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《銀のエルフと冥府の石》③
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- 1 : 2016/01/15(金) 11:48:57 :
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指輪物語やホビットの世界観を進撃の巨人のキャラで描きます。第3話です!
前回、故郷に帰ってきたエレンたち三人。
多少のトラブルはありましたが、なんとか街に入ることができ、家族と再会することもできました。
とくにミカサは、エレンの両親に深い愛情と、エレンを守るという使命を受けたことで、(すこし空回りしてしまった感がありましたが、)エレンとの絆がすこしだけ深まったと思っています。
そういえばアルミンのことを書き損ねてしまいましたが、彼は彼で、おじいちゃんや近所の人とステキな時間を過ごしたのだろうと思います。(王都のおみやげもいっぱい買ってきてましたからね!)
さて、今回からは本格的に旅を始めたいと思います。
しかしその旅立ちは『ホビット』のビルボのように陽気なものではなく、むしろ『指輪物語』のフロドのように危険に満ちたものとなるでしょう。
新たな出会いと別れ、そして冒険が彼らを待っているのです。
最後になりましたが、読者の皆様にはいつも励まされます。
コメントをいただく方にも、そうでない方にも、僕のモチベーションを支えていただいてます!
まだまだ未熟な文章ですが、暖かく見守っていただけると幸いです!
それでは、始めます!!
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- 2 : 2016/01/15(金) 15:20:42 :
- 期待です!
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- 3 : 2016/01/15(金) 15:50:05 :
≫2
ありがとうございます!
頑張ります!
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- 4 : 2016/01/15(金) 18:07:47 :
………
ここはどこだろう…
見覚えのある天井だ…
ここはわたしの部屋なのだろうか…
なんだかとても懐かしい気分になる…
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- 5 : 2016/01/15(金) 18:08:56 :
ギシッ
薄暗い廊下に出ると床の軋む音がした。
よく磨かれた窓からは青白い空と、ほのかに色付く山の木々が見える。
家のそばには粗末な棒切れで囲われた畑と、積み上げられた蒔があった。
ああ、そうか…
わたしはかえってきたのか…
“わたし“の家に…
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- 6 : 2016/01/15(金) 18:09:53 :
おとうさんとおかあさんはどこだろう……
まだねてるのかな…
はやくふたりにあいたい…
ふたりのへやにいこうかな…
いつもは入っちゃダメっていわれてるけど、
ひさしぶりにかえってきたんだから、ふたりともわかってくれるはず…
………ん?
なんで入っちゃだめなんだっけ……
どうしてわたしはここにいるんだっけ……
なんだかよくわからないまま、両親の寝室まできてしまった。
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- 7 : 2016/01/15(金) 18:11:39 :
……?
なんだろう…
なんだか、へんなにおいがする…
「その扉を開けてはいけない!!」
!?
ドアの取っ手に手をかけようとしたとき、誰かが叫んだ…
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- 8 : 2016/01/15(金) 18:12:20 :
なんで?
なんであけちゃダメなの?
わたしのおとうさんとおかあさんがいるんだよ?
わたしのかえりをまっててくれたの。
わたしのじゃまをしないでよ。
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- 9 : 2016/01/15(金) 18:13:54 :
ゆっくりと取っ手を回し、戸を押し込む
すぐに部屋の中のにおいが自分にまとわりついてきて、
それがベットの上からきていることがわかった。
……⁉︎
おとうさん!
おかあさん!
「ああ、だから言ったのに……」
血まみれの両親の姿を見て、少女はようやく悟った。
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- 10 : 2016/01/15(金) 18:14:38 :
そう…
これは夢…
わたしの頭の中の幻…
いつも見ている悪夢だったんだ……
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- 11 : 2016/01/15(金) 18:16:25 :
- ギイ…
そうだ…
ギシギシギシ...
次はわたしの番だった……
ニタァ....
醜いばけものめ…
チャキ....
わたしから、大切なものを、奪った…!
スッ....
殺してやる……
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- 12 : 2016/01/15(金) 18:18:45 :
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
「お前らなんか!わたしがころしてyザシュ...
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- 13 : 2016/01/15(金) 18:19:45 :
「いやあぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ガバ!!
「ハア、ハア、ハア、…っ!」ギュ...
また見てしまった……!
あの時の夢…
家族を失ったときの夢だ…
「ん……」モゾモゾ
力なく毛布を払いのけ、やっとの事でベットから這い出ると、窓の外に目をやった。
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- 14 : 2016/01/15(金) 18:23:18 :
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ああ、よかった…
ここは壁の中だ…
もうすぐ朝が来る…
もう大丈夫。
ここにオークはいないんだ…
わたしの命は今日も安全だ……
そう、
そう思っていた……
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- 15 : 2016/01/15(金) 19:49:30 :
- 期待
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- 16 : 2016/01/15(金) 20:25:43 :
-
≫15
ありがとうございます!
