
西尾「……一応聞いとくが、何も見てねーよな?」
ヒデ「勿論です!」
金木「僕も見てないです。前にヒデがいたんで」
ヒデ「ちょ、金木!俺を売るつもりか!?」
金木「本当のことだから仕方ないでしょ」
西尾「まぁいいけどよ……お、鯛焼きでも食うか?」
ちょうど目の前に、鯛焼きの屋台があった。
アンコの甘い匂いが食欲をそそった。
ヒデ「いいんですか!?」
西尾「おう。ちょっと待ってろ」
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- 24 : 2016/03/01(火) 15:03:42 :
西尾「ほらよ。金木も」
ヒデ「いただきます!!」
金木「ありがとうございます」
言って、僕たちは立ち止まってそれぞれ熱々出来立ての鯛焼きを口にした。
西尾「うん、絶妙な甘さだ」
その通りだった。
割としっぽの方にまで庵がぎっしりと詰まっていて、何処を食べてもおいしかった。
金木「……」ジーッ
ヒデ「!……金木、先輩のこと睨むなよ」ヒソヒソ
金木「あ、うん、ごめん」
ヒデ「お前のその癖、直した方がいいぜ?」
金木「わかってるよ」
昔からの癖。
殆ど初対面の人と食事をすると、何か違和感がないか探してしまう。
多分、心の何処かでその人が喰種なんじゃないかと疑ってるんだと思う。
金木「(まぁ、喰種だとしても、CCGに情報を売ったりなんて絶対にしないんだけどね)」
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- 25 : 2016/03/01(火) 15:09:07 :
ヒデ「西尾先輩、家ってこの辺りなんですか?」
西尾「おう、後少しってところだ」
さっきの人通りの多い道から外れて、今度は人気の少ない、少し薄暗さを感じるような道。
……この辺りに家なんてあったっけ?
西尾「そこの角を曲がって、目の前のところが……終着点だ」
西尾先輩に連れられて、角を曲がると、行き止まりだった。
ヒデ「え、家なんて何処にも……」
ビュッ、ドカッ!!
ヒデが吹き飛び、壁に叩きつけられる。
西尾先輩の、回し蹴りで。
金木「ヒデ!??」
西尾「おっと」ガッ!!
金木「ウグッ!???」
西尾先輩の手で口を塞がれ、そのまま締め上げてくる。
もう、足も浮いてしまいそうだった。
下顎が、砕けてしまいそうに、ミシミシと音を立てている。
西尾「はぁ……、別に一人喰えば満足だったんだが……まぁいい」ニヤニヤ
僕をみる西尾先輩の目は、赫眼だった。
つまり、喰種!!
金木「(何でこうも、立て続けに……!!)」ブン!
西尾「効かねーよ、そんな蹴り」
僕の力のこもっていない蹴りは、一切効いている様子はない。
でも、僕の狙いは……、
金木「(その……赫眼だ!!)」ブン!!
西尾「痛っ!???」
蹴りは、西尾先輩の左目に直撃。
刃物すらも通さない、その喰種の唯一の弱点。
その粘膜を狙うことで、何とか僕は、その手から逃れることが出来た。
金木「ケホ、ケホ!!(……でも、出来れば両目に当てたかったな)」
西尾「こんの、クソガキ!!」
ドグッ!!!
金木「ぅ……あ、ゲエェェ!!!」トボボボボボ!
先輩の拳が、僕の腹にめり込んだ。
血と一緒に、胃の中に入っていたものが逆流してきた。
西尾「くそったれ……治んのに時間かかんだぞ、目はよぉ!!!」
ドガッ!!!
ズザザザ…
空き缶でも蹴るように軽く、僕をヒデの方へ蹴飛ばした。
金木「ヒ……、デ」
……僕はいい。
別に、喰種に喰われるのはいい。
家族なんてもういないし、喰種も生きていくために仕方ないことだと理解してる。
でも、ヒデはダメだ。
僕とは違う。
ヒデには親だっているし、何より死んでほしくない。
西尾「お、まだ意識があんのか。まぁ別に良いけど」スッ
先輩の足が、僕の頭に乗る。
このまま、踏み抜くつもりだろう。
金木「(ヒデ……)」
ごめん、僕にはもう何も出来ない。
意識がもう、無くなりそうだ。
でももしかしたら、西尾先輩は僕を喰って満足するかもしれない。
ヒデは、すぐに気絶したから西尾先輩が喰種だと気づいてないかもしれない。
ヒデにはまだ、生きる可能性がある。
僕はその可能性を、願ってるよ。
そうして、徐々に西尾先輩は足に力を込め始めた。
金木「(……もう、痛いのかも判んないや)」
……いや、痛くない?
西尾先輩の足が頭に乗っている感覚が、無い?
金木「(どういう……ことだ?)」
薄れていく意識の中、目を開けると……数メートル先に、西尾先輩が転がっていた。
そして僕の目の前には、誰かの足があった。
僕とヒデに背を向けるように、西尾先輩に向かっていくように立っていた。
何か喋っているようだが、それを聞き取るには、今の僕には難しかった。
金木「(だ、れ……?)」
ここで僕の意識は、プツンと音を立てるように、呆気なく途切れた。
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- 26 : 2016/03/01(火) 15:11:04 :
はい、このssは終了でっす。
読んでくれた人居たならありがとうございました。
また続きのss書くんで、そっちも見てやってくださいな。
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- 27 : 2016/03/01(火) 15:16:44 :
- http://www.ssnote.net/archives/43876
続きのURLでっす。
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- 28 : 2016/12/21(水) 22:03:46 :
- はい
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