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赤信号を渡ろうね
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- 1 : 2016/01/24(日) 17:16:58 :
- すぐに終わります
しばしの間お付き合いくださいm(_ _)m
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- 2 : 2016/01/24(日) 17:18:50 :
- 私は見える世界が他人と違う
視力は両目とも平均以上あるし、幽霊や妖怪の類が見えるわけでもない
私が他の人と違うのは『色』
私の目に映る全ての色は全て反対色に見えてしまう
例えば白の反対色は黒
おにぎりはご飯が黒くてノリが白く
目もみんなが黒目と呼ぶ部分は白く、逆に白目の部分は黒く見える
五歳くらいまでは普通に綺麗な色が見えていた
なのに六歳を迎える数週間前、突然世界が変わった
何の前触れもなくて、原因も分からなかった
謎の病気を発症してからもう十年
今ではすっかり慣れてしまって、特に困ることは無い
だけど色はすべて淀んだようにしか見えなくて
あの頃みたいに綺麗な夕焼けの朱やエメラルドグリーンの海を見ても、古いカメラで撮ったみたいに薄汚れた色
だから今日、私はあの頃の鮮やかな色を取り戻す
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- 3 : 2016/01/24(日) 18:47:54 :
- 今までずっと病院に通って検査を受けてきた
この目の研究も進んで、遂に手術を受けられる
ことになった
バスと電車を乗り継いで、都内の大病院の前に来ている
この信号を渡れば、次にここを渡る頃にはきっと綺麗な世界が見えている
そう期待して、いつものように鈍く光る赤信号を渡った
『赤信号を渡ろうね』
お母さんに昔教えこまれたのが懐かしいな
お父さんとお母さんは忙しくて、ずっと一緒にはいられない
二人とも仕事を休むと言ってくれたけど、命に関わる手術をするわけじゃないし、失敗する可能性も低いらしいから遠慮した
手術が始まる前のお医者さんとの話が終わると、二人は私を抱きしめて
「きっと治る」
そう言ってくれた
二人を見送った後、私は手術室へ運ばれた
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- 4 : 2016/01/24(日) 20:32:27 :
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「痛いところはありませんか?」
お医者さんの声がする
ありません、と応えた
「では、包帯を取ってみて下さい」
いよいよこの時がきた
少し緊張しながら、ゆっくりと包帯を解いていく
目を覆うものがなくなって、瞼越しに天井の明かりがよく分かる
そして…目を開いた
「綺麗……」
その言葉しか出てこなかった
清潔感のある真っ白な壁
ほんのりと赤い人の頬
そしてどこまでも続く青空
この病気にかからなければ感じることの出来なかった感動
何でもない当たり前の色が、こんなにも輝いて見える
嬉しくて、感激で、感謝でいっぱいで
涙が溢れて止まらなかった
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- 5 : 2016/01/24(日) 21:54:10 :
- それから三日間、様子見のために入院した
何の問題もなくて、今日やっと休みが取れたお父さん、お母さんと会える
来なくていいと言ったのは私だけど、やっぱり会えると思うと嬉しくて待ちきれない
早くこの世界の感動を伝えたい
二人の本当の色が見たい
もうすぐで着くと連絡があって、私は駆け出した
病院の外まで走って、あの信号機の前で二人を待った
向かいにある駐車場に車を止めたお父さんとお母さんが出てきた
私が立っている横断歩道の向こう側
笑顔で手を振ってくれる
そして私はいつものように、赤信号で飛び出した
~END~
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- 6 : 2016/01/24(日) 21:55:37 :
- 以上で終了になります
閲覧ありがとうございましたm(_ _)m
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- 7 : 2016/04/09(土) 20:57:37 :
- 乙ですっ、悲しい話ですね(´・_・`)
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- 8 : 2016/04/10(日) 00:11:02 :
- ( ゚д゚)元 : みかん死神さん
閲覧ありがとうございました
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