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- 17 : 2016/01/15(金) 20:45:09 :
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東門 城壁
門兵「ハンネス隊長!こちらへ!」
ハンネス「どうした!何があった!」
ハンネスが急いで城壁に登ると、東の空からどす黒い雲が迫ってくるのが見えた
門兵「あの雲、なんだか変です。ついさっきまで雲ひとつなかったのに……風向きも逆だ…」
ハンネス「……」
キッツ「隊長…!」
ハンネス「キッツ、兵を東の城壁に配置しろ。今すぐにだ!」
キッツ「はっ!?す、すぐにですか?」
ハンネス「そうだ、事態は一刻を争う!」
門兵「な、何が来るというのですか⁉︎」
ハンネス「……わからん」
ハンネス「だがなにか、とてつもなく邪悪なものがくる……」
キッツ「……!っ、部隊長集まれぇ!」バッ
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- 18 : 2016/01/15(金) 21:55:26 :
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カン カン カン カン!!!!
けたたましい非常警報が早朝の街に鳴り響く
「なんだ!いったいどうしたんだ⁉︎」
「わからない!とにかく街の西側に逃げろと言われた!」
「東から何か来るらしいぞ!」
「そんなバカな!まさかアモン=アノールが落とされたのか⁉︎」
「お、おかあさぁん…」ギュッ
「大丈夫。お父さんが守ってくれるわ……」ナデナデ
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- 19 : 2016/01/15(金) 21:56:07 :
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ドタドタドタ
ガチャ!
ミカサ「エレン!起きて…!」
エレン「ミカサ…」
ミカサが乱暴にドアを開けると、そこにはすでに寝巻きを着替え、鎧をまとったエレンがいた
ミカサ「今日は、随分と早起きなのね。」
エレン「ああ。こうも鐘がうるさいと、寝るに寝れなくてな…」
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- 20 : 2016/01/15(金) 21:59:56 :
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チャキ...
エレン「とうとう来たんだな……戦う時が、」
支給された剣を手に取りつぶやく
エレン「正直、こんなに早くこの剣を振るう日が来るとは思ってなかったぜ…けどよ、」
シュルン!
エレン「この剣を与えられた時から、覚悟はできてる。」
エレン「ついてきてくれるか?ミカサ」
ミカサ「ええ、共にいきましょうエレン。」
ミカサ「戦場へ」
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- 21 : 2016/01/15(金) 22:01:22 :
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グリシャ「カルラ、準備はいいか!?」
カルラ「あなた!いったい何が…」
グリシャ「……」
グリシャ「奴らがやってきたんだ…」
カルラ「いったいなんのこと?奴らっていったい誰なの?」
ドタドタドタ
エレン「母さん!」
カルラ「エレン!ミカサも!……あ、あなたたち、その格好は…!」
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- 22 : 2016/01/15(金) 22:04:56 :
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ミカサ「お母さん。聞いて。」
カルラ「あなたたち、なにを考えているの!?」
ミカサ「私たちは兵士になったの。家族を、お父さんとお母さんを守るために……だから、戦いに行かなくては。」
カルラ「ミカサ……」
エレン「ごめん母さん……でも俺たち、ここで逃げたら、なんのために兵士になったのかわかんねえよ!」
エレン「だから行かせてくれ!お願いだ!」
カルラ「エレン……あなたたちはまだ本物の兵士ではないのよ?」
カルラ「戦場に出たらすぐに死んでしまうわ!」
ミカサ「……」
グリシャ「カルラ…行かせてあげなさい」
カルラ「あ、あなたまで…!なにを言うの!」
グリシャ「こうなることは、3年前にこの子たちを送り出した時に覚悟していたはずだ!」
カルラ「そんな……まだ、子供なのよ…?」
グリシャ「行かせてやるんだ、カルラ…!」
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- 23 : 2016/01/15(金) 22:06:25 :
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ガチャ!!
アルミン「エレン!ミカサ!」
エレン「アルミン!」
家の戸を乱暴に開けたアルミンの体もまた鎧に覆われていた
アルミン「その格好……覚悟はできているんだね?」
エレン「ああ…俺たちは兵士だ!」
アルミン「わかった…!いこう!」
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- 24 : 2016/01/18(月) 12:04:02 :
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ザッ ザッ ザッ
城壁には弓兵が配され、門前には長槍を持った兵士が整列した。
キッツ「隊長!編成完了いたしました!」
ハンネス「ご苦労!」
ゴゴゴゴゴ.....
ハンネス「っ、来たか…!」ダッ
城壁に登り、山の頂に目を向けると、そこには黒い塊がうごめいていた。
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- 25 : 2016/01/18(月) 12:09:16 :
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ブォーーー!!
ブォーーー!!
弓兵「な、なんだこの音は⁉︎」
ハンネス「オークの角笛だ……」
弓兵「⁉︎」
ドンドンドンドンドンドンドンドン.....
『ウォーーーー!ハッ!!!』
ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!
低い太鼓の響きを合図に、黒の軍団が姿を現した。
その数は数千を越え、山肌を黒く染め上げる。
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- 26 : 2016/01/18(月) 12:12:44 :
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ザワザワ..
弓兵「な…なんという数だ……!」
弓兵「あれはオークか!?」
弓兵「オークがあんなに…!バカな、ありえない!」
キッツ「う、うろたえるな!留まれェ!」
本来ならば数十人程度の群れで行動するオーク達が軍をなしていることで、兵士達の間には動揺が走った。
ウッウッウッウッ!!
ガチャガチャガチャガチャ!!
オーク達が鎧を叩いて威嚇を始めると、軍団の先頭に、馬にまたがった漆黒の騎士が踊り出る。
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- 27 : 2016/01/18(月) 12:14:41 :
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『かの街に、冥王の求める宝がある…』
『街を焼き払え!宝を探すのだ…!』シュルン!!
ウォーーーー!!!!
その体は手足の指先までとげとげしい鎧に覆われ、肩からは破れたローブを垂らしている。
姿形は人間のようであるが、目は赤く、顔にはひっかかれたような傷が深く刻まれている。
ハンネス「っ、弓隊、構えぇーー!!」バッ
ギリギリギリ.....
ハンネスの号令と共に、壁の上に列した兵士達が一斉に矢をつがえた。
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- 28 : 2016/01/18(月) 12:16:54 :
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『掛かれェェーーー!!!』バッ!!
ウオォォォォ!!!!
ドドドドド......
山腹から下ってくる数千のオーク
その手には禍々しい刀や槍、斧を持ち、不揃いな鎧がかえって不気味な様相を見せる。
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- 29 : 2016/01/18(月) 12:17:37 :
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ハンネス「放てェェーーー!!」バッ!!
キッツ「放て!」
ビュビュビュッ!
ガゥッ! グォ...! グワァ....
壁上から放たれた矢は鎧を貫き、死体の山を築いていくが、血に飢えたオークの足を止めることはできない。
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- 30 : 2016/01/18(月) 12:25:09 :
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ラガシュ『門をこじ開けろォォ!!!』
トロル『グウォーーー!!!』ドスドスドス!!
軍勢の先頭を行くオークの頭目が叫ぶと、石のハンマーを持ったトロルの一団が前に出た。
ハンネス「トロルを門に近づけるな!トロルを射て!」
ビュッ! ビュッ!
トロル『ウガァァァァ!!』 ドスドスドス!
城門の弓兵はトロルを狙って矢を放つが、分厚い皮膚に覆われたトロルはひるまない。
ハンネス「くっ、来るぞォォ!!門を守れェェ!」
門兵「オオオオ!!!」ガッ!!
屈強な兵士達が取り付いて門を押さえる。
もともと頑丈な門には鉄の閂が下ろされ、さらに木材で補強されていた。
が、
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- 31 : 2016/01/18(月) 12:25:49 :
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ドン!!
門兵「うわあぁぁ!!」ドサッ
トロルの重い一撃は、門を挟んで構える兵士達を吹き飛ばす。
ドン!
ドン!
ドギッ!
バギッ!
門が砕けるのは時間の問題だった
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- 32 : 2016/01/21(木) 09:43:26 :
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キッツ「隊長!このままでは門が持ちません!」
ハンネス「俺が行く!お前はここで弓隊を指揮しろ!」ダッ
キッツ「わかりました!」
ガァン!
門兵「門が、門が破られるっ…!」
ガシャァン!!
ギィィィィ
トロル『『グウォーー!!』』ドスドス
門兵「うあぁぁぁ‼︎‼︎」ダッ
門が開くと同時に、門をこじ開けたトロルたちが城内に乱入した。
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- 33 : 2016/01/21(木) 09:44:08 :
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ハンネス「うおりゃぁぁぁ!!」ヒュッ
ザク!
トロル『ギャウ!!』
ハンネスは城壁からトロルの頭に飛び乗り、その醜い頭に剣を突き刺した。
あまりに突然の攻撃にトロルは身悶えした。
門兵「た、隊長!」
ハンネス「オークが来るぞォ!槍隊構えろォォォ!!」
打ち破られた門から、次々とオークが入ってくる。
オーク『『ガアァァ!!』』ドドドド
槍兵「「うぉーーー!!」」バババッ
門前は大乱戦となった
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- 34 : 2016/01/21(木) 09:45:28 :
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トロル『グォゥ...』
グラッ
ハンネス「うお⁉︎」
トロル『グゥゥ…』
バタ-ン!
ハンネス「うわっ!!」
トロルから投げ出されたハンネスは、乱戦の真っ只中に放り出されてしまった。
ラガシュ『あそこだ!敵の“かしら”をやれ!!』
オーク『オォ!!』
ハンネス「はっ、まずい……!」
急いで懐に手をやるが、そこにあるはずの剣が見当たらない。
ハンネス「なっ、どこだ……はっ!」
剣はトロルの頭に刺さったままになっていた。
オーク『グァォ!』ジャキン
ハンネス「くそっ……」バッ
キィン!!
ハンネス「……⁈」
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- 35 : 2016/01/21(木) 09:47:22 :
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エレン「ハンネスさんはやらせねえよ…!」ギリギリ
オーク『グゥ⁉︎』ギリ
ハンネス「エレン⁉︎」
アルミン「うぉーーー!」ドカッ
オーク『ギャウ!』ドサッ
ミカサ「ふっ…」
ザクッ
オーク『アァ……』
ハンネス「お、お前ら、どうして……なぜ逃げなかった‼︎」ガシッ
エレン「戦いに来たんだ!兵士として!」
ハンネス「ハアハア……な、なにをいって…」
オーク『ギャウゥ!』バッ
ミカサ「ふっ、はぁ!」ザク
オーク『ガゥ…』バタッ
ミカサ「ここは私たちの街。」
ミカサ「愛する故郷が焼かれるのを、黙ってみてはいられない。」
アルミン「やあ!」バスッ
オーク『グオォ…』ドサッ
アルミン「戦わせて下さい!」
三人の目には覚悟の火が宿っていた。
ハンネス「……そうか。わかった、力を貸してくれ!」
エレン「ああ!」
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- 36 : 2016/01/21(木) 18:33:47 :
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黒の大将『北に回れ。奴らを挟み撃ちにするのだ。』
ブォーーー!
ブォーーー!!
ザッザッザッザッ
キッツ「た、隊長!」
ハンネス「どうした⁉︎」
キッツ「敵が北門に!」
キッツ「挟み撃ちにされます!」
東門に多くの援軍を送っていた北門の兵力ははるかに少なく、応援が必要だった。
ハンネス「くそっ、……キッツ!ここは任せる!」
ハンネス「エレン!ミカサ!アルミン!」
三人「!」
ハンネス「北門が危ない!俺についてこい!」
三人「了解!」
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- 37 : 2016/01/21(木) 18:36:08 :
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タッタッタッタッ
ラガシュ『ガァアァ!』ジャキィ
ハンネス「うおっ!」バッ
ラガシュ『ガァ!』ドス
ハンネス「うっ……」
突如路地から現れた大柄のオークはハンネスの脇腹を深く突き刺した。
アルミン「⁉︎」
エレン「は、ハンネスさん!!」
ラガシュ『グゥ…』ニタァ
ハンネス「ぐっ、はぁ…!」ガクッ
キッツ「隊長!!」
ミカサ「うおぉぉぉ!!」ダッ
アルミン「ミカサ!ダメだ!」
ラガシュ『ガァァ!』バキッ
ミカサ「うぐっ…」
オークの豪腕によってミカサの剣は弾かれ、組み伏せられる。
ラガシュ『お前も死にたいのか?』チャキ
ミカサ「うっ……」
エレン「やめろぉぉぉ!!」ダッ
アルミン「エレン!!」ダッ
ラガシュ『ガウッ!』ガツン
エレン「うああ!」バタッ
ラガシュ『』ジロ
アルミン「う、うぅ……」ガクガク
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- 38 : 2016/01/21(木) 18:37:13 :
ミカサ「アルミン!」
アルミン「ミカサ⁉︎」
ミカサ「エレンを連れて、ここから逃げて!」
ミカサ「こいつらに殺される前に!」
ラガシュ『黙れ小娘‼︎』ギュッ
ミカサ「うぅ…は、はやく!!」
アルミン「ミカサ……」
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- 39 : 2016/01/21(木) 18:40:24 :
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ハンネス「うおぉぉぉ!!」ザクッ
ラガシュ『アァァァァ!』
エレン「ハンネスさん!」
ハンネス「ハア、ハア、行け!お前ら!」
三人「⁉︎」
ハンネス「兵士としての役目は十分に果たした!あとは、俺たちに任せろ……!」
ラガシュ『ウォォォ!離せェェ!!』ガッ
背にまとわりつくハンネスを振りほどこうともがくが、ハンネスは離れない。
ミカサ「…」
ミカサ「エレン!今のうちに!」ガッ
エレン「ふ、ふざけんな!お前なにいって…」
ミカサ「ごめん、我慢して…」ドス!!
エレン「う……」ドサ...
アルミン「ミカサ⁉︎」
ミカサ「アルミン!!はやく馬を!!」
アルミン「わ、わかった!」ダッ
ミカサ「……ごめんなさい、ハンネスさん…」ダッ
ハンネス「そうだ……それでいい…」
ラガシュ『ウガァァァ!!』ブルン
ハンネス「ぐっ……」バタッ
ラガシュ『手間かけさせやがって…』チャキ...
くそっ…
最後に一度だけ、家族の顔を見たかったぜ……
ラガシュ『ウォォォ!!』
ザシュッ
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
-
- 40 : 2016/01/21(木) 18:41:42 :
-
バカラッバカラッバカラッ…
アルミン「ハアハア…西門へ!西門へはやく!」
ミカサ「アルミン、先に行って!エレンと2人では速度が出せない!」
気絶させたエレンを前に乗せて走るミカサが叫ぶ。
三人が訓練所から与えられた馬は忍耐強く、たくましい体格をしていたが、やはり人が二人乗ると速度が出ないようだった。
アルミン「ダメだ!今ここで離れたら君たちを守りきれない!」
アルミン「三人揃って街を出ないと!」
通りには住民が残していったのであろう家財や衣類が散乱していた。
その中には、瓦礫や大岩の下敷きになった死体もある。
アルミン「奴ら、投石機まで使ってるのか…」
アルミン「わからない……いったいなにが…」
ミカサ「アルミン!避けて!」
アルミン「えっ?」
トロル『ウガァァァ!!』ブン!
アルミン「うわぁぁぁ!」ドシャァ
ミカサ「アルミン!」
トロル『グォォォ…』
ミカサ「くっ…」ヒヒィン!
アルミンの馬は突如現れたトロルの一撃で動かなくなり、アルミンは通りの民家の中に投げ飛ばされた。
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- 41 : 2016/01/21(木) 18:42:54 :
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エレン「……っな、なんだ?」パチッ
ミカサ「エレン…!」
トロル『ガウゥ!!』ギョロ
エレン「と、トロル!?」
ミカサ「エレン!手綱を!」
エレン「えっ?」
ミカサ「はやく手綱を持って!」
エレン「わ、わかった!」
トロル『ガァァァ!!』ドスドスドス
ミカサ「前へ!」
エレン「おら!」バン
ヒヒィーーン!
トロル『グゥ?』
ミカサ「はあ!!」ヒュン
ザク!!
トロル『ガウゥゥ…』バタン!
馬の背から跳躍したミカサの剣はトロルの心臓を貫き、絶命させた。
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- 42 : 2016/01/21(木) 18:44:43 :
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ミカサ「はあ、はあ、」
エレン「大丈夫かミカサ?さあ乗れ!」バッ
ミカサ「エレン……う、後ろ!」
エレン「はっ!?」
ザクッ!
ヒヒィーーン!
エレン「うわぁ!」バタッ
オークの槍がエレンの馬を貫き、エレンが落馬する。
あたりはオークの一団に取り囲まれた。
オーク『殺せ!』
オーク『八つ裂きにしろ!』
エレン「くそっ…ミカサ…」ギュッ
最後を悟ったエレンはミカサを抱き寄せてオークに剣を向ける。
エレン「よ、寄るな!下がれ!」
オーク『ハッ!手が震えてるぞ?オラッ!』
バシン!
エレン「ぐっ!」
エレンの剣は弾かれ、丸腰になってしまった。
黒の大将『待て!待つのだ…』
オーク『?』
黒の大将『そ奴は生け捕りにせよ。そこの女共々な…』
オーク『ハア…』
ミカサ「むぅ!」ジタバタ
エレン「やめろぉ!はなせぇ!んむ…」ジタバタ
黒の大将『連れてゆけ!』
エレンとミカサは後手に縛られ、通りを進まされた。
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- 43 : 2016/01/22(金) 09:51:07 :
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街の中央 噴水広場
市民「うわあぁぁぁー!」
オーク『ガァァァ!』ザクッ
オーク『ハア!』ニタニタ
市民「お願いします!子供だけは、どうか!」
市民「おかあさぁん!!」
オーク『やれ!』
オーク『グゥ!』グシャッ
市民「いゃあぁぁぁぁ!」
オーク『ガァァ!!』ザクッ
市民「ううぅぅぅ…」
ハッハッハッハァ!
広場は市民の死体で埋まり、噴水の水は血に染まっている。
中にはまだ幼い乳飲子までいる。
昨日までの平和な広場とは打って変わって、そこはまさしくこの世の地獄であった。
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- 44 : 2016/01/22(金) 09:52:30 :
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エレン「やめろ…」
オーク『何?』
エレン「やめろっつってんだろぉが!このクソ野郎どもォォ!!」ジタバタ
オーク『黙れ、クソガキが!』ボスッ
エレン「ぐうっ!」ドサ
醜いオークの拳がエレンのほおを打つ。
オーク『うるせえガキだ。こいつもやっちまおうぜ!』
ラガシュ『よせ!黒の大将が殺すなといったんだ!』
ラガシュ『指示があるまで手を出すな!』
ミカサ「お前たち…許さない!」
ラガシュ『ふん。安心しろ、すぐに殺してやる。だが、その前に…』
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- 45 : 2016/01/22(金) 09:53:04 :
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カルラ「きゃあ!」
エレン「⁉︎……か、母さん!」
グリシャ「ええい、離せ!」
ミカサ「おとうさん!」
カルラ「エレン!ミカサも!」
グリシャ「お前たち、捕まってしまったのか…!」
エレン「父さんたちも…」
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- 46 : 2016/01/22(金) 09:55:46 :
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四人が広場の中央に集められると、周囲の殺戮は止み、オークや市民たちの視線を集めるようになった。
黒の大将『我らは我が主の宝を盗みしエルフを探してこの地に参った』
グリシャ「⁉︎」
黒の大将『盗人を差し出せ。さもなくば、死が訪れようぞ…』チャキ...
エレン「エルフだって⁉︎」
グリシャ「……っ、ここは人間の国だ!エルフなどいるはずがないだろう!」
黒の大将『そうか……』スッ
エレン「⁉︎」
『グラルム シィルクシャグ アズグシュ』
『ザントヤ アパクリツァク』
『グ-ル ン アナヒツァク』シュルルル...
グリシャ「うぐっ…がはっ…」バタッ
黒の言葉とともに首を裂かれたグリシャは、命を吸い取られるように倒れた
カルラ「きゃぁぁぁぁ!!あなたぁぁぁ!!」
エレン「くそぉぉぉ!!殺す!殺してやる!」ジタバタ
オーク『黙れ!』ギュッ
黒の大将『さて、もう一度聞こう…エルフはどこだ?』スッ
カルラ「はあっ……!」
グリシャの喉を切り裂いた剣が、カルラの首元に添えられる。
ミカサ「お母さん‼︎」
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- 47 : 2016/01/22(金) 09:59:31 :
カルラ「・・・・」フッ
カルラは一瞬、恐怖によって苦悶の表情を浮かべたが、すぐに悟ったように穏やかな顔つきになりいった。
カルラ「エレン、ミカサ?」
カルラ「こっちを向いて…」
エレン「なにいってんだよ母さん!」
ミカサ「おかあさん、行かないで!」
カルラ「あぁ、わたしの可愛い子供たち…」
『グラルム シィルクシャグ アズグシュ』
エレン「そんな、だめだ!」
『ザントヤ アパクリツァク』
ミカサ「いや、やめて…」
『グ-ル ン アナヒツァク』
カルラ「見守っているわ…」
「いつまでも…」シュルン
バタッ
ミカサ「いやぁぁぁぁぁあああぁぁぁ!!!!」
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- 48 : 2016/01/22(金) 10:01:05 :
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エレン「そんな…うそだろ……」
エレン「かあさん!!……なんで…」グッ
黒の大将『アノールの子らよ、最後にもう一度だけ聞こう…』
黒の大将『エルフはどこだ!』
エレン「駆逐してやる…」
黒の大将『なに?』
エレン「駆逐してやる!この世から、一匹残らず!」ギロ
黒の大将『…フッ、そうか。ならば、』
黒の大将『親子共々あの世へ送ってくれよう!』シュッ
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- 49 : 2016/01/22(金) 10:02:38 :
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タッタッタッタッ!
「はあぁぁぁぁぁ!」ザシュッ
黒の大将『うおぁぁぁ!!』ガタッ
突如現れた剣士は、反りの浅い刀を巧みに操り、黒の大将が振り下ろそうとした剣を、その腕もろとも切り捨てた。
細身で長身の剣士は黒の見事な鎧を纏い、その体をさらに黒のマントで覆っている。
ラガシュ『なんだおまえは!』ガウ
剣士〈名乗る義理はない〉
剣士〈この子たちはもらってゆく〉
ラガシュ『ええい、殺せ!』
オーク『『グォォォ!』』ダッ
ヒュン ヒュン
オーク『ギャウッ!』ドス
オーク『グゥ!』ドス
ラガシュ『!?』
ヒヒィーーン!
〈こちらです!さあ、はやく!〉
白い馬にまたがった金髪の乙女が矢を放った。
剣士とは対照的に全身白の装束で覆われ、鎧などはつけていない。
その姿はさながら神話の女神のようである。
エレン「だれだ、あんたら!うっ」グイッ
剣士「死にたくなければ言う通りにすることだ。」
エレン「…!」
ミカサ「エレン!走って!」グッ
エレン「くそっ!」ダッ
黒の大将『おのれ、奴らを逃すな!生きてこの街を出してはならぬ!』バッ
女神〈はあ!〉ビュッ
オーク『グォ!』ドス
黒の大将『むう…!』
女神「急ぐのです!」
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- 50 : 2016/01/22(金) 10:03:26 :
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バカラッバカラッ!
アルミン「エレン!ミカサ!」
ミカサ「アルミン!あなた、無事だったの!?」
アルミン「ああ!この人たちが助けてくれたんだ。さあ、はやく馬に!」
エレン「待てアルミン!まだ父さんと母さんが……」
広場の中央には、グリシャとカルラの亡骸があった
剣士「今は生きてこの街を出ることだけを考えろ!」
エレン「なっ!」
ミカサ「エレンお願い!乗って!」グイ
エレン「……っ、くっそぉ!」バッ
剣士「走れ!」バン
ヒヒィーーン‼︎
バカラ バカラ バカラ!
黒の大将『おのれェ!待てェェェ!!』
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
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- 51 : 2016/01/23(土) 18:19:18 :
パカッパカッパカッ
剣士「ここまで来れば、もういいだろう。」
五人は街を抜け出し、街の西に広がる境の森まで逃げのびた。
鬱蒼と茂る木々に囲まれた森は、五人とその馬を隠すのにはうってつけだったからだ。
女神「あなたたち、怪我はないですか?」
エレン「…」
ミカサ「…」
エレンとミカサは、憔悴しきっている様子で、馬から降りてもうなだれたままである。
アルミン「だ、大丈夫です。助けていただいてありがとうございました。」
女神「そう…あなたも少しお休みになって下さい。」ニコ
アルミン(め、女神……)
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- 52 : 2016/01/23(土) 18:20:43 :
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剣士「ご両親のことは気の毒だった。」
エレン「…」
剣士「だが、いつまでも悲しみにとらわれてはいられない。夜になれば奴らはまた動き出す。」
剣士「陽のあるうちにディンネン川を渡らなければ…」
エレン「ちょっと待てよ…」
剣士「?」
エレン「なに勝手に話し進めてんだ!俺たちは目の前で親が殺されたんだぞ!」ガバッ
アルミン「え、エレン…」
エレン「街の人が大勢死んだのも見た!まだ小さい子供まで!」
エレン「いったいなにが起きてんだ!あんたらいったい、なにを知ってるんだ!」ガッ
クイッ
ドサッ!
剣士に食ってかかったエレンは、いつの間にか地面に突っ伏していた。
エレン「!?」
剣士「言葉をわきまえたらどうだ。我々はお前たちの命の恩人だぞ。」
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- 53 : 2016/01/23(土) 18:21:28 :
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女神「ユミル、やめなさい!…親を失って気が動転しているのです。」
ユミル「はいはい、すみませんでしたよ…」
アルミン「ユミル…?あなたの名前はユミルというのですか?」
ユミル「……ああ、そうだ。」
ユミル「そしてこちらは私の主人のクリスタだ、粗相のないようにな。彼女は…」
アルミン「?」
ユミル「彼女は、その……大変高貴なお方だ。」
アルミン「わ、わかりました…」
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- 54 : 2016/01/23(土) 18:22:46 :
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アルミン「そ、そういえば!」
クリスタ「?」
アルミン「もしかして、きのう僕らが街に入った時に、路地からこちらを見ていたのはあなたたちですか?」
クリスタ「なぜそのようなことを聞くのです?」ジ-
アルミン「はわわ⁉︎い、いえ…なんでもないです!ただ…」
ユミル「ああ、その通りだ。」
アルミンの声を遮るように、ユミルが言う。
アルミン「え⁉︎」
ユミル「私たちはお前の持っている本に用がある。」
ユミル「そのためにここまで連れてきたのだ。」
アルミン「あっ、確かあのとき…」
アルミンは、ハンネスへの土産をまさぐっているときに落とした分厚い本を思い出した。
そのとき、路地裏から視線を感じたのだった。
ユミル「お前が落としたあの本は、私たちが長年探し求めていたものだ。」
アルミン「えっ?あのおとぎ話の詩集が?」
ユミル「おとぎ話?あれはそんな陳腐な代物ではない。あれは…」
クリスタ「…」ジッ
ユミル「……まあ、詳しくは言えんが、この世の如何なる書物よりも尊いものだ。」
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- 55 : 2016/01/23(土) 18:26:21 :
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エレン「じゃあ、あの骨董品を手に入れるためだけに俺たちを助けたっていうのかよ?」
アルミン「エレン…」
エレン「見たところ、あんたらの腕は相当なもんだ。剣も弓も俺たちよりもはるかに上手い…」
エレン「そんなあんたらの力があれば、あのとき広場にいたオークどもを皆殺しにして、捕まっていた人々を助けられたかもしれない…!」
ユミル「なに?」
エレン「現に敵の大将は片腕をもがれていたし、オークの首領は怪我をしていた!」
エレン「逃げる以外の選択肢があったはずだ!なのにあんたらは…その古めかしい本欲しさに街の人たちを見捨てた!
エレン「助かるかもしれないたくさんの命よりも、一冊の古本を選んだんだ!!」
アルミン「エレン、やめよう…」
エレン「あんたらには、人の命より大切なもんがあるってのかよ!」
ユミル「……」
ユミル「そうだ。」
エレン「!」
ユミル「この世には…ひとの命よりも尊ばれるべき宝がいくつかある。」
ユミル「あれもその一つだ。」
ユミル「あの本を手に入れるために、長い間この地を彷徨った…」
ユミル「そのために、多くの犠牲も払ってきたしな…」
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- 56 : 2016/01/23(土) 18:27:01 :
エレン「へっ、そうかよ。じゃあそれはとんだ無駄足だったな!」
ユミル「…なに?」
エレン「俺たちは兵士だ!戦場におとぎ話の本なんか必要ねえ……」
エレン「本はまだ街の中だ!いまごろオークどもに燃やされてるだろうよ!」
ユミル「いや、それはないな…」スッ
アルミン「えぇっ!なんで…」
ユミルの手には、濃い緑色の表紙の分厚い本が握られていた。
ユミル「明け方の騒ぎの中で、私がその金髪坊やの家から持ち出した。」
ユミル「この本を灰にするわけにはいかなかったからな…」
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- 57 : 2016/01/23(土) 18:29:45 :
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エレン「な、なんだよそれ…それじゃあお前ら、まるで火事場泥棒じゃねえか…」
ユミル「なに⁉︎」バッ
クリスタ「…」ピクッ
エレン「だ、だってそうだろ⁉︎その本が欲しくて、オークの騒ぎに乗じてアルミンの本を盗んだんだ!」
エレン「この“盗人”どもが…」
アルミン「エレン!いいすぎだよ!」
ユミル〈だまれ人間!〉グッ
エレン「ぐうっ!」
エレンの言葉に逆上したユミルは、エレンの襟を掴んで持ち上げた。
線の細いユミルであるが、いとも簡単に持ち上げてしまう。
ユミル「私だけならまだしも、クリスタまでも辱めるとは許せん!」
ユミル「今ここで首をはねてくれる!」グググッ
エレン「ぐあぁ!は、離せェェ!」ジタバタ
クリスタ「なりません、ユミル!」
ユミル「止めるなクリスタ!結局こいつらも、愚かな人間だったということだ!」チャッ
エレン「ぐうっ…やめろぉ…!」ジタバタ
アルミン「お願いします!彼を離して!」ジワッ
クリスタ〈やめるのです!〉バッ
ヒュゥン!
ユミル「むうっ!」ドサッ
エレン「ぐうっ……」ゲホゲホ
クリスタが手をかざすと目に見えない力がユミルを押し倒し、ユミルの手からエレンが離れた。
アルミン「だ、大丈夫かいエレン!」ダッ
アルミン「今のは…!」
クリスタ「…驚かせて申し訳ありませんでした。しかし、我々も複雑な事情を抱えているのです。」
クリスタ「余計な詮索は、しないでください…」
アルミン「は、はい…こちらこそ申し訳ありませんでした。」
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- 58 : 2016/01/23(土) 18:41:28 :
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ワォーーーン
クリスタ「ワーグの遠吠え…」
アルミン「そう遠くないです…急がないと!」ザッ
クリスタ「アルミンくん…といったわね。」
アルミン「は、はい…」
クリスタ「お友達を立たせてあげて?あなたが支えてあげるの。」ギュッ
アルミン「お、お任せください!///」
クリスタ「ユミル…」
ユミル「はっ…」
クリスタ「行きましょう…」
ユミル「……はい」カチャ
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- 59 : 2016/01/23(土) 18:53:21 :
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大地を照らす陽の光が西へと傾き、地平線の彼方へ沈んでゆく
太陽へと手を伸ばす分厚い雲は、山を、街を、森を飲み込んでゆく
山脈は血の気を失い、街にはオークの鬨の声が響いている
灰に包まれた故郷を背に、エレンたちの逃避行が始まったーーーー
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- 60 : 2016/01/23(土) 19:07:26 :
はい!第3話終了です!
途中投稿に時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした!
作品を一から作り出すのは本当に大変なことで、他の作者さまたちがコンスタントに投稿なさっていることが、どれだけスゴいことか!とひしひしと感じた3話目でした!
さて、本格的にエレンたちの旅がはじまったわけですが、ユミルとクリスタが加わり、(エレンとユミルの相性は最悪でしたが…汗)なんとなく、会話シーンが書きやすくなったかなぁと思いました。
ただ、キャラ崩壊気味といいますか、作中の人物関係上ちょっと違和感のあるセリフまわしになってるのかなぁとか思ったりもしました。
もちろん進撃の巨人は全巻読んでいますので、できるだけ準拠したいとは思っているのですが……
とにかく!
まだまだ勉強しなければならないことも多いので、皆さんには感想などもいただけると嬉しいです!
では!第4話も頑張りますので、応援よろしくお願いします!
以上ツナマヨでした!
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《銀のエルフと冥府の石》 シリーズ
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